平成29(行ケ)35 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年2月6日 東京高等裁判所 棄却
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判決文本文7,157 文字)

- 1 - 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 平成29年10月22日施行の衆議院(比例代表選出)議員選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区における各選挙をいずれも無効とする。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要⑴ 衆議院議員総選挙の実施平成29年10月22日,衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議員総選挙を「本件選挙」という。)が施行された。 本件選挙は,平成29年法律第58号による改正後の平成28年法律第49号(以下「平成29年改正後の平成28年改正法」という。)により改定された選挙区割り(以下「本件選挙区割り」という。)の下で施行されたものである。 ⑵ 原告ら原告A,同B,同C,同D及び同Eは,いずれも本件選挙における衆議院比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)の東京都選挙区の選挙人であり,原告Fは,本件選挙における比例代表選挙の南関東選挙区の選挙人である。 ⑶ 本件請求の内容本件は,原告らが,本件選挙区割りに関する公職選挙法の規定は,公正な代表を選出する契機である選挙権の平等の保障(憲法15条1項,14条1項,44条ただし書)に反し,憲法が規定する代議制民主主義(前文,1条,- 2 -43条1項)を害する違憲・無効なものであるから,これに基づき施行された本件選挙の前記⑵の各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して,公職選挙法204条の規定に基づいて,上記各選挙を無効とすることを求めている事案である。 2 前提事実(いずれも当 き施行された本件選挙の前記⑵の各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して,公職選挙法204条の規定に基づいて,上記各選挙を無効とすることを求めている事案である。 2 前提事実(いずれも当事者間に争いがないか,当裁判所に顕著な事実である。)⑴ 原告適格原告A,同B,同C,同D及び同Eは,いずれも本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区の選挙人であり,原告Fは,本件選挙における比例代表選挙の南関東選挙区の選挙人である(当事者間に争いがない事実)。 ⑵ 本件選挙の概要本件選挙は,平成29年10月22日,平成29年改正後の平成28年改正法による改正後の衆議院議員区画定審議会設置法及び公職選挙法の規定の下で施行されたものである。本件選挙施行当時の衆議院議員の定数は465人とされ,そのうち289人が小選挙区選出議員,176人が比例代表選出議員とされ(公職選挙法4条1項),小選挙区選挙については,全国に289の選挙区(以下「小選挙区」ということがある。)を設け,各小選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項,別表第1),比例代表選挙については,全国に11の選挙区(以下「比例区」ということがある。)を設け,各比例区において所定数の議員を選出するものとされている(同法13条2項,別表第2。以下,これらの規定を併せて「本件区割規定」という。)。総選挙においては,小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条,36条)。(当事者間に争いがない事実又は当裁判所に顕著な事実) 3 当事者の主張- 3 -(原告らの主張)本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区の各選挙は,以下の違憲・無効事由 いがない事実又は当裁判所に顕著な事実) 3 当事者の主張- 3 -(原告らの主張)本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区の各選挙は,以下の違憲・無効事由があるから,無効である。 ⑴ 比例区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由1)日本全国の人口を比例代表選出議員の定数176で除した商である72万2129人を基準人数とし,この基準人数に,本件選挙区割りにより各比例区に配分された議員定数を乗じた積と,当該比例区の人口との差は,別表1の「過(+)不足(-)議員数」の「過不足人数」欄記載のとおりとなる。 東京都選挙区においては,上記差が123万9078人となり,基準人数を超え,議員数が1人を超えて足りない状況にあるから,本件区割規定は,人口比例配分の原則に照らして許容することができる限度を超え,違憲である。 ⑵ 比例区及び当該比例区内の小選挙区の合計議員数の不平等(違憲・無効事由2)本件選挙区割りにより比例区に配分された議員数と,当該比例区内の小選挙区選出議員数とを合算した数を,比例区ごとに比較すると,別表2の「H28年改正法」欄記載のとおりとなり,人口3位の東海選挙区の合計議員数が53人であるのに対し,人口4位の九州選挙区の合計議員数が55人となっており,逆転現象が生じている。