主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(請求の趣旨)ア被告は,原告に対し,4950万3761円及びこれに対する平成14年7月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ訴訟費用は被告の負担とする。 ウ仮執行宣言 2 被告(請求の趣旨に対する答弁)ア本案前の答弁(ア) 本件訴えを却下する。 (イ) 訴訟費用は原告の負担とする。 イ本案の答弁(ア) 原告の請求を棄却する。 (イ) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の骨子本件は,原告が,県道改築工事等の起業者である被告に対し,平成14年6月18日に兵庫県収用委員会がした権利取得裁決及び明渡裁決における損失補償額が違法に低額であるとして,適正であるとする損失補償額と同裁決における損失補償額との差額金の支払を求めた事案である。 2 前提となる事実括弧内に証拠を記載したもの以外は,当事者間に争いがない。 (1) 当事者ア原告は,別紙物件目録1(1)及び(2)記載の土地(以下「分筆前の両土地」という。)を所有していた。 イ被告は,県道山南中線全体区間のうち,兵庫県多可郡a町b字c地内の延長209.0mの区間,及びa町d字e地内の延長212.5mの区間,並びにa町d字f地内の延長132.0mの区間における改築工事(以下「本件工事」という。)の起業者であり,平成13年9月6日,土地収用法の規定に基づく事業認定の告示を受けた。 (2) 裁決の申請被告は,平成14 .0mの区間における改築工事(以下「本件工事」という。)の起業者であり,平成13年9月6日,土地収用法の規定に基づく事業認定の告示を受けた。 (2) 裁決の申請被告は,平成14年1月25日,兵庫県収用委員会(以下「収用委員会」という。)に対し,本件工事に必要な道路敷地(分筆前の両土地の一部)について,土地収用法39条1項に基づく収用裁決の申請及び同法47条の2第3項に基づく明渡裁決の申立てをした。 (3) 補償金の支払被告は,原告から平成14年4月17日に土地収用法46条の2第1項に基づく補償金の支払請求を受けたため,同年5月21日,原告に対し,同法46条の4第1項に基づき,被告の見積もった補償金1223万3632円を支払った。 (4) 分筆前の両土地の分筆分筆前の両土地は,本件裁決手続開始決定を代位原因とする被告の申請に基づき,①別紙物件目録1(1)記載の土地(以下「元A番土地」という。)が同目録2(1)ア・イ記載の2筆に,②別紙物件目録1(2)記載の土地(以下「元B番土地」という。)が同目録2(2)アないしウ記載の3筆に,それぞれ分筆登記された(乙1)。 (5) 本件裁決収用委員会は,平成14年6月18日付けで,分筆前の両土地について,収用する土地とこれに対する損失補償額等を次のとおりと定めて,権利取得の時期及び明渡しの期限を同年7月18日とする権利取得裁決及び明渡裁決(以下,両裁決を「本件裁決」という。)をし,同裁決正本は,同月20日,原告に送達された(乙1)。 ア土地の収用元A番土地から別紙物件目録2(1)イ記載の土地(以下「収用地1」という。)を収用し,元B番土地から別紙物件目録2(2)イ記載の土地(以下「収用地2」という ア土地の収用元A番土地から別紙物件目録2(1)イ記載の土地(以下「収用地1」という。)を収用し,元B番土地から別紙物件目録2(2)イ記載の土地(以下「収用地2」という。)を収用する。以下,上記土地収用を「本件収用」という。 イ物件の収用別表第1記載のとおり,収用地2上に生育している真竹,立木を収用する。 ウ権利取得に係る損失の補償収用地1・2の権利取得に係る損失の補償は次のとおりであり,その詳細は別表第2の1記載のとおりである。 (ア) 収用地1・2の損失補償額a 収用地1(a) 単価 1㎡当たり1万4400円(b) 修正率 0.9910(c) 補償額 382万2755円b 収用地2(a) 単価 1㎡当たり1万1500円(b) 修正率 0.9910(c) 補償額 883万1832円(イ) 残地補償額a 残地1別紙物件目録2(2)ア記載の土地(以下「残地1」という。)