平成24(う)946 強盗殺人,死体遺棄被告事件

裁判年月日・裁判所
平成25年5月28日 東京高等裁判所 破棄自判 長野地方裁判所 平成22(わ)96
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判決文本文18,527 文字)

 平成24年(う)第946号強盗殺人,死体遺棄被告事件平成25年5月28日東京高等裁判所第10刑事部判決 主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役18年に処する。 原審における未決勾留日数中630日をその刑に算入する。 理由 第1 控訴の趣意本件控訴の趣意は,要するに,第1に,原判決は,原判示第1ないし第3の各強盗殺人(以下「本件各強盗殺人」という。)について被告人と共犯者らの共謀を認めた理由を示していない点,同第1及び第3の各強盗殺人について共謀の成立時期を示していない点において理由不備の違法がある,第2に,被告人に本件各強盗殺人の故意や共犯者らとの共謀はないのに,共謀共同正犯の成立を認めた原判決には事実の誤認がある,第3に,被告人を懲役28年に処した原判決の量刑は重すぎて不当であるというのである(以下の月日は,特に記載しない限り,平成22年を指すものである。)。 第2 理由不備の論旨について所論は,原判決には上記のとおり刑訴法378条4号の理由不備がある旨主張するが,所論指摘の点は,いずれも同法44条1項,335条1項により要求される判決の理由には当たらないから,原判決中にこれらの点の説示がないからといって理由不備になるものではない。なお,原判決は,①本件各強盗殺人について,有罪認定の理由の第3の2及び 3の各項において共謀共同正犯の成立を認めた理由を説示している上,②原判示第1及び第3の各強盗殺人について,有罪認定の理由の第2の1及び2の各項において被告人とAの共謀が3月初めから中旬までに成立し,Aを介してB及びCとも順次共謀した旨を説示しているから,所論は原判決を正解しないものである。 第3 事実誤認の論旨について 1 原判決が,本件各強盗殺人として認定した めから中旬までに成立し,Aを介してB及びCとも順次共謀した旨を説示しているから,所論は原判決を正解しないものである。 第3 事実誤認の論旨について 1 原判決が,本件各強盗殺人として認定した罪となるべき事実は,要旨,被告人は,長野市内にある高利貸し業,建築業等を営む企業体であるXグループ(会長D)の従業員であるA,B及びCと共謀の上,①同グループ内で専務と呼ばれていたEを昏睡させた上で殺害し,その管理する現金を強取しようと企て,3月24日午前1時20分ころ,長野市内のD方において,Aが,睡眠導入剤ハルシオン(以下「睡眠導入剤」という。)を混入した雑炊をE(当時30歳)に食べさせて昏睡状態に陥らせた上,同日午前9時10分ころ,D方2階のE夫婦の寝室において,A及びCが,Eに対し,殺意をもって,所携のロープをその頸部に巻き付け,両端をそれぞれ強く引っ張って絞め付け,そのころ頸部圧迫により窒息死させて殺害し,同日午後10時30分ころ,Bが,D方2階隠し物置内からEが管理する現金約281万円を強取し,②上記のとおりAがEを昏睡状態に陥らせたところ,Eの妻Fが夫が朝になっても目覚めないことに不審を抱いたことから,Eに対する強盗殺人を成功させるには邪魔なFをも殺害するしかないと決意し,同日午前8時50分ころ,E夫婦の寝室に隣接する居間において,Aが,F(当時26歳)に対し,殺意をもって,背後から所携のロープをその頸部に巻き付け,両端を強く引っ張って床面に転倒さ せた上,さらに,A,B及びCが,ロープの両端を代わる代わる強く引っ張って絞め付け,そのころ頸部圧迫により窒息死させて殺害し,上記のとおりE管理の現金約281万円を強取し,③Dを殺害してその所有する現金を強取しようと企て,同日午前9時25分ころ,D方2階のDの居間 って絞め付け,そのころ頸部圧迫により窒息死させて殺害し,上記のとおりE管理の現金約281万円を強取し,③Dを殺害してその所有する現金を強取しようと企て,同日午前9時25分ころ,D方2階のDの居間において,A及びBが,リクライニングソファーで眠っていたD(当時62歳)に対し,殺意をもって,所携のロープをその頸部に巻き付け,両端をそれぞれ強く引っ張って絞め付け,そのころ頸部圧迫により窒息死させて殺害する傍ら,Bが,Dのバッグ内に在中し,あるいは,ワゴン上にあった,同人所有の現金約135万円を強取したというものである。 これに対し,所論は,本件各強盗殺人について,被告人に故意や共犯者3名との共謀はなく,その関与の程度は共同正犯の域に達していない旨主張し,Eに対する殺人幇助罪が成立するにとどまると主張する。 2 本件各強盗殺人の故意について(1) D及びE(以下「D親子」という。)に対する強盗殺人の故意所論は,Aが被告人にD親子の所持金の話をしたのは1回だけであり,その話し方も,早口でまくし立てるように,足場材が10トン車3台分で約300万円くらいになるからそれで払う,売り先も決まっているなどと話した後に,付け加えるように,D親子が常に二,三百万円を所持している旨話したにすぎないこと,金庫内の現金についても,上記所持金の話とは別の機会に仕事の話の合間に雑談程度に話しただけで,期待しないでほしいなどと言っていたこと,また,被告人はAの報酬支払能力に疑問を持っておらず,報酬の原 資や調達方法に関心がなかったことなどに照らせば,被告人は,AらがD親子を殺害する際にその所持金を奪うことまでは認識していなかった旨主張する。 