1 令和5 年4 月13 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3 年(ワ)第18318 号 登録ドメイン名使用権確認請求事件口頭弁論終結日 令和5 年2 月16 日判決 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり5主文1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求10登録ドメイン名VENOSAN.CO.JP の使用権は、原告が有することを確認する。 第2 事案の概要1 事案の要旨本件は、原告が、株式会社日本レジストリサービスにドメイン名「VENOSAN.CO.JP」(以下「本件ドメイン名」)を登録して使用しているところ、本件ドメイン名につき、被告が日15本知的財産仲裁センターに対してJP ドメイン名紛争処理方針に基づき取消しを申し立て、これを受けた同センター紛争処理パネルがその登録取消しを命じる裁定をしたことから、被告に対し、原告が同ドメイン名の使用権を有することの確認を求める事案である。 2 前提事実(証拠等の掲示のない事実は当事者間に争いがない。以下、枝番の表示のない証拠は枝番の全てを含む。)20(1) 当事者等ア 原告は、医療コンサルティング業務等を目的とする株式会社である。 また、株式会社ディーピーシー(以下「DPC 社」という。)は、医薬品、医薬部外品、化粧品の販売並びに輸出入及び輸出入代行業務等を目的とする株式会社である。同社代表者は原告代表者であり、同人は、原告及びDPC 社の全発行済み株式をいずれも保有する者で25ある。(以上につき、甲16、18、20) 2 イ 被告は、医療製品の取扱い等を行うスイス連邦所在の会社である。 また、Salzmann AG St.Gallen(以下「ザルツマン社」とい ある。(以上につき、甲16、18、20) 2 イ 被告は、医療製品の取扱い等を行うスイス連邦所在の会社である。 また、Salzmann AG St.Gallen(以下「ザルツマン社」という。)は、医療用弾性ストッキング等を製造するスイス連邦所在の会社である。 被告は、平成25 年1 月1 日、ザルツマン社の一部門を母体として設立されたものである。(甲21、弁論の全趣旨)5(2) 被告商標1ザルツマン社は、平成15 年2 月7 日、以下の登録商標欄記載の商標(以下「被告商標1」という。)について国際登録を受け、同商標に係る商標権(以下「被告商標権1」という。)を取得した。その概要は次のとおりである。(甲22)国際登録番号 第562687 号10登録商標 商品の区分第10 類指定商品脚の痛みに苦しむ病人用の医療用圧迫ストッキング(3) 本件販売契約1 の締結ザルツマン社とDPC 社は、平成21 年6 月、Venosan ブランドの医療用圧迫ストッキン15グ等(以下「被告製品」という。)に関する販売契約(甲26。以下「本件販売契約1」という。)を締結した。前記のとおり、DPC 社代表者は、同社及び原告の全発行済み株式をいずれも保有する者であることから、原告は、本件販売契約1 の「関連会社」(第1.3 条)に該当する。 本件販売契約1 には、次の定めがある。 20「1.定義…1.3 「DPC 社」とは、日本の…株式会社ディーピーシー及びその関連会社を意味するものとする。 1.4 「関連会社」とは、以下のものを意味するものとする。 ⅲ その過半数の所有権が、本契約のいずれかの当事者の過半数の所有権と直接的また25 3 は間接的に共通している組織。」「2. ライセン 会社」とは、以下のものを意味するものとする。 ⅲ その過半数の所有権が、本契約のいずれかの当事者の過半数の所有権と直接的また25 3 は間接的に共通している組織。」「2. ライセンスの付与2.1 ザルツマン社は、ここに、DPC 社に、地域内で製品を販売するために権利とライセンスを付与する。 2.2 原則として、ザルツマン社は、地域内の第三者に製品を直接供給しない。」53. 任命DPC 社は、ここに、自社名と自費で製品の配布を促進することに同意する。 DPC 社は、ザルツマン社の名前でまたは代理として、いかなる点においても契約や約束を締結してはならない。」「5. 供給される量…105.3 本第2 条の規定に従い、DPC 社は地域内で製品を販売するための独占的な権利とライセンスを付与されるものとする。」「6. 広告とプロモーション6.1 マーケティング戦略や販売、広告は、DPC 社の独自の裁量で、地域の市場状況を考慮に入れて行われる。