平成24(行ウ)222 戒告処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年12月17日 大阪地方裁判所
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判決文本文58,264 文字)

主文 1 大阪市交通局長が原告に対し平成24年8月28日付けでした戒告処分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,375万円及びこれに対する平成24年8月28日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 2 主文第1項と同旨。 第2 事案の概要大阪市交通局長(以下「交通局長」という。)は,被告大阪市交通局自動車部の職員である原告に対し,同人が入れ墨の有無等を尋ねる調査に所定の書面で回答しなかったことが職務命令違反(地方公務員法32条)に当たるとして,地方公務員法(以下「地公法」という。)29条1項1ないし3号並びに大阪市職員基本条例28条1項及び別表11号に基づき,懲戒処分としての戒告処分(以下「本件処分」という。)をした。 本件は,原告が,被告に対し,上記調査は憲法13条等に違反する違憲・違法な調査であるから,上記調査に回答するよう命じた職務命令及び本件処分も違法であるとして,本件処分の取消しを求めるとともに,上記調査,本件処分等により精神的損害等を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料300万円及び弁護士費用相当額75万円の損害賠償並びにこれらに対する違法行為の最終日である平成24年8月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。(以下,特記しない限り,日時は平成24年を指し,課や営業所 は上記自動車部に所属するものを指す。) 1 前提事実当事者間で争いのない事実,括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1)当事者等ア被告は地方公 自動車部に所属するものを指す。) 1 前提事実当事者間で争いのない事実,括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1)当事者等ア被告は地方公共団体であり,大阪市交通局(以下,単に「交通局」という。)は,被告が経営する自動車運送事業及び鉄道事業を行う地方公営企業であり,交通局長はその管理者(地方公営企業法7条)である。 平成24年4月1日当時の被告の職員数は3万6615名,交通局の職員数は6513名であった。(乙36,37)イ原告は,平成3年4月1日に交通局長により交通局の職員に任命されるとともに業務課業務係勤務を命ぜられ,職員部研修所での研修を経た後,同年5月21日からa営業所において自動車運転手として勤務した。 (甲1ないし3)その後,原告は,平成7年4月1日からb営業所,平成14年1月27日からc営業所,平成17年4月1日からd営業所,平成22年3月28日からはe営業所において,いずれも自動車運転手として勤務し,平成24年12月11日付けで運輸課に配属された。 (甲4ないし6,弁論の全趣旨)(2)入れ墨に関する調査の端緒ア平成24年2月28日,甲新聞は「施設職員が虐待児恫喝入れ墨を見せ暴言繰り返す大阪市処分せず賞与査定は大甘」との見出しで,「大阪市立児童福祉施設に勤務する30代の男性職員(以下「本件施設職員」という。)が,子供たちに自分の入れ墨を見せ,暴言を吐い たりしたことが市側の調査で判明したにもかかわらず,市が処分せず,公表も見送っていたことが27日,分かった」「昨年(平成23年)4月以降,この職員が『自分の腕の入れ墨を子供たちにみせている』『あほ,ぼけ,殺すぞといった暴言と恫喝(どうかつ)を児童に繰り返している』との告発 ていたことが27日,分かった」「昨年(平成23年)4月以降,この職員が『自分の腕の入れ墨を子供たちにみせている』『あほ,ぼけ,殺すぞといった暴言と恫喝(どうかつ)を児童に繰り返している』との告発が市側に複数寄せられた」「市は調査結果で児童に対する問題行動もあったと認定したにもかかわらず,この事実は処分対象とせず,停職後は同じ職場に復帰させた」などと報道した(以下「本件新聞報道」という)。 (甲15,乙6)イ 3月8日,被告の定例常任委員会において,A委員が本件新聞報道につき質問し,Bこども青少年局長は,本件施設職員が入れ墨を入れているのは間違いないが,入れ墨を見せて児童に見せて恫喝したとの事実は確認できなかった旨回答した。(甲16,乙30)ウ被告は,3月21日,C市長を委員長とする大阪市服務規律刷新プロジェクトチーム(以下「服務PT」という。) を設置し,交通局長も服務PTの委員に就任した。(乙8,12)エ同日,服務PTの第1回会議が開催され,全職員に対して入れ墨の有無等を調査するとの方針が決定された。 (3)入れ墨に関する調査ア上記服務PTの方針決定を受け,交通局職員部長は,各所属長に対して5月2日付け「入れ墨に関する調査の実施について(依頼)」と題する書面を発出し,添付の調査実施要領(以下「本件調査実施要領」という。)に基づき入れ墨に関する調査を実施するよう依頼し,交通局長は,職員に対し,「入れ墨に関する調査について」と題する交通局長名義の書面及び調査票を配布して,本件調査実施要領に基づき,調査を実施した。 (甲17,乙1,47)イ本件調査実施要領は,調査の目的,調査方法等につき,概要,以下のとおり説明している。(乙1)[目的]i 本件新聞報道にもあるように,被告職員 した。 (甲17,乙1,47)イ本件調査実施要領は,調査の目的,調査方法等につき,概要,以下のとおり説明している。(乙1)[目的]i 本件新聞報道にもあるように,被告職員の入れ墨が社会問題となっており,人事配置上の配慮等を行う観点から,日常生活を行う上で目視可能な部位への入れ墨の有無を把握するため,全職員に対し記名式の調査を実施する。 ⅱ 入れ墨に関わる服務のルールを検討するに当たり,被告として,職員の実態を把握する必要があるため,肩から手の指先まで及び首から上,膝から足の指先までの部分以外に入れ墨のある職員に対し,任意回答による調査を実施する。 (以下,上記ⅰの調査を「本件調査」といい,上記ⅱの調査を「本件任意調査」という。)[対象者等]対象者全職員(非常勤嘱託職員及びアルバイト職員を除く)調査期間 5月1日から同月10日(ただし,原告が所属していた自動車部では同月11日が回答期限とされていた。乙48)[調査方法等]全職員に調査票を配布・回収のうえ,各所属において集計表及び一覧表を作成。調査票について,作成日及び氏名は,原則として自署で記入。ただし,本件任意調査用の調査票については,任意調査対象箇所に入れ墨のない職員は提出不要。 [提出書類等]調査票の原本,集計表及び一覧表を5月14日までに担当者に提出。 ウ本件調査用の調査票(甲17及び乙1の別紙1-1。以下「本件調査票」という。)には,作成日,所属名,課・事業所名・職員番号及び署名を記入する欄があり,肩から手の指先,首から上,膝から足の指先までの部位(以下「本件調査対象部位」という。)に入れ墨(ただし,アートメイク(化粧の一部として眉,アイライン,唇の皮膚に針等で色素を入れる施術)を除く。 ,肩から手の指先,首から上,膝から足の指先までの部位(以下「本件調査対象部位」という。)に入れ墨(ただし,アートメイク(化粧の一部として眉,アイライン,唇の皮膚に針等で色素を入れる施術)を除く。以下同じ。)をしているか,入れ墨をしている部位はどこか及び入れ墨の大きさはどのくらいかとの質問事項が記載されている。(甲17,乙1。以下,本件調査の対象となる入れ墨の有無,部位及び大きさについての情報を「本件入れ墨情報」という。)エ本件任意調査用の調査票(以下「本件任意調査票」という。)には,作成日,所属名,課・事業所名・職員番号及び署名を記入する欄があり,入れ墨をしている部位はどこか,入れ墨の大きさはどのくらいか,入れ墨をした時期はいつごろかとの質問事項が記載されている。また,本件任意調査票には,本件調査対象部位以外の部位(以下「本件任意調査対象部位」という。)に関しては「あくまでも,任意回答であり,回答しなかったことにより不利益な取り扱いを受けることはないが,できる限り,職員各位の協力を願いたい」,「任意調査対象箇所に入れ墨のない職員は,回答不要」との説明が附記されている。(甲17,乙1)オ交通局以外の被告の組織においても,大阪市教育委員会(以下「市教委」という。)を除き,本件調査実施要領記載の方法により入れ墨の有無等に関する調査が実施された(以下,被告で実施した本件調査と同様の方法による調査全体を「本件全体調査」という。)。 カなお,市教委では,前記服務PTの方針決定を踏まえ議論した結果,学校園に勤務する教職員に対し,入れ墨の有無等に関する調査を実施 したが,教職員に入れ墨の有無等の回答を義務付けることなく,職務上において児童,生徒等の目に触れる可能性のある所に入れ墨がある場合は,その旨を申告することを求める れ墨の有無等に関する調査を実施 したが,教職員に入れ墨の有無等の回答を義務付けることなく,職務上において児童,生徒等の目に触れる可能性のある所に入れ墨がある場合は,その旨を申告することを求めるとの方法により実施した。 (甲40ないし43,乙14)(4)本件調査の実施状況及び原告の対応ア 5月8日頃,原告は本件調査票を提出していなかったため,De営業所長(以下「D所長」といい,D所長とE運行係長の両名を「D所長ら」という。)及びE運行係長に呼び出された。 原告は,D所長らに対し,本件調査票の提出は拒否するが,業務において支障無きように現認してもらいたいと述べたため,D所長らは,原告の本件調査対象部位に入れ墨がないことを視認により確認した。 イ 5月16日,第2回服務PT会議において本件全体調査の中間報告がされた。同日の時点で調査対象職員数は3万3546名,回答済み職員数は3万3033名,本件調査対象部位に入れ墨をしている職員数は98名,未回答者は513名であり,交通局については,調査対象者数は6509名,回答済み職員数は6413名,本件調査対象部位に入れ墨をしている職員数は13名,未回答者は96名であった。(乙13)ウ原告は,5月21日から6月3日までの間,逆流性食道炎のため病気休暇を取得して自宅で療養していたところ,被告から本件調査の回答を自宅まで取りに行くとの連絡があったが,原告はこれを断った。 エ 6月5日,第3回服務PTにおいて本件全体調査の最終結果が報告された。調査対象者数は3万3537名,回答済み職員数は3万3507名,本件調査対象部位に入れ墨を入れている職員数は98 名,未回答の職員は30名(ただし,入院中などの理由で回答が不可能な職員15名を含む)であった。交通局については,調査 み職員数は3万3507名,本件調査対象部位に入れ墨を入れている職員数は98 名,未回答の職員は30名(ただし,入院中などの理由で回答が不可能な職員15名を含む)であった。交通局については,調査対象職員数は6508名,回答済み職員数は6504名,本件調査対象部位に入れ墨を入れている職員数は13名,未回答職員数は4名であり,入院中などの理由で回答が不可能な職員が3名,調査への回答を拒否したのは原告のみであった。(乙14)オ 6月29日,D所長,E運行係長及びF庶務助役は,原告と面談し,原告に対し,「回答拒否を続けるのであれば,職員基本条例により分限免職処分の対象ともなる」,「これは退職勧奨ではないが,早期退職に希望する方が原告のためになるのではないか」などと述べた。(弁論の全趣旨)カ 7月13日の時点で,被告全体では13名,交通局では原告のみが回答を拒否していたところ,交通局長は,同日,原告に対し,職務命令として,同月27日までに本件調査に回答することを命じ(以下「本件職務命令」という。),それに従わない場合は,地公法29条1項の規定により懲戒処分が行われることがある旨警告した。 (甲19,乙2,甲56)キ 7月21日,原告は,交通局長に対し,本件職務命令は,憲法19条及び憲法21条に反するものであるから回答を拒否すること,入れ墨の有無についてはD所長らの現認を受けていること,本件職務命令の撤回を要求することなどを記載した書面を送付した。(甲20)ク 7月24日,D所長及びG自動車運輸長は,原告に対し本件調査に回答するよう要請したが,原告がこれを断ったため,原告に対し「今後は本局の課長らが面会に来て色々言われるであろうが,それなりの覚悟を持ってのぞむように」と述べた。 ケ 7月27日,原告は公休を取得 るよう要請したが,原告がこれを断ったため,原告に対し「今後は本局の課長らが面会に来て色々言われるであろうが,それなりの覚悟を持ってのぞむように」と述べた。 ケ 7月27日,原告は公休を取得していたが,H業務課長(以下「H課長」という。)及びI課長代理(以下,H課長と併せて「H課長ら」という。)からの求めに応じて出勤して同人らと面談した。 H課長らは,原告に対し,本件調査に対する回答を拒否する理由を尋ねたところ,原告は,同月21日に交通局長に対して送付した文書のとおりであり,入れ墨がないことは既にD所長らに現認してもらっている旨答えた。H課長らは,原告に対し回答するよう求めたが,原告はこれを断った。 コ 7月30日,交通局長は原告に対し,警告書(甲21,乙3)を交付して,本件調査に回答しないことは,地公法32条が定める上司の職務命令に従う義務に違反し,同法29条1項1号が定める懲戒事由に当たるとして,直ちに回答するよう警告した。(甲21,乙3)サ 8月28日,原告の勤務終了後,D所長は原告に対し,始末書を提出するよう要請したが,原告はこれを拒否した。 (5)本件処分ア 8月28日,交通局長は,原告が本件調査に回答しなかったことが地公法29条1項各号の定める懲戒事由に当たるとして原告を懲戒処分として戒告した(本件処分)。(甲22,23,乙4,5)イ原告は本件処分を受けたことにより,昇給が2号俸減ぜられ,勤勉手当が0.15月分減額されることとなった。(甲37)ウなお,交通局長以外の任命権者が行った調査の対象者で原告と同様に本件全体調査に回答しなかった職員5名も原告と同様に戒告処分とされた。(甲24,乙15)(6)関係法令ア地公法 (懲戒)第29条職員が次の各号の一に該 象者で原告と同様に本件全体調査に回答しなかった職員5名も原告と同様に戒告処分とされた。(甲24,乙15)(6)関係法令ア地公法 (懲戒)第29条職員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。 一この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合二職務上の義務に違反し,又は職務を怠つた場合三全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合2~4項(略)(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)第32条職員は,その職務を遂行するに当つて,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。 イ大阪市職員基本条例(甲18,乙9。以下「職員基本条例」という。)(懲戒の基本方針)第27条任命権者は,職員が法第29条第1項各号のいずれかに該当する場合は,組織の規律と公務遂行の秩序を維持して,同種の事案の再発防止を徹底し,市民の信頼の回復を図るため,次条に定める基準により,適正かつ迅速に懲戒処分を行うものとする。 2~4項(略)(懲戒の基準)第28条任命権者は,別表非違行為の類型欄に掲げる非違行為(職 員が法第29条第1項各号のいずれかに該当することとなる行為をいう。以下同じ。)の類型に応じ,同表懲戒処分の種類欄に定める懲戒処分の種類のうちから,職員が行った非違行為の動機及び態様,公務内外に与える影響,当該職員の職責,当該非違行為の前後における当該職員の態度等を総合的に考慮して,1の種類の懲戒処分(懲 欄に定める懲戒処分の種類のうちから,職員が行った非違行為の動機及び態様,公務内外に与える影響,当該職員の職責,当該非違行為の前後における当該職員の態度等を総合的に考慮して,1の種類の懲戒処分(懲戒処分の種類が1である場合にあっては,当該種類の懲戒処分)を行うものとする。 2,3項(略) 4 第1項又は第2項の定めるところにより懲戒処分を行う場合において,次の各号のいずれかに該当するときは,当該各項の規定により行うことのできる懲戒処分より軽い懲戒処分を行い,又は懲戒処分を行わないことができる。 (1) 職員が行った非違行為の過失の程度が軽微であるとき(2) 職員の日頃の勤務態度が極めて良好であるとき(3) 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たき(4) 職員が任命権者の行う調査に積極的に協力したときその他自らの非違行為に関連する不祥事案の全容解明に寄与したとき(5) 前各号に掲げる事由に類する特別の事情があると任命権者が認めるとき別表(第28条関係) 11 職務命令違反行為により,公務の運営に支障を生じさせること減給又は戒告ウ大阪市職員倫理規則(平成24年規則114号による改正前のも の。