令和2(ワ)14630 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年5月26日 東京地方裁判所
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判決文本文70,798 文字)

1 令和4年5月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 令和2年(ワ)第14630号 損害賠償請求事件 口頭弁論終結日 令和4年3月29日 判 決 5 原 告 ス タ ー ゼ ン 株 式 会 社 原告訴訟代理人弁護士 弓 削 田 博 同 河 部 康 弘 同 平 田 慎 二 10 原告訴訟代理人弁理士 河 部 秀 男 原 告 補 佐 人 弁 理 士 平 木 祐 輔 同 藤 田 節 同 田 中 夏 夫 同 漆 山 誠 一 15 被 告 滝 沢 ハ ム 株 式 会 社 被告訴訟代理人弁護士 新 田 裕 子 同 海 老 原 輝 20 同 小 池 亮 史 同 前 田 葉 子 同 日 野 英 一 郎 被告訴訟復代理人弁護士 家 村 洋 太 主 文 25 1 原告の請求を棄却する。 2 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、2億2101万0589円及びこれに対する令和2年1 月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 2 仮執行宣言 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、発明の名称を「特定加熱食肉製品、特 9円及びこれに対する令和2年1 月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 2 仮執行宣言 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、発明の名称を「特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び 特定加熱食肉製品の保存方法」とする特許権を有する株式会社シンコウフーズ 10 (以下「シンコウフーズ」という。)から同特許の独占的通常実施権を付与された 原告が、被告が製造、販売している別紙被告製品目録記載のローストビーフ(以 下、同目録記載1の製品を「被告製品1」、同目録記載2の製品を「被告製品2」 といい、これらを総称して「被告製品」という。)の製造方法が同特許権に係る特 許発明の技術的範囲に属するとして、被告に対し、民法709条及び特許法10 15 2条2項に基づき、特許権侵害の損害賠償として2億2101万0589円及び これに対する不法行為の後の日である令和2年1月31日から支払い済みまで、 平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損 害金を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容 20 易に認められる事実) ア 原告は、食肉の加工及び売買等を業とする株式会社である。(争いなし) イ 被告は、食肉の加工及び販売、食肉加工品の製造及び販売等を業とする株 式会社である。(争いなし) シンコウフーズは、以下の特許権(以下、「本件特許権」といい、本件特許権 25 に係る特許を「本件特許」という。)を有している。(甲1、2) 3 特許番号 特許第5192595号 発明の名称 特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱 食肉製品の保存方法 出願日 平成24年5月17日 出願番号 特願2012-1135 特許第5192595号 発明の名称 特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱 食肉製品の保存方法 出願日 平成24年5月17日 出願番号 特願2012-113587 5 登録日 平成25年2月8日 原告は、遅くとも平成28年4月19日までに、シンコウフーズから本件特 許の独占的通常実施権を取得した。(甲8、弁論の全趣旨) 本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである (以下、請求項1に記載された発明を「本件発明」という。また、本件特許権 10 に係る明細書及び図面を「本件明細書」と総称する。)。 「特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製 品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当 該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材と ともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、上記スライスされ 15 た上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且 つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を1 00%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが5 0%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特 徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。」 20 同請求項を分説すると、以下のとおりとなる。(以下、分説された構成要件の 符号に従い、「構成要件A」などという。) A 特定加熱食肉製品をスライスする工程と、 B スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシ ミオグロビンに酸素化する工程と、 25 C 当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸 4 素材とともにガスバ れた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシ ミオグロビンに酸素化する工程と、 25 C 当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸 4 素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、 D 上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材 に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下 で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが1 2%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34% 5 以上となる割合(以下「本件ミオグロビン割合」といい、3種のミオグロ ビンが占める割合を「ミオグロビン割合」という。)となっていること E (構成要件A~D)を特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。 本件特許の出願日当時、次の事項が技術常識であった。 食肉の色は、ミオグロビンという、筋肉中の酸素の貯蔵・運搬の役割を果た 10 す水溶性タンパク質によって左右される。ミオグロビンは、酸素と結合しやす い性質を有している。 家畜を屠殺すると、家畜は呼吸をしなくなって酸素の供給が断たれ、筋肉内 の酸素は全て消費されるため、筋肉内のミオグロビンは酸素を奪われて還元型 ミオグロビンになる。還元型ミオグロビンは、酸素を奪われて不安定な状態に 15 あり、酸素と結合しやすい。この還元型ミオグロビンを大量に含む食肉(切っ た直後の食肉)は、紫がかった赤色をしている。 この食肉が空気にさらされ少し時間が経つと、還元型ミオグロビンは空気中 の酸素と結合し、オキシミオグロビンとなる。このオキシミオグロビンを大量 に含む食肉は、人が「新鮮である、美味しそうである」と感じる鮮やかな赤色 20 となる。 ローストビーフを製造する食肉加工業者の立場からすれば、この オグロビンとなる。このオキシミオグロビンを大量 に含む食肉は、人が「新鮮である、美味しそうである」と感じる鮮やかな赤色 20 となる。 ローストビーフを製造する食肉加工業者の立場からすれば、このオキシミオ グロビンを大量に含む状態にローストビーフを留めておきたい。しかし、実際 には、同ローストビーフは、長時間が経つと食肉中のオキシミオグロビンがさ らに酸化してメトミオグロビンに変化し、食肉は次第に褐色になってしまう。 25 この褐色化した肉は経験的に古い肉と判断され、好まれない。メトミオグロビ 5 ン割合が50%以上になると明瞭に色調の劣化が認められる。 (甲5~7) 被告は、平成30年12月から令和2年1月までの間に被告製品を製造販売 した。(弁論の全趣旨) 被告製品は、いずれも、特定加熱食肉製品をスライスして製造されており(以 5 下、被告製品の製造方法を「被告方法」という。)、被告方法は、構成要件Aを 充足する。また、被告製品には、いずれも、非鉄系脱酸素剤が封入されている。 (争いなし) 3 争点 被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点1) 10 ア 被告方法は、構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素 化する工程)を充足するか(争点1-1) イ 被告方法は、構成要件C(当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加 熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する 工程)を充足するか(争点1-2) 15 ウ 被告方法は、構成要件D(ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且 つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を1 00%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが5 0%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合と 且 つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を1 00%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが5 0%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていること)を 充足するか(争点1-3) 20 本件発明は特開平10-327807号公報(乙12。以下「乙12公報」と いう。)に記載された発明(以下「乙12発明」という。)を主引例として進歩性 を欠き、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきか(争点2) 本件特許に明確性要件違反の無効理由があるか(争点3) 本件特許に実施可能要件違反の無効理由があるか(争点4) 25 本件特許にサポート要件違反の無効理由があるか(争点5) 6 原告は、シンコウフーズから損害賠償請求権を取得したか(争点6) 損害額(争点7) 4 争点に対する当事者の主張 被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点1) ア 被告方法は、構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素 5 化する工程)を充足するか(争点1-1) (原告の主張) 塊状のローストビーフの中の肉は、空気に触れないから、牛の死後、酸素の 供給が断たれて酸素が全て消費された状態、すなわち還元型ミオグロビンが多 い状態になっている。ローストビーフをスライスすれば、必然的にスライスさ 10 れたローストビーフの断面は空気に触れることになり、不安定な還元型ミオグ ロビンは酸素と結合してオキシミオグロビンになる。したがって、酸素を含む 空気下でローストビーフを切り分けて密封する被告方法においては、還元型ミ オグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程が含まれる。 (被告の主張) 15 構成要件Bの「酸素化する工程」とは、本件明細書の段落【0022】 に記載さ する被告方法においては、還元型ミ オグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程が含まれる。 (被告の主張) 15 構成要件Bの「酸素化する工程」とは、本件明細書の段落【0022】 に記載されているとおり、酸素化処理、すなわち、一定の時間(少なくと も15分ないし30分間以上)、酸素含有気体中にスライスされた特定加熱 食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合してオキシ ミオグロビンになる現象を誘導し、還元型ミオグロビンの減少と酸素とオ 20 キシミオグロビンの増加によってスライス断面を紫赤色から鮮赤色に変化 させる工程を意味する。被告方法にはこれに対応する工程がないから、被 告方法は構成要件Bを充足しない。 イ 被告方法は、構成要件C(当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加 熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する 25 工程)を充足するか(争点1-2) 7 (原告の主張) 被告製品の製造に当たっては、酸素化する工程の後、スライスされたロース トビーフを「キーピッドYF」とともに、エチレン―ビニルアルコール共重合 体を含む物質で構成されている包材で密封する工程を行っている。「キーピッ ドYF」は、非金属製化合物の脱酸素剤である。また、エチレン―ビニルアル 5 コール共重合体がガスバリア性を有することは本件明細書に明記されている。 よって、被告方法は構成要件Cを充足する。 (被告の主張) 構成要件C所定の「密封する工程」には、特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素 剤と密封するだけではなく、その後の脱酸素処理を含む工程である(【003 10 0】、【0032】、【0034】参照)。そして、同工程で行う「脱酸素化処理」 は、包材内の酸素濃度が検出限界以下になるまで行う必要がある(【0034】)。 被 処理を含む工程である(【003 10 0】、【0032】、【0034】参照)。そして、同工程で行う「脱酸素化処理」 は、包材内の酸素濃度が検出限界以下になるまで行う必要がある(【0034】)。 被告方法は、スライスされたローストビーフを包材に物理的に密封した時点で 完了し、その日のうちに出荷されて被告の管理を離れる。したがって、被告方 法の実施が認められ得るのは、せいぜい被告製品が出荷されるまで、最長でも 15 被告製品が販売される時点までと理解される。にもかかわらず、原告は、被告 方法の実施に当たる期間内に包材内の酸素の濃度が検出限界以下になってい ることを何ら主張立証していない。被告製品は、全て特定の小売業者に販売し ているところ、被告と同社との取り決めにより、同社は、消費期限の前日に店 頭から引き上げている。原告が提出する被告製品1についての証拠は、消費期 20 限の日(工場出荷日から4日後)の測定結果であり、そもそも店頭で販売する ことができなくなった製品に関するものである。そして、同時点は、被告製品 においてもっとも脱酸素化が進行した時点である。そうすると、被告製品1に ついて、工場出荷日から消費期限前日までの全ての時点で酸素濃度が検出限界 以下であるとはいえない。 25 また、被告製品2は、透明トレイの材質は「PET/LL」(延伸ポリエチレ 8 ンテレフタレートフィルム及びリニア低密度ポリエチレンフィルムであって、 エチレンービニルアルコール共重合体を含まない。 さらに、原告が事実実験公正証書で包材内の酸素濃度を測定したのは、被告 製品1であって、被告製品2ではない。被告製品1と被告製品2のトレイは、 ガスバリア性が100倍以上異なるので、被告製品1について包材内の酸素濃 5 度が0.008%以下になっていたからといって、被告製品2の包材 て、被告製品2ではない。被告製品1と被告製品2のトレイは、 ガスバリア性が100倍以上異なるので、被告製品1について包材内の酸素濃 5 度が0.008%以下になっていたからといって、被告製品2の包材がガスバ リア性を有することを根拠づけることはできない。 ウ 被告方法は、構成要件D(ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且 つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を1 00%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが5 10 0%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていること)を 充足するか(争点1-3) (原告の主張) 本件発明の実施例において用いられている測定機器の分解能が0.1%であ ることや、脱酸素剤の業界において脱酸素状態を酸素濃度が0.1%としてい 15 ることからすると、構成要件Dの酸素濃度が検出限界以下であることは、酸素 濃度が0.1%未満を意味する。 被告製品1は、包材に密封された状態、かつ、当該包材内の酸素濃度が0. 008%以下の条件下で、包材越しにSCE方式で分光色差計を用いて吸光度 を測定し、その測定結果を基にミオグロビン割合を計算すると全ミオグロビン 20 量を100%としたときにオキシミオグロビンが12.25%以上、メトミオ グロビンが49.5%、還元型ミオグロビンが34.87%以上となる割合に なっていて、本件ミオグロビン割合になっていた。そして、被告製品2につい ても包材が変わっただけで、その他の製法は変わらないため、同じ結果が得ら れると推測するのが合理的である。 25 被告は、分光色差計を用いるにあたって、白色校正すべきであると主張する 9 が、本件明細書上、そのことを求める記載はない。包材の影響を完全に排除し た状況で実験を行った被告の製品 。 25 被告は、分光色差計を用いるにあたって、白色校正すべきであると主張する 9 が、本件明細書上、そのことを求める記載はない。包材の影響を完全に排除し た状況で実験を行った被告の製品についてミオグロビン割合が本件ミオグロ ビン割合になっていることが確認され、その結果は白色校正を行わずにSCE 方式で測定しても同様であったのであるから、白色校正をせずに包材越しにS CE方式で測定した結果は十分な正確性を有する。 5 また、被告製品2について、トレイのガスバリア性能の違いがミオグロビン 割合の変化の態様に違いを生じさせるという被告の主張は机上の空論である。 別件訴訟においても、包材の大きさ及び脱酸素剤の酸素吸収量の違いが影響し ないことが示されている。また、被告製品2は、被告製品1及び別件訴訟の製 品と分量だけ変えて同じ「炭火焼ローストビーフ」という名称で販売している 10 ところ、分量が異なることで品質を維持できないとすれば、発注者からクレー ムが入ることから、被告は、包材の大きさに合わせて脱酸素剤の酸素吸収量を コントロールしている。 (被告の主張) 本件明細書の記載からすると、肉色を鮮赤色に維持する間、ミオグロビン割 15 合が本件ミオグロビン割合になっていることによって肉色を鮮赤色に長期に わたって維持することができるという効果が生じると解するべきであるから、 包材内の酸素濃度が検出限界以下にあるときはいつでも本件ミオグロビン割 合になっていることが必要であると解すべきであるところ、ミオグロビン割合 は時の経過によって変化する。よって、被告製品1について、店頭から引き上 20 げられた後である消費期限の日の測定結果のみから、それ以前に酸素濃度が検 出限界以下になったときに常に本件ミオグロビン割合になっていたとは認め られない。 ミオ 製品1について、店頭から引き上 20 げられた後である消費期限の日の測定結果のみから、それ以前に酸素濃度が検 出限界以下になったときに常に本件ミオグロビン割合になっていたとは認め られない。 ミオグロビン割合を算出するためにローストビーフのスライス面の吸光度 を測定する条件としては、正反射光込みで測定するSCI方式と正反射光を除 25 去して測定するSCE方式があることが当業者に明らかであったところ、本件 10 明細書にはいずれの方式によって測定すべきであるか明示されていないし、当 業者に明らかであったともいえないのであるから、構成要件Dを充足するため には、いずれの方式による測定結果に基づいて算定されるミオグロビン割合に ついても本件ミオグロビン割合であることが認められる必要があると解する べきであるが、原告はSCI方式による測定でも本件ミオグロビン割合になる 5 ことを示していない。 さらに、包材越しで被告製品の分光反射率を包材越しに測定する場合には、 SCIかSCEかの測定方式を問わず、包材表面の分光反射率や分光透過率の 影響を受けるため、被告製品において用いられている包材と同じ包材を用いて 包材越しの白色校正を行っておく必要があると解されるところ、原告はこれを 10 行っていないから、被告製品1のミオグロビン割合は原告主張のものと異なっ ているはずである。 