判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 栃木県収用委員会が平成12年8月28日付けでした別紙裁決目録記載1の権利取得裁決(栃収平成11年第1号)のうち,原告Aに対する損失補償金額に関する部分を,合計2億4825万5803円と変更する。 2 栃木県収用委員会が同日付けでした同目録記載2の権利取得裁決(栃収平成11年第2号)のうち,原告Aに対する損失補償金額に関する部分を合計1億3888万2329円と,同Bに対する損失補償金額に関する部分を合計5360万9166円と,同有限会社Cに対する損失補償金額に関する部分を合計2億5013万4919円と,各変更する。 3 栃木県収用委員会が同日付けでした同目録記載3の権利取得裁決(栃収平成11年第3号)のうち,原告Bに対する損失補償金額に関する部分を,合計1億1306万1593円と変更する。 4 栃木県収用委員会が同日付けでした同目録記載4の権利取得裁決(栃収平成11年第4号)のうち,原告Bに対する損失補償金額に関する部分を合計2億2362万9102円と,同有限会社Dに対する損失補償金額に関する部分を合計1億9794万3742円と,同有限会社Eに対する損失補償金額に関する部分を合計3201万7946円と,各変更する。 5 被告は,原告Aに対し,2億4068万1975円及びこれに対する平成12年10月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は,原告Bに対し,2億8017万9300円及びこれに対する平成12年10月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は,原告有限会社Cに対し,7740万円及び え。 6 被告は,原告Bに対し,2億8017万9300円及びこれに対する平成12年10月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は,原告有限会社Cに対し,7740万円及びこれに対する平成12年10月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告は,原告有限会社Dに対し,1億6022万4000円及びこれに対する平成12年10月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 被告は,原告有限会社Eに対し,3000万円及びこれに対する平成12年10月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,栃木県収用委員会による別紙裁決目録記載1ないし4の各裁決(以下,それぞれ「本件裁決1」ないし「本件裁決4」といい,一括して「本件各裁決」という。)における土地所有者ないし関係人である原告らが,本件各裁決で定められた損失補償金額は,収用による残地の地価の下落や営業上の損失を考慮せずに算出されたものであり,相当な金額ではないと主張して,起業者である被告に対し,土地収用法(以下「法」という。)に基づき,本件各裁決のうち損失補償金額に関する部分を上記第1の1ないし4のとおり相当な補償金額に変更すること,並びにかかる相当な補償金額の各原告ごとの合計額から既払額を差し引いた残額及びこれらに対する本件各裁決において権利取得の時期として定められた日の翌日から各支払済みまでの遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠を摘示しない事実は,当事者間に争いがない。)(1)ア原告A(以下「原告A」という。)は,昭和53年12月23日,別紙物件目録記載1ないし4の各土地(ただし,いずれも平成11年5月27日付け分筆の前のもの。以下,同目録記載の番号に従っ (1)ア原告A(以下「原告A」という。)は,昭和53年12月23日,別紙物件目録記載1ないし4の各土地(ただし,いずれも平成11年5月27日付け分筆の前のもの。以下,同目録記載の番号に従って「本件従前地1」ないし「本件従前地4」という。)を相続により取得し,以後これらを所有している(甲5ないし8)。 イ原告B(以下「原告B」という。)も,昭和53年12月23日,同目録記載5ないし8の各土地(ただし,いずれも平成11年5月27日付け分筆の前のもの。以下,同目録記載の番号に従って「本件従前地5」ないし「本件従前地8」という。)を相続により取得し,以後これらを所有している(甲9ないし12)。 原告Bは,本件各裁決以前から,本件従前地6を有限会社Oに賃貸していた。 同社はこれを有限会社Pに転貸し,同社はこれを,その隣地において経営しているカラオケ店舗(以下「本件カラオケ店舗」という。)の駐車場として使用していた。 ウ原告有限会社C(以下「原告C」という。)は,倉庫業等を目的とする会社である。