- 1 -21く445東京高裁平成21・9・15316条の20第1項原決定取消し 主文 原決定を取り消す。検察官に対し,司法警察員A 作成の平成21 年2 月12 付け殺人被疑事件被害者の病状等に関する報告書(B の住居の記載を除く。)のうち検察官が開示しなかった部分(2 枚目11 行目から18 行目の「平成」の前まで,3 枚目8 行目から4 枚目6 行目まで,4 枚目8 行目から21行目まで)及びC の司法警察員に対する平成21 年2 月14 日付け供述調書(C の住居及び電話番号の記載を除く。)のうち検察官が開示しなかった部分(2枚目2 行目から16行目まで,3枚目2 行目から8 行目まで,4 枚目4 行目から13 行目まで) を開示することを命じる。 理由 本件即時抗告の趣意は,主任弁護人D 及び弁護人E 連名作成の即時抗告申立書に記載されたとおりであるから,これを引用する。論旨は,要するに,弁護人は,①司法警察員A 作成の平成21 年2 月12 日付け殺人被疑事件被害者の病状等に関する報告書及び② C の司法警察員に対する平成21 年2 月14 日付け供述調書(以下,①を「本件報告書」,②を「本件供述調書」,両者を合わせて「本件報告書等」という。) (B らの住居等純粋な個人情報に関する部分を除く。)のうち検察官が開示しなかった主文掲記の部分(以下「不開示部分」という。)につき,刑訴法316 条の26 第1 項により開示を命じるよう裁定を請求したのに,開示は相当とはいえないとして,これを棄却した原決定は誤っているから,これを取り消し,本件報告書等の不開示部分の開示を命じる裁判を求める,というのである。そこで記録及び当審における事実取調べの結果に基づき検討すると,本件公訴事実の要旨は,被告人が,妻の頸部を強く締め付けて殺害し ,本件報告書等の不開示部分の開示を命じる裁判を求める,というのである。そこで記録及び当審における事実取調べの結果に基づき検討すると,本件公訴事実の要旨は,被告人が,妻の頸部を強く締め付けて殺害した,というものである。弁護人は,公判前整理手続において,公訴事実を争わず,被告人の犯行に至る経緯,特に動機を形成するに至る事情として,被告人と被害者の関係,生活状況,被害者の精神状態,言動等を主張,立証する予定である,としている。そして,この予定主張に関連する証拠として本件報告書等の開示を求めた。 本件報告書は,被害者が平成16 年まで,F 診療所において精神科医であるC 医師らに受診していた状況等について,同医師の父親である同診療所院長B から警察官が聴取した結果を報告するものであり,また,本件供述調書は,被害者が平成16 年以降,G クリニックにおいて前記のC 医師に受診していた状況等について,同医師の供述を録取したものである。不開示部分には被害者に対する診察時の問診内内容やその際の被害者の言動等が記載されている。本件においては,被害者が死亡していることも考えると,被告人と被害者の関係,生活状況,被害者の精神状態,言動等を立証する上で,精神科医の被害者に対する問診内容やその際の被害者の言動は,被告人の供述と並んで重要であるというべきである。本件報告書等の不開示部分は,弁護人の予定主張と関連性を有することが認められる。そして,弁護人の予定主張が情状事実に関するものであること,検察官が弁護人の主張を積極的に争う予定では- 2 -ないこと,弁護人が立証として被告人質問を予定するほか多数の書証を請求していることを考えても,開示の必要性が小さいとはいい難い。他方,本件報告書等の不開示部分には,精神科医による問診内容として,被害者の生活歴や病状等の として被告人質問を予定するほか多数の書証を請求していることを考えても,開示の必要性が小さいとはいい難い。他方,本件報告書等の不開示部分には,精神科医による問診内容として,被害者の生活歴や病状等のプライバシーや名誉に関する事項が記載されており,これを開示することにより,被害者のプライバシーや名誉が侵害されるおそれがある。さらに,原決定が指摘するように,精神科医による問診内容がみだりに公開されることとなれば,精神科医による問診が困難になったり,そのことを危倶する精神科医が捜査に協力することをちゅうちょするおそれのあることも否定し得ない。しかしながら,本件報告書等に記載されている具体的な内容のほか,簡略で問診の概要を示すにとどまる記載の仕方等にかんがみると,本件報告書等に関する限り,これが開示されることにより生じる被害者のプライバシーや名誉に対する侵害する弊害の程度は高くないし,精神科医による捜査への協力一般の支障,ひいては,精神科医による問診行為一般への支障の弊害もその程度は相当低いものと考えられる。そうすると,本件報告書等の不開示部分については,開示するのが相当であると考えられ,本件裁定請求を棄却した原決定は正当とはいえない。論旨は理由がある。 よって,刑訴法426 条2 項により原決定を取り消して,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官・阿部文洋,裁判官・堀田眞哉,裁判官・野原俊郎)
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