平成21(ワ)35411 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年8月30日 東京地方裁判所
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判決文本文37,743 文字)

- 1 -平成23年8月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第35411号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年5月19日判決東京都千代田区<以下略>原告株式会社ジンテック同訴訟代理人弁護士田中浩之同野口明男同飯塚卓也同訴訟代理人弁理士原島典孝東京都渋谷区<以下略>被告株式会社クローバー・ネットワーク・コム同訴訟代理人弁護士石嵜信憲同山中健児同柊木野一紀同林康司同小川周哉同補佐人弁理士高橋和夫同坂本智弘 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない。 2 被告は,前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュー- 2 -タ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体(マスター記録媒体及びマスター記録媒体から作成されたものを含む。)を廃棄せよ。 第2 事案の概要本件は,電話回線網で実際に使われている電話番号をコンピュータを用いて調査し,その調査結果に基づいて既存の電話番号リストをクリーニングする方法に関する特許 含む。)を廃棄せよ。 第2 事案の概要本件は,電話回線網で実際に使われている電話番号をコンピュータを用いて調査し,その調査結果に基づいて既存の電話番号リストをクリーニングする方法に関する特許権を有する原告が,被告による別紙被告方法目録記載のサービス(以下「被告サービス」という。)の実施は上記特許権を侵害するものであると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づく被告サービスの実施の差止め及び同条2項に基づく被告サービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ等の廃棄を求める事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者原告及び被告は,いずれも,情報処理サービス業及び情報提供サービス業等を業とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明」という。また,本件発明に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書(別紙特許公報及び審決参照)を「本件明細書」という。)を有する。 特許番号第3462196号発明の名称電話番号リストのクリーニング方法分割の表示特願平8-334188の分割出願日平成8年12月13日登録日平成15年8月15日訂正審判確定日平成22年8月26日特許請求の範囲(下線部分は,上記訂正(以下「本件訂正」という。)に- 3 -より追加された部分である。)(請求項1)「ISDNに接続した番号調査用コンピュータにより,使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,網から得られる情報に基づいて べての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,網から得られる情報に基づいて有効な電話番号をリストアップして有効番号リストを作成する網発呼プロセスと,前記網発呼プロセスにより作成された前記有効番号リストを複数のクリーニング用コンピュータに配布して読み取り可能にするリスト配布プロセスと,前記各クリーニング用コンピュータにおいて,クリーニング処理しようとする顧客などの電話番号リストを読み取り可能に準備し,このクリーニング対象電話番号リストと前記有効番号リストとを対照することで,前記クリーニング対象電話番号リスト中の有効な電話番号を区別するクリーニング処理プロセスと,を含んだことを特徴とする電話番号リストのクリーニング方法。」(3) 構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件A」などという。)。 AISDNに接続した番号調査用コンピュータにより,使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,網から得られる情報に基づいて有効な電話番号をリストアップして有効番号リストを作成する網発呼プロセスと,- 4 -B 前記網発呼プロセスにより作成された前記有効番号リストを複数のクリーニング用コンピュータに配布して読み取り可能にするリスト配布プロセスと,C 前記各クリーニング用コンピュータにおいて,クリーニング処理しようとする顧客などの電話番号リストを読み取り可能に準備し,このクリーニング対象電話番号リストと 能にするリスト配布プロセスと,C 前記各クリーニング用コンピュータにおいて,クリーニング処理しようとする顧客などの電話番号リストを読み取り可能に準備し,このクリーニング対象電話番号リストと前記有効番号リストとを対照することで,前記クリーニング対象電話番号リスト中の有効な電話番号を区別するクリーニング処理プロセスと,D を含んだことを特徴とする電話番号リストのクリーニング方法。 (4) 被告サービスの実施被告は,別紙被告方法目録記載のサービス(被告サービス)を実施している(なお,上記サービスの具体的な内容については,後記のとおり当事者間に争いがある。)。 2 争点(1) 被告サービスは,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 被告サービスは,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等であるか(争点2)(3) 本件特許は,特許無効審判において無効とされるべきものか(争点3) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(被告サービスは,本件発明の技術的範囲に属するか)について[原告の主張]ア被告サービスの具体的内容被告サービスの具体的な内容は,次のとおりである。 (ア) 調査対象となる電話番号に対する発信及び電話番号使用状況履歴リストの作成被告は,まず,使用されているすべての市外局番及び市内局番と加入- 5 -者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせにより構成される電話番号を調査対象として,ISDN回線に接続した電話番号の使用状況を調査するためのコンピュータにより,ISDN回線を通じて発信し,当該発信に対して回線網から得られる情報に基づき,電話番号の使用状況(実在,移転,都合取外し,取外し,欠番,その他)を調査する。 被告は,上記調査結果に ュータにより,ISDN回線を通じて発信し,当該発信に対して回線網から得られる情報に基づき,電話番号の使用状況(実在,移転,都合取外し,取外し,欠番,その他)を調査する。 被告は,上記調査結果に基づき,実際に使われている電話番号とそうでない電話番号とを区別して記載した電話番号使用状況履歴リスト(以下「被告データ」という。)を作成する。 (イ) 被告データの配布被告は,被告の顧客(以下「被告データ提供先」という。)に対し,被告データの全部又は一部を提供する。 被告データの提供方法には,以下の3つの方法がある。このうち,被告サービスに含まれるのは,下記①及び②の方法である。 ① DB(データベース)を提供する方法被告データを記録したDVD-ROM等のメディアを,被告データ提供先に送付して提供する方法② PC版(検索システム)として提供する方法PC(パーソナルコンピュータ)での使用を前提に,外付けHDD(ハードディスクドライブ)に記録した電話番号使用状況履歴データ及びこれを利用するためのソフトウエアを提供する方法③ ウェブ検索方式として提供する方法被告データ提供先が,使用状況の履歴を必要とする電話番号をウェブ上で指定し,被告サーバーが,使用状況のデータを返す方法被告は,これらの方法により,被告データを複数の被告データ提供先が使用するコンピュータにおいて読み取り可能なように配布する。 - 6 -(ウ) 被告データ提供先によるクリーニング処理プロセス被告データ提供先は,上記(イ)の各コンピュータにおいて,被告データ提供先が保有する顧客リストなどの電話番号リスト(対象電話番号リスト)を読み取ることができるように準備する。 そして,被告データ提供先の使用する各コンピュータ上で,対象電話番号リストにおける電話 タ提供先が保有する顧客リストなどの電話番号リスト(対象電話番号リスト)を読み取ることができるように準備する。 そして,被告データ提供先の使用する各コンピュータ上で,対象電話番号リストにおける電話番号と被告データとが対照され,対象電話番号リスト中の実際に使われている電話番号とそうでない電話番号とが区別される(以下「クリーニング処理プロセス」という。)。 イ被告サービスの構成の分説以上のような被告サービスの構成を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説された構成要件をそれぞれ「構成a」などという。)。 a 被告が,ISDN回線に接続した電話番号の使用状況を調査するためのコンピュータにより,ISDN回線を通じて,調査対象である電話番号(使用されているすべての市外局番及び市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせにより構成される電話番号)に対して発信し,当該発信に対して回線網から得られる情報に基づき,実在する電話番号とそうでない電話番号とを区別した電話番号使用状況履歴リストを作成するプロセスと,b 被告が,被告データ提供先に対し,上記aの方法で作成された電話番号使用状況履歴リストを,記録媒体に記録して送付し又は通信回線を通じて送信して提供することにより,複数の被告データ提供先が使用するコンピュータ又は被告データ提供先が有する複数のコンピュータに上記リストを配布して,読み取ることができるようにするプロセスと,c 被告データ提供先が使用する上記bの各コンピュータにおいて,被告データ提供先が有する顧客等の電話番号リストを読み取ることがで- 7 -きるように準備させ,上記電話番号使用状況履歴リストと上記電話番号リストとを対照させることにより,電話番号リスト中の実在する電話番号とそれ以外の電 客等の電話番号リストを読み取ることがで- 7 -きるように準備させ,上記電話番号使用状況履歴リストと上記電話番号リストとを対照させることにより,電話番号リスト中の実在する電話番号とそれ以外の電話番号とを区別させるプロセスと,d を含んだことを特徴とする,被告データ提供先の保有する電話番号リスト中の有効な電話番号を区別する方法。 