同社は,本件各裁決以前から,本件従前地3ないし5の借地権を有し,その上に同目録記載9の建物(附属建物も含めて倉庫2棟。以下「本件各倉庫」という。)を所有し(甲13),これらを賃貸業に供していた。 エ原告有限会社D(以下「原告D」という。)は,不動産賃貸業を目的とする会社である。同社は,本件各裁決以前から,本件従前地7及び8の借地権を有し,その上に,同目録記載10の建物(8階建てのマンション「Qハイツ」。以下「本件マンション」という。)を所有するとともに(甲14),これに含まれる3DKの部屋22室,2DKの部屋11室及び貸店舗3戸を賃貸業に供していた。 オ原告有限会社E(以下「原告E」という。)は,生鮮食料品,総合食料 。)を所有するとともに(甲14),これに含まれる3DKの部屋22室,2DKの部屋11室及び貸店舗3戸を賃貸業に供していた。 オ原告有限会社E(以下「原告E」という。)は,生鮮食料品,総合食料品の販売等を目的とする会社であり,本件各裁決以前から,本件マンションの1階の一部を賃借し,同所においていわゆるコンビニエンスストアを経営していた(甲4,原告A)。 (2) 被告は,いわゆる県道鹿沼環状線(栃木県鹿沼市a内の県道板荷玉田線との交差点を起点とし,同市b内の国道293号線及び国道352号線との交差点を終点とする,延長6225メートルの路線)のうち,栃木県鹿沼市c地内の鹿沼市道1259号線交差部を起点とし,JR日光線前原踏切(以下「本件踏切」という。)を通り,同市d地内の鹿沼市道326号線交差部を終点とする部分(延長536メートル)について,既存の道路(幅員約11メートル)を拡幅の上,本件踏切の線路を跨ぐ高架橋道(高さ約7メートル)を設置して立体交差させ,その両脇に側道(幅員約5メートル)を設置することを主たる内容とする事業(以下「本件事業」という。)を計画し,これに関して,平成10年3月31日付けで,法所定の事業の認定を受け,同日告示された(甲1,乙23の3)。 (3)被告は,平成11年3月23日,栃木県収用委員会(以下「本件委員会」という。)に対し,法に基づき,本件従前地1ないし8(以下,一括して「本件各従前地」という。)のうち,本件事業の施行のために必要となる部分について,権利取得裁決の申請及び明渡裁決の申立てをした。 本件各従前地について,同年5月27日付けで,それぞれ,上記申請にかかる部分(それぞれ別紙物件目録記載11ないし18の各土地となる。以下,番号順に「本件収用地1」ないし「本件収用地8」といい,一括 本件各従前地について,同年5月27日付けで,それぞれ,上記申請にかかる部分(それぞれ別紙物件目録記載11ないし18の各土地となる。以下,番号順に「本件収用地1」ないし「本件収用地8」といい,一括して「本件各収用地」という。 乙42ないし49)とその余の部分(それぞれ別紙物件目録記載1ないし8の各土地の現況となる。以下,同目録記載の番号に従って「本件残地1」ないし「本件残地8」といい,一括して「本件各残地」という。)とに分筆する旨の登記がされた。 なお,本件事業の対象地,本件各従前地及び本件各収用地の大まかな位置関係は,別紙地形図のとおりである(乙14)。本件従前地3ないし5においては,本件各倉庫の底地の一部が,本件従前地6においては,本件カラオケ店舗の駐車場の一部が,本件従前地7及び8においては,本件マンションの住戸用駐車場のうち8台分(従来は全部で33台分あった。)及び店舗用駐車場の全部が,それぞれ収用対象となる(原告A)。本件各従前地は,いずれも幅員約11メートルの道路に平面的に面していたが,本件事業が施行された場合の本件各残地は,いずれも幅員約5メートルの側道に面し,かつ,この側道をはさんで高架橋道に面することとなる。 (4) 本件委員会は,上記の各申請及び各申立てについて,平成12年8月28日付けで,本件各収用地すべての収用を認める本件各裁決及びこれに伴う明渡裁決をした(甲1ないし4)。 本件各裁決においては,権利取得の時期はいずれも同年10月13日とされた。 各裁決における各人に対する補償金総額は,それぞれ以下のとおり算定された。 ア本件裁決1における原告Aに対する補償金総額本件収用地1及び2の1平方メートル当たりの価格に各面積を乗じ,これに,事業認定時から土地収用法46条の4第1項所定の支 算定された。 ア本件裁決1における原告Aに対する補償金総額本件収用地1及び2の1平方メートル当たりの価格に各面積を乗じ,これに,事業認定時から土地収用法46条の4第1項所定の支払期限までの修正率を乗じて,土地所有権に対する補償金の総額を6849万9172円と算定した。 また,本件収用地1及び2についての,建物移転料,工作物移転料,立竹木補償料,動産移転料,仮住居補償及び移転雑費の合計額を,3439万0836円と算定した。 以上を合計し,補償金総額を1億0289万0008円と算定した。 