平成25(ワ)1376 賃金等請求事件,債務不存在確認反訴請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月30日 札幌地方裁判所
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判決文本文42,970 文字)

主文 1 被告は,原告A,原告B,原告C,原告D及び原告Eに対し,320万0400円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 2 被告は,原告F及び原告Gに対し,640万0800円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 3 被告は,原告H及び原告Iに対し,676万0800円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 4 被告は,原告J,原告K,原告L,原告M及び原告Nに対し,978万1200円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 5 被告は,原告J及び原告Kに対し,平成28年10月21日から平成29年3月21日まで,毎月21日限り43万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 6 被告は,原告L,原告M及び原告Nに対し,平成28年10月21日から本判決確定に至るまで,毎月21日限り43万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 7 原告L,原告M及び原告Nの本件本訴のうち,本判決確定の日の翌日 から毎月21日限り43万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分をいずれも却下する。 8 被告の本件反訴の ち,本判決確定の日の翌日 から毎月21日限り43万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分をいずれも却下する。 8 被告の本件反訴のうち,原告C,原告I,原告F,原告H,原告G,原告B,原告A,原告D及び原告Eに対する訴えをいずれも却下する。 9 原告らのその余の本訴請求及び被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。 10 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告ら⑴ 被告は,原告A,原告B,原告C,原告D及び原告Eに対し,320万0400円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から平成26年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれぞれ支払え。 ⑵ 被告は,原告F及び原告Gに対し,640万0800円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から平成27年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれぞれ支払え。 ⑶ 被告は,原告H及び原告Iに対し,676万0800円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から平成28年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれぞれ支払え。 ⑷ 被告は,原告J及び原告Kに対し,978万1200円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄の各金員に対する「支払日」欄記載の日の 翌日から平成29年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれ 別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄の各金員に対する「支払日」欄記載の日の 翌日から平成29年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれぞれ支払え。 ⑸ 被告は,原告L,原告M及び原告Nに対し,978万1200円及び別紙1原告ら支払期日一覧表の「請求金額」欄の各金員に対する「支払日」欄記載の日の翌日から平成30年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれぞれ支払え。 ⑹ 被告は,原告J及び原告Kに対し,平成28年10月21日から平成29年3月21日まで,毎月21日限り43万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から平成29年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれぞれ支払え。 ⑺ 被告は,原告L,原告M及び原告Nに対し,平成28年10月21日から平成30年3月21日まで,毎月21日限り43万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から平成30年3月末日まで年5分の,同年4月1日から支払済みまで年14.6分の各割合による金員をそれぞれ支払え。 ⑻ 被告は,原告らそれぞれに対し,50万円及びこれらに対する平成25年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告原告らと被告との間において,被告が,平成24年11月1日付けで改正して平成25年4月1日付けで施行した学校法人札幌大学教員勤務延長任用規程8条に基づき,平成24年11月1日付けで改正して平成25年4月1日付けで施行した教員勤務延長任用に関する給与支給内規2条1項のうち,年俸額を平成25年4月から平成26年3月まで740万円に減額する部分,同年4月から平成27年3月まで680万円に減額する部分,同年4 で施行した教員勤務延長任用に関する給与支給内規2条1項のうち,年俸額を平成25年4月から平成26年3月まで740万円に減額する部分,同年4月から平成27年3月まで680万円に減額する部分,同年4月から平成28年3月まで620万円に減額する部分,同年4月以後560万円に減額する部分がいずれも有効であることを確認する。 第2 事案の概要 1 本件は,本訴として,被告との間でそれぞれ雇用契約を締結し,被告が設置・運営する札幌大学(以下「本件大学」という。)において教員として勤務し,あるいは勤務していた原告らが,①被告が平成24年11月1日付けで行った給与支給内規の変更(以下,「本件内規変更」といい,内規変更前の給与支給内規を「旧内規」,変更後の同内規を「本件内規」という。)は,合理性なく就業規則を不利益に変更するものとして無効である等と主張して,被告に対し,旧内規又は労働協約に基づき,本件内規変更により減額された差額部分の未払給与及びこれに対する各月の給与支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分ないし原告らが本件大学を退職した日の翌日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。)6条1項所定の年14.6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,②原告らが違法な本件内規変更により精神的苦痛を被ったとして,民法709条に基づき,慰謝料各50万円及びこれに対する本件内規施行の日である平成25年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,反訴として,被告が,仮に本件内規変更全体の合理性が認められないとしても,同変更が段階的に年俸額を減額する限度で合理性が認められることによりその一部が有効であると主張して,本件内規が一部有効であることの確認を求める事案である。 更全体の合理性が認められないとしても,同変更が段階的に年俸額を減額する限度で合理性が認められることによりその一部が有効であると主張して,本件内規が一部有効であることの確認を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠〔なお,書証番号については,特に付記しない限り,全ての枝番を含む。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者ア原告らは,被告と雇用契約を締結し,教員として本件大学に現に勤務し,あるいは勤務していた者であり,各原告の生年月日,定年年齢到達日及び退職(予定)日については別紙2(生年月日等一覧表)記載のとおりである。 原告らのうち,原告C,原告I,原告F,原告L,原告K,原告M,原告H,原告J,原告G及び原告Eは,平成25年4月1日から口頭弁論終結時である平成29年1月12日まで,本件大学の教職員によりなる札幌大学教職員組合(以下「教職員組合」という。)に所属し,他方,その余の原告である原告N,原告B,原告A及び原告Dは,同組合に所属していない,いわゆる非組合員である。 イ被告は,私立学校法に基づき,本件大学を設置・運営する学校法人である。 ⑵ 本件内規変更以前の原告らの労働条件ア協定の締結被告及び教職員組合は,平成19年4月1日,双方の合意に基づき,従前,70歳とされていた本件大学における教職員の定年年齢を引き下げることとし,以下の内容で「教員の定年年齢及び勤務延長制度に関する協定書」(甲1)による協定(以下「本件協定」という。)を締結した(甲2)。 教員の定年年齢平成19年度から,教員の定年年齢は65歳とする。ただし,在職者については,経過措置として定年年齢を次のとおりとする。 。)を締結した(甲2)。 教員の定年年齢平成19年度から,教員の定年年齢は65歳とする。ただし,在職者については,経過措置として定年年齢を次のとおりとする。 a 昭和12月4月2日から昭和14年4月1日生の者 70歳b 昭和14月4月2日から昭和16年4月1日生の者 69歳c 昭和16月4月2日から昭和18年4月1日生の者 68歳d 昭和18月4月2日から昭和20年4月1日生の者 67歳e 昭和20月4月2日から昭和22年4月1日生の者 66歳 教員の勤務延長制度定年年齢到達後も引き続き本人が勤務を希望する場合には,任用基準を満たしていると本件大学の学長が判断し,その必要性を被告理事長が 認めたときは,70歳に到達する年度の末日を限度として,次の区分による勤務延長制度を平成19年度から導入する。 a 66歳から68歳までの者については,校務(学部等教学組織の運営,大学運営及び本件大学が認めた社会貢献活動における業務全般をいう。)の担当のある者については勤務延長A1,校務の担当のない者については勤務延長A2として,給与を以下のとおりとする。 ⒜ 勤務延長A1 教授 800万円准教授 700万円講師 600万円⒝ 勤務延長A2 教授 640万円准教授 560万円講師 480万円b 69歳から70歳までの者については,勤務延長Bとして,校務を担当しないものとし,給与を以下のとおりとする。 教授 516万円准 講師 480万円b 69歳から70歳までの者については,勤務延長Bとして,校務を担当しないものとし,給与を以下のとおりとする。 教授 516万円准教授 456万円講師 396万円イ就業規則の変更及び旧内規の制定被告は,本件協定に基づき,教職員組合に意見を聴取した上,就業規則を変更して定年年齢を65歳と定めるとともに,教員勤務延長任用規程(以下「本件任用規程」という。)及び勤務延長者任用に関する給与支給内規(旧内規)を制定して,これらを労働基準監督署に届け出た。 ウ本件協約の締結その後,被告は,教職員組合との間で,平成20年11月11日付けで「教員の勤務延長制度の具体運用に関する協定書」に基づく協定(甲2, 乙1)を,同月27日には「労働協約書」に基づく協約(甲3。以下「本件協約」という。)をそれぞれ締結し,これらはいずれも同年12月1日より施行された。 本件協約は,本件大学の教員の労働条件について,一般職の職員の給与に関する法律並びに国家公務員に関連する法律及び諸規則を基礎として,これらの内容を下回らないようにするとの原則を掲げ(1条),旧内規と同様に,本件大学の教員の定年年齢を65歳と定めるとともに(14条1項),定年後の当該教員が引き続き勤務を希望する場合には,「法人と組合が別に定めるところにより雇用する」(同条3項)と定めている。 