その費用は、本契約に他の特定の事項が含まれていない限り、DPC15社が負担する。DPC 社は、毎年のマーケティング戦略について本契約に基づきザルツマン社に通知する。」「7. インターネットプロモーション7.1 当事者は、インターネットを介して製品を宣伝及び販売してもよい。…7.3 本契約の第6 条の規定は、当事者のインターネットプロモーションに適用されるも20のとする。」「10. 商標10.1 製品は、「Venosan」の商標で販売される。ザルツマン社はこの商標の権利及び所有権を保持し、…10.2 DPC 社は、製品を区別して販売するために商標「Venosan」のみを使用する義務が25ある。」 4 「19. 存続期間19 はこの商標の権利及び所有権を保持し、…10.2 DPC 社は、製品を区別して販売するために商標「Venosan」のみを使用する義務が25ある。」 4 「19. 存続期間19.1 本契約は、その締結により有効になり、第19.2 条に基づき、または相互合意により早く終了しない限り、1 年間有効である。本契約は、各月末までに6 ヶ月前までに書面で通知することにより当事者の一方が終了しない限り、自動的にさらに1 年間延長される。」(以上につき、甲26)5(4) 本件ドメイン名の登録等原告は、被告製品の広告・販売を目的として、平成22 年12 月1 日、株式会社日本レジストリサービス(以下「JPRS」という。)に本件ドメイン名を登録した。(甲3、弁論の全趣旨)原告は、その後、本件ドメイン名を使用したウェブサイト(以下「本件サイト」という。)10を立ち上げ、同サイトにおいて、被告製品の広告・販売を開始した。(乙3、4、6、11、弁論の全趣旨)また、DPC 社は、欧文字の「VENOSAN」及び片仮名の「ベノサン」を横書きに上下二段に書してなる商標(以下「DPC 社商標」という。)につき、平成24 年5 月2 日に商標登録出願し、同年12 月7 日、DPC 社商標に係る商標権(以下「DPC 社商標権」という。)の15設定登録を受けた。その商品の区分及び指定商品は、以下のとおりである。(甲28)商品の区分第25 類指定商品ポリウレタン製の弾性糸を使用したキャミソール、その他のキャミソール、ポリウレタン製の弾性糸を使用したノースリーブシャツ、その他のノースリーブシャツ、ティーシャツ、コルセット、その他の下着、弾性ストッキング(医療用のものを除く。)、20ポリウレタン製の弾性糸を使用した レタン製の弾性糸を使用したノースリーブシャツ、その他のノースリーブシャツ、ティーシャツ、コルセット、その他の下着、弾性ストッキング(医療用のものを除く。)、20ポリウレタン製の弾性糸を使用したストッキング、その他のストッキング、ウォームアップタイツ、スポーツタイツ、トレーディングタイツ、その他のタイツ、靴下、ポリウレタン製の弾性糸を使用した手袋、その他の手袋、腕カバー、腰保護用サポーター、弾性スリーブ、腕保護用サポーター、手首保護用サポーター、腕及び手首保護用サポーター、保温用サポーター、ゲートル25(5) 被告の設立等 5 被告は、平成25 年1 月1 日、ザルツマン社の一部門を母体として設立された。 また、ザルツマン社は、平成27 年9 月、被告に対し、被告商標権1 を譲渡した。 このような経緯の下、被告製品の販売母体はザルツマン社から被告に移行し、原告は、主に被告から被告製品を購入するようになった。 (6) 本件販売契約2 の締結5被告とDPC 社は、平成29 年6 月12 日、本件販売契約1 とほぼ同一内容の契約(甲31。 以下「本件販売契約2」という。)を締結した。 (7) 本件販売契約2 の終了被告は、DPC 社に対し、本件販売契約2 の第19.1 条に基づき、令和元年12 月9 日付けで、令和2 年6 月30 日の契約期間満了をもって本件販売契約2 を終了させる旨の通知を10行い、本件販売契約2 は同日をもって終了した。 (8) 被告商標2 及び3被告は、令和2 年2 月、以下の登録商標欄記載の各商標(以下、順に「被告商標2」、「被告商標3」といい、被告商標1 と併せて「被告商標」という。)について国際登録を受け、各商標に係る商標権(以下、被告商標2 及び3 に係る商標権と被告商標権1 の各商標(以下、順に「被告商標2」、「被告商標3」といい、被告商標1 と併せて「被告商標」という。)について国際登録を受け、各商標に係る商標権(以下、被告商標2 及び3 に係る商標権と被告商標権1 とを併せて「被15告商標権」という。)を取得した。