そこで検討すると,関係証拠によれば,被告人は,廃プラスチック販売業の経 ことなどに照らせば,被告人は,AらがD親子を殺害する際にその所持金を奪うことまでは認識していなかった旨主張する。 そこで検討すると,関係証拠によれば,被告人は,廃プラスチック販売業の経営に行き詰まり金に困っていたところ,2月中旬ころ,取引相手のAから,D親子の殺害を企てているので,二人の遺体を150万円から200万円の報酬で預かってほしい旨依頼された際,報酬の支払に関心を持ち,「お金大丈夫なの。」などと確認し,これに対し,Aが,足場材が10トン車3台分で約300万円くらいになるからそれで払う,売り先も決まっているなどと言ったほか,D親子が常に二,三百万円持ち歩いているので大丈夫などと話したこと,その後,同月下旬ころまでに,Aから,Xグループの仲間と二人でD親子を殺害する意図であることを聞き,さらに,D方の金庫内に現金があれば報酬を上乗せできるが期待しないでほしいなどと言われたことが認められる。このように,報酬の支払に関心を持って質問した被告人が,Aから,報酬の原資の一つの当てとしてD親子の所持金の話を聞き,さらに,不確実ではあるがD方の金庫内に現金があればこれも奪う趣旨の話も聞いたのであるから,所論指摘の諸事情を踏まえても,被告人は,2月下旬ころには,Aらが,D親子を殺害する際,その所持金があれば奪う意図であることを認識したものと優に認められる。被告人も,報酬の支払は,Aが足場材ということを言っているし,社長たちの二,三百万円という話も言っているから,払えるだろうと考えていた旨原審公判で述べており,上記の認識を裏付ける。所論は,被告人が,AとBの共謀内容 を知らなかったこと,Aらの犯行動機はD親子の殺害であると認識していたこと,D親子の所持金を奪わないと報酬が得られないとは考えていなかったこと,報酬は は,被告人が,AとBの共謀内容 を知らなかったこと,Aらの犯行動機はD親子の殺害であると認識していたこと,D親子の所持金を奪わないと報酬が得られないとは考えていなかったこと,報酬は遺体の運搬保管の対価であり,強取金の分け前とは考えていなかったこと,BがD親子の所持金を強取したことを知らなかったことなどに照らせば,D親子に対する強盗殺人の故意はなかった旨主張する。しかし,これらの事情は,被告人がAらの強盗殺人の意図を認識していたことと矛盾したり,これを否定するものではなく,上記認定を左右しない。 (2) Fに対する強盗殺人の故意所論は,被告人は,AらがEの所持金を奪うためにFを殺害することを認識していなかった,Aに対する恐怖心等からパニック状態となり,依頼を拒めず遺体の搬出等を手伝ったにすぎないなどと主張する。 しかしながら,上記(1)のとおり,被告人は,AらがD親子を殺害し,その所持金を奪う意図であることを認識していた中で,犯行当日,D親子の遺体を入れるドラム缶を積んだ普通貨物自動車を運転してD方付近の駐車場に臨場した際に,Aから,運ぶ遺体が二つから三つになる,Eの妻を,うるさいから,邪魔だからなどという理由で殺害するなどと言われたのであるから,被告人は,その時点で,Aらが,Eに対する強盗殺人を実行するため,その障害となっているFをも殺害する意図であることを認識したものと認められる。 確かに,被告人は,Aから,突然,手短に上記のとおりFも殺害する旨言われたことや,殺害後に,急きょ,D方で遺体の搬出を手伝うことになり,その際,初めてCの関与を知り,また,他に寝て いる人もいると言われたことなどから,事態の推移を十分に把握できず,その後の展開もよく分からずに,戸惑いや不 体の搬出を手伝うことになり,その際,初めてCの関与を知り,また,他に寝て いる人もいると言われたことなどから,事態の推移を十分に把握できず,その後の展開もよく分からずに,戸惑いや不安で緊張しながらAらの指示に従って行動していたことが窺われる。しかし他方で,被告人は,Fも殺害する旨伝えられた後もD方付近にとどまり,遺体を入れる三つ目のドラム缶が用意できないかを確認するなどしてその手配に努めながらAらが殺害を終えるまで待機し,その後,Aの求めに応じてFを含めた遺体の搬出も手伝っていること,愛知県で死体を遺棄するに至るまでの間,被告人がAを強く畏怖していた様子は窺われないことなどに照らすと,被告人が,Aへの恐怖心等からパニック状態になっていたとは到底認め難く,所論は採用できない。 3 本件各強盗殺人の共謀共同正犯の成立について(1) 原判決は,被告人は,①2月下旬ころ,共犯者らがD親子を殺害した上,その所持金を奪い,その中から報酬を支払うことを十分に知りながら,報酬欲しさに遺体の運搬処分を引き受け,その後,Fを殺害する旨告げられても翻意せず,積極的に報酬200万円を受け取ったほか,②3月上旬に,屈強なEを殺害するために,Aに対し,睡眠導入剤の使用を勧めて提供し,これをAらがEに飲ませたことからすると,被告人の関与の程度は,単なる幇助犯にとどまらず,自己の犯罪として主体的に関与する共謀共同正犯の域に達している旨判示している。また,その共謀が成立した時期については,D親子に対する強盗殺人は睡眠導入剤を提供した時点,Fに対する強盗殺人はAからその殺害を告げられ承諾した時点である旨判示している。