平成17(行ケ)10515 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年7月26日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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判決文本文54,825 文字)

- 1 -平成17年(行ケ)第10515号審決取消請求事件判決原告グンゼ株式会社訴訟代理人弁護士松本司,山形康郎,緒方雅子,弁理士橋本薫被告特許庁長官中嶋誠指定代理人山崎豊,粟津憲一,唐木以知良,田中敬規主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 本判決においては,書証等を引用する場合を含め,公用文の用字用語例に従って表記を変えた部分があり「バラツキ」は「ばらつき」に統一した。 ,第1原告の求めた裁判「特許庁が訂正2004-39208号事件について平成17年4月26日にした審決を取り消す」との判決。 。 第2事案の概要本件は,原告が,後掲の訂正審判請求について,審判請求不成立の審決を受けたため,同審決の取消しを求めた事案である。 特許庁における手続の経緯本件特許第3116143号「シームレスベルト」は,平成3年9月21日に特,(),,許出願され平成12年10月6日に特許権の設定登録がなされ甲2その後- 2 -,()。 その特許について特許異議の申立て異議2001-71477号がなされた異議申立てについて,平成15年3月17日「訂正を認める。特許,第3116143号の請求項1に係る特許を取り消す」との決定があり(なお,。 請求項2は訂正により削除されている,同年5月1日,原告はその取消訴訟を提。)起した(現在の事件番号は当庁平成17年(行ケ)10281号。 )原告は,その取消訴訟の係属中である平成15年8月21日,本件特許につき訂,,,,正審判の請求をしたがその後この請求は取り下げられ平成16年1月15日再度訂正審判の請求をしたが,その後,この請求も取り下げられた。 原告は平成16年8月30日本件特許につき三度目の訂正審判の請求をし 正審判の請求をしたがその後この請求は取り下げられ平成16年1月15日再度訂正審判の請求をしたが,その後,この請求も取り下げられた。 原告は平成16年8月30日本件特許につき三度目の訂正審判の請求をし以,,(下「本件訂正」という。訂正2004-39208号,甲3の1,2,平成16)年12月27日,手続補正書(以下「本件補正」という。甲5の1,2)が提出さ。 ,「。」()れた平成17年4月26日本件審判の請求は成り立たないとの審決甲1があり,その謄本は同年5月11日原告に送達された。 本件訂正発明(1)本件補正後の請求項1に記載された発明(下線部は補正箇所)。 「ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,且つ遠心成形法により得られる単層転写ベルトとして使用するシームレスベルトであって,該ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲で,且つ体積電気抵抗値の最大値が 最小値の1~10倍の範囲にあり,引張強度が導電性微粉末を含有しないシームレスベルトに比較して75%以上の値を有するものであり,遠心成形前の前記ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とからなる混合された液状原材料の粘度が50~4000cpであり,表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な単層転写ベルトとして使用することを特徴とするシームレスベルト」。 (2)本件補正前であり,本件訂正後の請求項1に記載された発明(以下「本件訂正発明」という。下線部は訂正箇所)。 - 3 -「ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,且つ遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルトであって,該ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲で,且つ体積電気抵抗値の最大値 が最 含有し,且つ遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルトであって,該ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲で,且つ体積電気抵抗値の最大値 が最小値の1~10倍の範囲にあり,引張強度が導電性微粉末を含有しないシームレスベルトに比較して75%以上の値を有するものであり,遠心成形前の前記ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とからなる混合された液状原材料の粘度が50~4000cpであり,表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能なことを特徴とするシームレスベルト」。 (3)本件訂正前の請求項1(本件特許公報(甲2)の明細書又は図面は,本件訂正前の明細書又は図面(以下「本件明細書」という)の内容と同一である)。 。 「ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,且つ遠心成形法により得られるシームレスベルトであって,ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω ・cmの範囲にあり,体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲にあることを特徴とするシームレスベルト」。 審決の理由の要点審決は,本件補正が審判請求書の要旨の変更に当たるので許されず,また,本件訂正は,特許請求の範囲を不明りょうとするものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものともいえず,独立特許要件も満たさないのであるから適法なものとはいえないと判断した。 (1)本件補正が審判請求書の要旨の変更に当たるかどうかについて審決は,以下のとおり,本件補正が審判請求書の要旨の変更に当たるとして,不適法であるとした。 「本件審判請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲についての訂正事項は,i「遠. 心成形法により得られるシームレスベルト」を「遠心成形法により得られる単層の転写ベル,」 適法であるとした。 「本件審判請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲についての訂正事項は,i「遠. 心成形法により得られるシームレスベルト」を「遠心成形法により得られる単層の転写ベル,」,. 「」トとして使用するシームレスベルトと限定する訂正事項とii文末のシームレスベルト- 4 -を「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能,なことを特徴とするシームレスベルト」と限定する訂正事項を含むものである。 そして,該訂正事項は,iについていえば,その「単層の」という語句が,構文上「転写ベルト「シームレスベルト」のいずれにも係り得るものであるので「他の層を伴う多層の)」,,(転写ベルト」に用いる「単層のシームレスベルト」を包含するとも「単層の転写ベルト」に,用いる「したがって単層の)シームレスベルト」のみを包含するとも,いずれにも解釈可能(なものである。 また,該訂正事項は,iiについていえば「シームレスベルト」を対象として,その電気的,性質を機能的に限定するだけのものであるのか「転写ベルトとして使用する」との記載を勘,案したとき,これが「転写ベルト」を使用態様について限定するものであって,この要件を,満たさない転写ベルトとしてのシームレスベルトの使用を排除するものであるのか,いずれにも解釈可能なものである。 一方,補正に係る訂正事項は,上記iに対応する部分は「遠心成形法により得られる単層,転写ベルトとして使用するシームレスベルト」であって,構文上「単層」が「転写ベルト」に係ることが明らかなものであり「単層の転写ベルト」に用いる「したがって単層の)シーム,(レスベルト」のみを包含するものである。 また,上記iiに対応する部分は「表面から電荷をかけて内表面にアースを取 ることが明らかなものであり「単層の転写ベルト」に用いる「したがって単層の)シーム,(レスベルト」のみを包含するものである。 また,上記iiに対応する部分は「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表,面から電荷をかけることが可能な単層転写ベルトとして使用することを特徴とするシームレスベルト」であって「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をか,けることが可能な」が「単層転写ベルト」に係ることが明らかなものであり「シームレスベ,ルト」としては可能であっても「転写ベルト」としての使用にあたって「表面から電荷をか,,けて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能」でない使用を排除するものである。 してみると,この補正は,訂正事項を実質的に変更するものであるので,この手続補正は,審判請求書の要旨を変更するものである。 したがって,上記手続補正は,特許法131条の2第1項の規定に適合しないので,認めな- 5 -い」。 (2)本件訂正の許否についてア審決は,請求項1を上記2の(3)から(2)に変更した本件訂正は,以下の訂正事項(以下「本件訂正事項」という)を含むとした。 。 「1「且つ遠心成形法により得られるシームレスベルトであって」を「且つ遠心成形法によ),り得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルトであって」に訂正。 2「引張強度が導電性微粉末を含有しないシームレスベルトに比較して75%以上の値を)有する」点を付加。 3「遠心成形前の前記ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とからなる混合された液状原材料)の粘度が50~4000cp」である点を付加。 4「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可)能なこと」を付加」。 イ審決は,本件 る混合された液状原材料)の粘度が50~4000cp」である点を付加。 4「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可)能なこと」を付加」。 イ審決は,本件訂正審判の請求は,以下のA~Cの理由から,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書及び3項の規定に適合しないとした。 A理由A(目的制限違反)審決は,以下のとおり,本件訂正は,特許請求の範囲を不明りょうとするもので,,,,あるので特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえずかつ誤記の訂正明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえないと判断した。 (a)訂正事項1)について「訂正事項1)に係る「単層の」という語句は,構文上「転写ベルト「シームレスベル」,ト」のいずれにも係り得るものであるので「転写ベルト」を修飾して限定するものか「シー,,ムレスベルト」を修飾して限定するものか,いずれであるか不明りょうであり,本件訂正に係る請求項1の発明を明確に把握することができない。また,本件明細書には「単層の転写ベ,ルト」も「単層のシームレスベルト」も明示的に記載されていないので,本件明細書の記載を参酌して,いずれであるか定めることもできない。 - 6 -すなわち本件訂正発明は他の層を付加した多層の転写ベルトに用いる単層のシー,,「()」「ムレスベルト」をも包含するものであるのか「単層の転写ベルト」に用いる「したがって単,(層の)シームレスベルト」のみを包含するものであるのか,明らかでない。 したがって,この訂正は,特許請求の範囲を不明りょうとするものであるので,特許請求の範囲の減縮を目的としたものとはいえない。 ,,,。」またこの訂正は誤記の訂正明りょうでない記載の釈明を目的とす たがって,この訂正は,特許請求の範囲を不明りょうとするものであるので,特許請求の範囲の減縮を目的としたものとはいえない。 ,,,。」またこの訂正は誤記の訂正明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない(b)訂正事項4)について「訂正事項4)に係る「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能」という節は,転写ベルトとしての使用態様をさらに限定し,対象となる転写ベルトを実質的に下位概念化することを目的とした節か「シームレスベルト」を対象と,して,その電気的性質について,これを機能的に限定することを目的とした節か,不明りょうであって,本件訂正発明を明確に把握することができない」。 (c)まとめ「言い換えると,本件訂正事項は「転写ベルト「シームレスベルト」のいずれを対象と,」,したものか明らかでなく,さらに「…が可能」と記載されているので,転写ベルトとして使用するにあたって,転写ベルトの「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけ」る使用が可能であることが,必須の要件となっているのか,シームレスベルトの状態で「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能」な性質を,シームレスベルトが電気的性質として有してさえいれば,シームレスベルトを加工して転写ベルトとして使用するとき,転写ベルトがその性質を有することを格別要さないのか否かも明りょうでない。 したがって,この訂正は,特許請求の範囲を不明りょうとするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものということはできない。 ,,,。 またこの訂正は誤記の訂正明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえないしたがって,本件訂正請求は,平成6年法律第116号による改 縮を目的としたものということはできない。 ,,,。 またこの訂正は誤記の訂正明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえないしたがって,本件訂正請求は,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書の規定に適合しない」。 - 7 -B理由B(新規事項の追加)審決は,以下のとおり「単層の」が「転写ベルト」を修飾すると解した場合,,本件明細書又は図面には「単層の転写ベルト」は記載されておらず,また,転写ベルトであれば,単層であることが自明であるということもできず,さらに,静電転写方式という特定の転写方式に用いる転写ベルトを意味するものとして「表面か,ら電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な転写ベルト」が本件明細書に記載されているともいえないので,本件訂正は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないと判断した。 「B-1「単層の」が「転写ベルト」を修飾するものであるとして「単層の転写ベルト」が,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否か,以下,さらに検討する。 訂正事項1)に関係する記載として,本件明細書又は図面には【0022】段落の次の記,載があるが,これ以外に「転写ベルト」に触れた記載は見出せない。 「0022】本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はないが,好ましく【は複写機等の感光性ベルト(電子写真感光体)の基材,転写ベルト,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材等,いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待されている」。 