平成12(ワ)10865 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年10月31日 大阪地方裁判所
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判決文本文14,403 文字)

判決 主文 1 被告は、原告Aに対し、金348万9317円及びこれに対する平成11年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告有限会社Bに対し、金169万7520円及びこれに対する平成11年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを10分し、その7を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、金1152万2929円及びこれに対する平成11年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告有限会社Bに対し、金563万7500円及びこれに対する平成11年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、被告の経営するゴルフ場において電動カートと接触して受傷した原告A及び同原告が代表者を務める原告有限会社B(以下「原告会社」という。)が、被告に対し、民法717条1項に基づいて、損害賠償を請求した事案である。 1 争いのない事実等(1) 原告Aは、平成11年9月22日、被告が設置保有し、かつ、管理占有するCカントリー倶楽部ゴルフコース(以下「本件ゴルフコース」という。)において、4名1組でゴルフのラウンドプレーをしていた者である。 (2) 原告会社は、不動産の賃貸・管理、宅地建物取引業、建物の修繕・増改築の企画・あっせん等を目的とする、原告Aが取締役を務める有限会社である(甲2)。 (3) 本件ゴルフコースにおいては (2) 原告会社は、不動産の賃貸・管理、宅地建物取引業、建物の修繕・増改築の企画・あっせん等を目的とする、原告Aが取締役を務める有限会社である(甲2)。 (3) 本件ゴルフコースにおいては、キャディーがプレーヤーに同行せず、コース上に設置されたレールの上を走行する電動カートにゴルフバッグを乗せ、これをプレーヤー自身がリモコンで操作しラウンドするという、いわゆるセルフプレー方式が採られていた。 (4) 原告Aは、前同日、インコース(10番ホールから18番ホール。)からスタートし、午後になってアウトコース(1番ホールから9番ホール。)のラウンドプレー中、天候が悪化し、8番ホールをホールアウトするころには、雷や強風を伴うどしゃ降りの状態となったことから、同ホールのグリーンから9番ホールのティーグラウンド方面に向かい、舗装された通路上を歩行していたところ、電動カート用レールが同通路を横切る場所(以下「本件事故現場」という。)に差し掛かり、これを通過しようとした際、右方から走行してきた電動カートと接触する事故(以下「本件事故」という。)に遭い、右足関節三果骨折の傷害を負った。 2 争点(1) 被告の責任(原告らの主張)本件ゴルフコースにおいては、歩行者(プレーヤー)用通路上を電動カート用レールが横切る場所が数か所あり、特に本件事故現場では、通路脇の谷部分を走行してきた電動カートが急に通路上に現れるため、接近するカートを視認し辛い上、本件事故当時は雷鳴と激しい雨音のため、カートがレール上を走行する音を聞き取ることも困難な状況にあった。ゴルフコースが屋外施設であり、悪天候下でプレーされることも多いことからすれば、ゴルフ場経営者としては、悪天候下でも事故が発生しないよう適切な設備を設ける必要があり、例えば ことも困難な状況にあった。ゴルフコースが屋外施設であり、悪天候下でプレーされることも多いことからすれば、ゴルフ場経営者としては、悪天候下でも事故が発生しないよう適切な設備を設ける必要があり、例えば、電動カートの接近を知らせるための警告灯や警報機を設置したり、通路手前でカートが自動的に一旦停止するような設定を施しておくことも可能であった。ゴルフ場内の掲示物や利用約款への記載だけでは、注意喚起の措置として十分でない。 