また,本件協約の有効期間は平成22年3月31日までとされ,被告又は教職員組合のいずれかから有効期間満了の60日前までに改定又は破棄の申入れがなかった場合には,自動更新により有効期間が1年間延長される旨の条項が設けられている(75条ないし77条)。その後,本件協約は,同条項に基づ かから有効期間満了の60日前までに改定又は破棄の申入れがなかった場合には,自動更新により有効期間が1年間延長される旨の条項が設けられている(75条ないし77条)。その後,本件協約は,同条項に基づき二度の自動更新を経た結果,その有効期間は平成24年3月31日まで延長された。 エ原告らの給与額の変更原告らの65歳到達時点における平均年俸は1199万7561円であったところ,全て勤務延長A1に当たる者として,組合員である原告らは本件協定により,非組合員である原告らは旧内規により,それぞれその給与額が800万円へと変更された(甲49,乙61の2)。 ⑶ 本件協約の破棄ア被告と教職員組合との間において,平成23年10月6日に団体交渉が実施されたところ,被告は,同団体交渉において,教職員組合に対し,平成24年1月5日をもって本件協約を破棄する旨を通告した(以下「本件通告」という。)。 イ上記通告の際,教職員組合執行委員長代行の職にあった原告Fに対して 交付された通告書(甲18)には,本件大学の理事長の職にあったOの記名押印がなされ,「現行労働協約書(平成20年11月27日締結。なお同協約書の定めにより別途合意した事項を含む。)を平成24年1月5日をもって解約することをここに通告します。」と記載されていた。 ⑷ 本件内規変更の実施ア被告は,原告らに対し,平成24年9月5日付けで勤務延長期間の給与額を将来的に大幅に減額する予定である旨を通知し,同年11月1日付けで本件任用規程を変更し,従前の勤務延長者に関する勤務延長の区分(上)を廃止するとともに,更に旧内規を変更することで(本件内規変更),勤務延長者の給与を職位にかかわらず一律に年額480万円と定め,これを原告らに通知した。 延長者に関する勤務延長の区分(上)を廃止するとともに,更に旧内規を変更することで(本件内規変更),勤務延長者の給与を職位にかかわらず一律に年額480万円と定め,これを原告らに通知した。 本件内規変更のうち,給与額に関する変更後の部分は,平成25年4月1日から施行することとされた。(甲5ないし7,10,19,20)イ被告は,本件内規変更を受けて,原告らに対し,平成25年1月18日付けで,同月31日までに平成26年度以降の雇用契約書を提出するよう求めた(甲21)。 原告らは,同年2月12日,本件内規変更に伴う給与の減額につき同意できない旨表明し,又は上記雇用契約書上の年俸額の記載を変更した上で,上記雇用契約書を被告に提出した(甲11,12,22,23)。 ⑸ 本件内規変更に基づく給与減額の実施被告は,平成25年3月27日付けで,原告らに対し,年俸額を480万円,支給月額を40万円とする労働条件の通知をした上,同年4月1日より,本件内規変更に基づき,原告らに対して毎月40万円(年俸480万円)の限度で給与の支払を行っている(甲13,乙70)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ 本件反訴の確認の利益の有無(争点1・本案前の争点) (被告の主張)本件における本訴請求は,いわゆる給付の訴えであるが,これに対する反訴が確認の訴えであったとしても,確認の対象である基本たる権利ないし法律関係を確定することが被告の法的地位の安定に資する場合には,確認の利益は肯定される。 本件においては,勤務延長者の年俸額減額に係る就業規則変更(本件内規変更)の有効性が争われており,仮に同変更の全体が無効とされる場合には,被告は原告らに対して変更前の給与額全額の支払を余儀なくさ 本件においては,勤務延長者の年俸額減額に係る就業規則変更(本件内規変更)の有効性が争われており,仮に同変更の全体が無効とされる場合には,被告は原告らに対して変更前の給与額全額の支払を余儀なくされるという不安定な地位に置かれることになる。 被告としては,このような不安定な地位を除去すべく,就業規則の変更全部の有効性ではなく,その時々における適切かつ合理的な減額幅について有効であるとの限度で一部有効であるとの権利関係の確定を求める必要があるといえるから,本件反訴には確認の利益が認められる。 (原告らの主張)就業規則の変更に係る有効性の判断は,有効か無効かの二者択一であるから,一部無効などというものはそもそも観念できない。 仮に就業規則の一部無効が観念できるとしても,本件反訴は,本件本訴において原告らが求める賃金支払と同一の権利関係について確認を求めるものであって,確認の利益を欠くというべきである。 ⑵ 本件協定の有効性(争点2)(被告の主張)本件通告の際に教職員組合に交付した解約通告書(甲18)には,本件協約書の定めにより別途合意した事項を含めて労働協約を解約する旨が明記されている。本件協定は,本件協約14条3項の規定する「法人と組合が別に定めるところ」に該当するものであることが明らかであって,本件協約締結との先後関係を問わず,本件協約の解約により本件協定も当然に効力を喪失 したものと考えるべきである。 (原告らの主張)ア本件通告が無効であること本件協約は,有効期間を平成20年12月1日から平成22年3月31日までとし,被告又は教職員組合が当該協約を破棄する場合には有効期間の60日前までに破棄の申入れをしなければならないとした上で,有効期間満了の60日前 間を平成20年12月1日から平成22年3月31日までとし,被告又は教職員組合が当該協約を破棄する場合には有効期間の60日前までに破棄の申入れをしなければならないとした上で,有効期間満了の60日前までに当事者から破棄の申入れがなかった場合には,当該協約は自動更新されて1年間延長される旨を定める(75ないし78条)。ところが,被告が本件通告により平成24年1月5日をもって本件協約の破棄を申し入れたのは,平成23年10月6日のことであり,本件通告は,同年4月1日から平成24年3月31日までの有効期間の途中になされたものであるから,同年1月5日をもって解約することができないことは明らかである。 したがって,本件通告は無効である。 イ本件協約の破棄によって本件協定は失効しないこと仮に,本件通告が有効であり,これにより本件協約が破棄されたと解し得るとしても,本件通告により破棄されたのは,あくまで平成20年11月27日付けで締結された本件協約だけにとどまり,同協約より前の平成19年4月1日に締結された本件協定まで破棄する趣旨を含むものではない。被告が教職員組合執行委員長代行の職にあった原告Fに交付した解約通告書(甲18)にいう「(本件)協約書の定めにより別途合意した事項」とは,本件協約別添1ないし11の協定書による合意を指すものにすぎず,本件協定を指すものではない。また,仮に上記事項に本件協定が含まれるとしても,本件協定は,有効期間の定めがない労働協約であり,その解約には,解約しようとする日の90日前までに,署名又は記名押印のある文書によって予告することが必要とされるところ(労働組合法15条3項及 び4項),本件通告はこの要式性を満たしていないから,本件協定が解約されたとはいえない。 した 押印のある文書によって予告することが必要とされるところ(労働組合法15条3項及 び4項),本件通告はこの要式性を満たしていないから,本件協定が解約されたとはいえない。 したがって,仮に本件通告が有効であったとしても,依然として本件協定は有効であるから,組合員である各原告らは,本件内規変更の有効性を論じるまでもなく,本件協定に基づき,年間800万円の給与支払請求権を有する。 ⑶ 本件内規の周知性(争点3)(被告の主張)本件大学においては,就業規則及びこの関連規程が改正された場合には,文書及び冊子化した就業規則を全職員に配布し,また,全教員が閲覧できるイントラネット上においても,変更の度に改正後の就業規則等に加え新旧対照表や改正要綱を掲載することとしている。 本件内規変更についても,平成25年度の勤務延長任用教員の対象者全員に対して,平成24年10月2日付け文書(乙58)により冊子等を配布済みであり,上記イントラネットにおいても,同月1日の時点でトップページから僅かワンクリックで到達可能なページに同内容を掲載するなどしていた(乙56,116)。その後,同年11月1日付け学内報にも本件内規の掲載を行っている(乙55)。 これらによって,本件内規が周知性に欠けるところはない。 (原告らの主張)被告は,本件内規について,新旧対照表をイントラネットにおいて示すのみで,新制度の概要を記載した書面等の配布はおろか,説明会等も開催していない。平成24年9月4日に教職員組合に交付した本件内規を含む「給与規程の改正について(通知)」と題する書面(乙115)は全52頁にも及ぶものであり,減額後の金額に関する具体的説明はなく,自力で改正条項を見つけ出さなければ,その具体的金額は不明な状況であっ 「給与規程の改正について(通知)」と題する書面(乙115)は全52頁にも及ぶものであり,減額後の金額に関する具体的説明はなく,自力で改正条項を見つけ出さなければ,その具体的金額は不明な状況であった。 また,イントラネットについても,検索して被告が示した上記新旧対照表にたどり着くまでにはいくつもの手続を経る必要があり,労働者である原告らがこれらを容易に確認できる状態にあったとはいえない。しかも,本件内規は,一般教員についてはイントラネット上も非公開とされており,配布された冊子も同イントラネット上では入手することができない状態となっていた。これがイントラネット上に公開されるに至ったのは平成24年10月2日以降であり,本件内規が施行された同年9月5日の時点では周知性を欠いていた。 したがって,本件内規は周知性の要件を満たしておらず,その効力を生じない。 ⑷ 本件内規変更の合理性(争点4)(被告の主張)ア本件内規を変更すべき必要性が認められること 本件大学の財政状況のひっ迫a 学生納付金の減少本件大学は,その財政収入の約90%を在学生の学生生徒等納付金(入学金,授業料,施設設備費)に依存しているにもかかわらず,本件大学においては,少子化等を原因とする複数年に及ぶ定員割れ,とりわけ,平成23年度には定員割れが急激に進んでいた。実際に,本件大学の経営状況は,平成18年度ないし平成22年度の決算に依拠して行われた財団法人日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)の財政分析において,財政状況を示す多くの指標が危険領域に接近しつつある状況にあるとされ,実際に平成24年度の累積赤字は26億円を超える状況にあった。 このような事情があったことから,本 という。)の財政分析において,財政状況を示す多くの指標が危険領域に接近しつつある状況にあるとされ,実際に平成24年度の累積赤字は26億円を超える状況にあった。 このような事情があったことから,本件大学は,早期に支出削減を図り,財政の安定化を目指す必要があった。 b 人件費比率の上昇一方,本件大学は平成20年以降,帰属収入合計から消費支出合計を控除した残額が赤字で収益性が全くない状況にあった。とりわけ,本件大学では人件費比率(帰属収入に対する人件費の割合)は平成19年度以降徐々に増加し,平成24年度には62.1%に至っている。 実際に事業団による経営分析結果(乙21,24)及び監査法人銀河が平成20年度から平成25年度までの6年間を対象として行った財務調査(乙120。以下「本件財務調査」という。)においても指摘されているとおり,本件大学においては,人件費が経営ひっ迫の最大の要因となっており,被告としては人件費の削減を何としてでも実施する必要があった。 本件大学の主要施設について大規模な修繕が必要であること学校会計の健全性評価においては,単純に帰属収入で消費支出を賄うことができるというだけでは足りず,将来的に行う学生の学修環境の整備に供するための基本金をどれだけ確保できるかという点が重要とされる。 本件大学においては,主要施設である二つの体育館及び二つの教室建物がいずれも建築後40年以上経過しており,耐震性診断及び修繕のために保有資産の取り崩しによる費用の支出(最低でも73億4700万円)は今後避けられない状況にある。 