についての残地補償はなし。 b 残地2別紙物件目録2(2)ウ記載の土地(以下「残地2」という。)についての残地補償は,次のとおりである。 (a) 単価 1㎡当たり4600円(b) 修正率 0.9910(c) 補償額 7万0426円(ウ) 補償金額a 上記(ア)(イ)の補償額合計 1272万4379円 (b) 修正率 0.9910(c) 補償額 7万0426円(ウ) 補償金額a 上記(ア)(イ)の補償額合計 1272万4379円b 被告既払額を支払期限時における価格に修正した額1223万1185円(修正率0.9998)c 補償金の残額 49万3194円エ明渡しに係る損失の補償(ア) 立木補償別表第2の2記載のとおり,収用地2上に生育している真竹,立木の損失補償金を92万1191円とする。 (イ) 残地工事費補償なし 3 争点本件の争点は,本件訴えの適法性と,収用地1・2の収用に伴う適正な補償額であり,具体的には次の4点である。 (1) 本件訴えの適法性(2) 収用地1・2の適正価格(3) 残地補償の要否,その金額(4) 残地工事費の補償の要否第3 当事者の主張 1 争点(1)(本件訴えの適法性)について(1) 被告の主張土地収用法133条に基づく損失補償に関する訴えは,少なくとも,裁決の一部取消しないし変更と,給付又は確認の請求を併合提起すべきものと考える。 ところが,本件訴えはこの裁決の一部取消しないし変更部分が請求の趣旨から欠落しており,本件訴えは不適法である。 (2) 原告の主張土地収用法133条の訴えは,収用に伴い発生する損失について憲法29条3項に基づき補償を求める訴訟であり,請求の趣旨に裁決の一部取消しないし変更を記載する必要はなく,裁決の補償額を増額した金額の給付を求める請求の趣旨でよい。よって, い発生する損失について憲法29条3項に基づき補償を求める訴訟であり,請求の趣旨に裁決の一部取消しないし変更を記載する必要はなく,裁決の補償額を増額した金額の給付を求める請求の趣旨でよい。よって,本件訴えは適法である。 2 争点(2)(土地の適正価格)について(1) 原告の主張収用地1・2の価格は,1坪当たり14万円(1㎡当たり4万2350円)とすべきである。その理由は,次のとおりである。 ア収用地1・2の価格は,地目にかかわらず,その利用価値によって判断されるべきものである。 収用地1・2は,地目が「田」又は「山林」であるが,北側に多数の住宅が存在し,近い将来,付近一帯が住宅地となる可能性が高いことから,宅地に準ずる程度の取引価格を有している。 イ収用地1・2から約200m離れた場所に位置する兵庫県多可郡a町d字gの宅地(以下「甲土地」という。)の販売価格は,1坪当たり14万円(1㎡当たり4万2350円)であった。 ウしたがって,収用地1・2については,上記イの価格を近傍地の価格として,これと同等の価格によった補償がされるべきである。 (2) 被告の主張本件裁決のとおり,収用地1の適正価格は1㎡当たり1万4400円,収用地2の適正価格は1㎡当たり1万1500円とするのが相当である。 3 争点(3)(残地補償)について(1) 原告の主張ア残地1について残地1は,北東辺のほぼ中央の地点から対面する西南辺の南方4分の3の地点から斜めに帯状に収用されているため,面積が収用前の半分に縮小され,形状も対面する一辺が他の半分になるなど,不整形となったために,利用価値が減少した。 以上の点からすれば の3の地点から斜めに帯状に収用されているため,面積が収用前の半分に縮小され,形状も対面する一辺が他の半分になるなど,不整形となったために,利用価値が減少した。 以上の点からすれば,残地1は,本件収用によって30%の減価が生じたというべきであるイ残地2について残地2は,面積が収用前の1%にも満たない過小地であり,形状も不整形であって,利用価値が無に等しい。 以上の点からすれば,残地1は,本件収用によって90%の減価が生じたというべきである。 (2) 被告の主張ア残地1について残地1は,面積が比較的広く,道路との接面も確保されており,形状もほぼ整形であることからして,本件収用によって減価が生じたとは認められない。 