- 1 -主文 被告は,原告Aに対し,2184万4200円及びこれに対する平成16年9月8日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告有限会社ウォズに対し,350万円及びこれに対する平成16年9月8日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告Aに生じた費用の10分の4と被告に生じた費用の100分の6を原告Aの負担とし,原告有限会社ウォズに生じた費用の10分の9と被告に生じた費用の100分の54を原告有限会社ウォズの負担とし,その余の費用を被告の負担とする。 この判決の第1項及び第2項は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告Aに対し,3699万4024円及びこれに対する平成16年9月8日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告有限会社ウォズ(以下「原告ウォズ」という)に対し,27。 06万6561円及びこれに対する平成16年9月8日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告らが,火災により損害が生じたとして,損害保険会社である被告との間でそれぞれ締結した保険契約に基づき,被告に対し,保険金及び遅延損害金の支払をそれぞれ求めたものである。 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は証拠を挙げる。それ以外の事実は争いのない事実である)。 㨯原告ウォズは,スポーツ用品の販売等を業とする有限会社であり,原告Aは,原告ウォズの取締役である。 - 2 -原告Aは,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)の所有。 者であり,従前,同所において個人でスノーボード用品等の販売を営んでいたところ,平成7年2月,原告ウォズを設立した。原 - 2 -原告Aは,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)の所有。 者であり,従前,同所において個人でスノーボード用品等の販売を営んでいたところ,平成7年2月,原告ウォズを設立した。原告ウォズは,同所に本店,事務所及び店舗(以下「本件店舗」という)を置き,上記の販売事業。 を引き継ぎ,営業していた(甲18。 )被告は,損害保険を業とする株式会社である。 㨯本件建物は,長方形の短辺の一つが斜めとなった台形様の木造建物である。 本件建物の上記斜めとなった一辺は,北西方向から南東方向へ走る直線道路に面しており,建物全体としては,おおよそ,北北東方向から南南西方向に長く伸びた形状となる(このように,本件建物の向きは東西南北の方位に合致していないため,便宜上,以下では,本件建物を東西に長いものとして方位を記載する。この記載方法によると,本件建物は,東側の短辺が斜めになっており,これが上記道路に面していることになる。 。)㨯本件建物は,昭和61年8月10日に新築されているところ,登記簿上,木造スレート葺2階建となっているが(甲9,現況は,木造一部3階建セ)メント板葺(延床面積290.09平方メートル)である(乙4。本件建)物の1階東側は原告ウォズの倉庫,同西側は原告ウォズの事務室(以下「本件事務室」という,2階東側はBの経営するレストラン「バロンドー。)ル(以下「レストラン」という,同西側は原告ウォズの経営する本件店」。)舗,3階は原告ウォズの物置等として用いられていた(乙4,19。 )㨯原告Aは,平成15年9月19日,被告との間で,以下の内容の店舗総合保険契約(以下「本件保険契約①」という)を締結した(甲1,6。 。 )ア保険種類店舗総合保険イ証券番号AB98067595ウ保険期間平成15年9月 被告との間で,以下の内容の店舗総合保険契約(以下「本件保険契約①」という)を締結した(甲1,6。 。 )ア保険種類店舗総合保険イ証券番号AB98067595ウ保険期間平成15年9月19日から平成16年9月19日午後4時まで- 3 -エ保険の目的本件建物,設備・什器等(設備装置,機械,器具工具,什器備品,造作等)オ保険金額建物につき3000万円,設備・什器等について300万円カ保険料16万2210円(一時払い)キ免責条項保険契約者,被保険者またはこれらの者の法定代理人(保険契約者または被保険者が法人であるときは,その理事,取締役または法人の業務を執行するその他の機関)の故意もしくは重大な過失または法令違反により生じた損害または傷害に対しては,保険金を支払わない(店舗総合保険。 