主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は同補助参加人に対し,3億9785万1224円を請求せよ。 第2 事案の概要本件は,被告補助参加人Aが山中湖村長として東京電力株式会社との間で締結した別紙物件目録記載の土地の売買契約について,山中湖村の住民である原告が,同売買契約は①農地法違反であること,②同土地に存在する入会権又は使用貸借類似の無名契約に基づく耕作権を侵害するものであること,③地方自治法238条の4第1項違反であることから,その目的である多目的交流広場の建設ができず,これにより山中湖村は売買代金相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,被告補助参加人Aに損害賠償として3億9785万1224円の請求をすることを被告山中湖村長に対し求めた事案である。 1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(以下「争いのない事実等」という。)(1) 原告は山中湖村の住民である。 (2) 被告補助参加人A(以下「参加人」という。)は,山中湖村の村長である。 (3) 山中湖村は,明治時代の町村合併の際,旧平野村,旧長池村,旧山中村が合併して中野村になり,戦後,山中湖村と改称された。 別紙第1ないし第3物件目録記載の土地(以下これらを合わせて「本件土地」といい,それぞれの土地を表す場合には「本件第1土地」などといい,各個別の土地を「土地1,土地2」などという。)は,いずれも旧○○村,現在のα区に所在している。 (4) 山中湖村は,本件土地内に多目的交流広場である「山中湖村総合湖畔緑地公園」の建設を計画し(以下「本件事業」という。),参加人は山中湖村長として,平成1 ,現在のα区に所在している。 (4) 山中湖村は,本件土地内に多目的交流広場である「山中湖村総合湖畔緑地公園」の建設を計画し(以下「本件事業」という。),参加人は山中湖村長として,平成12年11月29日,東京電力株式会社(以下「東京電力」という。なお,以下に述べる東京電燈株式会社(以下「東京電燈」という。)は日本発送電株式会社(以下「日本発送電」という。)の前身であり,日本発送電は東京電力の前身である。)との間で,本件土地について,山中湖村が,発電用水の貯留及び洪水時の一時湛水を目的とした湛水地役権を東京電力のために設定の上買い受けること,本件土地を土地収用法3条に定める用途など公共の利益及び地域振興に資することを目的に利用することなどの基本協定を締結し,同協定に基づき,以下のとおり土地売買契約を締結し,地役権を設定した(乙6,乙7の1ないし5,11の1ないし46。以下「本件売買契約」「本件地役権設定」という。)。 ア売買契約(ア) 契約締結日平成12年12月18日代金 1億1371万3000円目的物土地8ないし42(イ) 契約締結日平成13年3月26日代金 1億0478万5206円目的物土地1ないし7(ウ) 契約締結日平成13年6月20日代金 1億7935万3018円目的物土地43ないし46イ地役権設定(ア) 土地8ないし42登記平成12年12月26日設定日同月18日目的発電用水の貯留及び洪水時の一時湛水 イ地役権設定(ア) 土地8ないし42登記平成12年12月26日設定日同月18日目的発電用水の貯留及び洪水時の一時湛水範囲全部要役地南都留郡β1465番1(イ) 土地1ないし7登記平成13年3月29日設定日同月26日目的,範囲,要役地は上記(ア)と同じ(ウ) 土地43ないし46登記平成13年6月29日設定日同月20日目的,範囲,要役地は上記(ア)と同じ(5) 原告は,平成14年1月15日,山中湖村監査委員に対し,本件事業についての予算措置の中止等を求めて監査請求をし,同月23日受理された(甲3)。 山中湖村監査委員は,同年3月18日,上記監査請求を棄却した。 2 争点及び当事者の主張(1) 訴えの適法性についてア被告の主張原告は当初,本件売買契約の違法確認を求める請求と売買代金支払の差止めを求める請求をしており,後にこれを変更しているが,違法確認を求める部分は地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項2号により求めることができず,代金支払の差止めを求める部分は原告の監査請求が受理された時点で全額支払済みであり訴えの利益がなく,いずれも不適法として却下すべきであったのだから,訴え変更がなされたとしても本件訴えが適法になることはなく訴えを却下すべきである。 イ原告の反論(ア) 本件訴訟においては,差止請求を提起したところ,被告により差止めを求めた行為が既になされていたことが明らかになったことから,法242条の2第1項4号に基づく請求に訴え変更したも 反論(ア) 本件訴訟においては,差止請求を提起したところ,被告により差止めを求めた行為が既になされていたことが明らかになったことから,法242条の2第1項4号に基づく請求に訴え変更したものであり本件訴えは適法である。 (イ) 住民訴訟の対象となる行為は,監査請求に係る行為から派生し,あるいはこれを前提として後続することが必然的に予想されるすべての行為に及ぶから,原告が差止めを求める監査請求をしている以上,これがなされたことを対象として追加された法242条の2第1項4号に基づく請求は監査請求を経ているというべきである。 また,追加的に提起された新訴と旧訴との間に,争点が共通であること,訴訟として密接不可分の関係にあることなど特段の関係がある場合には旧訴の提起の時に新訴の提起があったものとみなされるから,住民監査の結果の通知があった日から30日以内に提起しなければならないとの出訴期間(法242条の2第2項1号)の制限にも抵触しない。 (2) 本件売買契約締結は違法又は無効であり,これにより山中湖村が損害を被ったか否かア原告の主張本件売買契約締結は,以下のとおり無効であり,また本件土地について入会権等を主張されることにより本件事業の目的を達成することができず,山中湖村は参加人の行為により無駄に予算を費やしたのであるから,参加人に対し売買代金相当額の損害賠償請求権を有している。 (ア) 農地法違反について本件売買契約は農地法の手続が履践されておらず無効である。 (イ) 本件土地に本件売買契約によって侵害される入会権等が存在するか否かについてa 本件第1,第3土地については従前よりα区住民の入会権が,土地8ないし42の土地については同人らの入会権又は同人ら 土地に本件売買契約によって侵害される入会権等が存在するか否かについてa 本件第1,第3土地については従前よりα区住民の入会権が,土地8ないし42の土地については同人らの入会権又は同人らと東京電力との間の使用貸借類似の無名契約が存在しており,山中湖村はこれを無視する形での使用はできないところ,本件事業は上記権利に基づく耕作使用と相容れないものであり,本件売買契約はその目的を達成することができない。 本件土地は,往古からγ部落民による採草放牧を主体とした入会慣行が継続して行われており,これは東京電燈に売却後も変わることなく,戦後もγ部落の管理統制のもと,継続して水田耕作やそば栽培地として利用されてきたことは明らかであり,かかる経緯は入会権の存在を証明するものである。さらに,これらの利用形態の決定,管理,運営,処分等については,常にγ部落集団の統制機関であるα区の会議決定及び5つの組組織の常会役員の手続により取り仕切られてきたこと,部落構成員(入会構成員)の使用収益権の得喪と譲渡規制が取り決められていることは,入会権が存続している証拠である。γ部落民は,部落民居住地と湖をつなぐ漁業や農業等の生活上の必需地帯である生活権益の場を永久に放棄するのであれば,本件土地の売買に応じるはずがなく,発電事業という社会公共事業への協力のため,東京電燈は一時湛水地以外の使用をしないとの合意の上売買に応じたのである。 被告らは本件土地の登記簿上の所有名義の変遷を理由として入会権の消滅を主張するが,入会権は地盤所有権に左右されない権利であり,入会地の地盤所有権に変動があっても,そのことのみによっては入会権は消滅せず,集団的入会利用が継続する限り入会権は存続する。 b 入会権は入会権者全員が同意しない限り放棄されるこ 利であり,入会地の地盤所有権に変動があっても,そのことのみによっては入会権は消滅せず,集団的入会利用が継続する限り入会権は存続する。 b 入会権は入会権者全員が同意しない限り放棄されることはないから,α区長が放棄したとしても入会権が消滅することはない。 c 本件各土地について(a) α区には入会権の主体であるγ部落が存在しているが,γ部落(α区とは昭和40年代ころまでは実質的に重なり合っていたが,その後γ入会組合としてα区から独立し入会地の管理を行っている。)は,単独入会地,旧平野村,旧長池村,旧山中村の三ケ村入会地,富士山北面一一ケ村入会地に対し入会権を持っている。本件土地は,いずれも山中湖岸にある土地であり,ほかのγ部落単独入会地と同様,江戸時代には天領に属し,地盤の保有がすなわち入会であって,ごくわずかな山税が課せられているだけで,γ部落が独自にその使用・収益について決定・変更していた。 ところが,明治時代の地租改正で官有地編入という動きが出る中で,本件第1,第3土地について紛争が生じ,大正5年には,上記土地は便宜上中野村持ち地となったものの,γ部落の権利者が入会権を有し採草地として利用していた。さらに,上記土地は,大正8年1月,所有名義がα区の住民92名の共有となったが,γ部落が従前通り入会地として利用していた。 東京電燈は,大正時代,山中湖を自らの電力事業に用いる計画を立てたが,そのため山中湖に水門を設けると,増水時に山中湖岸のγ部落の住民が利用している土地が浸水することが予想されたため,浸水時の損害補償を避ける目的でこれらの土地を湛水地として利用するため買収することとした。東京電燈は,上記土地を買収する際,γ部落の土地の名義人に対し,電力事業のため取得するだけ が予想されたため,浸水時の損害補償を避ける目的でこれらの土地を湛水地として利用するため買収することとした。東京電燈は,上記土地を買収する際,γ部落の土地の名義人に対し,電力事業のため取得するだけだから耕作等で利用しているそのままの形態で永久に使用していてかまわないが,その代わり今後浸水被害が発生した場合にも補償はしない旨持ちかけた。γ部落は,採草地として従来通り利用できるのであれば,租税等の負担をしなくてよいので,特に共有として名義を保有する必要がないと判断した。そこで,上記土地は,大正15年当時92名の共有名義であったが,まず東京電燈の意向を受けて買い付けに動いていたBに所有権を移転した上で,東京電燈に所有権を移転した。このように,上記土地の利用についてはγ部落と東京電燈との間で合意ができており,γ部落は入会権を放棄しておらず,上記所有権移転後もγ部落によって従前通り採草地として利用されていた。なお,東京電燈及び日本発送電が,γ部落の上記土地の利用について干渉したことはなく,東京電燈及び日本発送電とγ部落との間で,その使用関係について契約書等が作成されたことは戦後に至るまでの間なかった。昭和21年10月21日,自作農特別措置法が制定され,上記土地が農地買収の対象になる可能性が出てきたことから,日本発送電は,上記土地が電力湛水地であり農地ではないとの形式を整えるため,永久に今まで同様に使用できるからいいではないかとγ部落を説得し,α区長をγ部落の住民の代表として,同人名義で土地使用貸借契約を締結したが,その実体は土地買収時の東京電燈と地権者との間の合意である永久かつ自由な利用を,形式上期間を区切った契約の形にしただけであった。 (b) また,以下の事実は,いずれも上記土地についてγ部落が団体的統制の下,管理・収益してき 者との間の合意である永久かつ自由な利用を,形式上期間を区切った契約の形にしただけであった。 (b) また,以下の事実は,いずれも上記土地についてγ部落が団体的統制の下,管理・収益してきたこと,上記土地に入会権が存在することを明らかに示すものである。 ① γ部落(名義上はα区)が,昭和23年9月11日,γ部落の土地所有格差を平和裏に調整するため,2反部以上の土地所有者は土地の利用を遠慮すること,他の地域に転出する際には利用権を放棄して権利主張をしないことを決議し,その通り実行している。 ② 昭和24年5月21日,γ部落から中野村を介して日本発送電に対し,水田灌漑用として中野村名義で水利使用の許可申請が出され,同年11月21日にγ部落から中野村を介して山梨県に対し水利使用の許可申請がされ,昭和25年5月23日,山梨県知事から中野村に対し山中湖水利使用許可が出された。 ③ 同年9月19日,α区の住民から山梨県知事に対し土地改良区設立の申請がされ,同年12月6日に認可された(その利用主体はγ部落であった。)。 ④ 昭和49年2月,東京電力が,農業地域の整備に関する法律8条に基づく山中湖農業振興地域整備計画について,上記土地は,発電所湛水地及びその予定地であり電気事業運営上の危険性・特殊性があるとして山中湖村村長に異議申立てをしたが,同年3月22日,山中湖村村長が,本件土地1は東京電力が発電用湛水事業用地として農地改革当時山梨県の認可を受け指定されている土地であるが,湛水目的に支障を及ぼさない限り,農耕目的に供することについて異存なく現に賃貸借契約に基づき地域農民が使用収益を行っており,地域内でも有用農地とみなされ農用地区に含めるのが相当であるとして異議申立てを却下する旨の決定を ない限り,農耕目的に供することについて異存なく現に賃貸借契約に基づき地域農民が使用収益を行っており,地域内でも有用農地とみなされ農用地区に含めるのが相当であるとして異議申立てを却下する旨の決定をした。 ⑤ 土地改良区が設立された後は,γ部落の個人が特定の土地を耕作して収益するという形態が続いていたが,昭和50年代に入り減反政策により転作奨励金が出るようになると,特定の土地を耕作していた者が転作奨励金を取得することがγ部落内で問題となり,昭和58年1月,山中湖村農業委員会が認める農業適格者と共同利用・共同耕作することとなり,転作奨励金はγ部落において取得配分するようになった。 (c) 本件第2土地は,もともと一部はγ部落の入会地であり,一部は江戸時代からの請地であったが,明治時代,分け地にしてγ部落の各個人の所有名義に移転したものであり(旧割),以後各個人がこれを利用・収益してきたが,本件第1,第3土地と同様の理由により,所有権移転後も従前通り各分け地の耕作者が自由かつ永久に使用できるとの条件で東京電燈が各個人から買い受けたものである。戦後,本件第2土地は,農家の次男,三男に耕作させるため共同耕作地となったが,本件第1,第3土地と同様の理由により,東京電力とγ部落(契約の名義人はα区長)との間で土地使用貸借契約が締結され,同土地と同様の経緯で近年はそばを栽培しており,転作奨励金については平成12年までγ部落において取得配分してきた。このように,本件第2土地はもともと入会権が存在し,その後旧割によって特定個人の所有・耕作が認められるようになったものの,その後の転作奨励金の配分にみるようにγ部落の共同収受が復活しており,入会権が存在するというべきである。 仮に,本件第2土地について入会権が認められな 作が認められるようになったものの,その後の転作奨励金の配分にみるようにγ部落の共同収受が復活しており,入会権が存在するというべきである。 仮に,本件第2土地について入会権が認められないとしても,東京電力との売買契約締結当時,浸水被害が生じても補償をしない代わりに所有権移転後も従前通り永久かつ自由に耕作に使用できる旨の使用貸借類似の無名契約が成立しており,山中湖村もかかる制限を受ける。 (ウ) 法238条の4第1項違反について本件土地は,土地収用法3条に規定される用途など,公共の利益を目的とした山中湖村総合湖畔緑地公園用地,広場用地,公園用地,公共用施設用地,サイクリングロード側広場等としてそれぞれ公共用に供することを決定し購入した財産であり,行政財産(法238条4項)であるところ,売主である東京電力と山中湖村との間の地役権設定契約は,行政財産に私権を設定するものである上,浸水等による損害を事前に放棄するというものであり,行政財産の効用を著しく減少する内容のもので法238条の4第1項に違反するから無効であり,地役権設定契約が条件である本件売買契約も無効である。 イ被告の主張(ア) 農地法違反について本件第1,第3土地については,都市計画事業の許可を受けた土地収用法当該事業用地として取得し,農地法5条1項4号,同法施行規則7条1項6号,土地収用法3条1項1号,32号に基づき土地収用法当該事業としての公共の用(道路敷地,公園用地)に供する要件を備えているので農地法5条の転用許可は不要である。 また,本件第2土地についても,土地収用法当該事業としての公共の用(道路敷地,防災避難所,花壇のある広場)に供する要件を備えているので農地法の許可は不要である。 なお ある。 また,本件第2土地についても,土地収用法当該事業としての公共の用(道路敷地,防災避難所,花壇のある広場)に供する要件を備えているので農地法の許可は不要である。 なお,土地1外8筆の土地については,山中湖農業振興地域に指定されていたが,平成12年8月8日,本件事業用地に供するため農用地から除外され,山梨県知事もこれに同意している。 (イ) 本件土地に本件売買契約によって侵害される入会権等が存在するか否かについてa 入会権は,民法施行以前から存在する入会慣行を前提とした集団的権利であり,排他的かつ直接に土地を支配する権利であるところ,登記することができないから入会慣行の存在及びその内容について登記に代わる公示方法が確立していなければならないし,入会組合等による団体的統制に服していなければならない。この点,原告は入会権があると主張するのみで客観的証拠を何ら提出していない。 b 本件土地は,日本発送電が桂川流域の各発電所の出力増強の目的をもって取得し所有していた土地であり,山中湖の水位調整のために供せられ時として水没することもある土地であった。