イ残地2について本件収用によって生じた残地2の減価率は,本件裁決のとおり,40%(減価相当価格1㎡当たり4600円)とするのが相当である。 4 争点(4)(残地工事費)について(1) 原告の主張本件収用によって,残地1・2側に高さ7mの柵を設置する必要があり,その工事費用550万円が補償されるべきである。その理由は,次のとおりである。 ア残地1・2について,第三者の進入や塵芥等の飛来の防止のためには,柵の設置が必要である。 イ残地1・2に柵を設置しなければ,台風等によって残地1・2の竹が道路側に曲がって折れるなどして,残地1・2の利用が著しく阻害され,道路の通行の障害にもなる。 (2) 被告の主張残地1・2は,現在竹林であり,柵を設置しなければ,現に供されている用途に従って利用することが著しく不都合となり,その機能が損なわれると の通行の障害にもなる。 (2) 被告の主張残地1・2は,現在竹林であり,柵を設置しなければ,現に供されている用途に従って利用することが著しく不都合となり,その機能が損なわれるとは認められない。 よって,残地1・2について,柵の設置のための工事費を補償する必要はない。 5 適正な補償額の計算(1) 原告の主張ア権利取得に係る損失の補償(ア) 収用地1・2に対する損失の補償額a 1坪当たりの補償額 14万円(争点(2))b 収用地1・2の面積合計 315.45坪(1042.84㎡)c 補償額(a×b) 4416万3000円(イ) 残地補償の金額a 残地1(a) 1坪当たりの補償額 14万円(争点(2))×30%(争点(3))(b) 残地1の面積 285.28坪(943.08㎡)(c) 補償額((a)×(b)) 1198万1760円b 残地2(a) 1坪当たりの補償額 14万円(争点(2))×90%(争点(3))(b) 残地2の面積 4.63坪(15.31㎡)(c) 補償額((a)×(b)) 58万3380円(ウ) 上記補償額の合計(5672万8140円)と裁決における認定額(1272万4379円)との差額 4400万3761円イ明渡しに係る補償額(残地工事費) 550万円(争点(4))ウまとめ 2万8140円)と裁決における認定額(1272万4379円)との差額 4400万3761円イ明渡しに係る補償額(残地工事費) 550万円(争点(4))ウまとめ以上によれば,適正な補償額と本件裁決における補償額との差額は,4950万3761円(前記ア(ウ)とイの合計額)である。 よって,原告は,被告に対し,上記差額金4950万3761円,及びこれに対する補償金の支払期限の翌日である平成14年7月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 被告の主張収用委員会がした補償額についての判断(別表第2の1・2記載のとおり)は相当であり,適正な補償額は,本件裁決によって確定された金額を超えるものではない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件訴えの適法性)の検討土地収用法は,権利取得裁決の時期までに裁決に係る補償金等の払渡し等があれば,収用の効果を発生させ,補償に不服がある者は,収用そのものの瑕疵についての争訟とは別に,起業者を被告として133条所定の損失補償に関する訴えを提起すべきものとしている。 そして,損失補償請求権は,収用等の補償原因事実が発生すれば,客観的に発生しているものであり,裁決は,損失補償額の見積額の提示にすぎず,土地収用法133条の立法趣旨からして,裁決の公定力は働かないものと解するのが相当である。それゆえ,土地収用法133条所定の損失補償請求の訴えは,判決主文で裁決の取消し,変更を掲げる必要はなく,客観的に発生している損失補償額と裁決で定められた補償額との差額金についての給付を命じれば足りると解する。 よって,本件訴えは適法であり,被告の本案前の抗弁は理由がない。 2 事実の認定 的に発生している損失補償額と裁決で定められた補償額との差額金についての給付を命じれば足りると解する。 よって,本件訴えは適法であり,被告の本案前の抗弁は理由がない。 2 事実の認定前記第2の2の前提事実に,証拠(甲2~4,乙1~6〔各枝番を含む。〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 分筆前の両土地の状況等ア分筆前の両土地分筆前の両土地は,JR線Z駅の南西方に道路距離で約8㎞(直線距離で約6㎞)に位置し,同土地を含む周辺地域は,農家住宅が散在する地域である(別紙図面1参照)。 分筆前の両土地は,いずれも,宅地造成が行われておらず,上下水道等の公共施設も未接続の状態にある。近隣地域及びその周辺地域は,今後は,周辺基盤整備に併せて,徐々にではあるが宅地化が進展していくものと思われる。 イ元A番土地元A番土地は,地積1814.08㎡,間口約65m,奥行き約27mの長方形状の農地(現況畑)で,地勢は平坦であり,北側が幅員約5mの舗装町道に,西側が約3.5mの未舗装道路に約0.5ないし0.8m低く接面する角地であった(別紙図面2参照)。 ウ元B番土地元B番土地は,地積1733.35㎡,間口約49m,奥行き約36ないし41mの不整形な竹林地で,地勢はほぼ平坦であり,南西側が幅員約3ないし3.5mの舗装町道に約2m低く,北東側が幅員約2.5ないし3.5mの未舗装道路に約0.5m低く接面する二方路地であった(別紙図面3参照)。 (2) 収用地1・2,残地1・2の形状等ア収用地1収用地1は,元A番土地から分筆された2筆のうちの1筆であり,地積は267.88㎡である(別紙図面2参照)。 イ収用地 用地1・2,残地1・2の形状等ア収用地1収用地1は,元A番土地から分筆された2筆のうちの1筆であり,地積は267.88㎡である(別紙図面2参照)。 イ収用地2,残地1・2収用地2は,元A番土地から分筆された3筆のうちの1筆であり,地積は774.96㎡である(別紙図面3参照)。 残地1は,地積が943.08㎡で,形状がほぼ整形であり,南西側で幅員約3.5mの舗装済町道に,北東側で幅員約3mの未舗装道路に接している。 残地2は,地積が15.31㎡で,間口約6m,奥行き約5mの不整形の土地である(別紙図面3参照)。 (3) 収用委員会の審理の状況等ア審理状況収用委員会は,平成14年2月26日,被告からの本件裁決申請についての審理を行い,その中で原告及び被告の双方から意見を聴取した。 イ本件各鑑定さらに,収用委員会は,2件の不動産鑑定業者に,不動産鑑定士による鑑定評価を依頼した。その鑑定評価の結果等は,次のとおりであった(以下「本件各鑑定」という。)。 (ア) C鑑定株式会社Cが行った鑑定の結果は,次のとおりである(乙3)。 a 収用地2の価格(a) まず,取引事例比較法(収用地2を含む近隣地域内に標準画地を設定し,類似地域内の取引事例の価格から比準価格を求める方法)に基づく比準価格,及び控除方式による価格(当該物件において戸建住宅地を想定し,その価格から造成工事等を控除して得た価格に熟成度修正を施して得た価格)等を次のとおり査定した。 ⅰ 取引事例比較法に基づく比準価格近隣地域及び同一需給圏内の類似 控除して得た価格に熟成度修正を施して得た価格)等を次のとおり査定した。 ⅰ 取引事例比較法に基づく比準価格近隣地域及び同一需給圏内の類似地域内に存する取引事例について投機性のない適切な事例を選択し,これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正・時点修正・建付減価修正・標準化補正を施し,さらに地域格差補正を行って標準画地の価格を算出した。その上で,取引事例4件のうち,事情補正率の大きい1事例を除いた3事例によるほぼ平均値である1万1500円(1㎡当たり)を比準価格とした。 ⅱ 控除方式による価格価格時点において収用地2を戸建住宅地として分譲販売することを想定し,その販売総額から造成工事費等を控除して素地価格を求め,これに熟成度修正を行って控除方式による価格を8500円(1㎡当たり)とした。 (b) そして,上記の各査定を再吟味し,依頼目的,近隣地域周辺の実情,不動産市場動向を総合的に勘案した結果,取引事例比較法に基づく比準価格を採用して,収用地1の更地価格を1万1500円(1㎡当たり)と査定した。 (c) さらに,鑑定の評価の手順の各段階における判断の適否,収用地2の市場性等について再検討した結果,上記価格を適正妥当と判断し,収用地2の鑑定評価額を1990万円(1㎡当たり1万1500円)と決定した。 