普通保険約款2条1項1号)㨯原告ウォズは,平成15年10月29日,被告との間で,以下の内容の動産総合保険契約(以下「本件保険契約②」という)を締結した(甲2,。 7。 )ア保険種類動産総合保険イ証券番号AC06436996ウ保険期間平成15年10月30日から平成16年10月30日午後4時までエ保険の目的商品,業務用現金オ保険金額5000万円カ保険料3万5000円(一時払い)キ免責条項保険契約者,被保険者もしくは被保険者以外の保険金を受け取るべき者またはこれらの者の法定代理人(これらの者が法人であるときはその理事,取締役または法人の業務を執行するその他の機関)の故意または重大な過失によって生じた損害に対しては,保険金を支払わない(動産総合。 - 4 -保険普通保険約款3条1項7号)㨯平成16年3月5日午後8時57分ころ,本件建物において火災(以下「本件火災」という)が発生し, 生じた損害に対しては,保険金を支払わない(動産総合。 - 4 -保険普通保険約款3条1項7号)㨯平成16年3月5日午後8時57分ころ,本件建物において火災(以下「本件火災」という)が発生し,本件建物のうち,1階24.3平方メー。 トル,2階46.98平方メートル,3階33.21平方メートル,延べ104.49平方メートルが焼損したほか,同建物内に存在した事務用備品,商品等が焼損した。本件火災の出火場所は,本件事務室であった。 争点 㨯本件火災の偶発性の主張・立証責任の所在㨯本件火災の発生原因及び保険金支払免責事由の存否㨯原告Aの損害㨯原告ウォズの損害 当事者の主張の骨子㨯争点㨯(本件火災の偶発性の主張・立証責任の所在)について(原告ら)火災保険については,商法は,火災によって生じた損害はその火災の原因いかんを問わず保険者が填補する責任を負い,保険契約者又は被保険者の悪意又は重大な過失によって生じた損害は保険者が填補責任を負わない旨定めており,火災発生の偶然性いかんを問わず火災の発生によって損害が生じたことを火災保険金請求権の成立要件とするとともに,保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって損害が生じたことを免責事由としたものと解される(最二小判平成16年12月13日民集58巻9号2419頁参照。本件において,原告らは本件火災により損害を被ったのであるから,)本件保険契約①及び同②に基づき,被告に対し保険金請求権を有する。 (被告)ア火災保険については,火災保険金の請求者は当該火災発生の偶然性についての主張,立証を要しない。 - 5 -イしかし,動産総合保険については,同普通保険約款は「偶然な事故に,よって生じた損害」に対し損害保険金を支払うとし,さらに,保険契約者,被保険者等の故意又は重大 張,立証を要しない。 - 5 -イしかし,動産総合保険については,同普通保険約款は「偶然な事故に,よって生じた損害」に対し損害保険金を支払うとし,さらに,保険契約者,被保険者等の故意又は重大な過失によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨規定しているのであり,これは,事故の偶然性の立証責任が請求者側にあることを明示した規定である。なお,同約款と同様の構造を持つ約款を用いる傷害保険契約に関しては,保険金を請求する側が,当該事故の偶然性を主張,立証する必要があるものとされている。また,火災保険については,商法665条という特則が存在するが,それ以外の保険については,商法上このような特則は存在しない。さらに,動産総合保険は事故の内容が極めて多様であるところ,保険会社は,事故原因に関する証拠への近接性を欠き立証が困難であるのに対し,保険金請求者側はこれらが容易であるという当事者間の衡平性も考慮する必要がある。 これらの諸事情にかんがみれば,動産総合保険では,保険事故の偶然性に関する主張立証責任は,保険金請求者側にあると解するべきである。 㨯争点㨯(本件火災の発生原因及び保険金支払免責事由の存否)について(原告ら)ア本件火災の発生原因について本件火災の発生原因は,原告ウォズの従業員であり店長であったCが,本件事務室においてたばこの吸い殻を適切に処分しなかったことによるものと思われる。 これは,原告らにとっては,偶然の事故である。 