主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告が原告に対し平成19年2月14日付けでした換地処分を取り消す。 第2事案の概要 本件は,土地区画整理法に基づく仮換地の指定後に定期借地権及び事業用借地権の設定を受け仮換地においてテーマパーク事業等を営んでいた原告に対し,当該土地区画整理事業の施行者である被告が,当該仮換地を借地権の目的となるべき宅地とした上,7188万4924円の清算金を交付し,合計6億9457万9419円の清算金を徴収する旨の換地処分(以下「本件換地処分」という。)をしたため,原告が本件換地処分の取消しを求めた事案である。 法令の定め(1)土地区画整理法86条1項は,施行者は,施行地区内の宅地について換地処分を行うため,換地計画を定めなければならない旨規定し,同法87条1項は,同法86条1項の換地計画においては,国土交通省令で定めるところにより,換地設計,各筆換地明細,各筆各権利別清算金明細,保留地その他の特別の定めをする土地の明細,その他国土交通省令で定める事項を定めなければならない旨規定する。 同法89条1項は,換地計画において換地を定める場合においては,換地及び従前の宅地の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等が照応するように定めなければならない旨規定し,同条2項は,同条1項の規定により換地を定める場合において,従前の宅地について所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限があるときは,その換地についてこれらの権利又は処分の制限の目的となるべき宅地又はその部分を同項の規定に準じて定めなければならない旨規定する。 同法94条は,換地又は換地について権利(処分の制限を含み,所有権及び地役 権を含まない。)の目的となるべき宅地若しくはその部分を定め, の部分を同項の規定に準じて定めなければならない旨規定する。 同法94条は,換地又は換地について権利(処分の制限を含み,所有権及び地役 権を含まない。)の目的となるべき宅地若しくはその部分を定め,又は定めない場合において,不均衡が生ずると認められるときは,従前の宅地又はその宅地について存する権利の目的である宅地若しくはその部分及び換地若しくは換地について定める権利の目的となるべき宅地若しくはその部分又は同法89条の4若しくは91条3項の規定により共有となるべきものとして定める土地の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等を総合的に考慮して,金銭により清算するものとし,換地計画においてその額を定めなければならない旨規定する。 (2)土地区画整理法98条1項は,施行者は,換地処分を行う前において,土地の区画形質の変更若しくは公共施設の新設若しくは変更に係る工事のため必要がある場合又は換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合においては,施行地区内の宅地について仮換地を指定することができ,この場合において,従前の宅地について地上権,永小作権,賃借権その他の宅地を使用し,又は収益することができる権利を有する者があるときは,その仮換地について仮にそれらの権利の目的となるべき宅地又はその部分を指定しなければならない旨規定する。 同法99条1項は,同法98条1項の規定により仮換地が指定された場合においては,従前の宅地について権原に基づき使用し,又は収益することができる者は,仮換地の指定の効力発生の日から同法103条4項の公告がある日まで,仮換地又は仮換地について仮に使用し,若しくは収益することができる権利の目的となるべき宅地若しくはその部分について,従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができるものと 換地について仮に使用し,若しくは収益することができる権利の目的となるべき宅地若しくはその部分について,従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができるものとし,従前の宅地については,使用し,又は収益することができないものとする旨規定する。 (3)土地区画整理法103条1項は,換地処分は,関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするものとする旨規定し,同条4項は,国土交通大臣は,換地処分をした場合においては,その旨を公告しなければならず,都道府県知事は,都道府県が換地処分をした場合又は同条3項の届出(個人施行者,組合,区画整理会社,市町村又は独立行政法人都市再生機構若しくは地方住宅供給公社が 換地処分をした場合における都道府県知事への届出)があった場合においては,換地処分があった旨を公告しなければならない旨規定する。 同法104条1項は,同法103条4項の公告があった場合においては,換地計画において定められた換地は,その公告があった日の翌日から従前の宅地とみなされるものとする旨規定し,同法104条2項は,同法103条4項の公告があった場合においては,従前の宅地について存した所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限について,換地計画において換地について定められたこれらの権利又は処分の制限の目的となるべき宅地又はその部分は,その公告があった日の翌日から従前の宅地について存したこれらの権利又は処分の制限の目的である宅地又はその部分とみなされるものとし,換地計画において換地について目的となるべき宅地の部分を定められなかったこれらの権利は,その公告があった日が終了した時において消滅するものとする旨規定し,同法104条8項は,同法94条の規定により換地計画において定められた清算金は,同法10 地の部分を定められなかったこれらの権利は,その公告があった日が終了した時において消滅するものとする旨規定し,同法104条8項は,同法94条の規定により換地計画において定められた清算金は,同法103条4項の公告があった日の翌日において確定する旨規定する。 同法110条1項は,施行者は,同法103条4項の公告があった場合においては,同法104条8項の規定により確定した清算金を徴収し,又は交付しなければならない旨規定する。 (4)土地区画整理法85条1項は,施行地区(個人施行者の施行する土地区画整理事業に係るものを除く。)