昭和58(行ツ)27 国選弁護人報酬

裁判年月日・裁判所
昭和61年9月8日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 高松高等裁判所 昭和56(行コ)5
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人の負担とする。          理    由  上告人の上告理由について  原審の適法に確定するところによれば、(1) 高知簡

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判決文本文3,513 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告人の上告理由について原審の適法に確定するところによれば、(1) 高知簡易裁判所は、昭和五二年二月一四日同裁判所同年(ろ)第一三号窃盗被告事件の国選弁護人として高知弁護士会所属の弁護士である上告人を選任した上、その出頭の下に二回の公判期日を経て、同年三月二四日の第三回公判期日において判決の宣告を行つた、(2) 上告人は、右の国選弁護人として、同月一七日同裁判所に対し、日当一万五〇〇〇円、報酬五万九四〇五円(うち記録謄写料一二六五円)、合計七万四四〇五円を請求した、(3) これに対し、同裁判所は、同月二四日、刑事訴訟費用等に関する法律(以下「刑事費用法」という。)八条一項及び二項の規定に基づき、日当三八〇〇円、報酬二万二二六五円(うち記録謄写料一二六五円)、合計二万六〇六五円を支給する旨の決定(以下「本件支給決定」という。)をした、(4) 被上告人は、上告人が本件支給決定に係る日当及び報酬の受領を拒否したため、同年四月二〇日これを高知地方法務局に弁済供託した、というのである。 上告人の本訴請求は、国選弁護人は刑事訴訟法三八条二項の規定に基づき、客観的に定まつた適正な額の日当及び報酬を請求することができ、本件においてその額は上告人が高知簡易裁判所に請求した前記七万四四〇五円であるとして、被上告人に対しその支払を求めるものである。 思うに、憲法三七条三項は、刑事被告人に対し資格を有する弁護人を依頼する権利を保障するとともに、被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付するものとし、刑事訴訟法は、右の憲法上の保障を全うするため国選弁護- 1 -人の制度を設け、同法三八条一項及び刑事訴訟規則二九条一項は 被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付するものとし、刑事訴訟法は、右の憲法上の保障を全うするため国選弁護- 1 -人の制度を設け、同法三八条一項及び刑事訴訟規則二九条一項は、国選弁護人は弁護士の中から裁判長がこれを選任する旨規定している。かかる国選弁護人制度の趣旨並びに刑事訴訟法三八条一項及び刑事訴訟規則二九条一項の規定内容に照らせば、国選弁護人の選任は、裁判長が訴訟法によつて与えられた権限に基づき一方的に行う選任の意思表示によりその効力を生ずるものというべきであり、国選弁護人と国との間に委任等の契約関係の成立を認める余地はなく、国選弁護人の日当、報酬等の請求権の有無及びその額も、法律の定めるところによるものというべきである。 刑事訴訟法三八条二項は、国選弁護人は日当、報酬等を請求することができる旨規定するにとどまり、その具体的な支給要件、額等については何ら規定していないが、これらの点は他の法律で定められることを予定する趣旨であり、これを受けて刑事費用法八条一項及び二項は、国選弁護人に支給すべき日当の額は最高裁判所が定める額の範囲内において受訴裁判所が定める旨及び報酬の額は受訴裁判所が相当と認めるところによる旨を規定しているのである。そうすると、現行法の下においては、国選弁護人の請求し得る日当及び報酬の額は、あらかじめ客観的に定まつているというものではなく、受訴裁判所がその裁量により形成的に決定するところにゆだねられているものというべきであつて、国選弁護人は、受訴裁判所が決定した額の日当及び報酬を請求し得るにとどまるのであり(最高裁昭和二七年(オ)第四八三号同二九年八月二四日第三小法廷判決・民集八巻八号一五四九頁参照)、別訴を提起して右決定を覆すごときことも許されないものといわざるを得ない。以上の次第で、上告人 あり(最高裁昭和二七年(オ)第四八三号同二九年八月二四日第三小法廷判決・民集八巻八号一五四九頁参照)、別訴を提起して右決定を覆すごときことも許されないものといわざるを得ない。