上記記載によれば「転写ベルト」は「シームレスベルト」の用途の一つとして本件明細書,,に例示されたものであることが認められるが,本件明細書には「単層の転写ベルト」 範な利用が期待されている」。 上記記載によれば「転写ベルト」は「シームレスベルト」の用途の一つとして本件明細書,,に例示されたものであることが認められるが,本件明細書には「単層の転写ベルト」との明示的記載はなく,また「転写ベルト」の構造等について個別具体的に触れた記載もない。 ,そこで「単層の転写ベルト」が,自明の事項として本件明細書の記載より把握され得るか,否かを検討する。 まず,上記【0022】段落の記載において「基材」にかかる語の範囲は,必ずしも明り,ょうではなく,次のa,bの2とおりの解釈が成り立つので,これらのそれぞれについて検討する。 (a)「転写ベルト,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルト」が「基材」にかかると解する場合- 8 -ベルトの「基材」と記載されるとき,基材は,それ以外の層の存在を前提とした概念であるから,基材と限定された用途では,多層ベルトを,その対象とするものということができる。 そして,実際,転写ベルト,定着ベルト及び記録体ベルトに多層のものがあることは,技術常識的に明らかであり(転写ベルトであれば,例えば,後述する刊行物1である特開昭56-164368号公報参照,これらのベルトの基材として,本件シームレスベルトを)用いることができないとする理由は,本件明細書の記載からは見出せないので【0022】,段落には,転写ベルトに関して(多層ベルトである)転写ベルトの基材として,シームレス,ベルトを用いることが記載されていると解することができる。 してみると【0022】段落には,シームレスベルトを基材に用いた多層の転写ベルトは,記載されているといえるが「単層の転写ベルト」は記載されておらず,本件明細書のそれ以,外の部分にも,かかる転写ベルトに関する記載は見出せないので「単層の転写ベル を基材に用いた多層の転写ベルトは,記載されているといえるが「単層の転写ベルト」は記載されておらず,本件明細書のそれ以,外の部分にも,かかる転写ベルトに関する記載は見出せないので「単層の転写ベルト」は,,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内の事項ということはできない。 なお,本件特許のファミリーである,米国特許第6139784号明細書の当該箇所の記載は"substratematerialsforimagetransferbelts, fixationbelts, printerrecordingbeltsforofficeautomationequipment, etc.,"(第4欄55~57行)とあり「転写ベル,トのための,定着ベルトのための,OA機器等各種プリンターの記録体ベルトのための基材」と記載されているが,このことは「転写ベルトのための基材」が本件明細書に開示されてい,るとする上記解釈の妥当性を,請求人が自らの意志をもって表明していることの,一つの証左であるといえる。 (b) 「転写ベルト」が「基材」にかからないと解する場合0022段落には本件シームレスベルトの用途として基材との限定を伴わず転【】,,「」,「写ベルト」と記載されていると解した場合,層構造についてそれを特定する記載は何もないので,論理上,ベルトの層構造という観点から,転写ベルトへの本件シームレスベルトの使用の態様には,次の3つのものが個別化することなく包含されている。 ケースi.シームレスベルトを単層の転写ベルトに用いる場合ケースii.シームレスベルトを多層の転写ベルトの基材層に用いる場合- 9 -ケースiii.シームレスベルトを多層の転写ベルトの基材以外の層に用いる場合一方,本件出願当時の技術常識を参酌する 場合ケースii.シームレスベルトを多層の転写ベルトの基材層に用いる場合- 9 -ケースiii.シームレスベルトを多層の転写ベルトの基材以外の層に用いる場合一方,本件出願当時の技術常識を参酌すると,実際,単層の転写ベルトとともに,種々の多,,層の転写ベルトが存在することが技術常識として知られていたということができ具体的には特開昭63-311263号公報(本訴乙8)に示すような単層転写ベルトとともに,後述する刊行物1である特開昭56-164368号公報(本訴乙1)や,特公昭46-41679号公報(本訴乙9,特開昭59-77467号公報(本訴乙10)等に示すような,いわゆ)る押圧転写法用の多層転写ベルトや,特開昭57-8569号公報(本訴乙11)や特開昭62-156682号公報(本訴乙12)等に示すような,いわゆる静電転写法用の多層転写ベルトが知られていたから,本件明細書記載の「転写ベルト」という用語は,上記のいずれのケースも排除することなく,かつ,各個別のケースに特有の技術的事項をなんら開示することもなしに,これらの3つの態様を包含する上位概念としてのみ記載されていると解すべきである。 そして,本件シームレスベルトを,かかる多層の転写ベルトに適用できないとする格別の事,,,情は見いだせないとともに本件明細書には転写ベルトへの本件シームレスベルトの使用が上記3つの態様のうち,特定の1つの態様のみでなされることを自明とするに足る記載もないから,本件明細書は,いずれかのケースについて個別化し特定した発明を記載しているとはいえない。 したがって,ケースiを選択し,シームレスベルトの使用対象を「転写ベルト」から「単層の転写ベルト」と個別化することは,本件明細書に記載した事項以外のものを個別化することになるので,本件明細書又は図面に記載し て,ケースiを選択し,シームレスベルトの使用対象を「転写ベルト」から「単層の転写ベルト」と個別化することは,本件明細書に記載した事項以外のものを個別化することになるので,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正とはいえない。 結局,上記(a),(b)のいずれであると解しても「単層の転写ベルト」は,本件明細書又,は図面に記載した事項ではない。 ここで,請求人は,本件シームレスベルトが単層であるのだから,当然,単層のシームレスベルトの用途である転写ベルトも単層であることは明らかである旨主張しているが,上述のように,単層のシームレスベルトを用いた多層の転写ベルトもあるので,該主張は失当である。 請求人は,又「基材」との記載を欠くことは「基材」としての使用を排除することを意味,,- 10 -するので「転写ベルト」が単層のものであることは明らかである旨主張しているが,(a)で,,「」,,述べたように必ずしも基材との限定を欠くとは解せないばかりか(b)で述べたように「基材」との限定を欠くと解した場合でも「転写ベルト」にはケースi~iiiのものが包含さ,れるものであり「単層の転写ベルト」と「多層の転写ベルト」とが個別化されずに含意され,るものである。 そして,請求人の主張のように,本件シームレスベルトの使用にあたって「Aに基材と記,載されていればAの基材に用いる」ことを前提として「Bには基材と記載されていない。し,,」,()たがってBの基材には用いないと結論することは論理的に誤った推論前件否定の錯誤,「」,に基づくものであるので基材という記載がないことを直接の論拠とする請求人の主張は失当であって,採用できない。 B-2請求人は,訂正事項4)について,本件審判請求書で,本件の転写ベルトは 」,に基づくものであるので基材という記載がないことを直接の論拠とする請求人の主張は失当であって,採用できない。 B-2請求人は,訂正事項4)について,本件審判請求書で,本件の転写ベルトは「表面か,ら電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能」な「転写ベルト」であるから,静電転写法に使用するものである旨主張しているので(例えば審判請求書13頁4~10行参照「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電),荷をかけることが可能」が「転写ベルト」を限定して下位概念化することを目的としたもの,であり,この訂正事項が実質的に「転写ベルト」を「静電転写法に用いる転写ベルト」に限定しようとするものであるとして,これが本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否か以下検討する。 本件明細書の【0023】段落には,上記【0022】段落に続けて,次のように記載されている(0022】段落と併せて示す。 【)「0022】本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はないが,好ましく【は複写機等の感光性ベルト(電子写真感光体)の基材,転写ベルト,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材等,いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待されている。 【0023】このような機能性ベルトとして用いられる際に,本発明のものは表面から電荷をかけて内表面にアースを取ることが可能で装置そのもののコンパクト化を可能とするし,ま- 11 -た内表面から電荷をかけることも可能で多機能性をいかんなく発揮するものである」。 【0023】段落の記載は,要するに【0022】段落の記載を受けて,複写機等の感光,性ベルト用等としての広範な用途を持つ「多機能性ベルト」の使用態様を単に例示したもので なく発揮するものである」。 【0023】段落の記載は,要するに【0022】段落の記載を受けて,複写機等の感光,性ベルト用等としての広範な用途を持つ「多機能性ベルト」の使用態様を単に例示したものであって「本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はないが「多機能性ベル,」,ト」として用いるときには,必要に応じて「表面から電荷をかけて内表面にアースを取」る使い方が可能であり,又,必要に応じて「内表面から電荷をかけ」る使い方も可能であり,さらに当然の前提として,特に電荷をかけない使い方も可能であって,種々の使い方が可能であるからこそ「多機能性をいかんなく発揮」できる旨,一般的に述べたに留まるものであり「多,,機能性ベルト」の使用態様を「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面か,ら電荷をかけることが可能」な使用態様のみに制限し,このように電荷をかけることが不要あるいは不可能な用途への使用を,本件発明の対象から積極的に排除しようとする意図で記載されたものとはいえない。 すなわち【0022】段落に例示されたベルトについて,使用法を検討すると,複写機の,感光性ベルトは,表面から電荷をかけたりアースを取ったりして使用するものであり,転写ベルトは,ある種のもの(静電転写法用)は電荷をかけたりして使用するものであるが,ある種のもの押圧転写法用は電荷をかける必要のないものであり定着ベルトは使用にあたっ(),,,て電荷をかける必要のないものであり,各種プリンターの記録体ベルトは,ある種のもの(例えばレーザープリンタ)は,表面から電荷をかけたりアースを取ったりして使用するものであるが,ある種のものは,特に電荷をかける必要のないものである。 そして,転写ベルトと記録体ベルトは,具体的な種類がなんら記載されていな タ)は,表面から電荷をかけたりアースを取ったりして使用するものであるが,ある種のものは,特に電荷をかける必要のないものである。 そして,転写ベルトと記録体ベルトは,具体的な種類がなんら記載されていないから,使用にあたって電荷をかける必要があるとも,ないともいえるものである。 このように【0022】段落に例示されたベルトには,使用にあたって表面から電荷をか,けたりアースを取ったりする必要のあるものと,必要のないものとが混在しているとともに,いずれの使用法でも使用可能といえるようなベルトも混在しているが【0023】段落の記,載は,なんら制限的なものではなく,使用にあたって電荷をかけない用途を特に排除するものではないからこそ,種々の用途を例示する【0022】段落の記載と矛盾を生じることなく,- 12 -記載内容を合理的に理解することができるものである。 そして「表面から電荷をかけて内表面にアースを取」る使い方をするベルトについて検討,すると【0022】段落に具体的に例示されたもののみを対象としても,上述のとおり,少,なくとも,複写機等の感光性ベルト,転写ベルトの一部,OA機器等各種プリンターの記録体ベルトの一部が該当するのであるから【0023】段落の記載を根拠に「表面から電荷をか,,,」,けて内表面にアースを取りまた内表面から電荷をかけることが可能なシームレスベルトが【0022】段落記載の「転写ベルト」のみを,その対象とするものであることが自明であるということはできない。 また,上述のとおり「転写ベルト」には「表面から電荷をかけて内表面にアースを取」る,,使い方が必要なものも,必要でないものも含まれるので「転写ベルト」であれば,必ず「表,面から電荷をかけて内表面にアースを取」る使い方をすることは自明であるということもできな アースを取」る,,使い方が必要なものも,必要でないものも含まれるので「転写ベルト」であれば,必ず「表,面から電荷をかけて内表面にアースを取」る使い方をすることは自明であるということもできない。 結局【0022】~【0023】段落に「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,,,また内表面から電荷をかけることが可能な転写ベルト」が記載されていることは,自明であるということはできない。 なお,請求人は,審判請求書(14頁5行~16頁16行)で,本件「転写ベルト」が単層であることを前提として,単層で「表面から電荷をかけて内表面にアースを取」って使用す,,【】,「」ることが可能なベルトは0022段落に例示されたベルトとしては唯一転写ベルトのみが該当するから,実質的に静電転写法に用いる転写ベルトが【0022】~【0023】段落に記載されていることは自明である旨主張しているが上記B-1で述べたとおり転,,,「写ベルト」が単層であるという前提自体が成り立たないので,該主張は根拠に欠け,採用できない。 又,請求人は,審判請求書(18頁4~7行)で「本発明の明細書上『静電転写法』と転,,写法を明示した記載はないが,これは,本発明出願当時では,刊行物1のような非静電転写法を使用した複写機等はなく(現在でもない,静電転写法が当業者間では当然のこととされて)いたことに起因する」と,あたかも「転写ベルト」といえば「静電転写法用転写ベルト」。 ,,- 13 -を意味することが自明であったかのような主張をしているが,上記B-1で例示したように,本件出願当時,押圧転写法も良く知られていたのであるから,かかる主張も失当である。 B-3以上,要するに,請求人は【0022】~【0023】段落の記載内容が「表面か,,ら電 1で例示したように,本件出願当時,押圧転写法も良く知られていたのであるから,かかる主張も失当である。 B-3以上,要するに,請求人は【0022】~【0023】段落の記載内容が「表面か,,ら電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な単層の転写ベルト」を意味することは,自明である旨縷々主張しているが「本発明に係るシームレスベ,ルトの用途としては特に制限はないが」と前置きしたうえで,感光性ベルト等への用途を列記し「このような機能性ベルトとして用いられる際に,…多機能性をいかんなく発揮するもの,である」と結ぶ,上記【0022】~【0023】段落の記載が,実は「表面から電荷をか。 ,けて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な単層の転写ベルト」のみを本件シームレスベルトの用途として示すものであることが,該記載に接する当業者にとり自明であるとする主張は,主張自体に無理があるとともに,当を得ないものであることは,上述のとおりである。 したがって「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかける,ことが可能な単層の転写ベルト」を【0022】~【0023】段落の記載から個別化する,ことはできないので,本件訂正事項は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるとはいえない。 以上のとおりであるので,本件訂正事項の内容について,請求人の主張のように解したとしてもなお,本件訂正請求は,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書の規定に適合しない」。 