内の宅地についての所有権以外の権利で登記のないものを有し,又は有することとなった者は,当該権利の存する宅地の所有者若しくは当該権利の目的である権利を有する者と連署し,又は当該権利を証する書類を添えて,国土交通省令で定めるところにより,書面をもってその権利の種類及び内容を施行者に申告しなければならない旨規定し,同条5項は,個人施行者以外の施行者は,同条1項の規定により申告しなければならない権利でその申告のないものについては,その申告がない限り,これを存しないものとみなして,同法3章2節から6節までの規定による処分又は決定をすることができるものとする旨規定する。 同法129条は,土地区画整理事業を施行しようとする者,組合を設立しようとする者若しくは施行者又は土地区画整理事業の施行に係る土地若しくはその土地に存する工作物その他の物件について権利を有する者の変更があった場合においては,同法又は同法に基づく命令,規準,規約,定款若しくは施行規程の規定により従前のこれらの者がした処分,手続その他の行為は,新たにこれらの者となった者がしたものとみなし,従前のこれらの者に対してした処分,手続その他の行為は,新たにこれらの者となった者 施行規程の規定により従前のこれらの者がした処分,手続その他の行為は,新たにこれらの者となった者がしたものとみなし,従前のこれらの者に対してした処分,手続その他の行為は,新たにこれらの者となった者に対してしたものとみなす旨規定する。 前提事実(1)原告は,大規模テーマパークの企画・運営等の事業を営むことを目的とする株式会社であり,大阪市αほかのいわゆるβ地区においてテーマパークであるAを運営している。 (2)平成7年3月29日,大阪市を施行者とし大阪市αほかのいわゆるβ地区を施行区域(以下「本件施行区域」という。)とする土地区画整理事業(大阪都市計画事業β地区土地区画整理事業。施行面積約156万2000平方メートル。以下「本件土地区画整理事業」という。)についての都市計画決定が告示され,同年5月31日に施行規程が公布され,同年8月7日に事業計画決定が公告された。 (3)平成7年12月8日,本件土地区画整理事業について仮換地が指定され,別紙不動産目録の「従前の土地」欄記載の各筆の土地について同目録の「換地処分後の土地」欄記載の土地が仮換地として指定された。 (4)原告は,平成10年10月から平成13年3月にかけて,別紙不動産目録記載の不動産について,その各所有者(以下,これらの所有者をまとめて「地権者」という。)との間で,存続期間を50年とする定期借地権の設定を目的とする賃貸借契約又は存続期間を20年とする事業用借地権の設定を目的とする賃貸借契約を締結して借地権の設定を受け,同目録の「従前の土地」欄記載の各筆の土地について原告を賃借権者とする賃借権設定登記がされた(以下,これらの賃貸借契約をまとめて「本件賃貸借契約」という。)。 これらの地権者のうち被告(大阪市)との間では,平成11年4月1日,その用途をAのテーマパーク用施 とする賃借権設定登記がされた(以下,これらの賃貸借契約をまとめて「本件賃貸借契約」という。)。 これらの地権者のうち被告(大阪市)との間では,平成11年4月1日,その用途をAのテーマパーク用施設の建設・運営用地とし,賃貸借期間を同日から平成61年3月31日までの50年間とする定期借地権を設定する旨の賃貸借契約が締結されたが,その賃貸借土地は,同賃貸借契約に係る市有地賃貸借契約書上,「所在大阪都市計画事業β地区土地区画整理事業街区番号×符号×(大阪市γ内)面積10,285.66㎡」などと表示されていた(甲9)。 (5)被告は,平成18年10月12日,原告に対し,別紙不動産目録の「換地処分後の土地」欄記載の土地全体を仮に上記(4)の定期借地権又は事業用借地権の目的となるべき宅地として指定した。 (6)被告は,平成18年11月6日,本件土地区画整理事業における土地評価の実施方法について定め,評価の適正と均衡を図ることを目的として,土地評価基準を確定し,商業地域に存する借地権の価額の割合を60パーセント,準工業地域及び工業専用地域に存する借地権の価額の割合をいずれも50パーセントと定めた。 (7)被告は,平成19年2月1日,本件土地区画整理事業について換地計画を決定し,同月14日付けで関係権利者に対し換地処分の通知をし,同年3月23日,換地処分の公告をした。 被告は,原告に対し,同年2月14日付けで,別紙不動産目録の「従前の土地」欄記載の各筆の土地に対する換地を同目録「換地処分後の土地」欄記載の対応する各土地と定めるとともに,別紙各筆各権利別清算金明細書のとおり徴収し又は交付すべき清算金の額を定める旨の換地処分(本件換地処分)をした。本件換地処分においては,土地評価基準に基づき,原告の借地権(定期借地権及び事業用借地権)の価額は当該 清算金明細書のとおり徴収し又は交付すべき清算金の額を定める旨の換地処分(本件換地処分)をした。本件換地処分においては,土地評価基準に基づき,原告の借地権(定期借地権及び事業用借地権)の価額は当該土地の価額の50パーセントとして評価され,「大阪市δ×番16」を従前の宅地とする換地処分についてのみ交付すべき清算金の額(7188万4924円)が定められ,その余の換地については徴収すべき清算金の額(合計6億9457万9419円)が定められた。 (8)原告は,平成19年9月13日,被告に対し,徴収すべき清算金6億945 7万9419円を支払った。 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,本件換地処分の適法性であり,原告が主張する本件換地処分の違法事由の骨子は,①仮換地の指定後に仮換地として指定された土地を賃借した原告は換地処分(清算金の徴収)の対象とはならない,②本件換地処分に係る換地について市場における交換価値を有しない定期借地権及び事業用借地権しか有しない原告は清算金の徴収の対象とはならない,というものである。これらに関する当事者の主張の概要は,次のとおりである。 (1)仮換地の指定後に仮換地として指定された土地を賃借した原告は換地処分の対象となるか(争点①)。 (原告の主張)ア原告は,地権者に対する仮換地指定後に,仮換地を目的として,これに賃借権を設定する旨の賃貸借契約を締結したものであり,仮換地指定に係る土地(仮換地)の面積等を前提にその地代を決定するなど,仮換地を前提とした借地条件を設定しており,契約書にも賃貸借の目的として仮換地のみが示されている。仮換地について使用収益権限を有する従前の宅地の所有者が他人に対して有償で仮換地の使用収益権限を設定するという意味での賃借権設定契約は,債権契約として当然に行い得るこ して仮換地のみが示されている。仮換地について使用収益権限を有する従前の宅地の所有者が他人に対して有償で仮換地の使用収益権限を設定するという意味での賃借権設定契約は,債権契約として当然に行い得ることである。