そして,被告人のこのような関与行為は,被告人自身がD 親子を殺害し,現金を強取するという犯行計画全体の完遂を する強盗殺人はAからその殺害を告げられ承諾した時点である旨判示している。そして,被告人のこのような関与行為は,被告人自身がD 親子を殺害し,現金を強取するという犯行計画全体の完遂を意欲していたことを物語っていること,また,被告人による遺棄行為は殺害計画実行の上で重要な位置を占めていたことを被告人は理解していたことを指摘している。 これに対し,所論は,①について,Aと被告人との間の報酬に関する話の内容やその回数,Aの話し方等からすれば,被告人は,遺体の運搬保管に対する報酬がD親子の所持金から支払われることを認識していなかった,Aらは被害者らの遺体を長野市内の倉庫に隠すこともできたから,被告人が遺体の運搬保管を引き受けたことは本件各強盗殺人の実行に不可欠で重要な行為ではなかった,②について,睡眠導入剤の使用の提案及び提供はAの相談に応じたものである上,睡眠導入剤には殺傷能力はなく,これを飲ませること自体容易ではないから直ちに殺害を可能にするものではないなどと論難する。そして,被告人は,被害者らの殺害や所持金の奪取,さらには報酬の金額や支払時期等に関する話し合いに全く関与せず,Aから一方的に指示されて行動したにすぎないから,謀議といえる実体はないこと,被告人とAらは,計画段階から実行に至るまで,本件各強盗殺人はAらが行い,被告人は遺体の運搬保管だけを行うというように,明確に役割を区別して行動しており,被告人はもとより,Aらにおいても,本件各強盗殺人を被告人が共同実行するという認識はなかったことなどに照らせば,本件各強盗殺人の共謀はなく,被告人には共謀共同正犯が成立しない旨主張する。 (2) そこで検討すると,上記2(1)のとおり,被告人は,Aから,報酬の原資について,一方で,足場材が約300万円くらいに 盗殺人の共謀はなく,被告人には共謀共同正犯が成立しない旨主張する。 (2) そこで検討すると,上記2(1)のとおり,被告人は,Aから,報酬の原資について,一方で,足場材が約300万円くらいになり売り先も決まっている旨の具体的な説明を受けていたのであり,他方で,D親子が二,三百万円持ち歩いている,金庫に現金があれば上乗せできる旨の説明を受けていたものの,Aの意図するとおりに間違いなく奪取できるという確実性のある話でもないのであるから,報酬はD親子から奪取した金から支払われるという明確な認識を抱くような会話内容とはいえず,被告人の認識としては,奪取した金から報酬が支払われる可能性も相当程度あるという認識があったと認定できるにとどまるというべきである。この点,原判決は,被告人の原審公判供述に依拠して上記2(1)と同様の事実を認定していながら,D親子から現金を奪って報酬に充てる趣旨は十分に認識していたと考えると説示しているところ,そこでいう認識の内容は必ずしも明らかではないが,原判示全体をみると奪取した金をもって報酬に充てるという明確な認識を前提とするものと理解でき,そうであればその判断は合理的とはいえない。また,原判決は,被告人が,被害者3名の殺害直後に報酬として100万円を当然のごとく受領したことは,D親子の所持金から報酬が支払われることを十分に認識していたことの証左であり,既定の方針であったために誰からも出所が告げられなかったと考えるべきである旨説示するが,被告人は遺体の運搬保管の報酬として150万円から200万円を受け取ることが約束されていたのであるから,その出所を確認するまでもなく当然のものとして100万円を受領したと理解することもできるのであって,原判示は正確とはいい難い。さらに,検察官は,答弁書に 受け取ることが約束されていたのであるから,その出所を確認するまでもなく当然のものとして100万円を受領したと理解することもできるのであって,原判示は正確とはいい難い。さらに,検察官は,答弁書において,Dが所持するバッグ内の100万円を当日そのまま支払う,残りの50万円から100万円は足場材を売って支払う 旨述べたAの原審公判供述は信用できると主張するが,Aと被告人間の電話での会話内容に関するAの原審公判供述は,同人の検察官調書(原審弁28)やBの原審公判供述とその内容が異なる上,被告人の原審公判供述と異なる部分について特段の裏付けもないことに鑑みると,細かい会話内容についてまで,被告人の供述を排斥してAの供述どおり認定できるほどの信用性は認め難いから,上記認定を左右しない。なお,Gの原審公判供述によれば,被告人がGに対し,D方の金庫から金を奪って報酬としてもらうなどと確実性の高い話として述べていたことが窺われるが,懇意にしていたホステスのGとスナックで飲酒した上での会話と思われ,被告人の真意かどうかなど正確性には疑問が残るのであって,同様に上記認定を左右しない。 そして,被告人がD親子の遺体の運搬保管を引き受けるに至るまでの被告人とAとの話し合いについては,関係証拠をみると,①Aは,専らBとの間でD親子の殺害やその方法等について決めていたのに対し,同時に並行して話をしていた被告人には遺体の運搬保管を依頼しただけであり,被告人においても,依頼の内容としては遺体の運搬保管だけの認識であって,報酬もこの点に対するものとして約束されていたこと,②D親子の殺害の動機や方法等はAから被告人に一方的に伝えられただけであり,依頼に関連して,被告人から殺害や所持金の奪取について進んで意見を述べるなどしたことも認められないこと 約束されていたこと,②D親子の殺害の動機や方法等はAから被告人に一方的に伝えられただけであり,依頼に関連して,被告人から殺害や所持金の奪取について進んで意見を述べるなどしたことも認められないこと,③他方で,遺体の運搬保管に関しては,被告人がドラム缶を準備するなど,その方法等について被告人から意見を述べるなどしてAとの間で決められたこと,以上の事情が指摘でき  る。