平成16(ワ)22343 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年10月31日 東京地方裁判所
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判決文本文59,963 文字)

平成19年10月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年( )第22343号損害賠償等請求事件ワ口頭弁論終結日平成19年7月11日判決東京都昭島市<以下略>原告A同訴訟代理人弁護士北原潤一同訴訟復代理人弁護士米山朋宏同補佐人弁理士古橋伸茂東京都昭島市<以下略>被告フォスター電機株式会社同訴訟代理人弁護士小池豊同櫻井彰人同補佐人弁理士高山道夫主文 被告は,原告に対し,金474万6204円及び内金173万1110円に対する平成16年10月29日から,内金279万1534円に対する平成18年12月1日から,内金22万3560円に対する平成19年3月7日から,それぞれ支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを100分し,その99を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告に対し,金4億6865万1494円及び内金4800万円に対する平成16年10月29日から,内金2億8990万9397円に対する平成18年12月1日から,内金1億3074万2097円に対する平成19年3月7日から,それぞれ支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,スピーカ用振動板の製造方法の特許権を有する原告が,被告において使用しているスピーカ用振動板製造方法について,上記特許権の特許発明の技術的範囲に属するとして,特許法(以下「法」という。)65条に基づき,補償金として1億4034万2097円(平成15年5月1日から平成16年2月 カ用振動板製造方法について,上記特許権の特許発明の技術的範囲に属するとして,特許法(以下「法」という。)65条に基づき,補償金として1億4034万2097円(平成15年5月1日から平成16年2月5日までの上記使用に対するもの),民法709条に基づき,実施料相当額の逸失利益の損害2億8570万4716円(平成16年2月6日から平成18年11月30日までの上記使用に対するもの)及び弁護士・弁理士費用4260万4681円の合計4億6865万1494円並びに遅延損害金(①補償金のうち平成15年11月4日から平成16年2月5日までの期間に対応する960万円及び②逸失利益のうち同月6日から本訴提起日である同年10月21日までの期間に対応する3840万円に対する本訴状送達の日の翌日である同月29日から,③逸失利益のうち同月22日から平成18年11月30日までの期間に対応する2億4730万4716円及び④弁護士・弁理士費用に対する同年12月1日から,⑤補償金のうち平成15年5月1日から同年11月3日までの期間に対応する1億3074万2097円に対する原告の訴えの変更の申立書送達の日の翌日である平成19年3月7日から,それぞれ支払済みに至るまで,民法所定の年5パーセントの割合による金員)の支払を求めたのに対し,被告が,原告が発明者であることを争うとともに,被告の用いる製造方法は特許発明の技術的範囲に属さない,先使用による法定通常実施権(以下「先使用権」という。)を有すると主張し,また,損害額についても争って いる事案である。 前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠等を末尾に記載する。)⑴当事者等原告は,昭和49年に,約1300年にわたって美濃和紙の製造を行ってきた家系を持つ家に生まれ,現在,スピーカ用材料の開発等も行う商社において,ス い事実以外は証拠等を末尾に記載する。)⑴当事者等原告は,昭和49年に,約1300年にわたって美濃和紙の製造を行ってきた家系を持つ家に生まれ,現在,スピーカ用材料の開発等も行う商社において,スピーカ用材料の開発,営業,受発注等を担当する業務に就いている(甲4,20,原告本人1~2頁)。 原告の父であるBは,その父が始めた中部コーン製作所(昭和60年に株式会社となる。)を昭和47年に継いで,その後,同社と,中国の会社との合弁事業を行うなどして,抄紙技術を用いたスピーカ用振動板の製造,販売を平成11年まで行っていたが,平成12年10月1日から平成17年1月20日までは,被告の従業員であった(甲3,15,証人B1~2頁)。 被告は,昭和23年に設立された,各種スピーカの開発,製造を主たる業とする会社である。 ⑵原告の特許権原告は,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」と,その特許請求の範囲請求項1記載の発明を「本件発明」と,本件特許の願書に添付された明細書(別紙特許公報)を「本件明細書」という。)を有している(甲1,2)。 特許番号第3517736号発明の名称スピーカ用振動板の製造方法出願年月日平成13年10月5日出願公開日平成15年4月18日登録年月日平成16年2月6日特許請求の範囲(請求項1)少なくとも複数の抄紙工程を備えており,一次抄紙で堆積した紙 料を二次抄紙網に転写して,吸着せしめた状態を維持しながら,二次抄紙以降の漉き層にある紙料分散液の液中に置き,上方に排水して堆積する多層漉き抄紙法を用いた,多層構造を特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。 ⑶本件発明の分説本件発明は,以下のとおり分説される(以下,それぞれの要件を「構成要件A」,「構成要件B」等という。)。 多層漉き抄紙法を用いた,多層構造を特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。 ⑶本件発明の分説本件発明は,以下のとおり分説される(以下,それぞれの要件を「構成要件A」,「構成要件B」等という。)。 A少なくとも複数の抄紙工程を備えており,B一次抄紙で堆積した紙料を二次抄紙網に転写して,C吸着せしめた状態を維持しながら,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置き,上方に排水して堆積するD多層漉き抄紙法を用いた,E多層構造を特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。 ⑷被告の行為被告は,平成14年8月ころから現在に至るまで,別紙被告方法目録記載の方法(以下「被告方法」といい,同目録の図1以下を「被告方法図1」「被告方法図2」等と示す。なお,紙料分散液の状況,液中に置くことの説明等の細部については,当事者間に争いがある。)を使用して,スピーカ用振動板を製造し(以下,同方法によって製造された振動板を「被告振動板」という。),被告振動板を,自社製品であるスピーカに取り付け,更にそのスピーカを他の部材と組み合わせてスピーカシステムとして販売している(以下,被告振動板を組み込んだスピーカシステムを「被告製品」という。)(弁論の全趣旨)。 なお,スピーカとは,フレーム,ヨーク,マグネット,トッププレート,振動板,エッジ,ダンパ,キャップ,ボイスコイル,端子板,リード線等から構成されるものであり,スピーカシステムとは,筐体(キャビネット)に 取り付けられ,一般に単に「スピーカ」と称されることもある製品で,スピーカのほかに,グリルアッシィ,フロントパネル,キャビネット,コード,ネットワークアッシィ等で構成されているものである(乙39)。 ⑸被告方法と本件発明の構成要件との対比被告方法は,一次抄紙で堆積した紙料を二次抄紙網に転写すると ロントパネル,キャビネット,コード,ネットワークアッシィ等で構成されているものである(乙39)。 ⑸被告方法と本件発明の構成要件との対比被告方法は,一次抄紙で堆積した紙料を二次抄紙網に転写するという一次抄紙工程(被告方法図1ないし4)及び二次抄紙工程(被告方法図10)を有する,多層漉き抄紙法を用いた,多層構造を特徴とするスピーカ用振動板の製造方法であり,本件発明の構成要件A,B,D及びEを充足する(弁論の全趣旨)。 争点 ⑴原告は,本件発明の発明者か(争点1)⑵被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するかア構成要件Cの充足性(争点2ア)イ逐次性の要件の充足性(争点2イ)⑶被告は,先使用権を有するか(争点3)⑷補償金及び損害の有無並びにそれらの額(争点4) 争点についての当事者の主張⑴争点1(原告は,本件発明の発明者か)について(原告の主張)ア発明者であることの主張立証責任本件においては,原告が本件特許権を有することは当事者間に争いがなく,本件発明の発明者が原告であることは,主要事実(請求原因事実)足り得ない。 なお,仮に,原告が本件特許権を有することについて争いがあっても,原告が本件発明をしたこと,又は他人がした本件発明について原告が特許を受ける権利の承継を受けたことは請求原因事実にはならない。特許権の 発生原因となる規定は,法66条1項であるところ,同条の要件に該当する具体的な事実は,「原告を名義人とする本件特許権の設定登録がされたこと」又は「原告を名宛人として特許査定がされ,これに基づき原告を名義人(名宛人)とする本件特許権の設定登録がされたこと」に尽きるからである。これを請求原因事実としてとらえようとすると,審理の結果,原告の発明者性が認定できない場合,他の誰かに帰属するという事態は通常は考 宛人)とする本件特許権の設定登録がされたこと」に尽きるからである。これを請求原因事実としてとらえようとすると,審理の結果,原告の発明者性が認定できない場合,他の誰かに帰属するという事態は通常は考えられないから,当該特許権の帰属主体が存在しない,すなわち,当該特許権そのものが存在していないことを実質的に判断したのと同じことになり,当該特許権の無効を判断したのと同じことになる。それは,無効審決の確定があって初めて当該特許権が無効になるという仕組みを採用した特許法の基本構造に反するものといわざるを得ない。 イ原告が発明者であること(ア)発明の経緯本件発明は,約1300年にわたる美濃和紙の伝統技術を持つ家系に育ち,子どものころから抄紙技術を利用したスピーカ用振動板の製作及び評価に慣れ親しんできた原告が,留学及び仕事のために中国に在住していた平成8年8月ころに発明したものである。 平成8年当時,原告は,中部コーン製作所と中国企業との合弁会社に,通訳兼開発業務の補助者(アルバイト)として勤務していたが,同社のスピーカ用振動板の製造工場にあった複数の自動抄紙機の一部を比較的自由に使うことが許され,この抄紙機を用いてスピーカ用振動板の製作に関する自由研究を行っていた。 原告は,この研究において,音速が速くかつ内部損失が大きい振動板を製作することを目標とし,具体的には,表面だけを硬くした振動板,更に具体的には,多層抄紙による振動板を想起して,試作実験を行った。 当初,通常の,上から下への抄紙を行う自動抄紙機を用い,その抄紙槽 に2回に分けて叩解度の異なる抄紙原料を経時的に投入し,各原料投入に応じた2度の抄紙を行って2層からなる振動板を製作しようと考えた。 しかし,この方法では,2回目に投入した叩解度の高い(微細化された)原料が,1回目の抄紙紙料 る抄紙原料を経時的に投入し,各原料投入に応じた2度の抄紙を行って2層からなる振動板を製作しようと考えた。 しかし,この方法では,2回目に投入した叩解度の高い(微細化された)原料が,1回目の抄紙紙料の上に重なって目詰まりを起こしてしまい,2回目の抄紙ができないことが確認された。原告は,別の方法として,別々に抄紙した2つの抄紙紙料を重ね合わせて2層からなる振動板を作ることも思い付いたが,手漉き和紙と同じ原理により,層間剥離を生じることが容易に予想されたため,この方法を実行するには至らなかった。このような過程を経て原告がたどり着いたのが,本件発明の抄紙法である。すなわち,原告は,工場に2台あったアメリカ製の逆さ漉き自動抄紙機のうちの1台を研究のため使用することが許された際に,和紙原料を用いて逆さ漉きによる抄紙の実験を行ったところ,紙料が抄紙網に絡まり,抄紙網から紙料を容易に剥がすことができず,無理に剥がしてみたところ表面が毛羽立ってしまうという経験をしたことがあった。この経験から,原告は,下から上への逆さ漉き抄紙法では,紙料の絡まり合いが良いことを実感していた。このような経験と実感がヒントとなって,原告は,上から下へ抄紙する通常の自動抄紙機を用いて,1層目に当たる紙料を抄紙し,それを手で剥がして上記アメリカ製の逆さ漉き自動抄紙機に持っていき,その抄紙網に下から付着させ,その状態で逆さ漉きによる2層目の抄紙を行ってみた。その結果,一次抄紙の紙料層の上に細かい二次抄紙原料の繊維の層をきれいに形成することができたのである。この二次抄紙原料は染料を含むものであったが,二次抄紙による排水状態は良好であり,廃液の不純物も非常に少ないものであった。さらに,この方法で製作した2層構造の振動板における一次抄紙層と二次抄紙層との層間剥離の有無,程度を評価 ものであったが,二次抄紙による排水状態は良好であり,廃液の不純物も非常に少ないものであった。さらに,この方法で製作した2層構造の振動板における一次抄紙層と二次抄紙層との層間剥離の有無,程度を評価するために,原告は,振動板を水につけて湿らせた後に取り出して乾燥させることを繰り返し, それによる表面浮きの発生の有無を確認したところ,層間剥離は生じることなく2つの層が強固に結合していることが確認できた。 原告は,上記合弁会社において上記方法を用いた振動板を商品化することも期待したが,Bは,上記の振動板及びその製法を高く評価しつつも,当時,プラスチック製の振動板が主流になっていたことや,多層抄紙の場合,工程が増えることによる製造コストのアップの問題があることなどから,商品化は時期尚早と判断した。 このようにして,原告は,自ら本件発明を考案,完成したものである。 (イ)出願まで5年経過していることや,実験データを記録していたノートが現存しないことは,不自然ではないこと原告は,本件発明をした当時,中国に住んでおり,特許出願の方法も知らなかったため,直ちに特許出願をしようとは考えなかったものの,いずれは特許出願をしたいと考え,手元にあった日本の特許文献を参照しつつ,ノートに記載していた実験データを電子データ化してフロッピーディスクに保存したり,明細書の原案の作成を自己流で進めたりした。 原告は,平成12年6月に中国から帰国して就職し,同年暮れか平成13年初めころ,特許出願の準備を本格的に開始し,同年5月から7月ころには,明細書の原案が概ね完成した。このような経緯により,原告は,本件明細書を完成させ,同年10月5日,特許出願をしたものである。 また,もともと実験データを記載していたノートは,平成11年に中国での合弁会社が清算され,転居する際に, ような経緯により,原告は,本件明細書を完成させ,同年10月5日,特許出願をしたものである。 また,もともと実験データを記載していたノートは,平成11年に中国での合弁会社が清算され,転居する際に,当面必要のないものとして,合弁会社の相手方である中国の国有企業に一時的に預けた荷物に同梱した。データは既にフロッピーディスクに保存していたため,ノート自体は特に重要であるとは考えなかったためである。その後,上記国有企業のスピーカ用振動板の部門がなくなってしまい,荷物の行方はわからな くなってしまった。 これらの経緯については,原告の置かれていた当時の状況に照らせば,何ら不自然なところはなく,原告が本件発明の発明者であることを否定することはできない。 (ウ)被告内での開発に原告が関与していないことや,被告とのロイヤリティ支払の合意が書面化されなかったことについても,不自然な点はないこと原告は,本件発明が被告内で使用されることについて了承していたが,そのやりとりは,すべてBを介して行っていたものであり,原告が自ら被告従業員に本件発明や本件明細書の内容を伝える必要は全くなかった。 また,原告は,平成13年6月ころに,被告の取締役であるCが,本件発明が権利化された場合には被告から原告に対して合理的な金額のロイヤリティを支払うことを約束したと信じていたが,上記約束の書面化については,Bを通じて求めたものの,いまだ権利化されていない発明の利用について書面化はできないと拒否されたものである。 これらのことについて,不自然な点はない。 (被告の反論)ア被告の主張の概要本件発明は,Bによってされたものである。そして,本件発明時,Bは被告従業者であり,本件発明は,その性質上被告の業務範囲に属する。かつ,本件発明をするに至った行為は,Bの被告従業者として 主張の概要本件発明は,Bによってされたものである。そして,本件発明時,Bは被告従業者であり,本件発明は,その性質上被告の業務範囲に属する。かつ,本件発明をするに至った行為は,Bの被告従業者としての職務に属するものであるから,職務発明である。 そして,同職務発明について特許を受ける権利を原告が承継し,原告が本件発明について本件特許を受けたものである。 したがって,被告は,本件特許権について法定通常実施権を有する。 Bが単独発明者ではないとしても,本件発明は,Bと原告との共同発明 であり,その場合も,被告は,法定通常実施権を有する。 イ本件発明の発明者発明とは,「一定の技術的課題(目的)の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成しうるという効果の確認という段階を経て完成されるものであるが,発明が完成したというためには,その技術的手段が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることを要し,またこれをもって足りる」(最高裁昭和61年()第454号同年10月3日第二小オ法廷判決民集40巻6号1068頁,以下「昭和61年最高裁判決」という。)