平成26年5月16日判決言渡平成25年(ネ)第10043号債務不存在確認請求控訴事件(原審・東京地裁平成23年(ワ)第38969号事件)口頭弁論終結日平成26年3月31日判決控訴人三星電子株式会社訴訟代理人弁護士大野聖二同三村量一同田中昌利同市橋智峰同井上義隆同小林英了同飯塚暁夫同井上聡同逵本憲祐同岡田紘明訴訟代理人弁理士鈴木守補佐人弁理士大谷寛被控訴人アップルジャパン株式会社訴訟承継人AppleJapan合同会社訴訟代理人弁護士長沢幸男同矢倉千栄同 同会社訴訟代理人弁護士長沢幸男同矢倉千栄同永井秀人同稲瀬雄一同石原尚子同金子晋輔同蔵原慎一朗同片山英二同北原潤一同岡本尚美同岩間智女同梶並彰一郎訴訟代理人弁理士大塚康徳同加藤志麻子補佐人弁理士大塚康弘同坂田恭弘 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人による別紙物件目録1及び3記載の各製品の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)について,控訴人が被控訴人に対して特許第4642898号特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことを確認する。 若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)について,控訴人が被控訴人に対して特許第4642898号特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことを確認する。 3 被控訴人による別紙物件目録2及び4記載の各製品の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)について,控訴人が被控訴人に対して有する特許第4642898号特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権が,金995万5854円及びこれに対する平成25年9月28日から支払済まで年5分の割合による金額を超えて存在しないことを確認する。 4 被控訴人のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は第1審,第2審を通じてこれを3分し,その2を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。 6 控訴人に対し,この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は第1審,第2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被控訴人(第1審原告)が,被控訴人による別紙物件目録記載の各製品(以下「本件各製品」と総称し,同目録1記載の製品を「本件製品1」,同目録2記載の製品を「本件製品2」などという。)の生産,譲渡,輸入等の行為は,控訴人(第1審被告)が有する発明の名称を「移動通信システムにおける予め設定された長さインジケータを用いてパケットデータを送受信する方法及び装置」とする特許第4642898号の特許権(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の侵害行為に当たらないなどと主張し,控訴人が被控訴人の上記 トデータを送受信する方法及び装置」とする特許第4642898号の特許権(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の侵害行為に当たらないなどと主張し,控訴人が被控訴人の上記行為に係る本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を求めた事案である。 原判決は,本件製品1及び3は本件特許に係る発明の技術的範囲に属しないとする一方,本件製品2及び4については,本件特許に係る発明の技術的範囲に属するとしつつも,控訴人による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使は権利濫用に当たると判断して,被控訴人の請求を全部認容した。控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。 2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,公知事実若しくは争いのない事実であるか,又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア被控訴人は,パーソナル・コンピュータ,コンピュータ関連機器のハードウェア及びソフトウェア,コンピュータに関連する付属機器の販売等を目的とする合同会社である。 なお,被控訴人は,平成23年10月30日に,米国法人のアップルインコーポレイテッド(以下「アップル社」という。)の子会社であるアップルジャパン株式会社を吸収合併し,本件訴訟における同社の地位を承継した(以下においては,上記吸収合併前のアップルジャパン株式会社についても「被控訴人」という。)。 イ控訴人は,電子電気機械器具,通信機械器具及び関連機器とその部品の製作,販売等を目的とする韓国法人である。 (2) 本件特許権ア控訴人(特許登録原簿上の名称「サムスンエレクトロニクスカンパニーリミテッド」)は,平成18年5月4日,本件特許に係る国際特許出願(国際出願番号・PCT/KR2006/00 本件特許権ア控訴人(特許登録原簿上の名称「サムスンエレクトロニクスカンパニーリミテッド」)は,平成18年5月4日,本件特許に係る国際特許出願(国際出願番号・PCT/KR2006/001699,優先日・平成17年5月4日,優先権主張国・韓国,日本における出願番号・特願2008-507565号。以下「本件出願」という。)をし,平成22年12月10日,本件特許権の設定登録を受けた(甲1の1,2)。 イ本件特許の特許請求の範囲は,請求項1ないし14から成り,その請求項1及び8の記載は,次のとおりである(以下,請求項8に係る発明を「本件発明1」,請求項1に係る発明を「本件発明2」といい,本件発明1及び2を併せて「本件各発明」という。)。 「【請求項1】 移動通信システムにおけるデータを送信する方法であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する段階と,前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含み,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記SDUを伝送可能なPDUのサイズにより複数のセグメントに分割し,各PDUのデータフィールドが前記複数のセグメントのうち一つのセグメントを含む複数のPDUを構成する段階と,ここで,前記各PDUのヘッダーは,SNフィールド,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示す1ビットフィールド,そして前記少なくとも一つのLIフィ Uを構成する段階と,ここで,前記各PDUのヘッダーは,SNフィールド,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示す1ビットフィールド,そして前記少なくとも一つのLIフィールドを含み,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,前記PDUを受信器に伝送する段階と,を有することを特徴とするデータ送信方法。」「【請求項8】 移動通信システムにおけるデータを送信する装置であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,一連番号(SN)フィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,設定するLI挿入部と,ここで,前記PDUの前記データフィールドが前記S 前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,設定するLI挿入部と,ここで,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信部と,を含むことを特徴をするデータ送信装置。」ウ本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」,「構成要件B」などという。)。 (ア) 本件発明1(請求項8)A 移動通信システムにおけるデータを送信する装置であって,B 上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,C 一連番号(SN)フィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,D 前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部と,E 前記SDU 前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部と,E 前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,設定するLI挿入部と,F ここで,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,G 前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信部と,H を含むことを特徴をするデータ送信装置。 (イ) 本件発明2(請求項1)I 移動通信システムにおけるデータを送信する方法であって,J 上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する段階と,K 前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含み,L 前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記SDUを伝送可能なPDUのサイズにより複数のセグメントに分割し,各PDUのデータフィールドが前記複数のセグメントのうち一つのセグメントを含む複数のPDUを構成する段階と,ここで,前記各PDUのヘッダーは,SNフィールド,少なくとも一つの長さインジケ に分割し,各PDUのデータフィールドが前記複数のセグメントのうち一つのセグメントを含む複数のPDUを構成する段階と,ここで,前記各PDUのヘッダーは,SNフィールド,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示す1ビットフィールド,そして前記少なくとも一つのLIフィールドを含み,M 前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,N 前記PDUを受信器に伝送する段階と,O を有することを特徴とするデータ送信方法。 (3) 被控訴人の行為等ア被控訴人は,アップル社が製造した本件各製品を輸入・販売している。 イ本件各製品は,本件発明1の構成要件A及びHを充足する。本件各製品にお けるデータ送信方法は,本件発明2の構成要件I及びOを充足する。 ウ本件各製品は,第3世代移動通信システムないし第3世代携帯電話システム(3G)(ThirdGeneration)の普及促進と付随する仕様の世界標準化を目的とする民間団体である3GPP(ThirdGenerationPartnershipProject)が策定した通信規格であるUMTS規格(UniversalMobileTelecommunicationsSystem)に準拠した製品である(乙1ないし5。以下,3GPPが定める通信規格を「3GPP規格」ということがある。)。 UMTS規格とは,3GPPで策定された第3世代移動通信システムの総称であり,多数の技術仕様からなっている。UMTS規格のうちの無線通信規格には,W-CDMA方式(WidebandCode UMTS規格とは,3GPPで策定された第3世代移動通信システムの総称であり,多数の技術仕様からなっている。UMTS規格のうちの無線通信規格には,W-CDMA方式(WidebandCodeDivisionMultipleAccess。一般に「W-CDMA」といった場合には,UMTS規格と同義に使われる例もあるが,本判決においては,「W-CDMA」といった場合には,3GPPの技術仕様書(TechnicalSpecification。以下「TS」と表記することがある。)のうち,25シリーズに規定されている方式を指すものとする。)のほか,LTE方式(LongTermEvolution。 3GPPのTSのうち36シリーズに規定されている。)などがある。 (4) 本件特許に関するFRAND宣言ア 3GPPを結成した標準化団体の一つであるETSI(EuropeanTelecommunicationsStandardsInstitute)(欧州電気通信標準化機構)は,知的財産権の取扱いに関する方針として「IPRポリシー」(IntellectualPropertyRightsPolicy)を定めている。 IPRポリシー(2009年4月8日付けのもの)には,次のような規定がある(甲12,160。原文英語)。 「3 方針の目的3.1 ETSIは,総会が提議した,ヨーロッパの通信セクターの技術的な目的に最も資する解決策に基づく規格および技術仕様を作成することを目的としている。この目的を推進するため,ETSIのIPRについての方針は,ETSIおよ び会員,ETSI規格および技術仕様を適用するその他の,規格の準備および採用,適用への投資が,規格または技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性 ての方針は,ETSIおよ び会員,ETSI規格および技術仕様を適用するその他の,規格の準備および採用,適用への投資が,規格または技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減するためのものである。この目的を達成するに当たり,ETSIのIPRについての方針では,通信分野での一般利用の標準化の必要性と,IPRの所有者の権利との間のバランスを取ることが求められる。 3.2 IPRの所有者は,ETSIの会員またはその関連会社,第三者であるかによらず,規格および技術仕様の実装で,IPRの使用につき適切かつ公平に補償されるものとする。」「4 IPRの開示4.1 ・・・各会員は,自らが参加する規格または技術仕様の開発の間は特に,ETSIに必須IPRについて適時に知らせるため合理的に取り組むものとする。 特に,規格または技術仕様の技術提案を行う会員は,善意をもって,提案が採択された場合に必須となる可能性のあるその会員のIPRについてETSIの注意を喚起するものとする。」「4.3 上記の第4.1項に従っての義務は,ETSIにこの特許ファミリーの構成要素について適時に知らされた場合には,すべての既存および将来のその特許ファミリーの構成要素につき満たされたとみなされる。・・・」「6 ライセンスの可用性6.1 特定の規格または技術仕様に関連する必須IPRがETSIに知らされた場合,ETSIの事務局長は,少なくとも以下の範囲で,当該のIPRにおける取消不能なライセンスを公正,合理的かつ非差別的な条件(fair, reasonableandnon-discriminatorytermsandconditions)で許諾する用意があることを書面で取消不能な形で3カ月以内に保証することを (fair, reasonableandnon-discriminatorytermsandconditions)で許諾する用意があることを書面で取消不能な形で3カ月以内に保証することを,所有者にただちに求めるものとする。 ・製造で使用するべく,ライセンシー自身の設計で,カスタマイズした部品およびサブシステムを製造または過去から引き続き製造する権利を含む,製造。 ・上記で製造した機器の販売または賃貸,処分。 ・機器の修理または使用,動作,および・方法の使用。 上記の保証は,ライセンスの相互供与に同意することを求めるという条件に従い行われる場合がある。・・・6.2 特許ファミリーの指定された構成要素に関する,第6.1項に従っての保証は,保証が行われた時点で指定したIPRを除外する旨を明示する書面がある場合を除き,その特許ファミリーのすべての既存および将来の必須IPRに適用されるものとする。当該の除外の範囲は,明示的に指定されたIPRに限定されるものとする。 6.3 要請されたIPRの所有者の保証が許諾されない場合,委員会の委員長は,適切な場合,ETSI事務局と協議の上,問題が解決するまで,委員会が規格または技術仕様についての作業を停止すべきかどうかについて判断し,および/または関連の規格または技術仕様の承認を行うものとする。」「12 このポリシーは,フランス法に準拠する。」「15 定義(判決注:本判決においても「必須」,「IPR」,「会員」,「特許ファミリー」の語を,以下の定義に基づいて用いることとする。)・・・ 6 IPRに適用される「必須」とは,(商業的ではなく)技術的な理由で,標準化の時点で一般に利用可能な通常の技術慣行および最新技術を考慮し,IPRに抵触せずに規格に準 こととする。)・・・ 6 IPRに適用される「必須」とは,(商業的ではなく)技術的な理由で,標準化の時点で一般に利用可能な通常の技術慣行および最新技術を考慮し,IPRに抵触せずに規格に準拠する機器または方法を製造または販売,賃貸,処分,修理,使用または動作できないことを意味する。疑義を回避するため,規格が技術的な解決策でのみ実行可能で,すべてがIPRに抵触する例外的な場合で,当該のすべてのIPRは必須とみなされるものとする。 7 「IPR」とは,商標以外の知的財産権の適用を含む,法律により参照された知的財産権を意味するものとする。疑義を回避するため,体裁に関連する権利または機密情報,企業秘密,同様のものは,IPRの定義から除外される。・・・ 9 「会員」とは,ETSIの会員または賛助会員を意味するものとする。会員の参照は,文脈が許す場合には常に,その会員およびその関連会社と解釈されるものとする。・・・ 13 「特許ファミリー」とは,優先順位の高い文書それ自体を含む,一般に1つ以上の優先順位のあるすべての文書を意味するものとする。疑義を回避するため,「文書」は特許および実用新案,その応用を表す。」イ(ア) 控訴人は,1998年(平成10年)12月14日,ETSIに対し,UMTS規格としてETSIが推進しているW-CDMA技術に関し,控訴人の保有する必須IPRライセンスを,ETSIのIPRポリシー6.1項に従って,「公正,合理的かつ非差別的な条件」(fair, reasonableandnon-discriminatorytermsandconditions)(以下「FRAND条件」という。)で許諾する用意がある旨の誓約(宣言)をした(甲5)。 (イ) 控訴人は,2007年(平成19年)8月7 natorytermsandconditions)(以下「FRAND条件」という。)で許諾する用意がある旨の誓約(宣言)をした(甲5)。 (イ) 控訴人は,2007年(平成19年)8月7日,ETSIに対し,ETSIのIPRポリシー4.1項に従って,本件出願の優先権主張の基礎となる韓国出願の出願番号,本件出願の国際出願番号(PCT/KR2006/001699)等に係るIPRが,UMTS規格(TS 25.322等)に関連して必須IPRであるか,又はそうなる可能性が高い旨を知らせるとともに,ETSIのIPRポリシー6.1項に準拠する条件(FRAND条件)で,取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(以下「本件FRAND宣言」という。)をした(甲13)。 本件FRAND宣言には,その有効性等はフランス法に準拠するとの文言及び規格に関し相互にライセンスを供与することを求めるとの条件に従い行われるとの文言が含まれていた。 (5) 本件訴訟に至る経緯等ア控訴人は,平成23年4月21日,被控訴人による本件各製品の生産,譲渡,輸入等の行為が本件各発明に係る本件特許権の直接侵害又は間接侵害(特許法101条4号,5号)を構成する旨主張して,特許法102条に基づく差止請求権を被保全権利として,被控訴人に対し,本件各製品の生産,譲渡,輸入等の差止め等を求める仮処分命令の申立て(東京地方裁判所平成23年(ヨ)第22027号事件。 以下「本件仮処分の申立て」という。)をした。 イ被控訴人は,平成23年9月16日,本件訴訟を提起した。 控訴人は,同年12月6日,「iPhone 4S」についても,同様の仮処分の申立て(東京地方裁判所平成23年(ヨ)第22098号事件。以下「別件仮処分の申立て」という。)をした。 控訴人は, 控訴人は,同年12月6日,「iPhone 4S」についても,同様の仮処分の申立て(東京地方裁判所平成23年(ヨ)第22098号事件。以下「別件仮処分の申立て」という。)をした。 控訴人は,平成24年9月24日,本件仮処分の申立てのうち,本件製品1及び3を対象とする部分を取り下げた。 ウ東京地方裁判所は,平成25年2月28日,原判決を言い渡し,同日,本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申立てについても,控訴人による本件特許権の行使は権利濫用に当たるとして申立てを却下する旨の決定をした。 3 争点本件の争点は,①本件各製品についての本件発明1の技術的範囲の属否(争点1),②本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)の成否(争点2),③特許法104条の3第1項の規定による本件各発明に係る本件特許権の権利行使の制限の成否(争点3),④本件各製品に係る本件特許権の消尽の有無(争点4),⑤控訴人の本件FRAND宣言に基づく本件特許権のライセンス契約の成否(争点5),⑥控訴人による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使の権利濫用の成否(争点6)及び⑦損害額(争点7)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件各製品についての本件発明1の技術的範囲の属否)について(1) 控訴人の主張ア本件各製品の構成(ア) 本件各製品は,3GPP規格であるUMTS規格(W-CDMA方式)に準拠したものであるから,3GPPが2006年(平成18年)9月に策定した3GPP規格の技術仕様書「3GPPTS 25.322 V6.9.0」(甲1の3,乙6。以下「本件技術仕様書V6.9.0」という。)記載の構成を備えている。 そして,本件技術仕様書V6.9.0の「4.2.1.2 アンアクナリッ PTS 25.322 V6.9.0」(甲1の3,乙6。以下「本件技術仕様書V6.9.0」という。)記載の構成を備えている。 そして,本件技術仕様書V6.9.0の「4.2.1.2 アンアクナリッジドモード(UM)RLCエンティティ」,「4.2.1.2.1 送信UMRLCエンティティ」,「9.2.1.3 UMDPDU」,「9.2.2.5 エクステンションビット(E)」及び「9.2.2.8 長さインジケータ(LI)」(以下,それぞれを「4.2.1.2項」,「4.2.1.2.1項」などという。)によれば,本件各製品は,いずれも,次のとおりの構成を有している(以下,各構成を「構成a」,「構成b」などという。)。 a 本件各製品は,移動通信システムにおいてデータを送信する装置である。 b 本件各製品は,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)の利用可能なスペースより大きい場合には適当なサイズのPDUに分割するための伝送バッファを有している(別紙3GPPTS25.322 V6.9.0(抜粋)(以下「別紙TS」という。)の1及び2記載の4.2.1.2項及び4.2.1.2.1項参照)。 c 本件各製品は,一連番号(SN)フィールドとEビットフィールドを有するUMDヘッダと,長さインジケータ(LI)とを含むRLCヘッダをデータに対して付加するヘッダ付加部を有する(別紙TSの3記載の9.2.1.3項参照)。 d ヘッダ付加部は,PDUに含まれるものが分割,連結,パディングされていない完全なSDUの場合には完全なSDUが含まれることを示す「0」を設定し,PDUに含まれるものが完全なSDUでない場合にはEビットに長さインジケータが存在することを示す「1」を設定する(別紙TSの4記 完全なSDUの場合には完全なSDUが含まれることを示す「0」を設定し,PDUに含まれるものが完全なSDUでない場合にはEビットに長さインジケータが存在することを示す「1」を設定する(別紙TSの4記載の9.2.2.5項参照)。 e ヘッダ付加部は,SDUが一つのPDUに含まれない場合に,少なくとも一つのPDUのEビットフィールド以後にLIフィールドを挿入する(別紙TSの5(1)記載の9.2.2.8項参照)。 f ヘッダ付加部は,PDUのデータフィールドがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含む場合,LIフィールドは,PDUがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含むことを示す予め定められた値(「111 1110」又は「111 1111 1111110」)を設定する(別紙TSの5(2)記載の9.2.2.8項参照)。 g 本件各製品は,ヘッダ付加部から受信される少なくとも一つのPDUを受信側のエンティティに伝送する送信部を有している。 h 本件各製品は,データを送信することができる装置である。 (イ)a カナダ法人のチップワークス社による実機テスト(以下「本件実機テスト」という。)の報告書(乙13)は,本件製品2及び4が,本件技術仕様書V6.9. 0の「AlternativeE-bit 解釈」(代替的Eビット解釈)に基づく機能(9.2.2. 5項及び9.2.2.8項)を実装していることを示している。このことは,電気通信大学A教授作成の鑑定意見書(乙14)からも裏付けられる。 (a) 本件実機テストに「基地局エミュレータ」として用いた機器は,ドイツ法人のローデ・シュワルツ社製の無線機テスタ「CMW500 universalradiocommunication 。 (a) 本件実機テストに「基地局エミュレータ」として用いた機器は,ドイツ法人のローデ・シュワルツ社製の無線機テスタ「CMW500 universalradiocommunicationtester」(以下「CMW500」という。)である。CMW500は,W-CDMA方式に対応したもので,実際のネットワークと同様の通信環境を実現することができる機器である(乙14の10頁,乙41)。CMW500は,GCF(GlobalCertificationForum) 及びPTCRB (PCSTypeCertificationReviewBoard) といった国際的な機関による認証を受けている。 テスト1「PDUサイズ:488ビット,SDUサイズ:480ビット」は,「PDUが分割,連結,パディングされていない完全なSDUを含む場合」のデータサイズの組合せである。なお,PDUサイズがSDUサイズより8ビットだけ大きくなっているのは,SDUをPDUに変換する際に8ビットのPDUヘッダ(一連番号(SN)の7ビット+Eビットの1ビット)が付加されることを考慮したためである(乙14の10頁)。 テスト2「PDUサイズ:80ビット,SDUサイズ:480ビット」は,最初と最後を除いたPDU(例えば,2番目のPDU)が「中間セグメント」に該当するデータサイズの組合せであり,この中間セグメントとしてのPDUをモニタするものである(乙14の11頁)。 (b) 本件実機テストの結果は,次のとおりである。 ① PDUがSDUを完全に含む場合(テスト1)には,一連番号(SN)に続くEビットが「0」となり,長さインジケータを含まないPDUが出力されている(乙13の図12,14)。 ② PDUがSDUの中間セグメントを含む場合(テ 場合(テスト1)には,一連番号(SN)に続くEビットが「0」となり,長さインジケータを含まないPDUが出力されている(乙13の図12,14)。 ② PDUがSDUの中間セグメントを含む場合(テスト2)には,一連番号(SN)に続くEビットが「1」となり,長さインジケータとして所定値(1111110)を含むPDUが出力されている(乙13の図13,15)。 (c) 9.2.2.5項には,代替的Eビット解釈として,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」である場合,Eビットを「0」とし,「次のフィールドは,長さインジケータとEビット」である場合,Eビットを「1」とすることが,9.2.2.8項には,代替的Eビット解釈が設定され,かつ,PDUがSDUの中間セグメントを含む場合,7ビットの長さインジケータが用いられるときは,値「111 1110」を持つ長さインジケータを用いることが記載されている。 本件実機テストの結果におけるEビットの値及び長さインジケータの値(前記(b))は,本件技術仕様書V6.9.0の代替的Eビット解釈に基づく機能と整合しており,本件製品2及び4が上記機能を実装していることを示すものといえる。 b この点に関し被控訴人は,本件実機テストの結果の「Interpretation」の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されており,「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」と表示されていないから,本件実機テストでは,代替的Eビット解釈ではなく,本件技術仕様書V6.9.0の9.2. 2.5項記載の「NormalE-bit 解釈」(通常Eビット解釈)(別紙TSの4参照)が用いられているなどと主張する。 しかし,代替的Eビット解釈において,E V6.9.0の9.2. 2.5項記載の「NormalE-bit 解釈」(通常Eビット解釈)(別紙TSの4参照)が用いられているなどと主張する。 しかし,代替的Eビット解釈において,Eビットに「0」が設定される場合,次に続くビット列が「データ」(ただし,「完全なSDU」の「データ」である。)であることには相違がないから,「Interpretation」の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されていることは本件実機テストに代替的Eビット解釈が使用されていることと相反するものではない。 また,控訴人が通常Eビット解釈に従った場合(CMW500の設定画面の「altE_bitinterpretation」のチェックボックス(乙13の図11)にチェックを入れない場合)についての比較テストの結果を確認したところ,チェックを入れた場合と入れない場合とでは,PDUヘッダの構成が異なっており,しかも,チェックを入れない場合には通常Eビット解釈に従ったPDUヘッダが出力されていた(乙55の35頁ないし38頁)。かかる比較テストの結果は,本件実機テストにおいて,通常Eビット解釈ではなく,代替的Eビット解釈が用いられていることを明確に示すものである。 したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。 イ構成要件B及びDの充足(ア) 本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項記載の代替的Eビット解釈は,以下に述べるとおり,本件発明1の構成要件B及びDの内容を開示したものである。 本件発明1は,「SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し」(構成要件B),「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記 Uが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し」(構成要件B),「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」(構成要件D)する構成を備えている。 構成要件Dの文言,本件特許に係る明細書(甲1の2。以下,図面を含めて「本件明細書」という。)の段落【0022】及び図5Aによれば,構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合,すなわち,「SDUのサイズがPDUのペイロードのサイズに完全に一致する場合」を意味するものであり,SDUが連結されてPDUに格納されている場合やSDUがパディングとともにPDUに格納されている場合は,これに含まれない。 そして,9.2.2.5項には,「代替的Eビット解釈」として,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」である場合,すなわち,SDUがPDUに完全に含まれる(一致する)場合は,Eビットを「0」とし,そうでない場合は,Eビットを「1」とすることが記載されており(別紙TSの4参照),上記記載は,SDUがPDUに完全に含まれる(一致する)か否かの判定を行い,その判定結果に従ってEビットを上記のように設定することを規定するものといえるから,構成要件Bの「SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否か」を「判定」する構成及び構成要件Dの「前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する構成を開示している。なお,4.2.1.2.1項(別紙TSの2参照)と9.2.2.5項との関係は 定」する構成及び構成要件Dの「前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する構成を開示している。なお,4.2.1.2.1項(別紙TSの2参照)と9.2.2.5項との関係は,4. 2.1.2.1項は,Eビットのタイプによらず,SDUがPDUよりも大きいか否かを判定するという包括的な記載にとどまり,代替的Eビット解釈が使用される場合の具体的な比較の手法は,9.2.2.5項に記載されていると合理的に理解することができる。 (イ) 以上を前提とすると,本件各製品の構成b及びdは,構成要件B及びDをそれぞれ充足する。 ウ構成要件C,EないしGの充足本件各製品の構成cは構成要件Cを,構成eは構成要件Eを,構成fは構成要件Fを,構成gは構成要件Gをそれぞれ充足する。 エまとめ(ア) 以上のとおり,本件各製品は,本件発明1の構成要件BないしGを充足し,また,本件各製品が構成要件A及びHを充足することは,前記争いのない事実等(3)イのとおりである。 したがって,本件各製品は,本件発明1の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 (イ) これに対し被控訴人は,本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属するというためには,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を現実のネットワーク上で実行していることを立証する必要があるところ,代替的Eビット解釈は,通常Eビット解釈のオプション的なものであり,通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定していることについての立証がないから,本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属しない旨主張する。 しかし,本件各製品は,本件発明1の構成要件を全て充足し,代替的Eビット解釈を実施する構成を備えている以上,本件発明1の技 証がないから,本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属しない旨主張する。 しかし,本件各製品は,本件発明1の構成要件を全て充足し,代替的Eビット解釈を実施する構成を備えている以上,本件発明1の技術的範囲に属するというべきであり,現実のネットワーク上で通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定しているかどうかは本件発明1の技術的範囲の属否とは無関係である。 したがって,被控訴人の上記主張は失当である。 (2) 被控訴人の主張ア本件各製品の構成について(ア) 本件各製品におけるUMTS規格に関連する処理は,本件各製品に実装されたベースバンドチップによって行われている(以下,本件各製品に実装されているベースバンドチップを「本件ベースバンドチップ」という。)。本件ベースバンドチップは,アップル社がインテル社(IntelCorporation)製のチップをその完全子会社であるインテル・アメリカ社(IntelAmericas, Inc.)を通じて購入し,実装したものである。 本件製品1及び3には,インテル社製のベースバンドチップ「PMB8878」が搭載されているところ,「PMB8878」が準拠している3GPP規格は,本件出願の優先日前に公開された「リリース5」と呼ばれるバージョンであり,代替的Eビット解釈は含まれていないから,本件製品1及び3が控訴人主張の構成bないしgを有することは争う。 また,本件製品2及び4が控訴人主張の構成bないしgを有することは不知である。 (イ)a 控訴人主張の本件実機テストの報告書(乙13)は,本件製品2及び4が代替的Eビット解釈に基づく機能を実装していることを基礎付けるものではない。 すなわち,本件実機テストは,基地局のように振る舞うエミュレータに携 件実機テストの報告書(乙13)は,本件製品2及び4が代替的Eビット解釈に基づく機能を実装していることを基礎付けるものではない。 すなわち,本件実機テストは,基地局のように振る舞うエミュレータに携帯端末を接続し,テスト端末からエミュレータに送信されるデータを解析するためのソフトウェアを用いてテストを行っているにすぎないものであり,このような現実のネットワークとは異なる単なるテスト環境において実施したテストの結果によって,本件各製品が現実のネットワークにおいて代替的Eビット解釈に基づく機能を実行できることを示すものではない。 b また,本件実機テストの報告書(乙13)には,次のような不備又は問題点があり,本件製品2及び4が代替的Eビット解釈に基づく機能を実装していることを基礎付けるものではない。 (a) 乙13の図12及び図14のテストログ(テスト1)においては,「Byte」欄の「68」の2列目の行において,Eビットが「0」に設定されるとともに,「Interpretation」欄に「nextoctet: data」(訳文「次のオクテット:データ」)と記載されている。このように「次のフィールド」が「データ」と記載されていることからすると,本件実機テストは,代替的Eビット解釈ではなく,通常Eビット解釈が使用されている場合(本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項の「通常Eビット解釈」のビット「0」の場合)であると考えるのが素直である。 また,乙13の図12及び図14のテストログに示されているビット列は,テスト製品から出力されたデータの一部でしかないため,PDUが分割,連結,パディングされていない一つの完全なSDUを含んでいるのか,別のものを含んでいるのか定かでないから,そもそも図12及び図14のテストログを根拠として 一部でしかないため,PDUが分割,連結,パディングされていない一つの完全なSDUを含んでいるのか,別のものを含んでいるのか定かでないから,そもそも図12及び図14のテストログを根拠として,テストに用いた製品が代替的Eビット解釈を使用しているとの結論を導くことはできない。 なお,乙13の図11の「altE_bitinterpretation」のチェックボックスにチェックが入っていることと,テスト製品において実際に代替的Eビット解釈が使用されるかどうかとは無関係である。 (b) 乙13の図13及び図15のテストログ(テスト2)における「1111110」という値が設定された長さインジケータが,中間セグメントを含む長さインジケータにだけ設定されることを裏付ける証拠がない以上,上記値が中間セグメントを含むPDUの存在を示していると結論付けることはできない。 また,乙13の図13及び図15も,図12及び図14と同様に,テスト製品から出力されたSDUの表示部分を表示するにとどまり,SDUの他のセグメントがどのような状態になっているか明らかにされていない。 したがって,図13及び図15は,テスト製品が代替的Eビット解釈を実装していることを基礎付けるものとはいえない。 イ構成要件B及びDの非充足本件発明1の構成要件B及びDは,以下のとおり,本件技術仕様書V6.9.0記載の構成と異なる構成のものであるから,仮に控訴人が主張するように本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成を備えているとしても,本件各製品が構成要件B及びDを充足するとはいえない。 (ア) 構成要件Bについて構成要件Bの「前記SDUが一つのPDUに含まれるか否かを判定」との記載と構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PD を充足するとはいえない。 (ア) 構成要件Bについて構成要件Bの「前記SDUが一つのPDUに含まれるか否かを判定」との記載と構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示す」との記載を総合すると,構成要件Bにおける「前記SDUが一つのPDUに含まれる」とは,「SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)」ことを意味すると解すべきである。 このように本件発明1は,構成要件Bにおいて,SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)か否かを判定する方式を採用している。 他方で,本件技術仕様書V6.9.0の4.2.1.2.1項の「RLCSDUがUMDPDUの利用可能なスペースの長さより大きい場合」に「RLCSDUを適当なサイズのUMDPDUsに分割する。」との記載によれば,4.2. 1.2.1項記載の判定方式は,SDUの分割が必要か否かを決定することを目的とし,SDUがPDUの利用可能な領域よりも大きいか否か(SDUとPDUの大小関係)を判定する方式であって,SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)か否かを判定する方式とは異なるものである。 また,控訴人主張の本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項の記載は,Eビットに設定される「0」又は「1」という値をそれぞれどのように解釈すべきかについて規定しているにすぎず,判定方式については何ら述べていない。 したがって,本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成bを備えていることをもって,本件各製品が構成要件Bを充足するとはいえない。 (イ) 構成要件Dについて構成要件Dにいう「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,①パディ に準拠した構成bを備えていることをもって,本件各製品が構成要件Bを充足するとはいえない。 (イ) 構成要件Dについて構成要件Dにいう「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,①パディングが生じている場合(すなわち,SDUがパディングとともにPDUに格納される場合),②連結が生じている場合(すなわち,SDUが一つ又は複数の他のSDUと連結され,PDUに格納される場合),③分割,連結及びパディングのいずれも生じていない場合(すなわち,SDUのサイズがPDUのペイロードのサイズに完全に一致する場合)を全て対象とするものであるから,構成要件Dを充足するというためには,上記①又は②の場合であっても,「PDUが分割,連結又はパディングなしにSDUを完全に含むことを示すように1ビットフィールドが設定」されなければならない。 他方で,本件技術仕様書V6.9.0記載の代替的Eビット解釈においては,上記③の場合にのみ,PDUが完全なSDUを含むことを示すように1ビットフィールドが設定されるのであるから,構成要件Dと本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成dとでは,PDUが分割,連結又はパディングされていないSDUを含むことを示すように1ビットフィールドが設定される条件が異なるとともに,PDUが連結又はパディングの生じているSDUを含む場合の1ビットフィールドの設定方法が異なっている。 したがって,本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成dを備えていることをもって,本件各製品が構成要件Dを充足するとはいえない。 ウ本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できることの立証がないこと本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属するというためには,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全て 件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できることの立証がないこと本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属するというためには,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できることを立証する必要があり,そのためには,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していることを示す必要があるというべきである。 すなわち,代替的Eビット解釈は,本件各製品それ自体が単独で実行できるものではなく,いかなる携帯端末も,代替的Eビット解釈を使用するようネットワークから指示されない限り,基地局へのデータ送信に際し,デフォルトの「通常Eビット解釈」を実行するのであり,その場合には,本件発明1の構成要件D及びFが規定する内容に従ってEビットや長さインジケータが設定されることはないのであるから,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行するには,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していなければならない。 しかるに,本件においては,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していることを示す証拠は存在せず,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できるものといえないから,本件各製品は本件発明1の技術的範囲に属しない。 エまとめ以上のとおり,本件各製品は,本件発明1の構成要件を充足せず,また,本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できるものといえないから,本件発明1の技術的範囲に属しない。 2 争点2(本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)の成否)について(1) 控訴人の主張ア本件各製品におけるデ いから,本件発明1の技術的範囲に属しない。 2 争点2(本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)の成否)について(1) 控訴人の主張ア本件各製品におけるデータ送信方法の構成前記1(1)アの本件各製品の構成によれば,本件各製品におけるデータ送信方法(以下「本件方法」という。)は,次のとおりの構成を有している(以下,各構成を「構成i」,「構成j」などという。)。 i 本件方法は,移動通信システムにおいてデータを送信する。 j 本件方法は,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する。 kSDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれる場合に,ヘッダとデータを含むPDUを構成する。ここで,ヘッダには,一連番号フィールドと,PDUに含まれるのが分割,連結,パディングされていない完全なSDUを含むことを示す値「0」が設定されるEビットフィールドとを含む。 lSDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)の利用可能なスペースより大きい場合には,適当なサイズのPDUに分割する。ここで,ヘッダには,一連番号フィールドと,PDUに含まれるのが完全なSDUでない場合に,長さインジケータが存在することを示す値「1」が設定されるEビットフィールドと,長さインジケータとを含む。 mPDUのデータフィールドがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含む場合,LIフィールドは,PDUがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含むことを示す予め定められた値(「111 1110」又は「111 1111 1111 1110」)が設定される。 n 本件 の最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含むことを示す予め定められた値(「111 1110」又は「111 1111 1111 1110」)が設定される。 n 本件方法は,PDUを受信側のエンティティに伝送する。 o 本件方法は,データを送信する。 イ本件方法が本件発明2の技術的範囲に属すること(ア) 本件方法の構成jないしnは,本件発明2の構成要件JないしNをそれぞれ充足する。 この点に関し,被控訴人は,本件発明2の構成要件J及びLは,本件技術仕様書V6.9.0記載の構成と異なる構成のものであるから,本件方法が構成要件J及びLを充足するとはいえない旨主張するが,前記1(1)イで構成要件B及びDについて述べたのと同様の理由により,構成要件J及びLは,本件技術仕様書V6.9. 0記載の代替的Eビット解釈の内容を開示したものであるから,被控訴人の上記主張は理由がない。 (イ) 以上のとおり,本件方法は,本件発明2の構成要件JないしNを充足し,また,本件方法が構成要件I及びOを充足することは,前記争いのない事実等(3)イのとおりである。 したがって,本件方法は,本件発明2の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 ウ間接侵害の成立(ア) 特許法101条4号の間接侵害特許発明に係る方法の使用に用いる物に,当該特許発明を実施しない使用方法自体が存する場合であっても,当該特許発明を実施しない機能のみを使用し続けながら,当該特許発明を実施する機能は全く使用しないという使用形態が,その物の経済的,商業的又は実用的な使用形態として認められない限り,その物を製造,販売等することによって侵害行為が誘発される蓋然性が極めて高いことに変わりはないというべきであるから,「その方法の使 その物の経済的,商業的又は実用的な使用形態として認められない限り,その物を製造,販売等することによって侵害行為が誘発される蓋然性が極めて高いことに変わりはないというべきであるから,「その方法の使用にのみ用いる物」(特許法101条4号)に当たると解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成23年6月23日判決参照)。 そして,本件各製品において本件発明2を実施する機能を全く使用しないということは,その経済的,商業的又は実用的な使用形態としておよそ想定することができないことから,本件各製品は,本件発明2の「その方法の使用にのみ用いる物」に当たるものといえる。 そうすると,被控訴人が本件各製品を輸入し,販売する行為は,本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号)を構成するというべきである。 (イ) 特許法101条5号の間接侵害本件発明2は,「従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式を使用する場合に,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという問題点」(本件明細書の段落【0012】)を解決課題とし,「パケットサービスを支援する移動通信システムで,無線リンク制御階層のプロトコルデータユニット(RLCPDU)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置を提供すること」(段落【0013】)等を発明の目的とし,「限定された無線伝送リソースを効率的に使用する」等の効果を有する(段落【0018】)ものである。本件各製品は,本件発明2の使用に用いる物であって,本件発明2の上記課題の解決に不可欠なものである。 また,被控訴人は,控訴人による本件仮処分の申立てを受けたことにより,本件発明2が特許発明であること及び本件各製品が本件発明2 用いる物であって,本件発明2の上記課題の解決に不可欠なものである。 また,被控訴人は,控訴人による本件仮処分の申立てを受けたことにより,本件発明2が特許発明であること及び本件各製品が本件発明2の実施に用いられていることについて知ったものといえる。 そうすると,被控訴人が本件各製品を輸入し,販売する行為は,本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条5号)を構成するというべきである。 エまとめ以上のとおりであるから,被控訴人が本件各製品を輸入し,販売する行為は,本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)を構成する。 (2) 被控訴人の主張ア本件方法が本件発明2の技術的範囲に属しないこと(ア) 前記1(2)アで述べたのと同様の理由により,本件各製品はいずれも代替的Eビット解釈に基づく機能を実装しているといえないから,本件方法は,控訴人主張の構成jないしnを有しない。 また,本件発明2の構成要件J及びLは,前記1(2)イで述べたのと同様の理由により,本件技術仕様書V6.9.0記載の構成と異なるから,本件方法が構成要件J及びLを充足するとはいえない。 したがって,本件方法は,構成要件JないしNを充足しないから,本件発明2の技術的範囲に属しない。 (イ) また,前記1(2)ウのとおり,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していることを示す証拠は存せず,本件各製品において実際に代替的Eビット解釈が使用されていることの立証はないから,本件方法は,本件発明2の技術的範囲に属しない。 イ間接侵害の不成立(ア) 特許法101条4号又は5号の間接侵害の成立には,少なくとも発明が第三者により直接実施されていることを要すると解すべ 件方法は,本件発明2の技術的範囲に属しない。 イ間接侵害の不成立(ア) 特許法101条4号又は5号の間接侵害の成立には,少なくとも発明が第三者により直接実施されていることを要すると解すべきであるところ,第三者が本件発明2を直接実施していることについての主張立証はない。 (イ) 本件各製品において実際に代替的Eビット解釈が使用されていることの立証はなく,また,本件各製品には,本件発明2を実施しない機能のみを使用する使用形態が存在し,その使用形態は経済的,商業的又は実用的な使用形態であるから,本件各製品は,本件発明2の「その方法の使用にのみ用いる物」(特許法101条4号)に当たらない。 (ウ) 3GPP規格に準拠した実際の通信において,SDUのサイズがPDUのサイズに一致する割合はあまりに低く,本件発明2の効果を奏する場面は非常に限られているから,本件各製品は,本件発明2による「課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条5号)に当たらない。 ウまとめ以上のとおりであるから,被控訴人が本件各製品を輸入し,販売する行為が本件発明2に係る本件特許権の間接侵害を構成するとの控訴人の主張は,理由がない。 3 争点3(特許法104条の3第1項の規定による本件各発明に係る本件特許権の権利行使の制限の成否)について(1) 被控訴人の主張本件各発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権を行使することができない。 ア無効理由1(甲3による新規性欠如)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3(特開2004-179917号公報)に記載され 権を行使することができない。 ア無効理由1(甲3による新規性欠如)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3(特開2004-179917号公報)に記載された発明と実質的に同一であるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 甲3の記載事項甲3の段落【0001】,【0003】,【0004】,【0008】,【0009】,【0013】,【0025】,【0026】,【0028】,【0029】,【0031】,図2,3,8及び9によれば,甲3には,本件各発明の構成要件が全て開示されている。 (イ) 控訴人の主張について控訴人は,甲3には,構成要件D(K),F(M)の開示がない旨主張するが,以下のとおり,理由がない。 a 構成要件D(K)について(a) 甲3の段落【0008】に,図3のPDU50について,「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」との記載がある。この「ビット55a」は,「拡張子ビット(extensionbit)」であり(段落【0008】),1ビットのバイナリデータ(「0」か「1」)である(図3)。 このように拡張子ビット(Eビット)が「0」に設定され得るため,甲3には,構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する設定部があることが開示されているといえる。 (b) SDUには様々なサイズがあるため,一つのSDUが三つ以上のセグメントに分割される場合も不 ことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する設定部があることが開示されているといえる。 (b) SDUには様々なサイズがあるため,一つのSDUが三つ以上のセグメントに分割される場合も不可避的に起こり得るのであり,その場合,中間セグメント(最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメント)を含むPDUが当然生じるのであるから,甲3に接した当業者であれば,甲3に,中間セグメントを含むPDUが開示されていることを明確に理解できる。そして,PDUが中間セグメントを含む場合には,Eビットが「0」に設定される「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合」(段落【0008】)に該当しないことからすると,中間セグメントを含むEビットの値は,「1」に設定するほかない。 また,甲3の「代替PDU」の一例である「パディングPDU」(段落【0026】,【0031】,図8及び9等)は,パディングPDUの前後のPDUを結合する役割を果たすため,「中間セグメントを含むPDU」に対応する。 そうすると,甲3には,構成要件D(K)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」があることが開示されているといえる。 b 構成要件F(M)について甲3は,中間セグメントを含むPDUに対応する「パディングPDU」について,LIフィールドが「特別コードを設定し,全て1である。・・・残りのPDU・・・が未定義の部分を埋めるだけで,無視しても構わない情報を保持している」ことを開示し(段落【0026】),また,特別なLIを含むパディングPDUの数値として,図8にお ・・・残りのPDU・・・が未定義の部分を埋めるだけで,無視しても構わない情報を保持している」ことを開示し(段落【0026】),また,特別なLIを含むパディングPDUの数値として,図8において,予め定められた値「111111111111111」(15桁)の長さインジケータ(LI)156aを,図9において,予め定められた値「1111111」(7桁)の長さインジケータ(LI)156bを開示している。 したがって,甲3には,構成要件F(M)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」ることが開示されているといえる。 (ウ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3に記載された発明と同一のものであって,新規性が欠如している。 イ無効理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如①)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3に記載された発明と技術常識に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件各発明と甲3に記載された発明との一致点及び相違点本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が,構成要件F(M)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値」を設定する構成を有するかどうか明らかでない点で相違し,その余の構成は一 ィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値」を設定する構成を有するかどうか明らかでない点で相違し,その余の構成は一致する。 (イ) 相違点の容易想到性① 甲3には,「1種類のデータからなる同じ長さを有するデータを完全に含む2種類のPDUを区別するために長さインジケータに予め定義された値を設定する」という技術思想が開示されていること(段落【0008】,【0026】,図8及び9等),② 技術的な観点からみても,2種類のPDUを区別するために,長さインジケータを予め定義された値に設定する方法は,当業者にとって,最も現実的でかつ簡明な方法であり,当然に選択されるべきものであったこと(甲39の段落【0007】等)などからすると,当業者は,甲3と技術常識に基づいて,前記(ア)の相違点に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 (ウ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3に記載された発明と技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 ウ無効理由3(甲3を主引例とする進歩性欠如②)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3及び甲4(3GPPのワーキンググループの議事録「L2 OptimizationforVoIP(R2-050969)」)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 相違点の容易想到性本件各発明と甲3に記載された発明との一致点及び相違点は,前記イ(ア)のとおりである。 ,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 相違点の容易想到性本件各発明と甲3に記載された発明との一致点及び相違点は,前記イ(ア)のとおりである。 そして,甲4には,2種類のPDU(同じ長さを持ち,全体として1種類となるデータを含むもの。)を識別できないという課題(具体的には,一つのSDUを完全に含むPDUと中間セグメントを含むPDUとを区別することができないという問題)が生じること,長さインジケータに予め定められた特定の値を設定することによって上記課題を解決するという技術思想が開示されていること(図2及び3等)などからすると,当業者は,甲3及び甲4に基づいて,上記相違点に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 (イ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 エ無効理由4(甲3を主引例とする進歩性欠如③)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3及び甲39(特表2002-527945号公報)に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件各発明と甲3に記載された発明との一致点及び相違点本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が,① 構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前 のPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」の構成を有するかどうか明らかでない点(以下「相違点①」という。),② 構成要件F(M)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値」を設定する構成を有するかどうか明らかでない点(以下「相違点②」という。)で相違し,その余の構成は一致する。 (イ) 甲39の記載事項甲39には,① データを受信する側において,分割されたデータを正しく組み立てるために長さインジケータを使用する必要があること(【要約】),② PDUに含まれるSDUが当該PDUにおいて終了するか,それとも次のPDUに続いているのかを区別するために,SDUの中間セグメントを含むPDUに長さインジケータが挿入され,そこに予め定義された値が設定されること(【要約】,段落【0006】,【0010】,【0019】)が開示されている。 また,本件出願の出願経過において発せられた平成22年3月30日付け拒絶理由通知書(甲44)は,甲39には,長さインジケータに予め定義された値を設定することによって,SDUに関する「特殊な情報」を示し,「上記特殊な情報は,・・・下位層PDUのヘッダにおいて,ペイロードユニットのどの1つ又はそれ以上がセグメント長さ情報 に予め定義された値を設定することによって,SDUに関する「特殊な情報」を示し,「上記特殊な情報は,・・・下位層PDUのヘッダにおいて,ペイロードユニットのどの1つ又はそれ以上がセグメント長さ情報を含むかを指示する(本願の「中間セグメントが存在することを示す値に設定され」に相当)点が記載されている」と述べている。これに対し控訴人は,平成22年10月6日付け意見書において,上記拒絶理由通知書で述べられていた点を争わなかったのであるから,甲39が長さインジケータを用いて中間セグメントの存在を示すことを開示していることを控訴人も認めていたものといえる。 (ウ) 相違点の容易想到性a 相違点①について① 本件出願の優先日前に,一つのSDUを完全に含むPDUとSDUの中間セグメントを含むPDUとを区別する必要があることは,当業者に十分に認識されていたこと,② 甲39によれば,SDUの中間セグメントを含むPDUに長さインジケータが挿入されるため,当該PDUのEビットは,長さインジケータが存在することを示すように設定されること(前記(イ))に照らすならば,甲3に甲39を組み合わせることにより,一つのSDUが完全にPDUに含まれるかどうか,又はPDUがSDUの中間セグメントを含み,長さインジケータが存在するかどうかを示すために1ビットフィールドを設定すること(相違点①に係る本件各発明の構成)は,当業者であれば,容易に想到することができたものといえる。 b 相違点②について前記(イ)のとおり,甲39には,相違点②に係る本件各発明の構成が開示されている。 そうすると,当業者は,甲3及び甲39に基づいて,相違点②に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 (エ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3及び れている。 そうすると,当業者は,甲3及び甲39に基づいて,相違点②に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 (エ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3及び甲39に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたというべきである。 オ無効理由5(甲1の4を主引例とする進歩性欠如)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲1の4(3GPP規格の技術仕様書「3GPPTS 25.322 V6.3. 0」。以下「本件技術仕様書V6.3.0」という。)に記載された発明と技術常識に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件各発明と甲1の4に記載された発明との一致点及び相違点甲1の4には,本件技術仕様書V6.3.0記載の「通常Eビット解釈」が開示されている。 そして,本件各発明と甲1の4に記載された発明とは,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」が,① PDUが分割,連結又はパディングされていないPDUを含む場合,長さインジケータが出現しない点(以下「相違点1」という。),② PDUがSDUの中間セグメントを含む場合,長さインジケータが挿入され,それに中間セグメントの存在を示す特別な値が設定される点(以下「相違点2」という。)で相違し,その余の構成は一致する。 (イ) 本件出願の優先日前の技術常識以下の点は,本件出願の優先日前の技術常識であった。 a 固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること(甲1の2,42,92)b 受信したデータが 優先日前の技術常識であった。 a 固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること(甲1の2,42,92)b 受信したデータがデータパケットのデータフィールドを完全に充填する場合(一つのSDUがPDUのデータフィールドを完全に充填する場合)に,ヘッダーサイズを減らすことができること(甲3の段落【0008】の「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」との記載,甲40)cPDUのデータフィールドに長さインジケータを用いて中間セグメントが含まれることを示すこと(甲39の段落【0019】,甲43)(ウ) 相違点の容易想到性aPDUヘッダーの最初のEビットに0を設定し,長さインジケータを省略することによって,PDUヘッダーのデータ量を減少させることができること,そのようにしてPDUヘッダーのデータ量を減少させることのできるPDUは4種類(①SDUの最初セグメントを含むPDU,②SDUの中間セグメントを含むPDU,③PDUのデータフィールドのサイズと一致する,SDUの最後セグメントを含むPDU,④PDUのデータフィールドのサイズと一致する,一つのSDUを含むPDU)しか存在しないことは,当業者のよく知るところであり,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」は,上記②及び③の2種類のPDUについて,Eビットに0を設定し,長さインジケータを省略することを選択している。 甲1の4記載の「通常Eビット解釈」が,SDUの中間セグメントを含むPDUの長さインジケータ(上記②)を省略したのは,多くのアプリケーションでは,PDUデータフィールドよりも大きいサイズのSDUが頻繁に発生し,その 通常Eビット解釈」が,SDUの中間セグメントを含むPDUの長さインジケータ(上記②)を省略したのは,多くのアプリケーションでは,PDUデータフィールドよりも大きいサイズのSDUが頻繁に発生し,その当然の帰結として,SDUの中間セグメントを含むPDUも頻繁に発生することになることから,そのようなPDUのヘッダーサイズを小さくすれば,トータルでのオーバーヘッドを減少させ,データ伝送をより効率的に行うことが可能となるためであり,中間セグメントを含むPDUの長さインジケータを省略する方が,完全に一致するSDUを含むPDUの長さインジケータを省略するよりもヘッダーのデータ量を節約できると認識していたことを強く示唆するものである。同時に,長さインジケータを省略することのできるPDUの種類が上記のとおり限られていることからすると,3GPPは,PDUデータフィールドに完全に一致するSDUの発生頻度が高い場合には,そのようなSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することにより,データ伝送のオーバーヘッドを減少させることができると認識していたこともうかがわれる。 一方,構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」(以下「構成要件D(a)」という。)は,長さインジケータを省略するPDUについて上記④の1種類を選択したものであり,これは,本件出願の優先日前に,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること(前記(イ)a)が当業者によく知られていたからである。 このように甲1の4記載の「通常Eビット解釈」と構成要件D(a)は,データ oIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること(前記(イ)a)が当業者によく知られていたからである。 このように甲1の4記載の「通常Eビット解釈」と構成要件D(a)は,データ伝送の効率を向上させるために,発生頻度の高いSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することにより,データ伝送のオーバーヘッドを減少させるという技術思想が共通する。 b(a) 構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(K)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定」(以下「構成要件D(b)」という。)の構成が自動的かつ必然的に導き出される。 すなわち,Eビットは0か1という値しかとり得ない以上,構成要件D(a)の構成を採用し,PDUが分割,連結又はパディングされていないPDUを含む場合,当該PDUの最初のEビットを0に設定することを選択すると,それ以外の種類のデータを含むPDUの最初のEビットは,必ず1に設定されることになるから,PDUがSDUの中間セグメントを含む場合,当該PDUの最初のEビットは,「少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように」,1に設定されることとなる。 (b) また,構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(b)の構成とともに,構成要件F(M)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」の構成が自動的かつ必然的に導き出される。 すなわち,一 ルドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」の構成が自動的かつ必然的に導き出される。 すなわち,一つのSDUを完全に含むPDUにおいて,最初のEビットを0に設定し,長さインジケータを省略する以上は,中間セグメントを含むPDUにおいては,必ず最初のEビットを1に設定し,長さインジケータを挿入しなければならず,その長さインジケータには,PDUのどこでSDUが終了するかを示す値か,PDUデータフィールドに格納されたデータの種類を示す予め定められた値のいずれかが設定される。そして,SDUが中間セグメントにおいて終了することがない以上,中間セグメントを含むPDUの長さインジケータには,PDUデータフィールドに格納されたデータの種類(つまり,中間セグメント)を示す予め定められた値に設定する構成(構成要件F(M)の構成)を採用するほかない。 c そして,本件出願の優先日前に,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること,一つのSDUがPDUのデータフィールドを完全に充填する場合に,ヘッダーサイズを減らすことができること,PDUのデータフィールドに長さインジケータを用いて中間セグメントが含まれることを示すことが,いずれも技術常識であったこと(前記(イ))からすると,一つのSDUがPDUのデータフィールドを完全に充填する頻度が高い,特定のVoIPアプリケーションに関し,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」において,上記技術常識を適用して,中間セグメントを含むPDUの代わりに,一つのSDUを完全に含むPDUのヘッダーから長さインジケータを省略するという設計変更を行うことは,当業者にとって容易で 解釈」において,上記技術常識を適用して,中間セグメントを含むPDUの代わりに,一つのSDUを完全に含むPDUのヘッダーから長さインジケータを省略するという設計変更を行うことは,当業者にとって容易であり,しかも,そのような設計変更を行った場合,中間セグメントを含むPDUに予め定められた値の長さインジケータを挿入することは自動的かつ必然的に導き出されるのであるから,当業者は,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」と技術常識に基づいて,相違点1(構成要件D(a))及び相違点2(構成要件D(b)及びF(M))に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 d これに対し控訴人は,中間セグメントを含むPDUに長さインジケータを付加するとオーバーヘッドが増加することになるから,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」に構成要件F(M)の構成を適用することには阻害要因がある旨主張する。 しかし,たとえ中間セグメントを含むPDUに関してはオーバーヘッドが増加することになるとしても,一つのSDUを完全に含むPDUについてはヘッダーサイズを減少させることができ,特定のVoIPアプリケーションが使用される場面においてはオーバーヘッドが小さくなるのであるから,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」に構成要件F(M)の構成を適用することに阻害要因はない。 したがって,控訴人の上記主張は失当である。 (エ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲1の4に記載された発明と技術常識に基づいて,当業者が容易に想到することができたというべきである。 (2) 控訴人の主張ア無効理由1に対し(ア) 甲3には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がない点で,甲3に記載された発明と本件各発明は相違する。 a 被控訴人が指摘する (2) 控訴人の主張ア無効理由1に対し(ア) 甲3には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がない点で,甲3に記載された発明と本件各発明は相違する。 a 被控訴人が指摘する甲3の図3についての「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」(段落【0008】)との説明は,段落【0006】に「図3はAMデータPDU50の簡略図で,3GPPTS25.322 V3.8.0.規範に掲載されている。」との記載があるとおり,代替的Eビット解釈が3GPP規格に採用される前の3GPP規格の技術仕様書である「3GPPTS 25.32 2 V3.8.0」(乙7。以下「本件技術仕様書V3.8.0」という。)について説明したものであって,その記載内容は,現在の3GPP規格でいう通常Eビット解釈のものである。これに対し,通常Eビット解釈には,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合について全く記載がない。 また,段落【0008】の上記記載を字義通りに解釈しても,「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する」という表現は,SDUとPDUのサイズが一致する場合のみならず,SDUの方がサイズが大きく,分割された最初のセグメントや中間セグメントがPDUを充填する場合にも,これに該当し,構成要件D(K)の「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合のみを意味するものではない。 したがって,甲3は,構成要件D(K)を開示するものではない。 b 前記aのとおり,甲3においては,中間セグメントがPDUを充填する場合にも,「ビット55aは0で, みを意味するものではない。 したがって,甲3は,構成要件D(K)を開示するものではない。 b 前記aのとおり,甲3においては,中間セグメントがPDUを充填する場合にも,「ビット55aは0で,LIは出現しない」に該当するので,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」ること(構成要件F(M))もない。 また,「パディングPDU」は,「実際のSDUデータを備えず,SDUデータが不測のデータ中断の発生により破棄される時にだけ用いられる」もので,SDUを充填したものではなく(甲3の段落【0026】),SDUとは全く無関係であり,SDUとの関係を観念することも,中間セグメントを観念することも不可能であるから,中間セグメントを含むPDUに対応するものではない。しかも,「パディングPDU」である限り,「拡張子ビット155a」は常に1に設定され,中間セグメントかどうかによって拡張子ビット155aの値が変更されるものではないから,「パディングPDU」は,完全なSDUを含むPDUと中間セグメントを含むPDUとを区別する技術ではない。 したがって,甲3は,構成要件F(M)を開示するものではない。 (イ) 以上によれば,被控訴人主張の無効理由1は理由がない。 イ無効理由2に対し(ア) 前記ア(ア)aのとおり,甲3には構成要件D(K)の開示がないから,本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が構成要件D(K)の構成を有しない点においても相違する。 (イ) 甲3に記載された従来技術は,本件技術仕様書V3.8.0の内容であり,それ自体 明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が構成要件D(K)の構成を有しない点においても相違する。 (イ) 甲3に記載された従来技術は,本件技術仕様書V3.8.0の内容であり,それ自体が規格として成立しているから,完全なSDUを含むPDUと中間セグメントを含むPDUを区別できないという課題は存在しない。 また,2種類のPDUを区別するために,長さインジケータを予め定義された値に設定することが,技術的な観点から,当然の選択であったとはいえない。 したがって,当業者が甲3と技術常識に基づいて構成要件F(M)の構成を容易に想到することができたものとはいえない。 (ウ) 以上によれば,被控訴人主張の無効理由2は理由がない。 ウ無効理由3に対し(ア) 前記イ(ア)及び(イ)のとおり,本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が構成要件D(K)の構成を有しない点においても相違し,また,甲3に記載された従来技術には,完全なSDUを含むPDUと中間セグメントを含むPDUを区別できないという課題は存在しない。 (イ) 甲4に記載された発明は,PDU同士を区別できないという問題ではなく,「前のRLCPDUを失った場合,SDU全体が受信されたかどうかが分からない。」(訳文3頁最終行)という課題を解決するための方策であって,甲3に記載された発明とは課題が異なる。 しかも,甲4に記載された内容は,「LIの予約値のうち一つを使用:この場合,追加LIは,一番目のRLCSDUが完全に含まれるRLCPDUに含まれなければならない。その結果,12.2kbps ペイロードのうち3%に相当する部分がオーバーヘッドとなる。」(訳文5頁1行~3行)というもので,SDUが完全に含まれる場合に,長さインジケータの予約値を用いる ならない。その結果,12.2kbps ペイロードのうち3%に相当する部分がオーバーヘッドとなる。」(訳文5頁1行~3行)というもので,SDUが完全に含まれる場合に,長さインジケータの予約値を用いるという本件発明1と正反対の技術であり,また,甲4には,中間セグメントに長さインジケータの予約値を用いることは記載されていない。 したがって,当業者が甲3及び甲4に基づいて構成要件F(M)の構成を容易に想到することができたものとはいえない。 (ウ) 以上によれば,被控訴人主張の無効理由3は理由がない。 エ無効理由4に対し(ア) 甲39には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がない。 a もっとも,甲39には,「PDUの第1PDUに,そのPDUのSDUが次のRLCPDUに続いていることを指示する所定値を有する長さ指示子が与えられてもよい。」(段落【0019】)との記載があるが,上記記載は,SDUが次のPDUに続いていること(最後のセグメントでないこと)を示すものではあっても,最初のセグメントでないことを示すものではないから,(最初のセグメントでも最後のセグメントでもない)中間セグメントであることを示すものではなく,上記記載をもって,甲39に構成要件Fが開示されているとはいえない。 この点に関し被控訴人は,本件特許の出願経過において,控訴人が,平成22年10月6日付け意見書において,同年3月30日付け拒絶理由通知書(甲44)で甲39について述べられていた点を争わなかったのであるから,甲39が長さインジケータを用いて中間セグメントを示すことを控訴人も認めていた旨主張する。 しかし,上記のとおり,甲39には,中間セグメントについての開示はなく,また,審査官が拒絶の理由を発見しなかった「請求項2の要素」(甲4 て中間セグメントを示すことを控訴人も認めていた旨主張する。 