このように,被告人とAとの間では,あくまでAらが殺害したD親子の遺体を,殺害後に被告人が運搬保管して報酬を得るという前提での話に終始していたのであって,被告人がその報酬の原資を確認した際に,D親子から奪取した金を充てる可能性も相当程度あることを知るに至ったからといって,それだけで被告人に強盗殺人についても正犯意思が生じ,自己の犯罪として関与するに至ったと認めることは到底できない。報酬の原資の調達はAらにおいて確保すべき事柄であり,被告人がこのように考えていたことは,3名殺害後現場にAから呼ばれた際にも,Aの指示で遺体の運搬を手伝っただけで,D親子の金を奪うことに関与するような行動を一切していないばかりでなく,Aらに金を奪取したかどうかについて確認すらしていないことからも窺われる。原判決は,現金を奪って報酬に充てる趣旨を十分に認識していたなどの事実だけから,直ちに被告人の正犯性を認めるものではないが,上記の事実を強盗殺人の共謀の認定に当たって重視し過ぎているというほかない。 次に,被告人がAに対して睡眠導入剤の使用を提案し,これを提供した点についてみると,関係証拠によれば,①被告人は,既にD親子を絞殺することを決めていたAから,首を絞めるときに屈強なEが暴れると絞殺が難しいので眠らせたいなどと相談を受けた際,自らも使用経験がある睡眠導入剤の使用を 関係証拠によれば,①被告人は,既にD親子を絞殺することを決めていたAから,首を絞めるときに屈強なEが暴れると絞殺が難しいので眠らせたいなどと相談を受けた際,自らも使用経験がある睡眠導入剤の使用を提案したところ,Aがそれを求めてきたことから,当時たまたま持っていた睡眠導入剤を送付して提供したものであり,被告人から睡眠導入剤を用いて絞殺することを積極的に提案したり,被告人から進んで提供したものではないこと,②本件睡眠導入剤は,被告人自身がそれまでに同種のも のを使用していて,医師の処方箋があれば正式に入手でき一般に入手困難なものではなかった上,上記のAからの相談は1回の電話の機会における仕事話の合間になされたものであったことから,被告人がAから求められるまま安易に提供してしまった疑いも否定し切れないこと,③Aらは,睡眠導入剤の提供を受けた後も,殺害の実行日時や場所等について被告人に相談せずに決定し,3月24日午前6時までに長野県に来るよう指示しながらもその前日の23日にD親子の殺害を試みるなどしており,さらに,犯行当日も被告人には一方的に待機等の指示をするだけで状況を詳しく知らせず,殺害直前に会った際にもFの遺体を追加して運搬保管することを依頼しただけで殺害等への協力を求めず,他方で殺害等にCを誘って実行し,殺害後の遺体の搬出の段階になって初めて被告人に協力を求めており,被告人においても,睡眠導入剤の提供以降もAの指示に従って行動し強盗殺人の計画や実行について積極的に関わる姿勢を示していないなど,睡眠導入剤の提供の前後で,被告人とAらとの関係やD親子に対する強盗殺人への関わり方に有意な変化がみられないこと,以上の事情が存する。これらの事情を考慮すると,睡眠導入剤の使用の提案や提供をしたといっても,それにより被告人 被告人とAらとの関係やD親子に対する強盗殺人への関わり方に有意な変化がみられないこと,以上の事情が存する。これらの事情を考慮すると,睡眠導入剤の使用の提案や提供をしたといっても,それにより被告人においてD親子に対する強盗殺人に自らも関与する認識に変わり,Aらにおいても被告人とともに強盗殺人を実行する認識に変わったとは到底いえない。また,客観的にみても,確かに,睡眠導入剤を提供した事実は,その後の強盗殺人の遂行の上で重要な行為であったことは否定できないが,強盗殺人の実行を決断させるのに重要な働きをしたとまではいえないし,提供するに至った経緯やその状況は, Aからの相談や交付要請に応答した受動的なものであったことは否定できない。そうすると,被告人において,遺体の運搬保管の報酬は奪取した金から充てられる可能性も相当程度あることを認識していたことに加え,さらに,睡眠導入剤の使用を提案しこれを提供したことを併せ考慮しても,被告人にD親子に対する強盗殺人について正犯意思が形成され,Aとの共謀を遂げたと認めることはできないというべきである。 本件犯行当日,Aが被告人に対し,運ぶ遺体が二つから三つになる,邪魔だからFを殺すなどと説明し,これに対し被告人が遺体を入れる三つ目のドラム缶を手配しようとしながら殺害が終わるまで付近で待機していたことについてみても,上記のとおり,D親子に対する強盗殺人について被告人の正犯意思やAとの共謀が認められない状況におけるやりとりであること,Aは被告人にFの遺体の運搬保管を依頼したにとどまり,被告人もこれを承諾したにとどまっていることからすれば,Fに対する強盗殺人についても同様に被告人の正犯意思やAらとの共謀があったとは認められない。 なお,被告人が200万円の報酬を受領した点 告人もこれを承諾したにとどまっていることからすれば,Fに対する強盗殺人についても同様に被告人の正犯意思やAらとの共謀があったとは認められない。 