- 1 -主文原判決を破棄する。 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 理由 検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は事実誤認の主張であり,弁護人小坂井久,同井原誠也の上告趣意のうち,憲法37条1項違反をいう点は,原判決が本件の審理を著しく遅延させるものとは認められないから,前提を欠き,その余は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 しかしながら,検察官の所論にかんがみ職権によって調査すると,原判決は,重大な事実誤認の疑いが顕著であって,刑訴法411条3号により破棄を免れない。 その理由は以下のとおりである。 第1審判決は,その挙示する証拠により,次の犯罪事実を認定した。 被告人は,平成14年12月ころから,中学校の同級生であったA(以下「被害者」という。)が経営する焼き肉店「a」の従業員として勤務していたところ,同人に対する負債等を理由にまともな給料ももらえず,不当に隷属させられているなどと恨みを募らせ,やがて,その殺害を考えるようになったが,同人が腕力に優れていたため,通常の手段では殺害できないと考え,けん銃で射殺しようと,その入手に努力していた。そのような中,知人のBの紹介により,Bの知人であるCを介して暴力団幹部のDから平成15年11月8日(以下,平成15年については年の記載を省略する。),ようやく自動装てん式けん銃及び適合実包を入手することができた。そこで,- 2 -(1)被告人は,被害者を殺害して同人に対する日ごろの恨みを晴らすとともに,同人が現金等を入れて持ち歩くバッグを奪い,前記けん銃等の入手を手伝ってくれたBらに対する謝礼に充てようなどと考え,11月26日午前4時25分ころ,大阪府豊中市内の被害者方前路上において とともに,同人が現金等を入れて持ち歩くバッグを奪い,前記けん銃等の入手を手伝ってくれたBらに対する謝礼に充てようなどと考え,11月26日午前4時25分ころ,大阪府豊中市内の被害者方前路上において,法定の除外事由がないのに,被害者(当時28歳)に対し,所携の38口径自動装てん式けん銃で,その直近背後から同人の背部目掛けて弾丸2発を発射し,不特定若しくは多数の者の用に供される前記路上で,けん銃を発射するとともに,これら弾丸を同人の右側肩甲部及び左側肩甲部に命中させて,その結果,即時同所において,同人を肺・肝射創に基づく失血死により殺害した上,同人所有の現金約50万円等在中の前記バッグ1個を強奪した。 (2)被告人は,法定の除外事由がないのに,前記日時場所において,前記自動装てん式けん銃1丁をこれに適合する実包約3発と共に携帯して所持した。 これに対して,被告人から控訴の申立てがあり,原判決は,第1審判決は証拠の評価を誤り,事実を誤認したものであるとして第1審判決中被告人に関する部分を破棄して,本件を大阪地方裁判所に差し戻した。 その理由の要旨は次のとおりである。第1審判決が,被告人が実行犯人であると判断した主たる理由は,B及びCの各第1審公判供述の核心部分,すなわち,被告人から依頼を受けて,B及びCにおいて被害者の殺害に用いられることが分かりながらけん銃調達を仲介し,Dが被告人にけん銃を譲り渡した現場にも立ち会ったとの部分に信用性を認めたことにある。しかし,B及びCの各公判供述は,被告人がBにけん銃入手を依頼した経過,BがCを被告人に引き合わせ,直接,被告人がCにけん銃入手を依頼した経過,Cがけん銃の入手方をDに依頼した経過と状況及び- 3 -Dからけん銃の譲渡を受けた経過と状況のいずれの点においても,それぞれの供述自体に重大な変 せ,直接,被告人がCにけん銃入手を依頼した経過,Cがけん銃の入手方をDに依頼した経過と状況及び- 3 -Dからけん銃の譲渡を受けた経過と状況のいずれの点においても,それぞれの供述自体に重大な変遷がみられるほか,各供述相互間にも食い違いがみられ,あいまいである上,客観的証拠その他の証拠とも相入れない部分も多い。