乙10。以下「職員倫理規則」という。)2条2項8号勤務時間中は,常に清潔な身だしなみを心がけ,市民が不快感を覚えることがないようにするとともに,市民の応対を行うときは,名札を着用することエ大阪市職員倫理規則(平成24年規則114号による改正後のもの。平成24年6月23日施行。乙11)2条2項8号ウ身体に入れ墨(眉,唇その他の顔面の一部に施される化粧に類 用することエ大阪市職員倫理規則(平成24年規則114号による改正後のもの。平成24年6月23日施行。乙11)2条2項8号ウ身体に入れ墨(眉,唇その他の顔面の一部に施される化粧に類似するものを除く。以下同じ)がある職員にあっては,それを市民に見せないこと同項9号入れ墨の施術を受けないことオ大阪市個人情報保護条例(甲46。以下「個人情報保護条例」という。)(収集の制限)第6条実施機関は,個人情報を収集しようとするときは,個人情報を取り扱う事務の目的を明確にし,当該明確にされた事務の目的(以下「事務の目的」という。)の達成に必要な範囲内で,適正かつ公正な手段により収集しなければならない。 2 実施機関は,思想,信条及び宗教に関する個人情報並びに人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報を収集してはならない。ただし,次の各号のいずれかに該当するときは,この限りでない。 (1)法令又は条例(以下「法令等」という。)に定めがあるとき (2)事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき3項(略) 4 実施機関は,第2項第2号又は前項第6号若しくは第7号の規定により個人情報を収集しようとするとき(争訟,選考,指導,相談又は交渉を行うために第三者から第2項に規定する個人情報以外の個人情報を収集しようとするときを除く。)は,あらかじめ大阪市個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴かなければならない。ただし,急を要するときその他実施機関が事務又は事業の遂行に支障が生ずると認めるときは,この限りでない。 5 実施機関は,前項ただし書の規定により審議会の意見を聴かないで個人情報を収集したときは,速やかに 要するときその他実施機関が事務又は事業の遂行に支障が生ずると認めるときは,この限りでない。 5 実施機関は,前項ただし書の規定により審議会の意見を聴かないで個人情報を収集したときは,速やかにその旨を審議会に報告しなければならない。この場合において,審議会は当該実施機関に対し,当該報告に係る事項について意見を述べることができる。 第71条3項第6条第4項及び第5項(第9条第4項,第10条第2項及び第12条第2項において準用する場合を含む。),第8条並びに第9条第1項から第3項まで(審議会の意見聴取に関する部分に限る。)の規定は,人事,給与,服務,福利厚生その他の本市の職員に関する事務のために取り扱う個人情報については,適用しない。 2 争点(1)本件職務命令の適法性(2)本件処分の違法性 (3)損害賠償請求権の存否 3 当事者の主張(1)本件職務命令の適法性(被告の主張)ア憲法13条及び21条違反について(ア)本件調査に至る経緯a 本件施設職員は,平成8年頃から入れ墨を施術しており,従前は被告環境局f環境事業センター(以下「環境センター」という。)で勤務し,長袖を着用していたが,平成21年4月から児童福祉施設で調理員として勤務することとなり,同職員の入れ墨が児童らに見える状況となった。 被告は,公益通報を受け,上記職員に対し入れ墨や恫喝行為等に関する調査を行ったところ,同職員が入れ墨をしているとの事実は認められたものの,所属としては一定の対応を行っているものと判断し,今後も引き続き指導等を行うことになった。 しかし,上記職員が従前の職場に復帰した際,その対応を批判する市民の声が寄せられた。 b 本件施設職員の現場復帰にはこれを批判する市民の声が寄せら ,今後も引き続き指導等を行うことになった。 しかし,上記職員が従前の職場に復帰した際,その対応を批判する市民の声が寄せられた。 b 本件施設職員の現場復帰にはこれを批判する市民の声が寄せられ,さらに,本件新聞報道が大々的になされ,社会的問題として取り上げられた。これを受けて,上記職員の入れ墨問題に関し,膨大な数に上る市民の声が寄せられ(乙29),また,民意を代表する市議会からも,人事配置上の措置など,指導にとどまらない対応を求める発言がなされるという状況に至った(乙30ないし35,乙46,証人J4頁)。 c 被告では,従前から服務規律の弛緩が社会的非難の的となっており,当時も喫煙やマイカー通勤など様々な服務規律上の問題へ の取組が喫緊の課題となっていた。職員の入れ墨についても,判明するたびに個別の指導等で対応するという従前の対応では,市民の負託を受け公務を遂行する被告にあって,市民の感情・心情を蔑ろにするものとして,一層市民からの信頼を失墜しかねないことから,被告全体として,職員の入れ墨に対して取り組む必要があるとの判断に至った。こうして,前記の各検討課題も含め,服務規律の厳格化と服務規律確保に向けた具体的な方策の策定及び取組の推進を目的に,市長をトップとし,他任命権者を含む各局長を委員とする服務PTを設置することとした。 d 第1回服務PT会議では,職員の入れ墨問題に関しては,全職員対象の調査をする方針が決定され,人事室で検討することになった。その方針に基づき,人事室において,具体的な調査の対象,範囲,方法や,個人情報保護条例との関係について,複数の法律家の意見も踏まえながら慎重な検討を続け,調査を実施するに至った(乙46,証人J5頁)。 e かかる人事室の慎重な検討を踏まえ,6000人を超える職員を有 報保護条例との関係について,複数の法律家の意見も踏まえながら慎重な検討を続け,調査を実施するに至った(乙46,証人J5頁)。 e かかる人事室の慎重な検討を踏まえ,6000人を超える職員を有し,その職員の多くは市民や利用者(以下,市民及び利用者を併せて「市民等」ともいう。)と直接接する職場で勤務し,市長部局への人事異動もあり得る交通局においても,交通事業の安心・安全を担う職員として,市民等からの信頼を得るため,服務PTの方針に沿った対応をすべきであると判断し,本件調査を実施することになった。 (イ)本件調査の目的a 本件調査は,職員倫理規則2条2項8号に照らし,公務員として勤務中に入れ墨が市民等の目に触れることになれば,市民等が不安感や威圧感を持ち,ひいては被告の信用を失墜させることにつ ながるから,このような事態が生じないよう,職員の入れ墨が業務中に市民等の目に触れる可能性のある部分にあるのかどうか,実態を把握した上で,人事配置上の配慮を行うことを目的としている(乙1)。 ここにいう人事配置上の配慮とは,具体的には,勤務中に市民等の目に触れる可能性のある部分に入れ墨がある職員を,市民等に直接対応する頻度の低い又はその機会がない業務に就かせることや,各人の入れ墨の位置関係からみて入れ墨が市民等の目に触れることのない服装を着用するような業務に就かせることなどを想定している。 市民の負託を受け公務を遂行する被告としては,民意や社会的影響等を斟酌して施策を検討し,これを進めることが許容ないし要請されるところ,わが国において,入れ墨が見る者に不安感や威圧感を抱かせるものであること,あるいはそのように受け止める者が少なからず存在することには疑いを挟む余地はなく,業務上,入れ墨が見えないように配慮することは,むし おいて,入れ墨が見る者に不安感や威圧感を抱かせるものであること,あるいはそのように受け止める者が少なからず存在することには疑いを挟む余地はなく,業務上,入れ墨が見えないように配慮することは,むしろ,公務員の接遇の在り方として当然のことである。 人事配置に当たって,当該職員の入れ墨の部位,大きさ,当該職員が現に従事し又は今後従事すべき職務内容,服装,職務の性質,市民等に見える可能性や当該職員の配転可能性等を総合的に考慮することもまた当然の対応として許容されるし,また,前述した被告の置かれた社会的状況や市民の声を踏まえれば,市民等の目に触れる可能性のある入れ墨を有する職員の人事配置に当たって,あらかじめそういった配慮を行うことが強く要請される。 このように,市民等へのサービスの質の維持,向上の観点から職員をどのように配置するかを検討するために有意な情報を収集 することは,被告の組織運営に当たり必要なものであるから,本件調査の目的には合理性・正当性がある。 b 原告は,入れ墨のある職員を不適格者とみなして差別するとか隔離するなどというが,本件調査は,被告職員以外の市民も含めた入れ墨一般についての価値判断に基づくものではないし,被告は,被告職員に入れ墨があることで直ちに公務員としての適格性を欠如すると主張するものでもなく,飽くまで市民に対する配慮の趣旨であって,これが社会的差別にあたる余地はない。 c 原告は,本件調査の目的につき,入れ墨について,職員に対する一般的な注意喚起や身だしなみの点検,上司による個別の注意で足り,その目的自体,合理性を欠くと主張するようである。 しかしながら,身だしなみ等の点検や個別指導等を行うからといって,被告が人事配置上の配慮を行うことの合理性が否定されるものではない。市民等の目に触れ 目的自体,合理性を欠くと主張するようである。 しかしながら,身だしなみ等の点検や個別指導等を行うからといって,被告が人事配置上の配慮を行うことの合理性が否定されるものではない。市民等の目に触れる可能性のある身体の部位は,職務内容や職種,勤務場所,制服の有無等の職場環境や個人の着衣に対する意識・感性等によって職員個々で異なることがあり得るところ,現時点において当該職員の入れ墨が市民等の目に触れないとしても,今後の配置転換によって着用する制服等や職務内容,市民等との接触頻度等が変われば,当該入れ墨が市民等の目に触れる可能性が生ずることになる。本件調査当時における社会的影響の高まりや,従前の対応では不十分であったとの指摘等を踏まえれば,本件において,職員に対する服装規定や身だしなみ等の指導のほかに,被告として,人事配置に当たって斟酌すべき事情として判断したことが,合理性を欠くとされる余地はない。 (ウ)本件調査の方法の合理性・相当性 本件調査は,市民等の目に触れる可能性のある部分に限定して,画一的に調査を実施し,入れ墨の有無等を共通書式により自己申告するよう求めたものであるが,以下のとおり,調査の方法は合理的かつ相当なものである。 a 調査の対象を市民等の目に触れる可能性のある部分に限定していること本件調査で申告を義務付けているのは,市民等の目に触れる可能性のある本件調査対象部位に限られている。 本件調査の目的は,職員の入れ墨が勤務中に市民等の目に触れることになれば,市民等が不安感や威圧感を持ち,ひいては被告の信用を失墜させることにつながることから,人事配置上の配慮を行うために,職員の入れ墨についての実態を把握することにあるところ,職務命令をもって実施した本件調査の対象範囲は,かかる目的に照らして必要最 用を失墜させることにつながることから,人事配置上の配慮を行うために,職員の入れ墨についての実態を把握することにあるところ,職務命令をもって実施した本件調査の対象範囲は,かかる目的に照らして必要最小限の範囲に限られており,過度にプライバシーを侵害するものではなく,調査の範囲として相当である。 b 共通書式を利用することに合理性があること被告は,約3万人に上る職員を擁し,職員は多種多様な職場においてそれぞれの職務を行っており,服装の種類や市民等と接する頻度・密接度も職場や担当職務によって様々である。 このような巨大な地方自治体における組織運営において,将来にわたり職員の人事配置を組織的に検討するに当たっては,情報を一律かつ画一的に当該情報を把握し,管理する必要が高い。そして,一斉かつ早期に入れ墨に関する情報を収集し,また,本件調査結果を的確かつ迅速に確認するとともに,これを組織的に管理し,利用するため,共通書式を利用することは合理的な対応で あるし,かような共通書式の書面を用いての情報収集は,組織運営上通常一般に行われているところであり,方法として何ら不相当なものではない。 c 自主申告による合理的な方法であること本件入れ墨情報を調査する方法としては,対象部分を別の者が視認し,これを書面等に記録するなどもあり得るところである。しかし,職務上の上下関係にある上司等が,職員の身体を直接目視するなどという方法は,プライバシー上問題が高く,このような方法を採用すべきということはできない。 多数の職員を抱える被告の職務において,個々の職員について上司らが個々目視し得る範囲で入れ墨の有無を把握し報告したり,同僚からヒアリング等を行い当該職員の本件入れ墨情報を収集するなどという方法では,事務管理上の負担も極めて大きく いて,個々の職員について上司らが個々目視し得る範囲で入れ墨の有無を把握し報告したり,同僚からヒアリング等を行い当該職員の本件入れ墨情報を収集するなどという方法では,事務管理上の負担も極めて大きく,煩雑かつ不確実であるばかりか,調査対象者のプライバシー上の問題も大きい。 本人の確認及び自署を得ずに収集した情報は,後日,その事実を否認された場合の対応に困難を生じるし,そうでなくとも,本人の確認を得ない情報に基づいて人事配置を行うことは,人事管理の運用としての透明性や納得感に問題を生じる可能性があることは容易に想定される。 このような諸点を踏まえ,本件調査に自主申告方式を採用したことは,至って合理的なものである。 d 全職員を対象としたことについて本件調査の目的の合理性・正当性は上記のとおりであり,これを達成するためには,人事配置に先立って,本件入れ墨情報を得ておく必要がある。また,人事配置は将来にわたる問題であり,さ らに,他の職員の配置にも影響するため,配置替えの可能性のある職員全体について情報を得ておく必要があるのは当然である。 この点,指摘を受けたとか,何かの契機で判明してから,そのときに得た情報をもとに人事配置上の配慮をするということでは適時の対応が困難になってしまうという問題があり,市民や同僚等からの通報などによる曖昧・不明確な情報では,目的達成には不十分である。 よって,本件調査の目的を達成するためには,全職員についてあらかじめ本件入れ墨情報を取得しておく必要がある。 e 回答を義務付けたことについて上記のとおり,本件調査は,被告が人事配置上の配慮を行うために必要であり,また,その収集方法としても合理的かつ相当である以上,職員がこれに回答することはその職務である。そして,組織運営上,人 上記のとおり,本件調査は,被告が人事配置上の配慮を行うために必要であり,また,その収集方法としても合理的かつ相当である以上,職員がこれに回答することはその職務である。そして,組織運営上,人事配置上の配慮を行うためには,全職員の情報を適切かつ確実に収集・把握し,将来にわたって管理・利用する必要があり,回答がなければ人事配置上の配慮という正当な目的の達成に支障が生じることは明らかであり,情報の正確性及び調査の迅速性の向上の観点からも,回答を義務付けることは合理的である。 原告は,市教委が行った入れ墨調査の方法について言及し,任意調査で十分であったなどと主張する。しかし,いかなる調査方法を採るかは,各任命権者の裁量に委ねられており,市教委としては,教員の職務内容の特殊性や人事異動の範囲,組織マネジメント体制の相違等の組織の独自性を踏まえ,かような調査方法を採ったにすぎず(甲41・7,8頁),このことをもって,交通局で行った本件調査の違法性が基礎付けられるものではない。 調査の正確性及び迅速性からすれば,回答義務を課す方が調査の目的達成に資するし,原告自身,本件調査が任意調査であってもこれに協力するつもりがない旨を明言しており(原告本人13頁),市教委が採った調査方法では本件調査の目的を達し得なかったことは明らかである。 イ本件調査が個人情報保護条例に反しないことについて(ア)「その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」に該当しないこと同条例6条2項が「思想・信条及び宗教に関する個人情報並びに人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」(以下,「人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関 個人情報並びに人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」(以下,「人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」を「差別情報」といい,「思想・信条及び宗教に関する個人情報」と併せて「差別情報等」という。)