しかし,上記のとおり,甲39には,中間セグメントについての開示はなく,また,審査官が拒絶の理由を発見しなかった「請求項2の要素」(甲44)に基づき早期の権利化を図ることも,何ら不自然なことではないから,出願経過において意見書で明示的に争わなかったからといって甲39が長さインジケータを用いて中間セグメントを示すことを控訴人が認めていたことにはならない。 したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。 b また,甲39においては,段落【0019】の「SDUが現在PDUの終わりに終了する場合には,PDUの終わりを正確に指す長さ指示子の値によりそれが示される。」との記載があるとおり,PDUが完全なSDUを含む場合には,長さ指示子(長さインジケータ)が用いられることは明らかであり,甲39には,構成要件D(K)とは逆のことが記載されている。 (イ) 上記のとおり,甲39には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がなく,また,甲3と甲39とを組み合わせる動機付けは何ら存在しないから,本件各発明は,甲3及び甲39に基づき当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 したがって,被控訴人主張の無効理由4は理由がない。 オ無効理由5に対し(ア)a 本件出願の優先日前において,実際の通信環境において,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致する割合が大きいことは,当業者には知られていなかったから(甲42等は,被控訴人主張の裏付けにはならない。),完全なSDUを含むPDUにおいてヘッダーの情報を減らそうという動機付けはない。 また,甲1の4記載の通常Eビット解釈においては,ヘッダーに含まれる長さインジケータは,SDUの最終オクテットがPDUの最終オ を含むPDUにおいてヘッダーの情報を減らそうという動機付けはない。 また,甲1の4記載の通常Eビット解釈においては,ヘッダーに含まれる長さインジケータは,SDUの最終オクテットがPDUの最終オクテットに一致する場合には,予め定められた値を設定することとされており(訳文9頁の表には,「直前のRLCPDUは,RLCSDUの最終セグメントで過不足なく満たされ,直前のRLCPDUにはRLCSDUの終端を示す「長さインジケータ」が存在しない」場合には,長さインジケータに「0000000」というビット列を用いることが記載されている。),必要なものであったから,SDUのサイズとPDUのサイズとが完全に一致する場合にも,長さインジケータを省略することは想定されていなかった。実際の通信環境において,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致するというような状況が相当頻繁に起こり,かつ,そのことを当業者が認識しなければ,既にリリースされた規格を変更してまで,長さインジケータを省略しようということには想到し得ない。 b 甲1の4記載の通常Eビット解釈におけるLIは,SDUを連結,パディングしたときに,どこまでが一つのSDUであるかを示す必要があることから,「PDU内で終了する各RLCSDUの最終オクテットを示す」もの(訳文4頁「9. 2.2.8」)として定義されたことにより,SDUの最終オクテットが存在しない中間セグメントにおいてはLIが出現しないだけであり,通常Eビット解釈において,頻繁に発生する中間セグメントを含むPDUにおいて,LIを省略しようという技術思想があったとはいえない。 c 被控訴人は,構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(b)の構成及び構成要件F(M)の構成が自動的かつ必然的に導き出される旨主張する 省略しようという技術思想があったとはいえない。 c 被控訴人は,構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(b)の構成及び構成要件F(M)の構成が自動的かつ必然的に導き出される旨主張するが,以下のとおり,失当である。 (a) シーケンス番号に続く1ビットフィールドについて,甲1の4においては,「後続のオクテットが「長さインジケータ」及びEビットであるか否かを示す」(訳文4頁「9.2.2.5」)という意味を有し,この関係で「Eビット」と呼んでいる。これに対し,被控訴人の主張においては,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致(構成要件D(a))するか否かを示す意味を有し,その関係で“Eビット”と呼んでいるため,甲1の4記載の「Eビット」とは意味内容が異なる。 被控訴人は,構成要件D(a)の構成を採用し,PDUが分割,連結又はパディングされていないPDUを含む場合(SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致する場合),当該PDUの最初のEビットを「0」に設定することを選択すると,それ以外の種類のデータを含むPDUの場合には,PDUがSDUの中間セグメントの場合も含め,最初のEビットは「1」に設定せざるを得ないので,構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(b)の構成が必然的に導き出され,さらには,中間セグメントを含むPDUの長さインジケータは,中間セグメントを示す予め定められた値に設定する構成要件F(M)の構成が必然的に導き出される旨主張する。 しかし,中間セグメントを含むPDUのEビットが「1」であるなら,完全なSDUを含むPDUのEビットは「0」であるから,両者を区別するという目的を達している。また,被控訴人の主張は,構成要件D(a)を採用したことにより構成要件D(b)が必然であるという段階では,シーケンス Uを含むPDUのEビットは「0」であるから,両者を区別するという目的を達している。また,被控訴人の主張は,構成要件D(a)を採用したことにより構成要件D(b)が必然であるという段階では,シーケンス番号に続く1ビットフィールドは,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致するか否かを示すという異なる意味を持った“Eビット”であることを前提とし,構成要件D(b)から構成要件F(M)が必然であるという段階では,シーケンス番号に続く1ビットフィールドは,甲1の4記載の従来の「Eビット」であることを前提とするものであって,失当である。 さらに,仮に完全なSDUを含むPDUから,長さインジケータを省略し,シーケンス番号に続く1ビットフィールドを完全なSDUを含むことを示すビット(“Eビット”)として用い,「0」によって完全なSDUを含むことを示すことができたとしても,中間セグメントにおいては,完全なSDUを含まないから,シーケンス番号に続く1ビットフィールドが「1」となるだけであり,中間セグメントに長さインジケータを挿入する構成にはならない。 このように構成要件D(a)を採用することが必然的かつ自動的に構成要件D(b)及びF(M)の採用につながることにはならない。 (b) また,仮に被控訴人が主張するように構成要件D(a)を採用することが必然的かつ自動的に構成要件D(b)及びF(M)の採用につながるとすれば,構成要件D(a)を採用する段階において,構成要件D(b)及びF(M)をも採用した構成(代替的Eビット解釈)について検討することになるが,「代替的Eビット解釈を使うとトータルでオーバーヘッドが増加」すること(甲124),被控訴人も代替的Eビット解釈は非効率で実装される可能性は極めて低いと主張していることからすれば,構成要件D( が,「代替的Eビット解釈を使うとトータルでオーバーヘッドが増加」すること(甲124),被控訴人も代替的Eビット解釈は非効率で実装される可能性は極めて低いと主張していることからすれば,構成要件D(a)を採用することについて阻害要因があるといえる。 (イ) 以上によれば,当業者が甲1の4記載の通常Eビット解釈と技術常識に基づいて,相違点1及び2に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものとはいえない。 したがって,被控訴人主張の無効理由5は理由がない。 4 争点4(本件各製品に係る本件特許権の消尽の有無)について(1) 被控訴人の主張ア控訴人のインテル社に対するライセンス許諾(ア) 本件各製品におけるUMTS規格に関連する処理は,本件各製品に実装された本件ベースバンドチップによって行われている。 仮に本件各製品が本件各発明を実施しているとすれば,本件各発明の本質的な工程は,本件各製品の一部品である本件ベースバンドチップにより実施されているといえるから,本件ベースバンドチップは,本件発明1に係る本件特許権の間接侵害品に当たる。 本件ベースバンドチップは,アップル社が米国においてインテル社製のチップセットをその完全子会社であるインテル・アメリカ社を通じて購入し,実装したものである。 この点に関し,控訴人は,インテル社製の本件ベースバンドチップのアップル社に対する販売は,IMC社(インテル・モバイル・コミュニケーションズGMBH。 旧インフィニオン社)が行っている旨主張するが,そのような事実は存在しない。 (イ) インテル社と控訴人は,1993年(平成5年)1月1日を効力発生日とする特許クロスライセンス契約(甲20の1,162。以下「控訴人とインテル社間のライセンス契約」という。)を締結し い。 (イ) インテル社と控訴人は,1993年(平成5年)1月1日を効力発生日とする特許クロスライセンス契約(甲20の1,162。以下「控訴人とインテル社間のライセンス契約」という。)を締結した。 控訴人は,控訴人とインテル社間のライセンス契約において,控訴人の保有する特許のうち,契約満了日(2009年12月31日)前の日付を第1優先日とする全ての特許権(本件特許権を含む。)に関し,インテル社に対し,「インテル・ライセンス対象製品」(半導体材料,半導体素子又は集積回路から構成される製品を含む。)の製造,販売(子会社等を経由した間接的な販売を含む。)等に関する全世界的なライセンスを許諾した。 控訴人とインテル社間のライセンス契約により許諾される権利の範囲には,インテル社が直接的又は子会社経由等により間接的にチップセットを販売する権利,当該ライセンスが,インテル社のみならず,その子会社にまで及ぶようにする権利が含まれ(甲20の1第3.1項,3項),また,同契約の存続条項(甲20の1第6. 4項)により,ある特許がいったん許諾対象に該当すると,インテル社及びその子会社は,同契約の満了時期にかかわらず,当該特許の存続期間が満了するまでその特許に対するライセンスを有する。 したがって,インテル社がインテル・アメリカ社を介してアップル社に本件ベースバンドチップを販売することは,控訴人とインテル社間のライセンス契約に基づくライセンス許諾の範囲内である。 イ本件各発明に係る本件特許権の消尽最判平成9年7月1日・民集51巻6号2299頁(以下「BBS事件最高裁判決」という。)は,「我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合においては,特許権者は,・・・譲受人から特許製品を譲り受けた第三者 299頁(以下「BBS事件最高裁判決」という。)は,「我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合においては,特許権者は,・・・譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては,・・・当該製品について我が国において特許権を行使することは許されないものと解するのが相当である。」と判示した。 BBS事件最高裁判決にいう「特許権者と同視し得る者」から実施権者を除外すべき理由はないから,「特許権者と同視し得る者」にはインテル社などのライセンシーも含まれると解すべきである。 また,本件発明1は,送信側のRLC層と受信側のRLC層との間のデータの送受信に関する技術であり,全て本件ベースバンドチップのみで実装可能であるから,本件ベースバンドチップは,本件特許権についてBBS事件最高裁判決のいう「特許製品」に当たると解するべきである。 仮に,本件発明1の「データ送信装置」(構成要件H)が本件ベースバンドチップではなく,これを組み込んだ最終製品である本件各製品と解される場合においても,本件ベースバンドチップは,本件発明1に係る特許権の間接侵害品に該当する。譲渡対象物が部品であったとしても,最終製品に関する物の発明に係る特許権の間接侵害品に当たるのであれば,譲渡者は,当該部品を譲り受けた譲受人及びその後の転得者において当該部品を用いて最終製品に関する物の発明に係る特許権を実施することができることを前提としていたというべきであるから,当該部品は,BBS事件最高裁判決にいう「特許製品」に該当すると解すべきである。したがって,本件ベースバンドチップもBBS事件最高裁判決にいう「特許製品」に該当する。 また,物の発明と実質的に同一の技術内容に係る方法の発明に係る特許権についても,当該方法の発明に したがって,本件ベースバンドチップもBBS事件最高裁判決にいう「特許製品」に該当する。 また,物の発明と実質的に同一の技術内容に係る方法の発明に係る特許権についても,当該方法の発明に関して特許権者が「特許発明の公開の代償を確保する機会」が保障されていたという事情が存在する限り,方法の発明に係る特許権に基づく権利行使も許されないと解すべきである。 本件ベースバンドチップは直接侵害品又は間接侵害品として「特許製品」に当たり,控訴人がインテル社に本件ベースバンドチップの販売のライセンスをした際に,控訴人に「特許発明の公開の代償を確保する機会」が保障されていたことから,控訴人がインテル社の下流顧客に対して本件発明1に係る本件特許権の権利行使をすることは許されず,また,本件発明2は,本件発明1と実質的に同一の技術内容に係る方法の発明であり,本件発明1に係る本件特許権の権利行使が許されない以上,本件発明2に係る本件特許権の権利行使も許されないというべきである。 したがって,控訴人から本件特許のライセンスを許諾されたインテル社が米国において本件ベースバンドチップをインテル・アメリカ社を介してアップル社に販売したことによって,本件ベースバンドチップに関し本件各発明に係る本件特許権が消尽した。 ウまとめ以上によれば,控訴人は,被控訴人に対し,本件ベースバンドチップを実装した本件各製品について本件特許権を行使することができない。 (2) 控訴人の主張被控訴人は,本件ベースバンドチップに関し本件各発明に係る本件特許権が消尽した旨を主張するが,以下のとおり理由がない。 ア控訴人とインテル社間のライセンス契約の終了控訴人とインテル社間のライセンス契約は,2009年(平成21年)6月30日に契約期間満了により終了し 旨を主張するが,以下のとおり理由がない。 ア控訴人とインテル社間のライセンス契約の終了控訴人とインテル社間のライセンス契約は,2009年(平成21年)6月30日に契約期間満了により終了しており,同契約には,契約期間満了後のライセンスの存続条項は存在しない。したがって,インテル社は,本件特許権について無権限者であるから,アップル社がインテル社から本件ベースバンドチップの譲渡を受けたことをもって,本件各発明に係る本件特許権が消尽する余地はない。 イライセンス契約の許諾対象製品に非該当控訴人とインテル社間のライセンス契約(甲20の1・3,162,163)には,第三者から製品設計が提供される場合の第三者向けインテル社製品をライセンスの対象外とする規定(3.2項)及び限定した製造委託のみを許容する規定(3. 7項)が存在することからすると,同ライセンス契約において許諾対象とされた「インテル・ライセンス対象製品」は,インテル社自身により製造された製品又はインテル社が設計図等を提供して製造委託した製品を意味すると解すべきである。 しかるに,本件ベースバンドチップは,インテル社ではなくIMC社(旧インフィニオン社)によって開発され,製造されたもの(正確には,IMC社から第三者へ製造委託されたもの)であるから,本件ライセンス契約の「インテル・ライセンス対象製品」に該当しない。 ウ国際消尽の要件の非充足BBS事件最高裁判決は,譲渡人が目的物である特許製品について有する全ての権利に,我が国に輸入する権利(及び,我が国において使用し,譲渡する権利)が含まれていることを国際消尽成立のための前提としているというべきであるから,BBS事件最高裁判決にいう「我が国の特許権者と同視し得る者」とは,目的物である特許製品を我が国に輸 用し,譲渡する権利)が含まれていることを国際消尽成立のための前提としているというべきであるから,BBS事件最高裁判決にいう「我が国の特許権者と同視し得る者」とは,目的物である特許製品を我が国に輸入する権利(及び,我が国において使用し,譲渡する権利)を有している者を意味することは明白である。 しかるに,インテル社は,目的物である特許製品(携帯電話機,タブレット型コンピュータ)について,我が国に輸入する権利(及び,我が国において使用し,譲渡する権利)を有するものでないから,インテル社が「我が国の特許権者と同視し得る者」に該当しない。 また,インテル社からアップル社が譲渡を受けた本件ベースバンドチップは,本件各発明の「データ送信装置」ないし「データ送信方法」ではない以上,BBS事件最高裁判決にいう「特許製品」に該当しない。 さらに,インテル社自身が,携帯電話機やタブレット型コンピュータなどの最終製品を対象としたライセンスの許諾までは受けないことを内容としたライセンス契約(控訴人とインテル社間のライセンス契約)に合意した以上,本件ベースバンドチップが携帯電話機等に組み込まれることを控訴人が予想しても,控訴人がインテル社から「データ送信装置」,「データ送信方法」に関する本件各発明の公開の代償を得られるものではないから,控訴人に上記代償を確保する機会が保障されていたものといえないことは明らかであるし,また,本件ベースバンドチップが特許製品である本件各製品全体の価格に占める部品単価の割合は僅少であり,このような一部のみの利得機会をもって全部の利得機会を得たと評価することもできない。 エまとめ以上のとおり,アップル社がインテル社から本件各製品の一部品である本件ベースバンドチップを譲り受けたからといって,本件各発明に係る本 全部の利得機会を得たと評価することもできない。 エまとめ以上のとおり,アップル社がインテル社から本件各製品の一部品である本件ベースバンドチップを譲り受けたからといって,本件各発明に係る本件特許権が消尽するものではないから,控訴人が本件各製品について本件特許権を行使することができないとの被控訴人の主張は,その前提を欠き,理由がない。 5 争点5(控訴人の本件FRAND宣言に基づく本件特許権のライセンス契約の成否)について(1) 被控訴人の主張ア本件FRAND宣言に関する準拠法(ア) 控訴人は,1998年(平成10年)12月14日,ETSIに対し,UMTS規格に必須である控訴人保有の特許をFRAND条件(ETSIのIPRポリシー6.1項所定の公正,合理的かつ非差別的な条件)で許諾する用意がある旨の誓約(宣言)をし,さらに,2007年(平成19年)8月7日,ETSIに対し,本件出願の優先権主張の基礎となる韓国出願の出願番号,本件出願の国際出願番号等を明示した上で,UMTS規格に必須である控訴人保有の特許をFRAND条件で取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(本件FRAND宣言)をした。 FRAND条件による規格必須特許のライセンス宣言は,ETSIの会員のみならず,非会員をも含むあらゆる者を対象とするものであるから(「IPRについてのETSIの指針」(甲16,161)),アップル社及び被控訴人も,本件FRAND宣言の対象となり得る。 (イ) 本件FRAND宣言及びIPRポリシーの準拠法は,フランス法であるから(甲13,IPRポリシー12項),本件FRAND宣言の効力,本件FRAND宣言に基づくライセンス契約の成立要件等については,フランス法が適用される。 イ控訴人と被控訴人間のライ ス法であるから(甲13,IPRポリシー12項),本件FRAND宣言の効力,本件FRAND宣言に基づくライセンス契約の成立要件等については,フランス法が適用される。 イ控訴人と被控訴人間のライセンス契約の成立(ア) 控訴人がETSIに対して行った本件FRAND宣言は,フランス法において法的拘束力のある申込み(又は「継続的な申し入れ(offrepermanente)」)であると考えるのに必要な要素(許諾対象特許,許諾される権利内容等)が全て含まれているから,「ある当事者が当該規格を実装することで承諾される,実際のライセンスの申出」を構成する。そして,フランス法上,承諾は,行為又は合意の履行によってされるから,被控訴人が本件各製品の輸入販売を開始したことによって,控訴人の上記ライセンスの申込みに対する黙示の承諾がされ,これにより控訴人と被控訴人との間で,本件特許権についてライセンス契約が成立したといえる。 (イ)a 控訴人の本件FRAND宣言において特定のライセンス料率が定まっていないことは,ライセンス契約の成立を妨げるものではない。 フランス法上,売買契約に関しては,特定の金額が定まっていることがその成立の要素となっているのに対し,ライセンス契約は,売買契約とは異なる特殊な契約に位置付けられ,当事者が契約を締結する上で,ライセンス料の合意があることが必須要件とされていない。また,フランス法上,裁判所がFRAND条件のライセンス料率を決定することが可能である。 b フランス法においては,ライセンスを構成する行為は,書面により締結されるべきであり,書面がない場合には,無効になると規定されているが(知的財産法L.613-8条5項),一方で,書面に対して義務を負う当事者の署名があれば,当該書面は,法的拘束力を有するこ れるべきであり,書面がない場合には,無効になると規定されているが(知的財産法L.613-8条5項),一方で,書面に対して義務を負う当事者の署名があれば,当該書面は,法的拘束力を有することとされている。 この点,控訴人の本件FRAND宣言は,控訴人の署名のある書面によってされているから,書面性の要件が充たされており,被控訴人の署名がないことは,書面性の要件とは関係がない。また,フランス法上,ライセンス契約の書面性の要件は,「ライセンシーの特定の利益を守る目的」で課されたことから,書面の欠如を理由として契約の無効を主張できるのは,書面の欠如により保護されるべき当事者(ライセンシー)のみであり,本件において,控訴人は無効主張をする資格を有しない。 (ウ) また,本件FRAND宣言については,控訴人及びETSI間の第三者のためにする契約(stipulationpourautrui)と構成することも可能である。フランス法上,両当事者間の合意の交換によって,第三者に有利な義務を負う約束ができると解される。受益者である被控訴人は,契約の成立を目的として約束を受諾する必要はなく,受益者には約束者(控訴人)に対する即時かつ直接の権利が与えられると解される。 (エ) 仮に控訴人の本件FRAND宣言が,実装行為によって承諾されるような申込みに当たらない場合であっても,少なくとも,本件FRAND宣言は,拘束力ある契約を締結する旨の誓約に該当するというべきである。このように,控訴人は,被控訴人に対して,フランス法上,ライセンスを許諾する義務を負っているのであるから,損害賠償請求をすることは許されない。 ウ準拠法を日本法と解した場合について仮に本件FRAND宣言の準拠法を日本法と解した場合であっても,本件FRAND宣言は控訴人に ているのであるから,損害賠償請求をすることは許されない。 ウ準拠法を日本法と解した場合について仮に本件FRAND宣言の準拠法を日本法と解した場合であっても,本件FRAND宣言は控訴人による通常実施権許諾契約の申込みと解され,また,被控訴人がUMTS規格の実装行為を行うことによって承諾されるから,日本法の下でもライセンス契約が成立していたと解されることになる。 エまとめ以上のとおり,控訴人がETSIに対して行った本件FRAND宣言がFRAND条件による本件特許権のライセンス契約の申込みに,被控訴人が本件各製品の輸入販売を始めたことが上記申込みに対する黙示の承諾に当たり,控訴人と被控訴人間で本件特許権についてFRAND条件によるライセンス契約が成立したから,控訴人は,本件特許権を行使することができない。 (2) 控訴人の主張ア契約の申込みの不存在契約の成立により,当事者は当該契約を履行すべき法的義務を負うものであるから,申込みは,承諾によって直ちに契約を成立させ得る程度に具体的であることを要する。 しかるに,控訴人の本件FRAND宣言には,対価(実施料率),期間及び地理的範囲といった契約の要素というべき重要事項の一切が含まれておらず,当事者が負うべき具体的義務が何ら特定されていないから,これがライセンス契約の申込みに該当することはない。 この点,フランス法においても,ライセンス契約が成立するためには,契約の重要な要素(例えば,対価,対象特許,地域,期間)を明確にした申込み及びそれに合致した承諾が必要であると解されており,本件においては,それらを明確にした申込みはないから,ライセンス契約が成立する余地はない。なお,フランスの最高裁判所(破毀院)の判決において,ロイヤルティ(対価)がライセ が必要であると解されており,本件においては,それらを明確にした申込みはないから,ライセンス契約が成立する余地はない。なお,フランスの最高裁判所(破毀院)の判決において,ロイヤルティ(対価)がライセンス契約の必須要素であるか否かを取り扱ったものはない。 イ承諾の不存在(ア) 前記アのとおり,そもそも控訴人から本件特許権のライセンス契約の申込みがされた事実が存在しないのであるから,これに対する被控訴人の承諾が存在することはない。 (イ) これに対し被控訴人は,被控訴人が本件各製品を輸入販売等したことによって上記申込みに対する黙示の承諾がされた旨を主張する。 しかし,被控訴人は規格の実装により意思の合致が認められる理由を述べていない。また,仮に被控訴人の主張が肯定されるならば,特許技術の利用者は,単に規格を実装する行為をとるだけで,承諾を権利者に表明することなく,しかも対価を支払うことなく,当該特許技術を利用できることとなるが,そのような帰結が非常識であることは明らかである。 したがって,被控訴人の上記主張は失当である。 ウ書面性の要件の欠如(ア) 仮にライセンスの成否についてフランス法を準拠法とする被控訴人の主張を前提としても,フランス法においては,特許ライセンス契約は書面によらなければならないとされており,本件特許について,控訴人と被控訴人との間のライセンス契約に関する書面は存在しないから,被控訴人主張のライセンス契約は成立していない。 (イ) これに対し,被控訴人は,控訴人の本件FRAND宣言には,義務者である控訴人の署名があるので,特許ライセンス契約の成立に必要な書面性の要件を充足する旨を主張する。 しかし,①本件FRAND宣言には,ライセンス契約の目的,対価,期間及び地理的範囲といっ 務者である控訴人の署名があるので,特許ライセンス契約の成立に必要な書面性の要件を充足する旨を主張する。 しかし,①本件FRAND宣言には,ライセンス契約の目的,対価,期間及び地理的範囲といった契約の内容を表すのに必要な条項が含まれていないこと,②本件FRAND宣言に被控訴人の署名が付されていない以上,双方当事者の意思が合致したか否かが不明確であること,③本件FRAND宣言は,相互にライセンス契約を受けることが前提とされており,他方当事者であるライセンシーも義務者になるのであるから,他方当事者である被控訴人の署名を不要とすることができないことからすると,被控訴人主張の控訴人と被控訴人間のライセンス契約は書面性の要件を充たしていない。 したがって,被控訴人の上記主張は,理由がない。 エまとめ以上のとおり,本件FRAND宣言に基づいて控訴人と被控訴人間で本件特許権についてライセンス契約が成立したとの被控訴人の主張は,理由がない。 6 争点6(控訴人による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使の権利濫用の成否)について(1) 被控訴人の主張以下の諸事情に鑑みれば,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用(民法1条3項)に当たり,許されない。 ア本件特許の適時開示義務違反ETSIのIPRポリシー4.1項は,ETSIの会員が,開発済み又は開発中の標準規格に必須となり得る知的財産権を保有する場合,これをETSIに適時に開示することを義務付けている。この趣旨は,標準策定の参加者が標準規格を構成する特許の存在を秘匿すると,標準化のワーキンググループが当該特許の代わりの技術を標準規格に採用することを検討したり,当該特許を標準規格から外す旨の決定を行ったりする機 策定の参加者が標準規格を構成する特許の存在を秘匿すると,標準化のワーキンググループが当該特許の代わりの技術を標準規格に採用することを検討したり,当該特許を標準規格から外す旨の決定を行ったりする機会が奪われると同時に,標準規格を実装する者や,標準化団体が代替的技術を選択する機会も奪われることになるので,ETSIの会員にその保有する標準規格に必須となり得る知的財産権の適時開示義務を負わせたものである。 控訴人は,本件出願の優先日の属する月である2005年(平成17年)5月,控訴人が特許を取得しようとしていた技術を含む変更要請書を作成し,これを3GPPのワーキンググループに提示し,その後本件特許に係る標準規格が決まってから,約2年経過後の2007年(平成19年)8月に至るまで本件特許の存在をETSIに開示しなかった。 このように控訴人は,意図的にIPRポリシー4.1項の適時開示義務に違反したものである。 イ本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置であることアップル社は,2011年(平成23年)4月,米国において,控訴人に対し,標準規格と関係のないアップル社保有の特許権等を侵害したとして,その侵害行為の差止請求訴訟を提起した。 控訴人は,同月,アップル社の上記提訴に対する報復的な対抗措置として,被控訴人に対し,控訴人がUMTS規格の必須特許であるとの宣言(以下,この宣言に係る特許を「必須宣言特許」という。)をした本件特許権に基づき本件各製品の販売等の差止めを求める本件仮処分の申立てなどをした。 ウ本件FRAND宣言に基づくライセンス契約締結義務違反及び誠実交渉義務違反(ア) 「IPRについてのETSIの指針」1.4項(甲16,161)は,第三者は,ETSI規格の利用者として,IPRポリシー6.1項に基づき, くライセンス契約締結義務違反及び誠実交渉義務違反(ア) 「IPRについてのETSIの指針」1.4項(甲16,161)は,第三者は,ETSI規格の利用者として,IPRポリシー6.1項に基づき,規格に関し,FRAND条件でライセンスが許諾される権利を有することを定めている。 アップル社及び被控訴人は,控訴人の本件FRAND宣言によって,必須宣言特許のライセンスを受ける権利を有するから,控訴人は,必須宣言特許である本件特許権についてライセンス契約を締結する義務(ライセンス契約締結義務)を負うというべきである。また,控訴人は,少なくとも,必須宣言特許のライセンスに関し誠実に交渉すべき義務(誠実交渉義務)を負うというべきである。 しかし,控訴人は,以下に述べるとおり,ライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反している。 (イ)a 前記イのとおり,控訴人がアップル社の提訴に対する報復的な対抗措置として本件仮処分の申立てを行ったことは,必須宣言特許のライセンスに関する控訴人のライセンス契約締結義務に違反する行為である。 控訴人の本件仮処分の申立ての意図は,アップル社及び被控訴人に対し,FRAND宣言でのライセンスを許諾する意思はなく,必須特許宣言をした本件特許権に基づく差止請求権を行使して被控訴人及びアップル社を脅かすことにより,アップル社が提訴した事件を牽制し,有利に進めようとしているにすぎない。 b アップル社は,控訴人に対して,2011年(平成23年)4月29日付け書簡(甲6の1)で,控訴人が主張している個々の必須宣言特許及び同社の必須宣言特許ポートフォリオ(以下,「特許ポートフォリオ」とは,ある者の有する特許権の集合を指す趣旨で用いる。)に関して,FRAND条件に適ったロイヤルティ又は一時金について問い合わせ の必須宣言特許ポートフォリオ(以下,「特許ポートフォリオ」とは,ある者の有する特許権の集合を指す趣旨で用いる。)に関して,FRAND条件に適ったロイヤルティ又は一時金について問い合わせをし,その後,再三要求を繰り返したが,結局,同年7月25日まで,控訴人から具体的なロイヤルティの提案はされなかった。 同日,控訴人からアップル社に対して,同日付け書簡(甲29)において,具体的な料率が提示された。これは,本件各製品及び本件ベースバンドチップの平均販売価格をそれぞれ600ドル及び15ドルであると考えた場合,ほぼ本件ベースバンドチップと同程度の金額のロイヤルティを要求していることとなる。仮にアップル社が同様のライセンス料率を他のUMTS規格に関する必須宣言特許の保有者に対して支払うと仮定すると,アップル社は,UMTS規格に関する全ての必須宣言特許についてライセンスを受けるために,本件ベースバンドチップの平均販売価格の約18倍のライセンス料を支払わなければならなくなる。以上の経緯によれば,控訴人の提示したロイヤルティはFRAND条件によるものではない。 これに対して,アップル社は,同年8月18日,同日付け書簡(甲34の4)で,控訴人に対し,必須宣言特許に関するライセンス料率算定の枠組みを提示した。しかし,控訴人は,アップル社の提案した枠組みを拒否し,また,具体的な代案も一切示さなかった。 控訴人は,翌年12月になるまで,約1年半もの間,新たな代案を提示しなかった。控訴人は,アップル社に対する2012年(平成24年)12月3日付けの書簡(乙64)で,従前の提案の半分以下の料率を提案した。しかし,控訴人は,その算定方法について具体的な説明をしていない。また,同月の,控訴人とアップル社の和解交渉の場面において,控訴人は,アップル社 簡(乙64)で,従前の提案の半分以下の料率を提案した。しかし,控訴人は,その算定方法について具体的な説明をしていない。また,同月の,控訴人とアップル社の和解交渉の場面において,控訴人は,アップル社が控訴人に対して一時金を支払うという条件で,両者のUMTS規格等に関する必須となる特許のポートフォリオについてクロスライセンスを行うという提案をした。しかし,この提案も,アップル社の知的財産権(標準規格に関しないもの)の侵害によって生じる控訴人の責任について免除を受けた上で世界的な紛争に関して和解をするという前提条件が付されていた。控訴人が同月に行ったこれらの提案は,いずれもFRAND条件からかけ離れたものである。 控訴人は,いまだにFRAND条件に適合するライセンスの提案を行っておらず,アップル社に対して提示するライセンスの提案が,他のライセンシーに対するライセンス条件と比して差別的ではないということを裏付ける情報の提供も行っていない。 c また,現在に至るまで,控訴人は,自社の主張する必須宣言特許について,特許単位でのライセンスを行うように求めるアップル社の要請に応じていない。 ETSIのIPRポリシー6.1項は「特定の規格または技術仕様に関連する一つの必須IPRがETSIに知らされた場合」としており,FRAND条件でのライセンス許諾が原則として個々の特許単位であることを明らかにしている。ポートフォリオ全体でのライセンス条件を強要することを許してしまえば,必須宣言特許の保有者がFRAND条件でのライセンス義務を容易に潜脱することが可能になる弊害が生じる。 (ウ) さらに,控訴人は,被控訴人が平成25年5月16日付け書簡(乙66)で求めた,必須宣言特許ポートフォリオ及びそれに関するクロスライセンスの提案の評価に必要な が可能になる弊害が生じる。 (ウ) さらに,控訴人は,被控訴人が平成25年5月16日付け書簡(乙66)で求めた,必須宣言特許ポートフォリオ及びそれに関するクロスライセンスの提案の評価に必要な情報の提供を行っておらず,また,アップル社において控訴人のライセンス提案がFRAND条件に適合するものであるかどうかを判断するのに必要な情報(控訴人と他社との間の必須宣言特許のライセンス契約に関する情報等)の提供を拒んでいる。このように控訴人は誠実交渉義務にも違反している。 (エ) 以上のとおり,アップル社は,控訴人に対し,ライセンス料の算定根拠を詳細に説明した上で,繰り返し確定的なライセンスの申出を行ったにもかかわらず,控訴人は,従前の申出をいまだに維持し,当該申出に係るライセンス料の算定根拠も,アップル社の申出に対する代案も示すことなく,一方で,必須宣言特許である本件特許権に基づいて差止めを求める本件仮処分の申立てを維持し,アップル社に対して,必須宣言特許に基づく差止仮処分命令の脅威を背景として圧力をかけている。 このような控訴人の一連の行為は,特許発明に係る技術が標準規格に組み込まれることによりその技術に内在する価値を大幅に超える力,つまり,標準規格の実装者から不当に高いロイヤルティや非必須知的財産権のクロスライセンスを取得する力を特許権者に与えかねないという,いわゆる「ホールドアップ状況」(標準規格に取り込まれた技術の権利行使によって標準規格の利用を望む者が利用できなくなる状況)の策出行為に当たるものである。 以上によれば,控訴人は,必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反しているというべきである。 (オ) この点に関し,控訴人は,アップル社がFRAND条件による「確定的な 控訴人は,必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反しているというべきである。 (オ) この点に関し,控訴人は,アップル社がFRAND条件による「確定的なライセンスの申出」を行っていないから,控訴人に誠実交渉義務が発生していない旨主張する。 しかし,ETSIのIPRポリシー,控訴人の本件FRAND宣言及びその準拠法であるフランス法のいずれにおいても,必須宣言特許権者が誠実交渉義務を負う条件として,UMTS規格の実施希望者に対して,「確定的なライセンスの申出」を行うことを求める規定は存しない。「確定的なライセンスの申出」は,ライセンス契約成立の要件ではなく,また,特許権者の誠実交渉義務発生の要件でもない。 日本法においても,「確定的なライセンスの申出」を要求する根拠は存しない。仮に日本法において控訴人の誠実交渉義務の発生要件としてアップル社又は被控訴人の「確定的なライセンスの申出」が必要であるとしても,アップル社は,控訴人に対し,FRAND条件でのライセンス契約締結の限りで,本件特許権の有効性及び抵触性を争わないとの意思を示し,「確定的なライセンスの申出」を行っている。 さらに,仮にライセンス希望者がFRAND条件でのライセンスの申出を行うに際し特許の有効性や抵触性を争う権利を放棄しなければならないとすれば,必須宣言特許権者は,後に当該特許が必須でなかったことや,当該特許の有効性や抵触性が認められないことが判明したとしても,ライセンシーからその点を指摘されることから免れることができる結果となり,しかも,ライセンシーから特許の有効性や抵触性を争われることを免れるという利益を得るために,本来は必須特許ではないものについて,必須特許であるという過剰な宣言を助長しかねないこととなり,妥 しかも,ライセンシーから特許の有効性や抵触性を争われることを免れるという利益を得るために,本来は必須特許ではないものについて,必須特許であるという過剰な宣言を助長しかねないこととなり,妥当でない。 したがって,控訴人の上記主張は,理由がない。 エ独占禁止法違反控訴人の一連の行為は,「ホールドアップ状況」を策出するものであって(前記ウ(エ)),標準規格を広く普及させることを目的とする3GPPの趣旨に反するものであるとともに,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)の不公正な取引方法に関する規定(2条9項2号,一般指定2項ないし4項,14項等)のいずれかに該当する可能性が高く,独占禁止法違反になる。 また,控訴人が訴訟対象となっている必須特許のみを対象とするライセンスを拒否し,控訴人の保有する必須特許ポートフォリオ全体を対象とする一括ライセンスのみを求めることも,不公正な取引方法(一般指定10項又は12項)に該当する。 オ TRIPs協定違反TRIPs協定31条は,国内法令によって強制実施権等,特許権者の許諾を得ずに行われる特許使用を認める場合について考慮するべき事項を定めた規定である。 したがって,損害賠償の場面を想定した規定ではないし,裁判所が特許権侵害を認定した場合において,いかなる場合にも損害賠償請求を認めなければならないという規定でもなく,控訴人の損害賠償請求を権利濫用と認めるに妨げとはならない。 カまとめ以上のとおり,控訴人が意図的に本件特許について適時開示義務に違反したこと,控訴人の本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置であること,控訴人が本件FRAND宣言に基づく必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反して「ホー 反したこと,控訴人の本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置であること,控訴人が本件FRAND宣言に基づく必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反して「ホールドアップ状況」を策出していること,かかる控訴人の一連の行為が独占禁止法に違反することなどの諸事情に鑑みれば,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用に当たり許されないというべきである。 (2) 控訴人の主張被控訴人が控訴人による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利濫用に当たることを基礎付ける事情として挙げる諸点は,以下に述べるとおり,前提となる事実が存在しないか,そもそも権利濫用を基礎付ける事情に当たらない。 ア IPRポリシーの適時開示義務違反の主張に対し(ア) 被控訴人が適時開示義務違反の根拠とするETSIのIPRポリシー4.1項(甲12)は,自らの特許権等を開示するために合理的な努力を求めているが,当該規定はETSIの会員に対してETSIとの関係を規定するものであり,第三者との関係を規定するものではなく,その違反に対する制裁は何ら想定されていない。 また,ETSIとの関係での手続義務違反があることが,当然に,本件特許権の行使が権利濫用に該当するとの結論を導くものではない。 (イ) 被控訴人は,控訴人のETSIに対する本件特許の開示が,本件出願の優先日から起算して約2年後であったことをもって,控訴人に適時開示義務違反がある旨主張する。 しかし,必須特許宣言は,会社において,特許の抽出,規格に必須であることの精査を行い,適正な社内手続を経て行われるものであり,相応の労力と期間を要するとともに,会社としての決定と行為を要するものであることはいうまでもなく, 社において,特許の抽出,規格に必須であることの精査を行い,適正な社内手続を経て行われるものであり,相応の労力と期間を要するとともに,会社としての決定と行為を要するものであることはいうまでもなく,それゆえに,一般的に,ETSIの会員における特許の開示に要する期間として1年から2年の期間が必要となる。 