また、電動カートが走行する経路と歩行者用通路とは、距離が隔たっている箇所もあり、リモコンを所持するプレーヤーが常にカートの走行を監視できるわけではなく、電動カートは次ホールのティーグラウンドで自動的に停止するよう設定されているため、リモコン所持者が前のホールでのプレー中にカートを自動走行させることも一般的に行われていることなどからして、プレーヤーが常にカートや同伴プレーヤーの位置を確認しながらリモコン操作を行うことは不可能であり、リモコン所持者にカートがプレーヤーと接触することのないよう注意すべき義務が存するとはいえない。 したがって、本件ゴルフコースが前記のような事故防止設備を欠いていたことは、土地工作物の設置または保存の瑕疵に当たるから、被告は、民法717条1項により、原告らの損害を賠償すべき義務を負う。 (被告の主張)ゴルフプレーの本質はプレーヤーの自己責任にあり、ゴルフ場経営者はプレー場所を提供するにすぎないのであるから、当該ゴルフ場に土地工作物の設置保存の瑕疵が存するか否かについては、プレー中に生じる危険の回避があくまでもプレーヤーの自己責任に委ねられることを前提として、判断されるべきである。 被告の設置する電動カートは走行速度が人間の早歩き程度の速度(時速 ては、プレー中に生じる危険の回避があくまでもプレーヤーの自己責任に委ねられることを前提として、判断されるべきである。 被告の設置する電動カートは走行速度が人間の早歩き程度の速度(時速5.4キロメートル)であり、プレーヤーにとって容易に接触を回避しうるものである上、簡単なリモコン操作で100メートル程度離れた場所から発進・停止させることができ、障害物に接触した場合には自動的に停止する機能を備えるなど、人身事故の防止に配慮した機能を備えたものであること、原告Aは過去に本件ゴルフコースで何度もプレーしたことがあり、カート用レールと歩行者用通路が交差する場所が多数存在すること及び本件事故現場にカート用レールが存在することを認識しており、カートが本件事故現場手前で谷の部分を通って歩行者用通路上に上がってくる過程を同通路上から確認することも可能であったことなどからすれば、本件事故は、原告Aが接近してくるカートの存在を覚知しながら敢えてその直前を横断しようとしたか、少なくとも、カートの接近を容易に覚知しうる状況にあったにもかかわらず、これに対する注意を怠り漫然とその前方を横断しようとしたという原告Aの重大な過失によって生じたものというべきである。かかる事故状況に照らせば、カート用レールと歩行者用通路が交差する場所に警告灯等の設備が存しなかったことと本件事故との間には、因果関係が存しないというべきであるし、歩行者用通路と交差する場所の手前でカートが自動停止するよう設定しておくと、リモコン所持者が安全確認できない場所でカートを再発進させるなどすることによって、却って歩行者の予見を困難にし、事故の危険性を生じさせることになるから、かかる措置は事故防止のための適切な措置であるとはいえない。 また、原告Aの属するパーティーに ることによって、却って歩行者の予見を困難にし、事故の危険性を生じさせることになるから、かかる措置は事故防止のための適切な措置であるとはいえない。 また、原告Aの属するパーティーに貸与された電動カートのリモコン装置を所持していたDは、善良な管理者としての注意義務をもって、同伴プレーヤーが電動カートに接触する事故が発生しないよう当該カートをリモコン操作すべきであったにもかかわらず、漫然とカートを走行させて本件事故を惹起したものであり、本件事故の発生につき責任を負う。 したがって、本件事故は、第1次的には原告Aの重大な過失により、第2次的にはDの善管注意義務違反により生じたものというべきであり、被告は、利用約款やクラブハウス等への掲示によって、電動カートに対し注意を促し、また、雷発生時には所定の避雷舎に待避するよう促す等必要な表示をしており、本件ゴルフコースの設置保存については何らの瑕疵も存しないから、被告に損害賠償義務はない。 (2) 原告Aの損害(原告らの主張)ア治療関係費 116万4817円(ア) PL病院治療費 49万3277円(イ) 東住吉森本病院治療費 37万1540円(ウ) 医師への謝礼 30万0000円イ入院雑費 4万1600円入院日数32日間につき、日額1300円で計算した。 