の収集を原則として禁止しているのは,差別情報等は,特に個人の権利利益に関わりが深く,重大な権利利益の侵害と結び付く可能性が高いと考えられること,つまり,人格そのものあるいは精神作用の基礎に関わる情報,あるいは,歴史的に見て不当な差別が行われてきた情報であることから,これらの情報を収集することが,特に不安や苦痛を感じさせる程度が高く人権侵害の危険性が高いものと考えられることによるものである。 また,同項の「その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項」とは,単に社会的評価に関係する事項とか,あるいは本人にとって公表を望まない事項等を意味するのではなく,客観的にみて,不当な差別を引き起こしかねないと一般に考えられている情報,すなわち,犯罪歴,人種,特定の出身地区,特定の病歴, 成年後見等に関する事項をいうと解すべきである。 そして,本件調査によって収集した本件入れ墨情報は,対象者が入れ墨を施すに至った事情や主観的理由に立ち入るものではなく,「思想」・「信条」・「宗教」のように,対象者の人格や精神作用の基礎に関わる情報ではないし,入れ墨についての捉え方や見解は様々であろうが,いずれにせよ,入れ墨は,かような見解があり得ることを認識した上で,本人が自己の意思に基づき施したものであって,一般に,趣味・嗜好あるいは身だしなみに関する問題である。 入れ墨について,不快感や威圧感を覚える市民が多数おり,我が国において, とを認識した上で,本人が自己の意思に基づき施したものであって,一般に,趣味・嗜好あるいは身だしなみに関する問題である。 入れ墨について,不快感や威圧感を覚える市民が多数おり,我が国において,社会一般的にかかる感情に配慮した対応がなされていることは事実であって,現在の我が国においては,かかる受け止め方やそれへの配慮は社会的に受容されているが,それは,歴史的・社会的に見て当該理由による不当な差別が行われ,かかる対応が社会的に許容されることのない,人種,民族,犯罪歴といった情報とは本質的に異なるものであり,入れ墨の有無等による我が国における対応は,社会的に受容された一定の社会的評価にすぎない。 したがって,本件調査の対象である本件入れ墨情報は,同項にいう差別情報等には当たらない。 (イ)同条例6条1項に反しないことそうすると,本件入れ墨情報は,同項に基づき収集すべき情報であるところ,本件調査は,既に述べたとおり,「勤務中に職員の入れ墨が市民の目に触れることになれば,市民の方が不安感や威圧感を持ち,ひいては本市の信用を失墜させることにつながることから,人事配置上で配慮すること」という明確な事務の目的に対し,必要不可欠なものとして,適正かつ公正な手段により個人情報を収 集するものであるから,何ら同条例には違反しない。 (ウ)同条例6条2項1号に該当すること仮に,本件入れ墨情報が,同項にいう差別情報等に当たるとしても,本件調査は,同項1号の法令等に定めがあるときに該当するから,同条例に反しない。 すなわち,同項1号の法令等に定めがあるときとは,法令等に収集できることを明文で定めている場合のほか,法令等の規定の趣旨,目的から見て,収集できると解される場合を含む。 この点,地方公共団体である被告には,地公法の規 令等に定めがあるときとは,法令等に収集できることを明文で定めている場合のほか,法令等の規定の趣旨,目的から見て,収集できると解される場合を含む。 この点,地方公共団体である被告には,地公法の規定に基づき(同法1条,5条,15条ないし22条等),職員の任命,休職,免職及び懲戒等の人事行政を行う権限が付与されているところ,かかる権限には,人事行政事務を遂行するに当たって必要となる職員の個人情報を収集・保管し,それを踏まえた対応を行う権限が当然に含まれているというべきである。 また,地方自治法154条は「普通地方公共団体の長は,その補助機関である職員を指揮監督する」と定めており,さらに,同法158条,大阪市市長直轄組織事務分掌条例・同規則において,人事室には「職員の… 配置その他の人事に関すること」についての権限が付与されているところ,職員配置についての事務を遂行するために,職員に対する指揮監督権限の行使として,必要となる情報を収集すべき権限は当然認められるところであり,これは,対象となる情報が職員の個人情報であっても変わるものではない。 したがって,地公法1条,5条,15条ないし22条,地方自治法154条等は,個人情報保護条例6条2項1号の「法令等」に含まれると解され,本件入れ墨情報はこれら法令等に従い収集するものであるから,収集が禁止されるべき場合には当たらない。 (エ)同条例6条2項2号に該当すること同号は,「事務の目的を達成するために必要不可欠であるとき」につき情報収集を許容しているところ,職員の入れ墨を人事配置上配慮するためには,当然,職員の入れ墨の有無を把握しておくことが必要不可欠であるし,また,本件施設職員が入れ墨をしていたことに関して新聞報道が大々的になされ,市民からも批判の声が寄せられていた 上配慮するためには,当然,職員の入れ墨の有無を把握しておくことが必要不可欠であるし,また,本件施設職員が入れ墨をしていたことに関して新聞報道が大々的になされ,市民からも批判の声が寄せられていたといった経緯・事情に鑑みれば,人事行政上,被告として入れ墨を人事配置上配慮することは必要不可欠というべきである。 したがって,同号によっても,被告として収集が禁止されるべき場合にはあたらない。 ウ富士重工事件最高裁判決について(ア)原告らは,本件調査が最高裁昭和52年12月13日判決(民集31巻7号1037頁。以下「富士重工事件最高裁判決」という。)の趣旨に反し,違法であると主張している。 しかし,同判決は,労働契約上の義務について述べたもので,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,かつ,職務の遂行に当たって全力を挙げてこれに専念すべき義務を負う公務員関係に当然に妥当するものではない。 (イ)この点を措くとしても,同判決の事案は,使用者が,主として他の労働者の就業規則違反の事実関係を更に明確に把握することを目的として行った事情聴取について,直接の行為者ではない労働者にとって,かような調査に協力すべき義務が職務の内容になっているかという観点から述べたものである。 これに対し,本件調査は,契機こそ本件新聞報道にあったものの,本件新聞報道事案の事実関係を明らかにするために行われたもので はなく,その目的は,職員の入れ墨が職務中に市民等の目に触れる可能性のある部分にあるのかどうか,実態を把握した上で,人事配置上の配慮を行うことを目的とするものである。したがって,当該調査の対象者とすべき者は,被告としてかかる人事配置上の配慮を行う必要性があると認める職員であるところ,被告においては,非常勤職員やアルバイトを除く職 うことを目的とするものである。したがって,当該調査の対象者とすべき者は,被告としてかかる人事配置上の配慮を行う必要性があると認める職員であるところ,被告においては,非常勤職員やアルバイトを除く職員は全て市民等に接する職場へ配置される可能性があるのであるから,かような職員については本件調査の対象とすることは当然である(なお,非常勤職員やアルバイトは本件調査の対象外である。)。 しかるに,原告の主張は前記判決の適用範囲を正解せず,前提を異にする本件調査に前記判決の規範なるものをあてはめ,同判決の趣旨に反すると述べるのであって,失当である。 (原告の主張)ア本件調査が憲法13条及び21条に反すること(ア)本件調査の合憲性を厳格に判断すべきことa 憲法13条は,国民の私生活上の自由ないしプライバシーが,情報の収集・保管・利用・公開等の公権力の行使に対して保護されることを規定していると解される。もっとも,個人の領域についての情報には,様々な性質を有するものが含まれ,公権力の行使の対象となる情報の性質によっては,保護すべき度合いは異なってくると考えられるが,本件調査の対象となっている本件入れ墨情報は,誰が考えてもプライバシーであると思われるものであり,また,個人の道徳的自律の存在に直接かかわる情報であるから,固有情報あるいはセンシティブな情報として,特に保護されるべき度合いが高い情報である。 すなわち,本件入れ墨情報は,それ自体が,個人の出自や過去の 職業等を明らかにする場合があり,また,私生活や人格,思想,信条,良心等個人の内心に関する情報となる。そして,前科や前歴に関する情報と同じように,一旦は入れ墨を入れたものの,後になって,名誉,信用に直接かかわる情報としてこれを他には知られたくないと考えている者や 心等個人の内心に関する情報となる。そして,前科や前歴に関する情報と同じように,一旦は入れ墨を入れたものの,後になって,名誉,信用に直接かかわる情報としてこれを他には知られたくないと考えている者や,特に名誉には関係ないとしても,入れ墨の持つ芸術性の特性として,他人の目から秘匿することに意義を見出す者もおり,本件入れ墨情報の秘匿性は極めて高い。さらには,文化や表現方法として入れ墨を入れることは,本来個人の自由であるにもかかわらず,本件調査のように,入れ墨に対する否定的な評価を基に,本件入れ墨情報を公権力が収集することは,入れ墨=悪であるとの偏見を助長し,精神的自由の一つである表現の自由に対し,大きな萎縮効果をもたらすものである。 以上のように,本件入れ墨情報は,様々な意味で秘匿性が高いセンシティブな情報であり,また,これを収集調査することは,表現の自由に対し萎縮効果をもたらすことからも,公権力の行使から保護されるべき度合いは極めて高い。 b また,個人にとって,身体に入れ墨を入れるか否か,また入れ墨の存在を他者に知らせるか否かは,表現の自由として保護されるべき権利であるところ,本件調査は,入れ墨の有無を他者である交通局に知らせることを強制するものであり,直接的に表現の自由を規制するものである。 c よって,本件入れ墨情報を対象とする公権力による調査の合憲性は極めて厳格に審査されなければならず,調査が例外的に合憲とされるためには,高度の必要性,合理性及び手段の相当性が要求されると解される。 (イ)目的の正当性 a 被告は,公務員として勤務中に入れ墨が市民等の目に触れることになれば,市民等が不安感や威圧感を持ち,ひいては被告の信用を失墜させることにつながるから,このような事態が生じないようにするために本件調査を は,公務員として勤務中に入れ墨が市民等の目に触れることになれば,市民等が不安感や威圧感を持ち,ひいては被告の信用を失墜させることにつながるから,このような事態が生じないようにするために本件調査を行ったと主張している。 しかし,入れ墨には多種多様な形態が存在すること,また,勤務中であれば市民等も公務員であることを十分に認識しているのであるから,入れ墨を見たからといって,直ちに不安感や威圧感を持つとは考えにくい。また,公的な機関である被告が「入れ墨は一般に不安感や威圧感を抱かせるもの」という評価を公言することは入れ墨に対する偏見や差別を助長することにもつながる。 よって,本件調査の目的の正当性には重大な疑義がある。 b また,被告は,人事配置上の判断材料にするために本件調査を行ったと述べているが,本件全体調査への回答を拒否した6名について,被告は,書面回答以外の別の方法による調査,確認を全く行っていない(証人J21頁)。 原告について入れ墨がないことを視認した後もすぐに上司に報告するなど組織として情報を共有することをしていないし,原告に対して本件調査票の提出を再三要求している。本件処分の判断に当たっても,当該職員に入れ墨があるかないか,入れ墨がないことを把握できているかどうか全く考慮されていない(証人J13頁)。 これらの事情は,本件調査の目的が人事配置上の判断材料として情報を収集することではなかったことを示している。 (ウ)本件調査の必要性a 本件入れ墨情報が,個人にとって極めてセンシティブな情報であることからすれば,目的の正当性とは別に,本件調査を必要とする事実が存在したか否かにつき厳格に審査する必要がある。そして, 本件調査の端緒は本件新聞報道であるが,被告の公式見解においても本件施設職員が入れ墨をして 的の正当性とは別に,本件調査を必要とする事実が存在したか否かにつき厳格に審査する必要がある。そして, 本件調査の端緒は本件新聞報道であるが,被告の公式見解においても本件施設職員が入れ墨をしていたことにより市民等が不安感や威圧感を持ったとは認定されていないなど,本件調査が必要性を欠いていたことは明白である。 すなわち,被告は,本件新聞報道以前にも,職員の入れ墨に関して調査や指導を求める声が相当数あったしているが,被告が提出している乙第29号証をみても,本件新聞報道以前の3年間で職員の入れ墨について言及されているものはわずか6件しかない。本件新聞報道直後には相当数の入れ墨に関する市民等からの意見が寄せられているが,これは「職員が児童に入れ墨を見せて恫喝した」という誤った報道を受けてのものであり,しかも,市民等からの意見の中には,本件調査に対して否定的な意見も少なからず寄せられている。加えて,本件施設職員には問題行動はあったが,入れ墨をしていたこととは関係のない行動であり,また,同職員が入れ墨をしていたということも立証されていない。 このように,本件調査以前には,入れ墨について否定的意見が市民全体の多数を占めていることが明白な状況だったなどといえる状況ではなかったことは明らかであり,また,本件施設職員の有する入れ墨が,勤務中に市民等の目に触れたため,市民等が不安感や威圧感を持ち,ひいては被告の信用を失墜させたという事実も存在しなかったのである。 b 前述のとおり,本件調査の目的は,人事配置上の判断材料として情報を収集することではなく,本件調査までに職員の入れ墨に関連して対応を迫られるような事案は一切発生しておらず,本件調査を決めた当時にあったのは,誤った報道に基づく一部の市民の声と議会の非難だけであったことからすると はなく,本件調査までに職員の入れ墨に関連して対応を迫られるような事案は一切発生しておらず,本件調査を決めた当時にあったのは,誤った報道に基づく一部の市民の声と議会の非難だけであったことからすると,市民向けに「調査を実施し た」という事実を作ることが本件調査の主たる動機であったとしか考えられないが,市民や議会の意見に迎合して何をしても正当化されるというものではなく,かかる動機に鑑みても本件調査の必要性はなかった。 c 本件調査の実施主体は,地方公営企業である交通局であり,被告である大阪市からは独立した組織であって,実施主体が異なるのであるから,本件調査については,本件全体調査の必要性とは別に,交通局内における本件調査の必要性についても厳密に検討する必要性がある。 平成24年5月2日に被告職員部長から交通局長ら所属長に対し「入れ墨に関する調査の実施について(依頼)」と題する書面(乙1)が発出されており,交通局長はその日のうちに交通局職員に対して「入れ墨に関する調査について」と題する書面を発出しているが,交通局内において,独自に本件調査の必要性や調査の実施方法について検討していないことは明らかである。 交通局では,バス運転手らに対して乗務前に毎回身だしなみの点検等を行っており,仮に不適切な入れ墨があれば,点検時に注意し,改めさせることが十分に可能であった。交通局において,入れ墨を原因として何か問題が発生したということは一度もなかったし,交通局長自身,「就任して以降は入れ墨調査の必要性を僕は感じてないということです」と明言している(甲63・12頁)。本件調査の結果をみても,結局,「バス運転手については市民の目に触れる可能性のある部位に入れ墨を入れている職員は認められなかった」のであり(被告準備書面2・3頁),このことも る(甲63・12頁)。本件調査の結果をみても,結局,「バス運転手については市民の目に触れる可能性のある部位に入れ墨を入れている職員は認められなかった」のであり(被告準備書面2・3頁),このことも交通局において本件調査の必要性がなかったことを裏付けている。 以上からすれば,少なくとも交通局において,本件調査を実施す る必要性は皆無であるか,極めて乏しいものであった。 d 仮に,公務員としての勤務中に入れ墨が市民等の目に触れることになれば,市民等が不安感や威圧感を持ち,ひいては被告の信用を失墜させることにつながるから,このような事態が生じないようにするという本件調査の目的が正当であるとしても,このような目的を達成するためには,人事配置上の配慮によらない方法によることが可能である。 具体的には,市民等に対し不安感や威圧感を与えるような入れ墨をしている者は,長袖長ズボンを着用するなどして市民等の目に触れないようにするよう朝礼や文書等で注意喚起をする,市民等に直接接する部署においては,勤務開始時に入れ墨が目に触れるか否かを含め,身だしなみの点検をする,仮に入れ墨を理由とする問題が発生した場合,又は発生するおそれがある場合には,当該職員の上司が直接注意し,それでも改められない場合にのみ配置転換を行うことなどが可能である。 