b 収用地1の収用地2から比準した場合の格差率周辺市町における地目間格差,及び近畿地区用地対策連絡協議会土地分科会における研究成果,並びに収用地2が現況竹林を主体とする雑木林である現況に留意して,収用地1の収用地2から比準した場合の格差率を1.25 町における地目間格差,及び近畿地区用地対策連絡協議会土地分科会における研究成果,並びに収用地2が現況竹林を主体とする雑木林である現況に留意して,収用地1の収用地2から比準した場合の格差率を1.25と査定した。 c 残地2の収用地2に対する減価率残地2の収用地2に対する減価率を,36%(不整形補正75%,面積過少補正85%の相乗)と査定した。 (イ) D鑑定有限会社D事務所が行った鑑定の結果は,次のとおりである(乙4)。 a 収用地2の価格(a) まず,取引事例比較法による比準価格,及び地価公示価格等の基準を行って基準とすべき価格を次のとおり査定した。 ⅰ 収用地2の近隣地域及び同一需給圏内の類似地域における取引事例を収集し,そのうち適切な事例を選択し,これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正・時点修正・建付減価修正・標準化補正を施し,さらに地域格差補正を行って標準画地の価格を算出した。 その上で,取引事例3件のうち,事情補正率の大きい1事例も考慮し,他の2事例の試算価格を主に1万1200円(1㎡当たり)を比準価格とした。 ⅱ 地価公示標準地との規準規準とすべき価格を1万3200円とした。 (b) 上記の結果,規準価格との均衡及び土地の種別,地域格差を考慮し,収用地2の標準価格を1万1800円(1㎡当たり)と査定した。さらに,収用地2の個別的要因を査定して収用地2の価格を求め,これに単価と総額及び地元精通者の意見等を参酌した上,鑑定評価額を2045万円(1㎡当たり1万1800円)と決定した。 )と査定した。さらに,収用地2の個別的要因を査定して収用地2の価格を求め,これに単価と総額及び地元精通者の意見等を参酌した上,鑑定評価額を2045万円(1㎡当たり1万1800円)と決定した。 b 収用地1の収用地2から比準した場合の格差率周辺・地目別格差率,及び近畿地区用地対策連絡協議会土地分科会の研究成果,並びに収用地1・2の現況に留意して,収用地1の収用地2から比準した場合の格差率を1.25と査定した。 c 残地2の収用地2に対する減価率残地2の収用地2に対する減価率を,40%(不整形補正80%,面積過少補正75%の相乗)と査定した。 (4) 本件裁決の内容収用委員会は,本件裁決において,次のとおり判断した(乙1)。 ア収用地1・2の価格本件各鑑定の評価,収用地1・2の近傍類地の取引価格,及び収用委員会が現地について調査した収用地1・2の価格形成上の諸要因等を勘案した結果,事業認定時における収用地1の価格を1㎡当たり1万4400円,収用地2の価格を1㎡当たり1万1500円とするのが相当である。 イ残地2の減価相当価格本件各鑑定の評価,及び収用委員会が現地について調査した残地2の価格形成上の諸要因等を総合勘案した結果,本件収用によって,残地2に地積過少及び不整形の減価要因が生じると認められ,残地2の減価相当価格は,1㎡当たり4600円(1万1500円〔収用地2の1㎡当たり価格〕に減価率40%を乗じた金額)とするのが相当である。 ウ残地工事費残地1・2の現況は竹藪であり,残地1・2に柵を設置しなければ,現に供されている用途にしたがってこれらの土地を利用することが著しく不都合となり,その機能が 当である。 ウ残地工事費残地1・2の現況は竹藪であり,残地1・2に柵を設置しなければ,現に供されている用途にしたがってこれらの土地を利用することが著しく不都合となり,その機能が損なわれるとは認められず,補償は要しない。 3 適正な補償額の検討(1) 争点(2)(土地の適正価格)についてア当裁判所の判断前記2の認定事実によれば,収用委員会の徴した本件各鑑定は,不動産鑑定士が,取引事例比較法を基本に諸要素を考慮して吟味を重ねた上で適正評価額を求めたものであって,その評価手法は合理的なものであり,その評価過程にも特に疑問とすべき点は見当たらない。 