平成20(ワ)475 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年2月28日 神戸地方裁判所 姫路支部
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判決文本文59,821 文字)

平成23年2月28日神戸地方裁判所姫路支部平成20年(ワ)第475号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,原告Aに対し,2686万4432円並びにうち142万9794円に対する平成21年7月16日から支払済みまで及びうち2543万4638円に対する平成19年4月2日から支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,3680万7332円並びにうち142万9794円に対する平成21年7月16日から支払済みまで及びうち3537万7538円に対する平成19年4月2日から支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 5 この判決は,第1,2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,5667万7538円及びこれに対する平成19年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,5447万7538円及びこれに対する平成19年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の従業員であったCが自殺したのは,被告の安全配慮義務違反により長時間労働等の過重な業務に従事させられた結果,うつ病を発症したことによるものであるとして,Cを相続した原告らが,被告に対し,債務不履行又は不 法行為に基づき,原告Aにつき損害金5667万7538円及び同Bにつき損害金5447万7538円並びにこれらに対するCが死亡した日である平成19年4月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案 害金5667万7538円及び同Bにつき損害金5447万7538円並びにこれらに対するCが死亡した日である平成19年4月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(1) 当事者等ア原告A及び同Bは,Cのそれぞれ父及び母である。 Cは,昭和57年1月16日に出生し,大学を卒業した後,平成16年4月に被告に入社したが,平成19年4月2日,被告社宅の自室において自殺(縊死)した。 (甲61)イ被告は,乗用車,トラックの製造,販売等を目的とする株式会社である。 (2) Cの配属先,担当業務等Cは,平成16年4月,被告に入社し,新入社員教育期間を経て,死亡するまで被告購買本部第三部品購買部エンジン部品グループに所属し,バイヤーサブ業務の後,バイヤーとして勤務していた。Cの死亡当時における同購買部の構成は,部長がD,エンジン部品グループのグループマネージャーがE,アシスタントマネージャーがFであった。 Cは,当初はガスケット部品の購買業務を担当していたが,平成18年11月から,エンジン用フィルターの担当に替わった。取引相手は,ガスケット部品については,そのほとんどが国内メーカーであったが,エンジン用フィルターに関しては,イギリスのソゲフィ社がそのほとんどであった。 (3) 被告における勤務形態1日の所定拘束労働時間は,午前9時から午後5時45分までであり(休憩時間45分を含む。),週休2日制(土・日曜日)が採られていた。そして,被告における従業員の労働時間の管理は,おおむね各従業員が専用して いるパソコンからサーバー上に保管されている「出勤簿」にアクセスし,自ら始業・終業時刻を打ち込んで記入する られていた。そして,被告における従業員の労働時間の管理は,おおむね各従業員が専用して いるパソコンからサーバー上に保管されている「出勤簿」にアクセスし,自ら始業・終業時刻を打ち込んで記入する方法によりされていた。 また,従業員が,残業を行う際には,事前ないし事後に上司に対し電子メールでその旨の申請を行ってその許可を受け,自己申告によりサーバー上の「出勤簿」に終業時刻を打ち込んでいた。なお,就業規則上は,残業の際の午後5時45分から午後6時までの15分間は,休憩時間とされていた。 (4) ソゲフィ社をめぐるトラブル被告では,Cがバイヤーとしてソゲフィ社を担当していた時期,同社をめぐって,以下のようなトラブルが発生していた。 ア誤品納入問題平成18年11月,ディーラーからの報告により,高油圧用エレメントラベルが貼られた個装箱に,低油圧用エレメントが誤梱包されて出荷され,その一部は既に市場に出回っていることが判明した。 イエコタイプフィルター不具合問題ソゲフィ社製のエコタイプフィルターに関し,量産開始時から平成16年10月までの生産品につき,エンジン油圧に耐えられずカバーが割れるおそれがあるという不具合があり,被告でも合計11万4000台の車両のリコールが必要となっていたが,この市場不具合の発生原因については,被告とソゲフィ社側とで認識が異なっており,責任比率が未決定となっていた。 ウ納入不良改善目標未達継続問題ソゲフィ社製品の品質が低いため,品質不良製品の納入率の目標数字を達成できない状態が継続していた。 エ品質選別工程の中国移管問題ソゲフィ社製品は,その品質が低いため,従来,品質選別作業をソゲフィ社の負担においてマロッ 品の納入率の目標数字を達成できない状態が継続していた。 エ品質選別工程の中国移管問題ソゲフィ社製品は,その品質が低いため,従来,品質選別作業をソゲフィ社の負担においてマロックス社が行った上で,被告に納入されていたが, ソゲフィ社は,平成18年12月,コスト削減を理由に,今後はソゲフィ上海が選別作業を行うことを提案してきた。しかし,同提案は,被告からすれば,新規のサイトでリスクが高い上に,コストアップを伴うものであったため,提案の見直しがなければ受け入れられる内容ではなかった。 オ出荷停止問題上記エ記載の中国移管問題に関する交渉が難航する中,ソゲフィ社は,被告に対し,オイルフィルターにつき,平成19年3月1日以降もソゲフィ上海ではなくマロックス社での品質選別を要求するならば,量産用・出荷用ともに30円の値上げをすること,いずれにするか同月2日までに回答すべきことを申し入れ,同フィルターの出荷を停止したため,在庫量と再出荷の日程次第では,生産ラインがストップしてしまう危険があった。 (5) Cの死亡,原告らの相続Cは,平成19年4月2日,被告社宅の自室において,自殺(縊死。以下「本件自殺」という。)した。これにより,原告らは,Cの有していた権利義務を,それぞれ2分の1ずつ承継した。 (6) 遺族補償金,弔慰見舞金等の支給等ア広島中央労働基準監督署長による支給広島中央労働基準監督署長は,平成21年1月29日付けで,本件自殺につき業務災害と認め,同日ころ,原告Aに対し,1382万7380円(葬祭料57万1380円,遺族補償金854万6000円,遺族特別支給金300万円,遺族特別一時金171万円)を支給し,さらに,同年10月22日付けで,上記支給にか 告Aに対し,1382万7380円(葬祭料57万1380円,遺族補償金854万6000円,遺族特別支給金300万円,遺族特別一時金171万円)を支給し,さらに,同年10月22日付けで,上記支給にかかる決定を取り消し,同日ころ,新たに170万1520円(葬祭料4万1520円,遺族補償金138万4000円,遺族特別一時金27万6000円)を追加支給した。 イ被告による支払被告は,Cの葬儀(平成19年4月5日)の際,原告らに対し,弔慰見 舞金として15万円を支払うとともに,上記ア記載の業務災害認定を受け,平成21年7月15日,被告の「業務上災害および通勤途上災害見舞金支給規程」に基づく特別見舞金として,上記既払金15万円を控除した残額2485万円を支払った。 2 争点(1) Cの業務の過重性(争点1)(原告らの主張)ア質的過重性(ア) ファシリテーター業務Cは,平成19年4月11日から同月18日までの間,同年度の新入社員教育におけるファシリテーターとして,事務・技術系新入社員約40名のクラスを担当することが決まっており,その間は,引率,スケジュール管理等で,所定労働時間中に本来的業務に従事することは不可能であり,後述のとおり,同月以降に本部品質会議及びソゲフィ社との対策会議を控えていたCにとっては,その準備のために必要な時間を確保できないという予測のもと,一層の焦燥感,不安感に苛まれることとなった。 (イ) ソゲフィ社対応の困難性a ソゲフィ社の特殊性による困難性被告では,エンジン用フィルターのほとんどを,ソゲフィ社から購入していたが,同社の製品は従来から品質が低く,不具合率が高かった上に,同社から得られる対応も悪く 社の特殊性による困難性被告では,エンジン用フィルターのほとんどを,ソゲフィ社から購入していたが,同社の製品は従来から品質が低く,不具合率が高かった上に,同社から得られる対応も悪く,「札付き」のメーカーであるといわれていた。また,日本国内には,ソゲフィ社の営業窓口が存在しないため,日常的な連絡についても,イギリスとの英語による電話や電子メール,テレビ会議等が必須であった上,ソゲフィ社の勤務時間帯は,時差の関係から日本の夕方以降であり,夕方から夜にかけて の連絡が中心とならざるを得なかった。 さらに,ソゲフィ社の使用言語が日本語ではない以上,言葉の壁が存在し,慣習の違いによる困難性もあることに加え,ソゲフィ社の場合,単なる海外メーカーというにとどまらず,被告と提携関係にあってオイルフィルターを共同納入しているフォード社と被告とを比較した場合に,被告側の意見よりもフォード社側の意見を重視していたと思われること,品質改善に取り組む姿勢も欠如していたこと等から,ソゲフィ社との交渉はさらに困難を伴うものであった。 ちなみに,Cの前任者は,入社後20年程度を経たGであったが,ソゲフィ社に対する対応の困難さから,精神的に不安定となって帯状疱疹を発症し,同担当を外れた。 b ソゲフィ社との取引上のトラブル(a) 誤品納入問題同問題に関し,Cは,担当バイヤーとして,責任比率に関する交渉をソゲフィ社との間で行っていたが,同社は全く責任を認めず,交渉は難航した。同問題は,発生から4か月後の平成19年3月中旬に,被告がソゲフィ社に対して費用の求償をしないということで決着したが,約4か月間の交渉にもかかわらず,ソゲフィ社が強硬な態度を崩さなかったため,Cは大きな は,発生から4か月後の平成19年3月中旬に,被告がソゲフィ社に対して費用の求償をしないということで決着したが,約4か月間の交渉にもかかわらず,ソゲフィ社が強硬な態度を崩さなかったため,Cは大きな精神的負担を抱えていた。 また,この問題につき,被告購買本部は,同月30日に本部品質会議を開催することとし,Cは,その報告のため,ソゲフィ社に対し聴取,調整を行っていたが,同社は上記トラブルの原因の説明を変遷させたり,再発防止策についても「今後注意する」程度の回答しか行わないなど,日本的品質管理を全く理解していないといわざるを得ない状況であったため,被告から要求されている水準の情報や回答を得られず,結局,同会議は,Cの発表内容案が不十分であ るとして同年5月に延期されたが,これがソゲフィ社との取引の困難性,非協力性等によるものであることは明らかであって,この事実が,Cにさらなる精神的負荷を強いたことは明らかである。 (b) 中国移管問題と出荷停止問題中国移管問題についても,Cが,平成18年12月からコスト面及び品質確保面に関する交渉を担当していたが,ソゲフィ社からは,品質確保の具体的な提案がされなかったこと等により,交渉は難航していたところ,平成19年3月初旬には,同社が一方的に出荷停止を通告してきた事実が発覚し,これはバイヤーであるCにとっては,欠品問題につながり製造ラインがストップするという危険がある衝撃的な通告であったため,まさに追い詰められた状態であった。 結局,この問題は,被告が,同月5日からCのサポートとしてDを当てることを決定し,同人の交渉により,同月15日には出荷が再開されることとなったが,これは,Cが本来部長レベルの人間が直接対応に当たらなければ処理できないトラブルを生 日からCのサポートとしてDを当てることを決定し,同人の交渉により,同月15日には出荷が再開されることとなったが,これは,Cが本来部長レベルの人間が直接対応に当たらなければ処理できないトラブルを生じさせる可能性が高い非常に困難な案件につき,恒常的に担当していたことを端的に示すものである上,同日時点でも,依然として同年2月12日を最後にソゲフィ社から日本に向けての出荷はされていない状態が続いており,Cは,重圧に押しつぶされそうになりながら悩み苦しんでいた。 また,同年4月3日には,ソゲフィ社の担当者が被告に来社し,中国移管問題及び出荷停止問題に関する対策会議が開催されることとなっており,Cは,同会議に向けての段取りや,同会議で使用する状況説明のための報告書,資料等の準備を行い,同会議における状況説明もCが担当するものであったと思われるが,当時の被告とソゲフィ社との関係からすれば,この会議の準備も心理的負荷の大 きなものであった。 c 担当者の変更さらに,これらの問題を抱える中で,平成19年2月末ころには,ソゲフィ社の担当者(H)が担当を外れ,後任には問題を十分に把握していない人物が選任されたため,同社とコミュニケーションを取ることは,ますます困難となった。 (ウ) 多忙な時期(決算月)にあったこと本件自殺の直前の平成19年3月は決算月であり,担当バイヤーにとっては,部品メーカーとの価格折衝を最終決着させ,価格改定の事務処理を済ませる必要があり,1年で最も多忙な時期であるところ,Cは,これに加え,ソゲフィ社との間に前記問題を抱えており,突出して業務多忙で追い詰められていた。 (エ) バイヤーとしての経験の不十分さ前記のとおり,Cが担当し るところ,Cは,これに加え,ソゲフィ社との間に前記問題を抱えており,突出して業務多忙で追い詰められていた。 (エ) バイヤーとしての経験の不十分さ前記のとおり,Cが担当していたフィルター購買業務は,非常に困難なものであったのであるが,それにもかかわらず,C自身,優秀な従業員であったとはいえ,入社3年目であり,バイヤーとしての経験はまだまだ不十分なものでしかなかったため,一層困難な業務となっていた。 (オ) サポート体制の不十分さエンジン用フィルターの購買担当業務は,上記のような困難かつ多数の問題を抱えていたにもかかわらず,Cは,上司であるF及びEから適切なサポートを受けていなかった。すなわち,Cの直属の上司であり同人を最も近くでサポートすべき立場にいたFは,自らが抱える業務に手一杯で,Cのサポートまでは行き届かない状態であり,Cの抱えている業務内容を理解しておらず,Cが相談に行っても,頭ごなしに「そんなことではダメだ。自分でよく考えてから相談に来い。」などと叱責するのみであった。また,グループマネージャーであるEも,自己の弔事や 自らが抱える次期エンジンプロジェクトの件で,Cの業務にまで目が行き届いていなかった。その結果,Cは,上司からの適切なサポートを受けることなく,数々の難題の解決に1人で取り組まなければならなかった。 さらに,Cは,上司からパワーハラスメントとも評価すべき対応を受けていた。すなわち,Cは,前記のような困難かつ多数の問題解決に向け,ソゲフィ社との交渉並びに会社内部の本部品質会議及びソゲフィ社との対策会議の準備に1人で取り組んでいたため,恒常的に残業せざるを得ない環境に追い込まれており,平成19年2月26日の時点で36協定で決められた残業時間数を に会社内部の本部品質会議及びソゲフィ社との対策会議の準備に1人で取り組んでいたため,恒常的に残業せざるを得ない環境に追い込まれており,平成19年2月26日の時点で36協定で決められた残業時間数をオーバーする可能性が出てきていたにもかかわらず,Fは「残業しなければならないのは,自分の業務能率が悪いからだ。」などとCを叱責し,Cの残業申請を認めず,同申請をしにくい状況に追い込み,Cに対し残業しないよう「業務時間内にできないのであれば,自宅に持ち帰ってやれ。」などと命じていた。 (カ) まとめ以上のように,Cは,まだ入社3年目であったにもかかわらず,従来入社20年程度のベテランが担当してきたフィルター購買業務を担当させられた上,数々の困難な問題点につき,上司から適切なサポートを受けることもなく,むしろ,自己の仕事内容を非難されながら,1人で従事せざるを得なかったのであって,このような業務内容のCの心身に与える負荷が過重なものであったことは,明らかである。 イ量的過重性(ア) 被告内での労働時間a 労働時間の把握の仕方被告における従業員の労働時間管理は,前記前提事実(3)記載のとおりであるが,同出勤簿は,自己申告によるものではあるものの,現 実には会社及び上司からの残業時間抑制の圧力等から過小にしか申請されないのが一般であり,実際も,業務を行うに当たりワードやエクセルによる文書の作成,関係各所との間の電子メールでのやりとりが必要であり,その業務をするに当たってはパソコンが必要不可欠であったCのパソコンの電源のオン・オフの時刻とかなり異なっているのであって,Cの労働時間の実態を反映しておらず,全く信用できない。 そこで,Cが使用していたパソコンの ンが必要不可欠であったCのパソコンの電源のオン・オフの時刻とかなり異なっているのであって,Cの労働時間の実態を反映しておらず,全く信用できない。 