平成15(行コ)7 固定資産税賦課処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年9月24日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 平成14(行ウ)16
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判決文本文5,085 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が平成14年4月12日付でした原判決別紙物件目録記載1の物件に対する平成14年度固定資産税の賦課処分は,これを取り消す。 3 訴訟費用は,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 次項に当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「第2 事案の概要」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張(1) 本件建物は,建物自体の使用収益ができないわけではないが,その存在のために必要な敷地の利用が法律上許されていない。すなわち,本件建物は,競売事件の物件明細書にも敷地利用権がないと記載され,敷地利用者との間の訴訟においても本件建物の収去を命ずる判決がされるのが通常であるところ,このような場合には土地に「定着」した建造物ということはできず,建物には該当しないというべきであり,また,「用途に供し得る状態」にあるということもできない。 (2) 固定資産税が財産税に属し,本件建物が固定資産税の課税客体に該当するとしても,敷地利用権を有する建物と敷地利用権を有しない建物とでは建物の財産価値は異なり,後者にあっては,同一建物として存在させるためには移築費用分の負担を要するのであるから,建物としての価値を失ったものというべきであり(課税標準額は約2800万円とされているが,競落代金はその税額の約8分の1相当額である373万円である。),また,双方について同一額の固定資産税を付加するのは公平とはいえず,著しく公平を欠くものであって,憲法29条2項,30条に違反する。 (3) 固定資産税と不動産取得税の課税客体は同一であり,その課税標準額も ついて同一額の固定資産税を付加するのは公平とはいえず,著しく公平を欠くものであって,憲法29条2項,30条に違反する。 (3) 固定資産税と不動産取得税の課税客体は同一であり,その課税標準額もその趣旨(財産の価値を税額算定の基礎とする点)も同一であるところ,控訴人が本件建物を競落により取得したことによる不動産取得税(県税)については,一旦112万9800円の賦課処分がされたが,後に賦課取消しにより全額につき減額処分がされている。 第3 当裁判所の判断 1 地方税法342条1項により固定資産税の課税客体とされる「固定資産」とは「土地,家屋及び償却資産を総称する」とされ(同法341条1号),同号にいわゆる「家屋」とは,同法341条3号によれば「住家,店舗,工場(発電所及び変電所を含む。),倉庫その他の建物をいう。」とされているところ,ここにいわゆる「建物」とは不動産登記法にいう建物とその意義を同じくし,したがって建物登記簿に登記されるべき建物,すなわち屋根及び周壁又はこれに類するものを有し,土地に定着した建造物であって,その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいうものと解すべきである。 そして,前記(引用の原判決)の争いのない事実等に加え,証拠(乙3の1,3の2の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,本件建物は,本件賦課期日において,屋根及び周壁又はこれに類するものを有し,土地に定着した建造物であって,その目的とする用途に供し得る状態にあったことが認められるから,本件建物は地方税法341条3号にいわゆる「建物」に当たるものというべきである。 2 控訴人は,本件建物には敷地利用権がないため,これをもって「土地に定着した建造物」とはいえず,また,「その目的とする用途に供し得る状態」にもなかったとして,地方税法341条3号にい である。 2 控訴人は,本件建物には敷地利用権がないため,これをもって「土地に定着した建造物」とはいえず,また,「その目的とする用途に供し得る状態」にもなかったとして,地方税法341条3号にいわゆる「建物」には当たらない旨主張する。 しかし,固定資産税は,家屋等の資産価値に着目し,その所有という事実に担税力を認めて課する一種の財産税であって,固定資産の所有者がこれを使用,収益,処分することにより得られるであろう利益に着目して課されるものではないから,固定資産税の課税客体となる「家屋」といえるか,すなわち,土地に定着した建造物か否か,その目的とする用途に供し得る状態にあるか否かなどの判断は,建造物自体の物理的状態を基礎として社会通念によって決せられるべきものであり,敷地利用権の有無によって左右されるものではない。 3 控訴人は,本件建物が固定資産税の課税客体に該当するとしても,敷地利用権を有しない建物は移築費用分の負担を要するのであるから,建物としての価値を失ったものというべきであり,敷地利用権を有する建物と同一額の固定資産税を付加するのは著しく公平を欠くものであって,憲法29条2項,30条に違反する旨主張する。 しかし,上記判示のとおり,そもそも固定資産税は家屋等の資産価値に着目し,その所有という事実に担税力を認めて課される一種の財産税であって,当該建物の敷地利用権の有無が建物自体の取引価格に影響することがあるとしても,当該建物自体の価値を直ちに左右するものということはできない。仮にこれを考慮するとしても,敷地利用権の有無は固定的なものではなく,また,賦課期日における敷地利用権の有無を認定判断することは課税技術的に必ずしも容易なことではないから,これを考慮することは,固定資産の持つ資産価値に着目しつつ明確な基準の下に 定的なものではなく,また,賦課期日における敷地利用権の有無を認定判断することは課税技術的に必ずしも容易なことではないから,これを考慮することは,固定資産の持つ資産価値に着目しつつ明確な基準の下に公平な課税を図るべき固定資産税制度の趣旨に沿うものということはできない。