e 人事配置上の配慮が必要であるとしても,日常的に上司による部下に対する適切な指導が行われていれば,不適切な入れ墨をしている職員の有無等を人事情報として把握し,人事配置時にこれを考慮することは可能であるし,職員が配転の希望等を提出する際に当該職員からの自主的な申告を受け付ける制度を設けることによっても可能である。 f よって,仮に被告が主張する本件調査の目的が正当であるとしても,本件調査を行う必要性 配転の希望等を提出する際に当該職員からの自主的な申告を受け付ける制度を設けることによっても可能である。 f よって,仮に被告が主張する本件調査の目的が正当であるとしても,本件調査を行う必要性は存在しなかった。 (エ)本件調査の実施方法に相当性がないことa 仮に被告が主張するように,職員の入れ墨が職務中に市民等の目に触れる可能性のある部分にあるのかどうか実態を把握した上で 人事配置上の配慮を行う必要があるとしても,以下に述べるとおり,本件調査は手段としての相当性を著しく欠くものである。 b 任意調査が可能であったこと被告は,本件調査において回答を命じる職務命令を発しており,本件調査が強制的な調査であったことを特に争っていないが,仮に個々の職員に対する調査を行うにしても,本件調査のように強制的な方法によらず,任意の方法によることは十分に可能であり,それで足りた。 実際に,市教委では,職務上において児童・生徒等の目に触れる可能性のある所に入れ墨がある場合は,その旨自主的に申告するという方法で調査が行われており,各教職員に対し,職務命令を発して回答を強制するという手段は採られていないが,このような実施方法によって何らかの弊害が生じたとの事実はないから,被告の他の職員についても,同様に任意による調査を行うことで十分であった。 c 本件全体調査の対象が無限定であること被告は,市教委所属の教職員を除き,全ての職員に対し本件調査と同様の方法で調査を実施したが,被告には,複数の局,委員会,24の区役所,市会事務局等が存在し,それぞれが多種多様な業務を行っており(甲44,45),それぞれの部署や担当事務により,市民等との関わりの有無,度合いは様々である。また,原告のように現業職として採用された職員にとって,仕事 在し,それぞれが多種多様な業務を行っており(甲44,45),それぞれの部署や担当事務により,市民等との関わりの有無,度合いは様々である。また,原告のように現業職として採用された職員にとって,仕事内容が変更になることはほとんど考えられない。職員や職種の多様性,市民等との関わり,配転の可能性等についての具体的な検討もなく,市教委以外に所属する全職員を対象とするのは無限定にすぎる。 d 調査票の提出という調査方法について 被告は,他人に身体を目視させる行為と比較すると調査票を提出させる方法の方がよりプライバシー侵害の度合いが小さいと主張しているが,服を脱がしたり,袖をまくり上げたりといった行為は,身体捜索に当たり,令状なしには行えない強制処分であるから,そもそも比較の対象とすることが誤っている。 被告は,本件全体調査において,入れ墨を有していない者も含めて全ての職員に本件調査票の提出を義務付けているが,全職員を調査の対象とすることに問題があることは前述のとおりである。書面により回答させる方法では,書面の保管,管理によるコストが相当なものとなることが予想される上,回答の正確性の検証も実際上不可能である。情報の正確性やコストを考えると,管理職に外観を確認させて問題があれば報告させるという方法の方が優れている。 また,よりプライバシー侵害の程度が低い方法としては,入れ墨をしている職員及び入れ墨をしていたとしても市民等に対し不安感や威圧感を与えるようなものではない場合には,調査票を提出しないことで回答に代えるという手段を採ることも可能であった。 e 以上のように,仮に調査を実施するとしても,任意に協力を求める手段で十分であり,よりプライバシー侵害の度合いが小さい範囲で実施することなどが可能であったにもかかわらず,被告は全 能であった。 e 以上のように,仮に調査を実施するとしても,任意に協力を求める手段で十分であり,よりプライバシー侵害の度合いが小さい範囲で実施することなどが可能であったにもかかわらず,被告は全く検討していない。 よって,本件調査は,手段の相当性を著しく欠くものである。 (オ) 小括本件調査は,憲法13条及び21条によって保護される権利を制限するものであり,調査の目的の正当性は疑わしく,調査の必要性もない。加えて,調査の目的を達成するためには,より制限的でない他の手段が存在するから,手段としての相当性も欠く。 よって,本件調査は憲法13条及び21条に反し,違法である。 イ本件調査が個人情報保護条例に反することについて(ア)差別情報に該当すること同条例6条2項は,いわゆるセンシティブ情報(差別情報等)の収集を原則として禁止している。 本件入れ墨情報は,その存在が他人に知られた場合,その個人ないし家族等が,例えば反社会的勢力に所属する者として扱われ,一定の施設の使用を禁じられ,または,就職を拒否され,意に反する配置転換を強要されるなどして,社会生活において忌避又は排除されるなどの差別を受ける客観的かつ具体的なおそれが存在するから,同項の差別情報に当たる。 (イ)同条例6条2項1号に該当しないこと被告は,同号の「法令等」に,地公法1条,5条,15条ないし22条,地方自治法154条,158条,大阪市市長直轄組織事務分掌条例・同規則が含まれる旨主張する。 しかし,被告が挙示する上記各法律,条例及び規則は,あくまでも一般的な人事行政や指揮監督に関する権限の規定であって,職員の本件入れ墨情報を収集・保管・利用することができることを明示した規定ではなく,差別情報等を例外的に収集等することが許容さ 則は,あくまでも一般的な人事行政や指揮監督に関する権限の規定であって,職員の本件入れ墨情報を収集・保管・利用することができることを明示した規定ではなく,差別情報等を例外的に収集等することが許容される事由や要件について明確かつ具体的な定めがなされたものでもない。このような包括的な権限に基づいて差別情報等を収集することができるとすれば,職員に関する事項については,被告がいかなる個人情報であっても収集することが可能になってしまうが,そのような解釈が誤りであるのは言うまでもない。 以上からすれば,同号に関する被告の主張は失当である。 (ウ)同条例6条2項2号に該当しないこと 被告は,職員の入れ墨を「人事配置上配慮する」ため,本件入れ墨情報を収集・保管・利用したのは,同項2号所定の「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」に該当する旨主張する。 しかし,このような解釈が是認されるのであれば,例えば,「職員の犯罪歴を人事配置上配慮するという事務の目的」のために職員に対する犯罪歴調査をすること,「職員の思想,信条及び宗教を人事配置上配慮するという事務の目的」のために職員の思想,信条,宗教に関する個人情報を収集する調査をすることなども,すべて「必要不可欠なこと」として是認されるということになりかねない。このような解釈をとれば,同項本文が差別情報等の収集を禁止した意義がおよそなくなってしまうことになり,失当であることは明らかである。 既に述べたとおり,そもそも事務の性質上,本件調査による情報の収集は全く必要ではないし,当該個人情報を欠いてしまうと事務の遂行ができなくなる場合にも到底当たらない。 したがって,本件調査が,同項2号所定の「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」に該当 ないし,当該個人情報を欠いてしまうと事務の遂行ができなくなる場合にも到底当たらない。 したがって,本件調査が,同項2号所定の「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」に該当する余地はない。 (エ)同条例6条1項にも違反すること仮に同条2項の適用はなく,同条1項により情報収集の適否を判断するとしても,前述のとおり,職員人事事務の目的の達成のために本件入れ墨情報が必要であるとはいえず,また,職務命令により,しかも従わなければ懲戒処分にされるとの威嚇の下での情報の収集は,社会通念に照らして是認できる方法ではないから,本件調査は,「事務の目的の達成に必要な範囲」の調査であるとも,「適正かつ公正な手段による収集」であるともいえない。 よって,本件調査は同条1項も違反するから,いずれにしても違法である。 ウ本件調査が富士重工事件最高裁判決に趣旨に反すること(ア)同判決は,労働者の調査協力義務につき,「企業が・・・企業秩序違反事件について調査をすることができるということから直ちに,労働者が,これに対応して,いつ,いかなる場合にも,当然に,企業の行う右調査に協力するべき義務を負っているものと解することはできない。けだし,労働者は,労働契約を締結して企業に雇用されることによって,企業に対し,労務提供義務を負うとともに,これに付随して,企業秩序遵守義務その他の義務を負うが,企業の一般的な支配に服するものということはできないからである。そして,右の観点に立って考えれば,当該労働者が他の労働者に対する指導,監督ないし企業秩序の維持などを職責とする者であって,右職責に協力することが職務の内容となっている場合には,右調査に協力することは労働契約上の基本的義務である労務提供義務の履行そのものであるから,右調 ないし企業秩序の維持などを職責とする者であって,右職責に協力することが職務の内容となっている場合には,右調査に協力することは労働契約上の基本的義務である労務提供義務の履行そのものであるから,右調査に協力すべき義務を負うものといわなければならないが,右以外の場合には,調査対象である違反行為の性質,内容,当該労働者の右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性,より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り,右調査協力義務を負うことはないものと解するのが,相当である」と判示している。 (イ)公務労働者も,民間企業における労働者と同じく憲法28条の「勤労者」に当たるところ,使用者である地方公共団体等の「一般的な支配に服するものということはできない」ことは同様である。ましてや,原告は,地方公営企業職員であり,現在被告における地方公 営企業は民営化の計画が検討されているとおり,労働関係については民間の労働関係と実質において変わるところはなく,公務員であるからといって使用者の一般的な支配に服する関係とは到底いえない。そうであれば,公務労働者の場合にも,民間の労働者と同様に,いつ,いかなる場合にも,当然に,企業の行う調査に協力するべき義務を負っているものと解することはできないのであって,労働者の使用者に対する調査協力義務についても一定の限界があると言わなければならない。 そして,使用者による被用者に対する調査協力義務の範囲という場面では,民間労働者であろうと,公務労働者であろうと何らの違いは見出せないから,公務労働者に対してなされた本件調査についても,職員は,被告が行う他の労働者の企業秩序違反の調査について,これに協力することが,その職責 であろうと,公務労働者であろうと何らの違いは見出せないから,公務労働者に対してなされた本件調査についても,職員は,被告が行う他の労働者の企業秩序違反の調査について,これに協力することが,その職責に照らし職務内容となっていると認められる場合,又は調査対象である違反行為の性質,内容,違反行為を見聞する機会と職務執行との関連性,より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して,労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められる場合でない限り,協力義務を負わないとされるべきである。 (ウ)秩序違反の調査について,これに協力することが,その職責に照らし職務内容となっていると認められる場合とは,当該秩序違反を調査することが職務となっている者,又は,当該違反行為者を管理監督すべき立場にあった管理職を指すと解される。しかしながら,本件調査は,ほぼ全職員を対象としており,大多数を占める管理職以外の一般職員,現業職員,地方公営企業職員は,この要件を満たさない。 (エ)また,被告の定例委員会において,本件施設職員が児童に入れ墨 を見せて恫喝したとの事実は確認できていない旨Bこども青少年局長が回答しており,被告における業務の遂行に影響がない範囲で職員が入れ墨を入れていたとしても,それ自体企業秩序違反行為とは到底いえないのであるから,本件調査の時点において,入れ墨による秩序違反行為は全くなかったのであり,職務命令を用いた強制調査を肯定できるだけの具体的な必要性を基礎付ける事情はなかった。 そして,被告が調査の前提とした非違行為,違反行為は存在しなかったのであるから,それを見聞する機会があった者をそもそも想定することができないし,調査の方法に関しても,全職員に対するアンケート方式の調査をすること自体が常軌を逸した行為といわざる は存在しなかったのであるから,それを見聞する機会があった者をそもそも想定することができないし,調査の方法に関しても,全職員に対するアンケート方式の調査をすること自体が常軌を逸した行為といわざるを得ない。 仮に,本件調査が,具体的な秩序違反行為を端緒とする調査であるとしても,第1に当該違反行為者及び違反行為に関係した者に対する調査を先行して行い,第2に当該違反行為を管理監督すべき上司に対する調査を行い,第3に当該違反行為を見聞する機会のあった者,又は,そのような機会があったと合理的に推測される者に対する調査がなされるべきであるが,本件調査は,本来先行すべき調査を先行して行っていない点でも相当ではない。 加えて,本件調査は,本来調査対象者に該当しない者が多数含まれる全職員に対するアンケート調査であることから,まずは,完全に任意の調査を先行させるべきであったにもかかわらず,直ちに,職務命令及び懲戒処分を背景とした強制的調査を行った点も相当ではない。 (オ)また,被告は,本件調査が人事配置上の配慮のための事実調査であったと主張しているが,本件で職員らが義務付けられていたのは事実調査への協力ではなく,調査票への記入及び提出であり,被告 の目的が命令した調査票の提出に従わせること自体にあったことは明らかであるが,被告のかかる行為は,労働者を使用者の一般的な支配に服することを強いる行為そのものであって,前記判決がなし得ないとしている行為である。 (カ)よって,前記判決の趣旨からも,原告には本件調査に協力すべき義務はないのであるから,本件調査は違法である。 エまとめ以上のとおり,本件調査は,憲法13条及び21条,個人情報保護条例6条に反し,富士重工事件最高裁判決の趣旨にも反するから,違憲・違法であり,本件職務命令 ,本件調査は違法である。 エまとめ以上のとおり,本件調査は,憲法13条及び21条,個人情報保護条例6条に反し,富士重工事件最高裁判決の趣旨にも反するから,違憲・違法であり,本件職務命令も違憲・違法である。 (2)本件処分の違法性(被告の主張)ア懲戒事由該当性(ア)本件調査は,被告の組織運営及び人事配置に当たって,必要かつ相当なものであることから,被告職員が職務としてこれに回答すべきは当然であり,その回答が得られていない以上,改めて回答を命じる本件職務命令は地公法32条に基づく適法かつ有効な職務命令である。そして,本件職務命令は,共通書式による回答を義務付けるものであるところ,原告は,本件職務命令に従った方法で回答していないのであるから,原告が職務命令に違反したことは明らかである。 したがって,原告は,地公法32条に基づく職務命令に違反したのであるから,原告の行為は,同法29条1項1号に該当するとともに,職務上の義務に違反する行為であり,かつ,全体の奉仕者としてもふさわしくない非行でもあるから,同項2号及び3号にも該当する。 (イ)被告の職員に対する懲戒処分については,職員基本条例において,別表非違行為の類型欄に掲げる非違行為の類型に応じ,同表懲戒処分の種類欄に定める懲戒処分の種類のうちから,職員が行った非違行為の動機及び態様,公務内外に与える影響,当該職員の職責,当該非違行為の前後における当該職員の態度等を総合的に考慮して,1の種類の懲戒処分を行う旨が定められており,これを受けて,別表11項は,「職務命令違反行為により,公務の運営に支障を生じさせること」に該当する場合には,「減給又は戒告」に処する旨定めている。 将来にわたって職員の人事配置を組織的に検討するに当たっては,本件調 は,「職務命令違反行為により,公務の運営に支障を生じさせること」に該当する場合には,「減給又は戒告」に処する旨定めている。 将来にわたって職員の人事配置を組織的に検討するに当たっては,本件調査の結果を一律かつ画一的に把握し,管理する必要が高く,また,一斉かつ早期に情報を収集し,かつ,その本件調査結果を的確・迅速に確認するとともに,これを組織的に管理・利用するため,共通書式を利用することは合理的な対応であるところ,原告が本件職務命令に反して回答を拒否したことにより,このような合理的な対応たる書面による調査という事務の円滑な遂行が妨げられた。 