C理由C(独立特許要件)審決は,以下のとおり「単層の」が「シームレスベルト」を修飾すると解した,場合,本件訂正は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,特許請求の範囲の減縮を目的と 由C(独立特許要件)審決は,以下のとおり「単層の」が「シームレスベルト」を修飾すると解した,場合,本件訂正は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと解することができるが,この場合,本件訂正発明は,刊行物1ないし刊行物7に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件訂正発明は,特許法29条2項の規定により,出願の際独立して特許を受けることができないものであると判断した。 - 14 -(a) 引用刊行物刊行物1:特開昭56-164368号公報(本訴甲6,乙1)刊行物2:特開昭61-110144号公報(本訴乙2)刊行物3:特開昭61-110519号公報(本訴乙3)刊行物4:特開昭61-144658号公報(本訴乙4)刊行物5:特公昭55-18447号公報(本訴乙5)刊行物6:特開平3-89357号公報(本訴乙6)刊行物7:特開昭62-58509号公報(本訴乙7)(b)対比「本件訂正発明を,刊行物1(特開昭56-164368号公報)記載のものと比較する。 刊行物1記載の基体は,画像形成装置の中間転写ベルトに用いられるものであり,一方,本件訂正発明のシームレスベルトは複写機等の転写ベルトに用いるものであるまた刊行物1,。 ,記載の基体は,遠心鋳造によって作成されることから,単層でシームレスの無端ベルト状をしていることも明らかであるから,刊行物1の基体は,本件訂正発明のシームレスベルトに相当する。 そして,刊行物1の基体は「重量比でポリイミドワニス3.5部,カーボンブラック1部,,」及びN-メチルピロリドン7部を加え均一化しこれを遠心鋳造によって100℃加熱乾燥して作成したものであるが,ポリイミドワニスが,加熱によりポリイミド系樹脂を構成す 部,カーボンブラック1部,,」及びN-メチルピロリドン7部を加え均一化しこれを遠心鋳造によって100℃加熱乾燥して作成したものであるが,ポリイミドワニスが,加熱によりポリイミド系樹脂を構成するものであり例えば刊行物2参照カーボンブラックが導電性の微粉末の一種であることは例(),,(えば刊行物3,4参照,当業者にとって明らかな事項である。 )また,刊行物1記載の基体の体積電気抵抗値は,10Ω・cmであるが,この体積電気抵 抗値は,本件訂正発明のシームレスベルトの体積電気抵抗値の範囲内のものであることから,刊行物1記載の基体にあっても,導電性について本件訂正発明のシームレスベルトと同様な性質を有するといえるから,刊行物1記載の基体も,表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な性質を有するものであるといえる。 そこで,両者は,次の点で一致し,相違点1ないし相違点3で相違する。 - 15 -(一致点)「ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,且つ遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルトであって,該ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲であり,表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面か ら電荷をかけることが可能なシームレスベルト」。 (相違点1)本件訂正発明のシームレスベルトは,体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲にあるのに対し,刊行物1記載の基体は,体積電気抵抗値の範囲について明らかでない点。 (相違点2)本件訂正発明のシームレスベルトは,引張強度が導電性微粉末を含有しないシームレスベルトに比較して75%以上の値を有するものであるのに対し,刊行物1記載の基体は,引張強度について明らかでない点。 (相違 件訂正発明のシームレスベルトは,引張強度が導電性微粉末を含有しないシームレスベルトに比較して75%以上の値を有するものであるのに対し,刊行物1記載の基体は,引張強度について明らかでない点。 (相違点3)本件訂正発明は,遠心成形前のポリイミド系樹脂と導電性微粉末とからなる混合された液状原材料の粘度が50~4000cpであるのに対し,刊行物1記載のものは,遠心成形前のポリイミドワニスとカーボンブラックとからなる混合された液状原材料の粘度について明らかでない点。 (c)相違点の判断「相違点1についての判断)(刊行物6(特開平3-89357号公報)には,導電性カーボンを含む樹脂からなる,半導電性のシームレスベルトについて,電気抵抗の変動が小さいことが好ましい旨記載されているとともに,表面電気抵抗及び体積電気抵抗のばらつきを小さくコントロールすることができる旨記載されており,さらに表面電気抵抗の最大値に対する最小値の比が0.1以上であるものが記載されている。 また,刊行物7(特開昭62-58509号公報)には,導電性プラスチックシートについて,抵抗の均一さが要求されることが記載されているとともに,ポリエーテルイミド等のカー- 16 -ボンブラックを含む導電性プラスチックフィルムについて,平均体積抵抗値が10Ωcm以 下,体積抵抗値の偏差が10%以下であるものが記載されている。 さらに,刊行物5には,ポリイミド液状重合体組成物等の重合体組成物にカーボンブラックを含有させて,抵抗値が10Ω以下の,シート等の導電性プラスチック製品を製造するにあ たり,カーボンブラックを重合体組成物の液状成分中に均一に分散させる必要性について記載されており(5欄17~19行,そのための手段も記載されている。 )したがって,導電性プラスチックにおいて,体積電気抵 ,カーボンブラックを重合体組成物の液状成分中に均一に分散させる必要性について記載されており(5欄17~19行,そのための手段も記載されている。 )したがって,導電性プラスチックにおいて,体積電気抵抗値のばらつきを小さくする必要のあることは刊行物5~7に示すように周知であり,特に体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲にしたものも刊行物7に記載されるように知られているので,相違点のように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2についての判断)基体の成分として,強度に寄与しない導電性微粉末を混合すれば,基体の強度が低下することは,例えば刊行物5にも記載されるように,当業者が当然予測し得た事項であるから,その引張強度をどの程度のものとするかは,必要とされる基体の導電性の程度を勘案して,適宜設定し得た設計的事項である。 (相違点3についての判断)遠心成形をおこなうにあたり,液状原材料の粘度をどの程度のものとするかは,使用装置,使用材料,成膜条件などを勘案して,当業者が適宜実験により,容易に決定しえた事項であるので,遠心成形前のポリイミド系樹脂と導電性微粉末とからなる混合された液状原材料の粘度を50~4000cpとした点に,格別の困難性は見いだせない。 すなわち,例えば,原材料の粘度が,水のようにあまりに低い場合,原材料が容易に流れてしまって,原材料を遠心成形のためのドラム内面に適切に塗布することができず,一方,蜂蜜,,やタールのように粘度が高すぎる場合も塗布が困難であるとともに原材料の移動が妨げられ膜厚が均一になり難いことは,当業者が容易に予測し得ることであるから,実験により,両極端を避けて,適当な粘度範囲を見いだすことは,格別の困難なく当業者がなし得る程度の事項である。 - 17 -実際,50~4000cp ことは,当業者が容易に予測し得ることであるから,実験により,両極端を避けて,適当な粘度範囲を見いだすことは,格別の困難なく当業者がなし得る程度の事項である。 - 17 -実際,50~4000cpの粘度範囲は,コーン油程度の粘度から,シロップ程度の粘度の範囲をカバーするものであって,この粘度範囲には,ラッカーや,水性ペイント等の通常の塗料の粘度が入るものであることは広く知られており,かかる事情からも,遠心成形シリンダーにポリイミドワニスを塗布するにあたって,かかる粘度範囲が適当なことを当業者が見いだすことに,格別の困難性があったということはできない」。 (3) 結論 「本件訂正請求は,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書又は3項の規定に適合しない」。 第3原告の主張の要点審決は,本件補正及び本件訂正の許否について判断を誤った結果,本件補正及び本件訂正はいずれも許されないと判断したものであり,この判断は違法であるから取り消されるべきである。 本件明細書又は図面に記載されている事項本件発明は,本来,静電転写法による複写機等の「単層の転写ベルト」への用途を主眼とする発明であって,感光性ベルトの基材や,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材といった用途は,副次的に記載されているにすぎない。 ,,,(1)静電転写法は静電気を帯電させることによりベルトへのトナーの吸引引離しをする方法である。このとき,帯電電荷量の分布が均一でないと,トナーに対する静電吸着力が場所によってばらつくこととなり,転写像の濃淡が生じる。静電転写法の転写ベルトにおいては,精密な画像を得るため,多数回の使用に耐え得るだけの機械的物性等各種物性に優れ,各部における電気抵抗値のばらつきが少ないことが必須の条件となる。 像の濃淡が生じる。静電転写法の転写ベルトにおいては,精密な画像を得るため,多数回の使用に耐え得るだけの機械的物性等各種物性に優れ,各部における電気抵抗値のばらつきが少ないことが必須の条件となる。 本件明細書の【表1】に記載されたシームレスベルトの機械的,あるいは電気的特性は,単層シームレスベルトをそのまま単層転写ベルトの状態で使用するに際し- 18 -て必要とされる特性値である。具体的には,表面電気抵抗値について,表面と内表面を測定し,これが一定の範囲内の数値となり,またばらつきも少ないという結果が得られたことが記載されているが,これらの数値は,静電転写法における単層転写ベルトとして使用するときに初めて必要となる特性である。複層の転写ベルトの基材,若しくは,他の機能性ベルトの基材として使用される場合には,表面と内表面の両方の電気抵抗値のばらつきの範囲が問題となることはない。 被告は,上記特性は,導電性微粉末を含有する導電性ベルトにとって一般的な課題であると主張する。しかし,電気抵抗値の均一性について,具体的に最大値と最小値の範囲が1~10倍に近い水準のものを技術課題とし,かつ機械的物性に優れ,,,ることを技術課題とするのは静電転写法における転写ベルトのみであり例えば,,「」静電転写法における転写ベルトに関する甲7でも本件発明と同様にばらつきと「強度」が問題とされている。他方,他の導電性ベルトにおいては,そもそも電気抵抗値のばらつきが課題となるものもほとんどない。押圧転写方式に用いる導電性ベルト(甲6等)において,導電性微粉末を含有させるとしても,その主たる目的は,摩擦等によりベルトに帯電が生じることを防止することにあり,導電性を確保できれば足りるのであって,電気抵抗値のばらつきの程度を本件発明と同程度まで小さくするこ 含有させるとしても,その主たる目的は,摩擦等によりベルトに帯電が生じることを防止することにあり,導電性を確保できれば足りるのであって,電気抵抗値のばらつきの程度を本件発明と同程度まで小さくすることは重要な技術課題とはならない。 (2)本件発明の転写ベルトが「単層」のものであることも本件明細書の記載に照らし,明らかである。 本件明細書の段落【0022】には「本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はないが,好ましくは複写機等の感光性ベルト(電子写真感光体)の基材,転写ベルト,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材等,いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待されている」として本件。 。 「」,発明に係るシームレスベルトの用途が記載されている上記記載のとしてとは「…の状態で」との意を表す助詞であるから,上記段落には「シームレスベルトをそのまま転写ベルトの状態で用いる」ことが記載されている。 - 19 -本件発明に係る「シームレスベルト」が「単層」であることは,本件明細書の段【】【】,,【】【】落0007~0019及び実施例の説明である0025~0027に記載されたシームレスベルトの製造方法から当業者には明白である。本件発明に係る「シームレスベルト」は「ポリイミド系樹脂」と「導電性微粉末」とを混合した液状原材料を図4,5に示す装置の筒状シリンダ内に塗布した後,当該シリンダを回転させて製造されるものであるから「単層」の構造以外考えられない。 ,以上のとおり,本件発明に係る「シームレスベルト」とは「単層」のシームレ,スベルトであり,その「シームレスベルト」をそのまま「転写ベルト」に用いるのであるから,本件発明に係る「転写ベルト」とは単層の転写ベルトということになる。 (3)本件明細 は「単層」のシームレ,スベルトであり,その「シームレスベルト」をそのまま「転写ベルト」に用いるのであるから,本件発明に係る「転写ベルト」とは単層の転写ベルトということになる。 (3)本件明細書の段落【0023】には「このような機能性ベルトとして用いられる際に,本発明のものは表面から電荷をかけて内表面にアースを取ることが可能で装置そのもののコンパクト化を可能とするし,また内表面から電荷をかけることも可能で多機能性をいかんなく発揮するものである」と記載されている。すな。 わち「表面から電荷をかけて内表面にアースを取ること」及び「内表面から電荷,をかけること」がいずれも可能であると説明されている。 本件発明のシームレスベルトは,体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲であるからこそ「表面から電荷をかけて内表面にアースを取る」及び「内,表面から電荷をかける」というときに,表面電荷を安定的に制御することが可能となる。これにより,本件発明のシームレスベルトを静電転写法における単層の転写ベルトとして使用した場合に,表面電荷を安定させてトナーを均一に転写し,内表面にアースをとるときにも均一にアースできることになる。したがって,上記記載は,画像の乱れを防止することにつながる重要な意義を有する特性に関するものである。 また,本件発明は「表面側から」ではなく「表面から」電荷をかけるものであ,ることから,基材として使用され,多層構造を採るものは本来的に含まれるもので- 20 -はない。基材として使用する場合,表面に別層が形成されるので,表面から電荷をかけることができない。したがって「表面から電荷をかけて内表面にアースを取,り,また内表面から電荷をかけることが可能な」機能性ベルトとして具体的に明示されているのは,静電転写法に使用される転写 をかけることができない。したがって「表面から電荷をかけて内表面にアースを取,り,また内表面から電荷をかけることが可能な」機能性ベルトとして具体的に明示されているのは,静電転写法に使用される転写ベルトとしての用途以外にはない。 (4)被告は,シームレスベルトを静電転写法による単層の転写ベルトとして用いることは,本件出願当時の技術常識に反すると主張する。 しかしながら,被告が反証として挙げる乙2,3,11,12などは,昭和63年以前に出願された静電転写法における複層構成の転写ベルトであり,本件出願当時(平成3年9月21日)には,当業者の間では,明細書に単層であるか複層であるかを識別するような記載をことさら行うまでもなく,単層であることは自明とされていた。本件出願当時の当業者は,転写ベルトについて,電気抵抗値のばらつきを抑えることにより静電的コントロールを図ろうとしていたのであり,あえて導電性の支持体に絶縁体による転写層を設けるという複層構造の転写ベルトという構成をとる必要はなかった。 このことは,以下のとおり,甲7,8,乙6,8からも明らかである。 アすなわち,本件出願前に出願され(平成3年9月9日出願,本件出願後に)公開された公開特許公報(特開平5-66685,甲7)は,静電転写法用の単層の転写ベルトに関するものであるが(段落【0001【0008】参照,導電】,)性ベルトが単層の静電転写ベルトにおいては好適であり,むしろ「導電性を有することが望まれる」とまで述べられている(段落【0001】~【0003,】【0015。 