平成18年5月17日判決言渡平成15年(行ウ)第18号遺族補償年金等不支給処分取消請求事件主文 被告が原告に対して平成14年5月31日付けでした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金及び葬祭料を支給しない旨の各処分をいずれも取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,中部電力株式会社(以下「中部電力」という。)に勤務していたAが,平成11年11月8日に焼身自殺をしたことが業務に起因するうつ病によるものであるとして,Aの妻である原告が,被告に対し,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく遺族補償年金及び葬祭料の各支給を請求したところ,被告が,平成14年5月31日,Aの自殺は業務上の事由による死亡とは認められないとして,原告の各請求につき不支給処分をしたことから,原告が,その各不支給処分の取消しを求める事案である。 争いのない事実等(特に証拠を掲げたもの以外は,当事者間に争いがない。)(1)当事者等ア原告原告は,Aの妻である。 イAAは,昭和38年10月15日生まれの男性であり,中部電力の従業員であったが,後記(6)のとおり,平成11年11月8日,死亡した(Aの生年月日については乙1)。 なお,Aが死亡した当時,Aは,妻である原告のほか,二人の子らと同居し,生計を共にしていた(甲18)。 ウ中部電力中部電力は電気の供給事業等を主たる業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 (2)Aの経歴等アAは,昭和57年3月,徳島県立辛工業高等学校機械科を卒業後,同年4月1日,中部電力に入社し,尾鷲三田火力発電所発電課に配属された。 その後,昭和59年8月1日尾鷲三田火力発電所保修課勤務,平成2年8月1日知多エル・エヌ・ジー株式 工業高等学校機械科を卒業後,同年4月1日,中部電力に入社し,尾鷲三田火力発電所発電課に配属された。 その後,昭和59年8月1日尾鷲三田火力発電所保修課勤務,平成2年8月1日知多エル・エヌ・ジー株式会社(以下「知多エル・エヌ・ジー」という。)出向,平成5年8月1日知多第二火力発電所保修課勤務を経て,平成9年8月1日,火力センター工事第一部環境設備課(以下「環境設備課」という。)に配属され,同課の燃料グループに所属することになった(甲19,弁論の全趣旨)。 Aは,平成11年8月1日,環境設備課の主任に昇格した(甲19)。 イAは,平成11年6月18日,中部電力労働組合火力センター支部執行委員に就任した(甲19)。 (3)中部電力の所定労働時間等ア中部電力火力センターにおいては,始業時刻は午前8時30分,終業時刻は午後5時10分,休憩時間は午後0時から午後1時までの1時間とされており,所定労働時間は,7時間40分とされていた(乙27・1頁,2頁)。 また,所定休日は,日曜日,国民の祝日(国民の祝日が日曜日に当たるときはその翌日及び5月4日),土曜日等と定められており,完全週休二日制が採られていた(乙27・1頁)。 イ中部電力では,毎年4月1日を基準として1年間(4月1日から翌年3 月31日まで)に20日(勤続1年未満の従業員については15日)の普通休暇(有給)を付与される。なお,1年間に20日に満たない普通休暇しか取得しなかった場合には,その残日数を翌年度に繰り越すことができるため,最高40日の普通休暇を取得することができることになる(乙27・18頁)。 また,同社では,毎年7月から9月までの3か月間に,特別休暇(有給)を3日取得することができる(乙27・18頁)。 ウ従業員の出退勤管理につき,タイムカード等による管理はされておら 7・18頁)。 また,同社では,毎年7月から9月までの3か月間に,特別休暇(有給)を3日取得することができる(乙27・18頁)。 ウ従業員の出退勤管理につき,タイムカード等による管理はされておらず,原則として,直属長が始業時,終業時等に従業員の出退社の状況を確認するという方法を採っていた(乙27・2頁)。 (4)環境設備課の業務内容等ア中部電力火力センター工事第一部(名古屋市港区B町C番地所在)は,中部電力の供給エリア東方面にある7か所の火力発電所(新名古屋火力発電所,知多火力発電所,渥美火力発電所,武豊火力発電所,知多第二火力発電所,碧南火力発電所,新清水火力発電所)及び2か所の燃料基地(知多エル・エヌ・ジーの知多LNG事業所,知多LNG共同基地)の保修業務の統括管理を行っている(乙27・6頁,7頁)。 イ環境設備課は,火力発電所の設備のうち,環境設備及び燃料設備に関する保守関連業務を担当している。なお,環境設備とは,火力発電所から排出される排煙,排水を処理管理する設備の総称であるが,排煙処理設備には,排煙脱硝処理装置,排煙脱硫処理装置,石炭灰処理装置,電気集じん装置等があり,排水処理設備には,総合排水処理装置,生活排水処理装置,起動排水処理装置等がある。他方,燃料設備とは,火力発電所で使用する燃料(石炭・石油・LNG(液化天然ガス))受入貯蔵装置及び運搬装置の総称であるが,石炭設備には,揚炭機,ベルトコンベヤ,貯炭場等があり,石油設備には,輸送船から石油を荷揚げするためのローディングアー ム,油配管,燃料油タンク,消火装置等があり,LNG設備には,ローディングアーム,ガス配管,LNGタンク,ガス発生装置,消火装置等がある(乙27・7頁)。 環境設備課は,排煙排水処理設備の保守管理業務を担当する機械グループと燃料設備の あり,LNG設備には,ローディングアーム,ガス配管,LNGタンク,ガス発生装置,消火装置等がある(乙27・7頁)。 環境設備課は,排煙排水処理設備の保守管理業務を担当する機械グループと燃料設備の保守管理業務を担当する燃料グループから成るが,このうち燃料グループでは,火力発電所で使用する石炭・石油・LNGの受入れ・貯蔵・運搬設備の点検・修理,改造工事等に伴う技術検討,予算編成,発注業務等を担当している(乙27・7頁)。 ウ環境設備課燃料グループの主たる業務内容は以下のとおりである(乙27・7頁,8頁)。 (ア)工事長期計画の策定・実績管理本店火力部からの工事長期計画策定依頼に基づき,当年度の実績確認と翌年度以降6年間の工事予定を策定する。また,その策定に当たり,その工事の必要性,実施時期,発注金額等について適正評価を行い,長期的な観点からみた設備の信頼度確保策及び最適な投資計画を立案する。 (イ)予算編成・予算管理本店火力部からの火力部門保守関係工事予算編成依頼に基づき,翌年度及び翌々年度に実施する工事の予算を編成する。また,その編成に当たり,工事長期計画策定結果とその後の運用や情勢変化を加味し,実施の必要性,必要予算額等を総合的に評価して,年度ごとの工事予算を編成する。 (ウ)工事の実施手続・発注業務編成された各工事件名について,実施決裁,発注手続,契約仕様の検討,法的対応の要否,発電所への工事引継ぎ等,工事完工までの一連の技術管理及び予算管理を行う。 (エ)保修業務委託の内容検討及び業務調査 渥美火力発電所,碧南火力発電所,知多エル・エヌ・ジーの知多LNG事業所及び知多LNG共同基地の燃料設備に関する保修業務を関係会社に業務委託するに当たり,毎年度末までに翌年度の委託業務内容の審査をするとともに,業務実態を確認し, 知多エル・エヌ・ジーの知多LNG事業所及び知多LNG共同基地の燃料設備に関する保修業務を関係会社に業務委託するに当たり,毎年度末までに翌年度の委託業務内容の審査をするとともに,業務実態を確認し,委託先との協議を行う。また,委託期間中に,委託業務が契約どおり実施・管理されているか確認するため,委託業務管理部署(発電所の保修課)に出向き,業務調査を行う。 (オ)設備機器の技術検討・管理燃料設備に関するすべての機器の信頼度を確保するため,運用中に発生する不具合,定期点検で発見される不具合等に関して,原因の究明や対策の立案・施工等の技術検討を行い,同一機種への水平展開を図る。 また,関連する法令が改正された場合,法令の改正内容と既存の設備仕様とを照合して,その適用・改善時期等につき立案するとともに,各機器の改造・修理状況の履歴について管理する。 (カ)設備管理指針(手引)の管理関連する法令が改正された場合などに,保守業務に関する各種の設備管理指針・手引・業務資料の見直しを行い,関係部署に周知させる。 (キ)点検修理工事契約の更改に関する手続燃料設備の点検,修理工事に関する契約の単価について,当年度の単価実績を評価・確認して翌年度の単価を設定したり,新規件名,削除件名等の審査検討を行うなど,契約更改に関する手続を行う。 なお,燃料グループにおいては,業務について「件名」という用語を使用することがあるが,このうち「工事件名」とは,主として発電所からの要求に従って長期計画(今後6年以内に工事を施工する予定のもの)が提案された場合,その長期計画に設定されたものについて予算取りをした後,実際に当該工事の着工に向けて,工事の発注手続を行ったり,発電所への工事の引継ぎ等を行うものである。また「検討件名」とは,当該年度の中 部電力の業務方針に従って れたものについて予算取りをした後,実際に当該工事の着工に向けて,工事の発注手続を行ったり,発電所への工事の引継ぎ等を行うものである。また「検討件名」とは,当該年度の中 部電力の業務方針に従って,燃料グループ内部で,問題点,懸案事項等を抽出し,これを検討して改善を図ることを目的とするものである(弁論の全趣旨)。 (5)環境設備課の人員構成平成11年8月からAが死亡した同年11月までの間当時,環境設備課は,D課長(以下「D」という。)を筆頭に,機械グループが,E副長,F担当副長,G主務,H主務(以下「H」という。),I主任,J主任(以下「J」という。),K,L主任(以下「L」という。)及びMによって構成され,他方,燃料グループが,N副長(以下「N」という。),O担当副長(以下「O」という。),P主任(以下「P」という。),Q,R,A,S及びTによって構成されていた(甲20,75,乙27・28頁)。 (6)Aのうつ病発症と自殺Aは,平成11年9月下旬ころ,うつ病を発症した。その後,Aは,同年11月8日午後1時5分ころ,愛知県知多郡U町V番において,自家用車の車内で焼身自殺を図り,焼死した。 (7)本件訴訟に至る経過ア原告は,平成12年10月19日,被告に対し,労災保険法に基づき,遺族補償年金及び葬祭料の各支給を請求した。 これに対して,被告は,不支給理由につき,いずれも「業務による心理的負荷が精神障害の有力な原因とはいえない。よって本件は業務上の事由による死亡とは認められず業務外として判断する。」として,平成14年5月31日付けで,遺族補償年金及び葬祭料の各不支給決定(以下「本件各処分」という。)をした(乙3の1の1から3の2の2まで)。 イ原告は,平成14年7月1日,愛知労働者災害補償保険審査官に対し,本件各処分の取消しを 族補償年金及び葬祭料の各不支給決定(以下「本件各処分」という。)をした(乙3の1の1から3の2の2まで)。 イ原告は,平成14年7月1日,愛知労働者災害補償保険審査官に対し,本件各処分の取消しを求めて,労災保険法に基づく審査請求をした。同審査請求は,同月3日付けで受理されたが,3か月を経過してもこれに対す る決定はされなかった。 ウ原告は,平成14年12月30日,労働保険審査会に対し,労災保険法に基づく再審査請求をした。同再審査請求は,平成15年1月6日付けで受理されたが,3か月を経過してもこれに対する裁決はされなかった。 エそこで,原告は,平成15年4月9日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著)。 (8)労働省による判断指針の策定とその内容等ア精神障害等の労災認定に係る専門検討会報告書(以下「専門検討会報告書」という。)労働省は,業務によるストレスを原因として精神障害を発病し,あるいは自殺したとして労災保険給付が請求された事案につき,同事案の処理を直接実施する労働基準監督署の職員が,迅速・適正に対処するための判断のよりどころとなる一定の基準を明確化すべく,精神医学,心理学,法律学の研究者等に,精神障害等の労災認定について専門的見地から検討するよう依頼した。これを受けた精神障害等の労災認定に係る専門検討会は,平成10年2月から平成11年7月までの間,延べ16回の全体会議及び5回の分科会を開催して,平成11年7月29日,その結果を専門検討会報告書として取りまとめた(乙29)。 イ「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(以下「判断指針」という。)専門検討会報告書に基づき,労働省労働基準局長は,都道府県労働基準局長に対し,判断指針(平成11年9月14日付け基発第544号)を発出した(乙30)。 判断 について」(以下「判断指針」という。)専門検討会報告書に基づき,労働省労働基準局長は,都道府県労働基準局長に対し,判断指針(平成11年9月14日付け基発第544号)を発出した(乙30)。 判断指針の要旨は,以下のとおりである(乙30)。 (ア)労災請求事案の処理に当たっては,まず,精神障害の発病の有無,発病の時期及び疾患名を明らかにした上で,業務による心理的負荷,業 務以外の心理的負荷及び個体側要因の各事項について具体的に検討し,それらと当該労働者に発病した精神障害との関連性について総合的に判断する必要があり,その際,当該精神障害の発病に関与したと認められる業務による心理的負荷の強度ないしは業務以外の心理的負荷の強度を評価するに当たっては,労災保険制度の性格上,本人がその心理的負荷の原因となった出来事をどのように受け止めたかではなく,多くの人々が一般的にはどう受け止めるかという客観的な基準によって評価する必要がある。 (イ)対象疾病は,原則として国際疾病分類第10回修正(以下「ICD-10」という。)第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類される精神障害とする。 (ウ)労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する疾病と認定するためには,①対象疾病に該当する精神障害を発病していること,②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること,③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないことの3要件をいずれも満たすことが必要である。 (エ)業務による心理的負荷の強度の評価に当たっては,当該心理的負荷の原因となった出来事及びその出来事に伴う変化等について,判断指針の別表1「職場における心理的負荷評価表」(別紙1。以下「判断指針 (エ)業務による心理的負荷の強度の評価に当たっては,当該心理的負荷の原因となった出来事及びその出来事に伴う変化等について,判断指針の別表1「職場における心理的負荷評価表」(別紙1。以下「判断指針別表1」という。)を指標として総合的に検討する。 (オ)業務による心理的負荷の強度についての具体的な評価方法については以下のとおりである。 a判断指針別表1は,出来事及びその出来事に伴う変化等をより具体的かつ客観的に検討するため,①当該精神障害の発病に関与したと認められる出来事が,一般的に はどの程度の強さの心理的負荷と受け止められるかを判断する「(1)平均的な心理的負荷の強度」の欄②出来事の個別の状況をしんしゃくし,その出来事の内容等に即して心理的負荷の強度を修正するための「(2)心理的負荷の強度を修正する視点」の欄③出来事に伴う変化等はその後どの程度持続,拡大あるいは改善したかについて評価するための「(3)出来事に伴う変化等を検討する視点」の欄から構成されている。 b業務による心理的負荷の強度の評価は,まず前記aの①及び②により当該精神障害の発病に関与したと認められる出来事の強度が「Ⅰ」,「Ⅱ」,「Ⅲ」のいずれに該当するかを評価する。 なお,この心理的負荷の強度「Ⅰ」は日常的に経験する心理的負荷で一般的に問題とならない程度の心理的負荷,心理的負荷の強度「Ⅲ」は人生の中でまれに経験することもある強い心理的負荷,心理的負荷の強度「Ⅱ」はその中間に位置する心理的負荷である。 次に,前記aの③によりその出来事に伴う変化等に係る心理的負荷がどの程度過重であったかを評価する。その上で出来事の心理的負荷の強度及びその出来事に伴う変化等に係る心理的負荷の過重性を併せて総合評価(「弱」,「中」,「強」)する。 なお,前記aの②及び③を検 がどの程度過重であったかを評価する。その上で出来事の心理的負荷の強度及びその出来事に伴う変化等に係る心理的負荷の過重性を併せて総合評価(「弱」,「中」,「強」)する。 なお,前記aの②及び③を検討するに当たっては,本人がその出来事及び出来事に伴う変化等を主観的にどう受け止めたかではなく,同種の労働者(職種,職場における立場や経験等が類似する者をいう。)が,一般的にどう受け止めるかという観点から検討されなければならない。 (カ)a出来事の平均的な心理的負荷の強度の評価については,労災請求 事案ごとに,発病前おおむね6か月の間に,当該精神障害の発病に関与したと考えられる業務による出来事としてどのような出来事があったのかを具体的に把握し,その出来事が判断指針別表1の(1)の欄のどの「具体的出来事」に該当するかを判断して平均的な心理的負荷の強度を「Ⅰ」,「Ⅱ」,「Ⅲ」のいずれかに評価する。なお,「具体的出来事」に合致しない場合には,どの「具体的出来事」に近いかを類推して評価する。 b次に,出来事の平均的な心理的負荷の強度は,判断指針別表1の(1)の欄により評価するが,その出来事の内容等によってはその強度を修正する必要が生じ,そのため,出来事の具体的内容,その他の状況等を把握した上で,判断指針別表1の(2)に掲げる視点に基づいて,前記aにより評価した「Ⅰ」,「Ⅱ」,「Ⅲ」の位置づけを修正する必要がないかを検討する。 なお,出来事の発生以前から続く恒常的な長時間労働,例えば所定労働時間が午前8時から午後5時までの労働者が,深夜時間帯に及ぶような長時間の時間外労働を度々行っているような状態等が認められる場合には,それ自体で,判断指針別表1の(2)の欄による心理的負荷の強度を修正する。 (キ)出来事に伴う変化等に係る心理的負荷がどの程 うな長時間の時間外労働を度々行っているような状態等が認められる場合には,それ自体で,判断指針別表1の(2)の欄による心理的負荷の強度を修正する。 (キ)出来事に伴う変化等に係る心理的負荷がどの程度過重であったかの評価については,①仕事の量(労働時間等)の変化(基本的には労働時間の長さ等の変化によって判断するが,仕事の密度等の変化が過大なものについても考慮する。),②仕事の質の変化(職種の変更,仕事の内容の大きな変化,一般的に求められる適応能力を超えた要求等その変化が通常予測される変化と比べて過大であると認められるものについて考慮する。),③仕事の責任の変化(事業場内で通常行われる昇進に伴う責任の変化等通常の責任の増大を大きく超えるものについて考慮す る。),④仕事の裁量性の欠如(単調で孤独な繰り返し作業等仕事の遂行についての裁量性が極端に欠如すると考えられる場合について考慮する。),⑤職場の物的,人的環境の変化(騒音,暑熱等物理的負荷要因等が著しい場合について考慮する。また,職場における人間関係から生じるトラブル等通常の心理的負荷を大きく超えるものについて考慮する。),⑥支援・協力等の有無(出来事に対処するための仕事のやり方の見直し改善,応援態勢の確立,責任の分散等上司,同僚等による必要な支援,協力がなされていたか等について検討し,これが十分でない場合に考慮する。)を考慮する。 (ク)業務による心理的負荷の強度の総合評価は,前記(カ)及び(キ)の手順によって評価した心理的負荷の強度の総体が,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある程度の心理的負荷と認められるか否かについて行う。 「客観的に精神障害を発病させるおそれのある程度の心理的負荷」とは,判断指針別表1の総合評価が「強」と認められる程度の心理的負荷,すなわち,① ある程度の心理的負荷と認められるか否かについて行う。 「客観的に精神障害を発病させるおそれのある程度の心理的負荷」とは,判断指針別表1の総合評価が「強」と認められる程度の心理的負荷,すなわち,①判断指針別表1の(2)の欄に基づき修正された心理的負荷の強度が「Ⅲ」と評価され,かつ,判断指針別表1の(3)の欄による評価が相当程度過重(同種の労働者と比較して業務内容が困難で,業務量も過大である等が認められる状態)であると認められるとき,②判断指針別表1の(2)の欄により修正された心理的負荷の強度が「Ⅱ」と評価され,かつ,判断指針別表1の(3)の欄による評価が特に過重(同種の労働者と比較して業務内容が困難であり,恒常的な長時間労働が認められ,かつ,過大な責任の発生,支援・協力の欠如等特に困難な状況が認められる状態)であると認められるときをいう。 ただし,極度の長時間労働,例えば数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働により,心身の極度 の疲弊,消耗を来し,それ自体がうつ病等の発病原因となるおそれがあると認められる場合等には,総合評価を「強」とすることができる。 (ケ)業務以外の心理的負荷の強度は,発病前おおむね6か月の間に起きた客観的に一定の心理的負荷を引き起こすと考えられる出来事について,判断指針の別表2「職場以外の心理的負荷評価表」(別紙2)により評価する。ただし,この場合も,出来事の具体的内容等を勘案の上,その平均的な心理的負荷の強度を変更し得る。 (コ)個体側要因については,既往歴,生活史(社会適応状況),アルコール等依存状況,性格傾向に個体側要因として考慮すべき点が認められる場合は,それらが客観的に精神障害を発病させるおそれのある程度のものと認められるか否かについて検討する。なお,性格傾 状況),アルコール等依存状況,性格傾向に個体側要因として考慮すべき点が認められる場合は,それらが客観的に精神障害を発病させるおそれのある程度のものと認められるか否かについて検討する。なお,性格傾向については,性格特徴上偏りがあると認められる場合には個体側要因として考慮するが,それまでの生活史を通じて社会適応状況に特別の問題がなければ,個体側要因として考慮する必要はない。 (サ)業務上外の判断に当たっての考え方は,以下のとおりである。 すなわち,調査の結果,業務による心理的負荷以外には特段の心理的負荷,個体側要因が認められない場合で,業務による心理的負荷の強度が「強」と認められるときには,業務起因性があると判断して差し支えない。 他方,調査の結果,業務による心理的負荷以外に特段の心理的負荷,個体側要因が認められる場合には,業務による心理的負荷の強度が「強」と認められる場合であっても,業務以外の心理的負荷の強度及び個体側要因の検討結果を併せて総合評価し,前記(ウ)の②及び③の要件のいずれをも満たすか否かについて判断するが,業務以外の心理的負荷及び個体側要因が精神障害発病の有力な原因となったと認められる状況がなければ業務起因性があると判断して差し支えない。 (シ)ICD-10のF0からF4に分類される多くの精神障害では,精神障害の病態としての自殺念慮が出現するがい然性が高いと医学的に認められることから,業務による心理的負荷によってこれらの精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には,精神障害によって正常の認識,行為選択能力が著しく阻害され,又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し,原則として業務起因性が認められる。 争点 本件の争点は,Aのうつ病の発症・増悪及び しく阻害され,又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し,原則として業務起因性が認められる。 争点 本件の争点は,Aのうつ病の発症・増悪及び自殺が業務に起因するものであるか否かである。 争点に関する当事者の主張の要旨(原告の主張の要旨)(1)業務起因性の判断基準についてア相当因果関係の要否労働者災害補償制度(以下「労災補償制度」)は,労働基準法1条が定める「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」労働条件の最低基準を定立することを目的に,負傷,死亡又は疾病が「業務上」であることのみを要件に療養補償・遺族補償等を行う法定救済制度である。したがって,被害者,加害者間の損害の公平な分担を目的とする民事損害賠償制度とは制度目的を異にすることから,労災補償制度においては,民事損害賠償制度の場合よりも,その救済対象を拡大する必要性がある。 よって,労災補償制度に民事損害賠償制度の相当因果関係論を持ち込み,これを厳格に解する態度は労災補償制度の本来の趣旨・目的を見誤ったものであるといわざるを得ない。 イ共働原因論(ア)仮に,業務起因性の判断に際して,業務と疾病発症との間に相当因果 関係が必要であるとしても,民事損害賠償制度における相当因果関係とはおのずからその内容を異にすべきである。そして,前記労災補償制度の趣旨・目的に照らせば,業務と関連性を有しない基礎疾患が原因となった場合であっても,業務が,基礎疾患等を誘発又は増悪させて発症時期を早めるなど,基礎疾患等と共働原因となって発症等の結果を招いたと認められれば,相当因果関係が認められると解するのが相当である(共働原因論)。 (イ)これに対して,被告は,多数の原因又は条件が競合している場合,業務が他の原因と 原因となって発症等の結果を招いたと認められれば,相当因果関係が認められると解するのが相当である(共働原因論)。 (イ)これに対して,被告は,多数の原因又は条件が競合している場合,業務が他の原因と比較して相対的に有力な原因となっている場合に限り,業務と疾病発症との相当因果関係が認められるべきであると主張する(相対的有力原因説)。 しかるに,相対的有力原因説は,業務と他の共働原因が質的に相違し量的に比較不能であるときは成り立ち得ないし,基礎疾病の増悪は業務と密接に関連する場合がほとんどであることに照らせば,業務の負担と基礎疾病の増悪を対立的にとらえ,いずれが疾病発症に有力な原因であったかという比較をする考え方自体が誤っているというべきである。 したがって,被告が主張する相対的有力原因説が,根本的に誤っていることは明らかである。 (ウ)以上によれば,業務に起因してうつ病を発症した上,うつ病の症状である自殺念慮から自殺した場合には,業務と自殺との間には相当因果関係があるというべきである。また,うつ病の発症が業務に起因したものか否か明らかでない場合においても,うつ病が業務に起因して増悪した結果,自殺に至った場合にも,業務と自殺との間の相当因果関係が認められるべきである。 そして,これらの場合,業務による負荷が他の原因と共働原因となって,うつ病を発症又は増悪させたと認められるときには,相当因果関係が認められると解するのが相当である。とりわけ,うつ病のような精神障害の場 合,その発症・増悪について,状況因と個体側の要因が密接不可分に結びついていることにかんがみれば,業務上の要因と個体側の要因を切り離して,いずれが有力な原因であるかを論ずることは誤りであり,業務によりうつ病を発症し又は増悪したか否かという点こそが個別具体的かつ総合的に考察さ とにかんがみれば,業務上の要因と個体側の要因を切り離して,いずれが有力な原因であるかを論ずることは誤りであり,業務によりうつ病を発症し又は増悪したか否かという点こそが個別具体的かつ総合的に考察されるべきである。 ウ仮に,共働原因論に依拠しないとしても,以下のとおり,業務とうつ病の発症・増悪との間に相当因果関係が認められる余地がある。すなわち,被告が援用する「ストレス-ぜい弱性」理論は「病的エピソードは,ぜい弱性と生活上のストレスの相関関係によって起こる」とする考え方であるところ,同理論の正しい理解を前提とすれば,発症前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心理的負荷の有無・程度,さらには,労働者の基礎疾患等の身体的要因や,うつ病に親和的な性格等の個体側の要因等について具体的かつ総合的に判断した上,うつ病の発症・増悪の要因等に関する医学的知見に照らし,社会通念上,業務が労働者の心身に過重な負荷を与える態様のものであり,これによって当該業務にうつ病を発症・増悪させる一定程度の危険性が存在すると認められる場合には,業務とうつ病の発症・増悪との間の相当因果関係を肯定するのが相当である。