そこで,Cが使用していたパソコンのログ記録に基づく電源が入れられた時刻及び切られた時刻をそれぞれ始業時刻及び終業時刻と考えるのが合理的であり,ログ記録が残っていない場合には,最終の送信メール時刻ないし文書更新時刻を終業時刻とし,それによっても明らかにできない日については,他の多くの日と同様に午前8時10分ころには始業し,午後9時30分ころまでは業務に従事していたと推定するのが合理的である。 また,午後5時45分から午後6時までの15分間は,就業規則上は休憩時間であるが,Cは当時多忙を極めていたことからすれば,同人が,この15分間に休憩を取っていたとすることは,社会常識的な経験則に照らして,全く不当であるといわざるを得ない。 b 労働時間以上に基づいて,Cの被告滞在中における時間外労働時間につき,厚生労働省労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室「脳・心臓疾患の労災認定実務要領」(平成15年3月・甲72。以下「本件実務要領」という。)に当てはめて計算すると,下記のとおりとなる(別紙1参照)。 記死亡1か月前 70時間40分 2 61時間27分 3 51時間37分 4 45時間43分 5 70時間54分 6 40時間59分(イ) 被告外(自宅)における業務実態(時間外労働)また,被告では,終業時間に関 5 70時間54分 6 40時間59分(イ) 被告外(自宅)における業務実態(時間外労働)また,被告では,終業時間に関して,水曜日には午後6時以降の残業が,それ以外の平日であっても午後10時以降の残業が,特別な許可がない限り一律に禁止されており,Cは,自らが行うべき業務量が過重であるため,被告勤務時間内には処理することができず,自宅に持ち帰って業務を行っていた。 なお,Cの自宅でのパソコンの利用の全てが業務を行うためのものであったとは断定できないものの,Cが,平成19年以降,ソゲフィ社に対する業務に関して多忙を極め,到底被告滞在中に済ませることのできる分量ではなかったことは容易に想像でき,毎日のように,業務を自宅へ持ち帰り,自宅においても相当程度の長時間にわたる時間外労働を余儀なくされていたことは明らかである。 (ウ) まとめ上記被告内外における時間外労働を併せ考えると,Cは,優に月80時間を超えた時間外労働を余儀なくされていたものと考えられる。 (被告の主張)ア質的過重性(ア) ファシリテーター業務新人研修自体は,平成19年4月2日から同月18日まで実施されたが,Cのファシリテーターとしての業務は,同月11日及び12日の午後,同月13日及び17日の終日のみであり,延べ3日間にすぎず,その業務内容も,工場見学の付添いやコミュニケーションワーク(ケース スタディを通して仕事の進め方を体感する研修のこと。)の立会い等にすぎず,特段の事前準備が必要な業務ではなく,原告らが主張するような同月3日のソゲフィ社との対策会議の準備に大きな支障が出るような業務では決してなかった。 方を体感する研修のこと。)の立会い等にすぎず,特段の事前準備が必要な業務ではなく,原告らが主張するような同月3日のソゲフィ社との対策会議の準備に大きな支障が出るような業務では決してなかった。 (イ) ソゲフィ社対応の困難性a ソゲフィ社の特殊性による困難性ソゲフィ社の製品の品質や同社から得られる対応が,他社に比して特に低いということはなく,同社は,海外サプライヤーとしては,ごく平均的な取引先であり,実際,Cの後任者は,Cの1年後輩の従業員ではあるが,特に問題なく業務をこなしている状況である。また,英語を必要とする業務は,英語が苦手な者にとっては困難な業務といえるが,Cは,英語能力に優れていたのであり,その英語能力もあってソゲフィ社担当となったのであるから,同人にとっては困難な業務であったとはいえない。さらに,ソゲフィ社とのやり取りに当たっては,電話やテレビ会議を使用した場合もあったものの,その多くが電子メールを使用したものであり,かつ,基本的には夕方にメールを送信し,それに対する返信メールを翌朝に確認するという方法をとっていたから,原告らが主張するような時差による影響はほとんどなく,その余の原告らの主張も,根拠のないものにすぎない。 そして,Cは,平成18年10月11日から平成19年3月31日までの間に有給休暇を合計4日取得しており,これは購買本部内においても平均的なものであって,他の従業員に比して極端に少ないということもない。 b ソゲフィ社との取引上のトラブル(a) エコタイプフィルターに関する市場不具合の対策問題は,その内容が技術面に関する事柄が中心であり,主に品質部門や開発部門が 解決すべき問題であった以上,そもそも購買部門の一従業員に (a) エコタイプフィルターに関する市場不具合の対策問題は,その内容が技術面に関する事柄が中心であり,主に品質部門や開発部門が 解決すべき問題であった以上,そもそも購買部門の一従業員にすぎないCが負荷を感じる性質の業務ではなかった。また,納入不良改善目標未達成継続問題についても,国外のどのサプライヤーについても,多かれ少なかれいわば恒常的に生じていた問題であるところ,Cの自殺の直前に注目すべき特段の具体的問題が発生していたわけではない。 (b) 誤品納入問題当該問題に関するソゲフィ社と被告との間の責任比率の決定については,検査部門や品質部門などを中心とする協議によるものであって,購買部門のみで責任比率を決定するものではない上,Cは,単に被告の窓口として会議のセッティング(スケジュール調整と招集)や議事録作成等を行っていたにすぎず,交渉する責任など一切負っておらず,同問題は,平成19年3月中旬には解決した。 また,本部品質会議でのプレゼンテーションについても,確かにCがソゲフィ社から容易に情報を収集したとはいえないが,この程度の支障は,他の海外サプライヤーからの情報収集の際にも当てはまることであって,ソゲフィ社が特段非協力的な会社であったとの事実はない。さらに,同プレゼンテーションは,あくまでも問題解決後における若手従業員の教育を主たる目的とするものにすぎず,原告らが主張するほど負荷の大きな業務ではないし,Eは,同年2月5日ころには既に指示をしていた上,Cのソゲフィ社からの情報収集が不十分であったことを踏まえ,それでもなお予定どおりの発表を命じるなどはせず,発表を延期するという措置を講ずるなどして,Cの事情を十分に踏まえた対応を取っており,これによりCの精神的負荷はむ 収集が不十分であったことを踏まえ,それでもなお予定どおりの発表を命じるなどはせず,発表を延期するという措置を講ずるなどして,Cの事情を十分に踏まえた対応を取っており,これによりCの精神的負荷はむしろ軽減されたというべきである。 (c) 中国移管問題と出荷停止問題 まず,原告らはソゲフィ社からの出荷停止の通告が平成19年3月初旬であった旨を主張するが,正しくは同年2月下旬であり,出荷停止の事実も,Dが同年3月5日に部品部門からの通知により初めて把握したものであって,Cも同人からその旨の「事実」を聞いたにすぎない。そして,Dが出荷停止問題につき対応したのは,一バイヤーだけでの対応は困難であるため,本来はその直属の上司であるEが対応すべきところ,同人が多忙であったため,直接対応したものであって,Cにとっての負荷は大きなものではなく,Cの業務が,恒常的に困難なものであったといえないことは明らかであり,また,Cが,自分自身で解決できなかったと無力感を覚えるようなものでもなかった。 そして,Dは,同月15日午後5時ころ,ソゲフィ社の事業本部長と電話で協議し,同社に出荷を再開させる約束をさせ,その結果,その翌週には出荷が再開されたのであるから,危機的状況にはなかった。 さらに,同年4月3日のソゲフィ社との対策会議についても,同年3月27日の社内事前会議において,上記会議の内容として関係する品質,開発,物流などの各部門と,交渉のスケジュール,方針,品質基準,検証期間の設定など具体的な詰めを行い,この件に関する交渉に向けての準備は全て終了していたのであり,Cが実施した業務は,DやEの指示のもと,事前会議の段取りや状況説明のための資料の準備を行い,その後はスケジュールの原案の な詰めを行い,この件に関する交渉に向けての準備は全て終了していたのであり,Cが実施した業務は,DやEの指示のもと,事前会議の段取りや状況説明のための資料の準備を行い,その後はスケジュールの原案の作成と場所の確保や参加者の調整などの段取りを行っていたものであり,対策会議当日も,会議にはD及びEが出席して話をすることになっており,Cはサポート程度の役回りであって,担当者として多少の説明が求められるかもしれないという程度であり,Cにとって負荷のかかる 業務とは到底いえないものであった。 c 担当者の変更中国移管問題についてのソゲフィ社の担当者はIであり,Hは全く関係がない。また,同氏の退社それ自体についても,その2週間前には,本人からCを含めた関係者に対し,後任者の氏名及びメールアドレスともども連絡があったのであり,それによって業務が非常に困難となったという事実はない。 (ウ) 多忙な時期(決算月)にあったこと3月期は,どのバイヤーにとってもいわゆる価格交渉の事後処理があるため,一般的には1年で最も多忙な時期といえるが,Cが担当していた樹脂部門の場合,価格改定のための交渉は主として第1部品購買部が行い,その改定された価格を適用するパターンが多く,Cが本格的な価格改定交渉を行うことはなく,他の従業員に比較して突出して多忙であったということはなく,むしろ比較的余裕があった。 (エ) バイヤーとしての経験の不十分さ経験が浅く1人前ではないから海外サプライヤーを担当できないということはなく,また,Cの業務内容は,客観的にみて,原告らが主張するほど負荷の大きいものではなく,Fはもちろん,DやEも上司の立場としてCの業務をフォローしていた以上,経験が浅いがためにCに いということはなく,また,Cの業務内容は,客観的にみて,原告らが主張するほど負荷の大きいものではなく,Fはもちろん,DやEも上司の立場としてCの業務をフォローしていた以上,経験が浅いがためにCに一層大きな負荷がかかったとはいえない。 (オ) サポート体制の不十分さ既述のとおり,出荷停止問題については,発生当初からDが直接対応しており,そのほかの問題についても,Cの上司が,同人からの報告や相談内容を踏まえ,具体的な指示をするなど,Cに対しては適切な指導ないしサポートが行われていた。 イ量的過重性 (ア) 被告内での労働時間a 労働時間の把握の仕方出勤簿は,必ずしもCの労働時間を反映したものではないため,パソコンのログ記録を前提として,ログ記録がない場合には,文書更新時刻,メール送信時刻を前提として労働時間の算定をすることは認める。なお,平成19年1月31日及び同年2月8日については,パソコンのログ記録等がないため,所定労働時間(午前9時から午後5時45分まで(45分の休憩時間を除く。))をCの労働時間とすべきである。 但し,被告において,時間外労働を行う場合,午後5時45分から午後6時までの15分間は休憩時間とされているから,Cが所定の終業時刻を経過した後に時間外労働を行う場合は,その日の休憩時間は45分(午後零時から午後零時45分まで)に15分(午後5時45分から午後6時まで)を加算した合計1時間である。また,パソコンのログ記録等から,Cの終業時刻が午後6時より前となる場合でも,結果的に労働時間が8時間を超えたとみなす日については,休憩時間を1時間として計上すべきである。 そして,時間外労働時間の計算方法についても,労 業時刻が午後6時より前となる場合でも,結果的に労働時間が8時間を超えたとみなす日については,休憩時間を1時間として計上すべきである。 そして,時間外労働時間の計算方法についても,労働安全衛生法66条の8第1項に基づき厚生労働省労働基準局長が平成18年2月24日付けで告示した「労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について」(基発第0224003号・乙20。以下「本件告示」という。)に定める計算方法,すなわち,「1か月の総労働時間数(労働時間数+延長時間数+休日労働時間数)-(計算期間(1か月)の総暦日数/7)×40」により計算するのが相当である。 この点,原告らが主張する計算方法は,本件実務要領に基づくもの であるが,これはあくまでも狭義の脳・心臓疾患の場合の労災認定実務要領であって,しかも労働基準監督官向けの内部資料であり,一般に公開されているものではない。また,被告における休憩時間は,昼の45分のみならず午後5時45分から午後6時までの15分間も休憩時間となっているが,原告らはこれを全く考慮していない。さらに,原告らは,パソコンのログ記録が出勤簿上の始業ないし終業時刻内に収まっている日についても,一律に始業時刻を午前8時10分,終業時刻を午後9時30分としているが,何らの客観的根拠もないから,所定労働時間,すなわち,午前9時から午後5時45分(その間45分の休憩時間を除く。)を労働時間とすべきである。 b 労働時間これをもとにCの時間外労働時間を計算すると,下記のとおりとなる(別紙2参照)。但し,この中には,業務に直接関係しない組合活動や私的なものも含まれているし,Cの出社時刻が,始業時刻よりも早い午前8時前後であった点についても, 間を計算すると,下記のとおりとなる(別紙2参照)。但し,この中には,業務に直接関係しない組合活動や私的なものも含まれているし,Cの出社時刻が,始業時刻よりも早い午前8時前後であった点についても,業務が多忙であったことによるものではなく,単に同人の生活習慣に基づくものであることが明らかであるから,Cの労働時間は,より少ないものである。 記死亡1か月前 53時間14分 2 39時間38分 2か月平均 46時間26分 3 24時間07分 3 39時間00分 4 19時間57分 4 34時間14分 5 52時間38分 5 37時間55分 6 18時間59分 6 34時間46分(イ) 被告外(自宅)における業務実態(時間外労働)そもそも,原告らが主張する自宅における労働は,被告の指示による ものではなく,Cは,平成19年3月28日から同月30日にかけての当時,休日の返上が迫られるほどの緊急を要する義務を課せられてはいなかったのであって,上司が業務遂行を指示することはあり得ない。また,Cが自宅にて作成したと思われる資料は,ごく一部を除き,上司の作成指示によるものはなく,さらに,必ずしも同人が作成したものといえない資料も多く,仮にCが作成していたとしても,それほど負荷の大きなものはなかった。したがって,Cの自宅での作業自体は,同人の業務の過重さを示す証左とはいえない。 (ウ) まとめCの労働時間,特に時間外労働時間についても,極端に長いものではなく,自宅における徹夜での業務についても,上司の指示によるものではないことはもち はいえない。 (ウ) まとめCの労働時間,特に時間外労働時間についても,極端に長いものではなく,自宅における徹夜での業務についても,上司の指示によるものではないことはもちろんのこと,客観的にも自宅でのなおかつ徹夜による業務を余儀なくされる状況ではなかった。 (2) 業務と本件自殺との間の相当因果関係(争点2)(原告らの主張)Cは,過重な業務により,平成19年3月上旬ないし中旬ころにうつ病を発症し,同月下旬にはこれが重症化し,これによって正常な認識,行為選択能力が著しく阻害され,又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺したものであり,その死亡には業務起因性が認められる。 (被告の主張)Cの業務内容は,客観的に特段困難なものではなく,また,上司による援助も十分されていたことから,Cにとって負荷の大きな業務ではなかったことは明らかであり,客観的に同人をして自殺を余儀なくさせるようなものではなかったといわざるを得ず,うつ病以外の原因による自殺の可能性も否定できず,その限りにおいては,Cの自殺の主な原因は不明であるといわざる を得ないから,業務起因性は認められない(なお,業務以外の出来事や,個別的要因としては,平成19年2月下旬の引越しによる生活環境の変化やCの性格等を考慮する必要がある。)。 仮にCがうつ病を発症していたとしても,業務とうつ病の発症との間に相当因果関係が肯定されるためには,当該業務自体が,当該精神疾患を発症,増悪させる一定程度の危険性を内在し又は随伴していることが必要であり,業務の心理的負荷の程度については,本人が感じたままにストレスの強度を理解することは困難であり,またそれで足りるものではなく,ストレスの性 一定程度の危険性を内在し又は随伴していることが必要であり,業務の心理的負荷の程度については,本人が感じたままにストレスの強度を理解することは困難であり,またそれで足りるものではなく,ストレスの性質上,本人が置かれた立場や状況を十分にしんしゃくして出来事の持つ意味合いを把握した上で,ストレスの強度を客観的見地から評価することが必要であるところ,本件でのCの業務による心理的負荷は,既述のとおり,客観的にみて特に過重であったとはいえないから,やはり因果関係は認められない。 (3) 被告の安全配慮義務違反(争点3)(原告らの主張)ア被告が負う安全配慮義務の内容使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負担が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないようにする義務を負う。