】)イまた,本件出願の公開前出願(平成4年6月29日)を基礎とする優先権主張出願である特開平6-75420(甲8)には,静電転写法における単層の転写ベルトに関する記載が存する(段落【0003【0041 た,本件出願の公開前出願(平成4年6月29日)を基礎とする優先権主張出願である特開平6-75420(甲8)には,静電転写法における単層の転写ベルトに関する記載が存する(段落【0003【0041。また,甲8には,】,】)体積抵抗値として「本発明の転写材担持部材の体積抵抗率は,1×10~1, ×10Ω・cm更には1×10~1×10Ω・cmが好ましい段 [],[]。」(- 21 -落【0035)との記載が存在する。被告は,甲8は,転写材担持部材であるか】ら中間転写ベルトではないと主張するが,トナーを移動させるために,トナーと逆の電荷を与えてこれを保持することのできる転写材担持部材及び中間転写材のうち,ベルトで構成されるものは静電転写法における転写ベルトということができる(乙14参照。 )ウ乙6(平成元年9月出願,前記刊行物6)にも「一般に,複写機における,トナーを保持,移送するための映像機能性ベルトは,ある程度の導電性が必要とされ(4頁右上欄9~11行)との記載があり,導電性ベルトを静電転写法におけ」る転写ベルトに用いることが何ら当時の技術常識に反するものではないことが示されている。 エ特開昭63-311263号公報(昭和62年6月出願,乙8)には,以下の記載がある。 「静電気を用いトナー像を中間転写体に転写するという方式は転写効率,解像度,感光体ドラムの寿命とも非常に良好となるが,中間転写体が絶縁体であるため,静電気を除去する装置が必要となり装置が非常に大きくなり,装置のコストも高くなるといった欠点がある。 上記のような構造上の欠点を補うために,中間転写体に適度な導電性を持たせることによって,トナー像が静電気的に中間転写体に転写された後静電気を容易に除去できるようにするという試みが いった欠点がある。 上記のような構造上の欠点を補うために,中間転写体に適度な導電性を持たせることによって,トナー像が静電気的に中間転写体に転写された後静電気を容易に除去できるようにするという試みがある(2頁左上欄3~13行)。」「本発明は,トナー像を中間転写体に転写する際,静電気的に転写することができ,かつ,中間転写体に適度な導電性を持たせることによって転写されたトナーの静電気を容易に除去でき,機械特性,熱特性の優れた中間転写体を提供することを目的とするものである(2頁右。」上欄6~11行)乙8は,まさにその出願当時,既に転写ベルトを絶縁体とすることによる静電気の除去という課題が認識されており,転写ベルトについては,導電・半導電性ベルトへとの指向があったことを示しているのである。 したがって,導電性ベルトを静電転写法における単層の転写ベルトに用いること- 22 -は何ら技術常識に反することではない。 ,「」「」以上のとおり本件明細書又は図面に静電転写法による単層の転写ベルトが記載されていることは,本件明細書に接した当業者にとって自明のことである。 取消事由1(本件補正についての判断の誤り)(1)審決は訂正審判請求書の「遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」を,手続補正書により「遠心成形法により得られる単層転写ベルトとして使用するシームレスベルト」と補正したことは,審判請求書の要旨の変更に当たるとしたが,この判断は誤りである。 通常の国語の用法からすれば「~の」という語句の直後に名詞が存在すれば,,直後の名詞を修飾すると考えるのが適切かつ自然な解釈である。訂正審判請求書の「遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」の「単層の」とは「転写ベルト」 存在すれば,,直後の名詞を修飾すると考えるのが適切かつ自然な解釈である。訂正審判請求書の「遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」の「単層の」とは「転写ベルト」に係るものであって「シームレスベルト」に係,,るものとは読めない。もし「単層の」を「シームレスベルト」に係るようにする,には「遠心成形法により得られる転写ベルトとして使用する単層のシームレスベ,ルト」として「シームレスベルト」の直前に「単層の」を位置させるか,あるい,は「遠心成形法により得られる単層の,転写ベルトとして使用するシームレスベ,ルト」のように「単層の」の直後に読点を入れる記載となる。 ,(2)審決は,審判請求書の「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能なことを特徴とするシームレスベルト」を,手続補正書により「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な単層転写ベルトとして使用することを特徴とするシームレスベルト」と補正したことは,審判請求書の要旨を変更するとしたが,この判断は誤りである。 本件補正前の請求項1において,既に「シームレスベルト」は「単層の転写ベ,ルトとして使用するシームレスベルト」として,使用目的が限定されているのであるから,文末にある「シームレスベルト」を「単層転写ベルトとして使用すること- 23 -を特徴とするシームレスベルト」と補正したとしても,訂正事項を実質的に変更するものとはいえない。 取消事由2(本件訂正についての判断の誤り)3-A取消事由2A(理由Aについての判断の誤り)審決は「単層の」という語句が「転写ベルト「シームレスベルト」のいずれに,」係るかが明瞭でないとして,本件訂正は,特許請求の範囲を不明 の誤り)3-A取消事由2A(理由Aについての判断の誤り)審決は「単層の」という語句が「転写ベルト「シームレスベルト」のいずれに,」係るかが明瞭でないとして,本件訂正は,特許請求の範囲を不明りょうとするものであるので,本件訂正発明を明確に把握することができないと判断したが,前記のとおり,本件明細書又は図面には,静電転写法による単層の転写ベルトが記載されているのであるから「単層の」が「転写ベルト」に係ることは明らかである。審,決の上記判断は誤りである。 3-B取消事由2B(理由Bについての判断の誤り)審決は,本件明細書又は図面には「単層の転写ベルト」は記載されておらず,ま,,,た転写ベルトであれば単層であることが自明であるということもできないので本件訂正は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないとしたが,前記のとおり,本件明細書又は図面には,静電転写法による単層の転写ベルトが記載されているのであるから,この判断も誤りである。 本件明細書【0007】~【0019,及び,実施例の説明【0025】~】【0027】に記載されたシームレスベルトの製造方法を,当業者が見れば,その「」。 ,構造は単層のシームレスベルトと極めて容易に理解できるものであるしかもこのシームレスベルトは,転写ベルトとして使用されるのであるから,その転写ベルトが単層の構造であることは明白である。 本件明細書の段落【0022】には「…複写機等の感光性ベルトの基材,転写ベルト,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材…」との記載があるが「複写機等の感光性ベルトの基材「転写ベルト「定着ベルトやOA機,」」器等各種プリンターの記録体ベルトの基材」は,それぞれが読点で区切られているのであるから「転写ベルト」が「基材」 載があるが「複写機等の感光性ベルトの基材「転写ベルト「定着ベルトやOA機,」」器等各種プリンターの記録体ベルトの基材」は,それぞれが読点で区切られているのであるから「転写ベルト」が「基材」にかかると解することは極めて不自然で,- 24 -ある。審決のように,各種ベルトの基材として本件発明によるシームレスベルトを用いるというのであれば,発明が解決しようとする課題として,体積抵抗値や表面抵抗値のばらつきを少なくコントロールしたことの意味がなくなり,発明の意義を全く失わせるような解釈となってしまう。 ,,審決が挙げる米国特許第6139784号の記載は本件特許と別の特許でありしかも,米国特許は本件特許を優先権主張とする特許であるから,本件明細書と異なる英文翻訳がなされているなら,それは誤訳にすぎない。 審決は,段落【0022】記載の「転写ベルト」が「基材」にかからないと解したとしても,層構造についてそれを特定する記載は何もないので,①シームレスベルトを単層の転写ベルトに用いる場合,②同ベルトを多層の転写ベルトの基材層に用いる場合,③同ベルトを多層の転写ベルトの基材以外の層に用いる場合を含むというが,上記段落の記載は,前記のとおり,本件発明に係る単層のシームレスベルトを転写ベルトとして用いるとの意味である。 以上のとおり,理由Bについての審決の判断は,誤りである。 3-C取消事由2C(理由Cについての判断の誤り)(1)審決は「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」との訂正後,の請求項1の文言について「単層の」は「シームレスベルト」を修飾して限定す,るものと理解し,同項の「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能」との文言については「シームレスベルト」を対,象として,その導電的 ト」を修飾して限定す,るものと理解し,同項の「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能」との文言については「シームレスベルト」を対,象として,その導電的な性質について,これを機能的に限定することを目的にした節であると理解した上で,独立特許要件としての進歩性を判断している。しかし,前記のとおり,審決が前提とする理解は誤りであり,誤った前提に基づく進歩性の判断も誤りである。 (2)仮に,審決のいうような前提に立った場合であっても,訂正拒絶理由Cの判断は誤っている。 ア一致点の認定の誤り- 25 -(ア)審決は,刊行物1(乙1)記載の基体についても「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」であると認定している。 しかし,刊行物1記載の基体は「押圧転写法式の)転写ベルトの基材に使用す,(る単層のシームレスベルト」であって,これを「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」と同義であるとして,一致点を認定するのは誤りである。 (イ)審決は一致点として刊行物1記載の基体についても体積電気抵抗値は1,,,~10Ω・cmの範囲であると認定している。 しかし,刊行物1における基体については「基体自身に導電性を与えた中間転,写ベルトを構成した(4頁右下欄14~15行)とあることから,導電性である」ことが前提とされており,絶縁体であることが排除されている。他方,電気抵抗について触れた箇所は「表面の転写層の電気抵抗は10Ω・cmで,基体のそれ, は10Ω・cmであった(5頁左欄1~2行)という箇所のみである。とすれ 。」ば,刊行物1の基体は導電体であり,絶縁体であることを排除した記載であることが前提となっている。審決のように,絶縁体ともいうべき高い抵抗値(上限で10Ω 2行)という箇所のみである。とすれ 。」ば,刊行物1の基体は導電体であり,絶縁体であることを排除した記載であることが前提となっている。審決のように,絶縁体ともいうべき高い抵抗値(上限で10Ω・cm)までの広範囲を一致点と認定することは誤りである。 イ相違点1についての判断の誤り審決は,相違点1について,刊行物7には,導電性プラスチックフィルムについて,平均体積電気抵抗値が10Ωcm以下,体積抵抗値の偏差が10%以下のもの が記載されており,これに基づけば当業者が容易に想到し得るものであると判断する。 しかし,刊行物7は,ポリウレタン樹脂からなり,キャスティングで製造し,液,,,晶表示装置などに用いられる導電性フィルムであり他方刊行物1記載の基体はポリイミド樹脂からなり,遠心成形法により製造し,複写機等の押圧転写法におけ。 ,,る転写ベルトの裏打ちに用いるシームレスベルトである両者は材料においても製法においても,用途においても,全く異なるものであり,当業者において,刊行物1に刊行物7の記載事項を組み合わせる動機付けがなく,審決が前提とする本件- 26 -訂正発明を容易に想到し得るとはいえない。 ウ以上のとおり,訂正拒絶理由Cに基づく,進歩性の判断は誤っているので,審決は取り消されなければならない。 (3)被告の予備的主張は,審決取消訴訟において,審決で判断していない無効理由を追加して主張し,棄却を求めるものであり,主張自体失当である。 仮に,予備的主張を行うことを認めるとしても,刊行物1記載の基体と本件訂正発明とは,前提技術が異なり,構造・技術課題も異なるのであるから,そもそも刊行物1を本件訂正発明と対比判断する資料とはなり得ない。 刊行物1の発明は,ベルトをトナー像に押圧して,その像をベルト及び複写紙に転写す 提技術が異なり,構造・技術課題も異なるのであるから,そもそも刊行物1を本件訂正発明と対比判断する資料とはなり得ない。 刊行物1の発明は,ベルトをトナー像に押圧して,その像をベルト及び複写紙に転写する押圧・加熱転写法である。他方,本件訂正発明は静電気を帯電させることによりベルト及び複写紙にトナー像を転写させる静電転写法である。 刊行物1記載の基体の構造は,押圧・加熱転写法における転写ベルトにおける基体であって,転写ベルトとして使用するには,押圧変形可能なゴム類などの転写層と併せて複層構造となることが必要である。また,基体(裏打ち)として使用されるものであるから,ベルトに静電気が帯電することを防止することが技術課題であって,ベルトの電気抵抗値を均一化することまで技術課題とはなっていない。他方,本件訂正発明は,静電転写法における単層の転写ベルトとして使用する構造が前提となっている。また,ベルトに帯電する静電気を利用する発明であるから,その帯電量を均一にするため,ベルトの電気抵抗値のばらつきをなくすことが技術課題となる。 さらに刊行物1には静電転写法加熱転写法及び押圧転写法の紹介の後に静,,,「電的転写法に於ては,その技術構成上必然的に生ずる電界のため像の乱れを起し問題にされて来たが,特に近時開発された所謂リテンション方式に於ては,静電潜像を繰返し使うために累積してゆく潜像の乱れは致命的であって,非静電的転写法が注目されて来た(2頁左上欄1~6行)とあるように,静電転写法を排斥してい。」る。 - 27 -以上によれば,刊行物1記載の基体と本件訂正発明とは,前提技術が異なり,構造・技術課題も異なるのであるから,刊行物1を本件訂正発明と対比判断することは誤っており,被告の予備的主張が認められる余地はない。 第4被告の主張の要点 本 件訂正発明とは,前提技術が異なり,構造・技術課題も異なるのであるから,刊行物1を本件訂正発明と対比判断することは誤っており,被告の予備的主張が認められる余地はない。 第4被告の主張の要点 本件明細書又は図面に記載されている事項原告は,本件特許発明に係るシームレスベルトの特性のうち,その機械的物性と電気抵抗値のばらつきの程度を取り上げて,かかる特性が技術課題とされるのは,静電転写法において用いられる転写ベルトのみであり,本件明細書には,本件シームレスベルトを単層の静電転写ベルトに用いることに係る発明が,自明の事項として記載されていると主張する。 しかしながら,本件明細書又は図面には,用途の特定されない,汎用のシームレスベルトに係る発明が記載されているにすぎないものであり,原告の主張は,①単層の静電転写ベルトを用途とする発明が本件出願時の技術常識に反するにもかかわらず,これが自明であると主張するものであるとともに,②発明の課題とされる,優れた機械的物性と電気抵抗値の均一性は,導電性微粉末を含有する導電性ベルトに一般的に要求される性能であることを,根拠なく否定した前提に基づくものであり,さらに,③本件シームレスベルトの多層転写ベルトへの適用の可能性を根拠なく否定したものである。 (1)本件特許の請求項1に係る発明は「導電性微粉末を含有し「ベルトの,」,各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲にあ」ることを,その構 成要件として含むものであるから,実質的に導電性のシームレスベルトであることを,その前提とする。 静電転写法が,転写ベルトを帯電させることによりトナーの吸引,引離しをする方法であることは事実であり,帯電を可能とするためには,静電転写法の転写ベルトは,少なくともその表層が不導体(絶縁体・誘電体)であることを ,転写ベルトを帯電させることによりトナーの吸引,引離しをする方法であることは事実であり,帯電を可能とするためには,静電転写法の転写ベルトは,少なくともその表層が不導体(絶縁体・誘電体)であることを必要とするの- 28 -で,単層の静電転写ベルトとしては,通常絶縁体,すなわち非導電性のベルトが使用されることが,本件出願時の技術常識となっている。 