そして,社会通念上,精神疾患を発症・増悪させる一定程度以上の危険性の有無については,労働者の性格傾向が多様なものであることや労災補償制度の趣旨に照らせば,同種労働者(職種,職場における地位や年齢が類似する者で業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者)の中でその性格傾向が最もぜい弱である者(ただし,同種労働者の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲内の者)を基準とするのが相当である。 エ判断指針について(ア)被告は,判断指針の考え方に基づき,精神障害が業務上の事由により発症したと認められるためには,客観的に見て強度 て通常想定される範囲内の者)を基準とするのが相当である。 エ判断指針について(ア)被告は,判断指針の考え方に基づき,精神障害が業務上の事由により発症したと認められるためには,客観的に見て強度の業務上の心理的 負荷を受けたと認められることが必要であると主張している。 しかし,かかる考え方は,異常なストレスに遭遇した場合以外は,業務起因性を認めないとする考え方と基本的には変わりがないものである。 また,被告は,業務が客観的に見て被災者に心理的負荷を与えたか否かを判断する基準として,被災者が発症前に従事していた業務が,日常業務や同種労働者業務と比較して強度の心理的負荷を与えた業務であるか否かを問題としている。 しかし,同種労働者という概念は極めてあいまいであって,客観的な基準とはなり得ないし,日常的に量的にも質的にも過重労働に従事している場合には,日常的に従事している業務そのものによる心理的負荷を問題とすべきである。したがって,被災者が業務により受けた心理的負荷の強度の判断は,被災者本人を基準に判断すべきである。そして,被災者が精神障害を発症する前に従事していた業務が,日常業務や同種労働者のそれと比較して過重な業務と認められない場合でも,被災者が当該業務に従事することにより,うつ病を発症し自殺した場合には業務起因性が認められてしかるべきである。 (イ)被告は,精神障害の労災認定において心理的負荷の程度を判断する場合に,客観的な評価を重視する理由として,労災補償制度が使用者の無過失責任に由来すること,労災保険法が罰則をもって災害補償を強制していること,労災補償制度の財政基盤がひっ迫する危ぐがあること等を挙げる。 しかし,労災補償制度は労働者とその遺族の生活保障を主たる目的として設けられた制度であり,また,労働基準法が罰則をもって災 していること,労災補償制度の財政基盤がひっ迫する危ぐがあること等を挙げる。 しかし,労災補償制度は労働者とその遺族の生活保障を主たる目的として設けられた制度であり,また,労働基準法が罰則をもって災害補償を強制しているのは,その履行を確保するためであるから,「客観的な評価」という基準によって労災補償の範囲を厳しく限定しようとすることは,労働基準法及び労災補償制度の趣旨に逆行する本末転倒の考え方 というべきである。現実的にも,労災保険による給付がされれば,労働基準法に基づく災害補償がされたものとみなされ,事業主が罰則を受けることはない(労災保険は強制加入とされており,労災保険に未加入のまま労災事故が発生した場合でも,事業主はそ及して労災保険料を徴収されることはあっても,罰則を受けることはない。)。また,日本の事業主が負担している労災保険料は極めて低額であり,しかも,労災保険特別会計は,現在膨大な黒字を計上している。 このように,労災補償制度の趣旨・目的,さらには日本の事業主の労災保険料負担状況,労災保険特別会計の財政状態に照らせば,業務による心理的負荷を客観的に評価し,救済範囲を限定しようとする被告の主張は,理論的にも,現実的にも根拠のないものであることは明らかである。 (ウ)うつ病の増悪と判断指針判断指針の「第3判断要件について」では,判断要件として(1)から(3)まで(前記争いのない事実等(8)イ(ウ)の①から③までに対応する。)が掲げられているが,(2)において「対象疾病の発症前おおむね6か月の間に,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること」とされているのみで,発病後の心理的負荷については,検討の対象とはされていない。 このように,判断指針には,業務による心理的負荷とうつ病の増 せるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること」とされているのみで,発病後の心理的負荷については,検討の対象とはされていない。 このように,判断指針には,業務による心理的負荷とうつ病の増悪との因果関係についての判断基準が欠落している。 しかるに,被告は,業務による心理的負荷とうつ病の増悪との因果関係についての判断基準が欠如していること及びうつ病の増悪があったか否かについての一般的な判断基準を設定することが困難であることを認めながら,前記因果関係が認められるためには,①発病後に,明りょうかつ大きな心身の負荷が加わったと認められること,②それと時間的関 連をもって,明らかに通常の病状の経過の変動の幅を超える大きな症状の悪化があったことを要するとしている。かかる厳格な基準では,業務とうつ病の増悪との因果関係の立証責任を負担する被災者にとっては,事実上不可能な立証を強いられることとなり,ごく例外的な場合を除いては,業務起因性が認められないという不当な結果となりかねない。 (エ)判断指針の拘束力判断指針は,業務上外の認定処分を所管する行政庁が下部行政機関に対してその運用基準を示した通達にすぎず,裁判所を拘束するものではない。 なお,過労自殺の激増に伴い,過労自殺を原因とする労災認定の在り方が社会の厳しい批判を浴びたことから,労働省(現厚生労働省)は従前の認定基準を変更して,新たに判断指針を公表したが,その結果,精神障害の労災認定の件数が若干増加したものの,過労自殺の労災認定の基本となる考え方は何ら変更されなかったといっても過言ではない。とりわけ,被災者本人の置かれた職場の具体的状況を検討することなく,被災者が精神障害発症前に従事していた業務が客観的に見て強度の心理的負荷を与える業務であったこと及び業務による心理的負荷が発症に 。とりわけ,被災者本人の置かれた職場の具体的状況を検討することなく,被災者が精神障害発症前に従事していた業務が客観的に見て強度の心理的負荷を与える業務であったこと及び業務による心理的負荷が発症に関する相対的に有力な原因であることを要するとする点で,不当であることは前記のとおりである。 (2)Aの業務の過重性の有無等についてアAの業務の量的過重性(ア)Aの長時間労働の実態a「勤務表」(甲125),「社有車運行管理簿」(車両日誌。甲127),「休日・時間外入出管理表」(甲123),「休日・時間外入出管理表(巡視用)」(甲124),「通話料金明細書」(PHS発信記録)(甲128),「パソコン更新記録」(甲126)を基に Aの勤務状況をグラフに表すと,「Aの勤務状況グラフ」(甲51)のとおりとなる。上記「Aの勤務状況グラフ」を作成するに当たっては,客観的な資料に基づくものに限っているから,Aの実際の出社時刻より遅い時刻が出社時刻として記録されている場合などには,控えめなデータとなっている。 そして,上記「Aの勤務状況グラフ」によれば,平成11年6月から同年11月までのAの時間外労働時間数は,以下のとおりとなる。 (a)平成11年6月69時間39分(b)同年7月83時間00分(c)同年8月98時間14分(d)同年9月109時間32分(e)同年10月123時間38分(f)同年11月40時間30分このように,控えめなデータによっても,既に平成11年6月,同年7月ころから,Aが残業することは頻繁にあったが,Aが主任に昇格した同年8月を境にして,徐々に長時間労働及び休日労働をせざるを得ない状況に追い込まれていることが分かる。同年7月の時点で,Aは,通常の勤務の少なくとも1.5倍もの時間(残業時間は1か月 主任に昇格した同年8月を境にして,徐々に長時間労働及び休日労働をせざるを得ない状況に追い込まれていることが分かる。同年7月の時点で,Aは,通常の勤務の少なくとも1.5倍もの時間(残業時間は1か月当たり83時間)働いていたことになるのであるが,同年11月に至っては通常勤務の倍以上の時間(残業時間は,7日で40時間,1か月当たりでは120時間以上)働いていたことになるのである。 以上の点は,被告が作成した資料(甲36の1)と比較しても,その傾向に大差はない。すなわち,同年7月の時点で,Aは通常の勤務の少なくとも1.4倍もの時間働いており(残業時間は1か月当たり61時間44分),Aが主任に昇格した同年8月以降同年10月まで1か月当たり80時間以上の残業が続き,同年11月に至っては通常 勤務の倍以上働いていたことになるのである(残業は7日で39時間52分)。 なお,厚生労働省は,平成13年12月12日付けの「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」において,「疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると,その時間が長いほど,業務の過重性が増すところであ」るとして,具体的には,「発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて」,「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと評価できる」としている。この基準は,疲労の蓄積をもたらす長時間労働の基準を定めたものであり,この基準に合わせて,死亡前日から1か月ごとにさかのぼったAの推定時間外労働時間を算定すると,別紙3「推定時間外労働時間主張対比表」記載のとおりとなる(なお,同表の「原告の主張」欄は,原告 であり,この基準に合わせて,死亡前日から1か月ごとにさかのぼったAの推定時間外労働時間を算定すると,別紙3「推定時間外労働時間主張対比表」記載のとおりとなる(なお,同表の「原告の主張」欄は,原告が主張する時間外労働時間に,「被告の主張」欄は,被告作成に係る「推定時間外労働時間一覧表」(乙20)に,それぞれ対応している。)。 上記「推定時間外労働時間主張対比表」によれば,死亡前日を起点とした2か月間(平成11年9月9日から同年10月8日まで,同月9日から同年11月7日まで)の推定時間外労働時間は,1か月当たりそれぞれ100時間を優に超えており,その前2か月間(同年7月11日から同年8月9日まで,同年8月10日から同年9月8日まで)についても,それぞれ80時間に迫る長さである。このことからすれば,控えめなデータに基づいても,Aは心身に支障を来してもおかしくないほどの長時間労働に従事していたといえ,その疲労の蓄積,さらには,これによって生じる精神的疲弊も極めて大きかったと評価 できる。 bAは,死亡する前6か月間(平成11年6月から同年11月まで)に,所定休日日数である51日中,26日も出勤しており,同年11月には,環境設備課の従業員のうちで,最も多く休日出勤をしたものである。 (イ)中部電力の労働時間管理のずさんさ新聞報道によれば,平成14年8月,Aが所属していた火力センターが名古屋南労働基準監督署の立入調査を受け,中部電力が時間外未払賃金について是正勧告を受けたこと,平成13年4月から平成15年6月までの間の時間外未払賃金が約65億2000万円に上り,その後,時間外未払賃金合計53億6000万円が従業員に対して支払われたことなどが分かるが,このように,中部電力においては,時間外労働及び休日労働の管理が極めてずさんであった 億2000万円に上り,その後,時間外未払賃金合計53億6000万円が従業員に対して支払われたことなどが分かるが,このように,中部電力においては,時間外労働及び休日労働の管理が極めてずさんであった。このようなずさんな労働時間管理が行われていた事実に照らせば,中部電力の時間外・休日労働の記録が従業員の労働時間の実態を示すものではなく,信頼性の低いものであることは明らかである。 (ウ)以上によれば,中部電力においては,時間外・休日労働が責任を持って管理されておらず,実際にも,Aが,中部電力が勤務表,休日・時間外入出管理表,休日・時間外入出管理表(巡視用)によって把握していた時間よりも長時間にわたり労働していたことは明白である。かかる時間外・休日労働時間は,到底PHS発信記録やパソコンの更新日時からだけでは把握しきれるものではないことから,Aの労働時間は,被告が推定する労働時間より長時間であると推測できる。 そして,かかる長時間労働や休日労働によって,Aは,単に心身の疲労を増加させるだけではなく,疲労を回復させるための休息時間も奪われ,心身の疲労を急激に蓄積させたものである。 イAの業務の質的過重性(ア)Aの担当業務の過重性Aは,平成11年当時,以下の各業務に従事していたが,これらの業務はいずれも困難なものであり,とりわけ次のaからdまでの4件名は,Aに対して,特に強い心理的負荷を与えるものであった。 a燃料油小口径配管の管理(a)「燃料油小口径配管の管理」は,平成11年度当初計画の懸案事項の一つであり,Aは管理の実態調査,対応案立案検討の担当者として検討を進めていた。 小口径配管の管理とは,直径50A(=50mm)以下の配管の管理である。火力発電所は,空気・燃料・水を使って高温高圧の蒸気を作り,この蒸気でタービン・発電 立案検討の担当者として検討を進めていた。 小口径配管の管理とは,直径50A(=50mm)以下の配管の管理である。火力発電所は,空気・燃料・水を使って高温高圧の蒸気を作り,この蒸気でタービン・発電機を回転させ,発電している。 このため,発電所には多くの配管が敷設されており,配管の総延長は数10㎞に上っている。燃料油を例に挙げると,タンカーから受け入れた原重油は,数㎞離れた原重油貯蔵タンク(タンクは10数基もある。)に貯蔵された後,実際に発電に使うため,データンク(小口タンク)に送られ,油を加熱する重油加熱器,ごみを取るためのストレーナ,圧力を上昇させる燃料油ポンプ,流量などの各種測定機器を経由してボイラー内で燃焼される。これらの設備はある部分では複数系統あるので,その配管の延べの長さは膨大なものとなる。 大口径の配管及び高温高圧部配管は,火力発電所の各設備の主要部に使われているため管理方法が一応確立されており,保守点検などの管理も小口径配管と比較すれば順調に行われている方であるが,小口径配管は,管理方法が未確立の部分があり,点検等の見落としも多いのが実態であった。このため,従前も様々なトラブルが発生 し,その都度対策を立ててきたが,どうしても場当たり的な対策になりがちであった。小口径配管といえども,トラブルが発生すれば大事故(発電停止)のおそれがある。そのため,点検部位を明記するためのスケルトン図や管理表の整備状況を踏まえ,管理範囲,点検の間隔等について決定する必要に迫られていた。 そこで,Aは,中部電力の方針に基づき,担当者として,重大事故(発電停止)発生防止のため,燃料油の小口径配管の管理についての計画を立案した上,燃料油小口径配管の管理方法について環境設備課として調査し,意見をまとめる業務に従事していた。 (b)小口径 大事故(発電停止)発生防止のため,燃料油の小口径配管の管理についての計画を立案した上,燃料油小口径配管の管理方法について環境設備課として調査し,意見をまとめる業務に従事していた。 (b)小口径配管の管理についての報告書は,当初の予定では,平成11年7月から同年8月にかけて策定される予定であったが,現実には,上記件名に関する燃料グループとしての方針・方向性が定まらなかったことから,中間報告期限が同年7月から同年11月に延期された。 ところが,平成12年度の予算スケジュールとの関係で,平成11年11月17日から同月26日にかけて課長ヒアリングが実施されることが予定されており,上記件名の期限は差し迫っていた。しかるに,前記のとおり,上記件名についての方針・方向性がなかなか定まらなかったことから,Aは,課長ヒアリングに間に合わせるため,死亡する直前まで焦燥感を感じながら,上記件名に取り組んでいたのである。 (c)このように,燃料油小口径配管の管理については,平成11年8月上旬から対策の検討が進ちょくしていなかったのであり,同月から同年9月にかけて,同業務はAにとって過大な負担となっていた。そして,当初の期限から4か月も延期された同年11月の期限にさえも,求められていた中間報告が間に合わなかったことから, 上記業務がAにとって更なる過大な負担となり,Aが無力感,自責感,焦燥感を募らせたことは明らかである。 b知多LNG受入設備の改造(a)「知多LNG受入設備の改造」は,LNG(液化天然ガス)の受入設備の改造に関する業務である。東邦ガス株式会社(以下「東邦ガス」という。)が緑浜5区のLNG受入桟橋として知多エル・エヌ・ジーのL-2桟橋を使用することに伴い,その接続部分の不具合が懸案となっていたことから,対策を実施することになっ 株式会社(以下「東邦ガス」という。)が緑浜5区のLNG受入桟橋として知多エル・エヌ・ジーのL-2桟橋を使用することに伴い,その接続部分の不具合が懸案となっていたことから,対策を実施することになったものであり,M5受入配管とL-2桟橋のつなぎ込み方法を,東邦ガスが提案してきた比較検討案に基づき,火力センター発電部燃料課と調整しながら進める業務である。 LNGは,火力発電所のボイラー燃料として使われているが,流動状態ではマイナス165℃の低温であり,その配管は厚い断熱材で保護されている。しかし,配管の分岐部分で液化ガスが停止すると,このLNGが常温に近づくことになるため(ホットアップ),発生ガスをガス抜き装置で抜く必要があるところ,この懸案事項を解決するための特殊な設備であるため,検討には,専門的な知識,技能が要求されることになる。 本件名は毎年10月ころから始まる翌年度の予算編成業務に向けた,Aの担当件名の一つであった。Aは,平成11年9月初めころから,関係部署との打合せや現場調査等を実施していたものであるところ,技術的内容の確認等については他社との連絡調整を要するものであった。そして,本件名は予算を伴う件名であったことから,関係者との調整,技術検討,工事費の積算等を行った上,同年10月29日までに当初予算を提出することを求められていた。 ところが,前記のとおり同年11月17日から同月26日にかけ て課長ヒアリングが実施されることが予定されていたため,Aは,課長ヒアリングまでに,少なくとも概算を算出した上,現場調査,検討書・説明資料の作成をしておかなければならなかった。だからこそ,Aは,死亡する前日に出勤し,本件名工事の工事費の積算業務を行っていたのであるが,完成にはほど遠い状態であったものである。したがって,本件名によって 作成をしておかなければならなかった。だからこそ,Aは,死亡する前日に出勤し,本件名工事の工事費の積算業務を行っていたのであるが,完成にはほど遠い状態であったものである。したがって,本件名によって,Aが,最後の最後まで焦燥感を募らせたことは明らかである。 (b)被告は,本件名に関する業務が,他の件名のそれと比べて負担の軽い業務であったと主張する。 しかし,本件名に関する業務が,高度な技術検討を必要とするものであり,他部署,関係会社及び地方自治体の所轄部署との調整等も必要とする,非常に複雑で難易度の高い業務であったことは明らかである。現に,Aは,本件名に関し,メーカーから推奨された対策案をうのみにせず,燃料課と調整を取りながら,高度な技術検討をし,メーカーが推奨した対策案以外の対策が最適であることを説明している。 (c)被告は,本件名に関する業務につき,Sが主体となって行っていたものであり,Aは,関係部署との打合せの議事録を作成したにすぎないと主張する。 しかし,中部電力が提出した「調査依頼事項に対するご回答」(乙27)の記載によれば,平成11年9月から同年11月にかけて,Aが本件名についての技術検討,現場調査,打合せを進めていたと認められ,A及びSが本件名を担当していたとしても,Aが主たる担当者であったことは明らかである。 (d)被告は,本件名についての予算編成に関し,メーカーからの仮見積書が提出されていたため,仮見積書記載の金額と過去の類似工 事の契約実績単価等とを比較して金額を算出すれば足りることから,負担の軽い業務であったと主張する。 しかし,メーカーの仮見積書の内容は費用総額の概算が算出されている程度のものであったにすぎず,実際の予算編成に当たっては,現場調査をし,寸法等現場状況を把握した上,技術内容,工事量,使 主張する。 しかし,メーカーの仮見積書の内容は費用総額の概算が算出されている程度のものであったにすぎず,実際の予算編成に当たっては,現場調査をし,寸法等現場状況を把握した上,技術内容,工事量,使用材料・部品,工事日数,一般的な労務人工(にんく)数,高度な技術を有する人工数等,工事の全体像を把握していなければならず,決して負担の軽い業務ではなかった。現に,Aは,予算の積算表を作成するため,現場調査の必要性を感じ,平成11年11月5日に現場調査を実施している。また,前記(a)のとおり,死亡の前日に出勤して,本件名の工事費の積算業務を行っている。 (e)以上によれば,知多LNG受入設備の改造については,平成11年9月ころからの懸案事項であったにもかかわらず,なかなか設計計画が定まらなかったため,Aの焦燥感は募るばかりであったと思われる。また,課長ヒアリングを翌週に控え,期限の直前に至っても,完成にはほど遠い段階までしか進ちょくしていなかったのであるから,本件名に関する業務がAにとって過大な負担となっており,Aが無力感,自責感,焦燥感を募らせたことは明らかである。 c石炭設備の信頼度確保(a)「石炭設備の信頼度確保」は,中部電力の火力部門のうち発電コストが最も安価な石炭火力発電所において,石炭設備の信頼度を向上させるための施策を検討する業務である。平成11年度当初から調査検討が開始され,必要なものについては平成12年度予算(策定時期は平成11年9月・同年10月)に反映させる計画であり,最終報告の期限は同年10月末に設定されていた。 (b)Aは,本件名につき,平成11年4月,「石炭設備信頼度確保 碧南火力発電所打合(メモ)」を作成し,同年5月,同メモに調査事項内容の検討を加え,より充実した「石炭設備の信頼度確保について(基本計 Aは,本件名につき,平成11年4月,「石炭設備信頼度確保 碧南火力発電所打合(メモ)」を作成し,同年5月,同メモに調査事項内容の検討を加え,より充実した「石炭設備の信頼度確保について(基本計画)」を作成した。Aは,同年8月以降も,本件名について,商品調査等の業務に従事した。 (c)被告は,本件名について,平成11年9月末をもって業務を中断したため,件名としては残っていたものの,実際にはAの担当業務とはなっていなかったとして,Aが本件名を担当していなかったかのように主張する。 しかし,Aは,同年10月16日,ファイル名を「比較」として「ベルトクリーナ装置について各メーカーごとに,コスト,耐久性等の項目により比較した表」を作成し,さらに,ファイル名を「小トラ報告」として「石炭設備の信頼度向上に向けて各装置別にその対策を検討した結果をまとめたもの」を作成している。 このように,本件名に関する業務について,同年9月末以降もAが引き続き担当する事項があったものであり,Aは,死亡する直前まで本件名の検討,予算化に努力していたものである。 (d)以上によれば,石炭設備の信頼度確保に関する業務は,Aにとって過大な負担となっていたというべきである。 dLNG用ローディングアーム定期点検の体制変更(a)「LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更」は,従前から実施されてきた株式会社新潟鐵工所(以下「新潟鐵工所」という。)横浜工場での点検を取りやめ,株式会社中部プラントサービス(以下「中部プラントサービス」という。)名古屋工場での点検とすることについて検討するものである。新体制への変更によって,定期点検費用が,一基当たりおおむね600万円程度(年間2000万円程度)削減でき,関連会社を含めると,一基当たり2600 万円程度(年間800 いて検討するものである。新体制への変更によって,定期点検費用が,一基当たりおおむね600万円程度(年間2000万円程度)削減でき,関連会社を含めると,一基当たり2600 万円程度(年間8000万円程度)をファミリー資金として還元できる見込みであったため,平成12年度予算に是非とも反映させる必要があった。また,新体制への移行時期は平成11年12月とされていた。 予算についての課長ヒアリングを翌週に控えた同年11月3日,Aは,休日出勤し,関係各所に対する「LNG用ローディングアーム定期点検体制の変更」についての通知文書を作成し,同月4日にも関係各所への通知文書について,午後9時ころまでNと相談した。 (b)被告は,「LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更」については,課長レベルが他社との交渉に当たっており,平成11年11月初めにはその方向性と対応内容ができあがっていたため,Aは,Dが手書きで作成した文書を,パソコンを用いて清書しただけにすぎず,Aに負担を与えるような業務ではなかったと主張する。 しかるに,被告は,Aが,同年11月以前に,本件名に関する業務に取り組んでいた事実を殊更に無視しているといわざるを得ない。 また,Aは,同年11月になってから「LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更について(依頼)」と題する文書を作成している。 Dが対外的な折衝を担当したとはいえ,本件名の担当者はAであったのであり,Aは,報告書作成段階はいうに及ばず,部長や副所長の承認を得るまでは本件名についての責任を負っていたものである。 したがって,本件名に関する業務は,Aの心理的負担を増長させたといえる。 eその他の件名Aは,並行して,上記aからdまでの4つの件名に取り組んでいた が,そのほかにも,①平成11年10月7日から同年11 本件名に関する業務は,Aの心理的負担を増長させたといえる。 eその他の件名Aは,並行して,上記aからdまでの4つの件名に取り組んでいた が,そのほかにも,①平成11年10月7日から同年11月18日までが工期である「碧南火力発電所揚炭機(B~D)回転フィーダソリッドタイヤ修理」の件名,②同年10月18日から平成12年7月31日までが工期である「碧南火力発電所散水配管取付工事」関連の件名,③新名古屋火力発電所5・6号停止計画に伴い,燃料設備等の保管対策について突発的に指示された「新名古屋火力発電所5・6号長期停止計画に伴う燃料保管対策」関連の件名等に取り組んでいた。 (イ)業務の過重性を判断するに当たり留意すべき点a主任昇格後の業務量の増加Aの担当業務は,組織図上,主任への昇格に伴い,石炭設備の担当から燃料油・LNG設備の担当に変更された。しかしながら,実際には,主任昇格後も,Aは,従前担当していた石炭設備関係の件名についても引き続き担当していた。しかも,Aが担当していた業務の実質的なピークは,いずれも主任昇格後に訪れたものである。これに加えて,Aは,労働組合の執行委員として,会議参加,日常の連絡業務,世話役活動等労働組合の任務もこなさなければならなかったものであり,Aの主任昇格後の業務内容及び業務量は,いずれも著しく過重となり増加したことは明らかである。 b不慣れな仕事による負荷Aは,環境設備課に異動する前は現場での業務を担当していたことから,同課におけるような机上業務に慣れていなかった。また,前記aのとおり,主任昇格前は石炭設備関連の業務を担当していたのに,昇格後は燃料油・LNG設備関連の業務を担当することになった。このように,Aは,慣れない担当業務を遂行するのに苦労していた。 そればかりか,Aの主任昇格と同時 は石炭設備関連の業務を担当していたのに,昇格後は燃料油・LNG設備関連の業務を担当することになった。このように,Aは,慣れない担当業務を遂行するのに苦労していた。 そればかりか,Aの主任昇格と同時期に,環境設備課において人事異動があり,燃料グループではX主任(以下「X」という。)及びY が転出し,後任として,Q及びTが転入している。このように,ベテラン従業員が転出する一方で,経験の少ない従業員が転入してきたため,Aの負担が増加したことは明らかである。 c支援体制の欠如Aの所属していた環境設備課では,Aの時間外・休日労働についての認識や,Aの具体的な仕事の内容,その進ちょく状況についての認識を全く有しておらず,Aに対する配慮は皆無であった。また,Aに対する具体的支援体制も構築されておらず,判断指針が掲げる「仕事のやり方の見直し改善,応援態勢の確立,責任分散」さえ全く実施されていなかった。