そうすると,B及びCの各公判供述は,同人らが体験した事実をその記憶に従って供述しているとみることは困難であり,その核心部分に信用性を認めた第1審判決の判断には賛同できない。そして,被告人が実行犯人であると断定することをちゅうちょさせる事情として,被告人の身体や着衣からけん銃発射による火薬残さが検出されなかったこと等,被告人が実行犯人であることの物的証拠が全くないなどの事情もある。その余の証拠中には,Eの第1審公判供述により認められる被告人の犯行予告,犯行告白と評すべき言動など,被告人の犯人性を疑わせる証拠はあるが,犯行告白の真し性に関する第1審の審理は甚だ不十分であり,それのみでは,いまだ被告人の犯人性について合理的疑いを入れない程度の立証が尽くされているとはいえない。 しかしながら,原判決の上記各証拠に対する評価は,以下に述べるとおり,著しく合理性を欠いており,是認することができない。 (1)まず,B及びCの各公判供述の信用性について検討する。 アB及びCの各公判供述は,以下の点ではおおむね一致している。 ①Bは,被告人から被害者殺害のためのけん銃の調達を依頼され,依頼の内容を説明しないまま,Cに「被告人の相談に乗ってやってほしい。」旨告げてaまで連れて行った。②その場で,被告人は,Cに対し,けん銃の入手に力を貸してほしい旨の依頼をし,「被害者のカバンの中にお金があるんでそれでお礼します。」などと言っていた。Cも,被告人の 」旨告げてaまで連れて行った。②その場で,被告人は,Cに対し,けん銃の入手に力を貸してほしい旨の依頼をし,「被害者のカバンの中にお金があるんでそれでお礼します。」などと言っていた。Cも,被告人の被害者殺害の意図は分かった。③帰宅途中,Bからも強く依頼され,Cが,暴力団員のDにけん銃調達が可能か問い合わせることにな- 4 -った。Dに電話で「道具用意できますか。」と聞くと,「用意できるよ。」と言ってきた。「ポンプと違いますよ。けん銃ですよ。」と言うと,「分かってる,分かってる。」という返事だった。④Dの返事を受けて,けん銃調達に向けて話が進められ,その後,CがDから,自動式けん銃で代金100万円と言われ,Bがこれを被告人に伝えた。⑤Dとけん銃取引をする日時が11月8日と決まり,B,C,被告人の3人は大阪府豊中市内のbc店で待ち合わせ,その際,被告人はエスティマを運転してきた。そして,Cが被告人の車を運転して3人でDとの待ち合わせ場所に赴いた。Dは,BMWに乗って待ち合わせ場所に来て,エスティマに乗り込み,タオルに巻かれたけん銃や手袋あるいは軍手の中に入れた弾を見せて,その場で簡単な説明をしてこれらを譲り渡し,Cか被告人から100万円の入った封筒を受け取り,直ちに立ち去った。⑥その後,被告人は「何とかお礼を作ります。」などと言っていたが,12月中旬若しくは下旬ころ,BがCに対し,被告人からの謝礼として40万円を持参し,20万円ずつ折半した。 以上のとおり,BとCの各公判供述は相互にその信用性を補強している。そして,これらの供述をした当時,両名は,強盗殺人等の各幇助で起訴されていたのであり,自分たちが重い処罰を受けて服役することを覚悟の上で,事実に反してまで,けん銃入手の仲介をした旨の供述をする動機は考え難いし,また,それが被告人からの ,強盗殺人等の各幇助で起訴されていたのであり,自分たちが重い処罰を受けて服役することを覚悟の上で,事実に反してまで,けん銃入手の仲介をした旨の供述をする動機は考え難いし,また,それが被告人からの依頼に基づくものである旨の供述をする動機も考え難い。また,各公判供述に表れた被告人等の行動の裏付けとなる証拠も存在する。すなわち,11月8日にbc店で3人が待ち合わせたことは,同店の伝票等により,けん銃の取引当日,被告人が乗ってきた車がエスティマであったことは,被害者の兄Fの供述により,それぞれ裏付けられている。また,B及びCは,Dは紺色ないし黒系統のエアロ付- 5 -きの3シリーズのBMWで来たと供述しているが,Dが11月上旬ころの数日間,上記の特徴を有するBMW1台を預かって乗っていた事実が判明している。