ウ被告サービスが構成要件Aを充足すること(ア) 構成要件Aは,「ISDNに接続した番号調査用コンピュータにより,使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,網から得られる情報に基づいて有効な電話番号をリストアップして有効番号リストを作成する網発呼プロセスと,」というものである。 ここで,「番号調査用コンピュータ」とは,電話回線網で実際に使われている電話番号を調査するためのコンピュータを意味し(本件明細書・段落【0001】),ISDN回線を通じて調査対象の電話番号に対して発信することは,「回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し」に該当する。また,「網から得られる情報」とは,本件明細書上特段の限定がないことから,網から得られる一切の情報を意味し,「有効な電話番号」とは,実際に使われている電話番号を(本件明細書・段落【0001】,【0008】),「有効番号リスト」とは,実際に使われている電話番号を記載した電話番号リストないし実際に使われている電話番号とそれ以外の電話番号とを区別することのできる電話番号リストを,それぞれ意味するものである。 一方,被告サービスは,ISDN回線に接続した電話番号の使用状況を調査するためのコンピュータにより,ISDN回線を通じて発 を区別することのできる電話番号リストを,それぞれ意味するものである。 一方,被告サービスは,ISDN回線に接続した電話番号の使用状況を調査するためのコンピュータにより,ISDN回線を通じて発信が行われるものであり,網から得られる情報に基づき,実際に使われている- 8 -電話番号とそうでない電話番号とを区別して記載した電話番号使用状況履歴リストを作成するものである。また,被告サービスは,「使用されているすべての市外局番及び市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせにより構成される電話番号」を調査対象として,発信が行われるものである。 したがって,被告サービスは,構成要件Aを充足する。 (イ) 仮に,後記[被告の主張]のとおり,被告サービスにおいて,一部の電話通信事業者に割り当てられた一定の局番については電話番号使用状況の調査対象としていないとしても,被告サービスは,構成要件Aを充足する。その理由は,次のとおりである。 a 本件発明の作用効果は,従来技術である各顧客の電話番号リストを個別に発呼するという方法では解決できなかった,輻輳及び機密保持の点の課題を解決し,オフラインで架電調査と同様に電話番号リストの有効性判定手段を提供するという点にある。 上記作用効果に照らせば,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番」の解釈も,上記作用効果を達成するための構成は何かという観点から行うことを要するところ,上記効果を達成するためには,有効性判定のニーズがない電話番号までをもすべて調査対象に含めなければならない理由はない。本件明細書にも,加入者番号が存在しない電話番号は調査対象から外してもよいと記載されている(段落【0035】)。 また,本件明細書の実施例では,北海道・青森県・秋田県・岩手 ればならない理由はない。本件明細書にも,加入者番号が存在しない電話番号は調査対象から外してもよいと記載されている(段落【0035】)。 また,本件明細書の実施例では,北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアの市外局番・市内局番を「すべての市外局番および市内局番」として取り扱い(段落【0013】),「調査対象となる地域に含まれるすべての市外局番および市内局番」を調査対象として定めているものであって(段落【0026】),「すべての市外局番および市内- 9 -局番」という用語を,被告が主張するように「総務省が「使用中」と分類している市外局番および市内局番のすべて」という意味で用いているものではない。 b 上記のような本件発明の作用効果及び本件明細書の記載に加え,構成要件Aの「調査対象電話番号」という用語を踏まえると,同構成要件の「使用されているすべての市外局番および市内局番」とは,事業者が一定の調査対象を設定することを前提に,「その調査対象に含まれる電話番号に使用されている市外局番と市内局番のすべて」を意味するものと解すべきである。 c したがって,仮に,被告サービスにおいて一定の局番については電話番号使用状況の調査対象としていないとしても,これらの局番は,被告が,有効性判定のニーズがないと判断して「調査対象」から除外したものであるから,被告サービスは,「その調査対象に含まれる電話番号に使用されている市外局番と市内局番のすべて」を調査しているといえる。よって,被告サービスは,構成要件Aを充足する。 エ被告サービスが構成要件Bを充足すること構成要件Bは,「前記網発呼プロセスにより作成された前記有効番号リストを複数のクリーニング用コンピュータに配布して読み取り可能にするリスト配布プロセスと,」というものである。 ここで,「クリー 構成要件Bは,「前記網発呼プロセスにより作成された前記有効番号リストを複数のクリーニング用コンピュータに配布して読み取り可能にするリスト配布プロセスと,」というものである。 ここで,「クリーニング用コンピュータ」とは,被告データ提供先がデータのクリーニング処理に用いるコンピュータを含むものであり(本件明細書・段落【0033】等),「コンピュータ」には,通常のパーソナルコンピュータなども含まれる。また,「複数の」とは,本件明細書上特段の限定がないことから,複数の被告データ提供先が使用するコンピュータ又は被告データ提供先が有する複数のコンピュータのいずれもが含まれ,「配布」とは,いかなる方法によるかを問わず,有効番号リストを複数の- 10 -コンピュータの使用者に配布することを意味する(本件明細書・段落【0033】)。 したがって,「被告が構成aの方法で作成した電話番号使用状況履歴リストを,被告データ提供先に対し,記録媒体に記録して送付し又は通信回線を通じて送信して提供することにより,上記リストを複数の被告データ提供先が使用するコンピュータ又は被告データ提供先が有する複数のコンピュータに配布して読み取ることができるようにするプロセス」(構成b)を含むものである被告サービスは,構成要件Bを充足する。 オ被告サービスが構成要件Cを充足すること(ア) 被告サービスは,「被告データ提供先が使用する各コンピュータにおいて,被告データ提供先が有する顧客等の電話番号リストを読み取ることができるように準備させ,上記電話番号使用状況履歴リストと上記電話番号リストとを対照させることにより,電話番号リスト中の実在する電話番号とそれ以外の電話番号とを区別させるプロセス」(構成c),すなわち,クリーニング処理プロセスを含むものである。 したが 記電話番号リストとを対照させることにより,電話番号リスト中の実在する電話番号とそれ以外の電話番号とを区別させるプロセス」(構成c),すなわち,クリーニング処理プロセスを含むものである。 したがって,被告サービスは,構成要件C(「前記各クリーニング用コンピュータにおいて,クリーニング処理しようとする顧客などの電話番号リストを読み取り可能に準備し,このクリーニング対象電話番号リストと前記有効番号リストとを対照することで,前記クリーニング対象電話番号リスト中の有効な電話番号を区別するクリーニング処理プロセスと,」)を充足する。 (イ) なお,被告サービスにおいて上記クリーニング処理を行う者は,被告ではなく,被告データ提供先である。 しかしながら,特許法は,特許権の侵害行為が単独の者によって実施される場合にのみ侵害行為の差止請求を認めるものではなく,複数の者が関与して行われた実施行為によって特許権が侵害される場合であって- 11 -も,①特許請求の範囲上複数主体の関与が想定されている発明について,当該特許権を侵害するシステムを支配管理している者が存在する場合,②特許の構成要件の一部の工程が他の者によって行われているが,他の者がある者の「道具」として上記行為を実施していると評価できる場合,③1人1人の行為が特許発明の構成要件全部を実施するわけではないが,全員の行為を併せると全部を実施することになる場合において,各自が客観的行為を分担しているにすぎない場合,などについては,その侵害行為の一部を行った者に対しても侵害行為の差止請求をすることが可能であると解されている。 この点,構成要件Cの「クリーニング処理プロセス」の工程は,構成要件A及びBの行為の主体から「有効番号リスト」の配布を受けた第三者(依頼者)が関与して行うことをも当然に予 能であると解されている。 この点,構成要件Cの「クリーニング処理プロセス」の工程は,構成要件A及びBの行為の主体から「有効番号リスト」の配布を受けた第三者(依頼者)が関与して行うことをも当然に予定されているものといえ,被告において,上記第三者の行為を含めて被告サービスを支配管理しているといえる。また,被告は,被告データ提供先に被告データを提供するに当たって,同データを用いて電話番号リストのクリーニングを行うことを積極的に推奨していることから,被告データ提供先を「道具」としてクリーニング処理プロセスを実施しているといえる。さらに,被告と被告データ提供先との間では,被告データの作成やDBの提供,PC版の配布を被告が行い,被告データ提供先において上記DBやPC版をクリーニング処理プロセスで使用するという役割分担が合意され,それぞれの共同意思の下で一体的な実施行為がされているといえる。 したがって,原告は,本件特許権に基づき,被告に対し,被告サービスの差止請求をすることが可能である。 カ被告サービスが構成要件Dを充足すること(ア) 本件特許に係る特許請求の範囲には,「クリーニング対象電話番号リストと前記有効電話番号リストとを対照することで,前記クリーニン- 12 -グ対象電話番号リスト中の有効な電話番号を区別するクリーニング処理プロセス」(構成要件C)との記載があり,同記載から,「クリーニング処理」とは「クリーニング対象電話番号リスト中の有効な電話番号を区別する処理」を意味することが,明らかである。 そして,同じ「クリーニング」の語が用いられている以上,上記「クリーニング処理プロセス」における「クリーニング」と構成要件Dの「クリーニング方法」における「クリーニング」とを別の意味に解する理由はない。 したがって,構成要件 語が用いられている以上,上記「クリーニング処理プロセス」における「クリーニング」と構成要件Dの「クリーニング方法」における「クリーニング」とを別の意味に解する理由はない。 したがって,構成要件Dの「電話番号リストのクリーニング方法」とは,「クリーニング対象電話番号リスト中の有効な電話番号を区別するクリーニング処理プロセスを含む方法」を意味するものといえる。 (イ) 一方,被告サービスは,「(構成aないし構成c)を含んだことを特徴とする,被告データ提供先の保有する電話番号リスト中の有効な電話番号を区別する方法」(構成d)である。したがって,被告サービスが構成要件Dを充足することは,明らかである。 [被告の主張]ア被告サービスの具体的内容について(ア) [原告の主張]ア(ア)の事実については,調査対象の点を除き,認める。 被告サービスは,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番及び市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせにより構成される電話番号」を調査対象とするものではない。 