さらに,Aが発した危険信号についても全く深刻に受け止めていなかったものである。 (ウ)被告の主張に対する反論被告が主張する,Aの業務量及び業務の軽重に関する評価は,以下のとおり,誤ったものである。 a書類の枚数により業務量を量ることの誤り被告は,書類の枚数によって,業務量,業務の軽重を評価している。 しかし,1枚の書類を作成するために過重な業務を必要とする場合もあり得る。すなわち,環境設備課の業務について,「本人が担当していた業務の進捗状況について(手帳記載関連件名)」(乙26)には,件名ごとに業務の内容及び難易度が掲げられており,それぞれの期限,進ちょく状況が示されているところ,それぞれの書類には,現場調査やメーカーとのやりとり,関係部署,上司等との調整内容,検討過程が凝縮されており,被告が主張するように単純に作成枚数を数える手法では, 進ちょく状況が示されているところ,それぞれの書類には,現場調査やメーカーとのやりとり,関係部署,上司等との調整内容,検討過程が凝縮されており,被告が主張するように単純に作成枚数を数える手法では,業務量及び業務の軽重を評価に取り込むことができない。 したがって,作成書類の枚数の多少は,業務量,業務の軽重を量る 手法としては適切ではない。 b書類の分類方法の誤り被告は,書類全体につき,①「亡A本人が直接書き込んで作成した書類」,②「メーカーの知見を得て作成したもの等の書類」及び③「本人が書き込みをせず,外部から取り寄せた書類又は参考とした書類」に分類するなどして,業務量,業務の軽重を量ろうとしている。 すなわち,被告は,Aが他からの知見を排し自己の知識のみに基づいて作成したものについては業務量・成果を「大」と評価する一方,Aが他からの知見を得て作成したもの等については業務量・成果を「小」と評価しているものである。 しかし,中部電力においては,技術検討を行う際,メーカーや関係会社の知見を求めたり,上司・先輩の指導を受け調整を図りながら検討するのが通常の業務の進め方であることから,メーカー等から多くの知見を採り入れ多面的に検討して作成された書類こそ,むしろ技術的内容に富んだものといわなければならない。 したがって,上記の評価方法は,中部電力における現実の業務の進め方を反映しておらず,現場調査,メーカーとのやりとり,関係部署・上司等との調整など書類作成に最も労力を要する労働過程を殊更に無視したものである。 (エ)小括以上によれば,Aは,技術検討の困難な件名,予算を伴う件名,中部電力としての方針が定まらない件名等質的に過重な業務を多く担当しており,しかも,これらの業務を並行して行わざるを得ない状況にあったものである。 ウDのAに対 検討の困難な件名,予算を伴う件名,中部電力としての方針が定まらない件名等質的に過重な業務を多く担当しており,しかも,これらの業務を並行して行わざるを得ない状況にあったものである。 ウDのAに対する厳しい指導・パワーハラスメントDは,Aの業務量を軽減する措置を採らなかったばかりか,Aに過大な 業務の遂行を命じた上,Aを厳しく指導,しっ責し,さらに,Aにパワーハラスメントというべき行為をしたことから,Aを心理的に追いつめ,うつ状態に陥らせたものである。 (ア)DのAに対する厳しい指導Dは,部下である環境設備課の課員を指導する際,威圧的で本人を傷つけるような言い方をしたり,他の課員の前で特定の課員を厳しく指導するなど,部下に対して心理的負荷を与えるような指導方法を採っていた。とりわけ,Dは,Aが主任に昇格した後は,Aを特に厳しく指導していた。 a「主任としての心構え」Aは,主任に昇格後,Dに対し,「主任としての心構え」と題する文書(甲55)を提出したが,Dの指示により修正した後,再提出している。修正後の上記文書(甲56)を見れば,Dが,単に業務上の指導にとどまらず,Aの私生活の在り方や内心に至るまで干渉した内容に修正するよう指示したことは一目りょう然であるが,かかる文書を書かせることによって,Dは,Aが主任に昇格した当初から,威圧的な指導をしたものである。 bAに対するしっ責Dは,常々「おれがAを主任に昇格させた。」,「Aに期待しているから怒るんだ。」などと言い,Aに対するしっ責を当然なことであるかのように広言してはばからなかった。かかる誤った認識に基づき,Dは,Aの人格,心情等を無視した厳しいしっ責を繰り返していたものである。 他方,Aは,き帳面でまじめな性格であったことから,Dの過大な業務上の要求を断ることができな た。かかる誤った認識に基づき,Dは,Aの人格,心情等を無視した厳しいしっ責を繰り返していたものである。 他方,Aは,き帳面でまじめな性格であったことから,Dの過大な業務上の要求を断ることができないまま,自責の念にかられ,精神的に追いつめられた状況になっていった。Aは,原告に対し,「また, 課長に怒られちゃったよ。期待してくれているからだと思うけどな。」などと漏らしていることからも,DがAを厳しくしかっていたことは明らかである。 cDのメンタルヘルスに関する意識等中部電力では,「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」等を受けて,平成10年度に安全衛生委員会の衛生活動方針の重点項目として「メンタルな病気の早期発見・早期治療」を掲げ(甲89),管理職対象のメンタルヘルスケア講習会を実施した(甲91)。 しかるに,Dは,平成10年及び平成11年に実施されたメンタルヘルスケア講習会を受講しなかった。 このように,Dは,メンタルヘルスケアのための健康教育を受けていないことなどから,メンタルヘルスケアについての基本的な知識が欠如しており,その結果,Dは,Aのメンタルヘルスについて全く配慮しなかったものである。 (イ)DのAに対するパワーハラスメントa「パワーハラスメント」とは,組織・上司が職務権限を使って,職務とは関係ない事項について,あるいは職務上であっても適正な範囲を超えて,部下に対し,有形無形に継続的な圧力を加え,受ける側がそれを精神的負担と感じたときに成立するものである。 パワーハラスメントの問題は,中部電力の社内報(甲109)やコンプライアンス事例集(甲108)でも採り上げられており,企業のコンプライアンス確立に必要な概念として定着している問題である。 bDは,課員を課長席に直接呼びつけて,他の課員に聞こえよがしに )やコンプライアンス事例集(甲108)でも採り上げられており,企業のコンプライアンス確立に必要な概念として定着している問題である。 bDは,課員を課長席に直接呼びつけて,他の課員に聞こえよがしに大声でしかりつけるなど見せしめ的な指導をする方式を採り,課員の人間性を否定するような誤った指導行為をしており,また,前記(ア)のとおり,職場において,Aに対するしっ責があたかも当然であるか のように振る舞っていた。Dのこれらの行為は,職務権限を使って,職務上適正な範囲を超えて,部下に対し,有形無形に継続的な圧力を加える行為に当たる。かかるDからの圧力によって,Aは,「課長に,おまえなんかいてもいなくても同じだと言われたよ。」などと漏らすなど精神的負担を感じていたことは明らかであるから,Dの行為は,パワーハラスメントの典型的事例というべきである。 なお,Dは,文献「管理職のためのパワーハラスメント論」(甲94)が掲げているパワーハラスメントをする管理職の特徴のうち,①部下の心を傷つけていることに無とん着,あるいは無反省,②パワーハラスメント行動に対し自己コントロールができない,③部下に対する好き嫌いが激しいといった特徴を備えている。 cDは,Aに対し,少なくとも平成11年8月ころ及び同年10月下旬の2回にわたり,Aが常時身に着けていた結婚指輪を外すよう命じた。殊に,同年10月下旬の際には,Aを,環境設備課の一角にある会議コーナーに呼びつけ,わざわざPを同席させた上,Aの業務が進ちょくしていない状況を踏まえて,「たるんでいる。」,「会社の中ではきちっとして,家庭の問題を会社に持ち込むな。」,「その指輪は目障りだ。おれの前では指輪を外せ。」などと言った。 このようなDの言動は,上司としての職務権限を使って,職務とは関係ない事項について,圧 きちっとして,家庭の問題を会社に持ち込むな。」,「その指輪は目障りだ。おれの前では指輪を外せ。」などと言った。 このようなDの言動は,上司としての職務権限を使って,職務とは関係ない事項について,圧力を加える行為に当たり,かつ,Aは,これによって精神的負担を感じていたものであるから,正に究極のパワーハラスメントというべきである。 (ウ)被告の主張に対する反論a被告は,Dの指導が厳しかったという事実は認めながら,上司の部下に対する指導として,適切妥当な範囲を超えるものではなかった旨主張する。 しかし,Dの指導方法が厳しい,言い方がきついというのは,大方の課員の一致した見方であり,Dの指導自体が,ほとんどの課員に対し強い心理的負荷を与えていたものであって,適切妥当な範囲を超えていたというべきである。現に,Nは,Dの厳しい指導が原因で,うつ状態になっている。 また,被告は,Dの指導が適切であったことの根拠として,Oを始めとする課員らの供述に依拠しているが,これらの者は,ほとんどが中部電力の従業員であったのであり,会社の責任にかかわることや上司の問題点を率直に述べることが困難であることに照らせば,課員らの供述の信用性には問題があるといわざるを得ない。 b被告は,Dが,Aに対し,指輪を外すよう発言した点につき,Dの供述に基づき,現場における異物混入防止の観点及びAの集中力を高めるための動機付けの観点から指摘したものであると主張する。 しかし,そもそも,中部電力の火力部門における異物混入防止対策とは,火力発電所での機械の分解作業時に,開放した部分から工具等が落ち込むことや,機械の中に忘れ物をすることを防止する対策であって,工事の請負者とその作業者,発電所の作業管理者等の作業関係者に適用されるものである。そうすると,環境設備課の担当者で 分から工具等が落ち込むことや,機械の中に忘れ物をすることを防止する対策であって,工事の請負者とその作業者,発電所の作業管理者等の作業関係者に適用されるものである。そうすると,環境設備課の担当者であるAが,現場調査等のため火力発電所を訪れたとしても,機械の分解点検作業に直接かかわることはあり得ず,作業関係者となり得ないAが異物混入防止対策の対象外であることは明らかである。また,異物として混入する可能性が極めて少ない指輪は,異物混入防止対策の対象物とはなり得ない。現に,Aは,かつて知多第二火力発電所保修課で勤務していた際にも,指輪を外すよう命ぜられたことはなく,このことは指輪が異物混入防止対策の対象となっていなかったことの証左である。 さらに,Aの集中力を高めるための動機付けの観点という点につき,Dは,結婚指輪を余分な装飾品ととらえ,他の装飾品と同様集中力を妨げるものであると認識していたようであるが,他の装飾品であれば格別,結婚指輪を身に着けていることで,業務に対する意識が変わるなどということは全くあり得ない。 したがって,異物混入防止の観点及びAの集中力を高めるための動機付けの観点から,Aに対し指輪を外すよう指摘した旨のDの供述は虚偽であり,同供述に基づく被告の上記主張も理由がない。 (3)まとめ以上によれば,Aが従事した業務は,量的にも,質的にも過重だったものであり,しかも,DのAに対する厳しい指導・パワーハラスメントも相まって,Aは,極めて強いストレスを受けている状況に置かれていた。かかる強いストレスを受けている状況の下,Aは,うつ病を発症したが,さらに業務を継続せざるを得なかったため,うつ病を増悪させ,自殺に至ったものである。 したがって,Aのうつ病の発症及び増悪並びに自殺が,業務に起因するものであることは明らかで ,うつ病を発症したが,さらに業務を継続せざるを得なかったため,うつ病を増悪させ,自殺に至ったものである。 したがって,Aのうつ病の発症及び増悪並びに自殺が,業務に起因するものであることは明らかである。 (被告の主張の要旨)(1)業務起因性の判断基準についてア相当因果関係の要否労災保険法7条1項1号によって保険給付を行うべき事由は,労働基準法による災害補償を行うべき事由と一致するところ,労働基準法による災害補償制度は,労働者が,従属的労働契約に基づいて使用者の支配監督下にあることから,労務を提供する過程において,業務に内在する危険が現実化して傷病が引き起こされた場合には,使用者は,その傷病の発症について過失がなかったとしてもその危険を負担し,労働者の損失を填補すべ きであるとする危険責任の考え方に基づくものである。 しかるに,災害補償の要件として,単に業務と傷病の発症との間に条件関係があれば足りるとするならば,傷病が単に労務提供の機会に偶発したにすぎない場合にも,使用者は労働者の損失を填補しなければならないことになり,上記危険責任の考え方に沿わないばかりか,使用者に対し過大な負担を強いることになり,ひいては,労災保険給付の原資のほとんどが使用者の負担する労災保険料によって賄われている労災保険制度の存続を危うくすることにもなりかねない。 したがって,傷病等につき業務起因性があるというためには,業務と傷病との間に条件関係(事実的因果関係)が認められるだけでは足りず,両者の間に法的にみて労災補償を認めるのを相当とする関係(相当因果関係)が存在することを要する(最高裁判所昭和51年11月12日第二小法廷判決)。 そして,業務と傷病との間に相当因果関係が認められるためには,当該傷病が業務に内在する危険の現実化といえなければならないの が存在することを要する(最高裁判所昭和51年11月12日第二小法廷判決)。 そして,業務と傷病との間に相当因果関係が認められるためには,当該傷病が業務に内在する危険の現実化といえなければならないのであるから(最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決,同平成8年3月5日第三小法廷判決),まず,①当該業務に危険が内在していると認められることが必要であり(危険性の要件),さらに,②当該傷病が,当該業務に内在する危険の現実化として発症したと認められること(現実化の要件)が必要である。 イ精神障害を発症した場合の相当因果関係の判断(ア)業務と精神障害の発症との条件関係が認められるためには,業務上の一定以上の大きさを伴う客観的に意味のあるストレスが精神障害の発症に寄与しており(少なくとも原因の一つとなっており),当該ストレスがなければ,精神障害は発症していなかったとの関係が高度のがい然性をもって認められる必要がある。 (イ)前記アのとおり,業務と傷病との間に相当因果関係が認められるためには,まず,①当該業務に危険が内在していると認められることが必要であるところ,当該業務が危険か否かの判断は,当該労働者を基準とすべきではなく,飽くまで平均的な労働者,すなわち,何らかの素因(個体側のぜい弱性)を有しながらも,当該労働者と同程度の職種・地位・経験等を有し,特段の勤務軽減までを必要とせず通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある者(相対的にストレス適応能力の弱い者を含む。以下「平均的労働者」という。)を基準とすべきである。なぜならば,当該業務の危険性は,業務の性質や勤務態様に基づいて客観的に判断されるべき事柄であって,業務以外の要因である本人のぜい弱性の程度により業務の危険性が左右されるのは不合理であり,また,労災補 ならば,当該業務の危険性は,業務の性質や勤務態様に基づいて客観的に判断されるべき事柄であって,業務以外の要因である本人のぜい弱性の程度により業務の危険性が左右されるのは不合理であり,また,労災補償制度が使用者の保険料の拠出により運営されていることに照らせば,ぜい弱性の大きな労働者に発生した精神障害まで労災補償制度で救済することは制度の趣旨に反するからである。 したがって,業務の危険性の程度は,平均的労働者を基準として,当該業務による心理的負荷が,医学的経験則に照らし,精神障害を発症させ得ることが客観的に認められる負荷といえるか否かによって決するのが相当である。 (ウ)前記アのとおり,相当因果関係が認められるためには,当該業務に危険が内在しているのみならず,②当該業務に内在する危険の現実化として精神障害が発症したと認められる必要がある。この点,仮に精神障害の発症に業務が何らかの寄与をしていると認められる場合であっても,業務以外の心理的負荷,個体側のぜい弱性等の業務以外の要因が,より有力な原因となって精神障害の発症をもたらした場合には,当該精神障害は,業務に内在する危険が現実化して発症したものではなく,業務外に存在した危険(当該労働者の私的領域に属する危険)が現実化して発 症したものあるから,相当因果関係は認められない。 したがって,当該精神障害の発症が,業務に内在する危険の現実化というためには,当該発症に対して,業務による危険性(過重性)が,その他の業務外の要因と比較して相対的に有力な原因となったと認められることが必要である。そして,この現実化の要件は,当該労働者に係る業務外の要因の内容及び程度によって左右されるものであるから,当該労働者本人の事情を基礎に個別・具体的に判断されることになる。 (エ)以上によれば,精神障害を発症 の現実化の要件は,当該労働者に係る業務外の要因の内容及び程度によって左右されるものであるから,当該労働者本人の事情を基礎に個別・具体的に判断されることになる。 (エ)以上によれば,精神障害を発症した場合の相当因果関係の判断は,①平均的労働者を基準として,業務の性質及び勤務態様が過重であるために当該精神障害を発症させ得る程度に強度の心理的負荷が加えられたと認められること,②当該業務による心理的負荷が,業務以外の心理的負荷や個体側要因と比較して相対的に有力な原因となって,当該精神障害を発症させたと認められることが必要であると解するのが相当である。 ウ精神障害についての業務上外の判断(ア)近年,いわゆる「過労自殺」に対する社会的関心が高まる中,前記争いのない事実等(8)のとおり,労働省は,労災保険給付が請求された事案について,迅速・適正に対処するための判断のよりどころとなる一定の基準を明確化すべく,精神医学,心理学,法律学の研究者等に,精神障害等の労災認定について専門的見地から検討するよう依頼したところ,これを受けた精神障害等の労災認定に係る専門検討会は,平成11年7月29日,検討結果を専門検討会報告書として取りまとめた。そして,この専門検討会報告書を踏まえ,前記争いのない事実等(8)のとおり,労働省労働基準局長は,判断指針を発出した。 (イ)専門検討会報告書及びこれを受けて策定された判断指針は,「ストレス-ぜい弱性」理論に依拠することが相当であるとするところ,「ストレス-ぜい弱性」理論とは,環境由来のストレスと個体側の反応性, ぜい弱性との関係で,精神的破たんが生じるか否かが決まるという考え方であり,これによれば,ストレスが非常に強ければ,個体側のぜい弱性が小さくても精神障害が起こるし,反対にぜい弱性が大きければ,ストレス 弱性との関係で,精神的破たんが生じるか否かが決まるという考え方であり,これによれば,ストレスが非常に強ければ,個体側のぜい弱性が小さくても精神障害が起こるし,反対にぜい弱性が大きければ,ストレスが小さくても破たんが生じると帰結される。そして,「ストレス-ぜい弱性」理論に依拠して業務起因性を判断するに当たっては,業務によるストレス,業務以外のストレス及び個体側のぜい弱性をそれぞれ検討し,それらのどの要因が当該精神障害の発症に有力な原因となったかについて総合判断を行うことになる。 したがって,精神医学的見地から,業務によるストレスが精神障害を発症させる程度に強いものであれば,当該精神障害は主として当該業務による心理的負荷が原因となって発症したものと理解し,そうでない場合には,当該精神障害は業務以外のストレス又は当該労働者のぜい弱性という個体側要因によって発症したと理解すべきである。 そして,ストレスの強度は,当該ストレスを,多くの人が一般的にどう受け止めるかという客観的な基準によって評価されなければならない。 すなわち,ストレスの受け止め方は,個々人によって異なるものであるところ,当該特定人が受け止めたストレスの大きさを当該特定人を基準として判断すると,精神障害を発症した当該特定人にとっては,そのストレスは常に精神障害を発症させるに十分な大きさを有することになるが,これではストレスの大きさの問題と当該特定人の個体側の反応性,ぜい弱性の問題とを混同してしまうことになる。 そこで,「ストレス-ぜい弱性」理論では,ストレスの大きさを客観的に観察し,ストレスに対して過大に反応したとすれば,それはその人の個体側の反応性,ぜい弱性の問題として理解することになる。 (ウ)判断指針は,上記「ストレス-ぜい弱性」理論に依拠して,業務による心理的負荷,業務 レスに対して過大に反応したとすれば,それはその人の個体側の反応性,ぜい弱性の問題として理解することになる。 (ウ)判断指針は,上記「ストレス-ぜい弱性」理論に依拠して,業務による心理的負荷,業務以外の心理的負荷及び個体側要因について各々検 討し,それら各々の要因のうち当該精神障害の発症に関してどの要因が有力であったかを総合的に判断することとしている。なお,具体的な心理的負荷の評価等については,前記争いのない事実等(8)のとおりである。 判断指針による上記判断の際の考え方として,業務による心理的負荷が判断指針別表1の評価において「強」とされた場合は,業務以外の強い心理的負荷がありそれが主な原因と考えられる場合や,もともと重度の個体側要因があったりする場合等を除き,業務起因性があると判断することとし,業務以外による心理的負荷や個体側要因が認められる場合でも,それが一定の水準(強度「Ⅲ」の出来事が極端に大きい場合,個体側要因に顕著な問題が認められる場合等)でなければ,業務起因性があると判断する。 他方,業務による心理的負荷が判断指針別表1の評価において「強」とされない場合には,業務以外による心理的負荷又は個体側要因が認められない場合であっても,「ストレス-ぜい弱性」理論によって,業務以外の心理的負荷又は個体側要因があったと理解するものである。 このような業務上外の判断についての判断指針の手法は,精神障害が個人の内面に係るという性質上,心理学,精神医学上確立された理論に基づいて推定する最も合理的な手法であるといえる。 (エ)以上によれば,心理的負荷による精神障害の発症についての業務起因性の有無を判断するに当たっては,まず,精神障害発症の有無等を明らかにした上で,業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷及び個体側要因との関連性につい 的負荷による精神障害の発症についての業務起因性の有無を判断するに当たっては,まず,精神障害発症の有無等を明らかにした上で,業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷及び個体側要因との関連性について総合的に判断する必要があり,この判断に当たっては,判断指針によることが相当である。 エうつ病の増悪についてうつ病の増悪とは,うつ病発症後の病態の急激な増悪を意味し,うつ病 発症後,更に明りょうな大きな心理的負荷が加わり,それと時間的関連をもって,明らかに通常の病状の経過の変動の幅を超える大きな症状の悪化があった場合に初めて認められ得るものである。しかるに,うつ病の自然経過については,もともと大小の変化を繰り返しながら悪化し又は回復していくものである上,個々の患者によって変動の幅や態様が相違するため,うつ病発症後の増悪についても,これらの点を考慮しながら,個々の患者ごとに医学的に検討した上で,明らかに通常予想され得る病状の経過の変動の幅を超えるような大きな症状の増悪があったか否かを判断することとなる。 したがって,最新の精神医学の知見に照らしても,うつ病の増悪があったか否かについての一般的な判断基準を設定し,これによって判断することは困難であるといわざるを得ず,発症後に,明りょうかつ大きな心理的負荷が加わったと認められ,それと時間的関連をもって,明らかに通常の病状の経過の変動の幅を超える大きな症状の悪化があったか否かを,各患者ごとに個別に判断するほかない。 (2)Aの業務の過重性の有無等についてア業務の分配状況について(ア)主たる業務の分配環境設備課における平成11年度当初の業務分配については,Oが平成11年3月ころ分担案を作成し,N及びDの承認を経て,決定されたが,特定の課員に業務が偏ることがないよう十分な配慮がされていた の分配環境設備課における平成11年度当初の業務分配については,Oが平成11年3月ころ分担案を作成し,N及びDの承認を経て,決定されたが,特定の課員に業務が偏ることがないよう十分な配慮がされていた。 現に,平成11年度の分配状況を見ても,Aに,業務が偏ることなく分配されている。すなわち,工事件名及び検討件名のいずれについても,燃料グループ全体の件数や他の課員の担当件数に照らして,Aに業務が偏っていた事実はなかったものである。 (イ)平成11年8月の人事異動による影響 同月の人事異動に伴い,燃料グループでは,X及びYが転出し,Q及びTが配属となった。また,上記人事異動の際,Pが主任を務めるラインは燃料が石炭である業務を,Aが主任を務めるラインは燃料が油・LNGである業務を分担することになった。 もっとも,燃料グループでは,業務を効率よく遂行するため,上記人事異動後も残留した4人の主任及び平課員が同年7月まで担当していた工事件名や検討件名については,同年8月以降も,燃料の区別に関係なく,引き続き同じ担当者が担当することになった。これによって,Aは,上記人事異動後も,同年7月まで担当していた工事件名及び検討件名を担当することになった。 また,Aは,上記人事異動によって,形式的には,Xが同月まで担当していた工事件名及び検討件名をいったんすべて引き継いだ形となった。 しかし,上記人事異動の際,業務の分配の見直しが図られ,Xが担当していた工事件名及び検討件名を,更に他の課員に再分配したため,実際にはAがXから引き継いだ業務は一部であり,かつ,引き継いだ業務について,同年8月以降,Aの負担となるような実働業務は特になかったのである。 したがって,上記人事異動により,Aに主任としての業務が追加されたことは事実であるが,主たる業務である工事件名及 だ業務について,同年8月以降,Aの負担となるような実働業務は特になかったのである。 したがって,上記人事異動により,Aに主任としての業務が追加されたことは事実であるが,主たる業務である工事件名及び検討件名の負担は,同年7月までとほとんど変わらず,Aに業務が偏ったという事実はなかった。 (ウ)平成11年8月以降に発生した業務の分配状況燃料グループでは,同月以降に,年度当初に存在しなかった検討件名,他課からの調査依頼業務,翌年度の予算編成業務等が発生した場合,これらの業務の分配は,同月に構成された燃料別のラインに従って分配がされていたが,他課からの特命依頼業務等のAへの分配は,他の主任・ 平課員と比べても,同等か少ないくらいであり,工事件名及び検討件名以外の業務を含めても,Aに業務が偏っていたということはなかった。 現に,Dは,Aが労働組合の執行委員に選任されたことを受け,N及びOに対し,新しい業務を分配する場合には,なるべくAの業務を軽減するよう指示した。その結果,同月の人事異動に際しては,業務全体のうち約7割を占める石炭設備関係の業務を担当するラインの主任をPとし,約3割にすぎない燃料油・LNG設備関係の業務を担当するラインの主任をAとすることによって,Aの業務軽減に配慮したものである。 (エ)主任業務の負担主任は,一般職の中で最高職級であり,組織の中心となって業務を遂行し,上長を補佐するとともに,組織のメンバーに対して,協力・支援及び下級者指導を行う立場である。 もっとも,主任は管理職ではなく,その主たる業務は平課員と同様であるところ,主たる業務の分配状況についてみるに,Aに偏っていたことはなく,むしろ軽減のための配慮がなされていたことは,前記(ア)から(ウ)までで述べたとおりである。また,Aの主任業務の負担は,部下が ところ,主たる業務の分配状況についてみるに,Aに偏っていたことはなく,むしろ軽減のための配慮がなされていたことは,前記(ア)から(ウ)までで述べたとおりである。また,Aの主任業務の負担は,部下が作成した書類のチェックや助言,委託業務監査のみにとどまるものであり,これらの業務の負担はほとんどなかったと認められる。 (オ)小括以上によれば,主たる業務の分配状況に照らし,Aに業務が偏っていたということはなく,むしろ業務の軽減が図られていたものである。そして,Aの主任業務の負担はほとんどなかったのであるから,主任業務を併せ考慮しても,やはり,Aの業務が過重であったということはできないものである。 