イ本件裁決2における原告Aに対する補償金総額本件収用地3及び4の1平方メートル当たりの価格に各面積を乗じ,そこから,各収用地に設定されている借地権の価格を差し引き,これに,事業認定時から土地収用法46条の4第1項所定の支払期限までの修正率を乗じて,土地所有権に対する補償金の総額を4356万6149円と算定した。 ウ本件裁決2ないし4における原告Bに対する補償金総額いずれにおいても,当該各収用地の1平方メートル当たりの価格にその面積を乗じ,そこから,各収用地に設定されている借地権(本件裁決3においては転借地権も含む。)の価格を差し引き,それに,事業認定時から土地収用法46条の4第1項所定の支払期限までの修正率を乗じて,土地所有権に対する補償金の総額を,順に1671万3846円,4672万6973円及び4667万9742円と算定した。 エ本件裁決2における原告Cに対する補償金総額本件収用地3ないし5の1平方メートル当たりの借地権価格に各面積を乗じ,これに,事業認定時から本件裁決2の日までの修正率を乗じて,借地権に対する補償金の総額を4091万3197円と算定した。 本件収用地3ないし5の1平方メートル当たりの借地権価格に各面積を乗じ,これに,事業認定時から本件裁決2の日までの修正率を乗じて,借地権に対する補償金の総額を4091万3197円と算定した。 また,本件収用地3ないし5についての,建物移転料を1億0815万7140円,工作物移転料を412万6600円,立竹木補償料を162万7000円,移転雑費を513万3900円,家賃減収補償を135万1350円,家賃欠収補償を1142万5732円と算定した。 以上を合計し,補償金総額を1億7273万4919円と算定した。 なお,上記建物移転料は,本件各倉庫をすべて本件残地3ないし5内に再築することは建ぺい率との関係で困難であるため,そのうち1棟及びこれに関連するコンクリートブロック造平家建倉庫を本件残地3ないし5内に再築し,もう1棟及びこれに関連する木造平家建事務所を他の土地に再築することを前提とする費用額である。上記家賃減収補償は,1棟を本件残地3ないし5に再築する工事期間中に家賃減収が生じるため,110日分の家賃収入の額として算定したものである。上記家賃欠収補償は,本件各裁決以前に,本件各倉庫の借主2社が,本件の収用との関係で事前に退去し,それにともない家賃の欠収が生じたため,各退去の月から本件裁決2の月までの実質家賃収入の合計額として算定したものである。 オ本件裁決4における原告Dに対する補償金総額本件収用地7及び8の1平方メートル当たりの借地権価格に各面積を乗じ,これに,事業認定時から本件裁決4の日までの修正率を乗じて,借地権に対する補償金の総額を3168万2442円と算定した。 また,本件収用地7及び8についての,工作物移転料及び立竹木補償料の合計額を,603万7300円と算定した。 正率を乗じて,借地権に対する補償金の総額を3168万2442円と算定した。 また,本件収用地7及び8についての,工作物移転料及び立竹木補償料の合計額を,603万7300円と算定した。 以上を合計し,補償金総額を3771万9742円と算定した。 カ本件裁決4における原告Eに対する補償金総額自動販売機6台の移転に伴う営業補償費の額を201万7946円と算定した。 (5) 本件各裁決において定められた損失補償金額に相当する金員は,現在までにすべて各原告に支払われた。 (6) 原告らは,同年11月13日,本件訴えを提起した。 2 争点及びこれに対する当事者の主張(1) 本件各収用地の収用により,本件各残地について,法74条1項による補償を要する損失が生じるといえるか。仮に生じるといえる場合,その相当な補償金額はいくらか。 (原告らの主張)本件各従前地は,幅員約11メートルの県道に面し,平面的な利用が可能であったところ,本件事業の施行により,本件各残地は,その面する道路が幅員約5メートルの測道となり,かつ立体的な構造となり,その利用には大きな制約が生じるから,その価格は下落する。このような事業による損失についても,法74条1項による補償の対象である「損失」に該当するというべきである。かかる影響は告示日において予見できるし,その損失額の算定も可能である。 本件事業による本件各残地の価格下落の率は50パーセントを下回らない。したがって,相当な補償金額は,本件各残地の1平方メートル当たりの価格(本件残地2につき12万9000円。その余の本件各残地につき13万2000円)の半額に各実測面積を乗じた額であり,本件残地1については2041万4460円,本件残地2については1億2495万13 (本件残地2につき12万9000円。