平成31(ワ)1210 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年9月30日 名古屋地方裁判所
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判決文本文27,202 文字)

令和4年9月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年(ワ)第1210号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年6月3日判決 主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して47万円及びこれに対する平成30年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを20分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、原告に対し、連帯して1073万6000円及びこれに対する平成30年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告が、指定暴力団a1の三次団体の幹部である被告bから暴力団の威力を示してみかじめ料の支払を要求され、これに応じて平成17年10月から平成28年8月までの間に合計10回にわたりみかじめ料を支払わざるを得なかったと主張して、被告bに対しては不法行為に基づき、上記aの組長である被 告cに対しては使用者責任又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という。)31条の2に基づき、連帯して1073万6000円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成30年11月9日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下に同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実に加え、後掲証拠〔枝番があるものは枝番を含む。 以下に同じ。〕及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実)⑴ 当事者ア原告は、平成7年頃か 1 前提事実(争いのない事実に加え、後掲証拠〔枝番があるものは枝番を含む。 以下に同じ。〕及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実)⑴ 当事者ア原告は、平成7年頃から、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●していた。 イ被告ら 被告cは、昭和59年6月、指定暴力団a2の直参組織(二次団体)であるdの会長となり、平成元年5月以降、a3の直参組織であるdの会長となり、平成17年7月以降、指定暴力団a1(以下、上記a2及びa3と併せて「a」と総称する。)の組長となった。 被告bは、aの三次団体であるa三代目d三代目e(以下「e」という。) の幹部である。 ⑵ aア aは、我が国最大の広域暴力団であり、平成30年7月現在、その勢力は、1都1道2府39県にまたがり、構成員総数は、約4700人に及んでいる。 兵庫県公安委員会は、平成4年6月、暴対法3条の規定に基づき、aが、同 条所定の指定要件をいずれも充足するものと認め、その暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい暴力団として指定し、その後、3年ごとに、指定暴力団の再指定をしている。(甲B1、乙9)イ暴力団は、その団体の構成員である暴力団員が集団的に又は常習的に暴力 的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体であり(暴対法2条2号)、その共通した性格は、その団体の威力を利用して暴力団員に資金獲得活動を行わせて利益の獲得を追求するところにある。暴力団においては、盃事といわれる秘儀を通じて、親子(若中)、兄弟(舎弟)という序列的擬制的血縁関係を結び、組員は、組長に対する全人格的包括的な服従統制下に置か れている。 aは、被告cが組長として直接盃 れる秘儀を通じて、親子(若中)、兄弟(舎弟)という序列的擬制的血縁関係を結び、組員は、組長に対する全人格的包括的な服従統制下に置か れている。 aは、被告cが組長として直接盃を交わして親子、兄弟の擬制的血縁関係を結んだ組員(直参)から成る1次組織(総本部)、1次組織の組員が組長(直系組長)として同様の擬制的血縁関係を結んだ組員から成る2次組織(直系団体)、同様に2次組織の組員が組長となる3次組織、3次組織の組員が組長となる4次組織、4次組織の組員が組長となる5次組織から構成さ れ、被告cを頂点とするピラミッド型の階層的組織を形成している。そして、aの総本部は、その下部組織の構成員に対し、aの名称、代紋を使用するなど、その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認する一方、その末端組織の構成員に至るまでaの総本部の指揮命令に従うべきものとしている。 aの総本部は、下部組織を含むaの構成員全員の行動規範として「a綱領」 を定め、総本部における決定、指示等は、抗争に関する指示から構成員の生活に関する事項に至るまで事細かに行われ、「通達」、「告」等と題する文書により、末端組織の構成員に至るまで伝達され、その遵守を徹底させる体制が採られる。伝達された決定、指示等は、下部組織の構成員に対して強い拘束力と強制力を持ち、これに反した場合には、当該構成員は、指詰め等の制裁 を受けることもある。なお、aの総本部の意思決定は、形式上、執行部又は最高幹部会において行われているが、これらの構成員は、被告cの最終的な意思に反することはできず、結局、総本部の執行部等の意思決定は、被告cの意思と同視することができるものである。 被告cは、aの1次組織の組員から毎月上納金を受け取り、2次組織以下 の下部組織の組長も、所属組 はできず、結局、総本部の執行部等の意思決定は、被告cの意思と同視することができるものである。 被告cは、aの1次組織の組員から毎月上納金を受け取り、2次組織以下 の下部組織の組長も、所属組員から毎月上納金を受け取っていた。 (以上イについて甲B1)⑶ 原告の被告bに対する金銭の交付原告は、被告bに対し、別紙「交付金一覧表」番号1から10までの各「交付年月日」欄記載の各年月日において、これに対応する同別紙の各「交付金額」 欄記載の各金額(合計776万円)を交付した(以下、同別紙の番号の順に「本 件金銭交付1」ないし「本件金銭交付10」といい、これらを併せて「本件各金銭交付」という。また、「本件金銭交付1」ないし「本件金銭交付10」に係る被告bの行為を「本件徴収行為1」ないし「本件徴収行為10」といい、これらを併せて「本件各徴収行為」という。)(被告bについて争いのない事実、被告cについて甲A15)。 ⑷ 被告bに係る刑事事件被告bは、平成29年3月14日、本件徴収行為3から10までについて、原告に対する恐喝罪で名古屋地方裁判所に起訴され(以下「本件刑事事件」という。)、同裁判所は、同年10月27日、被告bに対し、懲役2年8月の実刑判決を言い渡し、同判決は、同年12月8日に確定した(甲A1、2)。 上記判決は、被告bの罪となるべき事実として、要旨、被告bは、原告が暴力団構成員である被告bを畏怖していることに乗じて原告から後援会費等の名目で現金を脅し取ろうと企て、平成25年4月9日、電話で、「しばらく会費のほうをもらっていない、今年の分も入れて全部で72万円ぐらいになるけど、そんなことは言わんから、とにかく20万円すぐ用意して欲しい、実際●●の ところの件でほかのやくざの者からも電 らく会費のほうをもらっていない、今年の分も入れて全部で72万円ぐらいになるけど、そんなことは言わんから、とにかく20万円すぐ用意して欲しい、実際●●の ところの件でほかのやくざの者からも電話入っとるのを、俺の関係だからというふうで自分が止めている、●●もまだ●●続けたいでしょう、年間20万円そこそこで●●ができるんだったらいいでしょう、孫とも遊びたいでしょう。」