書面による回答に代えて,口頭での報告や他人に見せるという方法では,一斉かつ早期の情報収集が阻害される上,情報の保管,管理に支障が生じる。また,本人の確認や自署を得ずに収集した情報は,後日その事実を否認された場合の対応が困難になるから,将来における人事配置に支障が出るのは明らかである。加えて,回答聴取や確認のために別の職員が対応せざるを得ず,同人はそのために職務時間を割く必要があるし,被告として対応コストが生じるから,この場合であっても,公務の運営に支障が生じることに変わりはない。 また,組織秩序は,組織の存立,運営に不可欠であり,当然,職員 にとって,かかる組織秩序を遵守すべきは当然の義務であるところ,原告は,上司らの再三にわたる指導・説得を無視して回答拒否を続けており,他の職員の規律意識に悪影響を及ぼし,職場の組織秩序が著しくかく乱された。 したがって,原告が,本件職務命令違反によって,被告の公務の運営に支障を生じさせたことは明らかである。以上によれば,原告の本件職務命令違反行為は,職員基本条例28条1項及び別表11項が定める懲戒事由に該当する。 (ウ)なお,職務命令 って,被告の公務の運営に支障を生じさせたことは明らかである。以上によれば,原告の本件職務命令違反行為は,職員基本条例28条1項及び別表11項が定める懲戒事由に該当する。 (ウ)なお,職務命令は,原則として適法なものとして考えられ,公務員が上司の職務命令を違法であるなどとしてその命令への服従を拒否しうるのは,一見明瞭な形式的適法性を欠く場合に限られ,実質的な内容に立ち入って審査しなければ容易に適法か違法か判明しない場合には,職員にその適否を審査する権限はなく,たとえその主観において,職務命令の内容が違法又は不当と考えられるものであっても,それが客観的に違法であることが明白でない以上,職員はこれを拒否することができない。 したがって,地方公務員は,職務命令に取消しの原因となる瑕疵がある場合であっても,その瑕疵が重大かつ明白であって,客観的に無効であることが明らかな場合以外は,これに従う義務があり,かかる義務に従わなかった場合は,懲戒処分の対象となる。 本件職務命令は,上記のとおり適法であるが,仮に瑕疵があるとしても,重大かつ明白な瑕疵があり,客観的に無効であることが明らかな場合とは到底いえず,原告に本件職務命令に従うべき法的義務を免れるものではないから,その職務命令違反について懲戒処分を行うことができる。 (エ)原告は,上司らが本件調査対象部位に入れ墨がないことを目視し ており,結果として被告が調査目標を達成したとか,上司が代わって本件調査票を提出すれば,公務の運営に不都合が存在しなかった,などと主張する。 しかしながら,原告は,上司らの再三にわたる指導,説得を無視して回答拒否を続けたのであり,かような原告の態度により,他の職員の規律意識に悪影響を及ぼし,職場の組織秩序が著しくかく乱されたことは明らかであり がら,原告は,上司らの再三にわたる指導,説得を無視して回答拒否を続けたのであり,かような原告の態度により,他の職員の規律意識に悪影響を及ぼし,職場の組織秩序が著しくかく乱されたことは明らかであり,これは,原告の入れ墨の有無を目視したか否かによって回復するものではない。 原告は,上司が代わって本件調査票を提出すればよいなどと主張するが,そもそも,上司がこのように個別の対応を行わなければ,被告が本件調査の結果を収集できないこと自体,原告の職務命令違反によって,公務の効率的運営が阻害されていることは明白である。 また,被告が,本件全体調査において,共通書式による自己申告を求めたのは,本件調査の結果を一律かつ画一的に把握,管理し,一斉かつ早期に収集し,本件調査の結果を的確,迅速に確認するとともに,これを組織的に管理・利用するためである。原告のような対応では,このような将来にわたっての一元的,組織的情報管理に支障を来すことは明らかである上,本人の確認,自署を得ずに収集した情報は,後日,その事実を否認された場合には対応に困難を生じるし,そうでなくとも,本人の確認を得ない情報に基づいて人事配置を行うことは,人事管理の運用として透明性や納得感に問題を生じる可能性は容易に想定されるのであり,人事配置上の配慮という目的が阻害されていないということはできない。 上司が目視したから,公務の運営に支障を生じさせることがなかったなどという原告の主張は,被告のような巨大な地方自治体における組織規律の維持確保や,効率的な人事情報管理の要請を無視し たものであり,到底採りえない。 イ本件処分の量定(ア)本件職務命令違反は職員基本条例別表11項の「職務命令違反行為により,公務の運営に支障を生じさせること」に該当するから,同項が規定するとお であり,到底採りえない。 イ本件処分の量定(ア)本件職務命令違反は職員基本条例別表11項の「職務命令違反行為により,公務の運営に支障を生じさせること」に該当するから,同項が規定するとおり,原則的な処分量定は「減給又は戒告」となるところ,交通局長としては,このうち軽い処分である戒告処分を相当と判断したものである。 (イ)職員基本条例28条4項は,懲戒処分に当たって,処分を軽減し,又は行わないことができる場合を列挙しているが,本件処分に関しては,そのいずれの事情も認められない。 (ウ)加えて,戒告処分とは,「職員の責任を指摘し,及びその将来を戒める処分」であり(乙9・29条1項),組織の規律や秩序の保持等の見地からその相当性が基礎付けられるものであって,法律上,処分それ自体によって職員の法的地位に直接の職務上ないし給与上の不利益を及ぼすものではなく(最高裁平成24年1月16日第一小法廷判決・集民239号253頁参照),他方で,原告は,再三にわたって上司の指導,説得を無視し,本件職務命令を拒否したのであって,しかも,原告にはこれを拒否するに当たって何らやむを得ない事由は存在しないのであるから,戒告処分を相当とした交通局長の判断に,何ら違法はない。 (エ)原告は,被告の行政措置例を指摘し,戒告処分である本件処分が相当性を欠き,また,平等原則にも違反すると主張する。 しかしながら,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかについて,個別事情を捨象して行政措置・処分の軽重を論ずることに意味はない。 本件職務命令違反が懲戒事由に該当し,また,その量定についても 相当なものであることは,前述のとおりであり,他に同種事例も存在せず,かえって,本件は本件新聞報道を契機として社会問題となった事案 件職務命令違反が懲戒事由に該当し,また,その量定についても 相当なものであることは,前述のとおりであり,他に同種事例も存在せず,かえって,本件は本件新聞報道を契機として社会問題となった事案に関わるものであって,このような場合に,行政措置にとどめなければ裁量逸脱を招くなどという結論はあり得ない。 ウまとめ以上のとおり,本件処分は地公法及び職員基本条例に基づく判断であり,裁量の逸脱濫用は一切ないから,本件処分が適法であることは明らかである。 (原告の主張)ア本件職務命令が違法であること(ア)前述のとおり,本件調査は違憲・違法であるから,本件調査への答を命じる本件職務命令も違憲・違法である。 したがって,原告には本件職務命令に従う義務はないから,それに違反したことを理由とする本件処分も違法である。 (イ)被告は,地方公務員は,職務命令に重大かつ明白な瑕疵があり客観的に無効であることが明らかな場合以外はこれに従うべき義務があり,従わなかった場合は懲戒処分の対象となる旨主張する。 被告の上記主張は,いわゆる特別権力関係論を前提に,公務員関係の秩序維持の見地から職務命令は適法性の推定を受けるとするものであるが,今日では,特別権力関係論は否定されており,法令に違反する職務命令は,その違反が重大かつ明白な瑕疵に至らなくとも,直ちに無効となり,公務員はこれに服従する義務はないと解すべきである。 また,職務命令のうち,行政組織間の指揮監督としてなされた訓令的なものではなく,非訓令的な特定の公務員に対する命令については,当該職員の勤務条件や基本的人権に関係するものであり,対 外的処分がなされるわけでもないから,適法性をチェックすることができるのは当該職員以外にない。したがって,少なくとも,非訓令的な ては,当該職員の勤務条件や基本的人権に関係するものであり,対 外的処分がなされるわけでもないから,適法性をチェックすることができるのは当該職員以外にない。したがって,少なくとも,非訓令的な職務命令が違法である場合には,職員はこれに従う義務はないというべきである。そして,本件職務命令は原告個人に対する命令であり,原告の基本的人権に関係する非訓令的な命令であるから,原告は本件職務命令に従う義務はない。 (ウ)よって,原告には,本件職務命令に従う義務はなく,懲戒事由も存しない。 イ大阪市職員基本条例別表11項に該当しないこと被告は,原告が本件職務命令に反して回答を拒否したことにより公務の運営に支障を生じさせたと主張する。 しかし,本件では,原告は,上司らに対し本件調査対象部位に入れ墨がないことを目視させており,交通局は,原告に入れ墨がないことにつき確かな情報を得ていた。原告は本件調査票に記入する形で回答していないが,市民等の目に触れる可能性のある部分に入れ墨のある職員について人事配置上の配慮をするという公務の運営に何らの支障も生じさせていない。 また,直接目視で確認した上司が本件調査票の「1」欄の「イしていない」に「○」を記入し,署名欄に「2012年5月7日目視により確認 e営業所所長D」などとして提出していれば,公務の運営に支障は生じなかった。 交通局長も,原告との面談の際に「上司にだけ見せて,アンケートを書くことが嫌やったら,上司がかわりに書いとったらええんやと私は思うわけや」と述べ,上司による本件調査票への記入で十分であり,公務に支障がないことを認めている(甲48)。 したがって,原告の行為は,同条例別表11項に該当しない。 ウ本件処分は裁量権を逸脱濫用するものであること仮に職 の記入で十分であり,公務に支障がないことを認めている(甲48)。 したがって,原告の行為は,同条例別表11項に該当しない。 ウ本件処分は裁量権を逸脱濫用するものであること仮に職務命令違反が存在したとしても,懲戒権者は,懲戒処分に付すべきか否か,また,懲戒処分に付する場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断が,社会的観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又は,これを濫用したと認められる場合には,違法となる。 原告が本件調査票を提出しなかったのは,本件調査が憲法に反し,これに回答すれば憲法遵守義務に反することになるという真摯な動機によるものである。また,その態様は,本件調査票を提出しないという極めて穏便なものである。さらに,原告は上司に本件調査対象部位に入れ墨がないことを確認してもらっており,被告は原告についても本件調査の目的を達している。原告には他に懲戒歴はなく,被告に入職してから約20年間,市バスの運転手として勤勉に市民に奉仕してきた者である。 他方で,本件処分は,昇給が2号級減ぜられる,勤勉手当が0.15か月分減額されるという大きな不利益を与えるものである。しかも,本件調査は,全職員に対してプライバシーに関わる身体的特徴についての回答を強制するものであるから,答えたくないと考える職員がいることは当然である。そのような職員に対しても,職務命令である以上は回答義務があるとしてこれに従わざるを得ない関係を作ることが本件調査の真の目的であり,その関係を受け入れられない職員を懲戒処分にすることによって,見せしめとするものである。 加えて,交通局では,その所属する職員が職務命令に違反した場合でも懲戒処分に処せられていない事案が多数存在する(甲52の1ないし3)。 以上 分にすることによって,見せしめとするものである。 加えて,交通局では,その所属する職員が職務命令に違反した場合でも懲戒処分に処せられていない事案が多数存在する(甲52の1ないし3)。 以上からすれば,本件処分は,交通局長の裁量権を逸脱濫用するも のであって,違法である。 エまとめ以上のとおり,本件職務命令は違憲・違法であるから,本件職務命令違反を理由とする本件処分は違法であり,仮に本件職務命令が適法であるとしても,本件処分は,処分の実質的要件を欠き,交通局長の裁量権を逸脱濫用するものでもあるから,違法である。 (3)損害賠償請求権の存否(原告の主張)ア本件調査及び本件職務命令(以下「本件調査等」という。)原告は,違法な本件調査に対して,懲戒処分の威嚇の下に回答するよう職務命令を受けた。原告は,この時点ですでに,このような違法・不当な強要によって,重大な精神的損害を被った。 なお,本件調査については,日本弁護士連合会,大阪労働者弁護士団等の団体が,その違憲性・違法性につき声明を出し,調査や処分を実施しないように警告しており(甲27ないし36),C市長及び交通局長が本件調査の違法性を認識していたことは明らかであるから,C市長及び交通局長には,本件調査等が違法であることにつき,故意ないし過失があった。 イ執拗な働きかけ原告は,D所長などから,執拗な働きかけを受け,強い心理的葛藤を生じるまでに追い込まれ,結果的に苦渋の選択として,上司らに本件調査対象部位を視認させるに至っている。かかる上司らからの働きかけも違法な本件調査を強要する組織的行為の一環であり,それによって葛藤を生じたことも,原告が被った重大な精神的損害である。 そして,原告が本件調査対象部位を視認させた後も,D所長やH課 の働きかけも違法な本件調査を強要する組織的行為の一環であり,それによって葛藤を生じたことも,原告が被った重大な精神的損害である。 そして,原告が本件調査対象部位を視認させた後も,D所長やH課長らは原告を呼び出し,本件調査票への記入を執拗に強要した。その 結果,原告は体調を崩し,平成24年5月21日から6月3日までの間,逆流性食道炎のため自宅療養しなければならなくなった。しかるに,D所長は,原告が自宅療養している間にも,原告に架電し,本件調査の回答を自宅まで取りに行くとまで述べて,あくまで本件調査票による回答を強要した。その後も,D所長らが繰り返し原告を呼び出し,分限免職処分の対象となる,早期退職を希望する方が原告のためではないかと述べ,交通局長は警告書も発しているが,D所長らは原告に入れ墨がないという事実を視認して確認した上で,本件調査の担当部局にその旨報告していたのであるから,人事配置のために必要な情報を得るという本件調査の目的は達成しており,原告に回答を強要する実質的な理由はなかったのである。交通局長が事実調査の体裁をとりながら,業務上の必要性を建前としてあくまでも指示した書面の提出を職務命令によって強制し続けたことによっても,原告は重大な精神的損害を被った。 ウ本件処分さらに,交通局長は,本件調査の目的を達成していたにもかかわらず,原告に本件処分をし,これにより原告は昇給が2号級減り,勤務手当が0.15月分減らされた。本件処分は全く違法なものであり,同処分を科されたことによっても,原告は重大な精神的損害を被った。 エ本件任意調査交通局長は,平成24年5月2日に本件任意調査を実施したが,本件任意調査の対象は勤務中に市民等の目に触れるおそれのない部位にまで及び,また,入れ墨を施術した時期という極め エ本件任意調査交通局長は,平成24年5月2日に本件任意調査を実施したが,本件任意調査の対象は勤務中に市民等の目に触れるおそれのない部位にまで及び,また,入れ墨を施術した時期という極めてセンシティブであり調査目的とは関係のない事項に及んでいる。 したがって,本件任意調査も本件調査と同様に違憲・違法であるところ,原告は本件任意調査によっても精神的損害を被った。 オ原告が上記各行為により被った精神的損害は甚大であり,これを金銭に換算すれば300万円を下らない。 また,本件訴訟追行のための相当な弁護士費用は75万円を下らない。 カよって,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,375万円及び不法行為の最終の日である平成24年8月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)ア本件調査等(ア)原告は,交通局長が本件調査によって,本件入れ墨情報を収集しようとしたことにより,原告の「私生活上の自由及びプライバシー」が侵害され,精神的苦痛を被ったと主張する。 しかしながら,本件調査等が適法であることは前述のとおりである。 (イ)また,本件調査により,原告に侵害される利益があるとすると,「調査対象部位に入れ墨があるか否かの回答を強制されないという利益」であると考えられるが,原告は入れ墨をしていないのであるから,入れ墨の有無等についての情報が人格的利益に直結する秘匿性の高いものであるはずもない。