その余の本件各残地につき13万2000円)の半額に各実測面積を乗じた額であり,本件残地1については2041万4460円,本件残地2については1億2495万1335円,本件残地3については4775万2900円,本件残地4については4752万1320円,本件残地5については3689万5320円,本件残地6については6633万4620円,本件残地7については4658万3460円,本件残地8については1億0996万5900円である。 (被告の主張)法74条1項が「土地の一部を収用し,又は使用することに因って」と規定するのみで,「収用又は使用される土地上の起業に因って」などとは規定していないこと,事業による損失は収用の対象となった者のほかに近傍の土地所有者も被るものであり,これを損失に含めるのは起業利益と収用損失との相殺を禁じた法90条の趣旨に反することなどからすれば,法74条1項所定の「損失」とは,収用による権利剥奪又は制限に起因する損失を意味し,収用の目的である事業の施行の結果生じる損失すなわち事業損失は含まないというべきである。原告A及び原告Bは起業による残地の価値の下落を主張しているのであるから,その損失は事業損失にあたり,同条1項の「損失」には該当しない。 仮に事業損失が損失補償の対象になるとしても,本件事業の結果本件各残地に生じる不利な要素は,わずかに交通上の利用面における不便さであり,土地利用そのものの面にはほとんど現れず,他方,本件事業の施行には,本件踏切による交通遮断の解消,本件踏切で車両が一時停止することによる排気ガスの減少,同車両の発進後の低速度走行によるエンジン音,振動などの減少,踏切事故防止態勢の確立など,付近一帯の環境を向上させる有利な要素もあるのであり,こ 件踏切で車両が一時停止することによる排気ガスの減少,同車両の発進後の低速度走行によるエンジン音,振動などの減少,踏切事故防止態勢の確立など,付近一帯の環境を向上させる有利な要素もあるのであり,これらを総合的に考慮すれば,本件事業の施行により本件各残地の交換価値・利用価値はむしろ高まると考えられるから,本件各残地に損失は発生していないというべきである。 (2) 本件収用地3ないし5の収用により,原告Cの営業に関して,法88条による補償を要する損失が生じるといえるか。生じるとして,その相当な補償金額はいくらか。 (原告らの主張)本件収用地3ないし5の収用により,本件各倉庫のうち1棟を残地に移転し,もう1棟を別の土地に移転させることを余儀なくされる。本件残地3ないし5に接面する道路も,幅員約5メートルの側道となり,進入できる車両にも制約を受ける。 本件各倉庫はその程度等からして今後15年程度は賃貸可能なものである。したがって,補償金額としては,別の土地に移転する1棟分の賃料月額43万円の15年間分,合計7740万円とするのが相当である。 (被告の主張)原告Cは,本件収用地3ないし5についての借地権価格の補償及び本件各倉庫の移転に関する補償を受けており,残地内に移転した倉庫及び他の土地に移転した倉庫をそれぞれ賃貸すれば損失は生じないのであるから,補償の必要はない。 (3) 本件収用地6の収用により,原告Bの営業に関して,法88条による補償を要する損失が生じるといえるか。生じるとして,その相当な補償金額はいくらか。 (原告らの主張)本件収用地6の収用により,本件カラオケ店舗の駐車場が減少し,立地条件も悪化するのであるから,本件従前地6の賃貸事業に関して,その解約ないし賃貸条件の低下による か。 (原告らの主張)本件収用地6の収用により,本件カラオケ店舗の駐車場が減少し,立地条件も悪化するのであるから,本件従前地6の賃貸事業に関して,その解約ないし賃貸条件の低下による損失が生じることは明らかである。 現に平成12年10月から,その地代を,従前の月額47万円から月額30万円に下げざるを得なくなった。補償金額としては,その差額である17万円の10年分,合計2040万円とするのが相当である。 (被告の主張)上記地代の値下げは賃貸面積の減少によるものであり,土地の減少については既に補償されているから,補償の必要はない。 (4) 本件収用地7及び8の収用により,原告Dの営業に関して,法88条による補償を要する損失が生じるといえるか。生じるとして,その相当な補償金額はいくらか。 (原告らの主張)本件収用地7及び8の収用により,本件マンションに関して,高架道路の下となること,行き止まりの側道にしか面しなくなること,交通に伴う騒音,高架に伴う日照障害,駐車場の減少・消滅などが生じ,入居者の減少や賃貸条件の低下による損失が生じることは明らかである。 現に,平成12年2月から,3DKの部屋22室の賃料については月額6万8000円から4万6000円に,2DKの部屋11室の賃料については月額6万3000円から4万1000円に,それぞれ値下げせざるを得なくなり,月額合計72万6000円の減収となった。1階部分の貸店舗3戸については,賃料月額合計29万円であったところ,3店舗すべてが撤退する意向である。