などと申し向けて現金の交付を要求し、もしこの要求に応じなければ原告の身体及び財産等にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し、原告 を畏怖させ、よって、同月12日頃から平成28年8月頃までの間(本件金銭交付3ないし10の各年月日)、8回にわたって、情を知らないfらを介し、原告から合計78万円(本件金銭交付3~10の金額の合計額)の交付を受けてこれを脅し取ったと認定した(甲A1)。 ⑸ 本件訴訟に至る経緯等 ア原告は、平成30年11月8日、被告らに対し、本件各徴収行為について 暴力団の威力を利用した継続的かつ一体的な不法行為を構成するなどと主張して、被告bに対しては民法709条に基づき、被告cに対しては使用者責任に基づき、合計976万円の支払を求めた(甲A13、14)。 イ原告は、平成31年3月25日、本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 ウ被告bは、原告に対し、令和元年8月7日の第1回弁論準備手続期日にお いて、原告の被告bに対する本件徴収行為1から8までに係る不法行為に基づく損害賠償請求権について、消滅時効を援用するとの意思表示をした(顕著な事実)。 また、被告cは、原告に対し、同日の第1回弁論準備手続期日において、原告の被告cに対する本件徴収行為1から8までに係る使用者責任に基づ く損害賠償請求権及び本件徴収行 した(顕著な事実)。 また、被告cは、原告に対し、同日の第1回弁論準備手続期日において、原告の被告cに対する本件徴収行為1から8までに係る使用者責任に基づ く損害賠償請求権及び本件徴収行為3から8までに係る暴対法31条の2に基づく損害賠償請求権について、それぞれ消滅時効を援用するとの意思表示をした。 2 争点⑴ 本件各徴収行為の違法性(争点1) ⑵ 被告bの被用者性・事業執行性(使用者責任又は暴対法31条の2に基づく損害賠償請求について)(争点2)⑶ 損害額(争点3)⑷ 消滅時効(争点4)⑸ 被告らによる消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たるか(争点5) 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1(本件各徴収行為の違法性)【原告の主張】ア本件徴収行為1原告は、平成7年頃に被告bと知り合ったが、その言動等から、被告b に恐怖心を抱いていた。そのような状況の中で、原告は、平成17年頃、 被告bから、事務所立ち上げ費用の名目で、当初300万円の支払を要求された。原告は、この要求を断ったが、被告bから、できる限りでいいから何とか用意してくれと求められた。原告は、この少し前に、被告bにeの事務所に連れて行かれ、若い衆もいる中で、年配の人物から、bのことをよろしく頼む、応援したってくれよと言われたことがあり、被告bへの 支払を断ると、家族や●●に危害が及ぶ可能性があるし、トラブルになるのは嫌だという強い恐怖心を抱いていたため、被告bに対し、同年10月頃、180万円を支払った(本件金銭交付1)。 被告bがeの暴力団員であることを認識している原告に対し、暴力団組事務所立ち上げ費用の名目で金銭を要求することは、暴力団の威力を利用 した資金獲得活動であり、原告 った(本件金銭交付1)。 被告bがeの暴力団員であることを認識している原告に対し、暴力団組事務所立ち上げ費用の名目で金銭を要求することは、暴力団の威力を利用 した資金獲得活動であり、原告の意思決定の自由への侵害が強く認められる。したがって、本件徴収行為1は、みかじめ料の取立てとして高い違法性を有する。 イ本件徴収行為2原告は、平成19年6月頃、被告bの依頼を受けて、同人が使用する● ●●●●●を行った。その数か月後、原告は、被告bから、●が傾いた、●●●が出ているなどの連絡を受けるとともに、よそで直すから、その金を支払うよう求められた。その数日後、被告bの兄弟分から恫喝され、被告bに誠意を見せろと言われた。さらにその後、被告bに呼び出されて話し合ったところ、被告bから、今回の件はそっちのやらかしたことだから、 ちょっとお金を貸して欲しいなどと言われ、500万円を用意するように求められた。原告が返答に窮していると、被告bは、原告に対し、やくざ者なめとったらあかんぞ、警察に行ったって若い衆はほかに一杯おる、●●も家族も知っとる、●●は3日で潰したるなどと言った。原告は、被告bやその兄弟分の脅迫に畏怖し、借用書を作成してもらうことを条件に、 被告bに対し、平成20年2月8日頃、500万円を支払った(本件金銭 交付2)。 上記によれば、本件徴収行為2は、貸金名目での金銭の取立てであり、暴力団の威力を利用した資金獲得活動であるから、みかじめ料の取立てとして高い違法性を有する。 ウ本件徴収行為3から10まで 原告は、平成25年4月9日、被告bから電話で、しばらく会費のほうをもらっていない、今年の分も入れて全部で72万円ぐらいになるけど、そんなことは言わんから、とにかく20万円すぐ ら10まで 原告は、平成25年4月9日、被告bから電話で、しばらく会費のほうをもらっていない、今年の分も入れて全部で72万円ぐらいになるけど、そんなことは言わんから、とにかく20万円すぐ用1意して欲しい、実際●●のところの件でほかのやくざ者からも電話入っとるのを、俺の関係だからというふうで自分が止めている、●●もまだ●●続けたいでしょう、 年間20万円そこそこで●●できるんだったらいいでしょう、孫とも遊びたいでしょうなどと言われ、現金の交付を要求された。原告は、被告bの要求に応じなければ、身体、財産などにいかなる危害を加えられるかもしれないと思い、平成25年4月12日から平成28年8月頃までの間、後援会費又は誕生祝い名目で、合計96万円を支払った(本件金銭交付3~ 10)。 上記によれば、本件徴収行為3から10までは、後援会費又は誕生祝い名目での金銭の取立てであり、暴力団の威力を利用した資金獲得活動であるから、みかじめ料の取立てとして高い違法性を有する。 【被告bの主張】 ア本件徴収行為1本件徴収行為1については、被告bがマンションを購入して、組事務所を立ち上げた際に、原告の自由な意思に基づき、「お祝い金」として贈与を受けたものであり、脅迫した結果によるものではないから、不法行為は成立しない。 イ本件徴収行為2 本件徴収行為2については、被告bと原告との間の金銭消費貸借契約に基づく借入金として受領したものである。また、原告が貸付けに積極的でなかったとしても、警察に相談へ行くこともなく、自ら借用書のひな形を作成し、被告bに返済を約束させて署名押印を求め、500万円を交付しており、被告bによる恐喝行為と評価することができるものではない。したがって、 不法行為は成立 こともなく、自ら借用書のひな形を作成し、被告bに返済を約束させて署名押印を求め、500万円を交付しており、被告bによる恐喝行為と評価することができるものではない。したがって、 不法行為は成立しない。 ウ本件徴収行為3から10まで本件徴収行為3から10までは、いずれも、原告が被告bを応援するため、その自由な意思に基づいてした、被告bの後援会の年会費又は被告bの誕生日のお祝い金を受領したものであるから、不法行為は成立しない。 【被告cの主張】ア本件徴収行為1不知。仮に本件徴収行為1があったとしても、不法行為は成立しない。 イ本件徴収行為2不知。本件金銭交付2は、金銭消費貸借契約に基づき交付されたものとみ るしかないから、不法行為は成立しない。 ウ本件徴収行為3から10まで不知。なお、本件金銭交付4、6、8及び10は、被告bに対する誕生祝いとしてされたものであるから、不法行為は成立しない⑵ 争点2(被告bの被用者性・事業執行性) 【原告の主張】ア被告cは、aの組長として、aの下部組織の構成員を、その直接、間接の指揮監督の下、aの威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていたといえるから、被告cとその下部組織の構成員である被告bとの間には、同事業につき、民法715条1 項所定の使用者と被用者の関係が成立してい る。 