なお,被告人が200万円の報酬を受領した点については,遺体の運搬保管に対する報酬としてあらかじめ150万円から200万円の報酬が支払われることが約束されていたこと,Aらが強取した金額が合計約416万円であったためその半額近くを占める結果になったにすぎないこと,被告人の報酬額やその支払方法,事後の強取金の分配等は,すべてAらが決め,被告人は特段関与していないことなどに照らすと,本件各強盗殺人の共謀を裏付ける事情とはいい難い。  したがって,被告人が遺体の運搬保管の報酬を期待して一連の犯行に及んだことは認められるものの,さらに,被告人自身がD親子を殺害して現金を強取するという犯行の完遂を意欲していたとする原判決の指摘は相当ではない。また,確かに,本件犯行において,3名の遺体の遺棄行為が殺害遂行の上で重要であったことは原判示のとおりであるが,殺害に必須な行為とか,殺害に移るための決定的な要因とかいうものではない上,殺害行為は遺棄行為とは全く異なる重大な行為であるから,被告人が上記の重要性を認識した上で遺棄行為に及んだとしても,そのことが直ちに殺害行為についてまで主体的に関与したことを示す事情といえるのかは疑問が残る。 (3) 本件は,そもそも,遺体の運搬保管を依頼され,その依頼どおりの行動に終始した事案である。これに加えて,その前提の強盗殺人の計画を知っていたとしても,強盗殺人の正犯としての罪責まで問うには合理的理由が必要である。原判決は,上記(1)①②の各事情の存在はその共謀を肯定する域に達していると説明する。しかし,上記(2)に説示したとおり,その しても,強盗殺人の正犯としての罪責まで問うには合理的理由が必要である。原判決は,上記(1)①②の各事情の存在はその共謀を肯定する域に達していると説明する。しかし,上記(2)に説示したとおり,その判断は共謀を否定する方向の事情を適切に考慮していないというほかないし,上記(1)①②の各事情が,被告人において,強盗殺人までも自己の犯罪として犯したといえる程度に,その遂行に重要な役割を果たしたといえるだけの合理的理由を示したものとはいい難い。そうすると,本件各強盗殺人について共謀共同正犯の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり,破棄を免れない。論旨は理由がある。 第4 破棄自判 よって,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,被告事件について更に次のとおり判決する。 1 原判示第1ないし第3の各事実に代えて当裁判所が新たに認定した事実被告人は,愛知県において廃プラスチック販売業を営んでいたが,①長野市内にある「Xグループ」と称し,いわゆる高利貸し業,建築業等を営む企業体の従業員であるA及びBが共謀の上,同グループ内で専務と呼ばれていたEを昏睡させた上で殺害し,現金を強取しようと企て,3月24日午前1時20分ころ,長野市(以下省略)所在のD方で,Aが睡眠導入剤を混入した雑炊をE(当時30歳)に食べさせて昏睡状態に陥らせた後,さらに同グループの従業員であるCとも上記Eに対する強盗殺人の共謀を遂げ,同日午前9時10分ころ,D方2階のE夫婦寝室において,A及びCが,Eに対し,殺意をもって,所携のロープをその頸部に巻き付け,その両端を強く引っ張って絞め付け,そのころEを頸部圧迫により窒息死させて殺害し,同日午後10時30分ころ,Bが 寝室において,A及びCが,Eに対し,殺意をもって,所携のロープをその頸部に巻き付け,その両端を強く引っ張って絞め付け,そのころEを頸部圧迫により窒息死させて殺害し,同日午後10時30分ころ,BがD方2階隠し物置内からE管理の現金約281万円を強取し,②上記のとおり,AがEを昏睡状態に陥らせたところ,Eの妻Fが,夫が朝になっても目覚めないことに不審を抱いたことから,A,B及びCが共謀の上,Eを殺害し現金を強取するためには,邪魔なFをも殺害するしかないと決意し,同日午前8時50分ころ,E夫婦の寝室に隣接する居間において,殺意をもって,Aが,F(当時26歳)に対し,その背後から所携のロープを頸部に巻き付け,ロープの両端を強く引っ張ってFを床面に転倒させた上,A,C及びB が,ロープの両端を代わる代わる強く引っ張って絞め付け,そのころFを頸部圧迫により窒息死させて殺害し,上記①のとおり,Eが管理する現金約281万円を強取し,③A,B及びCが共謀の上,同グループ会長のDを殺害してその管理する現金を強取しようと企て,同日午前9時25分ころ,D方2階のDの居間において,A及びBが,リクライニングソファーで眠っていたD(当時62歳)に対し,殺意をもって,所携のロープをその頸部に巻き付けた上,両端を強く引っ張って絞め付け,そのころDを頸部圧迫により窒息死させて殺害する傍ら,Bが,Dのバッグ内に在中し,あるいは,ワゴン上にあったその所有する現金約135万円を強取した際,上記①ないし③に先立ち,Aほか1名がD親子を殺害し,その管理する現金を奪う意図であることを認識しながら,2月下旬ころ,Aの依頼に応じ,殺害後のD親子の遺体を長野県から愛知県まで運搬し,同県西尾市内の被告人が管理する資材置場に埋めることを150万円から200万円の報酬 う意図であることを認識しながら,2月下旬ころ,Aの依頼に応じ,殺害後のD親子の遺体を長野県から愛知県まで運搬し,同県西尾市内の被告人が管理する資材置場に埋めることを150万円から200万円の報酬の約束で引き受けるとともに,3月上旬ころ,Aの依頼に応じ,同人に対し,屈強なEを殺害する際に暴れられないよう昏睡させるための睡眠導入剤約25錠を送付して受領させ,さらに,Aの指示を受けて,同月24日午前8時30分ころまでに遺体を運搬するため普通貨物自動車を運転してD方付近の長野市(以下省略)内のY駐車場に赴き,そのころ同所において,Aの依頼に応じ,同人らがEに対する強盗殺人を実行するためにFを殺害することを認識しながら,殺害後のFの遺体についても上記同様に運搬して埋めることを引き受け,被害者3名の殺害が終わるまで同所で待機するなどし,もってAらの被害者3名に対する強盗殺人を容易にしてこれらを幇助した。   