補償金額としては,各部屋部分については入居率を75パーセントとして16年分で合計1億0454万4000円,店舗部分については16年分で合計5568万円,合わせて1億6022万4000円とする る。補償金額としては,各部屋部分については入居率を75パーセントとして16年分で合計1億0454万4000円,店舗部分については16年分で合計5568万円,合わせて1億6022万4000円とするのが相当である。 (被告の主張)本件収用及び本件事業により,本件マンションに受忍限度を超えるような日照被害は生じないこと,排気ガス・騒音等は従前よりも減少することが予想されること,側道に面することにより,従前よりも安全性が高くなり,マンションとしてはその方が好ましいとの評価も可能であることなどからして,本件収用が原因で本件マンションの賃料が下落するという根拠はなく,補償の必要はない。 (5) 本件収用地7及び8の収用により,原告Eの営業に関して,法88条による補償を要する損失が生じるといえるか。生じるとして,その相当な補償金額はいくらか。 (原告らの主張)原告Eは,本件収用により駐車場がなくなること及び立地条件が悪化することにより,店舗の移転等を考えざるを得ず,同移転に伴う損失が生じる。同店舗は,その場所からしても,駐車場を一体として利用できて初めて,コンビニエンスストアの営業という賃貸借の目的を達することが可能となる。また,従前は接面道路の両方向からの集客が可能であったところ,一方のしかも側道にのみ面する状態になれば,その営業に影響が生じることは明らかである。 相当な補償金額としては,3000万円とするのが相当である。 (被告の主張)被告は,原告Eに建物を賃貸している原告Dに対し,駐車場部分の借地権に対する損失の補償をしているから,原告Eは,原告Dに対して駐車場の確保を要求すべきである。また,被告は,原告Eに対し,店舗が面している道路の交通量を確保すべき義務を負っているわけではなく,同原告は 対する損失の補償をしているから,原告Eは,原告Dに対して駐車場の確保を要求すべきである。また,被告は,原告Eに対し,店舗が面している道路の交通量を確保すべき義務を負っているわけではなく,同原告は,被告が管理する道路に面して営業していたことにより反射的な利益を得ていたにすぎないから,本件事業によりかかる反射的利益が失われたとしても,補償の必要はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 上記争いのない事実等(1)及び(2)によれば,本件各収用地の収用及びその後の本件事業の施行により,本件各残地の接面道路が幅員約11メートルの県道本道から幅員約5メートルの側道に変わって,本件各残地は,高架橋道の脇の土地となり,したがって,本件各残地について価格を低下させる方向に働く要因が生じることが認められる。 (2)アしかしながら,証拠(甲1ないし4,23,乙3の1,4の1,5の1及び6の1,22,23の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,県道の両脇に設置される側道は高架下を東西に通ずる市道により互いに接続されること,高架橋道が設置されることにより,周辺の騒音,日照阻害等が飛躍的に増大するとまではいえないことに加えて,本件事業の施行により,本道の利用者数自体は増加する可能性が高く,また,本件踏切で一時停止する車両がなくなることによる排気ガスの減少,同車両の発進によるエンジン騒音などの減少,踏切事故の危険性の減少など,周辺地域の環境を向上させる要因も生じ得ること,本件各残地についても,本道との接面がなくなることにより住環境が向上する面もあることが認められる。 これらの事情をも総合すると,上記(1)の各要因の存在を前提としても,本件事業の施行により本件各残地の価格が低下することを肯認することは困難であるといわざるを 面もあることが認められる。 これらの事情をも総合すると,上記(1)の各要因の存在を前提としても,本件事業の施行により本件各残地の価格が低下することを肯認することは困難であるといわざるを得ない。 イこの点に関し,証拠(甲21ないし25,証人R)によれば,R不動産鑑定士は,本件各従前地の価格については,宅地部分を1平方メートル当たり13万2000円,農地部分を1平方メートル当たり12万9000円とする本件各裁決の認定を適正と認めるとともに,本件各従前地を含む地域はいわゆる商住混在地であったところ,本件事業の施行により,本件各残地を含む地域は商業的・業務的用途の混在する住宅地に移行するとし,これを前提として,本件各残地の周辺にある県道から離れた一般の住宅地に所在する宅地の取引事例3例(その地積は,順に158平方メートル,307平方メートル及び277平方メートルであり,1平方メートル当たりの取引価格は,順に5万8627円,5万7473円及び3万4253円である。)