そして,収用委員会は,本件各鑑定の結果と併せて,収用委員会が現地について調査した収用地1・2の価格形成上の諸要因等をも勘案して,収用地2が1㎡当たり1万1500円,収用地1が1㎡当たり1万4400円(収用地2との格差率1.25)と算定したものであり,その判断は相当なものということができる。 よって,本件事業認定時における収用地1・2の適正価格は,本件裁決のとおり,収用地1が1㎡当たり1万4400円,収用地2が1㎡当たり1万1500円であると認められる。 イ上記判断に反する原告主張の検討原告は,収用地1・2から約200m離れた場所にある甲土地の平成9年当時の販売価格が1坪当たり14万円(1㎡当たり4万2350円)であったこと(甲1の1)から,収用地1・2の適正価格もこれと同等に評価すべきである旨主張する。しかし,原告の上記主張は,次のとおり採用することができない。 (ア) 現況等の差異収用地1・2は,前記2の認定のとおり,その現況が畑や竹藪であり,接面道路よりも低い位置に する。しかし,原告の上記主張は,次のとおり採用することができない。 (ア) 現況等の差異収用地1・2は,前記2の認定のとおり,その現況が畑や竹藪であり,接面道路よりも低い位置に地盤があり,未だ宅地造成が行われておらず,上下水道等も未接続の状態であるのに対し,証拠(甲1の1,乙7の1~11)によれば,甲土地は,現況が宅地造成済みの更地の状態で,水道も引込み済みであることが認められる。 したがって,収用地1・2を宅地にするためには,地盤に土を盛り,宅地造成工事をする必要がある。また,収用地1・2は,上下水道などの公共施設が未接続であることから,上下水道及び電気の引込み等,多額の費用を要する工事をする必要がある。 それゆえ,収用地1・2と甲土地とでは,土地価格評価の重要な要素となる現況や施設的な条件が大きく異なっている。 (イ) 宅地化の可能性日本では,農地(農作物が収穫できる土地)よりも宅地(住宅を建築できる土地)の方が地価が著しく高額であることは,公知の事実である。 これを本件についてみるに,収用地1は,登記簿上の地目が田で,現況が畑であり,農業振興区域,農用地に指定されている(乙3・4)。したがって,収用地1は,ここ当分の間は,原則として農地法5条所定の宅地転用許可が認められない土地である。他方,甲土地は,宅地造成済みの分譲地であり(甲1の1・2),今すぐ直ちに地上に住宅を建築することが可能な土地である。 したがって,農地転用許可が認められず,住宅を建てることができない収用地1は,既に宅地に造成されており,直ちに住宅を建築することができる甲土地に比べて,地価が著しく低額であることは明らかである。 (ウ) 地域的条件の差異さらに,証拠 できない収用地1は,既に宅地に造成されており,直ちに住宅を建築することができる甲土地に比べて,地価が著しく低額であることは明らかである。 (ウ) 地域的条件の差異さらに,証拠(甲1の2,甲7の1,乙8)によれば,次のa,bの事実が認められ,収用地1・2と甲土地とは,地域的な条件も異なっているといえる。 a 収用地1・2と甲土地は川を挟んで所在しており,甲土地の方が収用地1・2よりも川の西方にある中町中心部に近い側に存していて,同中心部への近接度が甲土地の方が優れている(別紙図面1参照)。 b 収用地1・2の所在する地域は,農家住宅が散在する田園地域であるのに対し,甲土地は,住宅・商店などが収用地1・2に比べてはるかに密であって,甲土地は収用地1・2に比べて地域的条件がよい(別紙図面1参照)。 (エ) まとめ以上によれば,土地の現況,宅地化の可能性,地域的条件等の差異に照らし,甲土地の販売価格(1坪当たり14万円,1㎡当たり4万2350円)を,何らの補正をすることなく収用地1・2の適正価格として採用することは相当でなく,収用地1・2の適正価格が1坪当たり14万円(1㎡当たり4万2350円)とする原告の主張は失当である。 (2) 争点(3)(残地補償)についてア残地1について前記2の認定事実によれば,残地1は,面積が実測943.08㎡であり,残地1単独での宅地開発も十分可能な広さであること,舗装済町道等の道路との接面も従前と同様に確保されていること,また,形状についてもほぼ整形であることが認められ(別紙図面3参照),これらの点に照らすと,残地1が,収用前よりも劣化し,減価が生じているとは認められない。 