さらに,中学校時代からの被告人の親友であるEは,第1審公判において,被告人が,被害者に恨みがあり,同人を殺害するためけん銃を入手したいと言っていたことやけん銃の入手に成功し,そのけん銃で被害者を撃つと言っていたことを聞いた旨供述し,B及びCの各公判供述を裏付けている。加えて,関係証拠によれば,被告人は海外においてけん銃を発射したことがあり,その操作の経験があること,過去に自らけん銃の取引を企てたことがあること,被告人は金銭問題などから被害者を深く恨み,殺意を抱くまでになり,けん銃を入手したいと考えていたと自認していることが認められ,被告人がけん銃の入手を企てることについて,これを不自然とするような状況はないというべきである。これらの諸点に照らすと,B及びCの各公判供述は,高度の信用性を有するものと認められる。 イ原判決は,B及びCの各公判供述は信用することができないとするが,その理由として説示するところは,いずれも首肯し難い。その主要な ,B及びCの各公判供述は,高度の信用性を有するものと認められる。 イ原判決は,B及びCの各公判供述は信用することができないとするが,その理由として説示するところは,いずれも首肯し難い。その主要な点を述べると次のとおりである。 (ア)被告人がB及びCに対しけん銃入手の仲介方を依頼した経緯について原判決は,①Bは,10月初旬ころ,aか自宅あるいは実家の近辺で,被告人からけん銃の手配を依頼されたと供述するが,aは同月2日から14日まで営業していなかったなど,B供述は,aの営業実態に合致しない,Bは,事前に電話をもらい,自宅あるいは実家付近で被告人から依頼を受けたのかもしれないとも供述するが,被告人の携帯電話の発信記録によれば,同月初旬ころの被告人からB(携帯電話,自宅及び実家の電話)への通話は皆無である,②Bは,10月26日から28- 6 -日のいずれかの日に,事情を話さないままCを誘ってaに連れて行き,同所で被告人はCに対し,けん銃を段取りしてほしいと頼んだと供述するが,前記の間のaの「お会計票」には,Bらのaへの来店を示す記載がない,また,Bは,取調べ初期の警察官調書において,Cにあらかじめ被告人が被害者を殺害するためにけん銃を欲しがっていることを伝えたと供述し,Cも,逮捕時の弁解録取書において,まずBからけん銃入手の依頼があったと供述しており,供述の変遷がみられ,信用性に乏しい,という。 しかし,①については,Bが10月初旬ころに被告人から依頼があったとする点は,大体そのあたりという程度の記憶であり,そのように記憶している目印とか,根拠とかはないというのであり,時期について確かな記憶によるものではない。また,最初にけん銃入手を依頼された場所についても,B供述によれば,aのほか,豊中市d町の自宅,同市e町の実家の近所のいずれかであ とかはないというのであり,時期について確かな記憶によるものではない。また,最初にけん銃入手を依頼された場所についても,B供述によれば,aのほか,豊中市d町の自宅,同市e町の実家の近所のいずれかであった可能性もある。そうすると,同月初旬のaの営業実態と対比してみても,B供述の信用性が弾劾されたことにはならないし,そのころの発信記録が皆無である点も同様である。この点は,Bが,被告人からけん銃入手を依頼され,その後も何度も電話があったがこれを断っていたところ,その後,弟のGがコンビニ強盗を敢行して10月23日に警察に逮捕され,その直後の24日に被害者からGを小ばかにするような電話を受けて被告人の依頼を受ける決意をしたと供述していること,被告人の携帯電話の発信記録によると,同月14日に1回,18日から23日までの間に数回,Bの実家に通話した旨の記録があり(Bは実家によく行っており,他方,Gはコンビニ強盗を敢行した同月18日の数日前には実家を出たというのであるから,少なくとも18日以降のものは,Bあてのものと考えることが自然である。),また,同月22- 7 -日,23日にBの携帯電話に通話した旨の記録が残っていること,被告人がEに対して同月14日にけん銃入手の意図があることを話していることなどを総合すれば,Bは,同月14日から23日までの間に,被告人からけん銃入手の依頼を受けたものと推認できる。