令和3年6月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(行ウ)第634号助成金不交付決定処分取消請求事件口頭弁論終結日令和3年1月27日判決主文 1 独立行政法人日本芸術文化振興会理事長が原告に対し令和元年7月10日付けでした文化芸術振興費補助金に係る助成金を交付しない旨の決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文第1項と同旨第2 事案の概要本件は,映画製作会社である原告が,その製作映画である「宮本から君へ」(以下「本件映画」という。)について,独立行政法人日本芸術文化振興会理 事長(処分行政庁。以下「被告理事長」という。)による内定を経て,平成31年度の文化芸術振興費補助金に係る助成金(映画製作への支援に係るもの。 以下「本件助成金」という。)の交付申請をしたところ,被告理事長から,本件映画の出演俳優のうち1名(以下「本件出演者」という。)につき麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻薬取締法」という。)違反による有罪判決が確定し たことを理由として,令和元年7月10日付けで本件助成金を交付しない旨の決定(以下「本件処分」という。)を受けたことから,被告を相手に,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め本件に関係する独立行政法人日本芸術文化振興会法(以下「振興会法」とい う。)の規定は別紙2-1に,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法 律(以下「適正化法」という。)の規定は別紙2-2に,文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱(以下「本件要綱」という。以下,特に断りのない限り,平成30年5月22日改正後のもの〔甲7の資料1〕を指す。)の規定は別紙2-3にそれぞれ記載したとお に,文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱(以下「本件要綱」という。以下,特に断りのない限り,平成30年5月22日改正後のもの〔甲7の資料1〕を指す。)の規定は別紙2-3にそれぞれ記載したとおりである。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨 により容易に認められる事実)⑴ 当事者ア原告は,劇場用映画,家庭用ビデオ,テレビ放送用ビデオの企画,製作,編集,販売並びに配給及び輸出入等を目的とする株式会社である。 イ被告は,芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図る ための活動その他の文化の振興又は普及を図るための活動に対する援助等を行い,その振興及び普及を図り,もって芸術その他の文化の向上に寄与することを目的として,振興会法及び独立行政法人通則法の定めるところにより設立された独立行政法人である(振興会法2条,3条)。 ⑵ 本件助成金に関する制度の概要 ア被告の助成事業被告は,振興会法3条の目的(上記⑴イ)を達成するため,同法14条1項各号に定める業務を行うものとされており,そのうち同項1号イは,「芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための公演,展示等の活動」に対する資金の支給その他必要な援助を行うこと を定めている(以下,同号イに基づいて被告が行う事業を「助成事業」という。)。文化庁長官は,被告の助成事業に要する経費を補助するため,「文化芸術振興費補助金(独立行政法人日本芸術文化振興会助成金交付事業)交付要綱」を定め(乙5),これに基づき,被告に文化芸術振興費補助金が交付されている。 なお,被告の助成事業については適正化法の規定が適用され,その助成 金の交付の決定は被告理事長が行うもの (乙5),これに基づき,被告に文化芸術振興費補助金が交付されている。 なお,被告の助成事業については適正化法の規定が適用され,その助成 金の交付の決定は被告理事長が行うものとされている(振興会法17条,適正化法6条1項)。 イ被告理事長は,被告の助成事業における助成金の交付について必要な事項を定めるものとして本件要綱を定めており,本件要綱2条1項3号は,助成の対象となる活動の一つとして「映画創造活動支援事業(劇映画・ 記録映画・アニメーション映画)」を掲げている。この映画創造活動支援事業について映画製作団体に対して交付される助成金が,本件助成金である。 なお,平成30年度の被告の助成事業において,本件助成金のうち劇映画に係るものとしては,応募件数77件のうち23件が採択され,これ らに対する助成金交付予定額は合計2億8500万円(1件当たり約1239万円)であった(甲7)。 ウ助成金の交付の手続本件要綱による助成金の交付の手続の概要は,以下のとおりである。 助成金の交付を受けようとする者は,被告理事長に対し,助成金交付 要望書を提出する(3条。以下,同要望書を「交付要望書」といい,これによる助成金の交付の要望を「交付要望」という。)。 被告理事長は,芸術文化振興基金運営委員会(以下「基金運営委員会」という。)の議を経て,助成金の交付の対象となる活動(以下「助成対象活動」という。)及び交付しようとする助成金の額を内定し(以 下「交付内定」という。),所定の通知書により交付要望をした者に通知する(4条)。 なお,基金運営委員会には,分野別に四つの部会が設けられ,それぞれの部会ごとに複数又は一つの専門委員会が設けられている いう。),所定の通知書により交付要望をした者に通知する(4条)。 なお,基金運営委員会には,分野別に四つの部会が設けられ,それぞれの部会ごとに複数又は一つの専門委員会が設けられているところ,劇映画の場合には,基金運営委員会から映像芸術部会(以下「本件部会」 という。)に交付内定の審査が付託され,さらに本件部会から劇映画専 門委員会(以下「本件専門委員会」という。)に同審査が付託され,基金運営委員会は,本件専門委員会及び本件部会における審査の結果を踏まえて,被告理事長に対し交付内定の是非に係る答申を行うこととされている(甲4,7)。 交付内定を受けた者(以下「内定者」ということがある。)は,上記 交付内定の内容及びこれに附された条件を受諾した場合には,被告理事長に対し,助成金交付申請書を提出する(7条1項。以下,同申請書を「交付申請書」といい,これに基づく助成金の交付申請を「交付申請」という。)。 被告理事長は,交付申請書を受理したときは,その内容を審査の上, 助成金を交付すべきと認めたときは助成金の交付決定(以下「交付決定」という。)をし,所定の通知書により交付申請をした者に通知する(8条1項)。 なお,本件要綱には,①交付内定後の事情の変更により助成対象活動の継続の必要がなくなった場合等,②所定の期日までに交付申請書の提 出又は交付要望の取下げがない場合,③交付要望等に関する不正の事実や助成対象活動の遂行に関する違反行為があった場合等について,交付内定の全部又は一部を取り消すことができる旨の定めがある(6条1項,7条3項,8条3項)が,これら交付内定の取消しによらずに交付申請に対する助成金の交付をしない旨の決定(以下「不交付決定」とい う。) 又は一部を取り消すことができる旨の定めがある(6条1項,7条3項,8条3項)が,これら交付内定の取消しによらずに交付申請に対する助成金の交付をしない旨の決定(以下「不交付決定」とい う。)をすることについて定めた規定はない。 交付決定を受けた者は,被告理事長に対し,助成金支払申請書を提出し,また,助成対象活動が完了したときは,助成対象活動実績報告書を提出しなければならない(14条,15条1項)。 被告理事長は,上記実績報告書を審査し,当該助成対象活動の成果が 交付決定の内容及びこれに附した条件に適合すると認めたときは,交付 すべき助成金の額を確定する(16条)。 エ本件助成金に係る審査基準等被告がウェブサイトで公開している本件助成金の募集案内(本件当時のもの。以下「本件募集案内」という。)には,交付内定の審査に係る審査基準(以下「本件審査基準」という。)等が記載されており,そのう ち劇映画に関する内容は以下のとおりである(甲7)。 本件審査基準a 作品の企画意図が明確であることb 作品の内容が具体的であることc 製作団体の過去の実績に照らして,作品の完成及び公開が実現可能 であることd 企画意図に則した優れた内容の作品であることe シナリオにおいて登場人物等が的確に描けていることf スタッフ・キャスト等に高い専門性,新たな創造性が認められること g 製作団体の運営(経理処理を含む。)が適正であることh 一般に広く公開される予定であることi 助成の緊要度が高い活動であること 交付予定金額(単年度助成の場合)劇映画については,予算総額が5000万円以上1億円未満である場 合,本件助成金の交付予定額は1000万円である 高い活動であること 交付予定金額(単年度助成の場合)劇映画については,予算総額が5000万円以上1億円未満である場 合,本件助成金の交付予定額は1000万円である。 ⑶ 原告による本件映画の製作原告は,平成30年4月頃,Aの漫画「宮本から君へ」を原作とする同名の映画(本件映画)の製作に着手し,同年10月30日に撮影を終え,映像の編集や音の調整等の作業を平成31年3月12日までに完了して,同年4 月24日に初号試写を実施した。本件映画の概要は,下記のとおりである (甲1,2,乙1の1及び2)。 記タイトル:「宮本から君へ」原作:A「宮本から君へ」(百万年書房/太田出版刊)監督:B 脚本:B,C出演:D,E,F,G,H,I,J,K,L,M(本件出演者)ほか上映時間:129分製作会社:原告配給:原告,株式会社KADOKAWA 劇場公開日:平成31年9月27日ストーリー等:文具メーカーで営業社員として働く宮本浩(D)は,中野靖子(E)と恋に落ち,幸せな日々を過ごしていた。そんなある日,宮本は,営業先会社の部長である真淵敬三(本件出演者。以下,この役を「真淵部長」という。)に誘われた飲み会で泥酔してしまい,真淵部長 の息子である真淵拓馬(G)に付き添われて靖子の自宅に帰るが,その夜,拓馬は,宮本が熟睡しているのに乗じて靖子を強姦してしまう。翌朝,そのことを知った宮本は,復讐を誓うが,ラグビーで鍛え上げられた巨漢の拓馬に全く歯が立たない。靖子に会わせる顔もなく,しばらく離れて暮らすうちに,靖子の妊娠が判明し,宮本は,靖子との結婚を決 意して拓馬との決闘に臨み,遂に拓馬に勝つ。そして,宮本と靖 た巨漢の拓馬に全く歯が立たない。靖子に会わせる顔もなく,しばらく離れて暮らすうちに,靖子の妊娠が判明し,宮本は,靖子との結婚を決 意して拓馬との決闘に臨み,遂に拓馬に勝つ。そして,宮本と靖子は,再び固い絆を取り戻し,出産の日を迎える。 