平成11(ネ)4965 遺留分減殺請求事件

裁判年月日・裁判所
平成12年3月8日 東京高等裁判所
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判決文本文6,130 文字)

主文 一原判決中控訴人関係部分を取り消す。 二被控訴人らの控訴人に対する請求をいずれも棄却する。 三訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一控訴人主文と同旨二被控訴人ら 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 第二事案の概要本件の事案の概要は、次のとおり訂正し、付加し、又は削除するほかは、原判決の「第二事案の概要」中の控訴人と被控訴人ら関係部分に記載のとおりであるから、これをここに引用する。 一原判決八頁一行目の「(」の次に「丙三。」を、同九行目の「死因贈与契約書」の次に「(乙二七の一)」をそれぞれ加える。 二原判決九頁一一行目の「)」の次に「、相続人に対する贈与は民法一〇三〇条に該当しない限り遺留分減殺の対象とならないか(争点3)」を加える。 三原判決一〇頁一行目の「3」を「4」と、同二行目の「4」を「5」とそれぞれ改める。 四原判決一一頁一一行目の「Aが」の次に「東京土地の」を加える。 五原判決一二頁七行目の「Bから」の次に「相続により」を加え、同一一行目の「遺留分減殺」から同一三頁一〇行目の「また、」までを削る。 六原判決一六頁一一行目から同一七頁七行目までを次のとおり改める。 「 仮に右相続分の譲渡が認められないとしても、C及びDは、相続分譲渡の効力いかんにかかわらず、代襲相続人として自己の有する遺留分の権利を控訴人に譲渡してこれを承継させる意思をも有していたものと解することができるから、控訴人による遺留分の権利の承継は認められるべきである。」七原判決一八頁三行目の次に行を改めて「3 争点3(遺留分減殺の対象)について(一 有していたものと解することができるから、控訴人による遺留分の権利の承継は認められるべきである。」七原判決一八頁三行目の次に行を改めて「3 争点3(遺留分減殺の対象)について(一) 控訴人の主張(1) 被相続人から相続人への生前贈与のうち民法一〇三〇条の定める要件を満たさないものは、遺留分減殺の対象とならない。 民法一〇四四条による同法九〇三条一、二項の準用の意味は、特別受益の価額が遺留分の価額と等しいか又はこれを超えるときは、当該相続人は具体的な遺留分を有しないことになるというにとどまり、右準用によって特別受益が無条件で遺留分減殺の対象となるものではない。特別受益の持戻しと遺留分減殺請求とは、その本質ないし制度の目的を異にするのであり、持戻し免除の意思表示がない限り特別受益は遺留分算定の基礎となる財産に含まれるとしても、そこから当然に遺留分算定の基礎となった財産のすべてが遺留分減殺の対象となるとしなければならない法理的又は論理的な必然性は存しない。 遺留分減殺の対象となる贈与は、民法一〇三〇条に定める要件を満たすもののみであり、特別受益もその例外ではない。 (2) 本件において、AからBへの本件借地権の譲渡が認められるとすると、仮にそれが有償であると認められなかったとしても、Bにとっては特別受益となる贈与であり、それは、代襲相続人であるC及びD、さらには、この両名から相続分の譲渡を受けた控訴人にとっても特別受益となり、持戻しに服すべきものとされる可能性がないとはいえない。また、AからBへの本件借地権の譲渡が認められなかったとしても、控訴人が本件死因贈与契約により東京建物とともに本件借地権を取得したものとして、控訴人の特別受益と解されるべきものとなる。 そ AからBへの本件借地権の譲渡が認められなかったとしても、控訴人が本件死因贈与契約により東京建物とともに本件借地権を取得したものとして、控訴人の特別受益と解されるべきものとなる。 そうすると、東京建物及び本件借地権は、遺留分算定の基礎に加えられることになるが、本件借地権がBに譲渡された昭和四〇年六月はもとより本件死因贈与契約が締結された平成三年五月一九日も、いずれもAについて相続が開始された平成七年七月三一日より一年以上前であり、右いずれの時点においても、Aは横浜物件を所有していたから、右譲渡又は本件死因贈与契約によって他の遺留分権利者の遺留分が害されることはあり得ず、A、B及び控訴人のいずれにもその認識がなかったことも明らかである。したがって、これらは、民法一〇三〇条所定の贈与には当たらず、遺留分減殺の対象とならないから、東京物件については、遺留分減殺請求は許されない。 (二) 被控訴人ら控訴人の右主張は、争う。 共同相続人の一人が被相続人から婚姻、養子縁組又は生計の資本として受けた贈与は、相続分の前渡しと見られるから、それがされた時期及び加害の認識の有無にかかわらず、遺留分算定の基礎となる財産となり、かつ、遺留分減殺の対象となることは明らかである。」