イAの労働時間について(ア)Aの在社時間 Aが在社していた時間は,多く見積もっても,「Aの時間外労働時間数対比表」(乙20,別紙4)の「監督署調査の時間外労働時間数」欄に記載のとおりであり,これによれば,Aの時間外労働時間数は,以下のとおりとなる(いずれも,分を時間単位で表示する際,小数点以下第3位を四捨五入したものである。)。 a平成11年6月51時間17分(51.28時間)b同年7月61時間44分(61.73時間)c同年8月86時間24分(86.40時間)d同年9月93時間57分(93.95時間)e同年10月117時間12分(117.20時間)f同年11月39時間52分(39.87時間)上記のとおり,同年11月は7日間のみで39時間余り,同年10月は117時間余りという非常に長時間にわたる在社時間が認められ,同年9月も93時間余りと長時間であるが,同年6月から同年8月までの在社時間は比較的落ち着いている。 (イ)Aの労働時間平成11年6月から同年11月までのAの在社時間は前記(ア)のとおり られ,同年9月も93時間余りと長時間であるが,同年6月から同年8月までの在社時間は比較的落ち着いている。 (イ)Aの労働時間平成11年6月から同年11月までのAの在社時間は前記(ア)のとおりであるが,Aの上司や同僚は,Aの業務量に照らせば,長時間の残業や休日出勤が必要であるとの認識を全く有していなかった。 また,パソコンのデータの更新時間等から,Aが在社していたこと自体は認められるものの,更新された書類の内容等に照らせば,客観的に見て,Aが長時間の残業をしてまで遂行しなければならない業務が存在したとは認め難いものもあり,在社時間のすべてが労働時間であったと認めるべきではない。 したがって,Aの在社時間に見合うだけの業務が客観的に存在したとは到底認められないことから,前記(ア)のAの在社時間すべてが労働時 間であったと認めることはできない。 (ウ)うつ病発症の影響等aAがうつ病を発症した時期は平成11年9月下旬と考えられるところ,「ICD-10臨床記述と診断ガイドライン」(乙33。以下「ガイドライン」という。)によれば,軽症うつ病エピソードの患者は,通常,症状に悩まされて日常の仕事や社会的活動を続けるのに幾分困難を感じるが,完全に機能できなくなるまでのことはなく,また,中等症うつ病エピソードの患者は,通常社会的,職業的又は家庭的な活動を続けていくのがかなり困難になるとされている。また,ガイドラインによれば,うつ病エピソードの患者は,自己評価と自信の低下,罪責感が生ずるとされている。 この点からすれば,Aがうつ病を発症した平成11年9月下旬以降の在社時間が,そのまま労働時間であったということはできないし,また労働時間であったとしても,客観的な業務量を推認し得るものとはなり得ないものである。 すなわち,Aが,同月,同年10 年9月下旬以降の在社時間が,そのまま労働時間であったということはできないし,また労働時間であったとしても,客観的な業務量を推認し得るものとはなり得ないものである。 すなわち,Aが,同月,同年10月,同年11月と,長時間にわたり在社していたのは,Aがうつ病を発症していたため,同じ業務をこなすにしても従前よりも多くの時間を費やしたからであり,また,不安感,焦燥感,自責感にかられ,客観的には必要がないのに,休日出勤や長時間残業をしなければならないという主観的な念慮にかられた結果であると考えるのが合理的だからである。換言すれば,Aの長時間にわたる在社は,うつ病の原因ではなく,結果ということができるのである。 したがって,少なくとも,同年9月以降のAの在社時間から,客観的な業務量を推認し,業務過重性に結びつけることは相当でない。 bこの点,平成11年6月から同年11月までの,①A本人が作成あ るいは関与した書類の枚数,②成果物(Aが直接書き込んで作成した書類)の枚数,③時間外労働時間数及び④Aが時間外労働時間中にパソコンを更新した回数の各数値をまとめると,別紙5「亡Aの時間外労働時間数と成果物,作成・関与した書類及びパソコン更新回数との関連について」記載のとおりとなるところ,同年10月については,Aの時間外労働時間数117時間12分に対応する業務量が余りにも少ないことが一目りょう然である。このことからも,117時間12分にわたる時間外労働時間が,業務量の過重によるものでないことがうかがえる。 c以上によれば,Aがうつ病を発症した平成11年9月下旬以降の在社時間をそのまま労働時間とみなし,長時間労働であったと評価することは合理的ではないし,仮に,上記時期以降の在社時間のすべてを労働時間とみなしたとしても,かかる労働時間数からAの業務 月下旬以降の在社時間をそのまま労働時間とみなし,長時間労働であったと評価することは合理的ではないし,仮に,上記時期以降の在社時間のすべてを労働時間とみなしたとしても,かかる労働時間数からAの業務量が多かったと推認することは相当でない。 (エ)仮に,Aの在社時間がすべて労働時間であったとしても,Aは,最低限必要な睡眠時間を確保されていたものであり,同僚と飲みにいったり,あるいは,帰宅後就寝までの時間や休日には,ある程度ゆとりのある時間を過ごしていたのであるから,業務が過重であったとは認められない。 (オ)原告の主張に対する反論原告は,Aの在社時間について,前記(原告の主張の要旨)(2)ア(ア)aのとおりであると主張するが,例えば,PHSの発信記録中には,Aの通勤経路以外の場所からの発信が相当数あることなどに照らせば,原告がAの在社時間を推定する上で用いた資料には問題点がある。 したがって,原告の主張するAの在社時間は失当であり,被告が主張する在社時間を認めるべきである。 ウAが担当していた具体的業務の過重性原告は,4件名(燃料油小口径配管の管理,知多LNG受入設備の改造,石炭設備の信頼度確保,LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更)に関する業務が,Aにとって特に過重な負担となっていたと主張するが,各業務の具体的内容に照らせば,以下のとおり,いずれも難易度が高いものではなく,進ちょく状況も順調であって,過重な負担となるような業務ではなかった。 (ア)燃料油小口径配管の管理a当該件名の概要当該件名は,平成11年度当初は,燃料グループ独自の検討件名であったところ,平成11年6月ころ,環境設備課の上部組織である品質管理グループ(以下「品管」という。)からの指示で行うべき検討内容が,上記検討件名と同様であったため,同 燃料グループ独自の検討件名であったところ,平成11年6月ころ,環境設備課の上部組織である品質管理グループ(以下「品管」という。)からの指示で行うべき検討内容が,上記検討件名と同様であったため,同時に遂行された業務である。 すなわち,平成10年度当初から,中部電力では,電力の自由化に伴う経費削減が叫ばれており,火力センターでも,保守費用全体の削減が大きなテーマとなっていた。燃料グループでは,燃料油の小口径配管の管理について,定期点検手引に基づき非常にきめ細かで厳重な点検管理を行っていたが,経費削減の観点から,現状の点検管理の見直しを検討することとし,燃料グループの平成11年度の検討件名となった。他方,平成11年6月初めころ,品管から,小口径配管のトラブル撲滅の観点から,各部署の管理に係る小口径配管の管理方法の見直しを検討するよう指示があった。そこで,環境設備課として,燃料グループが管理する燃料油の小口径配管と機械グループが管理する小口径配管について,トラブル撲滅の観点から,管理方法を見直し,課としての意見を品管に回答することになったものである。 bAの業務のスケジュール・期限当該件名の年度当初のスケジュールによれば,平成11年4月後半から同年6月にかけて調査,同年7月が対策検討,同年8月から同年9月までが管理書類整備という目標であった。 その後,前記aのとおり,同年6月初めころに,品管からの指示があったが,この指示件名について,品管が立てたスケジュールによれば,同年6月末までに,管理すべき小口径配管の定義及び管理方法を検討し,定期点検手引,設備管理要領等に明記することになっていた。 しかし,関係部署が同年11月まで期限を延期するよう要望したため,品管もこれを了承した。 そこで,環境設備課では,当該件名について,前記のとおり, 点検手引,設備管理要領等に明記することになっていた。 しかし,関係部署が同年11月まで期限を延期するよう要望したため,品管もこれを了承した。 そこで,環境設備課では,当該件名について,前記のとおり,当初は同年9月に完成させる目標であったが,品管の指示件名のスケジュールに合わせることとし,その目標期限も同年11月までと変更した。 したがって,当該件名についての,Aの業務の期限は平成11年11月までであったことになる。 cAの担当していた業務の難易度Aの担当していた業務は,燃料油の小口径配管に関する現状の定期点検の手引に基づく管理方法を検証し,その結果を踏まえて,見直しを検討することであったが,かかる業務は,主任以下の課員でも十分にこなせる業務であり,質的・量的に過重な負担となるような業務ではなかった。 すなわち,Aの業務は,燃料油の小口径配管の定義と管理方法の策定であったが,燃料油の小口径配管については,従前から,小口径配管の定義及び管理方法が定まっており,しかも,その管理方法は厳重なものであったため,現状の手引に基づく管理方法に遺漏がないかを検討しさえすればよかったのであり,また,そのために必要なデータ については,関連会社である株式会社テクノ中部(以下「テクノ中部」という。)が保有するデータの提供を受けることができたため,自らデータを収集して一から検討を始めなければならない業務ではなかった。また,Aは,品管や工事第一部が取りまとめる多数の部署のうちの一部署の担当者にすぎなかったのであり,関係部署との調整の指揮や責任をとるという困難な業務の負担もなかった。 d当該件名の進ちょく状況原告は,平成11年11月になっても当該件名に関する中間報告の検討が進んでおらず,同年8月ころからAにとって過大な負担となっていたと主張する。 し 業務の負担もなかった。 d当該件名の進ちょく状況原告は,平成11年11月になっても当該件名に関する中間報告の検討が進んでおらず,同年8月ころからAにとって過大な負担となっていたと主張する。 しかし,Aは,同年9月17日には,「燃料設備小口径配管の管理方法の評価について」と題する文書(甲81の3)をまとめ,上長に回議,報告し,その後,同年10月12日ころ,Dから要請された検討事項について説明し,さらに,同年11月当初,上長からの助言に基づいて改めて資料を作成しており,順調に業務を遂行していたことは明らかである。 また,当該件名については,当初から平成11年度中に予算審議を経ることが見込まれていたわけではなく,検討の結果,予算化が必要であるならば,発電所レベルで予算編成を行うという件名であり,平成12年度の予算に反映させるか否かは,検討が完了しなければ,結論が出せない件名であったし,仮に,平成12年度の予算に反映させる場合であっても,最終的には平成12年1月や同年2月でも予算編成が可能である。このようなことから,Aが予算化の関係で追い込まれていた状況はあり得ないものである。 したがって,A自身の当該件名に関する業務の進ちょく状況は順調であり,Aの負担が過重であったとは認められない。 e当該件名の基本方針や上長の指示の明確性原告は,当該件名の基本方針,上長からの指示が二転三転し,Aが,課としての方針があいまいなままの状況の下,業務の期限等に追い込まれて悪戦苦闘していた旨主張する。 しかし,Aが作成した文書やこれに記載された上長のコメントに照らせば,むしろ,D,Oらにより,適切な指示・助言が与えられていたものであり,当該業務の基本方針が定まらず,上長の指示が二転三転したため,Aが困難な業務を負ったなどという事実はなかったもので に照らせば,むしろ,D,Oらにより,適切な指示・助言が与えられていたものであり,当該業務の基本方針が定まらず,上長の指示が二転三転したため,Aが困難な業務を負ったなどという事実はなかったものである。 f小括以上によれば,当該件名に関する業務は,主任以下でもできる比較的負担の軽い業務だったものであり,その進ちょく状況も良好であったことから,同業務の負担が過重であったとは認められない。 (イ)知多LNG受入設備の改造a当該件名の概要当該件名は,東邦ガスが,緑浜5区のLNG受入用桟橋として知多エル・エヌ・ジーのL-2桟橋を使用することに伴い,その接続部の不具合が懸念されたために,その対策を検討しようとしたものである。 このうち,Aが受け持っていた事項は,愛知県知多市の東邦ガス緑浜工場新設に当たり,既設の桟橋から知多エル・エヌ・ジーへの受入れのためにクールダウン配管が必要か否かを検討(マイナス100℃に保つ必要がある。)し,必要があるならば,配管サイズや高圧ガス保安法とガス事業法のいずれの基準を採るかなどを更に検討するとともに,その予算編成をするというものであった。 当該件名は,過去に類似の例がなく,専門性の高い技術的困難性を伴う件名であったことから,燃料設備の運用管理者である燃料課,メ ーカー(石川島播磨重工業株式会社(以下「石川島播磨重工」という。),東邦ガス)等の関係箇所を通じて業務を進めていた。 当該件名における環境設備課の主たる役割は,工事の予算を環境設備課が編成すること,そのために,工事の技術検討の段階から打合せに参加し,将来実施される工事の必要性・規模等を把握することであり,技術検討の打合せは,燃料設備の運用管理者である燃料課が主体となって行われていた。そして,その技術検討には,高い専門性が要求され,燃料課及び 将来実施される工事の必要性・規模等を把握することであり,技術検討の打合せは,燃料設備の運用管理者である燃料課が主体となって行われていた。そして,その技術検討には,高い専門性が要求され,燃料課及び環境設備課で対応できるレベルを超えていたことから,当初から,専門的知識・技術を有するメーカーに技術検討を依頼していた。そのため,当該件名については,技術検討,物品の納入及び現場への据付けのすべてをメーカーから購入するという物品請求の形式で契約が締結された。 このように,当該件名は,技術的には難易度の高い件名ではあったものの,環境設備課が技術検討を行わなければならなかったということはない。 b当該件名の担当者等当該件名についての環境設備課の担当者はA及びSであったが,主担当者は,Sであった。すなわち,Aは,Sと共に,関係部署との打合せに参加していたが,席上での発言等は基本的にSがしており,Aは,議事録を作成するなどの業務をしたにとどまった。 また,当該件名については,多くの関係箇所を通じて業務を進める必要があったが,Oが,打合せに出席したり,Aに助言するなどの支援を行っていた。 cAの担当していた業務の内容(a)Aが担当していた業務は,前記aのとおりであるが,かかる業務は,難易度の高いものではなく,過重な負担となる業務とは認め 難い。実際のところ,高圧ガス保安法とガス事業法のいずれの基準を採るかは,県の計量保安課で確認するだけの業務であったし,配管サイズの検討等は,当初からメーカー(石川島播磨重工)に技術検討を依頼しており,この技術検討の結果をそのまま使っていたので,特にAの負担となるようなものではなかった。 (b)当該件名の予算編成業務も,難易度の高いものではなく,むしろ,課員が担当する工事件名の予算編成等と比較しても,負担の 結果をそのまま使っていたので,特にAの負担となるようなものではなかった。 (b)当該件名の予算編成業務も,難易度の高いものではなく,むしろ,課員が担当する工事件名の予算編成等と比較しても,負担の少ない業務であった。すなわち,当該件名については,メーカーから仮見積書が提出されていたので,同仮見積りについて,中部電力の配管工事の積算資料及び過去の類似の配管工事の契約実績単価に照らして,金額を算出しさえすればよかったものであり,Aが一から予算を積算しなければならないものではなかった。 また,Aが,平成11年10月29日までに当該件名の当初予算を提出するよう求められていた事実はなく,さらに,同年11月17日から同月26日までの間に予定されていた課長ヒアリングにおいて,正確な予算金額を算出しなければならなかったわけでもない。 なぜならば,課長ヒアリングにおいては,工事の概略の内容,工事の必要性に関する説明をする必要はあるものの,工事の内容が完全には決定しておらず正確な金額を算出することができないのであれば,概算の金額を示すなり,正確な予算金額については検討中であることを示せば足りるからである。 したがって,Aにとって,当面の課題であった課長ヒアリングをクリアすることが困難な業務であったとは認められないし,当該件名の予算編成に期限が設定されていたことをもって,Aが過重な負担を負っていたということもできない。 d小括 以上によれば,Aが担当していた業務が,特に負担となるような業務でなかったことは明らかである。 (ウ)石炭設備の信頼度確保a当該件名の概要当該件名は,火力発電部門として発電コストが最も安価である石炭火力発電所(碧南火力発電所)の燃料設備(石炭設備)のトラブルを防止し,その信頼度を向上するための施策を検討するものであり, 該件名の概要当該件名は,火力発電部門として発電コストが最も安価である石炭火力発電所(碧南火力発電所)の燃料設備(石炭設備)のトラブルを防止し,その信頼度を向上するための施策を検討するものであり,平成11年度当初から,Aが担当していたものである。 当該件名の業務内容は,碧南火力発電所で生じた主要なトラブルを洗い出し,これらについての施策を検討するというものであるが,一からの技術的検討や調査を必要とするものではなく,テクノ中部が保有するデータの提供を受け,これを整理分析して,対策を検討しさえすればよかったため,難易度の高い業務ではなかった。 そして,Aは,当該件名の取り掛かりにおいて,若干の戸惑いがあったものの,Oの適切な助言や支援を受けながら,特に問題なく順調に業務を遂行していたものであるから,当該件名が,質的・量的にAにとって過重な負担となっていたとは認められない。 b当該件名の中止平成11年8月中旬ころ,OとAが,詳細な内容を調査するため,現場に赴いたところ,碧南火力発電所及びテクノ中部でも,同様の件名に取り組んでいることが判明したため,同発電所において引き続き検討してもらうこととし,燃料グループでの検討は,同年9月で中止することとなった。 したがって,同年10月以降,Aが当該件名を担当していたことはなく,これによる負担はなかったものである。 c小括 以上によれば,当該件名は,もともと難易度の高い業務ではなく,平成11年9月に中止になるまで,Oの助言や適切な支援がされ,進ちょく状況は良好であった上,中止となった以降の業務負担はなかったのであるから,当該件名が,Aにとって質的・量的に過重であったとは認められない。 (エ)LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更a当該件名の概要当該件名は,中部電力の火力発電所に設 かったのであるから,当該件名が,Aにとって質的・量的に過重であったとは認められない。 (エ)LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更a当該件名の概要当該件名は,中部電力の火力発電所に設置されているLNG用ローディングアームの定期点検について,従前新潟鐵工所横浜工場まで船舶により設備を搬送して点検していたのを,主要部品以外の点検等を関連会社である中部プラントサービスの工場で実施することにより,費用の削減及び工期の短縮を図る目的で,検討,調整をしたものである。 bAの担当していた業務の内容当該件名は,平成11年度当初の計画にはなかったものであるが,中部電力では,平成11年12月に川越火力発電所のLNG用ローディングアームの定期点検が控えており早急に結論を出す必要があったこと,担当者レベルから仕事を始めていては間に合わなくなるおそれがあったこと,メーカー等の担当者が上層部クラスであったことから,Dが,自ら交渉や検討,調査を行っていた。そして,Dは,メーカー等との交渉や検討を重ね,その結果を「LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更について(報告)」と題する報告書にまとめ,決裁を得た。 したがって,Aは,当該件名について,交渉や検討に直接携わったものではなく,Dが手書きで作成した上記報告書をパソコンを用いて清書したり,定型的な社内向け依頼書を作成したにすぎない。 c小括以上によれば,当該件名が,Aにとって過重なものであったとは到底認められない。 (オ)その他の件名a平成11年度に,Aが担当していた工事件名は6件であるが,これらの工事件名については,平成10年度以前に予算編成業務を終えており,平成11年度に行うべき業務は,工期前に発注業務を行って,現場の発電所等へ引き継ぎ,工期中は,燃料グループに常駐し,ト るが,これらの工事件名については,平成10年度以前に予算編成業務を終えており,平成11年度に行うべき業務は,工期前に発注業務を行って,現場の発電所等へ引き継ぎ,工期中は,燃料グループに常駐し,トラブルが発生した場合にその検討を行うというものであった。そして,Aが担当していた工事件名は,いずれも発注や引継ぎがスムーズに行われており,工期中にトラブルが発生し,Aが悩んでいたようなこともなかった。 なお,Aが担当していた工事件名のうち,リクレーマ固定装置修理については,工期が変更となっているが,トラブルが発生したための変更ではなく,工期の変更によりAの業務が困難となった事実はない。 また,Aが年度当初から担当した工事件名のうち,主任に昇格した時点で担当していた工事件名は,No.1パイル散水配管取付け,揚炭機(B~D)回転フィーダソリッドタイヤ修理,石炭設備塗装修理の3件であるが,同時期における他の主任や平課員の件数と比較しても,格別多いということはなかった。 bAが,Xから引き継いだ検討件名である「LNGローディングアームの信頼度向上」について,Aが引き継いだ後は,実働業務はなかった。 c燃料グループは,中部電力の東方面の発電所・燃料基地の燃料設備の保守業務の統括管理部門であったことから,日常的に,発電所や他の課等から,検討依頼や調査依頼があった。これらの業務については, 課員が分担して担当することになっていたが,Aの担当は,他の主任や平課員と比較しても,同じか若干少ないくらいであった。 d委託業務監査Aは,主任業務の一環として,平成11年9月14日午前10時から午後0時まで知多第二火力発電所に,同日午後1時から午後3時まで知多火力発電所に,同月22日午後3時から午後5時まで武豊火力発電所に,同月28日午前10時から午後0時 11年9月14日午前10時から午後0時まで知多第二火力発電所に,同日午後1時から午後3時まで知多火力発電所に,同月22日午後3時から午後5時まで武豊火力発電所に,同月28日午前10時から午後0時まで新名古屋火力発電所に,同年10月4日午後1時から午後3時まで渥美火力発電所に,それぞれ委託業務監査に赴いた。 ところで,委託業務監査において,監査,監査結果の報告,監査対象者からの意見集約等は,監査権限を有する管理職である担当副長以上の者が行っていたものであり,監査権限を有しないAは,管理職の随行役にすぎず,Aを監査に同席させたのは,将来Aが管理職になったときのために監査の概要を知ってもらうためであったにすぎない。 e以上のとおり,Aが担当していた平成11年4月以降の燃料グループにおける業務は,その具体的内容に照らしても,難易度の高いものではなく,進ちょく状況も良好であり,Aは,懸案となるような問題も抱えていなかったと認められる。したがって,Aの業務が,質的・量的に過重な負担となっていたとは認められない。 エDのAに対する指導等(ア)Dの指導Dの部下に対する指導については,確かに,語気が強く,課員の前でしっ責するようなことが多かったことは事実であるが,怒号を上げるとか,執ようであるとか,侮辱的・暴力的であるというような,上司から部下への一般的な指導の範囲を超えて,厳しいものであったということはできない。また,Dは,Aに対して,他の部下に対する指導の程度と は異なり特に厳しい指導をしていたものではないし,Aの人間性を否定するような異常な指導をしたり,殊更にAのみを見せしめやいじめの対象としたこともなかった。現に,Oを始めとする課員らの供述等によれば,Dの指導内容が適切であり,指導方法も適切であったことは明らかである。 しかも な指導をしたり,殊更にAのみを見せしめやいじめの対象としたこともなかった。現に,Oを始めとする課員らの供述等によれば,Dの指導内容が適切であり,指導方法も適切であったことは明らかである。 しかも,Dが,失敗を繰り返す部下に対して,より厳しくしっ責する際には,副長も同時にしっ責するなどし,また,Oが,Aら部下の業務を支援,補助するなどして,Dと部下との緩衝剤の役割を果たしていたという事実も認められる。 したがって,Dの指導内容や指導方法は,適切妥当な範囲内にあったものであり,これにより,Aが心理的負担を負った事実は認められない。 (イ)「主任としての心構え」について原告は,Aが主任に昇格後,Dの指導により,「主任としての心構え」と題する文書を2通(甲55,56)作成したことについて,Aに特に厳しい指導がされた事例としてこれを問題視し,また,同文書の内容から,DがAに理不尽な指導を繰り返していた旨主張する。 しかし,上記文書の作成等は,主任に昇格したAに対して,昇格後の地位に応じた責任を自覚させるためにされた指導の一環であって,何ら問題視されるものではない。また,上記指導は,Aに対してのみされていたものではなく,主任に昇格した時点で対象者全員に対してされていたものである。さらに,訂正後の「主任としての心構え」と題する文書の内容を見ても,主任として業務遂行上当然留意すべき事柄を羅列しているだけであり,Dによる独裁的かつ一方的な指導を示すものではない。 したがって,上記文書の作成・提出が,Aに心理的負担を与えるようなものでなかったことは明らかである。 (ウ)Dのメンタルヘルスに関する意識について 原告は,Dがメンタルヘルスに関する教育を受けておらず,メンタルヘルスに配慮すべき意識がなかった旨主張する。 Dが平成10年及び平成11年に開 。 (ウ)Dのメンタルヘルスに関する意識について 原告は,Dがメンタルヘルスに関する教育を受けておらず,メンタルヘルスに配慮すべき意識がなかった旨主張する。 Dが平成10年及び平成11年に開催された中部電力のメンタルヘルス講習を受講していないのは事実であるが,同講習は新任管理職と役付き管理職3年以上の者を対象としたものであり,出席の指示がなかったこと及び何らかの都合により受講できなかったことから,受講しなかったにすぎない。 また,Dは,中部電力によって配布されたメンタルヘルスについての小冊子を読んで自己の意識の向上を図っており,課員の健康管理について数か月ごとに保健室に報告するとともに,メンタルヘルスについても時々相談して助言を受けていた。 したがって,Dがメンタルヘルスについて相当の知識を有していたとともに,部下に対して日常的に配慮していたことは明らかであるから,原告の上記主張は失当である。 (エ)指輪に関する発言についてa原告は,Dが,Aに対し,少なくとも2回にわたり結婚指輪を外すよう命じた旨主張するが,DがAに対し指輪の話をしたのは,平成11年10月末前後の1回のみである。 b原告は,Dが,Aに対し,「たるんでいる。」,「会社の中ではきちっとして,家庭の問題を会社に持ち込むな。」,「その指輪は目障りだ。おれの前では指輪を外せ。」などと言って,指輪を外すよう強く迫った旨主張する。 しかしながら,Dは,第一に現場における異物混入防止対策の観点から,第二にAの集中力を高めるための動機付けの観点から,Aに対し,結婚指輪を外すよう話したものであり,その話し方も,決して命令口調というわけではなく,提案をするような話し方であった。 また,指輪に関するDの発言を聴いたAは,「はい,はい。」という程度の反応をしたにとどまり,現 したものであり,その話し方も,決して命令口調というわけではなく,提案をするような話し方であった。 また,指輪に関するDの発言を聴いたAは,「はい,はい。」という程度の反応をしたにとどまり,現に,原告に対しても,「気にしない。」と述べていたのであるから,Dの発言が,客観的にAに対し心理的負担を与えるような発言であったとは到底認められない。 (オ)小括以上によれば,DのAに対する指導や言動に格別問題となるような点はなく,Aに過重な心理的負担を与えた事実はない。 (3)まとめ以上のとおり,最新の精神医学的・心理学的知見及び法的判断に基づく客観的基準として示された判断指針に照らしても,また,社会通念に照らしても,Aの業務と同人のうつ病発症との間に相当因果関係は認められない。 