なお,本件出演者が演じた真淵部長が登場する場面は,全129分のうち約11分であり,上記飲み会の場面のほかは,宮本と拓馬の喧嘩を知るラグビー場の場面,宮本に喧嘩の原因を問い詰める喫茶店の場面,拓馬から殴ら れて入院中に宮本の訪問を受ける場面がある。 ⑷ 原告による交付要望及び交付申請ア原告は,平成30年11月22日付けで,本件映画の製作を助成対象活動とする平成31年度の本件助成金の交付要望書を被告理事長に提出した(以下「本件交付要望」という。)。 なお,本件募集案内によれば,平成31年度の本件助成金の対象となる 助成対象活動は,映画の完成時期(初号試写を実施し,同試写において上映する内容が収められたDVDを被告に提出した時期)が平成31年4月1日から平成32年(令和2年)3月31日までの間であるものとされており(甲7),本件映画の完成時期もこの期間に該当するものである。 イ被告理事長は,本件交付要望につき,基金運営委員会の答申を踏まえて,平成31年3月29日付けで交付内定(以下「本件内定」という。)をし,同年4月初旬頃,その旨を原告に通知した。その通知書には,本件映画の製作に係る助成対象経費が7816万8000円,本件助成金の額が1000万円である旨が記載されていた。(甲3) なお,基金運営委員会による上記答申は,付託を受けた本件専門委員会による芸術的観点からの専門的知見に基づく審査及びこれを踏まえた本件 00万円である旨が記載されていた。(甲3) なお,基金運営委員会による上記答申は,付託を受けた本件専門委員会による芸術的観点からの専門的知見に基づく審査及びこれを踏まえた本件部会の審査を経て行われたものである(以下,本件専門委員会の審査を含め,基金運営委員会の答申に至るまでに行われる審査手続の全体を「本 件審査」という。)。 ウ原告は,令和元年7月2日までに,本件内定を受けた本件助成金に係る交付申請書(原告代表者の押印のあるもの。)を被告理事長に提出した(甲5,乙4。以下「本件交付申請」という。)。 ⑸ 本件出演者が有罪判決を受けたこと ア本件出演者は,平成31年3月12日,コカインを使用したとして麻薬 取締法違反の容疑で逮捕され(以下「本件逮捕」という。),翌13日に同事実が報道された(乙13,14)。なお,本件逮捕がされたのは本件交付要望から本件内定までの間の時期であるが,本件専門委員会における検討が実際に行われたのは本件逮捕の前であった。 イ本件内定後である令和元年6月18日,本件出演者は,東京地方裁判所 において,麻薬取締法違反の罪により,懲役1年6月,執行猶予3年の有罪判決の宣告を受け,同判決はその頃確定した(乙15。以下,同判決を「本件有罪判決」といい,本件出演者による上記犯罪行為を「本件犯罪行為」という。)。 ⑹ 本件処分 被告理事長は,令和元年7月10日付けで,原告に対し,本件交付申請に係る本件助成金の不交付決定(本件処分)をした。本件処分に係る通知書には,不交付の理由として,「本助成対象活動である映画『宮本から君へ』には,麻薬及び向精神薬取締法違反により有罪が確定した者が出演しており,これに対し,国の事業による助成金を交付す 処分に係る通知書には,不交付の理由として,「本助成対象活動である映画『宮本から君へ』には,麻薬及び向精神薬取締法違反により有罪が確定した者が出演しており,これに対し,国の事業による助成金を交付することは,公益性の観点から, 適当ではないため。」と記載されていた。(甲6) されていない。なお,被告理事長は,本件処分後である令和元年9月27日に本件要綱を改正し,8条3項4号及び17条1項6号に「公益性の観点から助成金の交付決定が不適当と認められる」との文言を加え,これに該当す る場合には交付内定及び交付決定の取消しができることとした(甲9,10)。 ⑺ 本件訴訟の提起原告は,令和元年12月20日,本件処分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 3 争点及び当事者の主張 本件の争点は,本件処分の適法性(具体的には,被告理事長が本件内定を受けた原告に本件助成金を交付しないこととした本件処分につき,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法が認められるか否か等)であり,これに関する当事者の主張の要旨は別紙3記載のとおりである。なお,同別紙で定義した略語は本文においても用いる。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,被告理事長が本件内定を受けた原告に対し本件助成金を交付しないこととした本件処分は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法な処分であるから,その取消しを求める原告の請求は理由があり,認容すべきものと判断する。その理由の詳細は以下のとおりである。 1 認定事実前記前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ⑴ 本件映画の製作及び本件助成金の交付内定に係る経緯ア原告は,平成30年4月頃,本件映画の製作に着手し,原作者との に後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ⑴ 本件映画の製作及び本件助成金の交付内定に係る経緯ア原告は,平成30年4月頃,本件映画の製作に着手し,原作者との映画 化交渉を経て,監督・脚本家等や主要な出演者の人選を行い,脚本を作成するとともに,製作予算及び製作日程の概要を策定し,資金調達の準備を行った。また,原告は,撮影・照明・美術等のスタッフや出演者の編成,ロケーション撮影とセット撮影の振り分け,撮影日程の策定,ロケーション場所の選定,機材・美術・衣装等に係る業者の選定等の撮影の準備作業 を行った(前提事実⑶,弁論の全趣旨)。 イ原告は,平成30年9月29日に本件映画の撮影を開始し,同年10月30日に撮影を完了させた。撮影完了後,音声の入っていない映像の編集を行い,平成31年2月下旬にこれを完了させた(前提事実⑶,弁論の全趣旨)。 この間の平成30年11月22日付けで,原告は,被告理事長に対し, 本件助成金に係る交付要望書を提出した(本件交付要望。前提事実⑷ア)。 ウ上記イの編集完了後,原告は,台詞・効果音・音楽等の音楽素材を編集された映像に同期させ,正確なタイミングで録音を行い,整音し,映像と一体化させるという作業(MA)を平成31年3月6日に開始し,同月1 2日にこれを完了させた(前提事実⑶,弁論の全趣旨)。 エ被告理事長は,本件審査の結果を受けた基金運営委員会の答申を踏まえ,平成31年3月29日付けで本件内定をし,同年4月初旬頃,原告にその旨を通知した。なお,本件審査において,本件専門委員会では,芸術的観点からの専門的知見に基づく審査が行われ,その結果,本件映画につ き,「企画意図に則した優れた内容の作品であること」,「シナリオ を通知した。なお,本件審査において,本件専門委員会では,芸術的観点からの専門的知見に基づく審査が行われ,その結果,本件映画につ き,「企画意図に則した優れた内容の作品であること」,「シナリオにおいて登場人物等が的確に描けていること」「スタッフ・キャスト等に高い専門性,新たな創造性が認められること」等の本件審査基準を満たすとされたものである。(前提事実⑷イ,弁論の全趣旨)オ原告は,本件内定を受けたことから,その後の手続を経て交付されるこ ととなる本件助成金(1000万円)を,平成31年4月1日から令和2年3月31日までに支払うべき本件映画の製作企画費,スタッフ・キャスト費,製作費の支払(本件内定において助成対象経費として認められた7816万8000円の一部)に充てる予定であった。なお,本件募集案内によれば,平成31年度の本件助成金の使途は,上記期間内に支払われる 上記各費用に限られるものとされているところ,本件映画の製作費用のうち大半は上記期間内に支払われることが予定されていた。(前提事実⑷イ,甲7,弁論の全趣旨)⑵ 本件出演者等ア本件出演者は,平成元年に音楽バンドである「N」のメンバーとして活 動を開始し,音楽活動を続けながら,俳優としては,映画「凶悪」(平成 25年)で第37回日本アカデミー賞優秀助演男優賞等を受賞したほか,NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(平成25年)や映画「アウトレイジ最終章」(平成29年)など多数の作品に出演している著名人である(甲2,乙16)。 イ本件映画の主な出演者は,主人公である宮本浩役のD,宮本の恋人であ る中野靖子役のE,靖子の元恋人である風間裕二役のF,宮本と対決する相手である真淵拓馬役のG等であるところ,本件映画のほとんどの部分は, 主な出演者は,主人公である宮本浩役のD,宮本の恋人であ る中野靖子役のE,靖子の元恋人である風間裕二役のF,宮本と対決する相手である真淵拓馬役のG等であるところ,本件映画のほとんどの部分は,これら4名の出演者(以下「主要出演者4名」という。)による場面で占められている(前提事実⑶,甲1,2,乙1の1)。 本件出演者が演じた真淵部長が登場する場面は,全129分のうち約1 1分である。真淵部長は,宮本の営業先会社の部長であるとともに,拓馬の父親でもあり,宮本と拓馬との喧嘩を知り,子を想う気持ちと正義を重んじる心との間で苦悩する大人として描かれている。なお,ラグビーの選手である拓馬と同様,真淵部長も,社会人ラグビー部で活動するラガーマンという設定である。(前提事実⑶,甲2,乙1の1)。 ウ本件映画の宣伝用チラシにおいて,本件出演者の名前は,主要出演者4名に続く他の6名の出演者のうちの1人として記載されており,また,本件映画のエンドロールにおいてもこれらの出演者と同様に大きく表示されている(甲1,乙1の2)。 ⑶ 本件逮捕及びこれに対する映画業界等の対応 ア本件内定に先立つ平成31年3月12日,本件出演者は本件犯罪行為により逮捕され,翌13日に同事実が報道された(前提事実⑸ア)。 イこの状況を踏まえ,本件出演者が出演予定であった映画「居眠り磐音」では代役を立てて再撮影がされ,NHKの大河ドラマ「いだてん」では逮捕前の放送回についての再放送分は本件出演者の出演場面がカットされ, その後の回は代役を立てて再撮影がされた。また,本件出演者が声優とし て出演した映画「アナと雪の女王」のブルーレイディスク等は生産・販売が中止された上,声優が交代となり,ほかにもオンデマンド配信がされて 代役を立てて再撮影がされた。また,本件出演者が声優とし て出演した映画「アナと雪の女王」のブルーレイディスク等は生産・販売が中止された上,声優が交代となり,ほかにもオンデマンド配信がされていた本件出演者の出演作品の配信が中止されるなどした(乙25の1~13)。 一方,映画「麻雀放浪記2020」は,本件出演者の出演場面をそのま まにして公開された(乙26)。 ⑷ 本件処分に至るまでの経緯ア平成31年4月24日,本件映画の製作関係者のほか文化庁担当者1名及び被告担当者3名が参加して,本件映画の初号試写(本件助成金の内定者について映画の完成を確認するためのもの)が行われた。