平成22(ワ)11017等 不正競争防止法に基づく差止め等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年11月30日 東京地方裁判所
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判決文本文36,867 文字)

平成23年11月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官山下京子平成22年(ワ)第11017号不正競争防止法に基づく差止め等請求事件(以下「第1事件」という。),同年(ワ)第36109号不正競争行為差止等請求事件(以下「第2事件」という。),同年(ワ)第38912号不正競争行為差止等請求事件(以下「第3事件」という。)口頭弁論終結日平成23年8月29日判決 東京都中野区<以下略>第1事件原告・第2事件被告・第3事件原告日本書写能力検定委員会 (以下「原告中野書写検」という。)東京都中野区<以下略>第 事件被告一般社団法人日本 書写能力検定委員会 (以下「被告社団法人中野書写検」という。)東京都青梅市<以下略>第 事件被告A上記3名訴訟代理人弁護士嵯峨清喜 同和田茂樹 東京都青梅市<以下略>第1事件被告・第2事件原告琴河原株式会社 (以下「被告琴河原」という。)東京都青梅市<以下略>第 事件被告B東京都青梅市<以下略> 第 事件被告一般社団法人全国 第 事件被告B東京都青梅市<以下略> 第 事件被告一般社団法人全国 書写書道教育振興会 (以下「被告社団法人書写書道振興会」という。)上記3名訴訟代理人弁護士鈴木亜英 同鈴木麗加 主文 1 第1事件及び第3事件原告中野書写検の請求をいずれも棄却する。 2 第2事件(1) 原告中野書写検は,書写書道の教授,普及,講演会・セミナー・展示会・コンクール・講習会の開催,資格認定,通信教育の企画,運営,実施,及び教材・書籍・出版物・機関誌その他の印刷物の販売配布その他これに関連する一切の事業活動において,「日本書写能力検定委員会」又は「書写検」若しくは「shoshaken」の各表示を使用してはならない。 (2) 原告中野書写検は,表札,看板,印章,教材,名刺,パンフレットその他の文書及び印刷物,ホームページ,ドメイン名から,「日本書写能力検定委員会」又は「書写検」若しくは「shoshaken」の各表示を抹消せよ。 (3) 被告社団法人中野書写検は,法人名として「日本書写能力検定委員会」という名称を使用してはならない。 (4) 被告社団法人中野書写検は,平成22年2月22日付けをもってされた設立登記中,「日本書写能力検定委員会」の名称の抹消登記手続をせよ。 (5) 原告中野書写検は,別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先に対し,別紙通 年2月22日付けをもってされた設立登記中,「日本書写能力検定委員会」の名称の抹消登記手続をせよ。 (5) 原告中野書写検は,別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先に対し,別紙通知文を送付せよ。 (6) 原告中野書写検,被告社団法人中野書写検及び被告Aは,被告琴河原に対し,連帯して255万7000円及びこれに対する平成22年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (7) 被告琴河原のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用の負担訴訟費用は,全事件を通じ,被告琴河原に生じた費用の3分の1,被告B及び被告社団法人書写書道振興会に生じた費用を原告中野書写検の負担,被告琴河原に生じた費用の各9分の2を被告社団法人中野書写検及び被告Aのそれぞれの負担,原告中野書写検に生じた費用の5分の1,被告社団法人中野書写検及び被告Aに生じた費用の各3分の1を被告琴河原の負担とし,その余は各自の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 第1事件(1) 被告琴河原は,書写書道の検定試験,ライセンス,指導者養成,講習会,通信教育,教材・書籍・出版物の販売その他これに関連する一切の事業において,「書写検」及び「日本書写書道検定委員会」の各表示を使用してはならない。 (2) 被告琴河原及び被告Bは,被告社団法人書写書道振興会と共同して,書写書道の全国コンクール事業及びこれに付帯する事業において,「全国書写書道教育振興会」の表示及び別紙コンクール目録記載の各コンクール名を使用してはならない。 (3) 被告琴河原は,表札,看板,印章,教材,名刺,パンフレット,アルバムその他の文書及び印刷物並びにホームページから,「書写検」,「日本書写 目録記載の各コンクール名を使用してはならない。 (3) 被告琴河原は,表札,看板,印章,教材,名刺,パンフレット,アルバムその他の文書及び印刷物並びにホームページから,「書写検」,「日本書写書道検定委員会」及び「全国書写書道教育振興会」の各表示並びに別紙コンクール目録記載の各コンクール名を抹消せよ。 2 第2事件(1) 主文2項(1)同旨(2) 主文2項(2)同旨 (3) 主文2項(3)同旨(4) 主文2項(4)同旨(5) 原告中野書写検は,別紙送付先リスト記載の送付先に対し,別紙通知文(案)を送付せよ。 (6) 原告中野書写検,被告社団法人中野書写検及び被告Aは,被告琴河原に対し,連帯して4480万3600円及びこれに対する平成22年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第3事件(1) 被告社団法人書写書道振興会は,被告琴河原及び被告Bと共同して,書写書道の全国コンクール事業及びこれに付帯する事業において,「全国書写書道教育振興会」の表示及び別紙コンクール目録記載の各コンクール名を使用してはならない。 (2) 被告社団法人書写書道振興会は,表札,看板,印章,教材,名刺,パンフレット,アルバムその他の文書及び印刷物並びにホームページから,「全国書写書道教育振興会」の表示及び別紙コンクール目録記載の各コンクール名を抹消せよ。 第2 事案の概要以下,原告中野書写検,被告社団法人中野書写検及び被告Aを併せて「原告ら」といい,被告琴河原,被告B及び被告社団法人書写書道振興会を併せて「被告ら」という。 本件は,書写書道に関する検定試験等の事業を行う原告中野書写検が,権利能力なき社団である「日本書写能力検定委員会」(以下「旧書写検 B及び被告社団法人書写書道振興会を併せて「被告ら」という。 本件は,書写書道に関する検定試験等の事業を行う原告中野書写検が,権利能力なき社団である「日本書写能力検定委員会」(以下「旧書写検」という。 )と同一の団体であり,その営業表示(商品等表示)である「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」が周知性を有するところ,被告琴河原が,「日本書写能力検定委員会」に酷似する「日本書写書道検定委員会」(以下「書写書道検」という。)を設置し,書写書道検が旧書写検そのもの又はその正当 な承継団体であるかのように誤信させて著しい混同を生じさせているから,不正競争防止法2条1項1号に該当するなどと主張し,①被告琴河原に対し,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として,書写書道の検定試験等の一切の事業において,「書写検」及び「日本書写書道検定委員会」の表示の使用禁止(請求1(1)),②被告琴河原及び被告Bに対し,被告琴河原につき不正競争防止法3条1項又は不法行為,被告Bにつき不法行為に基づく差止請求として,被告社団法人書写書道振興会と共同して,書写書道の全国コンクール事業等において,「全国書写書道教育振興会」の表示等の使用禁止(請求1(2)),③被告琴河原に対し,不正競争防止法3条2項に基づく廃棄請求として,表札,看板,印章等から,「書写検」,「日本書写書道検定委員会」及び「全国書写書道教育振興会」の表示等の削除(請求1(3))を求めるとともに(第1事件),被告社団法人書写書道振興会に対し,④不正競争防止法3条1項又は不法行為に基づく差止請求として,被告琴河原及び被告Bと共同して,書写書道の全国コンクール事業等において,「全国書写書道教育振興会」の表示等の使用禁止(請求3(1)),⑤不正競争防止法3条2項又は不法行為に基づく廃棄請 請求として,被告琴河原及び被告Bと共同して,書写書道の全国コンクール事業等において,「全国書写書道教育振興会」の表示等の使用禁止(請求3(1)),⑤不正競争防止法3条2項又は不法行為に基づく廃棄請求として,表札,看板,印章等から,「全国書写書道教育振興会」の表示等の削除(請求3(2))を求めた(第3事件)事案である。 これに対し,被告琴河原が,旧書写検は被告琴河原の一事業部門であったから,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示が被告琴河原の営業表示(商品等表示)であるところ,原告中野書写検が上記各表示を使用して被告琴河原と同一の事業を行っているから,不正競争防止法2条1項1号に該当するなどと主張して,①原告中野書写検に対し,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として,書写書道の教授等の一切の事業において,「日本書写能力検定委員会」又は「書写検」若しくは「shoshaken」の各表示の使用禁止(請求2(1)),②不正競争防止法3条2項に基づく廃棄請求として,表札,看板,印章等から,「日本書写能力検定委員会」又は「書 写検」若しくは「shoshaken」の各表示の抹消(請求2(2)),③被告社団法人中野書写検に対し,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として,法人名として「日本書写能力検定委員会」という名称の使用禁止(請求2(3)),④不正競争防止法3条2項に基づく廃棄請求として,設立登記中,「日本書写能力検定委員会」の名称の抹消登記手続(請求2(4)),⑤原告中野書写検に対し,不正競争防止法14条に基づく信用回復の措置請求として,通知文(案)の送付(請求2(5)),⑥原告らに対し,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検につき不正競争防止法4条及び不法行為,被告Aにつき 不正競争防止法14条に基づく信用回復の措置請求として,通知文(案)の送付(請求2(5)),⑥原告らに対し,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検につき不正競争防止法4条及び不法行為,被告Aにつき不法行為に基づく損害賠償請求として,4480万6000円(附帯請求として訴状送達の日の翌日以降である平成22年10月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払(請求2(6))を求めた(第2事件)事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない。)