また、原告が提出した測定結果は、本件ミオグロビン割合の上限や下限とほ ぼ変わらない値になっており、3つの製品を測定しただけでこのような結果に なることからすると、測定サンプルを増やせば特許請求の範囲を外れる値が出 15 ることが容易に想定され、全ての被告製品1が本件ミオグロビン値になってい るとは認められない。 被告製品2について、原告は実験をしておらず、被告製品1で用いられてい るトレイ 囲を外れる値が出 15 ることが容易に想定され、全ての被告製品1が本件ミオグロビン値になってい るとは認められない。 被告製品2について、原告は実験をしておらず、被告製品1で用いられてい るトレイと被告製品2で用いられているトレイのガスバリア性の差は100 倍を超えるから、このガスバリア性は包材内の酸素濃度の変化速度に違いをも 20 たらし、ミオグロビン割合の変化の態様に違いをもたらす。そうすると、被告 製品2について、実験するまでもなく被告製品1と同じ結果になると考えるの は不合理である。 本件発明は乙12発明を主引例として進歩性を欠き、本件特許は特許無効審 判により無効にされるべきか(争点2) 25 (被告の主張) 11 乙12公報には、以下の乙12発明が記載されている。 a ローストビーフをスライスする工程と、 b スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程と、 c スライスされたローストビーフを脱酸素剤と共に酸素ガスバリア性を有 する容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に 5 置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以 下に維持されるようにする e ことを特徴とするスライスされたローストビーフの包装方法。 本件発明と乙12発明の相違点は以下のアないしウのとおりである。なお、 一般にローストビーフは特定加熱食肉製品のローストビーフを指すことは明 10 らかであるから、乙12公報には当該ローストビーフが特定加熱食肉製品であ ることが明示されていないものの、当該ローストビーフは特定加熱食肉製品と いえ、この点に本件発明との相違点はない。仮に当該ローストビーフが加熱食 肉製品であったとしても、ローストビーフの赤みは、ミオグロビンの作用によ るものであることは共通しているから、消費 加熱食肉製品と いえ、この点に本件発明との相違点はない。仮に当該ローストビーフが加熱食 肉製品であったとしても、ローストビーフの赤みは、ミオグロビンの作用によ るものであることは共通しているから、消費者への有効な視覚的アピールをす 15 るべき赤色を保持するという課題を解決するために、乙12発明に後記の発明 を組み合わせることは、当該ローストビーフが特定加熱食肉製品の製造方法で 製造されたローストビーフであるか否かに関係なく、当業者は容易に想到する ことができる。 ア 本件発明では、「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグ 20 ロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、乙12発 明では、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程は記 載されていない点(以下「相違点1」という。)。 イ 本件発明では、脱酸素材は非鉄系であり、包材内を窒素ガス又は二酸化炭 素ガス雰囲気に置換していないのに対し、乙12発明では、脱酸素剤は鉄系 25 であり、包材を密封する前に、窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換し 12 ている点(以下「相違点2」という。)。 ウ 本件発明では、「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリ ア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限 界以下の条件下で、ミオグロビンが、本件ミオグロビン割合となっている」 のに対し、乙12発明では本件ミオグロビン割合を記載していない点(以下 5 「相違点3」という。)。 相違点1については、消費者への有効な視覚的アピールを目的として、ミ オグロビンを含む食品を保存するにあたって、酸素濃度を低下させて保存す る前に、1時間程度、酸素濃度を低下させない状態で収納容器内に貯蔵して、 還元状態のミオグロビンをオキシミオグロビンに変化させて、 オグロビンを含む食品を保存するにあたって、酸素濃度を低下させて保存す る前に、1時間程度、酸素濃度を低下させない状態で収納容器内に貯蔵して、 還元状態のミオグロビンをオキシミオグロビンに変化させて、食品を鮮やか 10 な赤色とする技術が公開されていて(特開2012-37202号公報。乙 13。以下、同公報に記載された発明を「乙13発明」という。)、食肉を 保存する際に赤身の強い色調を保持すべきことは周知の事項であるから、当 業者は相違点1に係る本件発明の構成に容易に想到することができた。 相違点2については、生の牛ひき肉をエージレスS-200(鉄系脱酸素 15 材)で密封包装して冷蔵保存すると、保存2日目に褐色となり、3日目以降 は赤紫色に変色するという欠点が生じていたところ、エージレスG-200 (CO2発生型非鉄系脱酸素材)で密封包装して冷蔵保存すると、無酸素状 態下においてもあざやかな赤味を保持することが知られていた(特開昭60 -221031号公報。乙14。以下、同公報に記載された発明を「乙14 20 発明」という。)。また、肉類を脱酸素剤と共に密封して容器内の酸素濃度を 0.1%以下にする際に、脱酸素剤を単独で使用する代わりに窒素ガス置換 法と脱酸素剤の使用とを併用してもよいことが知られていた(特開昭58- 158129号公報。乙18)。そして、脱酸素剤を単独で使用するか、窒素 ガス又は二酸化炭素ガス置換法と併用するかは、必要に応じて当業者が適宜 25 選択できる事項である(乙18、19、20)。そうすると、乙12発明に 13 おいて、脱酸素材で密封包装して冷蔵保存する際に、ローストビーフが褐色 や赤紫色に変色することを防止するために、窒素ガス又は二酸化炭素ガス置 換法と併用することなく、乙14発明を適用し、脱酸素材としてCO2発生 型の非鉄系 封包装して冷蔵保存する際に、ローストビーフが褐色 や赤紫色に変色することを防止するために、窒素ガス又は二酸化炭素ガス置 換法と併用することなく、乙14発明を適用し、脱酸素材としてCO2発生 型の非鉄系脱酸素材を単独で用いることは、当業者が容易に想到できた。 また、脱酸素を行う過程でメトミオグロビン還元酵素の活性は無関係であ 5 るから、乙14発明が生肉を対象としていることは、乙12発明に乙14発 明を組み合わせる動機付けを損なうものではない。 相違点3については、本件明細書によれば、本件ミオグロビン割合のとお りに数値を限定した技術的意義は、保存状態において、特定加熱食肉製品が 褐変することなく本来の赤色を呈しており、優れた商品価値を維持し、また、 10 保存後に包材を開封して空気に曝すとより鮮明な鮮赤色を呈することであ るとされており、ミオグロビン割合を限定したことに何らかの臨界的意義が あるとは記載されていない。上記のとおり乙12発明及び乙13発明、乙1 4発明を適用すれば、ローストビーフは、保存状態において、鮮やかな赤色 を維持し、容器を開封して酸素に曝すとオキシミオグロビンの鮮紅色を呈す 15 ることになるのであるから、相違点3に係る構成に容易に想到することがで きる。 仮に、本件ミオグロビン割合のとおりの数値の限定に何らかの技術的意義 があるとしても、ミオグロビンのうち30%から40%以上がメトミオグロ ビンに酸化されると、肉の変色が目に見えて分かり、消費者の購買意欲がな 20 くなることは知られていた。さらに、食肉製品の色は、ミオグロビンのオキ シミオグロビン、還元型ミオグロビン及びメトミオグロビンの各々の混在割 合によって決定するから、鮮やかな赤色を維持するには、オキシミオグロビ ンの割合がある程度高くなければならないことは自明であり、密封された グロビン、還元型ミオグロビン及びメトミオグロビンの各々の混在割 合によって決定するから、鮮やかな赤色を維持するには、オキシミオグロビ ンの割合がある程度高くなければならないことは自明であり、密封された包 材から取り出されたときに鮮やかな赤色が回復するには、還元型ミオグロビ 25 ンがかなりの割合で存在している必要があることも自明であり、これらの数 14 値は適宜設定できる値にすぎない。 なお、仮に本件ミオグロビン割合が優れた肉色の目安にすぎないというの であれば(後記 の原告の主張ウ参照)、相違点3は実質的な相違点には当 たらない。 (原告の主張) 5 ア 乙12発明の対象物は特定加熱食肉製品とはいえないため、この点も相違 点になる。乙12発明の出願時において、ローストビーフが特定加熱食肉製 品であるということにはならない。加熱食肉製品であっても、a値は7.0 を超えることはあるから、乙12発明のローストビーフのa値が7.0を超 えるからといって、乙12発明のローストビーフが特定加熱食肉製品である 10 とはいえない。さらに、原告が行った追試により、乙12発明のローストビ ーフが加熱食肉製品であることが判明した。 加熱食肉製品であれば、肉を成型したり、調味液を肉の内部に浸透させた りと様々な加工ができ、許容される処理が全く異なるので、当業者にとって、 特定加熱食肉製品と加熱食肉製品は全くの別物である。また、加熱食肉製品 15 の場合には、発色剤(亜硝酸塩と硝酸塩)を用いることが可能であり、その 場合、ミオグロビンに対して発色剤から発生する一酸化窒素が作用すること で赤色を呈するのであり、特定加熱食肉製品における赤色の発色と、発色の 機序も効果も全く異なる。よって、当業者は乙12発明を特定加熱食肉製品 に適用して奏功するとは理解しないし、その動機付けもな ること で赤色を呈するのであり、特定加熱食肉製品における赤色の発色と、発色の 機序も効果も全く異なる。よって、当業者は乙12発明を特定加熱食肉製品 に適用して奏功するとは理解しないし、その動機付けもない。さらに、乙1 20 4発明には、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいは N2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に 達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤身が失われて褐変す る。」との記載があり、原告の実験結果でも、特定加熱食肉製品について窒素 ガスで置換して脱酸素すると加熱食肉製品では赤色を維持できる一方で特 25 定加熱食肉製品では褐色になる。当業者であれば、乙12発明の加熱食肉製 15 品という構成を特定加熱食肉製品に変更すれば、ローストビーフが褐変して 元に戻らなくなることを理解しているから、乙12発明の構成を加熱食肉製 品から特定加熱食肉製品に変更することに動機付けがなく、むしろ阻害要因 が存在する。 イ 相違点2について、乙14発明は生肉に関するものであり、乙14発明の 5 発明者が、論文において乙14発明についてメトミオグロビン還元酵素が関 与していることを認めている。特定加熱食肉製品においては、メトミオグロ ビン還元酵素は作用せず、メト化した場合には元に戻らないから、乙12発 明に乙14発明を組み合わせることはできない。 ウ その他の相違点についても被告の主張は争う。 10 本件特許に明確性要件違反の無効理由があるか(争点3) (被告の主張) ア 酸素化する工程の内容が明らかではない 構成要件Bにおいては、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸 素化する工程」と記載されているだけで、酸素濃度も酸素にさらす時間も規 15 定されていない。そうすると、ごくわずかの量の還元 い 構成要件Bにおいては、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸 素化する工程」と記載されているだけで、酸素濃度も酸素にさらす時間も規 15 定されていない。そうすると、ごくわずかの量の還元型ミオグロビンを酸素 化してオキシミオグロビンにするものも含むと解することも可能である。 本件発明の構成要件Bの「酸素化する工程」は、本件明細書の「発明の詳 細な説明」に記載されているとおり、1時間程度空気中にさらすものである か、原告が主張するように空気と短時間接触するものを含むのか不明であり、 20 本件明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基 礎としても、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほど に不明確である。 イ 構成要件Dの要求事項が明らかではない 構成要件Dには、「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、 25 当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」で、「全ミオグロビン量を 16 100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビン が50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」 と記載されているから、「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」であ れば、時間が経過しても、各ミオグロビンの割合は上記範囲内にあるものと 解される。他方で、本件明細書の実施例1の結果を示す表1では、「包材内 5 の酸素濃度が検出限界以下の条件下」でミオグロビンの割合は上記範囲内か ら外れている箇所もあり、構成要件Dは「ガスバリア性を有する包材に密封 された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で」あれ ば、常に「全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが 12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34% 10 以上となる割 酸素濃度が検出限界以下の条件下で」あれ ば、常に「全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが 12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34% 10 以上となる割合となっている」ことを要求するものか否か明らかでなく、不 明確である。 (原告の主張) ア 酸素化する工程について 本件明細書の【0024】には、「また酸素化の処理条件については、使用 15 する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設 定できる。例えば、酸素化処理は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライ ス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を 呈した段階で処理を終了しても良い」と記載されていること、この工程が食 肉業界の技術常識であるブルーミングを起こさせることをいうことは明ら 20 かであり、当業者であれば、ローストビーフの厚さを被告製品のように薄く する場合には、「酸素化する」工程は短時間でよいことが分かるから、「酸素 化する工程」は十分に明確である。 イ 構成要件Dについて 本件明細書の表1において、ミオグロビン割合が本件ミオグロビン割合か 25 ら外れているものが含まれていることは明らかであるから、本件発明は、構 17 成要件Dが定める割合を一時点のみにおいて満足するものを含むことは明 らかである。仮にガスバリア性の包材で密封されている限り、包材内の酸素 濃度が検出限界以下になれば、開封しない限り包材内の酸素濃度は半永久的 に検出限界以下のままである。そうすると、包材内の酸素濃度が検出限界以 下の条件下の全ての期間中ミオグロビン割合が本件ミオグロビン割合にな 5 っていることを求めることになる。しかし、特定加熱食肉製品の成分が半永 久的に変わらないことなどありえないし、冷蔵であればせいぜ 下の条件下の全ての期間中ミオグロビン割合が本件ミオグロビン割合にな 5 っていることを求めることになる。しかし、特定加熱食肉製品の成分が半永 久的に変わらないことなどありえないし、冷蔵であればせいぜい30日間優 れた肉食の状態を維持することが本件明細書の記載(【0039】)から明ら かである。 本件特許に実施可能要件違反の無効理由があるか(争点4) 10 (被告の主張) 前記 で主張したとおり、本件発明の構成要件Dの「全ミオグロビン量を1 00%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが5 0%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」状態に ついて、「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の 15 酸素濃度が検出限界以下の条件下」の期間の全体で満足する必要があるのか、 一時点のみにおいて満足すれば足りるのかが不明であるところ、この状態が上 記期間の全体で満足する必要があると解されるとすると、本件特許には以下に 説明する実施可能要件違反の無効理由がある。 前記 で主張したとおり、本件明細書の表1は、鉄系脱酸素材を50.0% 20 及び42.9%の割合で使用するものを含むところ、前記のように、ミオグロ ビン割合が所望範囲内から外れている時点があり、本件明細書を参酌しても、 鉄系脱酸素材を50.0%及び42.9%の割合で使用した場合に、どのよう にすればミオグロビン割合を所望範囲内に制御できるのかは不明である。ミオ グロビン割合を所望範囲内に制御することが出願当時の技術常識であったと 25 も認められない。 18 したがって、本件明細書には、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載 及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件 発明を実施することができる程度に発明の構 。 18 したがって、本件明細書には、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載 及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件 発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるということは できないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技 術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度 5 に明確かつ十分に記載したものとはいえず、本件明細書の発明の詳細な説明の 記載は実施可能要件に違反する。 (原告の主張) 酸素化や酸化は、酸素が原因で起きるから、ミオグロビン割合の制御は、「酸 素化する工程」の長さや脱酸素剤の鉄系脱酸素剤と非鉄系脱酸素剤の割合を制 10 御することで達成することができる。このことは当業者の技術常識であり、明 細書の記載(【0024】等)からも明らかである。 本件明細書の実施例について、本件ミオグロビン割合から多少逸脱していて も、それは誤差の範囲であり、この程度の誤差によって実施ができないという ことはない。 15 実際に当業者である被告が実施できていることからも実施可能要件違反と いえないことは明らかである。 本件明細書には、①原材料と②その処理工程が当業者が容易に実施できるよ うに記載され、③生産物の属性に関しても、当業者にその生産物の内容が理解 できるように記載されていて、実施可能要件を満たしている。 20 本件特許にサポート要件違反の無効理由があるか(争点5) (被告の主張) ア 非鉄系脱酸素剤について 本件発明の解決すべき課題は、褐変を防止して優れた肉色を維持したスラ イスされた特定加熱食肉製品の保存方法を提供するというものである。 25 乙14公報には、炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合には 19 生肉中のミオグ して優れた肉色を維持したスラ イスされた特定加熱食肉製品の保存方法を提供するというものである。 25 乙14公報には、炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合には 19 生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変するが、炭酸 ガスを発生する脱酸素剤を使用した場合には、酸素濃度が低下しても、同時 に炭酸ガス濃度が高まってゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素 後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い 赤味を保持することができる旨記載されている。 