これに対し,従前の宅地の所有者は,従前の宅地についての処分権限を失わないから,従前の宅地を売買することはできるものの,従前の宅地についての使用収益権限を有しないから,第三者に対して従前の宅地の使用収益権を設定することはできないというべきである。仮換地指定後に仮換地を目的とする借地権が設定された場合に従前の宅地について賃借権の設定登記がされているのは,仮換地自体の登記簿が存在しないため仮換地に賃借権が設定されていることを示すための便宜上の措置にすぎない。 イ仮換地指定後に当該仮換地を目的とする借地権が設定されたときは,当該賃貸借契約は,地権者の有する仮換地の使用収益権を目的とするものであって,当該 借地権者は,仮換地のみを対象とする使用収益権を有するにすぎず,従前の宅地について使用収益権を有するものではないから,土地区画整理法89条2項にいう「従前の宅地について所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限があるとき」にも同法98条1項にいう「従前の宅地について地上権,永小作権,賃借権その他の宅地を使用し,又は収益することができる権利を有する者があるときは」にも該当しない。そもそも,換地はあくまでも従前の宅地との照応に基づき決定されるべきものであって,従前の宅地の使用の実績も従前の宅地に係る使用範囲等についての合意もされていない仮換地指定後の借地権者について換地処分を行うことは,実質的にも同法の趣旨に反することが明らかである。また,同法98条1項は,仮換地の指定を行うのと同時に仮の権利の目的となるべき宅地又はその部分を指定すること(以下 権者について換地処分を行うことは,実質的にも同法の趣旨に反することが明らかである。また,同法98条1項は,仮換地の指定を行うのと同時に仮の権利の目的となるべき宅地又はその部分を指定すること(以下「仮権利指定」という。)を前提としており,仮換地指定の時点において,従前の宅地について使用収益権を有する者に対して仮権利指定を行うことを予定しているのであって,仮換地指定後の借地権者に対して仮権利指定を行うことを予定していない。実質的にみても,仮換地指定後の借地権者は,従前の宅地の所有者が仮換地に関して有する使用収益権に基づき,契約上,使用収益権を保証されるものであるから,仮権利指定を受ける必要はない。さらに,同法94条は,従前の宅地について所有権ないし借地権等を有する者が従前の宅地と換地とを比較して他の地権者等との間で不均衡が存在する場合にこれら従前の宅地について権利を有する者の間でその不均衡を調整するための規定であって,それと無関係な者を清算金の交付,徴収の対象とすることを予定していないところ,仮換地指定後の借地権者は,もともと仮換地について使用収益をすることができるのみであり,従前の宅地について使用収益をすることができないから,換地処分により不均衡が生じるといった実質的考慮の対象にならず,したがって,清算金の交付又は徴収の対象とすべきことにはならない。 ウ土地区画整理法129条にいう「権利を有する者の変更」は,文言上,権利主体の変更,すなわち,所有者の変更ないし借地権者の変更等をいうものであり, 新たな権利の設定は「権利を有する者の変更」に当たらない。同条は,従前の宅地についての権利の主体の変更の場合に適用される規定であり,仮換地についての新たな権利の設定の場面に適用されることを同法は予定していない。また,同条の趣旨は,清算金の交付 たらない。同条は,従前の宅地についての権利の主体の変更の場合に適用される規定であり,仮換地についての新たな権利の設定の場面に適用されることを同法は予定していない。また,同条の趣旨は,清算金の交付又は徴収の相手方を固定することにより,事業の迅速な進行を図るとともに,清算金徴収の困難を防止することにある。しかるところ,借地権の設定が仮換地指定の前か後かは,登記がされている場合は登記簿の記載により容易にこれを判別することができ,登記も権利の申告もされていない場合は,そもそも清算金の交付又は徴収において考慮する必要がないから,上記のように解したとしても,同条の趣旨である迅速な事業の進行が妨げられることにはならない。したがって,仮換地について借地権の設定を受けた原告は,同条の文理上も,また,同条の趣旨からしても,同条の適用の対象とはならない。 なお,土地区画整理法85条1項の規定による権利の申告をして使用収益部分の指定を受けなければならないのは従前の宅地の賃借人であり,仮換地指定後の賃借人は,地権者との間で実質的には賃貸借である使用収益に関する合意をすれば足り,権利の申告をする必要はなく,使用収益部分の指定を受ける必要もない。 (被告の主張)ア従前の宅地の所有者による仮換地の使用収益権は,土地区画整理事業の円滑な進捗を図るとともに,関係権利者の可及的速やかな安定を図るため,法によって認められた暫定的措置にすぎず,土地区画整理事業に関する諸工事のため必要がある場合など円滑な事業実施の見地から仮換地指定の変更も予想される流動的なものでしかない。したがって,従前の宅地の所有者がこのような暫定的,流動的な仮換地の使用収益権に基づきこれを第三者に一時的に使用収益させるなどの純粋に債権的な合意をすることは可能であるとしても,対抗要件を具備し,排他的に仮換 ,従前の宅地の所有者がこのような暫定的,流動的な仮換地の使用収益権に基づきこれを第三者に一時的に使用収益させるなどの純粋に債権的な合意をすることは可能であるとしても,対抗要件を具備し,排他的に仮換地を支配することを可能にする物権化した借地権を設定することは,定期借地権及び事業用借地権を含めて,その権限を有せず,できないというべきである。また,仮換地自体に自由に借地権の設定を認めることとなれば,施行者において部分指定を含 む仮権利指定を行う余地はなくなり,土地区画整理事業に関する工事等の必要性を考慮し,同事業の円滑な進捗を図るための仮権利指定(部分指定を含む。)の制度が骨抜きとなる。他方で,従前の宅地に借地権を設定すれば,その効果として,仮換地を使用収益することができることとなる。そうであるとすれば,たとい実質的には仮換地を目的とする借地権が設定されたとしても,法律上は,当該借地権は従前の宅地に設定されたといわなければならず,原告についても,地権者から,従前の宅地について定期借地権及び事業用借地権の設定を受けたものというべきである。 イ土地区画整理事業の開始後,換地計画の作成,換地処分までの間に,従前の宅地について借地権の設定を受け,その登記を経た者については,土地区画整理法129条により,土地区画整理事業の開始当初からの従前の宅地の借地権者とみなされるので,清算金の交付又は徴収を含めた換地処分の対象となる。すなわち,同法103条1項にいう「関係権利者」とは,換地計画の作成時点における登記簿上の従前の宅地の所有者,借地権者等であると解される。