すなわち,総務省は,日本全国の電話番号の局番について,「未使用」,「使用予定」,「使用不可」,「未使用復帰」及び「使用中」の5種の区分を用いて管理しており,「使用中」とは,「電話通信事業者に割り当てがされ使用されている局番」を指すものである。したがって,構成- 13 -要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番」とは,少なくとも,「上記「使用中」とされている局番のすべて」を意味するものと解される。しかしながら,被告サービスでは,上記「使用中」とされた局番のうち,一部の電話通信事業者に割り当てられた局番については,ユーザーからの調査ニーズが想定されないことを理由に,調査対象としていない。 しかしながら,被告サービスでは,上記「使用中」とされた局番のうち,一部の電話通信事業者に割り当てられた局番については,ユーザーからの調査ニーズが想定されないことを理由に,調査対象としていない。 (イ) [原告の主張]ア(イ)の事実については,被告が被告データ提供先に対して被告データを「読み取り可能なように」しているとの点を除き,認める。 被告データを「読み取り可能にする」行為を行う者は,被告データ提供先であって,被告ではない。 (ウ) [原告の主張]ア(ウ)の事実については,不知ないし否認する。 被告は,クリーニング処理プロセスを実施しておらず,被告データ提供先が同プロセスを行っているかどうかも知らない。少なくとも,顧客データベースのクリーニングという利用目的を明示して,被告から被告データの提供を受けている被告データ提供先は,存在しない。 イ被告サービスの構成の分説について被告サービスの具体的な内容は,上記アのとおりである。したがって,本件発明と対比される被告サービスの構成は,次のとおり特定されるべきである。 (a) ISDN回線に接続した電話番号の使用状況を調査するためのコンピュータ装置により,ISDN回線を通じて,調査対象である電話番号に対して発呼し,当該発呼に対して回線網から得られる情報に基づいて,実在する電話番号その他の使用状況に関するデータを取得するプロセス(b) 上記(a)のプロセスにより作成された電話番号使用状況データを- 14 -記録媒体に記録し,データ提供先に当該記録媒体を送付するプロセス(c) 上記(a)及び(b)を含むデータ提供サービスウ被告サービスは構成要件Aを充足しないこと被告サービスは,上記ア(ア)のとおり,「使用されているすべての市外局番及び プロセス(c) 上記(a)及び(b)を含むデータ提供サービスウ被告サービスは構成要件Aを充足しないこと被告サービスは,上記ア(ア)のとおり,「使用されているすべての市外局番及び市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせにより構成される電話番号」を調査対象とするものではない。 したがって,被告サービスは,構成要件Aを充足しない。 エ被告サービスは構成要件Bを充足しないこと被告サービスは,上記ア(イ)のとおり,被告データを「読み取り可能にする」行為を含むものではない。したがって,被告サービスは,構成要件Bを充足しない。 オ被告サービスは構成要件Cを充足しないこと被告サービスには,上記ア(ウ)のとおり,クリーニング処理プロセス(構成要件Cに対応するプロセス)が存在しない。したがって,被告サービスは,構成要件Cを充足しない。 カ被告サービスは構成要件Dを充足しないこと構成要件Dの「電話番号リストのクリーニング方法」とは,「電話番号リストと調査リストとを対照処理し,電話番号リストについて,調査リストでは無効番号と判定された電話番号を除くか,あるいは調査リストで有効番号と判定された電話番号を抽出することで,当該電話番号リストを更新する」ことを意味するものである(本件明細書・段落【0037】)。 これに対し,被告サービスは,上記アのとおり,データの提供を内容とするものであって,「電話番号の有効性の判定」を行うものでも,「電話番号リストの更新」を行うものでもない。 したがって,被告サービスは,構成要件Dを充足しない。 (2) 争点2(被告サービスは,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と- 15 -均等であるか)について[原告の主張]ア特許請 がって,被告サービスは,構成要件Dを充足しない。 (2) 争点2(被告サービスは,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と- 15 -均等であるか)について[原告の主張]ア特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,①上記部分が特許発明の本質的部分ではなく(以下「第1要件」という。),②上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(以下「第2要件」という。),③上記のように置き換えることに,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(以下「第3要件」という。),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく(以下「第4要件」という。),⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(以下「第5要件」という。)は,上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解される(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決(以下「平成10年最判」という。)・民集52巻1号113頁)。 イそこで,仮に,被告の主張するとおり,被告サービスでは調査ニーズのない局番を調査対象から除外しており,それ故に被告サービスは構成要件Aを充足しないと解される余地があるとしても,本件では,次のとおり,第1要件ないし第5要件が充足されるので,被告サービスは,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件特許発明の技術的範囲 ないと解される余地があるとしても,本件では,次のとおり,第1要件ないし第5要件が充足されるので,被告サービスは,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件特許発明の技術的範囲に属するものと解される。 (ア) 第1要件について被告が被告サービスにおける調査対象から除外していると主張する局- 16 -番は,調査ニーズのない局番である上,その割合も,総務省が発表している局番数全体の2%程度にすぎない。したがって,これらの局番を有する電話番号が被告サービスの調査対象に含まれていないことは,およそ本件特許発明との本質的な差異をもたらすものではない。 (イ) 第2要件について被告サービスにおいて調査対象から除外されているのは,調査ニーズのない局番である。したがって,これらの局番を調査対象から除外したとしても,従来技術である各顧客の電話番号リストを個別に発呼するという方法では解決できなかった,輻輳及び機密保持の点の課題を解決し,オフラインで架電調査と同様に電話番号リストの有効性判定手段を提供するという,本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであることは,明らかである。 (ウ) 第3要件について本件発明の実施に当たって,調査にかかるコストの削減や効率化等を考えて,調査ニーズのない局番を調査対象から除外することは,当業者が容易に想到することができる事項である。 (エ) 第4要件について被告サービスは,すべての電話番号という母数から出発し,ニーズのない局番を除外したものである。このような被告サービスは,本件特許の出願時における公知技術と同一,又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではない。 (オ) 第5要件について原告は,本件訂正前の特許請求の範囲請求項1が「ISDN ビスは,本件特許の出願時における公知技術と同一,又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではない。 (オ) 第5要件について原告は,本件訂正前の特許請求の範囲請求項1が「ISDNに接続した番号調査用コンピュータにより回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,…」であったものを,本件訂正により,「ISDNに接続した番号調査用コンピュータにより,使用されているすべての市外局番お- 17 -よび市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,…」と訂正した(訂正部分に下線を引いた。)。 原告が本件訂正において除外したのは,電話帳データや特定の顧客リストなど,限られた電話番号群を調査対象として調査結果を記録する方法に限られるものであり,すべての電話番号という母数から出発してニーズのない局番を除外するという被告サービスのような技術まで,意識的に除外したものではない。 したがって,被告サービスに係る方法が本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの,特段の事情はない。 [被告の主張]原告の主張を否認ないし争う。次のとおり,本件では,少なくとも第1要件及び第5要件を充足しないことが明らかである。 ア第1要件について原告は,本件訂正に係る審判の請求書(甲46)において,本件特許出願前の公知技術(乙5,7)における調査対象電話番号の件数が「約4000万」とされていることを捉え,本件発明に係る調査対象電話番号を網羅的なものと限定することによって本件特許の無効事由を解消するということを,本件訂正の理由として述べている。また,上記請求書では,調査対象電話番号を網羅的なもの ,本件発明に係る調査対象電話番号を網羅的なものと限定することによって本件特許の無効事由を解消するということを,本件訂正の理由として述べている。また,上記請求書では,調査対象電話番号を網羅的なものとすることによって,「電話帳に掲載されていない番号を含めた殆どすべての番号について,あたかも都度発呼して電話番号の利用状況を調査するのと同様の効果を得られる」とするなど,本件訂正によって構成要件Aに追加される構成が,公知技術との対比において本件発明の作用効果を生じさせる特徴的部分であることを強調していた。 - 18 -したがって,本件発明において,調査対象とする電話番号を「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」ものとする部分は,本件特許発明の本質的部分であるといえる。 イ第5要件について平成10年最判は,第5要件を均等成立の要件とした趣旨について,「特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないからである」,と判示している。 