2 上記認定事実についての証拠の標目原判決の挙示する原判示全事実及び同第1ないし第3の各事実に対する証拠と同一である。 3 被害者3名に対する強盗殺人幇助を認めた理由(1) 弁護人は,上記認定の強盗殺人幇助に関し,被告人には被害者3名に対する強盗殺人の故意はなく,Eに対する殺人幇助が成立するにとどまる旨主張する。 (2) 強盗殺人の故意控訴趣意に対する判断(第3の2(1)及び(2))に説示したとおり,被告人は,AらがD親子を殺害する際,その所持金を奪う意図であること,及びAらがEの強盗殺人を実行するため,その障害となっているFを殺害する意図であることを認識していたことが認められるから,被害者3名に対する強盗殺人の故意が認められる。 (3) 強盗殺人の幇助ア幇助行為該当 行するため,その障害となっているFを殺害する意図であることを認識していたことが認められるから,被害者3名に対する強盗殺人の故意が認められる。 (3) 強盗殺人の幇助ア幇助行為該当性関係証拠によれば,被告人は,上記1のとおり,①報酬を約束してD親子の遺体を運搬して埋めることを引き受けた上,普通貨物自動車を運転してD方付近の駐車場に赴いたこと,同所において,Fの遺体についても同様に運搬して埋めることを引き受けて待機したこと,②Aに対し睡眠導入剤約25錠を送付したことが認められる(以下,上記①及び②の行為を併せて「本件幇助行為」という。)。 まず,①の行為が,各強盗殺人の幇助行為に当たるか検討する。 AらはD親子に雇われて同居するなどしていたため,遺体を放置  すれば容易に犯行が発覚し,Aらが疑われる可能性があることから,犯行直後に遺体を搬出して遠方に遺棄する行為は,各強盗殺人を実行する上で重要な位置を占めていたと考えられる。実際に,Aは,計画の初期の段階で,被告人に150万円から200万円もの多額の報酬の支払を提示し,その原資についてもおおよそを説明するなどしてD親子の遺体の運搬保管を引き受けるよう説得し,被告人がこれを引き受けたことを踏まえて,BやCにその旨を伝え具体的な実行時期を決めたり犯行に使用するロープ等を準備したりしている。また,犯行当日も,Aは,被告人に指示してD方付近に臨場させ,時間的余裕のない切迫した状況で被告人に会い,Fの遺体の運搬保管も追加して依頼した上でその場に待機させ,被害者3名に対する強盗殺人を実行した後は,被告人を呼んで直ちに遺体を運搬し,その後にBにおいて更に金を奪うなどしている。このような経緯に照らせば,被告人が,被害者3名の強盗殺人の実行前に させ,被害者3名に対する強盗殺人を実行した後は,被告人を呼んで直ちに遺体を運搬し,その後にBにおいて更に金を奪うなどしている。このような経緯に照らせば,被告人が,被害者3名の強盗殺人の実行前に遺体の運搬保管を引き受け,普通貨物自動車を運転してD方付近に臨場し,殺害が終わるまで待機していた行為は,A及びBの被害者3名に対する各強盗殺人の犯意を強固にさせるとともに,殺害後の遺体処理の懸念を抱くことなく各強盗殺人を実行できる心理的な支えとなって,その成就にも寄与した面があることが認められる。そして,被告人は,AとBやCとの間のやりとりやロープ等の準備の点を除き,上記のような事情や経緯を認識していたから,①の行為が,A及びBの各強盗殺人の犯意を強固にし,その実行を心理的に支えていることを認識していたものと認められる。①の行為は,被害者3名の死体遺棄の準 備的な行為でもあるが,強盗殺人の幇助と認められるその行為の違法性は,死体遺棄罪により評価し尽くされているとはいえないから,別途強盗殺人の幇助罪を構成するというべきである。 また,②の睡眠導入剤の使用の提案及び提供行為は,実際に,Aが,3月24日深夜に睡眠導入剤を混入した雑炊をEに食べさせて昏睡状態にさせ,その状態を利用してEを絞殺したことからすると,Eに対する強盗殺人を物理的かつ心理的に容易にしたことが明らかであり,その提供の経緯に照らせば,被告人は②の行為がEに対する強盗殺人を容易にすることを認識していたものと認められる。睡眠導入剤の影響によりEが昏睡している傍らでAらがFを殺害したことや,同じ機会にDも殺害していることに照らすと,②の行為は,FやDに対する強盗殺人の実行をも容易にしたものといえるが,被告人とAは,あくまでEの強盗殺人に使用するものとし でAらがFを殺害したことや,同じ機会にDも殺害していることに照らすと,②の行為は,FやDに対する強盗殺人の実行をも容易にしたものといえるが,被告人とAは,あくまでEの強盗殺人に使用するものとして睡眠導入剤のやりとりをしたこと,提供当時,AらにFを殺害する意図はなく,Dの殺害についても,Eと同じ機会に実行するかは決まっていなかったことを考慮すると,被告人において,②の行為がDやFに対する強盗殺人を容易にすることまで認識していたとは認められない。 