ウ付添費 81万8000円(ア) 入院付添費 17万6000円原告Aは、入院期間中、車椅子を利用しないと動け 付添費 81万8000円(ア) 入院付添費 17万6000円原告Aは、入院期間中、車椅子を利用しないと動けない状態であったことから、近親者の付添を要した。入院日数32日間につき、日額5500円で計算した。 (イ) 通院付添費 34万2000円原告Aは、通院に際しても近親者の付添が必要であったから、通院日数114日につき、日額3000円で計算した。 (ウ) 自宅付添費 30万0000円原告Aは、平成12年1月末日までは、自宅及び職場(自宅と同所に所在。)においても付添が必要な状態であり、同居の孫及び原告会社従業員であるE(以下「訴外E」という。)の付添を受けた。本件事故日から平成12年1月31日までの期間から、同期間中の入院日数を除いた100日間につき、日額3000円で計算した。 エ通院交通費 1万4610円通院等には自家用車を利用したので、下記のとおりガソリン代を請求する。 (ア) PL病院退院時 450円往復約30キロメートル。 (イ) 森本病院入退院及び通院時 1万4160円往復約8キロメートルで、1回当たり120円として計算。 オ慰謝料 900万0000円原告Aは、本件事故により、約1か月間の入院及び約12か月間の通院を余儀なくされ、当初は歩行不能であり、その後も歩行が困難で、日常生活上も仕事上も大きな支障が生じたこと 万0000円原告Aは、本件事故により、約1か月間の入院及び約12か月間の通院を余儀なくされ、当初は歩行不能であり、その後も歩行が困難で、日常生活上も仕事上も大きな支障が生じたこと、右足関節には後遺障害等級10級10号に該当する可動域制限のほか、疼痛や醜状痕等の後遺障害が残存しており、約25年間続けてきて生き甲斐ともなっていたゴルフプレーをすることができなくなってしまったことなどに鑑みれば、その精神的苦痛に対する慰謝料が900万円を下ることはない。 カ弁護士費用 110万3902円(被告の主張)ア東住吉森本病院内科への通院には、原告Aの持病である糖尿病の検査のための通院が含まれているから、治療費、通院交通費、通院付添費から控除されるべきである。 イ医師への謝礼は、事故によって通常生ずべき損害といえず、本件事故と相当因果関係がない。 ウ入通院及び自宅における付添の必要性は否認する。 エ原告Aの治療期間の長期化及び同原告の主張する後遺障害の残存については、同原告が東住吉森本病院における入院中、治療に専念することなく度々外出を繰り返したこと、原告Aが、2度(平成11年11月、平成12年6月)にわたり、自らの不注意で転倒し、右足関節等を受傷したこと、加齢及び約10年前から糖尿病を放置していたことによる骨量の減少ないし骨粗鬆症が寄与している。 (3) 原告会社の損害(原告らの主張)ア営業上の損害 512万5000円原告会社は、平成11年7月に代表者である原告Aによって設立された会社で、同じく原告Aが経営するF建設の不動産取引において、建物の解体、基礎 512万5000円原告会社は、平成11年7月に代表者である原告Aによって設立された会社で、同じく原告Aが経営するF建設の不動産取引において、建物の解体、基礎工事、外壁工事などを受注し、これを実施することを主な業務内容とし、原告Aと訴外Eの二人のみがその営業に従事していたところ、本件事故で原告Aが受傷したことにより、同原告が不動産取引に立ち会って原告会社のために工事を受注することや、原告会社の担当する個人住宅の工事現場に立ち会うことができず、やむなく他社に仕事を回すなどしたため、平成11年10月分から平成12年5月分までの売上が大幅に落ち込んだ。 同期間中の売上額の減収分(推定額)につき、その約25パーセントを粗利益と計算すれば、原告会社の月別の損害額は下記のとおりとなる。 平成11年10月分 75万0000円11月分 62万5000円12月分 45万0000円平成12年 1月分 47万5000円2月分 57万5000円3月分 75万0000円4月分 87万5000円5月分 62万5000円合計512万5000円原告会社は、実質的には原告Aの個人会社であり、原告Aには原告会社の機関としての代替性がなく、経済的にも原 合計512万5000円原告会社は、実質的には原告Aの個人会社であり、原告Aには原告会社の機関としての代替性がなく、経済的にも原告Aと原告会社とは一体をなす関係にあるものであるから、原告Aの受傷と原告会社の上記損害との間には、相当因果関係がある。 