したがって,Aの業務と死亡との間の相当因果関係は認められず,Aの死亡について業務起因性はない。 また,Aのうつ病発症後の業務を踏まえても,Aの業務と死亡との間に相当因果関係は認められない。 よって,Aのうつ病発症及び増悪並びに死亡に業務起因性が認められないことは明らかである。 第3当裁判所の判断 前提となる事実前記争いのない事実等及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,証人O及び証人Dについて挙示する場合には,それぞれの氏名及び口頭弁論調書記載の口頭弁論の回で特定することとする。)。 (1)Aの家族状況,健康状態,生活状況,性格等ア家族状況(ア)Aは,知多エル・エヌ・ジーに出向中,同社に勤務していた原告と知り合い,平成3年10月に結婚して,二児(長女は平成4年8月生, 二女は平成7年7月生)を設けた(甲6)。 (イ)Aと原告は,結婚した当初は,中部電力の社宅に居住していたが,平成9年3月,愛知県常滑市内のアパート 月に結婚して,二児(長女は平成4年8月生, 二女は平成7年7月生)を設けた(甲6)。 (イ)Aと原告は,結婚した当初は,中部電力の社宅に居住していたが,平成9年3月,愛知県常滑市内のアパートに転居し,さらに,平成10年12月,愛知県常滑市Z町に新築した自宅に転居した(甲3,6)。 Aは,自宅新築のため,住宅ローン契約を締結したが,1か月当たりのローン返済額は約6万円であり,転居するまで居住していたアパートの家賃とほぼ同額であったため,これにより,金銭的に困窮したことはなかった(乙41・3項)。 なお,Aらが平成9年3月に転居した主たる原因は,子供がいじめられたのを発端として,原告と他の社宅入居者との間でもん着が起こったことであった(原告本人・28頁,29頁)。 (ウ)原告は,平成9年10月から平成10年12月までの間,子供たちを原告の両親に預け,自宅付近の薬局でパートタイマーとして勤務した(甲5)。その後,原告は,平成11年8月から,丙クリニック(同クリニックの開院時期は,同年9月2日)において,パートタイマー(1日当たり4時間の勤務)として,勤務し始めた(甲5,原告本人・10頁)。 イ健康状態(ア)Aには,平成6年4月ころ発症した直腸炎症性狭窄症以外には格別の既往歴はなく,その他の身体上の問題もなかった(乙27・24頁,弁論の全趣旨)。 また,Aには,精神障害と関連する疾患についての既往歴はなく,その家族についても,精神障害の既往歴はなかった(甲20)。 (イ)Aは,ほぼ毎日,1合から2合程度の日本酒等を飲んでおり,また,1日当たり10本から20本程度たばこを吸っていた(甲7,乙41・20項から22項まで)。 ウ生活状況(ア)新築した自宅に転居した後の,Aの通常の通勤経路は,自宅から名古屋鉄道常滑線常滑駅ま 当たり10本から20本程度たばこを吸っていた(甲7,乙41・20項から22項まで)。 ウ生活状況(ア)新築した自宅に転居した後の,Aの通常の通勤経路は,自宅から名古屋鉄道常滑線常滑駅まで自転車で向かい,その後,常滑線で大江駅まで行った後,同駅で名古屋鉄道築港線に乗り換え,東名古屋港駅で下車し,徒歩で火力センターに向かうというものであった。通勤時間は片道1時間30分程度であり,Aは,通常,午前6時30分ころ自宅を出発し,午前8時ころ職場に到着していた(甲5,原告本人・2頁)。 なお,平成11年10月以降,Aは,自宅から常滑駅までの経路につき自家用車を利用するようになったが,常滑駅の駐車場の駐車スペースを確保する必要から,自転車を利用していたときよりも,15分ほど早い午前6時15分ころには自宅を出発しなければならなかった(原告本人・2頁,3頁)。 (イ)Aは,知多エル・エヌ・ジー出向中にテニスをし始め,環境設備課に異動後も,しばしば昼休み等を利用してテニスをすることがあった。 また,テレビで,サッカーやテニスを観戦することを好み,これらの番組をビデオ録画し,繰り返し視聴していた(乙41・24項)。 エ性格等原告は,Aの性格について,にぎやかというわけではないが,冗談好きで明るい性格であるととらえていた。また,き帳面であり,まじめで責任感が強く,他人に責任転嫁をしたり,他人の悪口を言ったりしたことがないなどと評していた(乙41・13項から15項まで)。 他方,Aの上司・同僚等は,Aの性格について,基本的には原告と同様のとらえ方をしていた。しかしながら,その仕事ぶりについては,「自分で物事を抱え込んでしまうタイプ」,「臨機応変に要領よくこなす方ではなかった。」,「黙り込んで仕事をするタイプで,よくわからないところがあった。」, た。しかしながら,その仕事ぶりについては,「自分で物事を抱え込んでしまうタイプ」,「臨機応変に要領よくこなす方ではなかった。」,「黙り込んで仕事をするタイプで,よくわからないところがあった。」,「物事をじっと考え込んでしまう。」,「ちょっと人より 時間がかかる。」などと評する者もあった(乙10・38項,乙42・44項,乙43・25項,40項,乙45・9項,乙46・19項,証人O第9回・10頁)。 (2)Aの職歴,業務内容等アAが環境設備課に異動するまで従事してきた業務Aは,前記争いのない事実等(2)のとおり,中部電力に入社後,尾鷲三田火力発電所発電課勤務,同発電所保修課勤務,知多エル・エヌ・ジー出向,知多第二火力発電所勤務を経てきたが,これらの部署において,一貫して現場の技術職として業務に従事してきた(乙27,弁論の全趣旨)。 なお,尾鷲三田火力発電所発電課の主たる業務内容は,火力発電設備の運転・管理業務等であり,同発電所保修課及び知多第二火力発電所保修課の主たる業務内容は,火力発電設備の日常保修・点検工事等であった。また,知多エル・エヌ・ジーの主たる業務内容は,発電用燃料の貯蔵加工工場である同社の知多基地におけるLNGの受入れ・貯蔵・加工設備の保全計画,改良修繕工事の実施等であった(乙27・6頁)。 イ環境設備課の業務の概要,人員構成等(ア)前記争いのない事実等(2)のとおり,Aは,平成9年8月1日,環境設備課に配属され,同課の燃料グループに所属することになった。環境設備課は,前記争いのない事実等(4)のとおり,機械グループと燃料グループから成るが,Aが所属していた燃料グループの業務の概要は,前記争いのない事実等(4)ウのとおりである。 なお,燃料グループには,通常,発電所又は燃料基地の現場において保修業務を4年から 燃料グループから成るが,Aが所属していた燃料グループの業務の概要は,前記争いのない事実等(4)ウのとおりである。 なお,燃料グループには,通常,発電所又は燃料基地の現場において保修業務を4年から5年程度経験した人材が配属されていたが,同グループにおける業務は,主としてデスクワーク中心の業務であった(証人O第9回・9頁,10頁)。 (イ)平成10年7月1日,Dが,環境設備課の課長となった(証人D第 9回・1頁)。 また,平成11年7月以前は,燃料グループは,N,O,P,S,R,X,A及びYによって構成されていた(甲80の1,80の2)。 その後,同年8月1日の人事異動によって,X及びYが転出し,Q及びTが転入してきた結果,燃料グループの人員構成は,前記争いのない事実等(5)のとおりとなった(甲80の3,乙27・28頁)。 (ウ)燃料グループにおいて,Nは,副長として,構成員の勤怠管理,業務評定等の労務管理・服務管理等を担当しており,Oは,担当副長として,予算・長期計画等の取りまとめ業務,課長及び副長の特命事項の処理等を担当していた(甲80の1から3まで,証人O第10回・1頁)。 また,主任以下の構成員は,担当者としてそれぞれの担当業務に従事していたが,平成11年7月までは,発電所ごとに担当者・窓口を決めて,業務分担をしていた(証人O第9回・5頁)しかし,上記のような業務分担制度の下では,担当者不在時に,発電所からの調査依頼事項等に対して,柔軟に対応できないという問題点があった(証人O第9回・6頁)。 そこで,平成11年8月以降は,担当者を燃料ごとに二つのラインに分け(石炭関連業務のライン及び燃料油・LNG関連業務のライン),ラインでの担当制を採ることにした。そして,かかる業務分担制度の変更により,主任であるP,Q及びRは,石炭関 燃料ごとに二つのラインに分け(石炭関連業務のライン及び燃料油・LNG関連業務のライン),ラインでの担当制を採ることにした。そして,かかる業務分担制度の変更により,主任であるP,Q及びRは,石炭関連業務を担当するラインとされ,他方,同月1日に主任に昇格したA,S及びTは,燃料油・LNG関連業務を担当するラインとされた(甲80の3,証人O第9回・5頁,6頁)。従前,一貫して石油関連業務を担当してきたPを,石炭関連業務を担当するラインに配置したのは,主として,燃料グループが取り扱う業務全体の約70%を占める石炭関連業務を担当させることによって,Pのスキルアップを図るというねらいがあったからである(証 人O第9回・6頁)。 なお,中部電力において,主任は,一般職の最高職級として,担当業務に必要な専門知識を有し,上長の指示に基づき創意工夫をこらしながら業務を遂行する立場であると位置づけられていた(乙27・9頁)。 ウ燃料グループにおける業務の配分等(ア)燃料グループにおいては,Oが,年度当初に,主任以下の各担当者に対する業務(工事件名及び検討件名)の配分案を作成していた。配分案を作成するに当たり,Oは,工事件名については,原則として前年度の長期計画や予算編成にかかわった担当者に担当させ,内容的に困難なものについては,経験豊かな担当者に担当させるよう配慮していた。もっとも,このような方法で工事件名を配分した場合,担当者によってばらつきが出る可能性があったため,検討件名をバランスよく配分することによって,各担当者の担当業務に偏りが生じないよう調整していた(証人O第9回・5頁,11頁,同第10回・5頁)。 (イ)配分案作成後,Oは,燃料グループの打合せにおいて,各担当者に対し,件名の内容等について説明し,各担当者の了解を得た上で,上司 整していた(証人O第9回・5頁,11頁,同第10回・5頁)。 (イ)配分案作成後,Oは,燃料グループの打合せにおいて,各担当者に対し,件名の内容等について説明し,各担当者の了解を得た上で,上司であるN,Dの承認を取り,各担当者に対する業務の配分について最終的に決定していた(証人O第9回・5頁,同第10回・5頁)。 エ燃料グループの繁忙度等(ア)燃料グループが担当する業務は,原則として,年度当初に設定したスケジュールに沿って,長期的な間隔で実施すべきものが多かった(証人O第9回・7頁)。 (イ)例年8月から9月にかけて,発電所から修理計画書等の資料が提出されるため,主任以下の担当者は,8月ころから10月ころまでの間,予算編成作業に従事していた。また,課長決裁に係る件名については,担当者は,例年10月又は11月に開催される課長ヒアリングにおいて, 発電所の修理計画書に基づいて,工事の必要性,工事内容,工事範囲,工事の予算規模等について説明する必要があったことから,書類の作成等課長ヒアリングの準備作業に従事しなければならなかった。 したがって,燃料グループの担当者にとって,例年8月ころから10月又は11月に開催される課長ヒアリングまでの期間が,通年で最も繁忙度が高い期間であった(証人O第9回・7頁,8頁)。 (ウ)なお,平成12年度予算編成に係る課長ヒアリングは,平成11年11月17日から同月26日までの期間に開催される予定であった(甲62)。 オ燃料グループの平成11年度の業務・業務配分等(ア)燃料グループにおける平成11年度当初の工事件名の数は全部で20件程度であったが,平成10年度と比較して,予算取りが必要な工事件名は少なかった(証人O第9回・8頁)。 (イ)Oは,平成11年3月ころ,平成11年度の工事件名について 初の工事件名の数は全部で20件程度であったが,平成10年度と比較して,予算取りが必要な工事件名は少なかった(証人O第9回・8頁)。 (イ)Oは,平成11年3月ころ,平成11年度の工事件名について,各担当者に対する配分案を決定し,これに基づき「環境設備課燃料G工事進捗表」を作成した。上記配分の結果,燃料グループの各担当者は,おおむね4件から5件の工事件名を担当することになった(甲85の6,証人O第9回・8頁,11頁,12頁)。 また,Oは,同月ころ,工事件名の配分状況を勘案しながら,平成11年度の検討件名についても,各担当者に対する配分案を決定し,これに基づき「平成11年度残件・懸案管理表(燃料G)」を作成した(甲85の7,証人O第9回・13頁)。 (ウ)前記(イ)の「環境設備課燃料G工事進捗表」において,Aは,工事件名のうち,平成10年度以前から工事が継続している工事件名である「No.1パイル散水配管取付」及び「揚炭機バケットエレベータスプロケット修理」並びに平成11年度の新規工事件名である「揚炭機(B ~D)回転フィーダソリッドタイヤ修理」,「石炭設備塗装修理」,「No.7,8燃料油ポンプ設置」,「燃料油タンクヤード排水設備設置」及び「リクレーマ固定装置修理」の担当者とされた(甲85の6,証人O第9回・11頁から13頁まで)。もっとも,上記のうち,「燃料油タンクヤード排水設備設置」の工事は取りやめとなった(証人O第9回・12頁,13頁)。 また,前記(イ)の「平成11年度残件・懸案管理表(燃料G)」において,全部で13の検討件名が計画されていたが,Aは,これらのうち,「石炭設備の信頼度確保」及び「燃料油小口径配管の管理」の担当者とされた(甲85の7,証人O第9回・14頁)。 なお,Oは,Aにつき,現場での経験は長か 討件名が計画されていたが,Aは,これらのうち,「石炭設備の信頼度確保」及び「燃料油小口径配管の管理」の担当者とされた(甲85の7,証人O第9回・14頁)。 なお,Oは,Aにつき,現場での経験は長かったものの火力センターでの実務経験が少ないことなどを考慮した結果,同人に対し,上記検討件名を配分した(証人O第9回・14頁)。 (エ)平成11年8月1日の人事異動に伴い,前記イ(イ)で認定したとおり,燃料グループからX及びYが転出した。また,同時に,前記イ(ウ)で認定したとおり,燃料グループ内の業務分担制度が変更された。 しかし,業務の効率化の観点から,上記人事異動後も燃料グループに残留したAを含む担当者4人については,平成11年8月以降も,燃料の区別に関係なく,同年7月まで担当していた工事件名及び検討件名を引き続き担当させることとし,他方,8月以降に発生した業務については,新たな業務分担制度に従って,燃料別のラインごとに配分することとした(証人O第12回・1頁,2頁)。 また,Xは,上記人事異動の際,Aに対し,いったんは,工事件名である「碧南火力発電所石炭コンベヤ(3)落炭防止板改造」及び「碧南火力発電所石炭コンベヤシュートスカート板修理」並びに検討件名である「LNG用ローディングアームの信頼度向上」及び「定期点検単価 契約見直し」の業務を引き継いだ(甲85の9)。 しかし,Oが,上記人事異動に伴い,業務配分の見直しをした結果,AがXから引き継いだ「碧南火力発電所石炭コンベヤ(3)落炭防止板改造」についてはQに,「碧南火力発電所石炭コンベヤシュートスカート板修理」及び「定期点検単価契約見直し」についてはPに,それぞれ再配分することとなった(甲85の6,85の7,証人O第9回・12頁)。その結果,Aは,実質的には,Xから「LNG ベヤシュートスカート板修理」及び「定期点検単価契約見直し」についてはPに,それぞれ再配分することとなった(甲85の6,85の7,証人O第9回・12頁)。その結果,Aは,実質的には,Xから「LNG用ローディングアームの信頼度向上」という検討件名のみを引き継ぐことになった(甲85の7)。 (オ)平成11年度当初には予定されていなかったものの,その後,「知多LNG受入設備の改造」及び「LNG用ローディングアームの定期点検の体制変更」という検討件名についても,Aが関与することになった(証人O第9回・14頁,弁論の全趣旨(なお,証人O第9回・14頁の「LNGローディングアーム受入設備の改造」は「知多LNG受入設備の改造」の誤りであると思われる。))。 カAが担当していた検討件名・工事件名等(ア)石炭設備の信頼度確保a石炭設備の信頼度確保は,前記オ(ウ)のとおり,平成11年度当初から,Aに配分された検討件名である。 この件名は,中部電力の火力発電部門でも最も発電コストの安価な唯一の石炭火力発電所である碧南火力発電所において,その石炭設備の信頼度を向上するための施策を検討するものである(乙26,証人O第9回・16頁)。 平成11年度当初,業務配分案が作成された際,上記件名の実施概要として,「故障修理実績をもとに各機器の弱点部位を洗い出し,対策を検討する。」とされた。そして,平成11年4月から同年5月に かけて調査,同年6月から同年8月にかけて対策検討を実施した上,必要であれば,同年9月及び同年10月に予算化するというスケジュールで実施する旨の計画が立案された。また,当初の予定では,同年7月末及び同年9月末に中間報告を,同年10月末に最終報告を実施することになっていた(甲85の7,乙26)。 bAは,平成11年3月ころ,上記件名の 旨の計画が立案された。また,当初の予定では,同年7月末及び同年9月末に中間報告を,同年10月末に最終報告を実施することになっていた(甲85の7,乙26)。 bAは,平成11年3月ころ,上記件名の担当者とされたが,Oに対し,検討テーマが大きすぎて,どの点から検討すればよいのか分からない旨述べた。これに対して,Oは,碧南火力発電所における過去5年間に発生した小さなトラブルを洗い出し,そのうち上位5件について何らかの対策を検討すればよいのではないかと助言した(乙13・20項,証人O第9回・17頁)。そして,上記のトラブルに関するデータについては,テクノ中部が保有していたため,Oは,同社の担当者に電話した上,Aと共に同社に赴き,担当者にAを紹介して,トラブルに関するデータの抽出を依頼した(証人O第9回・17頁)。 cAは,Oの前記助言を受けて,平成11年4月下旬ころ,「石炭設備の信頼度確保について(基本計画)」と題する文書の原案を起案し,同年5月初旬ころ,Dら上司に対し回議した(甲85の3)。Dら上司が上記文書に加除訂正を加えたものに基づき,Aは,同年6月ころ,上記文書の完成版を起案し,同月初旬ころ,Dら上司に回議し,承認を得た(甲85の3,甲110・文書番号50)。 dAは,テクノ中部から提出されたデータ等に基づき,トラブルの実態調査等の作業に従事した(証人O第9回・18頁)。 eAは,上記実態調査の内容を踏まえつつ,更に現場における実態の詳細について調査することを希望した。そこで,Oは,平成11年8月中旬ころ,Aと共に碧南火力発電所を訪れたところ,同発電所及びテクノ中部でも,石炭設備の信頼度確保の問題について取り組んでい ることが判明した。このことから,Oは,石炭設備の信頼度確保の問題については,碧南火力発電所等の現場にゆだ たところ,同発電所及びテクノ中部でも,石炭設備の信頼度確保の問題について取り組んでい ることが判明した。このことから,Oは,石炭設備の信頼度確保の問題については,碧南火力発電所等の現場にゆだねた方が妥当であり,燃料グループにおける検討は取りやめるべきだと判断した。その結果,同年9月ころ,燃料グループにおいて,上記件名に関する検討を中止する旨決定した(甲85の7,証人O第9回・18頁,19頁)。 fAは,石炭設備の信頼度確保の件名に関し,前記bのOの助言を踏まえて,平成11年10月付けの「石炭設備の信頼度向上(小トラブル対策)」と題する文書を作成した(甲69)。同文書は,同年10月16日に,更新された(甲41の1の4)。 また,Aは,上記件名に関し,「ベルトクリーナー装置比較」と題する文書を作成したが,同文書も,同日に更新された(甲110・文書番号52,41の1の4,証人O第10回・8頁)。 (イ)燃料油小口径配管の管理a燃料油小口径配管の管理は,前記オ(ウ)のとおり,平成11年度当初から,Aに配分された検討件名である。 この件名は,電力自由化に伴う全社的なコスト削減の流れの中で,従前きめ細やかに行われていた燃料設備の小口径配管の管理方法(点検内容,点検の間隔,点検範囲等)について,より簡素化できるか見直しをするというものであり,保修費用の削減の観点から,Oが提案し,平成11年度の検討件名とされたものである(証人O第9回・20頁,同第10回・14頁,同第12回・4頁)。 平成11年度当初,業務配分案が作成された際,上記件名の実施概要として「管理の実態調査,対応策立案」が掲げられた。そして,平成11年4月から同年6月までに実態調査を実施し,同年7月に対応策を立案の上,その結果につき同月末までに中間報告をし,さらに,同年8月か として「管理の実態調査,対応策立案」が掲げられた。そして,平成11年4月から同年6月までに実態調査を実施し,同年7月に対応策を立案の上,その結果につき同月末までに中間報告をし,さらに,同年8月から同年9月末までに管理書類を整備するというスケジュー ルで,上記件名を実施するという計画が立案された(甲85の7,乙26)。 b中部電力の発電所において,小口径配管からの蒸気漏えい事故が発生したため,環境設備課の上位部署に当たる品管は,平成11年5月13日,小口径配管に関するトラブルを撲滅する観点から,発電所の故障管理部署や火力センターの故障管理部署等に対し,「故障防止対策基本方針書」と題する文書を発出し,小口径配管の管理方法の強化を指示した(乙70,証人O第9回・22頁,同第12回・5頁)。 上記指示文書において,環境設備課が所属する火力センター工事部に対しては,管理すべき小口径配管の定義及び管理方法(点検方法,点検の間隔,検査項目,点検範囲等)を検討し,定期点検手引,設備管理要領等に明記するよう具体的指示があり,当初は,同業務の完了目標について平成11年6月と設定されていた(乙70)。もっとも,同月までにはとても間に合わないとの各部署の要請を受け,品管の担当者を交えて会議を実施した結果,品管は,小口径配管の管理方法の強化に関する検討の完了期限について,同月から同年11月まで延期する旨了承した(証人O第12回・34頁,35頁)。 c平成11年5月末から同年6月初めころ,環境設備課に対しても,品管の上記指示文書による指示がされた(乙70)。 前記aのとおり,環境設備課においては,既に平成11年度当初から,経費削減という独自の観点に基づき,小口径配管の管理方法の見直しを検討件名として掲げていた。これに対して,品管からの指示は,小口径配 前記aのとおり,環境設備課においては,既に平成11年度当初から,経費削減という独自の観点に基づき,小口径配管の管理方法の見直しを検討件名として掲げていた。これに対して,品管からの指示は,小口径配管に関するトラブルを撲滅するという観点に基づくものであったが,このような観点の相違にかかわらず,具体的な小口径配管の管理方法の見直しに当たっては,現状の管理方法に従った管理・点検の実施状況の調査や過去に発生したトラブルの精査等が必要であった ことから,品管の指示事項についての検討を,平成11年度当初からの検討件名と併せて,検討・実施することに決定した。ただし,品管に対し,環境設備課としての意見を提出する必要があったことから,燃料グループでは,引き続きAに検討を進めさせることとし,他方,機械グループでは,Mに検討を進めさせることとした。また,品管の指示事項やその完了期限を考慮して,平成11年度当初に立案したスケジュールを見直し,平成11年11月ころまでに上記検討件名についてまとめることができるよう計画を変更した(甲85の7,証人O第9回・20頁から22頁まで,同第12回・6頁)。 dAは,平成11年度当初,上記検討件名を配分された際,具体的にどの点から検討してよいか戸惑っており,その旨をOに告げた。そこで,Oは,Aに対し,手始めに,過去5年間の発電所における燃料配管に関するトラブルの実態について調べてみるよう助言した。そして,Oは,具体的な検討の進め方として,中部電力から発電所のメンテナンス業務を受託しているテクノ中部に集積された燃料配管トラブルの実態に関するデータを取り寄せ,これを分析してみてはどうかと助言した(乙12・15項,13・15項)。 eA及びMは,機械グループと燃料グループのそれぞれの検討方針について調整した結果につき ルの実態に関するデータを取り寄せ,これを分析してみてはどうかと助言した(乙12・15項,13・15項)。 eA及びMは,機械グループと燃料グループのそれぞれの検討方針について調整した結果につき,平成11年6月10日ころ,「環境・燃料設備小口径配管の管理について(基本計画)」と題する文書を起案した(甲81の2,証人O第9回・23頁,同第12回・7頁)。 上記文書は回議に付され,同文書記載の燃料設備小口径配管の管理に係る基本的な方針については承認されたが,Dは,業務の交錯を防止すべく,品管が各発電所に対して指示した調査の結果を踏まえて対応を検討することなど今後の方針に対する補足的な指示を出した(甲81の2)。 なお,機械グループと燃料グループとでは,管理すべき小口径配管の種類及び管理方法が異なっていたため,実際の検討については個別に実施することになっていた(証人O第12回・7頁,8頁)。 fAは,平成11年9月中旬ころ,燃料設備小口径配管の定期点検の手引に基づく設備管理の現状に関する調査を踏まえ,管理方法の評価をまとめた「燃料設備小口径配管の管理方法の評価について」と題する文書を起案したが,同文書において,「点検インターバルを8年から5年に変更する。」との検討結果を示した(甲81の3)。 O及びNは回議に付された上記文書の内容を承認したが,Dは,「基本姿勢と技術検討会での約束事項,更には他パートの動きを教えて欲しい近々に課内関係者で技術打合せを開催し意志統一すること」との指示コメントを付して,上記文書の内容について承認することを留保した(甲81の3)。Dの上記指示を受けて,Oは,Aと協議し,他部署の検討結果の動向を見ながら,再検討することに決めた(証人O第10回・41頁)。 なお,同月29日午後11時11分ころ,Aが上記文書 した(甲81の3)。Dの上記指示を受けて,Oは,Aと協議し,他部署の検討結果の動向を見ながら,再検討することに決めた(証人O第10回・41頁)。 なお,同月29日午後11時11分ころ,Aが上記文書を更新した形跡がある(甲115)。 gAは,平成11年9月30日午前0時28分ころ,「環境・燃料設備小口径配管トラブル撲滅の取組方について」と題する文書を起案し,同日ころ,表題を「環境・燃料設備小口径配管トラブル撲滅の取組について」と修正した上,回議に付した(甲81の8,116)。 h火力センター工事第一部では,小口径配管の管理方法について,品管に対し統一的な検討結果の報告を上げる目的で,同部機械課ボイラーグループが,各課担当者を対象とする会議を主宰していた。Aは,この会議に出席し,他部署の検討結果等について情報収集に当たった(証人O第12回・10頁)。その結果,燃料グループが取り扱って いる燃料設備小口径配管の現状の管理方法は,他部署が取り扱っている小口径配管の管理方法と比較して,強化されたものであることが判明した。そこで,前記fのとおり,「燃料設備小口径配管の管理方法の評価について」と題する文書で示された,点検の間隔を短縮化する方向性での検討結果を見直すこととし,燃料グループとしては,現状維持の方向性で結論を出すことになった(証人O第12回・8頁,9頁)。 これを受けて,Aは,平成11年11月初めころ,「燃料設備小口径配管の管理方法について」と題する文書を起案したが,同文書においては,「燃料油設備定期点検の手引において小口径配管の管理漏れはない」との検討結果を示した(甲81の4)。なお,上記文書に添付された「燃料設備(受入・貯蔵・消費)保守管理関係対策の推移」と題する資料は,平成9年ころ,Oによって作成されたものである(甲8 れはない」との検討結果を示した(甲81の4)。なお,上記文書に添付された「燃料設備(受入・貯蔵・消費)保守管理関係対策の推移」と題する資料は,平成9年ころ,Oによって作成されたものである(甲81の4,証人O第12回・9頁)。 iAが自殺した後も,品管に対する環境設備課としての具体的意見の取りまとめは完全にはできていなかった。しかし,環境設備課において具体的意見の取りまとめができなかったのは,専ら他部署の検討結果を待っていたり,工事第一部内での調整に時間がかかったという事情があったからであり,燃料グループとしての検討自体は終了していた(証人O第12回・9頁)。 (ウ)知多LNG受入設備の改造a知多LNG受入設備の改造という検討件名は,東邦ガスが,緑浜5区のLNG受入用桟橋として,知多エル・エヌ・ジーのL-2桟橋を使用するのに伴い,LNG輸送配管の接続部の不具合が懸念されたことから,その対策を検討するものである(乙26)。 上記件名は,マイナス160℃という低温のLNGに関する検討を 含むため,技術検討には大変な困難を伴うものであった。