その際,被告 担当者が,原告代表者(本件映画のエグゼクティブ・プロデューサーを務めていた〔甲2〕。)に対し,本件映画に関する再編集等の予定の有無を尋ねたところ,原告代表者は,再編集等の予定はなく,交付内定を辞退する意思もない旨の回答をした(弁論の全趣旨)。 その当時の原告側の事情としては,①本件映画を公開する映画館や公開 時期が既に公表されていたこと,②仮に再撮影をするにしても,監督や出演者の日程調整が困難であったこと,③本件出演者が演じる真淵部長と登場場面が重なる真淵拓馬役の俳優は,巨漢のラガーマンという設定のため30kg増量して撮影に臨んだところ,再撮影のために再度増量することは極めて困難であったこと,④再撮影のための総費用は,ロケセットを作 り直す必要から,数千万円に及ぶものと想定されていたことなどの事情があった(甲2,弁論の全趣旨)。 イ令和元年6月18日,本件出演者は,麻薬取締法違反の罪により本件有罪判決を受け,その事実は報道された(前提事実⑸イ,乙15)。 ウ令和元年6月28日,被告担当者3名が原告本社 趣旨)。 イ令和元年6月18日,本件出演者は,麻薬取締法違反の罪により本件有罪判決を受け,その事実は報道された(前提事実⑸イ,乙15)。 ウ令和元年6月28日,被告担当者3名が原告本社を訪れ,本件映画に係 る本件助成金の交付については不交付決定がされる見込みであると伝えた 上,それでも交付申請するのであれば交付申請書の押印版(押印がない交付申請書の電子データは同年5月21日に提出されていた。)を提出するよう伝えた。原告は,原告代表者の押印のある交付申請書を同年7月2日までに被告理事長に提出し,被告理事長は,同月10日付けで,本件交付申請に係る不交付決定(本件処分)をした。(前提事実⑷イ,⑹,甲6, 乙3,4,弁論の全趣旨) 2 本件処分の適法性に関する判断枠組み⑴ 振興会法は,独立行政法人である被告の目的について,芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための活動等に対する援助等を行うことにより,文化の振興及び普及を図り,芸術その他の文化の向上に寄 与することと定め(3条),その目的を達成するための業務を14条1項各号に定めており,そのうち,本件のような映画製作活動等に対する助成に関するものとしては,同項1号イにおいて「芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための公演,展示等の活動」に対し資金の支給その他必要な援助を行うことを定めているが,その具体的な要件や手続につ いては定めていない。 これは,文化の振興等を図り芸術文化の向上に寄与するという上記目的を達成するための助成事業として,いかなる活動を助成の対象とし,いかなる手続で助成を行うか等を,被告理事長による合理的な裁量に委ねる趣旨によるものと解される。 ⑵ア他方において,振興会 達成するための助成事業として,いかなる活動を助成の対象とし,いかなる手続で助成を行うか等を,被告理事長による合理的な裁量に委ねる趣旨によるものと解される。 ⑵ア他方において,振興会法は,14条1項1号に定める助成業務に必要な経費の財源をその運用によって得るために芸術文化振興基金を設けるものとし(16条),基金運営委員会は,「文化芸術振興費補助金による助成金交付の基本方針」(甲7の資料3。以下「本件基本方針」という。)を定め,①文化芸術振興費補助金による助成は,我が国の芸術団 体が行う芸術水準の向上に資すると認められる創作性・芸術性の高い舞 台芸術や優れた日本映画の製作活動を対象とすること,②助成金の交付を通じ,上記のような創作性・芸術性の高い舞台芸術や優れた日本映画の製作等に対する適切な助成効果が得られるよう配慮すること,ただし,芸術文化団体等の自主性については十分尊重されなければならないこと,③映画の製作に関しては,我が国の優れた映画の製作活動を奨励 し,映画の振興を図るための日本映画の製作活動に対し適切に配慮することとしている。 イまた,前記前提事実⑵ウのとおり,助成金の交付について必要な事項として被告理事長が定める本件要綱は,助成金の交付の手続について,交付要望をした者に対する交付内定と,内定者が交付申請をした場合における 交付決定という2段階の手続を定め,そのうち第1段階(交付内定)に当たっては基金運営委員会の議を経るものとしている。 そして,本件要綱は,交付内定を受けた場合につき,①交付内定後の事情の変更により助成対象活動の継続の必要がなくなった場合等(6条1項),②所定の期日までに交付申請書の提出又は交付要望の取下げがな い場合(7条3項),③交付要望等に関する不正の事実 定後の事情の変更により助成対象活動の継続の必要がなくなった場合等(6条1項),②所定の期日までに交付申請書の提出又は交付要望の取下げがな い場合(7条3項),③交付要望等に関する不正の事実や,助成対象活動の遂行に関する違反行為があった場合等(8条3項)について,交付内定を取り消し得ることを定めるが,これら交付内定の取消しによらずに交付申請に対する不交付決定をすることについては定めを置いていない。また,本件要綱は,交付内定の取消しについては,内定者への通知 の手続を定めている(6条2項,7条4項,8条4項)が,その一方,不交付決定については,交付申請をした者への通知の手続に関する定めを置いていない。 ウ上記イのように,本件要綱が交付内定と交付決定という2段階の手続を定め,交付内定に当たって基金運営委員会の議を経ることとしているの は,次の趣旨によるものと解することができる。 すなわち,芸術団体等の活動に対する援助等を行うことにより文化の振興等を図り芸術文化の向上に寄与するという振興会法の目的(上記⑴)を達成するためには,基金運営委員会の定める本件基本方針(上記ア)にも掲げられているように,我が国の芸術水準の向上に資するような創作性・芸術性の高い舞台芸術や優れた日本映画の製作活動等を対象と し,適切な助成効果が得られるように配慮することが必要である。そして,このような創作性・芸術性の高さ等について的確に判断するためには,各分野における芸術の専門家においてその評価を行うことが不可欠であり,また,芸術団体等が時に社会の無理解や政治的な圧力等によってその自由な表現活動を妨げられることがあったという歴史的経緯に鑑 みると,被告が上記目的の下に助成事業を行うに当たっても,芸術団体等の自 ,芸術団体等が時に社会の無理解や政治的な圧力等によってその自由な表現活動を妨げられることがあったという歴史的経緯に鑑 みると,被告が上記目的の下に助成事業を行うに当たっても,芸術団体等の自主性について配慮するとともに,各分野における芸術の専門家が行った評価についてはこれを尊重することが求められるものと解される。 このような立場から,本件要綱は,交付内定に当たって基金運営委員会 の議を経ることとし,基金運営委員会に設けられた分野別の部会及びその下に設けられた各専門委員会における芸術的観点からの専門的知見に参照)を踏まえて交付内定をすることとした上,かかる交付内定を受けた者(内定者)に交付申請をさせて交付決定をすることとしているのであり,また,交付内定後の事 情の変更や不正の事実の発覚等によりそのまま交付決定をすることが相当でない場合については交付内定の取消事由を具体的に定め,そのような特段の事情がない限りは交付内定の判断が維持される仕組みを設けているのであって,これらの定めや仕組みを通じて,交付内定の審査における芸術的観点からの専門的知見に基づく判断を尊重しているものとい うべきである。 ⑶ 以上のとおり,振興会法は,被告の助成事業における助成金の交付の要件や手続について被告理事長による合理的な裁量に委ねているところ,被告理事長は,本件要綱を定めるに当たり,同法の趣旨を踏まえ,交付内定に当たって基金運営委員会の議を経るものとし,交付内定の審査における芸術的観点からの専門的知見に基づく判断を尊重するための定めや仕組みを設けてい るのであるから,被告理事長が内定者の交付申請に対して行う交付又は不交付の判断も,このような本件要綱の定めや仕組みを踏まえたものでなければならない。 ⑷アとこ の定めや仕組みを設けてい るのであるから,被告理事長が内定者の交付申請に対して行う交付又は不交付の判断も,このような本件要綱の定めや仕組みを踏まえたものでなければならない。 ⑷アところで,上記⑵イのとおり,本件要綱は,交付内定の取消しに関し,①交付内定後の事情の変更により助成対象活動の継続の必要がなくなっ た場合等(6条1項),②所定の期日までに交付申請書の提出又は交付要望の取下げがない場合(7条3項),③交付要望等に関する不正の事実や,助成対象活動の遂行に関する違反行為があった場合等(8条3項)に交付内定を取り消すことができる旨を定めるところ,これらの規定は,助成の必要性又は適正性(適正化法1条,6条,10条等参照) の観点から,交付内定の審査における芸術的観点からの専門的知見に基づく判断を尊重する本件要綱の定めや仕組みを踏まえてもなお助成金を交付しないことを相当とする事由を類型的に掲げたものとして,合理性を有するものである。 そして,本件処分当時の本件要綱には,本件で被告が主張する公益性に ついては交付内定の取消事由として規定されておらず,令和元年9月27日改正後の本件要綱8条3項4号に「公益性の観点から助成金の交付決定が不適当と認められる」との文言が加えられたものである(前提事実⑹)ところ,本件要綱に交付内定の取消事由が定められた上記の趣旨からすると,取消事由として規定されていない事由を考慮して交付内定の取消し又 は不交付決定を行うことが一切許されないものとは解し難く,また,文化 芸術振興費補助金という公金を財源とする助成事業の性質上,公益性の観点から交付決定が不適当である場合について交付決定を行うことは助成の適正性の観点から相当でない。そうすると,被告理事長が処分当時の本 芸術振興費補助金という公金を財源とする助成事業の性質上,公益性の観点から交付決定が不適当である場合について交付決定を行うことは助成の適正性の観点から相当でない。そうすると,被告理事長が処分当時の本件要綱には交付内定の取消事由として規定されていない公益性を根拠に交付内定の取消し又は不交付決定をしたという一事をもって,直ちに,これが 裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるものということはできない。 イもっとも,公益性は多義的な概念である上,具体的にどのような場合であれば公益性に反するのかの判断も個別の事案や価値観等によって分かれ得ることから,被告理事長が内定者に対し公益性を理由に交付内定の取消し又は不交付決定をすることは,その運用次第では,特定の芸術団 体等に不当な不利益を与え,あるいはその自主性を損ない,ひいては芸術団体等による自由な表現活動の妨げをもたらすおそれをはらむものであることを否定することができない。 