日本発送電は,旧中野村α区との間で,昭和22年8月27日,本件土地を日本発送電の水位調整に供する目的に反しない範囲において,α区が農耕地として使用することを許す使用貸借契約を締結した(期間は5年間)。上記使用貸借契約は,東京電力とα区との間で,昭和29年7月12日,昭和36年9月25日,昭和42年5月31日,昭和53年3月31日,昭和63年3月31日にそれぞれ更新された。 したがって,α区の住民がα区から事実上借り受けて本件土地の一部を耕作していたとしても使用貸借にすぎない。 c 原告が主張するγ部落の入会集団であるγ入会 それぞれ更新された。 したがって,α区の住民がα区から事実上借り受けて本件土地の一部を耕作していたとしても使用貸借にすぎない。 c 原告が主張するγ部落の入会集団であるγ入会組合(代表者組合長C)は,現在同組合が権利行使している入会地は,①δ峠からε峠の間の県有地及び②北富士演習場であり,本件土地は同組合が権利行使している入会地ではないことを証明しており,東京電力の所有地を耕作管理していたα区民は,D(当庁平成14年(ワ)第352号事件で係争中)を除いて全員土地を返し,山中湖村総合湖畔緑地公園化構想に協力する姿勢を示しており,誰も入会権があるなどと主張するものはいない。 d 本件各土地について(a) 土地2ないし4,7は,もと土地43の一部であった。土地43は,大正5年10月18日中野村名義で登記され,同年10月28日E外3名に売り渡された(4名共有)。これは,大正5年8月24日に中野村議会において,もとγ組所有であった当該土地を含む全99筆の土地を,α簡易水道施設建設資金に充てるため,一旦中野村名義で寄付受入れとし,α区民4名に売却することを決議し,その売却代金をもって水道施設の建設資金に充てたものである。したがって,仮に入会権なるものが存在したとしても,入会集団が有していた入会権は個人に売却された時点で放棄され,完全に消滅したものである。 さらに,土地43は,大正8年1月30日F外91名に売り渡されているが,これは92名による共有であり,入会権が復活したわけではない。そして,大正15年5月31日東京電燈は上記92名の共有者(相続人を含む)から,土地43を買い受けたが,これは桂川流域の各発電所の出力増強の目的をもって本件土地を含む山中湖岸周辺の土地を取得したもので,これらの 15年5月31日東京電燈は上記92名の共有者(相続人を含む)から,土地43を買い受けたが,これは桂川流域の各発電所の出力増強の目的をもって本件土地を含む山中湖岸周辺の土地を取得したもので,これらの土地は山中湖の水位調整のため時として水没することもある土地であったから,東京電燈又は日本発送電がかかる湛水地を無償でα区民に耕作させることを許容したとしても,それは東京電燈又は日本発送電が治水上差し支えない限度において恩恵的にα区民に貸し付けたものであり,入会権がγ部落民全員に存在することを前提として貸し付けたものではない。 なお,甲14は,土地43について,東京電力,α区及び帰農組合が,中野村農地委員会の買収決定について争いをしたことを示す証拠にはなっても入会権の存在を立証する証拠にはならないし,帰農組合の代表者はα区民であるGであったこと(甲12)からすれば,土地43が入会地として団体的に統制されていたとも認められない。 (b) 土地5は,もと土地44の一部であった。土地44は,土地43と同様,大正5年10月18日中野村名義で登記され,α簡易水道施設建設資金に充てるため,同月28日E外3名に売り渡された(4名共有)。その後,大正7年12月27日Hに,大正15年5月1日Bに,昭和2年9月12日東京電燈にそれぞれ売り渡され移転登記がなされたのであるから,入会地ではない。 (c) 土地1は,明治41年7月29日I名義の登記がなされており,当初から個人所有地であり入会地ではなかった。その後,明治41年10月1日Jに,大正4年3月8日K外6名に,大正7年4月6日Lに,大正15年7月17日Bに,昭和2年6月29日東京電燈にそれぞれ売り渡され移転登記がなされたものである。 (d) 土地6は,大正8年5月 大正4年3月8日K外6名に,大正7年4月6日Lに,大正15年7月17日Bに,昭和2年6月29日東京電燈にそれぞれ売り渡され移転登記がなされたものである。 (d) 土地6は,大正8年5月15日M名義の登記がなされており,当初から個人所有地であり入会地ではなく,その後,昭和2年12月21日Bに,同年12月21日東京電燈にそれぞれ売り渡され移転登記がなされたものである。 (e) 本件第2土地のうち,当初から個人所有であるもの(下記(f)記載の土地以外のもの)は,集団的権利である入会地であるはずがなく,分け地(入会地の一形態である旧割)としてα区の各個人名義にしたことを裏付ける証拠もなく,その後,大正15年Bに,昭和2年東京電燈にそれぞれ売り渡され移転登記がなされたものである。 (f) 土地16は,大正5年10月18日中野村名義で登記され,α簡易水道施設建設資金に充てるため,同月28日E外3名に売り渡された(4名共有)。同様に,土地20,21は,中野村からNに,土地27は,中野村からOにそれぞれ売り渡され,水道施設の建設資金に充てられた。 (ウ) 法238条の4第1項違反について本件売買契約は,東京電力が山中湖村に対し,大堀川北側に存在する一団の土地(本件第1,第3土地)及び点在する土地(本件第2土地)を,発電用水の貯留及び洪水時の一時湛水を目的とした湛水地役権を設定の上譲渡することを東京電力,山中湖村,α区で同意したこと(平成12年11月29日付け基本協定書(乙6)第2条)を前提とした湛水地役権付土地売買契約であって,山中湖村ではそれであっても山中湖村総合湖畔緑地公園事業の実現という行政目的は十分達成できると判断していた。ところで,法238条の4第1項は,既に行政財産として指定を受け,地 土地売買契約であって,山中湖村ではそれであっても山中湖村総合湖畔緑地公園事業の実現という行政目的は十分達成できると判断していた。