そのため,燃料グループが対応できるレベルを超えていたことから,技術検討に関しては,当初からメーカーに依頼することに決めた。したがって,メーカーとは,LNG受入設備関係工事に関し,技術検討,物品の納入,現場への据付け等をすべて含む物品請求という形式の契約を締結した(乙13・17項,証人O第9回・26頁,27頁)。 b上記件名については,A及びSの二人で担当していたが,主担当者はSであり,Aは,マイナス100℃という温度を保つ必要があるLNG受入れのためのクールダウン配管が必要か否かの検討,必要であれば,配管のサイズの検討,高圧ガス保安法とガス事業法のいずれの基準を採るかについての検討及び予算 100℃という温度を保つ必要があるLNG受入れのためのクールダウン配管が必要か否かの検討,必要であれば,配管のサイズの検討,高圧ガス保安法とガス事業法のいずれの基準を採るかについての検討及び予算編成業務を担当していた(甲83の2,乙13・17項,証人O第9回・26頁)。 c平成11年8月9日の打合せの際,LNG受入設備関係工事の受注メーカーである東邦ガスは,環境設備課に対し,分岐部設備対策について3つの対策案を提示した。同対策案は後記の「M4・M5分岐部設備対策について(案)」と題する文書とほぼ同一の内容であった(甲110・文書番号55,証人O第12回・13頁)。 Aは,上記提案を受けて,同月ころ,「M4・M5分岐部設備対策の検討結果」と題する文書を起案した(甲110・文書番号55)。 d東邦ガスは,環境設備課に対し,分岐部設備対策についての対策案をまとめた「M4・M5分岐部設備対策について(案)」と題する文書(平成11年9月3日付け)を提出した。上記文書には,対策①から対策③までの対策案が示され,それぞれについて「分岐切替時の基本操作」及び「長所/問題点」の説明並びに各対策案に対する東邦ガスの評価が記載されていた。そして,東邦ガスとしては,各対策案の中で最も理想に近い分岐切替操作が実現可能であることを理由として, 対策②に最も高い評価を与えていた(甲82の2)。 上記の提案につき,Oは,技術的な観点はさておき,工事実施を担当する環境設備課としては,最もシンプルでコストのかからない対策①が最適ではないかと考えた。そこで,Oは,対策①が最適である旨回答することを具申し,Dの承認を得た上,Aに対し,平成11年9月2日の打合せの際,上記のとおり回答するよう指示した(証人O第9回・27頁,28頁,同第12回・29頁から31頁まで)。 最適である旨回答することを具申し,Dの承認を得た上,Aに対し,平成11年9月2日の打合せの際,上記のとおり回答するよう指示した(証人O第9回・27頁,28頁,同第12回・29頁から31頁まで)。 Aは,平成11年9月2日,M4,M5分岐部懸案事項の打合せに出席し,Oの上記指示を受けて,安全性,法対応,費用等の観点から,対策①が最適である旨説明した。また,Aは,上記打合せの結果について,業務連絡表を起案し,回議に付した(甲82の2)。 eAは,平成11年9月22日,燃料課から,上記件名に関する運用サイド(知多エル・エヌ・ジー等)の調整結果の中間報告を受け,その内容について,同月27日,業務連絡表を起案し,回議に付した(甲82の3)。 fAは,燃料設備課の対策案,関係部署との打合せの結果等を踏まえて,平成11年9月28日ころ,「M4・M5分岐部設備対策の検討結果(運用側への依頼)」と題する文書を作成した。同文書には,結論(依頼内容)として,「案①でクールダウン可能であると考える。 L2桟橋受入間隔が極端に開く場合は,M5側ガス抜きラインを開し,ホットアップ防止をはかる方法を検討依頼する。」との記載がされていた(甲110・文書番号59,証人O第12回・19頁,20頁)。 gAは,平成11年9月30日,メーカー,関係部署等との打合せに参加し,その内容について報告書を作成して,回議に付した(甲82の4)。 hAが,平成11年10月初めころ,知多LNG受入設備の改造に関 する工事の仮見積書をメーカーから入手したため,これをOに見せたところ,仮見積書記載の金額が非常に高額であったことから,Oは,Aに対し,仮見積書の各項目,材料等をベースに,中部電力の設計基準と照合し,仮見積書記載の金額について検証するよう指示するとともに,所長ヒアリン 見積書記載の金額が非常に高額であったことから,Oは,Aに対し,仮見積書の各項目,材料等をベースに,中部電力の設計基準と照合し,仮見積書記載の金額について検証するよう指示するとともに,所長ヒアリングまでに正確な金額を算出したい旨話した(証人O第9回・28頁,同第10回・32頁,同第12回・17頁,18頁)。 上記工事は低温配管に関する工事であり,技術的に困難な検討を伴うものではあったが,仮見積書の金額の検証に当たっては,中部電力の一般配管に関する設計基準をベースに工事金額を算出し,この金額に難易度等の諸要素を考慮するための係数を乗じて,最終的な金額を積算しさえすればよかった(証人O第12回・18頁から21頁まで)。 なお,知多LNG受入設備の改造に関する工事は,その予算規模に照らし,火力センター所長の最終決裁を必要とする案件であった。そのため,課長ヒアリングの段階では,正確な予算の積算を実施し,その結果につき報告する必要はなかった(証人O第9回・28頁)。 iAは,平成11年11月5日午前中,知多LNG受入設備の改造に関する打合せに参加するため,Sと共に愛知県知多市丁町所在の知多エル・エヌ・ジーに出張した(乙27・23頁)。 Aは,平成11年11月7日ころ,上記件名に関する工事の予算につき,「設計根拠書(A)」及び「設計根拠書(B)」を作成する業務に従事した。しかしながら,Aは,同月8日に自殺したことから,上記文書を完成させることができなかった(甲68,証人O第12回・21頁,22頁)。 (エ)LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更 aLNG用ローディングアーム定期点検の体制変更とは,中部電力の火力発電所に設置されているLNG用ローディングアームの定期点検について,費用の削減及び工期の短縮等の目的で,従来は新潟鐵工所 aLNG用ローディングアーム定期点検の体制変更とは,中部電力の火力発電所に設置されているLNG用ローディングアームの定期点検について,費用の削減及び工期の短縮等の目的で,従来は新潟鐵工所横浜工場まで設備を海上輸送した上点検を実施していたものを,主要部品以外の点検等について,中部プラントサービスの工場で実施するよう変更すること等について検討するものである(乙26,28,証人D第9回・9頁)。なお,LNG用ローディングアームとは,LNGの受入用桟橋等に設けられた荷役設備の一種である(甲28)。 b上記件名は,メーカーから直接Dに対し持ち込まれたものであるが,平成11年12月に川越火力発電所のLNG用ローディングアームの定期点検が控えており,早急に検討しなければならない案件であったこと,上記件名に関する協議の相手方が,新潟鐵工所,中部プラントサービス等の幹部従業員であったことなどから,D自身が交渉,検討等を担当することになった(乙28,証人D第9回・9頁,10頁)。 他方,Aは,Dの補助的な担当者として上記件名に関与し,Dが上記件名に関する方向性・対応策についてまとめた同年9月27日付けの「LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更について(報告)」と題する文書を,Dの指示により,パソコンを用いて清書した(乙28,証人D第9回・11頁,12頁)。また,Aは,火力発電所の保修課等関係部署に対する依頼文書と位置づけられる「LNG用ローディングアーム定期点検の体制変更について(依頼)」と題する文書を作成した(乙28,証人D第9回・12頁)。 (オ)LNG用ローディングアームの信頼度向上aLNG用ローディングアームの信頼度向上とは,LNG用ローディングアームの定期点検の間隔を,設備の劣化度合いにより長期化していくための検討業務 。 (オ)LNG用ローディングアームの信頼度向上aLNG用ローディングアームの信頼度向上とは,LNG用ローディングアームの定期点検の間隔を,設備の劣化度合いにより長期化していくための検討業務である。平成11年度当初,上記件名については, 平成11年4月中旬から点検・修理実績調査等を開始し,同年9月までに対策を検討するという予定であった(甲85の7,乙26)。 bAは,前記オ(エ)のとおり,平成11年8月の人事異動に伴い,Xから上記件名を引き継いだものであるが,同年7月末時点において平成11年度の試行運用の態勢について検討済みであり,試行運用の実施に関する関係者への通知も完了していたことから,同年8月以降は試行期間段階に至っており,Aは,試行運用していた知多火力発電所からの問い合わせに対応するなどの業務を実施したにとどまった(甲85の7,乙26)。 (カ)工事件名aAの担当していた工事件名については,平成10年度までに予算編成業務が終了していたため,担当者であるAの具体的な業務は,工事の発注,工事の引継ぎ及び工期中にトラブルが発生した場合にのみ,その対策について検討するというものであった(証人O第9回・12頁)。 bAが担当していた工事件名のうち,「揚炭機バケットエレベータスプロケット修理」については平成11年6月30日に,「No.7,8燃料油ポンプ設置」については同年5月25日に,それぞれ工事が完了した(甲85の6)。 cAが担当していた工事件名のうち,「リクレーマ固定装置修理」については,「貯炭場改造」という工事件名と工事現場がふくそうしたことから,調整のため,工期自体が変更された(証人O第9回・13頁)。 d上記b,c以外の工事件名についても,発注,引継ぎについて格別問題が発生することはなく,工期中に大き 工事現場がふくそうしたことから,調整のため,工期自体が変更された(証人O第9回・13頁)。 d上記b,c以外の工事件名についても,発注,引継ぎについて格別問題が発生することはなく,工期中に大きなトラブルが発生したこともなかった(証人O第9回・13頁)。 (キ)その他の件名a防消火・冷却水配管手引反映事項この業務は,防消火配管の点検が過剰ではないかとの観点から,経費削減の施策の一環として,各発電所に対して,指針手引に沿った点検の実施状況について調査するという業務であるが,Aは,平成11年7月26日ころ,Oと分担して,9か所の発電所及び燃料基地から,指針手引に沿った点検の実施状況について聴取した(甲86,証人O第9回・29頁)。 b武豊火力停止計画Aは,平成11年8月上旬ころ,武豊火力停止計画という案件に関し,燃料油設備の加温に使用する蒸気量を算出する業務に従事したが,具体的には,武豊火力発電所建設当時の建設記録に記載された蒸気量に関するデータを探し出し,調査するというものであった。そして,Aは,その結果につき,「武豊火力発電所原重油タンク用必要蒸気量」と題する文書にまとめ,報告した(甲86,110・文書番号54,証人O第9回・29頁)。 cガス導管サポートこの業務は,四日市火力発電所において,LNGのガス導管のサポートに腐食が発見されたため,燃料グループが管理している知多エル・エヌ・ジーのガス導管についても同様の問題がないか調査するというものである。Aは,平成11年9月6日ころ,Oと共に現場に赴き調査したところ,知多エル・エヌ・ジーのガス導管のサポートの構造が,四日市火力発電所で腐食が発見されたサポートの構造とは構造そのものが全く異なることが判明したため,それ以上の調査・検討を行う必要がなかった(甲86,証 エル・エヌ・ジーのガス導管のサポートの構造が,四日市火力発電所で腐食が発見されたサポートの構造とは構造そのものが全く異なることが判明したため,それ以上の調査・検討を行う必要がなかった(甲86,証人O第9回・29頁,30頁)。 d新名古屋火力発電所5・6号機停止に伴う燃料保管対策 この業務は,突発的な指示によるもので,新名古屋火力発電所5・6号機の停止に伴い,燃料の保管対策を検討するというものである(乙26,証人O第9回・30頁)。 Aは,平成11年9月9日ころ,O及び中部プラントサービスの担当者と現場に赴き,現場調査をした。そして,火力センター燃料課に対し対策に必要な予算を回答するため,Aは,中部プラントサービスが算出した仮見積りの内容をチェックした上,燃料課へ回答した(甲86,証人O第9回・30頁,31頁)。 また,Aは,同月21日,新名古屋火力発電所5・6号機停止に伴う燃料保管対策についての関係部署との打合せに出席し,その結果報告のため,同月22日,業務連絡表を起案し,上司に対する回議に付した(甲85の4)。 (ク)業務委託監査a業務委託監査とは,燃料設備の保修業務の委託内容について,適正に実施されているかをチェックするため,年2回(半期に1回)の頻度で,対象となる発電所に出向き,意見交換等を実施するというものである(乙26)。 業務委託監査について,監査権限を有しているのは担当副長以上の管理職であり,監査,監査結果の報告,相手方からの意見・提案の集約等の業務も,管理職が実施していた(証人O第12回・11頁)。 bAは,平成11年9月14日午前10時から午後0時まで知多第二火力発電所に,同日午後1時から午後3時まで知多火力発電所に,同月22日午後3時から午後5時まで武豊火力発電所に,同月28日午前10時から午後0時 11年9月14日午前10時から午後0時まで知多第二火力発電所に,同日午後1時から午後3時まで知多火力発電所に,同月22日午後3時から午後5時まで武豊火力発電所に,同月28日午前10時から午後0時まで新名古屋火力発電所に,同年10月4日午後1時から午後3時まで渥美火力発電所に,それぞれ赴き業務委託監査に立ち会った(甲110・文書番号118)。 Oらが,監査権限のない主任のAを業務委託監査に同席させたのは,Aが将来管理職となったときのため,監査のやり方,監査方法,監査についての考え方等について学んでもらおうと配慮したからであった(証人O第12回・11頁)。 Aは,委託監査業務の懇談会又は意見交換会の議事録を取り,これを「H11年度燃料設備委託業務懇談会(報告)」又は「H11年度燃料設備委託業務意見交換会(報告)」と題する報告文書にまとめた(甲110・文書番号119から124まで,証人O第12回・11頁,12頁)。 キAに対する人事考課の内容Aに対する平成11年度上期の人事評定の結果は,「E」評価であった。 なお,中部電力における人事評定は,各職級ごとに,上位から「A,B,C,D,E」の5段階で評価を行うというものであり,評定時期は,上期については毎年9月30日(4月1日から9月30日までの期間の人事評定),下期については毎年3月31日(10月1日から翌年の3月31日までの期間の人事評定)であった(甲20)。 (3)Aの労働時間に関連する事項ア平成11年当時の中部電力火力センターにおける所定労働時間,所定休日及び勤怠管理の方法等は,前記争いのない事実等(3)のとおりである。 なお,火力センターでは,直属長が,部下である従業員に対して口頭で事前命令をした場合,又は,当該従業員本人が直属長に時間外労働等の必要性を口頭で申し出て,直 記争いのない事実等(3)のとおりである。 なお,火力センターでは,直属長が,部下である従業員に対して口頭で事前命令をした場合,又は,当該従業員本人が直属長に時間外労働等の必要性を口頭で申し出て,直属長の命令を受けた場合に,直属長が,当該従業員に対し,事後的に,業務内容,時間外労働等の実施時間等の報告を求め,その報告に基づいて当該従業員の勤務状況を服務管理用の端末に入力するという方法で,時間外・休日労働を含む勤怠管理を行っていた。燃料グループにおいては,Nが,上記方法によって,Aの勤怠管理をしていた (甲125,乙27)。 イ中部電力においては,労働基準法36条に基づき,1日,1か月及び1年間の各時間外労働時間数並びに休日労働の回数・時間数の上限について,年度当初に労働組合と事業場・部署ごとに協定を締結し,所轄労働基準監督署に届け出ていた。火力センターの場合,平成11年当時,時間外労働時間数については,1日で3時間40分,1か月で45時間,1年間で360時間が上限とされており,休日労働の回数については,1か月3回(1回当たりの時間数は11時間40分)が上限とされていた。なお,業務上の都合により,時間外労働時間数が協定で定められた上限より更に1日2時間,1か月30時間までの範囲で超過する場合には,その都度事前に労働組合と事業場・部署ごとに,勤務実態に応じた追加の協定を締結していた(乙27・16頁)。 ウ火力センターにおいては,従業員等が平日午後9時以降及び休日に火力センター建物に入館する場合,1階西側通用口に設置してある「休日・時間外入出管理表」に記入しなければならないと定められている(甲28,123,乙27・17頁)。 また,火力センターでは,中電防災株式会社の警備員が,毎日午前6時から午前6時30分ころ,午後11時から午前0 出管理表」に記入しなければならないと定められている(甲28,123,乙27・17頁)。 また,火力センターでは,中電防災株式会社の警備員が,毎日午前6時から午前6時30分ころ,午後11時から午前0時ころの2回,建物内の巡視をすることになっており,その際,警備員は,建物内にいる従業員等について,その所属,氏名及び巡視時間を「休日・時間外入出管理表(巡視用)」に記録することになっている(甲28,124,乙27・17頁)。 エAが使用していたPHSについて,平成11年6月1日から同年11月8日までの発信年月日,発信時刻及び発信場所は,それぞれ別紙6の「発信年月日」欄,「発信時分秒」欄及び「発信場所」欄に記載のとおりである(乙21)。 オ平成11年当時,Dを始めとするAの上司らは,Aが時間外に会社に残っていた事実や休日に出勤していた事実などAの正確な勤怠状況については把握していなかった(乙11,証人O第9回・32頁,証人D第10回・6頁)カ名古屋南労働基準監督署が,平成14年8月ころ,中部電力火力センターの立入調査を実施したところ,同社の従業員がいわゆるサービス残業をしていたことが判明したため,同社に対し,未払賃金55人分合計約26万円を支払うよう是正勧告をした(甲101の1,2)。また,その後,名古屋北労働基準監督署の是正勧告・指導を受け,中部電力が調査した結果,従業員がサービス残業をしていたことが発覚したため,平成13年4月から平成15年6月までの2年3か月間の未払賃金合計約65億2000万円を支払った(甲102の1から105の2まで)。 (4)Dの部下に対する指導,DとAの関係等アDの経歴Dは,昭和37年4月中部電力に入社し,前記(2)イ(イ)で認定したとおり,平成10年7月1日,環境設備課の課長となった。その後, まで)。 (4)Dの部下に対する指導,DとAの関係等アDの経歴Dは,昭和37年4月中部電力に入社し,前記(2)イ(イ)で認定したとおり,平成10年7月1日,環境設備課の課長となった。その後,平成12年6月30日まで同課長を務めた後,同年7月1日,中部電力の子会社である株式会社永楽開発の副部長として出向した(乙8,証人D第9回・1頁,同第10回・1頁)。Dは,現場での経験が豊富だったため,現場の業務等について精通していた(乙44・17項,証人O第9回・34頁)。 イDの部下に対する指導(ア)Dは,大きな声で直せつ的な話し方をし,その口調も名古屋弁混じりのきついものであった(乙42・19項,43・33項,証人O第9回・34頁,同第10回・52頁)。Dは,課長席の前や会議コーナーに課員を呼びつけ,他の課員に聞こえるような声で,課員を指導したこ ともあった(証人O第10回・52頁,証人D第10回・11頁)。 もっとも,前記アのとおり,Dは現場の業務等について精通していたこともあって,指摘事項の内容自体は的確なものであったし,担当者が回議に付した文書については,指摘事項に関する詳細なコメントを書き加えたり,コメント付きの付せんをちょう付した上で,担当者に返却し再検討を促すなど具体的な指導をしていた(乙72から75まで)。 他方,Dは,課員が複数回同じ過ちを繰り返した場合や,課員がそれぞれの立場に応じた役割や認識を果たすよう努力していないと思った場合には,特に厳しく指導することもあった(証人D第10回・41頁)。 また,Dは,動きの悪い課員に対しては,結果として対応が厳しくなり,Aはどちらかといえば,動きの悪い方であると見られていた(乙44・17項)。 以上から,環境設備課の課員は,Dについて,仕事ができ,指導方法も的確であるが, に対しては,結果として対応が厳しくなり,Aはどちらかといえば,動きの悪い方であると見られていた(乙44・17項)。 以上から,環境設備課の課員は,Dについて,仕事ができ,指導方法も的確であるが,おおむね仕事に厳しい上司であるという印象を持っていた(乙72から75まで)。それゆえに,Dのことを煙たがっている課員が多かった(乙44・17項)。 もっとも,その指導方法は,原則として,どの課員に対しても同じであり,特定の課員を個人攻撃したり,課員の人格を否定するようなものではなかったと評価する課員が多かった(乙72から75まで)。 (イ)Dは,Nが,同人の日常業務に対する姿勢等に照らし,副長の立場に相応した役割と任務を果たしていないと考えていたため,格別厳しく指導することが多く,「チェックマンとして,書類をちゃんと見てくれないと,あなたがいる意味がない。」という趣旨の発言をしたこともあった(乙8・29項,証人D第10回・13頁)。また,Dは,時折,Nを経由せずに,燃料グループの課員を直接指導することがあった(乙74)。 このようなことから,Nは,Dが自分のことをないがしろにしていると感じ,Dに対する不満を募らせていった(乙10・31項)。そして,NとDとの間のあつれきが高じた結果,Nは,工事第一部長のところに赴き,自分を環境設備課から転出させてくれるようじか談判に及んだことがあった。また,Nは,Dとのあつれきが原因で,不眠の症状が出たため,産業医に相談し,その後病院で診察を受けたところ,軽いうつ状態であると診断され,薬剤の投与を受けた(乙10・33項,34項)。 なお,Nは,上記のような経緯があったためか,Dについて,極めて悪い印象を抱いている(乙10・35項)。 ウDのAに対する指導(ア)Dは,Aに対しても,基本的には,前記イ 0・33項,34項)。 なお,Nは,上記のような経緯があったためか,Dについて,極めて悪い印象を抱いている(乙10・35項)。 ウDのAに対する指導(ア)Dは,Aに対しても,基本的には,前記イで認定したとおりの指導方法を採っていた。Dは,Aについて,特に厳しく指導したり,指導の内容が多岐にわたる場合などには,Nも同席させて,指導を行っていたが,時には,A及びNのみならず,Oも同席させて,指導を行うこともあった(乙8・28項,証人D第10回・11頁)。 (イ)Dは,同人がAに対し指導・指摘した事項について,Aが改善を図ろうとしなかったため,同じ指摘事項について繰り返し指導しなければならないこともあり,そのようなときは,「この前も言ったでしょう。」という言い方をしたことがあった(乙8・28項,証人D第10回・11頁)。 (ウ)Dは,Aを指導した際,AがDの指導の内容について本当に理解したのか図りかねると感じたことがあった。Dが,Aに対し,「わかったか。」と尋ねると,Aは「はい。」とのみ答えるにとどまることが多かった。また,Dは,時折,Aに対する指導に関して,きつく言い過ぎたと感じることもあった(乙8・28項,証人D第10回・12頁,13頁)。 そこで,Dは,OやNに対し,Aが,Dの指導の内容を誤解したり,Dの指導に対し不満を抱くことがないよう,フォローすることを依頼したことがあった(乙8・28項,証人D第10回・12頁,13頁)。 なお,Dは,Aに関し,「もともと発言力の少ない人」と認識していた(証人D第10回・13頁)。 (エ)他方,Aは,原告に対して,Dの指導に関し,「また,課長に怒られちゃったよ。期待してくれているからだと思うけど。」とか,「おまえなんか,いてもいなくても同じだと言われた。」などと漏らしたことがあっ 他方,Aは,原告に対して,Dの指導に関し,「また,課長に怒られちゃったよ。期待してくれているからだと思うけど。」とか,「おまえなんか,いてもいなくても同じだと言われた。」などと漏らしたことがあった(甲3,原告本人・13頁)。 エDのAに対する評価等Dは,Aの仕事ぶりについて,努力はしていると感じていたが,さほど成果を上げているとは思っておらず,Aがした仕事の出来に関しても,余り優れたものではないと評価していた(乙8・22項)。また,Dは,Aについて,同じく主任の地位にあるPと比較して,仕事が遅く,仕事に対する集中力を欠いていると常々感じていた(乙8・23項,証人D第10回・33頁,34頁)。 オ「主任としての心構え」(ア)平成11年8月1日,Aが主任に昇格した際,Dは,Aに対し,主任としての自覚を促すため,主任としての心構えについて文書化して,提出するよう指示した(証人D第10回・7頁,8頁)。 これに対して,Aは,従前Dから注意又は指導された点も踏まえて,「主任としての心構え」と題する文書を作成し,Dに提出した(甲55,証人D第10回・7頁)。 上記文書の本文の内容は以下のとおりである(甲55)。 「主任に昇進させていただいたのは,上長が今後の奮起を期待してのことであり,その期待を裏切らないよう何事にも全力を尽くします。 現在の取組方では,業務が円滑に流れなかった。よって,意識改革のため,具体的に以下の行動をする。 発言は,簡単明瞭にする。 1つの業務が終われば,すぐ頭を切り換える(いつまでも引きずらない)電話は要点のみを伝え,まとまらない時は,考えを整理した後にかけ直す。 一張一弛,集中すべき時は集中し,心身を弛める(休める,遊ぶ)時は弛める。」(イ)Dは,上記文書を一読した後,これについてAと話し合った。その ,まとまらない時は,考えを整理した後にかけ直す。 一張一弛,集中すべき時は集中し,心身を弛める(休める,遊ぶ)時は弛める。」(イ)Dは,上記文書を一読した後,これについてAと話し合った。その際,Dは,D自身が感じたAの仕事上の問題点,主任として注意すべき点等について指摘し,Aに,「主任としての心構え」を書き直すよう指示した(甲56,証人D第10回・9頁)。 Aは,Dの指摘等を踏まえて,「主任としての心構え」と題する文書を書き直し,これをDに提出した(甲56,証人D第10回・9頁)。 Aが書き直した後の「主任としての心構え」と題する文書の本文の内容は,以下のとおりである(甲56)。 「1自己管理・個人に与えられた業務を完結させるため全力を尽くす。 ・問題解決が困難または,一度に業務が集中した場合は,早く上長に相談する。 ・上長に相談する場合は,まず自分の意見を述べる。また,上長からの指示は自分が納得出来るまで確認し,自分の判断として業務にあたる。 ・常に上長や同僚の目を意識し,恥ずかしくないような業務の取組方をする。 ・無駄をなくしたスマートな考え方を意識する。 …数多い業務を早く,確実に(考え込まずに,本質を見いだすことを考える) グループ意識・個人的な見栄を捨てる。人から相談を受け解らないときは,はっきりと解らないと言う。急ぐ場合は,知見の上の人に聞く。(先頭に立って恥をかく)また,後ほど自分の知識となるよう勉強する。 ・自分が現場で得た知識,先輩や自分より知見の上の人から得た知識は,後から来た人に伝える。(自分を育てて頂いた恩返しであり,グループ全体のレベルアップにより,自分も楽になるという認識を持つ。) 油,LNG関係の主任として・自分の油,LNG設備に対する知見の低さを自覚して,当面問題のある設備から, た恩返しであり,グループ全体のレベルアップにより,自分も楽になるという認識を持つ。) 油,LNG関係の主任として・自分の油,LNG設備に対する知見の低さを自覚して,当面問題のある設備から,完成図書,過去の技術報告書そして現場を見る。 ・自分の業務と各担当の業務,どれが欠けても自分の責任であると意識する。 …項目・スケジュール一覧表等で確認する。 私生活・仕事以外の趣味を増やす。(今年は将棋を覚える。)・家族を今以上に大切にする。(休みの日に,疲れた顔を子供に見せない。)」(ウ)Dは,平成10年8月にP,J及びLが主任に昇格した際にも,Aの場合と同様,「主任としての心構え」を作成,提出するよう指示した(甲57の3,乙72)。 もっとも,主任に昇格した者に「主任としての心構え」を作成させる という指導方法は,Dが独自に実施していたものであり,中部電力における一般的な指導方法ではなかった(甲57の3)。 カ結婚指輪に関するDの発言等(ア)Aは,原告と結婚した以降,常時左手の薬指に結婚指輪をはめていた(原告本人・8頁,9頁)。 (イ)Dは,前記エで認定したとおり,Aにつき,同じく主任の地位にあるPと比較して,仕事が遅く,仕事に対する集中力を欠いていると常々感じていた。