控訴人のETSIに対する本件特許の開示が本件出願の優先日から起算して約2年後であったが,同期間は,通常の実務の水準に沿うものであって,控訴人において適時開示のための合理的な努力を怠ったものではなく,適時開示義務に反するとはいえない。 したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。 イ本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置等であるとの主張に対し被控訴人は,控訴人の本件仮処分の申立てが,アップル社が控訴人に対して米国において差止請求を行った後に申し立てられたことをもって,報復的な対抗措置であり,アップル社が申し立てた事件を牽制し,有利に進めようとするものである旨主張する。 しかし,アップル社が控訴人に対して米国で差止請求を行った事件は,本件とは別個の事件であるし,控訴人が本件特許権の侵害行為の差止請求をする権利を有することの当然の効果として,被控訴人が当該侵害行為の差止請求を受けることは法が当然に予定しているのであり,控訴人による権利行使がアップル社からの権利行使に後れたことをもって「報復的な対抗措置」,「アップル社が申し立てた事件の牽制」等との非難を受けるいわれはない。ETSIのIPRポリシーにおいても,差止請求権の行使が明示的に禁じられてはいない。また,アップル社は,訴訟の結果が出るまでライセンス料を支払う意思のない者(unwillinglicensee)であり,真にライセンスを取得する意思がないにもかかわらず, 示的に禁じられてはいない。また,アップル社は,訴訟の結果が出るまでライセンス料を支払う意思のない者(unwillinglicensee)であり,真にライセンスを取得する意思がないにもかかわらず,ライセンスを希望するかのように装って,ライセンス料を払うことなく特許を利用するという「逆ホールドアップ」を行っているから,控訴人が本件仮処分命令の申立てをすることに不当な点はない。 したがって,被控訴人の上記主張は,理由がない。 ウ本件FRAND宣言に基づくライセンス契約締結義務違反及び誠実交渉義務違反の主張に対し(ア) ライセンス契約締結義務の不存在ETSIに対するFRAND宣言によって生じる特許権者の義務は,ライセンスを受けることを希望する者との間で,その申出を受けて,IPRポリシー6.1項所定のFRAND条件でライセンスを行うという基本原則に従って,誠実に交渉,協議する義務(誠実交渉義務)である。FRAND宣言がされたからといって,いかなる場合にも,控訴人が,ライセンス契約を締結する義務(ライセンス契約締結義務)を負担するものではない。 被控訴人は,FRAND宣言によりライセンス契約締結義務を負うとする主張する。しかし,被控訴人が同主張の根拠とする「IPRについてのETSIの指針」(甲16,161)は,「具体的なライセンス条件及び交渉は企業間の商業上の問題であり,ETSI内で対処されるものではない」(4.1項)と規定しており,同主張は,ETSIが個々のライセンス契約の交渉に関与しない方針であることと矛盾する。 したがって,控訴人に本件FRAND宣言に基づくライセンス契約締結義務違反があるとの被控訴人の主張は,理由がない。 (イ) 誠実交渉義務の不発生aFRAND宣言によりその宣言をした者に課 したがって,控訴人に本件FRAND宣言に基づくライセンス契約締結義務違反があるとの被控訴人の主張は,理由がない。 (イ) 誠実交渉義務の不発生aFRAND宣言によりその宣言をした者に課せられる義務の内容については,各国の公共政策に直接的に関わる問題であるため日本法固有の観点から判断し得るものである。そして,日本法の観点からは,誠実交渉義務が生じるのは,ライセンス対象特許の有効性を争うことなく,真にライセンスを受けることを希望する「確定的なライセンスの申出」が必要であると解すべきである。 被控訴人は,アップル社が控訴人に対し,2012年(平成24年)3月4日,同年9月1日及び7日にFRAND条件による「確定的なライセンスの申出」を行った旨主張するが,いずれも理由がない。 (a) 被控訴人主張の2012年(平成24年)3月4日の申出は,控訴人の特許の抵触性と有効性を争うものであるから,そもそも「確定的なライセンスの申出」に該当しない。 また,上記申出の内容は,不合理に低額なライセンス料率を提示するものであって,交渉が成立しないことを知った上で,申出の外形を形式的に作出しただけの真にライセンスを受ける意思のないものであり,上記申出が「確定的なライセンスの申出」に該当することはあり得ない。 (b) 被控訴人主張の2012年(平成24年)9月1日及び7日の申出(甲109,110)は,控訴人の特許が非侵害ないし無効であることを指摘しつつ,宣言者による必須性の検証を提案している点で(訳文3頁),依然として控訴人の特許の抵触性と有効性を争うことを留保するものであるから,「確定的なライセンスの申出」とはいえない。また,アップル社は,特許権が消尽していると主張する製品については実施料を請求すべきでない(ロイヤリティの算 性と有効性を争うことを留保するものであるから,「確定的なライセンスの申出」とはいえない。また,アップル社は,特許権が消尽していると主張する製品については実施料を請求すべきでない(ロイヤリティの算定の基礎とすべきでない)旨主張しており(訳文4頁),特許消尽の主張が特許権侵害の主張に対する抗弁であることに鑑みれば,このような主張をすることは,依然として特許の抵触性を争っているに等しいから,「確定的なライセンスの申出」とはいえない。 (c) 以上のとおり,被控訴人主張のアップル社の申出は,真にライセンスを希望する確定的な申出とはいえないから,控訴人には誠実交渉義務が生じているとはいえない。 b この点に関連して,被控訴人は,他のライセンシーに対するライセンス条件について,秘密保持義務に違反しない範囲でアップル社に開示することは可能であるのに,控訴人がライセンス条件を開示しないことを非難する旨の主張をしている。 しかし,本件FRAND宣言により控訴人に課される義務は,確定的なライセンス申出を行う者に対して誠実に交渉,協議する義務であって,他社へのライセンス条件を開示する義務は存在しない。また,アップル社は確定的なライセンスの申出を行っておらず,控訴人は被控訴人に対して何ら義務を負っていないというべきであるから,被控訴人の上記主張は失当である。 また,控訴人と他社との間のライセンス契約に関する情報は,秘密保持義務が課されており,提供できる性質のものではない。 (ウ) 誠実交渉義務違反の不存在a 控訴人は,終始一貫して,アップル社に対して両社の間で誠実に交渉することを求めており,誠実交渉義務に違反していない。 すなわち,控訴人は,2012年(平成24年)4月18日付け回答書(乙42)において,アップル社に対しFRAND条件 して両社の間で誠実に交渉することを求めており,誠実交渉義務に違反していない。 すなわち,控訴人は,2012年(平成24年)4月18日付け回答書(乙42)において,アップル社に対しFRAND条件でのライセンスの用意があることを伝え,アップル社が真剣な提案を行うことを促している。また,控訴人は,2012年(平成24年)9月7日付け書簡(甲111)において,アップル社に対して交渉の再開を提案し,同年9月25日以前に会談を行うことを提案した。また,控訴人は,同年12月18日には,アップル社に対して,UMTS規格等に関する必須特許ポートフォリオを対象とした10年間のクロスライセンスの対価として多額の一時金を支払うことを内容とする新たな提案も行っている。そして,控訴人とアップル社は,平成25年2月7日開催の会合において,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●その内容を記載した覚書(ドラフト)を作成した。このように,控訴人は,終始一貫して,アップル社に対して両者の間で誠実に交渉することを求めてきた。控訴人が2011年(平成23年)7月25日付けの書簡(甲25)で示したライセンス料率は,いわゆるHeadline initialoffer であり,FRAND条件に従う必要はなく,その後の経緯を見れば,交渉が継続され,控訴人から対案が示されているのであるから,重視されるべきではない。 b また,被控訴人は,控訴人がアップル社に対してFRAND条件でのライセンスの提示を行っておらず,また代案を示すことなく,被控訴人に対して差止請求を行っており,かかる行為はアップル社及び被控訴人に対するFRAND条件でのライセンスを拒絶する行為である旨主張する。 しかし,アップル社が「確定的なライセンスの申出」を行っていないことは前述したとお ており,かかる行為はアップル社及び被控訴人に対するFRAND条件でのライセンスを拒絶する行為である旨主張する。 しかし,アップル社が「確定的なライセンスの申出」を行っていないことは前述したとおりであるから,控訴人の行為がFRAND条件でのライセンスを拒絶する行為であるとの被控訴人の主張は,その前提を欠き失当である。 c むしろ,これまでに控訴人の誠実な交渉姿勢に応えてこなかったのは,アップル社側であって,本件で問題とするべきなのは,真にライセンスを取得する意思がないにもかかわらず,ライセンスを希望するかのように装って,実施料を支払うことなく,必須宣言特許を利用する,いわゆる「逆ホールドアップ」状況である。 アップル社は,平成25年2月7日開催の会合で,覚書(ドラフト)の作成段階にまで至っていた●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●また,アップル社は,同年5月16日付けの書簡(乙66)でも,本件特許権がライセンス交渉の対象とならないことを明確に示している。このような交渉態度に照らすならば,アップル社は,真摯にライセンスを受ける意思を有していない者(unwillinglicensee)であるというべきである。 d 以上のとおり,控訴人が誠実交渉義務に違反するとの被控訴人の主張は,理由がない。 (エ) FRAND条件での実施料相当額の請求についてFRAND宣言は,無償での特許権の利用を認めるものではないから,FRAND条件での実施料相当額の請求が,FRAND宣言をしていることを根拠として制限される理由はない。FRAND宣言をしたことを理由として,何らかの制限があるか否かが議論されるのは,差止請求権に関してであって,損害賠償請求権に関し 求が,FRAND宣言をしていることを根拠として制限される理由はない。FRAND宣言をしたことを理由として,何らかの制限があるか否かが議論されるのは,差止請求権に関してであって,損害賠償請求権に関してではない。 エ独占禁止法違反の主張に対し被控訴人は,控訴人の一連の行為が独占禁止法所定の不公正な取引方法に該当し,同法に違反する旨主張する。 しかし,被控訴人の上記主張は,控訴人に適時開示義務違反があること,控訴人が報復目的の対抗措置として本件仮処分の申立てを行っていることなどを根拠とするものであるが,その前提において誤りがあるから,失当である。 オ TRIPs協定に関する主張に対し我が国は,TRIPs協定を批准しているところ,TRIPs協定31条は,加盟国が,特許権者の許諾を得ていない特許の使用に関して,これを認める場合には,特許権者に対して金銭的補償を行うことを求め,かかる金銭的補償に関しては裁判所が決定するべき旨を規定している。本件においても,特許権者たる控訴人には,当然に金銭的補償が与えられるべきであり,控訴人による損害賠償請求権の行使が許されないとされるべき理由は存在しない。 カまとめ以上のとおり,控訴人の本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利濫用に当たるとの被控訴人の主張は,前提となる事実が存在しないか,権利濫用を基礎付ける事情に当たらないから,理由がない。また,控訴人による損害賠償請求を否定することはTRIPs協定に違反する。 7 争点7(損害額)(1) 控訴人の主張被控訴人による本件特許権の相当実施料に基づく支払債務は,後記の計算式のとおりである。 本件特許権の相当実施料率は,本件特許権の技術分野である通信機器の実施料率に倣って,原則として売上高の5.7%であ 人による本件特許権の相当実施料に基づく支払債務は,後記の計算式のとおりである。 本件特許権の相当実施料率は,本件特許権の技術分野である通信機器の実施料率に倣って,原則として売上高の5.7%であり,少なく見積もっても1%を下回らないとするのが合理的である。もっとも,原判決においては,本件特許権がETSIのIPRポリシーでいう必須IPRであると認定されており,被控訴人もこれを前提にした主張をしているので,かかる観点から,相当実施料率を修正する必要がある。 必須IPRである特許権の累積的実施料率の上限に関しては,被控訴人が売上高の5%と主張していることから,裁判の迅速化を図るために,これを争わない。 また,被控訴人が提出したBの追加宣誓書(甲134)には,UMTS規格に必須と宣言された特許ファミリーのうち,実際に必須であるのは529ファミリーである旨が記載されているので,控訴人もこれを採用する。 本件特許権の実施料率は,次の計算式で求められることになる。 (計算式) 5%×1/529=約0.0095%これに,本件製品2及び4の発売から平成25年9月28日までの売上高を乗ずると,次の計算式のとおり,相当実施料額が算定される。 (計算式)本件製品2 ●(省略)●円×5%×1/529≒●(省略)●万円本件製品4 ●(省略)●円×5%×1/529≒●(省略)●万円(2) 被控訴人の主張FRAND宣言がされた特許の価値を適切に評価するには,標準規格に組み込まれる前の発明本来の価値を基準としなければならない。 FRAND宣言された特許権の実施料率は,当該製品を構成する部品のうち,標準化された技術に関係するものを基準にして設定されなければならず,また,実施料率は,全ての必須宣言特許に係る実施料の支 。 FRAND宣言された特許権の実施料率は,当該製品を構成する部品のうち,標準化された技術に関係するものを基準にして設定されなければならず,また,実施料率は,全ての必須宣言特許に係る実施料の支払額が高くなりすぎないよう考慮して決定しなければならない。 ア控訴人による損害額の主張は,標準規格に組み込まれる前の価値を一切考慮していない点において,誤りがある。代替的Eビット解釈が,実際には使用されていないことや,その使用が必要あるいは望ましいことを示す証拠もないことからすれば,本件特許が標準規格の一部であるとしても,組み込まれる前の価値はゼロであるとするのが相当である。本件特許の技術的価値が低いことからして,標準規格に組み込まれる前にライセンス交渉が行われたとすれば,実施料を支払う者はいない。そうすると,本件特許に係る実施料率は,本件特許に係る技術の標準規格に組み込まれる前の価値がゼロかそれに近い数字であることを反映したものである必要があり,控訴人主張に係るような金額に上ることはあり得ない。 イ控訴人は,本件各製品の販売価格を実施料算定の基礎としているが,これでは本件各発明が寄与していない部分についてまで実施料の算定基礎に含まれることとなり,過大な実施料となる。また,本件特許における実施料は,非差別的なものでなければならないところ,本件各製品の販売価格を実施料算定の基礎とすることは,より高価格なスマートフォンを取り扱う者を不利益に取り扱うことになる。本件において不合理な結果を避けるためには,本件各発明が寄与する最小単位であるベースバンドチップの価格を基準にして実施料を算定するべきである。仮に,本件各製品の販売価格を基準とする場合でも,寄与度を乗じた額を基準とするべきで,本件各特許はベースバンドチップにのみ寄与しているというべき ドチップの価格を基準にして実施料を算定するべきである。仮に,本件各製品の販売価格を基準とする場合でも,寄与度を乗じた額を基準とするべきで,本件各特許はベースバンドチップにのみ寄与しているというべきであるから,ベースバンドチップの価格となるように寄与度を設定するべきである。そうでないとしても,通信機能をはじめとする基本的な機能しか備えていない携帯電話の価格(保守的に見積もって6000円程度)を超える寄与はない。 ウ本件特許の実施料は,UMTS規格全体において本件特許が占める割合を反映したものでなければならならない。また,UMTS規格の必須宣言特許について,全体として要求できる実施料額の合計は5%とするべきである。この5%という割合は,UMTS規格の必須宣言特許全体(フェアフィールド社のレポート(甲135)によれば1889ファミリー)の合計であるから,本件特許単体としては,次の計算式のとおりとするべきである。 (計算式)5%×1/1889=約0.00265%控訴人は,必須宣言された特許のうちフェアフィールド社のレポートで必須であると判定された特許の数を母数とするが,必須特許ファミリー数は控訴人が立証責任を負うにもかかわらず,控訴人はフェアフィールド社のレポートを引用するのみで立証責任を果たしていない。 エ以上によれば,本件特許に係る適切な実施料は,次のとおりとなる。 (ア) ベースバンドチップの価格を基礎とする場合ベースバンドチップの価格を基準に本件特許に係る適切な実施料相当額を算定すると次の計算式のとおりとなる。 (計算式)1,250円[ベースバンドチップのコスト]×約0.00265%[本件特許に係るロイヤルティ料率]×●(省略)●台[本件製品2及び4の販売台数合計]=約●(省略)● 。 (計算式)1,250円[ベースバンドチップのコスト]×約0.00265%[本件特許に係るロイヤルティ料率]×●(省略)●台[本件製品2及び4の販売台数合計]=約●(省略)●円また,仮に,標準規格に必須と判定された特許に分配するとの考え方を採用した場合には,次の計算式のとおりとなる。 1,250円[ベースバンドチップのコスト]×0.0095%[控訴人の主張するロイヤルティ料率]×●(省略)●台[本件製品2及び4の販売台数]=約●(省略)●円(イ) 本件各製品の販売価格を基準とする場合本件各製品の販売価格に寄与率を乗じることによって算定される金額は,ベースバンドチップの価格と同一になるから,この場合も前記(ア)と同額になる。 また,本件特許に係る適切な実施料相当額は,基本的な電話機能しか有しない携帯電話の販売価格(6000円)を超える金額を基礎とするべきではないから,次の計算式の金額を超えることはない。 6,000円[本件製品の販売価格に本件特許の寄与度を乗じた額の上限]×約0.00265%[本件特許に係るロイヤルティ料率]×●(省略)●台[本件製品2及び4の販売台数]=約●(省略)●円第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件各製品についての本件発明1の技術的範囲の属否)について当裁判所は,本件製品2及び4は,本件発明1の技術的範囲に属するが,本件製品1及び3は,本件発明1の技術的範囲に属しないと判断する。その理由は次のとおりである。 (1) 本件各製品の構成について控訴人は,本件発明1が3GPP規格の本件技術仕様書V6.9.0記載の「代替的Eビット解釈」(AlternativeE-bit 解釈)を具現化したものであり,同技術仕様書に準拠した本件各 いて控訴人は,本件発明1が3GPP規格の本件技術仕様書V6.9.0記載の「代替的Eビット解釈」(AlternativeE-bit 解釈)を具現化したものであり,同技術仕様書に準拠した本件各製品は,本件発明1の技術的範囲に属する旨主張する。 そこで,まず,本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品といえるかどうかについて判断する。 ア本件製品1及び3について本件製品1及び3が3GPPが策定した通信規格の標準規格(3GPP規格)であるUMTS規格に準拠した製品であることは争いがない。 UMTS規格としてリリースされた規格には各種のバージョンがあり,控訴人主張の代替的Eビット解釈は,本件出願の優先日後に公開された「3GPPTS25.322 V6.4.0」(以下「本件技術仕様書V6.4.0」という。)以降のバージョンの技術仕様書において採用されたものである(甲2,87,弁論の全趣旨)。 しかるに,本件全証拠によるも,本件製品1及び3において代替的Eビット解釈に基づく機能が実装されていることを認めることはできない。かえって,本件製品1及び3に実装されたUMTS規格に関連する処理を行うベースバンドチップは,インテル社製の「PMB8878」であること,上記ベースバンドチップは,本件出願の優先日前に公開された3GPP規格「リリース5」に係るバージョンに準拠したものであり,代替的Eビット解釈に基づく機能を有していないことがうかがわれる(甲82ないし85)。 したがって,本件製品1及び3が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品であるとの控訴人の主張は,理由がない。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,本件製品1及び3が本件発明1の技術的範囲に属するとの控訴人の主張は理由がない。 イ に準拠した製品であるとの控訴人の主張は,理由がない。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,本件製品1及び3が本件発明1の技術的範囲に属するとの控訴人の主張は理由がない。 イ本件製品2及び4について(ア) 代替的Eビット解釈本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項及び9.2.2.8項(別紙TS参照)には,① 伝送モードが非確認モードのPDU(UMDPDU)の最初のオクテットに含まれるEビット(拡張ビット)について,「通常Eビット解釈」又は「代替的Eビット解釈」が上位レイヤーのコンフィギュレーションに応じて選択的に適用されること,② 「代替的Eビット解釈」の下では,最初のオクテットに含まれるEビットが「0」の場合は,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを,「1」の場合は,「次のフィールドは,長さインジケータとEビット」であることを示すこと,③ 「長さインジケータ」は,最初のオクテットに含まれるEビットが「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを示していなければ,PDUの中のそれぞれのSDU(RLCSDU)が終わる最後のオクテットを示すものとして用いられること,④ 「代替的Eビット解釈」が設定され,かつ,PDU(RLCPDU)がSDUのセグメントを含むが,SDUの最初のオクテットも最後のオクテットも含まない場合には,「長さインジケータ」は,「111 1110」の値を持つ7ビットの長さインジケータ又は「111 1111 1111 1110」の値を持つ15ビットの長さインジケータが用いられることが記載されている。 (イ) 本件実機テストa 証拠(乙13,14,41)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a 」の値を持つ15ビットの長さインジケータが用いられることが記載されている。 (イ) 本件実機テストa 証拠(乙13,14,41)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) カナダ法人のチップワークス社が本件製品2及び4について,「基地局エミュレータ」として,CMW500を用いたテスト(本件実機テスト)を行った。 (b) 本件実機テストのテスト1は,「PDUサイズ:488ビット,SDUサイズ:480ビット」の設定で,「PDUが分割,連結,パディングされていない完全なSDUを含む場合」のテストであり,テスト2は,「PDUサイズ:80ビット,SDUサイズ:480ビット」の設定で,最初と最後を除いた「中間セグメント」としてのPDU(例えば,2番目のPDU)をモニタするテストである。 (c) 本件実機テストの結果は,次のとおりである。 ① テスト1の場合には,一連番号(SN)に続くEビットが「0」となり,長さインジケータを含まないPDUが出力されている(乙13の図12,14)。 ② テスト2の場合には,一連番号(SN)に続くEビットが「1」となり,長さインジケータとして所定値(1111110)を含むPDUが出力されている(乙13の図13,15)。 b 前記aの本件実機テストの結果が示すEビットの値及び長さインジケータの値は,前記(ア)の代替的Eビット解釈を採用した場合の値と整合しており(テスト1は前記(ア)②及び③と,テスト2は前記(ア)②及び④とそれぞれ整合する。),本件製品2及び4は,代替的Eビット解釈の機能を実装していることが認められる。 c これに対し被控訴人は,本件実機テストの結果の「Interpretation」の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」 釈の機能を実装していることが認められる。 c これに対し被控訴人は,本件実機テストの結果の「Interpretation」の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されており,「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」と表示されていないから,本件実機テストでは,代替的Eビット解釈ではなく,通常Eビット解釈が用いられているなどと主張する。 しかし,代替的Eビット解釈において,Eビットに「0」が設定される場合,次のフィールドのビット列が「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」を構成するSDUの「データ」を示すものであることからすると,「Interpretation」の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されていることは,本件実機テストにおいて代替的Eビット解釈が使用されていることと相反するものではない。 したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。 ウ小括以上によれば,本件製品2及び4は,本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品であり,代替的Eビット解釈に基づく機能を実施する構成を備えていることが認められる。 (2) 本件発明1の技術的意義ア本件明細書の記載事項(ア) 本件明細書(甲1の2)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(この記載中に引用する図面については,別紙本件明細書図面参照。)。 a 「【技術分野】本発明はパケットサービスを支援する移動通信システムに関するもので,特に無線リンク上のプロトコルデータユニット(ProtocolDataUnit:以下,“PDU”とする)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置に関するものである。」(段落【0001】) タユニット(ProtocolDataUnit:以下,“PDU”とする)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置に関するものである。」(段落【0001】)b 「【背景技術】・・・ヨーロッパ式移動通信システムであるGSM(GlobalSystemforMobilecommunications)とGPRS(GeneralPacketRadioServices)に基づいて広帯域符号分割多重接続(CodeDivisionMultipleAccess:以下,“CDMA”とする)を使用する第3世代の移動通信システムであるUMTS(UniversalMobileTelecommunicationService)システムは,移動電話加入者又はコンピュータユーザーが全世界のどこにいてもパケットベースのテキスト,デジタル化された音声,ビデオ,及びマルチメディアデータを2Mbps 以上の高速で伝送できるサービスを提供する。このUMTSシステムは,インターネットプロトコル(InternetProtocol:以下,“IP”とする)のようなパケットプロトコルを用いるパケット交換アクセス方式の概念を導入している。上記のUMTS通信システムに対する標準化を担当する3GPP(3rdGenerationPartnershipProject)で音声サービスについて,インターネットプロトコルを用いて音声パケットを支援するVoIP(Voiceover IP)通信が論議されている。VoIPは,音声コーデック(CODEC)から発生した音声フレームをIP/ UDP(UserDatagramProtocol)/ RTP(Real-timeTransportProtocol)パケットの形態で伝送する通信 ODEC)から発生した音声フレームをIP/ UDP(UserDatagramProtocol)/ RTP(Real-timeTransportProtocol)パケットの形態で伝送する通信技術である。このVoIP,パケットネットワークを通じる音声サービスの提供を容易にする。」(段落【0002】),「図1は,VoIPを支援する通常の移動通信システムの構成を示す。」(段落【0003】)」,「一般に,RLC階層は,動作方式によりUM(UnacknowledgedMode),AM(AcknowledgedMode),TM(TransparentMode)に分けられる。VoIPは,上記RLCUMで動作する。送信器において,RLCUM階層は,上位階層から受信されたRLCサービスデータユニット(ServiceDataUnit:以下,“RLCSDU”とする)を無線チャンネルを通じて伝送するのに適合したサイズに分割し,連結し,或いはパディングする。RLCUM階層は,分割/ 連結/パディング(segmentation/concatenation/padding)情報とシーケンス番号(SN)を上記結果値に挿入して無線チャンネルを通じて伝送に適合したRLCPDU(ProtocolDataUnit)を構成し,このLCPPDU(判決注:「RLCPDU」の誤記)を下位階層に伝送する。・・・上位階層から受信されたRLCSDUを無線チャンネルを通じて伝送するために適合したサイズに処理する動作は,“RLCフレーミング(framing)”と称する。」(段落【0004】),「図2Cは,従来技術により,送信器のRLC階層でRLCSDUをフレーミングしてRLCPDUを構成する動作を示す。・・・送信器のRLC階層は,上位階層から g)”と称する。」(段落【0004】),「図2Cは,従来技術により,送信器のRLC階層でRLCSDUをフレーミングしてRLCPDUを構成する動作を示す。・・・送信器のRLC階層は,上位階層から任意のサイズ,例えば100バイトIPパケットのRLCSDU225を受信する。無線チャンネルを通じて伝送可能なデータのサイズが40バイトである場合に,RLC階層は,RLCSDU225を3個のRLCPDU230,235,240に分割する。このとき,それぞれのRLCPDUは,40バイトである。また,各RLCPDUは,RLCヘッダー245を含む。RLCヘッダー245は,シーケンス番号(SequenceNumber:以下,“SN”とする)250と,Eフィールド255と,長さインジケータ(LengthIndicator:以下,“LI”とする)フィールド260とEフィールド265の少なくとも複数の対とから構成される。LIフィールド260は,分割により含まれる。SNフィールド250は,RLCPDUごとに1ずつ単調に増加する7ビットのSNを示す。このSNは,RLCPDU230,235,240の順序を示す。Eフィールド255は,次のフィールド(followingfield)がデータフィールドであるか否か或いはLIフィールドとEフィールドの対であるか否かを示し,1ビットのサイズを有する。LIフィールド260は,RLCのフレーミングに基づいて7ビット又は15ビットのサイズを有する。RLCPDUに含まれるRLCSDU225のセグメントが,RLCPDUのデータフィールド270に位置することを示す。すなわち,LIフィールド260は,RLCPDUのデータフィールド270で,RLCSDU225の開始及び終了を示す。LIフィールド260は,パディン データフィールド270に位置することを示す。すなわち,LIフィールド260は,RLCPDUのデータフィールド270で,RLCSDU225の開始及び終了を示す。LIフィールド260は,パディングしたか否かを示すことができる。LIフィールド260が示す値はバイト単位で設定され,RLCヘッダーからRLCSDUが終了する地点までのバイト数を意味する。」(段落【0007】)c 「上記のように,LIフィールドを用いてRLCSDUの最後のバイトの位置を示す従来の方式は,一つのRLCSDUを複数のRLCPDUに分割し,或いは複数のRLCSDUを一つのRLCPDUに連結する場合に効率的である。しかし,通常にVoIPパケットの特性において,一つの完全なRLCSDUが一つのRLCPDUのみに対応し,分割/連結/パディングなしに頻繁に発生する。・・・このようにRLCPDUのサイズが,最も頻繁に発生するRLCSDUのサイズに基づいて定義されると,大多数のRLCSDUは分割/連結/パディングを経ることなく,RLCPDUにフレーミングされる。この場合に,従来のフレーミング方式は非効率的である。」(段落【0011】),「・・・言い換えれば,VoIP通信では,大部分RLCSDUを分割又は連結せず,一つのRLCSDUは一つのRLCPDUで構成する。それにも拘わらず,既存のRLCフレーミング動作は,RLCPDUに少なくとも2個のLIフィールド,すなわちRLCSDUの開始を示すLIフィールドと,RLCSDUの終了を示すLIフィールドが常に要求される。必要によって,データフィールドのパディング可否を示すLIフィールドも追加で挿入される。したがって,従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式を使用する場合に,不 ールドが常に要求される。必要によって,データフィールドのパディング可否を示すLIフィールドも追加で挿入される。したがって,従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式を使用する場合に,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという問題点が発生した。」(段落【0012】)d 「【発明が解決しようとする課題】・・・上記の従来技術による問題点を解決するために,本発明の目的は,パケットサービスを支援する移動通信システムで,無線リンク制御階層のプロトコルデータユニット(RLCPDU)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置を提供することにある。」(段落【0013】)e 「【課題を解決するための手段】 上記のような本発明の目的を達成するために,本発明は,移動通信システムにおける予め定められた長さインジケータ(LI)を用いてデータを送信する方法であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する段階と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記SDUを伝送可能なPDUのサイズにより複数のセグメントに分割する段階と,一連番号(SN)フィールドと,LIフィールドが存在することを示す少なくとも一つの1ビットフィールドと,前記LIフィールドとをヘッダー内に有し,前記セグメントをデータフィールド内に有する複数のPDUを構成する段階と,ここで前記SDUの中間セグメントをデータフィールド内に含むPDUの前記LIフィールドは,前記中間セグメントが存在することを示す値に設定され,前記PDUを受信器に伝送する段階とを有することを特徴とする。」(段落【0014】),「本発明は タフィールド内に含むPDUの前記LIフィールドは,前記中間セグメントが存在することを示す値に設定され,前記PDUを受信器に伝送する段階とを有することを特徴とする。」(段落【0014】),「本発明は,移動通信システムにおける予め定められた長さインジケータ(LI)を用いてデータを送信する装置であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,SNフィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に有する少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記少なくとも一つのPDUの1ビットフィールドを,以後のLIフィールドの存在有無のうち少なくとも一つを示す値に設定する1ビットフィールド設定部と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,前記SDUの中間セグメントをデータフィールド内に含むPDUのLIフィールドを,前記中間セグメントを含むことを示す値に設定するLI挿入部と,前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信部とを含むことを特徴をする。」(段落【0016】)f 「【発明の効果】本発明は,RLCPDUのデータフィールドに完全なRLCSDUが存在することを示す1ビットの情報によって,このRLCSDUの開始/終了/パディングを示すための追加情報の挿入を不要にすることによって,限定された無線伝送リソースを効率的に使用する効果を有する。また,本発明は,上記のようにRLCSDU SDUの開始/終了/パディングを示すための追加情報の挿入を不要にすることによって,限定された無線伝送リソースを効率的に使用する効果を有する。また,本発明は,上記のようにRLCSDUの中間セグメントのみを含むRLCPDUに,予め定められたLIの新たな値に設定されたLIフィールドを含むことによって,RLCSDUの分割動作が可能になる効果を有する。」(段落【0018】)g 「・・・本発明の望ましい実施形態によりRLC階層は,2つのフレーミング方式を使用する。第1の方式は,最も頻繁に使用されるサイズを有するRLCSDUが,LIフィールドを使用せずにRLCPDUにフレーミングを遂行することである。第2の方式は,他のサイズのRLCSDUに対してLIフィールドを使用してRLCPDUにフレーミングを遂行することである。・・・第1のEフィールドを,他のEフィールドと区別するために“Fフィールド”と称する。」(段落【0020】)h 「図4は,本発明の望ましい実施形態によるRLCPDUの構造を示す。」(段落【0021】),「図5Aは,本発明の望ましい実施形態により,RLCSDUが分割/連結/パディングを経ることなく,RLCPDUに対応する場合にRLCPDUの構成を示す。図5Aを参照すると,送信器(すなわち,送信器のRLC階層)は,一つの完全なRLCSDUを分割/連結/パディングせずに,一つのRLCPDUにフレーミングが可能である場合に,Fフィールドを‘0’に設定し,RLCPDUのデータフィールドに完全なRLCSDUを挿入する。」(段落【0022】),「図5Bは,本発明の望ましい実施形態により,RLCが分割/連結/パディングを通じてRLCPDUにフレーミングされる場合に,RLCPDUの構造を示す。図 Uを挿入する。」(段落【0022】),「図5Bは,本発明の望ましい実施形態により,RLCが分割/連結/パディングを通じてRLCPDUにフレーミングされる場合に,RLCPDUの構造を示す。図5Bを参照すると,送信器はRLCをフレーミングするために分割/連結/パディングを遂行することが必要である場合に,Fフィールドを‘1’に設定し,分割/連結/パディングに必要なLIフィールドとパディングを含んでRLCPUDを構成する。・・・既存の第1のEフィールドをFフィールドとして用いるためには,下記のような問題点を解決すべきである。通常,RLCPDUがRLCSDUのセグメント(segment)であり,RLCPDUにRLCSDUの開始も終了も含まない場合に,RLCPDUにはLIフィールドが存在しなかった。図5Aでは,RLCSDUが分割/連結/パディングを経ることなく,一つのRLCPDUにフレーミングされる場合に,LIフィールドを使用しない。RLCPDUが一つの完全なRLCSDUを含まず,かつRLCSDUの開始又は終了を含まないことを示す必要がある。」(段落【0023】)i 「図6Aは,従来のRLCフレーミング技術により,一つのRLCSDUが複数のRLCPDUに分割される状況を示す。・・・RLCSDUの開始や終了を含まないRLCPDU615にLIフィールドを挿入しないと,受信器は,RLCPDU615のデータフィールドに含まれたセグメントが,一つの完全なRLCSDUを構成するか,或いは以前及び以後のRLCPDUのセグメントと結合して一つのRLCSDUを構成するか判定できない。したがって,後述する本発明の望ましい実施形態では,RLCSDUの開始や終了が含まれないRLCPDU(以下,“中間(int Uのセグメントと結合して一つのRLCSDUを構成するか判定できない。したがって,後述する本発明の望ましい実施形態では,RLCSDUの開始や終了が含まれないRLCPDU(以下,“中間(intermediate)PDU'とする)を示すために,予め定められたLIの新たな値を定義する。例えば‘1111 110’を予め定められたLIの新たな値として定義する。予め定められたLIの新たな値が挿入されたRLCPDUは,中間RLCPDUとして認識される。」(段落【0024】),「図6Bは,本発明の望ましい実施形態により,予め定められたLIを用いて一つのRLCSDUを複数のRLCPDUに分割する状況を示す。図6Bを参照すると,一つのRLCSDU625がSN‘x’,‘x+1’,‘x+2’である3個のRLCPDU630,635,640に分割される。すると,第1のRLCPDU630にはFフィールドが‘1’に設定され,予め定められたLI値‘1111 100’が第1のRLCPDU630に挿入され,このRLCPDU630のデータフィールドの第1のバイトがRLCSDU625の第1のバイトに対応することを示す。第2のRLCPDU635にはRLCSDU625の開始も終了も含まれずに中間部分のみを含んでいるため,Fフィールドが‘0’に設定され,予め定められたLI値‘1111 110’が第2のRLCPDU635に挿入されて前記RLCPDU635が中間RLCPDUであることを示す。第3のRLCPDU640には,RLCSDU625の終了,例えばデータフィールドの35番目のバイトまでであることを示すLI値‘0100 011’が含まれる。」(段落【0025】)(イ) 本件発明1の特許請求の範囲(請求項8)の文言と本件明細書の 了,例えばデータフィールドの35番目のバイトまでであることを示すLI値‘0100 011’が含まれる。」(段落【0025】)(イ) 本件発明1の特許請求の範囲(請求項8)の文言と本件明細書の「発明の詳細な説明」の前記(ア)の記載事項(各図面を含む。)