同法129条は,土地区画整理事業開始以降,権利変動があった場合,同事業の開始当初から権利変動が存在したとみなして,同事業の継続的な運営を円滑なものにするための規定であるところ,従前の宅地に借地権 同法129条は,土地区画整理事業開始以降,権利変動があった場合,同事業の開始当初から権利変動が存在したとみなして,同事業の継続的な運営を円滑なものにするための規定であるところ,従前の宅地に借地権を設定することは,従前の宅地の所有権能の一部移転であるとみることができることなどからすれば,仮換地指定後に借地権の設定を受けたときも同条にいう「権利を有する者の変更」に当たるというべきである。また,仮に仮換地指定後に設定された借地権に仮換地自体に設定された借地権と従前の宅地に設定された借地権とが混在しているとしても,施行者においてその実質関係を調査しなければならないとすれば,迅速な事業の進行を阻害することになるのであり,同条の趣旨からすれば,仮換地自体に設定された借地権の借地権者についても,土地区画整理事業の開始当初から従前の宅地に借地権の設定を受けたものとみなされ,同法103条1項にいう「関係権利者」として,清算金の交付,徴収の対象となるものと解すべきである。 (2)本件換地処分に係る換地について定期借地権及び事業用借地権しか有しない 原告は清算金の徴収の対象となるか(争点②)(原告の主張)ア原告が仮換地について有する借地権は,権利金の支払も保証金の支払も伴わない定期借地権及び事業用借地権にすぎず,そのような定期借地権及び事業用借地権は市場における交換価値を有しないから,その評価額は零である。 イ土地区画整理法上,借地権者についても清算金の交付,徴収が行われることとされているのは,普通借地権については,借地借家法上,半永久的な使用権を保証され,かつ,借地非訟手続を通じて借地権付建物の形で借地権を売却する可能性を有していることから,従前の宅地の交換価値の一部が借地権者に帰属することを前提としている。また,そもそも,借地権者について借 され,かつ,借地非訟手続を通じて借地権付建物の形で借地権を売却する可能性を有していることから,従前の宅地の交換価値の一部が借地権者に帰属することを前提としている。また,そもそも,借地権者について借地権価格が認められるのは,貸主である所有者の側に正当事由がなければ更新の拒絶もできないという借地権者を厚く保護する法制の下,借地権が長期間継続性をもつに至り,それに伴い市場における交換価値を有する財産権へと確立していったという理由による。したがって,普通借地権についてはそれが土地の価値の評価に連動することを前提として借地権割合に応じて清算金の金額を決定することが合理的ということができる。 これに対し,契約期間を10年以上20年以下とする事業用借地権について借地権価格が認められない点についての見解は一致しており,また,定期借地権についても,借地の供給の増大を目的とし,借地の確実な返還を担保するという定期借地権制度の立法趣旨を考えると,財産価値があると考えるのは妥当ではない。もっとも,保証金の授受を伴う定期借地権については,一般に借地権付建物が中古で売買される場合,当初設定された保証金と同額で引き継がれることから,保証金の性格を返還請求権と借地権とに分け,返還請求権以外の部分が借地権の価格を構成するという見解も存する。また,財産評価基本通達においても,定期借地権の評価は,定期借地権等の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額を基礎としてされるところ,当該利益の総額は,「課税時期において支払うべき権利金の額」+「契約残存期間中,保証金相当額について地権者が受ける運用益相当の額」+ 「定期借地権等の設定に際し実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額」とされている。以上のとおり,定期借地権及び事業用借地権については,そもそも,借地権割 地権者が受ける運用益相当の額」+ 「定期借地権等の設定に際し実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額」とされている。以上のとおり,定期借地権及び事業用借地権については,そもそも,借地権割合による取引が行われておらず,財産評価基本通達においても土地の価格とは無関係な評価方法がとられている上,権利金及び保証金の授受がない場合は借地権価額が存在しないこととされているのであって,このような借地権を有する者について,土地の価格の変動を基礎として決定される清算金を一定の割合に基づいて交付又は徴収することには何らの合理的根拠もない。 原告の場合,財産評価基本通達によっても,権利金及び保証金の授受がなく,「定期借地権等の設定に際し実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額」もないから,その有する定期借地権の評価は零ということになる。したがって,原告の有する事業用借地権及び定期借地権には交換価値がなく,土地の交換価値のうち原告に帰属すべき部分はない。 ウ従前の宅地の価値がその所有者と借地人との間にどのように帰属していたかは,従前の宅地と換地との照応の問題とは無関係に,個別の土地ごとに従前の宅地の状況のみに基づいて判断されるべき問題であって,そこに施行者の裁量が働く余地はない。上記のとおり,半永久的な権利が認められている通常の借地権と,権利の期間及び内容について明らかな差異が法定されている定期借地権及び事業用借地権とを区別することなく,一律の借地権割合に基づく清算金の金額の決定が行われた本件換地処分は,瑕疵があることが明らかである。 (被告の主張)ア土地区画整理法94条の規定により,施行者は,徴収又は交付すべき清算金の金額の決定について相当程度の裁量が認められる。宅地について借地権が設定されている場合,清算金は借地権についての権利価額割合に 土地区画整理法94条の規定により,施行者は,徴収又は交付すべき清算金の金額の決定について相当程度の裁量が認められる。宅地について借地権が設定されている場合,清算金は借地権についての権利価額割合により按分して定められるところ,当該借地権割合は,地域の実情を考慮し,不動産鑑定士等当該施行区域における精通者意見を参考にしながら,施行者の合理的な裁量の範囲内で決定すれば足り,施行者が土地所有者と借地権者との間の契約内容について個別に調査するこ とは極めて困難で非現実的であって多数の当事者が関係する土地区画整理事業の迅速かつ円滑な進行に支障を来すことは明らかであるから,定期借地権及び事業用借地権にも適用される施行区域内における一般的な借地権価額割合を一律に定めて処理することも,施行者の合理的な裁量権の行使として許されるというべきである。 