以上の範囲において,被告人には,被害者3名に対する各強盗殺人についてそれぞれ幇助罪が成立する。 イ罪数関係上記①の行為は,被害者3名に対する各強盗殺人の幇助行為であるが,遺体の運搬保管を引き受け,殺害現場付近で待機していた一連の行為をみれば,社会的,自然的事象としては一個の行為  といえる。また,上記②の睡眠導入剤の提供等と上記①の行為は,別の機会に行われた性質の異なる幇助行為であるが,いずれもEに対する強盗殺人を幇助する行為という関係においては一罪を構成する。 そうすると,本件幇助行為は,全体として,被害者3名に対する各強盗殺人についての一個の幇助行為と評価するのが相当である。 (4) 訴因変更の要否本件は,被告人が共謀共同正犯として起訴されていることから,上記認定の幇助行為は,公訴事実には記載されていない。しかし,本件の具体的審理の経過をみると,原審第1回公判前整理手続期日において,弁護人の釈明要求に対し,検察官が被害者3名に対する各強盗殺人の共謀共同正犯が認められない場合,縮小認定として幇助犯を認定できると考える旨述べ,また,弁護人は,各強盗殺人の訴因については睡眠導入剤の提供に関しEに対する殺人の幇助の 害者3名に対する各強盗殺人の共謀共同正犯が認められない場合,縮小認定として幇助犯を認定できると考える旨述べ,また,弁護人は,各強盗殺人の訴因については睡眠導入剤の提供に関しEに対する殺人の幇助の限度で成立するにとどまる旨主張している。また,原審第1回公判期日において,検察官が冒頭陳述で被害者3名に対する各強盗殺人の共謀及び正犯性を根拠付けるものとして主張する事実には,本件幇助行為に当たる事実が含まれ,この事実に関し,弁護人も冒頭陳述で事実認定及び法的評価の両面から反論を述べており,本件幇助行為の事実認定及び法的評価が重要な争点とされている。さらに,両当事者は,Aの証人尋問を中心とする証拠調べや被告人質問により,本件幇助行為やその法的評価に影響を及ぼす事実等について十分な立証,反証活動を展開し,その結果に基づく論告及び弁論でも上記  争点に関する詳細な意見を述べている。以上の審理経過に鑑みると,本件幇助行為の事実認定の点では,それが明確に審判の対象とされ,被告人の防御活動も十分になされているといえるし,それが幇助行為に当たるかという法的評価の点も,両当事者の意見が十分に述べられているから,訴因変更手続を経ないで被害者3名に対する強盗殺人の幇助を認定しても,被告人の防御に実質的な不利益を及ぼすおそれはない。 4 法令の適用当裁判所の認定した上記1の所為は,被害者ごとに刑法62条1項,240条後段に,原判決が認定した原判示第4の所為は,死体ごとに刑法60条,190条に,それぞれ該当するところ,いずれも1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,当裁判所の認定した所為は,刑法54条1項前段,10条により1罪として犯情の最も重いEに対する強盗殺人幇助罪の刑で処断し,原判示第4の所為は,犯情の軽重の差が認め 3個の罪名に触れる場合であるから,当裁判所の認定した所為は,刑法54条1項前段,10条により1罪として犯情の最も重いEに対する強盗殺人幇助罪の刑で処断し,原判示第4の所為は,犯情の軽重の差が認め難いので刑法10条によりいずれが重いかを決することはできず,刑法54条1項前段により1罪として死体遺棄罪の刑で処断し,上記強盗殺人幇助罪について所定刑中無期懲役刑を選択し,同罪は従犯であるから,刑法63条,68条2号,14条1項により法律上の減軽をし,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,10条により重い強盗殺人幇助罪の刑に刑法14条2項の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役18年に処し,刑法21条を適用して,原審における未決勾留日数中630日をその刑に算入し,原審及び当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととする。   5 量刑の理由(1) 本件は,上記1のとおりの被害者3名に対する強盗殺人幇助と,被告人が,共犯者3名と共謀の上,強盗殺人の犯跡隠蔽のため,被害者3名の遺体を遺棄しようと企て,3月24日午前9時40分ころから午前10時30分ころまでの間,D方において,各遺体をバッグに押し入れた上,自動車2台のトランク及び後部座席に押し込み,同日午前11時15分ころ,被告人,A及びCにおいて,長野市内の倉庫内で,各遺体を貨物自動車後部荷台に積み替え,被告人とAが,翌25日朝,愛知県西尾市内の資材置場まで運び,そのころから同日午後1時30分ころまでの間,同所において,盛り土の斜面に穴を掘って各遺体を順次入れ,覆土して押し固めて遺棄したという事案である。 (2) 量刑の中心となる強盗殺人幇助をみると,正犯者らの犯行は,同一機会に3名 での間,同所において,盛り土の斜面に穴を掘って各遺体を順次入れ,覆土して押し固めて遺棄したという事案である。 (2) 量刑の中心となる強盗殺人幇助をみると,正犯者らの犯行は,同一機会に3名もの尊い命を奪い,約416万円の多額の現金を強取した極めて重大な犯行である。