5 そうすると、炭酸ガスを発生するタイプの脱酸素材と、炭酸ガスを発生し ないタイプの脱酸素材とでは、褐変を防止して優れた肉色を維持するという 本件発明の課題を解決することへの影響は大きく異なり、炭酸ガスを発生す るタイプの脱酸素材を使用した場合に褐変を防止して優れた肉色を維持す ることができるとしても、炭酸ガスを発生しないタイプの脱酸素材を使用し 10 た場合に、褐変を防止して優れた肉色を維持することができるとは直ちにい えない。 したがって、本件明細書に、炭酸ガスを発生しないタイプの非鉄系脱酸素 材を使用した実施例が記載されていない以上、本件明細書の発明の詳細な説 明の記載及び出願日当時の技術常識に基づいて、当業者が、本件発明の全体 15 にわたり、本件発明の課題を解決できると認識できるものとは認められない から、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものと認めることはできず、 本件特許はサポート要件に適合しない。 イ 構成要件Bについて 本件発明の構成要件Bの「酸素化する工程」は、本件明細書に記載された 20 1時間程度空気中にさらすものであるか、空気と短時間接触するものを含む のかが不明であるが、本件発明が空気と短時間接触するものを含むと解され る場合 「酸素化する工程」は、本件明細書に記載された 20 1時間程度空気中にさらすものであるか、空気と短時間接触するものを含む のかが不明であるが、本件発明が空気と短時間接触するものを含むと解され る場合には、当業者は、このような空気との短時間の接触をもって「酸素化 する工程」を行う場合、酸素濃度が検出限界以下になったときに、構成要件 Dの各ミオグロビンの割合の範囲内を維持できず、本件発明の全体にわたり、 25 課題を解決することはできないものと認識する。したがって、本件発明は、 20 発明の詳細な説明に記載したものと認めることはできず、本件特許はサポー ト要件に適合しない。 ウ 構成要件Dについて 本件発明が「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該 包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」の期間の全体で本件ミオグ 5 ロビン割合を満足する必要があると解される場合 本件明細書の表1によれば、鉄系比率42.9%の「D+1」及び「D +2」において、ミオグロビン割合は構成要件Dに定められている数値の 範囲内にあるが、a*値及びb*値が低く、且つ、b*値がa*値を上回 り、褐変しているか(本件明細書【0057】)、少なくとも酸素濃度が 10 検出限界以下の条件下の一部の期間において良好な色調を有するといえ ず、本件発明の課題を解決できない。 本件発明が限定された期間のみ本件ミオグロビン割合を満足するもの を含むと解される場合 本件発明が褐変を防止して優れた肉色を維持するという課題を解決す 15 るためには、構成要件Dの「オキシミオグロビンが12%以上、メトミ オグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上」との割合 の範囲内にあることが必要と解される。 しかし、本件明細書の表1に示されるように、鉄系比率50.0%の実 施例の 2%以上、メトミ オグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上」との割合 の範囲内にあることが必要と解される。 しかし、本件明細書の表1に示されるように、鉄系比率50.0%の実 施例の「D+1」ないし「D+3」、及び鉄系比率42.9%の実施例の 20 「D+3」では、「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」にありな がら、「オキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未 満、還元型ミオグロビンが34%以上」の条件を満足しておらず、a*値 が4.63ないし7.49と低い数値となっており、本件発明に係る製造 方法で製造されたローストビーフには、構成要件Dに定める各ミオグロ 25 ビン割合を満足しない時期を有するローストビーフも存在することにな 21 り、当該ローストビーフはその時期には課題を解決することはできない といえる。そうすると、本件発明は、本件発明の全体にわたり課題を解決 したものとはならないから、発明の詳細な説明に記載したものと認める ことはできず、本件特許はサポート要件に適合しない。 (原告の主張) 5 ア 非鉄系脱酸素剤について サポート要件は、発明の詳細な説明において実施例等で記載・開示された 技術的事項を形式的に理解することで足りるというべきである。そして、発 明の詳細な説明には、「非鉄系脱酸素剤としては、」・・・「炭酸ガスを発生す るタイプ(GTタイプ)を使用することが好ましい。酸素吸収と同時に炭酸 10 ガスを発生するタイプを使用することで、包材の収縮といった問題を回避で きる。」(【0032】)、「非鉄系脱酸素剤を使用することで」・・・「これによ り」・・・「という割合に調整することができる。」(【0034】)と記載され ている。 そもそも、非鉄系脱酸素剤に炭酸ガスを発生するタイプと発生しないタイ 15 素剤を使用することで」・・・「これによ り」・・・「という割合に調整することができる。」(【0034】)と記載され ている。 そもそも、非鉄系脱酸素剤に炭酸ガスを発生するタイプと発生しないタイ 15 プが存在することは技術常識であるし、上記記載を読めば、炭酸ガスを発生 するタイプを使用することが好ましいが必須ではないこと、ミオグロビン割 合の制御は非鉄系脱酸素剤を用いることで実現できることが理解できるか ら、本件特許にサポート要件の違反はない。 また、被告が指摘する乙14公報の記載は技術常識ではない。 20 イ 構成要件Bについて 本件明細書の記載は、「酸素化する工程」の条件を変えること、被告製品の ように薄いスライスの場合には目視により確認し十分に赤色を呈した段階 で処理を終了することを想定しており(【0024】)、そのことは、本件明細 書の記載から当業者も理解できるから、本件特許にサポート要件の違反はな 25 い。 22 ウ 構成要件Dについて 全ての期間で本件ミオグロビン割合になる必要がないことは、前記 イで 主張したとおりである。 本件ミオグロビン割合は、この範囲内であれば優れた肉色を呈していると いう目安であって、本件ミオグロビン割合の範囲外の肉であっても、優れた 5 肉色を呈していることもある。また、本件ミオグロビン割合から多少逸脱が あったとしても、それは誤差の範囲であると考えるべきである。 また、課題を解決していないとしても、条件を満たしていない場合はそも そも権利範囲外であるから、サポート要件違反にならない。 原告は、シンコウフーズから損害賠償請求権を取得したか(争点6) 10 (原告の主張) シンコウフーズは、本件訴訟提起前に、原告に対して被告に対する被告製品 販売に係る損害賠償請求権を譲渡した。 債権譲渡に フーズから損害賠償請求権を取得したか(争点6) 10 (原告の主張) シンコウフーズは、本件訴訟提起前に、原告に対して被告に対する被告製品 販売に係る損害賠償請求権を譲渡した。 債権譲渡については、債権譲渡の事実のみが主要事実であり、それ以上の主 張は必要ない。本件の債権譲渡は無償で行われ、弁護士が代理しているのであ 15 るから、それが信託法10条に反する余地はない。また、原告訴訟代理人は、 原告シンコウフーズ及び原告スターゼンから事前に債権譲渡につき承諾を得 ているから、双方代理は有効である。 (被告の主張) 原告は、債権譲渡が有償なのか無償なのかも具体的に主張しておらず、失当 20 である。 シンコウフーズが無償で債権譲渡したとは考えにくいため、同債権譲渡は原 告に訴訟行為をさせることを主たる目的とした訴訟信託(信託法11条)に該 当する疑いが強い。また、上記債権譲渡は本件原告代理人が両当事者を代理し て行ったものであるが、これは双方代理に当たり、民法上、原則として許され 25 ておらず、当事者の同意について、原告は何ら立証していない。 23 損害額(争点7) (原告の主張) 原告は、スターゼン販売株式会社を通じて、本件発明の実施品であるロース トビーフを小売店で販売している。 被告の損害を特許法102条2項に基づき計算すると、次のとおりである。 5 被告は、被告製品を特定の販売業者に販売しており、その販売価格は、780 円である。被告の販売価格は販売業者の一般消費者に対する販売価格の70% を下らないから、被告の販売業者への販売価格は546円であると推認できる。 その利益率は、販売業者等に対する販売価格の45%程度であると考えられる。 被告は、被告製品を平成30年12月から令和2年1月までの間、販売業者 10 の多 の販売価格は546円であると推認できる。 その利益率は、販売業者等に対する販売価格の45%程度であると考えられる。 被告は、被告製品を平成30年12月から令和2年1月までの間、販売業者 10 の多数の店舗で販売しており、その総販個数は、74万3400個であると推 計できる。 以上を前提に計算すると、被告の利益額は、次のとおりになる。 546円×45%×74万3400個=1億8265万3380円 特許法102条2項に基づく損害については消費税相当額も加算されるべ 15 きであるから、原告の損害は、同額に110%を乗じて、2億0091万87 18円になる。 弁護士費用相当額はこの10%を下らないから、2009万1871円が相 当である。 そうすると、原告の損害は、これらの合計の2億2101万0589円にな 20 る。 (被告の主張) 原告の主張は否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明について 25 本件明細書には、以下の記載がある。 24 【技術分野】 【0001】 本発明は、スライスされたローストビーフ等の特定加熱食肉製品、当該特定 加熱食肉製品の製造方法及び当該特定加熱食肉製品の保存方法に関する。 【背景技術及び発明が解決しようとする課題】 5 【0002】 特定加熱食肉製品とは、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法 又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った 食肉製品(乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く)をいうと定義されている。 より具体的に、特定加熱食肉製品としては、一例としてローストビーフを挙げ 10 ることができる。このような特定加熱食肉製品は、スライスされた状態で真空 パックや含気パックで保存されると、短時間で褐変してしまい商品価値が損な われる。そこで 、一例としてローストビーフを挙げ 10 ることができる。このような特定加熱食肉製品は、スライスされた状態で真空 パックや含気パックで保存されると、短時間で褐変してしまい商品価値が損な われる。そこで、特定加熱食肉製品はスライスされる前のブロックの状態で流 通することが一般的であった。 【0003】 15 また、ブロック状態で流通した特定加熱食肉製品は、そのままの状態で販売 されるか、店内生食厨房がある一部の小売店舗内でスライスされ、蓋付きトレ イにて販売される。また一部店舗では、センターパック供給も行なっている。 いずれにしても、特定加熱食肉製品の賞味期限は、スライス加工日から2~3 日程度と短く設定される。また、このようなスライス加工やトレイ内へのパッ 20 ク作業自体がコスト高の要因となる。さらにこのようなスライス加工やトレイ 内へのパック作業には、高度な衛生管理が必要であり、これもコスト高の要因 となる。 【0004】 以上のように、特定加熱食肉製品をスライスされた状態で長期に亘って保存 25 できる技術があれば、上述したコストの問題や衛生管理の問題を解決すること 25 ができる。しかし、上述のように、特定加熱食肉製品はスライスしてから短時 間で褐変してしまうこと、また、この褐変を防止する技術が無いために上述し たような問題は未解決であった。 【0005】 特定加熱食肉製品とは異なる生肉に関する従来技術として、特許文献1及び 5 2を挙げることができる。特許文献1には、生肉の色の変化について以下のよ うに述べている。すなわち、牛肉等の赤身の新鮮な肉は、筋肉中の還元型ミオ グロビンによる紫がかった暗赤色を呈している。この新鮮肉を空気にさらすと、 還元型ミオグロビンと酸素が結合してオキシミオグロビンとなり、きれいな赤 色へと変化し、さら 身の新鮮な肉は、筋肉中の還元型ミオ グロビンによる紫がかった暗赤色を呈している。この新鮮肉を空気にさらすと、 還元型ミオグロビンと酸素が結合してオキシミオグロビンとなり、きれいな赤 色へと変化し、さらに、長時間空気にさらすと、ヘム鉄が酸化されてメトミオ 10 グロビンに変化し、肉色は次第に褐色となる。いわゆる肉質の低下の目安とな る"メト化"の現象である。そして、特許文献1に開示された技術は、・・・・・ 【0008】 上述のように、褐変した生肉に関する肉色を制御する方法(特許文献1)や 生肉の肉色を維持した冷蔵保存方法(特許文献2)は知られているものの、特 15 定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優れた肉色を維持して保 存する技術は全く知られていなかった。そこで、本発明は、上述した実情に鑑 み、スライスした後の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品 及びその製造方法を提供することを目的とし、また、褐変を防止して優れた肉 色を維持したスライスされた特定加熱食肉製品の保存方法を提供することを 20 目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上述した目的を達成するため、本発明者等が鋭意検討した結果、特定加熱食 肉製品をスライスした後、所定の手順及び条件にて処理することでスライスさ 25 れた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及び 26 メトミオグロビンの存在比を所望の範囲に制御することができ、その結果、長 期保存によっても褐変することなく良好な色調を維持できることを見いだし、 本発明を完成するに至った。 【発明の効果】 【0014】 5 本発明に係る特定加熱食肉製品は、スライスされた状態であるにも拘わらず、 褐変すること無く長期に亘って優れた肉色を維持することができる。特に、本 発 に至った。 【発明の効果】 【0014】 5 本発明に係る特定加熱食肉製品は、スライスされた状態であるにも拘わらず、 褐変すること無く長期に亘って優れた肉色を維持することができる。特に、本 発明に係る特定加熱食肉製品は、密封された包材から取り出されと鮮やかな赤 色が回復し、包材内に保存された状態よりも優れた肉色を呈することができる。 【0015】 10 また、本発明に係る特定加熱食肉製品の製造方法によれば、褐変すること無 く長期に亘って優れた肉色を維持できる、スライスされた特定加熱食肉製品を 製造することができる。すなわち、本発明によれば、極めて商品価値の高い特 定加熱食肉製品を製造できるようになる。 【0016】 15 さらに、本発明に係る特定加熱食肉製品の保存方法は、スライスされた特定 加熱食肉製品を褐変させること無く長期に亘って優れた肉色を維持するよう に保存できる。したがって、本発明に係る特定加熱食肉製品の保存方法を適用 することによって、スライスされた特定加熱食肉製品の商品価値を長期間に亘 って維持することができる。 20 【発明を実施するための形態】 【0018】 本発明において特定加熱食肉製品とは、一般に食品規格基準にて規定される ように、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以 上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(乾燥食肉 25 製品及び非加熱食肉製品は除く)を含む意味とする。 27 【0020】 ローストビーフ等の特定加熱食肉製品は、肉塊を塩やコショウ、その他香辛 料や調味料等により調味し、表面全体を焼きあげて表面に焼き色をつけ又は焼 かずに、その後、肉塊全体を緩やかな条件で加熱することで製造される。・・・ 【0021】 5 本発明では、先ず、上述したように加熱加 料等により調味し、表面全体を焼きあげて表面に焼き色をつけ又は焼 かずに、その後、肉塊全体を緩やかな条件で加熱することで製造される。・・・ 【0021】 5 本発明では、先ず、上述したように加熱加工された特定加熱食肉製品をスラ イスする。スライスする際の肉厚としては、目的とする商品形態等に応じて適 宜設定することができ、何ら限定されない。 【0022】 本発明では、スライス加工の後、特定加熱食肉製品を酸素化する。ここで酸 10 素化とは、酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことによ り、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなる ことを意味する。すなわち、酸素化処理によって、スライス直後の特定加熱食 肉製品に含まれる還元型ミオグロビンが減少しオキシミオグロビンが増加す ることとなる。これは、特定加熱食肉製品における断面がスライス直後の紫赤 15 色から鮮赤色に変化する現象として捉えることもできる。ただし、スライスさ れた特定加熱食肉製品を酸素含有気体に長時間放置すると、オキシミオグロビ ンが更に酸化されメトミオグロビンの割合が増加し、特定加熱食肉製品の断面 が褐変する。 【0023】 20 したがって、スライス加工の後、特定加熱食肉製品を酸素化は、メトミオグ ロビンの割合が増加する前に終了することが好ましい。例えば、スライス加工 の後、空気に特定加熱食肉製品をさらすことで酸素化処理を行う場合、例えば 30~90分、好ましくは50~70分、より好ましくは60分の処理時間と することができる。上記範囲の処理時間とすることで、メトミオグロビンの割 25 合が増加することなく、オキシミオグロビンが増加して強い赤みを呈すること 28 ができる。 【0024】 また、酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部 、メトミオグロビンの割 25 合が増加することなく、オキシミオグロビンが増加して強い赤みを呈すること 28 ができる。 【0024】 また、酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によ るミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。例えば、酸素 化処理は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライス直後の紫赤色が鮮赤色に 5 変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階で処理を終了して も良い。 【0025】 なお、特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン 及びメトミオグロビンの存在割合は、以下のようにして、反射スペクトル法に 10 より算出することができる。すなわち、一例として「食肉の科学 Vol. 40、 No. 2、(1999)、p213-214」に詳述されているように、スライス面における480nm、 525nm、560nm 及び580nm の吸光度を測定する。測定した各数値を下記式に 代入して、還元ミオグロビン及びメトミオグロビンの割合を算出することがで きる。 15 【0026】 【数1】 【0027】 なお、上記式の右辺は上から、480nm の吸光度を525nm の吸光度で割った 20 値、560nm の吸光度を525nm の吸光度で割った値、及び580nm の吸光度を 525nm の吸光度で割った値を代入すること意味している。また、上記式の左 辺における、o はオキシミオグロビンの割合、r は還元ミオグロビンの割合、m はメトミオグロビンの割合を意味している。この方法において使用する分光光 29 度計としては、特に限定されず、上述した各波長の吸光度を測定できる装置を 使用することができる。 【0028】 また、特定加熱食肉製品の色調については、分光色差計を使 いて使用する分光光 29 度計としては、特に限定されず、上述した各波長の吸光度を測定できる装置を 使用することができる。 【0028】 また、特定加熱食肉製品の色調については、分光色差計を使用してL*a*b* 表色系にて評価することができる。すなわち、特定加熱食肉製品のスライス面 5 における色調は、L*値:「明度指数」、a*値及びb*値:「クロマティクネス指数」 によって定量的に評価できる。なお、クロマティクネス指数のうちa*値は赤の 色相を示しており、b*値は黄の色相を示している。また、分光色差計としては、 JIS Z 8722 にて推奨される「反射物体の照射および受光の幾何条件」を満た し、JIS Z 8720 に規定される光源D65/2°を有し、JIS Z 8729 に規定される 10 L*a*b*系によって物体色を表示でき、測定波長400~700nm 及び間隔10nm であるハロゲンランプを備える装置を使用することが好ましい。例えば、分光 色差計としては、例えば日本電色工業社製の商品名:NF999 を使用することが できる。なお、分光色差系としては、その他にもコニカミノルタセイジング社 製、スガ試験機社製及び村上色彩研究所社製の装置を使用することもできる。 15 また、分光色差計で測定する場合、特定加熱食肉製品を包材に封入した状態で 測定しても良い。 【0029】 また、分光色差計として例示した日本電色工業社製の商品名:NF999 は、 L*a*b*表色系にて色調を評価できるとともに、上述した各波長の吸光度を測定 20 することができる。