同法も,借地権とは借地借家法にいう借地権をいう(2条7項)として,普通借地権と定期借地権及び事業用借地権とを別異に扱うべきものとはしていない。 本件換地処分においては,不動産鑑定士(B株式会社)の鑑定結果を参考としつつ,本件施行区域においては借地権者である原告の寄与,貢献によって,同区域内に存する土地の利用価値や取引価格が大きく増進し,それに伴って借地権自体の価値が増大していること,本件土地区画整理事業の完了時点において宅地利用増進の利益を享受するのは換地においてテーマパーク事業等を営み多くの収益を上げることとなる原告であること,普通借地権と定期借地権とを当事者の合意により相互に転換,移行することが認められているなどを総合考慮し,4名の評価員(大阪法務局民事行政部首席登記官,財政局主税部長,財団法人CD支所長,β地区土地区画整理審議会会長)から妥当である旨の意見を得た上,β地区土地区画整理審議会からの意見聴 を総合考慮し,4名の評価員(大阪法務局民事行政部首席登記官,財政局主税部長,財団法人CD支所長,β地区土地区画整理審議会会長)から妥当である旨の意見を得た上,β地区土地区画整理審議会からの意見聴取を経て,原告の定期借地権及び事業用借地権の割合を50パーセントと評価し,徴収又は交付すべき清算金の金額を決定したのであるから,原告に対する徴収又は交付すべき清算金の金額の決定に係る被告の判断が著しく不合理で裁量権の逸脱,濫用があったとは到底いうことができない。 イ原告は原告の定期借地権及び事業用借地権に交換価値はない旨主張するが,原告は,定期借地権等の設定請求権に質権を設定していたのみならず,定期借地権等を観光施設財団に組み入れた上,同財団に根抵当権を設定しているのであって,これらからしても,原告の定期借地権及び事業用借地権が交換価値を有することは明らかである。なお,原告の事業用借地権は存続期間を20年とするものであるが,同時に存続期間を50年とする定期借地権を設定していることなどからすれば,原告が20年の経過により借地を明け渡してAを廃業することを想定しているとは到 底考えられず,少なくとも50年間の営業継続を計画していることは明白というべきであり,原告の定期借地権及び事業用借地権は実質的にみれば長期の残存期間が見込まれている。これらにかんがみても,本件換地処分において原告の定期借地権及び事業用借地権を一般の借地権割合でもって評価した上徴収又は交付すべき清算金の金額を決定したことが著しく不合理で裁量権の逸脱,濫用になるといえないことは明らかである。 第3当裁判所の判断 仮換地の指定後に仮換地として指定された土地を賃借した原告は換地処分の対象となるか(争点①)。 (1)前提事実に加えて甲9及び弁論の全趣旨によれば,本件賃貸借契約は ある。 第3当裁判所の判断 仮換地の指定後に仮換地として指定された土地を賃借した原告は換地処分の対象となるか(争点①)。 (1)前提事実に加えて甲9及び弁論の全趣旨によれば,本件賃貸借契約は,いずれも,仮換地自体の位置及び面積等に着目してされ,賃料の額も当該仮換地の面積とその単位面積当たりの金額によって定められたものと認められる。 ところで,土地区画整理法に基づく仮換地の指定がされると,従前の宅地の所有者は,従前の宅地については使用し又は収益することができなくなり,同法103条4項の規定による換地処分の公告がされるまで,仮換地について使用又は収益をすることができる(同法99条1項)が,仮換地の指定によって従前の宅地の所有者は従前の宅地についての所有権を失うものではなく,その所有権に基づき,従前の宅地を処分することができるほか,従前の宅地について地上権その他の使用収益権を設定することもでき,その設定を受けた者は,所有者から設定を受けた当該使用収益権に基づき,仮換地について使用収益をすることができる。他方,従前の宅地の所有者等が仮換地について取得する使用収益権は,同法によって特に設定,付与された暫定的,流動的な権利にすぎず,施行者は,土地区画整理事業の施行のため必要がある場合には仮換地の指定の変更を行うことができるものとされているのみならず,換地処分において仮換地と異なる換地を定めることもできるのであって,このことはいわゆる換地予定地的仮換地の指定がされた場合であっても異なるところはない。また,上記のような仮換地についての使用収益権を取得するにすぎない 従前の宅地の所有者等は,当該使用収益権そのものを目的とする賃貸借契約をいわゆる債権契約として締結すること自体は同法の禁ずるところではないと解されるとしても,当該仮換地そのものにつ にすぎない 従前の宅地の所有者等は,当該使用収益権そのものを目的とする賃貸借契約をいわゆる債権契約として締結すること自体は同法の禁ずるところではないと解されるとしても,当該仮換地そのものについてこれを処分したり地上権その他の使用収益権を設定する権限を有しないことはいうまでもない。 そうであるとすれば,仮換地の指定後に従前の宅地の所有者が仮換地自体に着目して当該仮換地上に建物の所有を目的とする賃借権(借地権)を設定する旨の契約を締結した場合,上記のような土地区画整理法に基づく仮換地の使用収益権そのものを目的とする賃貸借契約が締結されたものと解すべき特段の事情がない限り,当該賃貸借契約の法的性質については,従前の宅地について建物の所有を目的とする賃借権(借地権)を設定する旨の契約であると解するのが相当である。本件賃貸借契約についても,上記特段の事情を認めるに足りる証拠はないから,従前の宅地について借地借家法にいう定期借地権及び事業用借地権(以下「定期借地権等」ということがある。)を設定する旨の契約が締結されたものと解すべきであり,原告は,従前の宅地に設定された定期借地権等に基づいて仮換地につき使用収益をすることができることになるものというべきである。 (2)仮換地の指定後に仮換地自体に着目して当該仮換地上に建物の所有を目的とする賃借権(借地権)を設定する旨の賃貸借契約が締結された場合,賃借人(借地人)は,当該賃借権について登記を経由せず,また,土地区画整理法85条1項の規定による権利の申告をしなくても,当該賃貸借契約に基づいて当該仮換地の使用収益をすることができ,また,その後,同法による換地処分がされた場合には,当該賃借権は換地上に移行して存続すると解されるが,当該賃借権について登記がされ,又は同法85条1項の規定による権利の申告が 収益をすることができ,また,その後,同法による換地処分がされた場合には,当該賃借権は換地上に移行して存続すると解されるが,当該賃借権について登記がされ,又は同法85条1項の規定による権利の申告がされた場合には,施行者は,当該賃借権について,同法98条1項に基づき,当該仮換地について仮に当該賃借権の目的となるべき宅地又はその部分を指定(仮権利指定)することができるのみならず,換地計画において,同法89条2項に基づき,換地について当該賃借権の目的となるべき宅地又はその部分を同条1項の規定に準じて定めることができ,また, 同法94条に基づき,徴収又は交付すべき清算金の額を定めることができるものと解すべきである。 