ものである。 これに照らして本件をみた場合,本件発明がBによってされたものであることは,以下の事情から明らかである。 (ア)目標管理シート(乙1)目標管理シート(乙1)は,Bの平成13年4月から平成14年3月に至る年間の開発計画とその実績を表したもので,同人の担当職務が示されている。 被告においては,この目標管理シートは,社員の勤務評定の基礎となる公式な記録として扱われている。 同目標管理シートの6項には,実行課題として「複合振動板とその製造方法」,成果 職務が示されている。 被告においては,この目標管理シートは,社員の勤務評定の基礎となる公式な記録として扱われている。 同目標管理シートの6項には,実行課題として「複合振動板とその製造方法」,成果目標・達成方法として「高音質を得ながら容易に着色する事の出来る逆さ漉き抄紙法を用いて,排水処理ゼロを目指す。一次抄紙・二次抄紙・三次抄紙までの材料・音質・コスト信頼性・カラーリング性を確立。手動機を作成。」と記載されており,本件発明の完成を実行課題にしたといえる(以下,この製造方法を「本件方法」ということもある。)。 (イ)実行課題月次報告書(乙2)実行課題月次報告書(乙2)は,Bが,目標管理シート(乙1)で計画した課題の月ごとの進捗状況を報告したものである。 これには,平成13年5月欄に「逆さ二重漉上げ抄紙法にて実験,相間剥離を乾湿サイクルにて確認後はわずかな剥離も無し,」,同年6月欄に「複合抄紙(逆さ二重漉上げ)にて5.1ch用D・Eアイテムを試作,表面に粉体(パールマイカ)および桑の微細繊維を複合する事に成功した。表面は非常に奇麗で有る。」,同年7月欄に「66㎜フィクスコーン紙の複合抄紙を実験し,これに成功した。(裏面にハウサウンド+ES繊維と振動部表面にマイカ+桑皮)」と,それぞれ記載されており,平成13年7月時点では,既に,Bが,「逆さ二重漉上げ抄紙法」によるスピーカ用振動板の製造方法,すなわち,本件発明を完成し,試作品も作ったことが示されている。 (ウ)トピックス表(乙3)トピックス表(乙3)は,対象期間である平成13年4月から平成14年3月までに発生した実行課題以外のトピックスが,Bによって記載されたものである。 同表には,平成13年(2001年)6月欄に「F課長と会合,CAR営業Gと同伴,66㎜TWの開発を受ける ら平成14年3月までに発生した実行課題以外のトピックスが,Bによって記載されたものである。 同表には,平成13年(2001年)6月欄に「F課長と会合,CAR営業Gと同伴,66㎜TWの開発を受ける。複合抄紙にて表面はシルバー色。」と記載されている。F課長とは,ソニー株式会社(以下「ソニー」という。)の社員である。同年12月欄には,「アルパイン五反田にて複合抄紙の優位性を説明,音質・色合い等の打ち合わせ。」と記載されている。したがって,同年6月には,ソニー等顧客向けに本件方法による振動板の商品サンプルにより営業活動がされていたことが明瞭である。 (エ)ソニーのFからのメール(乙4) ソニーのFからのメール(乙4)は,被告CAR機器本部営業部Gから,平成13年8月7日付けメールにてソニーのFに,提出した複合振動板の評価について問い合わせたことに対し,同月8日に送信された回答であり,上記(イ)による試作品をソニーに提出して評価を受ける段階に至っていたことがわかる。 (オ)技術報告書(乙5)技術報告書(乙5)は,目標管理シート(乙1)記載の「複合振動板とその製造方法」の開発経過を示した,B他作成による平成14年7月31日付け職務完了の報告書である。 1頁目の「方法」欄に,「裏面側を先に抄紙して置き,表面側はこの紙料に重ね漉きして二重構造の抄紙をする。一次抄紙を一般の凸漉きで抄紙して,この紙料の表面側を下向きに吸着した状態で表面用の調液中に入れ,繊維の絡みが良い逆さ漉きによって二次抄紙を行う。以後,加熱成形して完了する。」と記載されている。この方法は,本件発明のことである。 2頁目下段「市場への期待」欄に,「この二重抄紙は8年前に考案した製法ですが,当時の業界はコーン紙の樹脂化に向かっていた為,採用の見込みが無く頓挫した経緯が有り この方法は,本件発明のことである。 2頁目下段「市場への期待」欄に,「この二重抄紙は8年前に考案した製法ですが,当時の業界はコーン紙の樹脂化に向かっていた為,採用の見込みが無く頓挫した経緯が有ります。」と記載されている。すなわち,アイディアとしては8年前に有していたが,実際の発明の開発は,平成13年春から夏にかけてされたものである。 3頁目「別紙2二次抄紙の詳細」には,工程の詳細として次の記載がされ,また,4頁目に「加熱成形」の詳細が記載されている。この方法は,本件発明のことである。 ①「一次抄紙」先に裏面を凸型に下方へ排水して一般抄紙する。 ②「転写・移動Ⅰ」一次・二次の抄紙網の裏にある柱(セパレータ)の部分は同じ径にする。 ③「二次抄紙」先に抄紙した凸型紙料に重ねて,逆さ漉き抄紙をする。 6頁目「別紙3二次抄紙の工程」「二次抄紙用に開発したWS抄紙機の各工程を以下に説明する。」として,「WS型・二重抄紙機の全景」の写真とともに,「一次抄紙」,「転写・移動Ⅰ」,「二次抄紙」,「転写・移動Ⅱ」,「脱水」,「金網交換」及び「加熱成形」の詳細が記載されている。 (カ)原告からの警告書(乙6)平成16年2月23日,原告から被告に対し,「特許侵害の警告」と題する警告書が送付された。 同書には,①「貴社は,私の発明した二重抄紙のスピーカ用振動板『特許第3517736号』の権利を侵害して居ます。」及び②「私は,父Bがこの発明の振動板開発をC取締役に提案した事,平成十四年から商品化している事を確証できますっs。」と記載されている。②の発明とは,本件発明である。 (キ)原告の発明とする具体的な証拠がないことBは,上記(ア)ないし(オ)のとおり,本件発明と同内容の本件方法の確立等を自らの企画として会社に提案し,これに沿った開発行為 とは,本件発明である。 (キ)原告の発明とする具体的な証拠がないことBは,上記(ア)ないし(オ)のとおり,本件発明と同内容の本件方法の確立等を自らの企画として会社に提案し,これに沿った開発行為に従事していたことが認められるが,他方,原告自身が独自に本件発明をしたことを示す具体的な証拠は何一つない。 原告は,本件発明をしたと主張する平成8年には,22歳であり,特許出願当時でも,27歳であって,商社に勤務し,本件発明に絡むような職種には全く関係がなく,技術者としての経歴も不明である。 Bは,本件発明の方法によって作成された振動板を確認して,その音質の良さに驚いた旨述べている(甲3)が,抽象的であり,確認行為の具体的な内容,その評価等についての言及がないし,それを示す記録も ない。スピーカとして使用した場合の効果について検証した記録もない。 さらに,本件特許に係る特許出願は,発明がされたと主張する平成8年から5年を経過した平成13年10月であるところ,日々技術開発競争がされている状況で,5年間も出願しないまま放置しておくなどということは考えられないことである。しかも,出願がされたのは,Bが被告に申述した実行課題である複合振動板とその製造方法について,その第1段階が終了したころであって,Bの発明というならば,まさに首肯できる時期である。 原告自身が出願している発明は,本件発明以外には存在しない。そして,原告は,ことあるごとに振動板技術などに関し,Bからの教えを受けていると述べているのであり,本件発明についてのみ原告がBから独立してなした発明であるとは到底考え難い。仮に,原告による何らかの関与があるとしても,Bの関与なくしては本件発明はあり得ず,少なくとも原告及びBが共同発明者というべきである。 ⑵争点2ア(構成要件Cの充足性)につい あるとは到底考え難い。仮に,原告による何らかの関与があるとしても,Bの関与なくしては本件発明はあり得ず,少なくとも原告及びBが共同発明者というべきである。 ⑵争点2ア(構成要件Cの充足性)について(原告の主張)ア構成要件Cの意味(ア)「液中に置き」について構成要件Cの技術的意義は,「二次抄紙(以降)の工程において逆さ漉きを行うこと」であるから,「紙料分散液の液中に置く」ことに続いて,「逆さ漉き」の主要部分である「上方に排水して堆積」が行われることにかんがみれば,「二次抄紙網に吸着した一次抄紙による紙層が,紙料分散液に接触ないし浸漬した状態を形成すること」を意味すると解すべきである。 本件明細書には,「液中に置く」ための具体的な技術手段について何らの限定もないから,当業者は,「逆さ漉き」を行うという技術的意義 を踏まえて,これを実現するために,適宜の手段を採用することができる。 (イ)「漉き槽にある紙料分散液」について構成要件Cの技術的意義は,「二次抄紙以降の漉き槽に用意された紙料液を用いて,逆さ漉きを行うこと」に尽きるものである。かかる技術的意義に照らせば,逆さ漉きに用いられる紙料液が二次抄紙の抄紙槽に用意されたものである限り,この紙料液(以下「二次紙料分散液」という。)を「漉き槽にある紙料分散液」と評価するに十分である。 イ構成要件Cの充足性(ア)被告方法は,被告方法図7ないし12に示されるように,第2の抄紙網4に転写された1層目の紙層25を吸着させた状態を維持しながら,第2の抄紙槽7の中にあるパルプスラリーP2の液面を,第2の抄紙網4及び1層目の紙層25の下方から上方に向けての吸引力を利用して,圧力隔壁5を介して上昇させてパルプスラリーP3とし,このスラリーを1層目の紙層25及び第2の抄紙網4に対して下か 面を,第2の抄紙網4及び1層目の紙層25の下方から上方に向けての吸引力を利用して,圧力隔壁5を介して上昇させてパルプスラリーP3とし,このスラリーを1層目の紙層25及び第2の抄紙網4に対して下から上に排水し,それにより,1層目の紙層25に2層目の紙層26を堆積するという抄紙工程を含んでいる。 (イ)また,被告方法におけるパルプスラリーP3は,構成要件Cの「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」に該当する。 すなわち,被告方法図8ないし13におけるパルプスラリーP3は,第2の抄紙槽7の中にあるパルプスラリーP2のうち,その液面を,第2の抄紙網4の下方から上方への吸引力により圧力隔壁5を介して上昇させたことにより形成された部分であって,パルプスラリーP2と連続してこれと一体をなしている。したがって,パルプスラリーP3は,「第2の抄紙槽7にある」ということができる。 (ウ)そして,パルプスラリーP3は,抄紙が行われる間,1層目の紙層 25及び第2の抄紙網4に対し下方から上方に向かう吸引力により,1層目の紙層25の下方から上方に流れ続け,これにより1層目の紙層25の下側の面に2層目の紙層26が堆積する。つまり,二次抄紙の間,1層目の紙層25及び第2の抄紙網4は,パルプスラリーP3の液中に置かれた状態にある。したがって,この工程が,1層目の紙層25及び第2の抄紙網4をパルプスラリーP3の「液中に置き,上方に排水して堆積する」ものといえることは明らかである。 ウ小括よって,被告方法は,構成要件Cを充足する。 (被告の反論)ア構成要件Cの意味(ア)「液中に置き」についてa構成要件Cは,一次抄紙によって得られた紙料を吸着した状態の二次抄紙網を「液中に置」くという技術手段の要件と,これとは別に「上方に排水して堆積する」という技術 味(ア)「液中に置き」についてa構成要件Cは,一次抄紙によって得られた紙料を吸着した状態の二次抄紙網を「液中に置」くという技術手段の要件と,これとは別に「上方に排水して堆積する」という技術手段の要件とを定めている。 したがって,「液中に置き」との要件と,「上方に排水して堆積する」との要件とは別の要件である。すなわち,二次抄紙網を二次紙料分散液に置くことで,二次抄紙網の下向きの断面三角形状の凹部の空間が,二次抄紙網の外部の周囲空間から遮断され,密閉されるところ,この遮断状態により,二次抄紙網の周囲の空気が同凹部に侵入することを防ぐことができ,この状態で,同凹部内の空気が二次抄紙網の上部に排気されると,同凹部内が減圧され,その結果,二次紙料分散液が同凹部内で上昇し,同液を二次抄紙網の上方に排水して二次紙料を一次紙料に重ねて堆積することができるのである。 そうすると,「液中に置き」との要件は,二次抄紙網の下向きの断面三角形状の凹部の空間を周囲の空間から遮断するという作用を達成 するためのものであり,そうであれば,「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置き」とは,「二次抄紙網に転写・吸着された状態のものを,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に降下する」ことと同義であると解される。 b「液中に置」くとは,文字どおり,「液体の中に置く」との意味であり,液面から隔離して置かれる状態は含まない。 c本件明細書では,2頁3欄42行(「この時,紙料は抄紙網の下に吸着しており,この状態から,二次以降の紙料分散液の液中に置いて,上方に排水しながら所定の量を堆積する方法である。」)及び4欄22行(「6(抄紙台を指す。)の4(一次抄紙の紙料を指す。)と5(二次抄紙網を指す。)を漉き槽7にある二次の紙料液8の液中へ降下し,」)にお 排水しながら所定の量を堆積する方法である。」)及び4欄22行(「6(抄紙台を指す。)の4(一次抄紙の紙料を指す。)と5(二次抄紙網を指す。)を漉き槽7にある二次の紙料液8の液中へ降下し,」)において,「液中」の表現を使用しているが,いずれにおいても,「液の中」との意味以外に解釈する余地はない。 d本件特許の願書に添付された図面の,構成要件Cを説明した工程図(甲2,図1⒟)では,二次抄紙網と紙料(1層目の紙層)が,二次紙料液の液位よりも下方にあることが示されており,この図面からも,「液中」が「液の中」を意味することは明らかである。 e二次抄紙作業に当たり,1層目の紙層を液中に置くか,液面上に隔離して置くかは,単なる文理解釈の次元だけの問題ではなく,技術的にも隔絶した相違が存在するものである。すなわち,1層目の紙層を二次抄紙網に吸着したまま,二次紙料分散液の液中に置くと,二次紙料分散液(パルプスラリー)により,紙層は十分に水を含んで粘度が低下し,脆くなるところ,パルプスラリーは,パルプを均一な状態に保つためにかき回されて乱流状態になっているのであり,1層目の紙層はその乱流の衝撃を受けて崩壊したり,一部が剥離するなどの問題が生じる。そこで,被告においては,1層目の紙層を二次抄紙用の液 の中に置かず,また,第二次抄紙網の外周部には,円筒状の圧力隔壁を設ける方法を開発し,パルプスラリーの乱流の衝撃を与えないようにした結果,安定した抄紙が可能となったという経緯がある。そして,二次抄紙作業終了後に,圧力隔壁内の液面が一気に流下して,紙層が剥離することのないように,圧力隔壁内のパルプスラリーが徐々に低下するように圧力隔壁の下部にスリットを設ける方法を開発した。この方法が被告方法である。いずれの方法についても,特許査定がされ,特許権として ることのないように,圧力隔壁内のパルプスラリーが徐々に低下するように圧力隔壁の下部にスリットを設ける方法を開発した。この方法が被告方法である。いずれの方法についても,特許査定がされ,特許権として成立した(乙9,10,37,38)。このように,圧力隔壁を設けて,1層目の紙層を液面上の離隔した位置に置くという技術思想は,本件発明には全くないものであり,技術的に大きな差がある。Bも,被告方法の基本をなす圧力隔壁について,これをノウハウと述べている。 なお,原告は,二次抄紙用の液が乱流状態になることはないから,1層目の紙層を二次抄紙網に吸着したまま,二次抄紙用の液中に置くと,1層目の紙層が剥離するなどの問題が生ずる旨の被告の主張があり得ない旨非難するが,これは,被告方法の工業的な実施態様を全く無視したものである。すなわち,被告方法によって製造される振動板の2層目は,単層では作り得ないような特殊な素材を用いることで特色を出しており,具体的には,通常のパルプ分に,その2倍近くの比重を持つ,微細鱗片状の鉱物を配合しているのであり,穏やかな撹拌では分散の維持が困難であるから,被告方法では,抄紙槽底部からの間歇的な紙料液の圧送とじゃま板を用いて,抄紙槽の底部から上昇する強い乱流を作り出して均一な分散を図っているのである。したがって,強い乱流状態が生じ,それを踏まえて,圧力隔壁を用いる技術思想は,本件発明とは異なるものである。 f原告は,二次紙料分散液が1層目の紙料を透過することをもって, 液中に置くことになる旨主張するようであるが,抄紙である以上,紙料液が抄紙網を透過する(この際,紙料が抄紙網に堆積することになる。)のは当然のことであり,単に,吸着せしめた状態を維持しながら抄紙を行う旨定めれば十分であるから,液中に置くとの要件を定めている 料液が抄紙網を透過する(この際,紙料が抄紙網に堆積することになる。)のは当然のことであり,単に,吸着せしめた状態を維持しながら抄紙を行う旨定めれば十分であるから,液中に置くとの要件を定めている以上,上記状態とは別個の状態を定めているものと解さざるを得ず,原告の主張は失当である。 g以上から,「液中に置き」とは,液体の中に置くことを意味する。 (イ)「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」について原告は,被告方法のパルプスラリーP3は,パルプスラリーP2の液面が上昇して形成されたものであり,これと連続的に一体をなしているので,「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」に該当する旨主張するが,「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」との要件は,同分散液の所在場所を定めたものであり,同漉き槽から外部に流出した分散液をいうものではない。 