そこで,被告理事長が交付内定を受けた芸術団体等(内定者)に対し公益性を理由に助成金の交付内定の取消し又は不交付決定をしたことが裁量 権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるか否かを判断するに当たっては,交付内定の取消し又は不交付決定の根拠とされた公益の内容,当該芸術団体等に対し助成金を交付することにより当該公益が害される態様・程度,交付内定の取消し又は不交付決定により当該芸術団体等に生じる不利益の内容・程度等の諸事情を総合的に考慮して,交付内定の審査における芸術的 観点からの専門的知見に基づく判断を尊重する本件要綱の定めや仕組みを踏まえてもなお助成金を交付しないことを相当とする合理的理由があるか否かを検討するべきである。 ⑸ 被告の主張についてア以上の点に関し,被告は,本件要綱 重する本件要綱の定めや仕組みを踏まえてもなお助成金を交付しないことを相当とする合理的理由があるか否かを検討するべきである。 ⑸ 被告の主張についてア以上の点に関し,被告は,本件要綱8条1項は,振興会法14条1項1 号イの業務が被告の自由裁量行為であることを受けて,同業務の一環で ある助成金の交付・不交付の決定が被告理事長の自由裁量行為であることを明記したものである旨を主張する。 しかし,上記⑵及び⑶に説示したとおり,被告理事長は,振興会法の趣旨に従って定めた本件要綱において,交付内定に当たり基金運営委員会の議を経るものとし,交付内定の審査における芸術的観点からの専門的 知見に基づく判断を尊重するための定めや仕組みを設けているのであるから,これを離れて,内定者に対して助成金を不交付とする判断を自由に行うことができるものではなく,本件要綱に例示的に列挙された交付内定の取消事由に該当する場合か,あるいは,これらの事由と同様に,助成の必要性や適正性の観点から,上記のような本件要綱の定めや仕組 みを踏まえてもなお助成金を交付しないことを相当とする合理的理由があるといえる場合に限り,内定者に対する不交付決定をすることができるものと解するべきである。 イまた,被告は,被告理事長が交付内定後に生じた事情を考慮する場合には,その裁量権の範囲が限定されることはない旨を主張する。 しかし,本件要綱は,6条1項において,交付内定後に助成対象活動の全部若しくは一部を継続する必要がなくなったとき,又は,内定者が助成対象活動の全部若しくは一部を遂行することができなくなったときに交付内定を取り消し得ることを定め,また,8条3項においても,交付申請について不正の事実があった場合や,助成対象活動 又は,内定者が助成対象活動の全部若しくは一部を遂行することができなくなったときに交付内定を取り消し得ることを定め,また,8条3項においても,交付申請について不正の事実があった場合や,助成対象活動の遂行が交付内定の内容 又はこれに附した条件に違反している場合に交付内定を取り消し得ることを定めているのであって,交付内定後に生じた事情も,助成の必要性や適正性の観点から交付決定をすることが相当でない事由として列挙された交付内定の取消事由に含まれている。そうすると,交付内定後に生じた事情であるからといって,被告理事長が当該事情を考慮して内定者に対する不 交付決定を自由に行うことが許されるものではなく,交付内定前に生じた 事情の場合と同様に,交付内定の審査における芸術的観点からの専門的知見に基づく判断を尊重する本件要綱の定めや仕組みを踏まえてもなお助成金を交付しないことを相当とする合理的理由があるといえるか否かを検討すべきものである。 ウしたがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。 3 本件処分の適法性についての検討⑴ 前記前提事実及び認定事実を踏まえ,上記2⑷イの観点(本件処分の根拠とされた公益の内容,本件助成金を交付することにより当該公益が害される態様・程度,本件処分により原告に生じる不利益の内容・程度等の諸事情を総合的に考慮して,交付内定の審査における芸術的観点からの専門 的知見に基づく判断を尊重する本件要綱の定めや仕組みを踏まえてもなお本件助成金を交付しないことを相当とする合理的理由があったといえるか否か。)に照らし,本件映画に係る交付内定を受けた原告に対して被告理事長がした本件処分が裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるか否かについて,以下検討する。 ⑵ 本件 由があったといえるか否か。)に照らし,本件映画に係る交付内定を受けた原告に対して被告理事長がした本件処分が裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるか否かについて,以下検討する。 ⑵ 本件処分の根拠とされた公益の内容及び本件助成金を交付することにより当該公益が害される態様・程度についてア本件処分の理由は,本件映画には,麻薬取締法違反により本件有罪判決が確定した者(本件出演者)が出演しており,これに対して国の事業(文化芸術振興費補助金)による本件助成金を交付することは,公益性の観点 から適当ではないというものである(前提事実⑹)。 被告の主張によれば,ここでいう公益とは薬物乱用の防止であり,仮に本件映画を対象として本件助成金を交付するとすれば,「国は薬物乱用に対し寛容である。」,「違法薬物を使用した犯罪者であっても国は大目に見てくれる。」という誤ったメッセージを被告が発信したと受け取られ, その結果,違法薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれがあると している。 イそこで,この点について検討すると,本件出演者は俳優として多数の映画やテレビドラマに出演している著名人であり,本件出演者が麻薬取締法違反により逮捕されたこと及び本件有罪判決を受けたことは広く報道された(認定事実⑵ア,⑶ア,⑷イ)。そのため,本件映画を観た者やその宣 伝広告に接した者(以下「観客等」という。)は,麻薬取締法違反により有罪となった本件出演者が本件映画に出演していることを容易に認識し得たものといえ(認定事実⑵ウ参照),また,本件助成金の対象とされた映画についてはその旨がエンドロールやポスター・チラシ等に表示されるため,仮に本件映画に対して本件助成金の交付決定がされていれば,観客等 はその交付決定の事実も容易 ,本件助成金の対象とされた映画についてはその旨がエンドロールやポスター・チラシ等に表示されるため,仮に本件映画に対して本件助成金の交付決定がされていれば,観客等 はその交付決定の事実も容易に認識し得たものといえる。 ウもっとも,以下の事情に鑑みると,観客等が上記イの事実(麻薬取締法違反により有罪となった本件出演者が出演している本件映画に対し,本件助成金の交付決定がされたこと)を認識することによって,これらの観客等に被告が上記アのような誤ったメッセージを世の中に発信したと受け取 られ,その結果,違法薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれがあると認めることはできない。 そもそも,本件助成金は映画製作主体である原告に交付されるものであって,本件映画の出演者に交付されるものではない。本件助成金の交付を受ける原告は,本件出演者の本件犯罪行為とは無関係であり,本 件出演者を本件映画に出演させたことについて原告に落ち度があったとの事情もうかがわれない。また,本件交付申請に係る助成対象経費に本件出演者への出演料が含まれているとしても,契約に定められた出演料の支払が本件助成金の交付の有無による影響を受けるものとはいえないから,本件助成金の交付によって本件出演者が経済的利得を得るものと 評価することもできない。 そうすると,被告理事長が原告に対し本件助成金を交付することは,麻薬取締法違反を行った者やその関係者に対して利益を与えることを直ちに意味するものではない。 違法薬物の使用については,麻薬取締法その他の法令により刑罰規定をもって禁止され,現に,これらの法令に違反する行為については厳 正な処罰の対象とされている上,厚生労働省等により薬物乱用の根絶に向けた啓発活動が強化され,そのための様々な取組が により刑罰規定をもって禁止され,現に,これらの法令に違反する行為については厳 正な処罰の対象とされている上,厚生労働省等により薬物乱用の根絶に向けた啓発活動が強化され,そのための様々な取組が実施されているところである。 被告は,芸術団体等が行う芸術創造活動等に対する援助等を行う団体であり,その援助は当該活動の創作性・芸術性の高さに着目して行わ 助成金の交付は麻薬取締法違反を行った者やその関係者に対して利益を与えることを直ちに意味するものではないのであるから,観客等が,麻薬取締法違反により有罪となった本件出演者が出演している本件映画に対して本件助成金の交付決定がされたことを認識したからといって,これらの観客等に,上記のような 違法薬物の使用に対する厳正な処罰の実施や薬物乱用の根絶に向けた国の啓発活動の強化にもかかわらず,被告が主張するように,「国は薬物乱用に対し寛容である。」,「違法薬物を使用した犯罪者であっても国は大目に見てくれる。」という誤ったメッセージを被告が発信したと受け取られ,その結果,違法薬物に対する許容的な態度が一般に広まるお それがあるとは,にわかに認め難い。 仮に,出演者がその映画の「顔」として受け止められ,このことから観客等にとって本件助成金の交付を受ける映画製作主体の利益と当該出演者の利益との混同を招くおそれがあるとしても,当該映画の全ての出演者につきそのような混同のおそれが生じるものとはいえず,混同の おそれの有無やその程度は,当該出演者が当該映画において演じている 役のいかんによって異なるものというべきである。 そこで,このような観点から本件についてみると,本件出演者が本件映画において演じた真淵部長の役は,本件映画の主役でもなければ,本件映画のほとんどの場 いかんによって異なるものというべきである。 そこで,このような観点から本件についてみると,本件出演者が本件映画において演じた真淵部長の役は,本件映画の主役でもなければ,本件映画のほとんどの場面を占める主要出演者4名にも当たらず,宣伝用チラシにおいても主要出演者4名に続く他の6名の出演者のうちの1 人として記載されているにすぎないほか,その出演時間も全129分のうち約11分にすぎない(認定事実⑵イ,ウ)。そうすると,真淵部長の役が本件映画のストーリーにおいて欠くことのできないものであり,その存在が本件映画の創作性・芸術性において一定の重要性を有するものであったことを考慮するとしても,真淵部長の役を演じた本件出演者 が観客等に本件映画の「顔」として受け止められるとはいえず,本件助成金の交付を受ける映画製作主体である原告の利益と本件出演者の利益との混同が生じるおそれが高いものであったと認めることはできない。 エ被告の主張について この点に関し,被告は,本件出演者が逮捕されたとの報道を受け,本 件出演者が出演していた映画等において再撮影等の対応が取られたことを指摘する。 