(甲23、24)ア 被告商標2国際登録番号 第1404648 号登録日令和2 年2 月14 日登録商標 20商品の区分第10 類指定商品整形外科用品、医療用の圧迫ストッキング、医療用サポートタイツ、医療用の段階的な圧迫靴下、医療用の圧迫用メリヤス下着及び靴下、静脈瘤用のストッキング、医療用の靴下、医療用支持用靴下、外科用弾性ストッキング、整形外科用の膝用包帯、糖尿病患者用靴下、弾性包帯、医25 6 療用圧迫衣服、医療用の支持用タイツ、整形外科用の関節用包帯、整形外科用ベルト、整形外科用サポーター、整形外科用の支持包帯、整形外科用のギプス用パッド、塞栓保護装置、医療用の弾性ストッキングイ 被告商標3国際登録番号 第1403960 号5登録日令和2 年2 月28 日登録商標 商品の区分第10 類指定商品被告商標2 と同じ(9) 本件サイトの使用継続10原告は、本件販売契約2 が終了した令和2 年6 月30 日以降も、本件サイトを使用して、在庫品の被告製品及び被告製品以外の製品の販売を継続している。 (10) 本件規則JPRS は、「属性型(組織種別型)・地域型JP ドメイン名登録等に関する規則」(乙16。以下「本件規則」という。)を定め、これを属性型(組織種別型)及び地域型JP ドメイン名15の登録等に適用している。本件ドメイン名は属性型JP ドメイン名であり、原告は、本件ドメイン名の登録 。以下「本件規則」という。)を定め、これを属性型(組織種別型)及び地域型JP ドメイン名15の登録等に適用している。本件ドメイン名は属性型JP ドメイン名であり、原告は、本件ドメイン名の登録等に関し、本件規則の適用を受ける。 JPRS に属性型(組織種別型)又は地域型JP ドメイン名の登録をした者は、その登録に係るドメイン名について第三者との間に紛争がある場合、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(以下「JPNIC」という。)が定める「JP ドメイン名紛争処理20方針」(甲15。以下「紛争処理方針」という。)に従った処理を行うことに同意することとされ(本件規則40 条前段)、JPRS は、上記紛争について、JPNIC が認定する紛争処理機関 7 (以下「認定紛争処理機関」という。)の裁定に従った処理を行うこととされている(同条後段)。認定紛争処理機関にて属性型地域型JP ドメイン名の登録取消の裁定があり、裁定結果の通知から10 営業日以内に裁判所へ出訴したことの証明が同ドメイン名の登録者からJPRS に対して提出されないときは、同ドメイン名の登録は必ず取り消されなければならないとされている(本件規則31 条6 号)。 5(11) 紛争処理方針JPNIC は、JPRS にドメイン名の登録をした者が登録したドメイン名の登録と使用から発生する、登録者と第三者との間のドメイン名に係る紛争処理に関する規約として、紛争処理方針を定めている。 紛争処理方針には次の定めがある。(甲15)10「第2 条 登録者による告知及び告知義務違反登録者は、ドメイン名の登録申請に際し、またはその維持・更新にあたり、JPRS に対し以下のことを告知する。…(b) 登録者が知る限りにおいて、当該ドメイン名の登録が、 よる告知及び告知義務違反登録者は、ドメイン名の登録申請に際し、またはその維持・更新にあたり、JPRS に対し以下のことを告知する。…(b) 登録者が知る限りにおいて、当該ドメイン名の登録が、第三者の権利または利益を侵害するものではないこと…15上記いずれかの事項が事実でなかった場合、登録者は本方針に従って当該ドメイン名登録の移転または取消を受ける場合があることに同意する。」「第3 条 ドメイン名登録の移転及び取消JPRS は、下記のいずれかに該当する場合には、当該ドメイン名登録の移転または取消の手続を行う。…20c. JPNIC が採択した本方針またはその改正版に基づいて実施され、登録者が当事者となっているJP ドメイン名紛争処理手続において、紛争処理機関におけるパネルが下したその旨の裁定を、JPRS が受領したとき」「第4 条 JP ドメイン名紛争処理手続本条は、登録者が、このJP ドメイン名紛争処理手続に応じなければならない紛争を定め25たものである。… 8 a. 適用対象となる紛争第三者(…「申立人」…)から、手続規則に従って紛争処理機関に対し、以下の申立てがあったときには、登録者はこのJP ドメイン名紛争処理手続に従うものとする。 (ⅰ) 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること5(ⅱ) 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと(ⅲ) 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていることこのJP ドメイン名紛争処理手続において、申立人はこれら三項目のすべてを立証しなければならない。 b. 不正の目的で登録または使用していることの証明10 的で登録または使用されていることこのJP ドメイン名紛争処理手続において、申立人はこれら三項目のすべてを立証しなければならない。 b. 不正の目的で登録または使用していることの証明10紛争処理機関のパネルが、本条a 項(ⅲ)号の事実の存否を認定するに際し、特に以下のような事情がある場合には、当該ドメイン名の登録または使用は、不正の目的であると認めなければならない。ただし、これらの事情に限定されない。…(ⅳ) 登録者が、商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトもしくはその他のオンラインロケーション、またはそれらに登場する商品及びサービスの出所、スポンサーシップ、15取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図して、インターネット上のユーザーを、そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに誘引するために、当該ドメイン名を使用しているときc. 登録者がドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していることの証明…パネルが、申立人及び登録者の双方から提出されたすべての証拠を検討し、本条a 項20(ⅱ)号の事実の存否を認定するに際し、特に以下のような事情がある場合には、登録者は当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していると認めなければならない。ただし、これらの事情に限定されない。 (ⅰ) 登録者が、当該ドメイン名に係わる紛争に関し、第三者または紛争処理機関から通知を受ける前に、商品またはサービスの提供を正当な目的をもって行うために、当該ドメ25イン名またはこれに対応する名称を使用していたとき、または明らかにその使用の準備を 9 していたとき」(12) 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルの裁定被告は、令和3 年3 月8 日、紛争処理方針に基づき、認定紛争処 していたとき、または明らかにその使用の準備を 9 していたとき」(12) 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルの裁定被告は、令和3 年3 月8 日、紛争処理方針に基づき、認定紛争処理機関である日本知的財産仲裁センターに対し、本件ドメイン名の登録につき取消しの裁定を求める申立てを行った。(甲4)5上記センター紛争処理パネルは、同年6 月30 日、本件ドメイン名の登録取消しを命じる裁定(以下「本件裁定」という。)をし、これを受領した日本知的財産仲裁センターは、同年7 月1 日、原告に対し、本件裁定を通知した。 第3 争点1 本件ドメイン名に関係する原告の権利又は正当な利益の有無102 不正の目的による本件ドメイン名の登録又は使用の有無第4 争点に関する当事者の主張1 争点1(本件ドメイン名に関係する原告の権利又は正当な利益の有無)について【被告の主張】本件ドメイン名と被告商標は同一又は類似するため、原告による本件ドメイン名の使用15は被告商標権に対する侵害に当たる。被告は原告に対して本件ドメイン名の使用を許可しておらず、仮に本件販売契約2 が本件ドメイン名の使用を許可したものと解釈されるとしても、本件販売契約2 は既に終了した。 したがって、原告は、本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有しない。 【原告の主張】20本件ドメイン名が被告商標と類似することは争わない。しかし、本件は商標権侵害に関する訴訟ではないから、被告商標権の侵害の有無は本件とは無関係である。 