したがって帰属収入が消費支出を上回っていることの一事をもって本件大学の経営状況が健全な状態にあると評価できるものではない。 イ変 700万円)は今後避けられない状況にある。 したがって帰属収入が消費支出を上回っていることの一事をもって本件大学の経営状況が健全な状態にあると評価できるものではない。 イ変更後の給与額が相当なものであること 本件大学の財政状況が上記アのとおりであり,被告としては,人員整理をせずに財政改善を図るべく本件内規変更に及んだ。これまで,教員を除く一般の職員については,数年間にわたり給与の減額を繰り返して きたが,勤務延長者の給与は,この間を通じて一度たりとも減額されることはなかった。 このような経緯から,本件大学における原告ら以外の教職員との公平性も図るべく,本件内規変更を実施したものであって,変更後の本件内規により定められた給与額は,北海道内の他大学教員の給与水準と比較しても決して低いものではないし(乙13),勤務延長者については,老齢年金(老齢基礎年金及び老齢共済年金)制度により本件内規変更に伴う給与の減額分を一定程度補填することも可能であり,これを含めると年収は620万円程度になる。これは,民間企業に勤務する正規労働者の平成25年度における平均年収473万円(乙71),60歳台後半の労働者の平成24年度における平均年収319万1000円(乙60)などのデータと比較しても,到底低いとはいえない。 むしろ,退職後の再雇用においては,給与額が退職時賃金の50から70%に減額されるのが一般的であるし,教職員組合自身,平成21年の時点では勤務延長者の給与を515万円まで減額することに同意していたのであるから,本件内規変更後の労働条件が不相当なものであったとはいい難い。 また,本件内規に基づく勤務延長者は,校務分担を強制されるものではなく,校務を分担するか否かは教員と所属 いたのであるから,本件内規変更後の労働条件が不相当なものであったとはいい難い。 また,本件内規に基づく勤務延長者は,校務分担を強制されるものではなく,校務を分担するか否かは教員と所属長(教授会)との協議に委ねられており,実際にもそのような運用がされているのであるから,校務の負担を強制されるわけではない。 ウ本件内規変更に関する手続 被告が本件内規変更の必要性について十分に説明を行ってきたこと被告は,平成21年8月頃より,再三にわたり,教職員組合に対して雇用延長者の給与減額の必要性について説明を行い,本件大学の財政ひっ迫の状況についても,組合執行部役員に対しては事業団が行った財務 分析の経営診断結果に基づいて,それ以外の全職員に対しては平成23年9月29日及び同年10月24日に実施した説明会において,本件大学の客観的な経営状況等について十分に説明を行ってきた(乙6,7)。 また,平成25年3月8日に実施した教職員組合と学長との間の懇談においては,非組合員である原告ら4名も同席していたから,この時点で非組合員である原告らも本件内規変更を認知することができた。 教職員組合に対して誠実に団体交渉を行ってきたこと被告は,平成21年8月より,3回にわたり賃金引下げに関する申入れを行い(乙3ないし5),平成23年9月からは,多数回にわたり,教学役職者や組合執行部役員に対して事業団作成に係る資料を提示して本件大学の財政状況について説明を行い(乙6,7),平成24年5月には,組合の要求に応じて財政資料を提示して(乙8),継続的に大学財政の実態と財政改革の必要性を訴え続けてきた。これまでの間,教職員組合による要求のあった団体交渉を拒否したことは一度もない 4年5月には,組合の要求に応じて財政資料を提示して(乙8),継続的に大学財政の実態と財政改革の必要性を訴え続けてきた。これまでの間,教職員組合による要求のあった団体交渉を拒否したことは一度もない。 教職員組合は,このような被告の申入れ及び説明に対して,自ら財政改革に関する具体的対案も提示しないまま,いたずらに批判や不規則発言に終始し,真摯に議論する姿勢をみせようとしなかったのである(乙95ないし98)。 北海道労働委員会の救済命令は,教職員組合との交渉に関する事実を誤認しており,当該命令で認定された事実は真実とは程遠いものである。 非組合員に対する説明にも欠けるところはなかったこと本件大学においては,労働者の労働条件の改定は,非組合員も含め,教職員組合との交渉・協議により決定される事項に従うというのが従来からの労使慣行であり,被告としても,教職員組合と合意に至った労働条件の内容を更に非組合員に対して提示して同意を得るといったことはしておらず,上記内容を非組合員に通知し,非組合員から意見や要望が 提出されれば個別に対応してきたところ,非組合員もそのような従来の慣行に従うことを了承していた。 このような慣行に従い,被告は,非組合員である原告らについても,原告B,原告A及び原告Dについては平成22年7月23日付けで(乙84,85,94),原告Nについては平成24年9月5日付けで(甲19,乙86)で,それぞれ再雇用期間の年俸額を大幅に減額する予定である旨を個別に通知している。そして,被告は,平成23年9月29日及び同年10月24日に行われた,全職員を対象とする,事業団の経営診断結果に基づく財政状況説明会においても,今後予想される賃金の減額幅について「世間並み」, る。そして,被告は,平成23年9月29日及び同年10月24日に行われた,全職員を対象とする,事業団の経営診断結果に基づく財政状況説明会においても,今後予想される賃金の減額幅について「世間並み」,「他大学並み」などといった表現を用いて説明を行っていた。 このような経緯に鑑みれば,本件内規変更に関する非組合員に対する説明も適切かつ相当な方法でなされたものといえる。 労働基準法所定の手続を経ていること被告は,平成24年9月4日,教職員組合に対し,就業規則の改正要綱及び新旧対照表等を手交し,その際,本件内規も同組合に交付している。その後,同月11日,被告は,教職員組合執行委員長代行の職にあった原告Kに対して改正内容等を説明の上,組合の意見書を提出するよう求めたにもかかわらず,教職員組合が提出した意見書に本件内規に関する意見を付さなかったほか(乙91),非組合員からも意見,質問及び異議がなかったことから,同月28日に就業規則及びその下位規範である関係規定(本件内規を含む。)を労働基準監督署に届け出るとともに,これらを全教員に周知した。 したがって,本件内規変更の手続に瑕疵はない。 エ小括以上より,本件内規変更は,収入が減少し支出が増大しつつあった本件 大学の経営ひっ迫の状況に照らし,相当な範囲で,相当な手段・手続の下に実施されたものであるから,合理性が肯定される。 (原告らの主張)ア原告らが被る不利益の重大性本件内規変更により,いずれも教授職の地位にあった原告らは,平成25年4月1日から,年間給与額が800万円から480万円へと,40%もの減額を強いられることになった。 原告らは,既に平成19年4月の時点で従前約1200万円であった年 た原告らは,平成25年4月1日から,年間給与額が800万円から480万円へと,40%もの減額を強いられることになった。 原告らは,既に平成19年4月の時点で従前約1200万円であった年間給与額を800万円に減額することに同意しており,更に上記のような大幅な年間給与額の減額を行うことにより原告らが被った不利益の程度は重大である。 イ労働条件変更の必要性本件内規変更が,上記アのとおり,特に,労働者にとって重要な権利ないし労働条件である賃金の減額について実質的な不利益を及ぼす内容のものである以上,当該変更については,「そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずる」(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号60頁)ものと解されている。 ところが,本件大学の財務状況は,平成24年度において,自己資金構成比率は89%に及び,現金預金は81億を超える一方で,負債合計は平成17年度以降徐々に減少傾向にあった(乙10の1,36)から,被告は,現金預金等をもって借入金を全て返済することができる状況にあった。 また,被告の教育研究活動によるキャッシュフローは依然として黒字の状態であって,事業団の基準によっても,「自力再生が極めて困難な状態(レッドゾーン)」はおろか,「経営困難状態(イエローゾーン)」にすら至っておらず,株式会社東洋経済新報社発行の大学四季報における健全 性の数値(自己資金÷総資産)も88.3%(全国の私立大学583校中272位)とされている。 これらの事情からすると,被告の経営状況がひっ迫しているとはいえない。そして,仮に本件大学の経営状況に改善の必要性が認められるとして 88.3%(全国の私立大学583校中272位)とされている。 これらの事情からすると,被告の経営状況がひっ迫しているとはいえない。そして,仮に本件大学の経営状況に改善の必要性が認められるとしても,人件費比率に関する事業団の評価も,10段階評価のうち5段階目に当たる評価を受けており,決して悪い評価を受けていたわけではないし,人件費の総額も平成23年度から抑制傾向にあったのであるから,あえて本件内規変更により大幅な賃金減額を強行する高度の必要性はなかった。 ウ本件内規の相当性 労働内容の強化本件内規変更による原告らの賃金減額幅は,それまでの年俸額の40%にも及ぶものであるばかりか,本件内規によれば,教授会への出席や校務に対する応諾状況が勤務延長の許可理由の判断材料となっていることから,原告らは,これら校務を事実上負担せざるを得ず,また,平成25年4月以降,被告は,原告らが担当する授業数を増加させている。 これらの事情によれば,原告らに求められる労働の内容は,同月以前よりも強化されているといえる。 原告らを狙い撃ちとする人件費削減策であること本件大学の教員数は平成26年5月1日現在99名であり,第四次基本計画において減少目標として掲げられた教職員数(134名)を大幅に超過して目標を達成しており,平成24年度には,人件費削減も同計画の予定以上に進んでいたにもかかわらず,被告は,他分野の歳出削減が目標に達成していないとして,それ以上の人件費の削減を行っているのである。 しかも,そもそも,本件大学の経営状況が悪化した主たる原因は,被告が,本件大学の貯蓄を用いて行った有価証券投資に失敗し,平成19 年度から平成22年度にかけて合計27億円超もの損失を発生させたことにあるにもかかわらず 営状況が悪化した主たる原因は,被告が,本件大学の貯蓄を用いて行った有価証券投資に失敗し,平成19 年度から平成22年度にかけて合計27億円超もの損失を発生させたことにあるにもかかわらず,本件大学の経営陣は何ら責任をとらないばかりか,役員報酬は増額され,本件大学の副学長を3名から5名に増員するなどしているのであって,本件内規変更は,他の施策を十分に検討することなく,原告らを始めとする一定年齢層の教員のみを狙い撃ちにした不当な支出抑制策であるといわざるを得ない。 何らの代償措置・経過措置も講じられていないこと 変更により原告らは大きな不利益を被るにもかかわらず,被告は,これについて何らの代償措置も設けず,また,経過措置もとっていない。 他の学校の同種労働者と比較しても劣位の労働条件であること厚生労働省作成の賃金構造基本統計年表(賃金センサス)における65歳から69歳の大学教員の平均年収は,2012年(平成24年)で1075万5000円,2013年(平成25年)で1093万6000円となっている(甲83ないし85)。 本件内規変更により原告らの年間給与額が480万円とされた場合,原告らの給与額は,本件大学に勤務する教員中,下位5%以下の賃金額とされ,他大学の教員と比較しても年収水準の半分以下に陥ってしまうのであり,同規模同系統の大学並みにするというのであれば年収1000万円とし,北海道平均並みにするというのであれば年収800万円とすれば十分なはずである(乙13)。このとおり,本件内規変更による原告らの賃金額の切り下げは,我が国の一般的状況に照らして不相当である。 被告は,他の66歳以上の国民との平均年収との比較において,原告らの年収が480万円とされても 件内規変更による原告らの賃金額の切り下げは,我が国の一般的状況に照らして不相当である。 被告は,他の66歳以上の国民との平均年収との比較において,原告らの年収が480万円とされても格別低廉なものとはいえない旨を主張しているが,そもそも,本件大学においては平成19年3月まで70歳 定年制を採用していたのであって,企業等において65歳に定年となった後に再雇用の形式で雇用を継続する例と本件を比較することはできない。 