平成27年7月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第2630号求償金請求事件口頭弁論の終結の日平成27年6月23日判決東京都大田区<以下略>原告 A東京都大田区<以下略>原告 B原告ら法定代理人亡C相続財産管理人 A原告ら訴訟代理人弁護士松坂祐輔同小倉秀夫同桑 島 良太郎東京都新宿区<以下略>被告 D同訴訟代理人弁護士中 島 真紀子 主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告らそれぞれに対し,各367万5000円及びこれに対する平成14年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,亡Cの作成に係る絵画「娑」(以下「本件絵画」という。)の複製物であるリトグラフ及び陶板画を被告が作成したことが,本件絵画につ いて原告らが有する著作権の各準共有持分を侵害する旨主張して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,それぞれ367万5000円及びこれに対する不法行為後である平成14年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 本件では,本案前の争点として,「本件訴えは,訴訟係属中の先行訴訟において相殺の抗弁に供している自働債権を,別訴である本件訴訟において二重に行使するものとして,不適法であるか否か」が争われている。 1 前提事実(各項末尾に掲記した証拠等により容易に認定できる事実)(1) 原告A 供している自働債権を,別訴である本件訴訟において二重に行使するものとして,不適法であるか否か」が争われている。 1 前提事実(各項末尾に掲記した証拠等により容易に認定できる事実)(1) 原告A(以下「原告A」という。)は亡C(以下「亡C」という。)の妻であり,原告B(以下「原告B」という。)は亡Cの子である。亡Cは平成12年1月12日に死亡した。原告A及び原告Bは,東京家庭裁判所に対し,亡Cの限定承認をする旨の申述をし(平成12年(家)第52749号),同裁判所は,平成12年5月11日,同申述を受理するとともに,職権により,同日,亡Cの相続財産管理人として原告Aを選任する旨の審判をした。 (乙3,弁論の全趣旨)(2) 被告は,平成23年7月15日,東京地方裁判所に対し,原告らを含む5名を被告として,金銭の支払を求める訴訟(平成23年(ワ)第23544号求償金請求事件。以下「先行訴訟」という。)を提起した。 (乙3,弁論の全趣旨)(3) 原告らは,先行訴訟の第3回口頭弁論期日(平成25年11月7日)において,被告が本件絵画を原画とするリトグラフ及び陶板画の作成・販売により2750万円ないし2940万円の利益を上げたことを前提に,被告に対し,上記絵画に対して原告らが亡Cを限定承認したことにより取得した著作権の各準共有持分(各8分の1又は各32分の3)に相当する343万7500円又は257万8125円の不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有すると主張し,これらを自働債権とする相殺の抗弁 (以下「別件相殺の抗弁」という。)を提出した。 (甲1,乙3,乙5の1,2)(4) 原告らは,平成26年4月8日,先行訴訟において,被告に対する反訴(平成26年(ワ)第8618号求償金請求事件。以下「別件反訴」という という。)を提出した。 (甲1,乙3,乙5の1,2)(4) 原告らは,平成26年4月8日,先行訴訟において,被告に対する反訴(平成26年(ワ)第8618号求償金請求事件。以下「別件反訴」という。)を提起した。同反訴に係る当事者及び請求は本件訴えに係る請求と同一である。(甲6,乙3,弁論の全趣旨)(5) 東京地方裁判所は,平成26年8月28日,先行訴訟について,別件反訴を著しく訴訟手続を遅滞させるものであるとして却下するとともに,別件相殺の抗弁に係る自働債権のうち原告らそれぞれについて69万3984円ずつの不当利得返還請求債権の存在を認定した上で,その全額を先行訴訟の請求債権と相殺し,被告の原告らに対する請求を一部認容するなどの判決(以下「別件判決」という。)を言い渡した。 原告らほか1名が,同判決を不服として東京高等裁判所に控訴したところ(同年(ネ)第4978号各求償金請求控訴事件),同裁判所は,平成27年4月8日,原告らほか1名の各控訴をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。 原告らは同判決を不服として,同月17日ころ,最高裁判所に上告(同年(ネオ)第261号)及び上告受理申立て(同年(ネ受)第297号)をした。同上告事件及び上告受理申立事件は,同年6月23日(本件の口頭弁論終結日)の時点において,なお係属中である。 (乙3,4,6ないし8,弁論の全趣旨)(6) 原告らは,平成27年2月2日,本件訴えを提起した。本件において,原告らは,被告が本件絵画を原画とするリトグラフ及び陶板画の作成・販売により2940万円の利益を上げたことを前提に,被告に対し,上記絵画に対して原告らが亡Cを限定承認したことにより取得した著作権の各準共有持分(各8分の1)に相当する各367万5000円の不法行為に基づく損害賠償請求権を有すると主張 とを前提に,被告に対し,上記絵画に対して原告らが亡Cを限定承認したことにより取得した著作権の各準共有持分(各8分の1)に相当する各367万5000円の不法行為に基づく損害賠償請求権を有すると主張している。 (当裁判所に顕著な事実) 2 本案前の争点に関する当事者の主張[被告の主張]原告らは,先行訴訟において,本件訴訟における請求債権と同一の損害を内容とする不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を自働債権とする別件相殺の抗弁を提出している。