を加え、同四行目の「3 争点3」を「4 争点4」と、同六行目から同九行目までを「 死因贈与は、民法一〇三三条により遺贈(遺贈に準ずる処分を含む。)を減殺した後でなければ、減殺することができない。その理由は、次の (1)ないし(3)のとおりである。 (1) 死因贈与は契約であって、その当事者は行為能力者(成年者)であることを要し、受贈者は、当事者双方の合意によって、贈与者の死亡時に自己が生存することを法定条件とする不確定期限付 である。 (1) 死因贈与は契約であって、その当事者は行為能力者(成年者)であることを要し、受贈者は、当事者双方の合意によって、贈与者の死亡時に自己が生存することを法定条件とする不確定期限付き債権を取得するものであり、その権利関係は契約時より確定して拘束力を生じており、その権利は民法一二九条によって保存又は担保し得る。これに対し、遺贈は単独行為であって、遺言能力は満一五歳に達するをもって足り、その性質は死因贈与と大きく異なり、しかも、受遺者は通常遺言者の死後でなければ遺贈の事実を知り得ない。したがって、遺贈が単独行為であることによる規定は死因贈与には準用されず、遺贈に関する規定のうち死因贈与に準用されるのはその一部(例えば、民法九九四条等)にとどまるものというべきである。 (2) また、死因贈与は、書面によらない場合は民法五五〇条によって取り消すことは可能であるが、信義則上死因贈与の全部又は一部を取り消すことがやむを得ないと認められる特段の事情がない限り、同法五五四条によって同法一〇二二条や一〇二三条が準用されることはないのであり、このことは、最高裁判例からも明らかである。 (3) さらに、遺留分算定の基礎及び減殺対象の基準時に関し、贈与についてはその行為時すなわち贈与契約成立時が基準とされている(民法一〇三〇条、一〇三五条)。しかるに、死因贈与についてのみこれを契約成立時とせず、効力発生時すなわち贈与者の死亡時とするのは筋が通らない。生前贈与であると死因贈与であるとを問わず、右基準時は、契約成立時とすべきである。 これを本件についてみるに、仮に東京物件についての本件死因贈与契約が遺留分減殺の対象となるとしても、被控訴人らは、まず、横浜物件についてのEへの遺言による遺贈に準ずる取得処分に対して減殺請求をすべ これを本件についてみるに、仮に東京物件についての本件死因贈与契約が遺留分減殺の対象となるとしても、被控訴人らは、まず、横浜物件についてのEへの遺言による遺贈に準ずる取得処分に対して減殺請求をすべきであり、そうすると、その減殺請求によって被控訴人らの遺留分は完全に充足されることになるから、控訴人に対する遺留分減殺請求は理由がないことになる。」とそれぞれ改める。 八原判決一九頁二行目の次に行を改めて「(三) 被控訴人らの主張控訴人の主張は、争う。 死因贈与は、遺贈に関する規定に従うのであるから、死因贈与も遺贈と同じ順序で減殺される。」を加え、同三行目の「4 争点4」を「5 争点5」と改める。 九原判決二一頁一一行目の次に行を改めて次のとおり加える。 「(三) 控訴人の主張(1) 遺留分減殺請求の相手方が遺留分を有する相続人である場合には、その相続人の有する遺留分は相続人としての固有の権利であって他の相続人の遺留分を侵害するものではないから、減殺対象の目的物件の価額から減殺請求の相手方である相続人の有する遺留分額を控除した残額のみが民法一〇三四条にいう「目的の価額」として減殺の対象となる。 (2) したがって、仮に本件死因贈与契約が遺留分減殺の対象となるとしても、東京物件の価額から控訴人の有する遺留分額を控除した残額のみが減殺の対象となる。」第三証拠(省略) 理由 一当裁判所は、被控訴人らの控訴人に対する本件各請求は理由がないからこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正し、付加し、又は削除するほかは、原判決の「第三当裁判所の判断」中の控訴人と被控訴人ら関係部分に記載のとおりであるから、これをここに引用する。 1 原判決 判断する。その理由は、次のとおり訂正し、付加し、又は削除するほかは、原判決の「第三当裁判所の判断」中の控訴人と被控訴人ら関係部分に記載のとおりであるから、これをここに引用する。 1 原判決二二頁六行目の「四」を「五」と改め、同行目の「一八の」の次に「一ないし」を加え、同七行目の「一三」を「二三」と、同八行目の「三三」を「二九の一ないし三、三〇、三一の一ないし五、三二、三三、三四の一ないし四、三五、三六」と、同一一行目の「F」を「Aの妻F」とそれぞれ改める。 2 原判決二三頁四行目の「戻り」の次に「、昭和二一年一二月ころ平家建て建物一〇・二五坪を建築し」を加え、同七行目の「建物(東京建物)を新築し」を「住宅金融公庫の融資に当選した大工のG名義で東京建物を新築し(したがって、所有権保存登記は、同人名義でした。)」と改める。 3 原判決二四頁四行目の「昭和三一年」の次に「一一月八日」を、同五行目の「店舗」の次に「。同社とAとは、同日東京建物の一階について賃貸借契約を締結している。」