すなわち、日本電色工業社製の商品名:NF999 は等の分光 色差計には、上述した各波長の吸光度を測定する分光光度計として機能するも のもある。よって、特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミ オグ 、日本電色工業社製の商品名:NF999 は等の分光 色差計には、上述した各波長の吸光度を測定する分光光度計として機能するも のもある。よって、特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミ オグロビン及びメトミオグロビンの存在割合と、特定加熱食肉製品の色調とを 同一の装置によって測定することができる。 25 【0030】 30 上述のように、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素化した後、スライス された特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包 材に密封する。この工程では、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特 定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を非鉄系脱酸素材によ り吸収する。なお、この工程では、スライスされた特定加熱食肉製品を、ポリ 5 プロピレン等の樹脂等を原料とした食品包装容器(トレイ)に載置し、スライ スされた特定加熱食肉製品を当該容器ごと包材に密封しても良い。 【0031】 ここで、ガスバリア性を有する包材としては、特に限定されず、従来、食品 特に食肉製品に使用されているもの挙げることができる。ガスバリア性を有す 10 る包材としては、ガスバリア性を有する樹脂材料からなる包材を挙げることが できる。特にガスバリア性としては、酸素に対するバリア性能を意味する。す なわち、本発明においては、酸素に対するバリア性を有する包材を使用するこ とが好ましい。より具体的に、酸素に対するバリア性を有する樹脂材料として は、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポ 15 リアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリビニルア ルコールを挙げることができる。なお、樹脂材料における酸素に対するバリア 性は、酸素透過係数に基づいて判断することができる。 【0032】 本工程で チレン-ビニルアルコール共重合体及びポリビニルア ルコールを挙げることができる。なお、樹脂材料における酸素に対するバリア 性は、酸素透過係数に基づいて判断することができる。 【0032】 本工程では、非鉄系脱酸素材を使用して上述のように脱酸素処理を行ってい 20 る。非鉄系脱酸素材としては、アスコルビン酸又はその塩を主剤とし、これに アルカリ金属の炭酸塩、金属化合物及び水を添加し、無機フィラーと混合した ものを挙げることができる。ここで、無機フィラーとしては、組成中の鉄分 6000ppm 以下であるものが好適に用いられる。より具体的に、非鉄系脱酸素 材としては、三菱化学社製のエージレスを使用することができる。エージレス 25 のなかでも、複合機能タイプ、すなわち酸素吸収と同時に炭酸ガスを発生する 31 タイプ(GT タイプ)を使用することが好ましい。酸素吸収と同時に炭酸ガス を発生するタイプを使用することで、包材の収縮といった問題を回避できる。 包材の収縮を回避することで、特定加熱食肉製品からのドリップの発生を防止 することができる。 【0034】 5 この工程では、非鉄系脱酸素材を使用することで、包材内に密封された気体 に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素 を吸収している。これにより、包材内の酸素濃度が検出限界以下になったとき に特定加熱食肉製品に含まれる各ミオグロビンの割合を所望の範囲に制御す ることができる。すなわち、特定加熱食肉製品のスライスされた面において、 10 全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、 メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上という割合 に調整することができる。 【0035】 このとき仮に、鉄系脱酸素材のみを使用して包材内の酸素及び特定加 ロビンが12%以上、 メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上という割合 に調整することができる。 【0035】 このとき仮に、鉄系脱酸素材のみを使用して包材内の酸素及び特定加熱食肉 15 製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収すると、短時間に酸素吸収が 行われ、オキシミオグロビンの割合を12%以上に維持することができないし、 場合によってはメトミオグロビンの割合が50%を超えることもある。その結 果、特定加熱食肉製品のスライス断面は褐変してしまう。 【0036】 20 しかし、本工程では、鉄系脱酸素材を補助的に利用して、包材内の酸素及び 特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収する処理時間 を短縮することができる。この場合でも、上述した非鉄系脱酸素材を使用して いるため、包材内の酸素濃度が検出限界以下になったときに、特定加熱食肉製 品のスライスされた面において、全ミオグロビン量を100%とした場合のオ 25 キシミオグロビン割合を12%以上、メトミオグロビン割合を50%未満、還 32 元型ミオグロビン割合を34%以上とすることができる。鉄系脱酸素材を使用 を補助的に使用する場合、鉄系脱酸素材は、非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の 合計量を100%としたときに37.5%以下とすることが好ましい。鉄系脱 酸素材をこの範囲で使用することで、上述した褐変を防止しながら脱酸素処理 の時間を短縮できる。 5 【0038】 本工程は、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品の オキシミオグロビンに結合した酸素を吸収するのに十分な時間で実施すれば よい。より具体的に、本工程では、包材内の酸素濃度が検出限界以下になるま で行えばよい。本工程が終了したら、包材内の非鉄系脱酸素材、或いは非鉄系 10 脱酸素材及び 吸収するのに十分な時間で実施すれば よい。より具体的に、本工程では、包材内の酸素濃度が検出限界以下になるま で行えばよい。本工程が終了したら、包材内の非鉄系脱酸素材、或いは非鉄系 10 脱酸素材及び鉄系脱酸素材を取り除いても良いし、そのまま包材内に入れてお いても良い。なお、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材内から取り除く場合、 非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材の一方端部に寄せておき、非鉄系脱酸素 材や鉄系脱酸素材と特定加熱食肉製品との間をヒートヒールした後、非鉄系脱 酸素材や鉄系脱酸素材を含む部分を削除する方法が挙げられる。この方法によ 15 れば、包材を開封して密封状態を破ることなく、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素 材を取り除くことができる。なお、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材内か ら取り除く場合、一旦包材を開封して密封状態を破る場合であっても、非鉄系 脱酸素材や鉄系脱酸素材を迅速に取り除き直ちに密封することで、特定加熱食 肉製品の肉色に変化はなく問題が無い。 20 【0039】 このように、本工程が終了したことで、特定加熱食肉製品は優れた肉色の状 態を維持して保存することができる。このとき、保存の形態は、冷蔵保存でも よいし、チルド保存でもよいし、冷凍保存でもよい。ここで、特定加熱食肉製 品を冷蔵保存する場合には4℃以下で30日間、好ましくは25日間、更に好 25 ましくは20日間、最も好ましくは15日間保存することができる。・・・ 33 【0041】 特に、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材から取り除いた後は、この真空 パックとして保存することが好ましい。真空パックとすることによって、一旦、 包材の密封が破られたとしても、空気中の酸素により各種ミオグロビンの割合 が変動する(酸化)ことを防止できるからである。なお、非鉄系脱酸素材や鉄 5 系 好ましい。真空パックとすることによって、一旦、 包材の密封が破られたとしても、空気中の酸素により各種ミオグロビンの割合 が変動する(酸化)ことを防止できるからである。なお、非鉄系脱酸素材や鉄 5 系脱酸素材を包材に載置した状態で、真空パックとしてもよい 【0042】 以上のように、本発明によれば特定加熱食肉製品を新規な方法で処理して保 存することができる。上述したように、スライスされた特定加熱食肉製品を非 鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封して酸素を吸収する 10 と、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素化したときと比較して、赤色調の a*値及びb*値が若干低下する(すなわち、鮮明な鮮赤色からやわらかい赤色と いった色調に変化する)。また、上述したように、スライスされた特定加熱食肉 製品を保存すると、経日変化でもa*値が更に若干低下する。但し、上述した保 存状態において、スライスされた特定加熱食肉製品は、褐変することなく本来 15 の赤色を呈しており、優れた商品価値を維持している。例えば、ローストビー フの場合、5日間(120時間)蛍光灯点灯下で、保管しても色調の変化は無く、 鮮明な赤色を維持することができる。 【0043】 上述のように保存されている、スライスされた特定加熱食肉製品は、包材を 20 開封して空気に曝すと、赤色調のa*値が上昇してより鮮明な鮮赤色を呈する こととなる。この鮮明な鮮赤色は、長期に亘って維持することができる。 【0044】 このような本発明による優れた効果は、上述した工程により特定加熱食肉製 品を処理することで、包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、スライス 25 された特定加熱食肉製品における全ミオグロビン量を100%としたときに 34 オキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満 材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、スライス 25 された特定加熱食肉製品における全ミオグロビン量を100%としたときに 34 オキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミ オグロビンが34%以上となることによる。スライスされた特定加熱食肉製品 を保存する際に、急激な脱酸素処理によってオキシミオグロビンが12%未満 となると、これに伴いメトミオグロビンの割合が50%を超えてしまい、不可 逆的に褐変してしまう。また、上述した工程により特定加熱食肉製品を処理す 5 ることで、還元型ミオグロビンが34%以上とすることができるため、包材を 開封して空気に曝すと鮮明な赤色が回復すると考えられる。 【実施例】 【0045】 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は 10 以下の実施例に限定されるものではない。 【0051】 <ミオグロビン割合の算出> ローストビーフのスライス面の吸光度を測定することで、オキシミオグロビ ン、還元ミオグロビン及びメトミオグロビンの割合を算出した。この算出方法 15 については「食肉の科学 Vol. 40、 No. 2、(1999)、p213-214」に詳述されて いる。具体的には、日本電色工業社製、商品名:NF999 を使用して、480nm、525nm、 560nm 及び580nm の吸光度を測定し、下記式に代入して、還元ミオグロビン及 びメトミオグロビンの割合を算出した。 【0052】 20 【数2】 【0053】 なお、上記式の右辺は上から、480nm の吸光度を525nm の吸光度で割った 35 値、560nm の吸光度を525nm の吸光度で割った値、及び580nm の吸光度を 525nm の吸光度で割った値を代入すること意味している。また の吸光度を525nm の吸光度で割った 35 値、560nm の吸光度を525nm の吸光度で割った値、及び580nm の吸光度を 525nm の吸光度で割った値を代入すること意味している。また、上記式の左 辺における、o はオキシミオグロビンの割合、r は還元ミオグロビンの割合、m はメトミオグロビンの割合を意味している。 【0054】 5 <色調の測定> ローストビーフのスライス面の色調は、日本電色工業社製、商品名:NF999 を使用して測定した。測定結果としては、L*値、a*値及びb*値が出力される。 なお、ローストビーフのスライス面の色調を測定する際、上述した包材を介し て分光色差計を測定対象のスライス面に当てて測定した。 10 本件発明の意義 前記 によれば、本件発明の意義は次のとおりであると認められる。 特定加熱食肉製品は、スライスされた状態で真空パックや含気パックで保存 されると、短時間で褐変してしまい商品価値が損なわれる。褐変した生肉に関 する肉色を制御する方法や生肉の肉色を維持した冷蔵保存方法は知られてい 15 るものの、特定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優れた肉色を 維持して保存する技術は全く知られていなかった。 本件発明は、特定加熱食肉製品をスライスした後、適切な手法による酸素化 させる工程の後、ガスバリア性を有する包材で特定加熱食肉製品と非鉄系脱酸 素材を適切な割合以上含む脱酸素剤を密封すると、酸素濃度が検出限界以下の 20 時に本件ミオグロビン割合という、望ましい赤みを帯びた色調となるミオグロ ビン割合となり、長期間にわたって赤みを帯びた望ましい色調のまま保管する ことができることを見出してされたものである。 2 争点2(本件発明は乙12発明を主引例として進歩性を欠き、本件特許は特許 無効審判により無 り、長期間にわたって赤みを帯びた望ましい色調のまま保管する ことができることを見出してされたものである。 2 争点2(本件発明は乙12発明を主引例として進歩性を欠き、本件特許は特許 無効審判により無効にされるべきか)について 25 事案に鑑みて、争点2から判断する。 36 乙12公報の記載 【特許請求の範囲】 【請求項1】 スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガス バリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び/または二 酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃 5 度が0.01%以下に維持されるようにすることを特徴とする、スライスされ たローストビーフの包装方法。 【請求項2】 酸素ガスバリア性材料からなり、内部が窒素ガス及び/または 二酸化炭素ガス雰囲気に置換されている容器と、該容器内に配置された脱酸素 剤とを備え、前記容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されているこ 10 とを特徴とする、スライスされたローストビーフの包装体。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、スライスされたローストビーフの品質保 持のために用いられる包装方法及び包装体に関するものである。 15 【0002】 【従来の技術】従来、ローストビーフは製造業者によって加工され、品質保持 のためにブロックのまま小売業者に流通されていた。また、小売業者に流通さ れたローストビーフは、小売業者のバックヤードでスライス加工されて消費者 の手に渡るか、あるいはブロックのまま消費者の手に渡り、家庭でスライスさ 20 れて食されていた。しかし、昨今の食生活の改善、衛生上の問題の回避、及び 家庭における簡便性の追求により、ローストビーフを製造業者があらかじめス ライスして流通さ 者の手に渡り、家庭でスライスさ 20 れて食されていた。しかし、昨今の食生活の改善、衛生上の問題の回避、及び 家庭における簡便性の追求により、ローストビーフを製造業者があらかじめス ライスして流通させる必要性が高まっている。 【0003】スライスされたローストビーフを流通させる上での主な問題点は、 スライスすることによって外気との接触面積が大きくなるため、ローストビー 25 フの酸化が激しくなるという点である。その結果、消費者の手に渡るまで、色、 37 臭い、味などを維持することが困難になる。 【0004】酸化を防止するために、スライス面が外気に触れないようにスラ イスしたローストビーフをブロック状態に維持したまま真空包装する方法な どが知られている(特開昭59-149468)。 【0005】 5 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記スライスされたロースト ビーフをブロック状態を維持したまま真空包装する方法においては、以下のよ うな問題があった。 【0006】まず第一に、上記方法においては、切断面が外気に触れない状態 で切断しなくてはならないため、特別の装置を用いなくてはならず、多大なコ 10 ストがかかる。 【0007】第二に、上記方法においては、ブロック状態を維持しているため、 スライスされたローストビーフのスライス面が外部から見えず、ローストビー フの品質、特に色調を消費者にアピールできない。 【0008】第三に、上記真空包装においては、ローストビーフからのドリッ 15 プが激しくなり、商品価値が著しく低下する。 【0009】本発明は、上記問題点を解決し、製造業者によってスライスされ たローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃ において1週間程度、簡易かつ効率よく保存可能とすると共に、スライス面が 発明は、上記問題点を解決し、製造業者によってスライスされ たローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃ において1週間程度、簡易かつ効率よく保存可能とすると共に、スライス面が 外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールを 20 することが可能な、スライスされたローストビーフの包装方法及び包装体を提 供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のスライス されたローストビーフの包装方法は、スライスされたローストビーフを、脱酸 25 素剤と共に、酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、容器内を窒素ガ 38 ス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、容器を密封して、容器内 の残存酸素濃度が0.01%(容量%、以下同じ)以下に維持されるようにす ることを特徴としている。 【0011】また、上記課題を解決するために、本発明のスライスされたロー ストビーフの包装体は、酸素ガスバリア性材料からなり、内部が窒素ガス及び 5 /または二酸化炭素ガス雰囲気に置換されている容器と、該容器内に配置され た脱酸素剤とを備え、前記容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持され ていることを特徴としている。 【0012】脱酸素剤と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換とを併用す ることにより容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することが簡易か 10 つ確実になり、また、容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持すること により、スライスされたローストビーフの酸化を十分に防止することが可能と なる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明のスライスされたローストビーフの包装方 15 法並びに包装体の好適な実施形態について説明する。 【0014】ま 十分に防止することが可能と なる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明のスライスされたローストビーフの包装方 15 法並びに包装体の好適な実施形態について説明する。 【0014】まず、本発明の実施形態にかかるスライスされたローストビーフ の包装体について説明する。図1(省略)は、本実施形態にかかるスライスさ れたローストビーフの包装体の断面図である。包装体1は、トレイ11、トレ イ11を包み込む袋状の容器12及び容器12内に配置された脱酸素剤13 20 から構成されている。スライスされたローストビーフ2は、トレイ11内に並 べられている。