イ弁護士費用 51万2500円(被告の主張)原告会社が、原告Aが受傷したため工事を受注できなかったと主張する期間中も、F建設の不動産取引に関連して解体工事等を受注し、また、原告会社のみで解体工事等を受注していることからすれば、原告A自ら不動産取引に立ち会うことができたか、あるいは、訴外Eを不動産取引や工事現場に立ち会わせることで工事を受注することができたと考えられる。また、原告らの主張する売上減少分については、これを裏付ける資料が存せず、信用することができない。 したがって、原告Aの受傷の影響により原告会社が工事を受注できずに損害を被ったとは認められないし、原告Aに原告会社の機関としての代替性がないともいえないから、原告会社の損害は否認する。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(過失相殺を含む。)(1) 証拠(甲3、4、14、46、乙1ないし4、7ないし13、20、証人D、同G、原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア本件ゴルフコースは、昭和51年12月に開場した当時から、本件事故当時と同様のモノレール式電動カートによるセルフプレー方式を採用していた。電動カート用レールは、コース内の大部分の場所では地上に露出しており、各ホール内ではコースの端に沿って設置されているが、ホール間を結ぶジョ モノレール式電動カートによるセルフプレー方式を採用していた。電動カート用レールは、コース内の大部分の場所では地上に露出しており、各ホール内ではコースの端に沿って設置されているが、ホール間を結ぶジョイント部分では歩行者用通路から離れて設置されているところもあり、コース内に約23か所あるレールと歩行者用通路とが交差する場所においては、通路に埋め込まれた幅員約36センチメートルのU字溝内をレールが通過するようになっている。 イ電動カートは、大きさが縦約120センチメートル、横約90センチメートル、高さ約90センチメートルで、バッテリーを動力源とし、手動もしくはリモコン装置による遠隔操作によって、時速約5.4キロメートルの速度でレール上を走行し、予めレール上にストッパーが固定された場所に至ると停止する。本件ゴルフコースにおいて、ストッパーは各ホールのティーグラウンド付近に設置されており、通路とレールの交差する場所の手前には設置されていなかった。リモコン装置は、プレーヤー数名のパーティーごとに1個が貸し出され、プレー中、代表者(エチケットリーダー)がこれを携帯し、オン・オフ兼用のスイッチボタンで操作する。カート前面には2本の追突バーが設置されており、走行中、障害物にバーが接触するとリミットスイッチが作動し自動的に停止する。 ウ本件事故現場は、8番ホールグリーンから9番ホールティーグラウンドに向かう歩行者用通路(以下「本件通路」という。)と同方向に向かうカート用レール(以下「本件レール」という。)が交差する場所である。本件レールは、8番ホールグリーン脇からしばらくは本件通路の右端に沿って通路よりもやや高い位置に露出した状態で設置されているが、同通路が左に折れる地点付近から通路右手が下り斜面となって、本件レールが通路から は、8番ホールグリーン脇からしばらくは本件通路の右端に沿って通路よりもやや高い位置に露出した状態で設置されているが、同通路が左に折れる地点付近から通路右手が下り斜面となって、本件レールが通路から数メートル離れた低い場所を通るようになり、本件事故現場の手前において、9番ホール方向に向かう歩行者の右側やや斜め後方から木立の中の斜面を昇って本件通路右脇に出現し、通路内に埋め込まれたU字溝内を通って通路と交差し、その後は通路左端に沿って露出した状態で設置されている。一方、本件事故現場の前後においては、1番ホール(9番ホールと隣接している。)方面から2番ホール(8番ホールと隣接している。)方面に向かうカート用レールが、本件通路の右端に沿って通路とほぼ同じ高さに露出した形で設置されているが、本件レールが本件通路上に昇ってくる地点においてはその上方を跨ぐ形でこれと交差している。 