仮に、商標権がドメイン名に関係する権利又は正当な利益に影響し得るとしても、被告商標権は第10 類を指定商品とするものに過ぎず、他方、DPC 社は第25 類を指定商品とするDPC 社商標を有していることから、原告による本件 に関係する権利又は正当な利益に影響し得るとしても、被告商標権は第10 類を指定商品とするものに過ぎず、他方、DPC 社は第25 類を指定商品とするDPC 社商標を有していることから、原告による本件ドメイン名の登録及び使用には影響25しない。また、原告が正規の販売元である被告から被告製品を購入して本件サイト上で広 10 告・販売する行為は、いわゆる正規品を並行輸入する場合と同視できるため、実質的違法性を欠いており、被告商標権に対する侵害行為には当たらない。 そもそも、原告は、本件販売契約1 及び2 を実施するという正当な目的をもって行うために本件ドメイン名を使用していたのであって、その正当性は本件販売契約2 の終了後も存続しているから、紛争処理方針4 条c(ⅰ)に該当する。そのため、原告が本件ドメイン名5に関係する権利又は正当な利益を有していると認められなければならない。また、原告は、本件販売契約2 の終了後にも被告製品に含まれる医療用圧迫ストッキングを販売しているが、これは、被告から一方的に本件販売契約2 を終了させられ、それについて補償も受けていない状況において、それ以上の経済的損失を回避することを目的としたものであるから、正当な行為である。 10したがって、原告は、本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有する。 2 争点2(不正の目的による本件ドメイン名の登録又は使用の有無)について【被告の主張】原告による本件ドメイン名の使用は、被告商標権に対する侵害に当たる。また、原告は、本件サイトにおいて、被告製品のみならず、本件ドメイン名に関係しない被告製品以外の15製品も多数取り扱っている。このような状況を踏まえると、原告は、商業上の利得を得る目的で、本件サイトに登場する商品の出所、スポンサーシップ、取引 らず、本件ドメイン名に関係しない被告製品以外の15製品も多数取り扱っている。このような状況を踏まえると、原告は、商業上の利得を得る目的で、本件サイトに登場する商品の出所、スポンサーシップ、取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生じさせることを意図して、インターネット上のユーザーを本件サイトに誘引するために本件ドメイン名を使用しているというべきであり、紛争処理方針4 条b(ⅳ)に該当する事実が認められる。 20したがって、原告は、本件ドメイン名を不正の目的で登録又は使用しているといえる。 【原告の主張】原告は、本件ドメイン名を原告の商号の略称として使用したに過ぎず、商品の出所等について誤認混同を生じさせることを意図していない。そもそも、「VENOSAN」の名称は日本において周知又は著名なものではなく、原告が誤認混同を生じさせるメリットもない。 25したがって、原告は、本件ドメイン名を不正の目的で登録又は使用しているといえない。 11 第5 当裁判所の判断1 争点1(本件ドメイン名に関係する原告の権利又は正当な利益の有無)について(1) 原告は、本件ドメイン名をJPRS に登録し、本件ドメイン名を使用した本件サイト上で被告製品を広告・販売している(前提事実(4)及び(9))。しかし、本件ドメイン名が被告商標と類似することは当事者間に争いがないことなどに鑑みると、原告が本件サイト上で5被告商標の指定商品である医療用圧迫ストッキング等の被告製品を広告・販売する行為は、被告商標の使用(商標法2 条3 項8 号)として、被告の許諾等がない限り、被告商標権の侵害に当たる。 本件販売契約1 及び2 においては、いずれも、被告製品に係る原告の独占的販売権を認めること(第2 条、第3 条、第5 条)、被告製品につき て、被告の許諾等がない限り、被告商標権の侵害に当たる。 本件販売契約1 及び2 においては、いずれも、被告製品に係る原告の独占的販売権を認めること(第2 条、第3 条、第5 条)、被告製品につき、「Venosan」の商標で販売され、ザ10ルツマン社ないし被告はこの商標に係る商標権を保持すること(第10.1 条)、DPC 社は、被告製品を区別して販売するために商標「Venosan」のみを使用する義務があること(第10.2条)が定められているが、ザルツマン社ないし被告が原告に対し被告商標のドメイン名としての使用を許諾する趣旨の明示的な規定はない。仮に、インターネット上の広告とプロモーション(第6 条、第7 条)の一環として被告商標をドメイン名として使用することが15許諾されていると解し得るとしても、これらの契約は既に終了している(前提事実(7))。