原告らはあたかも別件判決の主張整理が誤っているかのごとく述べるが,別件判決における主張整理は正しい。 したがって,本件訴えは二重起訴に当たるものであって,訴訟要件を欠くから,却下されるべきである。 [原告らの主張]原告らは,先行訴訟の第7回口頭弁論期日において,別件反訴に係る反訴状を陳述するとともに別件相殺の抗弁を口頭で撤回したから,先行訴訟において,本件訴えに係る請求債権を相殺の抗弁の自働債権に供してはいない。 原告らが別件相殺の抗弁を口頭で撤回したことは,①別件判決が別件反訴を著しく訴訟手続を遅滞させるものとして却下しており,二重起訴の禁止に違反するとは判示していないこと,②別件判決中に,別件相殺の抗弁に係る原告らの相殺の意思表示の事実摘示に続いて「(当裁判所に顕著である。)」との記載があることからも,裏付けられる。 それにもかかわらず,別件判決は,口頭弁論調書にも当事者である原告らの訴訟行為にも基づかず,審理の対象となっていない事項について違法な認定を行ったものである。 したがって,本件訴えは二重起訴に当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 民事訴訟法(以下「法」という。)142条は,「裁判所に係属する事件については,当事者は,更に訴えを提起す たものである。 したがって,本件訴えは二重起訴に当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 民事訴訟法(以下「法」という。)142条は,「裁判所に係属する事件については,当事者は,更に訴えを提起することができない。」と定めるところ, 審理の重複による無駄を避け,互いに矛盾した判断がされるのを防止するために重複起訴を禁止したという同条の趣旨に照らせば,係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を提出することは許されないと解すべきである(最高裁平成3年12月17日第三小法廷判決・民集45巻9号1435頁参照)。 そして,上記の理は,係属中の別訴において提出した相殺の抗弁に係る自働債権を他の訴訟において請求する場合にも等しく妥当するから,このような訴訟の提起も,法142条の法意に照らして許されないと解すべきである。 2 これを本件についてみると,原告らは,前記第2の1(3)のとおり,係属中の先行訴訟において,被告が本件絵画のリトグラフ及び陶板画の販売によって得た著作権料のうち原告らの著作権準共有持分に相当する金額の不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有すると主張して,これを自働債権として別件相殺の抗弁を提出し,他方,本件訴えにおいては,前記第2の1(6)のとおり,被告が本件絵画のリトグラフ及び陶板画の販売によって得た著作権料のうち原告らの著作権準共有持分に相当する金額の不法行為に基づく損害賠償金及びその遅延損害金の支払を求めている。そうすると,別件相殺の抗弁と本件訴えとは,いずれも権利関係の基礎となる社会生活関係及び主要な法律要件事実において共通する同一の事件に係るものというべきであるから,法142条を類推適用して,本件訴えを不適法として却下すべきである。 3 これに対 も権利関係の基礎となる社会生活関係及び主要な法律要件事実において共通する同一の事件に係るものというべきであるから,法142条を類推適用して,本件訴えを不適法として却下すべきである。 3 これに対し,原告らは,先行訴訟において相殺の抗弁を口頭で撤回したと主張し,これを裏付ける事情として,①別件判決が別件反訴を著しく訴訟手続を遅滞させるものとして却下しており,二重起訴の禁止に違反するとは判示していないこと,②別件判決中に,別件相殺の抗弁に係る原告らの相殺の意思表示の事実摘示に続いて「(当裁判所に顕著である。)」との記載があることを指摘する。 原告らの上記主張の趣旨は明確ではないが,これを善解しても,原告の主張 を裏付けるものとはいえない。すなわち,上記①については,別件判決が別件反訴を著しく訴訟手続を遅滞させるものとして却下したからといって,別件反訴が二重起訴に当たらないという判断を別件判決が示したことにはならない。 また,上記②についても,別件判決が,別件相殺の抗弁事実が主張されたことを前提として,その事実を裁判所に顕著な事実として認定したことは,何ら別件相殺の抗弁が撤回されたことを裏付けるものといえない。 したがって,原告らの指摘はいずれも失当というほかなく,他に原告らが先行訴訟において別件相殺の抗弁を撤回したことを認めるに足る事情は見当たらない。かえって,原告らが別件相殺の抗弁を口頭で撤回したと主張する先行訴訟の第7回口頭弁論調書にこれをうかがわせる記載が全くないこと(甲5),原告らが,別件判決に対して控訴しながら,別件判決が別件相殺の抗弁を認めた点については控訴理由としなかった旨自認していること(なお,原告らは,不服の利益がないから控訴理由としなかったなどと弁解するが,予備的抗弁を容れて請求を一部棄却したことについて不 相殺の抗弁を認めた点については控訴理由としなかった旨自認していること(なお,原告らは,不服の利益がないから控訴理由としなかったなどと弁解するが,予備的抗弁を容れて請求を一部棄却したことについて不服があれば,(同判決の被告らである)原告らがこれを控訴理由とできることは明らかである。)などに鑑みると,原告らは先行訴訟の口頭弁論終結時においても別件相殺の抗弁を維持していたものと認めるのが相当である。したがって,原告らの主張は採用の限りでない。 4 以上のとおり,本件訴えはいずれも不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官廣瀬達人
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