イ保険金支払免責事由の存否について㨯原告Aが本件建物に放火したことは否認する。 消防の火災原因の判定は,焼けの状況に合致する合理的なものであり,被告の指摘する油脂反応は消防の検査では検出されていない。本件建物が木造で準耐火性でもないことを考えれば,有炎発火は原告Aが本件事- 6 -務室を退出した 焼けの状況に合致する合理的なものであり,被告の指摘する油脂反応は消防の検査では検出されていない。本件建物が木造で準耐火性でもないことを考えれば,有炎発火は原告Aが本件事- 6 -務室を退出した後20分以上経ってからのことと推測される。原告ウォズに多額の借入金があり,営業成績が芳しくなかったことは認めるが,原告Aは家族の収入で生活することが可能であったし,超過保険が禁止されている火災保険の場合,原告Aには本件建物に放火することにより何らの経済的利益がないことは理解していた。原告Aに放火の動機はない。 㨯原告らには,火災発生について重過失はない。 重過失とは,通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも,わずかの注意さえすればたやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに,漫然これを見過ごしたような,ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指す。 本件において,原告Aは,本件火災覚知の30分以上前に本件事務室を退出しており,有炎発火はその約20分後と思われる。すなわち,原告Aの退出時には,まだ,誰が見ても出火すると当然認識できる状態ではなく,被告が主張するような煙,におい等の発生を見落としたわけではない。また,従来から原告Aは,Cには,たばこの吸い殻を捨てる際には,十分気をつけるように注意指導しており,本件火災が起きるまで,事故が発生したことはない。このことからすれば,原告Aに,重過失はない。 なお,Cは単なる従業員であり,原告ウォズの業務執行機関ではないので,Cの過失が原告ウォズに対する関係で問題となることはない。 (被告)ア本件火災の発生原因は,原告Aの放火である。 㨯本件においては,本件建物西側1階の本件事務室内から出火しており,消防機関は「ゴミ箱に入れたたばこの吸い殻」が出火原因である旨判断しているが,こ ア本件火災の発生原因は,原告Aの放火である。 㨯本件においては,本件建物西側1階の本件事務室内から出火しており,消防機関は「ゴミ箱に入れたたばこの吸い殻」が出火原因である旨判断しているが,この判断は,厳密に出火場所を特定していないこと,水に- 7 -浸したたばこから出火するとは思えないこと,たばこの吸い殻が焼け残っていること,たばこの吸い殻を捨てたゴミ箱が本件事務室の床の燃焼部分の端に位置することなど,不合理な点が多々ある。そして,これらの事実に,本件事務室内で使用されていた石油ストーブは,同室の床の燃焼箇所から離れており本件火災の出火原因とは考えられないこと,原告Aはたばこ吸い殻による無炎着火から発生する煙やにおいに気付いていないこと,本件事務室内で最も燃焼が激しいのは,北側の長机下付近であり,ここからは灯油に相当する油性成分が検出されていることを併せ考えると,本件火災は,放火と断じざるを得ない。 㨯そして,原告らの経済状態を見ると,原告ウォズは,平成10年8月1日ないし平成11年7月31日の間に1億6123万円あった売上高が,平成14年8月1日ないし平成15年7月31日には2751万円にまで減少し,当期未処理損失は2430万円,長期・短期借入金合計は4231万円で,原告ウォズの年間売上高の1.5倍にも上り,営業継続も不可能な状態であった。さらに,この期間は,一般管理費中役員報酬0円,広告宣伝費1万円,減価償却費0円という異常な経理内容であるが,それにもかかわらず2130万円の債務超過であって,早晩倒産することは必至であった。原告Aも,平成15年の所得税確定申告書によれば月収16万円強にすぎず,日常生活を送ることも不可能な状態であった。 㨯このように,原告らには,十分放火動機があり,本件事務室を最後に退出した原告Aに 告Aも,平成15年の所得税確定申告書によれば月収16万円強にすぎず,日常生活を送ることも不可能な状態であった。 㨯このように,原告らには,十分放火動機があり,本件事務室を最後に退出した原告Aには放火の機会もあったのであって,本件火災は原告Aの放火によるものである。 