しかし,映画において配役は,それ自体が映画表現の重要な要素となるものである上,再撮影等に当たっては,そのために要する費用のほか,他の出演者やスタッフのスケジュール調整等の問題があるから,出 演者の1人に不祥事が起こった場合に,代役を立てての再撮影やその出演場面をカットするなどの再編集を行うか否かは,映画製作主体が自ら判断すべき事項である。 そして,本件映画において本件出演者が演じた真淵部長の役はラガーマンという設定であり(認定事実⑵イ),そのような体格を有し,役の イメージに合った俳優を代役として立てること自体が, 。 そして,本件映画において本件出演者が演じた真淵部長の役はラガーマンという設定であり(認定事実⑵イ),そのような体格を有し,役の イメージに合った俳優を代役として立てること自体が,相応の困難性を 有するものであったといえる。また,再撮影に要する費用や,監督及び出演者の日程調整の問題に加え,共演者が本件映画のために30kg増量する必要があったこと(認定事実⑷ア)から,再撮影を行うことは経済的・技術的にも極めて困難であった。さらに,本件映画において真淵部長の登場場面にはストーリー上も欠かせないものが含まれていたか ら,当該場面をカットする再編集も,現実的な選択とはいえないものであった。 原告は,このような事情の下において,本件出演者の出演場面について再撮影等を行わないと判断したものであって,被告が指摘するような,本件逮捕の報道後に他の映画等において再撮影等の対応を取ったと の事情があるとしても,これにより上記ウの判断が左右されるものではないというべきである。 また,被告は,本件訴訟の係属後である令和2年7月に被告が株式会社マクロミルに委託して行ったアンケート調査(選択回答方式及び自由記載方式の2種類)の結果,選択回答方式のアンケートにおいて,約7 割の回答者が,違法薬物使用の罪で有罪判決を受けた著名な俳優が出演している映画の製作活動に対して税金を原資とする助成金の交付を適切だと考えないと回答し,約6割の回答者が,助成金を交付することは国が違法薬物使用を大目に見ているというように感じると回答したほか,自由記載方式のアンケートにおいても助成金の交付に否定的な回答が多 かったと主張し,これに沿う証拠(乙24の1~4)を提出する。 しかし,そもそも,本件助成金を交付することによ たほか,自由記載方式のアンケートにおいても助成金の交付に否定的な回答が多 かったと主張し,これに沿う証拠(乙24の1~4)を提出する。 しかし,そもそも,本件助成金を交付することにより薬物乱用の防止という公益が害される態様・程度については,本件助成金の交付の性質や,これと上記公益との関係等に照らし,客観的に判断すべきものであるところ,上記のようなアンケートの結果は,一定の条件で抽出 され,質問に回答した者の回答結果を集計したものとして上記の客観 的な判断を補強し得るものではあっても,上記判断に代替し得るものではなく,被告が主張する「違法薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれ」の存在を直接に証明するものでもない。 また,この点を措くとしても,上記アンケートは,違法薬物の使用により懲役1年6か月,執行猶予3年の有罪判決を受けた著名な俳優 が「メインキャストの1人」として出演している映画の製作活動に国の税金から助成金が交付されたことを前提に,かかる事実関係の下で助成金を交付することの適切性等について質問をしたものである(乙24の1)がのとおり,本件映画における本件出演者は,主要出演者4名にも当たらず,宣伝用チラシ等においても主要出演者 4名に続く他の6名の出演者のうちの1人として記載されていたにすぎないのであるから,上記アンケートの質問に回答した者が「メインキャストの1人」という文言から受けた印象と,実際に本件映画を観たりその宣伝広告に接した観客等が受ける印象には齟齬があった可能性を否定することができない。 加えて,自由記載方式によるアンケートの回答(乙24の4)について見ると,質問の事例において助成金を交付しても構わないとする意見も相当割合で見られ,また,助成金の交付に反対 きない。 加えて,自由記載方式によるアンケートの回答(乙24の4)について見ると,質問の事例において助成金を交付しても構わないとする意見も相当割合で見られ,また,助成金の交付に反対する意見の中にも,助成金の交付により当該俳優が経済的利益を得ることや,再撮影等が可能であることなど,本件とは異なる事情を前提としているもの が散見される。しかも,自由記載方式によるアンケートの質問は,「あなたは,国の税金の使い方としてどう思いますか。」というものであり,助成金を交付することにより違法薬物の使用に対する国の態度が寛容であると感じられるかといった観点からの質問ではないため,質問に対する回答も,このような観点に基づかず,税金の使い方 の是非についての意見を述べるものがほとんどとなっている。 以上に鑑みると,本件処分の根拠とされている公益性に関する被告の主張が,上記アンケート調査の結果により的確に裏付けられているということはできない。 ⑶ 本件処分により原告に生じる不利益の内容・程度についてア本件内定に係る通知書によれば,本件映画の製作に係る助成対象経費約 7800万円につき,本件助成金の額は1000万円とされていたものであり(前提事実⑷イ),このことに照らすと,本件映画の製作に係る予算額全体のうちに本件助成金が占める割合は小さいものとはいえない。また,原告は,本件内定を受けたことにより,本件助成金1000万円を平成31年4月から令和2年3月までに支払うべき本件映画の製作企画費, スタッフ・キャスト費,製作費の支払に充てる予定であったところ(認定事実⑴オ),本件処分を受けたことにより,これらの費用を支払うために,急遽,新たな資金調達の必要が生じたものであって,これにより映画製作事業の実施 ト費,製作費の支払に充てる予定であったところ(認定事実⑴オ),本件処分を受けたことにより,これらの費用を支払うために,急遽,新たな資金調達の必要が生じたものであって,これにより映画製作事業の実施に及ぼされた影響も小さいものとはいえない。 イまた,本件処分は,原告が本件出演者の出演場面について再撮影等を行 わないことを前提にされたものである(認定事実⑷ア参照)ところ,再撮影等を行うか否かは映画の配役や編集という映画表現の重要な要素の選択に関するものであるから,原告が本件助成金を受けるために,その意に沿わない再撮影等を行わなければならないこととなれば,振興会法の趣旨から要請される芸術団体等の自主性が損なわれることとなりかねない。 ウ以上によれば,本件処分により原告に生じる不利益は,映画製作事業の実施に係る経済的な面においても,また,映画表現の重要な要素の選択に関する自主性の確保の面においても,小さいものとはいえない。 エ被告の主張について 被告は,①交付内定後に交付決定がされない可能性があることは本件 要綱上も予定されていたものであること,②本件内定に係る助成金は本 件映画製作に係る経費のうちの助成対策経費の一部にすぎないこと,③原告は本件内定を受ける前に本件映画を完成していたことから,本件処分により原告に生じる不利益は大きいものではない旨を主張する。 しかし,上記①については,前記⑵イのとおり,本件処分当時の本件要綱において定められていた交付内定の取消事由は,⒜交付内定後の事 情の変更により助成対象活動の継続の必要がなくなった場合等(6条1項),⒝所定の期日までに交付申請書の提出又は交付要望の取下げがない場合(7条3項),⒞交付要望等に関する不正の事実や,助成対象活動の遂行に関する違反行 象活動の継続の必要がなくなった場合等(6条1項),⒝所定の期日までに交付申請書の提出又は交付要望の取下げがない場合(7条3項),⒞交付要望等に関する不正の事実や,助成対象活動の遂行に関する違反行為があった場合等(8条3項)であり,原告がこれらの事由のいずれにも該当していなかったことは明らかであるか ら,本件内定を受けたことにより本件助成金1000万円の交付について原告が抱いていた期待は合理的なものであり,その期待に反して新たな資金調達の必要が生じたことの影響は,小さいものということはできない。 上記②については,助成対策経費約7800万円は本件映画の製作費 用の全てではないものの,その製作費用の大半は助成対策経費の対象期間である平成31年4月から令和2年3月までの間に支払われることが予定されていた(認定事実⑴オ)というのであるから,助成対策経費との関係のみならず,予算総額全体との関係においても,本件助成金の割合は小さいといえないものである。 上記③については,本件映画に係る撮影・編集・音の調整等の作業は平成31年3月12日までに完了している(前提事実⑶,認定事実⑴ウ)ものの,上記のとおり,これらの撮影等に要した費用の大半は,本件内定後である同年4月1日以降に支払われる予定であったのであるから,本件内定までに上記作業が完了していたことをもって,本件処分に より原告に生じる不利益が小さいものということはできない。 また,被告は,本件処分は本件映画の表現内容を理由とするものではなく,本件出演者が有罪判決を受けたという事実を理由とするものであるから,文化芸術表現活動に萎縮効果をもたらすものとはいえない旨を主張する。 しかし,上記イにおいて説示したとおり,本件処分が本件映画の表 有罪判決を受けたという事実を理由とするものであるから,文化芸術表現活動に萎縮効果をもたらすものとはいえない旨を主張する。 しかし,上記イにおいて説示したとおり,本件処分が本件映画の表現 内容を理由とするものではないとしても,本件出演者の本件映画への出演を問題とするものである以上,かかる問題を回避して本件助成金を受けるためには,再撮影等を実施することが不可欠であったのであり,再撮影等は映画表現の重要な要素の選択に関わるものであるから,本件処分により,映画表現の重要な要素の選択に関する自主性の確保に影響が 生じることは否定できない。 以上によれば,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 ⑷ 本件処分の適法性についての判断以上によれば,本件処分の根拠とされた薬物乱用の防止という公益との関係で,原告に本件映画を対象とする本件助成金が交付されることにより, 「『国が違法薬物の使用に対し寛容である』などという誤ったメッセージを被告が発信したと受け取られ,その結果,違法薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれがある」とする被告の主張については,そのようなおそれがあると認めることができず(上記⑵),他方,本件処分により原告に生じる不利益は,映画製作事業の実施に係る経済的な面においても,また,映 画表現の重要な要素の選択に関する自主性の確保の面においても,小さいものということができない(上記⑶)。 