容器12は、内部を窒素ガス置換された状態でヒートシール部 14をヒートシールすることにより密封されている。 【0015】容器12は、温度が30℃かつ相対湿度が80%の条件下におい て酸素ガス透過度が1500ml/m2・day・atm以下である酸素ガスバ 25 リア性材料から形成されていることが望ましく、温度が30℃かつ相対湿度が 39 80%の条件下において酸素ガス透過度が400ml/m2・day・atm以 下である酸素ガスバリア性材料から形成されていることが特に望ましい。容器 12を形成する材料の酸素ガス透過度が1500ml/m2・day・atmを 越えると、容器12内に酸素が侵入し、スライスされたローストビーフ2の酸 化の程度が激しくなる傾向にある。 5 【0016】また、容器12は、上記条件を満たす酸素ガスバリア性材料から 形成されていれば、材質、厚み、構成は特に問わない。ナイロン、ポリ塩化ビ ニリデン、ポリビニルアルコールなどの単層フィルムから構成されているもの や、ナイロン/ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデンコートナイロン/ポリオ レフィン、ポリオレフィン/ポリ塩化ビニリデン/ポリオレフィンなど 、ポリビニルアルコールなどの単層フィルムから構成されているもの や、ナイロン/ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデンコートナイロン/ポリオ レフィン、ポリオレフィン/ポリ塩化ビニリデン/ポリオレフィンなどの積層 10 フィルムから構成されているものなどから任意に選択できる。尚、上記のポリ オレフィンの中には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチ レンなどが含まれる。 【0017】また、本実施形態において、容器12内の残存酸素濃度を必要レ ベル(0.01%以下)まで確実に下げるためには、窒素ガス置換のみでは十 15 分でなく、脱酸素剤13を容器12内に封入する必要がある。脱酸素剤13は、 容器容積の0.25倍以上の酸素吸収能力を持つことが望ましく、容器容積の 0.5倍以上の酸素吸収能力を持つことが特に望ましい。酸素吸収能力が容器 容積の0.25倍未満である場合は、容器内の残留酸素濃度を、0.01%以 下に維持することが難しくなる傾向にある。このような脱酸素剤13としては、 20 例えば三菱ガス化学(株)製、商品名:エージレスSS-200が挙げられる。 【0018】トレイ11は、容器12内の残存酸素濃度の維持に悪影響を及ぼ さない材質のものであれば良く、発泡性材料以外の材料で形成されていること が望ましい。これらの材料にはポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられ る。 25 【0019】包装対象となるローストビーフは、家庭において加工を必要とし 40 ないように、あらかじめスライスされたものである。スライスされる厚みは、 通常1~2mmくらいである。また、スライスされたローストビーフ2は、切 り口が外部から見えるような状態でトレイ11上に並べられている。これによ り、消費者に対して、有効な視覚的アピールをすることが可能となっている。 【0020 また、スライスされたローストビーフ2は、切 り口が外部から見えるような状態でトレイ11上に並べられている。これによ り、消費者に対して、有効な視覚的アピールをすることが可能となっている。 【0020】容器12内は、脱酸素剤13の封入および窒素ガス置換によって、 5 残存酸素濃度が0.01%以下に維持されている必要があり、0.007%以 下であることが好ましく、特に0.002%以下であることが好適である。容 器12内の残存酸素濃度が0.01%より大きいと、周囲温度が5℃の状態に おいて、スライスされたローストビーフの鮮度を1週間以上維持することがで きなくなり、スライスされたローストビーフの流通において必要なシェルフラ 10 イフを満たすことができなくなる。 【0021】次に、本発明の実施形態に係るスライスされたローストビーフの 包装方法について説明する。本実施形態に係るスライスされたローストビーフ の包装方法の第1の工程では、トレイ11上にスライスされたローストビーフ 2を並べる。第2の工程では、第1の工程にてスライスされたローストビーフ 15 2を並べられたトレイ11と、脱酸素剤13とを袋状の容器12に挿入する。 第3の工程では、ガス置換兼用真空包装機を用いて、容器12内を窒素ガスで 置換し、容器12を密封して完了する。 【0022】本実施形態において、容器12内の残存酸素濃度を必要レベル、 つまり0.01%以下まで確実に下げるためには、脱酸素剤13の封入のみで 20 は十分ではなく、脱酸素剤13の封入と窒素ガス置換との併用が必要である。 容器12内の残存酸素濃度を低減するために、脱酸素剤13と窒素ガス置換と を併用するため、窒素ガス置換直後の容器12内の残存酸素濃度は0.08% 以下であれば良く、残りは、脱酸素剤13によって残存酸素濃度が必要レベル まで低 度を低減するために、脱酸素剤13と窒素ガス置換と を併用するため、窒素ガス置換直後の容器12内の残存酸素濃度は0.08% 以下であれば良く、残りは、脱酸素剤13によって残存酸素濃度が必要レベル まで低減される。 25 【0023】窒素ガス置換方法としては、容器12内を減圧せずに窒素ガスを 41 吹き込んだ後に密封する方法や、容器12内を減圧して窒素ガスを吹き込んだ 後に密封する方法などがある。この場合、減圧および窒素ガス吹き込みの回数 は特に制限されない。 【0024】以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上 記実施形態に限定されない。すなわち、例えば上記実施形態において、スライ 5 スされたローストビーフはトレイ11上に並べられていたが、図2(省略)に 示すように、台紙15上に並べられていても良い。この場合、台紙15は、容 器12内の残存酸素濃度の低減に悪影響を及ぼさない材質のものであれば良 い。 【0025】また、上記実施形態において、容器12としては袋状のものを用 10 いて、スライスされたローストビーフ2の並べられたトレイ11全体を覆って 密封していたが、図3(省略)に示すように、容器本体12aを、上記容器1 2と同様な、酸素ガスバリア性材料から形成し、容器本体12aの内部を窒素 ガスで置換した後、容器本体12aの上部に、同様の酸素ガスバリア性材料か ら形成された容器蓋部12bを張り付けて容器12を形成し、密封しても良い。 15 【0026】さらに、容器12内を置換するガスは窒素ガスに限らず、二酸化 炭素ガスでも良いし、また窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスでも良い。 窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスの場合は、混合比を任意に設定できる。 容器12内を置換するガスとして窒素ガスを用いた場合は、スライスされたロ ーストビーフ スと二酸化炭素ガスとの混合ガスでも良い。 窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスの場合は、混合比を任意に設定できる。 容器12内を置換するガスとして窒素ガスを用いた場合は、スライスされたロ ーストビーフ2の色、味が特に高水準な状態で保存できる傾向にある。一方、 20 窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガス、または二酸化炭素ガスを用いた場合 は、容器12内の静菌効果を向上させることができる。 【0027】これらのような形態にしても、簡易かつ確実に、容器12内の残 存酸素濃度を0.01%以下に維持することができ、上記実施形態と同様の効 果が得られる。 25 【0028】 42 【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明 は以下の実施例に限定されるものではない。 【0029】実施例1および比較例1~3 容器12内を窒素ガス置換すると共に、容器12内に脱酸素剤13を封入した 状態(実施例1)、容器12内を窒素ガス置換せずに含気包装し、脱酸素剤13 5 も使用しない状態(比較例1)、容器12内を窒素ガス置換せずに含気包装し、 容器12内に脱酸素剤13を封入した状態(比較例2)、容器12内を窒素ガ ス置換し、脱酸素剤13を使用しない状態(比較例3)で、それぞれスライス されたローストビーフ2を保存し、スライスされたローストビーフ2の色、臭 い、味、ドリップ発生量及びスライスされたローストビーフ2を含む包装体1 10 の外観の評価を実施した。 【0030】上記実施例及び比較例における包装体1は、図1に示すものを用 いた。トレイ11はポリプロピレンで形成されており、内容積420cm3 の 大きさのものを用いている。袋状の容器12は、温度が30℃かつ相対湿度が 80%の条件下において酸素ガス透過度が60ml/m2・day・atmの酸 15 レンで形成されており、内容積420cm3 の 大きさのものを用いている。袋状の容器12は、温度が30℃かつ相対湿度が 80%の条件下において酸素ガス透過度が60ml/m2・day・atmの酸 15 素ガスバリア性材料である、エチレンビニルアルコール共重合体/ポリオレフ ィン/ポリオレフィンの積層フィルムから構成されているものを選択した。脱 酸素剤13としては、三菱ガス化学(株)製、商品名:エージレスSS-20 0を使用し、酸素吸収能力が容器容積の0.5倍となるようにした。 【0031】評価対象のスライスされたローストビーフ2は、1枚の厚みが1 20 mm程度に切断されているもの用いた。全部で7~8切れ、重量にして約40 gのスライスされたローストビーフ2をトレイ11に並べ、そのトレイ11の 外側を、袋状の容器12で覆った。その後、Multivac(株)製、Mu ltivac AG2000型ガス置換兼真空包装機を用いて、容器12内を 窒素ガスで置換した。容器12内におけるスライスされたローストビーフ2の 25 容積占有率は10容量%程度である。 43 【0032】上記それぞれの状態で、外気温5℃の暗所に7日間保存後、スラ イスされたローストビーフ2の色、臭い、味、ドリップ発生量及びスライスさ れたローストビーフ2を含む包装体1の外観の評価と総合評価を以下のよう に実施した。評価結果を表1に示す。 【0033】(色の評価)包装体を開封して30分後に、日本電色工業(株)製 5 SE2000型分光式測色色差計を用いて、スライスされた2枚のローストビ ーフ2の中心部のそれぞれ3カ所、計6カ所のa値を測定し、平均値を求めた。 a値とは、色差表示方法(JIS Z 8730)の「ハンターの色差式によ る色差」の項に示されているように、JIS Z 8722に規定 のそれぞれ3カ所、計6カ所のa値を測定し、平均値を求めた。 a値とは、色差表示方法(JIS Z 8730)の「ハンターの色差式によ る色差」の項に示されているように、JIS Z 8722に規定される色の 三刺激値から計算された値であり、この数値が大きいほどスライスされたロー 10 ストビーフ2の赤みが強く、変色度合いが小さいことを意味する。なお、評価 としては、上記のように測定したa値の平均値に基づき、下記の評価基準: 5:7.0<a値の平均値 4:6.0<a値の平均値≦7.0 3:5.0<a値の平均値≦6.0 15 2:3.0<a値の平均値≦5.0 1: a値の平均値≦3.0 に従って5段階に評価した。 【0034】(臭いの評価)3人のパネラーによる官能検査を行った。具体的に は、包装体1を開封して直後に、各パネラーに、スライスされたローストビー 20 フ2の臭いを嗅いでもらい、下記の評価基準: 5:保存前と比較して全く臭いの劣化が認められず、商品として大変優れてい る 4:保存前と比較してほとんど臭いの劣化が認められず、商品として問題はな い 25 3:保存前と比較してわずかに臭いの劣化が認められ、商品としては若干問題 44 がある 2:保存前と比較して著しい臭いの劣化が認められ、商品としては明らかに問 題がある 1:異臭、特に酸化臭が強く感じられ、商品価値は無い に従って5段階に評点してもらい、平均点(四捨五入)を求めた。 5 【0035】(味の評価)3人のパネラーによる官能検査を行った。具体的に は、包装体1を開封して10分後に、各パネラーに、スライスされたロースト ビーフ2を1枚食してもらい、下記の評価基準: 5:保存前と比較して全く味の劣化が認められず、商品として大変優れている 4:保存前と比 体1を開封して10分後に、各パネラーに、スライスされたロースト ビーフ2を1枚食してもらい、下記の評価基準: 5:保存前と比較して全く味の劣化が認められず、商品として大変優れている 4:保存前と比較してほとんど味の劣化が認められず、商品として問題はない 10 3:保存前と比較してわずかに味の劣化が認められ、商品としては若干問題が ある 2:保存前と比較して著しい味の劣化が認められ、商品としては明らかに問題 がある 1:外観の変化、異臭が強く食べられない 15 に従って5段階に評点してもらい、平均点(四捨五入)を求めた。 【0036】(ドリップ発生量の評価)包装体1を開封して直後に、トレイ11 内に蓄積しているドリップ量を、下記の評価基準: 5:全く認められない 4:ほとんど認められない 20 3:少し認められる 2:多く認められる 1:非常に多く認められる に従って5段階に目視評価した。 【0037】(外観の評価)3人のパネラーによる官能検査を行った。具体的に 25 は、包装体1を開封直前に、各パネラーに、スライスされたローストビーフ2 45 の乾燥度合い、包装体1の減圧による変形度合いの観点からスライスされたロ ーストビーフ2及び包装体1の外観を目視してもらい、下記の評価基準: 5:保存前と比較して全く変化が認められず、商品として大変優れている 4:保存前と比較してほとんど変化が認められず、商品として問題はない 3:保存前と比較してわずかに変化が認められ、商品としては若干問題がある 5 2:保存前と比較して著しい変化が認められ、商品としては明らかに問題があ る 1:保存前の状態をとどめておらず、商品価値は無い に従って5段階に評点してもらい、平均点(四捨五入)を求めた。 【0038】(総合評価)上記の色、臭い、味、 れ、商品としては明らかに問題があ る 1:保存前の状態をとどめておらず、商品価値は無い に従って5段階に評点してもらい、平均点(四捨五入)を求めた。 【0038】(総合評価)上記の色、臭い、味、ドリップ発生量、外観の評価結 10 果を総合し、下記の評価基準: ◎:商品として優れている ○:商品として問題なし △:商品として若干問題がある ×:商品として明らかに問題がある 15 に従って、4段階に評価した。 【0039】 【表1】 【0040】表1の結果からわかるように、比較例1に示す含気包装において 20 は、スライスされたローストビーフ2の色、臭い、味ともに著しく劣化し、ス ライスされたローストビーフ2の鮮度を維持することができない。比較例2の 如く脱酸素剤13のみを用いて容器12内を脱酸素した場合、開封直前の容器 12内の残存酸素濃度は0.013%程度になる。この場合は、色の保持は可 46 能であるが、臭い、味の劣化が認められる。また、比較例3の如く窒素ガス置 換のみを用いて容器12内を脱酸した場合、開封直前の容器12内の残存酸素 濃度は0.042%程度になる。この場合は、味の劣化は認められなかったが、 変色の度合いが大きくなる。 【0041】以上の結果より、スライスされたローストビーフ2を最低7日間 5 保存するためには、容器12内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持するこ とが必要であることが分かる。また、残存酸素濃度が0.01%以下のレベル を確実に実現するための脱酸素方法としては、窒素ガス置換と脱酸素剤13と の併用が必要であることも分かる。 【0042】比較例4 10 参考のため、容器12内を窒素ガス置換し、かつ、脱酸素剤13を使用する代 わりに、容器12内を真空にした状態(比較例4)について、上記実施例1と 同 あることも分かる。 【0042】比較例4 10 参考のため、容器12内を窒素ガス置換し、かつ、脱酸素剤13を使用する代 わりに、容器12内を真空にした状態(比較例4)について、上記実施例1と 同様の実験を行った。容器12内を窒素ガス置換し、かつ、脱酸素剤13を使 用する代わりに、容器12内を真空にしたこと以外の条件は実施例1と同様で ある。 15 【0043】比較例4のように真空包装した場合は、スライスされたロースト ビーフ2の臭い、味は比較的良好な状態で保存されるが、スライスされたロー ストビーフ2が圧迫されて、ドリップが多く(約2g程度)発生するため、商 品価値が無くなる。 【0044】実施例2~5 20 容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容器12内を窒素ガスで置換し た状態(実施例2)、容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容器12内 を窒素ガス70%(容量%、以下同じ)と二酸化炭素ガス30%との混合ガス で置換した状態(実施例3)、容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容 器12内を窒素ガス30%と二酸化炭素ガス70%との混合ガスで置換した 25 状態(実施例4)、容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容器12内を 47 二酸化炭素ガスで置換した状態(実施例5)を作り、スライスされたロースト ビーフ2の保存状態を調べた。 【0045】容器12内を置換するガスとして、窒素ガスの代わりに上記の組 成の置換ガスを用いたこと以外は、実施例1と同様な条件で実験を行った。 【0046】また、実施例1と実施例2における相違点は、実施例2において 5 は、容器12を密封した直後の容器12内の残存酸素濃度が実施例1と比較し て小さい点である。以下、結果を表2に示す。 【0047】 【表2】 10 【0048】表2から分かる において 5 は、容器12を密封した直後の容器12内の残存酸素濃度が実施例1と比較し て小さい点である。以下、結果を表2に示す。 【0047】 【表2】 10 【0048】表2から分かるように、容器12内を窒素ガスで置換する場合と 同様に、二酸化炭素ガス、あるいは窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスで 置換することによっても、スライスされたローストビーフ2の品質を必要な期 間維持することが可能である。また、密封直後の残存酸素濃度を小さくしてお けば、容器12内の酸素濃度をより低く維持することができ、保存状態が良く 15 なる傾向にある。 【0049】 【発明の効果】本発明のスライスされたローストビーフの包装方法および包装 体により、製造業者によってスライスされたローストビーフを、流通温度が0 ~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく保存することが可能となる。ま 20 た、スライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な 視覚的アピールをすることが可能となる。 技術常識等 ア 本件特許の出願日当時、次の事項が技術常識であった。 48 食肉の色はミオグロビンの割合に左右され、家畜の屠殺後、筋肉中のミオ グロビンは還元型ミオグロビンとなって食肉は紫赤色になり、空気にさらさ れて還元型ミオグロビンが酸素と結合してオキシミオグロビンとなると、食 肉は鮮やかな赤色になり、さらに時間が経過すると、オキシミオグロビンが 酸化してメトミオグロビンになり、食肉は褐色になっていく。オキシミオグ 5 ロビンを大量に含む食肉は、人が「新鮮である、美味しそうである」と感じ る鮮やかな赤色となる一方、褐色化した肉は経験的に古い肉と判断され、好 まれない。メトミオグロビン割合が50%以上になると明瞭に色調の劣化が 認められる。(甲5~7) この 美味しそうである」と感じ る鮮やかな赤色となる一方、褐色化した肉は経験的に古い肉と判断され、好 まれない。メトミオグロビン割合が50%以上になると明瞭に色調の劣化が 認められる。(甲5~7) この還元型ミオグロビンからオキシミオグロビンへの変化は可逆的であり、 10 酵素等も関与していない。他方で、生体内では、メトミオグロビンが還元型 ミオグロビンに変化するが、この反応には、メトミオグロビン還元酵素とい う酵素が必要である。(甲7、45、乙14) このメトミオグロビン還元酵素については、昭和54年の学術論文で、5 0度まで加熱すると失活することが報告されていた(甲46の2)。仮にメト 15 ミオグロビン還元酵素が失活すれば、上記のメトミオグロビンから還元型ミ オグロビンへの反応が生じないことになる。 イ 乙12発明の出願日当時、ローストビーフには加熱食肉製品のローストビ ーフと特定加熱食肉製品としてのローストビーフがあった。特定加熱食肉製 品とは、食肉の中心部の温度を63度で30分間加熱する方法又はこれと同 20 等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(乾 燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く)と定義されており、その製造基準に ついては、中心部を55度から63度の間の温度で一定時間(55度であれ ば97分、56度であれば64分、63度であれば瞬時など温度によって規 定されている時間は異なる。)