イ仮に,Cがゴミ箱に捨てたたばこの吸い殻が原因で本件火災が生じたとしても,たばこの吸い殻が捨てられてから有炎着火に移行するには約15分が必要であり,煙やにおいも発生する。原告Aは,この間本件事務室内- 8 -におり,最後の退出者として火の元等の点検をしているはずであるのに,これに気付かなかったとすれば,原告Aには重大な過失がある。 ウよって,被告は,店舗総合保険普通約款2条1項1号及び動産総合保険普通保険約款3条1項7号により,各保険金を支払う義務を有しない。 㨯争点㨯(原告Aの損害)について(原告A)ア建物分:2760万円㨯本件建物が半焼したことによる修復費用(再調達価格)は2760万円である。 火災保険の場合,新価保険契約の場合には,全部焼失のときはその保険価額が填補される損害であり,一部焼失のときはその焼失した部分の修理費が填補される損害である。被告は,一部焼失の場合,修理費を減価償却するべきと主張するが,古い建物が一部焼失した場合にこれを修理しても,建物全体の価値は増加しない。被保険者が被った損害については,保険金額(古い建物については経年による妥当な減額がされた額)の範囲内で支払われる限りでは特別に利得が生じていないと考えるべきである。 㨯本件建物を全部建て替えた場合の費用は5490万円である。本件建物の時価を算出するにあたり,減価償却を考えるにしても,被告の主張する法定減価償却率年5パーセントは,会計処理上の基準にすぎず,現実の時価を算出す 部建て替えた場合の費用は5490万円である。本件建物の時価を算出するにあたり,減価償却を考えるにしても,被告の主張する法定減価償却率年5パーセントは,会計処理上の基準にすぎず,現実の時価を算出するには妥当な基準ではない。仮に減価償却を認めるとしても年1.9パーセント程度が妥当である。本件建物の新築時から本件火災までの期間17.5年の減価償却を考えると,本件建物の時価は3664万円になる。本件保険契約①の保険金額は3300万円であり,保険金額と直に大きな乖離があるとはいえない。本件火災による損害はその範囲内にあるものとして,全額填補されるべきである。 - 9 -5490万円×(1-0.019×17.5年)=3664万円イ什器・備品分:148万5477円原告Aは,本件火災により,本件建物内に存在した別紙39及びNo.40(ただし,本件火災による損害として主張するのはワープロ16No.万2740円のみ)の什器備品を失った。これら合計141万4740円に消費税5パーセント分を加えた148万5477円が損害となる。 ウ臨時費用:500万円被告は,本件保険契約①により,本件火災による損害保険金の30パーセントに相当する額を臨時費用保険金として支払う義務を負い,ただし,その額は1構内ごとに500万円を限度とする(店舗総合保険普通保険約款1条8項,8条。 )本件では,上記ア2760万円の30パーセントのうち,限度額である500万円を支払う義務を負う。 エ取片付け費用:290万8547円被告は,本件保険契約①により,本件火災による損害保険金が支払われる場合において,損害を受けた保険の目的物の残存物の取片付けに必要な費用に対し,損害保険金の10パーセントに相当する額を残存物取片付け費用保険金として支払う義務を負う(店舗総合保険普通保険 支払われる場合において,損害を受けた保険の目的物の残存物の取片付けに必要な費用に対し,損害保険金の10パーセントに相当する額を残存物取片付け費用保険金として支払う義務を負う(店舗総合保険普通保険約款1条9項,9条。 )本件では,上記ア及びイの合計額2908万5477円の10パーセントに当たる290万8547円を支払う義務を負う。 オ原告Aは,本件火災の数日後,被告に対し,保険事故の報告をした。被告は,直ちに保険事故の調査を始め,現場である本件建物に出向いて本件建物や商品等の現地調査を行い,原告Aに対し,被災品の明細,火災発生原因調査の写し等の資料を被告に提出するよう求めた。原告Aは,これに応じ,消防署から火災発生原因調査の写し等を入手し,本件建物の修理見- 10 -積書,商品の焼損等についての書類を作成し,それらの書類を平成16年8月7日被告に送付した。 保険金支払は,保険金支払請求をしたときから30日以内(調査が終了しないときは,終了した時)にしなければならないところ,以上の諸事。 情にかんがみれば,被告は,本件火災に関する書類がほぼすべて被告の手元に届いた日の30日後である平成16年9月7日までに本件保険契約①に基づく保険金を支払う義務を負っていたというべきであり,被告は,同日の経過により履行遅滞に陥った。 