を総合すれば,本件明細書には,① パケットサービスを支援する移動通信システム(無線データパケット通信システム)において,音声コーデックから発生した音声フレームをインターネットプロトコルを用いて音声パケットの形態で伝送する通信技術であるVoIPを提供するに当たって,従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式(上位階層から受信されたRLCSDUを無線チャンネルを通じて伝送するために適合したサイズに処理する動作)を使用する場合であって,RLCPDUのサイズが,最も頻繁に発生するRLCSDUのサイズに基づいて定義される場合には,大部分のRLCSDUが,分割又は連結せず,一つのRLCSDUは一つのRLCPDUで構成されるにもかかわらず,既存のRLCフレーミング動作では,少なくともRLCSDUの開始を示すLI(長さインジケータ)フィールドとその終了を示すLIフィールドが常に要求されるなど不必要なLIフィールドが挿入され,それによって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという問題点が発生すること,② 本件発明1の目的は,従来技術による上記問題点を解決するために,RLCPDU(無線リンク制御階層のプロトコルデータユニット)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する装置を提供することにあること,③ 本件発明1は,上記目的を達成するための手段として,「一つの完全なRLCSDUを分割/連結/パディングせずに,一つのRLCPDUにフレーミングが可能で 使用する装置を提供することにあること,③ 本件発明1は,上記目的を達成するための手段として,「一つの完全なRLCSDUを分割/連結/パディングせずに,一つのRLCPDUにフレーミングが可能である場合」に,そのことをRLCPDUのデータフィールドに1ビット情報で示す構成(構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」するとの構成)を採用することによって,そのRLCSDUの分割/連結/パディングを示すための追加情報の挿入(「LIフィールド」の使用)を不要とし,RLCPDUが「RLCSDUの開始や終了が含まれない,RLCSDUの中間セグメントのみ」を含む場合に,そのことを予め定められたLIの新たな値に設定されたLIフィールドで示す構成(構成要件Dの「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」の構成及び構成要件Fの「前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」される構成)を採用することによって,RLCSDUの分割動作を可能とし,これによりヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する効果を奏することが開示されているものと認められる。 イ本件発明1と代替的Eビット解釈との関係(ア) 本件発明1の構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィール められる。 イ本件発明1と代替的Eビット解釈との関係(ア) 本件発明1の構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」するとの構成及びその効果(前記ア(イ)③)は,代替的Eビット解釈において,最初のオクテットに含まれるEビットが「0」の場合は,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを示し,長さインジケータが用いられないこと(前記(1)イ(ア)②及び③)を規定し,また,構成要件Dの「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」の構成及び構成要件Fの「前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」される構成は,代替的Eビット解釈において,PDU(RLCPDU)がSDUのセグメントを含む が,SDUの最初のオクテットも最後のオクテットも含まない場合には,「長さインジケータ」は,「111 1110」の値を持つ7ビットの長さインジケータ又は「1 11 1111 1111 1110」の値を持つ15ビットの長さインジケータが用いられること(前記(1)イ(ア)④)を規定したものであると認められる。 したがって,本件発明1は,代替的Eビット解釈を具現化した発明であるというべきである。 (イ)a これに対し被控訴人は,本件発明1の構成要件Bの「前記SDUが一つのPDUに含まれるか否かを判定」とは,「 て,本件発明1は,代替的Eビット解釈を具現化した発明であるというべきである。 (イ)a これに対し被控訴人は,本件発明1の構成要件Bの「前記SDUが一つのPDUに含まれるか否かを判定」とは,「SDUが一つのPDUに完全に含まれるかどうか(一致するかどうか)」を判定することを意味するのに対し,本件技術仕様書V6.9.0の4.2.1.2.1項の「RLCSDUがUMDPDUの利用可能なスペースの長さより大きい場合」に「RLCSDUを適当なサイズのUMDPDUsに分割する。」との記載は,4.2.1.2.1項記載の判定方式が,SDUの分割が必要か否かを決定することを目的とし,SDUがPDUの利用可能な領域よりも大きいか否か(SDUとPDUの大小関係)を判定する方式を意味するものであり,SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)か否かを判定する方式とは異なるものであるから,本件技術仕様書V6.9.0には,構成要件Bの開示がない旨主張する。 しかし,本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項には,「代替的Eビット解釈」の下において,最初のオクテットに含まれるEビットが「0」の場合は,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを,「1」の場合は,「次のフィールドは,長さインジケータとEビット」であることを示すこと(前記1(1)イ(ア)②)が記載されており,上記記載は,SDUがPDUに完全に含まれる(一致する)か否か(「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」か否か)の判定を行うことを前提に,その判定結果に従ってEビットを上記のように設定することを規定するものといえるから,構成要件Bの「SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定」するとの構成を開示 の判定結果に従ってEビットを上記のように設定することを規定するものといえるから,構成要件Bの「SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定」するとの構成を開示するものというべきである。 したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。 b また,被控訴人は,構成要件Dにいう「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,①パディングが生じている場合,②連結が生じている場合,③分割,連結及びパディングのいずれも生じていない場合の全てを対象とするものであるから,構成要件Dを充足するというためには,上記①又は②の場合であっても,「PDUが分割,連結又はパディングなしにSDUを完全に含むことを示すように1ビットフィールドが設定」されなければならないのに対し,本件技術仕様書V6.9. 0記載の代替的Eビット解釈においては,上記③の場合にのみ,PDUが完全なSDUを含むことを示すように1ビットフィールドが設定されるのであるから,構成要件Dの構成は,本件技術仕様書V6.9.0記載の代替的Eビット解釈とは異なる旨主張する。 しかし,構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」との文言,本件明細書の段落【0022】及び図5Aによれば,構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合(上記③の場合)のみを意味し,SDUが連結されてPDUに格納されている場合やSDUがパディングとともにPDUに格納されている場合は,これに含まれないと解すべきであるから,被控訴人の主張は,その 合(上記③の場合)のみを意味し,SDUが連結されてPDUに格納されている場合やSDUがパディングとともにPDUに格納されている場合は,これに含まれないと解すべきであるから,被控訴人の主張は,その前提を欠くものとして,採用することができない。 (3) 本件製品2及び4についての本件発明1の技術的範囲の属否についてア本件製品2及び4が本件発明1の構成要件A及びHを充足することは,前記争いのない事実等(3)イのとおりである。 そして,本件製品2及び4が,本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品であり,代替的Eビット解釈に基づく機能を実施する構成を備えていること(前記(1)ウ),本件発明1が代替的Eビット解釈を具現化した発明であること(前記(2)イ(ア))によれば,本件製品2及び4は,本件発明1の構成要件BないしGを充足するものと認められる。 以上によれば,本件製品2及び4は,本件発明1の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 イ(ア) これに対し被控訴人は,本件技術仕様書V6.9.0に構成要件B及びDの開示がないことを理由に,本件製品2及び4が構成要件B及びDを充足しない旨主張する。 しかし,前記(2)イ(イ)で述べたとおり,被控訴人の主張は,その前提を欠くものであるから,理由がない。 (イ) また,被控訴人は,本件製品2及び4が本件発明1の技術的範囲に属するというためには,本件製品2及び4が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を現実のネットワーク上で実行していることを立証する必要があるが,代替的Eビット解釈は,通常Eビット解釈のオプション的なものであり,通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定していることについての立証がないから,本件各製品が本件発明1の技術的 的Eビット解釈は,通常Eビット解釈のオプション的なものであり,通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定していることについての立証がないから,本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属しない旨主張する。 しかし,本件製品2及び4は,本件発明1の構成要件を全て充足し,代替的Eビット解釈を実施する構成を備えている以上,本件発明1の技術的範囲に属するものと認められ,現実のネットワーク上で通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定しているかどうかは本件発明1の技術的範囲の属否に影響を及ぼすものではないというべきである。 (4) まとめ以上のとおり,本件製品1及び3は,本件発明1の技術的範囲に属しないが,本件製品2及び4は,その技術的範囲に属する。 そうすると,被控訴人による本件製品1及び3の輸入,販売等は,本件特許権の侵害行為に当たらない。 2 争点2(本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)の成否)について本件発明2は,本件発明1の送信装置におけるデータの送信方法の発明であり,両発明の構成は共通すること(争いがない。)によれば,本件製品1及び3におけるデータ送信方法の構成は,本件発明2の技術的範囲に属しないが,本件製品2及び4におけるデータ送信方法の構成は,その技術的範囲に属するものと認められる。 本件製品1及び3におけるデータ送信方法の構成は,本件発明2の技術的範囲に属しないから,被控訴人が本件製品1及び3を輸入し,販売する行為が本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)に該当するものではない。 本件製品2及び4におけるデータ送信方法の構成は,本件発明2の技術的範囲に属するものと認められるが,争点2に係る主張は争点 件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)に該当するものではない。 本件製品2及び4におけるデータ送信方法の構成は,本件発明2の技術的範囲に属するものと認められるが,争点2に係る主張は争点1に係る主張と選択的な関係に立ち,争点3以下の判断は争点1と共通であるから,間接侵害の成否は判断しない。 3 争点3(特許法104条の3第1項の規定による本件各発明に係る本件特許権の権利行使の制限の成否)について当裁判所は,本件特許には被控訴人主張に係る無効理由はなく,特許法104条の3第1項の規定によりその権利行使が制限されるものではないと判断する。その理由は次のとおりである。 (1) 各文献の記載各引用例には次のとおりの記載がある(この記載中に引用する図面については,別紙引用例の図面参照。)。 ア甲3(特開2004-179917号公報)の記載(ア) 「本発明は,ワイヤレスコミュニケーションデータの伝送中に発生する,不測のスケジュール中断を処理する方法に関するもので,特に,無線リンク制御(radiolinkcontrol,RLC)層とメディアアクセス制御(mediumaccesscontrol,MAC)層間のスケジュール中断の処理に関するものである。」(段落【0001】)(イ) 「【従来の技術】・・・図1は,三層のコミュニケーションプロトコルを示す図である。・・・第一ステーション上のアプリケーション13は,メッセージ11を生成し,そのメッセージ11を第三層(レイヤ)インターフェース12に送り,第二ステーション20に伝送する。・・・第三層インターフェース12は,第二層のサービスデータユニット(servicedataunits,SDUs)14の形式で,メッセージ11,或いは第三信号メッセージ1 ーション20に伝送する。・・・第三層インターフェース12は,第二層のサービスデータユニット(servicedataunits,SDUs)14の形式で,メッセージ11,或いは第三信号メッセージ12aを,第二層インターフェース16に伝送する。」(段落【0002】),「第二層のSDU14は,異なる大きさで,第三層インターフェース12が第二ステーション20に伝送したいデータを保持しており,このようなデータは,信号メッセージ12a,或いは,メッセージ11である。第二層インターフェース16は,受信したSDU14を,一つ或いはそれ以上の第二層プロトコルデータユニット(protocoldataunit,PDUs)18に組み立てる。 各第二層PDU18の長さは一定で,第一層インターフェース19に伝送される。 第一層インターフェース19は実体層(physicallayer)で,データを第二ステーション20に伝送する。」(段落【0003】)(ウ) 「図2は,第二層のデータ伝送受信の処理を示す図である。ベースステーション,或いはモバイルユニットである送信器30の第二層インターフェース32は,第三層インターフェース33から,一連のSDU34を受信する。ここでは,SDU34は,連続して1~5に並び,異なる大きさであるとし,図では異なる長さで示されている。第二層インターフェース32は,一連のSDU34を,一連のPDU36にする。第二層PDU36は,1~4に並べられ,全て同じ長さである。PDU36は,第一層インターフェース31に送られ,伝送を待つ。」(段落【0004】)(エ) 「図3及び図1を参照すると,図3はAMデータPDU50の簡略図で,3GPPTS25.322 V3.8.0.規範に掲載されている。」(段落【0006】)(オ) 「図3中のP 4】)(エ) 「図3及び図1を参照すると,図3はAMデータPDU50の簡略図で,3GPPTS25.322 V3.8.0.規範に掲載されている。」(段落【0006】)(オ) 「図3中のPDU50はデータPDUで,第二層プロトコルに従って,様々なフィールドに分割される。」,「第一フィールド51は,PDU50がデータPDU或いは制御PDUのどちらかを示すシングルビットである。ビットの値が1の時,PDU50はデータPDUである。第二フィールド52はシーケンス番号(sequencenumber,SN)フィールドで,AM伝送時は,12ビット長である。後続のPDU18,28は,高いシーケンス番号を備え,受信器(第二ステーション)20に,受信した第二層PDU28を正確に組み立てさせ,第二層SDU24を形成する。」,「シーケンス番号フィールド52の後に,単一のポーリングビット53がある。」(カ) 「ポーリングビット53が1の時,受信器(第二ステーション20)は,確認状態PDUを出して応答しなければならない。」,「ビット54が保留されていて,0に設定される。次のビット55aは,拡張子ビット(extensionbit)で,1に設定される時,即刻,長さインジケーター(lengthIndicator,LI)につなぐことを表示する。LIは7ビットまたは15ビットで,第二層SDUが,第二層PDU50内で終了する位置を表示するのに用いられる。僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」(段落【0007】,【0008】)(キ) 「図3の例において,2つの第二層SDU57a及び57bは,第二層PDU50で終了する。よって,2つのLIにより,第二層SDU57a及 ことを表示する。」(段落【0007】,【0008】)(キ) 「図3の例において,2つの第二層SDU57a及び57bは,第二層PDU50で終了する。よって,2つのLIにより,第二層SDU57a及び57bの終了をそれぞれ表示する。続いて,PDU50の後続のPDU(シーケンス番号52で区別する)は,ある一つのLIにより,SDU57cの終わりを表示する。LIの後の拡張子ビット55bは1に設定され,後にまだLI(つまり,図上のLI)があることを表示する。LI後の拡張子ビット55cは0に設定され,後にLIがないことを示し,データ領域58は,この拡張子ビット55cに続いて開始される。 データ領域58は,実際のSDUデータを格納するのに用いられる。」(段落【0009】)(ク) 「図6と図4を参照する。図6は,公知技術のTFC選択のタイミング図である。・・・TTI81において,RLC層62は,MAC層64に,RLC実体情報(entityinformation)84を知らせなければならない。RLC状態情報84は,MAC層64に,いくつのSDU情報65aがRLC層62により伝送されるのを待っているかを報告する。MAC層64は,RLC状態情報84に応答し,TFCデータ要求86を与える。TFCデータ要求86は,RLC層62に,MAC層64に伝送するPDU65bの大きさと数量を指示する。・・・その後,これらのPDU65bは,ブロック88の方式で,MAC層64に伝送される。」,「しかし,一旦,MAC層64が,TFCデータ要求86に応答した後,RLC層62は,TFCデータ要求86の要求に符合する大きさと数量のPDUを伝送しなければならない。 要求通りに実行されていない場合,無線デバイスのソフトウェア障害を生じる。この問題は,公知技術でも問題となっ 2は,TFCデータ要求86の要求に符合する大きさと数量のPDUを伝送しなければならない。 要求通りに実行されていない場合,無線デバイスのソフトウェア障害を生じる。この問題は,公知技術でも問題となっており,データ伝送のスケジュール上,非常に重要である。」(段落【0013】,【0014】)(ケ) 「しかし,上述の状況以外に,他の不測のデータ中断事態が発生し,公知技術でも処理できない状態が生じるかもしれない。図1,図4及び図6をもう一度参照すると,これらの予期されないデータ中断のほとんどは,第三層インターフェース12から第二層インターフェース16へ伝送されるコマンド指令(commandprimitive)に起因する。・・・第三層インターフェース12がベースステーションの変更を決定した時,第三層インターフェース12は第二層インターフェース16の停止指令を起動する。停止指令は第二層インターフェース12に,SDU情報65aの伝送を直ちに中止するよう要求する。よって,TFCデータ要求86がすでに受信されても,PDU65bは,MAC層64に送られる状態から,伝送停止状態に変更する。」(段落【0015】)(コ) 「【発明が解決しようとする課題】本発明は,ワイヤレスコミュニケーションシステムにおいて,RLC層とMAC層間で生じる不測の伝送中断を処理する方法とそのシステムを提供することを目的とする。」,「【課題を解決するための手段】本発明は,ワイヤレスコミュニケーションデバイスにおいて,RLC層とMAC層間のデータ伝送スケジュールで生じる不測の伝送中断の処理方法とシステムを開示する。本発明によると,RLC層は,RLC実体情報をMAC層に提供する。RLC実体情報は,RLC層が伝送を待つSDUデータを有することを示す。RLC実体情報が提供 処理方法とシステムを開示する。本発明によると,RLC層は,RLC実体情報をMAC層に提供する。RLC実体情報は,RLC層が伝送を待つSDUデータを有することを示す。RLC実体情報が提供された後,RLC層は不測のデータ中断を受信し,RLC層にSDUの破棄を要求する。不測のデータ中断を受信した後,MAC層は,MAC要求を送信し,RLC層に少なくとも一つのPDUを出すよう要求する。このMAC要求に従って,RLC層はMAC層に少なくとも一つのPDUを伝送し,破棄されたSDUを代替する。」(段落【0019】,【0020】)(サ) 「以下の記述において,送信器或いは受信器は,携帯電話,PDA,パソコン或いは,その他のワイヤレスコミュニケーションプロトコルを使用したデバイスである。本発明は,前述の通り,ワイヤレスコミュニケーションシステム或いはその他のワイヤレスシステムにおいて応用される。本発明を構成する本発明と従来技術の相違点が,従来技術の適切な改良によりなされたものであることは,当業者によって容易に理解されることであろう。」(段落【0023】)(シ) 「図7は,本発明によるワイヤレスコミュニケーション(無線通信)デバイス100を示す図である」,「第二層インターフェース132は,RLC層142及びMAC層144に分割される。RLC層142は第三インターフェース133と通信し,SDUの形式で,第三層データを受信すると共に,バッファ143に保存する。RLC層142は第三層インターフェース133から,一時停止,停止及び再構築などのコマンド指令を受信する。RLC層142は,SDU141によりPDU145を生成し,その後,PDU145をMAC層144に送り,伝送する。 MAC層144に伝送されたPDU145の大きさと数量は,MAC層144 令を受信する。RLC層142は,SDU141によりPDU145を生成し,その後,PDU145をMAC層144に送り,伝送する。 MAC層144に伝送されたPDU145の大きさと数量は,MAC層144からRLC層142に送られるTFC(transportformatcombination,TFC)データ要求により指定される。RLC層142内に,伝送されるSDUデータ141があると示された後,MAC層144は,RLC実体情報の形式で,TFCデータ要求をRLC層142に送る。」(段落【0024】,【0025」】)(ス) 「第一実施形態において,本発明の方法は,RLC層142に,少なくとも 一つのパディング(padding)PDU150を提供させ,MAC層144からのTFCデータ要求を満たす。パディングPDU150は,実際のSDUデータ141を備えず,SDUデータ141が不測のデータ中断の発生により破棄される時にだけ用いられる。図8は,パディングPDU150を示す図である。パディングPDU150aは標準的なAMデータPDUであるため,PDUフィールド151aは1に設定される。シーケンス番号フィールド152aは,標準シーケンス番号で,ポーリングビット153aは,0か1(第二層インターフェース132からポーリング状態に従って定義される)である。ビット154aは保留されていて,その値は0である。続く,拡張子ビット155aは常に1に設定され,後に一つのLI156aが続くことを示す。しかし,LI156aにおいて,特別コードを設定し,全て1である。この特別コードが現す長さは,データ領域158aの長さを大幅に超過する。RLC実体がLIの長さに対する定義に従って,実際のLI156aが占める長さは,7或いは15である。図8において,LI長さは15 この特別コードが現す長さは,データ領域158aの長さを大幅に超過する。RLC実体がLIの長さに対する定義に従って,実際のLI156aが占める長さは,7或いは15である。図8において,LI長さは15ビットである。 この特別なLI156aは,残りのPDU150aが未定義の部分を埋めるだけで,無視しても構わない情報を保持していることを示す。しかし,LI156aの次のビット157aは0でなければならず,その後は,SDUデータ領域158aの開始であることを表示する。SDUデータ領域158aの内容は定義されず,純粋に充填用である。注意すべきことは,UM伝送下で,UMデータPDUは充填に用いることが出来ることである。図9は,UMデータパディングPDU150bを示す図である。UMデータパディングPDU150bは,非常に簡単な構造で,7ビットのシーケンス番号フィールド152b,それに続く拡張子ビット155b(1に設定),全部が1に設定された7ビットのLI156b(その後のデータはパディングフィールドであることを表示する),0に設定される最後の拡張子ビット157b,を備える。LI156bの実際のビットは,上層133が定義するUMRLC実体中の最大UMDPDUの大きさによって決まり,7或いは15ビットである。図9において,LIは7ビットである。前述のように,PDU150b全体がパディン グPDUであるため,データ領域158bの定義がないか,或いは,いかなる値でもよい。」(段落【0026】)(セ) 「いかなる状態でも,不測のデータ中断によってRLC層142内のSDUデータ141がTFCデータ要求166によるデータ量を満たさない場合,RLC層142は相当する数量と正確な大きさのパディングPDUを出して,TFCデータ要求166の要求を満たす。」,「 2内のSDUデータ141がTFCデータ要求166によるデータ量を満たさない場合,RLC層142は相当する数量と正確な大きさのパディングPDUを出して,TFCデータ要求166の要求を満たす。」,「以上のように,パディングPDUを代替PDUにすることにより,SDUデータの欠乏を補う。」(段落【0029】,【0031】)イ甲1の4(「3GPPTS25.322 V6.3.0」。本件技術仕様書V6.3.0。)の記載「4.2.1.2.1 送信UMRLCエンティティ送信側UM-RLCエンティティは,上位レイヤーからUM-SAPを通じてRLCSDUを受信する。 送信側UM-RLCエンティティは,RLCSDUがUMDPDUの利用可能なスペースの長さより大きい場合,RLCSDUを適当なサイズのUMDPDUに分割する。 UMDPDUは分割及び/又は連結されたRLCSDUを含む場合がある。 また,UMDPDUは,有効な長さであることを確保するため,パディングを含む場合もある。 長さインジケータは,UMDPDU内のRLCSDU間の境界を定義するために使用される。長さインジケータはまた,UMDPDU内にパディングが含まれるか否かを示すためにも使用される。 送信側UMRLCエンティティは,CCCH,SHCCH,DCCH,CTCH,DTCH,MCCH,MSCHまたはMTCHのうちいずれかの論理チャネルを経由して,下位レイヤーにUMDPDUを伝送する。」「9.2.1.3 UMDPDUUMDPDUは,RLCが非確認モードで動作しているときに,ユーザーデー タを転送するために用いられる。データパートの長さは,8ビットの倍数である。 UMDPDUヘッダは,「シーケンス番号」を含む最初のオクテットで 確認モードで動作しているときに,ユーザーデー タを転送するために用いられる。データパートの長さは,8ビットの倍数である。 UMDPDUヘッダは,「シーケンス番号」を含む最初のオクテットで構成される。 RLCヘッダは,最初のオクテットと,「長さインジケータ」を含むすべてのオクテットで構成される。」「9.2.2.5 拡張ビット(E)長さ:1ビット本ビットは,後続のオクテットが「長さインジケータ」及びEビットであるか否かを示す。 Bit説明 後続のフィールドは,データ,ピギーバックされたステータスPDU,又はパディングである。 後続のフィールドは,長さインジケータ及びE ビットである。 」「9.2.2.8 長さインジケータ(LI)「長さインジケータ」は,PDU内で終了する各RLCSDUの最終オクテットを示すものである。 以下の表に列挙された,特別な目的のために予約された予め定義された値を除き,「長さインジケータ」は,-RLCヘッダの終わりから,RLCSDUセグメントの最後のオクテットまでの間(最後のオクテットを含む)のオクテット数に設定され,-「長さインジケータ」が参照するPDUに含まれなければならない。 「長さインジケータ」のとり得るサイズは7ビットまたは15ビットである。」ウ甲4(3GPPのワーキンググループの議事録「L2 OptimizationsforVoIP(R2-050969)」)の記載 「現RLCの長さインジケータ(LI)方式で示されるのは,RLCSDUの終了点だけである。従って,前のRLCPDUを失った場合,SDU全体が受信されたかどうかが分からない。 図2において, 「現RLCの長さインジケータ(LI)方式で示されるのは,RLCSDUの終了点だけである。従って,前のRLCPDUを失った場合,SDU全体が受信されたかどうかが分からない。 図2において,二番目のRLCPDUを失った場合,RLC受信機がシナリオAとシナリオBとを識別することができないため,RLCSDU2とRLCSDU3(判決注:「RLCSDU3とRLCSDU4」の誤記と認める。)の双方を破棄しなければならない。以下の項目において,この制約に対処する解決策を提案する。」「上記問題に対処するために,現PDUに一番目のSDUセグメントが完全に含まれているか否かを帯域内でシグナリングすることを提案する。これは,図3で説明する。 この図では,RLC受信機が今度は二つのシナリオを識別することができることから,シナリオAの四番目のRLCSDUを破棄しない。 この追加情報のシグナリング方法についてオプションを以下に記載する。 ・LIの予約値のうち一つを使用:この場合,追加LIは,一番目のRLCSDUが完全に含まれるRLCPDUに含まれなければならない。その結果,12. 2kbpsペイロードのうち3%に相当する部分がオーバーヘッドとなる。なお,この追加LI値が現れるのは最大RLCPDU当たり1回である。」エ甲39(特表2002-527945号公報)の記載(ア) 「テレコミュニケーションシステムにおいて,上位層の大きなデータユニット(SDU)が,下位層(RLC)における小さなセグメントにセグメント化される。下位層のプロトコルデータユニット(PDU)におけるセグメントの長さを指示するために,セグメント長さ情報が使用される。上位層データユニットが下位層PDUにおける現在データセグメントで終わるか,又は次の下位層 プロトコルデータユニット(PDU)におけるセグメントの長さを指示するために,セグメント長さ情報が使用される。上位層データユニットが下位層PDUにおける現在データセグメントで終わるか,又は次の下位層PDUまで続くかといった上位層データユニット(SDU)に関する特殊な情報を必要に応じて指示するためにセグメント長さ情報の特定の値が使用される。この情報は,セグメン ト化されたデータを正しく組み立てるために受信器に必要とされる。」(【要約】)(イ) 「RLCは,上位層PDUをセグメント化することができる。このセグメント化は,上位層(例えば,L3,LAC)の大きなデータユニットを,下位層(RLC)における小さなユニット(セグメント)に分割できるようにする。セグメント化が使用されるときには,送信端は,次の下位層ユニットに同じ上位層ユニットが続くか,又は次の下位層ユニットに新たな上位レベルユニットがスタートされるかを受信端に指示しなければならない。この情報は,セグメント化されたデータを正しく組み立てるために受信器(移動ステーション(MS)又はネットワーク(NW)のいずれか)に必要とされる。」(段落【0006】)(ウ) 「公知の解決策では,現在データセグメントにおいて上位層ユニットがスタートするか,終了するか又は継続するかを特定するために,各下位層データセグメントに個別の指示子が使用されている。考えられる値は,例えば,11:スタート及び終了,10:スタート及び継続,00:継続,及び01:終わりまで続く,である。公知解決策の欠点は,この特別なフィールドがプロトコルシグナリングの余計なスペースを使用し,ひいては,余計なオーバーヘッドを生じることである。」(段落【0007】)(エ) 「本発明においては,上位層データユニットが下位層PD ールドがプロトコルシグナリングの余計なスペースを使用し,ひいては,余計なオーバーヘッドを生じることである。」(段落【0007】)(エ) 「本発明においては,上位層データユニットが下位層PDUの現在データセグメントにおいて終了するか又は次の下位層PDUへ続くかといった上位層データユニットに関する特殊な情報を必要に応じて指示するために,セグメント長さ情報の特定の値が使用される。従って,公知技術で使用された個別の指示子フィールドは回避される。」(段落【0010】)(オ) 「図5は,第1PUにN個の長さ指示子をもつPUフォーマットを示す。セグメントの全数はOであり,その各々は,長さがMオクテットである。長さ指示子のフラグEは,後続オクテットに別の長さ指示子があるか(フラグE=1),ないか(フラグE=0)を指示する。 最も簡単なケースは,PUが1つのSDUからのデータのみを含みそしてセグメ ント化情報がPUに必要とされないケースである。換言すれば,セグメント化情報を伴わないPUは,PUが連続していて,1つのSDUから到来し,そしてセグメント化情報を含む次のPUまで同じSDUが続くことを意味する。SDUが連続するかどうかを指示するための個別の指示子は必要とされない。RLCPDUの全てのPUが同じSDUからのデータを含む場合には,そのPDUにセグメント化情報が必要とされない。或いは又,PDUの第1PUに,そのPDUのSDUが次のRLCPDUに続いていることを指示する所定値を有する長さ指示子が与えられてもよい。このような値は,例えば,1111110である。SDUが現在PDUの終わりに終了する場合には,PDUの終わりを正確に指す長さ指示子の値によりそれが指示される。」(段落【0019】)オ甲42(3GPPのワーキング ば,1111110である。SDUが現在PDUの終わりに終了する場合には,PDUの終わりを正確に指す長さ指示子の値によりそれが指示される。」(段落【0019】)オ甲42(3GPPのワーキンググループの議事録「L2 considerationsforVoIPsupport(R2-021645)」)の記載(ア) 「AMRのデータフレームは20ミリ秒毎に作成される。RFCによれば,1つ又は複数の音声フレームを単一のパケットで送信することができる。しかし,VoIPを目的とする場合,1パケットあたり1つの音声フレームの場合にのみ,望ましい遅延特性を達成することができる。」(1頁)(イ) 「RLC-UMは,任意のSDUサイズに対応するために必要なすべての機能(分割,連結及びパディング)を提供する。しかし,分割及び連結の使用には,メリットとデメリットがある。上位階層のSDUが2つのフレームに分割される場合,当該SDUが失われる確率は,いずれかの一方のPDUが失われる確率と同じである。・・・したがって,1つのTTIで送信可能なペイロードと同一サイズを有するSDUを処理する場合,最終的なSDUエラー率を減少させるために,上記2つのフレームをアラインすることが望ましい。」(3頁)カ甲92(変更リクエスト(R2-051681))の記載「変更理由:25.322のCR280は,UTRANによってRLC-PDUのサイズを予期されるRLC-SDUのサイズへ調整することができるサービスに おいて,RLCUMオーバーヘッドを削減するための,RLCUMヘッダー構造の最適化を提案するものである。 この変更リクエストは,それに必要なサポートを25.331に導入するものである。」(1頁)キ甲40(米国特許第6819658号 の,RLCUMヘッダー構造の最適化を提案するものである。 この変更リクエストは,それに必要なサポートを25.331に導入するものである。」(1頁)キ甲40(米国特許第6819658号)の記載「図11Aに示すように,動作時には,受信されたセルまたはパケットは,ステップ11A-1およびステップ11A-2のテストにより,そのサイズが最小サイズ,例えばATMセルのサイズと等しいかどうかが判断される。受信されたパケットまたはセルが最小サイズしかない場合は,分割は不要であるという判断がステップ11A-3において行われ,ステップ11A-4によりSAR1ヘッダー部が生成される。 SAR1ヘッダー部は,図8に示すように,わずか1バイトから成る。ステップ11A-7では,このヘッダー部がパケットまたはセルのデータに適用され,宛先端末をアドレス指定して予め定められたバーストの中でその端末へ伝送するために,サイトにおいて選択された端末にあるモデムへと転送される。ステップ11A-2において,受信されたセルまたはパケットが最小サイズを超えると判断された場合,そのセルまたはパケットを伝送のために分割する必要がある。そこで,ステップ11A-5により,そのセルまたはパケットは予め定められたサイズのセグメントに分割され,次にステップ11A-6においてSAR2ヘッダー部の生成が行われる。 上記のように,また,図7Aと7Bで示したように,SAR2ヘッダー部は3バイトのヘッダー部であり,セグメントごとに変化してパケットごとに各セグメントをその端末が識別できるだけの十分な情報を含む。」(14頁)ク甲43(国際公開第02/43332号)の記載「本発明の第2の態様は,第1の態様と次の点で類似している。あるユーザーデータパケットのペイロードが複数のAAL 分な情報を含む。」(14頁)ク甲43(国際公開第02/43332号)の記載「本発明の第2の態様は,第1の態様と次の点で類似している。あるユーザーデータパケットのペイロードが複数のAAL2パケット上に分散(分割)される場合,AAL2パケット(分割されたユーザーデータパケットを運ぶ)のシーケンス番号 に関連する値が,分割されたユーザーデータパケットが利用する複数のAAL2パケットの長さインジケータ(LI)フィールドに格納される。この第2の態様を円滑にするため,長さインジケータ(LI)フィールドに2つの範囲の値が予約される。ある実施例では,この予約された(予め定義された)値の第一の範囲は,48から55までの間(両端を含む)であり,第二の範囲は,56から63までの間(両端を含む)である。受信したAAL2パケットの長さインジケータ(LI)フィールドが第一の範囲に属する場合,その受信したAAL2パケットは,ユーザーデータフレームのユーザーデータを含む複数のAAL2パケットの一番目と認識される。 受信したAAL2パケットの長さインジケータ(LI)フィールドが第二の範囲に属する場合,その受信したAAL2パケットは,複数のAAL2パケットの一番目以外のパケット(例えば,第二,第三,第四のAAL2パケットなど)であると認識される。」(訳文7頁)(2) 無効理由1(甲3による新規性欠如)についてア前記(1)アのとおりの甲3の記載によれば,甲3には,次のとおりの発明が記載されていると認められる(以下「甲3発明」という。)。 「移動通信システムにおけるデータを送信する装置であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝 ステムにおけるデータを送信する装置であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,一連番号(SN)フィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,設定するLI挿入部と,前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信 部と,を含むことを特徴とするデータ送信装置(データ送信方法)。」イ以上の認定に関して,被控訴人は,甲3の「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」との記載(段落【0008】)から,甲3には,構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する設定部があることが開示されていると主張する。 しかし,① 甲3には「図3はAMデータPDU50の簡略図で,3GPPTS25.322 V3.8.0.規範に掲載されている。」(段落【0006】)と記載されており,ここに「3GPPTS25.322 V3.8.0.規範」は,代替的Eビット解釈が3GPP規格に採用される前の3GPP規格の技術仕様書であることからすると,被控訴人の指摘する 6】)と記載されており,ここに「3GPPTS25.322 V3.8.0.規範」は,代替的Eビット解釈が3GPP規格に採用される前の3GPP規格の技術仕様書であることからすると,被控訴人の指摘する記載は,通常Eビット解釈を行う際のものであると理解できる。しかるに,通常Eビット解釈は,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合について,規定するものではない。さらに,② 甲3の「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合」との文言には,SDUの方がサイズが大きく,分割された最初のセグメントや中間セグメントがPDUを充填する場合も含まれると解するのが自然である。これらの事情からすると,被控訴人の指摘に係る甲3の記載(「僅か一つのSDUが・・・LIは出現しないことを表示する。」)に,構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」するとの技術が開示されているとは認めることができない。 また,被控訴人は,甲3の「代替PDU」の一例である「パディングPDU」は,パディングPDUの前後のPDUを結合する役割を果たすため,「中間セグメントを 含むPDU」に対応するとも主張する。しかし,甲3は,「パディングPDU」を「実際のSDUデータを備えず,SDUデータが不測のデータ中断の発生により破棄される時にだけ用いられる」(段落【0026】)とするのであるから,甲3記載の「パディングPDU」は,SDUの一部を分割して充填したものではなく,SDUとは全く無関係であり,SDUとの関係を観念することも,中間セグメントを観念することも不可 )とするのであるから,甲3記載の「パディングPDU」は,SDUの一部を分割して充填したものではなく,SDUとは全く無関係であり,SDUとの関係を観念することも,中間セグメントを観念することも不可能であるから,本件発明1のSDUの中間セグメントを含むPDUに相当するとはいえない。 そうすると,甲3には,「パディングPDU」について,LIフィールドに特別コードを設定することが記載されてはいるものの,このことが,本件発明1の構成要件Dにおける「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合」,「少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する」こと,及び構成要件Fにおける「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」ることに相当するとはいえない。 したがって,被控訴人の主張は採用できない。 ウ前記アのとおり認定される甲3発明と本件発明1を対比すると,両者の間には,次のとおりの相違点があると認められる(他の点では一致する。)。 (ア) 相違点1本件発明1では,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」(構成要件D)を含むのに対し,甲3発 中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」(構成要件D)を含むのに対し,甲3発明は,上記の 構成を備えていない点。 (イ) 相違点2本件発明1では,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」る(構成要件F)のに対し,甲3発明は,上記の構成を備えていない点。 エ前記アのとおりの甲3発明と本件発明2を対比すると,両者の間には,次のとおりの相違点がある(他の点では一致する)。 (ア) 相違点3本件発明2は,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含」む(構成要件K)のに対し,甲3発明は,上記の構成を備えていない点。 (イ) 相違点4本件発明2は,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」る(構成要件M)のに対し,甲3発明は,上記の構成を備えていない点。 オ以上のとおり,本件発明1及び2と甲3発明の間には,相違点1ないし4があるのであるから,本件発明1及び2と甲3発明が同一のものであるとの被控 のに対し,甲3発明は,上記の構成を備えていない点。 オ以上のとおり,本件発明1及び2と甲3発明の間には,相違点1ないし4があるのであるから,本件発明1及び2と甲3発明が同一のものであるとの被控訴人の主張(無効理由1)は採用できない。 (3) 無効理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如①)についてア本件発明1は,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むこ とを示すように前記1ビットフィールドを設定」(構成要件D)することで,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという課題を解決することができるとともに,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定」(構成要件D)して,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」(構成要件F)することで,SDUを分割,連結,パディングなしにデータフィールドに完全に含むPDUか, データフィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDU(SDUの中間セグメントを含むPDU)かの判定ができるようにしたものと認められる。 イ本件発明2は,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに れる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含み」(構成要件K)との構成により,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという課題を解決することができるとともに,「前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に」,「前記各PDUのヘッダーは」,「少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示す1ビットフィールド,そして前記少なくとも一つのLIフィールドを含み」(構成要件L),「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」(構成要件M)るとの構成により,SDUを分割,連結,パディングなしにデータフィールドに完全に含むPDUか,データフィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDUかの判定ができるようにしたものと認められる。 ウ他方,甲3発明は,RLC層とMAC層間で生じる不測の伝送中断を処理することを目的とし,不測のデータ中断によってRLC層内のSDUデータが,MAC層からのTFCデータ要求によるデータ量を満たさない場合,RLC層は相当する数量と正確な大きさのパディングPDUを出し,これを代替PDUにすることにより,SDUデータの欠乏を補い,上記TFCデータ要求を満たすようにしたものと認められる。 エ無効理由1で検討のとおり,甲3発明は,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に, Uにすることにより,SDUデータの欠乏を補い,上記TFCデータ要求を満たすようにしたものと認められる。 エ無効理由1で検討のとおり,甲3発明は,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する構成を備えているとは認められず,また,甲3には,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるとの課題や,SDUを分割,連結,パディングなしにデータフィールドに完全に含むPDUか, データフィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDUかの判定ができるようにするとの課題について記載も示唆もされていない。 同様に,そのような課題は,甲39にも何ら記載されていない。 そうすると,甲3発明において,本件発明1のように,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」(構成要件D)を含み,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」(構成要件F)るようにすることは,甲3の記載や甲39にみられる技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 オ同様に トを含むことを示す予め定められた値に設定され」(構成要件F)るようにすることは,甲3の記載や甲39にみられる技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 オ同様に,甲3発明において,本件発明2のように,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含み」,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」るようにすることも,甲3の記載や甲39にみられる技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (4) 無効理由3(甲3を主引例とする進歩性欠如②)について本件各発明のそれぞれの課題,課題解決手段及び作用効果は,無効理由2で検討したとおりである(前記(3))。また,甲3発明の目的も,無効理由2で検討したとおりである。無効理由2で検討したとおり,本件各発明と甲3発明とは,解決課題が異なり,甲3には,本件各発明の課題について記載も示唆もされていない。 さらに,甲4に記載の発明は,「前のRLCPDUを失った場合,SDU全体が受信されたかどうかが分からない」との課題を解決するために,「現PDUに一番目のSDUセグメントが完全に含まれているか否かを帯域内でシグナリング」するとするものである。甲4には,「シグナリング」の例として,予約値の一つを使用する場合は,「追加LIは,一番目のRLC 一番目のSDUセグメントが完全に含まれているか否かを帯域内でシグナリング」するとするものである。甲4には,「シグナリング」の例として,予約値の一つを使用する場合は,「追加LIは,一番目のRLCSDUが完全に含まれるRLCPDUに含まれなければならない」とされており,本件各発明のように中間セグメントを含む場合にLIフィールドに予約値を用いるとするものではない。したがって,甲4には,本件発明1のように,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」(構成要件F)することや,本件発明2のように,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」(構成要件M)ることで,SDUを分割,連結,パディングなしにデータフィールドに完全に含むPDUか, データフィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDUかの判定ができるようにすることについて,記載又は示唆されているとは認められない。 そうすると,本件各発明と甲3発明との相違点に係る構成が,甲3発明及び甲4の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (5) 無効理由4(甲3を主引例とする進歩性欠如③)について本件発明1及び本件発明2のそれぞれの課題,課題解決手段及び作用効果は,無効理由2で検討したとおりである。また,甲3発明の目的も,無効理由2で検討したとおりである。無効理由2で検討したとおり,本件発明1及び本件発明2と甲3発 れぞれの課題,課題解決手段及び作用効果は,無効理由2で検討したとおりである。また,甲3発明の目的も,無効理由2で検討したとおりである。無効理由2で検討したとおり,本件発明1及び本件発明2と甲3発明とは,解決課題が異なり,甲3には,本件各発明の課題について記載も示唆もされていない。 また,甲39には,上位層データユニットが下位層PDUにおける現在データセグメントで終わるか,又は次の下位層PDUまで続くか等,上位層データユニット(SDU)に関する特殊な情報を必要に応じて指示するためにセグメント長さ情報の特定の値を使用すること,例えば,PDUの第1PU(ペイロードユニット)に,そのPDUのSDUが次のPDUに続いていることを指示する所定値(例えば,1111110)を有する長さ指示子を与えること,及び上記のセグメント長さ情報の特定の値を使用することは,受信器においてセグメント化されたデータを正しく組み立てるために必要とされ,これにより,個別の指示子フィールド(甲39の段落【0007】)が回避されることが記載されていると認められる。 そして,甲39に記載の「そのPDUのSDUが次のRLCPDUに続いていること」(段落【0019】)とは,「そのPDUのSDUが最後のセグメントでないこと」と解するのが相当であるから,当該記載には「そのPDUのSDUが中間セグメント」であることだけでなく,「そのPDUのSDUが最初のセグメント」であることも含まれると認められる。 そうすると,甲39には,本件発明1のように,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」すること ルドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」することや,本件発明2のように,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」ることで,SDUを分割,連結,パディングなしにデータフィールドに完全に含むPDUか,データフィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDUかの判定ができるようにすることについて,記載又は示唆されているとは認められない。 以上から,本件各発明と甲3発明との相違点に係る構成は,甲3発明及び甲39の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (6) 無効理由5(甲1の4を主引例とする進歩性欠如)についてア甲1の4の記載からすると,甲1の4には次の発明(以下「甲1の4発明」という。)が記載されていると認められる。 「移動通信システムにおけるデータを送信する装置であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,一連番号(SN)フィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィール セグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,設定するLI挿入部と,前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信部と,を含むことを特徴をするデータ送信装置(データ送信方法)。」イ前記アのとおりの甲1の4発明と本件発明1を比較すると,両者の間には,次のとおりの相違点がある(他の点では一致する。)。 (ア) 相違点5本件発明1では,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」(構成要件D)を備えるのに対し,甲1の4発明は,そのような構成を備えていない点。 (イ) 相違点6本件発明1では,「ここで,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」(構成要件F)るのに対し,甲1の4発明は,そのような構成を備えていない点。 ウ前記アのとおりの甲1の4発明と本件発明2を比較すると,両者の間には,次のとおりの相違点がある(他の点では一致する。)。 (ア) 相違点7本件発明2では,「前記SDUが一つの い点。 ウ前記アのとおりの甲1の4発明と本件発明2を比較すると,両者の間には,次のとおりの相違点がある(他の点では一致する。)。 (ア) 相違点7本件発明2では,「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含」む(構成要件K)のに対し,甲1の4発明は,そのような構成を備えていない点。 (イ) 相違点8本件発明2では,「前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に」,「前記各PDUのヘッダーは,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示す1ビットフィールド,そして前記少なくとも一つのLIフィールドを含み」(構成要件L),「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」(構成要件M)るのに対し,甲1の4発明は,そのような構成を備えていない点。 エ相違点5ないし8について検討する。 本件各発明のそれぞれの課題,課題解決手段及び作用効果は,無効理由2で検討したとおりである(前記(3))。 他方,甲1の4発明は,相違点5及び6に係る構成を備えていない点で本件発明1と相違し,また,相違点7及び8に係る構成を備えていない点で本件発明2と相違するから,甲1の4発明が,本件各発明のように,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるとの課題,及 相違点7及び8に係る構成を備えていない点で本件発明2と相違するから,甲1の4発明が,本件各発明のように,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるとの課題,及び「前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むこと」を示すように「1ビットフィールド」を設定した場合に,SDUを分割,連結,パディングなしにデータフィールドに完全に含むPDUか,データフィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDUかの判定ができるようにするとの課題を解決するものとは認められない。 ここで,被控訴人の提出に係る甲1の2,42,91及び92には,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させることが,甲3及び40には,一つのSDUがPDUのデータフィールドを完全に充填する場合,又は,受信したデータがデータパケットのデータフィールドを完全に充填する場合に,ヘッダーサイズを減らすことができることがそれぞれ記載されていると認められ,上記の各事項は,本件特許の優先日前,当該技術分野で知られていたと認められる。 もっとも,甲39に記載の「そのPDUのSDUが次のPDUに続いていること」は,無効理由4(前記(5))で検討したとおり,「そのPDUのSDUが中間セグメント」であることだけでなく,「そのPDUのSDUが最初のセグメント」であることも示すと認められ,また,同様に,甲43の「受信したAAL2パケットの長さインジケータ(LI)フィールドが第二の範囲に属する場合,その受信したAAL2パケットは,複数のAAL2パケットの一番目以外のパケット(例えば,第二,第三,第四のAAL2パケットなど)であると認識される。」との記載 I)フィールドが第二の範囲に属する場合,その受信したAAL2パケットは,複数のAAL2パケットの一番目以外のパケット(例えば,第二,第三,第四のAAL2パケットなど)であると認識される。」との記載において,「複数のAAL2パケットの一番目以外のパケット」は,「中間のAAL2パケット」であることだけでなく,「最後のAAL2パケット」であることも示すと認められるから,甲39及び43には,PDUのデータフィールドに長さインジケータを用いて中間セグメントであることを示すことが記載されているとは認められず,この点が,本件特許の優先日前,当該技術分野において知られていたとも認められない。 そして,上記の各証拠には,本件各発明の相違点5及び7に係る構成のように,PDUが分割,連結,パディングなしにデータフィールドにSDUを完全に含むことを示すように「1ビットフィールド」を設定することにより,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるとの課題を解決すること,また,「1ビットフィールド」を上記のように設定する際に,本件各発明の相違点5,6及び8に係る構成のように,PDUのデータフィールドがSDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように上記1ビットフィールドを設定し,上記LIフィールドには上記PDUが中間セグメントを含むことを示す予め定められた値を設定することにより,SDUを分割,連結,パディングなしにデータフィールドに完全に含むPDUか,データフィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDUかの判定ができるようにすることについて,記載も示唆もされていない。 そうすると,本件各発明と甲1の4発明とは,解決課題でも相違し,また,上記各証拠 ィールドにSDUの開始や終了が含まれないPDUかの判定ができるようにすることについて,記載も示唆もされていない。 そうすると,本件各発明と甲1の4発明とは,解決課題でも相違し,また,上記各証拠に記載された事項では,本件各発明の課題とその解決手段について開示されているとはいえないから,甲1の4発明に上記各証拠に記載された事項を適用しても,本件各発明と甲1の4発明との相違点に係る構成について,当業者が容易に想到し得たとは認められない。 オ被控訴人は,通常Eビット解釈が採用されたのは,多くのアプリケーションでは,PDUデータフィールドよりも大きいサイズのSDUが頻繁に発生し,その当然の帰結として,SDUの中間セグメントを含むPDUも頻繁に発生することになることから,中間セグメントを含むPDUの長さインジケータを省略する方が,完全に一致するSDUを含むPDUの長さインジケータを省略するよりもヘッダーのデータ量を節約できると認識していたからこそ甲1の4発明の構成を採用したのであって,3GPPは,PDUデータフィールドに完全に一致するSDUの発生頻度が高い場合には,そのようなSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することにより,データ伝送のオーバーヘッドを減少させることができると認識していたこともうかがわれると主張する。 しかし,被控訴人の上記の主張は採用できない。 甲1の4には,多くのアプリケーションでは,PDUデータフィールドよりも大きいサイズのSDUが頻繁に発生し,SDUの中間セグメントを含むPDUも頻繁に発生することになることから,このようなPDUのヘッダーサイズを小さくし,トータルでのオーバーヘッドを減少させ,データ伝送をより効率的に行うことを可能とするために,SDUの中間セグメントを含むPDUの長さインジケータを省略 ら,このようなPDUのヘッダーサイズを小さくし,トータルでのオーバーヘッドを減少させ,データ伝送をより効率的に行うことを可能とするために,SDUの中間セグメントを含むPDUの長さインジケータを省略したことについて,記載も示唆もされておらず,甲1の4の記載から,上記の点が認識されていたとは認められない。 また,甲1の4には,PDUデータフィールドに完全に一致するSDUの発生頻度が高い場合には,そのようなSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することにより,データ伝送のオーバーヘッドを減少させることができることについて,記載も示唆もされておらず,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させることが,本件出願の優先日前に当業者によく知られていたとしても,甲1の4の記載から,上記の点が認識されていたとは認められない。 そして,甲1の4の記載によれば,PDUの長さインジケータは,「PDU内で終了する各RLCSDUの最終オクテットを示す」ものとして定義されているから,SDUの中間セグメントを含むPDUの長さインジケータが省略されるのは,PDUの長さインジケータの上記の定義によるものと解するのが相当である。 また,仮に,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが頻繁に発生させる同じサイズのSDUをPDUデータフィールドに完全に一致させ,そのようなSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することを当業者が想到するとしたとしても,甲1の4には,中間セグメントを含むPDUについて,長さインジケータを,その本来の定義とは異なる「PDUがSDUの最初のセグメントでも最終のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値」に設定す セグメントを含むPDUについて,長さインジケータを,その本来の定義とは異なる「PDUがSDUの最初のセグメントでも最終のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値」に設定することまで記載や示唆されているとは認められないし,この点が自明であったと認めることもできない。 以上のとおり,被控訴人の主張は,その前提において誤りがあり,失当である。 4 争点4(本件各製品に係る本件特許権の消尽の有無)について当裁判所は,① 控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は,平成21年6月30日に契約期間満了により終了しており,また,終了していないとしても,本件ベースバンドチップ(以下,本件製品2及び4に実装されている本件ベースバンドチップについてのみ論ずる。)は当該契約の対象になるものではないから,本件特許権が消尽した旨の被控訴人の主張は前提において失当である,② 仮にライセンス契約が終了しておらず本件ベースバンドチップがその対象になると仮定したとしても,本件において,本件特許権の行使が制限される理由はない,と判断する。その理由は次のとおりである。 (1) 認定事実証拠(甲19の1の1ないし19の1の4,19の2,20の1ないし20の3,162,163,乙46,52)及び弁論の全趣旨によれば,この点に関して,以下の各事実を認めることができる。 ア控訴人とインテル社は,平成5年1月1日,インテル社の保有する特許と控訴人の保有する特許を相互にクロスライセンスすることを骨子とするクロスライセンス契約(控訴人とインテル社間のライセンス契約)を締結した(甲20の1,162)。 控訴人とインテル社間のライセンス契約には,次のとおりの条項が置かれていた。 「1.11 「三星特許」とは,現在,「三星」(又 インテル社間のライセンス契約)を締結した(甲20の1,162)。 控訴人とインテル社間のライセンス契約には,次のとおりの条項が置かれていた。 「1.11 「三星特許」とは,現在,「三星」(又はその「子会社」)により所有又は支配される,又は,今後,「三星」(又はその「子会社」)により取得される,全世界の,全ての分類及び種類の特許権,実用新案権,意匠権(原出願,分割出願,継続出願,部分的な継続出願又は再出願を含むがそれに限られない)及びこれらの分類及び種類についての出願のうち,(a)本契約の終了又は解除以前の日付を最初の有効な出願日とするものであって,(b)・・・を意味する。」「1.14 「インテル・ライセンス対象商品」は,(a)半導体材料,(b)半導体素子,又は(c)集積回路を構成する全ての製品(「三星所有製品」を除く)を意味する。」「3.1 「三星」は,「インテル」に対して,「三星特許」につき,全世界で「インテル・ライセンス対象商品」を製造し,製造委託をし,使用し,(直接又は間接的に)販売し,「インテル」のためにのみ開発委託をし,リースし,又はその他の処分をする,非独占かつ譲渡不能のライセンスを許諾する。」「3.3 「インテル」は,第3.1条及び第3.2条に基づくライセンスの範囲を「インテル子会社」に対しても拡張する権利を有するものとする。「インテル子会社」をライセンスの範囲に拡張できるのは,当該事業体が「子会社」の要件を全て充たしており,かつ,拡張の対象となる権利が「インテル」に関して有効に存続している期間に限るものとする。」「6.4 本契約終了時においても,一方当事者から他方当事者に対して,場合によって,「三星特許」又は「インテル特許」につき,許諾されたライセンスは,「三星特許」又は「インテル 限るものとする。」「6.4 本契約終了時においても,一方当事者から他方当事者に対して,場合によって,「三星特許」又は「インテル特許」につき,許諾されたライセンスは,「三星特許」又は「インテル特許」の有効期間においては,6.3条に規定する場合を除き,存続するものとする。」「7.8 本契約及び本契約の履行に関連する事項は,全ての点において,アメリカ合衆国連邦法及びカリフォルニア州法に準拠し,これを適用し,これに従って解釈するものとする。」イ控訴人とインテル社間のライセンス契約は,平成14年12月31日の経過をもって終了した。控訴人とインテル社は,平成15年3月18日,控訴人とインテル社間のライセンス契約の一部を変更する旨の契約(甲20の2)を締結した。 ウ控訴人とインテル社は,平成16年7月1日,控訴人とインテル社間のライセンス契約を,さらに次のとおり変更する旨の契約(甲20の3,163。以下,「第2変更契約」といい,同契約による変更後の控訴人とインテル社間のライセンス契約を指して,「控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約」という。)を締結した(以下の文中の「特許クロスライセンス契約」は,本判決でいう控訴人とインテル社間のライセンス契約を指す。)。 「(1) 特許クロスライセンス契約第6.1条にかかわらず,特許クロスライセンス契約は,上記に規定された第2変更契約の効力発生日から5年後まで,期間が延長され有効に存続するものとする。」「(3) 第3.1条を次の条項と差し替えるものとする。 3.1 本契約の条件に従い,「三星」は「インテル」に対して,「三星特許」に基づき,サブライセンスをする権利を除き,以下の行為について,全世界的な,非独占,譲渡不能かつ無償のライセンスを許諾する。 (a) 「三星」は「インテル」に対して,「三星特許」に基づき,サブライセンスをする権利を除き,以下の行為について,全世界的な,非独占,譲渡不能かつ無償のライセンスを許諾する。 (a)(1) 全ての「インテル・ライセンス対象製品」の製造,使用,販売(直接又は間接を問わない。),販売の申出,輸入その他の処分。 (2) 機器の製造,製造委託(第3.7条に定める限定条項に服する。),使用及び/又は輸入,並びに全ての「インテル・ライセンス対象商品」の製造,使用,輸入及び/又は販売の方法又はプロセスの実施。 (3) 上記第3.1条(a)(1)において許諾されたライセンスに基づき,「インテル」が使用,輸入,販売,販売の申し出又は処分を行うためにインテルに対する供給のみを目的とする他の製造業者への「インテル・ライセンス対象製品」の製造委託(第3.7条に定める制限条項に服する。)。 なお,上記(1),(2)及び(3)において許諾されたこれらのライセンスは「インテル・ライセンス対象商品」から除外される「三星専有製品」には適用されない。」「(4) 第3.3条の後に次の条項を新たに挿入する。」「3.7 製造委託権(a) 上記第3.1条において許諾されたライセンスに基づき,「インテル」が自己のために第三者に製品の製造を委託する権利は,(i)第三者が製造する当該製品の製造のための設計図,仕様書,施工図等(以下,個別に又は併せて「本件製品仕様書」という。)を「インテル」が第三者製造業者に提供する場合であって,(ii)「本件製品仕様書」が当初は当該第三者製造業者より「インテル」に対し提供されたものではないとき(但し,「インテル」もかかる設計に付き無制限の所有権を有する場合はこの限りではない。)にのみ適用される。」「(9) が当初は当該第三者製造業者より「インテル」に対し提供されたものではないとき(但し,「インテル」もかかる設計に付き無制限の所有権を有する場合はこの限りではない。)にのみ適用される。」「(9) 第7.8条において「カリフォルニア」を「ニューヨーク」に変更する。」「(13) 第6.2条,第6.3条及び第6.4条を次の条項と差し替える。」「6.4 存続条項 3.5条及び4.5条に規定するオプション,1条,2条,5.4条,6.3条,6.4条及び7条は,本契約のいかなる事由による終了後も存続する。」エ控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約の存続期間は,平成21年6月30日までであった。 オ本件ベースバンドチップは,①IMC社が第三者に製造を委託し,②IMC社が日本国外でインテル社に販売し,③インテル社が日本国外で完全子会社のインテル・アメリカ社に販売し,④インテル・アメリカ社が日本国外でアップル社に販売したものである(甲19の1の1ないし19の1の4,19の2,乙46)。IMC社は,平成23年1月31日に,インフィニオン社がインテル社の子会社となることによって成立した会社である(乙52)。 (2) 検討ア法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)7条によれば,控訴人とインテル社間のライセンス契約については「アメリカ合衆国連邦法及びカリフォルニア州法」を,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約については「アメリカ合衆国連邦法及びニューヨーク州法」をそれぞれ適用するべきことになる。 イ控訴人とインテル社間のライセンス契約の6.4条には,「本契約終了時においても,・・・「三星特許」・・・につき,許諾されたライセンスは,「三星特許」・・・の有効期間においては,・・・存続するものとする。」とあり テル社間のライセンス契約の6.4条には,「本契約終了時においても,・・・「三星特許」・・・につき,許諾されたライセンスは,「三星特許」・・・の有効期間においては,・・・存続するものとする。」とあり,明文をもって控訴人とインテル社間のライセンス契約が終了した後にも,実施権は存続することが規定されていた。ところが,第2変更契約の(13)は,従前の6.4条を変更し,契約終了後にも効力が存続するとする条項として,「3.5条及び4.5条に規定するオプション,1条,2条,5.4条,6.3条,6.4条及び7条」のみを掲げ,3.1条等の実施許諾に係る条項は除外するに至っている。 このように,それ以前には掲げられていた実施権の存続が削除されている第2変更契約の文言からすると,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約においては,同契約の終了時点である平成21年6月30日の経過をもって,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約による「三星特許」等についての実施許諾は終了していると解するのが相当である。 この点について,被控訴人は,インテル社から控訴人宛ての書簡(甲25),インテル社と控訴人の間の電子メール(甲126,165),オーストラリアでの訴訟における控訴人の訴訟代理人の発言(甲127)等を指摘して,控訴人とインテル社間の(変更)ライセンス契約による実施権は存続している旨を主張する。しかし,これらの証拠によっても,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約の明文に基づく前記のとおりの判断を左右するものではなく,本件において提出された証拠を前提とする限り,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は終了していると認めるのが相当である。 ウまた,仮に控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約による実施権が存続していると解した場合であっても する限り,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は終了していると認めるのが相当である。 ウまた,仮に控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約による実施権が存続していると解した場合であっても,本件ベースバンドチップは同契約による実施許諾の対象にはならないと解される。すなわち,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約の3.1条は柱書でサブライセンスの権利を否定していること,同(a)(2)及び(3)並びに3.7条がインテル社が第三者製造業者への製造委託をすることができる場合を一定の要件を備えるものに限定していることからすれば,3.1条(a)(1)の「製造」及び「販売(直接又は間接を問わない)」とは,インテル社が自ら製造することと,自ら製造した物を,直接又は間接を問わず,販売することを意味すると解され,第三者製造業者に対して製造委託等した製品は,同(a)(1)による「販売」許諾の対象とはならないと解される。このように同(a)(1)の「販売」の意味を限定的に解さず,無関係の第三者製造業者等から購入した物の販売も同条にいう「販売」に該当するとすると,同(a)(2)及び(3)並びに3.7条において,第三者製造業者への製造委託に,インテル社が仕様書を第三者に提供した場合であって,当該仕様書が当初は当該第三者製造業者から提供されたものでないこととの条件を付したことが容易に潜脱できることとなる。このような解釈は,契約全体としての整合がとれないこととなり,不都合である。 本件ベースバンドチップは,IMC社によって製造されているのであるから(前記(1)オ),これが3.1条で正当化されるためには,同(a)(2)又は同(3)に該当する場合である(この場合には,インテル社がIMC社に対して,3.7条に定める図面等を提供して製造委託している必要 記(1)オ),これが3.1条で正当化されるためには,同(a)(2)又は同(3)に該当する場合である(この場合には,インテル社がIMC社に対して,3.7条に定める図面等を提供して製造委託している必要がある。)か,3.3条に従ってライセンス契約が拡張されている必要があるところ,本件全証拠によってもかかる事実を認めるに足りない。 エ以上のとおり,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約による実施許諾は終了しており,また仮に存続していたとしても,本件ベースバンドチップは同契約による実施許諾の対象とはならないと認められる。 オ念のため,仮に,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が存続しており,かつ,本件ベースバンドチップがその対象となると仮定した場合においても,当裁判所は,次のとおり本件特許権の行使が制限されるものではないと判断するものである。以下にその理由を示す。 (ア) 特許権者又は専用実施権者(この項では,以下,単に「特許権者」という。)が,我が国において,特許製品の生産にのみ用いる物(第三者が生産し,譲渡する等すれば特許法101条1号に該当することとなるもの。以下「1号製品」という。)を譲渡した場合には,当該1号製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該1号製品の使用,譲渡等(特許法2条3項1号にいう使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をいう。以下同じ。)には及ばず,特許権者は,当該1号製品がそのままの形態を維持する限りにおいては,当該1号製品について特許権を行使することは許されないと解される。しかし,その後,第三者が当該1号製品を用いて特許製品を生産した場合においては,特許発明の技術的範囲に属しない物を用いて新たに特許発明の技術的範囲に属する物が作出されていることか れないと解される。しかし,その後,第三者が当該1号製品を用いて特許製品を生産した場合においては,特許発明の技術的範囲に属しない物を用いて新たに特許発明の技術的範囲に属する物が作出されていることから,当該生産行為や,特許製品の使用,譲渡等の行為について,特許権の行使が制限されるものではないとするのが相当である(BBS最高裁判決(最判平成9年7月1日・民集51巻6号2299頁),最判平成19年11月8日・民集61巻8号2989頁参照)。 なお,このような場合であっても,特許権者において,当該1号製品を用いて特許製品の生産が行われることを黙示的に承諾していると認められる場合には,特許権の効力は,当該1号製品を用いた特許製品の生産や,生産された特許製品の使用,譲渡等には及ばないとするのが相当である。 そして,この理は,我が国の特許権者(関連会社などこれと同視するべき者を含む。)が国外において1号製品を譲渡した場合についても,同様に当てはまると解される(BBS最高裁判決(最判平成9年7月1日・民集51巻6号2299頁参照))。 (イ) 次に,1号製品を譲渡した者が,特許権者からその許諾を受けた通常実施権者(1号製品のみの譲渡を許諾された者を含む。)である場合について検討する。 1号製品を譲渡した者が通常実施権者である場合にも,前記(ア)と同様に,特許権の効力は,当該1号製品の使用,譲渡等には及ばないが,他方,当該1号製品を用いて特許製品の生産が行われた場合には,生産行為や,生産された特許製品の使用,譲渡等についての特許権の行使が制限されるものではないと解される。さらには,1号製品を譲渡した者が通常実施権者である場合であっても,特許権者において,当該1号製品を用いて特許製品の生産が行われることを黙示的に承諾していると認めら 限されるものではないと解される。さらには,1号製品を譲渡した者が通常実施権者である場合であっても,特許権者において,当該1号製品を用いて特許製品の生産が行われることを黙示的に承諾していると認められる場合には,前記(ア)と同様に,特許権の効力は,当該1号製品を用いた特許製品の生産や,生産された特許製品の使用,譲渡等には及ばない。 このように黙示に承諾をしたと認められるか否かの判断は,特許権者について検討されるべきものではあるが,1号製品を譲渡した通常実施権者が,特許権者から,その後の第三者による1号製品を用いた特許製品の生産を承諾する権限まで付与されていたような場合には,黙示に承諾をしたと認められるか否かの判断は,別途,通常実施権者についても検討することが必要となる。 なお,この理は,我が国の特許権者(関連会社などこれと同視するべき者を含む。)からその許諾を受けた通常実施権者が国外において1号製品を譲渡した場合についても,同様に当てはまると解される。 (ウ) これを本件についてみる。 a インテル社は,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約によって,本件ベースバンドチップの製造,販売等を許諾されていると仮定されるから,前記(イ)にいう特許権者からその許諾を受けた通常実施権者に該当する。また,「データを送信する装置」(構成要件A)及び「データ送信装置」(構成要件H)に該当するのは本件ベースバンドチップを組み込んだ本件製品2及び4であると解される一方,本件ベースバンドチップには,本件発明1の技術的範囲に属する物を生産する以外には,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途はないと認められるから,本件ベースバンドチップは,特許法101条1号に該当する製品(1号製品)である。アップル社は,インテル社が製造した本件ベ には,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途はないと認められるから,本件ベースバンドチップは,特許法101条1号に該当する製品(1号製品)である。アップル社は,インテル社が製造した本件ベースバンドチップにその他の必要とされる各種の部品を組み合わせることで,新たに本件発明1の技術的範囲に属する本件製品2及び4を生産し,被控訴人がこれを輸入・販売しているのであるから,前記(ア),(イ)のとおり,控訴人による本件特許権の行使は当然には制限されるものではない。 b そこで,まず,控訴人においてこのような特許製品の生産を黙示的に承諾していると認められるかを検討する。 この点,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が存続しており,かつ,本件ベースバンドチップがその対象となると仮定した場合における,仮定される控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は,控訴人が有する現在及び将来の多数の特許権を含む包括的なクロスライセンス契約であり,本件特許を含めて,個別の特許権の属性や価値に逐一注目して締結された契約であるとは考えられない。また,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約の対象は,「インテル・ライセンス対象商品」すなわち「(a)半導体材料,(b)半導体素子,又は(c)集積回路を構成する全ての製品」であって,「インテル・ライセンス対象商品」に該当する物には,控訴人の有する特許権との対比における技術的価値や経済的価値の異なる様々なものが含まれ得る。そうすると,かかる包括的なクロスライセンスの対象となった「インテル・ライセンス対象商品」を用いて生産される可能性のある多種多様な製品の全てについて,控訴人において黙示的に承諾していたと解することは困難である。そして,インテル社が譲渡した本件ベースバンドチップを用いて「データを送信す 産される可能性のある多種多様な製品の全てについて,控訴人において黙示的に承諾していたと解することは困難である。そして,インテル社が譲渡した本件ベースバンドチップを用いて「データを送信する装置」や「データ送信装置」を製造するには,さらに,RFチップ,パワーマネジメントチップ,アンテナ,バッテリー等の部品が必要で,これらは技術的にも経済的にも重要な価値を有すると認められること,本件ベースバンドチップの価格と本件製品2及び4との間には数十倍の価格差が存在すること(乙31,32),いわゆるスマートフォンやタブレットデバイスである本件製品2及び4は「インテル・ライセンス対象商品」には含まれていないことを総合考慮するならば,控訴人が,本件製品2及び4の生産を黙示的に承諾していたと認めることはできない。 