また、暴力団は、縄張内で営業する者に不当要求行為を行い、その営業を容認する対価としていわゆるみかじめ料と呼ばれる金銭の定期的な提供を受けることが一般的であり、暴力団の重要な資金源活動となっている。 これらのことからすれば、被告bの本件各徴収行為は、みかじめ料の徴収行為として、aの威力を利用して資金獲得活動に係る事業の執行についてな が一般的であり、暴力団の重要な資金源活動となっている。 これらのことからすれば、被告bの本件各徴収行為は、みかじめ料の徴収行為として、aの威力を利用して資金獲得活動に係る事業の執行についてな されたものといえる。したがって、被告cは、使用者責任に基づいて損害賠償責任を負う。 イまた、被告cは、被告bが属するaの組長であるところ、本件各徴収行為がみかじめ料の徴収にあたり、aという暴力団の威力を利用した資金獲得行為に当たるものといえるから、被告cは、暴対法31条の2に基づく、損害賠責任 を負う。 【被告cの主張】被告cが使用者責任及び暴対法31条の2に基づく損害賠償責任を負うことについては争う。また、同条の2第1号の除外事由に該当することから、被告cに損害賠償債務は生じない。 ⑶ 争点3(損害額)【原告の主張】アみかじめ料 776万円原告は、被告bからみかじめ料の支払を要求され、別紙「交付金一覧表」記載のとおり、平成17年10月頃から平成28年8月頃までの間、10回 にわたって合計776万円の本件各金銭交付をした。 イ慰謝料 200万円ウ弁護士費用 97万6000円エ合計 1073万6000円【被告bの主張】 被告bが、別紙「交付金一覧表」記載番号1から10までのとおり、原告か ら合計776万円を受領したことは認め、その余は否認ないし争う。 【被告cの主張】被告bが、別紙「交付金一覧表」記載番号1から10までのとおり、原告から合計776万円を受領したことは不知、その余は争う。 ⑷ 争点4(消滅時効) 【被告bの主張】ア消滅時効の起算点被告bが本件徴収行為1から8までについて不法行為に基づく損害賠償債務を負ったとしても、当該損害賠 は不知、その余は争う。 ⑷ 争点4(消滅時効) 【被告bの主張】ア消滅時効の起算点被告bが本件徴収行為1から8までについて不法行為に基づく損害賠償債務を負ったとしても、当該損害賠償債務の消滅時効の起算点は、原告が「損害及び加害者を知った」ときであり、本件においては、いずれも原 告から被告bに本件金銭交付1から8までが行われた日である。したがって、本件徴収行為1から8までについての上記損害賠償債務は消滅時効が完成している。 イ原告の主張について原告は、本件各徴収行為について一連の一つの行為として評価することが できることを前提に、本件各徴収行為の消滅時効の起算点は、原告が被告bの畏怖から脱して権利行使が可能になったとき、すなわち、本件刑事事件の判決が確定した平成29年12月8日であると主張する。 しかし、本件徴収行為2と3との間には5年間もの断絶期間があるから、本件各徴収行為を一連の一つの行為と評価することはできない。また、原告 は、平成28年10月8日に神戸aのgと名乗る男からの電話があって初めて警察に届け出ることを決意し、強い畏怖を受けたとはいえるが、それ以前には原告と被告bは、互いに「持ちつ持たれつ」の関係であったから、原告が慢性的、恒常的な強い畏怖状態に陥っていたとはいえない。 【被告cの主張】 ア消滅時効の起算点 原告は、平成17年10月頃の本件金銭交付1の前に、被告bがeの幹部であったこと、eとはaのdのeであることを認識していた。これに加えて、原告は、平成20年2月8日頃に本件金銭交付2として500万円を被告bに貸し付ける際に、これを断ればeを含む全国の組織から報復を受けると認識しており、原告は、同日頃には、被告bが原告から金員を受領する行為が 成20年2月8日頃に本件金銭交付2として500万円を被告bに貸し付ける際に、これを断ればeを含む全国の組織から報復を受けると認識しており、原告は、同日頃には、被告bが原告から金員を受領する行為が 暴力団の威力を利用した資金獲得行為であることを認識していたといえる。 以上によれば、原告は、遅くとも本件金銭交付2がされた平成20年2月8日頃までには、①使用者及び使用者と不法行為者との間に使用関係がある事実、②一般人が当該不法行為が使用者の事業の執行につきされたものであると判断するに足りる事実を認識し、かつ、加害者に対する損害賠償請求が 事実上可能な状況のもとに、可能な程度に加害者を知ったものといえる。 したがって、被告cについては、本件徴収行為1及び2に係る損害賠償債務は、平成20年2月8日頃から消滅時効が進行し、本件徴収行為3から8までに係る損害賠償債務は、本件金銭交付3から8までがそれぞれ行われた日から消滅時効が進行しているから、いずれも消滅時効が完成したというべ きである。 イ原告の主張について原告は、本件各徴収行為について一連の一つの行為と評価すべきであり、また、権利行使が不可能であったことから、被告bの有罪判決が確定した平成29年12月8日まで消滅時効は進行しないと主張する。 しかしながら、本件各徴収行為は、本件徴収行為1と2との間に約2年4か月もの期間が開き、本件徴収行為2と3の間に約5年2か月もの期間が開いており、金額及び名目も異なっている。また、本件徴収行為3から8までについても、徴収時期と金額が異なっていることからすれば、本件徴収行為1から8までに係る損害賠償債務の消滅時効の起算点は、個別に検討すべき である。 また、原告は、本件徴収行為2の前まで 時期と金額が異なっていることからすれば、本件徴収行為1から8までに係る損害賠償債務の消滅時効の起算点は、個別に検討すべき である。 また、原告は、本件徴収行為2の前まで被告bに全く畏怖していない。本件徴収行為2の際には、困惑はあったかもしれないが、弁護士に相談し、結局は借用書を取り付け、貸し付けたことにしている。さらに、本件徴収行為3以後についても、原告が被告bから強い畏怖を受け、権利行使が到底不可能な状況に陥っていたとは認められない。 したがって、原告の上記主張は失当である。 【原告の主張】ア被告bに対する不法行為に基づく損害賠償請求権について みかじめ料の徴収行為について損害賠償請求権の消滅時効が進行するには、①被害者が暴力団の構成員による威力を利用した資金獲得活動によ る畏怖から脱して加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況になること、②不法行為によって損害が発生し、当該相手方が加害者であることを損害賠償請求をすることが可能な程度に知ったことが必要であるというべきである。そして、本件各金銭交付に係る被告bの行為は、みかじめ料の徴収行為として一貫した強固な意思に基づく一連の一つの資金獲得活 動であるから、一連の一つの行為として評価すべきである。 上記記載①について原告は、暴力団構成員である被告bからの強い威力にさらされており、慢性化・恒常化した畏怖状況が継続しており、これから脱却することができなかった。そして、被告bはaの構成員であり、組の威力を利用してお り、原告の上記恐怖はaに対する畏怖でもあった。こうしたことからすれば、本件刑事事件の判決が確定した平成29年12月8日より前に原告が畏怖を脱して損害賠償請求をすることは現 威力を利用してお り、原告の上記恐怖はaに対する畏怖でもあった。こうしたことからすれば、本件刑事事件の判決が確定した平成29年12月8日より前に原告が畏怖を脱して損害賠償請求をすることは現実的に不可能であり、同日よりも消滅時効の起算点が遡ることはないというべきである。 上記記載②について 原告は、事務所立ち上げ費用、貸金、後援会費及び誕生日祝いなどの様々 な名目でみかじめ料を徴収されてきた。それらの金銭の徴収について、原告が直ちに違法なみかじめ料の徴収であり、不法行為による損害賠償請求が可能であると認識することは困難であり、その点からも損害賠償請求が可能な程度に損害及び加害者を知ったということはできない。 