エ本件事故当時、原告Aは、どしゃ降りの雨で視界が利きにくい中を、落雷を恐れながら、先に9番ホール方面に向かって走って行ったDほかのメンバーを小走りで追いかけていく途中、本件事故現場に差し掛かり、右方から電動カートが走行してくるのに気付かないまま、U字溝部分を跨ごうとしたところ、同カートと接触して転倒した。同カートは、その下部と路面との間に原告Aの右足を挟んだまま停止することなく走行し続け、原告が右足を引き抜いたところ、そのまま9番ホール方面に走行していった。 オ本件通路と本件レールの交差する地点には、本件事故後、「カートにご注意」と書いた立て看板が設置されたが、本件事故当時には、同看板は設置されていなかった。また、通路上にもカートレールが交差していることを示す特段の表示は施されておらず、カートが通過する際に警告灯を点滅させる等の装置も設置され されたが、本件事故当時には、同看板は設置されていなかった。また、通路上にもカートレールが交差していることを示す特段の表示は施されておらず、カートが通過する際に警告灯を点滅させる等の装置も設置されていなかった。 (2) 以上の事実によれば、本件ゴルフ場においては、時速約5.4キロメートルでレール上を自動走行する電動カートが所々で歩行者用通路を一時停止することなく横切る構造になっているところ、通路部分においてはU字溝内にレールが敷設されていることから、歩行者にとって予めレールが存在することを認識し辛い上、本件事故現場付近においては、カート用レールが通路部分から離れた見にくい場所を通っており、しかも、他のカート用レールと交差したり木立の陰になっていて、カートが歩行者のやや右斜め後方からいきなり通路上に出現するような構造になっているため、歩行者がカートの接近に気付かないで衝突する危険性が存在することが認められる。 このような場合、ゴルフ場を設置・管理する者としては、当該通路をレールが横切っていることやカートがどちらの方向から走行してくるのかが歩行者にとって明らかになるよう、立て看板を立てたり、通路上にペンキ等で表示したり、あるいは、カートの接近を知らせる警告灯を設置するなどの歩行者に対する注意喚起のための設備を整えるべきであって、かかる設備を備えていない場合には、土地工作物が通常備えているべき安全性を欠くものとして、その設置・保存に瑕疵が存するものというべきである。 本件事故当時、本件事故現場に上記のような設備が設置されていなかったことは前記認定のとおりであるから、土地工作物である本件ゴルフコースの設置・保存には瑕疵が存したものというべきである。 (3) 被告は、ゴルフプレーの本質がプレーヤーの自己責任にあること かったことは前記認定のとおりであるから、土地工作物である本件ゴルフコースの設置・保存には瑕疵が存したものというべきである。 (3) 被告は、ゴルフプレーの本質がプレーヤーの自己責任にあることから、ゴルフコースの設置保存の瑕疵については制限的に解されるべきである旨主張するが、ゴルフプレーの本質がプレーヤーの自己責任にあることは事実であるとしても、そのことが、ゴルフ場経営者の土地工作物責任を免れさせ、あるいは軽減するものでないことはいうまでもない。 また、被告は、カート用レールの存在が歩行者から一見して明らかであり、カートの接近を走行音で覚知することも可能であるから、歩行者に対する特段の注意喚起措置を講じる必要がないと主張するが、ゴルフプレー中、雷雨、豪雨、霧の発生等の天候変化により、カート用レールの存在やカートの接近を覚知し難くなる場合があることは十分予測できることであるから、前記のような歩行者に対する注意喚起措置が不要であるとはいうことができない。 さらに、被告は、利用約款、クラブハウス内の掲示物、電動カート本体等にカートへの注意を促す記載をしていたこと、雷が発生した場合に備え、避雷舎案内図の配布や、プレー中止を呼びかける場内放送をするようにしていたことなどから、安全設備に欠けることがなかったと主張するようであるが、かかる措置のみでは、未だ、電動カートと歩行者の衝突事故防止のための措置として十分であるとはいい難い。 