FはEに対する強盗殺人の障害になるという理不尽な理由で巻き添えとなり,D親子も自宅で睡眠中に襲われて落命しており,無念さは甚大と察せられる。その犯行態様は,無防備な被害者らに対し,いきなり首にロープを掛け,二人又は三人がかりで執拗に絞め上げた,冷酷かつ非情なものである。 被告人の幇助行為をみると,Aから協力を持ちかけられて報酬欲しさに遺体の運搬保管を引き受け,AからEの殺害方法を相談されると,睡眠導入剤の使用を提案して手持ちの錠剤を提供し,遺体を入れるドラム缶を積んだ普通貨物自動車で愛知県から殺害現場付近まで臨場し,正犯者らが殺害等をしている間はその場に待機するな どしている。このように,被告人は,犯行の計画段階から,首謀者であるAの依頼や相談に応じて強盗殺人の計画に関与し,これを遂行する上で重要な行為に及んで完遂に寄与しており,正犯者らの犯行を容易にした程度は高いから,従犯の中でも責任の重い犯行というべきである。 また,死体遺棄についても,報酬欲しさに及んだ利欲的犯行であり,その態様も死者の尊厳に思いを致さない蛮行である上,報酬として200万円を得ており,犯情は甚だ悪質である。 本件各犯行により遺族の受けた衝撃や悲しみは極めて大きく,正犯者らと同様に被告人にも厳しい処罰を望んでいる。さらに,本件が社会に及ぼした影響や衝撃も大きいものがある。 (3) 弁護人は,強盗殺人幇助について,正犯者らが,金品目当てではなく, きく,正犯者らと同様に被告人にも厳しい処罰を望んでいる。さらに,本件が社会に及ぼした影響や衝撃も大きいものがある。 (3) 弁護人は,強盗殺人幇助について,正犯者らが,金品目当てではなく,D親子による理不尽な扱いから解放されるために強盗殺人に及んだ点は,属人的な犯行動機にとどまらず本件の発生原因という面も有しており,正犯行為の違法性にも影響する重要な量刑事情であるから,被告人の行為の違法性を検討する上でも十分に考慮するべきである旨主張する。確かに,正犯者らは,D親子から暴力的な扱いを受けたり生活や行動を束縛されたりして,思い悩み,耐え難い心境になるとともに,怒りや恨みの気持ちから強盗殺人に及んだ面があることは否定できない。そうすると,被告人の量刑判断においても,このような正犯者らとD親子の関係をある程度考慮に入れる必要はある。しかしながら,被告人自身はD親子との関係が希薄で何ら理不尽な扱いを受けていたものではなく,利欲的な動機で犯行に関与し,強取金から多額の報酬を得ているのであるから,所 論指摘の点を量刑上大きく考慮することは相当でない。 また,弁護人は,正犯者らによる犯行計画は極めて杜撰で場当たり的であったと主張する。確かに,Aらが,犯行前日からD親子の殺害の機会を窺っていたが実行できず,Eから夜食を求められて睡眠導入剤入りの雑炊を食べさせたが殺害に及ばないまま朝を迎え,Eが朝になっても目覚めないことに不審を抱いたFをも急きょ殺害することにし,Cを呼び出して犯行に及んだという経緯に照らせば,綿密な計画に基づく犯行とはいい難く,やや場当たり的に実行された面があることは否定できない。しかし,約1か月前からAを中心に殺害方法や遺体の処分方法が話し合われ,犯行に使用する睡眠導入剤,ロープ,ドラム缶等を 基づく犯行とはいい難く,やや場当たり的に実行された面があることは否定できない。しかし,約1か月前からAを中心に殺害方法や遺体の処分方法が話し合われ,犯行に使用する睡眠導入剤,ロープ,ドラム缶等を準備し,犯行予定日に被告人が愛知県から長野県に赴いて待機していたという経緯を全体としてみた場合には,計画性がないとはいえない。 (4) 以上のとおり,本件各犯行の罪質,正犯者らによる各強盗殺人の結果の重大性,被告人の幇助行為の重要性,死体遺棄の動機や態様の悪質性,さらには遺族の処罰感情や社会に与えた影響等に鑑みると,被告人の刑事責任は重大というほかない。 他方で,強盗殺人については幇助にとどまるものであり,その態様も,いずれもAからの依頼や相談に応じたものであって,特に,Fに対する強盗殺人幇助については,必ずしも状況を十分に把握しているとはいい難い中でAの指示に従った面があること,また,正犯者らの行為についても,上記のような正犯者らとD親子の関係に起因するものであって,金品奪取を目的とした典型的な強盗殺人とは異なることなどの事情が存する。さらに,被告人が原審段階で遺 族に対して謝罪文を作成するなどして謝罪の気持ちを表すとともに被害者らの冥福を祈っており,原判決後,更に反省を深めていること,本件各犯行により得た報酬金200万円の返還について原判決後に被害者側と示談し,家族の協力を得て準備した21万円をその分割金として支払い,当審公判において今後も誠実に支払う旨約束していること,高齢の母が原審及び当審公判に出廷して被告人の身を案じるとともに被害弁償に努める旨述べていること,前科がないことなどの酌むべき事情も認められる。 そこで,これらの事情を考慮し,強盗殺人幇助罪について無期懲役刑を選択した上で,従犯 の身を案じるとともに被害弁償に努める旨述べていること,前科がないことなどの酌むべき事情も認められる。 そこで,これらの事情を考慮し,強盗殺人幇助罪について無期懲役刑を選択した上で,従犯による法律上の減軽をした刑期の上限から更に一定の刑を減じて,被告人を懲役18年に処するのが相当であると判断する。 (裁判長裁判官村瀬均裁判官河本雅也裁判官池田知史)

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