イ構成要件Cの非充足(ア)上記のとおり,構成要件Cにおける「吸着せしめた状態を維持しながら,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置き,」とは,二次抄紙網を同液の液中(液上面より下側)に降下させることを意味する。 そして,「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」とは,同漉き槽に所在する紙料分散液を意味するのであり,被告方法では,第2の抄紙槽7にあるパルプスラリーP2がそれに該当する。 (イ)被告方法では,第2の抄紙網4の下端は,圧力隔壁固定板30の上面にあり,かつ,同固定板30は常に二次抄紙槽7より上方に位置するので,第2の抄紙網4を第2の抄紙槽7にあるパルプスラリーP2の液中に置くことはあり得ない。 (ウ)原告は,被告方法における「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」とは,圧力隔壁5内にあるパルプスラリーP3であると主張するが,上記のとおり,これは,二次抄紙以降の漉き槽から外部に 。 (ウ)原告は,被告方法における「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」とは,圧力隔壁5内にあるパルプスラリーP3であると主張するが,上記のとおり,これは,二次抄紙以降の漉き槽から外部に流出したものを同漉き槽にある紙料分散液といっているもので失当である。 また,原告の同主張は,抄紙技術における重要なパルプスラリーの特性を無視するものである。すなわち,パルプスラリーは,均一な希釈分散を達成し,維持することが特性上重要であり,スラリーの連続性あるいは含有される物質の成分ではなく,スラリーの流動性等の違いが考慮されなければならないのである。そうすると,被告方法の「第2の抄紙槽7にあるパルプスラリーP2」と,「圧力隔壁5内にあるパルプスラリーP3」の相違の有無は,単なる位置関係ないし連続性ではなく,その流動性等の動的特性の違いによりとらえるべきである。被告方法においては,第2の抄紙槽7において,均一な希釈分散を達成し,維持するため,パルプスラリーP2については,強い乱流状態を作り出している。 そして,この強い乱流状態による1層目の紙層25への悪影響を防ぐ目的で,圧力隔壁5を設けてこの隔壁によりパルプスラリーP2の強い乱流を防ぎつつ,可能な限りパルプスラリーP2と1層目の紙層25を圧力隔壁5により距離をとっているのである。このように,パルプスラリーP2に対し,圧力隔壁5の作用により変化した液の流動特性をもったパルプスラリーP3とは,抄紙技術において同一のスラリーということはできず,圧力隔壁5内にあるパルプスラリーP3は,本件発明の「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」に該当しない。 ⑶争点2イ(逐次性の要件の充足性)について(原告の主張)ア構成要件Bと構成要件Cの逐次性の要件の充足性(ア)上記のとおり,被告方法は構成要件C 以降の漉き槽にある紙料分散液」に該当しない。 ⑶争点2イ(逐次性の要件の充足性)について(原告の主張)ア構成要件Bと構成要件Cの逐次性の要件の充足性(ア)上記のとおり,被告方法は構成要件Cを充足する。 (イ)本件発明は,物を生産する方法についての発明であり,構成要件Bの転写工程と構成要件Cの二次抄紙工程との関係について経時的な要素が存するが,それは,構成要件Bの転写工程の後に構成要件Cの二次抄紙工程がくるという意味での先後関係であり,両工程の間に何らかの工程が介在することは,本件発明のクレームから排除されていない。 (ウ)被告は,被告方法において,圧力隔壁5内にパルプスラリーP3を上昇させる工程が,一次抄紙工程と二次抄紙工程の間に介在していることをもって,逐次性の要件を満たさないと主張する。 しかし,パルプスラリーP3を上昇させることは,構成要件Cの二次抄紙工程から独立した別個の工程といえる程のものではなく,第2の抄紙槽に紙料分散液を供給することと同様,二次抄紙を行うための準備的な作業にすぎない。このような準備的作業が構成要件Bの転写工程と構成要件Cの二次抄紙工程の間に介在していたとしても,これが転写工程と二次抄紙工程の経時的要素(先後関係)を損なうものではない。 (エ)したがって,被告方法は,構成要件Bと構成要件Cの逐次性の要件も充足する。 イ構成要件Cと構成要件Dの逐次性の要件の充足性被告は,構成要件Dが独立した工程を示すものであるという前提に立った上で,被告方法は,構成要件Cと構成要件Dの逐次性の要件を充足しない旨主張するが,構成要件Dの「多層漉き抄紙法を用いた」とは,構成要件Aから構成要件Cまでを備える抄紙法を用いたという意味にすぎず,構成要件Aから構成要件Cまでの工程とは別の独立した工程を意味するもので 張するが,構成要件Dの「多層漉き抄紙法を用いた」とは,構成要件Aから構成要件Cまでを備える抄紙法を用いたという意味にすぎず,構成要件Aから構成要件Cまでの工程とは別の独立した工程を意味するものではない。 したがって,被告の主張は,前提において誤りである。 (被告の反論)ア構成要件Bと構成要件Cの逐次性の要件の充足性 (ア)構成要件Bの転写工程と構成要件Cの二次抄紙工程との間には,単に先後関係ではなく,逐次性の要件がある。先の工程と後の工程との間でされる中間工程によって,後の工程の段階が維持されなくなれば,逐次性は否定される。 (イ)被告方法においては,転写工程と二次抄紙工程との間に,圧力隔壁を利用し,同隔壁内にパルプスラリーP3を上昇させる中間工程があり,この工程によって,構成要件Cの「吸着せしめた状態を維持しながら,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置き」との状態が消失する。この場合には,逐次性の要件が欠けることになる。 そして,被告方法の上記中間工程は,単なる迂回方法ではなく,被告の抄紙方法において技術的意義を有するものである。すなわち,二次抄紙網に転写・吸着された一次抄紙の1層目の紙層25は,パルプスラリー中に置かれたときには多量(約90パーセント以上)の水分を含んだのり状ないしおかゆ状の層となっているところ,第2の抄紙槽7内のパルプスラリーP2は,強い乱流状態で同槽内で上下・左右・前後に流れており,上記一次抄紙の1層目の紙層25がパルプスラリーP2に触れると,その紙層が崩れたり一部が剥離し,均一な一次抄紙が保持できなくなるのであって,この課題を解決するため,上記中間工程が設けられているのである。 (ウ)したがって,被告方法は,構成要件Bと構成要件Cの逐次性の要件を充足しない。 イ構成要件Cと構成要件 きなくなるのであって,この課題を解決するため,上記中間工程が設けられているのである。 (ウ)したがって,被告方法は,構成要件Bと構成要件Cの逐次性の要件を充足しない。 イ構成要件Cと構成要件Dの逐次性の要件の充足性(ア)方法の発明における逐次性の要件充足性の判断方法については,上記ア(ア)のとおりである。 (イ)被告方法においては,二次抄紙工程の後に「圧力隔壁5内のパルプスラリーP3の液面を降下させ第2の抄紙槽7に落とす工程」が必要と なり,その後,二次抄紙網から取り出し,金型内での成型によりスピーカ用振動板の製造(構成要件D及び構成要件E)がされる。 (ウ)したがって,被告方法は,構成要件Cと構成要件Dの逐次性の要件を充足しない。 ⑷争点3(被告は,先使用権を有するか)について(被告の主張)原告が本件発明の発明者であり,被告方法が本件発明の技術的範囲に属すると認められる場合,被告は,本件特許権に対して先使用権を有する。 ア被告先行発明及び発明知得の経路の別個独立性(ア)被告先行発明a本件発明の特許出願前である平成9年10月,被告従業員であるHが,本件発明とは別に,多層構造振動板の発明(以下「被告先行発明」という。)を完成しており(乙12の1),これは,本件発明と同一の発明であった。ただし,被告は,当時,当該発明には特許性がないと判断し,特許出願をしなかった。 b被告先行発明について記載された「調査依頼書・報告書」(乙12の1)の3項に記載された技術内容は,以下のとおりであり,同項欄の図示①,②は,別紙特許公報の図1(a)に,図示③は同図1( )に,dそれぞれ対応する。 通常の抄紙工程で1層目を抄紙する。 吸着型で抄造物を取り出す。 真空で抄造物を吸着したまま,2層目の材料スラリーの中へ入れ, 1(a)に,図示③は同図1( )に,dそれぞれ対応する。 通常の抄紙工程で1層目を抄紙する。 吸着型で抄造物を取り出す。 真空で抄造物を吸着したまま,2層目の材料スラリーの中へ入れ,2層目を抄紙する(3層目,4層目を形成する場合は,この工程をさらに追加する。) 抄造物を取り出し,加熱乾燥する。 cしたがって,被告先行発明は本件発明と同一である。 (イ)被告先行発明の知得aその後,被告は,被告先行発明を採用した動電型スピーカの発明を完成し,本件発明の特許出願前である平成13年8月29日に出願した(発明者は被告従業員D),特開2003-70095)(乙13)。 同公報には,「振動板3における『音速』を大きくし,適度な『損失』を持たせるために,損失の多い材料を裏面側の一層部分3aとし,そして,音速の大きい材料を表面側の二層部分3bとして抄紙し,お互いの長所を生かす抄紙方法とした。これは別々に抄紙して,貼り合わせたものではなく,抄紙方法により行い,接着剤などを用いていない,いわゆる多層抄きによる多層構造である。」(3欄23~30行)という記載がある。 b上記aの動電型スピーカの発明者であるDの「技術報告書」(乙14)には,「コーンの理想像」,「多層抄き方法原理」,「2層抄き振動板(振動リード2次物性)」,「密度-ヤング率」,「音速-δ」,「音速-比曲げ剛性率」,「多層抄紙胴体拡大」,「コーtanン形状」,「コーンと接合」,「ユニット」,「振動モードVCSP測定器による比較」,「システムとしての評価」など,被告先行発明の技術内容が記載されている。 c被告は,平成13年10月2日から同月6日まで,幕張メッセで開催された展示会「」(以下「本件展示会」といCEATECJAPAN 2001う。)に被告 先行発明の技術内容が記載されている。 c被告は,平成13年10月2日から同月6日まで,幕張メッセで開催された展示会「」(以下「本件展示会」といCEATECJAPAN 2001う。)に被告先行発明の実施品である振動板を組み込んだ「サテライトスピーカシステムタワー」(以下「タワー」という。)AVAVを出品した(乙15)。すなわち,本件発明に係る特許出願(平成13年10月5日)前である同月2日には,上記展示会で上記スピーカの商品を展示して宣伝し,顧客獲得に努めた。 イ事業の準備及び先使用権の範囲(ア)法79条にいう「事業の準備」とは,「特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が,その発明につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていることを意味する」(昭和61年最高裁判決)と解されている。 被告が,本件展示会に多層構造振動板を使用したタワーを出品しAVたことは,同商品について,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されているものといえる。 したがって,被告は本件特許権について,先使用権を有する。 (イ)また,先使用権の効力について,先使用権者は,その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において特許権につき通常実施権を有するものとされるが,ここにいう「実施又は準備をしている発明の範囲」とは,「特許発明の特許出願の際に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく,その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり,したがって,先 明の特許出願の際に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく,その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり,したがって,先使用権の効力は,特許出願の際に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく,これに具現された発明と同一性を失わない範囲において変更した実施形式にも及ぶ」(昭和61年最高裁判決)ものと解されている。そして,これは,先使用権制度の趣旨が,主として特許権者と先使用権者との公平を図る点にあるところ,これに照らせば,特許出願の際に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式以外に変更することを一切認めないのは,先使用権者に酷であって相当ではなく,先使用権者が自己のものとして支配し ていた発明の範囲において先使用権を認めることが,法79条の文理にも沿うからであると解されている。 被告方法は,乙12~15の多層構造のスピーカに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式といえる。 (原告の反論)ア被告先行発明の完成被告先行発明は,その根拠となる「調査依頼書・報告書」(乙12の1)において,課題の設定,試作品による効果の確認の記載もない,ヒントあるいはアイディアにすぎず,発明とはいえないものである。 イ発明知得の経路の別個独立性上記アの点をおいても,タワーに組み込まれたスピーカの振動板は,AVBが製作したものであり,その製作は,あくまでも,同人が原告から知得した本件発明に基づくものであって,被告先行発明に由来するものではない。法79条に基づく先使用権の成立要件であるところの,実施の事業ないし実施の事業の準備の対象となる発明とは,特許発明の発明者から独立した出所に由来することが必要であると解すべきであり,特許発明 ない。法79条に基づく先使用権の成立要件であるところの,実施の事業ないし実施の事業の準備の対象となる発明とは,特許発明の発明者から独立した出所に由来することが必要であると解すべきであり,特許発明の発明者から直接的又は間接的に知得した発明について実施の事業又は実施の事業の準備をしたとしても,それによって先使用権が成立するものと解することはできない。 ウ事業の実施の準備被告は,Bによるタワー用の振動板の製作をもって,事業の実施のAVAV準備がされた旨主張するが,平成13年10月の本件展示会におけるタワー展示時点では,いまだ具体的な営業引合いがあるか否かも不明であり,また,その後,上記引合いがあったとしても,直ちに,本件発明の実施品たるスピーカ用振動板を完成品として顧客に納品できるような主観的,客観的段階には至っていなかった。本件発明の実施品たるスピーカ用振動 板の本格的な生産に向けてのプロジェクトが立ち上がったのは,平成13年12月であったが,この時点では,このための抄紙機としては,実験用の手漉きの抄紙機以外に存在しなかった。この後,事業化に当たってのいくつかの未解決の課題を解決して抄紙機を完成させ,本格的な生産を開始したのは平成14年8月になってからであった。 そうすると,タワーの展示をもって,即時実施の意図が客観的に認AV識される態様,程度において表明されたとは到底いえないから,被告において,本件発明に係る特許出願がされた平成13年10月5日以前に,「実施である事業の準備」がされたということはできない。 ⑸争点4(補償金又は損害の有無及びその額)について(原告の主張)ア補償金請求権の発生本件発明の特許出願は,平成15年4月18日に出願公開されたものであるところ,被告は,その直後又は遅くとも同月30日以前に, 又は損害の有無及びその額)について(原告の主張)ア補償金請求権の発生本件発明の特許出願は,平成15年4月18日に出願公開されたものであるところ,被告は,その直後又は遅くとも同月30日以前に,上記出願公開公報を入手し,これを社内で閲覧に供することにより,本件発明が出願公開された特許出願に係る発明であることを知ったものである。このことは,被告において,被告の主要な業務であるスピーカ関連の技術分野の公開公報を,公開後およそ1か月以内に社内で回覧するシステムを採用していることから十分に推認できる。 よって,原告は,被告に対し,同年5月1日から平成16年2月5日までの,被告製品(被告振動板を主要な構成要素とするスピーカシステム)の売上について,法65条1項に基づく補償金請求権を有する。 イ被告製品の販売額被告は,被告製品を,アルパイン株式会社(以下「アルパイン」という。)及びシャープ株式会社(以下「シャープ」という。)に販売しているところ,補償金の算定の基礎となる平成15年5月1日から平成16年 2月5日までの間及び損害の算定の基礎となる同月6日から平成18年11月30日までの間の被告製品の販売額は,以下のとおりである。 (ア)平成16年2月6日から平成18年11月30日までこの期間の被告製品の販売額は,別紙1「アルパイン社販売実績」及び別紙2「シャープ社販売実績」に基づき,以下07-1-2507-1-25のとおり計算すると,23,808,726.36ドルであり,日本円換算(1ドルを120円とする換算,以下同じ。)で28億5704万7163円(1円未満切り捨て,以下同じ。)