以上によれば、被告bの消滅時効の主張は認められない。 イ被告cに対する使用者責任又は暴対法31条の2に基づく損害賠償請求権について使用者責任に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算日については、上記アの①②に加えて、③使用者と不法行為者との間に使用関係がある事実、④一般人が、当該不法行為が使用者の事業の執行につきなされたものであると 判断するに足りる事実、⑤使用者の住所及び氏名を知ることが必要である。 しかし、原告は、上記のとおりaに対して畏怖しており、被告cに対する権利行使は、本件刑事事件の有罪判決が確定した平成29年12月8日まで事実上可能な状況にあったとは認められない(上記①②)。また、原告は、本件訴訟の提起までに、被告cと被告bが使用関係にある事実(上記③)、被告 bの不法行為が被告cの事業の執行についてなされたものであると判断するに足りる事実(上記④)、被告cの住所及び氏名(上記⑤)を認識していなかった。 したがって、本件徴収行 (上記③)、被告 bの不法行為が被告cの事業の執行についてなされたものであると判断するに足りる事実(上記④)、被告cの住所及び氏名(上記⑤)を認識していなかった。 したがって、本件徴収行為1から8までに係る被告cに対する使用者責任又は暴対法31条の2に基づく損害賠償請求権については、いずれも消滅時 効が完成していない。 ⑸ 争点5(被告らによる消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たるか)【原告の主張】消滅時効制度の存在理由からすれば、権利の不行使について、権利の上に眠る者との評価が妥当せず、義務の不履行が明白で時の経過による攻撃防御・採 証上の困難がなく、権利の性質や加害者と被害者の関係等から、時の経過のみ により権利を消滅させる公益性がない場合には、消滅時効の援用は、信義則違反や権利の濫用により制限されるべきである。 原告は、被告bの威力を利用した資金獲得活動による畏怖から脱却できず、暴力団の威力に対する恐怖のために、被告らに対して損害賠償請求を行うことができなかった。このことからすれば、原告は、「権利の上に眠る者」とはいえ ない。また、被告らは、みかじめ料の徴収行為について、不法行為該当性を認めず、損害賠償義務が存在しないと主張するのであるから、義務の不履行が明白であり、「攻撃防御・採証上の困難」の問題はない。さらに、被告bは暴力団の威力を利用して不当な利益を取得しており、また、被告cは、被告bを含むaの構成員を利用して資金獲得活動を行なっている上、被害者である原告によ る権利行使を妨げている被告らに、原告から収奪した利益を保持させ続けることについて何らの「公益性」は存在しない。 これらを踏まえると、被告らによる消滅時効の援用は、時効制度の趣旨に反し、信義則違反又は権利 使を妨げている被告らに、原告から収奪した利益を保持させ続けることについて何らの「公益性」は存在しない。 これらを踏まえると、被告らによる消滅時効の援用は、時効制度の趣旨に反し、信義則違反又は権利濫用として許されない。 【被告bの主張】 原告の主張は争う。 原告は、少なくとも平成20年2月8日頃の500万円の交付(本件金銭交付2)以前には、円満な関係の中で被告bに資金提供を行っており、少なくとも平成25年よりも前の徴収行為(本件徴収行為1及び2)については、暴力団の威力を示してみかじめ料を支払わせていると評価することはできない。 よって、本件徴収行為1及び2に係る不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の援用は、信義則違反又は権利の濫用に当たらない。 【被告cの主張】暴対法31条の3では、指定暴力団の代表者等の損害賠償の責任については、民法の規定によると定めており、暴対法31条の2の損害賠償責任についても、 消滅時効の適用が予定されている。よって、暴力団やその構成員による威力利 用資金獲得活動に対する損害賠償に対し、一般的に、信義則違反又は権利の濫用として排斥されることはない。また、被告らは、原告に対し、損害賠償請求の行使を妨げるような行為をしていない。 したがって、被告cの消滅時効の援用が信義則違反又は権利の濫用に当たることはない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件各金銭交付に至る前の交流 ア原告は、平成七、八年頃、顔見知りのeの組員から被告bを紹介され、その後、被告bと一緒に食事や飲みに行くような関係になり、原告の妻には被告bのことを「bちゃん」と言ったり、仲良く飲み ア原告は、平成七、八年頃、顔見知りのeの組員から被告bを紹介され、その後、被告bと一緒に食事や飲みに行くような関係になり、原告の妻には被告bのことを「bちゃん」と言ったり、仲良く飲みに行く仲間であると紹介したりしていた(甲A10・1頁〔下部中央の頁数。甲A11の頁数についても同様。以下に同じ。〕、甲A11・1、16頁)。原告は、当時から、被告 bがadeの幹部であると認識していた(原告本人14頁)。 イ原告は、平成14年頃、被告bから、eの直参になったので、自身の後援会を立ち上げたいという申出を受け、これを承諾し、暴力団関係者や一般人が参加していた後援会の発足式に参加した。その後、原告は、後援会の会長になるように依頼され、会長となって、その会則や名簿の作成、会費の管理 を担当した。原告は、その後、被告bから、原告が後援会費を私的に流用しているうわさがあると指摘され、身に覚えがなかったことから、会長を辞任した。(甲A10・2〜6頁、A15・2、3頁、原告本人2、3頁)原告は、被告bの後援会の会長を辞任した後も、被告bに対し、年末に後援会費として12万円を、誕生日のお祝い金として当初は毎年3万円、最終 的には毎年10万円を支払っていた(甲A10・7、44頁)。 ⑵ 本件金銭交付1に至った経緯原告は、平成17年頃、被告bから、愛知県●●市内のマンションに組事務所を開くことになったことから、300万円くらい用意して協力してほしい旨頼まれたが、原告は一旦はこれを断った。しかし、被告bからできる限りでいいと頼まれたことから、原告は、自分で用意した80万円と妻に用意しても らった100万円の合計180万円を準備し、平成17年10月頃、被告bにこれを交付した(本件金銭交付1)。(甲A10 りでいいと頼まれたことから、原告は、自分で用意した80万円と妻に用意しても らった100万円の合計180万円を準備し、平成17年10月頃、被告bにこれを交付した(本件金銭交付1)。(甲A10・9、10頁、A11・3頁、A15・3、4頁、原告本人4頁)⑶ 本件金銭交付2に至った経緯ア原告は、平成20年2月頃、被告bの●●●を●●のために預かった際に、 被告bからの依頼に応じて●●●●●をしたところ、その数か月後、被告bから、当該●●●の●●が傾いたなどと言われ、さらに、その数日後、原告の作業で当該●●●が故障したなどと因縁をつけられ、●●代金の請求を受けた。原告は、自身に落ち度がなく、納得することができないと思ったが、断ることができずにこれを支払った。 (甲A10・11〜14頁、A15・4、 5頁、原告本人5、6頁)イ被告bの兄弟分であるhは、上記支払の数日後、原告の●●を訪れ、●●●●●●で話をすることになったところ、hは、突然、態度を急変させて怒り出し、●を壊して弁償するだけで済むのか、兄弟の命はそんなに安いもんじゃねぇだろう、●●●でちゃらにする気か、●●●●間に何かあったら死 んでしまうだろう、お前の●も同じふうにしたるわなどと激しい勢いで怒鳴った。 原告は、どうしていいか分からなくなり、なんとか許してもらおうと考えて土下座して謝ったが、hから、わしに謝られても困る、兄弟に誠意を見せろと言われた。 (甲A10・14〜16頁、A11・5頁、A15・5頁、原告本人6、7 頁)ウ原告は、上記イ記載のhとの面談の数日後、被告bから呼出しを受けて喫茶店で会った際、被告bから、今回の件はそっちのやらかしたことだから、お金を貸して欲しい、1000万円とは言わないから、500 ウ原告は、上記イ記載のhとの面談の数日後、被告bから呼出しを受けて喫茶店で会った際、被告bから、今回の件はそっちのやらかしたことだから、お金を貸して欲しい、1000万円とは言わないから、500万円用意してくれと言われたが、原告は、無理ですと回答した。被告bは何とかしてくれ と言ったが、原告は返事ができず、黙っていた。すると、被告bが突然席を立って店外に出た。原告は、その後を追いかけて店外に出たところ、被告bから、いきなり大きな声で、やくざ者なめとったらあかんぞ、おまえんところの●●なんか3日で潰したるわ、警察に行ったところで、組には若い衆がいっぱいいるから何とでもできるからな、うちの場所も、●●も、家族も知っ とるなどと怒鳴りつけられた。 (甲A10・16〜19頁、A15・5、6頁、原告本人7〜9頁)エ原告は、その後、妻や弁護士に相談して、警察に行くしかないと言われたが、娘の結婚式が数か月後に控えており、何か新聞沙汰になるようなことが起きたり、危害が加えられたりすることが心配であり、家族の安全も考えて 警察には行かず、500万円を用意するしかないと考えた。 原告は、平成20年2月8日頃、喫茶店で被告bに500万円を交付する(本件金銭交付2)とともに、貸したという証拠を残すために借用書を準備して被告bに署名させた。原告は、上記喫茶店に行く前に、妻に対し、30分以上経っても連絡がつかないときは、警察に行くようにと話していた。被 告bからは、その後、5万円が1回、10万円が1回、返済された。 (甲A5、A10・19〜21頁、A11・6〜9頁、A15・6頁、原告本人9〜11頁)⑷ 本件金銭交付3から10までに至った経緯ア原告は、平成25年4月9日頃、被告bから、後援会の会費が滞っている けど、 〜21頁、A11・6〜9頁、A15・6頁、原告本人9〜11頁)⑷ 本件金銭交付3から10までに至った経緯ア原告は、平成25年4月9日頃、被告bから、後援会の会費が滞っている けど、どうなっていると言われたため、原告は、貸した500万円から会費 のほうを相殺するという話じゃなかったのかと言った。しかし、被告bからは、そんな話は全然していない、あんたのところがやらかしたことだから、払うのは当然だろうと言われ、会費も5年、6年たって計算すれば今年の分も含めて合計72万円ぐらいになるけど、そんなことはいわないから、とにかく20万円すぐに用意してほしいと言われた。さらに、被告bは、原告に 対し、実際●●のところの件でほかのやくざ者からも電話入っとるのを、俺の関係だからというふうで自分で止めている、●●もまだ●●続けたいでしょう、年間10万円そこそこで●●できるんだったらいいでしょう、孫とも遊びたいでしょうと言った。 原告は、被告bに逆らうと、●●の邪魔や暴力など何が起こるか分からず、 怖いと感じ、金銭を支払っていくしかないと考え、同月12日頃、eの組員のf(以下「f」という。)を通じて被告bに対し、後援会費として20万円を支払った(本件金銭交付3)。 (甲A8・3頁、A10・26〜32頁、A11・10、11頁、A15・7頁、原告本人12、13頁) イ原告は、平成25年9月1日頃、fから、被告bの誕生日なので、今までどおり10万円をお願いしますとの旨連絡を受けて、同日頃に、誕生日祝として10万円をfを通じて被告bに支払った(本件金銭交付4)。また、原告は、同年12月20日にも、fから連絡を受け、eの組員を通じて被告bに12万円を支払った(本件金銭交付5)。(甲A8・3頁、A10・33、3 通じて被告bに支払った(本件金銭交付4)。また、原告は、同年12月20日にも、fから連絡を受け、eの組員を通じて被告bに12万円を支払った(本件金銭交付5)。(甲A8・3頁、A10・33、3 4頁)ウ被告bは、その後も毎年8月頃又は9月頃には同人の誕生日の祝い金名目で10万円、12月頃には後援会費名目で12万円を要求し、原告は、平成26年8月頃又は同年9月頃に10万円(本件金銭交付6)、同年12月頃に12万円(本件金銭交付7)、平成27年8月頃又は同年9月頃に10万 円(本件金銭交付8)、平成27年12月頃に12万円(本件金銭交付9)、 平成28年8月頃に10万円(本件金銭交付10)をeの組員を通じて被告bに支払った。(甲A6~10、A15、原告本人、弁論の全趣旨)⑸ 本件各金銭交付後の事情原告は、平成28年10月8日、神戸aのgと名乗る人物から電話で、おまえのとこ、bの関係だろう、よう、のうのうと●●やっとるな、うちの●●、 玉取られたんだ、1週間で●●を畳めなどと言われた。これを受けて、原告は、被告bが変な策を仕掛けてきていると考え、これ以上支払い続けても結局はまた同じことになるから、どこかで思い切らないといけないと考え、警察に相談した。(甲A10・36、37頁、A15・8頁) 2 争点1(本件各徴収行為の違法性) ⑴ 本件徴収行為1についてア被告bは、平成17年頃、原告に対し、自らの組事務所の立ち上げ費用として300万円を要求し、原告は、同年10月頃、被告bに180万円を交付している(認定事実⑵)。被告bがadeの幹部であったこと(前提事実⑴イ)からすれば、被告bの上記行為は、暴力団であることを利用して資金 を獲得する行為に当たり得るものといえる。 しかしながら いる(認定事実⑵)。被告bがadeの幹部であったこと(前提事実⑴イ)からすれば、被告bの上記行為は、暴力団であることを利用して資金 を獲得する行為に当たり得るものといえる。 しかしながら、原告は、平成7年頃から被告bと知り合い、一緒に食事や飲みに行くような関係にあり、妻にも被告bを仲良く飲みに行く仲間であると紹介していたこと(認定事実⑴ア)、原告は、平成14年頃、被告bがeの直参になった際に発足した同人の後援会に参加し、また、後援会の会長と なって会則や名簿、会費の管理をしていたこと(認定事実⑴イ)からすれば、原告は、eの幹部である被告bと一定の付き合いのある関係にあったといえる。 そして、原告の妻は、本件金銭交付1について、原告には被告bを応援したいという気持ちがあったと思うと供述していること(甲A11・3頁)、原 告も平成20年2月8日頃の500万円を貸すこと(本件金銭交付2)に なった頃から気持ちが変わってきたという趣旨の供述をしていること(甲A10・44頁)に加えて、本件証拠上、被告bが本件金銭交付1に至るまでの間、原告やその家族等に対し、危害を加えたり、畏怖させるような言動をしたことはうかがわれないことを併せて考えれば、原告が被告bに畏怖するなどして本件金銭交付1を行ったということはできない。 以上のように、本件金銭交付1の際の原告と被告bとの関係や原告が当時畏怖していたなどの事情も認められないことに照らせば、本件金銭交付1の際の被告bの言動によって、原告の意思決定の自由が侵害されて本件金銭交付1が行われたと認めることはできない。 イこの点、原告は、被告bへの支払を断ると、家族や●●に危害が及ぶ可能 性があるし、トラブルになるのは嫌だという強い恐怖心を抱いていたため、本 銭交付1が行われたと認めることはできない。 イこの点、原告は、被告bへの支払を断ると、家族や●●に危害が及ぶ可能 性があるし、トラブルになるのは嫌だという強い恐怖心を抱いていたため、本件金銭交付1を行ったと主張し、それに沿う供述等をするが、上記認定説示に反し、同供述等をにわかに採用することができない。 ウ以上によれば、平成17年10月頃の時点において、原告が畏怖して本件金銭交付1をしたということはできず、他に当時、原告が被告bの言動等に 畏怖又は強い恐怖感を抱いて本件金銭交付1をしたと認めるに足りる証拠もないから、被告bの本件徴収行為1が不法行為として違法であると認めることはできない。 ⑵ 本件徴収行為2についてア前記認定事実によれば、①原告は、平成20年2月頃、●●で被告bの● ●●を預かった際に●●●●●をしたところ、被告bから当該●●●が●●したなどと因縁をつけられ、被告bに●●●●を支払っている(認定事実⑶ア)。