(1) 旧書写検ア旧書写検旧書写検は,昭和59年4月,琴河原学園における書写書道の経験と実績を生かし,琴河原学園を母体として,文部省の学習指導要領に基づく「正しく整った読みやすい文字」の全国普及を目的として設立された団体である。 イ旧書写検の沿革C(被告琴河原の前代表取締役)は,終戦後,日曜学校(教会)の生徒達に学習やそろばんを教え始め,これが琴河原学園の始まりとなった。Cは,昭和45年,書写指導者を採用し,琴河原学園において書道教室を始め,昭和52年,琴河原学園の学園生向けに書道検定・書道コンクールを始めるとともに,教材の開発・作成を始めた。 ウ Cの理事長就任 Cは,昭和59年4月,旧書写検の設立とともに,旧書写検の理事長に就任した。 (2) 原告らア原告中野書写検原告中野書写検は,原告らが旧書写検と同一であると主張する団体である。 イ被告A被告Aは,原告中野書写検の理事長兼会長であって,被告社団法人中野書写検の代表理事である。 被告Aは,昭和48年以来,Cに師事し,平成17年1月1日,被告琴河原の取締役に就任し,平成2 被告Aは,原告中野書写検の理事長兼会長であって,被告社団法人中野書写検の代表理事である。 被告Aは,昭和48年以来,Cに師事し,平成17年1月1日,被告琴河原の取締役に就任し,平成21年6月16日,Cに代わって,旧書写検の理事長に就任した。しかし,被告琴河原は,平成22年1月31日開催の臨時株主総会において,被告Aを取締役から解任する旨を決議した。 ウ被告社団法人中野書写検被告社団法人中野書写検は,平成22年2月22日,「一般社団法人日本書写能力検定委員会」との名称で設立された一般社団法人である。 (3) 被告らア被告琴河原被告琴河原は,昭和57年10月,珠算,書道,学習の生涯教育事業等を目的として「有限会社琴河原学園」との商号で設立され,平成12年6月12日,株式会社に組織変更された会社である。 イ被告B被告Bは,Cの子であり,平成21年6月16日,被告琴河原の代表取締役に就任した。 ウ書写書道検書写書道検は,被告琴河原の一事業部門であり,被告らが,被告琴河原 の一事業部門であった旧書写検の事業を引き継いだと主張する団体である。 エ被告社団法人書写書道振興会被告社団法人書写書道振興会は,平成22年4月1日,「一般社団法人全国書写書道教育振興会」との名称で設立された一般社団法人である。 (4) 旧書写検の事業と名称の周知性ア毎日新聞社との共催による全国大会(全国コンクール)の開催旧書写検は,昭和60年,第1回全国年賀はがきコンクール,第1回全国硬筆コンクールをそれぞれ開催し,昭和61年,毎日新聞社との共催により第1回毎日学生書き初め展覧会を開催した。その後,旧書写検は,毎 旧書写検は,昭和60年,第1回全国年賀はがきコンクール,第1回全国硬筆コンクールをそれぞれ開催し,昭和61年,毎日新聞社との共催により第1回毎日学生書き初め展覧会を開催した。その後,旧書写検は,毎日新聞社との共催により,毎日ひらがな・かきかたコンクール,毎日全国学生書写書道展,全国硬筆コンクール,全国年賀はがきコンクール,毎日学生書き初め展覧会を年1回開催し,回数はいずれも20回を超え,文部科学省等の後援を得ていた。 イ旧書写検の事業旧書写検の事業は,以下のとおりであった。 (ア) 全国大会の開催(従来は毎日新聞社との共催)a 毎日ひらがな・かきかたコンクールb 毎日全国学生書写書道展c 全国硬筆コンクールd 全国年賀はがきコンクールe 毎日学生書き初め展覧会(イ) 全国書写能力検定試験の実施(毎月)a 学校教育部門硬筆楷書検定硬筆行書検定毛筆半紙検定毛筆本検定b 生涯学習部門 毛筆行書検定毛筆連綿検定毛筆細字検定毛筆草書検定(ウ) 資格認定と指導者育成a 指導者ライセンスの認定b 講習会の開催c 生徒指導,開塾の支援段階をおった検定システムと指導研修会を通して教室運営のサポートをする。 (エ) 教育実習制度教育実習の単位登録制度(オ) 通信教育の実施通学が無理な方のための検定受験と添削指導(カ) 手本及び教材の開発・頒布幼児向けひらがな練習帳・各硬筆検定練習帳・各毛筆検定手本・硬筆用具・毛筆用具・毛筆用指導用教 通学が無理な方のための検定受験と添削指導(カ) 手本及び教材の開発・頒布幼児向けひらがな練習帳・各硬筆検定練習帳・各毛筆検定手本・硬筆用具・毛筆用具・毛筆用指導用教材などの開発と頒布ウ名称の周知性旧書写検は,約200名の会員を擁し,検定受検者数は毎月約1万名,年間5つの全国コンクールの参加者は年間11万名であった。「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の名称は,全国の会員,生徒,受験者,コンクール参加者等の間に広く認識され,周知性を得ていた。 (5) 原告中野書写検と被告琴河原の事業における名称等の比較原告中野書写検と被告琴河原(書写書道検)は,それぞれ旧書写検と同一の事業を行っており,その事業に関する名称等の比較は,別紙名称・デザイン等混同惹起一覧のとおりである。 2 争点(1) 全事件共通 旧書写検が権利能力なき社団であり,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)という営業表示の主体であったか。 (2) 第1事件及び第3事件ア被告琴河原による「書写検」又は「日本書写書道検定委員会」の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当し,原告中野書写検の営業上の利益の侵害又は侵害のおそれがあるか。 イ被告らによる「全国書写書道教育振興会」の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号又は不法行為に該当し,原告中野書写検の営業上の利益の侵害又は侵害のおそれがあるか。 (3) 第2事件ア原告中野書写検による「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示の使用が不正競争防止法2条1項 侵害のおそれがあるか。 (3) 第2事件ア原告中野書写検による「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当し,被告琴河原の営業上の利益の侵害又は侵害のおそれがあるか。 イ被告社団法人中野書写検による「日本書写能力検定委員会」の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当し,被告琴河原の営業上の利益の侵害又は侵害のおそれがあるか。 ウ原告らが不正競争防止法4条・不法行為に基づく損害賠償責任を負うか。 エ被告琴河原の損害額オ被告琴河原の信用を回復する措置が必要か。 3 争点に関する当事者の主張(1) 全事件共通旧書写検が権利能力なき社団であり,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)という営業表示の主体であったか(争点(1))について (原告らの主張)ア旧書写検(原告中野書写検と同一団体)は,本部会則(甲1の1)に基づき,理事長1名,副理事長若干名,理事3名以上7名以内の役員が置かれ(本部会則7条),理事の互選で選任された理事長が旧書写検を代表し,その業務を統括していた(本部会則8条,9条)。旧書写検の事業についての議決機関として理事会が置かれ,議決は本部会則に基づき多数決の原則により行われていた(本部会則10条,17条)。 旧書写検には「会員制度」が存在し(本部会則5条),会員制度は本部会則(5条2項)に基づき制定され本部会則と一体である「会員制度についての規定」(甲1の2)によって運営され,旧書写検の組織の一部を構成していた。会員制度における会員総会は,事業計画及び収支予算,事業報告及び収支決算 づき制定され本部会則と一体である「会員制度についての規定」(甲1の2)によって運営され,旧書写検の組織の一部を構成していた。会員制度における会員総会は,事業計画及び収支予算,事業報告及び収支決算等について議決し(甲1の2・24条),運用により多数決による議決がされていた。 イ旧書写検の検定試験等その本質的事業部分を除いた実務的業務については,設立以来,旧書写検創業者・前理事長のCが代表取締役を兼務してきた被告琴河原に対し包括的に委託して処理するという暗黙の処理方式が取られてきた。会計経理業務等財務についても被告琴河原が包括的に受託して処理してきたが,旧書写検の対外的活動に必要な収入(検定料,出品料,受講料等)は旧書写検名義の預貯金口座に振込入金されるシステムが確立し,旧書写検としての収入及び支出が独立会計として処理されるなど,財産的側面においても,団体として内部的に運営し,対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され,かつ,その収支を管理する体制が備わっていた。 ウ以上のとおり,旧書写検は,設立以来,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定 した任意団体として運営されてきたものである。このことは,旧書写検創業者のCをはじめ,理事長兼会長の被告A,全国の会員,受験者,全国コンクールの共催団体である毎日新聞社,後援団体である文部科学省その他の公的機関等,すべての関係者間において一致した認識であった。 (被告らの主張)ア原告らの主張はいずれも否認する。 イ旧書写検の実体は,書道教育の一環として,被告琴河原に設置された一事業部門であった。そのため,被告琴河原の あった。 (被告らの主張)ア原告らの主張はいずれも否認する。 イ旧書写検の実体は,書道教育の一環として,被告琴河原に設置された一事業部門であった。そのため,被告琴河原の定款(甲2の2,平成22年2月改訂前のもの。)30条には「当会社の目的遂行のために,琴河原学園及び日本書写能力検定委員会,日本パソコン能力検定委員会を設置する。 」と明記されている。琴河原学園,旧書写検,日本パソコン能力検定委員会の事務を処理する者は全て被告琴河原の従業員であり,被告琴河原から給与が支給されていた。各部門売上は,被告琴河原の事業売上として毎年決算承認され税務申告されていた。 旧書写検の「会則」を作成したのは,全国コンクールに文部科学省や毎日新聞社の後援等を得るためには,主催団体の会則や事業報告書,役員名簿等を添付すべきものとされていたからである(乙1)。要するに,文部科学省の後援等を得るために作成された会則であり,これに基づき旧書写検の組織や事業が運営された実績はない。会則16条によれば,有給の「職員」を置くこととなっているが,旧書写検の事務は全て被告琴河原の従業員が担当してきた。会則19条1号に明記された「設立当初の財産目録」など作成されたこともない。会則は形式的なものにすぎない。 ウ旧書写検は,被告琴河原の一事業部門であり,旧書写検の名称の周知性やそれに伴う利益は全て被告琴河原に帰属すべきものである。 (2) 第1事件及び第3事件ア被告琴河原による「書写検」又は「日本書写書道検定委員会」の表示の 使用が不正競争防止法2条1項1号に該当するか等(争点(2)ア)について(原告中野書写検の主張)(ア) 被告琴河原は,その一事業部門として旧書写検(原告中野書写検と同 使用が不正競争防止法2条1項1号に該当するか等(争点(2)ア)について(原告中野書写検の主張)(ア) 被告琴河原は,その一事業部門として旧書写検(原告中野書写検と同一団体)の名称と酷似した「日本書写書道検定委員会」(「日本書写能力検定委員会」の「書写」を「書写書道」に置き換え「能力」を削除しただけで,その他の文字配列は全く同じであり,外観及び称呼において酷似する。)を設置し,旧書写検の略称である「書写検」も,「日本書写書道検定委員会」の略称としてそのまま用いている。 被告琴河原の上記行為は,全国の会員及び受験者等に対し,「日本書写書道検定委員会」が旧書写検そのもの又はその正当な承継団体であるかのように誤信させて著しい混同を生じさせており,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当することは明白である。 (イ) 被告琴河原の上記行為によって,原告中野書写検がその営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあることも明らかである。 (被告琴河原の主張)原告中野書写検の主張はいずれも否認する。 イ被告らによる「全国書写書道教育振興会」の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号又は不法行為に該当するか等(争点(2)イ)について(原告中野書写検の主張)(ア) 被告社団法人書写書道振興会は,平成22年4月1日付けで,「全国コンクールの開催」等を目的として設立された。旧書写検(原告中野書写検と同一団体)の名称である「日本書写能力検定委員会」と「全国書写書道教育振興会」とは「日本」と「全国」が観念的に類似し,「書写」を「書写書道」に置き換えたのみで,「検定委員会」を「教育振興会」に置き換えているものの,「書写」ないし「書写書道」という本質 書道教育振興会」とは「日本」と「全国」が観念的に類似し,「書写」を「書写書道」に置き換えたのみで,「検定委員会」を「教育振興会」に置き換えているものの,「書写」ないし「書写書道」という本質 的部分及び配置が同一で,両者は酷似している。 被告社団法人書写書道振興会は,平成22年度において,別紙コンクール目録記載の各コンクールを実施するとしている。これらのコンクールは,別紙コンクール目録記載1及び5の各コンクールについて,大会名のはじめに「全国」が付いている点を除けば,回次,大会名ともに原告中野書写検が同年度に実施する大会名と全く同じである。また,対象,締切りその他の実施方法も原告中野書写検のコンクールとほぼ同じで,旧書写検の会員名簿等をそのまま用いて勧誘活動を行ったり,被告社団法人書写書道振興会が従来のコンクール事業を旧書写検及び毎日新聞社から継承したと繰り返し広報したりしていることとも相まって,原告中野書写検のコンクール事業との間に著しい混同を生じさせている。 被告社団法人書写書道振興会の上記行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するとともに,偽計業務妨害行為として不法行為に該当する。また,別紙コンクール目録記載の各コンクールは,実質的に被告社団法人書写書道振興会と被告琴河原とが共同で実施するものと評価すべきものであり,その中心的役割を担っているのは被告Bであるから,上記不正競争行為及び不法行為は被告らの共同不法行為に該当する。 (イ) 被告らの上記行為によって,原告中野書写検がその営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあることが明らかであり,原告中野書写検に事後的な金銭賠償によっては回復することができない損害を生じさせるものであることも明らかである。 ( の営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあることが明らかであり,原告中野書写検に事後的な金銭賠償によっては回復することができない損害を生じさせるものであることも明らかである。 (被告らの主張)原告中野書写検の主張はいずれも否認する。 (3) 第2事件ア原告中野書写検による「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写 検」(英語表記「shoshaken」)の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当するか等(争点(3)ア)について(被告琴河原の主張)(ア) 旧書写検の名称である「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示は,被告琴河原の営業表示である。 (イ) 原告中野書写検は,旧書写検と同一の名称である「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示を使用し,被告琴河原(書写書道検)と同一の事業を実施しているだけでなく,旧書写検の名簿を利用し,原告中野書写検が旧書写検の事業を承継したかのような内容の文書や機関誌を発信し続けているため,旧書写検と原告中野書写検の混同が生じ,混乱は悪化する一途をたどっている。 原告中野書写検の上記行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当する。 (ウ) 被告琴河原は,既に毎日新聞社,文部科学省から平成22年度の書写書道検に対する後援,共催について,原告中野書写検との係争が解決するまでは,取りやめるとの通告を受けた。原告中野書写検の上記不正競争行為により,長年にわたり培ってきた毎日新聞社や文部科学省との信頼関係にひびが入ってしまったのである。被告琴河原の今後の書道教育事業が受ける打撃は大きい。 た。原告中野書写検の上記不正競争行為により,長年にわたり培ってきた毎日新聞社や文部科学省との信頼関係にひびが入ってしまったのである。被告琴河原の今後の書道教育事業が受ける打撃は大きい。 被告琴河原は,原告中野書写検の不正競争によって営業上の利益を侵害されており今後も侵害されるおそれが強い。 (原告らの主張)被告琴河原の主張(ア)は否認する。同(イ)のうち,第1段落の初めから「発信し続けている」までは認め,その余の第1段落及び第2段落は否認 する。同(ウ)のうち,第1段落の第1文及び第3文は知らない,第1段落の第2文及び第2段落は否認する。 イ被告社団法人中野書写検による「日本書写能力検定委員会」の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当するか等(争点(3)イ)について(被告琴河原の主張)(ア) 旧書写検の名称である「日本書写能力検定委員会」の表示は,被告琴河原の営業表示である。 (イ) 被告社団法人中野書写検は,旧書写検の名称である「日本書写能力検定委員会」の表示を使用し,原告中野書写検と共催で全国コンクール事業を実施しており,参加者がいずれの全国大会に参加すればよいのか混乱することになるのは必至である。 被告社団法人中野書写検の上記行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当する。 (ウ) 被告琴河原は,被告社団法人中野書写検の不正競争によって営業上の利益を侵害されており今後も侵害されるおそれが強い。 (原告らの主張)被告琴河原の主張(ア)は否認する。同(イ)のうち,第1段落の旧書写検の名称使用及び全国コンクール実施は認め,その余の事実は否認する。同(ウ)は否認する。 ウ原告らが不正競争 被告琴河原の主張(ア)は否認する。同(イ)のうち,第1段落の旧書写検の名称使用及び全国コンクール実施は認め,その余の事実は否認する。同(ウ)は否認する。 ウ原告らが不正競争防止法4条・不法行為に基づく損害賠償責任を負うか(争点(3)ウ)について(被告琴河原の主張)(ア) 被告Aは,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検の代表者として,被告琴河原が旧書写検の表示を使用していたことを知っていたから,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検は,旧書写検の表示を使用して不正競争行為をするにつき故意又は過失がある。 (イ) 原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検は,不正競争行為によって,対外的に著しい混乱を招き,被告琴河原(書写書道検)の事業を妨害し続けているのであり,不正競争行為に当たるとともに,不法行為にも当たる。 (ウ) 被告Aは,被告琴河原の取締役を解任される以前から,会員や生徒等に対し,被告Bの名誉を毀損し,旧書写検において,被告琴河原経営陣との間で紛争が生じており,旧書写検の利益を代弁するために自らが闘うといった文書を発信し,被告琴河原の対外的な信用を侵害する行為を行っていた。 また,被告Aは,直属の部下であったD,E及びFを使い,被告琴河原の業務を混乱させたうえで,上記3名が被告琴河原の従業員であったにもかかわらず,原告中野書写検の従業員になるよう兼業の勧誘を行い,Eについては被告社団法人中野書写検の役員としている。 さらに,被告Aは,被告琴河原の取締役解任後,原告中野書写検の理事長兼会長と称して,各文書を原告中野書写検の名称を利用して発信し混乱を招いている。 被告Aは,被告琴河原の取締役在任中から被告琴河原に対し 被告琴河原の取締役解任後,原告中野書写検の理事長兼会長と称して,各文書を原告中野書写検の名称を利用して発信し混乱を招いている。 被告Aは,被告琴河原の取締役在任中から被告琴河原に対し負うべき忠実義務に違反し信用毀損行為を行い,退任後は,社会的相当性を逸脱した競業行為を率先して行っている。かかる被告Aの行為は,取締役在任中は会社法355条,356条に基づく忠実義務に,退任後は信義則上の各義務に違反し,不法行為責任を負う。 (エ) 原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検の不正競争行為及び不法行為と被告Aの不法行為は,社会的にみて一個の行為であるから,共同不法行為に当たる。 (原告らの主張)被告琴河原の主張(ア)は否認する。同(イ)は否認する。同(ウ)の第1段 落は否認し,第2段落のうち,D,E及びFが被告Aの直属の部下であり,被告琴河原の従業員であったこと,Eが被告社団法人中野書写検の理事であることを認め,その余は否認し,第3段落は知らない,第4段落は否認する。同(エ)は否認する。 エ被告琴河原の損害額(争点(3)エ)について(被告琴河原の主張)(ア) 原告らによる不正競争行為・不法行為の結果が反映され始めた平成22年3月から同年5月までの被告琴河原(書写書道検)の売上を前年度の同期間の売上と比較すると,3か月間で1338万6000円,月額で446万2000円販売減少したことが明らかとなった。今後,本件が終結し,紛争が解決するまでに少なくとも1年かかるとして,被告琴河原の予想販売減少額は,5354万4000円となる。