ところで,法238条の4第1項は,既に行政財産として指定を受け,地方公共団体がある特定の公用又は公共用目的の達成のために現実に利用されている行政財産について,その適正な管理を期するため,民事法上の契約によってこれを貸し付けたり,その他私権を設定することは,同条2項に定める例外を除いて原則として認めないことにしたものである。 本件においては,東京電力の湛水地役権の設定を認めなければ東京電力が本件土地を山中湖村に売却することはなかったこと,本件土地が浸水する可能性はほとんどないことなどに照らし,本件土地売買契約の締結により湖畔緑地公園事業の実現という行政目的を十分達成できるとの総合的な行政判断のもとに本件土地を購入したものであるから,本件地役権設定は本件土地が行政財産になる以前の問題であり,法238条の4第1項の適用を受ける余地はない。 第3 当裁判所の判断 1 訴えの適法性(争点(1))について(1) 上記争いのない事実等に,証拠(甲3,4,乙2の1ないし3)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,平成14年1月23日,山中湖村監査委員に対し,本件事業は,百数十名の耕作権者の耕作権等を侵害するものであり,民法,地方自治法,農地法等に違反するとして,本件事業に関する平成13年度の予算の支出,平成14年度の予算計上の差止め,耕作停止命令の撤回,本件事業の中止を求める請求を行った。 イ山中湖村監査委員は,同年3月18日,本件土地は,東京電力とα区との使用貸借契約に基づきα区住民が耕作してきたものであり,同契約は同年3月31日,期間満了により終了するから本件事 った。 イ山中湖村監査委員は,同年3月18日,本件土地は,東京電力とα区との使用貸借契約に基づきα区住民が耕作してきたものであり,同契約は同年3月31日,期間満了により終了するから本件事業の支障とならず,農地法違反の点についても同法5条1項4号により処理されており違法がないとの判断をして,上記原告の請求を棄却した。 ウ原告は,同年4月15日,法242条の2第1項2号に基づき本件売買契約の違法確認を,法242条の2第1項1号に基づき本件売買契約に基づく代金支払及び本件事業についての予算措置の差止めを求めて本件訴えを提起した。 エ本件売買契約に基づく代金が平成13年6月21日までに全額支払済みであったことを受けて,原告は,平成14年10月8日の第3回口頭弁論期日において,上記請求をすべて取り下げ,法242条の2第1項4号に基づく請求に訴え変更を行った。そして,平成15年2月18日の第6回口頭弁論期日において,原告は変更後の請求の趣旨を上記「第1 請求」のとおり改め,被告は訴状記載の請求の趣旨の取下に同意した。 (2) 上記認定事実を前提に本件訴えの適法性について判断する。まず,法242条の2第1項1号に基づく差止め請求は,差止めの対象とした違法な財務会計上の行為が完了すれば差止めの余地はなくなり,その訴えは不適法になるものの,差止めの対象とした違法な財務会計上の行為と損害賠償の原因とする違法な財務会計上の行為との間に同一性が認められる場合には,法242条の2第1項4号に基づく訴えを追加的に提起し,旧訴を取り下げることにより,訴えの交換的変更をすることが許されるものと解される。そして,この場合には,前者について監査請求を経ていれば,後者についても監査請求を経ているものと解することができ,更に変更後の訴えが出訴期間 り,訴えの交換的変更をすることが許されるものと解される。そして,この場合には,前者について監査請求を経ていれば,後者についても監査請求を経ているものと解することができ,更に変更後の訴えが出訴期間(法242条の2第2項)を経過していたとしても,変更前の訴えが出訴期間を遵守していれば,変更後の請求に係る訴えを当初の訴え提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守においても欠けるところがないものと解すべきである。 原告は,山中湖村監査委員に対し,本件売買契約により耕作権の侵害がなされること,本件売買契約に農地法違反があることなどを主張して,これに関する予算の支出,新たな予算措置の差止め,本件事業の中止等を求める監査請求を行ったものであり,これを前提になされた変更前の訴えのうち,本件売買契約の代金支払の差止めを求める部分については,既に代金支払済みで訴えの利益を失っているとしても,追加的に提起された代金相当額の損害賠償請求を参加人にするよう求める訴えは,本件売買契約を問題とする点で変更前の訴えと同じであり,対象とする財務会計上の行為の同一性が認められるから,変更後の訴えは適法なものと認めることができる。 2 本件売買契約は違法又は無効であり,これにより山中湖村が損害を被ったか否か(争点(2))について(1) 農地法違反について農地法5条1項4号,同法施行規則7条1項6号によれば,地方公共団体(都道府県を除く。)がその設置する道路等又はその他の施設で土地収用法3条各号掲記のものの敷地に供するため農地等につき権利を取得する場合には転用許可を要しないところ,証拠(甲4,乙6)及び弁論の全趣旨によれば,本件第1,第3土地については,平成13年3月22日,富士北麓都市計画公園事業として山梨県知事の認可を受けていること,また には転用許可を要しないところ,証拠(甲4,乙6)及び弁論の全趣旨によれば,本件第1,第3土地については,平成13年3月22日,富士北麓都市計画公園事業として山梨県知事の認可を受けていること,また,本件第2土地についても,土地収用法3条各号に定める公共の用(道路敷地,防災避難所,花壇のある広場)に供されるものと認められるから,本件土地の取得については,農地法5条1項4号,同法施行規則7条1項6号により転用許可は不要と解される。 したがって,本件売買契約に農地法上の違法はない。 (2) 本件土地に本件売買契約によって侵害される入会権等が存在するか否かについてア証拠(甲6ないし9,11ないし16,乙1の1ないし6,乙3,4,8,9,11の1ないし46,乙12。