上記趣旨に鑑みると,第5要件における「特許出願手続」に訂正手続が含まれることは当然であり,無効事由を回避する目的でされる訂正手続については,上記趣旨は,より強く妥当する。 そうすると,原告は,上記アのとおり,無効事由を回避する目的で本件訂正を行ったものであるから,本件訂正に係る「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電 無効事由を回避する目的で本件訂正を行ったものであるから,本件訂正に係る「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号」という構成以外の,「非網羅的」な電話番号を調査対象とすることについては,本件発明の技術的範囲から意識的に除外したものといえる。 (3) 争点3(本件特許は,特許無効審判において無効とされるべきものか)について[被告の主張]ア新規性の欠如仮に,原告の主張するとおりに本件発明を解釈するとしても,本件発明は,次のとおり,本件特許権の優先日である平成8年12月13日よりも- 19 -前に頒布された刊行物である株式会社ワンビシアーカイブズ(以下「ワンビシ社」という)作成の資料(乙5。以下「乙5資料」という。)に記載された,当時ワンビシ社において公然実施していたサービスである「スーパーキャッチシステム」に係る発明や,同じく本件特許権の優先日前に頒布された刊行物である株式会社横浜コンピューターシステム(以下「横浜CS社」という)作成の資料(乙7。以下「乙7資料」という。)に記載された,当時横浜CS社において公然実施していたサービスである「ATOM-SS」に係る発明と,同一である。 したがって,本件発明は,本件特許権の優先日前に日本国内において公然知られ,公然実施をされた発明(特許法29条1項1号,2号)ないし日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(同項3号)であるから,新規性を有しない。 (ア) ワンビシ社が行っていたサービスa 被告は,平成6年12月ころまでに,ISDN回線により電話番号の使用状況を調査する装置を用いて,電話帳に記載された電話番号約4000万件について使用状況の調査を行 が行っていたサービスa 被告は,平成6年12月ころまでに,ISDN回線により電話番号の使用状況を調査する装置を用いて,電話帳に記載された電話番号約4000万件について使用状況の調査を行い,その調査結果データをユーザーに提供するサービスの検討を進めていた。 b 被告は,平成8年4月,上記調査実績件数が2000万件を超え,商用サービスを現実に開始できる状況となったため,ワンビシ社との間で,上記サービスの事業展開を共同して図ることを合意した。ワンビシ社は,同合意に基づき,被告から提供を受けた電話番号調査システムや調査データベースを用いたサービスについて,営業や販売活動を開始した。 c ワンビシ社は,被告からシステムやデータの提供を受けて行うサービスに「スーパーキャッチシステム」という名称を付し,平成8年の秋には,具体的な営業活動を開始した。乙5資料は,この当時にワン- 20 -ビシ社が作成した,「スーパーキャッチシステム」についてのユーザー向け説明資料の1つであり,ワンビシ社は,平成8年10月当時,乙5資料を用いて,営業先各社に対し,「スーパーキャッチシステム」の販売活動を活発に行っていた。 d 「スーパーキャッチシステム」における電話番号使用状況調査システムは,ISDN回線に接続した調査用のコンピュータ装置により,調査対象である電話番号に発呼し,当該発呼に対して回線網から得られる情報に基づいて,通常状態,転居案内状態,料金未納状態,不通状態,その他の使用状況に関するデータを取得するものである(乙5資料・2枚目)。 ワンビシ社は,被告から提供を受けたシステム及びデータベースを用いて,ワンビシ社の電話番号データベースの更新を行い,それを最新電話番号データベースとして依頼者に提供するというサービス(以下「ワンビシ社サー 社は,被告から提供を受けたシステム及びデータベースを用いて,ワンビシ社の電話番号データベースの更新を行い,それを最新電話番号データベースとして依頼者に提供するというサービス(以下「ワンビシ社サービス」という。)を行っていた。 e このように,ワンビシ社サービスは,① ISDN回線に接続した電話番号使用状況を調査するためのコンピュータ装置により,調査対象である電話番号に対して発呼し,当該発呼に対して回線網から得られる情報に基づいて,実在する電話番号その他の使用状況に関するデータを取得するプロセス② 上記プロセスにより作成された電話番号使用状況データを記録媒体に記録し,データ提供先に当該記録媒体を送付するプロセス③ 上記①及び②を含むデータ提供サービスという構成を有しており,これは,被告サービスの構成と同一である。 原告の主張によれば,被告サービスは本件発明の技術的範囲に属するというのであるから,原告の主張を前提にする限り,ワンビシ社サービスは,本件発明と同一の構成を有する。 - 21 -(イ) 横浜CS社が行っていたサービスa 被告は,上記(ア)のとおり,平成6年12月ころまでに,ISDN回線による電話番号の使用状況を調査する装置を用いて,電話帳に記載された電話番号約4000万件について使用状況調査を行い,その調査結果データをユーザーに提供するサービスの準備を進めていた。横浜CS社は,ワンビシ社と同様に,被告と協力して,上記調査システムや電話番号の使用状況に関するデータベースの事業展開を行っていた。 b 横浜CS社は,平成7年1月までに,被告の協力の下,被告の調査システムやデータベースを用いたサービスの詳細を決定した上,「ATOM-SS」との名称を付して,その営業を開始した。 「ATOM-SS」によるサービス 成7年1月までに,被告の協力の下,被告の調査システムやデータベースを用いたサービスの詳細を決定した上,「ATOM-SS」との名称を付して,その営業を開始した。 「ATOM-SS」によるサービスは,横浜CS社が,被告から提供を受けて保有する個人3000万件,法人1000万件の電話帳データベースを基に,毎月,全件の使用状況調査を実施し,正常着信(現在使用中),未使用電話といった判別をして,これに基づいて更新されたデータを依頼者に送付し,送付を受けた依頼者において,自らの顧客データベースに含まれる電話番号との照合処理を行い,顧客データベースを更新するというものである(乙7資料。以下「横浜CS社サービス」という。)c 以上のとおり,横浜CS社サービスの構成は,ワンビシ社サービスと同様に,被告方法の構成と同一である。したがって,原告の主張を前提にする限り,横浜CS社サービスは,本件発明と同一の構成を有する。 イ進歩性の欠如本件発明は,次のとおり,本件特許権の優先日より前の平成7年7月14日に公開された特開平7-177214号公報(乙11。以下「乙11- 22 -公報」という。)に記載された発明に,平成6年6月24日に公開された特開平6-177954号公報(乙12。以下「乙12公報」という。)等に記載された技術思想を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件特許は,特許法29条2項に違反して特許されたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものである。 (ア) 乙11公報の記載乙11公報には,以下の記載がある(判決注:下線は,裁判所が被告の主張に基づき付加した。)「【0001】【産業上の利用分野】この発明は,いわゆるテレマーケティングなどの顧客リストに含まれ 乙11公報には,以下の記載がある(判決注:下線は,裁判所が被告の主張に基づき付加した。)「【0001】【産業上の利用分野】この発明は,いわゆるテレマーケティングなどの顧客リストに含まれる電話番号リストから無効な電話番号を削除する処理を行うクリーニング装置に関する。」「【0002】【従来の技術】電話を利用した各種の業務においては顧客の電話番号リストはきわめて重要な情報であり,不必要になった電話番号をリストから削除するなど,情報の価値を低下させないような管理を随時行う必要がある。…(中略)…無効の電話番号はリストから削除しなければならないし,移転した新電話番号をリスト中の旧電話番号に置き換える処理も必要である。」「【0005】この発明は前述した従来の問題点に鑑みなされたもので,その目的は,実業務を行わずに,電話番号リストの削除処理を事前に自動的に行えるようにしたクリーニング装置を提供することにある。 また,電話番号リストの書き換え更新処理を能率良くまたは自動的に行えるようにしたクリーニング装置を提供することにある。」「【0006】- 23 -【課題を解決するための手段】第1の発明に係るクリーニング装置は,クリーニング処理しようとする電話番号リストをメモリに読み込む手段と,前記メモリに格納された前記リストの電話番号を順番に読み取り,その番号のダイヤル信号を公衆電話回線網に送出する発呼手段と,前記発呼手段によるダイヤル信号の送出動作に対する回線上の反応を監視する回線監視手段と,前記回線監視手段により発呼後の所定時間内に呼出音が検出された場合,および呼出音の検出前に極性反転が検出された場合に,発呼した電話番号を有効電話番号と判定する有効判定手段と,前記回線監視手段により発呼後の所定時間内に前記呼出音および前記 に呼出音が検出された場合,および呼出音の検出前に極性反転が検出された場合に,発呼した電話番号を有効電話番号と判定する有効判定手段と,前記回線監視手段により発呼後の所定時間内に前記呼出音および前記極性反転および話中音のいずれも検出されなかった場合に,発呼した電話番号を無効電話番号と判定する無効判定手段と,前記有効判定手段および前記無効判定手段の判定結果に従って前記有効電話番号と前記無効電話番号とを区別したリストを作成する出力リスト作成手段とを備えたものである。」「【0017】【実施例】第1および第2および第4の発明を包含した実施例のシステム構成を図1に示している。このクリーニング装置はパーソナル・コンピュータを中心としたハードウェア構成となっている。…(以下略)。」「【0026】前記の有効電話番号リストおよび無効電話番号リストそれに話中電話番号リストが前述の出力リストに相当する。これらのリストは前記クリーニング処理の実行中にディスプレイ装置6で逐次表示される。前記再発呼行列も含めて入力リストの全電話番号についての処理が完了すると,ディスプレイ装置6などでその旨を通知する。 その段階で前記出力リストを所定のフォーマットでフロッピーディスク装置4に出力することができる。出力リスト中の前記有効電話番号- 24 -リストには,発呼に対して正常に呼出動作が行われた電話番号のみが記入されており,それ以外の電話番号が削除されている。」(イ) 乙11公報記載の発明上記(ア)の記載から,乙11公報には,次の構成を有する発明(以下「乙11発明」という。)が開示されていると認められる。 (A) コンピュータにより,回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,得られた情報に基づいて有効な電話番号をリストアップして有効番号リストを作成 発明」という。)が開示されていると認められる。 (A) コンピュータにより,回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,得られた情報に基づいて有効な電話番号をリストアップして有効番号リストを作成する過程と,(B) 有効電話番号リストを含む出力リストをフロッピーディスクに出力する過程と,(C) クリーニングしようとする電話番号リストと,有効番号リストを含む出力リストを対照し,クリーニングしようとする電話番号リストのうち有効な電話番号を更新し,無効な電話番号を削除する過程と,(D) を含んだことを特徴とする電話番号リストのクリーニング方法。 (ウ) 本件発明と乙11発明の一致点及び相違点a 一致点本件発明と乙11発明とを対比すると,両発明は,①番号調査用コンピュータにより,回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,得られた情報に基づいて,有効な電話番号をリストアップして,有効番号リストを作成する点,②クリーニングしようとする電話番号リストと有効番号リストを対照して,クリーニングしようとする電話番号リストのうち有効な電話番号を区別している点,③電話番号リストのクリーニング方法である点,において一致する。 b 相違点本件発明と乙11発明との相違点は,次の4点である。 ① 乙11発明は,番号調査用コンピュータをISDN回線に接続し- 25 -ていない(以下「相違点1」という。)。 ② 乙11発明は,有効番号リストを複数のクリーニング用コンピュータに配布して読み取り可能にするプロセスを有しない(以下「相違点2」という。)。 ③ 乙11発明は,クリーニング処理しようとする電話番号リストを対照する作業を,有効番号リスト配布先であるクリーニング用コンピュータで行っていない(以下「相違点3」という。)。 ④ 乙1 。)。 ③ 乙11発明は,クリーニング処理しようとする電話番号リストを対照する作業を,有効番号リスト配布先であるクリーニング用コンピュータで行っていない(以下「相違点3」という。)。 ④ 乙11発明は,クリーニング処理しようとする電話番号リストが,使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号により構成されていない(以下「相違点4」という。)。 c 相違点についての検討上記相違点1ないし4に係る構成は,次のとおり,当業者において容易に想到することができたものである。 (a) 相違点1について番号調査用コンピュータをISDNに接続するという技術思想は,本件特許権の優先日より前に公開された乙12公報に開示されている(段落【0001】,【0005】,【0006】,【0008】~【0010】)。また,1980年代の終わりから,日米欧を始めとする各国において,ISDN(総合ディジタル通信網)の商用サービスが開始されていた。 そうすると,電話番号リストをクリーニング処理しようとする際,商用サービスが現に開始され,普及しつつあったISDN回線を用いて電話番号調査を実施するという選択が排除される理由はなく,処理速度の観点からしても,ISDN回線を利用することは当然の発想である。 - 26 -したがって,乙11発明における番号調査用コンピュータの運用に当たり,上記技術思想を適用してISDN回線を利用することは,当業者が容易に想到することができたものといえる。 (b) 相違点2及び3について情報を蓄積したデータベースを他の情報処理装置に配布して,当該情報処理装置においてデータベースを利用させ,当該情報処理装置側に存在するデータと対照させると 。 (b) 相違点2及び3について情報を蓄積したデータベースを他の情報処理装置に配布して,当該情報処理装置においてデータベースを利用させ,当該情報処理装置側に存在するデータと対照させるという技術思想は,本件特許権の優先日より前の平成8年1月23日に公開された特開平8-22409号公報(乙13。以下「乙13公報」という。),平成6年7月8日に公開された特開平6-188906号公報(乙14。以下「乙14公報」という。)及び同年4月22日に公開された特開平6-113020号公報(乙15。以下「乙15公報」という。)に開示されている(乙13公報・段落【0001】,【0028】,【0045】,図21,乙14公報・段落【0011】~【0013】,乙15公報・段落【0023】~【0026】)。 また,作成したデータベースやリストを配布するという行為が,極めて一般的な態様でのデータ提供方法であったことは,本件特許発明の出願当時の技術常識からして明らかであり,当該データベースやリストが配布先においてデータベースやリストと対照させるために用いられることもまた,一般的に想定されることである。 そうすると,乙11発明においてクリーニング処理を行うコンピュータを検討するに当たり,上記技術思想を適用して,顧客側のコンピュータを用いて電話番号リストの対照作業を行わせることは,当業者が容易に想到することができたものといえる。 (c) 相違点4について乙11発明と本件発明は,電話番号リストのクリーニング技術という- 27 -同一の技術分野についての発明であり,両発明の明細書を比較すると,両発明の課題,作用及び機能に高い共通性が存在することは,明白である。また,わが国における電話番号が市外局番と市内局番と4桁の加入者番号から成る 野についての発明であり,両発明の明細書を比較すると,両発明の課題,作用及び機能に高い共通性が存在することは,明白である。また,わが国における電話番号が市外局番と市内局番と4桁の加入者番号から成ることや,使用されている市外局番と市内局番が公開された情報であることは,本件特許出願の当時から周知の事実である(本件明細書・段落【0011】)。 そうすると,本件特許の出願時において,乙11発明に相違点4に係る構成(わが国における電話番号の構成)を組み合わせることに関し,いわゆる論理付けが存在していたことは明らかであり,かつ,これを阻害する要因も見受けられない。 したがって,相違点4に係る構成が本件発明の進歩性を根拠づける構成たり得ないことは,明らかである。 [原告の主張]ア本件発明は新規性を有すること(ア) 乙5資料及び乙7資料(以下,両資料を併せて「乙5資料等」ということがある。)は,客観性に疑義があること乙5資料は,FAX機が印字した送信日付(平成8年10月17日)が記載されている以外に,客観的な日付は記載されておらず,本件特許の出願日前に存在していた文書かどうか不明なものである。仮に,乙5資料が上記日付当時に存在したものであり,被告の主張するとおり同資料がワンビシ社から被告に送信された事実があったとしても,その事実をもって,乙5資料の内容が本件特許権の優先日当時公知,公用になっていたとはいえないし,同資料が頒布された刊行物に該当するともいえない。 乙7資料は,その最終頁に「平成7年1月」との記載があるものの,同資料が実際に平成7年1月に作成されたものかどうかは不明である。 - 28 -また,乙7資料に記載された内容のサービスが本件特許権の優先日当時公知,公用になっていたことを認めるに足りる証拠はないし,乙7資料 際に平成7年1月に作成されたものかどうかは不明である。 - 28 -また,乙7資料に記載された内容のサービスが本件特許権の優先日当時公知,公用になっていたことを認めるに足りる証拠はないし,乙7資料が頒布された刊行物に当たるともいえない。 (イ) 乙5資料等には,ISDN回線を用いることは開示されていないこと乙5資料等には,ワンビシ社サービスないし横浜CS社サービスにISDN回線が用いられていることは開示されていない。 被告が乙5資料等の作成時期であると主張する平成8年10月17日ないし平成7年1月の時点においては,被告は,アナログ回線を用いた電話番号調査システムしか有しておらず,ディジタル版(ISDN回線利用)の調査システムをいまだ開発していなかったはずである。 (ウ) 乙5資料等には,電話番号を網羅的に調査対象とすることは開示されていないこと乙5資料等には,電話帳に記載された電話番号4000万件を対象として作成した電話番号データベースが作成されていることが開示されているだけであり,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」(構成要件A)電話番号に対して発呼することについての開示はない。 (エ) 以上のとおり,本件発明は,乙5資料等に記載された発明とは相違するものであり,新規性を有する。 イ本件発明は進歩性を有すること(ア) 本件発明の作用効果は,従来技術である各顧客の電話番号リストを個別に発呼するという方法では解決できなかった,輻輳及び機密保持の点の課題を解決し,オフラインで架電調査と同様に電話番号リストの有効性判定手段を提供するという点にあり,そのために,本件発明の各構- 29 -成が採用されている。 一方,乙11公報 保持の点の課題を解決し,オフラインで架電調査と同様に電話番号リストの有効性判定手段を提供するという点にあり,そのために,本件発明の各構- 29 -成が採用されている。 一方,乙11公報記載の発明(乙11発明)は,上記従来技術そのものであり,同公報には,本件発明における上記解決課題の存在すら示唆されていない。 (イ) また,本件発明と乙11発明は,被告の主張を前提としても,相違点1ないし4の点において相違するものであり,次のとおり,乙11発明に乙12公報ないし乙15公報記載の技術思想を組み合わせたとしても,本件発明を容易に想到することはできない。 a 乙12公報ないし乙15公報に開示されている技術は,通信端末装置が短縮ダイヤルの番号データベースに基づいて通信相手を発呼した際にその電話番号が変更又は欠番になっていた場合に,番号データベースを更新する技術(乙12公報),データベースの変更内容をネットワーク上の他の情報処理装置に効率よく送信する技術(乙13公報),中央の蓄積装置に接続された複数端末装置上の電話番号表を同時に更新する技術(乙14公報),通信端末の短縮ダイヤル番号と電話番号の対応関係に変更が生じたことを検知した場合に顧客の通信装置に変更情報を送信する技術(乙15公報),というものであり,本件発明における上記解決課題とは全く無関係の技術である。 また,相違点2及び3に関する本件発明の構成は,本件発明における上記解決課題を認識しなければ,これを乙11発明と組み合わせる動機付けは得られないところ,乙11公報ないし乙15公報のどこにも,そのような動機付けを与える課題の記述や示唆はない。 b 当業者が,乙11発明に基づいて相違点4に係る構成を採用するに至るためには,このような網羅的な調査対象電話番号を作成し,その調査対 こにも,そのような動機付けを与える課題の記述や示唆はない。 b 当業者が,乙11発明に基づいて相違点4に係る構成を採用するに至るためには,このような網羅的な調査対象電話番号を作成し,その調査対象電話番号に発呼して有効番号リストを作成する必要性に想到する必要がある。しかしながら,そのためには,本件発明における上- 30 -記課題を認識することを要する。乙11公報ないし乙15公報には,そのような動機付けや示唆は記載されていない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告サービスは,本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 構成要件Aの充足性についてア被告サービスにおいて調査対象とされる電話番号証拠(乙18~20)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,同認定を左右するに足りる証拠はない。 (ア) 日本の電話番号は,市外局番と市内局番と加入者番号との組合せから成っている。 市外局番及び市内局番は,総務省が管理しており,市外局番は,地域ごとに総務省告示で規定され,市内局番は,総務大臣が電気通信事業者ごとに指定を行うものとされている。 (イ) 総務省は,日本全国の電話番号の局番を,①「未使用」(電話通信事業者からの使用申入れ及び使用の事実がない局番),②「使用予定」(電話通信事業者からの使用申入れに対して割当て済みであるが,使用開始時期が到来していない局番),③「未使用復帰」(過去に,電話通信事業者に割り当てられ,使用されていたが,当該電話通信事業者が総務省に返却した局番),④「使用不可」(例えば,天気予報用等の特殊な利用のために割り当てられたものであり,一般には使用されていない局番),⑤「使用中」(電話通信事業者に割り当てがされ,使用されている局番),の5つの区分を用いて管理している。 (ウ) 被 の特殊な利用のために割り当てられたものであり,一般には使用されていない局番),⑤「使用中」(電話通信事業者に割り当てがされ,使用されている局番),の5つの区分を用いて管理している。 (ウ) 被告は,被告サービスにおいて,上記①ないし④の局番(「未使用」,「使用予定」,「未使用復帰」,「使用不可」)の電話番号については,使用状況の調査を行っていない。 また,被告は,被告サービスにおいて,上記⑤の局番(「使用中」)- 31 -の電話番号について使用状況の調査を行っているものの,「使用中」の局番であっても,下記の電話通信事業者に割り当てられ使用されている合計566個の局番の電話番号については,使用状況の調査を行っていない。これは,これらの局番の電話番号は,専ら基地局での交換のために使用されていたり,転送に用いられたり,新しいサービスの実験等の用途で使用されたりしているものと推定され,使用状況を調査してほしいとの顧客からのニーズがないからである。 記株式会社アイ・ピー・エスソフトバンクモバイル株式会社株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモベライゾンジャパン合同会社東京テレメッセージ株式会社東北インテリジェント通信株式会社株式会社沖縄テレメッセージイ 「使用されているすべての市外局番および市内局番」(構成要件A)の意味について(ア) この点について,原告は,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番」とは,事業者が一定の調査対象を設定することを前提に,「その調査対象に含まれる電話番号に使用されている市外局番と市内局番のすべて」を意味するものと解すべきであるとした上,被告サービスは,被告が有効性判定のニーズがないと判断した局番を調査対象から除外したものであるから,「その調査対象に含ま れている市外局番と市内局番のすべて」を意味するものと解すべきであるとした上,被告サービスは,被告が有効性判定のニーズがないと判断した局番を調査対象から除外したものであるから,「その調査対象に含まれる電話番号に使用されている市外局番と市内局番のすべて」を調査しているといえ,構成要件Aを充足する,と主張する。 (イ) しかしながら,構成要件Aは,単に,「使用されているすべての市- 32 -外局番および市内局番」と記載されているだけであり,局番について,原告の主張するような限定は付されていない。 また,本件明細書には,発明の詳細な説明として,以下の記載が存在する(甲1,46,47)(下線部分は,本件訂正により追加された部分である。)。 「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は,電話回線網で実際に使われている電話番号(または使われていない電話番号)をコンピュータを用いて調査し,その調査結果に基づいて既存の電話番号リストをクリーニングする方法に関する。」「【0002】【従来の技術】電話を利用した各種の業務においては顧客の電話番号リストはきわめて重要な情報であり,不必要になった電話番号をリストから削除するなど,情報の価値を低下させないような管理を随時行う必要がある。リストに登録されている顧客情報には流動的な情報も当然含まれており,登録されている電話番号がある時点で使用されなくなったり,別の新たな電話番号に変更になったり,あるいはもともと間違った電話番号が登録されていることもある。そのような無効の電話番号はリストから削除しなければならないし,移転した新電話番号をリスト中の旧電話番号に置き換える処理も必要である。」「【0003】従来においては,電話番号リストに従って各顧客に対してなんらかの業務を実行し,各顧客からの応 ればならないし,移転した新電話番号をリスト中の旧電話番号に置き換える処理も必要である。」「【0003】従来においては,電話番号リストに従って各顧客に対してなんらかの業務を実行し,各顧客からの応答を確認しながらリストの削除・更新を行っていた。この従来の方法では,実業務の内容によっては甚だしい無駄や不合理を生じることがある。つまり,削除されなければならない無効の顧客に対しても業務を実行することで無駄な経費を使ったり,顧客でない人に迷惑をかけたりすることがある。 - 33 -また移転した顧客に対しては,旧電話番号地と新電話番号地に対して二重に業務を行い,時間と経費が無駄になる。」「【0004】この不合理を解消するために本出願人らは,先に,つぎのような電話番号リストのクリーニング装置を開発した(特開平7-177214号)。網制御回路を備えたパソコンを電話回線に加入者端末として接続し,このパソコンでフロッピー(登録商標)ディスクなどに記録した電話番号リストを処理する。リスト中の電話番号を順番にピックアップして電話回線網に発呼し,その発呼動作に対する回線の反応を監視する。発呼後の所定時間内に呼出音が検出されるか,その前に極性反転が検出された場合,発呼した電話番号は有効であると判定する。所定時間内に呼出音も極性反転も話中音も検出されなかった場合,発呼した電話番号は無効であると判定する。この処理を電話番号リストに従ってつぎつぎと行い,有効な番号と無効な番号を区別した新しいリストを作成する。発呼する相手方にできるだけ迷惑をかけない工夫や,電話番号の変更を知らせる案内音声を録音する工夫もしてある。」「【0005】【発明が解決しようとする課題】本出願人は前述したようなクリーニング装置を用いて,電話番号リストをクリーニングするサービス業務 変更を知らせる案内音声を録音する工夫もしてある。」「【0005】【発明が解決しようとする課題】本出願人は前述したようなクリーニング装置を用いて,電話番号リストをクリーニングするサービス業務を行っている。通常はクリーニングしようとする電話番号リストを記録したフロッピーディスクを依頼人から預かり,それをクリーニング装置であるパソコンで前述のように処理し,更新した電話番号リストをやはりフロッピーディスクに記録して依頼人にわたす。この業務について,つぎに述べる2つの重大な問題が生じた。」「【0006】1つは,クリーニング装置から間断なくつぎつぎと発呼することで,直近の交換局で輻輳を生じやすくなるという問題であ- 34 -る。電話番号リストのクリーニング処理は一度行えば済むものではなく,適当な期間をおいて繰り返し行う必要がある。多数の依頼人からの多数の電話番号リストを処理するために,多数の電話回線と複数台の高速パソコンを使って集中的かつ連続的な発呼を行うと,輻輳の問題が現実的に無視できなくなる。」「【0007】もう1つの問題は,クリーニング処理を行いたいのだけれども,機密保持の観点から大切な顧客情報の1つである電話番号リストを外部に出せないという事情の依頼人がいることである。この場合には,フロッピーディスクに記録した電話番号リストを業者にわたしてクリーニングしてもらうサービスを受けることができなかった。」「【0008】この発明は前述した従来の問題点に鑑みなされたもので,その目的は,電話番号リストに従って実際に網に発呼することでクリーニング処理するのではなく,電話回線網で実際に使われている電話番号(または使われていない電話番号)をコンピュータを用いて調査し,その調査結果に基づいて網に対してはオフラインで既存の電話番号リ リーニング処理するのではなく,電話回線網で実際に使われている電話番号(または使われていない電話番号)をコンピュータを用いて調査し,その調査結果に基づいて網に対してはオフラインで既存の電話番号リストをクリーニング処理する仕組みを提供することにある。」「【0009】【課題を解決するための手段】この発明に係る電話番号リストのクリーニング方法は,ISDNに接続した番号調査用コンピュータにより,使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し,網から得られる情報に基づいて有効(または無効)な電話番号をリストアップして有効番号リスト(または無効番号リスト)を作成する網発呼プロセスと,前記網発呼プロセスにより作成された前記有効番号- 35 -リスト(または無効番号リスト)を複数のクリーニング用コンピュータに配布して読み取り可能にするリスト配布プロセスと,前記各クリーニング用コンピュータにおいて,クリーニング処理しようとする顧客などの電話番号リストを読み取り可能に準備し,このクリーニング対象電話番号リストと前記有効番号リスト(または無効番号リスト)とを対照することで,前記クリーニング対象電話番号リスト中の有効(または無効)な電話番号を区別するクリーニング処理プロセスとを含んだことを特徴とするものである。」「【0010】【発明の実施の形態】===電話番号の調査方法を実施するシステムの基本===この発明に関わる電話番号調査方法を実施するシステムの一例を図1に示している。ここではISDN端末として一般的なパソコン1を使う。…(後略)…」「【0011】このパソコン1がたとえば北海道・青森県・秋田県・岩 る電話番号調査方法を実施するシステムの一例を図1に示している。ここではISDN端末として一般的なパソコン1を使う。…(後略)…」「【0011】このパソコン1がたとえば北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアに設置されていて,これにより当該エリア全域において実際に使われているすべての電話番号を調べるものとする。よく知られているように,各加入者の電話番号は市外局番と市内局番と加入者番号の組み合せからなり,末尾の4桁が加入者番号である。市外局番および市内局番として使用されている番号は,当然ながら一般に公開された情報である。」「【0012】北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアには,011/0123…(中略)…/0198 という52個の市外局番が存在する。これら各市外局のそれぞれに規模に応じた数の市内局番が存在する。たとえば青森局内(0177 番)には,22/23…(中略)…/99 という35個の市内局番が存在する。加入者番号は未公開の情報であるが,これは4桁- 36 -の数字であり,0000 番から9999 番までの1万個の番号が存在する可能性がある。