旧書写検の利益率は平均して65%であったから,5354万4000円の65%である3480万3600円が,原告らの不正競争行為・不法行為によ 琴河原の予想販売減少額は,5354万4000円となる。旧書写検の利益率は平均して65%であったから,5354万4000円の65%である3480万3600円が,原告らの不正競争行為・不法行為による販売減少の損害額となる。 (イ) 原告らの不正競争行為・不法行為により,長年にわたり培ってきた毎日新聞社や文部科学省との信頼関係にひびが入ってしまったのであり,その信用毀損による損害は金額にして1000万円を下らない。 (ウ) したがって,被告琴河原の損害は,少なくとも合計で4480万3600円となる。 (原告らの主張)被告琴河原の主張はいずれも否認する。 オ被告琴河原の信用を回復する措置が必要か(争点(3)オ)について(被告琴河原の主張)(ア) 原告中野書写検の不正競争行為により,旧書写検の生徒に混乱を招いたばかりか,これまで数十年に亘り付き合いのあった毎日新聞社,文 部科学省からの全国大会の協賛を失ってしまった。また,原告中野書写検が,別団体などの協賛を要請するにあたり,Cが創設した旧書写検の後継者であるかの振る舞いを続けているために,対外的にも誤解を招いている。 (イ) 被告琴河原の元には,混乱した生徒らやその父兄,指導者からの問い合わせが相次ぎ,対応に苦慮しており,現在も,原告中野書写検から各文書の送付が続けられる度に,混乱は消えない。原告中野書写検の理事長兼会長を称する被告Aが,被告琴河原の元取締役であるために,なお一層,生徒や父兄,指導者らからは,被告琴河原の管理能力について問題があるかの指摘を受けることもあった。 (ウ) さらに,原告中野書写検から審査委員に向けて提出した甲90号証には,本裁判での被告琴河原の書面の一部のみが恣意的に引 河原の管理能力について問題があるかの指摘を受けることもあった。 (ウ) さらに,原告中野書写検から審査委員に向けて提出した甲90号証には,本裁判での被告琴河原の書面の一部のみが恣意的に引用され,原告中野書写検の都合のよい解釈が付されているなど,被告琴河原の信用を貶める内容が含まれていることは明らかである。 (エ) 以上を考慮すれば,被告琴河原の信用を回復させるためには,原告中野書写検に別紙通知文(案)を送付させる必要がある。なお,別紙送付先リストは,原告中野書写検が「書写検だより」などの文書を発信している宛先及び後援を要請した団体などである。そのほとんどは旧書写検(現在の書写書道検)の会員・受講生や受験団体である。 (原告中野書写検の主張)被告琴河原の主張(ア)の第1文は否認し,第2文のうち,原告中野書写検が別団体等の協賛を要請するに当たり,Cが創設した旧書写検の後継者である旨を伝えていることは認め,その余は否認する。同(イ)は知らない。 同(ウ)のうち,原告中野書写検が審査員に甲90号証を発信したことは認め,その余は否認する。同(エ)のうち,第1文は否認し,第2文及び第3文は知らない。 第3 当裁判所の判断 1 本件訴訟に至る経緯後掲の証拠(特に掲記しない限り枝番号を含む。)等によれば,以下の各事実がそれぞれ認められ,これらを覆すに足りる証拠はない。 (1) Cは,昭和45年,琴河原学園において書道教室を開始し,琴河原学園はその後有限会社組織とされた。被告琴河原は,平成12年6月12日,株式会社に組織変更され,その中には,日本パソコン能力検定委員会が設けられ,Cの子である被告Bは主に同委員会の業務を担当していた。 (前提事実(1)イ,(3)ア及びイ,甲2,16の2, 6月12日,株式会社に組織変更され,その中には,日本パソコン能力検定委員会が設けられ,Cの子である被告Bは主に同委員会の業務を担当していた。 (前提事実(1)イ,(3)ア及びイ,甲2,16の2,乙130,131,139の2,139の6,被告B本人)(2) 旧書写検は,昭和59年の創設以来,その創設者であるCが理事長を務めてきたが,長年,Cの下でお手本の製作や生徒の指導等に当たってきた被告Aが平成20年10月から指導面での責任者である会長とされた。被告Aは,硬筆楷書教材の変更及びインストラクター制度の改革などを行おうとしたが,地方の会員からは反対の声もあり,旧書写検の組織運営は混乱するようになった。そして,平成21年5月31日に開催された会員の会総会では,新インストラクター制度に対する反対の意見が提出されるとともに,理事会の開催が要求された。 (前提事実(1)ウ及び(2)イ,甲21,61,100,乙44,47~49,51,130,131)(3) そのころ,Cは,平成21年ころいわゆる漢検問題で同族経営に対する社会的批判が強まっていたこと,同年5月,被告琴河原が約10年ぶりに税務署の調査を受けることになったこと,Cが高齢となり金融機関からの融資を受けることも困難となったことなどの事情から,理事長職を被告Aに譲る決意を固めた。また,上記(2)のとおり,会員の会総会でも,理事会開催要求があったことから,Cは,理事会を開催して,そこで被告Aを新理事長に選 任することを計画した。 (甲21の7,甲22,61,100,乙50)(4) 平成21年6月16日に開催された理事会には,C,被告A,被告Bのほか,被告Bの妻であるG,H,Eが出席し,他の1人の理事であるIは被告Bに委任して欠席した。同理事会では,Cが被告 )(4) 平成21年6月16日に開催された理事会には,C,被告A,被告Bのほか,被告Bの妻であるG,H,Eが出席し,他の1人の理事であるIは被告Bに委任して欠席した。同理事会では,Cが被告Aを理事長に選任することを提案したが,被告Bは組織内部に混乱が生じていることを理由としてこれに難色を示し,Gもこれに同調した。理事会での議決の結果,被告Aを理事長とする案について,被告B,G,Iの3名は反対したものの,C,被告A,H,Eの4名が賛成し,被告Aが理事長に選任された。 (甲22,弁論の全趣旨)(5) 平成21年9月10日に開催された第2回理事会においては,被告Aが杉並区に常設の指導場所を設けるなどの提案をしたが,被告Bはこれらに反対し,議事はまとまらなかった。その後も新インストラクター制度に対する反対があったことなどから,被告琴河原の代表取締役に就任した被告Bと被告Aとの間にあつれきが深まり,被告Bは,被告琴河原の代表取締役として,被告琴河原の取締役であった被告Aに対し,平成21年12月16日付けで,業務改善命令を発した。そして,被告琴河原は,平成22年1月8日,取締役会において,被告Aの取締役解任を議題とする株主総会の招集を決議するとともに,被告Aを旧書写検担当の取締役から解任する旨を決議した。 (甲26,27,61,81,100,乙38,46,52,53,87,130,被告A本人)(6) 被告琴河原は,平成22年1月31日,株主総会において,被告Aを取締役から解任する旨を決議した。これに対し,被告Aは,旧書写検の会員に対し,「日本書写能力検定委員会理事長・会長」の肩書において,同年2月4日付け「25年の歴史に立脚した日本書写能力検定委員会を守る」と題する文書を送付した。当該文書には,被告琴河原と旧書写検との に対し,「日本書写能力検定委員会理事長・会長」の肩書において,同年2月4日付け「25年の歴史に立脚した日本書写能力検定委員会を守る」と題する文書を送付した。当該文書には,被告琴河原と旧書写検との関係等について, 被告Aの見解が述べられ,「25年の歴史に立った書写検を共に守り,これからの書写教育の発展を共につくっていくことを呼びかけたい」などと記載されていた。 (甲36,乙7,被告A本人)(7) 被告琴河原は,平成22年2月12日,被告Aが旧書写検の会員等に対して旧書写検の名称を使用して文書を送付することによって,旧書写検の会員等に混乱が生じることを避けるため,株主総会において,定款30条「当会社の目的遂行のために,琴河原学園および日本書写能力検定委員会,日本パソコン能力検定委員会を設置する。」の「日本書写能力検定委員会」を削除し,新たに「日本書写書道検定委員会」に改定し,同条を変更する旨の定款変更を決議した。そして,被告琴河原は,旧書写検の会員等に対し,同年22日付けで,①Cの手紙(甲48の1),②「日本書写能力検定委員会,組織,名称変更のお知らせ」と題する文書(甲48の2),③「会長就任のご挨拶」と題する文書(甲48の3,乙69)等を送付した。上記②には,旧書写検が廃止され,旧名称「日本書写検定委員会」から新名称「日本書写書道検定委員会」に変更され,書写書道検と被告社団法人書写書道振興会が旧書写検の業務を継続することに加え,被告A名義の文書が被告琴河原と関係がない旨が記載されていた。 (甲48,61,乙69,乙130)(8) 原告中野書写検は,平成22年2月下旬以降,「日本書写能力検定委員会」の名称を使用し,旧書写検の会員等に対し,被告琴河原との紛争の経緯,旧書写検が東京都中野区に移転するかのような説明 (8) 原告中野書写検は,平成22年2月下旬以降,「日本書写能力検定委員会」の名称を使用し,旧書写検の会員等に対し,被告琴河原との紛争の経緯,旧書写検が東京都中野区に移転するかのような説明又は振込口座の変更が記載された,同月26日付け「書写検の家業化阻止にご協力を」と題する文書(甲50),同年3月2日付け「新本部開設に伴う措置について(至急)」と題する文書(乙74の2),同月7日付け「書写検『会員の会』(4. 4)臨時総会のお知らせ」と題する文書(乙75の2),日付の記載のない 「受講料納入方法・教材について」と題する文書(乙76)を送付した。そのため,旧書写検の検定試験受験者が検定作品を原告中野書写検に対して送付するなどの混乱が生じた。また,原告中野書写検が一般社団法人として活動することに備え,被告社団法人中野書写検が同年2月22日に設立された。 (甲50,61,乙60,74~76,100,130,被告A本人)(9) 被告琴河原は,書写書道検の名義で,旧書写検の会員等に対し,平成22年3月8日付け「【お願い】退会届をA氏にお送りください」と題する文書(甲57の2)に退会届のひな形を添えて送付した。当該文書には,「A氏が今後も私どもの警告を無視し,『日本書写能力検定委員会』を名乗り,いかなる文書を発信しても,破棄して頂くよう何卒お願い申し上げます。」,「そこで混乱を避けるために,A氏に対して退会届を送って頂くよう,心よりお願い申し上げます。」などと記載されていた。 (甲57の2~57の4,甲61,乙130)(10) 原告中野書写検は,平成22年3月25日,第1事件を提起した。旧書写検は,全国大会を毎日新聞社と共催し,文部科学省の後援を得ていたところ,本件を契機として,全国大会の業務を引き継いだ被告社団法人 ) 原告中野書写検は,平成22年3月25日,第1事件を提起した。旧書写検は,全国大会を毎日新聞社と共催し,文部科学省の後援を得ていたところ,本件を契機として,全国大会の業務を引き継いだ被告社団法人書写書道振興会は,毎日新聞社との共催や文部科学省の後援を得られなくなった。 (乙130,被告B本人,当裁判所に顕著) 2 原告中野書写検の当事者能力について争点の検討に先立ち,原告中野書写検の当事者能力(民事訴訟法29条)について検討する。 (1) 後掲の証拠等によれば,以下の各事実がそれぞれ認められ,これらを覆すに足りる証拠はない。 ア原告中野書写検の本部会則原告中野書写検は,本部会則として,以下のとおり定めている。 