したがって、本件ゴルフコースの設置・保存に瑕疵が存しなかったとの被告の主張は理由がないから、被告は、民法717条1項本文により、本件事故による原告らの損害を賠償すべき義務を負う。 (4) もっとも、原告Aは、過去に何度も本件ゴルフコースでプレーしたことがあり、カート用レールが歩 ら、被告は、民法717条1項本文により、本件事故による原告らの損害を賠償すべき義務を負う。 (4) もっとも、原告Aは、過去に何度も本件ゴルフコースでプレーしたことがあり、カート用レールが歩行者用通路を横切る場所が存在することを認識していたこと(乙6の1ないし3、原告A本人)、本件事故当時、豪雨及び雷鳴により、極めて視界が制限された状態であったとはいえ、本件事故現場を通過しようとした際、通路上にカートレールが存在することは認識していた(原告A本人)のであるから、同所を通行しようとする際に右方の安全を確認していればカートの接近に気付くことができ、衝突を回避し得たといえることからすれば、本件事故の発生につき、原告Aにも2割程度の過失が存するものと認めるのが相当である。 なお、被告は、本件事故の発生につき、第1次的には原告Aに過失があるが、第2次的にはカートのリモコンを携帯していたDに過失が存すると主張する。 しかしながら、本件事故の発生につきDに過失が存するか否かは、被告が原告らに対して負担する前記土地工作物責任の有無・範囲に何ら影響を及ぼさない事情であるにすぎないし、また、Dと原告Aとの間に身分上・生活関係上の一体性が存するとは認められないから、仮に、Dに過失が存したとしても、これを被害者側の過失として原告Aの過失と同視することはできない。 したがって、Dの過失の有無を判断するまでもなく、被告の主張は失当である。 2 争点(2)について(1) 治療関係費 86万4547円前記「争いのない事実等」記載(4)の事実、証拠(甲5ないし7、甲8の1及び2、甲9の1及び2、甲10の1ないし6、甲11の1ないし33、乙14ないし18、21、22)及 4547円前記「争いのない事実等」記載(4)の事実、証拠(甲5ないし7、甲8の1及び2、甲9の1及び2、甲10の1ないし6、甲11の1ないし33、乙14ないし18、21、22)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、本件事故により、右足関節三果骨折の傷害を負い、その治療のため、平成11年9月22日から同年10月9日まで(18日間)PL病院に入院し、同日から同月20日までと平成12年1月11日から同月13日まで(15日間)東住吉森本病院に入院し、平成11年10月23日から平成12年9月4日まで同病院に通院した(実通院日数114日)こと、PL病院の治療費は49万3277円、東住吉森本病院の治療費は37万1540円であったこと、原告Aは、本件事故の約10年前に糖尿病を指摘されたことがあったものの、特段の治療をせずに放置していたところ、PL病院入院時に血糖値の上昇が見られたことから、同病院及び東住吉森本病院においては、本件事故による受傷部位の治療と並行して食餌療法及び投薬による治療がなされたこと、平成11年11月29日、東住吉森本病院において、骨粗鬆症(廃用性骨萎縮)の診断名が付けられており、また、同病院発行の平成12年3月16日付診断書(甲6)によれば、「骨折後疼痛による荷重困難により右足骨粗鬆症の進行強く」と記載されていること、同病院の診療録(乙16)によれば、受傷部位の痛みを訴えて通院中であった平成11年11月15日に「昨日よろけて右足関節痛出現」の記載があり、また、平成12年6月8日にも「一昨日転倒し、右膝打撲。右足関節痛-(マイナス)」の記載があることの各事実が認められる。 以上の事実によれば、前記PL病院及び東住吉森本病院の治療費合計額は86万4817円であるが、この内、東住吉森本病院において血糖値 イナス)」の記載があることの各事実が認められる。 以上の事実によれば、前記PL病院及び東住吉森本病院の治療費合計額は86万4817円であるが、この内、東住吉森本病院において血糖値の検査に要したことが明らかな費用(甲10の4ないし6において「*血糖、*血液採取」と記載された部分がこれに該当し、合計900円となるが、自己負担分はその3割の270円となる。)を控除すれば、86万4547円となる。 