また,Dは,職場において装身具等余分な物を身に着けることなどが,仕事に対する集中力低下の原因となると考えており,結婚指輪も余分な物の範ちゅうに入ると考えていた(証人D第10回・33頁から35頁まで)。なお,D自身は,結婚して以来,現場のみならず,現場以外の職場でも結婚指輪を身に着けた経験はなかった(証人D第10回・33頁)。 (ウ)Dは,平成11年10月末ころ,Aから,主任昇格後3か月を経た時点における業務の進め方等について意見を聴くため,環境設備課の も結婚指輪を身に着けた経験はなかった(証人D第10回・33頁)。 (ウ)Dは,平成11年10月末ころ,Aから,主任昇格後3か月を経た時点における業務の進め方等について意見を聴くため,環境設備課の一角に設けられた会議コーナーにおいて,Aと面談する機会を設けた。Dは,Aとの面談の際,燃料グループに所属するもう一人の主任であるPも同席させた(証人D第9回・13頁,14頁)。 上記面談の途中で,Aが偶然机の上に手を置いた際,Dは,Aの薬指にはめられていた結婚指輪に目をとめた。Dは,前記(イ)のとおり,Aにつき,仕事に対する集中力を欠いていると感じていたが,その原因は結婚指輪のような余分な物を身に着けている点にも起因するのではないかと思いついた(証人D第9回・15頁,弁論の全趣旨)。 そこで,Dは,Aに対し,Aの集中力低下の原因が結婚指輪ではないかと指摘した上,勤務中は,結婚指輪を外すよう指示した(証人D第9回・15頁,16頁)。 なお,環境設備課には,A以外にも結婚指輪を身に着けている課員がいたが,Dは,A以外の課員に,結婚指輪を外すよう指示したことはなかった(証人D第10回・32頁)。 (エ)これに対して,Aは,上記面談の場においては,Dに対し反論したり,反発するような態度を示すことはなかった(乙72)。 しかし,Aは,原告に対しては,「D課長に,目障りだから,そんなちゃらちゃらした物は着けるな,指輪は外せと言われている。」と述べたことがあった(甲7・3頁,原告本人・9頁)。 (オ)平成11年11月8日ころ,Aが自殺した後,半田警察署から環境設備課及び原告に対し,Aの遺体の身元確認のため,出頭するよう依頼があった。そこで,中部電力を代表してD及び主任二人が,遺族として原告が,それぞれ半田警察署に出頭した。その際,担当の警察官が,D 境設備課及び原告に対し,Aの遺体の身元確認のため,出頭するよう依頼があった。そこで,中部電力を代表してD及び主任二人が,遺族として原告が,それぞれ半田警察署に出頭した。その際,担当の警察官が,Dらに対し,遺留品を示し,さらに,遺体の身体的特徴についての確認を促したところ,Dは,Aが常時身に着けているはずの結婚指輪が,遺留品の中に見あたらず,遺体にも装着されている形跡がなかったことに気づいて,原告に対し,「A君は,いつも指輪をはめていましたよね。」と述べた(甲8・4頁,証人D第9回・18頁)。Aの結婚指輪は,原告の自宅にある小物入れの中にあった(甲49の1から3まで,原告本人・11頁)。 (カ)Aの死後,Dは,Hに対し,Dの指導や結婚指輪に関するやりとりがAの自殺の原因であるとすれば,身の振り方を考えなければならないという趣旨の発言をした(乙8・33項,証人D第10回・29頁)。 (キ)中部電力の火力部門では,火力発電所の設備に異物が混入するのを防止するため,平成15年4月1日に作成された「火力部門設備管理標準異物混入防止」に基づいて,異物混入防止対策を講じている(甲96,乙65の2,証人D第9回・17頁)。他方,燃料グループの課 員についても,異物混入防止対策の対象とはなるが,実際に異物混入防止が問題となる場面は,工事・修理現場における確認のときに限られる(乙65の2)。 キDのメンタルヘルスに関する知識Dは,平成10年及び平成11年に開催された中部電力のメンタルヘルスに関する講習会を受講しなかった。もっとも,Dは,中部電力が配布した「管理職のメンタルヘルスについて」という小冊子を受領しており,また,かつて同僚がうつ病にり患したことがあったため,うつ病にり患した者に対する対応として,休養を取らせることが最も適切だと が配布した「管理職のメンタルヘルスについて」という小冊子を受領しており,また,かつて同僚がうつ病にり患したことがあったため,うつ病にり患した者に対する対応として,休養を取らせることが最も適切だという程度の知識は有していた(証人D第9回・19頁,20頁,同第10回・43頁)。 (5)自殺に至るまでのAの言動等アAは,従前は,手帳に細かく予定や仕事のメモなどを記載していたが,平成11年9月中旬ころから,手帳にはほとんど記載をしなくなった(甲86)。 同年9月下旬ころ,Aは,原告に対し,「4時か5時ころになると仕事をしている夢を見て,目が覚める。毎日。汗をびっしょりかいて,どうきがする。1時間くらい寝れない。」などと訴えた。また,そのころのAは,「今でも忙しいのに,予算の時期にはもっと忙しくなる。どうなるんだ。」,「時間ばかりたって空回りしている。」などと漏らし,焦っている様子であった(甲3)。 新築した自宅に転居した後,Aと原告及び子供らとは,寝室を別にしていたが,同月ころ,Aが「一緒の部屋で寝たい。」と言い出したため,同じ部屋で就寝するようになった。さらに,Aは,原告に対し,「手を握ってほしい。目が覚めたときに,手を握るとまた寝れる。」などと訴えたこともあった(甲3)。 イAは,前記(1)ウで認定したとおり,平成11年9月までは,通勤の際, 自宅から常滑駅まで自転車を利用していたが,同年10月以降は,疲労を理由に,自家用車を利用するようになった。また,Aは,同月ころから,以前はほぼ毎日飲酒していたにもかかわらず,「疲れているから,飲む気がしないんだよね。」などと言って,飲酒しない日が増えていった(甲3)。 ウAの不眠症状について心配した原告が,勤務先である丙クリニックのT医師に相談したところ,T医師は,睡眠導入剤であるハ む気がしないんだよね。」などと言って,飲酒しない日が増えていった(甲3)。 ウAの不眠症状について心配した原告が,勤務先である丙クリニックのT医師に相談したところ,T医師は,睡眠導入剤であるハルシオンでも飲んで眠れば,熟睡できるのではないかと述べた。また,平成11年10月の終わりころ,原告が,友人の壬に対し,同様の相談を持ちかけたところ,壬は,余っていたハルシオン7錠を原告にくれた。そこで,原告は,Aに,最初のうちは,半錠ずつ服用させていたが,余り効き目がなかったことから,1錠ずつ服用させるようになった(甲3,乙68,原告本人・22頁から24頁まで)。 エ平成11年11月5日,Aは,原告に帰宅する旨の電話をかけた際,「土曜日(同月6日を指す。)も日曜日(同月7日を指す。)も仕事に行くから。」と告げた。そして,Aが帰宅した後,原告が,Aに対し,「どうしてそんなに仕事ばかり行くの。」と問いかけたにもかかわらず,Aは,ただ不機嫌そうに黙っているばかりであった(甲3,原告本人・5頁)。 同月6日,Aは,休日出勤したが,午後10時ころ,原告に電話をかけ,「仕事がたくさんあって,48時間やっても終わらないよ。」と述べた(甲3,原告本人・5頁,6頁)。 同月7日にも,Aは,休日出勤したが,午後6時30分ころ帰宅し,「明日,帰りが遅くなるとお祝いができないから,今日買ってきた。夕方だったので,花屋を3軒回ってきたよ。」と言って,原告の誕生日プレゼントとして買ってきた花束を原告に渡した。原告の誕生日は,11月8日であった。その際,原告が「仕事がたくさんあるって言ってたけど,大丈 夫なの。」と尋ねると,Aは,「割り切ったから。」と答え,それ以上仕事について話をすることはなかった(甲3,50の4,原告本人・7頁,12頁)。 オ(ア)Aは,平成 るって言ってたけど,大丈 夫なの。」と尋ねると,Aは,「割り切ったから。」と答え,それ以上仕事について話をすることはなかった(甲3,50の4,原告本人・7頁,12頁)。 オ(ア)Aは,平成11年11月8日午前6時15分ころ,いつもと同じように,自家用車で自宅を出発した(甲3)。 Aは,同日午前8時28分ころ,自分のPHSからOのPHSに電話をかけ,風邪気味で熱があるから今日は休みたい旨述べた。これに対し,Oは,O自身が風邪を引いて休暇を取っていたことから,Nに対して連絡をしておくよう指示した(甲29の1,113,証人O第9回・36頁)。もっとも,同日,Nは,娘の結婚式のため休暇を取っていた(乙10・8項)。 その後,Aは,火力センターに電話をかけ,電話を受けたPに対し,風邪を引いたため休暇を取る旨話した(甲29の1,乙27・23頁)。 (イ)同日午後1時11分ころ,通行人から,知多南部消防組合に対し,車が燃えている旨の通報があった。そこで,同日午後1時24分ころ,消防隊が愛知県知多郡U町V番の現場に到着したところ,Aの自家用車が黒煙を上げ激しく燃えており,車外にAが横たわっているのを発見した。Aは,その時点で,既に死亡していた(乙6の2)。その後,検案の結果,直接の死因については,Aが自家用車の中でガソリンをまいた上,これに着火してやけどを負って焼死したものとされた(乙5の3)。 なお,Aは,自殺するに当たり,遺書等は残していなかった(甲20)。 (ウ)原告は,同日午後2時ころ,原告の母から電話で呼ばれて勤務先から帰宅し,同人から,Aが死亡したことを告げられた。原告は,環境設備課に電話をかけ,Dが電話に出ると,Dに「あなたのせいで夫が死んだ。」という趣旨の発言をした(甲3)。 うつ病に関する医学的知見証拠(乙30 Aが死亡したことを告げられた。原告は,環境設備課に電話をかけ,Dが電話に出ると,Dに「あなたのせいで夫が死んだ。」という趣旨の発言をした(甲3)。 うつ病に関する医学的知見証拠(乙30,33,35,36,37,54,55,62)によれば,以下の事実が認められる。 (1)うつ病の症状うつ病は感情障害の一種で,うつ状態を特徴とし,抑うつ気分,思考障害,意欲・行為障害及び自律神経機能障害を中心とする身体症状を伴う。 うつ病の中核的症状は,抑うつ気分,悲哀感であるが,不安焦燥感を強く表す場合があり,喜怒哀楽の感情が薄れるなど離人症の症状を呈する場合もある。また,自我感情も低下し,自己を過小評価し,強い劣等感を抱き,悲観的,自責的,絶望的になる。 うつ病患者には,判断ができない,決心がつかないなど思考制止がみられ,思考内容も,将来に希望がなく生きていても意味がないといった悲観的なものとなる。さらに,活動意欲が低下し,行動の制止が極度に強くなると,ぼうことして自発的な動きがなく,話しかけても応答がないうつ病性昏迷の状態になる。 身体症状として,最も多いのは不眠等の睡眠障害であり,その他,食欲低下,口渇,夜間睡眠時の発汗,月経不順,頭重,頭部熱感,肩こり,手足のしびれ,けん怠感,寒け等がこれに含まれる。 これらの症状については,朝のうちは強く,夕方にかけて軽快するという日内変動が認められる場合が多い。また,うつ病患者は,自殺企図を有することが多いとされるが,自殺企図は,うつ状態が最重症の時期よりも,最重症になる前の時期や回復期に多く認められる。 (2)うつ病の分類等判断指針では,精神障害等の発病の有無,発病時期及び疾患名の判断に当たっては,ICD-10作成の専門家チームによるガイドラインに基づき行うものとされている。 ガイドラ (2)うつ病の分類等判断指針では,精神障害等の発病の有無,発病時期及び疾患名の判断に当たっては,ICD-10作成の専門家チームによるガイドラインに基づき行うものとされている。 ガイドラインは,「F32うつ病エピソード」の分類における典型的な抑うつのエピソードとして,①抑うつ気分,②興味と喜びの喪失,③活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少を挙げ,その他の一般的症状として,④集中力と注意力の減退,⑤自己評価と自信の低下,⑥罪責感と無価値感,⑦将来に対する希望のない悲観的な見方,⑧自傷あるいは自殺の観念や行為,⑨睡眠障害,⑩食欲不振を挙げている。 そして,上記症状のうち,①から③までの典型的症状のうち2個及びそれ以外の症状のうちの少なくとも2個が存在する場合を軽症うつ病エピソード,①から③までの典型的症状のうち2個及びその他の症状のうち少なくとも3個(4個が望ましい。)が存在する場合を中等症うつ病エピソード,①から③までの症状すべて及びその他の症状のうち少なくとも4個(ただし,そのうち幾つかが重症でなければならない。)が存在する場合を重症うつ病エピソードと診断するものとされている。それぞれの診断において,各症状の持続期間は約2週間とされているが,重度の急性症状を呈する場合は,2週間未満でも重症うつ病の診断をすることを妨げないとされている。 (3)うつ病の発症原因等アうつ病発症のメカニズムについては,いまだ十分解明されているとはいい難く,決定的な見解が定まっているわけでもない。ただし,うつ病の発症には,単一の要因ではなく,素因,精神的要因(人格的要因,幼少時期の生育環境等による慢性ストレス,成熟後の心理的かっとう,社会的要因等),身体的要因(身体疾患,過労,月経・出産等の生殖過程,思春期・更年期・老年などの発達過程 因,精神的要因(人格的要因,幼少時期の生育環境等による慢性ストレス,成熟後の心理的かっとう,社会的要因等),身体的要因(身体疾患,過労,月経・出産等の生殖過程,思春期・更年期・老年などの発達過程に関連する体内環境の変化等)の複数の要因が関与するという見解が有力に主張されている。 イうつ病発症に関する精神的要因のうち,うつ病になりやすい性格(病前性格)として,以下のものが挙げられることが多い。 (ア)執着性格 執着性格の基本的特徴は,一度起こった感情が正常者のように時とともに冷却することがなく,長くその強度を持続し,あるいはむしろ増強するという傾向を有することである。具体的には,仕事熱心,凝り性,徹底的,正直,き帳面,正義感や義務責任感が強い,ごまかしやずぼらができないなどの性格である。また,執着性格の人は,過労に陥っても,休養生活に入ることができず,疲労に抵抗して活動を続けるため,ますます過労に陥るという悪循環が生じ,その疲労の頂点において,うつ病を発症するとされる。 (イ)メランコリー親和型仕事の上では,正確,綿密,勤勉,良心的で責任感が強く,対人関係では,他人との衝突や摩擦を避け他人に心から尽くそうとする傾向を示し,道徳的には過度の良心的傾向を示すなど,一定の秩序に固着して初めて安定した存在として生活を営むことができる。他方,仕事が増えた場合,仕事の質・量をいずれも上昇させようとするため,ざ折しやすく,近親者の死や別離が直ちに生きがいの喪失につながるなど,柔軟性に乏しい。 したがって,メランコリー親和型の人は,自己が慣れ親しんだ生活の秩序が何らかの原因(身体疾患,転職,昇進,退職,転居等)で大幅に乱されると,秩序の限界内に閉じこめられ,限界を乗り越え自己の秩序を実現することができなくなり,また,自己に対する要求水準 んだ生活の秩序が何らかの原因(身体疾患,転職,昇進,退職,転居等)で大幅に乱されると,秩序の限界内に閉じこめられ,限界を乗り越え自己の秩序を実現することができなくなり,また,自己に対する要求水準が高すぎるため,ざ折した場合などには,将来が閉ざされ過去のことばかり思い悩むといった状況に陥りやすい。 Aのうつ病発症等の業務起因性に関する医師の意見の要旨(1)愛知労働局地方労災医員協議会精神障害専門部会の意見書(乙39)Aは,平成11年9月下旬ころに,ICD-10の「F32うつ病エピソード」を発病したと判断される。 しかし,発病前おおむね6か月間に精神障害発病に関与したと考えられる業務による出来事は,Aが平成11年8月1日付けで主任に昇格したという出来事のみであり,これについて心理的負荷の強度を修正する要素は認められないから,これによる心理的負荷の強度は「Ⅰ」である。他方,AとDとの間にトラブルが存在した事実は確認することはできない。 Aが事業場に申告した時間外労働時間以外にも事業場内に滞在していたものと推察できるが,仮に,Aが原告の主張する長時間労働に従事していたとしても,生理的に必要最小限の睡眠を確保できないほどの極度の長時間労働とは認められない。また,仕事の質及び仕事の責任の変化等による心理的負荷も認められない。 以上によれば,Aについて,出来事「自分の昇格・昇進があった」と認められ,このことのみであれば心理的負荷の総合評価は「弱」と評価すべきであるが,所定休日に出社した事実及び長時間事業場内に滞在していた事実が認められることから,総合評価は「中等」度と評価するのが適当である。 他方,業務以外の心理的負荷及び個体側要因は格別認められないが,上記のとおり業務による心理的負荷は「中等」度と総合評価されることから,Aのうつ病 から,総合評価は「中等」度と評価するのが適当である。 他方,業務以外の心理的負荷及び個体側要因は格別認められないが,上記のとおり業務による心理的負荷は「中等」度と総合評価されることから,Aのうつ病の発病は,業務上とは認められない。 (2)庚医師の意見書(甲44)及び補充意見書(甲135)Aは,生来健康で,平成11年8月の主任昇格まで順調に公私の生活を送ってきた。また,Aは,明るく,人当たりもよく,誠実な努力家であった。 しかるに,Aは,主任昇格以降,Dのしゅん烈な指導の下,労働時間は漸増し,同年9月の2回の泊まり込み勤務等により,心身の疲労が蓄積した結果,同月下旬うつ病を発症したと判断する。その後,Aは,100時間を超える時間外労働により,同年10月末にはかなりの疲弊状態に陥り,Dのいじめ的な心理的プレッシャーの下で自責苦もんの感情が強まり,同年11月8日自殺に至ったと推定される。 Aのうつ病発症の業務起因性についてみるに,長時間労働,業務の困難性,上司によるいじめ(特にプライドを傷つけ,結婚指輪を外すよう強要したこと)等は業務によるストレスと評価され得る。 以上によれば,Aのうつ病発症及び増悪と業務によるストレスの増大は対応していることから,Aのうつ病発症及び増悪の業務起因性は明らかである。 なお,うつ病の経過は多様で,右肩上がりの増悪を論ずるのは無意味であり,自然経過を超えた増悪という視点も意味がない。うつ病の症状がいかなる特徴をもって深まっていったのかを個別的に認定すれば十分である。 (3)戊医師の意見書(乙76)Aの時間外労働時間数は平成11年8月から順次増加しており,時間外職場滞在時間は,同年10月及び同年11月には,100時間を超えている。 しかし,同年10月及び同年11月のAの業務の絶対量は,他の月と比べて実質的に大 数は平成11年8月から順次増加しており,時間外職場滞在時間は,同年10月及び同年11月には,100時間を超えている。 しかし,同年10月及び同年11月のAの業務の絶対量は,他の月と比べて実質的に大幅に増大しているとは考えられない。 したがって,うつ病発症後,Aが職場に長時間滞在していたのは,過重な業務によるものではなく,うつ病の症状の結果であったと推定され,実際の業務量が客観的に過重なものであったとは考えられない。 また,Dから受けた被害感情のほとんどが,うつ病発症後に集中している事実に照らせば,DとAとの間の潜在的なあつれきが顕在化した主要な原因は,うつ病発症によるAのストレス耐性の低下であり,うつ病発症以前は,比較的平静に受け流すことができたDのしっ責や注意が,うつ病発症による耐性の極端な低下によって耐え難くなっていったと考えられる。 以上によれば,Aのうつ病発症後のうつ病の増悪は,うつ病そのものの経過によるものであって,業務に起因するものとみなすことはできない。 (4)己医師の意見書(乙82)原告の供述等に照らせば,Aにつき,平成11年8月には,うつ病の兆しが潜在していた可能性が高く,同年9月中旬から同月下旬にはうつ病の症状 が顕在化し,徐々に進行したと考えられる。 Aが主任に昇格したという出来事は,判断指針別表1の「自分の昇格・昇進があった」に該当し,心理的負荷の強度は「Ⅰ」である。 ところで,Aの在社時間を労働時間と仮定した場合,Aが主任に昇格した同年8月から同年11月までの時間外労働時間及び休日出勤日数は,それぞれ8月が86.4時間・3日,9月が93.95時間・6日,10月が117.2時間・7日,11月が39.87時間・3日であったと推察できる。 しかしながら,Aの業務内容・業務量と事業場内に滞在していた時間との間に時間 時間・3日,9月が93.95時間・6日,10月が117.2時間・7日,11月が39.87時間・3日であったと推察できる。 しかしながら,Aの業務内容・業務量と事業場内に滞在していた時間との間に時間的かい離がありすぎることに照らせば,上記のように長時間事業場内に滞在して業務を遂行しなければならない状況であったと認めることはできない。 そうすると,Aは,うつ病にり患したがために,就業困難の状態に陥っていた可能性が高く,うつ病の増悪とともに,更に業務遂行不能の状態が増強され,だれかに助けを求めることもなく,結果的に「長時間の作業→疲弊→〈悪循環〉→閉そく状況」に陥り,自死を決行するに至ったと考えられる。 以上によれば,出来事に伴う変化等を検討すると,所定休日の出社及び業務遂行が不能に陥った上,長時間,業務に従事した事実がうつ病発症後に認められることから,総合評価は「中等」度とするのが相当である。 他方,うつ病の潜在発症の時期である同年8月中旬以降のAの状況は,うつ病にり患したがために起こったことであり,Aが発症後に長時間労働に従事した事実が,うつ病の自然増悪の過程を早めたとまでは言い切れない。また,Dとの対人かっとうがAの中で存在していたとしても,うつ病と自然増悪ひいては自殺との間に相当因果関係があったとは断言できない。 なお,Aの場合は,うつ病がひどく悪化したという意味での「うつ病の増悪」とは認められず,自然増悪であり,Aがうつ病の治療を受けていなかったことが,自殺につながったと考えられる。 争点について(1)業務起因性の判断基準についてア労災保険給付の対象となる業務上の疾病については,労働基準法75条2項に基づいて定められた労働基準法施行規則35条により同規則の別表第1の2に列挙されており,精神疾患であるうつ病の発症が労災 てア労災保険給付の対象となる業務上の疾病については,労働基準法75条2項に基づいて定められた労働基準法施行規則35条により同規則の別表第1の2に列挙されており,精神疾患であるうつ病の発症が労災保険給付の対象となるためには,同別表第9号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当することが必要である。 そして,業務と傷病等との間に業務起因性があるというためには,労災補償制度の趣旨(労働者が従事した業務に内在又は通常随伴する危険が発現して労働災害を生じた場合に,使用者の過失の有無を問わず,被災労働者の損害を填補するとともに,被災労働者及びその遺族の生活を補償するものである。)に照らせば,単に当該業務と傷病等との間に条件関係が存在するのみならず,社会通念上,業務に内在又は通常随伴する危険の現実化としての死傷病等が発生したと法的に評価されること,すなわち相当因果関係の存在が必要であると解するのが相当である。 イ精神疾患の発症や増悪には,様々な要因が複雑に影響し合っていると考えられているが,当該業務と精神疾患の発症や増悪との間に相当因果関係が肯定されるためには,単に業務が他の原因と共働して精神疾患を発症又は増悪させた原因であると認められるだけでは足りず,当該業務自体が,社会通念上,当該精神疾患を発症又は増悪させる一定程度以上の危険性を内在又は随伴していることが必要であると解するのが相当である。 そして,うつ病発症のメカニズムについては,いまだ十分解明されてはいないが,現在の医学的知見によれば,環境由来のストレス(業務上又は業務以外の心理的負荷)と個体側の反応性,ぜい弱性(個体側の要因)との関係で精神破たんが生じるか否かが決まり,ストレスが非常に強ければ,個体側のぜい弱性が小さくても精神障害が起こるし,反対に個体側のぜい 弱性 荷)と個体側の反応性,ぜい弱性(個体側の要因)との関係で精神破たんが生じるか否かが決まり,ストレスが非常に強ければ,個体側のぜい弱性が小さくても精神障害が起こるし,反対に個体側のぜい 弱性が大きければ,ストレスが小さくても破たんが生ずるとする「ストレス-ぜい弱性」理論が合理的であると認められる。 ウもっとも,ストレスと個体側の反応性,ぜい弱性との関係で精神破たんが生じるか否かが決まるといっても,両者の関係やそれぞれの要素がどのように関係しているのかについては,いまだ医学的に解明されているわけではない。 したがって,業務とうつ病の発症,増悪との間の相当因果関係の存否を判断するに当たっては,うつ病に関する医学的知見を踏まえて,発症前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心身的負荷の有無や程度,さらには,当該労働者の基礎疾患等の身体的要因や,うつ病に親和的な性格等の個体側の要因等を具体的かつ総合的に検討し,社会通念に照らして判断するのが相当である。 なお,判断指針は,各分野の専門家による専門検討会報告書に基づき,医学的知見に沿って作成されたもので,一定の合理性があることは認められるものの,あてはめや評価に当たっては幅のある判断を加えて行うものであるところ,当該労働者が置かれた具体的な立場や状況等を十分しんしゃくして適正に心理的負荷の強度を評価するに足りるだけの明確な基準となっているとするには,いまだ十分とはいえず,うつ病の業務起因性が争われた訴訟において,判断指針の基準のみをもって判断するのが相当であるとまではいえない。 また,相当因果関係の判断基準である,社会通念上,当該精神疾患を発症させる一定以上の危険性の有無については,同種労働者(職種,職場における地位や年齢,経験等が類似する者で,業務の軽減措置を受けることな ,相当因果関係の判断基準である,社会通念上,当該精神疾患を発症させる一定以上の危険性の有無については,同種労働者(職種,職場における地位や年齢,経験等が類似する者で,業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者)の中でその性格傾向が最もぜい弱である者(ただし,同種労働者の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲内の者)を基準とするのが相当である。 エなお,労災保険法12条の2の2第1項は,労働者の故意による事故を労災保険の給付の対象から除外しているが,その趣旨は,業務とかかわりのない労働者の自由な意思によって発生した事故については,業務との因果関係が中断される結果,業務起因性がないことを確認的に示したものと解するのが相当である。それゆえ,自殺行為のように外形的に労働者の意思的行為とみられる行為によって事故が発生した場合であっても,その行為が業務に起因して発生したうつ病の症状として発現したと認められる場合には,労働者の自由な意思に基づく行為とはいえないから,上記条項の「故意」には該当しないものと解される。そして,判断指針においては,業務による心理的負荷により精神障害が発病したと認められる者が自殺を図った場合には,精神障害によって正常の認識,行為選択能力が著しく阻害され,又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し,原則として業務起因性を認めるものとしているが,この考え方は妥当なものである。 (2)Aに対する業務上の出来事による心身的負荷についてア前記認定事実によれば,Aは,平成11年9月下旬ころうつ病を発症し,これによる心神耗弱状態の下で自殺に及んだものであり,中部電力におけるAの業務が上記うつ病発症の要因の一つになっていたこと(すなわち,業務と上 によれば,Aは,平成11年9月下旬ころうつ病を発症し,これによる心神耗弱状態の下で自殺に及んだものであり,中部電力におけるAの業務が上記うつ病発症の要因の一つになっていたこと(すなわち,業務と上記うつ病発症との間に条件関係が存在していたこと)自体は明らかである。 そこで,業務上の出来事がAの心身にいかなる負荷を与えたかについて検討する必要があるところ,業務の過重性については,心身的負荷の性質上,本人が置かれた立場や状況を十分しんしゃくして出来事の持つ意味合いを把握した上で,心身的負荷の強度を客観的見地から評価することが必要である。 イAの置かれていた状況等について (ア)Aは,中部電力に入社以降一貫して火力発電所等の現場における技術職としての業務に従事してきたところ,平成9年8月1日,火力発電所の燃料設備の保守関連業務を統括する環境設備課燃料グループに配属され,一転してデスクワーク中心の業務に従事することになった。