控訴人の憲法違反の主張は独自の見解であり,採用できない。 4 控訴人は,固定資産税と不動産取得税の課税客体は同一であり,その課税標準額もその趣旨(財産の価値を税額算定の基礎とする点)も同一であるところ,控訴人が本件建物を競落により取得したことによる不動産取得税については,一旦賦課処分がされたが,後に賦課取消しにより全額につき減額処分がされており,同一に扱うべき旨を主張する。 調査嘱託の結果によれば,a県b地域事務所長は,控訴人の本件建物の取得に対し,平成13年12月3日付け納税通知書で通知した不動産取得税に関し,平成14年2月4日に「賦課取消」を理由に「0円」とする不動産取得税減額通知をしたことが認められる。しかし,上記判示のとおり固定資産税は固定資産の所有自体に着目して課される財産税であるのに対し,不動産取得税は不動産の取得自体に着目して課される流通税であって,その趣旨,目的を異にするものであるから,不動産取得税と同一に扱わねばならない理由はなく,同税の賦課が取り消されたことは固定資産税の賦課に影響を及ぼすべき事柄ということはできない(なお,調査嘱託の結果によれば,控訴人に対してされた上記の不動産取得税減額通知は,本件建物が移築するために取得したものであるため,不動産の承継取得としての課税は取り消し,移築後に原始課税をするとの趣旨に基づくものであり,不動産取得税としても課税しない趣旨というものではない。)。 5 以上によれば,控訴人の請求は理由がないから,これを 継取得としての課税は取り消し,移築後に原始課税をするとの趣旨に基づくものであり,不動産取得税としても課税しない趣旨というものではない。)。 5 以上によれば,控訴人の請求は理由がないから,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。よって,本件控訴を棄却することとし,控訴費用の負担につき行訴法7条,民訴法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官能勢顯男 裁判官齋藤憲次(原判決「第2 事案の概要」)第2 事案の概要本件は,本件建物の所有者である原告が,被告がした本件建物に対する本件処分が違法である旨主張して,その取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲記していない事実は当事者間に争いがない。)(1) 本件建物は,不動産競売事件(広島地方裁判所福山支部平成12年(ケ)第154号)の対象物件であり,原告は,平成13年7月3日,競落により本件建物の所有権を取得し,同日,原告を所有者とする所有権移転登記手続がなされた。 原告は,同日以降,本件処分の賦課期日である平成14年1月1日(以下「本件賦課期日」という。)を経て現在に至るまで,本件建物の所有者であり登記名義人である。 (2) 本件建物の前記競落前の権利関係等(甲1,2,4,5,弁論の全趣旨)本件建物の前記競落前の所有者は,株式会社Aであり,株式会社Aは,B株式会社に対し,本件建物を賃貸し,B株式会社は,Cに対し,本件建物を転貸していた。 Cは,前記競落前から本件建物を占有していたが,前記不動産競売事件の一件記録中 Aであり,株式会社Aは,B株式会社に対し,本件建物を賃貸し,B株式会社は,Cに対し,本件建物を転貸していた。 Cは,前記競落前から本件建物を占有していたが,前記不動産競売事件の一件記録中には,Cに関する記載はなかった。 (3) 本件建物の敷地の権利関係(甲2,4,5)本件建物は,別紙物件目録記載2及び3の各土地(以下「本件敷地」という。)上にある。 同目録記載2の土地の所有者は,B株式会社である。 同目録記載3の土地の所有者は,Dである。 Dは,株式会社Aに対し,同目録記載3の土地を無償で貸している。 (4) 原告は,本件敷地の利用権を有さず,B株式会社から,平成13年7月19日付けの内容証明郵便により,本件建物の収去を請求された(甲2,6,弁論の全趣旨)。 (5) 被告は,平成14年4月12日付けで本件処分をした。 本件処分は,本件建物の本件賦課期日における固定資産税課税標準額である2824万5000円に,標準課税率である1.4/100を乗じ,固定資産税額を39万5400円(百円未満切り捨て)と算定したものであった。 (6) 原告は,被告に対し,平成14年5月24日付けで,本件処分の取消しを求める異議申立てをした。 被告は,同年6月6日付けで,上記異議申立てを棄却した。 2 争点本件処分の適法性 3 争点に対する当事者の主張(1) 原告の主張ア原告は,前所有者の株式会社Aと異なり,本件建物を使用,収益することができず,本件建物を解体して収去する義務を負っている。また,原告は,Cの本件建物の占有を解除しない限り,本件建物を収去することもできない。 本件建物は,原告が競落したことにより,建物としてのすべての権能を失っており,その財産的 を負っている。また,原告は,Cの本件建物の占有を解除しない限り,本件建物を収去することもできない。 本件建物は,原告が競落したことにより,建物としてのすべての権能を失っており,その財産的価値は零であり,原告は,本件建物について一切の行政サービスを受けることができない。 したがって,原告は,本件建物を構成する各建築材料を取得したにすぎず,本件建物は,本件賦課期日において,固定資産税の課税客体となる「建物」ではなかったというべきである。 そうすると,本件処分は,「建物」が存在しないにもかかわらずなされたものであるから,違法であり,取消しを免れない。 イ仮に,地方税法が,本件建物が固定資産税の課税客体に該当する旨定めているとすれば,このような規定は,本件のような稀なケースに対応できず,著しく不公平な課税をなすものであるから,憲法29条2項及び30条に違反し無効というべきである。 (2) 被告の主張固定資産税の課税客体となる「家屋」(地方税法341条3号)とは,不動産登記法上の「建物」と同義であるところ,本件建物が,本件賦課期日において,外気遮断性,土地定着性,用途性を備えた不動産登記法にいう「建物」として存在していたものであり,したがって,本件建物が固定資産税の課税客体となる「家屋」に該当することは明らかであるから,本件処分に何らの違法はない。

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