なお,このように解したとしても,本件ベースバンドチップをそのままの状態で流通させる限りにおいては,本件特許権の行使は許されないのであるから,本件ベースバンドチップを用いて本件製品2及び4を生産するに当たり,関連する特許権者からの許諾を受けることが必要であると解したとしても,本件ベースバンドチップ自体の流通が阻害されるとは直ちには考えられないし,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が,契約の対象となった個別の特許権の価値に注目して対価を定めたものでないことからすると,控訴人に二重の利得を得ることを許すものともいえない。 c 次に,インテル社が特許製品の生産を黙示的に承諾する権限を有していたかについて検討する。この点,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が存続しており,かつ,本件ベースバンドチップがその対象となると仮定した場合における,仮定される控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は,1号製品を含めて「インテル・ライセン の変更ライセンス契約が存続しており,かつ,本件ベースバンドチップがその対象となると仮定した場合における,仮定される控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は,1号製品を含めて「インテル・ライセンス対象商品」についてインテル社に特許権の実施行為を許したものにすぎず,同契約には,これを超えて,インテル社に,1号製品を用いた特許製品の生産を承諾する権限まで与えたことを裏付ける条項は存在しない。その他,控訴人とインテル社間のライセンス契約やこれに対する第2変更契約に至る経緯等をみても,インテル社が特許製品の生産を黙示的に承諾し,控訴人による本件特許権の行使が制限されること等の結論を導く事情があると認めることはできない。 (エ) 以上よりすると,本件では,控訴人が特許製品の生産を黙示的に承諾しているとは認めるに足りず,また,インテル社にその権限があったとも認めるに足らないから,本件ベースバンドチップを用いて生産された特許製品(本件製品2及び4)を輸入・販売する行為について本件特許権の行使が制限されるものではないと解される。 (3) 小括以上のとおり,被控訴人の消尽に係る主張は,本件ベースバンドチップが,控訴人とインテル社間の(変更)ライセンス契約に基づいて製造・販売された物であることを前提とするから,当該事実が認められない以上,その前提を欠き,採用できない。仮にそうでないとしても,特許製品である本件製品2及び4について,本件特許権の行使が制限されるものではないから,いずれにせよ,この点に関する被控訴人の主張は採用できない。 5 争点5(控訴人の本件FRAND宣言に基づく本件特許権のライセンス契約の成否)について当裁判所は,本件FRAND宣言はライセンス契約の申込みとは認められないから,本件FRAND宣言によって 5 争点5(控訴人の本件FRAND宣言に基づく本件特許権のライセンス契約の成否)について当裁判所は,本件FRAND宣言はライセンス契約の申込みとは認められないから,本件FRAND宣言によって本件特許権のライセンス契約が成立するものではないと判断する。その理由は次のとおりである。 (1) 準拠法について被控訴人は,本件FRAND宣言はライセンス契約の申込みであり,被控訴人が本件各製品の輸入販売を開始したことが,これに対する黙示の承諾となるから,当事者間にはライセンス契約が成立していると主張する。 本件FRAND宣言に基づく本件特許権のライセンス契約の成否の判断の前提として,まず,準拠法について判断する。 本件FRAND宣言に基づく本件特許権のライセンス契約の成否は,その法律関係の性質が法律行為の成立及び効力に関する問題であるから,通則法7条によってその準拠法が定められると解するのが相当である。 そして,ETSIのIPRポリシーには,「このポリシーは,フランス法に準拠する。」との規定があること(前記第2,2(4)ア),本件FRAND宣言にも,その有効性等はフランス法に準拠するとの文言が含まれていること(同イ(イ))からすると,「当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法」(通則法7条)は,フランス法であると解される(なお,本件FRAND宣言に基づくライセンス契約の成否については,控訴人はフランス法が適用されるべきことを前提に主張をし,被控訴人も主位的にはフランス法を適用するべきとするのであるから,フランス法が準拠法となることについては,当事者間に争いがないものでもある。)。 (2) ライセンス契約の成否についての検討そこで,フランス法上,本件FRAND宣言がライセンス契約の申込みと解されるか否かにつ なることについては,当事者間に争いがないものでもある。)。 (2) ライセンス契約の成否についての検討そこで,フランス法上,本件FRAND宣言がライセンス契約の申込みと解されるか否かについて検討する。 フランス法においては,ライセンス契約が成立するためには,少なくともライセンス契約の申込みと承諾が必要とされるところ,次のとおり本件FRAND宣言については,フランス法上,ライセンス契約の申込みであると解することはできない。 すなわち,① 本件FRAND宣言は「取消不能なライセンスを許諾する用意がある」(preparedtograntirrevocablelicenses)とするのみで,「ここにライセンスを供与する」(herebydolicense)あるいは「ライセンスを確約する」(committolicense)等他の採り得る文言と比較しても,暫定的で,宣言者の側で更なる行為がされることを前提とする文言となっており,文言上確定的なライセンスの許諾とはされていない。また,② フランス法上,ライセンス契約の成立にはその対価が決定されている必要がないとしたとしても,本件FRAND宣言には,ライセンス契約の対価たるライセンス料率が具体的に定められていないのみならず,ライセンスした場合の地理的範囲やライセンス契約の期間等も定まっておらず,これに対する承諾がされたことで契約が成立するとした場合の拘束力がいかなる範囲で生じるのかを知る手がかりが何ら用意されていない。このように本件FRAND宣言は,本来ライセンス契約において定まっているべき条件を欠き,これをライセンス契約の申込みであるとすると,成立するライセンス契約の内容を定めることができない。 同様に,③ 本件FRAND宣言をするに際しては,ETSIのIPRポリシー 定まっているべき条件を欠き,これをライセンス契約の申込みであるとすると,成立するライセンス契約の内容を定めることができない。 同様に,③ 本件FRAND宣言をするに際しては,ETSIのIPRポリシーに従って互恵条件が選択されており,本件FRAND宣言には,規格に関し相互にライセンス供与することを求めるとの条件に従い行われるとの文言が含まれていた(第2,2(4)イ(イ))。本件FRAND宣言をライセンス契約の申込みであると解する場合には,FRAND宣言をしていない必須特許の保有者がいた場面等では,この互恵条件が満たされないまま,FRAND宣言の対象となった特許についてのみライセンス契約が成立する事態を招きかねない。加えて,④ 本件FRAND宣言は,ETSIのIPRポリシーに基づいてされたところ,これを補足する「IPRについてのETSIの指針」(甲16,161)には,「可能性のあるライセンサー」「可能性のある潜在的ライセンシー」との文言が使用され,「ETSIは,FRAND条件のために必須IPRのライセンスの公平かつ誠実な交渉を行うことを,会員(およびETSI会員以外の者)に期待する。」と規定されているなど当事者間で交渉が行われることが前提とされている部分(4.4項),「具体的なライセンスの条件および交渉は企業間の商業上の問題であり,ETSI内部では取り上げられない。」とされるなど,ETSIはライセンス交渉には関与しないことを明らかにしている部分(4.1項)がある。また,「ETSIのIPRポリシーについてのFAQ」(甲159)でも,「ETSI規格にとって必須であると宣言された特許を使用するためには,許可を得る必要があります。その目的のため,規格の各使用者は,ライセンス許諾を,特許権者に直接求めなければなりません。」(回答6)とされている。こ って必須であると宣言された特許を使用するためには,許可を得る必要があります。その目的のため,規格の各使用者は,ライセンス許諾を,特許権者に直接求めなければなりません。」(回答6)とされている。このように,ETSIにおいても,本件FRAND宣言を含めて,そのIPRポリシーに基づいてされたFRAND宣言が直ちにライセンス契約の成立を導くものではないことを前提としていると解される。さらには,⑤ 現在のETSIのIPRポリシーを制定するに当たっては,当初,利用者に「自動ライセンス」を与えることを可能とするような規定とする試みが存在したところ,これに強い反対があり断念された結果,現在のIPRポリシーが採用されたという経緯がある(乙37,甲69)。本件FRAND宣言が契約の申込みであると解することは,ETSIのIPRポリシーの制定過程で断念された「自動ライセンス」を認めたと同一の結果となり,現在のETSIのIPRポリシーの制定経緯に反する点に照らしても,相当とはいえない。 以上からすると,本件FRAND宣言がライセンス契約の申込みであると解することはできない。 (3) 被控訴人の主張についてア以上に対して,被控訴人は,フランス法上,本件FRAND宣言において特定のライセンス料率が定まっていないことがライセンス契約の成立を妨げるものではないと主張する。 しかし,被控訴人の主張は,採用できない。すなわち,特定のライセンス料率が定まっていないことが,フランス法上ライセンス契約の成立の要件ではないと解したとしても,本件FRAND宣言は,地理的範囲や期間などその他の要素も何ら定めるものではなく,これをライセンス契約の申込みと理解することはできない。 イまた,被控訴人は,本件FRAND宣言は控訴人とETSIの間の第三者のた は,地理的範囲や期間などその他の要素も何ら定めるものではなく,これをライセンス契約の申込みと理解することはできない。 イまた,被控訴人は,本件FRAND宣言は控訴人とETSIの間の第三者のためにする契約(stipulationpourautrui)であって,これによって被控訴人がライセンスを受けたと解することも可能であると主張する。 しかし,この点の被控訴人の主張も,採用できない。 この点,フランス法上,第三者のためにする契約(stipulationpourautrui)又は第三者のための契約の契約(stipulationdecontratpourautrui)によって,被控訴人と控訴人との間にライセンス契約が成立したとするためには,少なくとも,控訴人とETSIとの間で,控訴人が受益者とライセンス契約を締結することが約されていることが必要とされると解すべきである(甲15,甲51の1,乙9,38)。本件について,この点をみると,前記のとおり,①本件FRAND宣言の文言は確定的でないこと,②ライセンス契約の重要な内容が定まっていないこと,③互恵条件を無にするおそれがあること,④ETSIにおいても本件FRAND宣言がライセンス契約の成立を導かないとしていること,⑤ライセンス契約が成立するとすることはETSIのIPRポリシーの成立経過に反すること等の事実によれば,控訴人とETSIの間で被控訴人を始めとする受益者とライセンス契約を締結することが約されていたとは認められない。よって,被控訴人の主張は採用の限りではない。 ウさらに,被控訴人は,本件FRAND宣言がライセンス契約の申込みに当たらないとしても,拘束力ある契約を締結する旨の誓約に該当するから,本件特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権を行使するこ ウさらに,被控訴人は,本件FRAND宣言がライセンス契約の申込みに当たらないとしても,拘束力ある契約を締結する旨の誓約に該当するから,本件特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権を行使することは許されないとも主張する。 しかし,この点の被控訴人の主張も,採用できない。すなわち,かかる誓約に基づいて,フランス法上,控訴人が被控訴人との関係で拘束力のある契約を締結しなければならない義務を負い,控訴人がかかる義務に違反したとすれば,その限りにおいて,別途何らかの損害賠償義務等を負担することがあり得たとしても,本件においては,前記のとおり,本件FRAND宣言はライセンス契約の申込みに該当せず,第三者のためにする契約も成立しない以上,本件FRAND宣言の効果として損害賠償請求権の行使が許されないとすることはできない。 日本法やフランス法上認められる債務不履行に対する救済を前提とする限り,被控訴人の各主張は,むしろ,損害賠償の請求に対する権利濫用の成否(後記6)の判断として検討すべきものといえる。 (4) 小括以上によれば,本件FRAND宣言によって控訴人と被控訴人の間にライセンス契約が成立したとの被控訴人の主張は理由がない。 6 争点6(控訴人による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使の権利濫用の成否)について当裁判所は,控訴人による本件製品2及び4についての本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使は,FRAND条件でのライセンス料相当額を超える部分では権利の濫用に当たるが,FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内では権利の濫用に当たるものではないと判断する。その理由は次のとおりである。 (1) 準拠法について被控訴人は,控訴人が本件特許権に基づいて損害賠償を請求することは,権利濫用に該当する 囲内では権利の濫用に当たるものではないと判断する。その理由は次のとおりである。 (1) 準拠法について被控訴人は,控訴人が本件特許権に基づいて損害賠償を請求することは,権利濫用に該当する旨を主張する。 本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権は,その法律関係の性質が不法行為であると解されるから,通則法17条によってその準拠法が定められることになる(なお,本件製品2及び4の発売はいずれも同法の施行後の事実である。)。 そして,本件における「加害行為の結果が発生した地の法」(通則法17条)は,本件製品2及び4の輸入,販売が行われた地が日本国内であること,我が国の特許法の保護を受ける本件特許権の侵害に係る損害が問題とされていることからすると,日本の法律と解すべきであるから,本件には,日本法が適用される。 以上を前提に,控訴人による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利の濫用に当たるか否かについて判断することとする。 (2) FRAND宣言がされた場合の損害賠償請求についてア前提となる事実前記争いのない事実等と証拠(甲5,12,13,16,27,28の1・2,85ないし87,160,161)及び弁論の全趣旨により認められる事実は,次のとおりである。 (ア) ETSIのIPRポリシーa 第2世代移動通信システム(2G)は,欧州外においては国ごとに規格が異なるばかりか,一つの国の中ですら規格が異なっており,普遍的な運用互換性がなかった。また,米国,日本,欧州は,それぞれ互換性のない規格に従ったシステムを運用していた。そのような状況の中,従来の音声サービスだけでなく,データサービス及びマルチメディアサービスを提供する第3世代移動通信システム(3G)の普及促進と付随する仕様の標準化を目的として,ETSI(欧州 た。そのような状況の中,従来の音声サービスだけでなく,データサービス及びマルチメディアサービスを提供する第3世代移動通信システム(3G)の普及促進と付随する仕様の標準化を目的として,ETSI(欧州電気通信標準化機構)などの世界の標準化団体が結集し,1998年(平成10年)に3GPPという名称の標準化団体を結成した。 bETSIは,知的財産権(IPR)の取扱いに関する方針として,IPRポリシーを定めている。 技術の標準化は,製品間の互換性を確保し,製造・調達のコストを削減し,これによって研究開発の効率化や他社との提携の拡大等が期待されるものであり,また,ユーザーにとっても,製品・サービスの利便性の向上,製品価格やサービス料金の低減等による利益を享受し得るという点で多大な効用がある。他方,当該標準に係る必須特許を使用して製品化を図ろうとする者は,必須特許を保有する企業から過大なライセンス料を要求されたり,実施許諾を得られなかった場合には,標準規格に準拠した製品に対する開発投資等が無駄になるなど,さまざまな不都合が生じ得る。 ETSIのIPRポリシーは,上記のような不都合な事態を回避し,通信分野における技術の標準化を促進させ,知的財産権の保有者の権利との間のバランスを図ることを目的として策定されたものである(3.1項の「方針の目的」参照)。 cETSIのIPRポリシーには,次のような規定がある。 (a) IPRポリシー4.1項は,各会員は,自らが参加する規格又は技術仕様の開発の間は特に,ETSIに必須IPRについて適時に知らせるため合理的に取り組むものとし,特に,規格又は技術仕様の技術提案を行う会員は,善意をもって,提案が採択された場合に必須となる可能性のあるその会員のIPRについてETSIの注意を喚起する旨 に知らせるため合理的に取り組むものとし,特に,規格又は技術仕様の技術提案を行う会員は,善意をもって,提案が採択された場合に必須となる可能性のあるその会員のIPRについてETSIの注意を喚起する旨を規定し,4.3項は,4.1項の義務は,ETSIにこの特許ファミリーの構成要素について適時に知らされた場合には,全ての既存及び将来のその特許ファミリーの構成要素につき満たされたとみなされる旨を規定する。 (b) IPRポリシー6.1項は,特定の規格又は技術仕様に関連する必須IPRがETSIに知らされた場合,ETSIの事務局長は,少なくとも製造(製造で使用するべく,ライセンシー自身の設計で,カスタマイズした部品及びサブシステムを製造又は過去から引き続き製造する権利を含む。),製造した機器の販売,賃貸,処分,修理又は使用,動作及び方法の使用の範囲で,当該IPRにおける取消不能なライセンスを「公正,合理的かつ非差別的な条件」(FRAND条件)で許諾する用意があることを書面で取消不能な形で3か月以内に保証することを,当該IPRの所有者に直ちに求めるものとする旨,上記保証は,ライセンスの相互供与に同意することを求めるという条件に従い行われる場合がある旨を規定し,6.2項は,6.1項の保証は,保証が行われた時点で指定したIPRを除外する旨を明示する書面がある場合を除き,その特許ファミリーの全ての既存及び将来の必須IPRに適用されるものとする旨を規定し,6.3項は,要請されたIPRの所有者の保証が許諾されない場合,委員会の委員長は,適切な場合,ETSI事務局と協議の上,問題が解決するまで,委員会が規格又は技術仕様についての作業を停止すべきかどうかについて判断し,「および/または」関連の規格又は技術仕様の承認を行う旨を規定する。 (c) I 事務局と協議の上,問題が解決するまで,委員会が規格又は技術仕様についての作業を停止すべきかどうかについて判断し,「および/または」関連の規格又は技術仕様の承認を行う旨を規定する。 (c) IPRポリシー15項6は,IPRに適用される「必須」とは,(商業的ではなく)技術的な理由で,標準化の時点で一般に利用可能な通常の技術慣行及び最新技術を考慮し,IPRに抵触せずに規格に準拠する機器又は方法を製造又は販売,賃貸,処分,修理,使用又は動作できないことを意味する旨を規定する。 (d) IPRポリシー12項は,IPRポリシーはフランス法に準拠する旨を規定する。 dIPRポリシーを補足する「IPRについてのETSIの指針」(甲16,161。2008年11月27日付けのもの。)には,次のような規定がある。 (a) IPRについてのETSIの指針1.1項は,「本指針の主な特徴は,次のように簡略化できる」と規定する。 「・会員は,ライセンスの許諾を拒否する権利を含む,自らが保有するIPRを保持しその利益を得る権利を完全に有する。 ・ETSIは,ETSIの技術的な目的に最も資する解決策に基づく規格および技術仕様を作成することを目的としている。 ・この目的を達成するに当たり,ETSIのIPRについての方針では,通信分野での一般利用の標準化の必要性と,IPRの保有者の権利との間のバランスを取ることが求められる。 ・IPRについての方針は,規格の準備および採用,適用への投資が,規格または技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減するためのものである。 ・よって,規格作成過程の可能な限り早期に,必須IPRの存在を知っていることが,特にライセンスが公正,合理的かつ非差別的な(FR 果無駄になる可能性があるというリスクを軽減するためのものである。 ・よって,規格作成過程の可能な限り早期に,必須IPRの存在を知っていることが,特にライセンスが公正,合理的かつ非差別的な(FRAND)条件で利用できない場合に必要である。」(b) IPRについてのETSIの指針1.4項は,ETSIのIPRについての方針は,機関としてのETSI及びその会員,事務局の権利及び義務を定義するものであり,ETSIの非会員にも,方針の下で特定の権利はあるが,法的な義務は有さない旨を規定し,同項に掲げる「表」中には,次のような記載がある。 「会員の権利」「・自らのIPRを規格に含めることを拒否すること(8.1項及び8.2項)。 ・規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること(6.1項)。」「会員の義務」「・ETSIに,自らのIPR及び他者の必須IPRについて知らせる(4.1項)。 ・必須IPRの保有者は,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスを許諾することを保証することが求められる(6.1項)。」「第三者の権利」「・第三者には,必須IPRの保有者として,又はETSI規格若しくは文書のユーザーとして,ETSIのIPRについての方針の下で,次の特定の権利を有する。 ○少なくとも製造及び販売,賃貸,修理,使用,動作するため,規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること(6.1項)。」(イ) 本件FRAND宣言に至るまでの経緯等a 控訴人は,1998年(平成10年)12月14日,ETSIに対し,UMTS規格としてETSIが推進しているW-CDMA技術に関し,控訴人の保有する必須IPRライセンスを,ETSIのIPRポリシー6.1項に従 ,1998年(平成10年)12月14日,ETSIに対し,UMTS規格としてETSIが推進しているW-CDMA技術に関し,控訴人の保有する必須IPRライセンスを,ETSIのIPRポリシー6.1項に従って,「公正,合理的かつ非差別的な条件」(FRAND条件)で許諾する用意がある旨の宣言(甲5)をした。 b 控訴人は,2005年(平成17年)5月4日,韓国において,本件出願の優先権主張の基礎となる特許出願(優先権主張番号10-2005-0037774)をした。控訴人は,同月9日から13日にかけて,3GPPのワーキンググループに対し,変更リクエスト(甲85)を提出した。その後,上記変更リクエストが採用され,同年6月に発行された3GPP規格の本件技術仕様書V6.4.0(甲87)で代替的Eビット解釈が標準規格の一つとされた。控訴人は,平成18年5月4日,本件出願をした。その後,控訴人は,平成22年12月10日,本件特許権の設定登録を受けた。 c 控訴人は,2007年(平成19年)8月7日,ETSIに対し,「IPRの情報についての声明及びライセンスの宣言」と題する書面(甲13)を提出することにより,ETSIのIPRポリシー4.1項に従って,本件出願の優先権主張の基礎となる韓国出願の出願番号,本件出願の国際出願番号(PCT/KR2006/001699)等に係るIPRが,UMTS規格(TS 25.322等)に関連した必須IPRであるか,又はそうなる可能性が高い旨を知らせるとともに,そのIPRが引き続き必須である範囲で,規格に関し,IPRポリシー6.1項に準拠する条件(FRAND条件)で,取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(本件FRAND宣言)をした。 d 本件特許は,UMTS規格の本件技術仕様書V6.9.0記載の「代 準拠する条件(FRAND条件)で,取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(本件FRAND宣言)をした。 d 本件特許は,UMTS規格の本件技術仕様書V6.9.0記載の「代替的Eビット解釈」に準拠した製品の製造,販売等及び方法の使用をするのに避けることのできない特許であり,必須特許である。 e 一般に,各種の標準化団体においては,ETSIのIPRポリシーに見られると同様に,知的財産権の取扱基準を設け,参加者等の特許権等の知的財産権(以下においては,特許権についてのみ論ずる。)がその定める標準規格に必須となる場合には,標準化団体の参加者等に,そのような特許権の開示を求め,さらに当該特許権をFRAND条件あるいはRAND条件(「reasonableandnon-discriminatory」な条件)等でライセンスを行うことの宣言(以下,FRAND条件又はRAND条件等によりライセンスを行うことの宣言を,「FRAND宣言」という。)を求めることが行われる。 イ損害賠償請求の許容される範囲について前記1ないし5のとおり,被控訴人による本件製品2及び4の製造・販売等は,本件発明1の技術的範囲に属し,本件特許権については,無効理由がなく,消尽しておらず,ライセンス契約は成立していないから,控訴人は損害の賠償を請求することができることになる。 そこで,FRAND宣言をした特許権者が,当該特許権に基づいて,損害賠償請求をした場合において,どの範囲の損害賠償請求が許容されるかを検討する。 (ア) FRAND宣言された必須特許(以下,FRAND宣言された特許一般を指す語として「必須宣言特許」を用いる。)に基づく損害賠償請求においては,FRAND条件によるライセンス料相当額を超える請求を許すことは,当該規格に準 た必須特許(以下,FRAND宣言された特許一般を指す語として「必須宣言特許」を用いる。)に基づく損害賠償請求においては,FRAND条件によるライセンス料相当額を超える請求を許すことは,当該規格に準拠しようとする者の信頼を損なうとともに特許発明を過度に保護することとなり,特許発明に係る技術の社会における幅広い利用をためらわせるなどの弊害を招き,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害するおそれがあり合理性を欠くものといえる。 すなわち,ある者が,標準規格に準拠した製品の製造,販売等を試みる場合,当該規格を定めた標準化団体の知的財産権の取扱基準を参酌して,必須特許についてFRAND宣言する義務を構成員に課している等,将来,必須特許についてFRAND条件によるライセンスが受けられる条件が整っていることを確認した上で,投資をし,標準規格に準拠した製品等の製造・販売を行う。仮に,後に必須宣言特許に基づいてFRAND条件によるライセンス料相当額を超える損害賠償請求を許容することがあれば,FRAND条件によるライセンスが受けられると信頼して当該標準規格に準拠した製品の製造・販売を企図し,投資等をした者の合理的な信頼を損なうことになる。必須宣言特許の保有者は,当該標準規格の利用者に当該必須宣言特許が利用されることを前提として,自らの意思で,FRAND条件でのライセンスを行う旨宣言していること,標準規格の一部となることで幅広い潜在的なライセンシーを獲得できることからすると,必須宣言特許の保有者にFRAND条件でのライセンス料相当額を超えた損害賠償請求を許容することは,必須宣言特許の保有者に過度の保護を与えることになり,特許発明に係る技術の幅広い利用を抑制させ,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害することになる。 た損害賠償請求を許容することは,必須宣言特許の保有者に過度の保護を与えることになり,特許発明に係る技術の幅広い利用を抑制させ,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害することになる。 (イ) 一方,必須宣言特許に基づく損害賠償請求であっても,FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内にある限りにおいては,その行使を制限することは,発明への意欲を削ぎ,技術の標準化の促進を阻害する弊害を招き,同様に特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害するおそれがあるから,合理性を欠くというべきである。標準規格に準拠した製品を製造,販売しようとする者は,FRAND条件でのライセンス料相当額の支払は当然に予定していたと考えられるから,特許権者が,FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内で損害賠償金の支払を請求する限りにおいては,当該損害賠償金の支払は,標準規格に準拠した製品を製造,販売する者の予測に反するものではない。 また,FRAND宣言の目的,趣旨に照らし,同宣言をした特許権者は,FRAND条件によるライセンス契約を締結する意思のある者に対しては,差止請求権を行使することができないという制約を受けると解すべきである(当裁判所においても,控訴人が被控訴人に対して本件特許権に基づく差止請求権を被保全債権として,本件製品2及び4に加えて「iPhone 4S」の販売等の差止等を請求した仮処分事件(本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申立ての抗告審。当庁平成25年(ラ)第10007号,同10008号事件)において,控訴人の申立てを却下した原審決定を維持する旨の決定をした。)。FRAND宣言をした特許権者における差止請求権を行使することができないという上記制約を考慮するならば,FRAND条件でのライセンス料相当額の損害 てを却下した原審決定を維持する旨の決定をした。)。FRAND宣言をした特許権者における差止請求権を行使することができないという上記制約を考慮するならば,FRAND条件でのライセンス料相当額の損害賠償請求を認めることこそが,発明の公開に対する対価として極めて重要な意味を有するものであるから,これを制限することは慎重であるべきといえる。 (ウ) 以上を「FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求」と「FRAND条件でのライセンス料相当額による損害賠償請求」に分けて,より本件の事実に即して敷衍する。 aFRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求UMTS規格に準拠した製品を製造,販売等しようとする者は,UMTS規格に準拠した製品を製造,販売等するのに必須となる特許権のうち,少なくともETSIの会員が保有するものについては,ETSIのIPRポリシー4.1項等に応じて適時に必要な開示がされるとともに,同ポリシー6.1項等によってFRAND宣言をすることが要求されていることを認識しており,特許権者とのしかるべき交渉の結果,将来,FRAND条件によるライセンスを受けられるであろうと信頼するが,その信頼は保護に値するというべきである。したがって,本件FRAND宣言がされている本件特許についてFRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求権の行使を許容することは,このような期待を抱いてUMTS規格に準拠した製品を製造,販売する者の信頼を害することになる。 必須宣言特許を保有する者は,UMTS規格に準拠する者のかかる期待を背景に,UMTS規格の一部となった本件特許を含む特許権が全世界の多数の事業者等によって幅広く利用され,それに応じて,UMTS規格の一部とならなければ到底得られなかったであ かかる期待を背景に,UMTS規格の一部となった本件特許を含む特許権が全世界の多数の事業者等によって幅広く利用され,それに応じて,UMTS規格の一部とならなければ到底得られなかったであろう規模のライセンス料収入が得られるという利益を得ることができる。また,本件FRAND宣言を含めてETSIのIPRポリシーの要求するFRAND宣言をした者については,自らの意思で取消不能なライセンスをFRAND条件で許諾する用意がある旨を宣言しているのであるから,FRAND条件でのライセンス料相当額を超えた損害賠償請求権を許容する必要性は高くないといえる。 したがって,FRAND宣言をした特許権者が,当該特許権に基づいて,FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求をする場合,そのような請求を受けた相手方は,特許権者がFRAND宣言をした事実を主張,立証をすれば,ライセンス料相当額を超える請求を拒むことができると解すべきである。 これに対し,特許権者が,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しない等の特段の事情が存することについて主張,立証をすれば,FRAND条件でのライセンス料を超える損害賠償請求部分についても許容されるというべきである。そのような相手方については,そもそもFRAND宣言による利益を受ける意思を有しないのであるから,特許権者の損害賠償請求権がFRAND条件でのライセンス料相当額に限定される理由はない。もっとも,FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求を許容することは,前記のとおりの弊害が存することに照らすならば,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの特段の事情は,厳格に認定されるべきである。 bFRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内の損害賠償 存することに照らすならば,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの特段の事情は,厳格に認定されるべきである。 bFRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内の損害賠償請求FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内での損害賠償請求については,必須宣言特許による場合であっても,制限されるべきではないといえる。 すなわち,UMTS規格に準拠した製品を製造,販売等しようとする者は,FRAND条件でのライセンス料相当額については,将来支払うべきことを想定して事業を開始しているものと想定される。また,ETSIのIPRポリシーの3.2項は「IPRの保有者は・・・IPRの使用につき適切かつ公平に補償を受ける」(IPRholdersshouldbeadequatelyandfairlyrewardedfortheuseoftheirIPRs[.])ことをもETSIのIPRポリシーの目的の一つと定めており,特許権者に対する適切な補償を確保することは,この点からも要請されているものである。 ただし,FRAND宣言に至る過程やライセンス交渉過程等で現れた諸般の事情を総合した結果,当該損害賠償請求権が発明の公開に対する対価として重要な意味を有することを考慮してもなお,ライセンス料相当額の範囲内の損害賠償請求を許すことが著しく不公正であると認められるなど特段の事情が存することについて,相手方から主張立証がされた場合には,権利濫用としてかかる請求が制限されることは妨げられないというべきである。 c まとめ以上を総合すれば,本件FRAND宣言をした控訴人を含めて,FRAND宣言をしている者による損害賠償請求について,① FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求を認 c まとめ以上を総合すれば,本件FRAND宣言をした控訴人を含めて,FRAND宣言をしている者による損害賠償請求について,① FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求を認めることは,上記aの特段の事情のない限り許されないというべきであるが,他方,② FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内での損害賠償請求については,必須宣言特許による場合であっても,上記bの特段の事情のない限り,制限されるべきではないといえる。 (3) 特段の事情の有無についての検討本件においては,控訴人は,後記7のとおりと認められるFRAND条件によるライセンス料相当額を超える損害額の請求をしている。そこで,FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内と認められる部分については,控訴人が損害賠償請求をすることが著しく不公正であると認められるなど特段の事情があるか,他方,FRAND条件によるライセンス料相当額を超える部分については,被控訴人がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しない場合など特段の事情があるかを,以下検討する。 ア前提となる事実前記争いのない事実等と証拠(甲5,6,12,13,16,27ないし29,32ないし37,65,85ないし87,109ないし111,133,160,161,乙36,42,53,59(枝番号の記載は省略する。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 すなわち,① 控訴人は,平成23年7月25日付け書簡で,アップル社に対し,控訴人の必須宣言特許ポートフォリオについてのライセンス条件として,具体的な料率を提示したこと,② アップル社は同年8月18日付けの書面でライセンス料率の上限を提示し,平成24年3月4日付け書簡でさらに数桁小さい料率をロイヤ ォリオについてのライセンス条件として,具体的な料率を提示したこと,② アップル社は同年8月18日付けの書面でライセンス料率の上限を提示し,平成24年3月4日付け書簡でさらに数桁小さい料率をロイヤリティとして支払う旨のライセンス契約の申出をし,さらに,同年9月7日付け書簡で,クロスライセンス契約を含む具体的なライセンス案を提示したこと,③ これに対して,控訴人は,アップル社が控訴人の提示を不本意とするならば,アップル社において具体的な提案をするよう要請するのみであったこと,④ 控訴人は,同年9月14日付け書簡でライセンス料算定の基礎となる価格の上限引下げの提案等をしたこと,⑤ 控訴人は,同年12月3日付け書簡で,当初提案の料率を半分以下にする提案をしたこと,⑥ アップル社と控訴人は,同月12日,17日及び18日に会合をもち,この際に控訴人は,アップル社が多額の一時金を支払うとの内容を含む提案を行い,アップル社は,UMTS規格の必須特許ポートフォリオを対象とするクロスライセンス契約の提案をしたこと,⑦ アップル社と控訴人は,平成25年1月14日にも会合をもち,その際アップル社はライセンス料の支払を伴わないクロスライセンス契約の提案を行ったこと,⑧ 両社の同年2月7日●●●●の会合の際には,合意書の案が作成された●●●●●●●●●●●●●●こと,⑨ その後も,控訴人とアップル社との間では,紛争を仲裁に付するとした場合の条件等をめぐって各種の交渉が断続的に行われていることが認められる。 イ FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲での損害賠償請求について(ア) 誠実交渉義務について控訴人が本件FRAND宣言をしていることに照らせば,控訴人は,少なくとも我が国民法上の信義則に基づき,被控訴人との間でFRAND条件でのライセンス 求について(ア) 誠実交渉義務について控訴人が本件FRAND宣言をしていることに照らせば,控訴人は,少なくとも我が国民法上の信義則に基づき,被控訴人との間でFRAND条件でのライセンス契約の締結に向けた交渉を誠実に行うべき義務を負担すると解される。 この点,前記アのとおり,控訴人は,平成23年7月25日にライセンス提示をした後は,アップル社から具体的提案を受けつつも,平成24年12月3日に至るまで,具体的な対案を示すことがなく,また,控訴人は特許ポートフォリオ単位でのライセンス提案のみを行っており,個別の特許については,本件訴訟に至るまで料率の提案を提示せず,控訴人の提案するライセンス条件がFRAND条件にのっとったものであることを十分に説明することもなかったと認められるから,この間の控訴人の交渉態度は,アップル社との間でのライセンス契約の締結を促進するものではなかったと解される。 もっとも,次のような事実経緯が存在する。すなわち,① 控訴人は,アップル社に対して直ちに対案を示すことはなかったものの,平成24年12月以降はアップル社との間で複数回,協議を行っており,その際には対案も示すなど,契約締結に向けた活動を継続している。② 一般に控訴人や被控訴人の属する移動体通信端末の製造業者の間では特許ポートフォリオ単位でのクロスライセンス契約が締結されることが通常である(乙57等)から,特許ポートフォリオ単位でのライセンス提案のみを行うことも直ちに信義に反するものとはいえない。③ 控訴人と他社との間のライセンス契約の条件については守秘義務が付され開示できる性質のものではなく(同),開示されたとしても,当該条件はライセンス契約の相手方の特許ポートフォリオの相対的強弱によって決定されたものであって,前提を異にする控訴 については守秘義務が付され開示できる性質のものではなく(同),開示されたとしても,当該条件はライセンス契約の相手方の特許ポートフォリオの相対的強弱によって決定されたものであって,前提を異にする控訴人と被控訴人との間の契約条件を定めるに当たって常に参考になるものともいえない。 ④ ライセンス契約の条件中には,標準規格に関連しない特許権のライセンスやビジネス条件なども含まれることがあり得ることも考えられる。 以上の点を考慮すると,控訴人は提案するライセンス条件がFRAND条件にのっとったものであることを説明すべきであるとしても,控訴人が控訴人と他社との間のライセンス契約の条件を開示しなかったことを直ちに不当と非難することはできず,控訴人のライセンス交渉過程での態度をもって,控訴人がFRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内で損害賠償請求をすることが著しく不公正であるとまでは認めることはできない。 (イ) 適時開示義務についてETSIのIPRポリシーには,各会員は,自らが参加する規格技術仕様の開発の間は特に,ETSIに必須IPRについて適時に知らせるため合理的に取り組むべきことが定められているから(前記(2)ア),控訴人もかかる義務を負担しているというべきである。 この点,前記(2)アのとおり,控訴人は,平成17年5月4日に,韓国において,本件特許の優先権主張の基礎となる特許出願をし,また,その数日後の同月9日から13日に開催された3GPPのワーキンググループに,後に代替的Eビット解釈の導入につながる変更リクエストを提出した。