また、本件販売契約1 及び2 には、契約終了後の被告商標の使用に関する規定は存在しない。 そのため、本件販売契約1 及び2 は、本件販売契約2 の終了後における原告の本件ドメイン名の使用継続を正当化し得るものではない。その他本件販売契約2 終了後における本件ドメイン名の原告による使用継続を正当とすべき事情は見当たらない。 20したがって、少なくとも、原告が本件販売契約2 の終了後に本件サイト上で被告商標の指定商品である被告製品の広告・販売を継続する行為は、被告商標権に対する侵害に当たる。このことは、原告が本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有しないことをうかがわせる。 (2) これに対し、原告は、①被告商標権侵害の有無は本件訴訟と無関係であること、②25被告商標権は第10 類を指定商品とするものに過ぎないこと、③原告が広告・販売している 12 被告製品は被告から購 対し、原告は、①被告商標権侵害の有無は本件訴訟と無関係であること、②25被告商標権は第10 類を指定商品とするものに過ぎないこと、③原告が広告・販売している 12 被告製品は被告から購入した物であるため正規品を並行輸入する場合と同じく実質的違法性がないこと、④原告は本件販売契約1 及び2 を実施するという正当な目的をもって本件ドメイン名を使用しているため紛争処理方針4 条c(ⅰ)に該当すること、⑤原告が被告製品の広告・販売を継続しているのは本件販売契約2 の終了に伴う経済的損失を回避するための正当な行為であることなどを主張する。 5しかし、①については、紛争処理方針によれば、ドメイン名の登録者は、ドメイン名の登録申請・維持・更新にあたり、登録者が知る限りにおいて、当該ドメイン名の登録が第三者の権利又は利益を侵害するものでないことの告知義務を負っており、これが事実でなかった場合、登録者は処理方針に従って当該ドメイン名登録の取消し等を受ける場合があることに同意することとされていること(紛争処理方針2 条(b))などに照らすと、ドメイ10ン名の登録者が当該ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有しているか否かの判断に当たり、当該ドメイン名の登録、使用等が商標権を含む第三者の権利又は利益を侵害するものであるか否かを考慮することはむしろ当然といえる。②については、被告商標の指定商品に含まれる医療用圧迫ストッキング等の被告製品を実際に本件サイト上で広告・販売している以上、被告商標が第10 類のみを指定商品とすることは、本件ドメイン名に関係15する原告の権利又は正当な利益の有無を左右するものではない。③については、仮に被告製品の販売等が正規品の並行輸入として許容され得るとしても、被告製品以外の製品の販売等をも行う本件サイトの 係15する原告の権利又は正当な利益の有無を左右するものではない。③については、仮に被告製品の販売等が正規品の並行輸入として許容され得るとしても、被告製品以外の製品の販売等をも行う本件サイトのドメイン名として被告商標に類似するものを用いることが許容されることにはならない。④及び⑤については、既に本件販売契約1 及び2 が終了している以上、これらの契約により本件ドメイン名の原告による継続使用を正当化し得るもので20はなく、また、契約終了の6 か月前に契約終了通知を要すること(本件販売契約1 及び2の第19 条)は、契約終了に伴う経済的損失回避のための猶予期間とも理解し得ること(乙1 参照)などに鑑みると、いずれも本件販売契約2 の終了後も原告が本件ドメイン名を継続使用することを正当化し得る事情には当たらない。 その他原告が縷々指摘する事情を踏まえても、原告の本件ドメイン名に関係する権利又25は正当な利益を基礎付ける事情は見当たらない。 13 (3) 上記各事情を総合的に検討すると、原告は、本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有しないと認められる。この点に関する原告の主張は採用できない。 2 争点2(不正の目的による本件ドメイン名の登録又は使用の有無)について前提事実(4)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、被告製品の販売に関するマーケティング戦略及び販売促進活動の一環として本件ドメイン名を登録して使用し、少なくとも、被5告製品の需要者に対し、被告製品の販売元であるザルツマン社又は被告と原告との間に取引提携関係又は推奨関係があると認識させることを意図して、インターネット上のユーザーを本件サイトに誘引する目的で本件ドメイン名を使用してきたことが認められる。