加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する 25 方法により殺菌しなければならないこととされている。また、加熱食肉製品 49 の製造基準としては、中心部の温度を63度で30分間加熱する方法又はこ れと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならないとされて いる。(甲1、13の2、52、弁論の全趣旨) ウ 特定加熱食肉製品と加熱食肉 は、中心部の温度を63度で30分間加熱する方法又はこ れと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならないとされて いる。(甲1、13の2、52、弁論の全趣旨) ウ 特定加熱食肉製品と加熱食肉製品では法律上、次のとおり、取り扱いの制 限が異なる。(甲13の2、145) 5 特定加熱食肉製品の保存基準は4℃以下であるが、加熱食肉製品は1 0℃以下。 特定加熱食肉製品は、単一の肉塊を用いなければならないが、加熱食肉 製品は、肉片を成型することも許される。 特定加熱食肉製品のpHは、6.0以下としなければならないが、加熱 10 食肉製品には制限がない。 特定加熱食肉製品で調味液等を用いる場合には、肉の表面に塗布しなけ ればならない。食肉の塩漬けを行う場合には、肉塊のままで、乾塩法又は 塩水法しか使えない。例えば一本針注入法のように肉の内部に調味液を 浸透させることができない。 15 エ 特定加熱食肉製品と異なり、加熱食肉製品については塩せき工程で発色剤 (亜硝酸塩や硝酸塩)を加えることができる。亜硝酸塩が還元されると一 酸化窒素が生成し、酸素の代わりに一酸化窒素がミオグロビンに配位する。 一酸化窒素は酸素に比べてミオグロビンに対して300万倍の親和性を持 っており、加熱しても乖離せずに安定な赤色を保ち続ける。この赤色は、冷 20 暗所でかつ酸素を遮断すると数年間安定に保たれる場合もあるが、酸素に 暴露した条件で光を照射すると、1時間程度で退色する。他方、酸素を遮断 して光照射を行った場合、あるいは光を遮断して酸素に暴露した場合には、 退色はわずかに進行するのみとなる。(甲148) 前記 の乙12公報の記載によれば、乙12発明の内容は次のとおりである 25 と認められる。 50 a ローストビーフをスライスする工程と、 b スライス 行するのみとなる。(甲148) 前記 の乙12公報の記載によれば、乙12発明の内容は次のとおりである 25 と認められる。 50 a ローストビーフをスライスする工程と、 b スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程と、 c スライスされたローストビーフを脱酸素剤と共に酸素ガスバリア性を有 する容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に 置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以 5 下に維持されるようにする e ことを特徴とするスライスされたローストビーフの包装方法。 本件発明と乙12発明には、少なくとも、次の相違点があると認められる。 ア 相違点1 本件発明では、構成要件Bに「スライスされた特定加熱食肉製品における 10 還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対 し、乙12発明では、ローストビーフをスライスし、スライスされたロース トビーフをトレイ上に並べ、脱酸素剤と共に容器内に配置して容器内を窒素 ガス又は二酸化炭素ガスで置換するのは空気下で行われるものの、それ以上 に還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程は記載され 15 ていない点 イ 相違点2 本件発明では、構成要件Cの脱酸素材は少なくとも非鉄系のものを含み、 かつ、包材内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換している構成と包 材内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換していない構成のいずれ 20 をも含むのに対し、乙12発明では、その請求項では酸素剤の種類の限定は ないものの、少なくとも具体的に記載された脱酸素剤は鉄系であり、かつ、 包材を密封する前に、窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換することを 必須としている点 ウ 相違点3 25 本件発明では、構成要件D の、少なくとも具体的に記載された脱酸素剤は鉄系であり、かつ、 包材を密封する前に、窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換することを 必須としている点 ウ 相違点3 25 本件発明では、構成要件Dに「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品 51 は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素 濃度が検出限界以下の条件下で、ミオグロビンが、本件ミオグロビン割合と なっている」と規定しているのに対し、乙12発明では、ミオグロビン割合 について何ら記載されていない点 他の相違点について 5 ア 以上の相違点に加えて、原告は、本件発明の対象が特定加熱食肉製品であ るのに対し、乙12発明は特定加熱食肉製品とはいえない点が異なり、また、 加熱食肉製品の構成を特定加熱食肉製品の構成とすることは容易に想到でき ず、発色剤を用いる特定加熱食肉製品の発明に対して被告が主張する発明を 適用することには阻害要因がある旨主張する。 10 イ 乙12公報には、対象となるローストビーフが特定加熱食肉製品である旨 明記されていない。また、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるか 否かは、肉の中心部の加熱時間によって定まるところ(前記 イ)、乙12公 報には、ローストビーフの中心部の加熱時間についての直接的な記載がない。 ウ 食肉の赤味を帯びた色は、発色剤が使用されていない場合、主として還元 15 型ミオグロビン、酸素化ミオグロビン、メトミオグロビンの割合によって定 まり、酸素の存在と経時等によってこれらが変化することが知られており (前記 ア)、特定加熱食肉製品であるローストビーフの色味も、この機序 によって定まるといえる。 他方で、発色剤が使用されていなければ、仮に乙12公報のローストビー 20 フが特定加熱食肉製品所定の加熱を超える加熱がされ、特 製品であるローストビーフの色味も、この機序 によって定まるといえる。 他方で、発色剤が使用されていなければ、仮に乙12公報のローストビー 20 フが特定加熱食肉製品所定の加熱を超える加熱がされ、特定加熱食肉製品に 属しないものであったとしても、乙12公報に記載されたローストビーフは 赤味を有していたことが認められる(乙12発明では、その実施例において、 色の劣化の評価にa値を用いることとした上で、「a値・・・が大きいほどス ライスされたローストビーフ2の赤みが強く、変色度合いが小さいことを意 25 味する。」(乙12【0032】)との記載があるから、保管前のローストビー 52 フが赤味を有しており、その維持が発明の課題であることが前提となってい るといえる。)から、その加熱の程度は、特定加熱食肉製品所定のものに近か ったことが推認できる。少なくとも、乙12公報のローストビーフが、上記 の肉色が定まる機序と異なる機序によって色味が決定されることを基礎付 ける事情は見受けられない。なお、メトミオグロビン還元酵素の存在下では、 5 いったんメトミオグロビンが生成しても、還元型ミオグロビンに変化するこ とがあるため、当業者は、メトミオグロビン還元酵素の有無に応じて、存在 する酸素の濃度、経時について同じ条件下でも色の変化に関する機序が異な るため、その肉の色の変化の態様が異なると想定することが推認できるとは いえるが、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるかによって、メト 10 ミオグロビン還元酵素の活性の有無が異なるとの技術常識があったとはい えない。かえって、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品のいずれであっても加 熱によりメトミオグロビン還元酵素が失活するとの知見があったことが認 められる(前記 ア)。 そうすると、乙12発明のローストビーフが特定加熱食肉製品 定加熱食肉製品と加熱食肉製品のいずれであっても加 熱によりメトミオグロビン還元酵素が失活するとの知見があったことが認 められる(前記 ア)。 そうすると、乙12発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であるか特 15 定加熱食肉製品であるかは不明であり、それが加熱食肉製品の可能性があっ たとしても、発色剤が用いられていないのであれば、ローストビーフの色の 変化に関する機序はそのローストビーフが特定加熱食肉製品であった場合 と異なるとはいえない。 エ 他方で、ローストビーフに発色剤が用いられる場合には、食肉が赤色を呈 20 する機序が異なるので、以下、乙12発明のローストビーフにおいて発色剤 が用いられていたか否かについて検討する。 発色剤を用いる場合には、上記の還元型ミオグロビン、酸素化ミオグロビ ン、メトミオグロビンの可逆的な割合の変化により肉色が定まるのと異なり、 一酸化窒素の配位という異なる機序で赤い色味が生じ、酸素を除去して冷暗 25 所において保存すると年単位で赤色が保持され、退色するにも酸素と光の両 53 方が必要という異なる効果を発揮する(前記 エ)。そうすると、発色剤を使 用するか否か及び利用条件は、一定期間経過後の肉色に関する実験の趣旨、 目的、評価に大きな影響を及ぼすといえる。しかし、乙12公報には、発色 剤の使用の有無に言及する記載はない。このことは、乙12公報に記載され た発明がローストビーフの色等の維持を課題としていることに照らせば、仮 5 に発色剤を用いているのであれば極めて不自然といえる。また、乙12公報 に記載された発明は、スライスされたローストビーフの品質保持のために用 いられる包装方法及び包装体に関するものであり(乙12【0001】)、本 件発明と同様、スライスされたローストビーフを流通させると、外気との接 発明は、スライスされたローストビーフの品質保持のために用 いられる包装方法及び包装体に関するものであり(乙12【0001】)、本 件発明と同様、スライスされたローストビーフを流通させると、外気との接 触面積が大きくなるため、ローストビーフの酸化が激しくなり、その結果、 10 消費者の手に渡るまでに色等を維持することが困難になること(乙12【0 003】)を課題とし、その解決方法として、前記のとおり、酸化の原因とな る包装内の気体を置換して、酸化をコントロールしてローストビーフの色等 を適切なものに維持して消費者にアピール(乙12【0007】参照)でき るようにするというものである。乙12公報では、その課題についても、解 15 決方法についても、もっぱら7日間程度の期間に関する外気との接触による 色味の劣化のみに言及されており、本来、発色剤を用いた加熱食肉製品であ れば、外気に加えて光の影響さえなければ年単位での色味の維持が期待でき ることを前提とした記載になっているとは認めがたい。これらの点を考慮す ると、当業者は、乙12公報に記載されたローストビーフには、発色剤は用 20 いられていないと理解するといえる。 オ 上記エの点につき、原告は、生肉に関する乙14公報には「炭酸ガスを発 生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によ って容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロ ビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変する。」との記載があること、 25 実際に原告の実験(甲152)でも、特定加熱ローストビーフの場合、窒素 54 でガス置換して脱酸素剤を用いると褐変したことを挙げて、当業者であれば、 乙12発明は加熱食肉製品のものであり、これを特定加熱食肉製品に当ては めればローストビーフは褐変して元に戻らなくなるこ 4 でガス置換して脱酸素剤を用いると褐変したことを挙げて、当業者であれば、 乙12発明は加熱食肉製品のものであり、これを特定加熱食肉製品に当ては めればローストビーフは褐変して元に戻らなくなることを理解すると主張 する。 しかし、乙14公報の原告が指摘する記載は生肉に関するものであり、乙 5 12発明は特定加熱食肉製品としての加熱又はそれ以上の加熱が行われて いる食肉に関するものである。加熱食肉製品の発色剤については、前記 エ のとおりのことが知られていたところ、当業者は、乙12発明と、乙14公 報の前記記載が前提としている生肉には、少なくとも各種酵素が失活してい ることなどの差異があることを理解するといえる。そうすると、当業者が、 10 生肉につき上記記載があることをもって、乙12発明につき発色剤を用いて いない限り窒素でガス置換して脱酸素剤を用いると褐変するから乙12発 明は発色剤を用いていると考えるとはいえない。 また、原告の実験結果(甲152)を検討すると、用いられた脱酸素剤の 種類、ガス置換の程度などの詳しい実験条件が明示されておらず、乙12発 15 明の実施例と直ちに比較することはできない。また、同実験結果によっても、 特定加熱ローストビーフで窒素置換し、脱酸素剤を用いたものについて、2 日経過したものと4日経過したものを比べると、4日経過したものの方がa 値が改善していることが認められる。そうすると、原告の上記実験結果は、 当業者であれば、特定加熱食肉製品において窒素置換をするとローストビー 20 フは褐変して元に戻らなくなることを理解しているという原告の主張に沿 わない結果を示しているものといえる(なお、本件発明は、特定加熱食肉製 品のローストビーフについてガス置換後に脱酸素剤を投入する構成を含む ものであった。本件明細書によれば、鉄系脱酸 いう原告の主張に沿 わない結果を示しているものといえる(なお、本件発明は、特定加熱食肉製 品のローストビーフについてガス置換後に脱酸素剤を投入する構成を含む ものであった。本件明細書によれば、鉄系脱酸素剤のみを用いると褐変し、 非鉄系脱酸素剤を用いると褐変しない理由について、酸素の減少速度が緩や 25 かであることを根拠としているところ(【0035】)、ガス置換すれば急速 55 に酸素濃度が低下することは明らかである。本件発明は、特定加熱食肉製品 であるローストビーフについて、窒素置換して脱酸素剤を投入しても、ロー ストビーフは褐変して元に戻らないということはないことを前提にしてい るといえる。)。 カ 以上のとおりであって、乙12発明で用いられているローストビーフにつ 5 いてこれが特定加熱食肉製品であることについての直接的な記載はない。も っとも、乙12発明のローストビーフは発色剤が用いられていないと認めら れる。そして、仮に当該ローストビーフについての加熱が特定加熱食肉製品 所定のものを上回り、特定加熱食肉製品に当たらず、この点が相違点となる としても、その加熱の程度は内部に赤味を残す程度のものであり、乙12発 10 明のローストビーフも特定加熱食肉製品のローストビーフと同様に、技術常 識から、その肉色は、主として還元型ミオグロビン、酸素化ミオグロビン、 メトミオグロビンの割合によって定まり、酸素の存在と経時等によってこれ らが変化するものであると当業者は理解することから、当業者は、乙12発 明のローストビーフについて、同じローストビーフのうちの特定加熱食肉製 15 品とすることを容易に想到することができたといえる。 次に、本件発明が包装状態での色合いを問題にしているのに対し、乙12発 明の実施例では開封30分後の色合いを検討していることについて検 製 15 品とすることを容易に想到することができたといえる。 次に、本件発明が包装状態での色合いを問題にしているのに対し、乙12発 明の実施例では開封30分後の色合いを検討していることについて検討する。 乙12公報には、発明の課題として、「消費者の手に渡るまで、色、臭い、味 などを維持することが困難になる。」(乙12【0003】)、「ブロック状態を維 20 持しているため、スライスされたローストビーフのスライス面が外部から見え ず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者にアピールできない。」(乙12 【0007】)との記載があることからすると、乙12発明は、ローストビーフ が、消費者への訴求を問題にしていると認められる。そして、一般に、消費者 は店頭において開封することなく商品を購入するのであるから、乙12発明は、 25 未開封状態での色の維持をも問題にしていると理解できる。乙12発明の実施 56 例は開封後30分後の色合いを評価根拠としているが、これは、包材の影響を 受けずに測定を容易に行える開封後の色合いをもって開封前の色合いの評価 根拠としているものといえる。開封30分後の測定としたことにより、還元型 ミオグロビンがオキシミオグロビンに変化してより赤色に変化していること から、開封前の色合いは、上記の実験結果ほど良好なものでなかった可能性は 5 あるものの、開封後に良好な色合いを得たものの方が開封前も同様であったこ とを前提に、上記観点からこのような評価方法をとったことがうかがえ、また、 ことさらにこれを否定すべき事情も見受けられない。そうすると、乙12発明 も本件発明と同様に、開封前の色合いも念頭に置いたものであり、当業者もそ のことを前提に発明を理解するといえるから、乙12公報において、開封後の 10 色調を問題としている点が本件発明と乙12 2発明 も本件発明と同様に、開封前の色合いも念頭に置いたものであり、当業者もそ のことを前提に発明を理解するといえるから、乙12公報において、開封後の 10 色調を問題としている点が本件発明と乙12発明の相違点になるとは認めら れない。 相違点1について ア 本件発明の特許請求の範囲には、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビ ンに酸素化する工程が記載されているところ、その具体的な手法については 15 何ら限定がされていない。そして、本件明細書には、酸素化について、「酸素 含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミ オグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなることを意 味する。」(【0022】)と記載されている。そうすると、本件発明における 酸素化とは、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素含有気体中に暴露する 20 工程であるといえる。 本件発明は、特定加熱食肉製品を優れた色調を維持したまま保管すること を目的とする。そして、本件明細書の記載によれば、本件ミオグロビン割合 になっていることが保存状態における優れた色調とされており(【0044】 参照)、酸素化の工程が、ミオグロビンの割合を変化させるものとされてい 25 る(【0022】)。また、本件発明の最終的な目的が、ミオグロビン割合が構 57 成要件D所定の酸素濃度が検出限界以下の条件下で本件ミオグロビン割合 になるようにすることにあるところ、酸素濃度が検出限界以下の条件下での ミオグロビン割合が、密封前の酸素化の量に影響を受ける。これらの本件明 細書の記載や本件発明の技術的意義からすると、本件発明における酸素化の 工程は、それによりスライスされた特定加熱食肉製品のミオグロビン割合が 5 変化することによって、その後の脱酸素の工程とあいまって、同製品が所望 発明の技術的意義からすると、本件発明における酸素化の 工程は、それによりスライスされた特定加熱食肉製品のミオグロビン割合が 5 変化することによって、その後の脱酸素の工程とあいまって、同製品が所望 の色調となるような、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素含有気体中に 暴露する工程をいうと解される。 被告は、酸素化させる工程について一定の時間(少なくとも15分ない し30分間以上)、酸素含有気体中に暴露することと解するべきであると主 10 張する。しかし、本件明細書には、「酸素化の処理条件については、使用する 肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定す ることができる。」(【0024】)との記載がある。本件明細書の記載によっ ても、本件発明では、適切な酸素化のための暴露時間は種々の条件によって 変わることは当然に予定されており、また、各種条件に応じて暴露時間が変 15 化することは当業者にも明らかであるといえる。そして、本件明細書には、 どのような肉、どのような条件下における構成要件Cの工程を前提にしても、 15分ないし30分間以上の暴露時間が必要であることを示唆する記載が あるものではなく、明細書の具体的な時間に関する記載は、特定の条件の場 合の例を示したものであると解するのが相当である。被告の主張は採用でき 20 ない。 以上のとおり、本件発明の酸素化工程は、それによりスライスされた特定 加熱食肉製品のミオグロビン割合が変化することによって、その後の脱酸素 の工程とあいまって、所望の色調となるような、スライスされた特定加熱食 肉製品を酸素含有気体中に暴露する工程である。