すなわち,前記(1)のとおり,仮換地の指定後に仮換地自体に着目して当該仮換地上に建物の所有を目的とする賃借権(借地権)を設定する旨の賃貸借契約が締結された場合であっても,当該賃貸借契約の法的性質については,特段の事情がない限り,従前の宅地についての賃貸借契約と解されるところ,土地区画整理法85条1項は,同項の規定による権利の申告をしなければならない者として仮換地の指定後に所有権以外の権利で登記のないものを有することとなった者を除外して規定しておらず,同法89条2項,94条,98条1項の各規定も,従前の宅地に存する所有権及び地上権以外の権利ないし従前の宅地について地上権,永小作権,賃借権その他の宅地を使用し,又は収益することができる権利が従前の宅地について仮換地が指定された後に設定されたものであるか否かを区別して規定しておらず,その文理上,これらの権利が従前の宅地についての仮換地の指定後に設定された場合を含むものと解するのが素直である。また,上記のように解するのが,施行者としても,登記がされ又は権利の申告がされた従前の宅地に係る 上,これらの権利が従前の宅地についての仮換地の指定後に設定された場合を含むものと解するのが素直である。また,上記のように解するのが,施行者としても,登記がされ又は権利の申告がされた従前の宅地に係る賃借権その他の使用収益権が当該従前の宅地に対する仮換地の指定の前に設定されたものであると後に設定されたものであるとを問わず,当該登記の存在及び権利の申告のみに基づいて一律に換地計画の決定及び換地処分等の手続を進めることができることとなって,土地区画整理事業の円滑な遂行を確保するという同法の趣旨にも沿うものというべきである。 もっとも,原告の主張するとおり,土地区画整理事業においては換地計画及び換地処分において仮換地として指定された土地と同じ土地が換地として定められる場合が多いと考えられ,従前の宅地について仮換地が指定された後に当該仮換地に着目して賃借権その他の使用収益権が設定される場合も,当該仮換地がそのまま換地として定められることが前提とされているのが通常であると考えられるところ,このような使用収益権の設定を受けた者は,法的には従前の宅地について使用収益権の設定を受けたものと解されるとしても,それは観念的なものにすぎず,実際に従 前の宅地につき使用収益をする余地がないのであって,その限りにおいて土地区画整理法89条2項,94条が換地計画において換地を定め又は徴収若しくは交付すべき清算金の金額を定めるについての基準として規定する照応原則の適用の前提を欠くということができる上,所有者との間での清算の負担を強いられることになるということができる。 しかしながら,以上の点は従前の宅地について仮換地の指定がされた後に当該仮換地に着目した売買が行われた場合についても異なるところがないところ,土地区画整理法は,土地区画整理事業の継続的運営を円滑なものと しながら,以上の点は従前の宅地について仮換地の指定がされた後に当該仮換地に着目した売買が行われた場合についても異なるところがないところ,土地区画整理法は,土地区画整理事業の継続的運営を円滑なものとする趣旨から,施行者は買主(新所有者)に対してその後の手続(換地計画の決定及び換地処分等)を行うものとしているのであって(129条参照),その趣旨は,従前の宅地について仮換地が指定された後に当該仮換地に着目して賃借権その他の使用収益権が設定された場合についても妥当するというべきである。のみならず,前記のとおり,そもそも,仮換地として指定された土地と同じ土地が換地として定められることが制度的,手続的に確保されているものでないことはいうまでもなく,施行者は,いわゆる換地予定地的仮換地の指定がされた場合であっても,土地区画整理事業の施行のため必要がある場合には仮換地の指定の変更を行うことができるほか,換地処分において仮換地と異なる換地を定めることもできるのであって,従前の宅地の所有者等が仮換地について取得する使用収益権は,同法によって特に設定,付与された暫定的,流動的な権利にすぎない。そして,仮換地自体に着目して賃借権その他の使用収益権が設定された場合であっても,換地処分において換地として仮換地と異なる土地が照応原則に反して定められたようなときは,従前の宅地の所有者とは別に,使用収益権の設定を受けた者についても,換地の見直しを求め,あるいは,清算金の交付やその増額を求めて,換地処分を争う実益がないとはいえないのである。 (3)以上のとおり,仮換地の指定後に仮換地自体に着目して当該仮換地上に建物の所有を目的とする賃借権(借地権)を設定する旨の賃貸借契約が締結され,当該賃借権について登記が経由された場合,施行者は,当該賃借権について,換地計画 に 仮換地自体に着目して当該仮換地上に建物の所有を目的とする賃借権(借地権)を設定する旨の賃貸借契約が締結され,当該賃借権について登記が経由された場合,施行者は,当該賃借権について,換地計画 において,同法89条2項に基づき,換地について当該賃借権の目的となるべき宅地又はその部分を同条1項の規定に準じて定めることができ,また,同法94条に基づき,徴収又は交付すべき清算金の額を定めることができるものと解されるから,本件土地区画整理事業の施行者である被告において,仮換地の指定後に当該仮換地に着目して賃借権を設定した上その登記を経由した原告に対し,換地を定めた上で徴収及び交付すべき清算金の金額を定めて換地処分(本件換地処分)をしたことが,土地区画整理法に違反し違法であるということはできない。 本件換地処分に係る換地について定期借地権及び事業用借地権しか有しない原告は清算金の徴収の対象となるか(争点②)(1)前提事実に加えて甲1,4,乙8,9及び弁論の全趣旨によれば,本件土地区画整理事業の施行者である被告は,平成18年11月6日,土地評価基準を確定し,これに基づき,路線価評価方式により原則として1筆の宅地ごとに従前の宅地及び換地のそれぞれについて権利価額を算定し,借地権については,定期借地権,事業用借地権,普通借地権(借地借家法2章4節に規定する借地権以外のものをいう。以下同じ。)