エ労働組合等との交渉状況被告は,教職員組合との数度にわたる交渉においても,単に財政上のひっ迫を抽象的に述べるのみで何ら合理的説明を行わず,財政問題について組合に説明する義務はないと述べ,あるいは,学内規程を根拠に本件内規変更の必要性を基礎づける資料の提出を拒絶するなど,およそ誠実に教職員組合との交渉に臨んでいたとは評価できない。勤務延長者の給与を一律に年額480万円まで引き下げるとの本件内規変更の内容についても,平成24年9月13日の教職員組合との労使協議の場で言及されるまで,被告は,原告ら及び教職員組合に対し,何ら告知も協議の申入れも行っていないし,減額の根拠についても一切示さなかった。被告が,誠実に教職員組合との交渉に臨まず,また,本件内規変更の理由について十分な説明を行っていなかったことは,平成26年10月10日付けで北海道労働委員会が被告の行為を不当労働行為と認めて救済命令を発令したこと(甲39)からも明らかである。 オ非組合員への説明非組合員に対しては,年俸減額の「予定」や「検討中」との文言を用いて抽象的に予告する書面の交付こそあったものの,当該書面には減額後の具体的な金額や引下げの時期等については何ら記載されておらず,被告が平成24年10月2日付け文書(甲2 」や「検討中」との文言を用いて抽象的に予告する書面の交付こそあったものの,当該書面には減額後の具体的な金額や引下げの時期等については何ら記載されておらず,被告が平成24年10月2日付け文書(甲20)で一方的に通知するまでの間,全く具体的な説明が行われていない。 カ就業規則の意見聴取及び届出被告は,就業規則そのもの(甲4)については教職員組合の意見聴取及び労働基準監督署への届出を行っているようであるが,問題となっている 勤務延長教員に関する規定やその他の関連規定(甲6,8,10)については,労基法が定める手続を履践していないから,本件内規変更については手続的瑕疵がある。 ⑸ 本件内規変更を一部無効とする判断の可否(争点5)(被告の主張)ア就業規則の変更の一部無効という理論は,就業規則の変更による賃金減額の有効性が争われる事案において,具体的妥当性を図るものとして合理性を有する手法であり,最高裁も,就業規則の相対的無効論自体は承認しているところである(最高裁平成8年3月26日第三小法廷判決・民集50巻4号1008頁)。 イ被告は,平成23年3月1日の時点で,教職員組合に対し,年俸額の段階的引下げについて,例えば,勤務延長者A1については,同年度から毎年60万円ずつ年俸額を減額する(1年目740万円,2年目680万円,3年目620万円,4年目560万円)内容の提案を行っていたのであるから,仮に本件内規変更が全体として合理性を有するものではなかったとしても,被告がした上記提案の内容によれば,収入減少に伴う原告らの生活への影響を回避することができるのであるから,上記提案の内容には十分な合理性が認められる。 また,そもそも,被告が年俸額の段階的引下げという激変緩和措置 よれば,収入減少に伴う原告らの生活への影響を回避することができるのであるから,上記提案の内容には十分な合理性が認められる。 また,そもそも,被告が年俸額の段階的引下げという激変緩和措置を講じることができなかったのは,教職員組合が被告の提案に強硬に抵抗して誠実に交渉を行わなかったことが原因なのであるから,被告が上記措置を講じずに本件内規変更を行ったことにも相応の理由がある。 したがって,仮に本件内規変更が一部合理性を欠くと判断されたとしても,少なくとも,平成23年3月1日付け提案に係る労働条件は,本件内規変更の合理性を判断する客観的かつ合理的な指標となることから,平成25年4月から上記提案の内容に従った給与の段階的引下げを行うものと する限度においては,本件内規変更の有効性が認められるべきである。 (原告らの主張)一般に,就業規則の変更が合理性を欠くものとして無効になる場合は,旧就業規則による労働条件の内容が存続するものと理解されており,合理性のない就業規則の一部分のみが有効なものとなることは本来的に想定されていない。 仮に裁判所が合理性のない就業規則の変更のうち一部分のみを有効なものと認めるとすると,これは裁判所が存在しなかった第3の就業規則の存在を創出することになりかねず,実際,そのような就業規則はそもそも当事者間において存在しないものであった以上,「周知」も組合に対する意見聴取もあり得ない。さらに,合理性なき就業規則を一部分であれ有効なものとして認めるということになると,使用者が裁判所による一部無効の判断を期待して,とりあえず思い切って合理性を欠くような不利益変更を行うモラルハザードを引き起こすおそれもある。 これらの事情のほか,本件内規変更により,原告らが労働条件である賃金の約3分 無効の判断を期待して,とりあえず思い切って合理性を欠くような不利益変更を行うモラルハザードを引き起こすおそれもある。 これらの事情のほか,本件内規変更により,原告らが労働条件である賃金の約3分の1を減額されるという極めて大きな不利益を受けること,本件内規変更に関する教職員組合との交渉及び同組合への説明も全く不十分であること等の本件特有の事情に照らすと,一般論として就業規則の一部無効が理論的に観念できないことはもとより,少なくとも本件において本件内規変更の一部を有効なものと判断することは到底できない。 ⑹ 未払賃金に係る遅延損害金利率についての賃確法適用の有無(争点6)(被告の主張)仮に,本件内規変更が全部又は一部につき無効であり,被告が本件大学を退職した原告らに対して未払賃金の支払義務を負うとしても,被告は,「支払が遅延している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っている」(賃確法6条2項,同法施 行規則6条4号)ものであるから,同未払賃金について,賃確法6条1項所定の年14.6分の割合による遅延利息の支払義務を負わない。 (原告らの主張)本件内規変更は無効であり,被告は,本件大学を退職した原告らに対し,旧内規で定められた賃金額と既に支払済みの賃金額との差額に対する退職の日の翌日から支払済みまで賃確法6条1項所定の年14.6分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負う。 ⑺ 本件内規変更に係る被告の不法行為の成否及び原告らの損害(争点7)(原告らの主張)上記⑷の原告ら主張のとおり,本件内規変更はおよそ合理性が認められない無効なものであるにもかかわらず,被告がこれを強行したことによって,原告らは生活の基盤を脅かされ (原告らの主張)上記⑷の原告ら主張のとおり,本件内規変更はおよそ合理性が認められない無効なものであるにもかかわらず,被告がこれを強行したことによって,原告らは生活の基盤を脅かされる強い恐怖感による精神的苦痛を被った。 したがって,本件内規変更は,民法上の不法行為に該当するというべきであり,これによって各原告らに生じた精神的苦痛の慰謝料は50万円を下らない。 (被告の主張)否認ないし争う。 上記⑷の被告の主張のとおり,本件内規変更は,合理性あるものとして,もとより有効である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認定することができる。 ⑴ 本件大学の経営指標等(乙23,24,120)ア総学生数及び入学者数の推移 平成19年度 学生数 5320名(総定員5310名)入学者数約1170名(総定員1330名) 平成20年度学生数 4930名(総定員5330名)入学者数 1007名(総定員1330名) 平成21年度学生数 4552名(総定員5110名)入学者数 1007名(総定員1090名) 平成22年度学生数 4417名(総定員4840名)入学者数 1097名(総定員1090名) 平成23年度学生数 4037名(総定員4600名)入学者数約770名(総定員1090名) 平成24年度学生数 3690名(総定員4 23年度学生数 4037名(総定員4600名)入学者数約770名(総定員1090名) 平成24年度学生数 3690名(総定員4600名)入学者数約750名(総定員1090名)イ本件大学における帰属収入及び消費支出の内訳並びにそれらの推移(乙10,28,36) 平成17年度a 帰属収入額合計66億2141万9003円学生納付金 56億1925万3500円(構成比84.9%)手数料 8003万7743円寄付金 1974万5930円補助金 6億2340万2363円資産運用収入 1億0547万2354円 事業収入 3714万7500円雑収入 1億3635万9613円b 消費支出額合計58億2928万5034円人件費 32億4929万0443円(構成比55.7%,人件費比率49.1%)教育研究経費 19億7324万7452円(構成比33.9%)管理経費 5億2683万4306円(構成比9.0%)借入金等利息 5469万4792円(構成比0.9%)資産処分差額 2521万8041円(構成比0.4%) 平成18年度a 帰属収入額 70億3568万3624円学生納付金 53億4920万9000円(構成比76.0%)手数料 7170万0465円寄付金 2254万2325円補助金 6億0174 学生納付金 53億4920万9000円(構成比76.0%)手数料 7170万0465円寄付金 2254万2325円補助金 6億0174万3464円資産運用収入 3億2825万1675円資産売却差額 5億0353万9184円事業収入 2833万7293円雑収入 1億3036万0218円b 消費支出額合計59億0414万9256円人件費 32億3327万5353円(構成比54.8%,人件費比率45.9%)教育研究経費 19億2072万2420円(構成比32.5%)管理経費 6億3918万8543円(構成比10.8%)借入金等利息 4571万0147円(構成比0.8%)資産処分差額 6393万9793円(構成比1.1%) 徴収免除額 131万3000円(構成比0.0%) 平成19年度a 帰属収入額合計66億9377万3290円学生納付金 50億3479万7000円(構成比75.2%)手数料 6040万2546円寄付金 2億2244万8512円補助金 5億8765万4787円資産運用収入 4億1380万2451円資産売却差額 7198万1373円事業収入 3632万5083円雑収入 2億6636万1538円b 消費支出額合計65億3458万7452円人件費 33億7896万8403円 事業収入 3632万5083円雑収入 2億6636万1538円b 消費支出額合計65億3458万7452円人件費 33億7896万8403円(構成比51.7%,人件費比率50.5%)教育研究経費 19億1975万7182円(構成比29.4%)管理経費 6億6310万4397円(構成比10.2%)借入金等利息 3672万5502円(構成比0.6%)資産処分差額 5億3603万1968円(構成比8.2%) 平成20年度a 帰属収入額合計57億0421万8305円学生納付金 46億2107万6500円(構成比81.0%)手数料 5859万2400円寄付金 2510万0502円補助金 5億6973万6786円資産運用収入 2億3049万8350円資産売却差額 28万7201円 事業収入 3489万3160円雑収入 1億6403万3406円b 消費支出額合計65億2358万0030円人件費 29億8131万7962円(構成比45.7%,人件費比率52.3%)教育研究経費 19億2666万8396円(構成比29.5%)管理経費 6億8317万3655円(構成比10.5%)借入金等利息 2867万3977円(構成比0.4%)資産処分差額 8億9997万7540円(構成比13.8%)奨学貸付徴収不能引当金繰入 5%)借入金等利息 2867万3977円(構成比0.4%)資産処分差額 8億9997万7540円(構成比13.8%)奨学貸付徴収不能引当金繰入額 376万8500円(構成比0. 