また、この酸素に暴露する 25 時間は、特定加熱食肉製品の性質、用いる非鉄系脱酸素剤の性質に依存し、 58 上記の工程といえるものであればよい。ここで、乙12公 含有気体中に暴露する工程である。また、この酸素に暴露する 25 時間は、特定加熱食肉製品の性質、用いる非鉄系脱酸素剤の性質に依存し、 58 上記の工程といえるものであればよい。ここで、乙12公報には、当該ロー ストビーフをスライスし、トレイに並べることが記載されているが、これが 前記のとおりのものである本件発明の酸素化工程であることが記載されて いるものではない。当該ローストビーフの種類、用いる脱酸素剤の種類、量 等によっては、その後の脱酸素の工程とあいまって当該ローストビーフが所 5 望の色調となるには乙12公報記載の工程を空気下で行うのみでは足りず に、さらに空気等の酸素含有気体に触れさせる必要がある場合があり得る。 そうすると、本件発明の酸素化工程が乙12公報に記載されているとまでは 認められないから、乙12公報記載の上記工程とは別に、酸素含有気体に暴 露する時間を設ける構成を当業者が容易に想到することができるか否かに 10 ついて検討する。 イ 乙13公報(乙13)には、以下の記載がある。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 冷気を用いてミオグロビンを含む食品を貯蔵する方法において、 15 箱体の内部に収容した前記食品に対して冷気を供給し前記食品を冷却す るとともに前記食品の酸化を維持する期間を設け、その後、前記箱体内の酸 素を減少させることを特徴とする食品の貯蔵方法。 【請求項2】 前記食品の酸化を維持する期間は、食品が凍結するまでとすることを特徴 20 とする請求項1に記載の貯蔵方法。 【請求項3】 前記食品の酸化を維持する期間に前記箱体内部の酸素濃度を増加させる ことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯蔵方法。 【発明の詳細な説明】 25 【技術分野】 59 【0001】 本発明の実施形 化を維持する期間に前記箱体内部の酸素濃度を増加させる ことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯蔵方法。 【発明の詳細な説明】 25 【技術分野】 59 【0001】 本発明の実施形態は、食品の貯蔵方法に関する。 【背景技術】 【0002】 冷蔵庫などに貯蔵される食品の劣化要因として、空気中に存在する酸素に 5 よる食品の酸化が知られている。そこで、食品を貯蔵する貯蔵空間の酸素を 減少させることで、食品の酸化を抑えて食品の鮮度を維持できることが知ら れている(例えば、特許文献1参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 10 【0003】 【特許文献1】 特開2004-167472号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 15 肉や赤身の魚などのミオグロビンを含む赤色の食品では、一般的に、鮮や かな赤色であるほど新鮮であるとされ人々に好まれるが、上記のような冷蔵 庫でミオグロビンを含む食品を保存する場合、貯蔵空間に投入された食品が 冷却される前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食品自身の鮮度は維持でき るものの、食品が青みを帯びた赤色(紫赤色)に変色することを本発明者は 20 見出した。 【0005】 そこで、本発明は、ミオグロビンを含む赤色の食品の鮮やかな赤色を維持 しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる食品 の貯蔵方法を提供することを目的とする。 25 【課題を解決するための手段】 60 【0006】 本発明の実施形態に係る食品の貯蔵方法は、冷気を用いてミオグロビンを 含む食品を貯蔵する方法において、箱体の内部に収容した前記食品に対して 冷気を供給し前記食品を冷却するとともに前記食品の酸化を維持する期間 を設け、その後、前記箱体内の酸素を減 気を用いてミオグロビンを 含む食品を貯蔵する方法において、箱体の内部に収容した前記食品に対して 冷気を供給し前記食品を冷却するとともに前記食品の酸化を維持する期間 を設け、その後、前記箱体内の酸素を減少させることを特徴とする。 5 【発明を実施するための形態】 【0008】 以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。 【0017】 酸素濃度調節装置70は、図2及び図3に示すように、収納容器60の内 10 部空間の酸素を減少させる酸素減少手段72と、収納容器60の内部空間の 酸素を増加させる酸素増加手段74とを備える。 【0032】 このような構成の冷蔵庫10において、使用者が操作パネル36の操作ス イッチ37を操作することで「赤みモード」を選択すると、制御部34は、 15 「赤みモード」を実行する。ここで「赤みモード」とは、肉や赤身魚などの ミオグロビンを含み赤身の食品Mを保存する貯蔵方法であって、食品Mの鮮 やかな赤色を維持又は向上させるための貯蔵方法である。 【0035】 次いで、制御部34は、タイマ66によって測定される収納容器60内に 20 食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達する まで、酸素減少手段72を停止させた、あるいは酸素減少手段停止72の停 止を維持した状態で収納容器60内の食品Mを冷却することで、収納容器6 0内の酸素濃度を低下させずに食品Mが収納容器60内の酸素によって酸 化しやすい状態を維持しつつ食品Mを冷却する(図5のステップS2、ステ 25 ップS3参照)。つまり、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時 61 間に達するまでの期間は、食品Mの酸化を維持する期間に相当する。 【0036】 なお、上記した所定時間は、収納容器60内に投入される食品M 納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時 61 間に達するまでの期間は、食品Mの酸化を維持する期間に相当する。 【0036】 なお、上記した所定時間は、収納容器60内に投入される食品Mの凍結が 予想される時間以上に設定されることが好ましい。 【0037】 5 そして、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間が経過すると、 収納容器60内の酸素を減少させ始めるための所定条件を満たしたとして、 その後、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少さ せ始める(図5のステップS4参照)。そして、収納容器60内の酸素濃度が 所定値以下になるまで、あるいは、酸素減少手段72の動作時間が所定時間 10 に達するまで酸素減少手段72を動作させ、その後、酸素減少手段72を停 止する(図5のステップS5参照)。また、酸素減少手段72の動作を開始し た後も第2冷凍室46内が所定温度になるように継続して冷却されている。 【0038】 以上のように、本実施形態の食品の貯蔵方法では、収納容器60内に食品 15 Mが投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器60内の食品Mを冷却 するとともに、酸素減少手段72を停止させ収納容器60内に貯蔵された食 品Mの酸化を維持する期間を設けている。 【0039】 これにより、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫 20 赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が酸化され鮮 やかな赤色を呈するオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)に変化し、食 品Mの色彩がより鮮やかな赤色となり、食品Mの赤みが向上する。また、食 品Mに含まれるミオグロビンのうち、収納容器60に投入される前から既に 酸化状態にあるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)は、還元状態のミ 2 鮮やかな赤色となり、食品Mの赤みが向上する。また、食 品Mに含まれるミオグロビンのうち、収納容器60に投入される前から既に 酸化状態にあるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)は、還元状態のミ 25 オグロビン(MbFe(II))との間で可逆的に酸化還元反応が起こりえるが、 62 上記のように酸素減少手段72を停止させ収納容器60内の酸素分圧がほ ぼ一定に維持されているため、オキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の 還元反応を抑えて収納容器60内に貯蔵された食品Mの鮮やかな赤色を維 持することができる。 【数1】 5 【0040】 そして、所定条件を満たしてから酸素減少手段72を動作させ収納容器6 0内の酸素を減少させるため、収納容器60内に投入された食品Mがある程 度冷却されオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を起こりに 10 くくしてから収納容器60内の酸素を減少させることができる。そのため、 収納容器60内の酸素が減少しても、食品Mに含まれるオキシミオグロビン (MbFe(II)O2)が還元されて青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還 元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が生成されにくくなり、食品M の鮮やかな赤色を維持することができる。 15 【0041】 しかも、所定条件を満たした後では、収納容器60内の酸素が減少してい るため、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が上記 式(1)に示すような褐色を呈するメトミオグロビン(met MbFe(I II))に変化する、いわゆるメト化を抑えることができ、食品Mの劣化を抑え 20 鮮度を維持することができ長期保存が可能になる。 【0042】 特に、本実施形態では、収納容器60を配設する第1冷凍室44内の温度 が、食品Mを凍結さ えることができ、食品Mの劣化を抑え 20 鮮度を維持することができ長期保存が可能になる。 【0042】 特に、本実施形態では、収納容器60を配設する第1冷凍室44内の温度 が、食品Mを凍結させることができる0℃以下に設定されている場合におい て、収納容器60内に投入された食品Mが凍結するまで酸素減少手段72を 25 63 停止させた状態で収納容器60内の食品Mを冷却し、食品Mの凍結後に酸素 減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めるこ とが好ましい。このような場合であると、食品組織が凍結し食品Mに含まれ るオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)がほぼ還元されることがない状 態になってから収納容器60内の酸素を減少させることができ、より一層、 5 食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されにく くなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食 品Mの鮮度を維持することができる。 【実施例】 【0048】 10 上述した「赤みモード」によって冷凍貯蔵された牛肉の色度を測定し、貯 蔵性能評価試験を行った。 【0049】 試験では、実施例として、第1冷凍室44に配設した収納容器60内に牛 肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻 15 T1まで酸素減少手段72を停止(OFF)させ、その後、時刻T1から時 刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器 60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。 【0050】 また、比較例1として、収納容器60内に食品Mを貯蔵した直後からT2 20 (=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段 72を停止(OFF)させ て、収納容器60内 また、比較例1として、収納容器60内に食品Mを貯蔵した直後からT2 20 (=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段 72を停止(OFF)させ て、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに牛肉を冷凍貯蔵した。 【0051】 比較例2として、収納容器60内に牛肉を貯蔵した直後からT2(=1週 25 間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を動 64 作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉 を冷凍貯蔵した。 【0052】 比較例3として、収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間) 経過するまでつまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を動作(O 5 N)し、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72 を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに雰囲気 下で牛肉を冷凍貯蔵した。 【0053】 なお、実施例、比較例1~3では、いずれも、第1冷凍室44内の温度を 10 -20度に設定した。 【0054】 上記のような実施例及び比較例1~3の各方法により貯蔵された牛肉に ついて、収納容器60内に貯蔵してから1時間(T1)経過したもの、及び 収納容器60内に貯蔵してから1週間(T2)経過したもののそれぞれにつ 15 いて、分光測色方法(JIS Z8722)により色を測定した。結果を下 記表1に示す。 【表1】 65 【0055】 実施例及び比較例1と、比較例2及び3とを比較すると明らかなように、 収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1)経過するまで酸素減 少手段72を停止(OFF)し収納容器60内の酸素濃度を維持することで、 鮮やかな赤色を維持したまま牛肉が凍結したが、収納容 うに、 収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1)経過するまで酸素減 少手段72を停止(OFF)し収納容器60内の酸素濃度を維持することで、 鮮やかな赤色を維持したまま牛肉が凍結したが、収納容器60内の酸素濃度 5 を低下させると紫赤色に変色した状態で牛肉が凍結した。 【0056】 また、実施例では、収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1) 経過後から酸素減少手段72を動作(ON)して収納容器60内の酸素を減 少させることで、鮮やかな赤色を維持したまま牛肉を1週間凍結保存するこ 10 とができたが、比較例1では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化し、比較 例2では、紫赤色に変色した状態を維持したまま牛肉が1週間凍結保存され、 比較例3では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化しており、各比較例1~ 3では牛肉が褐色あるいは紫赤色に変色したが、本実施例では鮮やかな赤色 を維持したまま冷凍保存が可能となっていた。 15 ウ 以上によれば、乙13発明は、肉などのミオグロビンを含む赤色の食品を 冷蔵庫で貯蔵する場合、食品の冷却前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食 品が紫赤色になるため、赤色を維持するために、冷却時に酸素減少手段を一 時停止して酸素化を維持する期間を設け、これにより、還元型ミオグロビン がオキシミオグロビンに変化することで食品の色彩がより鮮やかな赤色に 20 なり、その後、酸素を減少させて保存することにより、貯蔵中も新鮮である と人々に好まれる鮮やかな赤色を維持することができるという発明と認め られる。(乙13【0004】~【0006】、【0038】、【0039】)。 したがって、乙13発明は、還元型ミオグロビンが大量に含まれることによ って赤紫色になっている肉について、貯蔵に先立ち、酸素にさらすことによ 25 って、還元型ミオグロビン 038】、【0039】)。 したがって、乙13発明は、還元型ミオグロビンが大量に含まれることによ って赤紫色になっている肉について、貯蔵に先立ち、酸素にさらすことによ 25 って、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに変化させ、その後の酸素 66 を減少させる工程等とあいまって、当該肉が所望の色調になるものという工 程を有するといえる。 エ 乙12公報には、そこに記載された発明の課題として、「消費者の手に渡 るまで、色、臭い、味などを維持することが困難になる。」(乙12【000 3】)、「ブロック状態を維持しているため、スライスされたローストビーフ 5 のスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者 にアピールできない。」(乙12【0007】)との記載があり、消費者への訴 求を問題として、その色調を問題とし、具体的に赤味の強さを問題としてい る。また、本件出願日当時、食肉の色は、ミオグロビンの割合に左右され、 家畜の屠殺後、食肉は還元型ミオグロビンのために紫赤色になり、空気にさ 10 らされて、還元型ミオグロビンが酸素と結合すると、食肉が鮮やかになるこ とが技術常識であり(前記 ア))、このことは、その機序から、ローストビ ーフにも生肉も妥当し、それらが技術常識であったと認められる。 乙12発明の課題が上記のとおりのものであったところ、同じ食肉の分野 であり、ローストビーフにおけるのと同じ技術常識を適用することができる 15 乙13発明について、これを乙12発明に組み合わせて相違点1に係る本件 発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたと認められ る。 なお、乙13公報では、特許請求の範囲には、冷気を用いた貯蔵方法とさ れている一方、その実施例は、最終的な貯蔵を冷凍によって行っている。し 20 かし に想到することができたと認められ る。 なお、乙13公報では、特許請求の範囲には、冷気を用いた貯蔵方法とさ れている一方、その実施例は、最終的な貯蔵を冷凍によって行っている。し 20 かし、特許請求の範囲には、文言上、冷凍による貯蔵のほか、冷蔵による貯 蔵も技術的範囲としており(実施例においても、酸素化の工程は、冷蔵状態 で行っている。)、冷凍による貯蔵でなければならないことなどが記載されて いるものではない。また、ミオグロビンの変化に関係する相違点1に係る本 件発明の工程の組合せの場面において、貯蔵条件は関係ないから、乙13公 25 報の実施例の貯蔵が冷凍により行っているとしても、乙12発明に、乙13 67 公報に記載された発明を組み合わせることは容易に想到することができた との上記判断を左右するものではないといえる。 以上によれば、相違点1に係る本件発明の構成は、当業者が容易に想到す ることができたというべきである。 相違点2について 5 ア 乙14公報には、以下の記載がある。 【特許請求の範囲】 生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに実 質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存することを特徴と する生肉の保存方法 10 【発明の詳細な説明】 本発明は生肉の保存方法に関するものである。 特に生肉の鮮度の指標となる赤味の保持効果を高めた発明に関するもの である。 更に詳しくは、脱酸素剤効果によって生肉の変質を防止するとともに従来、 15 脱酸素剤による保存方法の欠点であった、無酸素状態に置くことでひき起こ されていた生肉が赤紫色あるいは赤黒く変色することを防止し、無酸素状態 下においてもあざやかな赤味を保持する生肉の保存方法に関する発明であ る。 畜肉や魚肉は赤色を呈しているが に置くことでひき起こ されていた生肉が赤紫色あるいは赤黒く変色することを防止し、無酸素状態 下においてもあざやかな赤味を保持する生肉の保存方法に関する発明であ る。 畜肉や魚肉は赤色を呈しているが、この赤い色はミオグロビンやヘモグロ 20 ビンによるもので、一般にミオグロビンが80~90%を占めている。ミオ グロビンは空気中の酸素と結合してオキシミオグロビンの形でも存在する が、肉類の鮮度が落ちるとオキシミオグロビンは酸化されて褐色のメトミオ グロビンに変化し、肉は褐色を呈するようになる。 本発明は肉類を脱酸素剤とともに密封するものであり、本発明方法の場合 25 は包装容器を開封せずに、肉類の赤色を保持することが可能である。 68 従来、肉類は流通経路においては空気中の酸素と容易にふれる様な包装方 法が採用されているので、肉類の変色または退色現象がおきる場合が多かっ た。 