を採用し,これらに画地規模の相違を含めて地域格差等による補正を加えて比準価格7万3500円を算出し,また,同じく一般の住宅地に所在する土地の公示価格(その地積は216平方メートル,公示価格は1平方メートル当たり5万4800円である。)を採用し,これに環境条件等による補正を加えて規準価格7万3300円を算出し,これらをもとに,本件各裁決による収用後の本件各残地の価格について,宅地部分については1平方メートル当たり7万3300円,農地部分については1平方メートル当たり7万1863円と評価する鑑定評価書(甲23。以下「R鑑定」という。)を作成していることが認められる。 しかしながら,証拠(乙12,14,証人S)によれば,本件従前地の近隣地域は,概ね県道鹿沼環状線沿線に 63円と評価する鑑定評価書(甲23。以下「R鑑定」という。)を作成していることが認められる。 しかしながら,証拠(乙12,14,証人S)によれば,本件従前地の近隣地域は,概ね県道鹿沼環状線沿線に形成された近隣商業地域に属し,一部住宅地や農地も介在することが認められるところ,上記争いのない事実等(1)ないし(3),本件各収用地の鑑定評価を担当したS不動産鑑定士の意見(乙2,38,証人S)に鑑みると,本件事業の告示の日において,本件各残地を含む地域の性質につき,本件事業によって住宅地に移行する蓋然性が高いとまでは認め難く,少なくとも,R鑑定士が取引事例に基づく比準価格ないし公示価格に規準した価格を得るために採用した一般の住宅地とは,質的に異なるものとみるのが相当であるほか,R鑑定士自身,本件各残地を含む地域における標準的な画地の面積は2200平方メートルであると認めていることからしても,R鑑定が取引事例として採用した地積150ないし300平方メートル程度の土地とは質的に異なるものとみるほかない。そうすると,証拠(乙39)によれば,不動産鑑定評価基準(乙39)は,取引事例の選択について,原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係わるもので,地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものから選択すべきであるとしていることが認められるところ,R鑑定は,取引事例の選択に際し考慮すべき地域及び画地の規模の点において,適切さを欠いているというべきである。 更に,R鑑定は,上記アで説示したような本件各残地を含む地域の地価を上昇させる方向に働くと考えられる諸要因について,これらの要因によって具体的な価格が上昇するかどうかはまだ判断できないなどとして,その価格評価には一切反映させていない(甲2,証人R)が,同鑑定士が,本件各残地を 向に働くと考えられる諸要因について,これらの要因によって具体的な価格が上昇するかどうかはまだ判断できないなどとして,その価格評価には一切反映させていない(甲2,証人R)が,同鑑定士が,本件各残地を含む地域の性質に関しては,上記のとおり,本件事業によって住宅地へと移行することは十分予見できるとし,これをその具体的な評価額算定の基礎にしていることと比較すると,その全体的な均衡性にも少なからぬ疑問を抱かざるを得ない。 してみると,R鑑定は,その採用した鑑定手法において適切さを欠き,採用することができないといわざるを得ない。 (3) 以上によれば,仮に法74条1項所定の「損失」にいわゆる事業損失が含まれるとしても,本件各残地についてかかる損失の発生及びその数額を認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,本件各残地についての事業損失を理由とする原告A及び原告Bの請求は理由がない。 2 争点(2)について(1) 上記争いのない事実等(3)によれば,本件収用地3ないし5の収用及びその後の本件事業の施行により,本件各倉庫の一部が敷地外にはみ出すことになるのであるから,本件各倉庫の賃貸業を従前どおりの形態で続けることができなくなることは明らかである。 (2) しかしながら,本件各倉庫の規模(別紙物件目録記載9のとおり),形状(甲22,乙14,40,41)に鑑みれば,原告Cの倉庫賃貸業が,本件従前地3ないし5以外の場所では継続不可能であるような特殊なものであるとは認められず,代替地の確保が客観的にみて不可能であるとはいえない(実際に代替地が見つかっているか否かは,この判断を左右するものではない。)。その他本件全証拠を検討しても,本件収用地3ないし5の収用により,原告Cの倉庫賃貸業の継続が客観的にみて不可能になるとまでは認められない。 っているか否かは,この判断を左右するものではない。)。その他本件全証拠を検討しても,本件収用地3ないし5の収用により,原告Cの倉庫賃貸業の継続が客観的にみて不可能になるとまでは認められない。 