もっとも,燃料グループの業務を遂行するためには,ある程度の現場における保修業務の経験が不可欠であり,その意味においては,Aが燃料グループに配属されたのは格別異例な人員配置ではなく,また,一般的には,現場における業務から燃料グループにおける業務へ,特段の支障なく,順当に移行できるはずであった。 しかしながら,Aは,自らの担当業務に関し,考え込んでしまったり,自分で抱え込んでしまう傾向があり,殊に,検討件名の取り掛かりの段階においては,その方向性について思い悩んでしまうことが多く,その結果,担当業務を要領よくこなすことができないこともままあった。 この点,確かに,燃料グループの主担当業務である検討件名,工事件名等は,長期的な業務計画に基づいて実施されるものであり,必ずしも締切りや期限に追われるような性質のものではな きないこともままあった。 この点,確かに,燃料グループの主担当業務である検討件名,工事件名等は,長期的な業務計画に基づいて実施されるものであり,必ずしも締切りや期限に追われるような性質のものではなかったが,Aの仕事の進め方には上記のような問題点があったため,担当業務の進ちょく状況は,上記の担当業務の性質を考慮してもなお,必ずしもはかばかしいものではなかったという状況が常態として存在していた。 それゆえ,仕事を要領よくこなすことができる他の担当者等にとっては,さほど困難性を感じない業務についてさえも,Aは,要領よくこなすことができなかった。現に,平成11年度上期の人事評定でも,Aに対する評価は極めて低かった(Aに対する評価が低かったことは,平成11年度上期に限らず,それ以前にも同様であったことがうかがわれる。)。 他方,まじめで責任感が強いといったAの性格に照らせば,Aが上記 のような自らの業務上の問題点や自己に対する会社の評価等について無自覚であったとは考えにくく,むしろ,Aは,自責感を覚え,かつ,自信を喪失していたものと推認することができる。 以上に照らせば,Aは,仕事の進め方についての問題点や自らの業務遂行能力を十分自覚していたものであり,Aがまじめで責任感が強い性格であったからこそより一層,Aが燃料グループにおける日常的な担当業務に従事することによって,決して強度のものではないとしても,心理的負荷を募らせていった状況に置かれていたことがうかがえる。 (イ)Dは,平成10年7月1日に環境設備課の課長となったが,同人が,現場の業務等について精通しており,部下である課員に対しても的確な指導ができたこと,Dに対し好意的な評価をする部下も存在していることなどに照らせば,同人が仕事ができる有能な管理職であったということはできる。 について精通しており,部下である課員に対しても的確な指導ができたこと,Dに対し好意的な評価をする部下も存在していることなどに照らせば,同人が仕事ができる有能な管理職であったということはできる。 もっとも,Dの指導方法は,特定の課員を個人攻撃したり,課員の人格を否定するようなものではなかったものの,課員にとって概して厳しいものであったと評価できる。また,Dは,課員が複数回同じ過ちを繰り返した場合や,課員がそれぞれの立場に応じた役割等を果たすよう努力していないと考えた場合には,格別厳しい指導をすることがあった。 このようなDの指導方法は,Dの直せつ的な話し方等と相まって,時に部下との間であつれきを生じさせることもあった。 他方,Aは,前記のとおり,自らの担当業務について,考え込んでしまったり,自分で抱え込んでしまう傾向があったため,担当業務を要領よくこなすことができず,Aに対する人事評定の結果も芳しいものではなかった。 上記のようなDとAの業務遂行能力の差違等に照らせば,Dがさほど困難ではないと考える業務ですら,Aは,要領よくこなすことができな かったと推認できる(DのAに対する評価等もこれを裏付けている。)。 そして,上記のようなAの仕事ぶり等にかんがみれば,Dの立場からは無理からぬところではあるものの,Aを指導する頻度も相当程度多く,その内容も厳しいものであったと推認することができる。また,Dは,時として,Aに対し,Aの心情等について配慮に欠けるような言い方で,Aを指導することもあったことがうかがわれる。現に,Dも,自らのAに対する指導に関して,きつく言い過ぎたと感じることもあったことを自覚している。 ところで,Dは,Aを指導した際,これに対するAの反応が鈍かったという印象を有していたようではあるが,Aの前記性格等に照らせば, に関して,きつく言い過ぎたと感じることもあったことを自覚している。 ところで,Dは,Aを指導した際,これに対するAの反応が鈍かったという印象を有していたようではあるが,Aの前記性格等に照らせば,AがDの指導を真しに受け取らず,聞き流していたものとは到底考えにくい。 むしろ,Aは,前記のとおり,業務遂行能力上の問題点を有していたため,Dの的確な指導を受けても,Aの性格及び能力的な問題が原因で,Dの指導に沿って業務上の問題を解決したり,要領よく仕事を進めることができなかったことから,Dから,同じ事項について再々指導を受けるなどしたことがうかがわれるところ,前記のとおり,Aは,自らの業務遂行能力上の問題点につき自覚的であったため,要領よく仕事をこなすことができない原因が専ら自己の責任であると考え,それが,仕事に対する自信の喪失につながり,Aの性格等とも相まって,Dの指導等に対し,萎縮的な態度を示すようになっていったと推認することができる。 上記に照らせば,DのAに対する日常的な業務上の指導等も,徐々にではあるが継続的に,Aに対し心理的負荷を及ぼしていったことがうかがわれる。 (ウ)以上によれば,業務上の出来事がAの心身にいかなる負荷を与えたかについて検討するに当たり,Aの担当業務の過重性等について検討す る際には,前記(ア)及び(イ)で説示した,環境設備課燃料グループに配属された以降におけるAの置かれていた状況等についても十分しんしゃくする必要があると解するのが相当である。 そして,上記のAの性格,業務遂行能力,同人が置かれていた状況等に照らせば,Aは,同種労働者(職種,職場における地位や年齢,経験等が類似する者で,業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者)の中でその性格傾向が最もぜい弱である者(ただし 照らせば,Aは,同種労働者(職種,職場における地位や年齢,経験等が類似する者で,業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者)の中でその性格傾向が最もぜい弱である者(ただし,同種労働者の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲内の者)に極めて近似する性格傾向を有する者であったということができる。 ウAの主任への昇格について(ア)前記争いのない事実等(2)のとおり,Aは,平成11年8月1日,環境設備課の主任に昇格したが,前記1(2)イ(ウ)で認定したとおり,同日実施された人事異動に伴う業務分担制度の変更によって,燃料油・LNG関連業務のラインの主任となった。もっとも,業務の効率化の観点から,燃料グループの担当者は,同月以降も,同年7月まで担当していた工事件名及び検討件名を担当することになったことから,主任以下の担当者の主たる業務である工事件名及び検討件名に関しては,Aの担当業務に目立った変動はなかった。また,主任としての業務の増加もほとんど認められなかった。 (イ)しかしながら,主任への昇格という出来事が,Aを奮起させ,仕事の上での励みになった面があったことは否めないものの,他方で,前記のとおり,Aが自らの業務遂行能力上の問題点について自覚的であったことなどに照らせば,昇格したことそれ自体が,Aに対し,相当程度の心理的負荷を及ぼしたことが容易にうかがわれる。 その上,前記1(4)オで認定したとおり,Aが主任に昇格した際,Dは,Aに対し,主任としての自覚を促すため,「主任としての心構え」 と題する文書を作成・提出するよう指導し,さらに,Aが同文書を提出した後,Aと話し合い,同文書を書き直すよう指示したと認められるところ,その内容等に照らせば,これを作成する過程で,DがAに対し,仕事に対する初歩的な基本 出するよう指導し,さらに,Aが同文書を提出した後,Aと話し合い,同文書を書き直すよう指示したと認められるところ,その内容等に照らせば,これを作成する過程で,DがAに対し,仕事に対する初歩的な基本姿勢や業務遂行上の問題点等について事細かに指摘したことが推認でき,Aは,上記文書の作成・提出する過程で,主任という立場の責任の重さなどを自覚し,他方で,自己の業務遂行能力と主任に要求される能力にかい離があると認識した結果,より一層の心理的重圧を覚えたと推認することができる。 なお,被告は,上記文書の作成・提出が,Aに心理的負担を与えるようなものではなかった旨主張する。この点,確かに,Dは,Aのみならず,前年度に主任に昇格した課員に対しても,同様の指導をした事実が認められる。しかしながら,Dとしては,主任に昇格した者につき,主任としての自覚や奮起を促す意図で実施していたとしても,「主任としての心構え」と題する文書の作成・提出は,飽くまでD独自の指導方法であり,すべての主任昇格者にとって効果的な指導方法であったとは認められないばかりか,内容面についても,主任昇格者の仕事に対するきょう持や生活信条等を不用意に傷つけかねない危険をはらんでいるものであると認められる。したがって,Aのように業務遂行上の問題点を抱えており,仕事に対する自信を喪失した者にとっては,かえって心理的重圧を与えるだけの結果になりかねないものと認められることから,被告の上記主張は採用することができない。 (ウ)以上によれば,Aが主任に昇格した事実は,Dの指導方法等とも相まって,Aに対し,相当程度の心理的負荷を及ぼしたと認められる。 エAの担当業務について(ア)前記1(2)オで認定したとおり,平成11年度当初に,Oが,Aの実務経験等を考慮した結果,Aに対する業務配分を決定した ,相当程度の心理的負荷を及ぼしたと認められる。 エAの担当業務について(ア)前記1(2)オで認定したとおり,平成11年度当初に,Oが,Aの実務経験等を考慮した結果,Aに対する業務配分を決定したこと,これ により,Aは,7件の工事件名(ただし,「燃料油タンクヤード排水設備設置」の工事は取りやめとなった。)並びに「石炭設備の信頼度確保」及び「燃料油小口径配管の管理」という検討件名の担当者とされたこと,Aは,平成11年度当初には予定されていなかった「知多LNG受入設備の改造」及び「LNG用ローディングアームの定期点検の体制変更」という検討件名についても関与することになった事実が認められる。 (イ)もっとも,原告が,特にAに対し心理的負荷を及ぼす担当業務として掲げた上記4件の検討件名に関する業務の内容について検討するに,まず,「石炭設備の信頼度確保」という検討件名については,平成11年9月ころ,検討件名自体が中止されたと認められ,同月までの業務についても,Aは,Oの助言を受けながら業務を遂行しており,格別業務遂行上の障害が発生したという事実等も認められない。 次に,「燃料油小口径配管の管理」という検討件名につき,AがOの助言を参考にして,これに関する業務に取り掛かったこと,平成11年6月ころ,品管からの指示事項についての検討を,上記件名と併せて検討・実施することに決定したことに伴い,当初のスケジュールを変更して,同年11月ころまでに,上記検討件名についてまとめることができるよう計画を変更したことが認められるところ,Aは,上記検討件名につき,同年9月中旬ころ,いったんは点検の間隔を短縮化する方向性での検討結果を提示したものの,Dの指示に基づき,他部署の検討結果の動向等を踏まえた結果,当初の検討結果を変更し,燃料グループとして, つき,同年9月中旬ころ,いったんは点検の間隔を短縮化する方向性での検討結果を提示したものの,Dの指示に基づき,他部署の検討結果の動向等を踏まえた結果,当初の検討結果を変更し,燃料グループとして,現状維持の方向性で結論を出すことになったと認められる。かかる事実に照らせば,原告が主張するように,上記件名に関する方向性・方針が定まっていなかったとまでは認められない。 また,「知多LNG受入設備の改造」という検討件名について,技術 検討には大変な困難を伴う性質の件名であったことから,技術検討に関しては当初からメーカーに依頼することとし,燃料グループにおいては,ほとんど技術検討をする必要がなかったこと,メーカーから示された3つの対策案について,環境設備課としての最適な対策案を主として選択したのはOであったこと,Aが従事した予算編成作業も,メーカーが提出した仮見積書の金額を検証しさえすればよかったことに照らせば,上記件名は,原告が主張するように,極めて困難な技術検討をしなければならないというものではなく,また,Aが一から予算の積算作業をする必要もなかったと認めることができる。 さらに,「LNG用ローディングアームの定期点検の体制変更」という検討件名に至っては,D自身が関係各社との交渉や検討に当たり,Aはこれに関する方向性・対応策についてまとめた文書を清書するなどの作業に従事したにすぎなかったと認められる。 上記4件名以外の業務についても,その業務量や業務の内容に照らし,さほど困難性を伴う業務であったと認めることはできない。 (ウ)以上によれば,前記(イ)の4件名を始めとするAの担当業務は,その業務量や業務の内容だけに着目すれば,量的にも質的にもさほど困難又は複雑な性質の業務であったとは認められず,Aに対して大きな心身的負荷を与えるような 記(イ)の4件名を始めとするAの担当業務は,その業務量や業務の内容だけに着目すれば,量的にも質的にもさほど困難又は複雑な性質の業務であったとは認められず,Aに対して大きな心身的負荷を与えるようなものとは認め難い。 (エ)しかしながら,前記イで説示したとおり,Aの担当業務の過重性等について検討する際には,環境設備課燃料グループに配属された以降におけるAの置かれていた状況等についても十分しんしゃくする必要があると解するのが相当である。 そこで検討するに,前記認定のとおり,Aは業務遂行上の問題点を抱えており,要領よく仕事をこなすことができなかったこと,現に,「石炭設備の信頼度確保」及び「燃料油小口径配管の管理」という検討件名 については,仕事の取り掛かりの時点で,検討の進め方・方向性について判断しかね,Oの助言を得て初めて検討を進めることができたこと,Dの指導等に対し萎縮的な態度を示すようになったことなどに後記のAの時間外労働時間数を併せ考慮すれば,Aの担当業務は,Aに対し,相当程度の心身的負荷を及ぼしていたものと推認することができる。 オAの時間外労働時間について(ア)前記1で認定したところによれば,平成11年6月から同年11月までの時間外労働時間数については,「休日・時間外入出管理表」の記載,「休日・時間外入出管理表(巡視用)」の記載,Aが使用していたPHSの発信日時及び発信場所等の資料に基づき,客観的に推認するのが相当である。そして,証拠(甲123,124,126,乙20,21)によれば,Aの上記期間の時間外労働時間数は別紙7「Aの時間外労働時間(平成11年6月1日~同年11月7日)」のとおりと推認でき,各月の合計時間外労働時間数は以下のとおりとなると認められる。 a平成11年6月51時間17分b同年7月61時 Aの時間外労働時間(平成11年6月1日~同年11月7日)」のとおりと推認でき,各月の合計時間外労働時間数は以下のとおりとなると認められる。 a平成11年6月51時間17分b同年7月61時間44分c同年8月86時間24分d同年9月93時間57分e同年10月117時間12分f同年11月39時間52分(イ)これに対して,原告は,Aの時間外労働時間数は,上記認定に係る時間よりも多かった旨主張するが,証拠(甲51,乙21,22)によれば,時間外労働時間数の推定に当たり明らかに不適当なデータ等を根拠にAの時間外労働時間数を算出している部分もあるため,原告の主張は採用することができない。むしろ,証拠(乙20,弁論の全趣旨)によれば,被告が推定した時間外労働時間数(もっとも,被告は在社時間 にすぎないと主張している。)の方が,相応の根拠に基づく合理性のあるものであるというべきである。 もっとも,被告は,Aの在社時間に見合うだけの業務が客観的に存在したとは到底認められないことから,Aの在社時間のすべてが労働時間であったとは認められないと主張するところ,Aの性格や業務遂行能力に照らせば,被告が主張するように在社時間のすべてが労働時間であったとはいえないと断言することはできず,その他Aの在社時間が労働時間であることを否定する合理的な証拠も認められないことに照らせば,Aの在社時間を時間外労働時間と認定することが最も合理的であるということができるから,被告の上記主張は採用することができない。 (ウ)前記(ア)のAの時間外労働時間数に照らせば,平成11年6月及び同年7月の時間外労働時間数は,比較的落ち着いているものの,徐々に増加傾向を示し,Aが主任に昇格した同年8月以降は殊に増加が著しく,死亡直前の同年11月には,同月 間数に照らせば,平成11年6月及び同年7月の時間外労働時間数は,比較的落ち着いているものの,徐々に増加傾向を示し,Aが主任に昇格した同年8月以降は殊に増加が著しく,死亡直前の同年11月には,同月1日から同月7日までのわずか7日間で39時間52分に上ったものと認められる。 以上によれば,Aが,平成11年6月以降,徐々に増加傾向にあった時間外労働に従事し,とりわけ,Aが主任に昇格した同年8月以降は1か月80時間を超える時間外労働に従事したことによって,精神的・肉体的な疲労を蓄積させ,強い心身的負荷を受けたと認めることができる。 (エ)被告は,Aは平成11年9月下旬ころにうつ病を発症したところ,Aが長時間にわたり在社していたのは,うつ病により,同じ業務をこなすにしても従前よりも多くの時間を費やしたからであり,また,不安感,焦燥感,自責感にかられ,客観的には必要がないのに,休日出勤や長時間残業をしなければならないという主観的な念慮にかられたことの結果であるから,同月以降のAの在社時間から,客観的な業務量を推認し,業務過重性に結びつけることは相当でないと主張する。 確かに,前記1で認定した事実及び前記2のうつ病に関する知見を併せ考慮すれば,Aがうつ病を発症した結果,その判断能力等が低下することで仕事の能率が低下したり,不安感,焦燥感等にかられるようになった可能性は否定できない。しかし,仮にうつ病発症が仕事の能率の低下など業務遂行に影響を及ぼし,そのためAの労働時間が増加していったとしても,中部電力は,そのようなAの就労状況について容認していたものというべきであり,Aが長時間の時間外労働に従事していたことは否定することができない。そして,既にうつ病を発症した者について,その症状を更に増悪させるような業務による心身的負荷があったか否か たものというべきであり,Aが長時間の時間外労働に従事していたことは否定することができない。そして,既にうつ病を発症した者について,その症状を更に増悪させるような業務による心身的負荷があったか否かを判断するには,うつ病発症による能力低下等の事情も併せて総合的に検討する必要があるというべきであり,単純に,平成11年9月以降のAの長時間にわたる在社時間が,うつ病の原因ではなく結果であるとして,業務過重性と結びつけるべきではないとする被告の上記主張は,採用することができない。 (オ)また,被告は,Aの在社時間がすべて労働時間であったとしても,Aは最低限必要な睡眠時間を確保されていたのであるから,業務が過重であったとは認められないと主張する。 しかし,被告の上記主張は,時間外労働そのものがAに及ぼす心身的負荷を看過したものであり,採用することはできない。 カ結婚指輪に関するDの発言について(ア)前記1(4)で認定したとおり,Dは,Aにつき,Pと比較して,仕事が遅く,仕事に対する集中力を欠いていると常々感じていたこと,Dは,平成11年10月末ころ,Aと面談した際,Aの薬指にはめられていた結婚指輪に目をとめ,その原因が結婚指輪のような余分な物を身に着けている点にも起因するのではないかと思いついたこと,そのため,Dは,Aに対し,Dの上記見解を伝えた上,勤務中は,結婚指輪を外す よう指示したことに照らせば,Dは,結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという全く独自の見解に基づいて,Aに対し,指輪を外すよう発言したと認められるところ,かかるDのAに対する発言は,合理的な理由に基づくものではなく,しかも,Aに対する配慮を欠いた極めて不適切な内容の発言であったといわざるを得ない。 そして,Aが,原告と結婚した以降,常時結婚 ところ,かかるDのAに対する発言は,合理的な理由に基づくものではなく,しかも,Aに対する配慮を欠いた極めて不適切な内容の発言であったといわざるを得ない。 そして,Aが,原告と結婚した以降,常時結婚指輪を身に着けていた事実等に照らせば,結婚指輪に関するDの発言が,Aに対し強い心理的負荷を及ぼし,既に発症していたうつ病を増悪させたものと認められる。 (イ)被告は,Dが,第一に現場における異物混入防止対策の観点から,第二にAの集中力を高めるための動機付けの観点から,Aに対し,結婚指輪を外すよう話した旨主張し,これに沿う証拠(証人D,同O等)も存在する。 しかるに,前記1(4)カ(ウ),(キ)で認定したとおり,燃料グループの課員についても,異物混入防止対策の対象とはなり得るが,実際に異物混入防止が問題となる場面は,工事・修理現場における確認のときに限られること,Dが,結婚指輪を身に着けているA以外の課員に対しては,結婚指輪を外すよう指示したことはなかったことに照らせば,異物混入防止のためには,Aが現場に赴く際に結婚指輪を外すよう指示すれば足りるのであって,DがAに対し結婚指輪を外すよう指示した動機として,異物混入防止対策の観点を掲げるのは不合理かつ不自然である。 また,Dの上記発言は,異物混入防止対策に基づくものとしては,余りにも唐突であり,発言の時期の点において不自然すぎる。 他方,前記のとおり,結婚指輪に関するDの発言について,Dの全く独自の見解に基づくものであるとはいえ,Aの集中力を高めるための動機付けの観点があったことは否めないところである。 しかしながら,前記のとおり,Dの発言は,Aに対する配慮を欠いた 極めて不適切な内容の発言であったところ,Aの集中力を高めるための動機付けの観点があったからといって,その内容が正当化されるも しかしながら,前記のとおり,Dの発言は,Aに対する配慮を欠いた 極めて不適切な内容の発言であったところ,Aの集中力を高めるための動機付けの観点があったからといって,その内容が正当化されるものではなく,同発言がAに及ぼした心理的負荷を軽減するものでもない。 したがって,前掲各証拠のうち,少なくとも結婚指輪に関するDの発言に関する部分については,たやすく信用することはできず,これに依拠した被告の前記主張も採用できない。 (ウ)被告は,Aが,結婚指輪に関するDの発言を聴いた際,鈍い反応をしたにとどまったことなどから,同発言が,客観的にAに対し心理的負担を与えるようなものではなかったと主張する。 しかしながら,確かに,Aは,Dが上記発言に及んだ際,同人に対し反論したり,反発するような態度を示したことはなかったものの,原告に対しては,結婚指輪に関するDの発言につき言及したことがあったのであり,また,AがDの指導等に対し萎縮的な態度を示すようになったことなどに照らせば,AがDに反論したり,反発するような態度を示さなかったからといって,Aが心理的負荷を受けていなかったことの根拠とはならない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (3)業務以外の出来事による心身的負荷とAの個体側の要因についてア業務以外の出来事による心身的負荷前記1(1)ア(イ)で認定したとおり,Aらが平成9年3月に転居した原因が,原告と他の社宅入居者との間でもん着が起こったことであった事実は認められるものの,その他に格別家族関係で問題となったような事情は認められない。また,Aは,平成11年当時,住宅ローンの債務を負っていたものの,これによって金銭的に困窮していたという事情もない。 その他,Aにおいて,業務外の出来事による心身的負荷が強度なものであった られない。また,Aは,平成11年当時,住宅ローンの債務を負っていたものの,これによって金銭的に困窮していたという事情もない。 その他,Aにおいて,業務外の出来事による心身的負荷が強度なものであったと認めるに足りる事情はうかがわれない。 イ個体側の要因前記1(1)イ(ア)で認定したとおり,Aには,精神障害と関連する疾患についての既往歴はなく,その家族についても,精神障害の既往歴はない。 また,前記1(1)エで認定したとおり,Aの性格が,き帳面で,まじめで責任感が強いというものであり,また物事を抱え込んだり,考え込んだりしてしまう傾向も認められるところ,前記2のうつ病に関する医学的知見に照らせば,メランコリー親和型の性格傾向を有していたものと評価でき,うつ病に親和的なものであったということはできるが,Aの社会適応状況等に照らせば,その性格が通常人の正常な範囲を逸脱して偏ったものであるということはできない。 (4)総合評価ア前記(2)で説示したとおり,Aは,平成9年8月1日に同人が燃料グループに配属された以後,日常的担当業務に従事したこと自体や,DのAに対する業務上の指導等によって,継続的かつ恒常的に心理的負荷を募らせていった状況に置かれていたこと,Aが,平成11年8月1日,主任に昇格したことによって,相当程度の心理的負荷を受けたこと,平成11年度にAが従事した業務は,業務量や業務の内容だけに着目すれば,さほど困難又は複雑な性質の業務ではなかったが,上記状況に置かれていたことや増加傾向にあった時間外労働と相まって,Aに対し,相当程度の心理的負荷を与えていたと推認できること,平成11年8月以降,時間外労働時間数が顕著に増加したことによって,Aは,精神的・肉体的な疲労を蓄積させ,強い心身的負荷を受けたこと,業務以外の出来事による 心理的負荷を与えていたと推認できること,平成11年8月以降,時間外労働時間数が顕著に増加したことによって,Aは,精神的・肉体的な疲労を蓄積させ,強い心身的負荷を受けたこと,業務以外の出来事による心身的負荷が強度なものであったとは認められないこと,Aはうつ病に親和的な性格傾向を有してはいたが,通常人の正常な範囲を逸脱したものではなかったことを総合考慮すれば,業務外の要因による心身的負荷はさほど強度のものとは認められず,Aのうつ病は,Aが継続的かつ恒常的に心理的負荷を募 らせていった状況の下,時間外労働の増加を伴う業務に従事したこと及び主任に昇格したことによる心身的負荷とAのうつ病に親和的な性格傾向が相乗的に影響し合って発症したものであると認めるのが相当である。 そして,うつ病を発症した同年9月以降も長時間にわたる時間外労働に従事し,さらに,結婚指輪に関するDの発言等によってうつ病を急激に増悪させた結果,Aは,うつ病による希死念慮の下,発作的に自殺したものというべきである。 イ前記3の医師の意見のうち,(1),(3)及び(4)は,Aのうつ病の発症・増悪について,業務起因性を否定する。 しかしながら,上記各意見は,いずれも,Aが置かれていた状況や立場について詳細に検討しておらず,また,各意見の前提となる事実自体に誤認があることから,業務がAに及ぼした心身的負荷について,適正に評価しているとはいい難く,採用することはできない。 ウしたがって,前記アの業務等による心身的負荷は,Aに対し,社会通念上,うつ病の発症のみならず増悪の点でも,一定程度以上の危険性を有するものであったと認められるから,Aのうつ病の発症及び増悪は,業務に内在する危険性が現実化したものといわざるを得ず,業務とAのうつ病の発症及び増悪との間には相当因果関係が認められ 以上の危険性を有するものであったと認められるから,Aのうつ病の発症及び増悪は,業務に内在する危険性が現実化したものといわざるを得ず,業務とAのうつ病の発症及び増悪との間には相当因果関係が認められる。そして,Aの自殺は,同人のうつ病の症状として発現したものであるから,労災保険法12条の2の2第1項の「故意」には該当しないものである。 結論 以上によれば,Aのうつ病の発症及び増悪とこれに基づくAの自殺には業務起因性が認められるから,これを否定した本件各処分はいずれも違法であるといわざるを得ない。 よって,原告の請求はいずれも理由があるから,認容することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判官上村考由裁判長裁判官橋本昌純及び裁判官鈴木基之は,いずれも転補のため,署名押印することができない。 裁判官上村考由
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