さらに,原告は,自ら上司に対して入れ墨がないことを口頭で伝えた上,視認までさせているのであり,かかる情報を上司らに提供したこと自体によって原告が不快,不安の念を覚えたものでないことは明らかである。 そして,原告が本件調査を拒否した理由は,「違法 頭で伝えた上,視認までさせているのであり,かかる情報を上司らに提供したこと自体によって原告が不快,不安の念を覚えたものでないことは明らかである。 そして,原告が本件調査を拒否した理由は,「違法な調査には断固として拒否する意思」(原告準備書面2・2頁)に基づくところ,原告が,原告自身のプライバシー侵害を理由として本件調査の回答を 拒否したものではないことは,その主張からも明らかである。すなわち,原告にとってプライバシーの侵害は生じていないのである。 もちろん,公務員である原告は,職務命令の成立要件に重大かつ明白な瑕疵がない限り,各自の判断でその効力を判断し,従う義務があるかないかを判断することが許容されるものではなく(乙44),本件入れ墨情報が,思想・良心の自由といった人格的利益に関わるものではないことも踏まえれば,たとえ原告において本件調査等が違法であるとの認識があったとしても,原告の「職務命令に従うか否かを決定する自由」なるものは,法的保護に値する利益ということはできない。 イ説得行為について本件調査は,職務上の必要に基づき,職務として回答すべき義務があるものであるから,この回答を拒否する者に対し,原告の上司らが,回答するよう再三にわたって説得を重ねたことは,上司らの職務執行としては極めて当然の対応であるし,その方法は,いずれも,長くても20分から30分程度であり,威迫や強要などの指導として行き過ぎた対応もなく,依頼や説得の方法として相当性を欠くところはない(証人H3頁)。仮に何らかの利益を侵害したとしてもその程度は極めて軽微である。 ウ本件処分について交通局長は,本件調査の後,再三にわたる説得,本件職務命令,警告等のいずれにも反して回答拒否を続けた原告に対し,職場における規律を確保するために は極めて軽微である。 ウ本件処分について交通局長は,本件調査の後,再三にわたる説得,本件職務命令,警告等のいずれにも反して回答拒否を続けた原告に対し,職場における規律を確保するために,懲戒処分の中で最も軽度の戒告処分をもって,「職員の責任を指摘し,及びその将来を戒め」たにすぎず,それは,非違行為があった場合における懲戒処分として重すぎるということもない。 仮に何らかの利益を侵害したとしてもその程度は極めて軽微である。 エなお,国家賠償責任としての違法性は,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分をしたと認め得るような事情がある場合に限られるところ,市民や議会の指摘等を踏まえ,行政主体として踏み込んだ施策を講じること自体は否定されるものではないし,その検討に当たって,人事室では,具体的な調査の対象,範囲,方法や,個人情報保護条例との関係について,複数の法律家の意見も踏まえながら慎重な検討を尽くした結果,本件調査の実施に至ったものである(乙46,証人J5頁)。 本件処分についても同様に法律家の意見も踏まえ,本件調査の趣旨等の説明を継続し,改めて業務命令,その後の警告書の交付という慎重な手順を踏み,さらに,職員基本条例30条1項に基づき,外部の法曹関係者で構成される被告人事監察委員会での意見も踏まえたものである。そして,交通局長においても,かかる人事室の検討,対応状況を確認して対応してきたのであるから,職務上要求される注意義務は果たしているというべきである。 オこのように,本件調査によって何らかの利益が侵害されるとしても,それは法的保護に値する利益ではない,あるいはその程度が低いものであるし,他方,本件調査を始めとする交通局の対応は,権利利益を侵害するようなものではないか,侵害すると かの利益が侵害されるとしても,それは法的保護に値する利益ではない,あるいはその程度が低いものであるし,他方,本件調査を始めとする交通局の対応は,権利利益を侵害するようなものではないか,侵害するとしてもその程度は極めて軽微である。 したがって,仮に原告の何らかの利益を侵害するものであったとしても,金銭をもって慰謝されるべき苦痛は生じていないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができる。 (1)本件施設職員は,環境センターで勤務しており,左上腕部に大きさ14㎝×4㎝の入れ墨をしていたが,長袖の服装を着用していたため,環境局では同職員に入れ墨があることを把握していなかった。 (乙30,46,52,証人J2頁)(2)本件施設職員は,平成21年4月に環境センターから児童福祉施設に異動し,調理担当職員として職務に従事していた。同年6月頃から,同職員は,気温が高くなり半袖の服装で作業するようになったが,袖口から入れ墨が2~3㎝程度見えるようになったため,上司は,入れ墨が子供たちの目に入らないように,長袖や上着を着用するように注意,指導していた。 (乙30,46,52)(3)平成23年4月から6月頃にかけて,本件施設職員が入所児童に対して暴言を吐き恫喝しているなどの内容の外部通報が被告にあり,子ども青少年局及び情報公開室監査部が調査したところ,同職員が入れ墨をしていたとの事実は確認したが,同職員が入れ墨を見せて入所児童を恫喝したとの事実を認定するには至らなかった。(甲49,乙30,46,証人J22頁)(4)なお,本件施設職員については,従前は食育の観点から児童の指導に関わることがあったが,上記通報があった 恫喝したとの事実を認定するには至らなかった。(甲49,乙30,46,証人J22頁)(4)なお,本件施設職員については,従前は食育の観点から児童の指導に関わることがあったが,上記通報があったことなどを受けて,児童の指導には関わらないようにしていた。(乙30,52)(5)平成24年2月28日,本件施設職員が児童たちに自分の入れ墨を見せたり,暴言を吐いたりしたことが被告の調査で判明したにもかかわらず,被告が処分せず,公表も見送っていたことなどを伝える本件新聞 報道がなされた。 (6)本件新聞報道を受けて,市民等から被告に対し,「入れ墨をした人間は,公務員になるべきではない。失職させよ」,「一般市民は入れ墨があればやくざだと思うものです」,「入れ墨がある職員が存在していること自体が非常に問題」など公務員である被告の職員が入れ墨をしていること自体を批判する意見が多数寄せられた。(乙29,46)(7)また,被告の議会では,本件新聞報道から本件調査の実施までの間に,本件施設職員を環境センターから市民等と接触することの多い児童福祉施設に異動させたことや,当時においても同職員を児童福祉施設に配置していたことを非難し,職場の異動を検討すべきとする意見(乙30),同職員の人事評価が不当であるとの意見(乙30~32),市民の感覚からすれば職員が入れ墨をしているということは非常に問題であり,不適格者として分限処分に処すべきではないかとの意見(乙33~35),入れ墨をしている職員には申告させて,その後に入れ墨を入れた者については処分すべきとの意見(乙45)などが出された。(乙30~35,45)(8)被告は,4月,本件施設職員を市民等と接する頻度が少ない環境センターに異動させた。(乙46,弁論の全趣旨)(9)9月6日,第4回 意見(乙45)などが出された。(乙30~35,45)(8)被告は,4月,本件施設職員を市民等と接する頻度が少ない環境センターに異動させた。(乙46,弁論の全趣旨)(9)9月6日,第4回服務PTが開催され,同日の時点で,本件調査対象部位に入れ墨のある職員数は99人であり,そのうち交通局は13人であったこと,99人のうち,95人は市民の目に触れる職場であり,業務が限定されているため分担替えが困難な職場もあることが報告され,今後の方針としては,市民等への接触の頻度,接触するに当たっての業務内容等を十分に考慮し,所属内の分担替えや配置替え,所属間異動などの適正な人事配置を行うこと,年度途中の配置替えは職員のプライバシーの観点上問題があり,また,配置先の職員が異動を余儀なくさ れることから,定期人事異動での実施を検討すること,平成24年度中は,入れ墨を入れている職員に対し,入れ墨が市民等の目に触れることのないよう引き続き指導することなどが確認された。(乙15) 2 本件職務命令の適法性(1)憲法13条違反との主張についてア審査基準等について(ア)本件職務命令は,本件調査に回答することを命じるものであるところ,本件調査は,交通局の全職員(非常勤嘱託職員及びアルバイト職員を除く)に対し,日常生活を行う上で目視可能な部位である本件調査対象部位に関し本件入れ墨情報の回答を義務付けるものである。 入れ墨は,それ自体では人格,思想,信条,良心等の個人の内心に関する情報となるものではないが,反社会的組織の構成員に入れ墨をしている者が多くいることから,入れ墨をしていることは個人の経歴に関する情報となり得るものであり,かつ,本件新聞報道後に公務員である本件施設職員が入れ墨をしていたことに対して市民等から批判する意見が ている者が多くいることから,入れ墨をしていることは個人の経歴に関する情報となり得るものであり,かつ,本件新聞報道後に公務員である本件施設職員が入れ墨をしていたことに対して市民等から批判する意見が多数寄せられていることからも明らかなとおり,入れ墨に対して抵抗感,嫌悪感を示す者は多く,個人の名誉又は信用に関わるプライバシー情報であるということができる。 そして,憲法13条は,国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定していると解されるので,個人の私生活上の自由の一つとして,何人も入れ墨をしているとの情報の開示を公権力により強制されない自由を有するものと解される。 (イ)もっとも,上記自由も無制限に保護されるものではなく,公共の福祉のため必要がある場合には相当の制限を受けることは,憲法13条に定められているところである。 そして,入れ墨をしていることは,反社会的組織に所属していたことを直ちに意味するものではなく,近時はファッションの一つとして入れ墨を施す者もいることからすると,必ずしも個人の経歴を示す情報となるものではなく,これを秘匿したいと考えるか否かも個々人によって異なる。また,本件調査は,視認又は撮影などの方法によって職員の身体に入れられている入れ墨の形状,模様等を直接情報として収集するものではなく,本件調査票に自ら記入させる方法によって,本件調査対象部位に関する本件入れ墨情報を収集するものであり,その情報のみから当該個人の経歴を直ちに推認することができるものではない。 上記のような本件調査により収集する本件入れ墨情報の性質に鑑みると,本件調査が入れ墨をしている者のプライバシーを侵害するものとして憲法13条に反するか否かを判断するに当たっては,他のより制限的でない他の手段が存在しない より収集する本件入れ墨情報の性質に鑑みると,本件調査が入れ墨をしている者のプライバシーを侵害するものとして憲法13条に反するか否かを判断するに当たっては,他のより制限的でない他の手段が存在しないことまで要するものではなく,本件調査の目的の正当性,調査の必要性及び手段の相当性等を総合考慮して判断するのが相当である。 イ本件調査の目的(ア)本件施設職員が自分の腕の入れ墨を児童たちに見せていたことなどを伝える本件新聞報道がなされた後に,被告の議会において被告の職員が入れ墨をしていることを問題視する意見が出されるとともに,本件施設職員が市民等と接することの多い児童福祉施設で勤務させていることを非難し,職場の異動を検討すべきとの意見が出ていたこと,本件調査実施要領には本件調査の目的につき「先の新聞報道等にもあるように,本市職員の入れ墨が社会問題となっており,人事配置上の配慮等を行う観点から,日常生活を行う上で目視可能な部位への入れ墨の有無を把握する必要があるため,全職員に対し 記名式の調査を実施するものである」と記載されていること,本件調査の際に各職員に配布された「入れ墨に関する調査について」と題する交通局長名義の書面にも「入れ墨・・・が見えるような服装で業務を行うことは不適切であることは言うまでもなく,また,いくら見えないように気を付けていても,勤務中に入れ墨が市民,利用者の方の目に触れることになれば,市民,利用者の方が不安感や威圧感を持ち,ひいては本市の信用を失墜させることにつながる。 このような事態が生じないよう,本市として,職員の入れ墨が業務中に市民,利用者の方の目に触れる可能性のある部分・・・にあるのかどうか,実態を把握した上で,人事配置上の配慮を行う必要があることから,全職員に対し記名式の調査を実施するものであ 職員の入れ墨が業務中に市民,利用者の方の目に触れる可能性のある部分・・・にあるのかどうか,実態を把握した上で,人事配置上の配慮を行う必要があることから,全職員に対し記名式の調査を実施するものである」と記載されていること,本件調査実施後に開催された第4回服務PTでは,市民等への接触の頻度,接触するに当たっての業務内容等を十分に考慮し,所属内の分担替えや配置替え,接触するに当たっての業務内容等を十分に考慮し,所属内の分担替えや配置替え,所属間異動などの適正な人事配置を行うとの方針が確認されていること,及び証拠(乙46,47,証人J)によれば,本件調査の目的は,本件新聞報道後に,被告の職員が入れ墨をしていることに対する批判が高まっていることを受けて,今後同様の問題が発生することによって市政に対する信用が失墜することのないよう,市民等の目に触れる可能性のある部分に入れ墨をしている職員の有無を把握し,当該部分に入れ墨をしている職員が市民等に接する機会の多い職務に従事している場合には,より市民等に接する機会の少ない職務を担当させるために,所属内の分担替えや配置替え,所属間異動などの人事配置を行うことであったと認められる。 (イ)これに対し,原告は,ⅰ被告が本件全体調査への回答を拒否した 6名について書面回答以外の別の方法による調査確認を行っていないこと,ⅱ原告が入れ墨をしていないとの情報を組織として共有していない上,その後も原告に本件調査票を提出させることに固執していること及びⅲ本件処分の判断に当たり原告に入れ墨があったか否かを全く考慮していないことを論拠として,本件調査の目的は人事配置上の判断材料として本件入れ墨情報を収集することではなかった旨主張している。 しかし,上記(ア)で述べたところから,本件調査の目的が人事配置上 ていないことを論拠として,本件調査の目的は人事配置上の判断材料として本件入れ墨情報を収集することではなかった旨主張している。 しかし,上記(ア)で述べたところから,本件調査の目的が人事配置上の判断材料として本件入れ墨情報を収集することにあったことは優に認めることができる。 ⅰについて,市民等の目に入る可能性の部位に入れ墨をしている職員をあらかじめ把握して人事配置上の配慮をするためには,本件全体調査への回答を拒否した職員については別の方法により入れ墨の有無を確認する方がより徹底しているといい得るが,予定していた調査方法により情報を収集することができなかった場合に別の方法によって情報の収集を図るか否かは,別途検討を要する問題であるから,本件全体調査への回答を拒否した職員について別の方法により入れ墨の有無を確認していないことをもって,本件調査の目的がそもそも人事配置上の配慮をするための情報収集であったことまで否定されるものではない。 また,ⅱ,ⅲについて,確かに,D所長らは,原告につき入れ墨をしていないことを視認して確認したのに,そのことを直ちに報告して組織として共有しておらず,その後も原告に対して本件調査票の提出を再三要求し,交通局長においても,本件処分の判断に当たり,原告がD所長らに対して入れ墨がないことを確認させていることを考慮していないのであるが,それは,交通局長やD所長らが,本件 調査票に記入して回答するという本件調査実施要領で定められた回答方法の遵守を重視していたからであり,本件調査により収集した本件入れ墨情報を人事配置上の配慮以外の目的で利用することを考えていたことを窺わせる事情もないから,これらについても上記の調査目的を否定すべき事情であるということはできない。 よって,上記原告の主張は,採用するこ 事配置上の配慮以外の目的で利用することを考えていたことを窺わせる事情もないから,これらについても上記の調査目的を否定すべき事情であるということはできない。 よって,上記原告の主張は,採用することができない。 (ウ)地方公共団体は,その地方の事務を当該地域の住民の意思と責任の下に実施し,その職員である地方公務員は,全体の奉仕者として住民全体の公共の利益のために勤務するものであって(地公法30条),その職務を行うに当たっては公務に対する住民の信頼を損なわないように遂行することが要請されるから(同法33条),住民の意見や住民の代表である議会での議論を踏まえつつ,公務に対する住民の信頼を損なわないように職員の服務を規律することは地方公共団体の責務であるということができる。 