この点については,例えば,審決が,本件出願当時の技術常識を示すものとして引用した特開昭63-311263号公報(乙8)に,従来技術として「静電気,的にトナー像を中間転写体に転写する方法も知られている。これは,例えばポリエチレンテレフタレートのような絶縁フィルムからなる中間転写体上に,トナー像を静電気的に転写しさらに記録紙へ再転写するという方法である(1頁右下欄9。」~14行)と記載されているとおりである。 また,多層の静電転写ベルトの表層が絶縁体で構成されることは,例えば,審決が,本件出願当時の技術常識を示すものとして引用した特開昭62-156682号公報乙12に従来の転写ベルトはカーボンブラック等の導電性フイラー(),「,を含むEPDMあるいはポリウレタンゴム等よりなりかつ体積抵抗率10Ω・ cm以下の導電性シートを内側に,これに対し体積抵抗率10Ω・cm以上で絶 縁性を有する誘電体フィルムを外側にして,両者を貼り合わせ,…無端状とすることにより製造されていた(2頁左上欄13行~右上欄6行)と記載されていると。」おりである。 したがって,本件出願の時点においては,非静電転写法(押圧転写法)用転写ベルトにおいては,導電性ベルトであることが重要となるので,本件導電性シームレスベルトを用いることができるが,静電転写法用転写ベルトにおいては,帯電させ(),るため 転写法(押圧転写法)用転写ベルトにおいては,導電性ベルトであることが重要となるので,本件導電性シームレスベルトを用いることができるが,静電転写法用転写ベルトにおいては,帯電させ(),るために少なくともその表層が非導電性絶縁性・誘電性である必要があるので本件導電性シームレスベルトを,多層の静電転写ベルトの導電層として用いることはできるものの,単層の静電転写ベルトとしては絶縁フィルムを用いることが,むしろ技術常識であった。 本件明細書には,導電性のシームレスベルトを,あえて単層の静電転写ベルトとして用いる理由も,これを静電転写ベルトとして用いることができるという技術的,,な裏付けや実験データも体積電気抵抗値に係る数値限定の具体的な技術的意義も- 29 -また,本件シームレスベルトを用いた転写ベルトに係る実施例すらも,何ら記載されていない。このような点についての開示を欠く以上,本件明細書に,単層の静電転写ベルトへの本件シームレスベルトの使用に係る発明が,自明の事項として記載されていたとすることはできない。 原告は,本件明細書の【表1】に示された表面電気抵抗値を,本件発明が単層の静電転写ベルトへの利用を目的としたものであることの根拠としてあげるが,【表1】には,本件発明の実施例1~3について,10~10Ω/□のオーダー を持つ表面電気抵抗値が示されている。かかる表面電気抵抗値を持つ単層シームレスベルトが,単層の静電転写ベルトとして使用可能なものか検討すると,前記乙8には,単層静電転写ベルトとして使用可能な芳香族ポリイミドフィルムの表面電気抵抗値(表面抵抗率RsΩ/□)のオーダーについて「Rsが10未満では,像, 保持体から転写される際,中間転写体上の電荷が逃げてしまいトナー像を中間転写体側へ吸引する力が働かなくなり,うま 電気抵抗値(表面抵抗率RsΩ/□)のオーダーについて「Rsが10未満では,像, 保持体から転写される際,中間転写体上の電荷が逃げてしまいトナー像を中間転写体側へ吸引する力が働かなくなり,うまく転写されず,鮮明な画像を得ることはできなくなる(4頁左下欄9~13行)と記載されている。 。」そうすると,体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲を持つ本件シームレスベ ルトは,1~10Ω・cm未満の範囲の体積電気抵抗値を持つものについて,単層 静電転写ベルトとしての使用に適さない。しかも,上記実施例1~3の表面電気抵,,,抗値のオーダーはすべて10未満であるから本件出願時の技術常識によれば 本件実施例のものは,すべてその導電性のために電荷が逃げてしまい,十分な帯電をさせることが不可能となり,到底単層の静電転写ベルトとしては使用し得ない。 特公昭60-10625号公報(乙14)は,原告提出の甲8に「転写材担持,部材にカーボンブラックを分散させることは,特開昭60-10625号公報に記載されている(7頁11欄46~48行:なお,記載中の「特開昭」は「特公。」,昭」の誤記)として引用された従来技術を示す刊行物である。乙14には「転写,ベルト19の抵抗が低くなり過ぎると,転写ローラ24a,24b,24c或いはコロナ帯電器30a,30b,30cによる転写帯電が効かなくなり,転写効率が- 30 -悪化する(2頁4欄27~31行)と記載され,実験結果を示す3頁5欄の表に。」は,電荷を与え,静電気的にトナー像を感光体ドラム3から転写紙1に転写する場 合エンドレスベルトの固有抵抗値が10Ωcm未満では転写効率が悪化し10,,Ωcmの場合には,転写効率が0%となり,トナー像が転写できないことが記載されている。 このよ 紙1に転写する場 合エンドレスベルトの固有抵抗値が10Ωcm未満では転写効率が悪化し10,,Ωcmの場合には,転写効率が0%となり,トナー像が転写できないことが記載されている。 このように,本件出願時,少なくとも10Ω・cm未満の体積電気抵抗値を持 つシームレスベルトは,静電的な転写に向かないと,当業者に考えられていたのであるから,このような体積電気抵抗値の範囲を包含する,1~10Ω・cmの範囲 の体積電気抵抗値を必須構成要件とする本件シームレスベルトが,単層の静電転写,。 ベルトに使用可能であることは当業者の技術常識ではなかったというべきである原告が根拠として挙げる甲7は,10~10Ω・cmの体積固有抵抗値の範囲 について,単に「好適」と記載するのみであって,実際に,この抵抗値の範囲が単層の静電転写ベルトとして使用可能な範囲であり,かつ好適な範囲であることを実証するに足る,実験データ等の根拠事実は,何ら開示されていない。 甲8(特開平6-75420号公報)には「本発明の転写材担持部材の体積抵,抗率は,1×10~1×10[Ω・cm]…が好ましい(段落【0035) 。」】と記載されているが,甲8の転写材担持部材は,トナー像を担持していわゆる中間転写ベルトとして機能する単層静電転写ベルトではなく,紙等の転写材を担持搬送して,転写材に静電的にトナー像を転写させるものであるから,むしろ,搬送ベルトとでもいうべきものである。してみると,甲8記載の転写材担持部材の体積抵抗率は,本件の単層静電転写ベルトとは無関係の事項であるから,甲8は,体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲の導電性シームレスベルトを,単層の静電転写ベ ルトに使用することが,本件出願時の技術常識であったことを,証明するものではな 係の事項であるから,甲8は,体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲の導電性シームレスベルトを,単層の静電転写ベ ルトに使用することが,本件出願時の技術常識であったことを,証明するものではない。 (2)原告は,本件シームレスベルトの機械的物性と電気抵抗値のばらつきの程,。 度に係る特性が技術課題とされるのは静電転写ベルトのみである旨主張している- 31 -,,しかしながら強度に寄与しない導電性微粉末を含有する導電性ベルトにとって当該ベルトが実用に耐えるだけの優れた機械的物性を維持していることが必要とされることは,当然である。また,かかる導電性ベルトの電気抵抗値のばらつきは,絶縁体である合成樹脂に導電性微粉末を混合したことにより生じるものであるから,所定の導電性を維持するためにばらつきを少なくすることも,導電性微粉末を含有する導電性ベルトにとって,一般的な課題である。 強度についていえば,例えば,審決が引用した刊行物2(乙2)には,導電性微粉末を分散したポリイミドワニスを遠心成形したシームレスベルトについて「耐,久性が大きく,エンドレス状で継ぎ目のないシームレスベルト状の静電記録体を提」(),供することを目的とする2頁左上欄15~18行と記載されているとともにこれが引っ張り強度に優れるものである旨記載されている(表1とその説明。 )また,電気抵抗値の均一性についていえば,例えば,審決が引用した刊行物6(乙6)には,導電性カーボンを含む樹脂からなる,半導電性のシームレスベルトについて「複写機等における映像機能性ベルト,メモリー機能,静電コントロー,,,。」ル機能搬送等に用いる場合は上記各性能を供えることが望ましい場合が多い(4頁左上欄14~17行)と記載され,かかる性能の一つとして,表面電気抵抗の最大 リー機能,静電コントロー,,,。」ル機能搬送等に用いる場合は上記各性能を供えることが望ましい場合が多い(4頁左上欄14~17行)と記載され,かかる性能の一つとして,表面電気抵抗の最大値に対する最小値の比について「好ましい表面電気抵抗の前記比率は0.1以上の範囲である(3頁左下欄15~16行)と,電気抵抗値の均一性が必要と。」されることが記載されている。 このように,一般に導電性微粉末を含有する導電性シームレスベルトにおいて,実用に耐える優れた機械的物性を備え,電気抵抗値のばらつきが小さい必要のあることは,当然のことであるとともに,種々の利用目的に共通の課題であるので,単にかかる課題が本件明細書に記載されていることをもって,単層の静電転写ベルトを本件シームレスベルトの用途とする発明の課題が記載されていることの根拠とすることは,当を得ない。 実際,本件明細書には,段落【0002】~【0004】に「従来より導電性,- 32 -のシームレス状のベルトは各種存在するが,これらはその電気抵抗値がばらついていたり,また,機械的特性等の不十分なものが多々散見された。…各部における電気抵抗値のばらつきが少なくかつ機械的物性等各種物性に優れたシームレスベルトの提供を可能とした」と,上記導電性微粉末を含有する導電性ベルトの一般的な。 課題は記載されているが,格別,単層の静電転写ベルトという特定の用途における固有の課題に言及した記載はない。 さらに,本件明細書の【表1】には,本件発明の比較例として,導電性微粉末を含有しない,絶縁性のポリイミドシームレスベルトの性能が記載されているが,これを見て明らかなように,該ベルトの体積電気抵抗値は10Ω・cmであり,そ の抵抗値にばらつきのないものであるとともに,その引っ張り強度,破断強度も,当 レスベルトの性能が記載されているが,これを見て明らかなように,該ベルトの体積電気抵抗値は10Ω・cmであり,そ の抵抗値にばらつきのないものであるとともに,その引っ張り強度,破断強度も,当然のことながら,本件発明の導電性微粉末を含有するシームレスベルトより優れているものである。本件出願時の技術常識では,単層の静電転写ベルトとして,かかる絶縁性のシームレスベルトを用いるのが適当とされていたのであり,本件明細書には,単層の静電転写ベルトにわざわざ導電性シームレスベルトを用いる理由について記載されていない。 (3)本件明細書には「転写ベルト」が「単層」であるとの明示的記載はなく,,また,実施例の記載より本件「シームレスベルト」が単層であることが自明であるとしても,それを素材として製作される「転写ベルト」が単層であることが自明とはいえない。 転写ベルトには実際多層のものがあり,本件シームレスベルトを,多層の押圧式転写ベルトの基材や,多層の静電転写ベルトの導電層として用いることができることは本件出願時の技術常識に照らして明らかである。 【】,,本件明細書の前記段落0022の記載によれば本件シームレスベルトには多層の構造を有する機能性ベルトの「基材」としての用途も想定されているということができる。原告は,上記段落記載の「転写ベルト」との語句は「基材」との,限定を欠くので,本件の「転写ベルト」は単層である旨主張するが「基材」との,- 33 -限定を欠くと解しても,層構造についての限定がなくなることから「単層の転写,ベルト」と「多層の転写ベルト」とが個別化されずに含意されることになり「基,材」としての使用を排除できない。 (4)以上のとおり本件明細書又は図面には用途の特定されない汎用のシー,,,ムレスベルトに係 転写ベルト」とが個別化されずに含意されることになり「基,材」としての使用を排除できない。 (4)以上のとおり本件明細書又は図面には用途の特定されない汎用のシー,,,ムレスベルトに係る発明が開示されるのみであり,本件シームレスベルトの用途を単層の静電転写ベルトに特定する発明について,その目的,構成,効果,あるいは実施例は,何ら記載されていない。たとえ,本件発明について,本件出願後,出願時の技術常識に反して,単層の静電転写ベルトという特定用途に,本件シームレスベルトが使用可能であることが発見され,また,その適用により予期せぬ効果があることが見出され,訂正審判請求書(24頁)記載のような商業的成功があったとしても,出願の時点を遡及させてその保護を得ようとすることは,特許法が予定するところではなく,許されるべきではない。 取消事由1(本件補正についての判断の誤り)に対してそもそも,訂正の審判請求書の補正においては,訂正事項の補正は,訂正事項の削除,及び軽微な瑕疵の補正等に限られ,新たに訂正事項を加える,あるいは訂正,。 事項を変更することは審判請求書の要旨の変更に該当するものとして許されない本件補正は,特許請求の範囲の訂正事項について「遠心成形法により得られる,単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」を「遠心成形法により得られる単層転写ベルトとして使用するシームレスベルト」と補正し「表面から電荷を,かけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能なことを特徴とするシームレスベルト」を「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な単層転写ベルトとして使用することを特徴とするシームレスベルト」と補正するものであるから,明らかな誤記等の訂正事項の軽微な瑕疵の補正と て内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な単層転写ベルトとして使用することを特徴とするシームレスベルト」と補正するものであるから,明らかな誤記等の訂正事項の軽微な瑕疵の補正とはいえず,訂正事項そのものを変更するものであるから,審判請求書の要旨を変更するものであることは明らかである。 したがって,本件補正が本件訂正審判請求書の要旨を変更するとした審決の結論- 34 -に誤りはない。仮に,原告が主張するとおり,本件補正が本件訂正審判請求書の要旨を変更しないものであるとすれば,本件補正を却下したことは,理由A~Cに基づいて訂正を違法とした審決の結論に影響しないこととなる。 取消事由2(本件訂正についての判断の誤り)に対して3-A取消事由2A(理由Aについての判断の誤り)に対して「ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,且つ遠心成形法により得られるシームレスベルトであって」を「ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,,,且つ遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルトであって」に訂正する訂正事項は,構文上「単層の転写ベルトとして使用する」,,が「シームレスベルト」を修飾するとも「単層の」と「転写ベルトとして使用す,る」とが,それぞれ「シームレスベルト」を修飾するとも解し得る。この点,明細書の記載を参酌して,上記いずれの解釈とすべきか決定しようとしても,願書に添付した明細書又は図面には「単層の転写ベルト」も「単層のシームレスベルト」,も明示的に記載されていないので,明細書の記載を参酌して,いずれであるか定めることもできない。 また「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をか,」,「」,けることが可能という節は形式上シームレスベルトを形容 て,いずれであるか定めることもできない。 また「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をか,」,「」,けることが可能という節は形式上シームレスベルトを形容するものであり「シームレスベルト」を対象として,その電気的性質について,これを機能的に限定することを目的とした節と解せるものの「転写ベルトとして使用する」との用,途についての限定を勘案した場合,転写ベルトとしての使用態様を,実質的に静電転写法用の転写ベルトとして使用するものにさらに限定し,対象となる転写ベルトを実質的に下位概念化することを目的とした節とも解し得る。 