②については,Bは,10月26日ないし28日の会計伝票に名前は出てこないが,aに行った記憶がある旨供述し,また,Cも,話に夢中だったので,食べたか,食べていないか記憶にない旨供述している。これらの供述によると,けん銃入手の依頼の話が中心であり,店にいた時間も1時間足らずというのであるから,会計伝票に記載しなければならないような飲食の事実はなかった可能 いか記憶にない旨供述している。これらの供述によると,けん銃入手の依頼の話が中心であり,店にいた時間も1時間足らずというのであるから,会計伝票に記載しなければならないような飲食の事実はなかった可能性がある。また,飲食の事実があったとしても,同店を手伝っていたFの供述によれば,知人が来たときや自分らが飲むときに利用する他人名義の伝票があり,それに付けたりしており,被告人も同様のことを行っていたというのである。これらの状況に照らすと,Bらの飲食の事実を記載した会計伝票がないことを理由に,B及びCの各公判供述の信用性を否定することはできない。また,原判決の指摘している供述の変遷については,Bは,その後の調書で内容を訂正している旨供述している。Cの公判供述によれば,同人の弁解録取書もその後供述内容が訂正された調書が作成されたことがうかがわれる。捜査初期に記憶違いや記憶の混乱があり,その後の記憶喚起の過程で供述内容を訂正することはあり得ることであり,この点を考慮せずに,そのような性格の捜査初期の供述の一部と公判供述を形式的に対比し,その信用性を論ずるのは適切ではない。 (イ)CがDに対しけん銃の入手方を依頼した経過について原判決は,①aからの帰宅途中に,CがDに電話してけん銃の入手方を依頼したとする点は,CがBの携帯電話で車内から電話し,Bはその内容を直接聞いたのか- 8 -(B供述),Cが車から降りて公衆電話で電話し,電話を終えて車に戻りその内容をBに話したのか(C供述)という重要な点に食い違いがあり,各供述の信用性に疑問を生じさせる,また,突然電話したのに,ごく簡単なやり取りで承諾を受けたというのであり,余りに内容に乏しい,②Cの警察官調書中に,「最初に依頼された3日後くらいにaに行き,いったん店外に出て,Dと連絡を取って,けん銃入手を 話したのに,ごく簡単なやり取りで承諾を受けたというのであり,余りに内容に乏しい,②Cの警察官調書中に,「最初に依頼された3日後くらいにaに行き,いったん店外に出て,Dと連絡を取って,けん銃入手を依頼して了承を得た。」旨の供述記載があり,他方,Bの警察官調書中には,「帰りの車中でCに依頼した後,11月初めころ,Cから電話があり,2,3日後にけん銃を用意できるなどと言ってきた。」旨の供述記載があり,いずれにも供述の変遷がある,以上によれば,両名が経験していない事実を供述している疑いをぬぐえない,という。 しかし,①については,Cは,その経過について,帰りの車中でBに熱心に頼まれ,共通の知り合いで暴力団員であるDに電話することとし,Bの携帯電話に登録されていたDの電話番号を調べた上,豊中方面に帰る途中の電話ボックスで止めてもらい,車から降りて公衆電話からDに電話をかけた,公衆電話を利用したのは,けん銃の話だったので盗聴等を恐れたためである,前記のような内容の会話がDとあってけん銃入手について承諾してくれた,自分は驚いた状態で車に戻り,その電話の内容を一部始終Bに説明した,Bも驚き,「用意できるんやったら何とか用意して。」と頼まれ,自分も引くことができなくなり,けん銃入手の段取りをすることになった旨供述している。公衆電話を選択した理由,Dとのやり取り,Dの応答に驚いた様子などが具体的に述べられており,特に,Dに怒鳴られて断られると思っており,Dに断られればBも納得するだろうという考えであったが,意外にも用意できると言われ,思わず「ポンプと違いますよ。けん銃ですよ。」と言った- 9 -とする点は,実際に経験した者でなければ語り得ない迫真性がある。電話の点について,Bは,前記のように供述しているが,Bの携帯電話からDの電話番号を調べたこと,C けん銃ですよ。」と言った- 9 -とする点は,実際に経験した者でなければ語り得ない迫真性がある。電話の点について,Bは,前記のように供述しているが,Bの携帯電話からDの電話番号を調べたこと,CからDとのやり取りを細かく聞いたことなどから,記憶違いが生じた可能性がある。