0%) 平成21年度a 帰属収入額合計53億7068万2974円学生納付金 42億7710万4500円(構成比79.6%)手数料 5866万2822円寄付金 2961万9564円補助金 5億8991万3484円資産運用収入 1億1277万6627円資産売却差額 3130円事業収入 4150万4610円雑収入 2億6109万8237円b 消費支出額合計57億1425万5519円人件費 30億1295万1309円(構成比52.7%,人件費比率56.1%)教育研究経費 19億1106万7779円(構成比33.4%)管理経費 5億2542万5767円(構成比9.2%) 借入金等利息 2353万9412円(構成比0.4%)資産処分差額 2億4127万1252円(構成比4.2%) 平成22年度a 帰属収入額合計52億3317万1746円学生納付金 41億2455万5000円(構成比78.8%)手数料 4399万6326円寄付金 2552万8402円補助金 4億8296万2809円資産運用収入 6475万5041円 手数料 4399万6326円寄付金 2552万8402円補助金 4億8296万2809円資産運用収入 6475万5041円資産売却差額 1369万0424円事業収入 5027万9592円雑収入 4億2740万4152円b 消費支出額合計77億9205万4006円人件費 41億3980万2573円(構成比53.1%,人件費比率79.3%)なお,平成22年度においては,文部科学省通知により退職給与引当金の計上に関する基準が変更された(乙35)ことから,これまで3ないし5億円程度で推移していた同引当金勘定について,12億9156万5623円を計上している。これを従来と同様の会計処理を行った場合の人件費比率は61.9%となる。 教育研究経費 17億3297万5991円(構成比22.3%)管理経費 4億8144万4079円(構成比6.2%)借入金等利息 1840万4847円(構成比0.2%)資産処分差額 14億1936万2516円(構成比18.2%)奨学貸付徴収不能引当金繰入額 6万4000円(構成比0.0%) 平成23年度 a 帰属収入額合計45億0888万6144円学生納付金 36億6221万7000円(構成比81.2%)手数料 4116万6619円寄付金 3289万6686円補助金 4億7812万1362円資産運用収入 1497万0391円資産売却 4116万6619円寄付金 3289万6686円補助金 4億7812万1362円資産運用収入 1497万0391円資産売却差額 3万7321円事業収入 4006万9805円雑収入 2億3940万6960円b 消費支出額合計49億4916万2830円人件費 26億7515万6780円(構成比54.0%,人件費比率59.3%)教育研究経費 16億6730万9829円(構成比33.7%)管理経費 4億3452万8047円(構成比8.8%)借入金等利息 1428万3887円(構成比0.3%)資産処分差額 1億5788万4287円(構成比3.2%) 平成24年度a 帰属収入額合計43億5423万7738円学生納付金 33億4928万7500円(構成比76.9%)手数料 3914万7534円寄付金 4355万3397円補助金 4億1960万6132円資産運用収入 1579万7884円事業収入 3671万8897円雑収入 4億5012万6394円b 消費支出額合計47億8937万5199円 人件費 27億0236万4410円(構成比56.4%,人件費比率62.1%)教育研究経費 15億4180万8131円(構成比32.2%)管理経費 5億0022万0237円(構成比10.5%)借入金等利息 比率62.1%)教育研究経費 15億4180万8131円(構成比32.2%)管理経費 5億0022万0237円(構成比10.5%)借入金等利息 1117万6532円(構成比0.2%)資産処分差額 3346万9389円(構成比0.7%)奨学貸付徴収不能引当金繰入額 33万6500円(構成比0. 0%)ウ翌年度繰越消費収入超過額の推移(乙28,108) 平成17年度 26億5871万2518円 平成18年度 26億2673万8636円 平成19年度 22億5123万7563円 平成20年度 15億3989万0755円 平成21年度 10億0330万8025円 平成22年度マイナス16億4251万8559円 平成23年度マイナス20億5731万5893円 平成24年度マイナス26億2002万9055円エ本件大学の自己資本比率等(乙36)平成23年度末における本件大学の総資産は233億1364万6119円(うち現金預金は89億7429万7852円),純資産は205億9836万5221円(自己資金構成比率88.4%)であった。 オ第2号基本金の積み立ての状況平成23年度末時点において,本件大学は第2号基本金(学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために将来取得する固定資産に充てる金銭その他の資産の額)の新たな組入れができない状態が継続しており,その積立額は2億円程度であったとこ ろ,これは,近郊の二大学(うち は教育の充実向上のために将来取得する固定資産に充てる金銭その他の資産の額)の新たな組入れができない状態が継続しており,その積立額は2億円程度であったとこ ろ,これは,近郊の二大学(うち一つは30億5000万円,もう一つは61億1000万円)と比較しても,低額であった。そして,本件財務調査においては,第2号基本金が確保できていない原因は,帰属収支差額がマイナスの状況が継続していることにあり,これは,本件大学の将来の存続可能性にかかわる重大な問題であると指摘されている。(乙22,120)⑵ 経営再建計画の策定及びその実施状況ア本件大学は,平成4年をピークとして受験生が減少し,複数年にわたる定員割れが続いている状態にあったところ,人件費比率の上昇による経営ひっ迫の状況にあるとの認識の下,大学規模の縮小による大学再建を企図し,平成20年3月24日に「第四次基本計画」と呼称する経営再建計画を策定した。 同計画は,計画期間を6年間として平成21年4月より実施することとされ,また,大学組織の改編に関する施策として,平成19年度に教員159名,職員92名であった教職員数を,計画終年度である平成26年度には教員134名,職員76名に削減することを骨子として,人件費の全体的削減を図ることをその中心的目標に掲げた。(乙18,73)イ平成23年7月6日に開催された部長会において,被告は,第四次基本計画の履行状況に関する中間答申案を配布するとともに,同計画策定後も入学者数は定員を大きく割り込み,損失幅が大きくなっており,同計画は財政面において失敗していることを説明・報告した(乙105)。 ⑶ 本件大学の財政的評価等ア財団法人大学基準協会(以下「大学基準協会」という。)の認証評価(乙62) おり,同計画は財政面において失敗していることを説明・報告した(乙105)。 ⑶ 本件大学の財政的評価等ア財団法人大学基準協会(以下「大学基準協会」という。)の認証評価(乙62)本件大学は,平成23年3月11日付け大学基準協会の認証評価において,同協会の大学基準に適合しているとの評価を受けたものの,専任教員 に占める高齢者の割合が増加していることから,今後の教員採用計画等において改善の努力が望まれる旨の助言を受けた。 イ事業団による経営分析結果(乙21,24,65)事業団は,平成18年度から平成22年度までの決算に依拠し,平成23年9月13日及び同月14日,被告に対し,本件大学の経営分析結果を以下のとおり報告した。 総括本件大学の経営状況は数年の間に急激に悪化しており,平成23年度のような状況が続けば,破綻,吸収されるような状況にある。原因は,入学する学生数の減少により定員を確保できないこと,人件費比率が過大であること,それによりキャッシュフローのバランスが著しく悪化していることが挙げられる。本件大学は施設も老朽化しており,ストックからフローの損失を補填することも困難な状況にある。 人件費比率について人件費は,消費支出の中で最も大きな割合を占める項目であり,かつ固定費の性格が強いため,帰属収入の一定割合以下に抑える必要があるところ,目標となる人件費比率は50%であり,60%を上限とする。 消費収支が赤字で人件費比率が2年連続して60%を超えた場合,「経営困難状態(イエローゾーン)」(教育研究活動によるキャッシュフローが2年連続赤字か,又は過大な外部負債を抱え,10年以内の返済が不可能な状態)にあり,その傾向から「自力再生が極めて困難な状 「経営困難状態(イエローゾーン)」(教育研究活動によるキャッシュフローが2年連続赤字か,又は過大な外部負債を抱え,10年以内の返済が不可能な状態)にあり,その傾向から「自力再生が極めて困難な状態(レッドゾーン)」(イエローゾーンよりも経営状態が悪化し,自力での再生が極めて困難となった状態)に陥ることが懸念され,本件大学は正にその位置にあり,大変危機的な状況である。 ⑷ 一般の教職員における賃金減額の実施被告は,本件大学の経営状況に鑑み,勤務延長者以外の一般の教職員の賃 金について,平成21年度から平成24年度にかけて,期末手当の支給割合を6月期分については1.4から1.25へ,12月期分については1.8から1.15へ,順次引き下げるとともに,寒冷地手当,職員研修手当,試験監督補助手当,特別調整手当,家族手当及び住宅手当を削減ないし廃止する等の方法により,労働条件の引下げを行った(乙72)。 ⑸ 原告らの給与水準ア平成22年当時,本件大学における66歳から70歳までの各年齢の専任教員の給与額は,いずれも北海道内に所在する全大学の専任教員の平均給与額を上回っていた(乙13)。 イまた,札幌市内に所在する国立大学法人である北海道大学の場合,63歳定年制が採用されており,その後2年間に限り契約更新が認められる「特任教授」の年俸額は720万円程度である(乙68,92)。また,その他の北海道内の私立大学は,一つの大学を除き,それぞれ66歳から70歳までの再雇用教員の給与額(年収)を約454ないし510万円,約730万円としている(乙92)。 ⑹ 本件内規変更に至る経緯ア平成21年8月3日,被告は,平成22年度から,勤務延長教員について,勤務延長A1,A2の区分を廃止し,66歳から68歳の 約730万円としている(乙92)。 ⑹ 本件内規変更に至る経緯ア平成21年8月3日,被告は,平成22年度から,勤務延長教員について,勤務延長A1,A2の区分を廃止し,66歳から68歳の勤務延長教員については,いずれも校務の負担を原則とした上で,以下のとおり給与額を減額することを教職員組合に対して申し入れた(乙3)。 勤務延長A 教授 514万8000円准教授 457万2000円講師 404万4000円 勤務延長B 教授 476万円准教授 412万円講師 380万円 イさらに,被告は,平成21年9月24日,教職員組合に対し,平成22年度から以下のとおり勤務延長教員の給与額を変更するとともに,平成23年度以降も順次勤務延長区分の見直し及び年俸額の段階的な引下げを行うこととするが,同年度以降の年俸額については教職員組合との労使交渉の結果を踏まえて決定したい旨の申入れを再度行った(乙4)。 勤務延長A1 教授 620万円准教授 540万円講師 500万円 勤務延長A2 教授 496万円准教授 432万円講師 400万円 勤務延長B 教授 476万円准教授 412万円講師 380万円ウ平成21年10月1日,被告と教職員組合は被告の同年9月24日付けの申入れ(上記イ)について協議したが,同組合執行委員長で 412万円講師 380万円ウ平成21年10月1日,被告と教職員組合は被告の同年9月24日付けの申入れ(上記イ)について協議したが,同組合執行委員長であった原告Kは,勤務延長任用教員制度構築から1年足らずで年俸額を大幅に変更することには応じられないとして,3年くらいかけて減額すべきであり,初年度は数パーセントなら容認の可能性はあるものの,下限は515万円である旨を述べた(乙30)。 エ被告は,平成22年度中に定年年齢を迎える原告B,原告A,原告Dに対しては同年7月23日付けで,平成24年度中に定年年齢を迎える原告Nに対しては同年9月5日付けで,また,その他の原告らに対しても定年年齢を迎える年度に,それぞれ文書により,翌年度以降の勤務を希望する場合には本件任用規程所定の手続を執るよう求めるとともに,勤務延長期間の年俸額の改定を別途検討中である旨を通知した(乙84ないし86, 94,証人P)。 オ平成23年3月1日,被告は,教職員組合に対し,同年度から平成25年度までの本件大学における勤務延長教員の年俸額を以下のとおり段階的に引き下げることなどを内容とする申入れを行った(甲52,乙5。以下「平成23年3月1日付け提案」という。)。 