また,日本全国の人口を衆議院議員の定数465で除した商である27万3322人を基準人数とし,この基準人数に,各比例区に配分された議員定数(比例代表選出議員数と小選挙区選出議員数の合計数)を乗じた積と,当該比例区の人口との差は,別表2の「過(+)不足(-)議員数」の「過不足人数」欄記載のとおりとなり,11のうち8の比例区において,上記差が基準人数を超え,議員数の過不足が生じている。したがって,本件 比例区の人口との差は,別表2の「過(+)不足(-)議員数」の「過不足人数」欄記載のとおりとなり,11のうち8の比例区において,上記差が基準人数を超え,議員数の過不足が生じている。したがって,本件選挙区割りを定める本件区割規定が民主主義憲法に違反することは明らかである。 ⑶ 小選挙区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由3)- 4 -小選挙区選挙と比例代表選挙は,選出された議員の地位,任期及び権能に差異がなく,議員が議会で行使する投票権も等価値であること,小選挙区選挙と比例代表選挙との並立制が採用されたのは,前者で民意の集約を図り,後者で民意の忠実な反映を図ることにより,両者が相まって,公職選挙法が目的とする公正かつ効果的な代表を創出せんとする趣旨によるものであること,重複立候補制の採用により小選挙区選挙と比例代表選挙との関係がより緊密なものとなっていることから,小選挙区選挙と比例代表選挙は不可分一体の「総選挙」である。したがって,本件選挙における小選挙区選挙が違憲・無効である以上,比例代表選挙も違憲・無効である。 ⑷ 南関東選挙区の区割りに関する裁量権の逸脱(違憲・無効事由4)南関東選挙区は千葉県,神奈川県及び山梨県により構成されているが,千葉県は他の2県と飛び地の関係にあり,これら3県を1つの選挙区に構成した理由は,政党の利害関係に結びついていると考えるのが相当であるから,本件選挙区割りは立法裁量権を逸脱したものである。 (被告の主張)本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区の各選挙は,以下のとおり,違憲・無効ではない。 ⑴ 比例区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由1)本件選挙の比例区間における議員1人当たりの日本国民の人口の最大較差は,四国選挙区と 各選挙は,以下のとおり,違憲・無効ではない。 ⑴ 比例区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由1)本件選挙の比例区間における議員1人当たりの日本国民の人口の最大較差は,四国選挙区と東京都選挙区との間の1対1.213にとどまり,この程度の較差をもって違憲状態にあると判示した最高裁判所の判決がないことを踏まえると,上記最大較差が憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていたとはいえない。 ⑵ 比例区及び当該比例区内の小選挙区の合計議員数の不平等(違憲・無効事由2)小選挙区選挙と比例代表選挙は異なる選挙であり,選挙制度に関する具体- 5 -的な定めが憲法の投票価値の平等の要求に反するか否かを判断する場合においても,両選挙はそれぞれ別個独立にこれを判断すべきである。 ⑶ 小選挙区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由3)小選挙区選挙と比例代表選挙は,選挙制度としての機能及び選挙の方法が異なり,両者は異なる選挙であるから,比例代表選挙の無効を求める訴訟において,小選挙区選挙の憲法適合性を問題とすることはできない。 なお,本件選挙において重複立候補制が採用されていることは,両者が異なる選挙であることを左右するものではない。 ⑷ 南関東選挙区の区割りに関する裁量権の逸脱(違憲・無効事由4)比例代表選挙の選挙区は,全国を単位とした場合には候補者数が膨大になり,都道府県を単位とした場合には比例代表制の趣旨が生かされないことになること,今日では,行政,経済その他の面において都道府県を超えた広域的な結びつきが見られること等が考慮され,全国を11に分けた広域のブロックとされたものであるから,「飛び地」の関係にある県が含まれているからといって,国会の裁量権の限界を超えるものということはで 域的な結びつきが見られること等が考慮され,全国を11に分けた広域のブロックとされたものであるから,「飛び地」の関係にある県が含まれているからといって,国会の裁量権の限界を超えるものということはできない。千葉県,神奈川県及び山梨県は,関東甲信越地域として行政,司法上同一の区別とされることがある上,千葉県と神奈川県は海上において隣接し,東京湾アクアライン等により直接結びついている。 第3 当裁判所の判断 1 比例区単位の議員数の不平等について(違憲・無効事由1)原告らは,日本全国の人口を比例代表選出議員の定数176で除した商である72万2129人をもって基準人数とし,この基準人数に,本件選挙区割りにより各比例区に配分された議員定数を乗じた積と,当該比例区の人口とを比較すると,東京都選挙区の人口は,基準人数を超える超過部分が存在する,すなわち,同区に配分された議員数が1人を超えて足りないことから,本件区割規定は,人口比例配分の原則に照らして許容することができる限度を超え,違- 6 -憲であると主張するので,以下,検討する。 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の両議院の議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項,47条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び 条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって,このような選挙制度の合憲性は,これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである。 