記 第2章目的および活動(目的)第3条本委員会は書写教育の普及と向上に寄与することを目的とする。 (事業)第4条本委員会は,前条の目的を達成するために次の事業を行う。 1.書写に関する検定試験の実施およびこれに必要な調査,研究。 2.検定受検者の成績の管理およびその証明書の発行。 3.書写に関する講習会,講演会などの開催。 4.書写指導員の育成および認定。 5.書写の全国大会の実施。 6.書写に関する出版物の刊行。 7.その他,目的を達成するために必要な事業。 (会員制度)第5条本委員会は,第3条の目的を達成するために会員制度を組織する。 1.会員とは書写を理解し本委員会の目的に賛同する者。 2.会員の組織は別に定める会員規定により運営するものとす 会は,第3条の目的を達成するために会員制度を組織する。 1.会員とは書写を理解し本委員会の目的に賛同する者。 2.会員の組織は別に定める会員規定により運営するものとする。 第4章役員顧問評議員および職員(役員)第7条本委員会には,次の役員を置く。 理事長1名,副理事長若干名,理事3名以上7名以内(理事)第8条理事は本委員会の設立発起人が就任し,理事は互選で理事長を選任する。理事長は副理事長を任命し,また必要に応じて理事を若干名任命することができる。 (正副理事長の職務) 第9条理事長は本委員会を代表し,この会の業務を統轄する。 また会員制度の会長を兼務するものとする。 副理事長は理事長を補佐し,理事長に事故があるとき,または欠けたときはその職務を代行する。また会員制度の副会長を兼務するものとする。 (理事の職務)第10 条理事は正副理事長と理事会を組織し,本委員会の業務を議決し執行する。 (役員の任期)第11 条本委員会の役員の任期は2年間とし,再任を妨げない。 補欠によって選任された役員の任期は,前任者の残任期間とする。 (役員の給与)第12 条役員は有給とすることができる。 (顧問)第13 条本委員会は,理事会の承認を経て顧問を若干名置くことができる。 顧問は会長の諮問に応じ,意見を述べることができる。 (評議員)第15 条本委員会は評議員を若干名置く 経て顧問を若干名置くことができる。 顧問は会長の諮問に応じ,意見を述べることができる。 (評議員)第15 条本委員会は評議員を若干名置くことができる。評議員は,理事会でこれを選出し理事長が委嘱する。評議員には第11 条を準用する。この場合には同条中「役員」とあるのは「評議員」と読み替えるものとする。評議員は評議員会を組織し,理事会の諮問に応じる。 (職員) 第16 条本委員会の事業を処理するために職員を置く。 職員は理事長が任免する。 職員は有給とする。 第5章会議(理事会の招集および定足数)第17 条理事会は理事長が招集する。 定職数は理事の2分の1以上が出席しなければ議事を開き議決をする事ができない。理事会は出席者の過半数をもって決し可否同数のときは理事長の決するところによる。ただし当該理事に付きあらかじめ書面をもって意思表示した者は出席者とみなす。 第6章資産および会計(資産の種類)第19 条本委員会の資産は,次の通りとする。 1.設立当初の財産目録に記載された財産2.事業に伴う収入3.資産から生じる果実4.寄付金品5.その他の収入(事業の費用)第20 条本委員会の事業遂行に要する費用は,事業に伴う収入および資産から生じる果実その他の運用財産をもって支弁する。 (事業計画および収支予算)第21 条本委員会の事業計画及びこれに伴う収支予算,決算は,毎会計年 事業に伴う収入および資産から生じる果実その他の運用財産をもって支弁する。 (事業計画および収支予算)第21 条本委員会の事業計画及びこれに伴う収支予算,決算は,毎会計年度終了後2ヶ月以内に会長が理事会を招集し承認を受けることとする。 (会計年度) 第22 条この会の会計年度は,毎年4月1日に始まり3月31日に終わる。 (甲1の1)イ原告中野書写検の会員制度についての規定原告中野書写検は,会員制度について,以下のとおり定めている。 記第1章総則第1条この規定は日本書写能力検定委員会の会員制度について定める。 (事務局)第2条会員事務局は日本書写能力検定委員会本部事務局内に置く。 第2章目的および活動(目的)第4条本制度の目的は,書写教育普及振興のために日本書写能力検定委員会の事業に協力し,書写教育向上発展に寄与すると共に,会員相互の親睦を計り互いに助け合うことを目的とする。 (活動)第5条会員は前条の目的を達成するため次の事業を行う。 1.日本書写能力検定委員会の事業に協力する。 2.講習会,展覧会などの開催。 3.その他必要と認める事業。 第3章会員(入会金及び会費)第8条入会金および会費は次の通りとする。 入会金 ¥ 1,000会費一般会員月額 ¥ 100(年一括納入)正会員月額 ¥ 2,000 ¥ 1,000会費一般会員月額 ¥ 100(年一括納入)正会員月額 ¥ 2,000 賛助会員年額一口 ¥10,000第4章役員(役員)第12 条本会には次の役員を置く。 会長1名,副会長若干名,幹事若干名,運営委員15名以内。 (会長)第13 条会長は日本書写能力検定委員会本部の理事長が兼務し会を統括する。 (副会長)第14 条副会長は日本書写能力検定委員会本部の副理事長が兼務し会長を補佐する。 第5章会議(総会の構成)第20 条総会は正会員をもって組織する。 (総会の議決事項)第24 条総会は次の事項を議決する。 1.事業計画および収支予算2.事業報告および収支決算3.その他幹事会において必要と認めた事項(総会の定足数)第25 条総会は,正会員現在数の2分の1以上の者が出席しなければ,その議事を開き議決することは出来ない。ただし,当該議事について予め書面をもって意思表示をしたものは出席と見なす。 (甲1の2)ウ原告中野書写検の活動状況(ア) 組織の構成 原告中野書写検は,平成22年2月下旬以降,一般会員を募集し,同年4月4日,会員の会の臨時総会を開催し,会員11名と本部関係者6名が参加した。 (甲61,乙72,73の1,75の2)(イ) 理事の選任原告中野書写検は,平成22年2月17日,被告A,E, の臨時総会を開催し,会員11名と本部関係者6名が参加した。 (甲61,乙72,73の1,75の2)(イ) 理事の選任原告中野書写検は,平成22年2月17日,被告A,E,H及びJが出席して理事会を開催し,Jの理事就任や旧書写検会則2条を改訂して本部を原告中野書写検の現住所とすることなどを承認した。 (甲46,61)(ウ) 財務会計原告中野書写検は,平成22年3月1日,東京都中野区の現住所に移転し,以後,受講料を原告中野書写検が設けた郵便局の口座に支払うよう通知するなど独自の財政基盤の下に活動している。 (甲61,乙76,弁論の全趣旨)エ被告社団法人中野書写検について被告社団法人中野書写検は,平成23年2月22日に設立登記がされ,原告中野書写検と全国大会(全国コンクール)を共同開催しているものの,自己の財産について独立の資産管理を行っていない。 (甲100,乙60)(2) 以上に基づいて,原告中野書写検の当事者能力について検討する。 法人格なき社団として当事者能力を備えているというためには,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成委員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることを要する(最高裁平成13年(受)第1697号同14年6月7日第二小法廷判決・民集56巻5号899頁参照)。 これを原告中野書写検についてみるに,上記(1)に認定した事実に照らせば,原告中野書写検は,会員及び理事会等の組織を備え,理事会においては多数決の原則が行われ,理事長が原告中野書写検を代表するものと認められる。 会員制度の目的は,原告中野書写検の事業 した事実に照らせば,原告中野書写検は,会員及び理事会等の組織を備え,理事会においては多数決の原則が行われ,理事長が原告中野書写検を代表するものと認められる。 会員制度の目的は,原告中野書写検の事業に協力し,会員相互の親睦等を図るものとされ,原告中野書写検の外にあってこれに協力する団体であるかのような体裁となっているが,会長は原告中野書写検の理事長が当然に兼務し,会を統括するものとされているから,実質的には原告中野書写検の構成員であるとみるのが相当である。そして,その構成員である会員の変更にかかわらず団体が存続しているものと認められる。また,会員の会の運営や財産の管理等を含めて原告中野書写検団体としての主要な点が確定しているものと認められ,財産管理の点を含めて現実にも独立した運営が行われているものと認められる。したがって,原告中野書写検は,民事訴訟法29条に定める「法人でない社団」に該当し,当事者能力が認められる。 (3) 以上のとおり,原告中野書写検の訴えは適法である。 3 旧書写検が権利能力なき社団であり,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)という営業表示の主体であったか(争点(1))について(1) 後掲の証拠(特に掲記しない限り枝番号を含む。)等によれば,以下の各事実がそれぞれ認められ,これらを覆すに足りる証拠はない。 ア旧書写検の会則旧書写検の本部会則及び会員制度についての規定は,前記2(1)の原告中野書写検の会則及び会員制度についての規定とほぼ同一のものであった。 (甲1の1,1の2,乙5,弁論の全趣旨)イ旧書写検の資産管理(ア) 旧書写検では,設立以来,資産目録が作成されたことはなく,独自に保有する不動産等の資産もなかっ であった。 (甲1の1,1の2,乙5,弁論の全趣旨)イ旧書写検の資産管理(ア) 旧書写検では,設立以来,資産目録が作成されたことはなく,独自に保有する不動産等の資産もなかった。 (乙130,弁論の全趣旨)(イ) 旧書写検名義で開催されるコンクールの出品料等の収入については,被告琴河原が加入者であって「日本書写能力検定委員会」が別名として表示される郵便振替口座(00140-5-124759)が全国大会の出品料等の納付先口座として使用されていた。また,旧書写検では,みずほ銀行東青梅支店の「日本書写能力検定委員会会長C」名義の普通預金口座(1100008)が振込先口座として使用されていたが,当該口座は被告琴河原が管理していた。 (甲5~9,14の7~14の9,甲61,乙11,88,93,130,132,被告B本人)(ウ) 旧書写検会員の会の会費等については,被告琴河原の預り金として会計処理されていた。 (乙15,130,被告B本人)(エ) 以上のとおり,旧書写検の収入を被告琴河原が管理していたため,被告琴河原は,旧書写検の担当取締役であった被告Aや旧書写検担当の従業員であったD,E及びFの人件費を含めて,旧書写検の必要経費をすべて支出していた(例えば,全国大会において収支不足金があった場合には,被告琴河原が負担していた。)。 (乙14,22~25,84,111,130~132,被告B本人)(オ) 旧書写検の収支及び資産は,すべてが被告琴河原の収支及び資産として,その財務諸表に計上され,被告琴河原において税金が納付されていた。 (甲100,乙8,9,10の1,乙12~14,86,130,132,被告A本人,被告B本人)ウ旧書写検の組織運営 の財務諸表に計上され,被告琴河原において税金が納付されていた。 (甲100,乙8,9,10の1,乙12~14,86,130,132,被告A本人,被告B本人)ウ旧書写検の組織運営旧書写検では,平成21年6月16日,理事会が開催されたが,それは 設立以来初めて開催されたものであった。 (甲21の7,甲22,61,乙50,130,被告A本人,被告B本人)エ被告琴河原における旧書写検の位置付け(ア) 旧書写検のホームページは,平成12年9月の開設当初から,「個人情報保護方針」として「本委員会は琴河原株式会社の書写書道教育事業です。個人情報全体の管理については琴河原株式会社が主体となって行います。」と記載されていた。また,旧書写検の受験団体登録カードには,裏面に「日本書写能力検定委員会は琴河原株式会社の書写書道教育事業です。個人情報全体の管理については琴河原株式会社が主体となって行います。」と記載されていた。 (乙17~19,130,140)(イ) 被告琴河原は,平成17年1月1日,定款を変更し,30条において,「当会社の目的遂行のために,琴河原学園および日本書写能力検定委員会,日本パソコン能力検定委員会を設置する。」と定めた。 (甲2の2,乙112)(ウ) 被告琴河原は,Kとの間の,平成19年1月1日付け業務委託契約書,平成20年3月1日付け顧問契約書及び同年12月25日付け顧問契約書において,上記Kに委託又は委嘱する業務として,「琴河原株式会社の組織である日本書写能力検定委員会」の活動に関する助言又は業務に関する指導助言としていた。 (乙32~34の各2)オ被告Aらにおける旧書写検の位置付け(ア) 被告Aは,平成21年11月20日 写能力検定委員会」の活動に関する助言又は業務に関する指導助言としていた。 (乙32~34の各2)オ被告Aらにおける旧書写検の位置付け(ア) 被告Aは,平成21年11月20日,被告琴河原の経理担当であるLに対し,東京都中野区に旧書写検の教室を開設するに当たり,契約者を被告琴河原,連帯保証人を被告Bとする内容の賃貸借契約の締結を打 診した。また,その入居申込書の欄外には,Eの筆跡で「なお,日本書写能力検定委員会は琴河原株式会社内において独立の理事会規定を持つ公的団体として運営されており文部科学省の後援で毎日新聞社と年間五つの書写書道全国大会を開催しています。」と記載されていた。 (乙54~56,乙130)(イ) 被告Aは,平成22年1月10日,旧書写検の理事長及び会長の肩書において,旧書写検の会員に対し,「書写検は公共性高い団体であり続けます」との表題の文書を送付した。当該文書には,「日本書写能力検定委員会は皆様のご協力を得て今年度,創設25周年を迎えました。 私たちは書写検本部会則,『会員の会』規定の精神を尊重し,社会に有益な公共性の高い活動を目指しています。しかしここにきて,設立母体の琴河原株式会社は理不尽にも四半世紀に及ぶ歴史と実体をもつ任意団体としての書写検を否定し,会社の事業部門だけの位置づけに方針転換しました。」,「この事態をご理解いただくには,書写検の二面性が大きなポイントとなります。書写検は株式会社の定款にある事業部門である一方で,創設以来,書写検本部会則と『会員の会』規定を定め,公共性の高い団体として位置づけ,運営の基本としてきました。文字文化の振興という崇高な使命を果たしていくためには高い公共性を維持するべきだ,という考えからです。そして,株式会社の事業部門としてのもう一 性の高い団体として位置づけ,運営の基本としてきました。文字文化の振興という崇高な使命を果たしていくためには高い公共性を維持するべきだ,という考えからです。そして,株式会社の事業部門としてのもう一面は決して外に出さず,書写検の対外的な事業・活動から琴河原株式会社の名前は一切消して運営してきました。会員の皆様も日ごろの書写検との関係を振り返ってみていただければ,思い当たられることでしょう。検定もコンクールも振込先の名義はどれも書写検であること一つをとっても明らかです。」,「書写検は平成20年末ごろ,琴河原学園教室との事業仕分けによって,青梅市では書の指導活動は一切行わない,という調整案をやむなく受け入れました。そのため,都心部で教室 のジプシー展開をしてまいりました。しかし,それも限界ということで常設教室を設けることとし,会社の今期予算案にも盛り込んで承認を受けました。」,「財務に関しては本部会則には自主運営の規定があるものの会社に実務を付託する形できましたが,会社の予算には計上しながら執行を妨害するのは権力濫用もはなはだしいと言わなくてはいけません。」,「私は『書写検の利益は会社の利益』の精神で本部理事長・会長と会社の担当役員の立場を両立させて参りました。その立場から言いますと,書写検を隆盛にすることが会社生き残りの道であるにもかかわらず,書写検潰しとも言える行動に走るのは,会社に背く罪を犯しているのではないかと思えるほどです。」などと記載されていた。 (甲30,乙16)(ウ) 旧書写検の顧問であったKは,平成21年5月31日付けで,被告琴河原代表取締役Cあてに,顧問契約を解約する旨通知するとともに,同年6月7日,Lに対し,「私議,Kは書写検顧問の業務契約を解約する意思を…表明しました。」,「この業務契約は琴河 31日付けで,被告琴河原代表取締役Cあてに,顧問契約を解約する旨通知するとともに,同年6月7日,Lに対し,「私議,Kは書写検顧問の業務契約を解約する意思を…表明しました。」,「この業務契約は琴河原株式会社との間で結んでいるもので,解約は契約書第4条に基づくものです。」などと記載したメールを送信した。 (乙35,36)カ旧書写検の対外的活動の状況(ア) 旧書写検は,昭和59年7月から平成22年1月まで,「書写検だより」との名称の機関誌を発行していたが,「書写検だより」には,被告琴河原との関係が記載されることはなかった。 (甲17,乙42,44)(イ) 旧書写検は,平成22年1月まで,毎日ひらがな・かきかたコンクール,毎日全国学生書写書道展,全国硬筆コンクール,全国年賀はがきコンクール及び毎日学生書き初め展覧会を毎日新聞社と共催し,文部科 学省等の公的機関の後援を得ていた。上記各全国大会では,その決算書や公的機関にあてた後援願い等を含めて,被告琴河原との関係が記載されることはなかった。 (甲5~13)(ウ) 旧書写検は,平成19年4月1日から平成20年2月11日までの間,文化庁から,「文化ボランティア推進モデル事業」を委嘱され,「教学キャリア」を実施した。当該事業の委嘱先としては,地方公共団体,公立文化会館,公益法人等とされ,旧書写検の事業計画書では,「日本書写能力検定委員会は,…書写教育の普及及び向上に寄与する事を目的に設立されました。会則により設けられた理事会が意志決定機関となり,専任の会計事務処理者を置き,収支予算決算は理事会が承認します」などと記載され,その他文化庁に提出した文書を含めて,被告琴河原との関係が記載されることはなかった。 (甲14,96,100) 専任の会計事務処理者を置き,収支予算決算は理事会が承認します」などと記載され,その他文化庁に提出した文書を含めて,被告琴河原との関係が記載されることはなかった。 (甲14,96,100)キ被告琴河原の商標登録被告琴河原は,平成20年10月20日,「書写検」(標準文字)を商標出願し,平成21年8月14日,その商標登録をした。また,被告琴河原は,同年12月25日,「日本書写能力検定委員会」(標準文字),「全国書写能力検定委員会」(標準文字)を商標出願し,平成22年7月2日,それぞれ商標登録した。 (甲73の4,乙113~115)(2) 以上に基づいて,旧書写検が権利能力なき社団であったかについて検討する。 ア権利能力なき社団に当たり,営業表示の主体であるというためには,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財 産の管理その他団体としての主要な点が確定していなければならない(最高裁昭和35年(オ)第1029号同39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁参照)。これらのうち,財産的側面についていえば,必ずしも固定資産ないし基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく,そのような資産を有していなくても,団体として,内部的に運営され,対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され,かつ,その収支を管理する体制が備わっているなど,他の諸事情と併せ,総合的に観察して,法人格なき社団として認められる場合があるというべきである(前掲最高裁平成14年6月7日第二小法廷判決参照)。 イこれを本件についてみるに,旧書写検では,設立以来,資産目録が作成されたことはなく,独自に保有する不 られる場合があるというべきである(前掲最高裁平成14年6月7日第二小法廷判決参照)。 イこれを本件についてみるに,旧書写検では,設立以来,資産目録が作成されたことはなく,独自に保有する不動産等の資産もなく(上記(1)イ(ア)),全国大会の出品料等の納付先口座として,被告琴河原が加入者であった郵便振替口座(ただし,「日本書写能力検定委員会」が別名として表示される。)が使用され,「日本書写能力検定委員会会長C」名義の普通預金口座を振込先口座としていたものの,当該口座は被告琴河原が管理していた(上記(1)イ(イ))。また,会員の会の会費等も被告琴河原の預り金として処理されていた(上記(1)イ(ウ))。その上,被告琴河原は,旧書写検の必要経費をすべて支出し,旧書写検の収支及び資産は,すべてが被告琴河原の収支及び資産として,その財務諸表に計上され,被告琴河原において税金が納付されていた(上記(1)イ(エ)及び(オ))というのであるから,旧書写検は,その収支及び資産を管理する体制があったとはいい難い。 他方で,旧書写検の本部会則には,理事長1名,副理事長若干名,理事3名以上7名以内の役員を置き(7条),理事は互選で理事長を選任し(8条),理事長は,旧書写検を代表し,その業務を統轄する(9条)と定められ,理事は正副理事長と理事会を組織し,旧書写検の業務を議決し執行 し(10条),理事会は,理事長が招集し,出席者の過半数をもって決する(17条)と定められている(上記(1)ア)。しかしながら,旧書写検では,平成21年6月16日,初めて理事会が開催された(上記(1)ウ)のであるから,設立以来25年にわたって,本部会則とは異なる運営が行われていたことが明らかである。 以上に加え,被告琴河原においては,旧書写検を被 初めて理事会が開催された(上記(1)ウ)のであるから,設立以来25年にわたって,本部会則とは異なる運営が行われていたことが明らかである。 以上に加え,被告琴河原においては,旧書写検を被告琴河原の組織と位置付け(上記(1)エ),本件以前である平成20年10月20日に「書写検」の商標出願をしていること(上記(1)キ),被告Aらにおいても,旧書写検が被告琴河原の事業部門との認識を有していたと認められること(上記(1)オ)に照らすと,旧書写検は,被告琴河原の一事業部門であったものであり,それが被告琴河原から独立して東京都中野区に移転して原告中野書写検となって初めて権利能力なき社団となったものと認めるのが相当であって,旧書写検については,上記アに判示した権利能力なき社団の要件を満たさないというべきである。 