青森局内(0177 番)には35個の市内局番があるので,35×1万=35万個の電話番号が存在する可能性があり,その何割かが実際に加入者に割り当てられている有効な電話番号である。この発明の方法では,たとえば0177 番の青森局内において存在可能性のある35万個の電話番号のうち,どれとどれが有効(無効)かをすべて調べ上げて,その結果を調査リストとする。」「【0013】実施例のパソコン1は北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアの調査を担当している。当該エリアには52個の市外局番が存在しており,各市外局にはそれぞれ多数の市内局番が割り当てられている。これら調査対象となる地域に含まれるすべての 青森県・秋田県・岩手県エリアの調査を担当している。当該エリアには52個の市外局番が存在しており,各市外局にはそれぞれ多数の市内局番が割り当てられている。これら調査対象となる地域に含まれるすべての市外局番および市内局番を公開されている情報に従ってあらかじめ取得し,それらの局番を調査対象局番としてテーブル化しておく(パソコン1の適当な記憶手段に格納しておく)。その調査対象局番のすべてと,加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべて(1万個)の組み合せが調査対象電話番号である。」「【0026】====実際の運用状況====調査対象となる地域に含まれるすべての市外局番および市内局番を公開されている情報に従ってあらかじめ取得し,それらの局番を調査対象局番としてテーブル化しておく。その調査対象局番のすべてと,加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合せが調査対象電話番号である。都市の規模によって異なるが,1つの局番を持つ1万個の調査対象電話番号のうち,半数程度が未使用の無効の番号であることが普通である。…(後略)…」「【0032】===電話番号調査の時間的および地域的な実施の仕方===- 37 -ここまでは1台のパソコン1で北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアの調査を行うと説明した。同様にして,全国の電話網をいくつかの地域に分割し,それぞれの地域にて前記と同様な電話番号調査用パソコンをISDNに接続し,全国の電話番号の調査を複数の地域に分散した複数のパソコンで分担実行する。そして,それぞれ担当した地域の前記調査リストを通信などを通じて1つに集約することで,全国的な広域の調査リストを作成できる。このようにすることで,1箇所に設置したパソコンで全国の電話網を対象にして前述の調査を行う場合に比べ,調査用パソコンが網 通信などを通じて1つに集約することで,全国的な広域の調査リストを作成できる。このようにすることで,1箇所に設置したパソコンで全国の電話網を対象にして前述の調査を行う場合に比べ,調査用パソコンが網に与える悪影響(輻輳の問題)を大幅に低減でき,実用上まったく問題のないレベルに抑えることができる。」「【0035】なお,いままでの説明では「加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべて」は0000 番から9999 番までの1万個だとした。ここで,電話回線網の運営事業者の都合などで絶対に加入者に割り当てない番号があり,しかもその番号が公開情報として入手できるのであれば,その番号を「加入者番号となる可能性のない番号」として扱い,これを調査対象から外すようにしてもよい。」「【0038】【発明の効果】この発明では,電話番号リストに従って実際に網に発呼することでクリーニング処理するのではなく,電話回線網で実際に使われている電話番号をコンピュータを用いて調査し,その調査結果に基づいて網に対してはオフラインで既存の電話番号リストをクリーニング処理する。そして調査にあたっては,調査対象の電話に対して呼出をまったく行わないという大きな特徴があり,実際の電話加入者に対して無用な電話に無理に応答させるという迷惑がかからない。」- 38 -「【0039】また調査にあたっては,地域的および時間的に充分に分散して処理を実行できるので,調査用のコンピュータ(調査装置)に直近の交換局で輻輳を起こすことがない。また,機密保持の観点で電話番号リストを外部に出せない場合でも,自分のコンピュータで簡単にリストのクリーニング処理を行うことができる。」さらに,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数 場合でも,自分のコンピュータで簡単にリストのクリーニング処理を行うことができる。」さらに,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について」という用語は,本件訂正により特許請求の範囲に追加されたものである。証拠(甲46)によれば,原告は,本件訂正に係る審判請求書(甲46)において,本件訂正の理由について次のとおり述べていることが認められる。 「訂正の原因訂正事項1及び2は,① 明細書の段落0011の「このパソコン1がたとえば北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアに設置されていて,これにより当該エリア全域において実際に使われているすべての電話番号を調べるものとする。よく知られているように,各加入者の電話番号は市外局番と市内局番と加入者番号の組み合せからなり,末尾の4桁が加入者番号である。」との記載,② 明細書の段落0012の「北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアには,011/0123……/0198 という52個の市外局番が存在する。 これら各市外局のそれぞれに規模に応じた数の市内局番が存在する。たとえば青森局内(0177 番)には,22/23……/99 という35個の市内局番が存在する。加入者番号は未公開の情報であるが,これは4桁の数字であり,0000 番から9999 番までの1万個の番号が存在する可能性がある。青森局内(0177 番)には35個の市内局- 39 -番があるので,35×1万=35万個の電話番号が存在する可能性があり,その何割かが実際に加入者に割り当てられている有効な電話番号である。この発明の方法では,たとえば0177 番の青森局内において存在可能性のある35万個の電話番号のうち,どれとどれが 可能性があり,その何割かが実際に加入者に割り当てられている有効な電話番号である。この発明の方法では,たとえば0177 番の青森局内において存在可能性のある35万個の電話番号のうち,どれとどれが有効(無効)かをすべて調べ上げて,その結果を調査リストとする。」との記載,③ 明細書の段落0013の「実施例のパソコン1は北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアの調査を担当している。当該エリアには52個の市外局番が存在しており,各市外局にはそれぞれ多数の市内局番が割り当てられている。これら調査対象となる地域に含まれるすべての市外局番および市内局番を公開されている情報に従ってあらかじめ取得し,それらの局番を調査対象局番としてテーブル化しておく(パソコン1の適当な記憶手段に格納しておく)。その調査対象局番のすべてと,加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべて(1万個)の組み合せが調査対象電話番号である。」との記載,及び④ 明細書の段落0032の「ここまでは1台のパソコン1で北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアの調査を行うと説明した。同様にして,全国の電話網をいくつかの地域に分割し,それぞれの地域にて前記と同様な電話番号調査用パソコンをISDNに接続し,全国の電話番号の調査を複数の地域に分散した複数のパソコンで分担実行する。そして,それぞれ担当した地域の前記調査リストを通信などを通じて1つに集約することで,全国的な広域の調査リストを作成できる。」との記載に基づくものであり,「特許請求の範囲の減縮」(特許法第126条1項第1号)に該当する。即ち,訂正前の請求項1および2- 40 -において,「番号調査用コンピュータにより回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し」との記載は,明細書全体からして,「番号調査用コンピュータにより調査 即ち,訂正前の請求項1および2- 40 -において,「番号調査用コンピュータにより回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し」との記載は,明細書全体からして,「番号調査用コンピュータにより調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し」の意味であることが明らかであるが,そのことを明記するとともに,その「調査対象電話番号」を,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号」と減縮したものである。」(4頁10行~5頁24行)「特許法第126条第5項(独立特許要件)を満たすことについて① 本件発明本件発明は,いずれも,特に,明細書の段落0006に記載の「…(略)…」との問題点,及び,段落0007に記載の「…(略)…」という問題点を解決するためになされたものであって,「…(略)…」を目的としている(段落0008)。 そのため,訂正後の特許請求の範囲の請求項1および2に記載したように,「ISDNに接続した番号調査用コンピュータにより,使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として実行」することを特徴としており,これにより,「…(略)…」という効果を奏するものである(段落0038,0039)。また,本発明では,リストに含まれる電話番号が全国に散らばっているような場合でも,或いは,電話帳に掲載されていない番号が含まれている場合であっても,ほぼもれなくクリーニング処理を行うことができる。」(6頁10行~7頁15行)「② 先行技術- 41 -a.本件特許については,現在,東京 ない番号が含まれている場合であっても,ほぼもれなくクリーニング処理を行うことができる。」(6頁10行~7頁15行)「② 先行技術- 41 -a.本件特許については,現在,東京地方裁判所に侵害訴訟(判決注:本件訴訟)が係属中である…(中略)…。そして,これら侵害訴訟の中で株式会社クローバー・ネットワーク・コム(以下「被告」という)から,新規性欠如を理由とする特許無効の抗弁がなされ,以下の先行技術資料(判決注:乙5資料及び乙7資料)が提出された。…(後略)…b.(略)c.(略)d.甲1(判決注:乙5資料)について…(中略)…以上の点に加え,訂正後の本件発明では,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」番号を調査対象とすることにより,使用されている可能性のあるほぼすべての電話番号に発呼してその有効性を調査して有効番号リスト(請求項1)や無効番号リスト(請求項2)を作成するものである。