ただし,甲11,15のうち下記認定に反する部分を除く。)によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 入会集団としてのγ部落は,旧来から入会権に基づく入会慣行を有しているが,その入会地は,地盤所有権との関係で分類すると,①村持地(γ部落所有の共有の性質を有する入会地のこと。以下同じ。)への単独入会,②山梨県恩賜県有財産地への単独入会,③山梨県恩賜県有財産地への3か村共同入会,④梨ヶ原への11か村共同入会に分けられる(甲6)。 現在では,γ部落の入会権はγ入会組合により管理統制がされている。 (イ) 本件土地の登記簿上の所有権の移転は,別紙所有権移転の経緯のとおりである(乙11の1ないし46。なお,土地2ないし4,7,45,46は土地43から,土地5は土地44からそれぞれ平成13年に分筆登記された土地であるから,以下の土地43についての検討は土地2ないし4,7,45,46にあてはまり,土地44についての検討は土地5にあてはまる。)。 ( 土地44からそれぞれ平成13年に分筆登記された土地であるから,以下の土地43についての検討は土地2ないし4,7,45,46にあてはまり,土地44についての検討は土地5にあてはまる。)。 (ウ) γ部落においては,明治初年以降繰り返し村持地の個人分割がなされたが,大正6年ころ,村持地の大部分が,①当時の全入会権者92名による個人分割,②92名による記名共有へと変容を受けた。このうち,92名による記名共有登記がされた土地は,①将来の公益費用の支出に充てるため村としての財産を確保する,②共同利用上必要とされる土地(保安林,採草地,湖水利用(養蚕用具の洗浄など)のため不可欠な湖岸沿いの土地)を入会権者全員のため維持確保する,入会権者の生活の拠り所として全入会権者が自由に立ち入り生活資料を採取できる場所を確保するとの理由で入会権者全員の記名共有とされた(甲6)。 また,大正5年ころ,一部の村持地(土地16,43,44もこれに含まれる。)は,一度中野村名義で登記され,E,P,Q,Kの共有名義に所有権移転されているが,実質は村持地として買い戻したものである(甲6,乙11の16,43,44)。 なお,土地16,44についてはその後個人に分割されたが,土地43は,92名による記名共有とされた(乙11の16,43,44)。 (エ) 土地1,6,8ないし42,44は,大正15年から昭和2年の間に,東京電燈のため本件土地の買い付けをしていたBに所有権が移転された後,東京電燈に所有権が移転され,土地43については,92名による記名共有から東京電燈に所有権が移転された(甲6,乙1,6,8ないし42,44)。 (オ) α区と日本発送電及び東京電力との間の使用貸借契約の締結についてa α区(契約締結者はα区長)は から東京電燈に所有権が移転された(甲6,乙1,6,8ないし42,44)。 (オ) α区と日本発送電及び東京電力との間の使用貸借契約の締結についてa α区(契約締結者はα区長)は,昭和22年8月27日,日本発送電との間で,土地1,8ないし43を含む日本発送電所有の90筆の土地(以下この項において「本土地」という。)について,以下のような約定の下,使用貸借契約を締結した(乙1の1)。 ① 日本発送電はその所有する本土地を日本発送電の所有目的に反せざる範囲においてα区の農耕地として使用することを認める。 ② α区は本土地が日本発送電の所有する桂川流域の各発電所の出力増強の目的をもって取得した山中湖の水位調整権に伴う欠くことができない用地であることを確認し日本発送電の目的達成に協力の上使用する。 ③ α区は本土地を現況通り使用し住宅その他の建物又は池沼等農耕地以外に変更使用しない。 ④ α区は日本発送電の山中湖の水位調整に伴う増水により本土地の農作物被害を受けた場合も日本発送電に対し補償,見舞金等を請求しない。 ⑤ 本土地の使用料は上記各項の意味をもって徴収しない。 ⑥ α区は本土地の耕作人間及び今後の土地運営上その他の問題については責任者において公正妥当な処理をし日本発送電に迷惑を掛けない。 ⑦ 本土地の使用契約期間は,昭和22年4月1日から5年とする。 ただし,期間満了の際は実情に即し契約の更改又は継続をすることができる。 b α区(契約締結者は,α区長及びα区の住民3名)は,昭和29年7月12日,東京電力との間で,土地1,8ないし11,13ないし17,19ないし41,43を含む東京電力所有の85筆の土地について,期間昭和27年4月1日か α区長及びα区の住民3名)は,昭和29年7月12日,東京電力との間で,土地1,8ないし11,13ないし17,19ないし41,43を含む東京電力所有の85筆の土地について,期間昭和27年4月1日から5年間,期間満了の際は両者協議の上継続することができるとするほか上記aと同様の約定の下,使用貸借契約を締結した(乙1の2)。 c α区(契約締結者は,α区長及びα区代表5名)は,昭和36年9月25日,東京電力との間で,土地1,8ないし11,13ないし17,19ないし41,43を含む東京電力所有の85筆の土地(以下この項において「本土地」という。)について,以下のような約定の下,使用貸借契約を締結した(乙1の3)。 ① 使用目的農耕地として使用する。ただし東京電力の使用目的に反せざる範囲において承認する。 ② 賃料無償。ただしα区は東京電力の山中湖水位調整に伴う増水により本土地の農作物が被害を受けた場合も東京電力に対し何等の補償その他一切の求償をしないこと。 ③ 期間昭和32年4月1日から昭和42年3月31日まで。ただし契約期間中も東京電力が土地を必要とする場合は解約することができる。 ④ 土地使用上の協力上記a②と同じ⑤ 借主の誓約条項α区は東京電力の書面による同意がなければ,使用目的を変更すること,転貸すること,建物その他の構築物を設置すること,著しく地形を変更することができない。 ⑥ 東京電力は,α区が上記誓約条項に違反した場合は事前に何らの催告をしないで,直ちにこの契約を解除し,生じた損害の請求をすることができる。 ⑦ 期間の更新期間満了の際は 東京電力は,α区が上記誓約条項に違反した場合は事前に何らの催告をしないで,直ちにこの契約を解除し,生じた損害の請求をすることができる。 ⑦ 期間の更新期間満了の際は両者協議の上更新する。 d α区(契約締結者は,α区長及びα区代表6名)は,昭和42年5月31日,東京電力との間で,土地1,8ないし11,13ないし17,19ないし41,43,44を含む東京電力所有の38筆の土地について,期間同年4月1日から昭和52年3月31日まで,期間満了の際はα区の意志を尊重して両者協議の上更新するものとするほか上記cと同様の約定の下,使用貸借契約を締結した(乙1の4)。 e α区(契約締結者は,α区長及びα区代表13名)は,昭和53年3月31日,東京電力との間で,土地1,8ないし11,13ないし17,19ないし41,43,44を含む東京電力所有の36筆の土地について,期間昭和52年4月1日から昭和57年3月31日までとするほか上記dと同様の約定の下,使用貸借契約を締結した(乙1の5)。 f α区(契約締結者は,α区長及びα共有財産管理組合長)は,昭和63年3月31日,東京電力との間で,土地1,6,8ないし44を含む東京電力所有の41筆の土地について,期間昭和57年4月1日から昭和77年3月31日まで,東京電力が将来使用目的が消滅したことにより土地を必要としなくなった場合は,処分の取扱いについてα区と協議し,α区に譲渡するよう配慮するものとするほか上記dと同様の約定の下,使用貸借契約を締結した(乙1の6)。 g 参加人は山中湖村長として,平成13年10月29日,α区長との間で,東京電力からの土地買収により山中湖村が貸主の地位を承継した上記fに基づく使用貸借契約について,平成14年3月3 )。 g 参加人は山中湖村長として,平成13年10月29日,α区長との間で,東京電力からの土地買収により山中湖村が貸主の地位を承継した上記fに基づく使用貸借契約について,平成14年3月31日以降契約を更新しない旨合意した(乙8)。 イ本件土地が個々具体的にどのように利用されてきたかについては必ずしも明確ではないが,証拠(甲7ないし9,11,12,14,乙4,9,12)によれば,以下の事実を概ね認めることができる。 (ア) 第二次世界大戦前土地43付近については,柳,葦,蒲が密生して生える沼地帯で耕作ができるような状態ではなく,採草や湖水利用のため個別的共同利用がされていた。また,土地8ないし42(本件第2土地)については,個別分割がされた後それぞれ地盤所有者が畑作をするなどして利用していた(なお,この時点で土地1,6,44がどのように利用されていたかは不明である。)。 そして,上記利用形態は,本件土地がBを介して東京電燈へ売却された(ただし,土地43については直接東京電燈へ売却された。)後も特段変化がなかった。 (イ) 第二次世界大戦後終戦直後の食糧難の時代,γ部落においても農地を持たない次男,三男らの生活を保障することが問題となり,優先的に本件土地を割り振りし,これらの者が水田等として利用するようになった(なお,土地43付近については,上記のような状態であったため,稲作ができるようにするまで相当な努力を要した。)。その後,昭和50年代になると国の減反政策により,減反及びこれに伴う奨励金の分配が問題となり,昭和58年1月ころ,本件土地はα区の住民であって農業委員会が認める農業適格者全員が共同使用することを確認し,それまで耕作してきた者に水田耕作を放棄させる同意書をと に伴う奨励金の分配が問題となり,昭和58年1月ころ,本件土地はα区の住民であって農業委員会が認める農業適格者全員が共同使用することを確認し,それまで耕作してきた者に水田耕作を放棄させる同意書をとり,その後農業適格者全員によりそばを共同耕作するようになった。そして,減反奨励金はγ部落民全員で平等に分配するようになった。さらに,平成11年ころになって,本件事業の構想が持ち上がったことにより耕作が中止された。 ウ以上の認定事実を前提に,本件土地に入会集団としてのγ部落の入会権が存在するか否かについて検討する。 (ア) 土地8ないし42(本件第2土地)についてみると,いずれもBに所有権が移転する前に,地盤所有権がα部落の構成員に分割され,分割を受けた個人が独占的に使用収益してきたものと認められ,さらにBに対する所有権の移転についても入会集団の団体的統制のもとなされたとは認めることができない(所有権移転時期が区々であり,その売却代金の取得について団体的統制がなされたと認めるに足りる証拠がなく,各所有権者が自らの判断で売却したものというほかない。)から,仮に分割前に入会集団による入会慣行ないし入会権があったとしても,個人に分割された時点で当該土地における入会慣行ないし入会権は廃止されたというべきである。 (イ) これに対し,土地43(土地2ないし4,7,45,46にもあてはまる。)についてみると,上記認定事実のとおり,E,P,Q,Kの共有登記,更に92名による共有登記がなされており,入会集団による個別的共同利用がなされていたものと認められるから,少なくとも東京電燈に所有権が移転されるまでは,γ部落が入会地として保持し,入会慣行があったと認めることができる。 (ウ) 土地1,6,44(土地5にもあてはまる。)について と認められるから,少なくとも東京電燈に所有権が移転されるまでは,γ部落が入会地として保持し,入会慣行があったと認めることができる。 (ウ) 土地1,6,44(土地5にもあてはまる。)については,Bを介して東京電燈に売却されるまでに,地盤所有権がγ部落の構成員に分割されている以外にその利用状況が明らかでなく,入会慣行について判然としない。 (エ) ところで,上記認定事実のとおり,本件土地は,Bを介して(土地43は直接に)東京電燈に売却された後も,概ね従前通りの利用がされていたものと認められ,さらに,戦後に至ってはγ部落の統制のもと個々の構成員が水田として利用するようになり,減反及びこれに伴う奨励金の分配が問題になると,そばを共同で耕作し,奨励金も平等に分配するなど,γ部落の統制のもと利用されてきたことが認められる。しかしながら,かかる利用については,入会権やγ部落と東京電燈等との間の永久かつ自由な使用という合意に基づいてなされたものとは認めることができない。 すなわち,昭和22年8月27日,日本発送電とα区(この時点ではγ部落と同一視することができる。)との間に,本件土地について,使用貸借契約が締結されているところ,この使用貸借契約の内容は,使用目的を農耕のみに制限し,浸水による農作物被害の補償をあらかじめ放棄するもので,その期間も5年間という短期に区切るなどγ部落構成員の本件土地利用に著しい制限があり,γ部落による本件土地の利用が入会権ないしγ部落と東京電燈及び日本発送電との間の永久かつ自由な使用という合意によるものであったのならば,α区すなわちγ部落がこのような不利な条項の契約を締結するとは到底考えられない。さらに,かかる使用貸借契約が概ね同じ内容で5回にわたり更新され,当初の契約締結から55年余り続いてい あったのならば,α区すなわちγ部落がこのような不利な条項の契約を締結するとは到底考えられない。さらに,かかる使用貸借契約が概ね同じ内容で5回にわたり更新され,当初の契約締結から55年余り続いていたことにかんがみれば,上記使用貸借契約の内容は本件土地が東京電燈へ売却された後のγ部落と東京電燈等との間の合意内容に即した内容であったものと解するのが相当である。 (オ) 以上検討したとおり,土地8ないし42(本件第2土地)については,そもそも東京電燈が買い受ける以前に入会権が存在したと認めることができない。また,本件土地すべてについて,東京電燈に所有権が移転した後のγ部落構成員による利用が入会権ないしγ部落と東京電燈との間の永久かつ自由な使用という合意によるものと認めることはできず,むしろ使用貸借契約に基づくものと認めることができるから,γ部落による入会権があった土地についても,東京電燈への売却により入会権が消滅したと解するのが相当である。 なお,現在γ部落の入会権の行使を管理統制しているγ入会組合の組合長C自ら,本件土地が同組合が権利行使している入会地ではない旨述べていること(乙10,12)も上記結論を裏付けるものである。 そして,上記使用貸借契約は,平成14年3月31日に期限が到来し,参加人とα区長との間で更新はしない旨の合意がなされて既に終了しているから,本件売買契約によってγ部落構成員の耕作権が違法に侵害されることはない。 (3) 法238条の4第1項違反について法238条の4第1項は,行政財産は,一定の場合を除くほか,私権の設定をすることができない旨定めているが,その趣旨は,行政財産は,地方公共団体の行政執行の物的手段として行政目的の達成のために利用されるべきものであり,私権の設定等を認め 定の場合を除くほか,私権の設定をすることができない旨定めているが,その趣旨は,行政財産は,地方公共団体の行政執行の物的手段として行政目的の達成のために利用されるべきものであり,私権の設定等を認めることは行政財産の効用を減少し,行政目的を達成し難くなるおそれがあることから,行政財産の適正かつ効率的な管理を期するため,行政財産の私権の設定等の運用を原則として禁止することを定めたところにある。そうすると,行政財産として取得しようとする財産に既に私権が設定されていても,公用又は公共用に供することに支障がない限りはこれを取得して行政財産とすることは本条項に違反しないものと解するのが相当である。 これを前提に検討する。 上記争いのない事実等及び証拠(乙6,7の1ないし5)を総合すれば,参加人は,東京電力との間で本件売買契約締結と同時にそれぞれ発電用水の貯留及び洪水時の一時湛水を目的とする地役権設定契約を締結したこと,本件売買契約は本件地役権設定が条件となっていたこと,本件売買契約及び本件地役権設定において,山中湖村は湛水等のため本件土地及び地上工作物に損害を受けても一切異議求償しない旨の約定がなされていたことが認められる。 しかしながら,このような売買契約及び地役権の設定は,行政財産として取得しようとする財産に既に私権が設定されていた場合と同視することができ,法238条の4第1項の文言上もかかる方法による行政財産の取得を明確に禁止しているとは解されないし,もしこのような方法による行政財産の取得を一切禁止するならば,かえって行政財産の円滑な取得を妨げることになるといえる。そして,本件地役権設定がなければ東京電力は本件土地を売らなかったと考えられること,本件地役権設定の目的からしてこれが本件事業の遂行の妨げになるとは考え難いこと 円滑な取得を妨げることになるといえる。そして,本件地役権設定がなければ東京電力は本件土地を売らなかったと考えられること,本件地役権設定の目的からしてこれが本件事業の遂行の妨げになるとは考え難いことなどからすれば,損害が生じた場合の賠償請求をあらかじめ放棄していることを考慮しても,本件地役権設定が行政財産の効用を減少し,行政目的を達成し難くするものとはいえず,本件地役権設定を条件とする本件売買契約が法238条の4第1項に違反し無効であるとは認められない。 (4) 以上の次第で,本件売買契約には原告が主張する違法無効事由は認められず,かかる事由により本件事業がその目的を達することができないとはいえない。 3 なお,原告は,平成15年7月8日付第6準備書面において,本件売買契約の無効確認及び本件売買契約の原状回復義務を怠る事実の違法確認をも求める旨述べているが,上記のとおり本件売買契約に違法無効事由が認められない以上,それらの確認請求も認められないことが明らかである。 4 したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一裁判官倉地康弘裁判官知野明
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