例えばチルドビーフは牛肉のブロックをEVA/PVDC/EVAの共 押出しフィルムで収縮パックする方法が採用されているが、この場合はパッ 5 ク内に残存する酸素またはフィルムを透過して侵入して来る空気中の酸素 により変色または退色がおこる欠点があった。 肉の赤色を保持させる方法としては発色剤として硝酸塩を用いる方法が あるが、この方法は化学物質を食品に添加するので好ましい方法ではない。 本発明者等は肉類を脱酸素剤と共に密封し、肉類の退色を防止する方法につ 10 いて研究を行なった結果、炭酸ガスを発生させながら、容器中の酸素濃度を 低下させることによって、密封した場合でも肉の赤味を保持出来ることを発 見して本発明を完成するに至った。 本発明において、肉類は特に限定されるものではなく、例えばとり、豚、 牛肉等の畜肉、またはマグロ、カツオなどの魚肉等の食肉を意味するもので 味を保持出来ることを発 見して本発明を完成するに至った。 本発明において、肉類は特に限定されるものではなく、例えばとり、豚、 牛肉等の畜肉、またはマグロ、カツオなどの魚肉等の食肉を意味するもので 15 ある。 従来の脱酸素剤による生肉の保存方法は特開昭51-104061、特公 昭54-34822、特開昭58-158129、特開昭58-18303 3、特開昭54-41355、などに記載されているが、いずれも脱酸素効 果によって、生肉の赤味成分であるミオグロビンを還元型に保持し、開封し 20 て空気中の酸素に曝すことで還元型ミオグロビンの赤紫色から酸素型ミオ グロビンの鮮紅色に発色させる方法である。 炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、C O2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生 肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変する。 25 そして脱酸素した後、生肉中のメトミオグロビンはメトミオグロビン還元 69 酵素の働きで還元され、還元型ミオグロビンに変化する。還元型ミオグロビ ンに変化した生肉はメトミオグロビンの褐色から還元型ミオグロビンの色 調である赤紫色へと変色し、脱酸素包装中において、赤紫色の色調を保持す ることになる。 しかし、本発明の特徴である炭酸ガス発生をともなう脱酸素剤を使用した 5 場合、従来と全く異なる色調の変化が生じることが見い出された。 すなわち、脱酸素剤によって酸素が吸収され、容器内の酸素濃度が低下し ても、同時に炭酸ガス濃度が高まってゆく中では生肉の褐変現象が生じにく く、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色 調に近い赤味を保持することが出来ることである。 10 この生肉の赤味は脱酸素後においてもほとんど変化せず、 変現象が生じにく く、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色 調に近い赤味を保持することが出来ることである。 10 この生肉の赤味は脱酸素後においてもほとんど変化せず、長期保存中にお いても、還元型ミオグロビンの赤紫色に変化することがなく赤味の強い色調 を保持した。 また容器を開封し、空気中の酸素に曝しても通常の脱酸素剤の時と同様、 生肉は酸素型ミオグロビンの鮮紅色を保持し、炭酸ガス発生型と通常を脱酸 15 素剤との差はなかった。 ところで、公知文献、特開昭54-41355には炭酸ガス発生型脱酸素 剤の場合の記載があり、炭酸ガスの静菌効果によって鮮度の保持がなされて いる。しかし、色保持に関しては本発明の如き特別顕著な効果は示されてい ない。 20 本発明者らはこの点について疑問を持ち、該発明について種々の検討を行 なった結果、生肉の色保持に関し、本発明方法との間に重要な相違点を見い 出した。 特開昭54-41355に記載されている炭酸ガス発生型脱酸素剤は、酸 素吸収開始と同時に炭酸ガスの発生が行なわれるものではなく、ほぼ容器内 25 の酸素が吸収された後に炭酸ガスが発生する型であり、本発明に使用する脱 70 酸素剤とは機能が全く異なるものであった。 該発明のCO2発生型脱酸素剤を生肉の保存に使用すると、始めに酸素の みが吸収され、容器内の酸素濃度が低下するとともに、生肉の褐変が生じ、 褐変後の生肉を炭酸ガスに曝しても、もはや色もどりをせず、全く炭酸ガス の色保持効果が認められなかった。 5 本発明方法の場合のCO2発生型脱酸素剤は、02を吸収し始めると同時に CO2を発生する型であり、生肉の褐変が生じる02濃度に達する前にCO2 の発生が生じる型である。また酸素の吸収量に対するCO2の発生量は02吸 収 のCO2発生型脱酸素剤は、02を吸収し始めると同時に CO2を発生する型であり、生肉の褐変が生じる02濃度に達する前にCO2 の発生が生じる型である。また酸素の吸収量に対するCO2の発生量は02吸 収量1モル当り、0.2モル以上であるが、好ましくは0.5から2モルで ある。2モル以上では容器が著しく変形するなどの弊害を生じるので好まし 10 くない。 本発明においては脱酸素剤としては例えば鉄粉または亜二チオン酸塩、亜 硫酸塩、第一鉄塩などの還元性の無機塩、ヒドロキノン、カテコール等で例 示されるポリフェノール類、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びその塩な どで例示される還元性の多価アルコール、からなる群から選ばれる還元剤を 15 主たる有効成分とするCO2発生型の脱酸素剤が使用される。 本発明において用いられる脱酸素剤は脱酸素剤組成物を通気性包材に密 封したものである。 この場合通気性包材としては有孔プラスチックフィルムまたはこれと紙、 布、不織布またはこれらの積層体から選ばれる通気性フィルムまたはシート 20 とを積層した包材が用いられる。 本発明において、非通気性の容器としては非通気性の包材からなる容器ま たは気密容器が用いられる。この場合の非通気性包材は通常、酸素透過度1 00ml/㎡・atom・d(20℃)以下のものが用いられる。例えば塩 化ビニリデンまたは塩化ビニリデンを被覆またはラミネートしたフィルム 25 は好適に用いられる。 71 フィルムは二軸延伸したもの、又はそれをラミネートしたものが強度の点 で好ましい。非通気性包材の密封は通常、ヒートシールによるが、封止具を 用いてもよい。気密容器としては成形およびヒートシール可能なプラスチッ クトレイと蓋材からなり、蓋材を非通気性フィルム又はシートを用いて密封 シールするもの、又は は通常、ヒートシールによるが、封止具を 用いてもよい。気密容器としては成形およびヒートシール可能なプラスチッ クトレイと蓋材からなり、蓋材を非通気性フィルム又はシートを用いて密封 シールするもの、又はプラスチックもしくは金属製密閉コンテナが用いられ 5 る。 また本発明方法の場合は肉類は例えば10℃以下の低温で保存されるの が普通である。従ってこの様な温度においても効果を発揮する様な脱酸素剤 を適宜選択して使用することが必要である。 以上の様に本発明方法によって保存することによって赤色を有する肉類 10 を得ることが可能である。 次に実施例によって本発明を更に詳しく説明する。 実施例 1 生の牛ひき肉100gをプラスチックトレイに入れ、エージレスG-20 0(三菱瓦斯化学製CO2発生型脱酸素剤)と共に非通気性のKON/PE 15 の包材で密封包装し、5℃で冷蔵保存した。 スタートの包装内の02量は150ccであった。 比較例 1 エージレスG-200のかわりにエージレスS-200(三菱瓦斯化学製 CO2を発生しない脱酸素剤)を用いた以外は実施例1と同様にして実施し 20 た。 比較例 2 脱酸素剤を使用しない以外は実施例1と同様にして実施した。それぞれの 結果を表-1、表-2に示した。 72 表-1より本発明方法の実施例1が色、風味ともに良好に保存出来ること がわかる。CO2を発生しない脱酸素剤区の比較例1も風味の保持は出来る が色の保持が出来ないことがわかる。又、包装内のガス分析結果を見ると比 5 較例2はO2がどんどん低下し7日で0.1%になっているが、これは肉が 腐敗しO2を消費したためである。 73 イ 上記によれば、乙14発明は、生肉の保存方法に係る発明であり、炭酸ガ スを発生する脱酸素剤等を使用した 低下し7日で0.1%になっているが、これは肉が 腐敗しO2を消費したためである。 73 イ 上記によれば、乙14発明は、生肉の保存方法に係る発明であり、炭酸ガ スを発生する脱酸素剤等を使用した場合(実施例で炭酸ガスを発生させる脱 酸素剤として用いられたエージレスG-200は非鉄系の脱酸素剤である (乙30)。)、いったん生肉のミオグロビンはメトミオグロビンに変化し、 その後、メトミオグロビン還元酵素によって還元型ミオグロビンに変化し、 5 そのまま赤紫色の色調を保持することが知られていたところ、炭酸ガスを発 生させる脱酸素剤を用いると、酸素濃度が低下しても同時に炭酸ガス濃度が 高まっていく中では、生肉の褐色現象(メトミオグロビンへの変化)が生じ にくく、オキシミオグロビンの色調である鮮やかな赤色を保持することがで きるとする発明であると認められる。 10 ここで、乙12発明は、ローストビーフのスライス面につき、スライス直 後の色味は、外気と接触することによって酸化されてしまい、望ましい赤い 色調等が保持できなくなることを課題とし、その解決手段として、ロースト ビーフを脱酸素剤と共に酸素ガスバリア性材料からなる容器に配置し、容器 内を窒素ガス及び(又は)二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後に、容器を密 15 封し、容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持されるようにするもの である(乙12【0011】)。これらによれば、乙12発明において脱酸素 剤を同封するのは、換気が不十分であったとしても酸素を除去できるように し、また、いったん空気を置換して酸素が除去された後、再び包装内に酸素 が侵入してもこれを除去できるようにすることを目的にするものであると 20 認められる。したがって、乙12発明における脱酸素剤について求められて いる機能は酸素を除去できるという 後、再び包装内に酸素 が侵入してもこれを除去できるようにすることを目的にするものであると 20 認められる。したがって、乙12発明における脱酸素剤について求められて いる機能は酸素を除去できるというところにあり、その機能を果たすのであ れば、その同封の目的とする効果が変わるものでなく、その組成の違いに着 目されるものではないといえる。 他方、乙14発明によれば、当時、食肉の分野において、非鉄系の脱酸素 25 剤が用いられていた。また、非鉄系脱酸素剤は、食肉製品の異物混入対策と 74 して行われる金属探知機に反応しないという利点もあった(乙22、23、 弁論の全趣旨)。さらに、乙14公報によれば、その実施例1との比較(表‐ 1)において、生肉に関してではあるが、その保存に、非鉄系の脱酸素剤を 用いた方が鉄系の脱酸素剤を用いるよりも、赤味を維持できるとの結果が示 されている。 5 乙12発明において脱酸素剤について求められていた機能は酸素を除去 できるというものであったところ、同じ食肉の分野において、上記のとおり の技術等が知られていたのであるから、当業者は、少なくとも乙12発明の 窒素ガス又は(及び)二酸化炭素ガスに置換するという工程を維持したまま、 鉄系の脱酸素剤に代えて非鉄系の脱酸素剤のみを用いることは、当業者が容 10 易に想到することができたというべきである。本件発明は、包材内を窒素ガ ス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換している構成と包材内を窒素ガス又は 二酸化炭素ガス雰囲気に置換していない構成のいずれをも含むものである から、当業者は、少なくとも、乙12発明の脱酸素剤を非鉄系脱酸素剤にし て、前者の構成とすることは容易に想到することができたといえる。 15 なお、乙12公報には、二酸化炭素ガスへの置換と脱酸素剤の封入を併用 する構成を含む発明 発明の脱酸素剤を非鉄系脱酸素剤にし て、前者の構成とすることは容易に想到することができたといえる。 15 なお、乙12公報には、二酸化炭素ガスへの置換と脱酸素剤の封入を併用 する構成を含む発明が記載されているのであるから、脱酸素剤によって二酸 化炭素が発生することが乙12発明の鉄系脱酸素剤を二酸化炭素が発生す る非鉄系脱酸素剤に代えることを阻害するとはいえない。 相違点3について 20 本件発明は、酸素濃度の検出限界以下の条件下におけるミオグロビン割合を 本件ミオグロビン割合と規定している。 本件発明の課題は、特定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優 れた肉色を維持することにあり(【0008】)、その解決手段として、酸素化す る工程、その後、ガスバリア性のある包材で製品と非鉄系脱酸素剤を密封する 25 という手順で処理すると、酸素濃度が検出限界以下に至ったときに、本件ミオ 75 グロビン割合になり、望ましい赤の色調を呈するというものである(【000 9】)。そうすると、方法の発明である本件発明における課題解決のための手段 は、酸素化及びその後のガスバリア性のある包材で製品と非鉄系脱酸素剤を密 封するという工程にあるといえる。上記工程を行う者は、特定加熱食肉製品に 応じて酸素化の時間、包材の容量等の選択、脱酸素剤の種類、量の選択等をす 5 ることはできるが、酸素濃度が検出限界以下になった時のミオグロビン割合自 体を直接コントロールするものではない。酸素濃度が検出限界以下になった際 に本件ミオグロビン割合になっていることは、本件発明で定められた工程を行 った場合のうち、本件発明の実施といえる場合を規定したものと理解すること ができる。 10 前提事実 で認定したとおり、本件出願日当時、食肉の色味については食肉 のミオグロビ 明で定められた工程を行 った場合のうち、本件発明の実施といえる場合を規定したものと理解すること ができる。 10 前提事実 で認定したとおり、本件出願日当時、食肉の色味については食肉 のミオグロビンの割合に左右され、還元型ミオグロビンの割合が多いと赤紫色 になり、オキシミオグロビンの割合が多いと消費者への訴求の観点から望まし い赤色になり、メトミオグロビンの割合が多いと褐色になってしまうこと、メ トミオグロビンの割合が50%よりも多くなってしまうと明瞭に色調が劣化 15 していると判断されてしまうことが技術常識になっていた。したがって、メト ミオグロビンの割合をできるだけ低い状態に抑え、オキシミオグロビンの割合 をできるだけ高く維持することが、消費者等へ訴求する観点からは望ましいこ とは技術常識になっていたと認められる。 本件明細書には、実施例において、オキシミオグロビンが12%以上、メト 20 ミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上を満たすことに ついて、それが望ましい割合であると記載されている。もっとも、それらの数 値について、何らかの臨界的意味を示す記載はないし、これらの数値が変動し た場合に前記発明の課題の達成ができなくなることを示す記載もない。他方、 前記のとおり、オキシミオグロビンの割合がより多く、メトミオグロビンの割 25 合がより少ない方が、色調の観点からはより望ましいことは技術常識であった。 76 当業者は、ローストビーフのオキシミオグロビン、メトミオグロビン、還元型 ミオグロビンの値を測定することができ、本件明細書にも実施例等のロースト ビーフのそれらの値についての記載がある(【0056】)。本件ミオグロビン 割合は、本件発明で定められた工程を行った場合のうち、本件発明の実施とい える場合を規定したものと理解することが 例等のロースト ビーフのそれらの値についての記載がある(【0056】)。本件ミオグロビン 割合は、本件発明で定められた工程を行った場合のうち、本件発明の実施とい える場合を規定したものと理解することができるところ、本件明細書の記載、 5 上記の技術常識等からすると、本件ミオグロビン割合のうち、オキシミオグロ ビン及びメトミオグロビンの割合は、一定の測定を行った上で、技術常識に基 づいて、望ましい色調との関係で当業者が適宜設定できたものといえる。また、 本件発明では還元型ミオグロビンの割合を34%以上としているところ、前記 技術常識からすると、望ましい色調であるためには、メトミオグロビンの割合 10 を下げオキシミオグロビンの割合を上げることが必要であることは認められ るものの、還元型ミオグロビン割合を一定値以上とすることが本件発明の課題 としていた望ましい色味に貢献するかは明らかではない。本件明細書には還元 型ミオグロビンの割合が上昇することによって開封前に本件発明が課題を解 決したとする望ましい色調が得られることについて何ら記載されていない。還 15 元型ミオグロビンの割合については、上記のとおり本件発明の課題との関係の 技術的意義について本件明細書に記載されていないこと、メトミオグロビンの 割合とオキシミオグロビンの割合が規定されると、その結果、還元型ミオグロ ビンがとれる割合の範囲も自ずと限定されることからすると、還元型ミオグロ ビンの割合を34%以上としたことは、本件発明における前記課題解決手段に 20 よって実現される結果において、本件発明の課題が解決されているとする割合 を適宜、設定したものといえる。 これらによれば、本件発明の内容、本件明細書の記載、技術常識等に照らせ ば、本件発明における本件ミオグロビン割合は、技術常識を基礎として、本件 発明におけ るとする割合 を適宜、設定したものといえる。 これらによれば、本件発明の内容、本件明細書の記載、技術常識等に照らせ ば、本件発明における本件ミオグロビン割合は、技術常識を基礎として、本件 発明における前記課題解決手段によって実現される結果において、本件発明の 25 課題が解決されているとする割合を適宜、設定したものといえ、その割合の設 77 定は当業者が容易にすることができたと認められる。 原告は、本件特許に係る製品の製造の困難性を根拠に本件ミオグロビン割合 を見出すことが困難であるなどと主張するが、本件発明の工程等についての困 難性が別途問題となるとしても(この点については、前記 、 )、それとは別 に、前記技術常識の下で、本件ミオグロビン割合を設定することが容易にでき 5 たことについて困難性があったことを認めるに足りず、また、本件発明の工程 等について当業者が容易に想到することができたことは、前記 、 のとおり である。 なお、本件明細書には、「還元型ミオグロビンが34%以上とすることがで きるため、包材を開封して空気に曝すと鮮明な赤色が回復すると考えられる。」 10 (【0044】)との記載がある。もっとも、前記のとおり、本件明細書によれ ば、本件発明は、特定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優れた 肉色を維持することを課題として、望ましい色調の維持を目的とするものであ って、還元型ミオグロビンの割合を一定以上とすることであえて赤味を抑えて おくなどということを課題としていたとは認められない。したがって、本件発 15 明における課題との関係において、本件ミオグロビン割合における還元型ミオ グロビンの割合に特段の技術的意義を見出したものとは認められない。 以上によれば、本件発明における本件ミオグロビン割合は、本件発明におけ る前記課題解 において、本件ミオグロビン割合における還元型ミオ グロビンの割合に特段の技術的意義を見出したものとは認められない。 以上によれば、本件発明における本件ミオグロビン割合は、本件発明におけ る前記課題解決手段によって実現される結果において、本件発明の課題が解決 されているとする割合を規定したものといえるところ、技術常識等によれば、 20 本件ミオグロビン割合は、当業者が上記の観点から適宜設定することができた ものであり、容易に想到することができたものといえる。 以上のとおりであって、本件発明の構成のうち、少なくとも、窒素ガス又は (及び)二酸化炭素ガスに置換する工程を含み、非鉄系脱酸素剤のみを用いる 構成(前記 イ参照)については、乙12発明との各相違点について本件発明 25 の構成を想到することが容易であるといえるから、本件発明に係る本件特許に 78 は、特許無効審判によって無効とされるべき事由があると認められる。 3 結論 以上によれば、本件発明に係る本件特許には、特許無効審判によって無効とさ れるべき事由があるといえるから、その余の争点について判断するまでもなく、 原告の請求には理由がない。よって、主文のとおり判決する。 5 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 柴 田 義 明 10 裁判官 仲 田 憲 史 裁判官棚井啓は、転補につき署名押印することができない。 15 裁判長裁判官 柴 田 義 明 79 別紙被告製品目録 下記のローストビーフ。 1 被告製品1 5 名称 ローストビーフ(炭火焼・もも・スライス) 内容量 ローストビーフ160g ソース10g×3・レホール3g×2 ただし、平 下記のローストビーフ。 1 被告製品1 5 名称 ローストビーフ(炭火焼・もも・スライス) 内容量 ローストビーフ160g ソース10g×3・レホール3g×2 ただし、平成31年2月19日以降に販売されたもの 2 被告製品2 名称 ローストビーフ(炭火焼・もも・スライス) 10 内容量 ローストビーフ160g ソース10g×3・レホール3g×2 ただし、平成31年2月18日以前に販売されたもの

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