そうすると,本件においては,交付内定の審査における芸術的観点からの専門的知見に基づく判断を尊重する本件要綱の定めや仕組みを踏まえてもなお本件助成金を交付しないことを相当とする合理的理由があるということは できないから,被告理事長が本件内定を受けた原告に対し本件助成金を交付 重する本件要綱の定めや仕組みを踏まえてもなお本件助成金を交付しないことを相当とする合理的理由があるということはできないから,被告理事長が本件内定を受けた原告に対し本件助成金を交付しないこととした本件処分は,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たり,違法である。 第4 結論 以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官清水知恵子 裁判官横地大輔 裁判官定森俊昌 (別紙1)訴訟代理人目録は記載省略 (別紙2-1) ○ 独立行政法人日本芸術文化振興会法 (目的) 第一条 この法律は、独立行政法人日本芸術文化振興会の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めることを目的とする。 (名称) 第二条 この法律及び独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号。以下「通則法」という。)の定めるところにより設立される通則法第二条第一項に規定する独立行政法人 三号。 以下「通則法」という。 )の定めるところにより設立される通則法第二条第一項に規定する独立行政法人の名称は、独立行政法人日本芸術文化振興会とする。 (振興会の目的) 第三条 独立行政法人日本芸術文化振興会(以下「振興会」という。)は、芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための活動その他の文化の振興又は普及を図るための活動に対する援助を行い、あわせて、我が国古来の伝統的な芸能(第十四条第一項において「伝統芸能」という。)の公開、伝承者の養成、調査研究等を行い、その保存及び振興を図るとともに、我が国における現代の舞台芸術(同項において「現代舞台芸術」という。)の公演、実演家等の研修、調査研究等を行い、その振興及び普及を図り、もって芸術その他の文化の向上に寄与することを目的とする。 (業務の範囲) 第十四条 振興会は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。 一 とする。 (業務の範囲) 第十四条 振興会は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。 一 次に掲げる活動に対し資金の支給その他必要な援助を行うこと。 イ 芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための公演、展示等の活動 ロ 文化施設において行う公演、展示等の活動又は文化財を保存し、若しくは活用する活動で地域の文化の振興を目的とするもの ハ イ及びロに掲げるもののほか、文化に関する団体が行う公演及び展示、文化財である工芸技術の伝承者の養成、文化財の保存のための伝統的な技術又は技能の伝承者の養成その他の文化の振興又は普及を図るための活動 二 劇場施設(伝統芸能の公開又は現代舞台芸術の公演のための施設をいう。)を設置し、伝統芸能の公開及び現代舞台芸術の公演を行うこと。 三 その設置する施設において、伝統芸能の伝承者を養成し、及び現代舞台芸術の実演家その他の関係者の研修を行うこと。 その設置する施設において、伝統芸能の伝承者を養成し、及び現代舞台芸術の実演家その他の関係者の研修を行うこと。 四 伝統芸能及び現代舞台芸術に関して調査研究を行い、並びに資料を収集し、及び利用に供すること。 五 第二号の劇場施設を伝統芸能の保存若しくは振興又は現代舞台芸術の振興若しくは普及を目的とする事業の利用に供すること。 六 前各号の業務に附帯する業務 振興会は、前項に規定する業務のほか、当該業務の遂行に支障のない範囲内で、同項第二号の劇場施設を一般の利用に供する業務を行うことができる。 (別紙2-1) (芸術文化振興基金) 第十六条 振興会は、第十四条第一項第一号の業務及びこれに附帯する業務(以下この条において「助成業務」という。)に必要な経費の財源をその運用によって得るために芸術文化振興基金(以下「基金」という。)を設け、附則第二条第十項の規定により政府から出資があったものとされ 化振興基金(以下「基金」という。 )を設け、附則第二条第十項の規定により政府から出資があったものとされた金額及び同条第十一項の規定により政府以外の者から出えんがあったものとされた金額並びに第五条第二項後段の規定により政府が示した金額及び基金に充てることを条件として政府以外の者から出えんされた金額の合計額に相当する金額をもってこれに充てるものとする。 通則法第四十七条及び第六十七条(第七号に係る部分に限る。 )の規定は、基金の運用について準用する。 この場合において、通則法第四十七条第三号中「金銭信託」とあるのは、「金銭信託で元本補填の契約があるもの」と読み替えるものとする。 (補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の準用) 第十七条 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)の規定(罰則を含む。 )は、第十四条第一項第一号の規定により振興会が支給する資金 十年法律第百七十九号)の規定(罰則を含む。 )は、第十四条第一項第一号の規定により振興会が支給する資金について準用する。 この場合において、同法(第二条第七項を除く。 )中「各省各庁」とあるのは「独立行政法人日本芸術文化振興会」と、「各省各庁の長」とあるのは「独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長」と、同法第二条第一項(第二号を除く。 )及び第四項、第七条第二項、第十九条第一項及び第二項、第二十四条並びに第三十三条中「国」とあるのは「独立行政法人日本芸術文化振興会」と、同法第十四条中「国の会計年度」とあるのは「独立行政法人日本芸術文化振興会の事業年度」と読み替えるものとする。 (別紙2-2) ○ 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 (この法律の目的) 第一条 この法律は、補助金等の交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等 請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「補助金等」とは、国が国以外の者に対して交付する次に掲げるものをいう。 一 補助金 二 以下略 この法律において「補助事業等」とは、補助金等の交付の対象となる事務又は事業をいう。 この法律において「補助事業者等」とは、補助事業等を行う者をいう。 ~ 略 この法律において「各省各庁」とは、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十一条に規定する各省各庁をいい、「各省各庁の長」とは、同法第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。 (関係者の責務) 第三条 各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行 各省各庁の長をいう。 (関係者の責務) 第三条 各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従つて公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。 補助事業者等及び間接補助事業者等は、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し、法令の定及び補助金等の交付の目的又は間接補助金等の交付若しくは融通の目的に従つて誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うように努めなければならない。 (補助金等の交付の申請) 第五条 補助金等の交付の申請(契約の申込を含む。 以下同じ。 )をしようとする者は、政令で定めるところにより、補助事業等の目的及び内容、補助事業等に要する経費その他必要な事項を記載した申請書に各 るところにより、補助事業等の目的及び内容、補助事業等に要する経費その他必要な事項を記載した申請書に各省各庁の長が定める書類を添え、各省各庁の長に対しその定める時期までに提出しなければならない。 (補助金等の交付の決定) 第六条 各省各庁の長は、補助金等の交付の申請があつたときは、当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、当該申請に係る補助金等の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤がないかどうか等を調査し、補助金等を交付すべきものと認めたときは、すみやかに補助金等の交付の決定(契約の承諾の決定を含む。 以下同じ。 )をしなければならない。 各省各庁の長は、補助金等の交付の申請が到達してから当該(別紙2-2) 申請に係る補助金等の交付の決定をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該各省 (別紙2-2) 申請に係る補助金等の交付の決定をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該各省各庁の長と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該各省各庁の長に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定め、かつ、これを公表するよう努めなければならない。 各省各庁の長は、第一項の場合において、適正な交付を行うため必要があるときは、補助金等の交付の申請に係る事項につき修正を加えて補助金等の交付の決定をすることができる。 前項の規定により補助金等の交付の申請に係る事項につき修正を加えてその交付の決定をするに当つては、その申請に係る当該補助事業等の遂行を不当に困難とさせないようにしなければならない。 (補助金等の交付の条件) 第七条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をする場合において、法令及び予算で定 金等の交付の条件) 第七条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をする場合において、法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要があるときは、次に掲げる事項につき条件を附するものとする。 (以下略) 以下略 (決定の通知) 第八条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をしたときは、すみやかにその決定の内容及びこれに条件を附した場合にはその条件を補助金等の交付の申請をした者に通知しなければならない。 (事情変更による決定の取消等) 第十条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をした場合において、その後の事情の変更により特別の必要が生じたときは、補助金等の交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又はその決定の内容若しくはこれに附した条件を変更することができる。 ただし、補助事業等のうちすでに経過した期間に係る部分については、この限りでない。 各省各庁の長が前項の規定により 等のうちすでに経過した期間に係る部分については、この限りでない。 各省各庁の長が前項の規定により補助金等の交付の決定を取り消すことができる場合は、天災地変その他補助金等の交付の決定後生じた事情の変更により補助事業等の全部又は一部を継続する必要がなくなつた場合その他政令で定める特に必要な場合に限る。 以下略 (決定の取消) 第十七条 各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。 以下略 (行政手続法の適用除外) 第二十四条の二 補助金等の交付に関する各省各庁の長の処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。 (別紙2-3) ○ 文 ては、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。(別紙2-3) 文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱(平成三十年五月二二日改正後のもの) (趣旨) 第一条 この要綱は、文化芸術振興費補助金による助成金(以下「助成金」という。)の交付について、団体の活動に対する援助を適正に実施するため、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)及び同法施行令(昭和三十年政令第二百五十五号)に定めるもののほか、必要な事項を定める。 (助成の対象となる活動、経費等) 第二条 助成の対象となる活動は、以下のとおりとする。 舞台芸術創造活動活性化事業 劇場・音楽堂等機能強化推進事業 映画創造活動支援事業(劇映画・記録映画・アニメーション映画) 助成の対象となる活動の実施期間は、毎年四月一日から翌年三月三十一日までとする。 助成の 助成の対象となる活動の実施期間は、毎年四月一日から翌年三月三十一日までとする。助成の対象となる経費(以下「助成対象経費」という。)及び助成金の額は、別に定める。 (助成金交付要望書の提出) 第三条 助成金の交付を受けようとする者は、あらかじめ、助成金交付要望書(様式第一号)及び消費税等仕入控除税額予算書(別紙)を振興会の理事長(以下「理事長」という。)が定める期間内に、理事長に提出するものとする。 (助成対象活動の内定及び通知) 第四条 理事長は、第三条の規定による助成金交付要望書を受理したときは、芸術文化振興基金運営委員会の議を経て、助成金の交付の対象となる活動(以下「助成対象活動」という。)及び交付しようとする助成金の額を内定し、助成金交付内定通知書(様式第二号)により、助成金交付要望書を提出した者に通知するものとする。 (事情変更による内定の取消し等) 第六条 理 、助成金交付要望書を提出した者に通知するものとする。 (事情変更による内定の取消し等) 第六条 理事長は、助成金の交付内定をした場合において、天災地変その他交付の内定後生じた事情の変更により、助成対象活動の全部若しくは一部を継続する必要がなくなったとき、又は内定者が助成対象活動の全部若しくは一部を遂行することができなくなったとき(内定者の責に帰すべき事情によるときを除く。 )は、助成金の交付内定の全部若しくは一部を取消し、又はその内定の内容若しくはこれに附した条件を変更することができるものとする。 ただし、助成対象活動のうち既に経過した期間に係る部分については、この限りではない。 理事長は、前項の規定により取消し又は変更をした場合は、その取消し又は変更の内容を内定者に通知するものとする。 (交付申請書の提出) 第七条 内定者は、第四条の規定による通知に係る助成金の交付内定の内容及びこれ (交付申請書の提出) 第七条 内定者は、第四条の規定による通知に係る助成金の交付内定の内容及びこれに附された条件を受諾した場合には、助成金交付申請書(様式第四号)を理事長が定める期日までに、理事長に提出しなければならない。 略 (別紙2-3) 理事長は、第一項に定める期日までに、助成金交付申請書の提出又は助成金交付要望の取下げがない場合には、第四条の規定による助成金の交付内定を取り消すことができるものとする。 理事長は、前項の規定による取消しをした場合には、助成金交付内定取消し通知書(様式第五号)により、内定者に通知するものとする。 (交付の決定及び通知並びに不正等による交付内定の取消し) 第八条 理事長は、前条第一項の規定による助成金交付申請書を受理したときは、その内容を審査のうえ、助成金を交付すべきと認めたときは助成金の交付決定をし、助成金交付決定通知書(様式第六号)によ のうえ、助成金を交付すべきと認めたときは助成金の交付決定をし、助成金交付決定通知書(様式第六号)により、助成金交付申請書を提出した者に通知するものとする。 略 理事長は、次の各号に該当すると認めたときは、第四条の規定による助成金の交付内定の全部又は一部を取り消すことができるものとする。 助成金の交付の要望、申請について不正の事実があった場 合 ㈡ 助成対象活動の遂行が、助成金の交付内定の内容又はこれに附した条件に違反していると認められる場合 内定者が、他の活動について助成金又は芸術文化振興基金助成金(第十七条第一項第五号において「基金助成金」という。 )の交付内定又は交付決定を受けている者である場合において、当該交付内定又は交付決定を取り消されたとき。 その他この要綱又はこの要綱に基づく定めに違反したと認められる場合 前項の規定による処分をした場合については、前条第四 の要綱に基づく定めに違反したと認められる場合 前項の規定による処分をした場合については、前条第四項の規定を準用する。 (事情変更による決定の取消し等) 第十一条 理事長は、助成金の交付決定をした場合において、天災地変その他交付の決定後生じた事情の変更により、助成対象活動の全部若しくは一部を継続する必要がなくなったとき、又は助成対象者が助成対象活動の全部若しくは一部を遂行することができなくなったとき(助成対象者の責に帰すべき事情によるときを除く。 )は、助成金の交付決定の全部若しくは一部を取消し、又はその決定の内容若しくはこれに附した条件を変更することができるものとする。 ただし、助成対象活動のうち既に経過した期間に係る部分については、この限りではない。 略 (助成金の支払申請書の提出) 第十四条 助成対象者が、助成金の支払いを申請する場合には、助成金支払申請書(様式第十二号)を理事 第十四条 助成対象者が、助成金の支払いを申請する場合には、助成金支払申請書(様式第十二号)を理事長に提出しなければならない。 (助成対象活動実績報告書の提出) 第十五条 助成対象者は、助成対象活動が完了したとき(助成対象活動の廃止の承認を受けたときを含む。)は、助成対象活動実績報告書(様式第十三号)を理事長が定める期日までに、理事長に提出しなければならない。 以下 略 (別紙2-3) (助成金の額の確定及び通知) 第十六条 理事長は、前条の規定による助成対象活動実績報告書を受理した場合において、これを審査し、当該助成対象活動の成果が助成金の交付決定の内容及びこれに附した条件に適合すると認めたときは、交付すべき助成金の額を確定し、助成金の額の確定通知書(様式第十五条)により、助成対象者に通知するものとする。 (助成金の交付決定の取消し) 第十七条 理事長は、次の各号に該当する場合は に通知するものとする。 (助成金の交付決定の取消し) 第十七条 理事長は、次の各号に該当する場合は、第八条第一項の規定による助成金の交付決定(第十二条第二項の規定による変更の交付決定を含む。 )の全部又は一部を取り消すことができるものとする。 助成金の交付の要望、申請、計画変更及び実績報告について不正の事実があった場合 ㈡ 助成対象者が助成金を助成対象活動以外の用途に使用した場合 助成対象活動の遂行が、助成金の交付内定の内容又はこれに附した条件に違反していると認められる場合 助成対象者が、第二二条に規定する調査等を正当な理由なく拒み、妨げ又は忌避した場合 助成対象者が、他の活動について助成金又は基金助成金の交付内定又は交付決定を受けている者である場合において、当該交付内定又は交付決定を取り消されたとき。 その他この要綱又はこの要綱に基づく定めに違反したと認められる場合 以 決定を取り消されたとき。 その他この要綱又はこの要綱に基づく定めに違反したと認められる場合 以下 略 (別紙3)当事者の主張の要旨第1 原告の主張の要旨 1 本件処分の適法性の判断の枠組み⑴ 憲法が保障する表現の自由及び文化芸術基本法の規定からすれば,公的な 後援・助成について不当な差別的取扱いは許されず,また,芸術性に関しての判断は芸術関係の知見を身に着けた専門家に任せて行政や政治家は介入しないという原則が確立されている。 ⑵ 本件処分は被告理事長による裁量判断であるものの,本件処分は,適正化法6条1項に基づく処分であり,かつ,振興会法や文化芸術基本法等に照ら した処分であることに加え,文化芸術活動に係る市民の表現の自由の保障,平等原則,文化的な生活を営む権利の保障の観点からも,文化芸術活動についての専門家以外の者による判断ではなく,専門家である芸術家等の判断に基づき助成の是非が判断される法的仕組みが不可欠であり,その判断内容が重視されるべきである。 本件助成金の交付に当たっては,本件専門委員会の委員らによる専門的知見に基づく判断がされ,その判断に沿って交付内定が行われることになっており,交付内定の通知を受けた者は,交付申請書を提出して交付決定がされることになるが,交付内定後に基金運営委員会への諮問は規定されていないことなどからすると,本件助成金を交付するかどうかの実質的判断は交付内 定を決定する段階で行われ,特段の事情がない限り,交付申請の審査は交付内定の判断を維持する手続であるから,被告理事長の要件裁量の幅は狭いというべきである。 ⑶ 本件要綱は本件助成金を 付内 定を決定する段階で行われ,特段の事情がない限り,交付申請の審査は交付内定の判断を維持する手続であるから,被告理事長の要件裁量の幅は狭いというべきである。 ⑶ 本件要綱は本件助成金を受けようとする者らの信頼の対象となる基準であるところ,本件映画は本件要綱の基準を全て満たしている。関係法令の趣旨 からすれば,審査は公正かつ平等に行われる必要があるから,公表された審 査基準にない事項を考慮ないし重視して審査を行うことは,信頼の保護や審査の公平性,平等原則の観点から,特段の例外的事情がない限り許されない。 