上記のとおり,定数配分及び選挙区割りを決定するに際しては,憲法上,議- 7 -員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているが,本件選挙における比例区間の日本国民の人口較差は別表3のとおりであり,最大較差は,四国選挙区と東京都選挙区との間の1対1.213にとどまっていたこ 重要かつ基本的な基準とすることが求められているが,本件選挙における比例区間の日本国民の人口較差は別表3のとおりであり,最大較差は,四国選挙区と東京都選挙区との間の1対1.213にとどまっていたことに照らせば,比例代表選挙に係る本件選挙区割りは,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するものと認められるから,憲法が要求する投票価値の平等を損なうところがあるとは認められず,憲法に違反するところがあるとはいえない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 2 比例区及び当該比例区内の小選挙区の合計議員数の不平等及び小選挙区単位の議員数の不平等について(違憲・無効事由2及び3)原告らは,本件選挙区割りにより比例区に配分された議員数と当該比例区内の小選挙区選出議員数とを合算した議員数を,比例区ごとに比較すると,他の比例区より人口が少ないのに,議員数の多い比例区が存在するという逆転現象が生じており,また,11のうち8の比例区において,議員数の過不足が生じているから,本件選挙区割りを定める本件区割規定が民主主義憲法に違反することは明らかであり,さらに,小選挙区選挙と比例代表選挙は,不可分一体の「総選挙」であるから,本件選挙における小選挙区選挙が違憲・無効である以上,比例代表選挙も違憲・無効であると主張する。 しかし,選挙区割りを異にする二つの選挙(小選挙区選挙と比例代表選挙)の議員定数を一方の選挙の選挙区ごとに合計して当該選挙区の人口と議員定数との比率の平等を問題とすることには,合理性がないことが明らかであり,また,比例代表選挙の無効を求める訴訟において,小選挙区選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることはできない(最高裁平成11年(行ツ)第8号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1577頁,最 ,また,比例代表選挙の無効を求める訴訟において,小選挙区選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることはできない(最高裁平成11年(行ツ)第8号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1577頁,最高裁平成13年(行ツ)第233号同年12月18日第三小法廷判決・民集55巻7号1712頁参照)。 - 8 -したがって,原告らの上記主張は,その余の点について判断するまでもなく,採用することができない。 3 南関東選挙区の区割りに関する裁量権の逸脱について(違憲・無効事由4)原告らは,千葉県,神奈川県及び山梨県から構成される南関東選挙区は,千葉県が他の2県と飛び地の関係にあり,3県を1つの選挙区に構成した理由は,政党の利害関係に結びついていると考えるのが相当であるから,本件選挙区割りは立法裁量権を逸脱したものであると主張する。 しかし,前記第2の2の前提事実⑵のとおり,比例区は,全国を11に分けて設けられた選挙区であり,東京都及び北海道を除くと,府県の範囲を超える広域のブロックとされている(公職選挙法13条2項,別表第2)が,証拠(乙1,2)によれば,これは,全国を単位とした場合は,候補者数があまりに膨大になること,他方,都道府県を単位とした場合には,比例代表の趣旨が生かされないことに加え,今日では行政,経済において都道府県を超えた広域的な結びつきが見られ,今後更に国民の生活圏の拡大が予想されることによるものであると認められる。そして,千葉県,神奈川県及び山梨県は,関東甲信越地域として行政,司法上同一の区分に分類されることがあり,地理的に近接し,交通上の直接のつながりもあり,いずれも東京都に隣接する地域として共通していることは,当裁判所に顕著な事実である。そうすると,千葉県,神奈川県及び山梨県を同一ブロックとし とがあり,地理的に近接し,交通上の直接のつながりもあり,いずれも東京都に隣接する地域として共通していることは,当裁判所に顕著な事実である。そうすると,千葉県,神奈川県及び山梨県を同一ブロックとして南関東選挙区としたことは,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を欠くものとはいえず,南関東選挙区を定めた本件選挙区割りが立法裁量権の範囲を逸脱したものとは認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 4 結論よって,本件選挙区割りを定める本件区割規定が憲法に違反するとはいえないので,本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区の選挙が無効であるとは認められず,原告らの請求はいずれも理由がないから,こ- 9 -れらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官大段亨 裁判官西村英樹 裁判官松本真

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