平成23年度a 勤務延長A1 教授 740万円准教授 647万円講師 567万円b 勤務延長A2 教授 592万円准教授 517万円講師 454万円c 勤務延長B 教授 503万円准教授 442万円講師 391万円 平成24年度a 勤務延長A1 教授 680万円准教授 594万円講師 534 長B 教授 503万円准教授 442万円講師 391万円 平成24年度a 勤務延長A1 教授 680万円准教授 594万円講師 534万円b 勤務延長A2 教授 544万円准教授 474万円講師 428万円c 勤務延長B 教授 490万円准教授 428万円講師 386万円 平成25年度 a 勤務延長A1 教授 620万円准教授 540万円講師 500万円b 勤務延長A2 教授 496万円准教授 432万円講師 400万円c 勤務延長B 教授 476万円准教授 412万円講師 380万円カ平成23年3月18日,教職員組合の執行部役員らは,平成23年3月1日付け提案について,被告専務理事らと懇談し,本件大学の財政状況等について説明を受けた。 また,同年5月12日及び同月16日においては,被告と教職員組合との間で平成23年3月1日付け提案に係る事務折衝が行われた。同事務折衝において,教職員組合が被告の理事長及び専務理事が出席していないことを批判したことから,被告の理事長及び専務理事は同月20日付けの懇談会に,専務理事は同月30日付けの団体交渉にそれぞれ出席し,改めて本件大学の財政改善及び人件費削減の必要性を教職員組合に対して訴えたものの,教職員組合から平成23年3月1日付け提案に対する回答はなされなかった。(甲27,乙7)キ平成23年7月28日,被告は,教職員組合に対し,平成23年3月1日付け提案について,同組合の回答書を同年8月末までに提出するよう通知した(乙7,32)。 れなかった。(甲27,乙7)キ平成23年7月28日,被告は,教職員組合に対し,平成23年3月1日付け提案について,同組合の回答書を同年8月末までに提出するよう通知した(乙7,32)。 ク被告は,平成23年9月13日及び同月14日,事業団に依頼していた本件大学の財政状況に関する結果報告(上記⑶イ)を受け,翌15日にはその要約資料(乙21)を作成するとともに,同月27日,教職員組合執 行部役員らに対して,上記結果報告の際の資料(乙16,24の1及び2)を提示して事業団の経営分析結果を説明した(甲27,乙7,9,証人P)。 ケ被告は,平成23年9月29日,全職員を対象として,事業団により指摘された本件大学の経営上の問題点等について,同月15日に作成された上記クの結果報告の要約資料(乙21)を基にO理事長が説明を行い,同年10月24日には,事業団の担当者を講師として招き,再度,全職員に対して本件大学の置かれている経営状況に関する説明会を開催した(乙6,19,20,111)。 コ平成24年5月25日,被告は,教職員組合執行部役員らに対し,夏期期末手当の支給割合に関し,過去6年分の貸借対照表(乙10の1),資金収支計算書(乙11・4枚目),消費収支計算書(乙10の2)及び「消費収入・支出の推移」と題する書面(乙17)を配布するとともに,その内容について説明した。また,同月31日には,被告は,上記役員らに対し,6月期の期末手当の支給割合に関し,第四次基本計画に関する財政見通しの資料(乙18,112)を示した上で,その内容について説明した。(甲27,乙8,97)サ平成24年6月28日,被告のP理事は,本件大学の平成17年度から平成24年度予算までの消費収支の推移をグラフ化した文書(乙11)及び「 で,その内容について説明した。(甲27,乙8,97)サ平成24年6月28日,被告のP理事は,本件大学の平成17年度から平成24年度予算までの消費収支の推移をグラフ化した文書(乙11)及び「札幌大学の財政状況」と題するパワーポイント資料(乙104)を用いて,全職員に対し,事業団による経営相談の結果と財務諸表からみた本件大学の財政状況について説明した(乙6,証人P)。 シ平成24年8月23日,被告は,常勤理事会において,勤務延長教員の年俸を480万円まで引き下げることを決議した(甲92,証人P)。 ス平成24年9月4日,被告は,教職員組合に対し,12月支給分期末手当,通勤手当,家族手当,住宅手当,職員の給与体系の変更等,十数項目 にわたる労働条件のほか,勤務延長者全員につき校務を負担することを前提として従来の区分(A1,A2,B)を廃止し,一律に年俸額480万円とする内容で就業規則を改定する旨を通知し,労働基準法90条に基づき,同組合の意見書の提出を求めた(甲55,乙115)。 セ平成24年9月5日,被告は,平成24年度において定年年齢に達する教員らに対し,定年後に雇用の延長を希望する場合には任用規程所定の手続を執るよう求めるとともに,勤務延長期間の給与について,「大幅に減額改定の予定であることを予め申し添えます」などと記載し,年俸額の減額の可能性を示唆する通知をした(甲19)。 ソ被告及び教職員組合は,平成24年9月13日,同月4日付け通知(上記ス)に係る就業規則の変更及び勤務延長者の年俸額の引下げについて団体交渉を行った。同交渉において,被告は,平成23年3月1日付け提案を撤回し,勤務延長者の年俸を上記通知にある内容とする提案を行った(甲27,乙8)。 教職員組合は,同月18 について団体交渉を行った。同交渉において,被告は,平成23年3月1日付け提案を撤回し,勤務延長者の年俸を上記通知にある内容とする提案を行った(甲27,乙8)。 教職員組合は,同月18日付け組合紙に,被告から上記内容のとおりの提案があったことを掲載し,全教職員に対してこれを配布した(乙87)。 タ平成24年10月2日,被告は,平成25年度において定年年齢に達する教員らに対し,勤務延長教員の年俸額を一律に480万円に減額することを決定したとして,今後予定する本件内規変更の具体的内容について通知した(甲20,乙58,88)。 チ平成24年12月20日,翌年度に勤務延長を申請する意思がある教員は,非組合員を含め,本件大学のQ学長(当時)に対し,勤務延長教員の年俸額を一律に480万円に減額するとの被告の判断には同意できないこと,年俸額の確定については,教職員組合と法人との交渉を見守ることとすることなどを記載した書簡を送付した(乙134)。 ⑺ 労働委員会の救済命令(甲39) ア教職員組合は,平成25年2月21日,北海道労働委員会に対して,被告が,同組合に資料を示すなどして変更理由を十分に説明することなく,団体交渉継続中に一方的に賃金規程を変更し,また,組合に協議を申し入れることなく一方的に本件任用規程の変更を行ったことが労働組合法7条2号及び3号所定の不当労働行為に当たると主張して救済の申立てを行った。 イ北海道労働委員会は,平成26年10月10日付けで,原告らの主張を認め,原告らの救済命令の申立てに基づき,被告に対し,①本件内規変更をめぐる団体交渉について,変更の理由及び当該変更が適正なものであることを説明し,必要に応じて資料を提供するなどして誠実に対応すべきこと,②上記団体交渉にお 立てに基づき,被告に対し,①本件内規変更をめぐる団体交渉について,変更の理由及び当該変更が適正なものであることを説明し,必要に応じて資料を提供するなどして誠実に対応すべきこと,②上記団体交渉において不誠実な対応をすることにより教職員組合の運営に支配介入してはならないこと,③原告ら主張に係る被告の上記各行為が不当労働行為に当たることを認め,今後これを繰り返さないようにする旨表明した文書の掲示(ポスト・ノーティス)を命じる救済命令(甲39。以下「本件救済命令」という。)を発した。 被告が本件救済命令に対し不服申立て及び取消訴訟の提起を行わなかったことから,同命令は確定した。 ⑻ 本件内規変更の周知手続ア被告は,平成24年10月1日,原告らを含む教職員に対し,変更後の本件内規を変更前の旧内規との新旧対照表とともに学内イントラネット内に掲載することを文書で通知し(乙41),遅くとも同月7日までに本件内規等を学内イントラネット内に掲載したほか(甲70,乙116),同年11月1日には,被告が発行する学内報に本件内規を添付した上,原告らを含む教職員にこれを配布した(乙55)。 イまた,被告は,原告らを含む教職員に対し,本件内規変更の施行に先立つ平成25年3月13日,本件内規変更後の本件任用規程(甲6)を含む 平成25年度の就業規則諸規定の改正について記した冊子を配布するとともに,同規程の改正要綱及び新旧対照表を学内イントラネット内に掲載する旨を文書により通知した(乙46,51の1)。 ウ本件大学のイントラネットは,そのホームページのURLが教職員に周知されており,当該ホームページのトップページからは,一度該当部分をクリックするだけで,本件内規変更の内容を閲覧することができる状態にあった(乙 ントラネットは,そのホームページのURLが教職員に周知されており,当該ホームページのトップページからは,一度該当部分をクリックするだけで,本件内規変更の内容を閲覧することができる状態にあった(乙56)。 2 本件反訴の確認の利益の有無(争点1・本案前の争点)について⑴ 本件反訴は,本件本訴において,原告らの年俸額を一律に480万円まで減額する本件内規変更が合理性を欠き無効と判断される場合に備え,予備的に,原告らとの間で,同変更が段階的に年俸額を減額する限度で一部有効であるとの権利関係ないし法律関係の確認を求める訴えである。 本件における本訴請求は,原告らが,被告に対し,本件内規変更が合理性を欠く無効なものであると主張して,旧内規に基づく未払賃金の支払を請求する給付の訴えであるところ,本件本訴において年俸額を減額する本件内規が全体として無効であると判断されたとしても,本件反訴において,原告らと被告との間の雇用関係の基礎となる就業規則たる本件内規が,段階的に年俸額を減額する限度で一部有効であることを既判力をもって確定することにより,本件内規の有効性をめぐる争いにより生じる将来の法律関係を抜本的に解決することが期待できるものというべきである。 もっとも,口頭弁論終結時において既に本件大学を退職している原告らについては,同原告らが本件大学を退職したことにより被告が同原告らに対して負う未払賃金請求権の内容は既に確定しているというべきであるから,本件本訴請求に加えて本件内規が一部有効であることを既判力をもって確定する利益はないというべきである。 ⑵ 以上によれば,本件訴訟の口頭弁論終結の日である平成29年1月12日 までに70歳を迎え,あるいは自主的に退職することにより,本件大学を退職した原告C,原告I,原告F, きである。 ⑵ 以上によれば,本件訴訟の口頭弁論終結の日である平成29年1月12日 までに70歳を迎え,あるいは自主的に退職することにより,本件大学を退職した原告C,原告I,原告F,原告H,原告G,原告B,原告A,原告D及び原告Eに対する本件反訴は確認の利益を欠くこととなるから,不適法な訴えとして却下すべきであり,他方,その余の原告らに対する本件反訴は,確認の利益が認められるから,適法な訴えであると解すべきである。 3 本件協定の有効性(争点2)について⑴ 前記前提事実のとおり,被告は,本件大学理事長の記名押印のある通告書(甲18)を読み上げ,平成23年10月6日,本件協約及び「同協約書の定めにより別途合意した事項」を平成24年1月5日付けで解約する旨を教職員組合に通知・交付した事実が認められる(前提事実⑶)。 この点について,被告は平成24年1月5日付けで本件協約を解約する旨通知しているが,本件協約は,自動更新条項により平成23年4月1日をもって有効期間が平成24年3月31日まで延長されており,平成24年1月5日をもって本件協約を解約することはできない。しかし,被告の意思を合理的に解釈すれば,本件通告は,平成24年度以降については,本件協約の自動更新による期間の延長は行わない旨を表明したものであったと解すべきであるから,本件協約は,被告により有効期間満了の60日前までに破棄の申入れがされたものとして,同年3月31日をもって失効したというべきである。 ⑵ ところで,本件通知では,本件協約のほかに,「同協約書の定めにより別途合意した事項」を解約するとされているが,被告の意思を合理的に解釈すれば,被告は,基本協約である本件協約の解約とともに,その締結時期を問わず,通告時に存在した本件協約に付随する協定等,すなわち, 途合意した事項」を解約するとされているが,被告の意思を合理的に解釈すれば,被告は,基本協約である本件協約の解約とともに,その締結時期を問わず,通告時に存在した本件協約に付随する協定等,すなわち,本件協約14条3項所定の「法人と組合が別に定めるところ」の協定等の効力を失わせる意思であったものと解される。 そして,本件協定は,被告が教職員組合との交渉の末に合意に至った定年 年齢の引下げに伴い創設された勤務延長制度の具体的内容に関して,両者の間で締結された合意であって,本件協約とともに同制度の具体的内容を規定するものであり,このような本件協定の内容や締結に至った経緯に鑑みれば,本件協定は,基本協約たる本件協約に付随する協約として位置付けられるものであることが明らかである。 