2 本件処分による原告の不利益及び映画製作に与える影響等⑴ 本件処分は,本件出演者が有罪判決を受けたことを理由としているが,こ れは映画という表現において欠かせない俳優の属性に着目したものであるところ,特定の俳優の出演を理由に本件助成金の交付を受けられないとすれば,映画製作者は,その俳優の出演を見送って本件助成金の交付を受けるか,それとも,その俳優を出演させて本件助成金の交付を受けることをあきらめるかの選択を迫られることになり,映画製作に多大な影響を受け,映画 の表現内容に対する制約になる。 ⑵ 映画製作者が出演者の将来の不祥事を事前に予測することは不可能であるから,上記⑴のような理由で本件助成金の交付を受けられないとすれば,本件助成金の申請行為自体を控え,ひいては映画の製作を躊躇することになる。また,本件助成金の交付に係る根拠規定に規定されていない要件により 不交付決定がされると,処分行政庁(被告理事長)による恣意的な処分がされるおそれがあるとの認識を抱かざるを得ず,その結果として,表現活動に対する委縮効果をもたらすことは明らかである。 本件内定の通知を受けたこと 処分行政庁(被告理事長)による恣意的な処分がされるおそれがあるとの認識を抱かざるを得ず,その結果として,表現活動に対する委縮効果をもたらすことは明らかである。 本件内定の通知を受けたことにより,原告は,本件映画に本件助成金が交付されることを前提に資金繰りを行っていたところ,本件内定から3か月も 経過した後に本件処分を受けたことにより急遽1000万円の資金繰りを要することになった。また,本件助成金の交付を受ける場合,映画のエンドロールやポスター・チラシ等に文化庁のシンボルマーク等を表示しなければならないところ,原告は,令和元年9月の本件映画の劇場公開に向けて,平成31年4月から令和元年8月にかけて試写会を行ったり,ポスター等の宣伝 用の素材の制作を進めなければならない状況にあったにもかかわらず,被告 理事長が本件助成金の交付・不交付の決定を留保し続けたため,同年7月に入るまで本件映画の上映用のDCP素材(DigitalCinemaPackage)やポスター等を作成することが全くできず,劇場公開2か月前まで宣伝活動ができなかった。 3 被告の主張が不合理であること ⑴ 被告が主張する「公益」とは行政作用ないし国家作用の一般論との関係での抽象的なものであるところ,文化芸術基本法,振興会法等の規定に照らせば,被告理事長が考慮すべき公益の内容は文化芸術の向上についての国民の一般的利益である。一方,上記関係法令に照らせば,違法薬物(以下,単に「薬物」ということがある。)の取締りや予防といった警察作用・目的は被 告理事長が考慮すべき事項とは解されず,これを抽象的な「公益性の観点」から考慮することは許されない。 ⑵ 本件映画には薬物を使用するシーンはないこと,出演者本人と映画の役は別人格で 的は被 告理事長が考慮すべき事項とは解されず,これを抽象的な「公益性の観点」から考慮することは許されない。 ⑵ 本件映画には薬物を使用するシーンはないこと,出演者本人と映画の役は別人格であること,本件助成金の交付を受けるのは本件出演者ではなく原告であり,映画には他の出演者や関係者が多いことから,本件助成金が本件出 演者に交付されると誤解を受けるおそれはないこと,本件出演者が有罪判決を受けていること,本件出演者は主役ではなく,出演シーンの時間は全129分のうち約11分であることなどの事情を考慮すれば,本件助成金の交付をもって「国が薬物の使用を容認ないし軽視しているようなメッセージを国民に発信した」と捉えられるものとは通常考えられず,そのような見方は不 合理である。 4 本件処分が違法であること⑴ 本件映画や出演者は各種の映画賞を受賞するなどしており,本件専門委員会が文化的芸術的価値の高いものと判断したことからすると,本件映画には高い文化的芸術的価値があるにもかかわらず,被告理事長は,本件において 重視すべき本件映画の文化的芸術的価値を考慮せず,又は軽視し,考慮すべ きでない本件出演者の本件有罪判決という事情を考慮したものである。 ⑵ 被告理事長は,本件映画における本件出演者の出演時間等の重要な事実を調査せず,重要な事実の基礎を欠く判断をした。 ⑶ 本件助成金が本件映画に対して交付されたとしても,被告が薬物使用を公的に容認するかのようなメッセージを発したなどと受け取られることは通常 ないから,本件出演者の本件有罪判決に対する評価は不合理かつ過大な評価であり,本件処分は,事実に対する評価において明らかに合理性を欠いている。 ⑷ 国家による表現の選別のおそれがあることからすれば,恣意的な助 件出演者の本件有罪判決に対する評価は不合理かつ過大な評価であり,本件処分は,事実に対する評価において明らかに合理性を欠いている。 ⑷ 国家による表現の選別のおそれがあることからすれば,恣意的な助成が行われることは許されず,助成に当たって平等を害してはならないから,考慮 し得ない事項を理由に別異の取扱いをした本件処分は,平等原則にも違反する。 ⑸ 本件処分に当たっては,本件専門委員会等の判断とは別の判断がされており,これを重視すべきことを定める法令の趣旨及び仕組みに反しているほか,また本件処分に当たり再度の審査を経れば本件助成金の交付決定がされ る可能性があったところ,これを欠いている本件処分は手続的瑕疵がある。 ⑹ 本件処分に係る通知書の理由には適用された法令の記載がなく,また,本件要綱と被告がいう「公益性の観点」との関係の記載も十分ではない。本件処分には理由付記の不備の瑕疵がある。 第2 被告の主張の要旨 1 本件処分の適法性の判断枠組みについて⑴ 本件処分は振興会法14条1項1号イの業務として行われているが,振興会法その他の法令には助成金の交付要件を定めたものはなく,助成金の交付の是非は,被告理事長の自由裁量行為とされている。 ⑵ 交付内定は,助成金の交付申請があった場合に助成金を交付する予定であ ることを事実上表示するものであるが,交付内定から交付決定までの間に生 じた事情については,事情によっては考慮することが想定されているし,本件出演者が本件有罪判決を受けたのは本件内定後のことであるから,被告理事長がこのことを考慮して本件処分を行うことについて裁量権の範囲が限定されることはない。 2 本件処分は,公益性の観点から行ったものであり,適法であること ⑴ 行政行為 あるから,被告理事長がこのことを考慮して本件処分を行うことについて裁量権の範囲が限定されることはない。 2 本件処分は,公益性の観点から行ったものであり,適法であること ⑴ 行政行為においてはつねに公共性・公益性を追求すべきであり,独立行政法人通則法や振興会法の規定や国庫を原資とする補助金の性質に照らしても,行政行為たる本件処分においても公益性の観点を考慮すべきである。その公益性の内容としても,独立行政法人通則法の規定によれば,国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資すること,さらには広く国民一般の利 益,公共の安全と秩序に適合するものでなければならず,文化芸術の向上についての国民の一般の利益のみに適合していればよいというものではない。 ⑵ 薬物乱用は深刻な社会問題の一つとなっているところ,本件映画に対して国庫を原資とする本件助成金を交付することは,被告が「国は薬物乱用に対し寛容である。」「違法薬物を使用した犯罪者であっても国は大目に見てく れる」といったメッセージを世の中に発信したと受け取られ,その結果,違法薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれがあることは明らかである。 すなわち,本件出演者が逮捕されたという報道を受け,本件出演者が出演する映画等について,公開中止,代役による再撮影,延期等の対応が講じら れており,このような対応は一般的に広く認識されているところ,その是非は措くとしても,被告理事長としては,かかる状況を踏まえ,出演者による違法薬物使用があった場合に慎重な態度を示さない場合,芸術作品の関係者が観客,視聴者その他から「薬物乱用を軽視している」等の印象を受けるおそれがあると考えた。 また,国が薬物乱用問題を重視して薬物乱用防止対策を実施しているこ 合,芸術作品の関係者が観客,視聴者その他から「薬物乱用を軽視している」等の印象を受けるおそれがあると考えた。 また,国が薬物乱用問題を重視して薬物乱用防止対策を実施しているこ と,本件映画に本件助成金を交付した場合,本件映画のエンドロールやパンフレット等には文化庁のシンボルマークが表示されるとともに,「文化庁文化芸術振興費補助金」「映画創造活動支援事業」及び「独立行政法人日本芸術文化振興会」と記載されことになるし,本件出演者が本件映画において重要な役割を果たしていること,本件助成金が劇映画の一部について特別に与 えられる任意的・受益的なものであることを考慮すると,本件映画を観た視聴者その他国民において,被告や国が薬物乱用を軽視しているという考えが広まるおそれがあったといえる。実際,被告がアンケート調査を行ったところ,違法薬物を使用した俳優が出演した映画に助成金を交付すると国民から「国は薬物乱用に対し寛容である」等と受け取られ,その結果,社会全体で 違法薬物に対する許容的な態度が広まるおそれがあったという考え方の合理性が裏付けられた。 3 原告の主張に対する反論⑴ 本件助成金は,本件映画の製作に係る経費のうちの助成対象経費の一部であることに加え,原告は,本件内定を受ける前に既に本件映画の撮影を終了 していた。また,本件処分は,製作費の一部に係る助成金を交付しないというものであり,本件映画の表現内容を問題にするものではなく,本件出演者が本件有罪判決を受けたという特別かつ具体的な事実を理由としており,文化芸術表現活動全般に委縮効果をもたらすような性質のものではない。 ⑵ 本件処分において,交付内定と異なる判断がされることも想定されている ことからすれば,原告が主張する不利益は おり,文化芸術表現活動全般に委縮効果をもたらすような性質のものではない。 ⑵ 本件処分において,交付内定と異なる判断がされることも想定されている ことからすれば,原告が主張する不利益はあらかじめ想定されているといえるし,本件助成金の対象となる経費は映画製作のみであり宣伝広告費等に充てられないものであるから,それなりの自己負担を強いられることは本件処分による不利益ではなく,本件処分によって原告に法律上保護される具体的な不利益は生じていない。 ⑶ 本件専門委員会等による審査は,本件募集案内に記載のとおり,主に劇映 画の内容や実現可能性に関して行うものであるが,本件処分は,本件映画に麻薬取締法違反により有罪判決を受けた者が出演したという全く別の観点・理由からしたものであり,被告理事長が本件専門委員会等による審査を考慮しなかったとか軽視したとはいえない。 以上
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