そして、②その数日後、原告は、被告bの兄弟分であるhの訪問を受けたところ、同人から、上記①の●●●の件に関して、●を壊して弁償するだけで済むのか、お前の●も同じふうにしたるわなどと激しく怒鳴られたため、 土下座して謝ったが、hから兄弟に誠意を見せろと言われている(認定事実 ⑶イ)。これらの事実からすれば、原告は、平成20年2月頃、被告bの兄弟分であるhから被告bのことに関して怒鳴りつけられるなどしており、被告bに恐怖感を抱いていた状況にあったといえる。 このような状況下において、③原告は、被告bから、お金を貸して欲しい、500万円を用意してくれと言われ、これを断ったところ、被告bから、い きなり大きな声で、やくざ者なめとったらあかんぞ、おまえんところの●● において、③原告は、被告bから、お金を貸して欲しい、500万円を用意してくれと言われ、これを断ったところ、被告bから、い きなり大きな声で、やくざ者なめとったらあかんぞ、おまえんところの●●なんか3日で潰したるわ、警察に行ったところで、組には若い衆がいっぱいいるから何とでもできるからな、うちの場所も、●●も、家族も知っとるなどと怒鳴りつけられている(認定事実⑶ウ)。そして、④原告は、平成20年2月8日頃、報復を恐れて被告bに500万円を交付している(本件金銭交 付2。認定事実⑶エ)。 これらの事実に照らせば、被告bは、原告が被告bに恐怖感を抱いていた状況において、原告に対して、暴力団の威力を示して原告の●●や家族に危害を加えるかもしれないような気勢を示して原告を脅迫し、畏怖させて本件金銭交付2を受けたといえる。したがって、被告bの上記行為は、原告に対 して、暴力団の威力を利用して現金500万円を喝取したものというべきであり、違法というべきである。 イこれに対し、被告らは、本件金銭交付2は単なる貸金の交付であり、被告bの本件徴収行為2を恐喝行為と評価することはできないと主張する。 しかし、被告bが暴力団の威力を示して原告を脅迫し、畏怖させていたと いえることは前記のとおりである。そうすると、原告が貸した証拠を残すために借用書を作成して被告bに署名させていたとしても、本件金銭交付2を任意に行われた正常な貸付行為と評価することは到底できず、被告bの上記行為が違法であるとの前記認定を左右するものではない。また、原告が警察に相談しなかったのは、警察に行ったとしても、組には若い衆がいっぱいい るから何とでもできると被告bから語気強く申し向けられて(認定事実⑶ ウ)、警察に相談すると被告bを含む 察に相談しなかったのは、警察に行ったとしても、組には若い衆がいっぱいい るから何とでもできると被告bから語気強く申し向けられて(認定事実⑶ ウ)、警察に相談すると被告bを含む暴力団員からの報復を受けると原告が畏怖したためであり(認定事実⑶エ)、原告が警察に相談しなかったことをもって原告が畏怖していなかったとはいえず、被告bの上記行為の違法性を否定する事情にはならない。 ウ以上によれば、被告bの本件徴収行為2は不法行為として違法であるとい うべきである。 ⑶ 本件徴収行為3から10までについてア前記認定事実によれば、①被告bは、平成25年4月9日頃、原告に対し、後援会の会費として20万円を用意して欲しいと言うとともに、●●もまだ●●続けたいでしょう、孫とも遊びたいでしょうなどと、原告の●●や家族 に対して危害を加えるかもしれないと述べている(認定事実⑷ア)。そして、②原告は、被告bに逆らうと何が起こるか分からず、怖いと感じ、金銭を支払っていくしかないと考え、同月12日頃、fを通じて被告bに後援会費として20万円を支払っている(認定事実⑷ア)。 そして、原告は、eの幹部である被告bに対して畏怖ないし恐怖感を抱い ており、しかも、前記⑵ア記載のとおり、原告は、本件金銭交付2の際に、被告bから暴力団の威力を示して原告の●●や家族に危害を加えるかもしれないような気勢を示して脅迫されている。こうした点を考えれば、被告bの上記20万円の要求は、原告が暴力団員である被告bに畏怖ないし恐怖感を抱いていることを利用して、原告に後援会費の支払を要求し、20万円を 交付させた(本件金銭交付3)ものといえる。 したがって、被告bの本件徴収行為3は、原告に対して暴力団の威力を利用して現金20万円を喝取 を利用して、原告に後援会費の支払を要求し、20万円を 交付させた(本件金銭交付3)ものといえる。 したがって、被告bの本件徴収行為3は、原告に対して暴力団の威力を利用して現金20万円を喝取したものというべきであり、不法行為として違法というべきである。 イそして、被告bは、その後も平成25年9月1日から平成28年8月頃ま で、別紙「交付金一覧表」記載のとおり、暴力団組員を通じて、原告に対し て、後援会費名目又は誕生日祝い名目で現金の支払を要求し、本件金銭交付4から10までのとおり現金の交付を受けている(認定事実⑷イ、ウ)。前記のとおり、原告が暴力団組員である被告bの言動により畏怖ないし恐怖感を抱いていたことに照らせば、被告bの本件徴収行為4から10までは、暴力団の威力を利用して現金を喝取したものというべきであり、不法行為とし て違法というべきである。 ウ以上に対し、被告らは、後援会費及び誕生日のお祝い金として、原告が自由な意思に基づいて金銭を交付していたのであるから、不法行為は成立しないなどと主張する。 しかしながら、原告は、被告bから平成20年2月頃に原告の●●や家族 に危害を加えるかもしれないような気勢を示して脅迫されており、また、平成25年4月9日頃にも原告の●●や家族に対し、危害を加えるかもしれないと述べて脅されていたことは前記のとおりである。こうした経緯に鑑みれば、本件徴収行為3から10までは、原告が被告bに対して畏怖ないし恐怖感を抱いている状況下で、被告bが暴力団の威力を示して行ったものといわ ざるを得ない。そして、原告は、被告bに逆らうと何が起こるか分からず、怖いと感じ、金銭を支払っていくしかないと考えて、これに応じるようになったのであるから(認定事実⑷ア)、原告による といわ ざるを得ない。そして、原告は、被告bに逆らうと何が起こるか分からず、怖いと感じ、金銭を支払っていくしかないと考えて、これに応じるようになったのであるから(認定事実⑷ア)、原告による本件金銭交付3から10までが原告の自由な意思に基づくものであったとはいえず、被告らの上記主張は採用できない。 エ以上によれば、本件金銭交付3から10までに係る被告bの行為は不法行為として違法というべきである。 3 争点2(被告bの被用者性・事業執行性)⑴ 被告bの被用者性について前提事実⑵イによれば、①aは、その威力をその暴力団員に利用させ、又は その威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上の目的とし、 下部組織の構成員に対しても、aの名称、代紋を使用するなど、その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認しており、②被告cは、aの1次組織の構成員から、また、aの2次組織以下の組長は、それぞれその所属組員から、毎月上納金を受け取り、上記資金獲得活動による収益が被告cに取り込まれる体制が採られていた。また、③被告cは、ピラミッド型の階層的組織を形成す るaの頂点に立ち、構成員を擬制的血縁関係に基づく服従統制下に置き、被告cの意向が末端組織の構成員に至るまで伝達徹底される体制が採られていたといえる。 これらの事情に照らすと、被告cは、aの下部組織の構成員を、その直接間接の指揮監督の下、aの威力を利用した資金獲得活動に係る事業に従事させて いたということができるから、被告cとaの下部組織の構成員との間には、同事業につき、民法715条所定の使用者と被用者の関係が成立していたと解するのが相当である。したがって、被告cとaの下部組織であるeの幹部である被告bとの間には、aの威力を利用しての 員との間には、同事業につき、民法715条所定の使用者と被用者の関係が成立していたと解するのが相当である。したがって、被告cとaの下部組織であるeの幹部である被告bとの間には、aの威力を利用しての資金獲得活動に係る事業につき、民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立していたといえる。 ⑵ 事業執行性について被告bの本件徴収行為2から10までは、被告bがaの下部組織の構成員であるという立場を利用して原告を畏怖させ、その意思に反して金銭を徴収するものであるといえることは前記2記載のとおりである。したがって、被告bの本件徴収行為2から10までは、aの威力を利用しての資金獲得活動に係る事 業の一環というべきであり、被告cの事業の執行と密接に関連する行為といえる。 ⑶ 使用者責任について以上によれば、被告cは、本件金銭交付2から10までに係る被告bの行為について使用者責任を負う。他方、本件金銭交付1については、前記2記載の とおり、被告bに不法行為に基づく損害賠償責任が認められないことから、被 告cの使用者責任も認めることはできない。 ⑷ 暴対法31条の2に基づく損害賠償責任について被告cは、指定暴力団であるaの代表者であり、被告bはaの下部組織の暴力団員であり指定暴力団員であるといえる。また、被告bの本件徴収行為3から10までは、前記2⑶のとおり、暴力団の威力を利用して財産の形成又は事 業の執行のための資金を得るための行為であるといえることからすれば、上記被告bの行為は、「指定暴力団員」による「威力利用資金獲得行為」(暴対法31条の2)といえる。そして、原告は、これによって現金を交付(本件金銭交付3~10)しており、財産を侵害されたといえ、また、同条の2第1号(除外事由)に該当する事 「威力利用資金獲得行為」(暴対法31条の2)といえる。そして、原告は、これによって現金を交付(本件金銭交付3~10)しており、財産を侵害されたといえ、また、同条の2第1号(除外事由)に該当する事実を認めるに足りる証拠もない。 したがって、被告cは、本件金銭交付3から10までに係る被告bの行為について、暴対法31条の2に基づき、損害賠償責任を負う。 なお、同条の2の施行日は平成20年5月2日であることから、施行日前になされた本件徴収行為1及び2については、同条の2は適用されず、被告cは、これらについては同条の2に基づく損害賠償責任をそもそも負わない。 4 争点4(消滅時効)⑴ 被告bの不法行為に基づく損害賠償債務についてア被告bは、前記2記載のとおり、本件徴収行為2から10までについて不法行為に基づく損害賠償債務を負うところ、被告bは、本件徴収行為2から8までに係る損害賠償債務について、それぞれ本件金銭交付2から8までを 受けた日を起算点として3年の時効期間が経過していることから、消滅時効(民法724条)が完成していると主張する。 イそこで検討するに、民法724条前段にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度にこれらを知った時をいう(最高裁昭和45 年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10 号1374頁参照)。 本件において、被告bの本件徴収行為2から8までは、暴力団であることの威力を利用して原告から現金の交付を受けたというものであるところ、原告は、被告bと一定の付き合いのある関係にあったといえること(認定事実⑴ア、イ)からすれば、原告は、被告bの本件徴収行為2から との威力を利用して原告から現金の交付を受けたというものであるところ、原告は、被告bと一定の付き合いのある関係にあったといえること(認定事実⑴ア、イ)からすれば、原告は、被告bの本件徴収行為2から8までに係る 不法行為について、それぞれ被告bに現金を交付した時点において、自己が不法行為の被害を受けており、かつ、加害者である被告bを認識していたといえる。 したがって、原告は、本件金銭交付2から8までのそれぞれの交付時点において、被告bに対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、そ れが可能な程度に「損害及び加害者」を知っていたといえる。 ウこの点、原告は、被告bの上記不法行為が一連の一つの行為であることを前提に、本件刑事事件の判決の確定によって、被告bに対する賠償請求が事実上可能な状況となり、また、被告bに対する賠償請求をすることが可能な程度に損害及び加害者を知ったというべきであり、消滅時効の起算点は、上 記判決の確定日(平成29年12月8日)であると主張する。 しかし、本件金銭交付2から8までの時期は別紙「交付金一覧表」の各「交付年月日」欄記載のとおりであり、それぞれ異なる時期にされたものであるといえる。また、本件徴収行為2から8までは、いずれも暴力団の威力を利用したみかじめ料の徴収行為であるものの、前記2⑵、⑶ないし認定事実⑶、 ⑷のとおり、それぞれ異なる名目、金額、交付経緯でされた別個の行為であり、行為ごとに不法行為が成立するといえる。このような点に照らすと、本件徴収行為2から8までに係る被告bの不法行為を一連の一つの行為と評価することはできない。 また、原告は、暴力団構成員である被告bから強い威力にさらされ、本件 刑事事件の判決確定までは畏怖を脱して損害賠償請求をすることができな 為を一連の一つの行為と評価することはできない。 また、原告は、暴力団構成員である被告bから強い威力にさらされ、本件 刑事事件の判決確定までは畏怖を脱して損害賠償請求をすることができな かったなどと主張する。しかし、本件刑事判決の確定が何故にその畏怖から脱するきっかけとなるかは必ずしも明らかではない。前記認定事実⑸のとおり、結局、原告は、どこかで思い切らないといけないと思って平成28年10月頃に警察に相談したのであるから、本件刑事事件の判決確定までは畏怖を脱して損害賠償請求をすることができなかったと認めることはできない。 さらに、原告は、事務所立ち上げ費用、貸金、後援会費及び誕生日祝いなどの様々な名目でみかじめ料を徴収されてきたのであるから、違法なみかじめ料の徴収であるとか、不法行為による損害賠償請求が可能であるとか認識することが困難であったなどとも主張する。しかし、原告が、被告bへの恐怖心から本件各金銭交付をしたことは前記認定事実のとおりであり、その名 目が上記のとおりであるからといって、被告bの徴収行為の違法性を認識することができなかったなどとは到底認められない。 したがって、原告の上記各主張を採用することはできない。 エ以上によれば、被告bの本件徴収行為2から8までに係る不法行為に基づく損害賠償債務は、本件金銭交付2から8までの各交付時(別紙「交付金一 覧表」の「交付年月日」欄記載の年月日)から消滅時効が進行するというべきである。そうすると、原告は平成30年11月8日に被告らに対して支払の催告をし(前提事実⑸ア)、平成31年3月25日に本件訴訟を提起しているが、いずれも当該催告前に3年の時効期間を経過しているから、いずれも消滅時効が完成し、本件徴収行為2から8までに係る損害賠償債務はい をし(前提事実⑸ア)、平成31年3月25日に本件訴訟を提起しているが、いずれも当該催告前に3年の時効期間を経過しているから、いずれも消滅時効が完成し、本件徴収行為2から8までに係る損害賠償債務はいず れも消滅したといえる。 ⑵ 被告cに対する請求ア被告cは、前記3のとおり、本件徴収行為2から10までについて使用者責任に基づき、本件徴収行為3から10までについて暴対法31条の2に基づき、それぞれ損害賠償債務を負う。これに対し、被告cは、本件徴収行為 2から8までに係る損害賠償債務について、それぞれ本件金銭交付2から8 までを受けた日を起算点として時効期間である3年が経過しているから、消滅時効(民法724条)を援用したことにより上記損害賠償債務が消滅したと主張する。 イそこで検討するに、使用者責任において、「加害者を知った」(民法724条前段)といえるためには、被害者が、使用者及び使用者と不法行為者 との間に使用関係がある事実に加えて、一般人が、当該不法行為が使用者の事業の執行につきなされたものであると判断するに足りる事実についても認識することが必要である(最高裁昭和40年(オ)第486号同44年11月27日第一小法廷・民集23巻11号2265頁参照)。 本件徴収行為2について 前記認定事実によれば、①原告は、平成七、八年頃から被告bと知り合い、食事を共にするなど一定の付き合いのある関係にあり、当時から、被告bがadeの幹部であると認識していた(認定事実⑴ア)。