そして,事業者は,その責務として,労働安全衛生法に定める労働災害防止のための最低基準を遵守するだけではなく,快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じ,職場における労働者の安全と健康を確保するための措置を講ずる義務を負っており,事業者は,労働者の心身両面における危険又は健康障害を防止することを目的として,具体的措置を講ずべきことが求められているということができる。 したがって,事業者は,労働環境を改善し,あるいは労働者の労働時間, 勤務状況等を把握して,労働者にとって長時間又は過酷な労働とならないように配慮するのみならず,労働者が労働に従事することによって受けるであろう心理面又は精神面への影響にも十分配慮し,過重負荷が認められる場合にはその軽減措置等の適切な措置を講ずべき義務を負っている。 そして,使用者に安全配慮義務違反が認められるためには であろう心理面又は精神面への影響にも十分配慮し,過重負荷が認められる場合にはその軽減措置等の適切な措置を講ずべき義務を負っている。 そして,使用者に安全配慮義務違反が認められるためには,予見可能性が必要とされるが,予見義務の内容として,具体的に特定の疾患の発症を予見し得たことまでは要求されず,「過重労働をすれば,労働者の健康が悪化するおそれがある」という抽象的な危惧が予見し得たならば予見可能性は肯定されるのであって,具体的には,①使用者又は代理監督者たる上司が,当該労働者が心身の健康を損なっている状態(体調悪化)を認識していたか又は認識可能であった,若しくは,②心身の健康を損なう原因となった労働実態について,使用者又は代理監督者たる上司が認識していたか又は認識可能であった,のいずれかが認められれば十分である。 イ被告の注意義務違反質的過重性のところで既述したことからすれば,Cがいかに優秀な社員であったとしても,これら質的に過重な業務に1人で対処することは困難を極めることは明らかであり,当然,被告及びCの上司は,その質的過重性(仕事の困難さ,精神的負担の大きさ)を,Cから直接の報告ないしは週報による報告により認識しており,また,これら困難な業務に対処するためには,必然的に時間外労働を行わざるを得なくなるが,Cが社員の中でも目立って残業が多かったことは多数の社員が認めており,だからこそ,Fは,Cの残業申請を認めようとせず,同人に対し自宅残業を命じたというべきであることからすれば,②被告及び代理監督者たる上司は,心身の健康を損なうおそれがあるほどに質的にも量的にも過重なCの労働実態につき,十分に認識していたというほかはない。また,Cは,平成19年3月上旬からその言動は誰の目にも異常に映ったのであり,少な 心身の健康を損なうおそれがあるほどに質的にも量的にも過重なCの労働実態につき,十分に認識していたというほかはない。また,Cは,平成19年3月上旬からその言動は誰の目にも異常に映ったのであり,少なくともこの 時点において,①使用者又は代理監督者たる上司は,Cの体調悪化を認識していたはずであり,仮に認識できていなかったとすれば,それ自体が労働者の健康管理に何ら意を払っていないことの証左であるから,いずれの要件に照らしても,被告に予見可能性があったことは明らかである。 そして,既述のとおり,Cは,同月5日以降にDがサポートに入る以前には,適切な支援体制はなく,一人一担当制のもと,上司であるEやFがCをサポートせず,一人で困難な業務を抱え込み続けており,同日以降も,Dがサポートしたからといってそれで十分な支援がされたと評価することはできず,むしろ,被告は,Cを新入社員研修のファシリテーターに指名して仕事量を増やし,かつ,Cの上司らは,Cの能力不足に問題を矮小化して残業申請をしないように圧力をかけ,あろうことか自宅での持ち帰り残業を示唆し,さらにはソゲフィ社から情報が入手しにくいがために十分な資料を作成できないという事情があるにもかかわらず,叱責する等の理不尽な対応を取り,Cを追い詰め,これにより,同人の症状は,悪化の一途をたどったのであるから,被告が,Cの心身の健康を損なうことがないように注意して適切な措置を講ずることを怠り,安全配慮義務に違反したことは,明らかである。 (被告の主張)ア被告が負う安全配慮義務の内容被告が,Cに対し,安全配慮義務その他の使用者が負うべき種々の義務を負っていたことは,一般論としては認める。しかし,予見可能性の対象は,単なる「労働実態」ではなく,「健康状態の悪化 内容被告が,Cに対し,安全配慮義務その他の使用者が負うべき種々の義務を負っていたことは,一般論としては認める。しかし,予見可能性の対象は,単なる「労働実態」ではなく,「健康状態の悪化という結果を生む原因となる危険な状態」であるというべきであって,しかも,健康状態の悪化が単に認識し得ただけでは足りず,「容易に」認識し得た場合に限って予見可能性を肯定できるのであって,労働実態が「異常な長時間労働であるかどうか」が重要な判断要素として位置付けられるというべきである。 したがって,労働実態自体が,一見して異常なものとはいえない事案については,そもそも健康状態の悪化という結果を生む原因となる危険な状態(労働実態)自体が認められず,当然,使用者側の予見可能性は否定されてしかるべきである。また,同じく労働実態自体が,一見して異常なものとはいえない事案において,仮に従業員の精神障害の発症,ひいては自殺という結果を招き,なおかつ,業務起因性が認められた場合でも,労働実態自体が一見して異常なものとはいえない以上,多くの場合,容易に労働実態を認識することは不可能であるから,使用者側が過失責任を負うということはあり得ない。 イ被告の注意義務違反(ア) 本件の場合,Cの労働実態が,一見して異常なものとは到底いえない以上,被告が,Cの健康状態の悪化を容易に認識し得たということはあり得ず,Cの上司であるD,E及びFも口を揃えて,Cがうつ病などの精神障害を発症していたことを認識していなかった旨を述べており,他の多くの同僚なども,自殺当時,同じくうつ病等の精神障害の発症又はその疑いを認識していた者は一人もいなかったのであるから,被告が,Cのうつ病等の精神障害の発症を,現に認識し,または容易に認識し得たということ 僚なども,自殺当時,同じくうつ病等の精神障害の発症又はその疑いを認識していた者は一人もいなかったのであるから,被告が,Cのうつ病等の精神障害の発症を,現に認識し,または容易に認識し得たということも認められない以上,やはり,被告には,予見可能性は一切認められない。 (イ) そして,そもそも,Cの時間外労働時間は,特に長時間であったというものではなく,当時,Cに課せられていた業務は,客観的には決して過重なものではなく,ましてや自宅での勤務を余儀なくされるほどのものでも決してない。それに加えて,Cは,毎週土日は被告に出勤しておらず,また,有給休暇も複数日取得しており,少なくとも自殺の3か月前において,休日出勤は一切していなかった。 また,Cが担当していた業務は,入社3年目の従業員としてはごく平 均的なレベルのものであり,実際,Cの後任者は,Cの1年後輩の従業員ではあるが,特に問題なく業務をこなしている状況である。さらに,Cは,特に健康面を理由に欠勤したり体調不良を訴えるようなことはなく,昼食も自席で弁当を食していたものであり,体調不良を思わせるような事情は一切なく,平成19年3月4日には被告の駅伝大会にも出場しており,元気に走っていた。それに加えて,仮にCがうつ病を発症したとしても,その発症の時期は,同月30日ころかそれ以降であって,同年4月2日に自殺するまでの期間はごく短期間であった。 そうすると,Cの行動自体に特に体調不良を思わせるような事情は認められず,また,仮に同人がうつ病を発症していたとしても,その発症から自殺までがごく短期間であったことに鑑みれば,Cがうつ病に罹患し,その後に自殺したことが通常生じ得る結果であるといえないことはもとより,被告が,Cの使用者として,同人が自殺するに至るこ その発症から自殺までがごく短期間であったことに鑑みれば,Cがうつ病に罹患し,その後に自殺したことが通常生じ得る結果であるといえないことはもとより,被告が,Cの使用者として,同人が自殺するに至ることを予見していたとか,相当の注意義務を尽くせば予見が可能であったとまでは到底いえない。 (4) 損害(争点4)(原告らの主張)ア Cの損害 8895万5076円(ア) 慰謝料 3000万円Cは,平成16年4月に被告に入社して以来,真面目で努力家,リーダーシップがあり,被告も,Cにつき責任感が強く,緻密で対応の早い仕事ぶりであったと高く評価しており,職場の同僚からの信頼も厚い等,社会人としても今後の成長が大変期待される人物であった。 それにもかかわらず,Cは,前記のとおり自殺に追い込まれ,その態様は,包丁やカッターナイフで手首を切り,包丁で腹を刺したものの死にきれず,荷造り用のロープで5回ほど首を巻き自分で絞めて自殺した ものであって,死亡時の状況は凄惨なものであった。 以上を踏まえると,Cの無念さは計り知れず,C本人の慰謝料として,3000万円を認めるのが相当である。 (イ) 逸失利益 5895万5076円Cは,平成16年3月に神戸大学経済学部を卒業していることから,平成18年賃金センサスによる男性大卒全年齢平均年収676万7500円を基礎に,生活費割合0.5,労働能力喪失期間42年間に対応するライプニッツ係数17.423を採用して計算すると,同人の逸失利益は,次のとおりとなる。 計算式:676万7500円×(1-0.5)×17.423イ原告Aの損害 5667万7538円(ア) Cからの相続分 4447 人の逸失利益は,次のとおりとなる。 計算式:676万7500円×(1-0.5)×17.423イ原告Aの損害 5667万7538円(ア) Cからの相続分 4447万7538円計算式:8895万5076円÷2(イ) 慰謝料 500万円Cは,原告らの息子であり,兄弟姉妹として姉2人,双子の兄1人がいるところ,年末年始やゴールデンウィーク,お盆などの長期旅行中には原告らの元に帰省しており,家族仲は大変良く,C自身,家族思いであった。このようなCを一瞬にして失ってしまった原告らの無念は計り知れない。 一方,被告は,本件自殺が業務に起因するものであることを未だに認めておらず,被害弁償していない。また,Cの勤務実態につき,被告の人事部によって関係者からのヒアリング等も行われていたが途中で中止されたようであるなど,原告らは,被告の対応に関し,一層の苦痛を感じている。 以上の事実を考慮すれば,原告Aの慰謝料として,500万円が相当である。 (ウ) 葬儀費 200万円原告Aは,喪主として,平成19年4月4日にZ会館において通夜を営み,同月5日には告別式を営んだ。 (エ) 弁護士費用 520万円弁護士費用として,上記(ア)ないし(ウ)の合計額のほぼ10パーセントに当たる520万円を認容するのが相当である。 ウ原告Bの損害 5447万7538円(ア) Cからの相続分 4447万7538円(イ) 慰謝料 500万円(ウ) 弁護士費用 500万円(被告の主張)ア損害額いずれも争う。 仮に被告がCの死亡につき法的責任を (イ) 慰謝料 500万円(ウ) 弁護士費用 500万円(被告の主張)ア損害額いずれも争う。 仮に被告がCの死亡につき法的責任を負う余地があったとしても,原告ら主張の損害額は,過大に過ぎる。 また,被告がCの自殺が業務に起因するものであることを認めないことなどは,慰謝料発生の根拠たり得ず,そのほか,原告らが主張する人事部によるヒアリングの中止についても,被告における調査主体の変更に伴うものであって,原告らが主張するような事実の隠匿,改ざん,廃棄等を意図したものでは一切ないから,原告Aの固有の慰謝料は,そもそも法的根拠のないものであるといわざるを得ない。 イ損益相殺等(ア) 広島中央労働基準監督署長からの支給決定項目のうち,葬祭料61万2900円及び遺族補償金993万円(前記前提事実(6)ア)は,本件訴訟における原告らの請求原因と同一の事由について支給されたものであるから,損益相殺として,それぞれ葬儀費及び原告Aが相続したCの 逸失利益から控除されるべきものである。 (イ) また,被告が支払った見舞金2500万円(前記前提事実(6)イ)につき,原告ら及び被告は,本件訴訟の結果如何にかかわらず原告らが被告に対し返還する義務がないことを確認するとともに,これをCの慰謝料を原因とする損害につき遅延損害金・元本の順に充当し,なお残額が存在するときには,同人の逸失利益を原因とする損害につき遅延損害金・元本の順に充当する旨を合意している。 (ウ) したがって,仮に被告が原告らに対し損害賠償責任を負う場合でも,損益相殺及び被告の弁済により,合計3554万2900円の限度で消滅している。 (原告らの主張)被告 (ウ) したがって,仮に被告が原告らに対し損害賠償責任を負う場合でも,損益相殺及び被告の弁済により,合計3554万2900円の限度で消滅している。 (原告らの主張)被告が上記イ(イ)で主張する充当の順序については,争わない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実に加え,証拠(各項末尾掲記(但し,枝番及び孫番は省略する。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) Cの配属等ア Cは,平成16年4月,被告に入社し,新入社員教育期間を経て,同年8月から,被告購買本部第三部品購買部エンジン部品グループに所属し,グループのバイヤーサブ業務を担当した後,平成18年4月から,バイヤーとして勤務していた。 Cは,バイヤーとして,当初,ガスケット部品の購買業務を担当していたが,同年11月から,エンジン用フィルターの担当に替わった。平成19年3月当時,Cが担当していた部品納入業者(サプライヤー)は,エンジン関係の濾過部品(オイルフィルター等)が2社,同樹脂部品が11社であり,入社3年目の従業員の担当としては,部品数,サプライヤー数と もに標準的なものであった。 また,Cは,バイヤーとしての業務の傍ら,サブバイヤー1名の指導・育成,アンマッチ削減リーダー(納入時点までに価格合意・登録ができていない部品を削減する活動のこと。),グループ内の紹介販売取りまとめ役を担当し,そのほか,平成18年4月より,第三部品購買部を代表して,労働組合の職場委員を務めていた。 (甲5,甲47,甲74,甲87,乙26,証人D3(尋問調書の丁数を示すが,当該箇所に限定する趣旨ではない。以下同じ。))イそして,本件自殺当時の第三部品購買部の構成は,部長がD,エンジン部 5,甲47,甲74,甲87,乙26,証人D3(尋問調書の丁数を示すが,当該箇所に限定する趣旨ではない。以下同じ。))イそして,本件自殺当時の第三部品購買部の構成は,部長がD,エンジン部品グループのグループマネージャーがE,同グループのうちCの所属する吸気・排気・冷却部門のアシスタントマネージャーがFであった。 (甲86)(2) ソゲフィ社についてアソゲフィ社は,Cが担当していたサプライヤーの1つであり,本社をイギリスに置き,被告は,エンジン用フィルターに関しては,そのほとんどを同社から購入していた。被告とソゲフィ社とは,約7年間にわたる取引があり,Cは,J,Gに継いで,5人目の担当バイヤーであった。 被告購買本部においては,従業員は,入社2年目から担当バイヤーとして独立して業務に従事するが,もともとバイヤー業務は,多くのサプライヤーとの間の日々の調整,交渉において,細かなトラブルや行き違いが日常的に発生するため,経験が必要とされ,担当一人が独立当初から品質問題などを含めすべてをこなすには難があり,特に海外のメーカーは,一般的に,①納入不安,②品質問題,③情報の遣り取り(コミュニケーション)の面で難があるものであった。そして,ことソゲフィ社については,本社がイギリスであるため,時差等の関係で,直接のコミュニケーションがとりにくいほか,同社との取引に関与した従業員の印象では,品質面に おいては,日本的な品質管理の重要性を理解せず,被告の要求する水準の情報や回答を得られず,問題が恒常的に発生し,また,納品面についても,ある日,突然,出荷を止めるといったことを通達してきて部品を取決めどおりに納入しないことがあり,そのほか,被告からの問い合わせに対し,無回答,無反応であったりと,ソゲフィ社ほどいう 品面についても,ある日,突然,出荷を止めるといったことを通達してきて部品を取決めどおりに納入しないことがあり,そのほか,被告からの問い合わせに対し,無回答,無反応であったりと,ソゲフィ社ほどいうことを聞かないサプライヤーはおらず,取引をするに難の多い会社であって,前記前提事実(4)記載のとおり,Cがバイヤーとして同社を担当していた時期,被告では,同社をめぐって,①誤品納入問題,②エコタイプフィルターの不具合問題,③納入不良改善目標未達継続問題,④品質選別工程の中国移管問題,⑤出荷停止問題といった問題が発生していた。 イもっとも,海外サプライヤーについては,多かれ少なかれソゲフィ社と同様の問題を抱えており,CがGから引き継いだ担当部門も限定されていたこと等からすれば,入社3年目のCに,ソゲフィ社を担当させたこと自体が酷であったとまではいえないが,上司の適切なサポートなしに同社を担当することは,バイヤーとしての荷が重すぎるものであった。 (甲5,甲9,甲16,甲21,甲22,甲25,甲26,甲39,甲48,甲85,証人K3ないし5,同J3ないし7・31ないし33,同L4・11,同G4・5・29・30)(3) Cがソゲフィ社の担当バイヤーとなった後の同人の勤務状況や言動等ア Cは,平成18年11月1日付け被告購買本部第三部品購買部エンジン部品グループ内の業務担当替えに伴い,Gから,同人が担当していた取引先のうち,ソゲフィ社に関する担当の引き継ぎを受けた。 (甲22,乙25,証人G13)イ平成18年11月,被告の国内及び海外の販売店(ディーラー)向けのソゲフィ社製交換用オイルフィルターが,同社のラベル貼り間違いによって,同社英国工場から,本来とは異なる部品番号表示の梱包で発送され, その 月,被告の国内及び海外の販売店(ディーラー)向けのソゲフィ社製交換用オイルフィルターが,同社のラベル貼り間違いによって,同社英国工場から,本来とは異なる部品番号表示の梱包で発送され, そのままディーラーに届いていたことが発覚した(誤品納入問題)。被告は,同問題に対する対応として,回収可能な出荷済み部品や社内在庫品の入替えを実施した。 Cは,担当バイヤーとして,上記対応費用につき,ソゲフィ社との責任比率の折衝を行った。被告としては,ソゲフィ社自身による誤品納入であり,同社が100パーセントの責任割合を前提にその全額を負担すべきというスタンスで臨んだが,ソゲフィ社は,被告側にもチェック漏れに関する責任があったなどと主張したため,折り合いが付かず,結局,被告内部において開発や品質管理等の社内関係部門と協議の上,ディーラーが既に自動車に組み付けてしまったオイルフィルターにかかる対応費用に関しては,ソゲフィ社に対し求償をしないことを決定し,上記責任比率に関する折衝が終了したのは,平成19年3月中旬になってからであった。 そして,被告では,顧客に迷惑を掛けるおそれのある品質トラブルが発生した場合,その原因及び再発防止対策を明らかにするため,購買本部の品質会議で同トラブルに関する報告をすることとされているところ,Cは,同年2月5日,上記誤品納入問題につき,同年3月30日開催予定の上記会議において,報告することが決定された。 (甲5,甲46,甲47,甲53,甲71,甲79,甲81,甲83,証人D18・19)ウ平成18年12月,ソゲフィ社の中国法人(ソゲフィ上海)のセールスマネージャーが,突然,被告に来社し,同社製オイルフィルターの選別工程につき,平成19年3月から中国に移管したい旨を申し出た(品質選別工程の中国移管問題)。同 社の中国法人(ソゲフィ上海)のセールスマネージャーが,突然,被告に来社し,同社製オイルフィルターの選別工程につき,平成19年3月から中国に移管したい旨を申し出た(品質選別工程の中国移管問題)。同オイルフィルターは,その品質にバラツキが大きいため,従前より,被告の物流子会社であるマロックス社が日本で納入品全数の選別作業を行い,その選別にかかる費用をソゲフィ社に対し請求していたものであって,被告としては,上記申出は,中国移管後における 十分な品質管理体制に関する説明もなく,新規のサイトでありリスクがある上に,コストの上昇も伴うものであって,到底受け入れがたいものであった。Cは,同問題につき,ソゲフィ社との間で,物流費の適正見積額の確認等につき,電子メールでやりとりをしたが,ソゲフィ社は,平成19年1月16日にも,同年3月から品質選別工程の中国移管の提案を改めてしてきたため,Cは,同年1月18日,Fと相談・協議のうえ,上記再提案を拒絶した。 しかし,ソゲフィ社からは,同月23日にも,被告(C宛)に対し,オイルフィルターの選別工程につき,中国に移管するか,それとも,同移管はせず,マロックス社での選別を継続する反面,同選別費用については被告で負担するか,の提案がされた。そこで,Cは,被告社内での検討を経て,同月30日,ソゲフィ社に対し,ソゲフィ上海がマロックス社による選別と同等レベルの選別能力を有すること,中国での新規口座開設は行わないなどの条件をソゲフィ社が受け入れるのであれば,中国移管を認める旨の回答をした。 また,ソゲフィ社のオイルフィルターについては,エコタイプのフィルターにつき,量産開始時から平成16年12月までの生産品につき,エンジン油圧に耐えられずカバーが割れるおそれがあるという不具合が発生して ,ソゲフィ社のオイルフィルターについては,エコタイプのフィルターにつき,量産開始時から平成16年12月までの生産品につき,エンジン油圧に耐えられずカバーが割れるおそれがあるという不具合が発生していたが,同不具合の発生原因につき,被告とソゲフィ社とで認識を異にし,責任比率が未決定のままであった(エコタイプフィルター不具合問題)。 (甲5,甲46,甲47,甲49,甲84,乙1ないし乙5)エ平成19年1月6日ないし7日,Cは,原告らや姉らとともに1泊2日で家族旅行に行ったが,同旅行は,以前から計画されていたにもかかわらず,Cは,直前になって行きたくない旨を言い出し,旅行中も,イライラした様子で,早く広島に帰りたい,帰ったらやらなければならない仕事が たくさんあるといったことを発言していた。 もっとも,原告Bが,同年2月5日,Cと電話で会話をした際は,同人は元気そうであった。 (甲42ないし甲44,甲76,甲77,原告B本人7)オ平成19年2月5日,ソゲフィ社から,被告(C宛)に対し,同社製オイルフィルターの中国での品質選別につき,同年3月1日から開始すべく,現在物流ルートをチェック中であり,その週末には回答できる旨の回答があり,さらに,同年2月13日には,中国移管には新規口座開設が必要である上,次週(同月19日の週)の出荷分から中国向けに出荷しなければならないため,口座開設を至急にする必要がある旨の回答があった。Cは,同月15日,Fに対し,上記回答につき,中国移管に関する被告提示の前提条件(上記ウ認定)と相反するため,拒絶するつもりである旨を報告するとともに,ソゲフィ社に対しても,その旨の回答をするとともに,併せて,数点の質問をした。 しかし,ソゲフィ社からは,同月16 (上記ウ認定)と相反するため,拒絶するつもりである旨を報告するとともに,ソゲフィ社に対しても,その旨の回答をするとともに,併せて,数点の質問をした。 しかし,ソゲフィ社からは,同月16日にも,同月19日の週から中国向けに出荷するため,中国での口座開設が絶対に必要である旨の回答が再度されたため,Cは,同月17日,Fに対し,上記回答を伝えるとともに,ソゲフィ社に対し,新規口座開設はできない旨の回答を繰り返し,必要であればテレビ会議ないし電話会議を実施することを提案したが,同月20日,ソゲフィ社からは,改めて,新規口座開設が必要である旨の回答がされたため,Cは,同月21日,Fに対し,ソゲフィ社からの上記回答を報告した。 (乙6ないし乙13)カ平成19年2月20日ないし23日の間に,Cは,原告Bと電話で会話をした。同人らは,同月18日にも,電話で会話をしており,そのときのCは,寝起きのような声で元気がなかったのに対し,このときは,元気な 声になっていたので,原告Bは,特に心配するような状態ではなかったと感じた。 また,Cは,同月24日,引越しをしたが,同日に姉のMと電話で会話をした際,上記引越しについて,とても楽しそうに語っていた。 (甲42,甲43,甲76,甲77,原告B本人7ないし9)キ平成19年2月26日,Cは,ソゲフィ社との上記協議を踏まえ,被告の検査課エンジン部品係のNに対し,ソゲフィ社が品質選別工程の中国移管を認められないのであれば同年3月1日から選別費用を値上げすると要求してきており,それに対する回答を今週中(同月2日まで)にしなければならないところ,被告としては,ソゲフィ上海との新規取引を開始できるわけはなく,上記値上げを認めた上でマロックス社での選別を継 要求してきており,それに対する回答を今週中(同月2日まで)にしなければならないところ,被告としては,ソゲフィ上海との新規取引を開始できるわけはなく,上記値上げを認めた上でマロックス社での選別を継続するしか選択肢はない旨を説明して,上司に説明するために必要な情報提供を要請した。 また,Cは,同年2月27日に,Fから,フォード社のバイヤーへサポートを依頼するよう指示されたことを受け,グローバルリードバイヤーであるFOEバイヤーとの間で,現在ソゲフィ社より購入しているオイルフィルターにつき,マーケットテストがあれば,グローバルで転注することも視野に入れて活動してゆくことで合意するとともに,ソゲフィ社に対し,品質選別工程の中国移管を認めるか否かを判断するために必要十分な情報が得られるまで,前記値上げ要請を取り下げさせるとともに,品質問題に対する根本的な改善策を取り組むように依頼することとし,FOEバイヤーがこれら被告の依頼をもってソゲフィ社のセールスマネージャーと面談することとなった。 (甲51,乙14,乙15)クしかし,平成19年2月27日,ソゲフィ社からは,被告(C宛)に対し,改めて,同年3月1日以降はマロックス社でのオイルフィルターの品 質選別につき現行価格のままで継続することを認めることはできず,中国移管を認めるか,値上げを認めるかを至急決定するようにとの要請がされ,さらに,同年2月28日には,上記回答があるまでオイルフィルターの出荷を停止しておく旨の通告がされた(出荷停止問題)。 Cは,同年3月1日,Fに対し,ソゲフィ社からの上記通告が記載されたメールを転送するとともに,日本語で,選別コストの値上げ申入れに関する最新の情報である旨を付記したが,出荷停止の通告がされた旨の付記はしなかった。 し,ソゲフィ社からの上記通告が記載されたメールを転送するとともに,日本語で,選別コストの値上げ申入れに関する最新の情報である旨を付記したが,出荷停止の通告がされた旨の付記はしなかった。 (乙16,乙17)ケ Cは,平成19年2月の終わりころから,声を掛けてもすぐに返事が返ってこないことがあり,被告で同グループに属するKは,Cにつき,少しうつなのかと感じていた。また,Cは,このころ,Kに対し,Fからいつも説明が駄目だなどとぼろくそに言われるから,自分が駄目な人間である旨を発言していた。 (甲31,証人K6・7・21)コ平成19年3月2日,被告・ソゲフィ社間で,オイルフィルターにかかる品質選別工程の中国移管問題につき,テレビ会議が実施された。Cは,その中で,ソゲフィ社に対し,同社からは中国移管の可否の判断に要する十分な情報提供がされておらず,中国移管も値上げも認められないから,それまでは現行価格のままでオイルフィルターを提供して欲しい旨を主張したのに対し,ソゲフィ社は,マロックス社による品質選別費用をこれ以上支払うつもりはなく,中国での選別開始をこれ以上遅らせるつもりはない旨を回答したため,同会議は平行線のまま終了した。 Cは,E及びFに対し,同会議の結果につきメールで報告し,その中で,ソゲフィ社が出荷を停止させるということがない限りは,判断は引き延ばせるかと思われる旨を記載するとともに,今後の方針についてのアドバイ スを求めた。なお,Cは,上記メールに,「正直な所,メールやピクテル会議だけで議論する内容ではないと思います。多くの人間が動かねばならない非常に大きな問題だと思います。」とも記載していた。 (乙19)サ平成19年3月5日,被告の部品部門の部長から,D宛に連絡 する内容ではないと思います。多くの人間が動かねばならない非常に大きな問題だと思います。」とも記載していた。 (乙19)サ平成19年3月5日,被告の部品部門の部長から,D宛に連絡があり,ソゲフィ社からのオイルフィルターの出荷が,同年2月12日を最後に3週間停止していることが判明した。そこで,Dは,Cに対し,出荷停止の事実の有無のほか,現在の在庫状況について確認するよう指示したところ,同年3月6日,Cから,同年4月末までの在庫があるとの報告を受けたため,在庫にはまだ余裕があると判断した。 同年3月8日,ソゲフィ上海のセールスマネージャーが被告に再度来社し,F及びCが出席して,会議(協議)が行われた。この中で,被告は,ソゲフィ社に対し,オイルフィルターの出荷停止問題につき,空輸費用については別途議論するとして,同フィルターの出荷をすぐに再開してほしいこと,品質選別工程の中国移管問題につき,まずソゲフィ上海で選別を実施した物をマロックス社で再選別して,前者の選別が後者のそれと同等レベルであるかのトライアルを行い,さらに同様の方法を継続して,選別基準がマロックス社と同等レベルであることの確認が取れた後に,新規取引口座を開設し,同年6月1日より新規取引先として取引を開始することとし,それまでのマロックス社での選別コストは,ソゲフィ社が負担する旨の提案をした。 さらに,被告では,出荷停止問題につき,Dが直接に対応することとし,Dは,同年3月8日ころ,同問題に関するソゲフィ社の担当者に対し架電し,同月10日にはメールも送信したが,同人からは,自分の上司から指示されたことであり,自分ではどうにもできない旨の回答を得たため,Cに対し,ソゲフィ社の組織表等を準備するよう指示し,同月12日ないし 13日, ールも送信したが,同人からは,自分の上司から指示されたことであり,自分ではどうにもできない旨の回答を得たため,Cに対し,ソゲフィ社の組織表等を準備するよう指示し,同月12日ないし 13日,改めてソゲフィ社の事業本部長宛に架電したところ,同人が不在であったため,Cに対し,同本部長宛の電子メールの原案を作成するよう指示し,同人が作成した原案に若干の手直しを入れ,同月15日,メールを送信させ,午後5時ころには,Dが,上記本部長と電話で協議し,ソゲフィ社に対しオイルフィルターの出荷を再開させる旨の約束をさせ,品質選別工程の中国移管問題についても今後建設的に協議していくことを合意し,その翌週には出荷が再開された。 そして,Cは,同月16日より,上記協議(会議)開催のための準備作業に着手した。なお,同会議は,ソゲフィ社製オイルフィルターの品質基準や品質選別工程の中国移管のスケジュール,同社の中国口座内容確認等を議題として,同年4月3日から2日間にわたり,ソゲフィ社からは欧州本部上層部を含めた5名が来日し,被告からは検査,品質管理,物流,生産管理や設計等,多岐にわたる部門が参加し,複数回の協議を行う予定となっていた。 (甲5,甲46,甲47,甲52ないし54,甲56,甲71,甲79ないし甲84,乙26,証人D6ないし8・29)シ平成19年3月11日,Cは,Mと電話で会話をした際,元気がなく,寝起きのような暗い声であり,言葉数も少なかった。また,Cは,このとき,Mに対し,「僕,マツダ辞めるかもしれへん。」と発言した。 (甲43,甲77)ス平成19年3月18日,Dは,被告の購買企画部を通じて,同ビジネス支援部から,2007年度事務・技術系新入社員導入教育(同年4月11日ないし18日実施)における「コ (甲43,甲77)ス平成19年3月18日,Dは,被告の購買企画部を通じて,同ビジネス支援部から,2007年度事務・技術系新入社員導入教育(同年4月11日ないし18日実施)における「コミュニケーションワーク」研修に関する講師派遣(ファシリテーター業務)の依頼を受けたため,Cを講師として推薦した。なお,Dは,同年3月14日も,同様の依頼を受けていたが,このときは,前記出荷停止問題を抱えていたため,断っていた。 (甲53,乙21)セ平成19年3月19日,Cは,Eから,職務等級の昇級が決定した旨を告知されたが,自分はまだそこまでのレベルではないなどと発言し,また,同月20日,平成18年度下半期におけるCの業務実績を振り返るミーティング(キャリアミーティング)に参加した際も,E及びFに対し,自ら担当業務につき十分に目標が達成できなかったと自己評価している旨を伝えるなど,いずれも自信がなさそうな様子であった。 (甲5)ソ平成19年3月27日ないし28日,Cは,E及びFに対し,同月30日に開催予定の購買本部の品質会議における,ソゲフィ社製オイルフィルターの誤品納入問題に関する報告に関し(前記イ認定参照),パワーポイントをベースにした説明内容の確認を行ったが,同報告案は,内容的にみて,今後,ソゲフィ社も巻き込んで,品質育成・指導・再発防止に取り組んでいきたいという程度であり,問題発生の真因追及及び再発防止に向けた水平展開ができていなかった上に,C自身,ソゲフィ社とのコミュニケーションが思うに任せず,情報収集がうまくいっておらず,同社に対し,誤品納入問題の発生原因のヒアリングを行っても,取替時に混ざったという弁明から,製品置き場から間違って出荷したということに変遷したり,再発防止策についても今 報収集がうまくいっておらず,同社に対し,誤品納入問題の発生原因のヒアリングを行っても,取替時に混ざったという弁明から,製品置き場から間違って出荷したということに変遷したり,再発防止策についても今後は注意するという程度の回答しか得られず,これ以上の内容の充実は難しいとの状況であったため,Eから,主催元(被告のプロセス改善グループ)と調整の上,報告を延期するよう指示され,同報告は,同年5月19日に延期された。 なお,Cは,プロセス改善グループのマネージャーであるOに対し,上記延期を要請した際,同人から,購買本部の品質会議において報告をすることは,かなり以前から連絡済であるにもかかわらず,急にキャンセルをするとはどういうことか,もっと早く上司に相談していれば,ドタキャン で報告内容に穴を開けずに済んだはずであるのに,このタイミングでの延期では,上記会議における報告内容を一つ減らすことになってしまうではないかということを,やや強い口調で注意された。 (甲45ないし甲47,甲53,甲55,甲71,甲79,甲81,甲83,甲84)タなお,Cは,このころ(本件自殺の1週間前ころ)から,バイヤーのアシスタントをしているPのところに,急に多数回相談に行くようになったが,その際,同人に対し,何度も同じことを尋ねるなど,様子がおかしかった。 (甲26)チ平成19年3月27日ないし28日,Cは,E,F及びDらと,同年4月3日開催予定のソゲフィ社との対策会議に関する事前協議を行った。同協議においては,ソゲフィ社製オイルフィルターをめぐる問題に関係する品質,開発,物流の各部門との間で,同社との交渉のスケジュール,方針,品質基準,検証期間の設定などが協議され,Cは,同協議の結果を,ペーパーにまとめた。 オイルフィルターをめぐる問題に関係する品質,開発,物流の各部門との間で,同社との交渉のスケジュール,方針,品質基準,検証期間の設定などが協議され,Cは,同協議の結果を,ペーパーにまとめた。 また,Cは,同年3月28日,Q,L及びRとともに,ソゲフィ社の品質問題に関する会議を行った。同会議において,マツダモーターヨーロッパの品質部門に出向(当時)していたLは,Cに対し,ソゲフィ社に関しては,そもそも難しいサプライヤーであるし,自らが品質上の問題を解決できないため出荷がされないといった様々な問題が発生しているのであって,Cが悪いわけではないから,問題の解決については,Lら品質部門に任せて,自分一人で全部を背負い込まないようアドバイスをしたが,これに対し,Cは,可能な限り自分がやる,自分の担当だから自分がやらなければならないの一点張りであり,また,Lと絶対に目を合わせようとせず,壁や天井を見て話すなどしたため,同人は,挙動不審者のような印象を受 けた。 さらに,同年3月30日,Cは,同年4月3日のソゲフィ社員の来社(対策会議)に向けて,S(調達計画グループ),T,U(調達在庫管理グループ),V(生産調達・物流グループ。),Pとともに,ミーティングを行った。同ミーティングは,もともと,ソゲフィ社製オイルフィルターに関し,イギリスからの出荷と中国からのそれとをどのようにうまくつなげるかについてが議題であったが,その席で,Cが,ソゲフィ社に対し不良品率を加味せずに連絡を取っていたことが判明したため,結局,出席メンバーが,Cに対し,業務を教えるような会議になってしまった。そして,Vは,ソゲフィ社をめぐる問題に関し,Cのレベルを超えていると感じたため,同人に対し,上司に相談してはどうかと提案したが,Cは,Fに相談し Cに対し,業務を教えるような会議になってしまった。そして,Vは,ソゲフィ社をめぐる問題に関し,Cのレベルを超えていると感じたため,同人に対し,上司に相談してはどうかと提案したが,Cは,Fに相談しても「何が言いたいのか分からん」「何も知らないから,もっと勉強せい」と言われる旨を述べた。 (甲34,甲37,甲39,甲48,甲57,甲69,甲80ないし甲82,乙26,証人L5ないし9・13ないし16・19・20,同D9)ツ平成19年3月30日,Cは,品質選別工程の中国移管問題に関するこれまでの経緯や,ソゲフィ社の品質状況,取引上の問題点をまとめ(そこには,ソゲフィ社が,不良内容につき,機能的には問題なく,同一部品を納入するフォード社からは0defectサプライヤーとして評価されており,被告の要求が厳しすぎる旨を主張しているとの記載がある。),同社製オイルフィルターにつき,値上げを抑制し,部品供給を継続させるため,ソゲフィ上海を新規取引先として認定することの承認を求める文書を作成し,F及びEとともに,被告購買本部長に対し,上記承認を求めたが,同部長からは,同申請には不明な点があり,それはバイヤーの責任である旨を指摘され,上記申請を一旦差し戻された。 そして,上記承認は,最終的に同日中に得られたが,Kが,Cに対し, ソゲフィ上海につき取引先認定リストにアップするため,上記承認を得られたか否かを確認したが,Cからは明確な返答はなく,認定書類については,後日,Cの後任バイヤーであるWから受け取った。 (甲28,甲48,甲50,甲53,甲70,甲71,証人K11,同D32・33)テさらに,Cは,平成19年3月30日,Eの席の前で立たされたまま,ソゲフィ社に関するミーティング資料が完成していな ,甲48,甲50,甲53,甲70,甲71,証人K11,同D32・33)テさらに,Cは,平成19年3月30日,Eの席の前で立たされたまま,ソゲフィ社に関するミーティング資料が完成していない旨を厳しい口調で叱責された。 Cは,同日,同僚に対し,購買の仕事につき,品質不良や欠品が多く出てラインが止まりそうになることもあり,サプライヤーとのコーディネートの調整で悩んでいること,同年4月3日に購買本部の品質会議が開かれるが,この資料作りがなかなかうまくいかない上に,職場では業務時間中に資料作成ができないので,上司から家に持ち帰ってやれと命令されていること,能力がないから,残業は申請するなと言われているので,家に持ち帰っており,土曜日や日曜日も仕事をしなければならないと述べていたこと,また,上司に業務のことを相談に行っても,上司からは,聞き方が悪いとか,質問することをもっと整理して来いとか言われるばかりであり,誰も助けてくれないこと等,担当業務に対する不満,不安を漏らしており,しんどいなどとも発言するなど,何かに追い詰められて相当悩んでいる様子であった。 また,Cは,同年3月30日,Jに対しても,Eから上記叱責を受け,入社以来,最大の危機であること,Eから上記叱責されたことを,かなり追い込まれたような様子で,元気なく話しており,Jが,Cに話しかけても,どこか上の空というような雰囲気であった。 さらに,Cは,同日,Pのところに,ある申請書類の書き方につき尋ねて来たので,同人が,実際に例を書いて,手順書も添えて説明をしたにも かかわらず,再度,当該書類の書き方につき尋ねてきたりしたが,このようなことは,これまでにはなかった。そして,Pは,Cにつき,以前は,性格的にしっかりとし,きちんとはっきりものを言うタ にも かかわらず,再度,当該書類の書き方につき尋ねてきたりしたが,このようなことは,これまでにはなかった。そして,Pは,Cにつき,以前は,性格的にしっかりとし,きちんとはっきりものを言うタイプであったが,このころは,「すみません,すみません,僕が何もやっていないから」と必要以上に謝ったり,バイヤーなら当然知っているはずのことを尋ねてきたりと,おかしな状態であるとの印象を受けた。 このほか,Cは,同月中旬ころにも,Jに対し,自らの仕事の段取りが悪いため,残業を付けられない旨を上司から言われていること,今,大きな仕事を抱えており,品質不具合の発表があるが,それが大変な負担であること,サプライヤーはハンドルしにくいことなどを言っていた。 (甲6ないし甲9,甲13,甲15,甲16,甲23ないし甲26,甲41,甲48,甲53,甲60,証人J20ないし24)ト Cは,平成19年4月2日,被告社宅の自室において,自殺(縊死)した(本件自殺)。同部屋には,「涯崖っぷち」と書かれたメモが残っていた。 (甲2,甲58,甲59)(4) Cの被告内における労働実態ア勤務形態前記前提事実(3)記載のとおり,被告における1日の所定拘束労働時間は,午前9時から午後5時45分までであり(休憩時間45分を含む。),週休2日制(土・日曜日)が採られていた。また,残業の際は,午後5時45分から午後6時までの15分間は,休憩時間とされていた。 イ労働時間(ア) 前記前提事実(3)記載のとおり,被告における労働時間の管理は,各従業員が,サーバー上に保管されている「出勤簿」にアクセスし,自ら始業・終業時刻を打ち込む方法によりされていたところ,同出勤簿が必 ずしも実際の労働時間を反映したもので る労働時間の管理は,各従業員が,サーバー上に保管されている「出勤簿」にアクセスし,自ら始業・終業時刻を打ち込む方法によりされていたところ,同出勤簿が必 ずしも実際の労働時間を反映したものではないこと,したがって,Cの労働時間についても,同人が事実上専用していたパソコンのログ記録を前提として把握すること,仮にログ記録がない場合には,文書更新時刻,メール送信時刻を前提としてこれを算定することについては,当事者間に争いがない。また,Cのパソコンにつきログ記録がある場合でも,ログオフ後に文書の更新ないしメールの送信が行われているときは,同人は,同時刻までは労働していたと推認されるから,当該場合には,文書更新時刻ないしメール送信時刻のうち最も遅い時刻を,終業時刻とすべきである。 (イ) そして,前記ア説示の勤務形態からすれば,上記(ア)記載の方法によってもCの労働時間を把握できない場合や,同人が休暇を取得した等の事情がないにもかかわらず,パソコンのログ記録が前記所定拘束労働時間よりも短時間である場合には,同所定拘束労働時間を前提に,Cの労働時間を算定するのが相当であり,休憩時間についても,Cが午後6時を超えて勤務した日については,午後5時45分から午後6時までの15分間を含め,合計1時間の休憩時間を取得したものとして,これを各日の労働時間から控除すべきであるが(原告らの主張は,これに反する限度において,採用の限りではない。),午後6時以前に終業した日については,上記15分間の休憩時間を取得するのは物理的に不可能であるから,仮に同日の労働時間が合計で8時間を超える場合でも,休憩時間は45分として算定するのが相当である(被告の主張は,これに反する限度において,採用の限りではない。)。 (ウ) 以上を前提に,Cの被告内における労働時間 間が合計で8時間を超える場合でも,休憩時間は45分として算定するのが相当である(被告の主張は,これに反する限度において,採用の限りではない。)。 (ウ) 以上を前提に,Cの被告内における労働時間を算出すると,下記の通りとなる(別紙3参照)。 記死亡1か月前 226時間55分 2 212時間19分 3 196時間18分 4 194時間34分 5 226時間49分 6 192時間55分(甲5,甲62,甲74,乙29)(5) Cの被告外(自宅)における業務実態Cは,上記(4)認定のとおり,被告内における労働時間が長時間にわたっており,ほぼ毎日にわたり残業をしていたことに加え,証拠(甲13,甲15,甲64ないし甲71)及び弁論の全趣旨によれば,Cは,同人の業務に関連する文書につき,メモリースティックに入れる等して社外に持ち出し,自宅のパソコンにおいて,これを保存ないし更新等していること,前記(3)テ認定のとおり,同僚に対し,能力がないから残業はつけるなとか,自宅に仕事を持ち帰ってやれなどと上司から言われているため,自宅に仕事を持ち帰っており,土曜日や日曜日も自宅で仕事をしなければならないなどと述べていたことからすれば,Cは,被告外(自宅)においても,相当量の業務をこなしていたことが推認される。 2 争点1(Cの業務の過重性)について(1) 質的過重性ア判断(ア) 前記1(3)ア,イ認定のとおり,Cは,平成18年11月から,ソゲフィ社の担当バイヤーに就任し,同時期に明らかとなった同社の誤品納入問題につき,担当バイヤーとして,同社との責任比率の折衝を (ア) 前記1(3)ア,イ認定のとおり,Cは,平成18年11月から,ソゲフィ社の担当バイヤーに就任し,同時期に明らかとなった同社の誤品納入問題につき,担当バイヤーとして,同社との責任比率の折衝を行っているところ,前記1(3)イ,ソ認定及び弁論の全趣旨によれば,上記問題の原因は,ソゲフィ社によるラベルの貼り間違いという単純なものであり,本来,同社が全責任を負担すべきものであって,被告(C)とし ても,その旨の主張をしていたにもかかわらず,実際には,ソゲフィ社が,被告側によるチェックの懈怠を主張したため折り合いがつかず,結局,平成19年3月中旬になって,被告が,ディーラーが既に自動車に組み付けたオイルフィルターにかかる対応費用に関しては,ソゲフィ社に請求しないとの譲歩をすることで,ようやく決着したこと,Cは,上記折衝中の同年2月5日に,同年3月30日開催予定の購買本部の品質会議において上記問題に関する報告をすることが決定し,遅くとも同年3月1日前後から,ソゲフィ社に対し,同問題に関する情報提供を依頼していたにもかかわらず,満足な回答が得られず,同月16日には,同問題に関し同月30日に被告購買本部役員に対する説明発表をしなければならないため,至急回答してほしいこと,自己の置かれた立場・状況を理解して欲しいことを英語で記載したメールを送信していること(甲71の7の1・2),その後も,ソゲフィ社から上記問題に関する情報を満足に得ることができず,結局,同月27日ないし28日には,前記報告を延期することが決定されたことが認められる。 このような事実経過からすれば,誤品納入問題が,これに関する報告の準備を含め,Cにとって,本件自殺の直前まで,相当の精神的な負担になっていたことが推認されるというべきである。 (イ) また,ソゲフ な事実経過からすれば,誤品納入問題が,これに関する報告の準備を含め,Cにとって,本件自殺の直前まで,相当の精神的な負担になっていたことが推認されるというべきである。 (イ) また,ソゲフィ社製オイルフィルターに関する品質選別工程の中国移管問題についても,前記1(3)ウ,オ,ク,サ認定のとおり,同社からの上記移管の提案がされたのが,誤品納入問題に関してソゲフィ社との折衝中であった平成18年12月であり,しかも,ソゲフィ上海のセールスマネージャーが,突然,被告に来社してのものであったこと,そして,被告(C)は,同提案を拒絶したにもかかわらず,平成19年1月23日には,ソゲフィ社から,中国移管を認めるか,移管はせずにマロックス社での選別費用を被告が負担するかのいずれかを選択するよう要 求され,これに対し,Cは,同月30日,中国での新規口座開設は行わないなどの条件付きで中国移管を認める旨の回答をしたところ,今度は,同年2月13日及び同月20日,ソゲフィ社から,新規口座開設が必要である旨の回答をしてきたこと,さらに,Cが,中国移管を認めるか否かを判断するために必要十分な情報が得られるまで,上記選択に関する判断を事実上先延ばししようとしていた矢先の同月28日には,ソゲフィ社から,中国移管を認めるか否かに関する被告の回答がされるまで,オイルフィルターの出荷は停止する旨のメールが送信されてきたところ,実際には,同月12日を最後に出荷は停止され,品質選別工程の中国移管問題がオイルフィルターの出荷停止問題にまで発展しており,C自身,同年3月5日にこの事実を知るに至ったこと,そして,これ以降は,Cに代わりDが交渉することで,同月15日になって,ようやくソゲフィ社から出荷再開の約束を取り付けることができたことが認められる。 このような一 日にこの事実を知るに至ったこと,そして,これ以降は,Cに代わりDが交渉することで,同月15日になって,ようやくソゲフィ社から出荷再開の約束を取り付けることができたことが認められる。 このような一連の経過からすれば,ソゲフィ社は,もとから品質選別工程の中国移管及び新規口座の開設ありきであったかのような交渉姿勢であり,交渉経過も,被告の方針とは正反対の方向をたどっていたといえるのであって,これだけでもCにとってはかなりの精神的負担を感じるものであったと考えられる上に,同人が上記中国移管問題に関する回答を先延ばししようとしていた矢先,既にソゲフィ社がオイルフィルターの出荷を停止していたことが判明し,さらに,自らの交渉では膠着状態のままであったため,最終的には上司であるDが自らに代わって交渉に出ざるを得なかったことからすれば,Cは,自らが担当する部品にかかる問題により製造ラインが止まるおそれがあるというプレッシャーに加え,前記1(3)ケ等で認定のとおり,上司から叱責を受け,自らを必要以上に卑下していた同人が,上司の力を借りざるを得なかったことにつき,相当の負い目を感じたことは想像に難くない。 以上によれば,品質選別工程の中国移管問題及び出荷停止問題についても,Cにとって,精神的に相当な負担となっていたものというべきである。 (ウ) 加えて,前記1(1)ア認定のとおり,Cは,入社3年目であり,平成18年4月にバイヤーとして独立したが,前記1(2)認定のとおり,バイヤー業務は,サプライヤーとの間でのトラブル等が日々発生するため,経験が必要とされ,担当一人が独立当初から品質問題などを含めてすべてをこなすには難があり,上司の適切なサポートなしに,ソゲフィ社を担当するのは,バイヤーとしての荷が重すぎるものであったところ,本件全 験が必要とされ,担当一人が独立当初から品質問題などを含めてすべてをこなすには難があり,上司の適切なサポートなしに,ソゲフィ社を担当するのは,バイヤーとしての荷が重すぎるものであったところ,本件全証拠によっても,D,E及びFが,Cに対し,適切にサポートしていたことをうかがわせる事情は認められない。 それどころか,かえって,前記1(3)ケ,コ,チ,テ認定及び証拠(甲7ないし甲10,甲16,甲19,甲26ないし甲28,甲31,甲39,甲48,証人K6)によれば,Eは,機械部品グループからエンジン部品グループに異動してきたものであり,エンジン部品部門に慣れているとはいえず,平成19年2月ころは身内に弔事があり,休日はその対応で忙しくしていた上,次期エンジンプロジェクトを抱え,C等の部下の業務に必ずしも目が行き届いておらず,同年3月下旬においても,Pに対し,自らは海外の新規取引のことはよくわからないから,同人がCの相談に乗るよう依頼していたこと,Fは,英語力に難がある上,自分の仕事自体で忙しいため,他のことに手が回らず,Lから,ソゲフィ社は非常に難しいサプライヤーであるから,若いC一人では大変かと思うので,彼をサポートしてあげてほしい旨を電話で言われた際にも,ソゲフィ社の件については一切知らないこと,自分も担当を持っていてとても忙しく,それどころではない旨を述べたこと,Cからアドバイスを求められても,助言を与えるようなことはなく,逆に,頭ごなしに叱 責するといったことを繰り返していたこと,このため,普段からCに任せきりの状態であり,イベント等の直前になって,急に慌ただしくなるような状態であったこと(CがFに宛てた同月2日付けメールの「正直な所,メールやピクテル会議だけで議論する内容ではないと思います。 