カよって,原告Aは,被告に対し,本件保険契約①に基づく保険金3699万4024円及びこれに対する履行期限の翌日である平成16年9月8日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告)ア建物について保険により填補される損害額は時価であり,再調達価格ではない。本件建物は,昭和61年8月10日新築の木造建物であるが,通常の木造建物の耐用年数は20年であり(減価償却資産の耐用年数等に関 物について保険により填補される損害額は時価であり,再調達価格ではない。本件建物は,昭和61年8月10日新築の木造建物であるが,通常の木造建物の耐用年数は20年であり(減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表一による,定額法による減価償却率は年5パーセントであるから,本)件建物の本件火災当時の残存価値は,下記計算式のとおり345万円である。 2760万円×(1-(0.05×17.5年)=345万円)建物の使用価値を重視して,上記償却率を年2.5パーセントとしても,本件建物の残存価値は計算上1552万5000円となる。 2760万円×(1-(0.025×17.5年))=1552万5000円イ什器備品等について- 11 -別紙39中のレーザープリンタ,ユニパックパソコン及び No.No.のワープロは,購入年がそれぞれ平成3年及び平成5年であり,現在も使用されているとは思われない。原告ウォズは,平成8年及び平成13年にパソコンを購入しており,上記パソコン及びワープロは破棄されたと思われる。仮に残存していても,これら機器の耐用年数は4ないし5年であるから,時価は残存価格の10パーセントを超えることはない。 平成5年及び平成9年に購入したとする同39中のガラスケース及No.び棚も耐用年数を経過しており,時価は残存価格の10パーセントである。 その余の機器は,内容が不明であり,什器・備品とは認定できない。 㨯争点㨯(原告ウォズの損害)について(原告ウォズ)ア商品等:2187万8692円原告ウォズは,本件火災により,本件建物内に存在した別紙1ないN0.し38の商品を失った。これら合計額2083万6850円に消費税No.5パーセント分を加えた2187万8692円が損害となる。 イ臨時費用:300万円被告は, 内に存在した別紙1ないN0.し38の商品を失った。これら合計額2083万6850円に消費税No.5パーセント分を加えた2187万8692円が損害となる。 イ臨時費用:300万円被告は,本件保険契約②により,本件火災による損害保険金の30パーセントに相当する額を臨時費用として支払う義務を負い,ただし,その額は1構内ごとに300万円を限度とする(動産総合保険普通保険約款1条2項,21条3項。 )本件では,上記ア2187万8692円の30パーセントのうち,限度額である300万円を支払う義務を負う。 ウ取片付け費用:218万7869円被告は,本件保険契約②により,本件火災による損害保険金が支払われる場合において,損害を受けた保険の目的物の残存物の取片付けに必要な費用に対し,損害保険金の10パーセントに相当する額を取片付け費用と- 12 -して支払う義務を負う(動産総合保険普通保険約款1条3項,21条4項。 )本件では,上記ア2187万8692円の10パーセントに当たる218万7869円を支払う義務を負う。 エ被告が,平成16年9月7日までに,原告ウォズに対し,本件保険契約②に基づく保険金支払義務を負っていたことは,上記㨯(原告A)オと同様である。 オよって,原告ウォズは,被告に対し,本件保険契約②に基づく保険金2706万6561円及びこれに対する履行期限の翌日である平成16年9月8日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告)原告ウォズの決算内容から見ると,原告ウォズは,平成14年7月末から売上高に対する在庫率比率が大きく崩れ,平成15年7月末時点では在庫量が年間売上高の55.9パーセント(6.71か月分)にも上っている。原告ウォズは,平成11年以降,平成13年を除き,ほぼ年間の ら売上高に対する在庫率比率が大きく崩れ,平成15年7月末時点では在庫量が年間売上高の55.9パーセント(6.71か月分)にも上っている。原告ウォズは,平成11年以降,平成13年を除き,ほぼ年間の仕入額が当該年度の売上原価となっていることから考えると(両者の金額の差は,仕入額の7ないし10パーセントの範囲内にある,売れる商品だけを仕入れて。)