職員倫理規則2条2項8号が,「勤務時間中は,常に清潔な身だしなみを心がけ,市民が不快感を覚えることがないようにする」ことを定めているのも,かかる要請に基づくものであって,合理的な定めであると解されるところ,市民等の目に触れるところに入れ墨をしている職員が市民等に接する機会の多い部署に配属されている場合には,入れ墨が市民等の目に触れることにより市民等が不安感や威圧感を持つことがあり得るから,そのような事態が生じないようにするために,入れ墨を入れている職員の有無を把握した上で人事配置上の配慮を行うとの本件調査の目的は,上記地方公共団体の責務及び上記規則の趣旨に沿うものであって,正当な目的であると認められる。 (エ)原告は,入れ墨には多種多様な形態がある上,勤務中に職員の入 れ墨が市民等に見えたとしても,当該職員が公務員であることは市民等も十分認識しているのであるから,直ちに不安感や威圧感を持つとは考えにくいと主張している。 しかし,近時,ファッション の入 れ墨が市民等に見えたとしても,当該職員が公務員であることは市民等も十分認識しているのであるから,直ちに不安感や威圧感を持つとは考えにくいと主張している。 しかし,近時,ファッションの一つとして入れ墨を入れる者がいることは確かであるが,他方で,反社会的組織の構成員に入れ墨をしている者が多くいることは否定し難く,そのため入れ墨をしている者に対して不安感や威圧感を抱く者がいることは,被告に寄せられた市民等からの意見(乙29)やスポーツクラブにおいて入れ墨をしている者の入会を拒否する会則が設けられていることなど(乙24~26)からも認められる。 そして,本件施設職員の事案の場合も,入れ墨をしている者が公務員であることを認識した上で,被告に対して公益通報がされているのであり,入れ墨をしている職員が公務員であるからといって,市民等が不安感や威圧感を抱くことはないということはできず,むしろ,市政に対する強い批判を招いているのであるから,入れ墨が市民等の目に触れることにより市民等が不安感や威圧感を持つことがあり得るため,そのような事態が生じないようにするとの本件調査の目的が前提を欠くものということはできない。 (オ)また,原告は,本件調査は,公的な機関である被告が「入れ墨は一般に不安感や威圧感を抱かせるもの」という評価を公言するものであり,入れ墨に対する偏見や差別を助長することにもつながるため,本件調査の目的の正当性には重大な疑義があるとも主張している。 しかし,前記(エ)で述べたとおり,入れ墨に対して不安感や威圧感を抱く者が多数いることが認められ,反社会的組織の構成員に入れ墨をしている者が多くいることは否定し難いことからすると, 入れ墨に対して不安感や威圧感を抱くこと自体は何らの根拠もない不当な偏見や差別である 多数いることが認められ,反社会的組織の構成員に入れ墨をしている者が多くいることは否定し難いことからすると, 入れ墨に対して不安感や威圧感を抱くこと自体は何らの根拠もない不当な偏見や差別であるということはできず,被告の対応も入れ墨に対する不安感や威圧感を感じる市民等がいることに配慮する限りで行うことを予定しているものであるから,本件調査が不当に偏見や差別を助長するものであるということはできない。 ウ本件調査の必要性(ア)児童福祉施設で勤務していた本件施設職員が児童に対して自分の入れ墨を見せたり,暴言を吐いたなどとする本件新聞報道がなされ,これを受けて,被告に対し,公務員が入れ墨をしていること自体が非常識であるなどといった非難の声が多数寄せられるとともに,市議会においても職員が入れ墨をしていることを批判する趣旨の意見が述べられているのであるから,被告としては市政に対する市民等からの信頼を確保するために対応しなければならない状況であったということができる。 そして,被告は,職員倫理規則2条2項8号で「勤務時間中は,常に清潔な身だしなみを心がけ,市民が不快感を覚えることがないようにする」ことを定めるとともに,入れ墨に関しては,職員に対して,入れ墨をしている場合には長袖の服を着て見えないようにするよう注意・指導しており(証人J23頁),本件施設職員に対しても,平成21年6月頃に同人の腕に入れ墨があることを把握した以降は,長袖の服や上着を着るよう上司が指導していたが,それにもかかわらず,その後に同職員が入れ墨をしていたことなどが外部通報により問題となっているのであるから,入れ墨をしている場合には長袖を着るなど市民等から見えないようにするよう指導したり,身だしなみ点検を実施し,問題が発覚する毎に個別に対応するという従前ど 部通報により問題となっているのであるから,入れ墨をしている場合には長袖を着るなど市民等から見えないようにするよう指導したり,身だしなみ点検を実施し,問題が発覚する毎に個別に対応するという従前どおりの対応をするだけでは,再度同様の問題が生じること はあり得るところである。そして,再び同様の問題が生じた場合は,被告に対する市民等からの非難は更に高まることが予想されるから,あらかじめ同様の問題が生じないように職員の市民等の目に触れる可能性のある部位に関する本件入れ墨情報を把握した上で,入れ墨をしている職員については市民等と接触する機会が多い部署には配置することを避けるという人事配置上の配慮を行うことには合理性があり,実際に,議会の議員からは,入れ墨をしている職員については市民の目に触れないよう人事異動で配慮すべきとの意見が出されていたのであるから,市民等の目の触れる部分に入れ墨をしているのか否かを各職員についてあらかじめ把握した上で,人事異動で配慮するとの方策を採る必要性があったというべきである。 また,本件施設職員は児童福祉施設で勤務していた者であり,交通局の職員ではないが,本件新聞報道後の市民等から寄せられた意見は,児童福祉施設の職員であるかその余の部署で勤務する職員であるかを特段区別することなく,公務員である被告の職員が入れ墨をしていたこと自体を非難するものが多く,したがって,市政に対する市民等からの信頼を確保するためには,被告の職員全体について同様の問題が生じないようにすることが必要であったこと,被告においては部局間の人事異動もあり,本件施設職員も局間異動により環境局から児童福祉施設に異動していることからすると,問題が発生した児童福祉施設の職員だけでなく,交通局を含む被告の他の部局の職員についても調査を行う必要性が 動もあり,本件施設職員も局間異動により環境局から児童福祉施設に異動していることからすると,問題が発生した児童福祉施設の職員だけでなく,交通局を含む被告の他の部局の職員についても調査を行う必要性があったことが認められる。 (イ)これに対し,原告は,被告の調査によっても本件施設職員が入れ墨をしていたことにより市民等が不安感や威圧感を持ったとの認定はされておらず,入れ墨をしていたことの立証もないし,また,本件新聞報道の後に寄せられた入れ墨に関する市民等の意見は「職員 が児童に入れ墨を見せて恫喝した」という誤った報道に基づくものであるから,本件調査を実施する必要性はなかった旨主張している。 しかし,本件施設職員が入れ墨をしていたことについては,定例常任委員会において,Bこども青年局長が,同職員が入れ墨をしていたことは間違いない旨答弁しており(前提事実(2)イ),批判を招くことが明らかであるにもかかわらず,上記職員が入れ墨をしていないのに入れ墨をしている旨答弁することは考え難いから,同職員が入れ墨をしていたことは認定することができる。また,反社会的集団の構成員に入れ墨をしている者が多くいることや入れ墨をしていることに関して外部通報がされていることから,上記職員が入れ墨をしていたことにより,利用者が不安感や威圧感を持ったということも推認することができる。 そして,上記職員が入れ墨をして恫喝したとの事実までは確認できなかったとしても,入れ墨をしていたことは事実であり,本件新聞報道後の市民等の意見には,恫喝したことだけではなく,公務員である職員が入れ墨をしていたこと自体に対する批判の意見が多いのであるから,被告の調査では恫喝の事実までは確認することができなかったことをもって,本件調査の必要性がなかったとはいえない。 (ウ)原 る職員が入れ墨をしていたこと自体に対する批判の意見が多いのであるから,被告の調査では恫喝の事実までは確認することができなかったことをもって,本件調査の必要性がなかったとはいえない。 (ウ)原告は,交通局では,バスの運転手らに対して乗務前に毎回身だしなみ点検を行っており,入れ墨を原因として何らかの問題が発生したこともないから,本件調査を行う必要性はなく,交通局長も必要性がないことを認める趣旨の発言をしている旨主張している。 確かに,被告においては,職員の入れ墨については,前記(ア)で述べたとおりの注意・指導を行っており,それまでその注意・指導に従わない職員の存在が人事課に報告された事例はなく,交通局に おいても,乗務員は制服の着用が義務付けられている上,乗務前に毎回身だしなみの点検が行われ,その際に入れ墨が見えるなどして問題となった事例はなかったことが認められるのであるから(甲25,26,証人J24頁,同H14,15頁,原告本人4頁),そのような乗務員については,本件施設職員の事案と比較すると,入れ墨が市民等の目に入ったとして同様の批判を招く可能性はより少ないということができる。 しかし,乗務員から配転される可能性も完全には否定できない上,そうでないとしても,本件施設職員に関し上記事案が発生した以上,交通局の乗務員についても,先に述べたような従前の注意・指導により本件施設職員の事案と同様の問題が生ずるおそれがないか否かを検討する必要があるのであって,そのためにも,市民等の目に触れる部分に入れ墨をしているのか否かをあらかじめ把握しておく必要性があったこと,児童福祉施設以外の部局の職員についても調査を行う必要性があったことは,前記(ア)で述べたとおりである。 交通局長が本件調査の必要性がないことを認めた趣旨の発言とし 握しておく必要性があったこと,児童福祉施設以外の部局の職員についても調査を行う必要性があったことは,前記(ア)で述べたとおりである。 交通局長が本件調査の必要性がないことを認めた趣旨の発言として原告が指摘するのは,別件訴訟での尋問におけるK交通局長の「私が就任して以降,入れ墨調査というのはしてないはずですので,就任して以降は入れ墨調査の必要性は僕は感じてないということです」との発言である(甲63・12頁)。同局長が交通局長に就任したのは4月1日であり(弁論の全趣旨),本件調査が実施されたのは5月であるから,上記交通局長の「私が就任して以降,入れ墨調査というのはしてないはずですので」との上記発言は自己の就任した時期と本件調査の実施時期との前後関係を誤解していることが明らかである。そうすると,その後の「就任して以降は入れ墨調査の必要性は僕は感じてないということです」との発言は,本件調査以降 に入れ墨調査を再度実施する必要性は感じていないとの趣旨であることが認められる。原告の主張は上記交通局長の発言の趣旨を曲解するものであって,採用することができない。 (エ)以上によれば,本件調査を実施する必要性があったことは認められる。 エ手段の相当性(ア)本件調査は,交通局の非常勤嘱託職員及びアルバイト職員を除く全職員を対象に,本件調査対象部位に関する本件入れ墨情報を本件調査票に記載して提出することを義務付ける方法によって実施されている。 本件調査は,人事配置上の配慮を行うことを目的とするものであるから,かかる目的を達成するためには,市民等の目に入る可能性のある場所についての本件入れ墨情報を確認すれば足りるところ,本件調査では,調査の対象部位を本件調査対象部位に限定しており,かつ,化粧の一部として眉,アイライン,唇の皮 には,市民等の目に入る可能性のある場所についての本件入れ墨情報を確認すれば足りるところ,本件調査では,調査の対象部位を本件調査対象部位に限定しており,かつ,化粧の一部として眉,アイライン,唇の皮膚に針等で色素を入れる施術である,いわゆるアートメイクを本件調査の対象から外しているなど,職員のプライバシーを過度に制限することのないように調査対象範囲を限定している。 前述のとおり,本件調査は,本件施設職員が入れ墨をしていたことなどを伝える本件新聞報道を契機として実施されたものであるが,本件新聞報道後に被告に寄せられた市民等の意見は,被告の特定の部署や職種に限定することなく,公務員である被告の職員が入れ墨をしていること自体を批判する意見が多数寄せられていたのであるから,被告の全職員を対象として調査を実施する必要があり,かつ,相当であると認められるところ,交通局の職員数は4月1日当時で6513名であり,全ての職員に対して聞き取り調査や目視による確認調査を実 施するには多大な労力を要するから,各職員に対して書面による回答を求めるとの方法は効率的であり,かつ,その後の情報の管理という面からみても合理的な方法であるということができる。また,調査対象者のプライバシー保護の観点からも,書面により回答する方式であれば,自己の認識に基づいて本件入れ墨情報を記載し提出すれば足りるから,面談を実施しての聞き取り調査や目視による確認調査を行うという方法よりも望ましい方法であるということができる。 さらに,本件調査は,本件調査対象部位に関する本件入れ墨情報の回答は任意ではなく,これを回答することを義務付けるものであるが,交通局長は,後述のとおり,地方公営企業である交通局の管理者としてその職員に対する指揮監督権を有し(地方公営企業法15条2項),ま 回答は任意ではなく,これを回答することを義務付けるものであるが,交通局長は,後述のとおり,地方公営企業である交通局の管理者としてその職員に対する指揮監督権を有し(地方公営企業法15条2項),また,各職員の上司として職務に関連する事項につき命令することができるのであり(地公法32条),職務を執行する際の身だしなみに関する事項についても職務に関連する事項として職務命令の対象とすることができるのであるから,各職員に対して本件調査に回答するよう命じてこれを義務付けることも交通局長の職務権限の範囲内であるということができる。そして,本件調査の回答を任意にすると,回答しない職員が多数出てくることは容易に予想することができるところであり,各職員の本件入れ墨情報を把握した上で,人事配置上の配慮を行うという本件調査の目的を必ずしも達成することができないことになり得るのであるから,回答を義務付けることは合理的な方法であるということができる。 以上によれば,本件調査の方法は合理的かつ相当な方法であると認めるのが相当である。 (イ)これに対し,原告は,市教委では職務上において児童及び生徒等の目に触れる可能性のある所に入れ墨がある場合は,その旨自主的に 申告するという方法で実施しているのであるから,本件調査のように回答を義務付ける必要はなく,任意の方法によることで十分であったと主張している。 しかし,市教委においては,教育公務員が自己の崇高な使命を深く自覚し,絶えず研究と修養に励み,その職責の遂行に努めなければならない立場にあること(教育基本法9条1項)を前提として,本件調査をそのまま実施するのに否定的な意見が多数を占めたことがうかがわれる(甲41~,43)のであって,それを一般職員に直ちにあてはめることはできないというべきである。 条1項)を前提として,本件調査をそのまま実施するのに否定的な意見が多数を占めたことがうかがわれる(甲41~,43)のであって,それを一般職員に直ちにあてはめることはできないというべきである。 また,回答するか否かを任意とする調査方法は,職員が入れ墨をしているか否か等の実態を把握するという本件調査の観点からみて実効性に欠けることは明らかであり,市教委の調査方法によって回答を強制することなく実態を把握することができたことが明らかになっているわけでもないから,市教委が回答を義務付けていないことをもって,本件調査のように回答を義務付ける必要性がなかったということはできない。 さらに,原告は,よりプライバシー侵害の程度が低い方法として,入れ墨をしている職員及び入れ墨をしていたとしても市民等に対し不安感や威圧感を与えるような者ではない場合には,本件調査票を提出しないことで回答に代えるという手段も可能であったと主張しているが,この方法では,提出し忘れている人との区別が困難であり,提出しない人全てについて再調査が必要となるから,この方法を採用しなかったことが不合理であるということはできない。 オ結論以上によれば,本件調査の目的は正当であり,本件調査の必要性及び手段の相当性も認められるから,本件調査が憲法13条に反するも のではなく,したがって,本件調査に回答することを求める本件職務命令も憲法13条に反するものではない。 (2) 憲法21条違反との主張についてア原告は,本件調査により本件入れ墨情報を収集することは,表現の自由に対する萎縮効果をもたらすこと,身体に入れ墨を入れるか否か及び入れ墨をしていることを他人に知らせるか否かは表現の自由として保護されるべき権利であることから,本件調査等は憲法21条に反する旨主張 由に対する萎縮効果をもたらすこと,身体に入れ墨を入れるか否か及び入れ墨をしていることを他人に知らせるか否かは表現の自由として保護されるべき権利であることから,本件調査等は憲法21条に反する旨主張している。 