ウこれに対し,原告らは,旧書写検が,旧書写検の本質的事業部分を除いた実務的業務について,被告琴河原に対し,包括的に委託して処理していた旨主張するけれども,これを認めるに足りる証拠はないし,当該主張のとおりであるならば,被告琴河原において,旧書写検の収支及び資産を被告琴河原の財務諸表に計上し,税金を納付する理由はないというべきである。 また,原告らは,旧書写検について独立した会計処理が行われ,甲15号証の1~3に示される旧書写検の損益推移表や予算案はそのことを示すものであるとするが,これらは被告琴河原の会計帳簿における旧書写検の部分を抜き出して作成したものにすぎず(乙13,被告B本人),これらをもって旧書写検について独立の会計処理が行われていたものと認めることはできない。 なお,旧書写検は,その対外的活動の主要な部分において,被告琴河原との関係を表面化させていなかったが(上記(1)カ),これは全国 独立の会計処理が行われていたものと認めることはできない。 なお,旧書写検は,その対外的活動の主要な部分において,被告琴河原との関係を表面化させていなかったが(上記(1)カ),これは全国大会における公的機関の後援を得るなどのためであって(乙1,130,被告B本人),その手法の是非はともかくとして,これによって上記イの判断が覆るものではない。 (3) 以上のとおり,旧書写検は,被告琴河原の一事業部門であって,権利能力なき社団ではないから,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示は,原告中野書写検の営業表示ではなく,被告琴河原の営業表示であると認められる。 したがって,旧書写検が被告琴河原から独立した営業主体であり,その営業表示として「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」を使用し,原告中野書写検がそれをそのまま継続して使用していることを前提とする原告中野書写検の請求(請求1及び3)は,その余について判断するまでもなく,いずれも理由がない。なお,原告中野書写検は,前記1(8)及び後記4(1)イのとおり,平成22年2月以降,その営業表示として「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示を使用しているが,その現在までの使用によって,上記各表示が原告中野書写検の営業表示として周知となったことを認めるに足りる証拠はない。 4 第2事件について(1) 後掲の証拠(特に掲記しない限り枝番号を含む。)等によれば,以下の各事実がそれぞれ認められ,これらを覆すに足りる証拠はない。 ア被告琴河原(書写書道検)の書写書道に関する事業被告琴河原は,昭和59年4月以降,その営業表示として,「日本書写能力検定委 それぞれ認められ,これらを覆すに足りる証拠はない。 ア被告琴河原(書写書道検)の書写書道に関する事業被告琴河原は,昭和59年4月以降,その営業表示として,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示を使用していた。そして,被告琴河原は,平成22年2月以降,書写書道検の名称として,「日本書写書道検定委員会」及びその略称「書写検 」(英語表記「shoshaken」)の表示を使用して,①全国書写書道検定試験の実施(㋐学校教育部門〔硬筆楷書検定・硬筆行書検定・毛筆半紙検定・毛筆本検定〕,㋑生涯学習部門〔毛筆行書検定・毛筆連綿検定・毛筆細字検定・毛筆草書検定〕),②資格認定と指導者育成(㋐指導者ライセンスの認定,㋑講習会の開催,㋒生徒指導,開塾の支援),③教育実習制度(教育実習の単位登録制度),④通信教育の実施,⑤手本及び教材の開発・頒布(幼児向けひらがな練習帳・各硬筆検定練習帳・各毛筆検定手本・硬筆用具・毛筆用具,毛筆用指導用教材など)の書写書道に関する事業を行うとともに,⑥被告社団法人書写書道振興会が主催する書写書道の全国大会(㋐全国ひらがな・かきかたコンクール,㋑全国学生書写書道展,㋒全国硬筆コンクール,㋓全国年賀はがきコンクール,㋔全国学生書き初め展覧会)に協賛し,その業務の委託を受けている。また,被告琴河原は,書写書道検のホームページとして<略>のウェブ・アドレスを使用している。 (前記3(3),甲85,乙43,130,141,被告B本人)イ原告中野書写検の書写書道に関する事業原告中野書写検は,その名称として,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」を使用して,①書写書道の検定試験の実施,②指導者ライセンスの認定,③通信教育の の書写書道に関する事業原告中野書写検は,その名称として,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」を使用して,①書写書道の検定試験の実施,②指導者ライセンスの認定,③通信教育の実施,④手本及び教材の販売,⑤講習会の実施の書写書道に関する事業を行うとともに,⑤被告社団法人中野書写検と書写書道の全国大会(㋐ひらがな・かきかたコンクール,㋑全国学生書写書道展,㋒全国硬筆コンクール,㋓全国年賀はがきコンクール,㋔学生書き初め展覧会)を共催している。また,原告中野書写検は,そのホームページとして<略>のウェブ・アドレスを使用し,旧書写検の機関誌と同じ題号である「書写検だより」を発行している(「書写検だより」274号〔乙80の2〕,275号〔乙73の1,乙82〕,276号〔乙8 3〕及び277号〔甲91,乙123〕には,原告中野書写検について,旧書写検と同じ沿革が記載されていた。)。 (甲84,91,100,乙65,73,乙77~83,123,124,130,135~138)(2) 原告中野書写検による「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当するか等(争点(3)ア)についてア 「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示は,被告琴河原の営業表示であり(上記(1)ア),周知性を得ていた(前提事実(5)ウ)。また,原告中野書写検が,旧書写検の名称である「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示を使用し,被告琴河原(書写書道検)と同一の事業を実施していることに当事者間に争いがない(争点に関する当事者の主張(3)ア(被告琴河原の主 その略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示を使用し,被告琴河原(書写書道検)と同一の事業を実施していることに当事者間に争いがない(争点に関する当事者の主張(3)ア(被告琴河原の主張)(イ)及び(原告らの主張)参照)から,被告琴河原の事業と原告中野書写検の事業との間には混同が生じていると認めるのが相当である。 そうすると,原告中野書写検による「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示の使用は不正競争防止法2条1項1号に該当する。 イまた,原告中野書写検は,被告琴河原(書写書道検)と同一の事業を実施しており,双方の具体的な事業内容(上記(1))をみても,ほぼ競合しているのであるから,原告中野書写検による「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示の使用は,被告琴河原の営業上の利益を侵害するおそれがあるというべきである。 ウそして,被告琴河原の不正競争防止法3条1項に基づく差止請求(請求2(1))については,その必要な限度の範囲内というべきであり,同条2 項に基づく廃棄請求(請求2(2))については,原告中野書写検の不正競争行為の態様(前記1(8)及び上記(1)イ)に照らすと,差止めだけでは不正競争行為の再発を防止できないというべきであるから,その必要性が認められる。 したがって,被告琴河原の原告中野書写検に対する不正競争防止法3条1項に基づく差止請求(請求2(1))及び同条2項に基づく廃棄請求(請求2(2))はいずれも理由がある。 (3) 被告社団法人中野書写検による「日本書写能力検定委員会」の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当するか等(争点(3)イ)について (請求2(2))はいずれも理由がある。 (3) 被告社団法人中野書写検による「日本書写能力検定委員会」の表示の使用が不正競争防止法2条1項1号に該当するか等(争点(3)イ)についてア 「日本書写能力検定委員会」の表示は,被告琴河原の営業表示であり(上記(1)ア),周知性を得ていた(前提事実(5)ウ)。また,被告社団法人中野書写検が,旧書写検の名称である「日本書写能力検定委員会」の表示を使用し,原告中野書写検と共催で全国コンクール事業を実施していることに当事者間に争いがない(争点に関する当事者の主張(3)イ(被告琴河原の主張)(イ)及び(原告らの主張)参照)。さらに,被告琴河原は,全国大会(全国コンクール)を主催するものではないが,被告社団法人書写書道振興会の全国大会に協賛し,その業務の委託を受けている(上記(1)ア)のであって,全国大会の実施は被告琴河原の事業と位置付けられるから,被告琴河原の事業と被告社団法人中野書写検の事業との間には混同が生じていると認めるのが相当である。 そうすると,被告社団法人中野書写検による「日本書写能力検定委員会」の表示の使用は不正競争防止法2条1項1号に該当する。 イ上記アのとおり,被告社団法人書写書道振興会の全国大会の実施は被告琴河原の事業と位置付けられるのであり,被告社団法人中野書写検の全国コンクール事業の実施は,被告琴河原の書写書道に関する事業と競合しているのであるから,被告社団法人中野書写検による「日本書写能力検定委 員会」の表示の使用は,被告琴河原の営業上の利益を侵害するおそれがあるというべきである。 ウそして,被告琴河原の不正競争防止法3条1項に基づく差止請求(請求2(3))については,その必要な限度の範囲内というべきであり,同条2項に基 益を侵害するおそれがあるというべきである。 ウそして,被告琴河原の不正競争防止法3条1項に基づく差止請求(請求2(3))については,その必要な限度の範囲内というべきであり,同条2項に基づく廃棄請求(請求2(4))については,被告社団法人中野書写検の不正競争行為の態様(上記(1)イ)に照らすと,差止めだけでは不正競争行為の再発を防止できないというべきであるから,その必要性が認められる。 したがって,被告琴河原の被告社団法人中野書写検に対する不正競争防止法3条1項に基づく差止請求(請求2(3))及び同条2項に基づく廃棄請求(請求2(4))はいずれも理由がある。 (4) 原告らが不正競争防止法4条・不法行為に基づく損害賠償責任を負うか(争点(3)ウ)についてアまず,不正競争防止法4条に基づく損害賠償責任について検討する。 (ア) 被告Aは,旧書写検が被告琴河原の事業部門との認識を有していたと認められるから(前記3(2)イ),「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示が被告琴河原の営業表示であることを知っていたと認めるのが相当である。そうすると,被告Aが代表者である原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検は,上記各表示が被告琴河原の営業表示であることを知りながら,それぞれ不正競争行為(上記(2)ア及び(3)ア)を行ったのであるから,不正競争行為を行うについて,少なくとも過失があったというべきである。 (イ) そして,証拠(乙110,141)によれば,被告琴河原では,前年の比較において,平成22年3月から同年5月までの間,全国大会の売上を除いて,売上が1338万6000円減少し,同年4月1日から平成23年3月31日までの間,全国大会の売上が1 被告琴河原では,前年の比較において,平成22年3月から同年5月までの間,全国大会の売上を除いて,売上が1338万6000円減少し,同年4月1日から平成23年3月31日までの間,全国大会の売上が1504万円減少し たことが認められる。 これに加え,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検の各不正競争行為の態様(前記1(8)及び上記(1)イ)に照らすと,上記各不正競争行為を一因として,売上の減少があったと認めるのが相当である。 (ウ) そうすると,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検は,不正競争防止法4条に基づく損害賠償責任がある。 イ続いて,不法行為に基づく損害賠償責任について検討するに,上記アのとおり,被告Aは,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検の代表者として,「日本書写能力検定委員会」及びその略称「書写検」(英語表記「shoshaken」)の表示が被告琴河原の商品等表示であることを知りながら,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検の各不正競争行為に加担したのであるから,それぞれの団体の代表者としての権限の範囲を逸脱して上記各不正競争行為に加担し,被告琴河原の営業上の利益を侵害したというべきであり,被告琴河原はこの趣旨で被告Aに対する損害賠償を求めるものと解されるから,被告Aは不法行為に基づく損害賠償責任があるというべきである。 そして,上記アの原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検の各不正競争行為は,不法行為を構成するものであり(不正競争防止法4条は民法709条の特別規定である。),被告社団法人中野書写検は,原告中野書写検が一般社団法人として活動することに備えるために設立され(前記1(8)),原告中野書写検と全国大会を共催していること(上記(1)イ)に照らすと,原 ある。),被告社団法人中野書写検は,原告中野書写検が一般社団法人として活動することに備えるために設立され(前記1(8)),原告中野書写検と全国大会を共催していること(上記(1)イ)に照らすと,原告らは,共同不法行為によって,被告琴河原に損害を与えたというべきである。 ウ以上のとおり,原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検は不正競争防止法4条に基づく損害賠償責任があり,被告Aは不法行為に基づく損害賠償責任がある。そして,原告らは,共同不法行為によって,被告琴河原 に損害を与えたのであるから,被告琴河原に対し,連帯して損害を賠償する責任がある。 (5) 被告琴河原の損害額(争点(3)エ)についてアまず,被告琴河原の1年分の売上減少に係る損害について検討する。 上記(4)ア(イ)のとおり,被告琴河原では,前年の比較において,平成22年3月から同年5月までの間の3か月間で,全国大会の売上を除いて,売上が1338万6000円減少し,同年4月1日から平成23年3月31日までの間,全国大会の売上が1504万8000円減少している。 そして,証拠(乙13の4)によれば,旧書写検の平成20年度における売上に対する営業利益の割合は9.96%(935万7000円÷9386万9000円)であることが認められるから,被告琴河原の営業利益率を10%と推定するのが相当である。 もっとも,被告琴河原(書写書道検)は,平成22年2月下旬以降,旧書写検の会員等に対し,旧書写検の名称変更や被告Aの文書が被告琴河原と関係がないことなどを記載した文書を送付している(前記1(7)及び(9))から,被告琴河原及び被告社団法人書写書道振興会と原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検とが別団体であることが一定程度知 と関係がないことなどを記載した文書を送付している(前記1(7)及び(9))から,被告琴河原及び被告社団法人書写書道振興会と原告中野書写検及び被告社団法人中野書写検とが別団体であることが一定程度知られているものと認められる。これに加え,証拠(乙141)によれば,平成22年度の全国大会(被告社団法人書写書道振興会主催)の参加者数の減少が34%であることが認められるから,原告らの共同不法行為の売上の減少に係る損害に対する寄与は30%を上回ることはないと認めるのが相当である。 そうすると,被告琴河原の損害(1年分の売上減少に係る損害)は,全国大会を除く1年間の推定売上減少額と全国大会の1年間の売上減少額を合計した金額に,営業利益率10%を乗じ,更に寄与度30%を乗じて算定した金額である205万7000円(千円未満切り捨て)と認めるの が相当である。 (計算式)205万7000円(千円未満切り捨て)=(1338万6000円×4+1504万8000円)×0.1×0.3イ続いて,信用毀損に係る損害について検討する。 旧書写検は,従前において,全国大会を毎日新聞社との共催において開催し,文部科学省の後援を得ていたところ,本件を契機として,全国大会の業務を引き継いだ被告社団法人書写書道振興会は,毎日新聞社との共催や文部科学省の後援を得られなくなった(上記1(10))のであり,これは,原告らの共同不法行為によって被告琴河原の信用が低下したことが原因と認めるのが相当である。 そして,全国大会の共催・後援が長年続いていたこと(前提事実(4)ア)など本件に現れた事情に照らすと,その損害額は50万円を下回ることはないと認めるのが相当である。 ウ以上のとおり,被告琴河原の損害は,合計255 後援が長年続いていたこと(前提事実(4)ア)など本件に現れた事情に照らすと,その損害額は50万円を下回ることはないと認めるのが相当である。 ウ以上のとおり,被告琴河原の損害は,合計255万7000円であると認められる。 したがって,被告琴河原の原告らに対する不正競争行為・不法行為に基づく損害賠償請求は,255万7000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降である平成22年10月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由がある。 (6) 被告琴河原の信用を回復する措置が必要か(争点(3)オ)について上記(5)イのとおり,原告中野書写検の不正競争行為によって被告琴河原の信用が低下したと認められる上,原告中野書写検は,平成22年2月下旬以降,「日本書写能力検定委員会」の名称を使用し,旧書写検の会員等に対し,文書を送付していること(前記1(8))を考慮すると,原告中野書写検に対し,信用回復の措置を命ずるのが相当である。 そして,証拠(甲130)によれば,上記文書の送付は,被告琴河原の顧 客名簿(旧書写検会員の会名簿,受験団体名簿,大会参加団体名簿,通信教育顧客名簿等)を利用したものであると認められる。また,弁論の全趣旨により,別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先が毎日新聞社,関係省庁・自治体,被告琴河原の取引先,旧書写検の会員・受験団体・受講生等であると認められるから,原告中野書写検に対し,当該各送付先に限って,別紙通知文の送付を命じるのが相当である。 被告琴河原の主張する送付先のうち,①別紙送付先リスト記載20及び21の各送付先は郵便関係の省庁であって,被告琴河原とはその限度で関係があるにすぎないし,②同リスト記載2 のが相当である。 被告琴河原の主張する送付先のうち,①別紙送付先リスト記載20及び21の各送付先は郵便関係の省庁であって,被告琴河原とはその限度で関係があるにすぎないし,②同リスト記載21~41の各送付先は審査員であって,第三者的な立場を有する者であり,③同リスト記載635~638の各送付先は原告中野書写検を後援するものであって,被告琴河原とは関係がないと解されるから,当該各送付先に対して通知文を送付する必要性があるとはいえない。また,通知文の内容については,信用回復の措置に必要な限度にとどめるため被告琴河原の求める別紙通知文(案)の内容を別紙通知文のとおりに変更した。 したがって,被告琴河原の原告中野書写検に対する不正競争防止法14条に基づく信用回復の措置請求は,別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先に対し,別紙通知文を送付させる限度で理由がある。 5 まとめ以上のとおり,原告中野書写検の請求(請求1及び3)はいずれも理由がない。 これに対し,被告琴河原の請求のうち,原告中野書写検に対する不正競争防止法3条1項に基づく差止請求及び同条2項に基づく廃棄請求(請求2(1)及び(2)),被告社団法人中野書写検に対する同条1項に基づく差止請求及び同条2項に基づく廃棄請求(請求2(3)及び(4))はいずれも理由があり,原告らに対する不正競争行為・不法行為に基づく損害賠償請求(請求2(6))は25 5万7000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降である平成22年10月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり,原告中野書写検に対する不正競争防止法14条に基づく信用回復の措置請求(請求2(5))は別紙送付先リスト記載1~19,42 民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり,原告中野書写検に対する不正競争防止法14条に基づく信用回復の措置請求(請求2(5))は別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先に対して別紙通知文を送付させる限度で理由がある。なお,仮執行の宣言については,相当ではないから,これを付さない。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官菊池絵理 裁判官小川雅敏

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