なお、原告Aは、医師に対する謝礼として30万円を請求するが、本件において、上記謝礼が社会通念上相当なものであると認めるに足りる証拠はない。 被告は、糖尿病、骨粗鬆症あるいは2度の転倒が、原告Aの治療の長期化等に寄与していると主張するが、診療録上、原告Aの糖尿病が、本件事故による受傷に対する通常の治療期間を超えて治療を長期化させる原因となったことを窺わせる記載は存しないし、骨粗鬆症についても、それが事故以前から存在したものと認めるに足りる証拠はなく、却って、前記診断書の記載からすれば、本件事故で受傷した後、疼痛のため荷重が困難であったことから右足につき骨粗鬆症が進行したものと考えられる。また、2度の転倒事故については、いずれも原告Aが未だ受傷部位の痛みないし可動域制限を訴えて通院中のことであり、本件事故との因果関係を俄に否定しがたいばかりでなく、それによって特段治療期間が長期化したとの事情も診療録上認めることができない。 したがって、上記被告の主張は、理由がない。 (2) 入院雑費 4万1600円原告Aの通算入院日数は、前記のとおり32日間(PL病院と東住吉森本病院で重複する1日を控除。)となるところ、入院雑費として日額130 4万1600円原告Aの通算入院日数は、前記のとおり32日間(PL病院と東住吉森本病院で重複する1日を控除。)となるところ、入院雑費として日額1300円を認めるのが相当であるから、これを計算すれば4万1600円となる。 (3) 付添費 51万8000円ア入院付添費 17万6000円原告Aの入院した各病院の看護体制は必ずしも明らかでないものの、同原告の受傷内容が右足の骨折で、荷重が困難であり、入院中車椅子により移動せざるを得なかったことや、同原告が62歳と比較的高齢であったことなどを考慮すれば、入院日数32日間につき、近親者の付添看護を要したものと認めるのが相当であり、同費用としては日額5500円が相当であるから、これを計算すれば17万6000円となる。 イ通院付添費 34万2000円弁論の全趣旨によれば、原告Aの自宅から東住吉森本病院までは、往復約8キロメートルあり、同原告は、本件事故後、自ら自動車を運転することができなくなかったことから、通院に際し専ら訴外E運転の自家用車で通院したことが認められる。 以上の事実に鑑みれば、原告Aの通院期間については、通院交通費も込みで、日額3000円の付添費用を認めるのが相当というべきであるから、これに通院日数114日を乗じれば、34万2000円となる。 ウ自宅付添費 0円自宅及び職場における付添の必要性については、必ずしもこれを認めるに足りる証拠がないから、その請求は理由がないというべきである。 (4) 通院交通費 0円自宅及び職場における付添の必要性については、必ずしもこれを認めるに足りる証拠がないから、その請求は理由がないというべきである。 (4) 通院交通費 0円自家用車を利用しての通院等に要した費用については、これを正確に算定することが困難であることから、上記通院付添費に含まれるものと評価することとし、独立の損害としては認めない。 (5) 慰謝料 250万0000円原告Aの受傷内容、前記入通院日数のほか、右足関節に疼痛及びある程度の可動域制限の残存が認められること(甲7、45、乙16。ただし、当初、症状固定と診断された平成12年9月4日における診療録上の測定数値に比べ、同年12月18日を症状固定日として、平成14年3月26日付で作成された後遺障害診断書上の測定数値は、自動値、他動値とも改善していることが認められ、かかる事実からすれば、症状固定時期及び最終的に残存する可動域制限の程度については、必ずしも明らかであるとはいいがたい。)、原告Aの損害を直接填補するものではないが、被告加入の傷害保険から原告Aに対し、62万円が支払われていること(当事者間に争いがない。)などを総合考慮すれば、本件事故による原告Aの慰謝料は250万円が相当である。 (6) 過失相殺上記原告Aの損害額合計は392万4147円となるところ、前記のとおり2割の過失相殺を行うのが相当であるから、過失相殺後の損害額は、313万9317円となる。 (7) 弁護士費用 35万0000円上記原告Aの損害額その他諸般の事情に鑑みれば、被告に負担させるべき弁護 、313万9317円となる。 (7) 弁護士費用 35万0000円上記原告Aの損害額その他諸般の事情に鑑みれば、被告に負担させるべき弁護士費用は35万円が相当である。 したがって、弁護士費用加算後の損害額は348万9317円となる。 3 争点(3)について(1) 証拠(甲2、12、13、15、17ないし44(枝番のあるものは、枝番をすべて含む。)、原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告会社は、平成11年7月1日、原告Aによって設立された有限会社であり、従業員は営業部長の肩書きを有する訴外Eのみであること、原告会社の業務内容は、原告Aが代表者を務めるF建設の行う不動産仲介業務に関連して請け負った解体工事等を下請業者を使用して施工するか、F建設の業務とは無関係に関連業者等の紹介で請け負った改修工事等を同じく下請業者を使用して施工するというものであること、原告Aが受傷してF建設の不動産仲介取引に立ち会えなかった際、訴外Eが取引に立ち会って原告会社の工事を受注したことがあり、また、F建設の業務と無関係に請け負った改修工事等についても、訴外Eが現場に立ち会うことにより工事を完了できたものも存するが、原告Aの現場立ち会いができないため工事を受注しても実行できないと判断し、他社に仕事を回すなどしたこともあったこと、本件事故前3か月間の月間売上高の平均は約337万8666円であるのに対し、事故後8か月間の月間売上高の平均は323万3125円であり(甲12、13)、必ずしも顕著な落ち込み傾向は認められないことの各事実が認められる。 (2) ところで、原告会社は、売上の減収分の推計に基づき、これに粗利益率を乗じて逸失利益を算定しているけれども、上記のとおり、原告 顕著な落ち込み傾向は認められないことの各事実が認められる。 (2) ところで、原告会社は、売上の減収分の推計に基づき、これに粗利益率を乗じて逸失利益を算定しているけれども、上記のとおり、原告Aが受傷により業務に支障を生じたと考えられる期間中も、訴外Eが同原告に代わって取引や工事現場に立ち会うことにより、工事を受注しあるいは施工完了している場合もあることからすれば、原告Aが休業したことと原告会社が他社に工事を回したこととの間には必ずしも明白な関連性を認めがたいから、原告会社の主張する売上減収分の推計を裏付ける具体的な根拠は、前記証拠を子細に検討しても明らかでないというほかない。 (3) もっとも、原告会社が、原告Aの業務に支障が生じたと認められる期間(弁論の全趣旨により、本件事故後8か月間と認める。)中も、本件事故前と同額の給料賃金を負担している(甲12、13)ことや、原告Aと原告会社とが実質的には同一性を有するものと考えられることからすれば、原告会社は、本件事故により、概ね原告Aの休業損害に相当する程度の損害を被ったものと認めるのが相当というべきであり、原告Aの基礎収入額(労働対価部分)としては、平成11年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・60歳ないし64歳女子労働者の平均年収290万1600円によるのが相当であるから、その8か月分に相当する193万4400円をもって、原告会社の損害と認める。 2,901,600÷12×8=1,934,400(4) 前記のとおり、原告Aの過失に基づき2割の過失相殺を行うのが相当であるから、過失相殺後の損害額は154万7520円となり、これに相当な弁護士費用として15万円を加算すれば、原告会社の損害額は169万7520円となる。 4 結論以上 行うのが相当であるから、過失相殺後の損害額は154万7520円となり、これに相当な弁護士費用として15万円を加算すれば、原告会社の損害額は169万7520円となる。 4 結論以上によれば、原告Aの請求は、金348万9317円及びこれに対する平成11年9月22日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告会社の請求は、金169万7520円及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第15民事部裁判官福井健太・

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