②については,原判決の指摘するCの警察官調書は平成16年5月18日付けのものであるが,同年5月21日付け検察官調書ではaの帰宅途中にDと連絡を取ったと公判供述に近い内容に供述を訂正している。また,Bの警察官調書は同年5月3日付けの捜査当初のものであり,帰宅途中にDに電話したとの部分が欠けているが,B自身,その時の調書の内容には記憶違いがあり,帰宅途中に連絡を取ったことは後に供述している,と説明している。原判決がこれらの点を考慮せずに,記憶喚起が不十分な捜査初期の供述の一部と公判供述とを形式的に対比するのは適切とはいえない。 (ウ)受渡日の確定等のC・D間のやり取りと被告人への連絡等について原判決は,B及びCの各供述は,けん銃の種類,実包の数,調達可能な時期,代金額,取引日等に関し,Dとの間で交わされたやり取りや,被告人にどう伝えたかについて,内容に乏しく,終始あいまいである,という。 しかし,あいまいな点はあるが,B及びCは,Dからけん銃調達の承諾を得てから,その受渡日までの間に,けん銃の入手時期,その種類,代金額,取引日,時間帯等について,D及び被告人と連絡を取って取引の段取りが決まっていった状況をそれぞれ供述している。特に,被告人から,過去に受渡しに失敗して損をしているので,被告人も取引に立ち会って現金とけん銃の受渡しを同時に行いたいとの希望が出され,Cは,Dが1対1の取引を希望していたため,その点は伝えなかったが,被告人の事情も酌み,Dに怒られるのを覚悟で自分の で,被告人も取引に立ち会って現金とけん銃の受渡しを同時に行いたいとの希望が出され,Cは,Dが1対1の取引を希望していたため,その点は伝えなかったが,被告人の事情も酌み,Dに怒られるのを覚悟で自分の判断で被告人を連れて行- 10 -くことにしたとの部分は,虚構では語り得ない事情であると評価できる。 (エ)本件けん銃等の受渡日当日の状況について原判決は,①第1審判決は,bの伝票等が同所での集合の事実を裏付けるというが,けん銃取引を裏付ける事実ではないし,伝票が第三者の伝票である可能性も残る,②本件けん銃の受渡状況については,受渡場所が道路状況や交通量に照らすと車と車で落ち合ってけん銃取引を行うには不自然な場所である,また,Cは,Dが乗ってきたBMWは前方に停止し,同人は自分たちの車の後部座席に乗り込んだと供述し,Bは,後方に停止し,助手席に乗り込んだと供述するが,同じ体験をした者が異なった供述をすることは通常考え難く,両者が体験していない事実を供述したためではないかとの疑問を解消できない,という。 しかし,①については,関係証拠によれば,bが集合場所として特定された経過は次のとおりである。Bの捜査段階の供述に基づき捜査が行われ,Bの供述する「b」は,大阪府豊中市f所在のbc店と判明し,同店の11月上旬の伝票とジャーナルを捜査したところ,11月8日午前10時8分,2名が入店し,その後,同日午前10時18分,もう1名が加わって3名となり,その後,同人らが同日午後11時10分に会計を済ませたことを示す伝票とジャーナルが見つかり,これらの時刻,座ったテーブル位置,注文したものがB供述とほぼ一致していた。Bは,この伝票等を確認して自分の記憶に合うものと認めている。これらの点に照らすと,この伝票等は,Bらのbへの集合事実を裏付けているものと評価でき ーブル位置,注文したものがB供述とほぼ一致していた。Bは,この伝票等を確認して自分の記憶に合うものと認めている。これらの点に照らすと,この伝票等は,Bらのbへの集合事実を裏付けているものと評価できる。そして,B及びCともに,同所で被告人が現金を持参したことを確認した上,取引場所に向かったと供述し,bへの集合事実は本件けん銃取引の一過程を示す重要な事実である。②については,Cは車の交通量はほとんどないところであると供述し,Bも同- 11 -趣旨の供述をし,本件現場がけん銃取引場所として不自然な場所とはいえない。供述の食い違いの点については,Cは,自己の面前でBの公判供述を聞いていたにもかかわらず,B供述と食い違う供述をしており,その記憶に従って供述しているものと考えられ,他方,Bも記憶喚起しながら公判で供述している状況がうかがえる。