の別を問わず,一律に,その権利価額を商業地域については所有権の60パーセント,準工業地域及び工業専用地域についてはいずれも50パーセントと定め,これに従って従前の宅地に係る借地権及び換地に係る借地権の権利価額を算定し,その差額をもって交付又は徴収すべき清算金の金額と定めた上,本件換地処分を含む換地処分を行ったこと,土地評価基準における借地権の権利価額の割合は に係る借地権及び換地に係る借地権の権利価額を算定し,その差額をもって交付又は徴収すべき清算金の金額と定めた上,本件換地処分を含む換地処分を行ったこと,土地評価基準における借地権の権利価額の割合は,E株式会社(不動産鑑定士)の平成18年10月20日付け意見書に基づいて定められたところ,同意見書においては,本件施行区域をその用途地域ごとに工業専用地域,準工業地域及び商業地域に区分した上,その借地権の権利価額の割合について,地元精通業者等からのヒアリング,相続税財産評価基準における借地権割合,底地の取引価格の更地価格に対する割合等から,工業専用地域及び準工業地域についてはいずれも50パーセント,商業地域については60パーセントと査定したとされていること,本件換地処分に係る換地は,いずれも,準工業地域(街 区×)にあり,その相当部分を占めていること,以上のとおり認められる。 (2)土地区画整理事業の換地計画において換地を定める場合(賃借権等所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限の目的となるべき宅地又はその部分を定める場合を含む。以下同じ。),換地及び従前の宅地(従前の宅地について存する賃借権等所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限を含む。以下同じ。)が照応するように定めなければならないものとされ(土地区画整理法89条1項,2項),この照応の原則は,それぞれの従前の宅地と換地とが大体において同一条件であるといういわゆる縦の関係と換地相互間の公平,平等という横の関係の両方において照応していることを要求しているものと解される。そして,土地区画整理は,施行者が一定の限られた施行地区内の宅地につき,多数の権利者の利益状況を勘案しつつそれぞれの土地を配置していくものであり,また,換地の方法は多数あり得ることからすれば,具体的な換地処分を行うに当 ,施行者が一定の限られた施行地区内の宅地につき,多数の権利者の利益状況を勘案しつつそれぞれの土地を配置していくものであり,また,換地の方法は多数あり得ることからすれば,具体的な換地処分を行うに当たっては,同法89条所定の基準の枠内において,施行者の合目的的な見地からする裁量的判断にゆだねざるを得ないものであるが,公益上の必要や換地設計上の技術的理由から,上記のような照応関係を確保することが不可能ないし著しく困難な場合があり,施行区域内の宅地の所有者又は当該宅地につき賃借権その他の権利を有する者(処分の制限を含み,所有権及び地役権を含まない。以下同じ。)の間に不均衡ないし不公平が生じることはやむを得ないところである。同法の定める清算金の制度は,このような関係を是正し公平を図るために設けられたものであって,清算金は,上記縦の関係に対応する損失補償金の交付又は不当利得金の徴収としての機能と,上記横の関係に対応する不均衡是正の調整金としての機能を併せ有するものというべきである。以上のような清算金の趣旨及び機能にかんがみると,清算金の額の決定に係る施行者の裁量の余地を認め得るとしてもその範囲は限定されたものと解されるのであり,少なくとも清算金の金額の決定の基礎となる従前の宅地及び換地の評価については適正なものでなければならないというべきである。そして,同法は,従前の宅地に係る所有権のみならず,従前の宅地について存する賃借権その他の権利についても,不均衡が生ず ると認められるときは,所有権とは別に,従前の宅地について存するこれらの権利の目的である宅地若しくはその部分及び換地について定めるこれらの権利の目的となるべき宅地若しくはその部分の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等を総合的に考慮して,換地計画において清算金の額を定めなければならな 地若しくはその部分及び換地について定めるこれらの権利の目的となるべき宅地若しくはその部分の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等を総合的に考慮して,換地計画において清算金の額を定めなければならないと規定している(87条1項3号,94条)ところからすれば,賃借権その他の権利について清算金の金額を定める場合においても当該権利の評価は適正なものでなければならないというべきであり,所有者との間で事後的調整の余地が存するとしても,土地区画整理事業の迅速かつ円滑な遂行の確保の見地から直ちに施行者に被告が主張するような広範な裁量を認めることはできないというべきである。 (3)ところで,一般に,借地借家法(平成19年法律第132号による改正前のもの。)22条の定期借地権及び同法24条の事業用借地権については,契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長並びに建物買取請求権に関する規定等の適用がない点において,普通借地権とその権利の内容,性質が大きく異なるものであり,しかも,定期借地権等に係る借地契約の内容は,存続期間の長短,地代の額,権利金又は保証金の支払の有無ないし多寡,当該借地の用途等の点において極めて個別性が強いものである。これらにかんがみ,財産評価基本通達においても,慣行として形成されてきた借地権割合を基礎とした借地権の評価方法はなじまないとして,定期借地権等の価額は,原則として,設定契約の内容等に基づいて,課税時期において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定した価額によって評価するものとし(27-2),その簡便法として,定期借地権等設定時において借地人に帰属する経済的利益の総額(通常取引価額ベースでの定期借地権等の価額)を基に,課税時期における残存期間を考慮して,所定の算式によりその価額を算定するものとし,定期借地 借地権等設定時において借地人に帰属する経済的利益の総額(通常取引価額ベースでの定期借地権等の価額)を基に,課税時期における残存期間を考慮して,所定の算式によりその価額を算定するものとし,定期借地権等設定時における借地人に帰属する経済的利益の総額の算定として,①定期借地権等の設定に際し,借地権者から借地権設定者に対し,権利金等借地契約の終了の時に返還を要しないものとされる金銭の支払又は財産の供与がある場合,②定期借地権等の設定に際し,借地権者から借地権 設定者に対し,保証金,敷金等借地契約の終了の時に返還を要するものとされる金銭等の預託があった場合において,その保証金等につき基準年利率未満の約定利率による利息の支払があるとき又は無利息のとき,③定期借地権等の設定に際し,実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額がある場合,に分けてそれぞれ所定の算式等を規定しており,これらの定めは,上記①ないし③の場合に定期借地権等の設定時において借地人に経済的利益が帰属するという考え方を前提にしているものということができる。 