多くの人間が動かねばならない非 等の直前になって,急に慌ただしくなるような状態であったこと(CがFに宛てた同月2日付けメールの「正直な所,メールやピクテル会議だけで議論する内容ではないと思います。 多くの人間が動かねばならない非常に大きな問題だと思います。」との文面(乙19)は,同事実の証左というべきである。),同月30日にS,T,U,P及びVと実施したミーティングにおいては,業務に対するCの理解不足が露呈し,出席者でCに対し業務を教える会議に変容したことが認められる。 これらの事実からすれば,Cは,平成19年3月に至っても,未だ上司から適切なサポートを受けられていなかったと断定するほかはない。 (エ) そして,前記前提事実(4)記載のとおり,ソゲフィ社をめぐっては,誤品納入問題,品質選別工程の中国移管問題及び出荷停止問題のほか,もともと,エコタイプフィルター不具合問題,納入不良改善目標未達継続問題を恒常的に抱えていたことや,そもそもソゲフィ社を担当することの困難性(前記1(2)ア認定)に加え,前記1(3)イ,サ,ス,ソ,チ,テ認定及び証拠(甲8,甲12,甲33)によれば,バイヤーにとって,毎年3月は,決算期で他の月よりも忙しいにもかかわらず,Cは,平成19年3月中旬以降,同月30日開催予定の購買本部の品質会議における報告や同年4月3日開催予定であったソゲフィ社との対策会議の準備に追われていた上に,同年3月18日には,同年4月11日ないし18日実施予定であった新入社員教育における講師派遣(ファシリテーター業務)を引き受けることとなった事情も認められる。 このような点も併せ考えると,Cは,平成18年11月にソゲフィ社の担当バイヤーに就任して以降,問題が重畳的に発生し,平成19年3月中旬以降は,バイヤー業務とは直接関係のない業務まで,その準備の た うな点も併せ考えると,Cは,平成18年11月にソゲフィ社の担当バイヤーに就任して以降,問題が重畳的に発生し,平成19年3月中旬以降は,バイヤー業務とは直接関係のない業務まで,その準備の ため並行してこなさなければならない状況に陥っていたのであり,それにもかかわらず,上司の適切なサポートを何ら受けられていなかったことからすれば,Cが,平成18年11月以降に担当していた業務は,質的にみて明らかに過剰なものであったといわねばならない。 イ被告の主張について(ア) まず,被告は,ソゲフィ社につき,海外サプライヤーとしてはごく平均的な取引先であり,同社とのやり取りについても,その多くが電子メールを使用したものであり,基本的には夕方にメールを送信し,それに対する返信メールを翌朝確認するという方法をとっていたから,時差による影響等はほとんどなく,得られる対応が他社に比して特に低いということもなかった旨を主張する。 しかし,海外サプライヤーとして平均的であるとの点については,前記1(2)ア認定に反するものであるし,メールの送受信についても,仮に時差の点は措くとしても,同認定,前記ア(ア)及び後記(イ)説示並びに証拠(甲71の7の1・2,甲71の8の1・2)によれば,ソゲフィ社は,被告からの問いかけに対し,無回答,無反応の場合があり,仮に回答がされた場合でも,それが必ずしも被告の要求する水準を充足するものとは限らず,夕方に送信したメールに対する返信が翌朝には到着しているわけでもなく,C自身,購買本部の品質会議における誤品納入問題に関する報告に向けたソゲフィ社からの情報収集に相当苦労していたことが認められる。 これらのことからすれば,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 また,被告 品納入問題に関する報告に向けたソゲフィ社からの情報収集に相当苦労していたことが認められる。 これらのことからすれば,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 また,被告は,ソゲフィ社につき,Cの後を引き継いだのが同人の1年後輩であるWであり,同人が業務をこなしていることをもって,同社がさほど困難なサプライヤーではないとも主張する。 しかし,証拠(甲21,甲48,証人K12・13・18,同D2)によれば,Wの上司は,EやFではなくXであって,同人から適切にフォローを受けられていること,さらに,被告では,平成21年10月に組織変更があり,エンジン部品グループにつき,2つのチームに分かれていた従前の体制を改め,4つのユニット制にし,それぞれのユニットにバイヤー業務をしないユニット長を設け,同人による細かな配慮が行き届くよう再編したことが認められる。 してみると,Cとそれ以降のバイヤー担当従業員とでは,職場環境が全く異なり,前者に比して後者の方がサポート体制が充実していることは明らかであって,後任者がCの場合とは相違する良好な環境のもとで業務をこなしていることをもって,Cにとっても負担ではなかったはずであるとすることは,そもそも比較の前提条件において既に失当であって,到底採り得ない主張であるといわざるを得ない。 (イ) 次に,被告は,誤品納入問題につき,責任比率の決定は,検査部門や品質部門等を中心とした協議によるものであり,購買部門のみで責任比率を決定するものではない上に,Cは,単に窓口として会議のセッティングや議事録作成等を行っていたにすぎず,交渉する責任など一切負っていなかった旨を主張する。 しかし,前記1(3)イ認定のとおり,Cは,誤品納入問題につき,開発や品質管理等の社内 ティングや議事録作成等を行っていたにすぎず,交渉する責任など一切負っていなかった旨を主張する。 しかし,前記1(3)イ認定のとおり,Cは,誤品納入問題につき,開発や品質管理等の社内関係部門と協議の上で方針を決定してはいるものの,自ら責任比率に関する折衝を行っており,このことは被告自ら認めているところであることに加え(甲5),証拠(証人J9)によれば,品質問題をリードするのは品質部門であり,購買部門はそのサポートではあるものの,良品の調達は購買部門の責任であり,仮に納品の品質が悪ければ,それは調達活動にも影響を及ぼすものであるため,実際は,品質問題にも購買部門が関与していることが認められる。 このことは,バイヤーであるCが,誤品納入問題につき,購買本部の品質会議において報告することになっていたことからも明らかであり,被告の前記主張は,これらの事実に反するものであって,失当であるというほかはない。 また,被告は,品質会議における上記報告についても,それに向けた情報収集において,ソゲフィ社が特段非協力的な会社であったとの事実はないし,プレゼンテーション自体,あくまでも問題解決後における若手従業員の教育を主たる目的とするものにすぎず,それほど負荷の大きな業務ではなかった旨を主張する。 しかし,Cによる上記報告にかかるソゲフィ社からの情報収集の経過をみるに,前記1(3)ソ認定並びに証拠(甲71の7の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,Cは,平成19年3月1日,ソゲフィ社に対し,誤品納入問題の深刻さを提起し,誤装品の発生場所・発生数につき情報提供を求めたのに対し,同社の同月2日付け返答は,数量は把握していないというものであったこと,これに対し,Cが,同月6日,ソゲフィ社に対し,改めて,将来にお 起し,誤装品の発生場所・発生数につき情報提供を求めたのに対し,同社の同月2日付け返答は,数量は把握していないというものであったこと,これに対し,Cが,同月6日,ソゲフィ社に対し,改めて,将来において同様の不具合を発生させない恒久対策を施すため,11項目にわたる質問に対する至急の回答を促したところ,ソゲフィ社は,同月15日になって,ようやく回答を返信してきたものの,被告からの追加情報を待って補充するというスタンスであったこと,これに対し,Cが,同月16日,ソゲフィ社に対し,さらなる情報の提供を求め,その際,自らが被告購買本部役員に対し不具合問題の説明発表をしなくてはならず,それは同月30日に開催されることになっていること及びそれを控えた自らが置かれた状況を理解してほしいことを付記したにもかかわらず,同月19日付けの同社からの返信でも,満足のいく回答を得られなかったため,最終的に,前記報告は延期されたことが認められる。 このような事実からすれば,ソゲフィ社が,情報収集・提供につき,決して協力的であったとはいえないことは明らかである。 加えて,Cがソゲフィ社に対し同月16日付けで送信した上記メールの内容に加え,前記1(3)ソ認定及び証拠(甲33,甲45)によれば,購買本部の品質会議での報告は,バイヤーにとって,品質案件についてすべてを知っていることが求められるため,それなりに大変なものであること,Cは,プロセス改善グループのマネージャーに対し,上記報告の延期を申し出た際,同人から,急にキャンセルしたことをとがめられ,併せて,もっと早くに上司と相談していたらドタキャンによる報告内容の欠落という事態は避けられた旨を指摘されたことも認められる。 そして,前記ア(ウ)説示のとおり,Cは,上司から適切なサポートを受けられておらず,逆 くに上司と相談していたらドタキャンによる報告内容の欠落という事態は避けられた旨を指摘されたことも認められる。 そして,前記ア(ウ)説示のとおり,Cは,上司から適切なサポートを受けられておらず,逆にサポートやアドバイスを求められる状況でもなかったことからすれば,当時のCにとって,前記報告の準備が,負荷の大きな業務であり,発表の延期によって精神的負担が軽減されたとはいえないことも,また明らかである。 (ウ) さらに,被告は,出荷停止問題についても,Cにとっての負荷は大きなものではなく,業務として恒常的に困難なものであったといえないし,平成19年4月3日のソゲフィ社との対策会議についても,同年3月27日の社内事前会議において準備は全て終了しており,Cが実施した業務は,D及びEの指示のもと,事前会議の段取りや状況説明のための資料の準備等であり,会議当日もD及びEのサポート程度の役回りであって,Cにとって負荷のかかる業務とは到底いえないものであった旨を主張する。 しかし,出荷停止問題については,前記1(3)ウ,オ,ク認定及びア(イ)説示のとおり,それ自体が,単体で出現し,Dの交渉により難なく解決したというものではなく,平成18年12月に発生した品質選別工 程の中国移管問題につき,被告として,ソゲフィ社の製品の品質の低さから,マロックス社による選別が必須であり,上記中国移管は認められないとの方針で交渉を継続してきた矢先に発生した問題であり,しかも,前記交渉経過からすれば,ソゲフィ社による出荷停止は,事実上,被告に中国移管を認めさせるための手段というべきものであるといえることからすれば,Cは,一方で,中国移管を認めるわけにはいかず,他方で,これを認めないと出荷が再開されないおそれがあるという板挟みの状態にあったと を認めさせるための手段というべきものであるといえることからすれば,Cは,一方で,中国移管を認めるわけにはいかず,他方で,これを認めないと出荷が再開されないおそれがあるという板挟みの状態にあったと推認される。 そして,バイヤーにとって,欠品により製造ラインが停止することは,それ自体かなりのプレッシャーであることが認められることからしても(甲33),出荷停止問題は,Cにとり,負荷の大きなものであったというべきである。 また,前記1(3)ス,ソ,チないしテ認定のとおり,ソゲフィ社との対策会議についても,平成19年3月27日の社内事前会議の直前ころは,Cは,購買本部の品質会議における報告の準備や,ソゲフィ上海にかかる新規取引先の認定の承認のための資料作成等を重畳的に抱えており,上司による適切なサポートがされていなかったことに加え(前記ア(ウ)説示),Cは,上記社内事前会議後の同月30日において,事前ミーティングを行ったり,サプライヤーとのコーディネートの件で悩んでいたことが認められる。 してみると,同事前会議において,同年4月3日のソゲフィ社との対策会議に向けた準備がすべて終了していたとは到底認められず,これに反する被告の上記主張は,Cの役回りを不当に過小評価するものであって,失当というほかはない。 (エ) また,被告は,ファシリテーター業務につき,延べ3日間にすぎず,その業務内容も工場見学の付添いやコミュニケーションワークの立会い 等にすぎず,特段の事前準備が必要な業務ではなかったから,Cにとって負担となるようなものではなかった旨を主張する。 しかし,証拠(乙21の1ないし3)によれば,平成19年度の新入社員導入教育において,Cに予定されていた業務は,平成19年4月11日及び12日の午後(各 ものではなかった旨を主張する。 しかし,証拠(乙21の1ないし3)によれば,平成19年度の新入社員導入教育において,Cに予定されていた業務は,平成19年4月11日及び12日の午後(各1コマ)と,同月13日及び17日の全日(各2コマ)であり,実質3日間であるが,他方で,そのうちファシリテーター業務が5コマを占めること,同業務につき,先輩社員として具体的な仕事の話をすることが求められていたことが認められる。 これによれば,上記導入教育の講師としては,事前に,話題事項を検討しておくことが求められていることは否定できず,それがどの程度のものであるかは不明であるものの,当時のCの多忙さからすれば,これが負担になっていないとはいえないことは明らかである。 (オ) そのほか,被告は,Cの業務につき,ソゲフィ社をめぐる他の問題を含めても,それほど負荷の大きいものではなく,上司による適切なサポートがされており,本件自殺直前の平成19年3月も比較的余裕があったなどと主張するが,いずれも前記1(3)認定及び上記ア説示に反するものであって,到底採用することができない。 (カ) なお,ソゲフィ社の担当者の変更については,Hの退社により,同社とのコミュニケーションが困難になったことに副うJの供述(甲25,証人J18)がある一方で,Cがソゲフィ社に送信したメール中,その宛先がHであるものが見当たらないため,上記変更に伴う影響については不明であるというほかはないが,このことが,Cにとってソゲフィ社をめぐる業務が質的に過重であるとの前記判断を左右するものとは認められない。 (2) 量的過重性ア判断 (ア) Cの被告内における労働時間は,前記1(4)イ(ウ)認定のとおりであるところ,これをもとに,本件 左右するものとは認められない。 (2) 量的過重性ア判断 (ア) Cの被告内における労働時間は,前記1(4)イ(ウ)認定のとおりであるところ,これをもとに,本件実務要領に規定された時間外労働時間の算出方法(下記a説示参照)に基づき,Cのそれを算出すると,下記b説示のとおりとなる(別紙3参照)。 a 時間外労働時間数の算出方法(a) 発症前1か月間,つまり発症日を起点とする30日間について,調査により把握した労働時間(始業・終業時刻,拘束時間数,実労働時間数)を「労働時間集計表」に記入する。 (b) なお,時間外労働時間数の算出については,原則として発症日を起点とすることとしているが,発症日の労働時間が短時間であるような場合には,発症日の前日を起点として差し支えないものとする。 (c) 発症日から数えて1週間(7日間)ごとに実労働時間数を集計し,1週間単位の総労働時間数とする。 (d) 1週間単位の総労働時間数から40時間を引いて,その週の時間外労働時間数とする。ただし,総労働時間数が40時間に満たない場合は,その週の時間外働時間数は「ゼロ」とする。 (e) 発症日から数えて29日目と30日目の2日間については,この2日間を含む1週間(発症前29日目ないし35日目)の就労状況をみて,次のとおり算出する。 ① 31日目からの5日間のうちに休日が2日以上ある場合は,2日間の総労働時間数から16時間を引いた時間数を時間外労働時間数とする。 ② 31日目からの5日間のうちに休日が1日ある場合は,この2日間の労働のうちの1日を休日労働とみなして,2日間の総労働時間数から8時間を引いた時間数を時間外労働時間数とする。 ③ 31日目からの5日間のうちに休日のない場合は,この2日間 ,この2日間の労働のうちの1日を休日労働とみなして,2日間の総労働時間数から8時間を引いた時間数を時間外労働時間数とする。 ③ 31日目からの5日間のうちに休日のない場合は,この2日間の労働を休日労働とみなして,2日間の総労働時間数をそのまま時間外労働時間数とする。 ④ 以上により算出した4週間と2日間の総労働時間数と時間外労働時間数を合計し,それぞれ発症前1か月間の総労働時間数と時間外労働時間数とする。 (f) 次に,発症前2か月目(発症日から数えて31日目から60日目までの30日間)について,発症前1か月間と同様に,4週間と2日間で時間外労働時間数を算出する。 (g) 以下,30日単位で4週間と2日間ずつ計算し,1か月ごとの時間外労働時間数を6か月分算出する。 (甲72)bCの被告内における時間外労働時間死亡1か月前 66時間55分 2 50時間22分 3 43時間12分 4 33時間48分 5 58時間49分 6 29時間54分(イ) そして,本件実務要領によれば,業務と脳・心臓疾患の発症との関連性の度合いの検討につき,①発症前1か月間において時間外労働時間数が100時間を超えているか,又は,発症前2か月間以上の期間において当該時間数が80時間を超えているか,②当該時間数が45時間に満たないか,③当該時間数が上記①と②の中間よりも多いか少ないかにより,過重性の評価を行うべきと規定されているところ(甲72),上記(ア)b説示のとおりの,Cの被告内における時間外労働時間の長さや, 前記 当該時間数が上記①と②の中間よりも多いか少ないかにより,過重性の評価を行うべきと規定されているところ(甲72),上記(ア)b説示のとおりの,Cの被告内における時間外労働時間の長さや, 前記1(5)認定のとおり,Cは,被告外(自宅)においても相当量の業務をこなしていたと推認されることに加え,前記1(3)ウ,オ,キ,ク,コ,サ,ソ,チないしテ認定及び前記(1)イ(イ)説示のとおり,Cは,平成19年1月中旬以降,ソゲフィ社とのメール等でのやり取りが頻繁となり,特に同年3月には,誤品納入問題,中国移管問題及び出荷停止問題が重畳的に発生し,同月30日開催予定の購買本部の品質会議における報告や同年4月3日開催予定のソゲフィ社との対策会議に向けた準備等もあり,多忙を極めていたと考えられる上,上司から,残業は申請せず,家に持ち帰ってやれと命令されているので,実際にそうしており,土曜日や日曜日も仕事をしなければならないと述べていたことも併せ考えれば,Cの死亡1ないし2か月前の時間外労働時間は,被告外(自宅)におけるそれと併せ,優に80時間を超えていたものと推認されるというべきである。 (ウ) そして,前記(ア)b説示のとおり,Cの被告内における時間外労働時間は,同人の死亡約3か月前である平成19年1月においても,45時間弱に及んでいることからすれば,同人の業務は,遅くとも同月以降は,量的にも過重な状態が恒常的に続いており,それは特に同年2月以降において顕著であったというべきである。 イ被告の主張について被告は,時間外労働時間の算出方法につき,本件実務要領規定のそれは,あくまで狭義の脳・心臓疾患の場合のものであって,労働基準監督官向けの内部資料であり,一般に公開されているものではないから,本件告示に定める計算 労働時間の算出方法につき,本件実務要領規定のそれは,あくまで狭義の脳・心臓疾患の場合のものであって,労働基準監督官向けの内部資料であり,一般に公開されているものではないから,本件告示に定める計算方法,すなわち,「1か月の総労働時間数(労働時間数+延長時間数+休日労働時間数)-(計算期間(1か月)の総暦日数/7)×40」(乙20)を用いるべきであると主張する。 しかし,証拠(甲74)によれば,広島労働局は,まさに本件にかかる 労働災害認定において,本件実務要領規定の算出方法を用いて,時間外労働時間数を算出していることが認められることからすれば,同方法により算出することに何ら不都合はなく,単にこれが内部資料であるとか,一般に公開されていないことをもって,妥当性が喪失するとは解しがたく,被告の上記主張には理由がない。 (3) 小括以上のとおり,Cの業務は,平成18年11月以降,質的に過重であり,遅くとも平成19年1月以降は,量的にも過重なものであったというべきである。 3 争点2(業務と本件自殺との間の相当因果関係)について(1) 判断ア判断基準(ア) 労働者の死亡等を業務上のものと認めるためには,業務と死亡との間に相当因果関係が認められる必要があるところ,精神疾患の発病や増悪は,様々な要因が複合的に影響し合っていると考えられるから,当該業務と精神疾患の発病との間に相当因果関係が肯定されるためには,単に業務が他の原因と共働して精神疾患を発病若しくは増悪させた原因と認められるだけでは足りず,当該業務自体が,社会通念上,当該精神疾患を発病若しくは増悪させる一定程度以上の危険性を内在又は随伴していることが必要であると解される。 そして,精神障害の発症については,環境由来の ,当該業務自体が,社会通念上,当該精神疾患を発病若しくは増悪させる一定程度以上の危険性を内在又は随伴していることが必要であると解される。 そして,精神障害の発症については,環境由来のストレスと個体側の反応性,脆弱性との関係で,精神的破綻が生じるか否かが決まるという「ストレス-脆弱性」理論が合理的であり,当裁判所もこの見解を採用する。 この理論によれば,業務と精神障害の発症との間の相当因果関係が認められるためには,ストレス(業務による心理的負荷と業務以外の心理 的負荷)と個体側の反応性,脆弱性を総合考慮し,業務による心理的負荷が,社会通念上,客観的にみて,精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合に,業務に内在又は随伴する危険が現実化したものとして,当該精神障害の業務起因性を肯定するのが相当である。 (イ) 労働者の自殺による死亡が業務上の死亡と認められるか,すなわち,労働者の自殺についての業務起因性が問題となる場合,通常は,当該労働者が死の結果を認識し認容したものと考えられるが,少なくとも,当該労働者が業務に起因する精神障害を発症した結果,正常な認識,行為選択能力が著しく阻害され,自殺を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺に至った場合には,当該労働者が死亡という結果を認識し認容していたとしても,当該結果を意図したとまではいうことができない。そして,世界保健機構の国際疾病分類第10回改訂版(以下「ICD-10」という)第Ⅴ章「精神および行動の障害」のF0ないしF4(F0:症状性を含む器質性精神障害,F1:精神作用物質使用による精神および行動の障害,F2:精神分裂病,分裂病型障害および妄想性障害,F3:気分[感情]障害,F4:神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害 器質性精神障害,F1:精神作用物質使用による精神および行動の障害,F2:精神分裂病,分裂病型障害および妄想性障害,F3:気分[感情]障害,F4:神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害)に分類される精神障害の患者が自殺を図ったときには,当該精神障害により正常な認識,行為選択能力及び制御力が著しく阻害されていたと推定する取扱いが,医学的見地から妥当であると判断されている。 したがって,業務により発症したICD-10第Ⅴ章のF0ないしF4に分類される精神障害に罹患していると認められる者が自殺を図った場合には,原則として,当該自殺による死亡につき業務起因性を認めるのが相当である。 (ウ) さらに,ICD-10第Ⅴ章においては,うつ病エピソード(F32(F3の中の一つである。))で典型的に見られる症状として,①抑う つ気分,②興味と喜びの喪失,③活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少が挙げられ,その他の一般的な症状として,a 集中力と注意力の減退,b 自己評価と自信の低下,c 罪責感と無価値感,d 将来に対する希望のない悲観的な見方,e 自傷あるいは自殺の観念や行為,f 睡眠障害,g 食欲不振が挙げられている。通常,少なくとも2週間の持続が診断に必要とされるが,もし,症状が極めて重症で急激な発症であれば,より短い期間であっても構わない。そして,うつ病の重症度の区別は,その際の症状の数とタイプを含む複合的な臨床判断に基づくところ,軽症(F32.0)は,典型的な症状のうちの2つとその他の症状のうちの2つ,中等症(F32.1)は,典型的な症状2つとその他の症状のうち3つないし4つ,重症(F32.2,F32.3)は,典型的な症状3つとその他の症状のうち4つを持つとされる。 (甲63,甲88,甲89,甲9 2.1)は,典型的な症状2つとその他の症状のうち3つないし4つ,重症(F32.2,F32.3)は,典型的な症状3つとその他の症状のうち4つを持つとされる。 (甲63,甲88,甲89,甲92の1ないし7,乙27)イ本件へのあてはめこれを本件についてみるに,前記1(3)エ,カ認定及び前記2(3)説示のとおり,Cの業務は,平成19年1月以降,質的にも量的にも過重なものであったところ,同人は,同月6日ないし7日,原告らとの家族旅行の際,直前になって行きたくない旨を言い出し,旅行中も,イライラした様子で,早く広島に帰りたい,帰ったらやらなければならない仕事がたくさんある旨の発言をしていたこと,同年2月18日に原告Bと電話で会話した際,寝起きのような声で元気がなかったことが認められる。 このような事実からすれば,Cは,このころから,自己の業務につき,相当の負担を感じていたものと考えられる。もっとも,前記1(3)カ認定のとおり,Cは,同月20日ないし23日の間に,原告Bと電話で会話した際は,特に心配する状態ではなく,同月24日,引越しの後でMと電話で会話した際も,同引越しにつきとても楽しそうに語っていたことからす れば,このころにおいては,未だ,前記ア説示のうつ病をうかがわせる症状が生じていたとまでは,明確には認めがたい。 しかし,前記1(3)ケ,サ,シ及び前記2(1)イ(ウ),(3)説示のとおり,Cの業務は,遅くとも平成19年1月以降は,量的にも過重な状態が恒常的に続いており,それは特に同年2月以降において顕著であったことに加え,同人は,同月終わりころから,声を掛けてもすぐに返事が返ってこないことがあったり,自らを駄目な人間である旨発言していたこと,同月5日ないし6日に出荷停止問題が発覚したと いて顕著であったことに加え,同人は,同月終わりころから,声を掛けてもすぐに返事が返ってこないことがあったり,自らを駄目な人間である旨発言していたこと,同月5日ないし6日に出荷停止問題が発覚したところ,欠品による製造ラインの停止は,バイヤーにとってかなりのプレッシャーであること,同年3月11日,MがCに架電した際,同人は,元気がなくて言葉数も少なく,被告を退職するかもしれない旨をほのめかしていたことが認められる。 このような点からすれば,Cのこのころの状態は,うつ病の典型的な症状として,①抑うつ気分,②興味と喜びの喪失,その他の症状として,b自己評価と自信の低下,c 罪責感と無価値感,d 将来に対する希望のない悲観的な見方が現われているということができ,したがって,同人は,このころに,軽度から中等度にかけてのうつ病を発症していた旨推認されるというべきである。 そして,前記1(3)セないしチ,テ認定,前記2(2)ア(イ)説示及び証拠(甲23)によれば,平成19年3月以降,誤品納入問題,中国移管問題及び出荷停止問題が重畳的に発生し,Cは,同月30日開催予定の購買本部の品質会議における報告や同年4月3日開催予定のソゲフィ社との対策会議に向けた準備等もあり,多忙を極めていたところ,出荷停止問題が一応の解決をみた同年3月15日以降も,同月19日にEから職務等級の昇級が決定した旨を告知された際,自分はまだそこまでのレベルではないと自信なさげであったこと,同月27日ないし28日には,Eから被告購買本部の品質会議における報告を延期するよう指示され,このころから,P のもとに,急に多数回相談に行くようになったが,何度も同じことばかり尋ねていたこと,さらに同月30日には,上司に業務のことを相談に行っても,叱責されるばかりで,誰も助け れ,このころから,P のもとに,急に多数回相談に行くようになったが,何度も同じことばかり尋ねていたこと,さらに同月30日には,上司に業務のことを相談に行っても,叱責されるばかりで,誰も助けてくれないと漏らすなど,何かに追い詰められて相当悩んでいる様子であり,以前は,きちんとはっきりものを言うタイプであったのに,このころには「すみません,すみません,僕が何もやっていないから」と必要以上に謝ったりするなど豹変しており,Cが作成する週報の文章も,以前に比して短く雑になっていたこと,同日,Jが話しかけても,どこか上の空というような雰囲気であったことが認められる。 以上のような事実経過に照らすと,Cは,同月27日ないし28日前後には,同月11日ころに生じていた前記うつ病の症状に加え,典型的な症状として,③活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少,その他の症状として,a 集中力と注意力の減退を見て取ることができるのであって,e 自殺の観念が生じたか否かを仮に措くとしても,Cのうつ病は,このころには,重症化していたとみるのが相当である。 そして,Cは,その直後の同年4月2日に自殺したのであるから,本件自殺は,同人の業務に起因したものということができ,相当因果関係が認められるというべきである。 (2) 被告の主張についてア被告は,Cの業務内容は,客観的に特段困難なものではなく,上司による援助も十分にされていたから,Cにとって負荷の大きな業務ではなく,当該業務自体にうつ病を発症,増悪させる一定程度の危険性を内在し随伴していたとはいえず,客観的にみて自殺を余儀なくさせるものではなかったと主張する。 しかし,Cの業務が質的にも量的にも過重なものであったこと,それにもかかわらず,上司による適切なサポート していたとはいえず,客観的にみて自殺を余儀なくさせるものではなかったと主張する。 しかし,Cの業務が質的にも量的にも過重なものであったこと,それにもかかわらず,上司による適切なサポートが何らされていなかったことは, 前記2説示のとおりであり,同説示内容からすれば,同業務が,それ自体にうつ病を発症,増悪させる一定程度の危険性を内在し随伴していたことは明らかであって,これに反する被告の上記主張は,失当であるといわざるを得ない。 イまた,被告が証拠として提出するY医師の意見書(乙27)には,業務以外の個体的要因や個人的な出来事にかかる心理的負荷について,①執着性格,②引越し,昇級,③単身・未婚であるといった事情が挙げられていることが認められる。 しかし,まず,執着性格については,証拠(甲5,甲8,甲10,甲25,甲34,甲47の2)によれば,Cの性格として,真面目で責任感を持って素早く対応しようとするあまり,時に小さなトラブルを即,大問題と受け止めて動転したり,人に仕事を振るのが苦手であり,また,自分で解決したいタイプであった旨の指摘があることが認められるが,他方で,証拠(甲5)によれば,Cは,本件自殺の直近1年間の2回(半年毎)の実績評定(平成18年4月ないし9月及び同年10月ないし平成19年3月)において,購買本部における同一職務等級中,上位30パーセント以内に入る成績を2回連続して取得しており,被告も評価していたことが認められることに加え,前記1(2)認定及び前記2説示のとおり,Cの業務は,質的にも量的にも過重なものであり,入社3年目の同人が,上司の適切なサポートなしにソゲフィ社を担当することは,荷が重すぎるものであったことが認められる。 このような点からすれば,上司による適切なサポートがさ 的にも過重なものであり,入社3年目の同人が,上司の適切なサポートなしにソゲフィ社を担当することは,荷が重すぎるものであったことが認められる。 このような点からすれば,上司による適切なサポートがされていなかったことを度外視して,Cの性格を,「執着性格」としてうつ病発症の因子として殊更取り上げることは,適当でないといわざるを得ない。 次に,引越しについては,前記1(3)カ認定のとおり,Cは,その直後の電話において,このことをとても楽しそうに語っていたのであり,本件 全証拠によっても,同人が,引越後から本件自殺までの期間も含め,同引越しに関する不満を持っていたといった事情は認められないから,これがうつ病を発症・増悪させる心理的負荷になったとは到底考えられない。 また,単身・未婚であることについても,本件において,家族等によるサポートを得られなかったことが,同人の心理的負荷等になっていたというような事情は全く見当たらず,むしろ,同僚等が,Cから同人の業務に関する不満等を耳にする機会があったにもかかわらず,本件自殺に至っていることからすれば,仮にCに同居者等がいたとしても,うつ病の発症・増悪に影響は与えなかったものと考えるのが素直である。 さらに,昇級については,前記1(3)セ認定のとおり,それを告知されたのが平成19年3月19日であり,うつ病の発症後であるから,これが同症状の発症それ自体に影響を与えていないことは明らかである。もっとも,同認定のとおり,Cは,上記昇級を告げられた際に,自分はまだそこまでのレベルではないと述べ,自信がなさそうな様子を示すなど,かえって低い自己評価・自責的な解釈をしており,これがうつ病を悪化させる心理的負荷になった可能性は否定できないものの(甲92の1),前記(1)説示の ではないと述べ,自信がなさそうな様子を示すなど,かえって低い自己評価・自責的な解釈をしており,これがうつ病を悪化させる心理的負荷になった可能性は否定できないものの(甲92の1),前記(1)説示のとおり,うつ病の重症化は,同月中旬から下旬にかけての,同人の業務の質的・量的な多忙さや,上司のサポートのなさによるものであることが明らかであるから,上記昇級が,Cに与えた影響はあくまで軽微なものというべきであって,Cのうつ病増悪の原因につき,不明ないしは業務以外の出来事が主原因であると評価すべき事情になるとは,到底認められないというべきである。 (3) 小括以上より,Cの自殺は,業務に起因したものといえるから,同人の業務と本件自殺との間には,相当因果関係が認められる。 4 争点3(被告の安全配慮義務違反)について (1) 判断ア被告が負う安全配慮義務の内容労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして,疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると,労働者の心身の健康を損なう危険のあることは,周知のところである。