けん銃取引が11月上旬であり,両名が供述を始めたのがその半年後の平成16年5月上旬であること,自分自身の行動に関することではないことなどを考慮すると,どちらか一方に記憶違い等が部分的に生じても不自然とはいえず,重要な部分で一致しているB及びCの各公判供述の信用性を損なうものではない。 (オ)けん銃調達犯人の容疑者としてDの名前が出た経緯について原判決は,平成16年4月にBの事情聴取の際,Bが所持していた携帯電話を提出したところ,Bが,発信履歴中,暴力団関係者としてDの名前を出し,これを契機にDがけん銃調達犯人との嫌疑を受けるに至ったが,これを察知したB及びCにおいて,これを奇貨として,Dがけん銃調達犯人である旨の虚偽供述に及んだのではないかとの疑問は,可能性の一つとして排斥できず,D以外のけん銃調達犯人をB及びCが秘匿している可能性は否定できない,という。 しかし,関係証拠によれば,CとDは,中古車販売の仕 偽供述に及んだのではないかとの疑問は,可能性の一つとして排斥できず,D以外のけん銃調達犯人をB及びCが秘匿している可能性は否定できない,という。 しかし,関係証拠によれば,CとDは,中古車販売の仕事仲間であったが,Cは,平成16年2月ころに交際していた女性の関係で生じたトラブルについてDに相談し,アドバイスを受けるなどしていたというのであり,Dに対して恩義を感じこそすれ恨みを抱く関係にはなかったと認められる。また,Bは,Cを介してDと知り合った程度の関係である。このように,C及びBが,Dに対して恨みを持っていたわけでもないのに,Dをけん銃調達犯人とする旨の虚偽供述に及んだとは考え難い。また,捜査の経緯をみても,Bは,平成16年5月3日,Dが暴力団員であ- 12 -ることからお礼参りを恐れていたが,警察がそのようなことはさせないと約束したことなどから,正直に話す決意をし,Dの関与も含めて事実関係を初めて自供したものである。他方,Cは,同年5月8日に逮捕され,同様の供述をしているが,その際の心境について,自分が仲介したけん銃で被害者が死亡していることを警察官に言われ,とんでもないことをしてしまった,洗いざらいしゃべらないといけないと思った旨供述している。このような経緯に照らしても,原判決が憶測するような事情で虚偽供述に及んだとすることは余りにも不自然である。 (カ)Dのアリバイについて原判決は,Dは,本件けん銃等の受渡しが行われた11月8日は,早朝から夜遅くまで神戸市灘区gの中古車のオークション会場にいたとアリバイを主張しているが,同日,Dが内妻Hと共にオークション会場に入場していたことを示すDとHの仮IDカード発行申請書が存在することが確認され,同日にDがオークション会場に入場したことは間違いのない事実となったのであり,この事実は, 内妻Hと共にオークション会場に入場していたことを示すDとHの仮IDカード発行申請書が存在することが確認され,同日にDがオークション会場に入場したことは間違いのない事実となったのであり,この事実は,Dが本件けん銃等の取引現場に出向いた事実と両立しないか,重大な障害となる客観的事実である,という。 しかし,同オークションは早朝から夜に及ぶまで二千人から三千人の者が入場して約九千台の中古車について行われるもので,その間入場者は会場を自由に出入りできるものである。そして,B及びCの各供述によると,本件のけん銃取引は11月8日昼ごろということになるところ,関係証拠によれば,オークション会場から取引現場まで約35㎞であり,制限速度を遵守したとしても車で30分から1時間で到達できる距離であることが認められ,午前11時ころにh(中古車のオークション会場)を出れば,正午ころにけん銃譲渡場所に到着することが可能であるし,- 13 -また,正午ころに本件けん銃の受渡しを行った後にhに向かえば,遅くとも午後1時ころに同会場に入場することができる。Dのアリバイに関する証拠としてEの証人尋問調書等が取り調べられているが,同人の証言内容は,11月8日にオークション会場のテーブルのある休憩場所で,D,Hらとお茶を飲んで歓談したが,その時刻は昼ごろから夕方までの間と思うという幅のある時間帯の中のものであって,同日正午前後のDの行動を明らかにするものではない。