上記のとおり,定期借地権等の内容は,その存続期間の長短,地代の額,権利金又は保証金の授受の有無ないし多寡,当該借地の用途等の契約条件に規定される,極めて個別性が強いものであり,普通借地権のように借地権割合を基礎とした借地権価格等が取引慣行として形成されているといった状況にはないところ,本件土地区画整理事業における換地計画は,上記のような定期借地権等と普通借地権との差異及び定期借地権等の個別性,多様性を捨象し,一律に借地権割合をもってその権利の価額を評価した上,これに基づいて徴収又は交付すべき清算金の金額を定めているのであって,このような評価方法は,少なくとも一般的な定期借地権等の評価方法としての合理性を欠くものといわ もってその権利の価額を評価した上,これに基づいて徴収又は交付すべき清算金の金額を定めているのであって,このような評価方法は,少なくとも一般的な定期借地権等の評価方法としての合理性を欠くものといわざるを得ない。のみならず,甲9及び弁論の全趣旨によれば,本件賃貸借契約においてはいずれもその締結に際して権利金又は保証金の授受がされていない上,これらの賃貸借契約における地代がその適正な価格を相当程度下回るなど実質的に贈与を受けたと認められるような差額地代の存在を認めるに足りる的確な証拠もない。 しかしながら,前記認定事実に加えて甲5,9,12,乙7及び弁論の全趣旨によれば,本件賃貸借契約は,存続期間を50年とする定期借地権の設定を目的とするものと存続期間を20年とする事業用借地権の設定を目的とするものとが含まれているが,ともにその用途をAのテーマパーク用施設の建設,運営用地とするものであり,これらの借地は一体として当該テーマパークの運営の用に供されていること,本件賃貸借契約における借地権設定の目的とされた土地の一部について,賃貸 借契約締結の前から,原告を権利者とする賃借権設定請求権仮登記が経由された上,当該賃借権設定請求権を目的とする質権が設定されてその旨の仮登記が経由され,複数の金融機関の原告に対する融資の担保に供されていたこと(なお,上記各仮登記が経由された土地についてはいずれもその後存続期間を20年とする事業用借地権が設定されている。),本件賃貸借契約に基づく定期借地権等は,いずれも,平成11年10月13日付け又は平成13年10月24日付けで観光施設の名称をA,所有者を原告とする観光施設財団に組み入れられた上,当該観光施設財団について根抵当権設定契約が締結され,複数の金融機関の原告に対する融資の担保に供されたこと,当該根抵当権設 けで観光施設の名称をA,所有者を原告とする観光施設財団に組み入れられた上,当該観光施設財団について根抵当権設定契約が締結され,複数の金融機関の原告に対する融資の担保に供されたこと,当該根抵当権設定契約に係る契約書においては,事業用借地権については原告はその期間が満了したときは直ちに当該契約に定める条件に従って新たな事業用借地権を設定する手続をとるものとされていたこと,以上の事実が認められる。 これらによれば,本件賃貸借契約においては,その借地の用途等に照らし,存続期間を20年とする事業用借地権の設定を目的とするものについても,通常の事業用借地権とは異なり,当該存続期間の満了により当然に終了することが前提とされておらず,継続して事業用借地権を設定することが当初から予定されていたものと推認される。のみならず,当該事業用借地権が設定される前から,その目的土地について,原告を権利者とする賃借権設定請求権仮登記が経由された上,当該賃借権設定請求権に質権が設定されて融資がされていたのであって,当該賃借権設定請求権自体に担保価値が存することを前提とした金融取引が行われていたことは明らかである。また,本件賃貸借契約の締結後,これに基づく事業用借地権及び定期借地権は一体として観光施設財団に組み入れられた上根抵当権が設定されているところ,当該観光施設財団に係るテーマパークの運営の用に供することを目的とする借地権が当該観光施設財団の不可欠の構成要素として当該観光施設財団の経済的価値を生み出していることも明らかというべきである。これらに加えて,前記のとおり,土地評価基準における借地権の権利価額の評価の基礎とされたE株式会社の意見書に係る査定が行われた当時,借地権割合が50パーセントと査定された準工業地域 (街区×)の相当部分を原告が本件賃貸借契約に基づい 基準における借地権の権利価額の評価の基礎とされたE株式会社の意見書に係る査定が行われた当時,借地権割合が50パーセントと査定された準工業地域 (街区×)の相当部分を原告が本件賃貸借契約に基づいて占有使用していたことをも併せ考えると,前記のとおり,本件賃貸借契約において権利金又は保証金の授受がされておらず,また,その地代が適正な価格とかい離している等の事情もうかがわれないことをしんしゃくしても,被告が本件換地処分に係る換地計画において本件賃貸借契約に基づく定期借地権及び事業用借地権の価額を当該借地権が設定された土地の更地の価額の50パーセントと評価したことが直ちに不合理であるということはできないのであって,他に当該評価が合理性を欠くことについての的確な立証はない。 そうであるとすれば,前記のとおり本件賃貸借契約に基づく原告の定期借地権等について路線価評価方式により従前の宅地及び換地のそれぞれについて権利価額を算定した上借地権割合を50パーセントとして算定した評価額は,それ以上の主張,立証を欠く状況の下においては,当該定期借地権等の適正な価格であると推認されるから,被告が本件換地処分に係る換地計画において当該評価額に基づいて原告に係る徴収又は交付すべき清算金の金額を定めたことは,土地区画整理法94条の定める基準に違反するということはできない。 (4)以上検討したところによれば,本件換地処分は,これに係る換地計画における徴収又は交付すべき清算金の金額の定めが土地区画整理法94条の規定に違反するということはできないから,違法ということはできない。 結論 以上検討したところによれば,本件換地処分に原告が主張する違法はないというべきであるから,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 よって,原告の請求を棄却す 結論 以上検討したところによれば,本件換地処分に原告が主張する違法はないというべきであるから,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西川知一郎裁判官徳地淳裁判官釜村健太
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