労働基準法は,労働時間に関する制限を定め,労働安全衛生法65条の3は,作業の内容等を特に限定することなく,同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めるべき旨を定めているが,それは,上記のような危険が発生するのを防止することをも目的とするものと解される。これらのことからすれば,使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり,使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を 際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり,使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は,使用者の右注意義務の内容に従って,その権限を行使すべきである(最高裁判所平成12年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁)。 そして,上記注意義務は,労働者の心身の健康が損なわれるおそれに対するものであるから,この場合の結果とは,心身の健康が損なわれることであり,予見の対象は,心身の健康が損なわれることで足りるというべきところ,うつ病を発症し自殺に至るということは,まさに心身の健康が損なわれるおそれが具体化したものであり,また,過重な業務によって心身の健康が損なわれる場合の一態様として,うつ病を発症し自殺に至ることが通常あり得ることは周知の事実といえることからすれば,過重な業務等に対する認識可能性があれば,この点の予見可能性を認めることができるというべきである。 そうすると,使用者に安全配慮義務違反が認められるには,予見可能性 が必要であるところ,予見義務の内容として,具体的に特定の疾患の発症を予見し得たことまでは要求されず,「過重労働をすれば,労働者の健康が悪化するおそれがある」という抽象的な危惧が予見し得たならば予見可能性は肯定されるのであって,具体的には,①使用者又は代理監督者たる上司が,当該労働者が心身の健康を損なっている状態(体調悪化)を認識していたか又は認識可能であったか,若しくは,②心身の健康を損なう原因となった労働実態について,使用者又は代理監督者たる上司が認識していたか又は認識可能であれば,上記予見可能性が認められるというべきである。 イ本件へのあてはめ 心身の健康を損なう原因となった労働実態について,使用者又は代理監督者たる上司が認識していたか又は認識可能であれば,上記予見可能性が認められるというべきである。 イ本件へのあてはめこれを本件につきみるに,前記1(2)認定のとおり,Cに,ソゲフィ社を担当させたこと自体については,それが酷なものとまではいえなかったにしても,上司の適切なサポートがなければ,一人でこなすのは無理なものであったところ,Cの業務は,特に平成19年1月以降は,量的にも質的にも過重なものであったにもかかわらず,上司による適切なサポートがされていなかったことは,前記2(1)説示のとおりである。そして,前記1(3)ウ,オ,キ,コ,サ,セ,ソ,チないしテ認定並びに証拠(甲51,甲52,甲54,甲56,甲57,証人D4)及び弁論の全趣旨によれば,FらCの上司は,Cの業務状況につき,週報により把握できる状況にあったこと,Cは,Fら上司に対し,ソゲフィ社をめぐる案件等につき,メールないしは直接に相談していたこと,F及びEに宛てた同年3月2日付けメールには,「正直な所,メールやピクテル会議だけで議論する内容ではないと思います。多くの人間が動かねばならない非常に大きな問題だと思います。」と記載していたこと,Dも,出荷停止問題につき,同月5日に把握して以降,Cによる折衝ではらちがあかないため,自ら交渉に乗り出していることが認められる。 これらも併せ考えれば,②使用者たる被告又は代理監督者たるCの上司は,Cが軽度のうつ病を発症したと考えられる同月11日ころには,Cの業務(労働実態)が同人の心身の健康を損なうほどに質的・量的に過重なものであったことにつき認識可能であったというべきである。 また,前記1(3)セ,タ,テ認定のとおり,Cは,同月19日ないし ,Cの業務(労働実態)が同人の心身の健康を損なうほどに質的・量的に過重なものであったことにつき認識可能であったというべきである。 また,前記1(3)セ,タ,テ認定のとおり,Cは,同月19日ないし20日,F及びEの面前で,自信なさげな様子を示していたことに加え,本件自殺の1週間前ころからは,Pのところに何度も同じことを尋ねに来たり,同月下旬ころに同僚らに対しても,何かに追い詰められて相当悩んでいる様子を示したり,話しかけられても上の空であったりと,明らかに変調を来していたといえる状態であったことからすれば,①使用者たる被告又は代理監督者たるCの上司は,遅くともCのうつ病が重症化していた同月下旬(同月27日ないし28日前後)には,同人が心身の健康を損なっている状態にあったことを認識可能であったというべきである。 そして,前記1(3)キ,ク,ケ,チ,テ認定及び前記2(1)ア(ウ)説示のとおり,Fは,もともと英語力に難があり,その一事からしても,Cにとって質的・量的に過重であったソゲフィ社をめぐる問題につき,適切なサポートが期待し得なかった上に(現に,出荷停止問題についても,出荷を停止した旨のソゲフィ社からの英文メールは,Fに転送されており,その意味では,同人は同事実に気づき得たといえる。また,FがCに宛てた品質選別工程の中国移管問題に関するアドバイスを記載したと思われるメールの文面を見ても(乙15),単にそれまでのCからの報告をまとめ直して,フォード社のバイヤーにフォローを求めるべきとするものにすぎず,内容的にも,上司のフォローとして適切なものであったかは疑問が残るといわざるを得ない。),Cが相談に来ても,アドバイスをするよりは,むしろ頭ごなしに叱責するとか,自宅での残業を命じるといったことをしており,Lからフォローするよ て適切なものであったかは疑問が残るといわざるを得ない。),Cが相談に来ても,アドバイスをするよりは,むしろ頭ごなしに叱責するとか,自宅での残業を命じるといったことをしており,Lからフォローするよう言われた際にも,ソゲフィ社の件について は一切関知しておらず,自分も担当を持っていてとても忙しいので,それどころではない旨を述べたこと,Eも,Cの相談に乗るようPに依頼したり,出荷停止問題についても,本来であれば自らソゲフィ社との交渉に当たるべきであったにもかかわらず(乙26,証人D7・8),次期エンジンプロジェクト等のために余裕がなく,自ら交渉に当たれなかったため,Dが交渉に当たったこと,また,Dは,Cが,購買本部の品質会議での報告の準備等で多忙を極めていたにもかかわらず,さらにファシリテーター業務を引き受けてCを推薦したことも認められる。 このように,Cの上司らは,前記説示のとおり,①Cが心身の健康を損なっている状態(体調悪化)にあったこと,②その原因となったCの質的・量的に過重な労働実態について認識し得,Cが心身の健康を損ない,あるいは悪化させ,最悪自殺に至らないよう,適切なフォローを容易にし得たにもかかわらず,これを怠り,Cを自殺に至らしめたというほかはない。 したがって,被告には,安全配慮義務違反が認められるというべきである。 (2) 被告の主張について被告は,予見可能性の対象につき,単なる労働実態ではなく,健康状態の悪化という結果を生む原因となる危険な状態であるというべきであって,しかも,これを容易に認識し得た場合に限って予見可能性が肯定できるとし,本件の場合,仮にCがうつ病を発症したとしても,その発症の時期は平成19年3月30日かそれ以降であり,Cの行動自体にも特に体調不良を思わせるような事情は認 た場合に限って予見可能性が肯定できるとし,本件の場合,仮にCがうつ病を発症したとしても,その発症の時期は平成19年3月30日かそれ以降であり,Cの行動自体にも特に体調不良を思わせるような事情は認められなかったことからすれば,予見可能性はなかった旨を主張する。 しかし,被告の上記主張は,予見可能性の対象を不当に狭めるものであるばかりか,Cのうつ病の発症時期を不当に遅らせるものであって,前記3 (1)イ,4(1)ア説示に照らし,いずれも採用することができない。 また,仮にこの点を措き,被告の上記主張する基準によったとしても,上記(1)イ説示のとおり,Cは,平成19年3月下旬ころには,その行動につき,明らかに変調を来していたといえる状態であったことからすれば,遅くともうつ病が悪化したと推認される同月27日ないし28日ころには,Cは,健康状態の悪化という結果を生む原因となる危険な状態にあったことは客観的にも明らかである。 そうすると,FやEらにしても,仮にCとのコミュニケーションを常日頃から図るなどしていれば,この段階で,Cに対し,購買本部の品質会議での報告やソゲフィ社との対策会議に向けた準備状況を確認するなどして,同人の業務の軽減化に取り組み,また,その際の受け答えの様子等から,体調面を含め同人の置かれた状況を把握することは十分に可能であったと認められる。 そして,本件自殺が同年4月2日であり,最終出勤日から本件自殺までなお3日間あったことも併せ考慮すれば,遅くとも同年3月30日の時点で,被告(Cの上司ら)が,上記のとおりの何らかの対策を取っていれば,本件自殺は十分に避け得たと推認されるのであって,被告に安全配慮義務違反が認められることに何ら変わりはないといわねばらなない。 したがって,被告の上記主張には理由 らかの対策を取っていれば,本件自殺は十分に避け得たと推認されるのであって,被告に安全配慮義務違反が認められることに何ら変わりはないといわねばらなない。 したがって,被告の上記主張には理由がない。 (3) 小括以上より,被告には,安全配慮義務違反が認められる。 5 争点4(損害)について(1) Cの損害ア慰謝料 2500万円(ア) 前記認定・説示のとおり,Cは,上司から何ら適切なサポートを受けられない中で,質的にも量的も過重な業務に恒常的に従事させられ,ソ ゲフィ社をめぐるトラブルについても,孤軍奮闘し,一人で抱え込まざるを得ない状況に陥った結果,うつ病を患ったのである。そして,本件自殺当時は未だ25歳と若く,被告でも優秀な成績を修めており,本来将来を嘱望されるべき人物であったにもかかわらず,自ら命を絶たざるを得なかった同人の無念は,察するに余りあるものであり,これを慰謝するには,2500万円が相当である。 (イ) ところで,原告らは,被告から,見舞金として2500万円の支払を受けており(前記前提事実(6)イ参照),これを,まずCの慰謝料を原因とする損害につき遅延損害金・元本の順に充当することは当事者間に争いがない。そして,証拠(甲90)によれば,上記充当の合意は,もともと,上記見舞金のうち,平成21年7月15日限りに追加で支払われた2485万円についてのものであることが認められ,残り15万円については,訴訟上でされた新たな合意と解されるが,充当計算においては,平成21年7月15日時点におけるCの慰謝料2500万円にかかる遅延損害金・元本につき,上記見舞金2500万円を充当するのが相当である。 そして,本件は,不法行為に基づく請求であり,本件自殺日 年7月15日時点におけるCの慰謝料2500万円にかかる遅延損害金・元本につき,上記見舞金2500万円を充当するのが相当である。 そして,本件は,不法行為に基づく請求であり,本件自殺日が平成19年4月2日であるから,Cの慰謝料2500万円に対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金は,平成21年7月15日の時点で,285万9589円発生していることとなり,これに,まず前記見舞金2500万円を充当し,次にその残額を上記慰謝料の元本部分に充当すると,同元本は285万9589円残存するから,同額及びこれに対する平成21年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を,原告らが相続することとなる。 イ逸失利益 5895万5076円(ア) 基礎収入 676万7500円(平成18年賃金センサスによる男性 大卒全年齢平均年収)(イ) ライプニッツ係数 17.423(本件自殺当時25歳。労働能力喪失期間42年に対応する数額)(ウ) 生活費控除率 50パーセント(エ) 計算式676万7500円×17.423×(1-0.5)(2) 原告Aの損害ア Cからの相続分(ア) 慰謝料 142万9794円計算式 285万9589円÷2(イ) 逸失利益 1954万7538円a 原告Aは,Cの逸失利益5895万5076円のうち,相続分に従い,その2分の1を相続しているところ,広島中央労働基準監督署長の支給決定に従い,遺族補償金として,993万円(854万6000円+138万4000円。前記前提事実(6)ア参照)の支給を受けているので,これを控除すべきである。 b 計算式 5895万5076円÷2-993万円 として,993万円(854万6000円+138万4000円。前記前提事実(6)ア参照)の支給を受けているので,これを控除すべきである。 b 計算式 5895万5076円÷2-993万円イ原告A固有の損害(ア) 慰謝料 250万円原告らが,本件自殺により受けた精神的苦痛は,それだけで甚大なものであるといえるところ,証拠(甲9,甲21,甲31,原告B本人12・13)によれば,本件自殺後,Dは,Cが亡くなったとの報告をうけた際,皆の前で笑いながら「Cが亡くなったわー」とか,「この忙しいのにこんなこと…いろいろあるわ」などと発言し,Cの葬儀の際も,被告の弔文原稿に目を通しながら,冗談めいた口ぶりで「泣かすよなー」とか,会葬御礼をもらったことについて「この辺ではこうなん か?」と笑い話をしていたこと,Eは,Cの同僚らが,Cの使用していた机上に花を用意しようとした際に「大っぴらにするな」と許可しようとしなかったり,同じくCの同僚らが,Cの通夜・葬儀の出席につきメールを流したところ,「全員にそのようなものを流すな」と注意したことが認められる。 このような事実に照らすと,原告らは,本件自殺後に,いわば二重に精神的苦痛を被ったといえるのであって,その度合いは,想像に余りあるものであるといえる。 そして,これらの事情についても,本件自殺にかかわる一連のものであると認められるから,原告らの慰謝料を算定するに当たってしんしゃくすべきであるところ,原告ら固有の慰謝料としては,各自250万円を認めるのが相当である。 (イ) 葬儀費用 88万7100円a 同費用としては,150万円を認めるのが相当であるが,原告Aは,広島中央労働基準監督署長の支給決定に従い,葬祭料として,61万2900円 (イ) 葬儀費用 88万7100円a 同費用としては,150万円を認めるのが相当であるが,原告Aは,広島中央労働基準監督署長の支給決定に従い,葬祭料として,61万2900円(57万1380円+4万1520円。前記前提事実(6)ア参照)の支給を受けているので,これを控除すべきである。 b 計算式 150万円-61万2900円(ウ) 弁護士費用 250万円本件訴訟の経緯や経過等,一切の事情にかんがみ,弁護士費用として,250万円(上記ア(ア),(イ),イ(ア),(イ)の合計2436万4432円の約1割)を認めるのが相当である。 カ合計 2686万4432円(3) 原告Bの損害ア Cからの相続分(ア) 慰謝料 142万9794円 計算式 285万9589円÷2(イ) 逸失利益 2947万7538円計算式 5895万5076円÷2イ原告B固有の損害(ア) 慰謝料 250万円上記認定の理由は,前記(2)イ(ア)説示のとおりである。 (イ) 弁護士費用 340万本件訴訟の経緯や経過等,一切の事情にかんがみ,弁護士費用として,340万円(上記ア(ア),(イ),イ(ア)の合計3340万7332円の約1割)を認めるのが相当であるウ合計 3680万7332円第4 結論よって,原告らの請求は,被告に対し,原告Aにつき2686万4432円並びにうち142万9794円に対する平成21年7月16日から支払済みまで及びうち2543万4638円に対する平成19年4月2日から支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員,同Bにつき,3680万7332円並びにうち142万9794円に対する平成 6日から支払済みまで及びうち2543万4638円に対する平成19年4月2日から支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員,同Bにつき,3680万7332円並びにうち142万9794円に対する平成21年7月16日から支払済みまで及びうち3537万7538円に対する平成19年4月2日から支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員の支払を,それぞれ求める限度で理由があるから,この範囲で認容することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所姫路支部 裁判長裁判官中村隆次 裁判官吉澤暁子 裁判官舘野俊彦

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