この調査によって作成された有効番号リストや無効番号リストは網羅的なものであり,これら網羅的な有効番号リストや無効番号リストを配布し,クリーニング用コンピュータにおいて読み取り可能にし,クリーニング対象電話番号リストと対照することにより,同リスト中の有効な電話番号または無効な電話番号を区別することができるので,電話帳に掲載されていない番号を含めた殆どすべての番号について,あたかも都度発呼して電話番号の利用状況を調査するのと同様の効果を得られるものである。 これに対して,甲1に記載されたサービスにおける調査対象電話番号は,甲1「p3」記載の「①対象データ:全国約4,000万件」である。この点は,被告も,「電話帳に記載された電話番号約400- これに対して,甲1に記載されたサービスにおける調査対象電話番号は,甲1「p3」記載の「①対象データ:全国約4,000万件」である。この点は,被告も,「電話帳に記載された電話番号約400- 42 -0万件」と主張している。 したがって,甲1には,電話帳に記載された電話番号4000万件を対象として作成した電話番号データベースが作成されていることが開示されているだけであり,電話帳に掲載されていない電話番号の使用状況を調査することができるように「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」番号に対して発呼することについての開示がない。 甲1に記載された発明のように,電話帳に掲載された電話番号の利用状況を記録した電話帳データベースを用いても,電話帳に掲載されていない電話番号については結局別途発呼しない限り有効性や無効性の判定はできないのであるから,本件発明のような作用効果は得られないことは明らかである。 以上のとおり,甲1には,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」番号を調査対象とすることについて開示も示唆もないから,電話帳に掲載されていない電話番号の使用状況を調査することは不可能である。したがって,訂正後の本件発明はいずれも甲1に記載された発明から容易になしえたものなどでは決してない。」(7頁16行~10頁19行)(ウ) 上記明細書の発明の詳細な説明中の記載によれば,本件発明は,従来の,網制御回路を備えたパソコンを電話回線に加入者端末として接続し,このパソコンでフロッピーディスクなどに記録した電話番号リストを処理するという方法においては,多数の依頼人からの多数の電話番号リストを 網制御回路を備えたパソコンを電話回線に加入者端末として接続し,このパソコンでフロッピーディスクなどに記録した電話番号リストを処理するという方法においては,多数の依頼人からの多数の電話番号リストを処理するために直近の交換局で輻輳を生じやすくなるという問題や,機密保持の観点から顧客情報である電話番号リストを外部に出せないという事- 43 -情の依頼人がいるという問題があったため,電話番号リストに従って実際に網に発呼することでクリーニング処理するのではなく,電話回線網で実際に使われている電話番号をコンピュータを用いて調査し,その調査結果に基づいて網に対してはオフラインで既存の電話番号リストをクリーニング処理することにより,調査用のコンピュータ(調査装置)に直近の交換局で輻輳を起こすことがなく,また,機密保持の観点から顧客が電話番号リストを外部に出せない場合でも,顧客において自分のコンピュータで簡単にリストのクリーニング処理を行うことができるようにしたものであると認められる。 また,上記発明の詳細な説明中の記載及び本件訂正がされた経緯からすると,本件発明において「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電話番号を調査対象とすることの技術的意義は,(調査対象となる地域において)実際に使用されている可能性のあるすべての電話番号について,その利用状況を調査することにより,電話番号の網羅的な有効番号リストを作成し,このリストとクリーニング処理しようとする顧客などの電話番号リストを対照することで,上記電話番号リストのクリーニング処理をほぼ漏れなく行うことができるようにすることにあるといえ,「使用されているすべての市外局番および市内局番」とは,「市外局番及び市内局番として を対照することで,上記電話番号リストのクリーニング処理をほぼ漏れなく行うことができるようにすることにあるといえ,「使用されているすべての市外局番および市内局番」とは,「市外局番及び市内局番として使用されているすべての番号」を意味するものと解するのが相当である。本件明細書の他の記載を見ても,「使用されているすべての市外局番および市内局番」に関して,上記で検討した意味内容と異なるような説明をしている箇所は存在せず,原告の主張する「調査対象に含まれる電話番号に使用される市外局番と市内局番のすべて」と解すべき根拠となる記載は見当たらない。仮に構成要件Aを原告の主張するとおりに解すると,結局,同構成要件は「調査対象となっている電話番号を調査対象とす- 44 -る」という循環論理に帰し,「使用されているすべての市外局番および市内局番」との要件は無意味なものとなってしまうから,原告の主張する解釈を採用することはできない。 したがって,一部の電話通信事業者に割り当てられている合計566個の局番に係る電話番号については調査対象としていない被告サービスは,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電話番号を調査対象とするものとはいえず,構成要件Aを充足しない。 (2) よって,その余の構成要件の充足性について検討するまでもなく,被告サービスは,本件発明の技術的範囲に属しない。 2 争点2(被告サービスは,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等であるか)について(1) 前記1のとおり,被告サービスは,一部の電気通信事業者に割り当てられている合計566個の局番に係る電話番号を調査対象としていないから,少なくとも,「使用されているすべての市外局番および (1) 前記1のとおり,被告サービスは,一部の電気通信事業者に割り当てられている合計566個の局番に係る電話番号を調査対象としていないから,少なくとも,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電話番号を調査対象とするものではない点において,本件発明と相違する。 (2) そこで,被告サービスが本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等であるか否かについて検討するに,平成10年最判は,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分がある場合に,なお均等なものとして特許発明の技術的範囲に属すると認められるための要件の一つとして,「対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」こと(第5要件)を掲げており,この要件が必要な理由として,「特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的にそのよう- 45 -に解される行動をとったものについて,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないからである」と判示する。 そうすると,第三者から見て,外形的に特許請求の範囲から除外したと解されるような行動を特許権者がとった場合には,上記特段の事情があるものと解するのが相当である。 (3) これを本件についてみると,本件訂正がされた経緯は前記1(1)イ(イ)のとおりであり,原告は,本件訂正前の特許請求の範囲請求項1では,単に,「ISDNに接続したコンピュータにより回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し」とされ,いかなる電話番号を調査対象とするのかについて特 あり,原告は,本件訂正前の特許請求の範囲請求項1では,単に,「ISDNに接続したコンピュータにより回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し」とされ,いかなる電話番号を調査対象とするのかについて特段制限は付されていなかったものを,本件訂正により,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電話番号を調査対象とするものに限定することを明記し,これにより,乙5資料等に記載された先行技術と本件発明との相違を明らかにして,乙5資料等を先行技術とする無効事由を回避しようとしたものであることが認められる。 そうすると,原告は,本件特許発明について,本件訂正に係る訂正審判の手続において,被告サービスのように一部の局番の電話番号を調査対象としない構成のもの,すなわち,調査対象電話番号が「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」ものでない方法が,その技術的範囲に含まれないことを明らかにしたものと認めるのが相当である。 原告は,原告が本件訂正において除外したのは,電話帳データや特定の顧客リストなど,限られた電話番号群を調査対象として調査結果を記録する方法に限られるものであり,すべての電話番号という母数から出発してニーズのない局番を除外するという被告サービスのような技術まで意識的に除外したものではないと主張する。 - 46 -しかしながら,仮に,原告が,主観的には本件訂正により被告サービスの技術を除外する意図を有していなかったとしても,本件訂正は,少なくとも,第三者からみて,外形的には,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電 していなかったとしても,本件訂正は,少なくとも,第三者からみて,外形的には,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電話番号を調査対象とせず,一部の局番の電話番号を調査対象から除外しているものについては,本件特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したものと解されるべきものであるというべきである。 原告の上記主張は,採用することができない。 (4) 以上のとおりであるから,均等論の第5要件の根拠とされる禁反言の法理に照らし,被告サービスが本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等であると認めることはできない。 3 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官山門優 裁判官志賀勝- 47 -別紙被告方法目録 被告が,「DocBell」又は「ドックベル」との名称で,電話番号使用状況履歴データを被告の顧客に対して提供するサービス(ただし,ウェブ検索方式によるものを除く。) 以上- 48 -

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