を、同一〇行目の「半分を」の次に「同地上の前記平家建て建物とともに」をそれぞれ加える。 4 原判決二五頁一行目の「締結し」の次に「、同月一五日」を加え、同八行目の「本件建物」を「東京建物」と改める。 5 原判決二六頁一行目の「一九日」の次に「、控訴人との間に」を加え、同二行目の「これを公正証書にした」を「同月二八日付けで控訴人のために始期付所有権移転仮登記(始期・Aの死亡)を経由した」と、同六行目から同七行目にかけての「有償譲渡した」を「有償譲渡した」とそれぞれ改める。 6 原判決二七頁八行目の「所有名義を」の次に「真正な登記名義の回復を原因として」を加える。 7 原判決二九頁一一行目の「本件遺産」を「Aの遺産」と改める。 8 原判決三〇頁二 それぞれ改める。 6 原判決二七頁八行目の「所有名義を」の次に「真正な登記名義の回復を原因として」を加える。 7 原判決二九頁一一行目の「本件遺産」を「Aの遺産」と改める。 8 原判決三〇頁二行目から同三一頁八行目までを削る。 9 原判決三一頁九行目の「三争点3」を「二争点4」と改める。 10 原判決三二頁一行目から同二行目にかけての「解する」から同三行目末尾までを「解する余地もないではないが、他方、【要旨】死因贈与も、生前贈与と同じく契約締結によって成立するものであるという点では、贈与としての性質を有していることは否定すべくもないのであるから、死因贈与は、遺贈と同様に取り扱うよりはむしろ贈与として取り扱うのが相当であり、ただ民法一〇三三条及び一〇三五条の趣旨にかんがみ、通常の生前贈与よりも遺贈に近い贈与として、遺贈に次いで、生前贈与より先に減殺の対象とすべきものと解するのが相当である。そして、特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言(以下「相続させる遺言」という。)による相続は、右の関係では遺贈と同様に解するのが相当であるから、本件においては、まず、原審相被告Eに対する相続させる遺言による相続が減殺の対象となるべきものであり、それによって被控訴人らの遺留分が回復されない場合に初めて、控訴人に対する死因贈与が減殺の対象になるというべきである。」と、同四行目の「四争点4」を「三争点5」とそれぞれ改める。 11 原判決三三頁一行目から同三四頁一一行目までを次のとおり改める。 「 そうすると、被控訴人ら及び原審相被告Eの各遺留分額は、それぞれ九九七万三四四八円となる。そして、被控訴人らが取得した遺産の額はそれぞれ四四九万七二四二円であるから、被控訴人らは、それぞれ五四七万六二〇六円ずつ遺留分を侵害されていることになる 額は、それぞれ九九七万三四四八円となる。そして、被控訴人らが取得した遺産の額はそれぞれ四四九万七二四二円であるから、被控訴人らは、それぞれ五四七万六二〇六円ずつ遺留分を侵害されていることになる。 したがって、前示したところに従って、まず、原審相被告Eが相続させる遺言による相続によって取得した遺産すなわち横浜物件から遺留分減殺をすべきところ、相続人に対する遺贈を遺留分減殺の対象とする場合には、遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分額を超える部分のみが遺留分減殺の対象となるのであり、このことは、相続させる遺言による相続が遺留分減殺の対象となる場合も同様に解すべきであるから(最高裁平成一〇年二月二六日第一小法廷判決民集五二巻一号二七四頁参照)、横浜物件は、その価格六六七九万円から原審相被告Eの遺留分額九九七万三四四八円を差し引いた残額五六八一万六五五二円の限度で減殺の対象となる。他方、被控訴人らの侵害されている遺留分額は、前記のとおり、それぞれ五四七万六二〇六円であり、その合計は一〇九五万二四一二円であるから、原審相被告Eが取得した右遺留分超過額五六八一万六五五二円を下回ることは明らかである。 そうすると、被控訴人らは、その侵害された遺留分全額を原審相被告Eに対する遺留分減殺請求によって回復することができることになり、控訴人に対して遺留分減殺請求をする必要はないことになる。したがって、その余の点(争点2、3)について判断するまでもなく、被控訴人らの控訴人に対する請求は、すべて理由がないことに帰する。」二よって、当裁判所の右判断と異なる原判決中の控訴人敗訴部分を失当として取り消し、被控訴人らの控訴人に対する本件各請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成一一年一二月二〇日)(裁判長裁判官石井健 判決中の控訴人敗訴部分を失当として取り消し、被控訴人らの控訴人に対する本件各請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成一一年一二月二〇日)(裁判長裁判官石井健吾裁判官櫻井登美雄裁判官加藤謙一)

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