また,証拠(甲2,乙40,41)及び弁論の全趣旨によれば,本件各倉庫がそれぞれ独立した利用形態となっており,分離も可能であること,本件各残地が面することとなる幅員約5メートルの側道は,大型貨物車の進入も可能なものであること,本件各倉庫のうちの1棟のみであれば,本件残地3ないし5内に再築したとしても建ぺい率の問題は生じないことが認められ,これらの事情に照らせば,原告Cの倉庫賃貸業の一部を本件残地3ないし5において継続することについても,客観的にみて不可能ではないと考えられる。 (3) 以上によれば,原告Cの本件各倉庫の賃貸業に関しては,本件裁決2において,本件収用地3ないし5の借地権に対する補償に加えて,本件各倉庫のうち1棟及びこれに関連する倉庫を本件残地3ないし5の敷地内に建て直す費用額,もう1棟及びこれに関連する建物を他の土地に再築する費用額,並びにその再築期間中に得べかりし賃料額が補償されることにより,必要な補償がされたものとみるほかない(なお,本件裁決2における本件収用地3ないし5の借地権価格,再築等の費用額及び得べかりし賃料額の認定自体に関しては,原告らから特段の主張立証はなく,弁論の全趣旨により相当なものと認められる。)。したがって,原告Cの請求は理由がない。 3 争点(3)について(1)上記争いのない事実等(3)によれば,本件収用地6の収用及びその後の本件事業の施行により,本件カラオケ店舗の駐車場の面積が減少することになり,また,同店舗の直接の接面道路の交通量も減少することになり,これらの変化が,原告Bの本件従 ,本件収用地6の収用及びその後の本件事業の施行により,本件カラオケ店舗の駐車場の面積が減少することになり,また,同店舗の直接の接面道路の交通量も減少することになり,これらの変化が,原告Bの本件従前地6にかかる賃貸業に一定の影響を及ぼすことは明らかである。 (2) しかしながら,まず,賃貸に供していた土地の全部又は一部の所有権を収用により喪失した場合に,その後その分に相応する賃料を得られなくなるのは当然のことであり,かかる損失は収用される土地の所有権喪失に対する補償によって填補されるべきものである。本件収用地6の収用による駐車場の面積の減少は,本件従前地6の面積の3分の1前後にとどまっており,その他本件全証拠によっても,本件収用地6の収用により,原告Bの上記賃貸業について,本件収用地6の所有権に対する補償では填補できない損失が生じることを認めるに足りない。 また,接面道路の変化に関しては,結局のところ,被告が旧来の県道を設置・管理することによりその周辺の土地の所有者である原告Bが反射的に享受していた利益の喪失にほかならず,同原告が被告に対して自動車通行量の確保について特定の権利を有するわけではないというべきところ,かかる反射的利益の喪失は,損失補償の対象にならないと解するのが相当である。 (3) 以上によれば,原告Bの本件従前地6にかかる賃貸業に関しては,本件裁決3において本件収用地6の所有権に対する補償がされることにより,必要な補償がされたものとみるほかない(なお,本件裁決3における本件収用地6の所有権価格の認定自体に関しては,原告らから特段の主張立証はなく,弁論の全趣旨により相当なものと認められる。)。したがって,本件収用地6に関する営業補償を理由とする原告Bの請求は理由がない。 4 争点(4)について(1) 原告らから特段の主張立証はなく,弁論の全趣旨により相当なものと認められる。)。したがって,本件収用地6に関する営業補償を理由とする原告Bの請求は理由がない。 4 争点(4)について(1) 上記争いのない事実等(3)によれば,本件収用地7及び8の収用及びその後の本件事業の施行により,本件マンションの駐車場のうち,住戸用は33台分(住戸数と同じ)から25台分に減少し,店舗用はすべてなくなるとともに,敷地全体として側道に接面し,これをはさんで高架橋道に面することになり,これらの変化が,原告Dの本件マンションにかかる賃貸業に一定の影響を及ぼすことは明らかである。 (2) しかしながら,まず,賃借使用していた土地についても,上記3(2)と同様に,その全部又は一部の賃借権を収用により喪失し,その後その分の使用利益を享受できなくなることによる損失は,収用される土地の賃借権喪失に対する補償によって填補されるべきものである。本件収用地7及び8に関しては,駐車場という利用形態に照らしても,その代替地の確保が客観的にみて不可能であるとまでは認められない。また,本件マンションの住戸部分の一部及び店舗部分を,駐車場のない住戸・店舗として賃貸に供することも,社会通念上不可能であるとは認められないし,その賃貸条件の低下による損失が,本件収用地7及び8の借地権に対する補償では填補できない程度に達するとは認められない。その他本件全証拠によっても,本件収用地7及び8の収用により,原告Dの上記賃貸業について,本件収用地7及び8の借地権に対する補償では填補できない損失が生じることを認めるに足りない。 