また,原判決は,所用のある日に本件けん銃の取引日を設定するのは不自然であるとも指摘するが,一般にそのようにいうことはできないし,オークション会場の前記状況からすれば,その当日にけん銃を手渡すことが特に不自然ともいえない。そして,B及びCの各供述によると,Dは非常に急いでいたというのであり,Dが当日オークション会場 きないし,オークション会場の前記状況からすれば,その当日にけん銃を手渡すことが特に不自然ともいえない。そして,B及びCの各供述によると,Dは非常に急いでいたというのであり,Dが当日オークション会場に行っていたことと矛盾するものではない。以上のとおり,11月8日にDがオークション会場に入場したことが,Dが取引現場に出向いた事実と両立しないか,重大な障害となる客観的事実であるとの原判断には直ちに賛同することはできない。 (2)次に,被告人の犯行告白の真し性等について検討する。 ア原判決は,Eは,被告人から,①10月14日,阪急神戸線神崎川駅近くの飲み屋で,「被害者からゴルフクラブで殴られたり,家の権利証を持ってこいと言われるなど様々な仕打ちを受けているので,被害者を殺害するためけん銃を入手しようとしている。」旨打ち明けられたこと,②11月17日,iの居酒屋で「けん銃の入手に成功した。」「黒い衣類のようなものに巻いてある。」などと聞かされ,それと思われる衣類を見たこと,③12月10日ころ,知人が同席するj区内の居酒屋で,「自分が被害者を殺した。後ろから撃った。全部一人でやった。かばんを持って逃げた。火薬検査が出たけれども,2日前に被害者と山に鉄砲を撃ちに- 14 -行ったと説明し,それで免れた。使用したけん銃はだれにも分からないところに隠した。」旨の告白を受けたことを認定し(日時の特定は,被告人の第1審公判供述による。),①,②の犯行予告は,間接的なものであるが,③の犯行告白は,冗談等でない限り,被告人の犯人性と直接結びつくものであるとした。 イ原判決は,その上で,被告人の犯行告白の信用性には以下に述べるような疑問点があるというが,その理由として説示するところは,いずれも首肯し難い。 (ア)被告人の犯行予告,犯行告白の信用性を担保する証 原判決は,その上で,被告人の犯行告白の信用性には以下に述べるような疑問点があるというが,その理由として説示するところは,いずれも首肯し難い。 (ア)被告人の犯行予告,犯行告白の信用性を担保する証拠がないこと原判決は,①B及びCの各供述の信用性は疑問があり,被告人がB,Cの仲介によりDからけん銃を入手した事実は認められないから,Bらの各供述が,被告人の犯行告白等の裏付けとなっているとはいえない,②被告人がけん銃を使用した犯人であるとすれば,約5時間後に行われた着衣や両手の微物採取により,けん銃射撃発射による火薬の残さが検出される可能性があるのに,射撃発射残さが発見されておらず,けん銃ないしそのこん跡も発見,押収されていないのであって,本件において,被告人の犯人性に結びつく客観的な証拠は一切ない,という。 しかし,①について理由がないことは,既に検討したところから明らかである。 ②については,原判決の指摘する客観的証拠が存在しないことはそのとおりであるが,そのことと被告人が犯人であることとは矛盾するものではない。すなわち,鑑定を担当した大阪府警の技術吏員の第1審公判供述によれば,自動装てん式けん銃の場合には,構造上,射撃発射残さの付着量が非常に少ない上,残さというのは金属の微少な粒で,これは非常に落ちやすいものであり,射撃発射残さが身体等に付着しているのは,おおむね,けん銃発射後最大2,3時間くらいに着衣等の鑑定資料が押収された場合であるというのである。本件けん銃は,自動装てん式である- 15 -上,犯行時刻の約5時間後に微物採取が行われており,被告人が犯人であるとしても,けん銃射撃発射残さが検出されなかったことは不自然とはいえない。けん銃が発見,押収されていない点は,B供述によれば,被告人はけん銃をガスバーナーでばらばらにして捨てたと 被告人が犯人であるとしても,けん銃射撃発射残さが検出されなかったことは不自然とはいえない。