しかし、令和2 年6 月末の本件販売契約2 の終了に伴 推奨関係があると認識させることを意図して、インターネット上のユーザーを本件サイトに誘引する目的で本件ドメイン名を使用してきたことが認められる。しかし、令和2 年6 月末の本件販売契約2 の終了に伴い原告と被告との間の取引提携関係等も終了しており、原告も当然これを認識していると考えられる。 10しかるに、証拠(乙3、4)及び弁論の全趣旨によれば、本件サイトには、令和3 年2 月8 日時点で、被告商標2 及び3 が表示されると共に、被告製品ではない「コットンプレミアムシリーズ」の商品紹介として「医療用弾性ストッキングのトップブランド、スイス・ベノサン社が一般向けに製造販売。」、「初めてのベノサン・入門モデル」、「人気モデル7000の入門版」などといった記載や、「ベノサンストーリー」として、ザルツマン社の設立から15始まる「ベノサン」ブランドの歴史の紹介記事があることが認められる。これらの記載等から、本件サイトを閲覧した需要者は、被告製品以外の製品である「コットンプレミアムシリーズ」の出所につき被告と誤認混同する恐れがあるといえる。なお、本件サイトの上記各記載等は、仮に本件販売契約2 の終了前から存在し、終了後も残っていただけであったとしても、このことは、本件販売契約2 の存続中から被告製品でない「コットンプレミ20アムシリーズ」につき、原告があたかも被告製品であるかの如く紹介していたことを示すのであって、需要者をして、同シリーズを被告製品と誤認混同させる意図の下に置かれていたことがうかがわれる。 これらの事情を総合的に考慮すると、原告は、少なくとも本件販売契約2 の終了後は、原告と被告との間の取引提携関係又は推奨関係について誤認混同を生じさせることを意図25して本件ドメイン名を使用しているとみるべきであり、これは、紛争処理方 、少なくとも本件販売契約2 の終了後は、原告と被告との間の取引提携関係又は推奨関係について誤認混同を生じさせることを意図25して本件ドメイン名を使用しているとみるべきであり、これは、紛争処理方針4 条b(ⅳ)に 14 該当する。 したがって、原告は、少なくとも本件販売契約2 の終了後は、本件ドメイン名を不正の目的で使用していることが認められる。 これに対し、原告は、本件ドメイン名は原告の商号の略称として使用したに過ぎないなどと主張する。しかし、証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件販売契約15の締結と同時期である平成21 年5 月1 日に、「メディラインジャパン有限会社」を商号変更し、移行したことにより設立された会社であることが認められるから、その商号自体、被告製品の販売元であるザルツマン社又は被告との間に取引提携関係等があると認識させることを意図して定められたものとみられる。このため、本件ドメイン名につき原告の商号の略称を使用したものと理解したとしても、本件販売契約2 の終了後におけるその継続10使用につき不正の目的によるものであることを否定すべき事情とはいえない。その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない。 3 まとめ以上より、本件ドメイン名に関しては、紛争処理方針4 条a 所定の項目(ⅰ)~(ⅲ)のいずれも認められるから、本件ドメイン名は本件規則に基づき取り消されるべきものといえる。 15第6 結論よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47 部 20 裁判長裁判官 杉浦正樹 25 15 裁判官 文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47 部 20 裁判長裁判官 杉浦正樹 25 15 裁判官 小口五大 5裁判官稲垣雄大は、てん補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 10 杉浦正樹 16 (別紙)当事者目録 原告株式会社ベノサンジャパン 同訴訟代理人弁護士小泉妙子 被告スイスラスティック・アクチェンゲゼルシャフト・ザンクト・ガレン 同訴訟代理人弁護士十河陽介
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