そうすると,本件協定は,本件協約より約2週間前に締結されたものであるとはいえ,本件協約14条3項にいう「法人と組合が別に定めるところ」に当たる。 したがって,本件通告により,本件協約は平成24年3月31日の経過により効力を喪失した結果,これに伴い,本件協定も同日をもってその効力を喪失したものというべきである。 4 本件内規の周知性(争点3)について⑴ 就業規則の変更により労働者の労働条件を変更するためには,当該就業規則を労働者に「周知」させることが必要である(労働契約法10条)ところ,ここにいう「周知」とは,労働基準法上の「周知」(同法106条1項)に限定されることなく,一般に労働者が変更後の就業規則を実質的に知り得る状態に置いていることをいう。 ⑵ これを本件についてみると,変更後の本件内規は,遅くとも,その施行日である平成25年4月1日に先立つ平成24年10月7日には本件大学のイントラネット内に新旧対照表等と同時に掲示され をいう。 ⑵ これを本件についてみると,変更後の本件内規は,遅くとも,その施行日である平成25年4月1日に先立つ平成24年10月7日には本件大学のイントラネット内に新旧対照表等と同時に掲示され,同大学の教員であった原告らはいずれも該当箇所にアクセスすることで容易に本件内規変更の内容を閲読・認識することができたというべきである(認定事実⑻)から,本件内規は原告らが実質的に知り得る状態に置かれており,本件内規変更が周知手続に欠けるとはいえない。 これに対し,原告らは,同イントラネット内に公開された本件内規は,その掲載箇所にたどり着くまでの手続が複雑であって,これでは原告らが容易 に本件内規変更の内容を確認することができる状態にあったとはいえない旨を主張するが,本件大学の職員が本件内規及びその新旧対照表等が公開されたホームページに容易にアクセスすることができる状態にあったことは上記認定事実⑻ウのとおりであって,原告らの上記主張を採用することはできない。 ⑶ 小括したがって,本件内規変更は,原告らに対する労働契約法10条所定の周知手続がなされていたものといえる。 5 本件内規変更の合理性(争点4)について⑴ 判断基準ア本件内規変更は,旧内規においては,66歳から68歳までは勤務延長者A1に該当する者として年俸800万円,69歳から70歳までは勤務延長者Bに該当する者として年俸516万円と定められていた原告らの年俸を,校務の負担を前提として一律480万円まで減額させるという内容のものであり,いわゆる就業規則の不利益変更に当たる。 イ使用者は,労働者と合意することなく,就業規則を変更することによって労働者の不利益に労働条件を変更することは原則として許されないが,労働条件の集合的処理,特にその 則の不利益変更に当たる。 イ使用者は,労働者と合意することなく,就業規則を変更することによって労働者の不利益に労働条件を変更することは原則として許されないが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況や代償措置そのほか関連する他の労働条件の改善状況,同種事項に関する我が国社会における一般的状況等の事情等に照らし,当該変更が合理的なものである場合には,当該変更によって労働者の労働条件を不利益に変更することができる(労働契約法9条,10条参照)。とりわけ,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については,当該変更が,そのような不利益を労働者 に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることが必要とされるものと解される(最高裁判所平成9年2月28日第二小法廷判決・民集51巻2号705頁参照)。 ⑵ そこで,以下において本件内規変更の合理性について検討する。 ア学校法人の収益は,学生生徒等納付金の中でも授業料収入,すなわち在学生からの学費による収入を基本とし,一般に,学生は大学に入学すると通常4年間そのまま大学に在籍し,その間,中途入学はほぼなく,他方,中途退学者は中途入学者に比べ多いことに照らすと,学校法人の会計は,一般企業とは異なる長期的な見通しの下で行わざるを得ないものと解される。 本件大学においては,平成19年度以降,総学生数及び入学者数のいずれもが一貫して減少傾向にあり,平成20年度以降は,定員割れの状態が継続していた(認定事実⑴ア)。そして を得ないものと解される。 本件大学においては,平成19年度以降,総学生数及び入学者数のいずれもが一貫して減少傾向にあり,平成20年度以降は,定員割れの状態が継続していた(認定事実⑴ア)。そして,これに伴い,本件内規の施行に至る前の5年間(平成20年度から平成24年度)における本件大学の帰属収支差額は,退職金給与引当金の計上に関する従来の基準を変更した平成22年度を除き,各年度において約マイナス3億円から約マイナス8億円(平均約マイナス5億円)で推移しており,この間,帰属収入の80%近くを占める学生納付金は,一貫して減少し続け,平成24年度においては,平成20年度時の約4分の3までに減少していた(認定事実⑴イ)。 このような状況において,近年の少子化や大学間競争の激化等,私立大学を取り巻く環境の変化を考慮すると,「第四次基本計画」等の様々な経営改革を図ったとしても,本件大学において学生納付金の大幅な増加による抜本的な経営改善を見込むことはできず,被告としては,支出を削減することにより経営再建を図ることが現実的な経営再建の手法であったといえる。 イまた,本件大学においては,消費支出に占める人件費の割合を示す構成比をみると,消費支出のおおむね半分以上を人件費が占めており,平成20年度以降,帰属収入に占める人件費の割合(人件費比率)は増加傾向にあって,平成24年度に至っては62.1%に達していた(認定事実⑴イ)。 この点について,日本私立大学連盟が大学法人の望ましい支出構成として,基本金組入れ13%,人件費50%,教育研究費30%,管理経費4%,その他資産処分差額等2%,消費収支超過1%というモデルを提示し(乙67),また,本件財務調査においても,本件大学については,最も多額の費目となっている人件費(ただ 教育研究費30%,管理経費4%,その他資産処分差額等2%,消費収支超過1%というモデルを提示し(乙67),また,本件財務調査においても,本件大学については,最も多額の費目となっている人件費(ただし,退職金を除く。)の収入に占める割合を50%未満に抑えることができれば,教育研究活動のキャッシュフローが確実にプラスとなると見込まれる蓋然性が高く,今後も更なる人件費の削減が避けられない旨指摘されていること(乙120)等に照らすと,被告としては,少なくとも本件大学の支出のうち,人件費比率を50%程度に抑える必要性があったものというべきである。 ウこれらの事情に鑑みれば,人件費の抑制・削減を図る被告が,勤務延長者を含む現在の職員の賃金を削減することで経営状況を改革するために,本件内規変更によって平成25年4月1日をもって勤務延長者の年俸額を減額したことについては,それを行うことの高度の必要性が存在したと認められる。 ⑶しかし,そうであるとしても,66歳から68歳までは800万円,69歳から70歳までは516万円であった原告らの年俸は,本件内規変更により480万円へと最大4割もの大幅な減額を強いられ,その不利益の程度は重大なものがある。しかも,原告らは,本件内規変更に先立ち,平成19年に約1200万円から800万円への大幅な年俸額の減額に同意し,これが実施されたという経緯があった(前提事実⑵エ) のであるから,これに加え,短期間で更なる年俸額の減額を求められた原告らにとって,被告の本件内規変更に関する提案が承服し難いものであったことは十分に理解できるところである。また,本件内規変更は,上記のように原告らの不利益の程度が重大であったにもかかわらず,このような原告らの不利益の程度に配慮し,これを緩和するための経過措置や代 たことは十分に理解できるところである。また,本件内規変更は,上記のように原告らの不利益の程度が重大であったにもかかわらず,このような原告らの不利益の程度に配慮し,これを緩和するための経過措置や代償措置そのほか関連する他の労働条件の改善も全く講じられておらず,このような大幅かつ急激な賃金の減額により,本件内規変更後,原告らに生活上の支障が生ずるおそれがあったといえる。 そして,本件内規変更時において,被告は,キャッシュフロー上の問題点はあるにせよ,自己資本比率は高い水準を維持し続けており,平成23年時点においても80億円を超える金融資産を保有している状況にあったこと(認定事実⑴エ)からすれば,長期的な見通しの下に経営状況を把握すべきとされる大学法人の会計の特殊性(⑵ア)を考慮したとしても,本件大学を運営する被告が,本件内規変更により本件大学の教職員の給与を大幅に減額しなければ,直ちに運営資金の調達に困難を生じ,又は,数年以内に破産する危機に瀕するほど経営状況がひっ迫していたとは認められない。 これに対し,被告は,在職老齢年金制度を活用することで,本件内規変更に伴い生ずる原告らの賃金減額の程度が実質的に緩和される旨主張するが,年金は,労働者ごとに支給要件の有無や受給額が異なるものであるから,その受給を考慮して本件内規変更に伴い生ずる原告らの賃金減額の程度が大幅なものではなく,不利益の程度が小さいということはできない。 イさらに,被告は,教職員組合に対して数度の申入れを行い(認定事実⑹アないしウ),教職員組合の合意を経て勤務延長者の年俸額減額を実現しようと企図し,数年にわたり同組合との団体交渉を継続して 行っていたものであるが,団体交渉が難航するや,平成24年9月4日付けの通知及び同月13日付けの団体交渉の場で,そ 俸額減額を実現しようと企図し,数年にわたり同組合との団体交渉を継続して 行っていたものであるが,団体交渉が難航するや,平成24年9月4日付けの通知及び同月13日付けの団体交渉の場で,それまでの被告提案(平成23年3月1日付け提案を含む。)を突如として撤回し,従来の勤務延長教員の勤務延長区分を廃止して勤務延長者の年俸額を一律に480万円に減額することを初めて教職員組合に対して通知し,同年10月2日,平成25年度に定年年齢に達する教員らに対し,本件内規変更により勤務延長教員の年俸額を一律に上記額に減額することを決定したとして,今後予定する本件内規変更の具体的内容について通知するに至った(認定事実⑹ソ及びタ)。そして,上記認定事実をみても,原告らの年俸額を大幅にする根拠や本件内規変更の具体的な内容について,被告が教職員に対して十分な説明を行ったとは認められない(被告は,上記各通知に先立って「世間並み」,「他の大学並み」などいう表現を用いて予想し得る減額幅について説明していたとも主張するが,そのような説明内容では,具体的な本件内規変更による年俸額の減額の程度が明確ではなく,十分な説明がなされていたものと評価することは到底できない。)。 このような交渉の経緯に鑑みれば,従前の提案内容を突然覆し,新たな労働条件,しかも,それまでの提案額をはるかに下回る額へと減額することを内容とする提案を行った被告としては,新たな当該提案の内容が当時の本件大学の経営状況に照らして合理的であることや,勤務延長者の年俸額を480万円まで大幅に減額することの具体的根拠などについて説明する必要があったというべきである。しかし,被告が,このような説明を行ったとは認められず,しかも,教職員組合に新たな提案を行ってから1か月も経たないうちに,平成25年度に 体的根拠などについて説明する必要があったというべきである。しかし,被告が,このような説明を行ったとは認められず,しかも,教職員組合に新たな提案を行ってから1か月も経たないうちに,平成25年度に定年年齢に達する教員らに対し,上記提案の内容が決定事項であるとして通知した以上,本件内規変更に至る労働組合との交渉が適切かつ 十分に行われたものとはいい難い。 これに対し,被告は,教職員組合が誠実に交渉しようとしなかったために,勤務延長者の年俸額減額に関する交渉が遅々として進まず,これ以上団体交渉を継続しても意味がないと思われるに至ったことから,本件内規変更に及ばざるを得なかったと主張する。 