それにもかかわらず,控訴人は,平成19年8月7日の本件FRAND宣言まで,本件特許権の存在をETSIに知らせていなかった。このように,控訴人は,本件特許権の存在を知ってから2年余りもの間,E た。それにもかかわらず,控訴人は,平成19年8月7日の本件FRAND宣言まで,本件特許権の存在をETSIに知らせていなかった。このように,控訴人は,本件特許権の存在を知ってから2年余りもの間,ETSIに対して本件特許権の存在を通知していない。 しかし,上記の事実経緯に対しては,控訴人は,最終的には本件FRAND宣言をするに至っていること,控訴人が本件特許権を有することが判明していたか否かが代替的Eビット解釈のUMTS規格への導入の採否に何らかの影響を及ぼしたと解されないこと,他社との比較においても開示までの2年あまりという期間が,極端に長いとまではいえないこと(乙8)をも考慮すれば,控訴人によるFRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内での損害賠償請求をすることが著しく不公正であると認めるには足らない。 (ウ) 本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申立てについて前記のとおり,必須特許の保有者が,FRAND宣言をした場合,必須宣言特許による差止請求権の行使は,FRAND条件によるライセンス契約を締結する意思のある者に対しては,権利の濫用に該当し許されないといえる。控訴人は,本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申立てをし,本件製品2及び4並びに「iPhone 4S」の譲渡等の差止めを求めているが,控訴人において,本件仮処分及び別件仮処分の申立てをしたとの事実が,控訴人によるFRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内での損害賠償請求権の行使が許されないとの結論を導く理由にはならないというべきである。 (エ) 独占禁止法について以上に関連して,被控訴人は,控訴人の一連の行為が独占禁止法に違反する旨の主張もしている。しかし,控訴人の主張に係る損害賠償の金額は,控訴人がFRAND条件によるライセンス料であると主 について以上に関連して,被控訴人は,控訴人の一連の行為が独占禁止法に違反する旨の主張もしている。しかし,控訴人の主張に係る損害賠償の金額は,控訴人がFRAND条件によるライセンス料であると主張する金額に留まること(前記第3,7)に加えて,FRAND条件によるライセンス料相当額を超える損害賠償請求は原則として権利の濫用となり許されないことを考慮すると,本件全証拠によっても,FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内での損害賠償請求が同法に違反すると認めるには足らない。 (オ) 小括その他,本件に現れた一切の事情を考慮しても,控訴人によるFRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内での損害賠償請求を許すことが著しく不公正であるとするに足りる事情はうかがわれず,前記特段の事情が存在すると認めるに足りる証拠はない。 ウ FRAND条件によるライセンス料相当額を超える損害賠償請求について前記アのとおりのアップル社と控訴人の間のライセンス交渉の経緯からすると,アップル社は,平成23年8月18日付けの書面でのライセンス料率の上限の提示に始まり,複数回にわたって算定根拠とともに具体的なライセンス料率の提案を行っているし,控訴人と複数回面談の上集中的なライセンス交渉も行っているから,アップル社は控訴人との間でライセンス契約を締結するべく交渉を継続していたと評価できる。控訴人とアップル社との間には,妥当とするライセンス料率について大きな意見の隔絶が長期間にわたって存在する。しかし,ライセンサーとライセンシーとなる両社は本来的に利害が対立する立場にあることや,何がFRAND条件でのライセンス料であるかについて一義的な基準が存するものではなく,個々の特許のUMTS規格への必須性や重要性等については様々な評価が可能であって, る立場にあることや,何がFRAND条件でのライセンス料であるかについて一義的な基準が存するものではなく,個々の特許のUMTS規格への必須性や重要性等については様々な評価が可能であって,それによって妥当と解されるライセンス料も変わってくることからすれば,アップル社の行った各種提案も一定程度の合理性を持ったものと評価できる。加えて,前記イ(ア)のとおり,控訴人の交渉態度も,アップル社との間でのライセンス契約の締結を促進するものではなかったことからすると,両社間に,大きな意見の隔絶が長期間にわたって存在したとしても,アップル社や被控訴人においてFRAND条件でのライセンス契約を締結する意思を有しないことを意味するものとは直ちに評価できない。そうすると,本件について被控訴人にFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しない場合など特段の事情が存するとは認められない。 これに対し,控訴人は,アップル社が平成25年2月の会合で覚書(ドラフト)の作成段階にまで至っていた●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●などとして,被控訴人は真摯にライセンスを受ける意思を有しない者に当たるなどと主張する。しかし,標準規格を策定することの目的及び意義等に照らすと,ライセンス契約を受ける意思を有しないとの認定は厳格にされてしかるべきところ,控訴人の主張に係る事情をもっては,被控訴人又はアップル社がFRAND条件によるライセンス契約を締結する意思を有しない者であるとの認定はできない。また,控訴人は,損害賠償請求権を認めないことがTRIPs協定違反である旨の主張もするが,採用の限りではない。 (4) 小括よって,控訴人による本件の損害賠償請求が権利の濫用に当たるとの被控訴人の主張は,控訴人の主張に係る損害額のうち, RIPs協定違反である旨の主張もするが,採用の限りではない。 (4) 小括よって,控訴人による本件の損害賠償請求が権利の濫用に当たるとの被控訴人の主張は,控訴人の主張に係る損害額のうち,後記7のとおりのFRAND条件によるライセンス料相当額を超える部分では理由があるが,FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲では採用の限りではない。 7 争点7(損害額)について以上を踏まえて,以下では,本件製品2及び4による本件特許権の侵害について,FRAND条件によるライセンス料相当額がいくらとなるかを検討する。当裁判所は,後記(3)ウのとおりの金額となると判断する。 (1) 前提となる事実証拠(甲10,11,30の1,108,134,135,164,172,193の1・2,197,205,206,乙2,4,94の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ア本件製品2及び4の,それぞれの販売開始から平成25年9月28日までの売上高の合計は,後記(3)ウの該当欄に記載のとおりである。 イ本件製品2は,W-CDMA,GSM,EDGEの各移動体通信方式に準拠するほか(なお,「iPhone 4」としては,3GPP2(ThirdGenerationPartnershipProject 2)の策定に係るCDMA2000方式に準拠した製品も存在するようであるが,我が国では発売されていない。),Wi-Fi802.11b/g/n,Bluetooth2.1+EDRの各無線通信の機能を有する。本件製品2の特徴としては,その他にディスプレイとして高精細な「Retinaディスプレイ」を登載し,カメラとして,「5メガピクセルiSightカメラ」を登載していることも挙げられる。 本件製品2には,登載さ 特徴としては,その他にディスプレイとして高精細な「Retinaディスプレイ」を登載し,カメラとして,「5メガピクセルiSightカメラ」を登載していることも挙げられる。 本件製品2には,登載されているメモリ容量により複数の種類があり,その一般消費者への販売価格は,32GBモデルが5万7600円,16GBモデルが4万6080円(一括支払い時)であった。(甲193の1,乙4)ウ本件製品4は,W-CDMA,GSM,EDGEの各移動体通信方式に準拠するほか(なお,「iPad 2 Wi-Fi+3G」には,CDMA2000方式にも準拠する製品があるようであるが,本件証拠上は前記のとおりと認定される。),Wi-Fi802.11a/b/g/n,Bluetooth2.1+EDRの各無線通信の機能を有する。本件製品4の特徴としては,プロセッサとして「AppleA5」を登載し,加速度センサー,デジタルコンパス,AssistedGPSなどの各種センサー類も登載していることも挙げられる。 本件製品4にも,登載されているメモリ容量によって複数のモデルがあり,本件製品4から移動体通信機能を省いたモデル(「iPad 2 Wi-Fi」)も別途販売されている。これらの一般消費者への販売価格は,移動体通信機能を有しないモデル(「iPad 2 Wi-Fi」)で16GBモデルが4万4800円,32GBモデルが5万2800円,64GBモデルが6万0800円,移動体通信機能通信機能を有するモデル(本件製品4)で,16GBモデルが5万6640円,32GBモデルが6万4800円,64GBモデルが7万2720円などとなっている。(甲193の2)エ UMTS規格について多くの必須特許を有するノキアは,2002年(平成14年)5月に「WCDMAの知的財産権に 万4800円,64GBモデルが7万2720円などとなっている。(甲193の2)エ UMTS規格について多くの必須特許を有するノキアは,2002年(平成14年)5月に「WCDMAの知的財産権に係る累積ロイヤリティを業界全体で5%にすること」を提案した。 控訴人の代理人は,米国ITCにおける公聴会で,UMTS規格に関して全参加企業のライセンスについて約5%にするという総額の負担とするべき合意があった旨の発言をした。 平成14年,NTTドコモ,エリクソン,ノキア及びシーメンスの間で,UMTS規格を構成する特許のロイヤリティについて,個々の必須特許権者が受領すべきロイヤリティはその保有する必須特許の割合に応じて定めるとの合意が成立した。 これに対して必須特許の特許権者である他の日本企業も協力する意向を表明した。 この合意については,累積ロイヤリティを5パーセント以下にすることによりUMTS規格を普及させるのに役立つとの指摘がされた。 UMTS規格の必須特許の特許権者らで作られたパテントプールであるW-CDMAパテントプラットフォームでは,標準ライセンス契約として必須特許1件当たりに工場出荷価格の0.1パーセントである基準料率をもとに,必要な必須特許を累積した場合の最大値を5パーセントとし,それを超える場合は基準料率を5パーセント以内となるよう圧縮的に低減する仕組みを採用している。 パテントプールにおけるライセンサーへのライセンス料の分配に際しては,個々の特許の技術的価値を捨象して,ライセンス料を特許の数で除した値によることが多い。 オ標準規格の策定に際しては,参加者は自らの特許ポートフォリオを充実させ,以後のライセンス交渉を優位に進めるために,必須宣言は過剰にされる傾向にあり,必須宣言された特許のうちには,現実 多い。 オ標準規格の策定に際しては,参加者は自らの特許ポートフォリオを充実させ,以後のライセンス交渉を優位に進めるために,必須宣言は過剰にされる傾向にあり,必須宣言された特許のうちには,現実には必須でないものも多く含まれる。 フェアフィールド社は,UMTS規格のうち,2008年(平成20年)12月までに,3GPPの構成員であるETSI,日本の一般社団法人電波産業会(ARIB)又は韓国のTTA(TelecommunicationsTechnologyAssociation。情報通信技術協会。)に必須であると宣言された特許について分析した(フェアフィールド社のレポート(甲135)。なお,フェアフィールド社のレポートは「WCDMAに必須であると宣言された特許の調査」と題するものであるが,ここでいう「WCDMA」は本判決での定義によれば2008年12月当時のUMTS規格の意味と理解される。なお,同時点では,LTE方式は,UMTS規格とはされていなかった。)。 その結果は,UMTS規格については1889の特許ファミリーが必須宣言されているが,必須であるかおそらく必須であると判定されたのは,そのうち529の特許ファミリーであった。 カ主として通信機能に特化したいわゆるフィーチャーフォンには,数千円程度のものから数万円程度で販売されているものもある。コンピュータと接続してUMTS規格の通信を可能にするいわゆるドングル(USB接続モデム)や無線通信ルータの中には数千円程度で販売されているものがある。 (2) 本件におけるFRAND条件によるライセンス料相当額の算定方法ETSIのIPRポリシー及びIPRに関するETSIの指針などにおいては,FRAND条件によるライセンス料をどのように計算すべきかについての何らの手がかりも用意せず, イセンス料相当額の算定方法ETSIのIPRポリシー及びIPRに関するETSIの指針などにおいては,FRAND条件によるライセンス料をどのように計算すべきかについての何らの手がかりも用意せず,当事者間の交渉にゆだねている。そこで,ETSIのIPRポリシーが定められた趣旨及び本件製品2及び4の性質等を総合すると,FRAND条件によるライセンス料相当額は,次のとおりの方法により算定するのが相当であると認められる。 すなわち,まず本件製品2及び4の売上高合計のうち,UMTS規格に準拠していることが貢献した部分の割合を算定し(後記(3)ア),次に,UMTS規格に準拠していることが貢献した部分のうちの本件特許が貢献した部分の割合を算定する(同イ)。UMTS規格に準拠していることが貢献した部分のうちの本件特許が貢献した部分の割合を算定する際には,累積ロイヤリティが過剰となることを抑制する観点から全必須特許に対するライセンス料の合計が一定の割合を超えない計算方法を採用することとし(同(ア)),本件においては,他の必須特許の具体的内容が明らかでないことから,UMTS規格に必須となる特許の個数割りによるのが相当である(同(イ))。 (3) 具体的な計算ア UMTS規格に準拠していることの貢献部分上記の売上高の合計のうち,UMTS規格に準拠していることが寄与した部分としては,本件製品2について,売上高合計の●●パーセント,本件製品4について売上高合計の●●パーセントとするのが相当であり,FRAND条件によるライセンス料相当額を認定するにあたっては,同割合を乗じた金額を基礎とすべきである。 すなわち,前記認定のとおり,本件製品2及び4は,移動体通信機能としては,W-CDMA方式以外にGSM方式等にも準拠しており,また,Wi するにあたっては,同割合を乗じた金額を基礎とすべきである。 すなわち,前記認定のとおり,本件製品2及び4は,移動体通信機能としては,W-CDMA方式以外にGSM方式等にも準拠しており,また,Wi-Fi等の無線通信機能も有する。また,本件製品2及び4の売上高合計には,そのデザインやユーザーインターフェイス,利用できる各種のソフトウェア,CPU,カメラ,オーディオ機能,ディスプレイ,GPS機能,3軸ジャイロや加速度センサーを始めとする各種のセンサーにおける特徴,機能が貢献している面も多くある。また,スマートフォン市場・タブレットデバイス市場でのアップル社や被控訴人の有する強いブランド力や,これを維持・向上させるためのアップル社や被控訴人によるマーケティング活動も,これに相当程度貢献していると認められる。さらに,本件製品2及び4のメモリ容量に応じた価格差からしても,本件製品2及び4の売上高にはメモリ容量の大小が少なからず貢献していると推定される。このように,UMTS規格に準拠していることが本件製品2及び4の売上高合計に貢献しているとしても,寄与の程度はその一部に留まるもので,その余の売上高合計はUMTS規格に準拠していることに影響されることなく達成されたものといえる。そうすると,本件特許に対するFRAND条件でのライセンス料相当額を認定するに際しては,UMTS規格に準拠していることが,本件製品2及び4の売上高合計に貢献していると認められる部分のみを基礎とすべきである。 その具体的割合については,次のとおりと考えられる。すなわち,本件製品2は,いわゆるスマートフォンであって,移動体通信機能以外の多くの機能を有するものではあるが,本件製品4と比較すれば,社会通念上の基本的な機能としては,移動体通信機能を主とするものと捉えられて 製品2は,いわゆるスマートフォンであって,移動体通信機能以外の多くの機能を有するものではあるが,本件製品4と比較すれば,社会通念上の基本的な機能としては,移動体通信機能を主とするものと捉えられているとするのが相当である。他方,本件製品4は,いわゆるタブレットデバイスであって,その利用の際に移動体通信機能は必ずしも必要とされず,現に本件製品4から移動体通信機能を除いた製品(「iPad 2 Wi-Fi」)も販売されていることや,移動体通信機能を除いた製品(「iPad 2 Wi-Fi」)と移動体通信機能を有する製品(「iPad 2 Wi-Fi+3Gモデル」。本件製品4)との販売価格差が1万数千円程度であることからして,移動体通信機がその売上げに寄与した割合は,本件製品2と比較すれば,小さいとするのが相当である。以上の各事情に加えて,本件ベースバンドチップの価格や,いわゆるフィーチャーフォンやドングル,無線通信ルータの販売価格等の諸般の事情を考慮すると,本件製品2及び4の売上高合計のうち,UMTS規格に準拠していることが寄与した部分としては,本件製品2について売上高合計の●●パーセント,本件製品4について売上高合計の●●パーセントとするのが相当である。 イ本件特許の貢献部分さらに,本件特許についてのFRAND条件による実施料相当額としては,本件製品2及び4の売上合計のうちUMTS規格に準拠していることが寄与したと認められる金額のうちの後記(エ)の計算式に記載とおりの割合であるとするのが相当である。 (ア) 累積ロイヤリティの上限についてETSIのIPRポリシーが定められた目的は,「規格の準備及び採用,適用への投資が,規格又は技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減 の上限についてETSIのIPRポリシーが定められた目的は,「規格の準備及び採用,適用への投資が,規格又は技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減する」(3.1項)ところにあるとされている。かかる目的を達成するためには,個々の必須特許についてのライセンス料のみならず,個々の必須特許に対するライセンス料の合計額(累積ロイヤリティ)も経済的に合理的な範囲内に留まる必要があると解すべきである。すなわち,UMTS規格と同様に,ある規格を実現するためには多数の必須特許が存在することがしばしばある。 このような場合,個々の特許権に対するライセンス料率の絶対値が低廉であったとしてもライセンス料の合計額は当該規格に準拠することが経済的に不可能になるほど不合理に大きなものとなる可能性がある。また,同一分野で新たな標準が作られる場合には,従前の技術との互換性を保つために従来の標準技術もその中に取り入れることがしばしば行われるため(「標準の連鎖」),標準規格の策定が後になればなるほど,必須特許の数が増大する傾向があるといえる。ライセンス料の合計額が不合理に大きくなるのであれば,必須特許について仮にライセンスを受けられたとしてもこれを使用することは現実には不可能になり,「投資が・・・必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減する」とのETSIのIPRポリシーの目的を達成することができなくなる事態が発生する。したがって,ETSIのIPRポリシーのもとで行われた本件FRAND宣言は,ライセンス料の合計額を合理的な範囲内に留めることをもFRAND条件の一内容として含んでいると理解され,FRAND条件によるライセンス料相当額を定めるに当たっても,かかる制限は必然的に生じると解するのが相当である 合計額を合理的な範囲内に留めることをもFRAND条件の一内容として含んでいると理解され,FRAND条件によるライセンス料相当額を定めるに当たっても,かかる制限は必然的に生じると解するのが相当である。 そこで,次に,本件におけるライセンス料の合計額の上限をどの程度に設定するのが相当であるかを判断する。本件訴訟において,控訴人,被控訴人とも累積ロイヤリティを5パーセントとすることを前提として主張をしており,また,前記(1)エのとおり,UMTS規格の必須特許を保有する者の間では,累積ロイヤリティが過大となることを防ぐ観点から,累積ロイヤリティを5パーセント以内とすることを支持する見解が多くあることに照らすならば,本件特許についてのFRAND条件によるライセンス料相当額を認定するに際しては,UMTS規格に対する累積ロイヤリティが,UMTS規格に準拠していることが本件製品2及び4の売上げに貢献したと認められる部分(本件製品2について●●パーセント,本件製品4について●●パーセント)の5パーセントとなる計算方法を採用することが相当である。 (イ) 他のUMTS規格の必須特許との関係について次に,UMTS規格に必須となる他の特許権との関係を検討する。UMTS規格には,本件特許の他にも多数の特許が必須特許となるものであって,本件特許のみによってUMTS規格が実現されているものではない。そこで,UMTS規格に対する本件特許の貢献度が,我が国において特許権が付与されている他の必須特許との関係でどの程度かを検討する必要が生じる。 この点,本件各発明は一つの完全なRLCSDUが一つのRLCPDUにのみ対応し,分割・連結・パディングなしに頻繁に発生する(本件明細書の段落【0011】)とのVoIP通信の特性に着目したものであって,この 件各発明は一つの完全なRLCSDUが一つのRLCPDUにのみ対応し,分割・連結・パディングなしに頻繁に発生する(本件明細書の段落【0011】)とのVoIP通信の特性に着目したものであって,このようなVoIP通信が行われる場合にのみ,無線リンク上のPDUのヘッダーサイズを減少させて無線リソースを有効に使用するとの効果が発揮され,それ以外の場合にはむしろ無線リソースの浪費となるものである。このように,本件各発明がその効果を発揮し得るのは限定的な場合に留まるものであるから,本件特許のUMTS規格に対する技術的貢献度は大きくはなく,本件特許のUMTS規格に対する貢献が,他の必須特許と比べて大きいと認めるに足りる証拠はない。他方,本件では,UMTS規格に必須となる他の特許の具体的内容については何らの証拠も提出されていないから,他の必須特許のUMTS規格に対する貢献の程度は明らかではなく,他の必須特許のUMTS規格に対する貢献が本件特許と比べて大きいと認めるに足りる証拠もない。以上によれば,本件における証拠からは,本件特許も他のUMTS規格の必須特許も,同程度に,UMTS規格に貢献していると評価するのが相当である。 このように,本件特許も他のUMTS規格の必須特許も,同程度にUMTS規格に貢献しているとすると,本件特許に対するFRAND条件による実施料相当額は,UMTS規格に必須となる特許の個数割りによるべきことになる。 一般に,パテントプールにおいてはライセンサーへのライセンス料の分配に際しては,個々の特許の技術的価値を捨象して,ライセンス料を特許の数で除した値によることが多く,UMTS規格についての「W-CDMAパテントプラットフォーム」でも特許の数で除する方式が採用されていることが認められる。FRAND条件による実施料 イセンス料を特許の数で除した値によることが多く,UMTS規格についての「W-CDMAパテントプラットフォーム」でも特許の数で除する方式が採用されていることが認められる。FRAND条件による実施料相当額を,UMTS規格に必須となる特許の個数割りによって計算することは,このようなパテントプールでの扱いとも整合するものである。 (ウ) UMTS規格の必須特許の個数についてFRAND条件でのライセンス料相当額を算定するに当たってのUMTS規格の必須特許の個数は,529個を採用する。すなわち,UMTS規格について,フェアフィールド社が必須かおそらく必須と判定した特許ファミリーの数は529である(前記(1)オ)。フェアフィールド社のレポートは,海外におけるものも含めて,UMTS規格に必須となる特許ファミリーの数を分析したものであって,我が国におけるUMTS規格の必須特許の数を数えたものではなく,また,必須かおそらく必須と判定された特許ファミリーの内訳も明らかではないが,他にはUMTS規格の必須特許であって我が国において特許権が付与されているものの数を認定し得るに足りる証拠は何ら提出されていない。加えて,両当事者とも,必須宣言されている全特許数によるか,必須又はおそらく必須と判定された特許数によるかはさておき,フェアフィールド社のレポートに準拠して主張していることからすると,必須となる特許の個数はフェアフィールド社のレポートに現れた特許ファミリーの数を基礎とするのが相当である。そして,一般に標準規格の策定に際して必須宣言が過剰にされる傾向にあること(前記(1)オ)からすると,UMTS規格に必須となる特許の個数として,必須宣言特許の総数である1889を採用することはできず,フェアフィールド社のレポートが必須であるかおそらく必須であ (前記(1)オ)からすると,UMTS規格に必須となる特許の個数として,必須宣言特許の総数である1889を採用することはできず,フェアフィールド社のレポートが必須であるかおそらく必須であるとする特許ファミリーの数である529を採用するのが相当である。 (エ) 小括そうすると,本件特許の本件製品2及び4の売上げ合計に対する寄与の割合は,UMTS規格に準拠していることの貢献部分の割合(前記ア)に,累積ロイヤリティの上限の割合(前記(ア))を乗じ,これを必須と認められる特許の数(前記(ウ))で除することになるから,次の計算式のとおりとなる。 (計算式)本件製品2 ●●%×5%×1/529≒●(省略)●%本件製品4 ●●%×5%×1/529≒●(省略)●%ウ FRAND条件によるライセンス料相当額そうすると,FRAND条件によるライセンス料相当額は次の計算式のとおりとなる。そして,これに対する遅延損害金については,個々の本件製品2及び4についての具体的な販売日が不明であるから,対象となる販売期間の末日である平成25年9月28日から発生するとするのが相当である。 (計算式)本件製品2 ●(省略)●円×●(省略)●%≒9,239,308 円本件製品4 ●(省略)●円×●(省略)●%≒ 716,546 円合計 9,239,308 円+716,546 円=9,955,854 円 8 結論以上によれば,被控訴人の請求は,控訴人が被控訴人に対して本件製品1及び3の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,本件特許の侵害に基づく損害賠償請求権を有しないこと,並びに,本件製品2及び4の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はそ ,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,本件特許の侵害に基づく損害賠償請求権を有しないこと,並びに,本件製品2及び4の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,本件特許の侵害に基づき控訴人が被控訴人に対して有する損害賠償請求権が,金995万5854円及びこれに対する平成25年9月28日から支払済まで民法所定の年5分の割合による金額を超えて存在しないことの確認を求める限度で理由があるから,この限度で認容し,その余の被控訴人の請求は理由がないから棄却するべきところ,これと異なる原判決は変更されるべきであるから,主文のとおり判決する。 9 「意見募集」において寄せられた意見について(1) 本件並びに本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申立てにおいては,標準規格に必須となる特許についてFRAND宣言がされた場合における効力が主要な争点となった。当裁判所は,同争点が,我が国のみならず国際的な観点から捉えるべき重要な論点であり,かつ,当裁判所における法的判断が,技術開発や技術の活用の在り方,企業活動,社会生活等に与える影響が大きいことに鑑み,当事者の協力を得た上で,国内,国外を問わず広く意見を募集する試みを,現行法の枠内で実施することとした。 そして,意見募集の対象事項については,「標準化機関において定められた標準規格に必須となる特許についていわゆる(F)RAND宣言((Fair,) ReasonableandNon-Discriminatory な条件で実施許諾を行うとの宣言)がされた場合の当該特許による差止請求権及び損害賠償請求権の行使に何らかの制限があるか。」とした。 (2) 意見募集に対しては,我が国の iscriminatory な条件で実施許諾を行うとの宣言)がされた場合の当該特許による差止請求権及び損害賠償請求権の行使に何らかの制限があるか。」とした。 (2) 意見募集に対しては,我が国のみならず諸外国からも,個人・法人・団体を問わず,数多くの意見が寄せられた。 寄せられた意見の概要は,次のとおりであった。 ア FRAND宣言された必須特許による差止請求権の制限について大まかには,次の3つの見解に属する見解を述べるものが多く見られた。 ① 何らかの制限を課すことは,むしろ当事者間の任意のライセンス契約の成立を阻害し,技術革新や標準化作業に悪影響を及ぼすことになりかねないから,相当ではないとする意見② いわゆるホールドアップ問題等を指摘し,FRAND宣言された以上は,一定程度の制限がされるべきであるとする意見③ FRAND宣言された特許権についての差止めは一切認められないとする意見イ差止請求権の制限がされるべきとした場合の法律構成について① FRAND宣言によって第三者のためにする契約が成立するとの見解と,かかる契約は成立しないとの見解の相反する二つの見解が寄せられた。両意見とも多数寄せられた。 ② 信義則や権利濫用の法理による制限を行うべきとの意見も数多く見られた。 ③ 独占禁止法を活用すべきとの意見もあったが,その数は少数であった。 ウ差止請求権が制限され得るとした場合の制限に関する判断基準についてライセンス契約を締結する意思のある実施者(willinglicensee)とライセンス契約を締結する意思のない実施者(unwillinglicensee)を分け,後者については差止請求権が認容されるべきであるが,前者については差止請求権は認容されるべきではないとの意見 ライセンス契約を締結する意思のない実施者(unwillinglicensee)を分け,後者については差止請求権が認容されるべきであるが,前者については差止請求権は認容されるべきではないとの意見が比較的多く見られたが,どのような場合であればライセンス契約を締結する意思のない実施者(unwillinglicensee)とされるべきかについての判断基準の詳細については,軌を一にする意見は見出せなかった。 エ FRAND宣言された必須特許による損害賠償請求権の制限について損害賠償請求権については,これに言及した多くの意見が,損害賠償請求権の行使は制限されるべきではない旨を述べていたが,認容される賠償額は,FRAND条件によるライセンス料相当額に限定されるべきであるとの意見も散見された。また,FRAND条件によるライセンス料をどのように定めるべきかについての方法についての意見も複数寄せられた。 オその他の論点等必須特許権者の誠実交渉義務について,これを課すべきとの意見が多かったが,その根拠を何に求めるのかについては,複数の見解があった。また,必須特許の実施者にも誠実交渉義務を課すべきであるとの意見も複数見られた。控訴人と他社との間の必須特許のライセンス契約に関する情報等を被控訴人に開示する義務があるとする見解(例えば,原判決の見解)については,妥当でないとする見解が多数寄せられた。 (3) 意見の中には,諸外国での状況を整理したもの,詳細な経済学的分析により望ましい解決を論証するもの,結論を導くに当たり重視すべき法的論点を整理するもの,従前ほとんど議論されていなかった新たな視点を提供するものがあった。 これらの意見は,裁判所が広い視野に立って適正な判断を示すための貴重かつ有益な資料であり,意見を提出するため 点を整理するもの,従前ほとんど議論されていなかった新たな視点を提供するものがあった。これらの意見は,裁判所が広い視野に立って適正な判断を示すための貴重かつ有益な資料であり,意見を提出するために多大な労を執った各位に対し,深甚なる敬意を表する次第である。 知的財産高等裁判所特別部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官設樂隆一 裁判官富田善範 裁判官清水節 裁判官小田真治 (別紙)物件目録 1「iPhone 3GS」 2「iPhone 4」 3「iPad Wi-Fi+3Gモデル」 4「iPad 2 Wi-Fi+3Gモデル」 (別紙)3GPTTS25.322 V6.9.0(抜粋) 1「4.2.1.2 Unacknowledged mode (UM) RLC entities Figure 4.3 below shows the model of two unacknowledged mode p Unacknowledgedmode (UM) RLCentitiesFigure 4.3 belowshowsthemodeloftwounacknowledgedmodepeerRLCentitieswhenduplicateavoidanceandreorderingisnotconfigured.」 (訳文)「4.2.1.2 アンアクナリッジドモード(UM)RLC エンティティ下記に示す図4.3 は,重複回避及びリオーダリングを有しない2つのアンアクナリッジモード(UM)ピアRLC エンティティを示す。」 TransmittingUMRLCentityTransmissionbufferUM -SAPReceivingUMRLCentityReceptionbufferUM -SAPRadioInterface (Uu )Segmentation &ConcatenationCipheringAddRLCheaderReassemblyDecipheringRemoveRLCheaderDCCH /DTCH – UECCCH /SHCCH /DCCH /DTCH /CTCH /MCCH /MSCH /MTCH – UTRANDCC CCCH /SHCCH /DCCH /DTCH /CTCH /MCCH /MSCH /MTCH – UTRANDCCH /DTCH – UTRANCCCH /SHCCH /DCCH /DTCH /CTCH /MCCH /MSCH /MTCH – UEUE /UTRANUTRAN /UE Figure 4.3a:Modeloftwounacknowledgedmodepeerentitiesconfiguredforusewithduplicateavoidanceandreordering」 2 「4.2.1.2.1 TransmittingUMRLCentityThetransmittingUM-RLCentityreceivesRLCSDUsfromupperlayersthroughtheUM-SAP. ThetransmittingUMRLCentitysegmentstheRLCSDUintoUMDPDUsofappropriatesize, iftheRLCSDUislargerthanthelengthofavailablespaceintheUMDPDU.」 (訳文)「4.2.1.2.1 送信UMRLC エンティティ送信UM-RLC エンティティは,上位レイヤからUM-SAP を通じてRLCSDUs を受信する。 送信UMRLC エンティティは,もしRLCSDU がUMDPDU の RLC エンティティ送信UM-RLC エンティティは,上位レイヤからUM-SAP を通じてRLCSDUs を受信する。 送信UMRLC エンティティは,もしRLCSDU がUMDPDU の利用可能なスペースの長さより大きい場合には,RLCSDU を適当なサイズのUMDPDUs に分割する。」 3 「9.2.1.3 UMDPDUTheUMDPDUisusedtotransferuserdatawhenRLCisoperatinginunacknowledgedmode. Thelengthofthedatapartshallbeamultipleof 8 bits. TheUMDPDUheaderconsistsofthefirstoctet, whichcontainsthe "SequenceNumber". TheRLCheaderconsistsofthefirstoctetandalltheoctetsthatcontain "LengthIndicators". 」 (訳文)「9.2.1.3 UMDPDUUMDPDU は,RLC がUM モードで動作しているときに,ユーザーデータを転送するために用いられる。データパートの長さは,8ビットの倍数である。UMDPDU ヘッダは,「一連番号」を含む最初のオクテットで構成される。RLC ヘッダは,最初のオクテットと,「長さインジケータ」を含むすべてのオクテットで構成される。」 Oct1ELengthIndicatorDataPADLastOctetELengthIndicator(Optional) 構成される。」 Oct1ELengthIndicatorDataPADLastOctetELengthIndicator(Optional) (1)...ESequenceNumber(Optional)(Optional) Figure 9.2: UMDPDU 4 「9.2.2.5 Extensionbit(E)Length:1bit.TheinterpretationofthisbitdependsonRLCmodeandhigherlayerconfiguration:- IntheUMDPDU, the "Extensionbit" inthefirstoctethaseitherthenormalE-bitinterpretationorthealternativeE-bitinterpretationdependingonhigherlayerconfiguration. The "Extensionbit" inalltheotheroctectsalwayshasthenormalE-bitinterpretation.- IntheAMDPDU, the "Extensionbit" alwayshasthenormalE-bitinterpretation. NormalE-bitinterpretation:BitDescription Thenextfieldisdata, piggybackedSTATUSPDUorpadding Thenextfieldis tDescription Thenextfieldisdata, piggybackedSTATUSPDUorpadding ThenextfieldisLengthIndicatorandEbit AlternativeE-bitinterpretation:BitDescription ThenextfieldisacompleteSDU, whichisnotsegmented, concatenatedorpadded. ThenextfieldisLengthIndicatorandEbit」(訳文)「9.2.2.5 エクステンションビット(E)長さ:1ビットこのビットの解釈は,RLC のモード及び上位レイヤーのコンフィギュレーションに依存する。 - UMDPDU において,最初のオクテットに含まれる「拡張ビット」は,上位レイヤーのコンフィギュレーションに応じて,通常E ビット解釈又は代替的E ビット解釈のいずれかを有する。他の全てのオクテットに含まれる「拡張ビット」は,常に通常Eビット解釈を有する。 - AMDPDU において,「拡張ビット」は,常に通常E ビット解釈を有する。 通常E ビット解釈:Bit記述 次のフィールドは,データ,ピギーバックされたステータスPDU,又はパディング 次のフィールドは,長さインジケータとEビット 代替的E ビット解釈:Bit記述 次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU 次のフィールドは,長 代替的E ビット解釈:Bit記述 次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU 次のフィールドは,長さインジケータとEビット」 5(1) 「9.2.2.8 LengthIndicator (LI)Unlessthe "Extensionbit" indicatesthataUMDPDUcontainsacompleteSDUwhichisnotsegmented, concatenatedorpadded, a "LengthIndicator" isusedtoindicatethelastoctetofeachRLCSDUendingwithinthePDU.」 (訳文)「9.2.2.8 長さインジケータ(LI)「エクステンションビット」が,UMDPDU が分割,連結,パディングのいずれもなされていない完全なSDU を含むことを示していなければ,「長さインジケータ」は,PDU の中のそれぞれのRLCSDU が終わる最後のオクテットを示すものとして用いられる。」 (2) 「Inthecasewherethe "alternativeE-bitinterpretation" isconfiguredforUMRLCandanRLCPDUcontainsasegmentofanSDUbutneitherthefirstoctetnorthelastoctetofthisSDU:-ifa 7-bit "LengthIndicator" i nSDUbutneitherthefirstoctetnorthelastoctetofthisSDU:-ifa 7-bit "LengthIndicator" isused:-the "LengthIndicator" withvalue "111 1110" shallbeused.-ifa 15-bit "LengthIndicator" isused:- the "LengthIndicator" withvalue "111 1111 1111 1110" shallbeused.」 (訳文)「UMRLC のための「代替的Eビット解釈」が設定され,かつ,RLCPDU がSDU のセグメントを含むがSDU の最初のオクテットも最後のオクテットも含まない場合であって,-7ビットの「長さインジケータ」が用いられるときには,値「111 1110」を持つ「長さインジケータ」を用い,-15ビットの「長さインジケータ」が用いられるときには,値「111 1111 1111 1110」を持つ「長さインジケータ」を用いる。」 (別紙)本件明細書図面【図1】 【図2C】 【図3】 【図4】 【図5A】 【図5B】 【図6A】 【図6B】 (別紙)引用例の図面甲3の【図1】 甲3の【図2】 甲3の【図3】 甲3の【図4】 甲3の【図7】 甲3の【図8】 甲3の【図2】 甲3の【図3】 甲3の【図4】 甲3の【図7】 甲3の【図8】 甲3の【図9】 甲39の【図5】 甲4の図2 甲4の図3
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