となる。 アルパイン:~の販売額合計(販売額合計のH15.11.4H18.11.30$20,089,644.60に,番の機種について,販売 7163円(1円未満切り捨て,以下同じ。)となる。 アルパイン:~の販売額合計(販売額合計のH15.11.4H18.11.30$20,089,644.60に,番の機種について,販売数量欄の$20,034,354.60 405420に単価を乗じた金額と表記載の販売額数値3,600$199,044.00( 販売数量をとして計算された数値)の差額$143,754.002,600を加えた金額)-~の販売額合計(後$55,290.00H15.11.4H16.2.5$529,100.00記(イ)aのとおり)=…A$19,560,544.60シャープ:~の販売額合計-~H15.11.4H18.11.30$7,617,473.36H15.11.4H16.2.5$3,369,291.60の販売額合計(後記(イ)bのとおり)=…B$4,248,181.76合計:$23,808,726.36A+B=(イ)平成15年5月1日から平成16年2月5日まで平成15年11月4日から平成16年2月5日までの被告製品の販売額は,別紙1及び2に基づき,以下のとおり計算すると,3,898,391.60ドルである。 アルパイン:機種№販売数量単価()販売額()US$US$3646581,90063.00119,700.003646603,15060.00189,000.00364662 57.0039,900.003646631,30037.0048,100.003646592,60034.0088,400.00364661 32.0019,200.00364656 124.0024,800.00529,100.0 100.003646592,60034.0088,400.00364661 32.0019,200.00364656 124.0024,800.00529,100.00合計aシャープ:機種№販売数量単価()販売額()US$US$39548111,75027.6078324,391.650039548211,75024.5816288,833.800039548421,35026.4413564,521.75503970483,10045.8833142,238.230039704916,60044.3280735,844.800039777129,00040.82841,184,023.60003986582,92044.3280129,437.76003,369,291.5950合計b3,369,291.60≒そして,平成15年5月1日から同年11月3日(約6か月)の被告製品の販売額は,上記の期間(約3か月)の販売額の2倍である7,796,783.19ドル,日本円換算で9億3561万3982円と推認される。 (ウ)販売額について,被告は,別紙1及び2の数値は誤りであり,別紙3「アルパイン社販売実績」及び別紙4「シャープ社販売実07-4-11績」記載の数値が正しいものである旨訂正するが,この被告07-4-11の主張は,自白の撤回に当たり,原告は,これに対し,異議を述べる。 また,その差は10億円以上あり,これを誤って主張することについ ては,重大な過失があり,錯誤によるとしても,撤回は許されない。 さらに,上記自白の撤回自体,民事訴訟法157条の時機に後れた攻撃防御方法に該当するから,却下されるべきである。 ウ特許権の侵害部 ては,重大な過失があり,錯誤によるとしても,撤回は許されない。 さらに,上記自白の撤回自体,民事訴訟法157条の時機に後れた攻撃防御方法に該当するから,却下されるべきである。 ウ特許権の侵害部分を不可分一体に含む製品が販売された場合における,法65条1項の補償金額及び法102条3項の損害額の算定方法特許権の侵害部分を不可分一体に含む被告製品が販売された場合における法102条3項の実施料相当額の算定については,被告製品の販売額に,侵害部分の同製品全体に占める割合(以下「寄与率」という。)を乗じたものに,特許発明の適正な実施料率を乗じて算出される。 この方法は,法65条1項に基づく補償金額の算定についても,同様に該当すると解すべきである。 エ被告製品における被告振動板の寄与率スピーカシステムにおいてスピーカは本質的要素であり,スピーカにおいて振動板は本質的要素である。これは,振動板が空気を振動させ,リスナーの耳に音を直接伝えるという機能を果たすことから明らかである。振動板の善し悪しがスピーカの音の善し悪しを決定するから,スピーカ用振動板はスピーカにとって最も重要なパーツである。 このように,①一般論として,スピーカシステムにおいてスピーカ用振動板は最も重要な構成部材であることに加え,②被告製品の最大の特徴は「当社独自の新開発,多重抄紙製法を用いた多層構造を持つ振動板」,すなわち,本件発明の方法によって製造された被告振動板にあり,被告はこの点を需要者へのセールスポイントとしていたこと,そして,③需要者もこの点を被告製品の購入に当たり最も重視していたと考えられること,からすると,被告製品における被告振動板の寄与率は100パーセントと解すべきである。 オ本件発明の相当実施料率 法102条3項は,平成10年法律第51号による改正前は ていたと考えられること,からすると,被告製品における被告振動板の寄与率は100パーセントと解すべきである。 オ本件発明の相当実施料率 法102条3項は,平成10年法律第51号による改正前は「特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」と定められていたところ,同改正によって「通常」との文言が削除された。そして,その理由の一つとして,特許侵害抑止へのインセンティブが考慮された。このような改正経緯に照らせば,法102条3項に基づく損害額算定のための相当な実施料率は,業界相場の平均値(イニシャル無しの場合)を超えるのが大原則というべきである。 他方,本件発明は,本件明細書に記載されているとおり,浄化処理後の排水量を75パーセント以上,産業廃棄物の量を89パーセント以上,それぞれ削減することを可能とし,浄化処理費,給水費,材料費など費用の節約をしながら,自然環境への負荷を軽減する,さらには,表面側に高ヤング率の適した材料を施し,裏面側に内部損失と曲げ剛性の適した材料を施して,広範囲に材料を選び,多様な音造りを提案することができるという,優れた作用効果を奏する。振動板の技術的価値を左右する要素としては,製法以外に材料の選択もあり得るが,被告振動板においては,本件発明の方法を使うことによって材料選択の自由度が高まったという点に意義があるのであって,材料の選択自体には特許性を有するような特徴はない。 したがって,本件発明は,被告振動板の特徴をもたらすのに必要不可欠な役割を果たしており,被告振動板,ひいては,被告振動板をセールスポイントとする被告製品の収益力の主要な源泉になっていると評価できるものであり,本件発明は,スピーカ用振動板の製法に関する画期的な基本発明であり,極めて価値の高いものというべきである。 以上からすれば, ントとする被告製品の収益力の主要な源泉になっていると評価できるものであり,本件発明は,スピーカ用振動板の製法に関する画期的な基本発明であり,極めて価値の高いものというべきである。 以上からすれば,適正な実施料率は,被告製品の販売価格に被告振動板の寄与率を乗じて算出した額の10パーセントと解するのが相当である。 カ被告の主張に対する反論被告は,被告振動板の部品費に10パーセントの利益を乗せた額を被告 振動板販売価格として,これを基礎に実施料率1パーセントを乗じて実施料相当額を算出すべきである旨主張するが,被告製品は,被告振動板を含めて被告の子会社によって製造されているのであるから,それらの費用をベースに,実在しない「振動板の販売価格」なるものを議論する余地はない。 また,被告の主張を前提に計算すると,実施料相当額は,以下のとおり,非常識な金額となり,被告主張の誤りを示すものとなっている。 (別紙1及び2を前提に計算した実施料相当額)アルパイン向け振動板部品費合計443,616.77ドルの10パーセント増加した金額の1パーセントである4,879.78ドル及びシャープ向け振動板部品費合計10,512.75ドルの10パーセント増加した金額の1パーセントである115.64ドルの合計は,4,995. 42ドルであり,1ドル120円で換算すると,約60万円であって,33億円余の売上げに対して,わずか60万円となる。 (別紙3及び4を前提に計算した実施料相当額)アルパイン向け振動板部品費合計111,554.40ドルの10パーセント増加した金額の1パーセントである1,227.10ドル及びシャープ向け振動板部品費合計11,392.40ドルの10パーセント増加した金額の1パーセントである125.32ドルの合計は,1,352. 42ドルであり,1ドル12 トである1,227.10ドル及びシャープ向け振動板部品費合計11,392.40ドルの10パーセント増加した金額の1パーセントである125.32ドルの合計は,1,352. 42ドルであり,1ドル120円で換算すると,約16万円であって,21億円余の売上げに対して,わずか16万円となる。 キ小括(ア)補償金平成15年5月1日から平成16年2月5日までの被告製品の販売額は,14億0342万0974円(円+円)で935,613,982467,806,992ある。そして,この金額に,被告振動板の寄与率100パーセント及び 実施料率10パーセントを乗じると,補償金は,1億4034万2097円(円××)となる。 1,403,420,974 0.1(イ)実施料相当の損害平成16年2月6日から平成18年11月30日までの被告製品の販売額は,28億5704万7163円であり,この金額に,被告振動板の寄与率100パーセント及び実施料率10パーセントを乗じると,実施料相当の損害は,2億8570万4716円(円××2,857,047,163 )となる。 0.1(ウ)弁護士・弁理士費用上記(ア)及び(イ)の合計4億2604万6813円の10パーセントである4260万4681円が,本件と相当因果関係のある弁護士・弁理士費用というべきである。 (エ)合計(ア)から(ウ)までの合計は,4億6865万1494円となる。 (オ)遅延損害金当初請求していた,補償金のうち960万円及び実施料相当の損害のうち3840万円については,訴状送達の日の翌日である平成16年10月29日から,実施料相当の損害の残金2億4730万4716円及び弁護士・弁理士費用4260万4681円については,不法行為後である平成18年12月1日から,補償 送達の日の翌日である平成16年10月29日から,実施料相当の損害の残金2億4730万4716円及び弁護士・弁理士費用4260万4681円については,不法行為後である平成18年12月1日から,補償金の残金1億3074万2097円については,原告の訴えの変更の申立書送達の日の翌日である平成19年3月7日から支払済みに至るまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の反論)ア原告の主張に対する認否・反論(ア)原告の主張に対する認否 原告は,スピーカシステムの販売実績を基礎に,本件発明の寄与率を100パーセントとした上で,販売価格の10パーセントが実施料相当額であるとしているが,否認する。これは,振動板自体の販売価格(部品費に10パーセントの利益を上乗せした金額)の14倍にもなり得る金額であり,およそ考えられない数字である。 (イ)原告の主張する寄与率(100パーセント)について原告は,法102条1項に関する議論をも根拠としつつ,被告振動板のスピーカシステムに対する寄与率は100パーセントであるとしているが,原告の逸失利益を算定する1項と実施料相当額を規定する3項とでは,算定の観点を異にする。実施料相当額は,製品(振動板)の製造販売に当たっての経費に該当するものである。実施料相当額が当該製品の販売額を上回るなどということは到底理解できない。 また,スピーカシステムにおける振動板は,同システムを構成する一部材であるスピーカの更にその一部材にすぎない。 そして,一般に製品を顧客に浸透させるためのマーケティングの活動要素としては,製品,価格,販促,流通の4つがあるが,スピーカの価値のうちの音質は,上記4要素のうちの製品の,ごく一部の機能である。 さらに,スピーカシステムの音質は,吸音材,筐体(キャビネット 活動要素としては,製品,価格,販促,流通の4つがあるが,スピーカの価値のうちの音質は,上記4要素のうちの製品の,ごく一部の機能である。 さらに,スピーカシステムの音質は,吸音材,筐体(キャビネット),端子,ネットワーク,スピーカ及びコードにより影響を受けるものであって,単にスピーカにより決まるものではない。また,被告振動板は,「」と呼ばれる低音用スピーカに組み込まれるものであるが,WOOFERスピーカには,このほかに,ツィーター()及びパッシブTWEETER()があり,これらの組み合わせで所望の音質をPASSIVERADIATOR得ている。また,スピーカの音質特性は,エッジ,振動板,ダンパー,キャップ,ボイスコイル,フレーム,磁気回路の7つの要因に関係しており,振動板が音質特性に関係するのは,振動板の材質,重量,形状及 び構造であり,上記の他の音質決定要素並びに製造された振動板の材質,重量,形状及び構造が同一であれば,たとえ製造方法が異なっていてもスピーカの音質は変わらない。 (ウ)原告の主張する実施料率(10パーセント)について原告は,ラジオ,テレビ,その他の通信音響機器に関する平均実施料率等を踏まえ,実施料率が10パーセントであるとしているが,平均料率は,件数がわずかであっても特殊事情で著しく高い又は低い料率の例が存在することによって変動してしまうし,上記分類に係る実施料率の最頻値は1パーセントである。 被告が,ある企業からイヤホーンに関する合計5件の特許ないし実用新案の実施許諾を受けた際の実施許諾契約では,全体で,販売価格の2パーセントとされている。 そもそも,本件発明と同一の発明は,平成9年の時点で,被告において既に開発済みのものであるし,加えて,本件は,原告の父であるBが被告に勤務し,被告製品の製造に 販売価格の2パーセントとされている。 そもそも,本件発明と同一の発明は,平成9年の時点で,被告において既に開発済みのものであるし,加えて,本件は,原告の父であるBが被告に勤務し,被告製品の製造に携わり,被告が事業化に移行しようとしたときに,その事業化に携わっていたBの子である原告が,本件発明を自らの発明として出願した上,父の勤務先である被告に対し権利行使をし,父がそれを全面的にバックアップしているという,およそ理解し難いケースなのであるから,このような特異な事情にかんがみれば,被告が高額の実施料を支払うことは相当ではない。 イ被告の主張(ア)被告の営業形態被告は,振動板を独立に販売しているものではなく,振動板を取り付けたスピーカとして,又は,更にそのスピーカを他の部材と組み合わせたスピーカシステムとして,販売している。被告振動板を取り付けたスピーカについては,スピーカシステムの形態で,アルパイン及びシャー プに販売されている。 被告製品は,被告振動板を含め,香港にある被告の子会社において製造され,被告は,同社から輸入するものである。 (イ)被告の販売実績平成15年5月1日から平成18年11月30日までの,被告製品の販売実績は,アルパイン向けが別紙3,シャープ向けが別紙4のとおりである。 別紙3及び4の,各項目の内容は,以下のとおりである。 ①「」欄は,被告において任意に付した番号である。 NO.②「機種」欄は,販売した機種番号である。 NO.③「販売数量」欄及び「販売数合計」欄は,原告の主張に対応した販売数量を示したものである。 ④「単価」欄は,スピーカシステムの販売単価であり,これに販売台数を乗じたものが「販売額合計」欄である。 ⑤「スピーカ使用数」欄は,1個のスピーカシステムにおけるスピーカの使用個数 ものである。 ④「単価」欄は,スピーカシステムの販売単価であり,これに販売台数を乗じたものが「販売額合計」欄である。 ⑤「スピーカ使用数」欄は,1個のスピーカシステムにおけるスピーカの使用個数である。 ⑥「スピーカ部品費」欄は,スピーカシステムの部品としてのスピーカの価格である。 ⑦「スピーカ部品費合計」欄は,スピーカ部品費に使用個数及び販売数を乗じた金額である。 ⑧「振動板部品費」欄は,振動板部分の部品価格である。 ⑨「振動板部品費合計」欄は,振動板部品費に使用個数及び販売数を乗じた金額である。 なお,被告は,当初,販売実績について,別紙1及び2のとおり開示したが,平成15年5月1日から同年11月3日までの販売実績を追加するとともに,同月4日以降の実績について,一部誤りがあった(アル パイン向けの販売実績について,日本を経由することなく,中国から諸外国に販売した販売台数,販売金額を含めていたことと,シャープ向けの販売台数,販売金額に漏れがあったこと)ため,別紙3及び4のとおりに訂正を行った。これは,裁判所の指示に基づいて算出した被告製品の実績値であり,損害賠償の算出に当たっての資料となる数値にすぎないから,自白の対象となるものではなく,原告が主張するような自白の撤回には当たらない(仮に自白の対象となるとしても,錯誤によるもので,撤回は許される。)。 (ウ)実施料相当額計算の基礎となる数値実施料算定の基礎となる数値は,振動板の価格であるが,上記(イ)において示した金額は,振動板の部品費であり,販売価格とするためにはこれに利益額を乗せるべきであるところ,被告製品においては,ほぼ10パーセント程度が利益額として考慮されているから,10パーセントを加えた金額を基礎とすべきことになる。 (エ)実施料率被告における実施契約 額を乗せるべきであるところ,被告製品においては,ほぼ10パーセント程度が利益額として考慮されているから,10パーセントを加えた金額を基礎とすべきことになる。 (エ)実施料率被告における実施契約は,振動板を直接対象にしたものはないが,他の分野でもせいぜい2~3パーセントであること,本件発明は平成9年に既に被告内で開発されているもので,改良発明の域を出ないこと,上記ア(ウ)に記載した本件における特異な状況を勘案すれば,実施料率は,被告振動板の販売価格の1パーセントと考えるべきである。 第3争点に対する当裁判所の判断 争点1(原告は,本件発明の発明者か)について⑴本件発明の発明者本件では,原告が本件特許権を有することは,当事者間に争いがないが,本件発明については,原告が,発明者は原告であると主張し,被告は,Bが被告の従業員であった際に発明したものであり,本件発明が職務発明となる と主張する。 この点については,特許権に基づく請求をする側において,自らが当該特許発明の発明者であること,又は他人がした当該特許発明について特許を受ける権利を承継したことを立証すべきであると解されるところ,本件では,以下のとおり,原告が本件特許権に係る発明の発明者であると認められる。 なお,原告は,上記事実を請求原因事実ととらえると,発明者を認定できない場合に,裁判所において,特許権が存在しない,あるいは,無効であるとの判断をしたことになって特許法の基本構造に反する結果となる旨主張するが,裁判所としては,訴訟法上,発明者が原告であること等を認めるに足りる証拠がないという判断をするのみで,何ら,特許権の不存在や無効を判示するものではなく,特許法の基本構造に反する結果をもたらすことはないというべきである。 ア本件発明に至る経緯原告の家系は,古くから美 がないという判断をするのみで,何ら,特許権の不存在や無効を判示するものではなく,特許法の基本構造に反する結果をもたらすことはないというべきである。 ア本件発明に至る経緯原告の家系は,古くから美濃和紙の製造を伝統的な家業としており,原告の父であるBは,その父から引き継いだ中部コーン製作所や,その後,同社と中国の会社との合弁事業による会社(中日合作音盆分公司,以下「合弁会社」という。)において,抄紙技術を用いたスピーカ用振動板の製造,販売を行っていた(甲3,15,証人B1~2頁)。 原告は,昭和49年に生まれ,平成5年から中国天津市において語学研修を行った後,平成7年8月ころに上海市の大学に移籍し,同年10月ころから,合弁会社の仕事で上海市に常駐するようになったBと同居するようになり,合弁会社において通訳の仕事をしたり,抄紙技術を用いたスピーカ用振動板製作の研究を行うなどしていた(甲4,15,20,原告本人7~8頁)。 原告は,平成9年8月ころに,合弁会社に正式に勤務することとなるが,それまでの間も,上記と同様,合弁会社に手伝いや研究で出入りをしてお り,合弁会社に設置されていた,上方から下方への排水をする通常の抄紙機1台を自由に使用することができたほか,製造用に使用されていた逆さ漉きをする機械についても,使用されていない時間帯などに,生産部門の許可を得て利用することができた(甲4,原告本人11頁)。 原告は,平成8年8月ころ,発生した音を吸収する内部損失の効果を犠牲にしないようにしつつ,空気中に伝わる振動の時間を短くするために表面を固くするという構成の振動板を製作することを目的として,表面とそれ以外とを分けて抄紙する,多層漉きの方法を模索していた。まず,上方から下方に排水する通常の抄紙機を用いて紙料を2回に分けて投入する方法を するという構成の振動板を製作することを目的として,表面とそれ以外とを分けて抄紙する,多層漉きの方法を模索していた。まず,上方から下方に排水する通常の抄紙機を用いて紙料を2回に分けて投入する方法を試みたが,2回目の紙料が目詰まりを起こして脱水がうまく行われなかった。また,個別に抄紙したものを重ね合わせて成型することは,乾燥後に剥離する可能性が大きいと予測されたので試みなかったが,その段階で,以前に,逆さ漉きの機械で試作をした際に,抄紙網に接していた紙料層の表面の繊維が縦に突き刺さるような状態であったことを思い出し,1層目は通常の抄紙機で抄紙を行い,2層目の抄紙を逆さ漉きで行うこと,すなわち,本件発明による方法を思い付いて,この方法により振動板の試作をしてみた。その結果,きれいに抄紙することができ,層間剥離も生じず,二次抄紙の排水も不純物の少ない状態であることが判明した。そこで,紙料の素材を変えるなどして実験を行い,実験のデータをノート等に記録した(原告本人13~20頁)。 イ発明後の事情原告の発明した上記抄紙方法は,コスト面等の考慮から,合弁会社において実用化することを見送られたが,品質の面でBから高い評価を受け,特許となる可能性も示唆されたので,原告は,特許出願を考えて,実験データ等を電子データ化して,フロッピーディスクに保存し,その後,コンピュータのハードディスクに保存するなどしたが,データを記録したノー トなどは,中国内での転居の際に中国の会社に預け,その後,引き取ることなく帰国することとなった(証人B19~20,45頁,原告本人19~22頁)。 原告は,本件発明による方法を中国で特許出願をすることも検討したが,友人の助言もあり,日本に帰国した後に出願することとして,平成12年の帰国後,同年終わりか,平成13年初めころ 人19~22頁)。 原告は,本件発明による方法を中国で特許出願をすることも検討したが,友人の助言もあり,日本に帰国した後に出願することとして,平成12年の帰国後,同年終わりか,平成13年初めころに,特許庁に出願の相談に赴いて,資料を収集するなどしていた(原告本人21~23頁,甲21,22)。 そして,原告は,専門用語についてBの助言を受けるなどして,平成13年5月から同年7月ころまでに,出願の書類を作成したが,その後直ちに出願はしないままに推移し,同年10月5日に本件発明についての特許出願を行った(甲1,原告本人23~25頁)。 その後,原告は,フロッピーディスクに保存していた,発明当時の実験データ等を,改めてにまとめ直すなどしたが,当初データを保存しCD-Rていたフロッピーディスク自体は処分し,現在残されていない(甲7)。 ウ小括以上からすれば,本件発明の発明者は原告であり,発明者である原告が特許出願を行い,本件特許権を取得したものと認められる。 ⑵被告の主張について被告は,Bが,本件特許の出願前に,被告従業員として本件発明の完成を実行課題として掲げ,平成13年4月以降,同年7月ころまでの間に,本件発明を完成させ,その後,試作品を作成し,営業活動等をするに至っていること,原告が発明者であることを示す具体的な証拠はないこと等を指摘して,Bが本件発明の単独発明者であり,仮にそうでないとしても,B及び原告が共同発明者である旨主張する。 確かに,Bは,平成11年に中国の合弁会社を清算し,その後日本に帰国 して,平成12年10月1日に被告に嘱託社員として入社し,開発部に所属して,振動板の開発等に携わっていたものである(甲3,乙36の1,36の2,証人B1~2頁)ところ,Bから被告に提出された,研究開発の目標,進捗状況等を報告す 告に嘱託社員として入社し,開発部に所属して,振動板の開発等に携わっていたものである(甲3,乙36の1,36の2,証人B1~2頁)ところ,Bから被告に提出された,研究開発の目標,進捗状況等を報告するための目標管理シート(乙1),実行課題月次報告書(乙2),トピックス表(乙3)及び技術報告書(乙5)には,平成13年4月から平成14年3月に至る1年間の実行課題として「高音質を得ながら容易に着色する事の出来る逆さ漉き抄紙法を用いて,排水処理ゼロを目指す。 一次抄紙・二次抄紙・三次抄紙までの材料・音質・コスト信頼性・カラーリング性を確立。手動機を作成。」(乙1)との記載,進捗状況として,平成13年5月に「逆さ二重漉上げ抄紙法にて実験」(乙2),同年7月に「66㎜フィクスコーン紙の複合抄紙を実験し,これに成功した。」(乙2)との各記載,実行課題以外のトピックスとして,同年6月に「F課長と会合,営業Gと同伴,66㎜の開発を受ける。複合抄紙にて表面はシルCARTWバー色。」(乙3)との記載,平成14年7月31日付けの職務完了の報告として,「裏面側を先に抄紙して置き,表面側はこの紙料に重ね漉きして二重構造の抄紙をする。一次抄紙を一般の凸漉きで抄紙して,この紙料の表面側を下向きに吸着した状態で表面用の調液中に入れ,繊維の絡みが良い逆さ漉きによって二次抄紙を行う。以後,加熱成形して完了する。」(乙5)等の記載があり,Bが,本件発明と実質的に同一の内容を実行課題として,被告内で研究開発を進め,試作品を作るとともに,本件発明の実用化に係る営業活動を行うなどしていたことが認められる。そして,上記技術報告書(乙5)には,上記記載のほか,「この二重抄紙は8年前に考案した製法ですが,当時の業界はコーン紙の樹脂化に向かっていた為,採用の見込みが無く頓挫した経緯 いたことが認められる。そして,上記技術報告書(乙5)には,上記記載のほか,「この二重抄紙は8年前に考案した製法ですが,当時の業界はコーン紙の樹脂化に向かっていた為,採用の見込みが無く頓挫した経緯が有ります。」と記載され,また,Bに関する,平成14年3月11日から同年9月10日までの業績評価表(乙24)の,「本人コメント欄」には,「昨年10月に開始した二重抄紙製造方法は,アルパイン社のオ ーダーを獲得。経済効果4億2千万円を上げました。この抄紙方法は96年に考案したもので,過去に前例の無い音造り,外観,無排水抄紙を可能にする画期的な製法です。…実績評価について,当二重抄紙の経済効果は100億以上有ると想定します。よって,年俸契約ですが相応の報奨金を要望します。」と記載されており,Bが自ら発明したことを前提とするような記載も認められる。 また,原告は,平成8年当時,Bのもとで,中国の合弁会社の通訳をしたり,抄紙機等を用いて自由に研究していたが,抄紙や振動板製作の仕事に就いたことはないこと(甲4,20),本件発明に至る実験の経過,得られたデータの記録等の当時の資料は,一切残っていないこと,Bは,本件発明に係る方法の開発作業に従事していた際,直属の上司で,当時,開発部の次長であったJや,その他の同僚等に対して,原告が本件発明の発明者であることや,原告が本件発明について特許出願を予定していることなどを全く話しておらず,特許出願後1年程度した時点で,被告の開発部担当取締役でBの被告入社を取り計らったCに,本件発明についての特許出願を話したにすぎないこと(乙36の1,36の2,証人C6~7頁,証人J12頁)等の事情も認められる。 上記の諸事情によれば,Bは,本件発明と実質的に同一の内容の発明について研究開発を行い,その発明の実用化を,被告内 いこと(乙36の1,36の2,証人C6~7頁,証人J12頁)等の事情も認められる。 上記の諸事情によれば,Bは,本件発明と実質的に同一の内容の発明について研究開発を行い,その発明の実用化を,被告内での自己の課題として設定して,積極的に商品化を進める一方で,本件発明に係る特許出願から1年程度後まで,被告内で,本件発明が原告により既に完成していたものであることや,特許出願予定であること,又は,特許出願がされたことを明らかにしなかったと認められるところ,このようなBの言動は,結果として被告の原告に対する賠償責任を導きかねないものであり,企業における従業員として,通常ではおよそ想定し得ないものであると言わざるを得ない(原告は,開発を進めるに当たって,BからCに,原告により本件発明が発明されたこ と等を話し,Cから,特許権が成立すればロイヤリティを支払う旨の約束を得ていたと主張し,原告の供述及びBの証言も,それに沿うものとなっている。しかしながら,BからCに対し,発明の技術的内容を説明したり,原告の特許権として成立した後の対応について具体性をもった話がされたことを裏付ける事実は認められず,仮に,これらの点について言及されたことがあったとしても,それをもって,企業として当該事情を了承していたということは到底できないことにかんがみれば,上記の供述及び証言を採用することはできず,その他,原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。)。 しかしながら,自らが発明者であるかのようなBの上記の不自然な言動は,B自身の被告内での地位を確立するために行われたものと推測されないではなく,このようなBの不自然な言動をもっても,上記⑴において認定した,原告が発明者であるという事実を覆すものとまではいえないから,本件発明の発明者がBである,又は,Bと原告とが共同発 測されないではなく,このようなBの不自然な言動をもっても,上記⑴において認定した,原告が発明者であるという事実を覆すものとまではいえないから,本件発明の発明者がBである,又は,Bと原告とが共同発明者であるということはできない。 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 ⑶まとめ以上から,本件発明の発明者は原告であると認められる。 争点2ア(被告方法は本件発明の技術的範囲に属するか-構成要件Cの充足性)について⑴構成要件Cの意味ア「液中に置き」について(ア)本件明細書には,発明の詳細な説明として,要旨,以下のような説明がされている。 音響機器に用いるスピーカ用振動板の製造方法の従来の技術としては,漉き槽の底部に所定の形状をした抄紙網を配置し,この槽内に紙料液を投入し,下方へ排水して,抄紙網上に紙料を堆積する抄紙法を用いてお り,抄紙した紙料は転写型に吸着して抄紙網から取り出した後,乾燥するが,通常は単一構造の抄紙である(【従来の技術】【0003】)。 従来の製造方法による振動板は,単一構造であるから,従来の音質を超える音造りが難しい。また,以前に考案された多層構造では,同一材料の堆積した物,積層の境界が不明確な物,紙料に条件がある物などの制約がある。そこで,このような制約のない,新たな多層構造の振動板の出現が望まれていた(【発明が解決しようとする課題】【0009】)。 上記の課題を解決するため,本発明の製造方法は,目的とする振動板の重量を分割し,裏面側になる一次抄紙の工程と表面側になる二次抄紙以降の工程に分けて,多層漉きする抄紙法を特徴とするものである。 まず,一次抄紙で堆積した紙層は,水素結合する前の膨張した湿紙の状態を保ち,網目状に荒れた紙料の裏面側へ堆積するように,二次抄紙網へ転写しておく。このと ,多層漉きする抄紙法を特徴とするものである。 まず,一次抄紙で堆積した紙層は,水素結合する前の膨張した湿紙の状態を保ち,網目状に荒れた紙料の裏面側へ堆積するように,二次抄紙網へ転写しておく。このとき,紙層は抄紙網の下に吸着しており,この状態から,二次以降の紙料分散液の液中に置いて,上方に排水しながら,所定の量を堆積する方法である。この抄紙法の長所は,一次抄紙の紙層が十分に水を含んだところへ,二次以降の紙料液に浮遊している繊維が絡み付いて堆積することにある。このため,乾燥後は,積層した境界が明確に判別できる多層構造になり,機械的な結合と水素結合によって,強固に一体化した振動板ができる(【課題を解決するための手段】【0011】)。 (イ)本件明細書における以上のような説明を踏まえて,構成要件Cの意味について検討すると,構成要件Cは,一次抄紙によって得られた紙層を,二次抄紙網に転写し,吸着された状態を維持しながら,二次の紙料分散液の液中に置いて,二次の紙料分散液を一次抄紙紙層の下側から二次抄紙網の上方へ移動させて排水しながら,一次抄紙紙層の下面に,二 次抄紙紙料を堆積させることを意味するものと認められる。 ここで,「液中に置いて」とは,二次の紙料分散液を上方に排水して二次抄紙紙料を一次抄紙紙層に堆積し得るようにするためのものであると解されるところ,そのためには,二次抄紙紙料が,一次抄紙紙層の下面の全面に堆積できるように,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されることを意味するものと認められる。そして,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されていれば,一次抄紙紙層を,二次紙料分散液に浸す,あるいは,液面の下方に配置することまで必要とするものではないと解するのが相当である。 また,一次抄 面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されていれば,一次抄紙紙層を,二次紙料分散液に浸す,あるいは,液面の下方に配置することまで必要とするものではないと解するのが相当である。 また,一次抄紙紙層は,二次抄紙網に吸着された状態が維持されるから,上方への吸引力が作用し続けていることになり,一次抄紙紙層が二次紙料分散液の液面の下方に位置していなくても,上記吸引力により,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されて維持されるのであれば,二次紙料分散液が上方に吸い上げられることが可能となるものと解される。 なお,この際,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態を形成するために,二次抄紙網の上方に作用する吸引力が有効に機能すべく,二次抄紙網の下部の空間に周囲から空気が進入するのを防ぐ適宜の手段を講じるべきこととなり,二次抄紙網の周縁部に圧力隔壁を設ける方法も1つの手段であるが,本件発明においては,その具体的手段を限定するものとは解されない。 (ウ)この点,被告は,構成要件Cにおいては,一次抄紙紙層が吸着された二次抄紙網を液中に置くという技術手段の要件と,これとは別に,上方に排水して堆積するという技術手段の要件とを定めているのであり,二次抄紙網を二次紙料分散液中に置くことで,二次抄紙網の下向きの断 面三角形状の凹部の空間が,二次抄紙網の外部の周囲空間から遮断され,密閉されるところ,この遮断状態により,二次抄紙網の周囲の空気が同凹部に進入することを防ぐことができ,この状態で,同凹部内の空気が二次抄紙網の上部に排気されると,同凹部内が減圧され,その結果,二次紙料分散液が同凹部内で上昇し,同液を二次抄紙網の上方に排水して二次紙料を一次抄紙紙層に重ねて堆積することができるのであるから,「液中に置き」との に排気されると,同凹部内が減圧され,その結果,二次紙料分散液が同凹部内で上昇し,同液を二次抄紙網の上方に排水して二次紙料を一次抄紙紙層に重ねて堆積することができるのであるから,「液中に置き」との要件は,二次抄紙網の下向きの断面三角形状の凹部の空間を周囲の空間から遮断するという作用を達成するためのものであり,そうであれば,同要件は,二次抄紙網に一次抄紙紙層が転写・吸着された状態のものを,二次紙料分散液の液中に降下することと同義であると解される旨主張する。 確かに,上記(イ)のとおり,「液中に置き」の要件は,二次紙料分散液を上方に排水して二次抄紙紙料を堆積し得るようにするためのものであり,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されることを意味するものと解され,その状態を形成するために,二次抄紙網の下部の空間への周囲からの空気の進入を防ぐことが必要となるものであると解されるが,本件明細書には,同目的を達成する手段について,例えば,一次抄紙紙層が吸着された二次抄紙網を二次紙料分散液の液中に降下させる方法に限定するような記載はない。すなわち,「液中に置き」の要件の技術的意義は,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態を形成して,二次抄紙紙料を堆積し得るようにすることにあり,その状態の形成方法を限定することの必要性はなく,その他,その限定を裏付ける証拠もない。 (エ)また,被告は,「液中に置」くとは,文字どおり,「液体の中に置く」との意味であり,液面から隔離して置かれる状態は含まず,本件明細書の2頁3欄41行の記載(「この時,紙料は抄紙網の下に吸着して おり,この状態から,二次以降の紙料分散液の液中に置いて,上方に排水しながら所定の量を堆積する方法である。」【0011】)及び同頁4欄21行の記載(「 載(「この時,紙料は抄紙網の下に吸着して おり,この状態から,二次以降の紙料分散液の液中に置いて,上方に排水しながら所定の量を堆積する方法である。」【0011】)及び同頁4欄21行の記載(「6(抄紙台を指す。)の4(一次抄紙の紙料を指す。)と5(二次抄紙網を指す。)を漉き層7にある二次の紙料液8の液中へ降下し,」【0016】)や,本件特許の願書に添付された図面の構成要件Cを説明する工程図(甲2,図1⒟)では,二次抄紙網と紙料が,二次紙料分散液の液位よりも下方にあることが示されていることからすれば,「液中」は,「液の中」を意味すると解するほかない旨主張する。 しかしながら,上記(イ)のとおり,本件明細書の記載を踏まえた,本件発明の技術的意義によれば,同要件は一次抄紙紙層の下面の全面に二次の紙料分散液が接触する状態が形成されることと解され,それは,「液中」との文言の通常の意味と矛盾するものではない。また,被告の指摘する本件明細書【0011】及び【0016】の記載並びに本件特許の願書に添付された図面の図1⒟(甲2)も,上記の解釈と矛盾するものではなく,「液中」を「液の中」と解さなければ意味が通じないというものではない(本件明細書の【0016】の記載には,「降下」との説明があるが,他に,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されるための手段についての記載はなく,上記説明による限定がされていると解することはできない。)。 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 (オ)さらに,被告は,二次抄紙作業に当たり,一次抄紙紙層を二次紙料分散液の液面上に隔離して置くことは,パルプを均一な状態に保つためにかき回されて乱流状態にある二次紙料分散液によって,水を含んで粘度が低下した一次抄紙紙層が,崩壊したり,一部が剥 抄紙紙層を二次紙料分散液の液面上に隔離して置くことは,パルプを均一な状態に保つためにかき回されて乱流状態にある二次紙料分散液によって,水を含んで粘度が低下した一次抄紙紙層が,崩壊したり,一部が剥離するといった問題点を解消する意味があるのであり,一次抄紙紙層を液中に置くことと は,単なる文理解釈の次元だけの問題ではなく,技術的にも隔絶した相違が存在すると主張する。そして,そのために,二次抄紙網の外周部に,円筒状の圧力隔壁を設ける方法を開発した被告方法は,特許権として成立したとする。 しかしながら,上記(イ)のとおり,「液中に置き」とは,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されることを意味するものと解されるから,液体の中に置くことを意味するとの解釈を前提にする被告主張は,その前提を異にするし,被告方法における圧力隔壁の設置は,二次紙料分散液に強い乱流状態が生じる場合に生ずる問題点を解消するための改良であるとしても,圧力隔壁を用いない方法とは,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成される点で,何ら差異はないから,技術的に相違がある旨の被告の上記主張を採用することはできない(なお,被告方法においては,Jによる説明(乙25)のとおり,二次紙料分散液が乱流状態となり得るものと認められるが,被告の実施する方法によって,本件発明の「液中に置き」の要件についての解釈が導かれるものではなく,同要件は,上記のとおり解釈されるものである。)。 イ「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」について「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」とは,本件発明の技術的意義からすれば,二次抄紙以降の抄紙を行うための紙料分散液を意味するものであると解されるから,二次抄紙以降の漉き槽とは,その紙料分散液が入れられて,抄 漉き槽にある紙料分散液」とは,本件発明の技術的意義からすれば,二次抄紙以降の抄紙を行うための紙料分散液を意味するものであると解されるから,二次抄紙以降の漉き槽とは,その紙料分散液が入れられて,抄紙が行われる槽を意味するものと解される。 被告は,同要件は,二次紙料分散液が漉き槽にあることを定めたものであり,同漉き槽から外部に流出した二次紙料分散液をいうものではないとするところ,槽内にあると評価できるものであれば,同槽のどの部位にあるかは問わないものと解するのが相当である。 ⑵構成要件Cの充足性ア被告方法被告方法は,被告方法図7ないし12にあるとおり,第2の抄紙網4に吸着され,移載された1層目の紙層25について,同吸着排気の状態が維持され,第2の抄紙槽7にあるパルプスラリーP2の液面が,同吸着排気状態を維持する上方への吸引力により,圧力隔壁下部スリット32を介して,上昇し,この圧力隔壁下部スリット32を通ったパルプスラリーP3が,1層目の紙層25及び第2の抄紙網4に対して下から上に排水し,それにより,1層目の紙層25に,2層目の紙層26を堆積するという抄紙工程を含むものであると認められる。 イ充足性上記アで認定した被告方法の工程において,パルプスラリーP3は,上記抄紙が行われる間,吸引力により,1層目の紙層25の下方から上方に流れ続け,一次抄紙紙層の下面の全面に二次紙料分散液が接触する状態が形成されるといえるから,「吸着せしめた状態を維持しながら,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置」いているということができる。 また,上記パルプスラリーP3は,第2の抄紙槽7の中にあるパルプスラリーP2のうち,圧力隔壁下部スリット32を通して,第2の抄紙網4の下から上方への吸引力により上昇させたことにより形成された部分であって 上記パルプスラリーP3は,第2の抄紙槽7の中にあるパルプスラリーP2のうち,圧力隔壁下部スリット32を通して,第2の抄紙網4の下から上方への吸引力により上昇させたことにより形成された部分であって,パルプスラリーP2と連続してこれと一体をなしているのであるから,第2の抄紙槽7にあるといえ,「二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液」に該当するというべきである。 したがって,被告方法の上記抄紙工程は,吸着せしめた状態を維持しながら,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置き,上方に排水して堆積するものであるから,構成要件Cを充足する。 ウ被告の主張について (ア)被告は,パルプスラリーP3は,二次抄紙以降の漉き槽である第2の抄紙槽7にある,強い乱流状態となっているパルプスラリーP2と違い,圧力隔壁5により乱流状態が抑えられているのであって,両者は動的特性の違うものであるし,第2の抄紙槽7から圧力隔壁5内に流出したものであるから,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液ではない旨主張するが,両者の動的特性の違いによって,紙料としての両者の性質及び一体性が失われるものではないし,圧力隔壁5内も,圧力隔壁下部スリット32を介して第2の抄紙槽7と一体となっており,圧力隔壁5内で,二次抄紙が行われるのであるから,二次抄紙以降の漉き槽に該当するものということができる。 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 (イ)また,被告は,被告方法では,第2の抄紙網4の下端は,圧力隔壁固定板30の上面にあり,かつ同固定板30は常に第2の抄紙槽7より上方に位置するので,第2の抄紙網4を第2の抄紙槽7にあるパルプスラリーP2の液中に置くことはあり得ない旨主張するが,上記検討のとおり,圧力隔壁5内のパルプスラリーP3は,二次抄紙以降の漉き槽に 上方に位置するので,第2の抄紙網4を第2の抄紙槽7にあるパルプスラリーP2の液中に置くことはあり得ない旨主張するが,上記検討のとおり,圧力隔壁5内のパルプスラリーP3は,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液に該当し,パルプスラリーP3は,第2の抄紙網4に吸着されている1層目の紙槽25の下面の全面に接触することで,その液中に置くといえるのであるから,被告の上記主張も採用できない。 争点2イ(被告方法は本件発明の技術的範囲に属するか-逐次性の要件の充足性)について⑴逐次性の要件の意味ア構成要件Bと構成要件Cの逐次性について本件発明は,物を生産する方法についての発明であり,構成要件Bの工程と構成要件Cの工程との関係は,構成要件Bにおいて,一次抄紙を経た紙料を二次抄紙網に転写し,構成要件Cにおいて,当該二次抄紙網に転写 して吸着させた状態のものを更に抄紙するという,それぞれのもつ技術的な意味からすれば,経時的な要素を有し,構成要件Bの工程の後に構成要件Cの工程がくるものでなければならないと解される。 被告は,両者間に他の工程が介在する場合には,逐次性の要件が失われる旨主張するが,構成要件Bと構成要件Cには,上記のような先後関係があれば足り,その意味においてのみ「逐次性の要件」の具備を要求し得るといえる。そして,上記先後関係と,それぞれの要件を充足しているのであれば,中間の工程が介在するとしても,それによって,構成要件の充足性が失われるものではないというべきである。 イ構成要件Cと構成要件Dの逐次性について被告は,構成要件Cと構成要件Dの関係についても,逐次性の要件がある旨の主張をするが,その主張は,必ずしも明確ではない。構成要件Dの「多層漉き抄紙法を用いた」とは,構成要件AないしCに開示された複数の抄紙工程を備えた抄紙法 件Dの関係についても,逐次性の要件がある旨の主張をするが,その主張は,必ずしも明確ではない。構成要件Dの「多層漉き抄紙法を用いた」とは,構成要件AないしCに開示された複数の抄紙工程を備えた抄紙法を用いていることを意味するにすぎず,独立した工程を意味するものではないから,構成要件Cと構成要件Dについて,それ以上の経時的な関係はないと解される。 したがって,被告の主張する構成要件Cと構成要件Dの逐次性の要件を認めることはできない。 ⑵被告方法について被告方法では,一次抄紙を行って(被告方法図2ないし3),それにより第1の抄紙網1に堆積した1層目の紙層25を第2の抄紙網4に転写する工程(被告方法図4)があり,その後,第2の抄紙網4に1層目の紙層25を吸着させたまま,第2の抄紙槽7の方向に移動させ(被告方法図5ないし6),第2の抄紙網4に1層目の紙層25を吸着させた状態を維持しながら,二次抄紙を行う(被告方法図7ないし12)のであるから,構成要件Bに該当する一次抄紙及び転写工程(被告方法図2ないし4)を経て,二次抄紙網 を移動させた上で(被告方法図5ないし6),構成要件Cに該当する,二次抄紙工程(被告方法図7ないし12)となるものであり,上記⑴アで述べた構成要件B及びCの先後関係を充足していると認められる。 被告は,被告方法においては,転写工程と二次抄紙工程との間に,圧力隔壁を利用し,同隔壁内にパルプスラリーP3を上昇させる中間工程があり,この工程によって,構成要件Cの「吸着せしめた状態を維持しながら,二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置き」との状態が消失する旨主張するが,構成要件Cの状態が消失するとの主張の趣旨は必ずしも明確ではない上,被告方法においては,上記のとおり先後関係があり,上記2⑵イのとおり,構成要件Cを充足す 中に置き」との状態が消失する旨主張するが,構成要件Cの状態が消失するとの主張の趣旨は必ずしも明確ではない上,被告方法においては,上記のとおり先後関係があり,上記2⑵イのとおり,構成要件Cを充足するものであるから,被告の主張する工程が介在することによって,構成要件B及び構成要件Cの充足性が失われるものではない。 被告方法が本件発明の技術的範囲に属するといえるかについてのまとめ上記第2,1(前提となる事実等)⑸並びに上記2及び3のとおり,被告方法は,本件発明の構成要件AないしEを充足し,本件発明の技術的範囲に属すると認められる。 争点3(被告は,先使用権を有するか)について⑴事実認定上記前提となる事実等,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告先行発明(ア)平成9年10月20日,被告の従業員であるHは,「多層構造振動板」とのテーマで,研究結果である,多層構造の振動板を作成する製造方法に関し,先行する発明等の有無の調査を,被告の担当部門に依頼する調査依頼書を作成し,提出した(乙12の1,21,22)。 (イ)上記調査依頼書には,Hの研究結果,すなわち,被告先行発明とし て,通常の抄紙工程で1層目を抄紙した後,吸着型で抄造物を取り出し,吸着させたまま,2層目の材料スラリーの中に入れて,2層目の抄紙を行い,3層目,4層目を形成する場合には,更に同工程を追加し,最後に,抄造物を取り出して加熱乾燥させて振動板を製造する方法が,工程の概略図とともに示されている(乙12の1)。 被告先行発明には,二次抄紙工程において上方に排水して堆積することは明示されていないが,吸着型で一次抄紙後の抄造物を取り出し,同抄造物を吸着したまま二次抄紙工程を行う旨の内容及び概略図の記載から,二次抄紙工程は,上方に排水して堆積す て上方に排水して堆積することは明示されていないが,吸着型で一次抄紙後の抄造物を取り出し,同抄造物を吸着したまま二次抄紙工程を行う旨の内容及び概略図の記載から,二次抄紙工程は,上方に排水して堆積する,逆さ漉きを内容とするものであることが認められる。 そうすると,被告先行発明は,本件発明の,複数の抄紙工程を備え(構成要件A),一次抄紙後の抄造物(一次抄紙で堆積した紙料)を吸着型で取り出し(二次抄紙網に転写し)(構成要件B),吸着せしめた状態を維持しながら,2層目の材料スラリーの中に入れて(二次抄紙以降の漉き槽にある紙料分散液の液中に置き),2層目の逆さ漉きの抄紙を行う(上方に排水して堆積する)(構成要件C),多層漉き抄紙法を用いた(構成要件D),多層構造を特徴とするスピーカ用振動板の製造方法(構成要件E)を充足するもので,本件発明と同一の発明であると認められる。 (ウ)上記調査依頼を受け,被告において,知的財産関連業務を担当していたKが,先行する発明等の調査を行い,平成9年11月4日,Hによる被告先行発明と,最も近接した内容を有する発明として,ソニーが出願人となっている特開平4-340896号の音響振動板の製造方法に関する発明(乙12の3)を示し,基本的に同一の内容である旨判断したこと,その他関連する発明についても説明し,それらの公報等も添付して,報告を行った(乙12の1ないし12の11,21,22)。 この結果,被告においては,被告先行発明は新規性又は進歩性を欠いて特許要件がないと判断され,特許出願は行われなかった(乙22)。 イ被告におけるBの研究開発等(ア)Bは,知人から被告のCを紹介され,Cの取り計らいにより,振動板製作の技術を有することに期待されて,平成12年10月1日に嘱託社員として被告に入社し(甲8,証人B1 告におけるBの研究開発等(ア)Bは,知人から被告のCを紹介され,Cの取り計らいにより,振動板製作の技術を有することに期待されて,平成12年10月1日に嘱託社員として被告に入社し(甲8,証人B1~2頁,証人C5~7頁),開発部において,抄紙振動板開発のグループに所属し,振動板開発業務に従事した(甲8,乙36の2,証人B1~2頁,証人C5~7頁,証人J1~2頁)。 (イ)被告の開発部の職務計画は,年間の開発計画として,所属部員が立案する実行課題について所属長が審査し,その採否について,担当取締役の承認を受けて,正式に決定される(乙19)。平成13年当時,所属部員が立案する実行課題を審査する所属長は,開発部次長であったJであり,担当取締役は,開発部長でもあったCであった(乙19,36の2)。JとBは,上司と部下という関係にあった(乙1,36の2)。 (ウ)平成13年4月から平成14年3月の開発計画において決定された,Bが実行するべき課題の中には,本件方法,すなわち,「複合振動板とその製造方法(旧・高音質・カラーリングフリー・無排水処理の可能な抄紙方法)」が含まれていた(乙1,19)。Bは,本件発明を用いて振動板の開発を進めることを考えて,同計画案を策定したものであり,本件方法は,逆さ漉きを用いる多層漉き抄紙法で,本件発明の製造方法と同一のものであった。Bは,上記課題に係る成果目標として,「高音質を得ながら容易に着色する事の出来る逆さ漉き抄紙法を用いて,排水処理ゼロを目指す。一次抄紙・二次抄紙・三次抄紙までの材料・音質・コスト信頼性・カラーリング性を確立。手動機を作成。」を掲げ(乙1),平成13年6月ころから開発を開始した(甲8,乙1,2)。被 告に提出した「実行課題月次報告書」には,同年6月欄に,「複合抄紙(逆さ二重漉上げ) リング性を確立。手動機を作成。」を掲げ(乙1),平成13年6月ころから開発を開始した(甲8,乙1,2)。被 告に提出した「実行課題月次報告書」には,同年6月欄に,「複合抄紙(逆さ二重漉上げ)にて5.1用D・Eアイテムを試作,表面に粉ch体(パールマイカ)および桑の微細繊維を複合する事に成功した。表面は非常に奇麗で有る。」と,同年7月欄に,「66㎜フィクスコーン紙の複合抄紙を実験し,これに成功した。(裏面にハウサウンド+繊ES維と振動部表面にマイカ+桑皮)」と,それぞれ記載があり(乙2),また,Bは,同年6月には,ソニーのFと会合をもって,複合抄紙での試作の依頼を受け,その後,作成した試作品をFに交付して,評価を受けるなどしており,開発開始間もない時期から,多層振動板の製造方法は確立されていて,顧客の評価を踏まえて,素材等を変えて試作を行う作業が続けられていた(乙3,4)。 なお,Jは,試作品をソニー等に提供するに際し,先行発明等との抵触の有無を調査し,Kから,被告先行発明の存在を聞き,当時の調査依頼書に目を通すなどしていた(乙19,23,証人J7,27~28頁)。 (エ)被告内では,平成13年3月から,Dを担当者として,5.1チャンネルテレビ用の新駆動方式を持ったスピーカユニットの開発を進めていたところ,Dは,このスピーカユニットのスピーカ用振動板に,多層漉きの振動板を採用したいとの意向を持っており,当初,1つの抄紙槽を用いた方法により試作していたが,層間剥離等の問題が生じていた。 Bは,同年6月ころ,依頼を受けて,Dらに対し,Bの開発課題に係る本件方法,すなわち,逆さ漉きを用いる多層漉き抄紙法について説明するなどした(甲6,乙25)。 そして,Bは,同年8月下旬ころ,Dから,同年秋に開催予定の本件展示会()のデモ ,Bの開発課題に係る本件方法,すなわち,逆さ漉きを用いる多層漉き抄紙法について説明するなどした(甲6,乙25)。 そして,Bは,同年8月下旬ころ,Dから,同年秋に開催予定の本件展示会()のデモンストレーション用のスピーカCEATECJAPAN 2001システムに用いるスピーカ用振動板製作の依頼を受け,試作品等の製作 を経て,本件方法により製作を行い,また,その製造方法を,被告に提出する技術報告書に記載したいとのDの意向を受け,本件発明の方法の工程図のメモを作成してDに交付した(甲6)。 (オ)Bは,平成14年2月ころまで,ソニーに対し,試作品を交付して,多層振動板を採用したスピーカの採用を働きかけたが,受注には至らなかった。しかしながら,平成13年11月から,アルパインにも試作品を提供するなどして,同年12月,同社から,多層振動板を採用したスピーカの受注の内示を受けるに至った(乙25)。 ウ本件展示会への出展及び事業化(ア)被告は,Dが進めていたスピーカユニットの開発に関し,平成13年8月29日に,Dを発明者とし,発明の名称を「動電型スピーカ」とする,特許出願を行った(乙13,25)。この発明における振動板は,本件方法による多層振動板を用いており,特許出願の明細書においても,「振動板における『音速』を大きくし,適度な『損失』を持たせるために,損失の多い材料を裏面側の一層部分とし,そして,音速の大きい材料を表面側の二層部分として抄紙し,お互いの長所を生かす抄紙方法とした。これは別々に抄紙して,貼り合わせたものではなく,抄紙方法により行い,接着剤などを用いていない,いわゆる多層抄きによる多層構造である。」と記載した(乙13【0014】)。 そして,上記スピーカユニットを,「」(トールボーイAVTOWER型サテライ により行い,接着剤などを用いていない,いわゆる多層抄きによる多層構造である。」と記載した(乙13【0014】)。 そして,上記スピーカユニットを,「」(トールボーイAVTOWER型サテライトスピーカーシステム)との名称で,同年10月2日から同月6日まで開催された本件展示会に出品した。このスピーカユニット(タワー)で用いられた振動板は,上記イ(エ)のとおり,Bが,本AV件方法を用いて製作したものであった(甲6,乙15,25)。この製作には,実験用の手漉き抄紙機が用いられたが,同抄紙機は,開発部員が共同で用いていた実験装置であった(甲12)。 被告は,タワーの意匠について,新規性の例外証明を受ける手続AVを取った上で同月22日に意匠登録出願をして,同意匠は,平成14年9月13日に意匠登録された(乙16,17)。 なお,タワーは,商品化はされなかった(証人J13頁)。 AVDは,平成13年10月10日,「多層抄紙コーンを用いたユニSPット」との題名で,上記開発に関する技術報告書を作成し,被告に提出した(乙14)。同技術報告書には,「多層抄き方法原理」との表題が付された,多層抄紙方法の工程を,6工程に分けて,図面と説明とで示す文書が添付されており,その内容は,本件発明と同一のものであるところ,同文書は,上記イ(エ)のとおり,Bが,Dに交付したメモをもとに作成されたものであった(甲6)。 (イ)Bが開発を進めてきた多層振動板を用いたスピーカについて,平成13年11月ころから,顧客の引合いがあり,同年12月には,アルパイン社から受注内示が示されるようになった。そこで,被告は,同月,自動抄紙機の開発を目的とするプロジェクトを立ち上げ,Jがリーダーとなり,Bもメンバーとして加わって,自動抄紙機の開発を進め,平成14年4 から受注内示が示されるようになった。そこで,被告は,同月,自動抄紙機の開発を目的とするプロジェクトを立ち上げ,Jがリーダーとなり,Bもメンバーとして加わって,自動抄紙機の開発を進め,平成14年4月に,抄紙機を完成した。そして,同年8月に,同抄紙機を用いた,多層振動板の本格的な生産が開始された(乙3,19)。 なお,上記抄紙機を用いた振動板製造方法及び装置については,平成16年12月24日に被告から特許出願の手続がとられ,平成18年5月19日に特許権として登録されている(乙10,37)。 (ウ)Bは,平成14年7月31日,「二重抄紙製法とその条件(設備名:抄紙機)」との題名で,技術報告書を作成し,被告に提出したWS(乙5)。同技術報告には,「裏透かし技法の改良と一般抄紙法を用いて二重抄紙の製法を開発した。」,「音質と意匠性に優れた振動板の製造を目的として,表面と裏面の材質が異なる二層構造の振動板を効率良 く生産が出来る二重抄紙の製法を確立する。」,「この二重抄紙は8年前に考案した製法ですが,当時の業界はコーン紙の樹脂化に向かっていた為,採用の見込みが無く頓挫した経緯が有ります。」などの記載がされている(乙5)。 (エ)また,Bは,平成14年9月10日以降に,同年3月11日から同年9月10日までを対象期間とする業績評価表の,「本人コメント欄」において,前記1⑵認定のとおり,「昨年10月に開始した二重抄紙製造方法は,アルパイン社のオーダーを獲得。経済効果4億2千万円を上げました。この抄紙方法は96年に考案したもので,過去に前例の無い音造り,外観,無排水抄紙を可能にする画期的な製法です。…尚,実績評価について,当二重抄紙の経済効果は100億以上有ると想定します。 よって,年俸契約ですが相応の報奨金を要望します。」と記載した(乙 造り,外観,無排水抄紙を可能にする画期的な製法です。…尚,実績評価について,当二重抄紙の経済効果は100億以上有ると想定します。 よって,年俸契約ですが相応の報奨金を要望します。」と記載した(乙24)。 エ本件発明の出願等の経緯本件発明は,平成13年10月5日に特許出願され,平成15年4月18日に出願公開された(甲1,2)。 Bが開発を進めた本件方法は,平成14年8月には本格的に,それに係る振動板の生産が開始されるに至ったが,Bは,開発を開始した平成13年6月当時,本件方法と同一内容の本件発明が既に原告により発明されていたこと,原告が本件発明について特許出願を行う予定であることを,所属していた被告開発部の者に話すことはなく,その後,本件発明について特許出願されたことも,同様に,Jを始めとする開発部員に話すことはなく,上記出願から1年程度経過した,平成14年秋ころになって,開発部長であったCに,本件発明の発明者が原告であって,原告による特許出願がされたことを伝えた。Cからその旨を聞いたJは,被告先行発明の存在により,本件方法は公知のものであり,それによって本件発明が特許登録 された場合でもこれに対抗できるものと考え,同対応方針をCに伝えるなどした(証人C28~29頁,証人J28~30頁)。 被告内では,特許の公開公報を,公開後およそ1か月以内に社内で回覧しており,Jを含めた被告従業員は,本件発明の出願公開後程なくして,公開公報により本件発明の内容を知った(証人B17頁,証人C15頁,証人J12~13頁)。 ⑵検討以上の認定事実に基づいて,被告において,先使用権を有するといえるか否かについて検討する。 ア先使用権の成立要件先使用権とは,特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし,又は特許出願に係る発明の内容を知らな て,被告において,先使用権を有するといえるか否かについて検討する。 ア先使用権の成立要件先使用権とは,特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし,又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者が,その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において取得する法定の通常実施権であり(法79条),その成立には,先にした発明(以下「先使用発明」という。)が完成していること,発明知得の経路が当該特許出願に係る発明と別個独立であること,事業の実施又は事業の準備をしていることが,それぞれ要件となる。 イ先使用発明の完成について上記⑴ア(ア)及び(イ)のとおり,被告従業員であるHは,平成9年10月ころまでには,被告先行発明を完成させており,同発明の内容は,本件発明と同一であるから,本件発明の特許出願前に,先使用発明は完成していたと認められる。 ウ発明知得経路の別個独立性上記⑴ア(ア)及び(イ)のとおり,平成9年10月ころまでには,先使用発 明は完成し,被告内で,先行発明等を調査し,進歩性等を欠くことから特許要件がないとの理由で特許出願を行わないとの判断をしたのであるから,その経緯にかんがみれば,被告における先使用発明の知得は,本件発明とは別個独立になされたものと認められ,特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をした者(被告従業員)から知得したということができる。 エ事業の実施又は事業の準備について法79条にいう「事業の準備」とは,「特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が,その発明につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時 いて法79条にいう「事業の準備」とは,「特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が,その発明につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていること」を意味するものと解され(昭和61年最高裁判決),即時実施の意図を有すること及び即時実施の意図が客観的に表明されることが必要とされる。 被告は,本件展示会に,被告先行発明によって製造された多層構造振動板を用いたタワーを出品したことをもって,被告先行発明による振動AV板製造の事業の実施の準備がされた旨主張する。 しかしながら,本件においては,以下のとおり,被告先行発明の即時実施の意図の存在又はその意図の客観的表明の,いずれについても,これを認めることはできない。 すなわち,タワーについては,上記⑴ウ(ア)のとおり,平成13年AV10月2日から同月6日まで開催された本件展示会に出展されており,タワーに使用されたスピーカの技術は特許出願され,タワーの意AVAV匠についても,意匠登録出願をする予定で,新規性の例外証明書を得た上で登録出願されているのであるが,本件展示会出展までに又は本件展示会において,受注に向けた具体的な商談がされた事情などは認められず,最 終的に,商品化されずに終わったものである。そして,タワーに使用AVされた振動板は,上記⑴ウ(ア)のとおり,実験用の手漉き抄紙機を用いて製作されたものである。そして,タワーに実際に用いられた振動板にAV限定せず,Bが進めていた本件方法により製造された振動板全般についてみても,上記⑴イ(ウ)及び(オ)のとおり,平成13年6月ころから,ソニーに試作品を供給して評価を得るなど 用いられた振動板にAV限定せず,Bが進めていた本件方法により製造された振動板全般についてみても,上記⑴イ(ウ)及び(オ)のとおり,平成13年6月ころから,ソニーに試作品を供給して評価を得るなどの活動が進められていたが,受注に結びつくような具体的なやりとりまでされた事情は認められず,結局,平成14年2月ころまでソニーに対する営業活動を行ったが,採用されるには至らなかったものであるし,最終的に商談が成立したアルパインについては,試作品を提供するなどの営業活動が開始されたのが平成13年11月,受注の内示を受けたのが同年12月であり,本件発明の特許出願時(同年10月)には,事業実施の方針が明確にされていなかったと考えざるを得ない。 また,仮に,上記の事情をもって即時実施の意図を肯定することができるとしても,上記( )ウ(イ)のとおり,被告内で自動抄紙機の開発を目的 とするプロジェクトが立ち上げられたのは,平成13年12月であり,それまでの間に,量産に対応できる抄紙機の調達や開発などが行われていたとは認められないのであるから,本件発明の特許出願時において,客観的に,事業実施の方針が表明されていたとはいえないものと解される。 オまとめ以上から,本件において,被告が,先使用権を有するとは認められない。 争点4(補償金及び損害の有無並びにそれらの額)について上記4及び5のとおり,被告方法は,本件発明の構成要件AないしEを充足して,本件発明の技術的範囲に属し,また,被告には,先使用権を認めることはできないから,被告方法により製造されたスピーカ用振動板を組み込んだ被告製品の販売は,本件特許権を侵害するものであり,原告の被告に対する,補 償金請求権及び損害賠償請求権の有無並びにそれらの額が問題となる。 ⑴補償金請求権の有無について本件発 板を組み込んだ被告製品の販売は,本件特許権を侵害するものであり,原告の被告に対する,補 償金請求権及び損害賠償請求権の有無並びにそれらの額が問題となる。 ⑴補償金請求権の有無について本件発明の特許出願は,上記5⑴エのとおり,平成15年4月18日に出願公開され,被告従業員は,程なくしてそれを知るに至っているが,本件発明については,平成14年秋ころに,出願の事実がCに伝えられ,CからJに伝えられ,被告内では対応方を検討していたのであることを踏まえると,CやJは,通常よりも早めに,上記公開に係る公報を閲覧していたことが推認され,平成15年4月30日までに,同閲覧により,本件発明が,出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知ったものであると認められる。 そして,被告は,上記第2,1⑷のとおり,平成14年8月ころから被告製品を製造,販売している。 したがって,原告は,被告に対し,平成15年5月1日から,本件発明に係る特許登録がされた平成16年2月6日の前日である同月5日までの間の,被告方法の実施について,当該実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。 ⑵損害賠償請求権の有無について被告は,上記第2,1⑷のとおり,本件特許権が成立した平成16年2月6日以降も,被告製品を製造し,販売しており,故意又は過失により,原告に損害を与えているものと認められるから,原告は,平成16年2月6日から,その請求に係る,平成18年11月30日までの間の,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を損害の額として賠償を請求することができる。 ⑶補償金及び実施料相当の損害賠償金の額について補償金及び実施料相当の損害賠償金の額は,いずれも,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額であると解される 賠償を請求することができる。 ⑶補償金及び実施料相当の損害賠償金の額について補償金及び実施料相当の損害賠償金の額は,いずれも,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額であると解される。被告は,上記第2,1⑷のとおり,被告振動板をスピーカに取り付け,更に同スピーカを他の部 材と組み合わせてスピーカユニットとして販売していることから,以下,それらの売上金額に,本件発明の寄与率を考慮した上で,実施料率を乗じて,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額を検討する。 ア被告の販売実績被告は,上記のとおり,被告振動板をスピーカに取り付け,更にそのスピーカを他の部材と組み合わせてスピーカシステムとして販売しているところ,平成15年5月1日から平成18年11月30日までの,被告製品の販売実績は,アルパイン向けが別紙3「アルパイン社販売実績」,シャープ向けが別紙4「シャープ社販売実績」のと07-4-1107-4-11おりであると認められる(乙49)(なお,被告は,当初,被告製品の販売実績として別紙1及び2のとおりの数値を開示したが,この数値は,中国で生産し,日本を経由せずに日本以外の国に輸出するものを含む数値であり,それを除外する必要があったとして,上記別紙3及び4のとおり訂正した。原告は,この訂正について,自白の撤回であり,認められるべきではなく,自白の撤回でないとしても,時機に後れた攻撃防御方法に該当するから却下されるべきである旨主張するが,同訂正は,自白の撤回に該当するものではなく,時機に後れた攻撃防御方法であるとも認められない上,訂正後の数値の信頼性が損なわれるような事情も認められないので,上記のとおり,訂正後の数値である別紙3及び4のとおりであると認められる。)。 これによると,補償金の算定の基礎となる平成15年5 上,訂正後の数値の信頼性が損なわれるような事情も認められないので,上記のとおり,訂正後の数値である別紙3及び4のとおりであると認められる。)。 これによると,補償金の算定の基礎となる平成15年5月1日から平成16年2月5日までの間及び損害の算定の基礎となる同月6日から平成18年11月30日までの間の被告製品の販売額は,以下のとおりであると認められる。 (ア)平成15年5月1日から平成16年2月5日まで平成15年5月1日から平成16年2月5日までの被告製品の販売額 は,別紙3及び4に基づき,以下のとおり計算すると,4,792,691.60ドルであり,日本円換算(1ドルを120円とする換算であり,当事者間に争いはない。)で5億7512万2992円である。 アルパイン:機種№販売数量単価()販売額()US$US$3646584,600+1,90063.00409,500.003646604,400+2,70060.00426,000.00364662900+70057.0091,200.003646633,400+1,30037.00173,900.003646593,500+2,30034.00197,200.003646611,000+60032.0051,200.00364656400+200124.0074,400.001,423,400.00合計aシャープ:機種№販売数量単価()販売額()US$US$39548111,75027.6078324,391.650039548211,75024.5816288,833.800039548421,35026.4413564,521.75503970483,10045.8833 91.650039548211,75024.5816288,833.800039548421,35026.4413564,521.75503970483,10045.8833142,238.230039704916,60044.3280735,844.800039777129,00040.82841,184,023.60003986582,92044.3280129,437.76003,369,291.5950合計b3,369,291.60≒なお,平成15年5月1日から同年11月3日までの期間に対応する販売額は,アルパインに対する販売のみであるところ,その金額は,以下のとおり計算すると,931,500.00ドルであり,日本円換算で1億1178万円である。そして,同月4日から平成16年2月5日までの期間に対応する販売額は,残りの4億6334万2992円であると認められるアルパイン(~):H15.5.1H15.11.3 機種№販売数量単価()販売額()US$US$3646584,60063.00289,800.003646604,40060.00264,000.00364662 57.0051,300.003646633,40037.00125,800.003646593,50034.00119,000.003646611,00032.0032,000.00364656 124.0049,600.00931,500.00合計(イ)平成16年2月6日から平成18年11月30日までこの期間の被告製品の販売額は,別紙3及び別紙4に基づき,以下のとおり計算すると,13,316,498.02ドルであり,日本円換算で 合計(イ)平成16年2月6日から平成18年11月30日までこの期間の被告製品の販売額は,別紙3及び別紙4に基づき,以下のとおり計算すると,13,316,498.02ドルであり,日本円換算で15億9797万9762円である。 アルパイン:~の販売額合計-~H15.5.1H18.11.30$9,642,538.40H15.5.1の販売額合計( 上記( ア) aのとおり)=H16.2.5$1,423,400.00…A$8,219,138.40シャープ:~の販売額合計-~H15.5.1H18.11.30$8,466,651.22H15.5.1H16.2.5$3,369,291.60の販売額合計(上記(ア)bのとおり)=…B$5,097,359.62合計:$13,316,498.02A+B=なお,平成16年2月6日から本訴提起日である同年10月21日までの期間に対応する販売額は,その期間の日数(259日)の,全体の日数(1029日)に占める割合を乗じた金額として算出され,以下のとおり計算すると,4億0221万2593円であると認められ,同月22日から平成18年11月30日までの期間に対応する販売額は,残 りの11億9576万7169円であると認められる。 円×(日÷日)=円1,597,979,762 1,029402,212,593イ本件発明の寄与率スピーカシステムにおいて,スピーカは本質的な要素であるところ,スピーカの性能は,概ねその音質によって決定される(乙41)。そして,スピーカの音質に影響する要素についての解説(乙41)によれば,音質の特性は,低音,中音及び高音でのレベルや伸び等のほか,歪み(ひずみ,以下同じ。)感,イメージ感といった,大きく7の要素に分 して,スピーカの音質に影響する要素についての解説(乙41)によれば,音質の特性は,低音,中音及び高音でのレベルや伸び等のほか,歪み(ひずみ,以下同じ。)感,イメージ感といった,大きく7の要素に分けられ,それらに影響する要因として,62の項目があり,その中で,振動板は11の項目で要因としてあげられていて,さらに,振動板における音質面での要素は,形状要素(口径,深さ,カーブ,エッジ形状等),材質要素(製造方法,材料物性,製造条件等)があるとされる。また,スピーカシステムの中で,振動板は,音質上最も重要な部品の一つである旨説明されている。 振動板における音質に影響する要素の中で,製造方法は,材質要素の中の,更に一要素にすぎず,また,製造方法が異なっても,振動板の材質,重量,形状及び構造が同一であれば,スピーカの音質に違いはない旨の,被告従業員による指摘がある(乙45)が,本件発明によれば,振動板材料の選択の自由度が高まって,より多様な振動板を製造することが可能となる(甲2,乙5,14)のであるから,製造方法についても,相応の重要性を有していると解される。 これらのことからすれば,スピーカシステムにおける振動板の寄与率を考える場合,振動板の販売価格は,考慮すべき一要素であるとしても,これのみを基礎とすることは相当ではなく,音質がスピーカの性能を決定付けることを踏まえ,音質特性の要因における振動板の重要性を考慮して,これを検討することが相当であり,振動板の販売価格のみを基礎として考えるべきである旨の被告の主張を採用することはできない。 また,多層構造を特徴とするスピーカ用振動板は周知であり,その製造方法も他に存在し,代替技術は極めて多く存在していたことから,本件発明によって,振動板の性質に影響を及ぼすことはほとんどない旨の,被告従業員 層構造を特徴とするスピーカ用振動板は周知であり,その製造方法も他に存在し,代替技術は極めて多く存在していたことから,本件発明によって,振動板の性質に影響を及ぼすことはほとんどない旨の,被告従業員による指摘がされている(乙45)が,上記5⑴ウ(ア)のとおり,タワーの開発を進めていたDは,多層構造の振動板の製作について,AV当初,1つの抄紙槽を用いた製造方法で試作していたものの,層間剥離の問題があって,結局,本件発明を用いるに至り,技術報告書において,その点を,「表面層,裏面層を…一体に形成させる抄紙方法が具現化出来た。 様々な材料の組合せが出来,…音質面の自由度が広がった。」と記載している(乙14)のであるから,本件発明は振動板の性質に影響を及ぼすものであったということができ,上記指摘は採用できない。 しかしながら,振動板が音質に決定的な影響を及ぼすとして,寄与率を100パーセントであるとする原告の主張も,上記のとおり,音質特性の要因として,振動板は,重要ではあるが,他の多数の要因の中の一部分にすぎず,更にその製造方法は,振動板の音質に影響する要素のうちの一部にすぎないことからすれば,到底採用することができない。 以上を踏まえて,本件発明の寄与率を検討すると,上記のスピーカ音質特性要因における振動板に係る項目数の割合が約20パーセントであり(÷),振動板の重要性及び本件発明による製造方法が材料選択の 自由度を高めたことと,製造方法は振動板における音質要素の一部にすぎないこととを併せ考慮して,上記約20パーセントの2分の1である10パーセントが,寄与率として相当であると解される。 ウ実施料率音響機器に関するライセンス契約等の実施料率に関する調査結果によれば,平成4年ないし平成10年の平均値として,イニシャル有りのものが パーセントが,寄与率として相当であると解される。 ウ実施料率音響機器に関するライセンス契約等の実施料率に関する調査結果によれば,平成4年ないし平成10年の平均値として,イニシャル有りのものが3.3パーセント,イニシャル無しのものが5.7パーセント,最頻値が いずれについても1パーセント,全体の契約件数の約60パーセントを占める契約における実施料率が,イニシャル有りのもので1ないし2パーセント,イニシャル無しのもので1ないし3パーセントであると認められる(乙47)。 また,本件においては,原告が本件発明を実施していないこと,他に実施許諾例がないこと(弁論の全趣旨),原告は,本件発明つき,Bが被告内で開発課題として掲げ,その研究開発及び実用化を進めることを了承しながら,特許権成立後の対応方についても被告側の明確な意思表示を確認しないまま推移しており,いわば,実施に関する取決めを被告側の対応に委ねていたとも評価し得ること(乙14,25),被告は,平成14年秋ころまでは,本件方法が原告により既に完成された発明に係るものであって,原告による特許出願の予定や特許出願された事実を知らされていない(上記5⑴エ)から,被告において,被告先行発明によるものとして無償で実施することができるとの認識であったと考えられること等の事情もある。 上記の各事情,すなわち,本件発明の実施に関する取引実例がなく,実施料に係る市場の評価がないこと並びに原告及び被告の実施の対価に関する従前の認識及び見通しを総合考慮すると,本件では,実施料率を2パーセントと解するのが相当である。 エ補償金及び実施料相当の損害賠償金の算定以上を踏まえて,補償金及び実施料相当の損害賠償金を算定すると,以下のとおりとなる。 (ア)補償金平成15年5月1日から平成16年2月5日まで である。 エ補償金及び実施料相当の損害賠償金の算定以上を踏まえて,補償金及び実施料相当の損害賠償金を算定すると,以下のとおりとなる。 (ア)補償金平成15年5月1日から平成16年2月5日までの被告製品の販売額は,5億7512万2992円であり,本件発明の寄与率が10パーセント,実施料率が2パーセントであるから,補償金の額は,以下の計算 式のとおり,115万0245円である。 円××=円575,122,9920.10.021,150,245このうち,平成15年5月1日から同年11月3日までの期間に対応する補償金額は,以下のとおり,22万3560円である。 円(上記ア(ア))××=円111,780,0000.10.02223,560そして,同月4日から平成16年2月5日までの期間に対応する補償金額は,以下のとおり,92万6685円である。 円(上記ア(ア))××=円463,342,9920.10.02926,685(イ)実施料相当の損害賠償金平成16年2月6日から平成18年11月30日までの被告製品の販売額は,15億9797万9762円であり,本件発明の寄与率及び実施料率は(ア)と同様であるから,実施料相当の損害賠償金の額は,以下の計算式のとおり,319万5959円である。 円××=円1,597,979,7620.10.023,195,959このうち,平成16年2月6日から同年10月21日までの期間に対応する実施料相当の損害賠償金は,以下のとおり,80万4425円である。 円(上記ア(イ))××=円402,212,5930.10.02804,425そして,同月22日から平成18年11月30日までの期間に対応する実施料相当の損害賠償金額は,以下のとおり,239万 ア(イ))××=円402,212,5930.10.02804,425そして,同月22日から平成18年11月30日までの期間に対応する実施料相当の損害賠償金額は,以下のとおり,239万1534円である。 円(上記ア(イ))××=円1,195,767,1690.10.022,391,534⑷弁護士・弁理士費用相当の損害賠償金原告は,本件の訴訟追行のため,弁護士及び弁理士に委任して報酬の支払を約しているものと認められるから,その費用について,被告は賠償する義務があるところ,補償金請求権が,不法行為に基づく損害賠償請求権とは異 なる,特許法の規定により創設された特別の権利であることも考慮した上,被告の行為と相当因果関係のある損害金額は,40万円と認めるのが相当である。 ⑸小括補償金,実施料相当の損害賠償金及び弁護士・弁理士費用相当の損害賠償金の合計は,以下のとおり,474万6204円である。 円+円+円=円1,150,2453,195,959400,0004,746,204⑹遅延損害金原告は,遅延損害金として,①補償金のうち平成15年11月4日から平成16年2月5日までの期間に対応する金額及び②実施料相当の損害のうち平成16年2月6日から本訴提起日である同年10月21日までの期間に対応する金額に対する本訴状送達の日の翌日である平成16年10月29日から,③実施料相当の損害のうち同月22日から平成18年11月30日までの期間に対応する金額及び④弁護士・弁理士費用に対する平成18年12月1日から,⑤補償金のうち平成15年5月1日から同年11月3日までの期間に対応する金額に対する原告の訴えの変更の申立書送達の日の翌日である平成19年3月7日から,それぞれ支払済みに至るまで,民法所定の年5パー 補償金のうち平成15年5月1日から同年11月3日までの期間に対応する金額に対する原告の訴えの変更の申立書送達の日の翌日である平成19年3月7日から,それぞれ支払済みに至るまで,民法所定の年5パーセントの割合の支払を求めている。 そこで,上記( )及び⑷で認定した金額をそれぞれについてあてはめると, ①補償金のうち平成15年11月4日から平成16年2月5日までの期間に対応する92万6685円及び②実施料相当の損害のうち平成16年2月6日から同年10月21日までの期間に対応する80万4425円の合計173万1110円に対する同月29日から,③実施料相当の損害のうち同月22日から平成18年11月30日までの期間に対応する239万1534円及び④弁護士・弁理士費用40万円の合計279万1534円に対する平成18年12月1日から,⑤補償金のうち平成15年5月1日から同年11月 3日までの期間に対応する22万3560円に対する平成19年3月7日から,それぞれ支払済みに至るまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の請求が認められる。 第4 結論 以上の次第で,原告の請求は,金474万6204円及び内金173万1110円に対する平成16年10月29日から,内金279万1534円に対する平成18年12月1日から,内金22万3560円に対する平成19年3月7日から,それぞれ支払済みに至るまで民法所定の年5パーセントの割合による金員を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官清水節裁判官山田真紀裁判官國分隆文 判所民事第29部裁判長裁判官清水節裁判官山田真紀裁判官國分隆文

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