素材としての「シームレスベルト」が「単層」であることと,シームレスベル,トを用いて製造された「転写ベルト」が「単層」であることとは「単層」である,,とする対象の違いのためにその技術的意義を異にし,同様に,素材としての「シームレスベルト」が「電荷をかけることが可能」であることと,シームレスベルト,- 35 -「」,「」,を用いて製造された転写ベルトが電荷をかけることが可能であることも同様に,対象の違いによりその技術的意義を異にするので,いずれと解釈するかによって本件訂正発明の技術的範囲が異なることとなる。結局,本件訂正発明は不明りょうであって,これを明確に把握することができない。 したがって,本件訂正は,特許請求の範囲を不明りょうとするものであるから,特許請求の範囲を減縮することを目的とするものということはできず,かつ,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえないとした審決の判断に誤りはない。 3-B取消事由2B(理由Bについての判断の誤り)に対して本件シームレスベルトを単層の静電転写ベルトとして用いることは技術常識ではなく,本件明細 るものともいえないとした審決の判断に誤りはない。 3-B取消事由2B(理由Bについての判断の誤り)に対して本件シームレスベルトを単層の静電転写ベルトとして用いることは技術常識ではなく,本件明細書の記載から自明とはいえないことは前記のとおりである。本件発明を,実質的に単層の静電転写ベルトとして使用する,1~10Ω・cmの範囲の 体積電気抵抗値をもつシームレスベルトに係る発明に訂正しようとする本件訂正は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないので,審決のした判断に誤りはない。 原告は,本件明細書の,シームレスベルトの製法を記載した【0007】~【0019】段落,及び実施例を記載した【0025】~【0027】段落の記載,,より本件シームレスベルトが単層であることを当業者が理解できる旨主張するが本件シームレスベルトが単層であるとしても,それを用いて製造される転写ベルトが単層であることを意味するものではない。 また,原告は,本件明細書の【0022】~【0023】段落の記載より「表,面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能な単層の転写ベルトのみが本件シームレスベルトの用途であること」が,当業者に自明な事項として理解できる旨主張しているが,出願時の技術常識を参酌して検討しても「転写ベルト」が,原告主張以外のものを含むことを排除し得ない。 ,また,この記載を,本件出願時の技術常識を参酌して検討してみても「電荷を,- 36 -かけることが可能」な旨の記載が,感光性ベルトや記録体ベルトをその対象としたものであるとする解釈を妨げない一方,必ずしも転写ベルトをその対象として含むと解さなくても,記載全体を合理的に理解し得ることから「転写ベルト」が非静,電式(押圧転写式)のものであ をその対象としたものであるとする解釈を妨げない一方,必ずしも転写ベルトをその対象として含むと解さなくても,記載全体を合理的に理解し得ることから「転写ベルト」が非静,電式(押圧転写式)のものであることを排除し得ず,さらに「転写ベルト」が静,電式のものであったとしても,多層の静電転写ベルトでも「電荷をかけることが可能」なのであるから「転写ベルト」が多層のものであることも妨げない。 ,以上のとおり,原告の主張には理由がなく,本件訂正は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内でしたものとはいえない。 3-C取消事由2C(理由Cについての判断の誤り)に対して(1)本件訂正に係る特許請求の範囲の記載は不明りょうなものであるが,本件明細書から,単層の状態で遠心成形法により製造されるシームレスベルトが把握でき,また,このシームレスベルトは,所定の体積電気抵抗値を持つ導電性のベルトであることが把握できるので「単層の」は「シームレスベルト」を修飾して限定,するものであり「表面から電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から,電荷をかけることが可能」という節は「シームレスベルト」を対象として,機能,性ベルトとしての使用時におけるその導電的な性質について,これを機能的に限定することを目的とした節であると解することが一応可能である。仮にこのように解した場合には,審決記載の理由から,本件訂正発明は,独立特許要件に欠けるものとなる。 (2)仮に,原告が主張するように,1~10Ω・cmの範囲の体積電気抵抗値 ,,を持つシームレスベルトを静電転写法における単層の転写ベルトに用いることが本件出願時,当業者の技術常識であったとしても,刊行物1には,上記体積電気抵抗値の範囲内の10Ω・cmの体積電気抵抗値を持つ単層のシームレスベルトであ 写法における単層の転写ベルトに用いることが本件出願時,当業者の技術常識であったとしても,刊行物1には,上記体積電気抵抗値の範囲内の10Ω・cmの体積電気抵抗値を持つ単層のシームレスベルトであ る基体が記載され,これを画像形成装置の中間転写ベルトに用いることも記載されている。したがって,技術常識を参酌すれば,基体を静電転写法における単層の転写ベルトに用いることは,刊行物1の記載より自明のこととして把握し得る。 - 37 -このように,本件訂正事項が原告主張のとおりのものであるとしても,その場合の一致点は,審決が認定した一致点と表現上は変わらず,審決の結論に影響を及ぼすことはない。 第5当裁判所の判断 取消事由1(本件補正についての判断の誤り)について原告は,本件訂正審判請求書の補正により請求項1の「遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」との文言のうち「単層,」「」(「」の転写ベルトとの文言を単層転写ベルトとの文言に変更し以下本件補正1という同請求項の可能なことを特徴とするシームレスベルトとの文言を可。),「」「能な単層転写ベルトとして使用することを特徴とするシームレスベルト」との文言に変更した(以下「本件補正2」という。これに対し,審決は,本件補正1,2。)は,いずれも,審判請求書の要旨を変更するものであるから認められないと判断した。 ,,「」,「」原告は本件補正1について単層のとの文言はその直後の転写ベルトを修飾する語であることは明らかであり,本件補正2についても,本件補正1に平仄を合わせたものにすぎないから,審判請求書の要旨を変更するものではないと主張する。 しかしながら「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」との文言,のうち単 についても,本件補正1に平仄を合わせたものにすぎないから,審判請求書の要旨を変更するものではないと主張する。 しかしながら「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」との文言,のうち単層のとの文言はその前後の文脈に照らしても転写ベルトとシー,「」,,「」「ムレスベルト」のいずれの文言に係るかは特定できず,いずれにも係り得るものである(なお,平成16年12月27日付け手続補正書(甲5の1)の「7補正の」,「「」,理由欄には単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルトとの記載は「単層の転写ベルト」であり,かつ「単層のシームレスベルト」である(3頁下」から12~10行「単層の」が「シームレスベルト」を修飾すると解したとし),「ても4頁下から6~5行などと記載され原告自身単層のとの文言がシー」(),,「」「- 38 -ムレスベルト」に係り得ることを否定していない。 。)他方,補正後の「単層転写ベルト」との文言は「単層」が「転写ベルト」に係,ることが明らかである。 このように,本件補正後の「転写ベルト」は「単層」のものに限定される一方,,「」「」前記のとおり本件補正前の請求項1の単層のとの文言はシームレスベルトとの文言に係るとも解することができ,その場合「転写ベルト」や「シームレスベルト」の意味する範囲が変わる以上,本件補正1は,訂正事項の同一性や範囲を実質的に変更するものというべきである。また,本件補正2も「転写ベルト」を単,層に限定することに伴うものであるが,本件補正1と同様の理由から,訂正審判請求書の要旨の変更に当たるということができる。 したがって,本件補正が,審判請求書の要旨を変更するものとして許されないとした審決の判断に誤りはない。 取消事由 件補正1と同様の理由から,訂正審判請求書の要旨の変更に当たるということができる。 したがって,本件補正が,審判請求書の要旨を変更するものとして許されないとした審決の判断に誤りはない。 取消事由2B(理由Bについての判断の誤り)について審決は,本件訂正に係る「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」,「」「」,「」との文言のうち単層のが転写ベルトに係るとすると単層の転写ベルトは,本件明細書又は図面に記載した事項とはいえないので,このような訂正は許されないと判断した。これに対し,原告は,本件明細書又は図面には,静電転写法に使用する単層の転写ベルトが記載されていると主張する。 (1)そこで,検討するに,本件明細書又は図面には,以下の記載がある。 「0002【従来の技術】従来より導電性のシームレス状のベルトは各種存在するが,【】これらはその電気抵抗値がばらついていたりまた,機械的特性等の不十分なものが多々散見された。その原因は導電性微粉末と各種有機高分子材料との混合が不十分でばらついたりする他に,こうした導電性微粉末の添加により機械的特性が低下するためであった。 【0003】また従来よりこのようなシームレスベルトは押出成形法,遠心成形法等により作成されるが,押出成形法では概して厚み,電気抵抗値のばらつき,機械的特性等が悪化する傾向にあり,遠心成形法では混合材料間の比重差による表面と内表面との電気抵抗値に差が生- 39 -じる傾向にあるため,上記のような問題点が生じていた。 【0004【発明が解決しようとする課題】本発明者らは以上のような問題点を解決するべ】く種々検討を繰り返し,少なくとも各部における電気抵抗値のばらつきが少なくかつ機械的物性等各種物性に優れたシームレスベルトの提供を可能にした。 【0005】本発 らは以上のような問題点を解決するべ】く種々検討を繰り返し,少なくとも各部における電気抵抗値のばらつきが少なくかつ機械的物性等各種物性に優れたシームレスベルトの提供を可能にした。 【0005】本発明の特徴とするところは,ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,且つ遠心成形法により得られるシームレスベルトであって,ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲にあり,体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲 にある点にある。 【0006】そして,こうすることにより引張強度,熱収縮率及び耐屈曲数の値が,導電性微粉末を含有しない同一材料から構成された同一形状のシームレスベルトに比して,好ましくは50%以上,より好ましくは75%以上の値を確保することも可能となる。…【0017】遠心成形法とは,周知のように,前記原材料を筒状シリンダーの内面に塗布し,筒状シリンダーを回転させてその遠心力により筒状の樹脂シート,即ちシームレスベルトを得ようとするもの…【0018】…原材料を塗布装置11より供給し,随時シリンダー1の内面に塗布する。…シリンダー1を高速回転すると共に加熱器8により,所定温度に加熱し,溶媒を除去すると共に樹脂をヒートセットせしめ,円筒状成形物,即ち筒状体を得る。次いで冷却せしめ,筒状シリンダー1から筒状体を取りだすことにより本発明に係るシームレスベルトが作成されるのである。…【0019】例えば図4,図5に示すような装置によっても作成可能である。この装置では筒状シリンダー1は駆動回転ロール対16,16上に配置されており,押えロール群17により安定回転できるようになっている。 【0022】本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はないが,好ましくは複写機等の感光性ベルト(電子写真感光体)の基材,転写ベルト, えロール群17により安定回転できるようになっている。 【0022】本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はないが,好ましくは複写機等の感光性ベルト(電子写真感光体)の基材,転写ベルト,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材等,いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待されている。 - 40 -【0023】このような機能性ベルトとして用いられる際に,本発明のものは表面から電荷をかけて内表面にアースを取ることが可能で装置そのもののコンパクト化を可能とするし,また内表面から電荷をかけることも可能で多機能性をいかんなく発揮するものである。 【0025】~【0026】実施例1…図4,図5に示す遠心成形装置を用いてシームレス状のポリアミック酸フィルムを得た…径100mm巾300mm厚さ50μの導電性シー。 ,,ムレスベルトを得た。 【0027】実施例2…実施例1と同じ条件で遠心成形,熱処理を行い径72mm,巾300mm,厚さ40μの導電性シームレスベルトを得た。 【0030】以上の結果を表1に記す(判決注:表1】には,実施例1~実施例3,比較。(【例1について,体積電気抵抗値(Ω・cm,表面及び内表面の表面電気抵抗値(Ω/□,引))張強度(kg/mm,破断伸度(%,熱収縮率(%,耐屈曲回数(回)の数値が記載され2)))ており体積電気抵抗値として実施例1の10×10~50×10実施例2の2 ,,. . ,. ×10~4.5×10,比較例1の10が記載されている) 。 【0031】本発明は以上の通りであり,本発明によるシームレスベルトは,電気抵抗値のばらつきが少ない上に機械的特性が優れた好適なものであり,複写機の機能性ベルトでは精密な画像が得られるのを始め,各種の 0031】本発明は以上の通りであり,本発明によるシームレスベルトは,電気抵抗値のばらつきが少ない上に機械的特性が優れた好適なものであり,複写機の機能性ベルトでは精密な画像が得られるのを始め,各種の用途に幅広い需要が期待できるものである」。 (2)上記記載によれば,本件明細書には,電気抵抗値のばらつきが少ない上に優れた機械的特性を備えることを技術課題とし,ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,遠心成形法により得られるシームレスベルトであり,ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmという広い範囲にあり,体積電気抵抗値 の最大値が最小値の1~10倍の範囲にあるものが開示されているものと認められるそして本件シームレスベルトは遠心成形法を用い原材料を筒状シリンダー。 ,,,の内面に塗布し,筒状シリンダーを回転させてその遠心力により得られる筒状の樹脂シートであるから,その形状が単層であることは明らかである。 (3)本件シームレスベルトの用途については,段落【0022】に「本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はないが,好ましくは複写機等の感- 41 -光性ベルト(電子写真感光体)の基材,転写ベルト,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材等,いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待されている」と記載され,それ以外の記載は存在しない。 。 ここにいう「転写ベルト」については,文言上「転写ベルト」として利用する,ことが記載されているとも「転写ベルト…の基材」として利用することが記載さ,れているとも解釈し得るが,上記段落中の「本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はない「いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待さ」れている」との記載に照らすと,本件シームレスベルトは, とも解釈し得るが,上記段落中の「本発明に係るシームレスベルトの用途としては特に制限はない「いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待さ」れている」との記載に照らすと,本件シームレスベルトは,汎用のシームレスベルトであり,その用途から「転写ベルト」は排除されないと考えるのが自然である。 (4)原告は,本件明細書又は図面には,静電転写法に使用される単層の転写ベルトが記載されていると主張する。 しかしながら,転写ベルトには,本件出願当時,単層構造のもの(例えば,特開昭63-311263号公報(乙8,転写層及び基材等からなる多層構造のもの))(例えば,特開昭56-164368号公報(乙1,特開昭57-8569号公)報(乙11,特開昭62-156682号公報(乙12)が知られているものと)),,「」認められるところ本件明細書には本件シームレスベルトを単層の転写ベルトに用いる旨の明示的な記載は存在しない。 また,本件明細書又は図面には「静電転写法」という言葉又はその説明も,静,電転写法に本件発明にかかるシームレスベルトを用いる旨の記載も存在しない。したがって,本件明細書又は図面には,本件シームレスベルトを静電転写法における単層の転写ベルトに用いる旨の明示的な記載はないというほかない。 原告は,本件発明は,静電転写法による複写機等の単層の転写ベルトへの用途を主眼とする発明であって,感光性ベルトの基材や,定着ベルトやOA機器等各種プリンターの記録体ベルトの基材といった用途は,副次的に記載されているにすぎないと主張するが,上記段落【0022】には「好ましくは複写機等の感光性ベル,ト電子写真感光体の基材転写ベルト定着ベルトやOA機器等各種プリンター(),,- 42 -の記録体ベルトの基材等,いわゆる機能性ベルトとして特に 2】には「好ましくは複写機等の感光性ベル,ト電子写真感光体の基材転写ベルト定着ベルトやOA機器等各種プリンター(),,- 42 -の記録体ベルトの基材等,いわゆる機能性ベルトとして特に広範な利用が期待されている」と記載されているのであるから,原告の主張は採用できない。 。 (5)次に,本件シームレスベルトを,静電転写法における単層の転写ベルトとして使用することが,本件明細書又は図面に明示的に記載されていないとしても,その記載から自明ということができるかどうかについて,検討する。 ア原告は,本件明細書の【表1】に記載されたシームレスベルトの機械的,あるいは電気的特性は,静電転写法における単層転写ベルトとして使用するときにまさに必要となる特性であると主張する。 前記のとおり,本件明細書の【表1】には,電気的特性(体積電気抵抗値,表面電気抵抗値)及び機械的特性(引張強度,破断強度,熱収縮率,耐屈曲回数)に関する数値が記載されており請求項1記載の体積電気抵抗値が1~10Ω・cm,「 ,」,の範囲でかつ体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲にあること同じく「引張強度が導電性微粉末を含有しないシームレスベルトに比較して75%以上の値を有するもの」であること,段落【0004【0031】に記載の「電】気抵抗値のばらつきが少ない」といった効果を裏付ける具体例が記載されている。 しかしながら【表1】記載の電気抵抗値は,あくまでも「シームレスベルト」,について測定したものであって「転写ベルト」の電気抵抗値であることを明示す,る記載はない。また,表1に記載された電気抵抗値のばらつきが小さいという性質,,,,はシームレスベルトの導電性を利用する場合通常好ましい電気的特性でありそれを必要とする用途は「転写ベルト」 る記載はない。また,表1に記載された電気抵抗値のばらつきが小さいという性質,,,,はシームレスベルトの導電性を利用する場合通常好ましい電気的特性でありそれを必要とする用途は「転写ベルト」だけに限られることを示したものではな,い。つまり,本件明細書には,汎用部材である導電性シームレスベルトにとって好適な電気的特性が記載されているにすぎないと理解すべきである。 したがって【表1】に記載された電気抵抗値の結果からは,直ちに「単層の転,,写ベルト」が記載されていると理解することはできず,それが記載されていることが自明ということもできない。 イ原告は,本件明細書記載の「転写ベルト」が,静電転写法における転写ベル- 43 -トであることは,本件明細書に照らし,明らかであると主張する。 しかしながら,本件特許の請求項1には,本件シームレスベルトが静電転写法に,【】【】用いられることは明示されておらず本件明細書の段落0004~0006には,導電性のシームレスベルトとして,電気的特性や機械的特性に優れることが記載されているが,静電転写法の転写ベルトであることを明示した記載は存在しない。また,技術課題との関連について,電気抵抗値のばらつき等が静電転写法の転写ベルトにおける課題であったとしても,本件シームレスベルトが導電性という電気的特性に特徴がある以上は,上記の課題は,導電性シームレスベルトの用途全般において関連するものであり,静電転写法の転写ベルト特有のものではない。 したがって,本件明細書に記載された「転写ベルト」は「静電転写法における,転写ベルト」に特定して記載された事項であると理解することはできない。 ウ原告は,本件発明の転写ベルトが「単層」であることは明らかであると主張する。 原告は,その理由として,本件発明に係 おける,転写ベルト」に特定して記載された事項であると理解することはできない。 ウ原告は,本件発明の転写ベルトが「単層」であることは明らかであると主張する。 原告は,その理由として,本件発明に係るシームレスベルトは単層であり,本件明細書の段落【0022】の「転写ベルト…いわゆる機能性ベルトとして…特に広範な利用が期待されている」の「として」という文言は「…の状態で」との意味,を表す助詞であるから,上記記載は単層のシームレスベルトをそのまま転写ベルトに用いることを意味するものであると主張する。 しかしながら,段落【0022】の記載は「シームレスベルトを転写ベルトの,状態で用いる」ことを意味するとまでは理解できず,単に,シームレスベルトの用途の1つとして「転写ベルト」が例示されているにすぎないというべきである。前記判示のとおり,転写ベルトには,本件出願当時,単層構造のものや,転写層及び基材等からなる多層構造のものなどが知られていたのであるから,本件シームレスベルトが単層であるからといって,そこから製造する「転写ベルト」が「単層の転写ベルト」に特定されると理解することはできない。 エまた,原告は,本件明細書の段落【0023】に基づき,表面から電荷をか- 44 -けて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能なことを特徴とするシームレスベルトは,静電転写法を前提とする転写ベルト以外に存在しないと主張する。 しかしながら上記段落0023に記載された表面から電荷をかけたりアー,【】,スを取る,又は内表面から電荷をかけることを可能にする機能は,本件特許請求の範囲に記載された体積電気抵抗値により規定された導電的性質に由来しており,本件シームレスベルトがある程度の電気伝導を可能とする導電性を有することによ,。 り当該ベ 可能にする機能は,本件特許請求の範囲に記載された体積電気抵抗値により規定された導電的性質に由来しており,本件シームレスベルトがある程度の電気伝導を可能とする導電性を有することによ,。 り当該ベルトに電荷をかけたりアースを取ることが可能となるものと認められるすなわち,段落【0023】の記載は,本件シームレスベルトが有する汎用的な機能を説明したものにすぎないというべきである。 そして,段落【0023】記載の機能を有する本件シームレスベルトは,それが有する導電的性質を必要とする部材において使用できるものであり,当該部材に対して電荷をかけたりアースを取ることは,静電転写法における転写工程に限られることではないから,当該シームレスベルトは,静電転写法に用いる転写ベルト以外の用途においても適用可能というべきである。 さらに,原告は,本件発明は「表面側から」ではなく「表面から」電荷をかけ,るものであることから,基材として使用され,多層構造を採るものは本来的に含まれないと主張するが,本件シームレスベルトを多層のベルトに適用した場合,他の層を介して電荷をかけることが可能であるから,段落【0023】記載の「表面から電荷をかけ」る「転写ベルト」は「単層」のものに限定されるとはいえない。 ,ベルトに対する電気的作用という面では「表面から」でも「表面側から」でも同,等の効果をもたらすものであるから,両者に実質的な意味での差異はないというべきである。 オ以上によれば本件明細書又は図面には単層のシームレスベルトと転,,「」「写ベルト」が記載されていると認められるものの,原告が主張するような,静電転写法に用いる単層の転写ベルトが記載されているということはできない。 - 45 -(6)さらに,出願時の技術常識に照らし,本件シームレスベルトを静電転 認められるものの,原告が主張するような,静電転写法に用いる単層の転写ベルトが記載されているということはできない。 - 45 -(6)さらに,出願時の技術常識に照らし,本件シームレスベルトを静電転写法における「単層の転写ベルト」として使用することが,本件明細書又は図面に記載されているのと同視し得るかどうかについて,検討する。 ア乙8(昭和62年6月12日出願)には,以下の記載がある「中間転写体を使う方法として,静電気的にトナー像を中間転写体に転写する方法も知られている。これは,例えばポリエチレンテレフタレートのような絶縁フィルムからなる中間転写体上にトナー像を静電気的に転写しさらに記録紙に再転写するという方法である1頁右欄9,。」(~14行)「静電気を用いトナー像を中間転写体に転写するという方法は転写効率,解像度,感光体ドラムの寿命とも非常に良好となるが,中間転写体が絶縁体であるため,静電気を除去する装置が必要となり装置が非常に大きくなり,装置のコストも高くなるといった欠点がある(2頁左。」上欄3~8行)「本発明は,トナー像を中間転写体に転写する際,静電気的に転写することができ,かつ,中間転写体に適度な導電性を持たせることによって転写されたトナーの静電気を容易に除去でき,機械特性,熱特性の優れた中間転写体を提供することを目的とするものである(2頁右。」上欄6~11行)本発明はカーボンブラックを5~20wt%含有し表面抵抗率Rs(Ω/□が10≦Rs≦10「,,) の範囲にある芳香族ポリアミドフィルム又は芳香族ポリイミドフィルムからなることを特徴 とする電子写真記録装置用中間転写体に関するものである(2頁右上欄13~18行)。」「Rsが10未満では,像保持体から転写される際,中間転写体上の電荷が逃 リイミドフィルムからなることを特徴 とする電子写真記録装置用中間転写体に関するものである(2頁右上欄13~18行)。」「Rsが10未満では,像保持体から転写される際,中間転写体上の電荷が逃げてしまいトナー 像を中間転写体側へ吸引する力が働かなくなり,うまく転写されず,鮮明な画像を得ることはできなくなる。より好ましくは,カーボン量5~15wt%で表面抵抗率10≦Rs≦10であ る(4頁左下欄9~15行)。」「本発明において体積抵抗率Rvは10≦Rv≦10であることが,本件発明の目的を達成 する上で好ましい(4頁左下欄下から5~3行)。」上記記載によれば,乙8には,絶縁フィルムからなる中間転写体上に,トナー像- 46 -を静電気的に転写しさらに記録紙に再転写するという従来の方法が記載されるとと,,,,もにトナー像を中間転写体に転写する際静電気的に転写することができかつ適度な導電性を持たせることによって転写されたトナーの静電気を容易に除去でき,機械特性,熱特性の優れた中間転写体が記載されるものと認められる。しかしながら,同時に,乙8には,表面抵抗率(Rs)が10未満では,像保持体から転 写される際,中間転写体上の電荷が逃げてしまいトナー像を中間転写体側へ吸引する力が働かなくなり,うまく転写されず,鮮明な画像を得ることはできなくなることが記載されるとともに,好ましい体積抵抗率Rvは10≦Rv≦10であるとさ れている。 イ乙6(平成元年9月1日出願)には,以下の記載がある。 「導電性カーボンを配合したポリカーボネートの継目のないチューブ状フィルムを軸方向と直角方向に所定長さに切断して得られ,フィルム各部の表面電気抵抗が10~10Ω/□の 範囲にあり且つ表面電気抵抗の最大値に対する したポリカーボネートの継目のないチューブ状フィルムを軸方向と直角方向に所定長さに切断して得られ,フィルム各部の表面電気抵抗が10~10Ω/□の 範囲にあり且つ表面電気抵抗の最大値に対する最小値の比が0.01以上の範囲にあることを特徴とする,継目のない半導電性ベルト(特許請求の範囲第1項)。」好ましい表面電気抵抗の最大値に対する最小値の比は01以上であること3頁左下欄15「. 」(~16行)「,,,表面電気抵抗値体積電気抵抗値等のばらつきを少なくコントロールすることができかつ良好な表面精度,すなわち表面の平滑性を維持でき,加えて径,厚さ等の寸法精度に優れたチューブ状フィルムの製造が可能となる。勿論電気抵抗値,表面精度,寸法精度等にこだわらない場合は,どのようにチューブ状にフィルム化しても自由であるが,複写機器等における映像機能性ベルト,メモリー機能,静電コントロール機能,搬送等に用いる場合は,上記各性能を供えることが望ましい場合が多い(4頁左上欄6~17行)。」「一般に,複写機におけるトナーを保持,移送するための映像機能性ベルトは,ある程度の導電性が必要とされ,通常表面電気抵抗値を10~10Ω/□程度に設定することが必要で ある(4頁右上欄9~12行)。」そして実施例1には継目のない半導電性ベルトを製造した具体例が記載され実施例2,,,- 47 -には実施例1で得たベルトを用いて映像機能性ベルトを製作した具体例が記載されている4,(~5頁。 )以上の記載によると,乙6記載の半導電性ベルトは,単層のシームレスベルトであって,それを複写機におけるトナーを保持,移送するための映像機能性ベルトとして用いたものが示されており,この映像機能性ベルトは,ある程度の導電性が必要とさ 導電性ベルトは,単層のシームレスベルトであって,それを複写機におけるトナーを保持,移送するための映像機能性ベルトとして用いたものが示されており,この映像機能性ベルトは,ある程度の導電性が必要とされ,通常表面電気抵抗値を10~10Ω/□程度に設定することが必要 であるものと認められる。 ウ甲7は,本件出願日より前の出願であって,本件出願後に公開された公開公報であり,以下の記載がある。 「請求項1】ポリプレピレン樹脂にMn-Znフィラトの微粉末を分散した組成物からなる【ことを特徴とする導電性プラスチックベルト。 【0001】本発明は導電性プラスチックベルトに関し,10~10Ω・cmの体積固有抵 抗が要求される複写機のトナー転写ベルトなどとして好適なベルトに関する。 0002…電子写真方式により可視像を形成する画像形成装置において帯電されたトナー【】,を感光体より紙上に転写するトナー転写ベルトが使用される。このベルトは,帯電させることができ,しかも除電装置を使用せずに短時間に電荷が減衰する程度の導電性を有することが望まれる。このベルトとして,従来,カーボンブラック,グラファイトなどの導電性微粒子をポリカーボネート樹脂に混合分散させたものが知られている。 0003…カーボンブラック…は…トナー転写ベルトとして好適な10~10Ω・cm【】 の体積固有抵抗を得るには,樹脂中に10容量%以下充填させるだけで十分であるが,そのため,抵抗値のばらつきの少ない導電性ベルトを得るために高度の混練,分散技術を必要とし,或る程度の抵抗値のばらつきが生じることは避けがたい。…【0004】本発明は,抵抗値のばらつきが小さく,また折り曲げに対して強い導電性プラスチックベルトを提供するものであって…【0008】導電性ベルトの製造 抵抗値のばらつきが生じることは避けがたい。…【0004】本発明は,抵抗値のばらつきが小さく,また折り曲げに対して強い導電性プラスチックベルトを提供するものであって…【0008】導電性ベルトの製造は,…混合組成物を…シート状に成形することにより行うことができる。成形は,通常のポリプロピレン樹脂の成形と同じ条件で行うことができる。本発- 48 -明においては,導電性,柔軟性を損なわない範囲で,内部または一面に他材料からなる層を複合することもできる。 【0009】実施例1…厚さ0.2mmのベルトを成形した。 【0015】…分散むらによる体積固有抵抗のばらつきが格段に小さくなる・・柔軟で耐折。 強度の高い耐久性のあるベルトとなり,10~10Ω・cm程度の体積固有抵抗を要求さ れる用途,特に電子写真方式において帯電トナーを搬送・転写するトナー転写ベルトとして好適である」。 