したがって,残地1についての残 形状についてもほぼ整形であることが認められ(別紙図面3参照),これらの点に照らすと,残地1が,収用前よりも劣化し,減価が生じているとは認められない。 したがって,残地1についての残地補償金は認められない。 イ残地2について前記2の認定事実によれば,前記(1)アと同様,本件各鑑定における残地補償に関する算出方法もまた合理的であって,算出過程に疑問とすべき点は見当たらない。 そもそも,残地2(別紙図面3参照)の現況も竹藪であり,残地2の面積が15.31㎡になったからといって,竹藪としての利用価値が著しく減少したものとも思えない。 ところで,国や県等の公共事業施工者が,公共事業用地を取得する際に,近隣の土地価格に対して90%もの減価をする土地は,自由に使用・収益することができず,辛うじて処分権を有するにすぎない道路法による道路区域内の民有地のごとく,自由な利用が全く制限されている土地についてである(弁論の全趣旨)。それゆえ,そのような制限もない残地2の減価として,原告主張の90%は到底採用することができない。 そして,収用委員会は,本件各鑑定結果の中で原告に有利な減価率40%を採用したものであるから,本件裁決において算出された1㎡当たりの補償金額4600円(1万1500円〔収用地2の1㎡当たりの価格〕の40%)は,適正なものというべきである。 (3) 争点(4)(残地工事費)についてア原告は,土地収用法75条によるいわゆる残地工事費の補償として,残地1・2の柵の設置工事費550万円の補償を主張する。 イしかし,土地収用法75条は,残地を従前の用法に従って利用するために一定の工事が必要とされる費用の補償を定めたものである。そ ,残地1・2の柵の設置工事費550万円の補償を主張する。 イしかし,土地収用法75条は,残地を従前の用法に従って利用するために一定の工事が必要とされる費用の補償を定めたものである。そして,同条によって補償がなされる場合とは,工事をしなければ,客観的に残地が収用前に供されていた使途に従って利用することが著しく不都合となるような場合に,その機能回復を計るために行われるものであり,その著しい機能低下が,一団地の一部の収用を直接の原因とするものであることを要するというべきである。 ウこれを本件についてみるに,残地1・2の現況が竹藪であることに照らせば,宅地などとは異なり,第三者の侵入や塵芥等の飛来防止等のために柵を設置することが,残地1・2(竹藪)の利用の維持にとって不可欠なものとまではいい難いし,元798番13の土地の一部の収用を直接の原因として,残地1・2(竹藪)への第三者の進入や塵芥等の飛来による被害が著しく増加するともいえず,またそのことによって,従前どおり残地1・2を竹藪として利用することが著しく不都合となったとも認められない。 さらに,原告は,残地1・2に柵を設置しなければ,台風等によって竹が道路側に倒れるおそれがある旨主張するが,仮にこのような事態が生じるとしても,残地1・2の土地の機能自体を著しく低下させるものとは評価することができない。 エしたがって,残地1・2に柵の設置工事を行わなければ,残地1.2の利用が著しく不都合となるとは認められず,上記工事の費用を残地工事費として補償する必要はないというべきである。 よって,原告の残地工事費の請求も理由がない。 (4) 総括以上によれば,本件における適正な補償金額は,収用委員会が認定したとお する必要はないというべきである。 よって,原告の残地工事費の請求も理由がない。 (4) 総括以上によれば,本件における適正な補償金額は,収用委員会が認定したとおり,別表第2の1・2記載のとおりと認めるのが相当であり,本件裁決の認定額を上回るものとは認められない。 4 結論以上の次第で,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二裁判官今中秀雄裁判官五十嵐章裕
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