イしかし,人の内心における精神作用を外部に公表する精神活動として入れ墨を入れることが一般的であると認めるに足りる証拠はなく,むしろ,服装,身なり,外観などの自己決定権の問題として憲法13条による保障が及ぶか否かが検討されるべき問題であると解される。 憲法13条により保障される自由も,公共の福祉のため必要がある場合には相当の制限を受けるところ,本件調査の目的の正当性,調査の必要性及び手段の相当性が認められることは前述のとおりである。 また,入れ墨をしているか否か等について回答すること自体が,思想や信仰などの内心における精神作用を外部に公表する精神活動の一態様であるとも解されない。 ウしたがって,本件調査等が憲法21条に反する旨の原告の主張は採用することができない。 (3)個人情報保護条例違反との主張についてア同条例6条2項に該当するか否か(ア)同項は,「思想,信条及び宗教に関する個人情報並びに人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」(差別情報等)については,原則として収集してはならないことを定めており,そこにいう「その他社会的 差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」とは,社会生活において一般的に知られることにより,特定の個人又はその関係者が社会的に不当な差別を受けるおそれがある情報をいうものと解される(甲47,乙41)。 (イ)反社会的集団の構成員には入れ墨をしている者が多くいることから,入れ墨をしている人に対して抵抗感 関係者が社会的に不当な差別を受けるおそれがある情報をいうものと解される(甲47,乙41)。 (イ)反社会的集団の構成員には入れ墨をしている者が多くいることから,入れ墨をしている人に対して抵抗感を感じる人が多くいることが認められることは前述のとおりであるが,本件新聞報道後に寄せられた市民の意見には,その者が反社会的集団に所属しているのか否か,入れ墨をしている部位,当該入れ墨が化粧の一種としてのいわゆるアートメイクの範疇に留まるものなのかなどを区別することなく,入れ墨をしている者は失職させるべきとの意見も寄せられていることに照らすと,入れ墨に対する抵抗感から過剰に反応して不当な差別がされる可能性があることは否定し難い。 したがって,本件調査により収集しようとした本件入れ墨情報のうち特定個人が入れ墨をしているとの情報は,同項にいう「その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」(差別情報)に当たると解するのが相当である。 イ同条例6条2項1号に該当するか否か(ア)同号は,法令等に定めがあるときは,例外的に差別情報等を収集することができることを定めている。ここに法令等に定めがあるときとは,法令等に収集することができることを明文で定めている場合のほか,法令等の規定の趣旨,目的からみて,収集することができるものと解される場合を含むものと解される(甲47,乙41)。 (イ)そして,被告は,仮に本件調査が差別情報を収集するものであるとしても,本件調査は,被告に,職員の任命,休職,免職及び懲戒等の人事行政を行う権限があることを定める地公法の規定(同法1 条,5条ないし22条等),職員に対する指揮監督権限が被告にあることを定める地方自治法154条並びに人事室に職員の配置その他の人事に関する権限を付 う権限があることを定める地公法の規定(同法1 条,5条ないし22条等),職員に対する指揮監督権限が被告にあることを定める地方自治法154条並びに人事室に職員の配置その他の人事に関する権限を付与した同法158条及び大阪市市長直轄組織事務分掌条例及び同規則に基づく情報の収集であるから,個人情報保護条例6条2項1号に基づく差別情報等の収集であり適法である旨主張している。 確かに,本件調査は,地方公営企業である交通局の管理者である交通局長の命令に基づいて実施されたものであり,地方公営企業法は,管理者が地方公営企業の職員の任免,給与,勤務時間その他の勤務条件,懲戒,研修及びその他の身分取扱いに関する事項を掌理するとともに(同法9条2号),企業職員は管理者が指揮監督することを定めているところ(同法15条2項),上記指揮監督権は,補助機関を構成している公務員が一つの組織体をなして秩序整然と最良の補佐をなすことを担保するために認められている権限であるから,管理者は,必要があるときに,必要な方法によって補助機関である職員の職務の執行につき積極的に命令し,また,消極的にその義務に違反しないようにあらゆる措置を採ることができ,その措置には職員の身分取扱いに関する事項について種々の調査を行うことも含まれると解するのが相当である。 しかしながら,地方公営企業法9条2号及び15条2項並びに被告が主張する根拠規定は,一般的な人事行政に関する指揮監督権限を包括的に定めた規定であるか,被告内部の事務分掌の規定であるが,これらの包括的な指揮監督権規定又は事務分掌規定により情報の収集が可能であるとすると,職員に関する限り広範に差別情報等を収集することが可能となり,個人情報保護条例6条2項が原則として差別情報等の収集を禁止したことの趣旨が没却されるおそれ 掌規定により情報の収集が可能であるとすると,職員に関する限り広範に差別情報等を収集することが可能となり,個人情報保護条例6条2項が原則として差別情報等の収集を禁止したことの趣旨が没却されるおそれが ある。 また,同条例6条2項1号が,法令等に基づく場合に差別情報等の収集を許容する趣旨は,情報の収集に具体的根拠がある場合には,情報収集の必要性が存在することが前提となっている上,個人情報の取扱いも法令に従って合理的になされると考えられるからであると解されるところ,情報の収集について個別具体的な場面における情報の収集について定めた規定であればその趣旨は当てはまるが,一般人事行政に関する包括的な指揮監督権を定める規定又は事務分掌規定に基づく情報収集の必要性の有無及び取扱方法は,個々の事案によって大きく異なり得るから,かかる包括的な指揮監督権限の規定及び事務分掌規定を同項1号にいう「法令等」に含めることが,同条2項の趣旨に沿うのかも疑問である。 しかも,同条例71条3項は,人事,給与,服務,福利厚生その他の本市の職員に関する事務のために取り扱う個人情報については,同条例6条2項2号に基づき差別情報等を収集する場合には同条4項及び5項を適用しない旨定めている。包括的な指揮監督権に基づく差別情報等の収集が同条2項1号により可能なのであれば,あえて同項2号による差別情報等の収集を前提とした同条例71条3項のような規定を設ける必要性に乏しいから,同条例は,人事等の職員に関する事務のために取り扱う差別情報等は同条例6条2項2号により収集することを予定していると考えられ,したがって,一般人事行政に関する包括的な指揮監督権を定める規定又は事務分掌規定は,同項1号の「法令等」に含まれていないことを前提としていると解するのが合理的である。 とを予定していると考えられ,したがって,一般人事行政に関する包括的な指揮監督権を定める規定又は事務分掌規定は,同項1号の「法令等」に含まれていないことを前提としていると解するのが合理的である。 (ウ)以上によれば,同条例6条2項1号にいう「法令等」とは,情報の収集について個別具体的な場面における情報の収集について定め た規定を意味し,一般人事行政に関する包括的な指揮監督権を定める規定又は事務分掌規定は含まれないと解するのが相当である。 よって,本件調査による情報の収集は,同条例6条2項1号に該当しない。 ウ同条例6条2項2号に該当するか否か(ア)同号は,「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」は,同項本文が定める情報を例外的に収集することができる旨定めている。ここに「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」とは,事務の性質上,当該個人情報の収集が必要であり,当該個人情報を欠いてしまうと事務の遂行ができなくなる場合をいうと解される(甲47,乙41)。 (イ)本件調査の目的は,市民等の目に触れる可能性のある部分に入れ墨をしている職員の有無を把握し,当該部分に入れ墨をしている職員が市民等に接する機会の多い職務に従事している場合には,より市民等に接する機会の少ない職務を担当させるために,所属内の分担替えや配置替え,所属間異動などの人事配置を行うことであり,前述のとおり,人事上の配慮をより適切に行うために本件調査対象部位に関する本件入れ墨情報を調査する必要性はあったことは認められるが,交通局ではバスの運転手らに対して乗務前に毎回身だしなみの点検を行っており,職員が入れ墨をしていたことにより職務に支障が生じたことは認められないことからすると,人事上の配置に支障を来すことが必 が,交通局ではバスの運転手らに対して乗務前に毎回身だしなみの点検を行っており,職員が入れ墨をしていたことにより職務に支障が生じたことは認められないことからすると,人事上の配置に支障を来すことが必然であったとまでは認めることはできない。 (ウ)したがって,本件調査による差別情報等の収集は,事務の目的を達成するために必要不可欠であったとまで評価することはできないから,同号に該当しない。 エまとめ 以上によれば,本件調査により特定の職員が入れ墨をしているとの情報を含む本件入れ墨情報を収集することは,同条例6条2項に違反し違法であり,本件調査に回答することを命じる本件職務命令も,同項1号及び2号に該当しないにもかかわらず差別情報を収集することを目的とするものであるから,同項に反し違法である。 (4)その他アなお,原告は,本件調査が労働者の調査協力義務を一定の場合に限られるとした富士重工事件最高裁判決の趣旨に反し違法であると主張している。 イ同判決は,企業が企業秩序を維持確保するために企業秩序違反行為に関する事実関係の調査を実施する権限を有することを認めつつ,労働者は企業の一般的な支配に服するものではないから,他の労働者に対する指導監督ないし企業秩序の維持などを職責としない労働者については調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り,調査協力義務を負うことはないとしたものであるが,同判決は,労働基準法上の労働者について判断したものであるから,地方公務員の調査協力義務について直ちに妥当するものではない。 ウ地方公務員の調査協力義務の範囲については,地公法の解釈によって定まるべきものであるが,原告の上記主張はどの法令に反して違法であるのかも明確でなく,採用すること ちに妥当するものではない。 ウ地方公務員の調査協力義務の範囲については,地公法の解釈によって定まるべきものであるが,原告の上記主張はどの法令に反して違法であるのかも明確でなく,採用することはできない。 3 本件処分の違法性(1)前記2のとおり,本件職務命令は個人情報保護条例6条2項に反して違法であるから,原告が上記命令に違反して本件調査票を提出しなかったことを非違行為とする本件処分も違法であると解するのが相当である。 (2)これに対し,被告は,仮に本件職務命令が違法であり,取消しの原因となる瑕疵がある場合であっても,その瑕疵が重大かつ明白であって,客観的に無効であることが明らかな場合以外,地方公務員はこれに従う義務があるから,かかる義務に従わなかった場合には,懲戒処分の対象となると主張している。 かかる見解は,行政の統一性確保の要請を重視する見解であるが,仮に上記要請を考慮すべきとしても,本件職務命令は,各職員を名宛人とする非訓令的職務命令であり,職務命令の違法を争訟制度で争い得る者は当該職員以外になく,また,職員の権利とも関わることから,懲戒処分に処された職員は,当該懲戒処分の前提とする職務命令が違法であることを主張して懲戒処分の有効性を争うことができると解するのが相当である。 被告は,自己の見解の裏付けとして,最高裁平成15年1月17日判決(民集57巻1号1頁)を指摘しており,同判決は,違法な旅行命令に従った随行員については上司の職務命令に重大明白な瑕疵がない以上,服従義務があるので不当利得返還請求権の要件を満たさないとしたものであるが,住民訴訟の事案であり,職務命令の違法の主張を認めなければ当該職員の権利保障に欠けるという事案ではないから,事案を異にするというべきである。 (3)以上のと 要件を満たさないとしたものであるが,住民訴訟の事案であり,職務命令の違法の主張を認めなければ当該職員の権利保障に欠けるという事案ではないから,事案を異にするというべきである。 (3)以上のとおり,本件処分は,その余の点について判断するまでもなく違法であるから,取り消されるべきである。 4 損害賠償請求権の存否(1)原告は,ⅰ本件調査等,ⅱ本件調査後の違法な働きかけ,ⅲ本件処分及びⅳ本件任意調査によって精神的損害を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償請求をしている。 (2)ⅰについては,本件調査等は,特定の職員が入れ墨をしているとの 情報を含む本件入れ墨情報を収集することを目的とするものであり,特定の職員が入れ墨をしているとの情報は個人情報保護条例6条2項が規定する差別情報に該当し,例外的事由を定めた同項1号及び2号の要件を満たさないから,本件調査等は,同項に違反する違法な職務命令であるが,原告は入れ墨をしておらず,当該職員が入れ墨をしていないとの情報は,開示されることによって同人に対する差別の原因となるおそれが生じるものではなく,秘匿すべき情報でもないから,本件調査等によって,原告の人格的利益が侵害されたということはできない。 本件調査等により,原告が自己の見解に反する調査に応じるよう命じられたことにより,不快の念を抱いたということはできるが,これをもって国家賠償法1条1項の「損害」ということもできない。 (3)ⅱについては,原告はD所長などから執拗な働きかけを受け,強い心理的葛藤を生じるまでに追い込まれ,苦渋の選択として,D所長らに本件調査対象部位を視認させるに至った旨述べているが,原告自身は入れ墨をしていないのであるから,本件調査対象部位をD所長らに視認させることにより,損害賠償を認める まれ,苦渋の選択として,D所長らに本件調査対象部位を視認させるに至った旨述べているが,原告自身は入れ墨をしていないのであるから,本件調査対象部位をD所長らに視認させることにより,損害賠償を認めるほどの精神的苦痛を受けたとは認め難く,このことはD所長らが原告に対して本件調査に回答するよう求めるために初めて面談した5月8日にD所長らから視認させるよう求められてもいないのに,自ら入れ墨がないことを視認するよう求めたことからも明らかである。 その後に交通局から本件調査票を提出するよう求められたことについても,原告は既にD所長らに本件調査対象部位に入れ墨がないことを視認させているのであり,これに加えて,本件調査票に入れ墨がないことを記載するよう求められたことにより原告の人格的利益が侵害されたものと評価することはできない。 (4)ⅲについては,前記3のとおり,本件処分は原告が本件職務命令に 違反したことを非違事由とするものであるところ,本件職務命令は個人情報保護条例6条2項に反して違法であるから,本件処分も違法である。 しかし,本件処分が違法であるとはいえ戒告にとどまるものであり,本件処分を受けたことにより,昇給が2号俸減ぜられ,勤勉手当が0. 15月分減額されるとの不利益を受けたが,判決により本件処分が取り消されることで,上記不利益は回避され,原告の名誉も回復されることになるのであるから,本件処分を受けたことに対して,別個に慰謝料の支払を命ずるまでの必要はないと解するのが相当である。 (5)ⅳについては,本件任意調査はこれに回答するか否かは全くの任意であり,原告が本件任意調査票を提出しなかったことに対し,被告が何らかの対応をしたとの事情も窺われないから,本件任意調査が行われたことにより,原告が何らかの損害を被ったとの事実を認 否かは全くの任意であり,原告が本件任意調査票を提出しなかったことに対し,被告が何らかの対応をしたとの事情も窺われないから,本件任意調査が行われたことにより,原告が何らかの損害を被ったとの事実を認めるに足りる証拠はない。 (6)以上によれば,原告につき慰謝料の支払を命ずるまでの損害が生じたことを認めることはできないから,原告の被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は理由がない。 第4 結論以上によれば,原告の請求のうち,本件処分の取消しを求める訴えは理由があるから,これを認容することとし,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部裁判長裁判官中垣内健治 裁判官中島崇 裁判官佐々木隆憲

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