以上の記載によると,甲7には,樹脂と導電性微粒子とを含有した導電性プラスチックベルトが知られていたこと,抵抗値のばらつきが小さく機械的性質(耐折強度)に優れた導電性プラスチックベルトという技術課題を解決したものが得られたこと,当該導電性ベルトが電子写真方式におけるトナー転写ベルトに好適であることが記載されているものと認められる。甲7には,導電性プラスチックベルトの形状が「単層」であるとの記載はないが,シート状のベルトを製造すること(段落【0008【0009)が記載され「内部または一面に他材料からなる層を複】】,合することもできる(段落【0008)と記載されているから,単層のものも含」】まれると認められる。 以上によれば,甲7には,体積固有抵抗を10~10Ω・cm程度とする単 層の導電性プラスチックベルトを複写機の転写ベルトに適用できることが開示さ 単層のものも含」】まれると認められる。 以上によれば,甲7には,体積固有抵抗を10~10Ω・cm程度とする単 層の導電性プラスチックベルトを複写機の転写ベルトに適用できることが開示されているといえる。 エ甲8は,平成4年6月29日の国内優先権出願を基礎とする特許出願の公開公報であり,その国内優先日は本願出願日の後であるところ,同証拠には,以下の記載が存在する。 「0005】本発明は,機械油の付着,機械的あるいは電気的外力によってもクラックを生【じることがない,耐久性に優れた転写材担持部材及びこの転写材担持部材を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。 【0022】…記録の行われる記録紙やプラスチックフィルムなどの転写材は,端部がグリッ- 49 -パ15に把握されて転写材担持部材11上に担持される。…【0026】…感光体3上のトナー像は,転写材担持部材11上に担持された転写材Pに接する。トナー像は,転写用放電器21により,トナーの極性とは逆極性のコロナ放電を受けることにより転写材Pに転写される。 【0034】本発明の転写材担持部材には,導電性微粒子を含有してもよい。…転写材担持部材に導電性微粒子を含有することにより,転写材及び転写材担持部材の帯電を防止することができ画像が乱れることがない。…本発明で使用する一般式(1)の重合体は,導電性微粒子を均一に分散させることができ,転写材担持部材を所望の抵抗値にすることができる。 【0035】本発明の転写材担持部材の体積抵抗率は,1×10~1×10[Ω・cm, ]更には1×10~1×10[Ω・cm]が好ましい。 【0041】本発明の転写材担持部材は,例えば押出成形あるいは射出成形により成形することにより得られ,シート状でも,エンドレスベルト状でもよい。 ×10~1×10[Ω・cm]が好ましい。 【0041】本発明の転写材担持部材は,例えば押出成形あるいは射出成形により成形することにより得られ,シート状でも,エンドレスベルト状でもよい。エンドレスベルト状転写材担持部材は,シート状転写材担持部材の両端を,熱融着,超音波融着あるいは接着剤などにより接着して得られる」。 以上の記載によれば,甲8記載の「転写材担持部材」は,紙などの「転写材」を,,担持搬送して当該転写材に感光体のトナー像を静電的に転写させるものであってエンドレスベルト状のものが例示されていると認められる。甲8記載の転写方式は感光体上のトナーが中間転写ベルト上に一旦移動し,次に転写材(紙)に移動する中間転写法とは異なり直接転写法に相当することは明らかであるまた甲8,「」。 ,のエンドレス状ベルトは,段落【0041】記載のように,シート部材の両端を接合するという継ぎ目(シーム)が残存する方法により製造するから「シームレス,ベルト」には該当しない。さらに,甲8は,本件出願後の出願であることも併せ考えると,甲8に記載された技術内容でもって,本件出願時の技術常識を判断することはできないというべきである。 オ以上によれば,被告の主張するように,単層の静電転写ベルトとして導電性のベルトを使用することが,本件出願時の技術常識に反するとまではいえず,本件- 50 -出願当時には,静電転写法に単層の導電性ベルトを使用することも知られていたというべきである。 しかしながら,上記証拠には,本件発明に係るシームレスベルトのようにベルト各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmという広い範囲に及ぶものは開示 されておらず,かえって,乙8には,表面抵抗率(Rs)が10未満では,像保持 体から転写される際,中間転写 にベルト各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmという広い範囲に及ぶものは開示 されておらず,かえって,乙8には,表面抵抗率(Rs)が10未満では,像保持 体から転写される際,中間転写体上の電荷が逃げてしまいトナー像がうまく転写されないとの問題が記載され,好ましい体積抵抗率Rvは10≦Rv≦10であると されている。本件明細書に開示された実施例の体積電気抵抗値及び表面電気抵抗率は,いずれも10未満であるところ,本件明細書には,本件発明のシームレスベ ルトを静電転写法における単層の転写ベルトとして用いることができる旨の記載はなく,それを示す技術的な裏付けや実験データも何ら記載されておらず,また,本件シームレスベルトを用いた転写ベルトに係る実施例も記載されていないことは前記判示のとおりである。そうすると,本件出願当時,好適の電気抵抗値を一定の範囲とする単層の導電性ベルトが知られていたとしても,これらの点についての開示を欠く以上,本件発明に係るシームレスベルトを静電転写法における「単層の転写ベルト」として使用することが,当業者に明らかであり,本件明細書又は図面に記載されているのと同視し得るともいうことができないというべきである。 (7)以上のとおり,本件訂正に係る「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」との文言が,単層転写ベルトとして使用するシームレスベルトを意味すると解すると,この訂正は,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内とはいうことができないことになる。したがって,かかる意味での本件訂正は許されないとした審決の判断に誤りがあるとはいえない。 取消事由2C(理由Cについての判断の誤り)について本件訂正後の請求項1の「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」,「」「」,「」との文言 決の判断に誤りがあるとはいえない。 取消事由2C(理由Cについての判断の誤り)について本件訂正後の請求項1の「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」,「」「」,「」との文言のうち単層のが転写ベルトに係るとすると単層の転写ベルトは本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内とはいえないので,本件訂正は許さ- 51 -れないということになるが「単層の」が「シームレスベルト」に係るとすると,,,,本件明細書又は図面に記載した事項の範囲内ということになるのでその場合には独立特許要件を満たすかどうかが問題となる。 審決は,上記前提に基づいて,本件訂正発明が独立特許要件を満たすかどうかの検討を行っているところ,原告は,審決の一致点の認定及び相違点1の判断は,誤りであると主張する。 (1)一致点認定の誤り審決は,一致点を「ポリイミド系樹脂と導電性微粉末とを含有し,且つ遠心成形法により得られる単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルトであって,該ベルトの各部における体積電気抵抗値が1~10Ω・cmの範囲であり,表面か ら電荷をかけて内表面にアースを取り,また内表面から電荷をかけることが可能なシームレスベルト」と認定したところ,原告は,審決の一致点の認定は誤りであ。 ると主張する。 アそこで,検討するに,刊行物1(乙1)には,以下の記載がある。 「電荷保持体上のトナー像をトナー用中間転写体に転写し,しかる後トナー用中間転写体から複写材へ転写して永久像としてのトナー像を得る画像形成装置において,前記トナー用中間転写体の少なくともトナー像担持面が導電性であることを特徴とするトナー用中間転写体(特。」許請求の範囲第1項)「静電的転写法に於ては,その技術構成上必然的に生ずる電界のため像の乱れを起し問題にされ 体の少なくともトナー像担持面が導電性であることを特徴とするトナー用中間転写体(特。」許請求の範囲第1項)「静電的転写法に於ては,その技術構成上必然的に生ずる電界のため像の乱れを起し問題にされて来たが,特に近時開発された所謂リテンション方式に於ては,静電潜像を繰返し使うために累積してゆく潜像の乱れは致命的であって,非静電的転写法が注目されて来た(2頁左上。」欄1~6行)「この中間転写媒体はエンドレスベルト方式の中間転写ベルトローラ機構あるいは中間転写ローラ機構が考えられる。しかしながら,この中間転写媒体を使用する方式は更に解決・改良すべき数々の問題点があるその問題の1つは中間転写媒体の帯電性である2頁左上欄14。 。」(~19行)- 52 -「リテンション方式に限らず,中間転写媒体を用いる静電的作画法に於ては,帯電により画質特に尖鋭度解像力に悪影響を与えることはしばしばであった2頁右上欄18行~左下欄1,。」(行)「本発明の目的は帯電防止したトナー用中間転写媒体を提供することにある(2頁左下欄8。」~9行)「本発明の転写体は無端状ベルトあるいはローラのいずれであってもよく,要はトナー担持面が導電性であればよい。このトナー担持面の電気抵抗は10Ω・cm以下にすれば充分であ る(3頁左下欄17~20行)。」「本発明の転写体が無端状ベルトの場合,上記ベルト支持体自身を例えば導電性材料を含有させて導電性にしてもよいし,上記ベルト支持体に転写層を設け,該層に例えば導電性材料を含有させて導電性にしてもよい(3頁右下欄5~9行)。」「本発明の転写体は帯電の希薄一様化によって,画質に対する帯電防止の目的を達することができるが,尚完全にはアースを設けて電荷を系外に排除できる(4頁右上欄11~14行)。」 下欄5~9行)。」「本発明の転写体は帯電の希薄一様化によって,画質に対する帯電防止の目的を達することができるが,尚完全にはアースを設けて電荷を系外に排除できる(4頁右上欄11~14行)。」「実施例3基体自身に導電性を与えた中間転写ベルトを構成した。基体は,重量比でポリ. ,,イミドワニス35部カーボンブラック1部及びN-メチルピロリドン7部を加え均一化しこれを遠心鋳造によって100℃加熱乾燥し厚み50μの中間転写ベルトとした。この基体上に実施例2と同じ転写層を同じ方法で設けた。表面の転写層の電気抵抗は10Ω・cmで, 基体のそれは10Ω・cmであった(4頁右下欄13行~5頁左上欄2行) 。」イ原告は,刊行物1記載の基体は「押圧転写方式の)転写ベルトの基材に使,(用する単層のシームレスベルト」であって,これを「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」と同義であるとして,一致点と認めることは誤りであると主張する。 しかし,本件訂正発明に係る請求項1の「単層の」が「シームレスベルト」に係ることを前提にすれば,本件訂正発明は,単層のシームレスベルトであり,転写ベルトとして使用されるものということができる。他方,刊行物1記載の基体は,上記記載から明らかなとおり,複写機等の転写ベルトであり,その基体は遠心鋳造に- 53 -よって作成されていることから,単層でシームレスベルトであることも明らかである。そうすると,審決が,刊行物1記載のベルトを「単層の転写ベルトとして使用するシームレスベルト」であると認定したことに誤りはない。 ウ原告は,刊行物1の基体は,導電体であり,絶縁体を排除した記載であるこ とが前提となっているところ審決のように絶縁体というべき高い抵抗値10,,()。 Ω・cmまでの広い範囲に関し ウ原告は,刊行物1の基体は,導電体であり,絶縁体を排除した記載であるこ とが前提となっているところ審決のように絶縁体というべき高い抵抗値10,,()。 Ω・cmまでの広い範囲に関して一致点と認定することは誤りであると主張するしかし,本件訂正発明の「体積電気抵抗値」は,その単位からみて,刊行物1記 載の電気抵抗値と同義の抵抗値であるところ刊行物1記載の電気抵抗値10「」,「Ω・cm」は,本件訂正発明における体積電気抵抗値「1~10Ω・cm」の範 囲に含まれる数値であるから,体積電気抵抗値について,両者が重複することは明らかである。 (2)相違点判断の誤り審決は,相違点1に係る体積電気抵抗値のばらつきについて,刊行物5,6,7を引用して,導電性プラスチックにおいて体積電気抵抗値のばらつきを小さくする必要のあることが周知であり,特に体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲にしたものも刊行物7に記載されるように知られているので,相違点1のように構成することは容易に想到し得たことであると判断した。 これに対し,原告は,刊行物7は,ポリウレタン樹脂からなる導電性フィルムで,,,あり刊行物1記載の基体はポリイミド樹脂からなるシームレスベルトであって両者は材料製法用途において全く異なるものであるから刊行物1に刊行物7,,,,の記載事項を組み合わせる動機付けに欠け,本件訂正発明を容易に想到し得るとはいえないと主張する。 ア刊行物7(乙7)には,以下の記載がある。 「合成樹脂100重量部に対してカーボンブラック3乃至100重量部を添加した樹脂組成物を主成分とする導電性プラスチックフィルムであって,該フィルムの平均厚みが5μm以上で あり,該フィルムの表面に沿った電気抵抗の測定から求めた平均体積抵抗値 ク3乃至100重量部を添加した樹脂組成物を主成分とする導電性プラスチックフィルムであって,該フィルムの平均厚みが5μm以上で あり,該フィルムの表面に沿った電気抵抗の測定から求めた平均体積抵抗値(VR)が10- 54 -Ωcm以下,該体積抵抗値の偏差(3σR/VR)が10%以下であることを特徴とする導電性プラスチックフィルム(特許請求の範囲第1項)。」「合成樹脂としては,…ボリエーテルイミド樹脂などがあり,特に限定はしないがポリウレタン樹脂が好適である(2頁左下欄10~14行)。」「カーボンブラックにはファーネスブラック,ケッチエンブラック,アセチレンブラックなどがあり,…なかでもケッチエンブラックが好ましい(2頁左下欄15~18行)。」「抵抗値の均一性の尺度である偏差(3σR/VR)が10%以上ではタッチタブレットの平面電極等の用途での使用に適さず(3頁左上欄16~18行)」「実施例1…ポリウレタン樹脂溶液…にカーボンブラック…を加えて分散させたのち,…導電性フィルムを得た(3頁右上欄14行~左下欄5行)。」イ本件訂正発明が「体積電気抵抗値の最大値が最小値の1~10倍の範囲」に規定する理由は「概ね均一な体積電気抵抗値を有するシームレスベルト(甲3,」の2,段落【0002)を得るためであるところ,導電性プラスチックにおいて】体積電気抵抗値のばらつきを小さくして概ね均一にしたものは,前記刊行物6~7記載のように周知であり,体積電気抵抗値のばらつきを小さくするという技術的思想は,材料,製法および用途によらず,必要に応じて適用可能な事項である。しかも,刊行物7には,上記記載から明らかなように,ばらつきの程度を示す数値の点で本件訂正発明と重複する数値範囲が記載されており,使用する合成樹脂については,ポリウレタ 応じて適用可能な事項である。しかも,刊行物7には,上記記載から明らかなように,ばらつきの程度を示す数値の点で本件訂正発明と重複する数値範囲が記載されており,使用する合成樹脂については,ポリウレタン樹脂だけでなく,刊行物1と類似するポリエーテルイミド樹脂が例示されている。 そうすると,体積電気抵抗値を均一なものにするという必要に応じて,刊行物7記載の数値を刊行物1に適用し,相違点1のように構成することが格別に困難であるとはいえない。 したがって,相違点1に係る事項について,刊行物1に刊行物7を組み合わせて容易想到と判断した審決に誤りはないから,原告の主張には理由がない。 結論 - 55 -以上のとおり,本件補正及び本件訂正が許されないものとした審決の判断は正当,,であるので原告の主張するその余の審決取消事由については判断するまでもなく原告の請求は棄却されるべきである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官塚原朋一裁判官高野輝久裁判官佐藤達文

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