加えて、②原告は、平成14年頃、被告bの後援会の会長となり、会則や名簿を作成したり、会費の管理をしたりするなどしていたこと(認定事実⑴イ)からす れば、原告は、本件金銭交付2がされた平成20年2月8日当時、暴力 成14年頃、被告bの後援会の会長となり、会則や名簿を作成したり、会費の管理をしたりするなどしていたこと(認定事実⑴イ)からす れば、原告は、本件金銭交付2がされた平成20年2月8日当時、暴力団ないしaについて相応の知識を有していたといえる。そして、③原告は、平成20年2月に被告bから500万円の支払を求められ、これを妻に相談した際、警察に言っても、他の組員が一杯いるし、e、全国の組織なので、逆らったら大変なことになるなどと伝えており(甲A10・19頁)、 被告bの要求を断れば、eを含む全国の組織から報復を受ける可能性があると認識していたといえる。 以上に照らせば、原告は、平成20年2月8日に本件金銭交付2をした時点において、被告bが全国的な組織であるaの下部組織の構成員であり、aの代表者である被告cの直接又は間接の指揮下にある者であると認識 していたといえる。そして、被告bの本件徴収行為2は、暴力団の威力を 利用した資金獲得活動であり、原告は、当時、これを認識していたといえることからすれば、上記被告bの行為が使用者の事業の執行についてなされたものであることも認識していたというべきである。 また、前記のとおり、原告は、暴力団ないしaについて相応の知識を有する者であることからすれば、本件金銭交付2の時点において、被告bの 使用者が被告cであることも認識しており、被告cが「加害者」であることを知っていたというべきである。 以上によれば、被告cの本件徴収行為2に係る使用者責任に基づく損害賠償債務は、本件金銭交付2の時点から消滅時効が進行するというべきである。 本件徴収行為3から8までについて被告bの本件徴収行為3から8までは、誕生日祝い又は後援会費名目で徴収 債務は、本件金銭交付2の時点から消滅時効が進行するというべきである。 本件徴収行為3から8までについて被告bの本件徴収行為3から8までは、誕生日祝い又は後援会費名目で徴収されたみかじめ料といえ、暴力団の威力を利用した資金獲得活動であるといえることに加えて、上記記載のような原告の認識に照らせば、被告cの本件徴収行為3から8までに係る使用者責任に基づく損害賠償債 務についても、本件金銭交付3から8までの各交付時点において、原告は、「損害及び加害者」を知っていたといえ、同時点から消滅時効が進行するというべきである。 また、これと同様に、本件徴収行為3から8までに係る暴対法31条の2に基づく損害賠償債務についても、本件金銭交付3から8までの各交付 時点から消滅時効が進行するというべきである。 原告の主張について以上に対し、原告は、加害者を知ったといえるためには、加害者の氏名及び住所についても認識しなければならないと主張する。 しかし、賠償請求の相手方を具体的に特定して認識することができ、社 会通念上、調査すれば容易にその姓名、住所が判明し得る場合には、その 段階で加害者を知ったといえる。原告が暴力団ないしaについて相応の知識を有する者であったといえることは前記のとおりであるから、原告は、調査すれば容易に被告cやその所在地(a総本部の場所)を知ることができたというべきである。したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 ウ以上によれば、被告cの使用者責任に基づく損害賠償債務は、本件金銭交付2から8までの各交付時点、被告cの暴対法31条の2に基づく損害賠償債務は、本件金銭交付3から8までの各交付時点から消滅時効が進行し、本件訴訟提起時点までに消滅時効期間で 害賠償債務は、本件金銭交付2から8までの各交付時点、被告cの暴対法31条の2に基づく損害賠償債務は、本件金銭交付3から8までの各交付時点から消滅時効が進行し、本件訴訟提起時点までに消滅時効期間である3年が経過していることから、消滅時効が完成し、いずれの損害賠償債務も消滅したというべきである。 5 争点5(被告らによる消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たるか)⑴ 原告は、被告らによる消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たると主張する。 しかし、被告bによる本件徴収行為2から8までは、暴力団による威力を利用した資金獲得行為であるといえるものの、このような行為を規制する暴対法 31条の2に基づく損害賠償請求権について、消滅時効の規定の適用が排斥されていないことからすれば、不法行為等の内容が暴力団による威力を利用した資金獲得行為であることをもって、消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用であると解することはできない。そして、原告が被告らに対する損害賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に「損害及び加害者」 を知っていたといえることは前記4⑴イ記載のとおりであり、被告b又は被告cが原告の損害賠償請求権の行使を妨げるなどの事情を認めるに足りる証拠もないことからすれば、本件において、被告b又は被告cの消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たるということはできない。 ⑵ したがって、被告らの消滅時効の援用は、信義則違反又は権利濫用に当たら ない。 6 争点3(損害額)⑴ 被告b及び被告cは、本件徴収行為2から10までについて不法行為又は使用者責任に基づき、被告cは、本件徴収行為3から10までについて暴対法31条の2に基づき、それぞれ損害賠償債務を負うと ⑴ 被告b及び被告cは、本件徴収行為2から10までについて不法行為又は使用者責任に基づき、被告cは、本件徴収行為3から10までについて暴対法31条の2に基づき、それぞれ損害賠償債務を負うといえるところ、前記4記載のとおり、本件徴収行為2から8までに係る損害賠償債務については消滅時効 の援用により消滅していることから、以下、本件徴収行為9及び10について原告の被った損害額について検討する。 ⑵ 財産的損害原告は、被告bの本件徴収行為9及び10によって、別紙「交付金一覧表」のとおり、合計22万円を交付しており、原告は22万円の財産的損害を被っ たといえる。 ⑶ 慰謝料被告bの本件徴収行為9及び10は、暴力団による威力利用資金獲得行為であり、原告の意思決定の自由を侵害するものであることなど諸般の事情を考慮すれば、同徴収行為についての慰謝料としては、20万円と認めるのが相当で ある。 ⑷ 弁護士費用本件事案の内容や性質、本件訴訟に至る経過や本件審理の経過等本件に現れた一切の事情を考慮すれば、被告らによる不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用は、5万円と認めるのが相当である。 ⑸ 以上によれば、被告らは、不法行為又は使用者責任に基づき、原告に対し、連帯して47万円の損害賠償責任を負うというべきである。なお、被告cの本件金銭交付9及び10についての暴対法31条の2に基づく損害賠償責任の損害額は、これを上回るものとは認められない。 第4 結論 以上の次第で、原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容す ることとし、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部 裁判長裁 主文 第1項の限度で理由があるからこれを認容することとし、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部 裁判長裁判官岩井直幸 裁判官棚井啓 裁判官秦卓義

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