接面道路の変化に関しては,上記3(2)と同様に,反射的利益の喪失にほかならず,損失補償の対象にならないと解するのが相当である。 高架橋道に面することに じることを認めるに足りない。 接面道路の変化に関しては,上記3(2)と同様に,反射的利益の喪失にほかならず,損失補償の対象にならないと解するのが相当である。 高架橋道に面することに関しては,上記1(2)アに認定のとおり,これにより周辺の騒音,日照阻害等が飛躍的に増大するとまではいえないこと,本件事業の施行により,本件踏切における列車の通過待ちの解消等による本道の利用者の増大,本件踏切で一時停止する車両がなくなることによる排気ガスの減少,同車両の発進によるエンジン騒音などの減少,踏切事故の危険性の減少など,周辺地域の環境を向上させる要因も生じ得ること,本道との接面がなくなることにより住環境が向上する面もあるのであり,その他本件全証拠によっても,本件マンションの賃貸業に関して,別途の補償措置を講じなければならないような具体的な損失を生じるものであるとまでは認めるに足りない。 (3) 以上によれば,原告Dの本件マンションにかかる賃貸業に関しては,本件裁決4において本件収用地7及び8の借地権に対する補償がされることにより,必要な補償がされたものとみるほかない(なお,本件裁決4における本件収用地7及び8の借地権価格の認定自体に関しては,同原告から特段の主張立証はなく,弁論の全趣旨により相当なものと認められる。)。したがって,原告Dの請求は理由がない。 5 争点(5)について(1) 法88条による補償を受けることができるのは,土地所有者及びその「関係人」に限られるところ,土地の収用における「関係人」とは,「当該土地に関して地上権,永小作権,地役権,採石権,質権,抵当権,使用貸借若しくは賃貸借による権利その他所有権以外の権利を有する者及びその土地にある物件に関して所有権その他の権利を有する者」に限られる(法8条3項)。 ,永小作権,地役権,採石権,質権,抵当権,使用貸借若しくは賃貸借による権利その他所有権以外の権利を有する者及びその土地にある物件に関して所有権その他の権利を有する者」に限られる(法8条3項)。 証拠(甲4,32)及び弁論の全趣旨によれば,原告Eは,原告Dから本件マンション1階の店舗部分を賃借していたにすぎず,その他本件全証拠によっても,原告Eが本件収用地7及び8について法8条3項所定の「権利」を有していたことを認めるに足りない。原告Eが原告Dから本件マンションの店舗部分を賃借するにあたって,その前面に駐車場があるということが重要な前提となっていたことは明らかであるが,そうであるからといって,法8条3項所定の「権利」を有するということにはならない(なお,付言するに,本件裁決4においては,本件収用地7及び8の借地権に対する補償の全部を原告Dに受けさせることとされているが,仮に,これに加えて原告Eにも,本件収用地7及び8についての独立の使用権原を有することを前提とする補償を受けさせるということになれば,それは,実質的にみて,被告に二重の負担を強いるに等しいと考えられる。被告の「原告Eは原告Dに対して駐車場の確保を要求すべきである」との主張も,以上の趣旨をいうものと解される。)。 (2) そうすると,結局,原告Eに関しては,本件収用地7及び8の収用について,上記争いのない事実等(4)カの自動販売機の移転に伴うもの(この点では「土地にある物件に関して所有権その他の権利を有する者」に該当すると考えられる。)以上に,法88条による補償を認める余地はないといわざるを得ない。したがって,原告Eの請求は理由がない。 6 以上の次第で,原告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判 はないといわざるを得ない。したがって,原告Eの請求は理由がない。 6 以上の次第で,原告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所第1民事部裁判長裁判官岩田眞裁判官有賀貞博裁判官秋吉信彦裁決目録 1 収用する土地の区域別紙物件目録記載11及び12の各土地原告Aに対する補償金総額 1億0289万0008円 2 収用する土地の区域同目録記載13,14及び15の各土地原告Aに対する補償金総額 4356万6149円原告Bに対する補償金総額 1671万3846円原告有限会社Cに対する補償金総額 1億7273万4919円 3 収用する土地の区域同目録記載16の土地原告Bに対する補償金総額 4672万6973円 4 収用する土地の区域同目録記載17及び18の各土地原告Bに対する補償金総額 4667万9742円原告有限会社Dに対する補償金総額 3771万9742円原告有限会社Eに対する補償金総額 201万7946円物件目録1ないし18 (省略)
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