けん銃が発見,押収されていない点は,B供述によれば,被告人はけん銃をガスバーナーでばらばらにして捨てたというのであり,この点も不自然とはいえない。 (イ)被告人の犯行告白の真し性について原判決は,被告人は,友人らとの酒席の場で,あけすけに何の脈絡もなく一方的に犯行告白したことになるが,告白時の状況と告白内容の深刻度,秘密性とは余りに不釣合いであり,本気で犯行告白をしたと断定するのはちゅうちょを感じざるを得ない,また,Eは,被告人から,「火薬検査により反応が出た。」旨を聞いたと供述しているが,鑑定結果が判明したのは平成16年2月のことであって,被告人があえてうそを言ったことになり,真実を述べる態度の薄弱さを示している,被告人は,「みんなが犯人だと疑っていると思い,ちょっと投げやりな気持ちで言った。」などと供述しており,無責任な発言である可能性も一概に否定できない,という。 しかし,E供述によると,前記のような犯行予告を聞き,考え直せ,逃げたらいいなどと説得したが,「お母さんに迷惑が掛かる。無理やねん。」などと言って聞き入れなかったという経緯があった上で,後日,被告人の前記犯行告白があったというのであり,それまでのEとのやり取りからすれば,「あけすけに何の脈絡もなく」なされたものとはいえないし,その内容に照らしても,「投げやりな気持ち」や冗談で容易に言えるようなものではない。また,「火薬検査により反応が出た。」旨いう点については,関係証拠によれば,被告人が11月26日に警察に出頭した際,けん銃射撃発射残さの検査のために,被告人の着衣や両手から微物採取- 16 -が行われていること,被告人の12月17日付け警察官調書には,11月24日に被害者と共 11月26日に警察に出頭した際,けん銃射撃発射残さの検査のために,被告人の着衣や両手から微物採取- 16 -が行われていること,被告人の12月17日付け警察官調書には,11月24日に被害者と共にk山に行き,被告人がけん銃の試し撃ちをした旨の供述が録取されており,被告人は,出頭当日から既にそのような供述をしていたことが認められる。 このことは,被告人において,検査により,火薬反応が出るものと信じていて,これを懸念していたことを示すものであり,かつ,けん銃授受の当日,Bが被告人にけん銃を撃つと火薬反応が出る旨を告げると,被告人は驚いた様子を見せ,何とかすると言っていた旨のB供述ともよく符合している。そうすると,被告人において被害者と山にけん銃を撃ちに行ったと供述することによって捜査官の追及を免れようとしたとみることができる状況があったのであり,Eとの間の火薬検査に関する会話は,犯行告白の真実性を裏付ける方向のものとはいえても,真実を述べる態度の薄弱さを示しているとは到底いえない。以上からすれば,無責任な発言である可能性も一概に否定できないとして,犯行告白の真し性に疑問を呈する原判決には賛成できない。 以上によれば,原判決が,B及びCの各公判供述には信用性がなく,被告人がB及びCの仲介によりDからけん銃を入手した事実は認められないとし,さらに,E供述によって認められる被告人の犯行告白の真し性に疑問を呈しているのは,証拠の評価を誤り,ひいては重大な事実の誤認をした疑いが顕著であるというべきである。これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。 よって,刑訴法411条3号により原判決を破棄し,同法413条本文に従い,更に審理を尽くさせるため,本件を大阪高等裁判所に差し戻すこととし,裁判官 決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。 よって,刑訴法411条3号により原判決を破棄し,同法413条本文に従い,更に審理を尽くさせるため,本件を大阪高等裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 - 17 -検察官岡崎正男公判出席(裁判長裁判官古田佑紀裁判官津野修裁判官今井功裁判官中川了滋)
▼ クリックして全文を表示