以上の次第で、上告人は本件支給決定に係る額の日当及び報酬を請求し得るにとどまるところ、右の日当及び報酬は既に弁済供託されているわけであるから、上告人の本訴請求は理由がないものというべきである。 所論は、国選弁護人が国に対し請求し得る報酬の額につき両者の間に争いが存するときは、公開法廷における対審及び判決によりこれを確定すべきところ、刑事被- 2 -告事件の受訴裁判所が一方的に右の額を決定するものとし、当該決定に不服のある者に対し民事裁判を受ける途も開いていない刑事費用法八条二項は憲法三二条及び八二条の規定に違反する、と主張する。しかしながら、憲法三二条及び八二条にいう裁判とは、現行法が裁判所の権限に属せしめている一切の事件につき裁判所が裁判の形式をもつてするすべての判断作用ないし法律行為を意味するものではなく、そのうち固有の司法権の作用に属するもの、すなわち、裁判所が当事者の意思にかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指し、裁判所が裁量権を行使して権利の具体的内容を形成する裁判は、固有の司法権の作用に属しない非訟事件の裁判であつて、憲法三二条及び八二条にいう裁判ではないというべく、したがつて、非訟事件の手続及び裁判に関する法律の規定について憲法三二条及び八二条違反の問題を生じないことは、既に当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(ク)第一〇九号同三五年七月六日大法廷決定・民集一四巻九号一六五七頁、昭和三六年(ク)第四一九号同四〇年六月三〇日大法廷決定・民集一九巻四号 ことは、既に当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(ク)第一〇九号同三五年七月六日大法廷決定・民集一四巻九号一六五七頁、昭和三六年(ク)第四一九号同四〇年六月三〇日大法廷決定・民集一九巻四号一〇八九頁、昭和三七年(ク)第二四三号同四〇年六月三〇日大法廷決定・民集一九巻四号一一一四頁、昭和三九年(ク)第一一四号同四一年三月二日大法廷決定・民集二〇巻三号三六〇頁、昭和三七年(ク)第六四号同四一年一二月二七日大法廷決定・民集二〇巻一〇号二二七九頁、昭和四一年(ク)第四〇二号同四五年六月二四日大法廷決定・民集二四巻六号六一〇頁、昭和四〇年(ク)第四六四号同四五年一二月一六日大法廷決定・民集二四巻一三号二〇九九頁参照)。刑事費用法八条二項の規定に基づき刑事被告事件の受訴裁判所が国選弁護人の報酬の額を決定する作用は、当該刑事被告事件の難易、当該国選弁護人の訴訟活動の状況、開廷回数等を総合的に考慮し、その裁量により右報酬の額を形成的に決定する作用であり、その性質は本質的に非訟事件であるから、これを公開の法廷における対審及び判決によつてす- 3 -る必要はなく、また、国選弁護人は右決定を離れてあらかじめ客観的に定まつた額の報酬請求権を有するものではないから、右決定を不服とする者に対し別訴の提起を認め、公開の法廷における対審及び判決により右報酬の額を最終的に確定するという途を設けることも必要ではない。このことは、前記の当裁判所の判例の趣旨に照らして明らかである。したがつて、右違憲の主張は失当である。 また、所論は、刑事費用法八条二頃は、国選弁護人の報酬の額の決定につき、報酬を支出すべき国を当事者として参加させず、当事者に告知・聴聞の機会を与えていないから、憲法三一条の規定に違反する、と主張する。しかしながら、右決定が国民の権利を剥奪・制限する の額の決定につき、報酬を支出すべき国を当事者として参加させず、当事者に告知・聴聞の機会を与えていないから、憲法三一条の規定に違反する、と主張する。しかしながら、右決定が国民の権利を剥奪・制限する性質のものでないことは前叙のとおりであるから、右決定が国民の権利を剥奪・制限するものであることを前提とする右違憲の主張は、その前提を欠く。 さらに、所論は、原判決は刑事訴訟法四一九条の規定の解釈を誤るものであると主張するが、判決の結論に影響を及ぼさない点につき原判決を非難するものにすぎない。 以上のとおりであるから、上告人の本訴請求は理由がないとした原審の判断は、結論においてこれを是認することができ、論旨はいずれも採用することができない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官藤島昭裁判官牧圭次裁判官島谷六郎裁判官香川保一裁判官林藤之輔- 4 -

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