しかし,既に平成19年において大幅な賃金減額を一度は甘受した原告らが,それから僅かの期間しか経過してないにもかかわらず,本件内規変更にあるような更なる大幅な減額を提案された際に難色を示すことも十分に理解できるところであり,その提案を容易に受け入れるのが困難であったことは上記⑶アのとおりであって,原告らが被告の提案を容易に受け入れようとしなかったからといって誠実に被告との団体交渉にり,本件内規変更の当時において,本件大学を運営する被告が,直ちに運営資金の調達に困難を生じたり,数年以内に破産する危機に瀕するほどに経営状況がひっ迫していたとはいえない。 そうすると,被告としては,教職員組合との交渉が難航した平成24年時点において,原告らの不利益に配慮して経過措置を講じるなどしつつ本件内規変更を行うことが十分に可能であったものといえる。 このような事情を考慮すると,本件内規変更が教職員組合の不誠実な対応によるものであり,これに応じた相当な方法で実施されたものということは困難であるから,被告の上記主張を採用することはでき このような事情を考慮すると,本件内規変更が教職員組合の不誠実な対応によるものであり,これに応じた相当な方法で実施されたものということは困難であるから,被告の上記主張を採用することはできない。 小括上記及びとおり,本件内規変更による勤務延長教職員の年俸額の減額に関し一定の必要性はあったと認められるものの,本件内規変更により原告らに賃金額の大幅かつ急激な減額という重大な不利益が生ずること,同変更に際して上記のような不利益の重大性に対応する代償措置あるいは経過措 置がとられていないこと,さらに,教職員組合との交渉が適切かつ十分なものではなかったこと等を総合考慮すると,本件内規変更は,そのような重大な不利益を原告らに対して法的に受忍させることもやむを得ない高度の必要性に基づく合理的なものであったと解することはできないから,無効であるといわざるを得ない。 6 本件内規変更を一部無効とする判断の可否(争点5)について被告は,仮に本件内規変更が全体として無効であるとしても,その一部について合理性を肯定することができるのであれば,裁判所は同変更の一部につき有効であると判断すべきである旨を主張することから,以下ではこの点について検討することとする。 ア使用者は,労働者と合意することなく,合理性ある就業規則の変更により労働者の不利益に労働条件を変更することができるところ(労働契約法9条,10条),当該変更に合理性が認められない場合には,当該就業規則の変更は無効とされる。 しかし,就業規則の変更による労働条件の集団的・統一的変更をめぐる紛争は,利益紛争としての実質を有するものであって,このことからすると,事案によっては,当該変更の一部分についてのみ合理性を認め,その効力を肯定することが事案の適切な解決 集団的・統一的変更をめぐる紛争は,利益紛争としての実質を有するものであって,このことからすると,事案によっては,当該変更の一部分についてのみ合理性を認め,その効力を肯定することが事案の適切な解決に資する場合もあると考えられるところであるから,就業規則の変更の一部分についてのみ合理性を承認して有効とし,他方,その余の部分について合理性を否定してその拘束力を否定する余地があることは否定できない。 もっとも,労働契約法は,労働契約の内容は,労働者及び使用者が対等な立場で自主的に交渉,合意することによって形成し,あるいは変更されるべきであるとの合意原則を前提にしているものと解され(労働契約法1条,3条1項参照),また,労働組合法は,労働者が使用者と対等の地位に立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させ,労働者 が,その労働条件について交渉するために自主的に労働組合を組織し,団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とするものであって,労働契約法と同様の立場をとるものと解される(労働組合法1条1項参照)。 このような労働契約法や労働組合法における基本原則に鑑みれば,労働契約の当事者ではない裁判所が裁量判断により変更後の就業規則の一部分につき合理性を承認して変更を有効とすることは,労働者・使用者間の交渉・合意により労働条件を決定するという通常の労働条件変更の在り方に反するものである。 イこのような点からすれば,就業規則の不利益変更は,その全体につき合理性・有効性を判断するのが原則であり,全体としては合理性を欠くものの,部分的に変更の合理性が承認できるとして当該部分のみを有効と認めることには慎重であるべきであり,これが 変更は,その全体につき合理性・有効性を判断するのが原則であり,全体としては合理性を欠くものの,部分的に変更の合理性が承認できるとして当該部分のみを有効と認めることには慎重であるべきであり,これが認められるためには,少なくとも,一部有効と判断される部分をもって労働者と使用者との間の新たな労働条件として労使間の法律関係を規律するものとすることが客観的に相当であると判断でき,かつ,それが当事者の合理的意思にも反するものではないと評価できることが必要であると解すべきである。 そこで,これを本件について検討する。 ア上記5のとおり,本件内規変更は,当該変更に係る必要性こそ認められるとしても,原告らに重大な不利益が生じるにもかかわらず,何らの代償措置や経過措置も講じられていないこと,さらには,教職員組合等に対する説明が不十分である点において,相当なものとはいえず,合理性を欠くものというべきである。 本件内規変更の合理性が上記のような理由に基づき否定されることをも考慮すると,本件内規変更が部分的にその有効性を肯定される方法として は,原告らの年俸の減額幅を減少させ,本件内規変更が原告らに与える不利益の程度を緩和するという手法のほか,いわゆる激変緩和措置を講じて原告らの年俸減額幅を徐々に引き下げる手法等,複数の選択肢が考えられるところであって,このうちいずれの方法を採用するべきかについては,上記⑴アのとおり,基本的には労働者・労働組合と使用者との間の自主的な交渉に委ねられ,そのような交渉において諸般の事情を考慮して決定されるべき事項である。 このような事情からすると,本件において,本件内規変更が部分的に合理性を承認し得るものであったとしても,一部有効とする部分を労使間の法律関係を規律するのに相当なものとして特定するための客観的 る。 このような事情からすると,本件において,本件内規変更が部分的に合理性を承認し得るものであったとしても,一部有効とする部分を労使間の法律関係を規律するのに相当なものとして特定するための客観的基準は存在しないといわざるを得ない。 イこれに対し,被告は,仮に本件内規変更が全体として合理性を欠くものであったとしても,被告の平成23年3月1日付け提案に係る労働条件は,勤務延長者の年俸額引下げについて激変緩和措置を講じた合理的なものであり,教職員組合の執行役員らもここで提示された労働条件の一部につき容認していたのであるから,当該提案に係る労働条件こそが本件内規変更の部分的有効を判断する客観的指標足り得るものである旨を主張する。 しかし,被告の上記提案内容は,労使交渉において提示された一つの提案にすぎず,また,仮に当該提案内容につき教職員組合の執行役員らが一部容認するかのような言動をとっていたという事情が認められるとしても,それは,最終的に上記提案内容を受け入れたというものではなく,交渉過程における一つのやり取りにすぎないから,教職員組合の執行役員らの上記言動をもって,同執行役員らが被告の上記提案に一度は同意したと評価することはできないというべきである。 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 小括 以上より,少なくとも,本件においては,裁判所が本件内規変更の一部につき効力を認めることは相当ではないから,結局,本件内規変更は全体として無効である。 7 未払賃金に係る遅延損害金利率についての賃確法適用の有無(争点6)についてこれまで認定した事実関係及び検討した結果によれば,本件内規変更は,結果的に,原告らに対して大幅な賃金減額という重大な不利益を法的に受忍させることもやむを得ない高度の必要 有無(争点6)についてこれまで認定した事実関係及び検討した結果によれば,本件内規変更は,結果的に,原告らに対して大幅な賃金減額という重大な不利益を法的に受忍させることもやむを得ない高度の必要性に基づく合理的なものであったと解することはできず,無効であるが,他方,本件内規変更の時点において,本件大学が人件費の削減による経営再建を図るべき状況にあり,勤務延長者の年俸額の減額によりこれを行うことの一定の必要性は肯定されることに照らすと,被告が本件内規変更を有効であると主張して争い,原告らに対して旧内規により定められる年俸額との差額を支払わなかったことについては「支払が遅延している賃金の全部又は一部の存否に関する事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っている」(賃確法6条2項,同法施行規則6条4号)場合に該当するというべきである。 したがって,被告が原告らに対して負う未払賃金債務に係る遅延損害金の利率は,賃確法6条1項による年14.6分ではなく,民法所定の年5分の割合によるべきである。 8 本件内規変更に係る被告の不法行為の成否及び原告らの損害(争点7)について上記7で述べたところに加え,被告は,平成21年8月3日に勤務延長者の年俸額減額について教職員組合に対して提案を行い,その後,平成24年10月18日に至るまでの間は,同組合との団体交渉により労働条件の変更を行おうと交渉を継続していたこと等に鑑みると,本件内規変更が社会通念上著しく相当性を欠くものとして原告らに対する不法行為を構成するということはでき ない。 したがって,本件内規変更は不法行為に当たらないから,原告らの慰謝料請求は認められない。 9 将来の賃金請求の可否原告L,原告M及び原告Nは,本判決確定後についても毎月の賃金の支払を求 。 したがって,本件内規変更は不法行為に当たらないから,原告らの慰謝料請求は認められない。 9 将来の賃金請求の可否原告L,原告M及び原告Nは,本判決確定後についても毎月の賃金の支払を求めるものと解されるが,将来の賃金を請求する場合には,本判決の確定後も,被告が,労務の提供の受領を拒否し,旧内規の定める賃金額と本件内規変更による減額後の賃金額との差額の賃金請求権の存在を争うなどの特段の事情が認められない限り,賃金請求のうち判決確定後に係る部分については,「あらかじめ請求をする必要がある場合」(民事訴訟法135条)に当たらないと解すべきである。 これを本件についてみると,本件においては上記特段の事情を認めることはできないから,原告L,原告M及び原告Nの本訴請求のうち本判決確定後の賃金請求の支払を求める部分は,「あらかじめ請求をする必要がある場合」に当たるということはできず,不適法である。 第4 結論よって,原告らの本訴請求については,旧内規に基づき,別紙1(原告ら支払期日一覧表)の「請求金額」欄記載の未払賃金及びこれらに対する各月分賃金の支払期日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金,原告J及び原告Kの平成28年10月21日から平成29年3月21日まで毎月21日限り43万円及び各月分賃金の支払期日の翌日から上記割合による遅延損害金並びに原告L,原告M及び原告Nの平成28年10月から本判決確定の日まで毎月21日限り43万円の賃金及び各月分賃金の支払期日の翌日から上記割合による遅延損害金の支払を求める限度でいずれも理由があるから認容し,原告L,原告M及び原告Nの本件本訴のうち本判決確定の日の翌日から毎月21日限り4 3万円の支払を求める部分は不適法であるから却下し,その余の請求はいずれも理由がないか があるから認容し,原告L,原告M及び原告Nの本件本訴のうち本判決確定の日の翌日から毎月21日限り4 3万円の支払を求める部分は不適法であるから却下し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却し,被告の本件反訴については,原告C,原告I,原告F,原告H,原告G,原告B,原告A,原告D及び原告Eに対する訴えはいずれも不適法であるから却下し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官湯川浩昭 裁判官井上直樹 裁判官遊間洋行 (別紙当事者目録,別紙1原告ら支払期日一覧表及び別紙2生年月日等一覧表は添付省略)

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