売っていたと思われる。平成12年8月ないし平成13年7月において,年間の仕入額が5209万円に対し,売上原価が7002万円となっており,その差額1793万円(仕入額の34.42パーセント)は,売却可能な物を安売り等で処理したと考えられ,原告ウォズは,従前からの在庫で売却可能な物はすべて売却したとみられるから,原告ウォズの上記在庫は,陳腐化して売れ残ったデッドストックである。 したがって,原告ウォズが平成15年8月1日から本件火災までの間に商品仕入れを行ったとしても,当該仕入れ商品はすぐに売却され,売れ残り比- 13 -率も仕入額の7ないし10パーセントであったはずである。仮に前年どおりの仕入れを行ったとすると,平成15年8月から本件火災の発生した平成16年3月までの7か月間の仕入額は,前年の12分の7に当たる954万円,その売れ残りはその7ないし10パーセントである67ないし95万円程度である。そして,前年度以前からの在庫(平成15年7月末の在庫高1539万円)はデッドストックであったから,その残存価値は10パーセント,154万円程度である。 よって,本件火災時における原告ウォズの商品在庫の時価は,上記額を加算しても250万円程度である。なお,消費税が加算されるのは,在庫が商品として売却されたときであるから,在庫の損害額として消費税5パーセント分を加算する理由はない。 第3当裁判所の判断 上記額を加算しても250万円程度である。なお,消費税が加算されるのは,在庫が商品として売却されたときであるから,在庫の損害額として消費税5パーセント分を加算する理由はない。 第3当裁判所の判断 事実経過㨯本件火災当時の本件建物の構造等争いのない事実等,証拠(甲3,4,9,乙2ないし6,16,19,20)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件建物は,登記簿上は昭和61年8月10日に店舗兼居宅として新築された木造スレート葺2階建の建物であるところ,現状は,木造一部3階建セメント板葺の建物である。 本件建物の北側及び南側にはそれぞれ駐車場があり,北側は主に従業員等関係者が,南側はそれぞれの店の客が利用していた。両駐車場は,本件建物1階中央部分にトンネル状に設けられた通路(幅約4.5メートル,長さ約8.1メートル,高さ約2.3メートル)により,相互に車両による行き来が可能であった。 イ本件建物の1階は,上記通路の西側が本件事務室,東側が原告ウォズの用品倉庫であった。 - 14 -2階は,構造上は一体であり,西側の本件店舗と東側のレストランは,壁で仕切られており,これら店舗に来店する客は,それぞれの店専用に本件建物外側に設置された外階段を利用して入店していた。なお,本件店舗とレストランの間にある従業員専用トイレは,双方の店舗の従業員が共有していたが,本件店舗から同トイレに通じる通路には扉があって本件店舗の側から施錠が可能であった。 3階は,本件店舗の天井に当たる一部が吹き抜けとなっており,その他の部分は,原告ウォズが物置等として利用していた。 1階の本件事務室と2階の本件店舗は,建物内部の階段を用いて行き来する構造であった。また,2階と3階との行き来は,本件店舗内の階段のみを用いて行われ,2階レストラン部分か 物置等として利用していた。 1階の本件事務室と2階の本件店舗は,建物内部の階段を用いて行き来する構造であった。また,2階と3階との行き来は,本件店舗内の階段のみを用いて行われ,2階レストラン部分から3階に上がることはできなかった。 㨯原告ウォズの経営状況等争いのない事実等,証拠(甲1,2,9,17ないし19,乙7ないし13,15,証人C,原告代表者兼原告本人A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告Aは,平成元年9月10日,本件建物を購入し,同所において,スノーボード用品等の販売店(本件店舗)を個人で営むようになり,平成7年2月には,原告ウォズを設立して経営するようになった。原告ウォズは,従前,山形県天童市及び同県酒田市にも店舗を有していたが,販売不振により,平成12年から平成13年2月末にかけてこれらをいずれも閉鎖し,本件火災時において営業していたのは,本件店舗のみであった。 原告ウォズは,平成10年9月,本件店舗の店長としてCを雇用した。 原告ウォズは,従前,従業員を複数雇用していた時期があったが,平成14年ころまでには従業員はCのみとなっており,本件火災当時も,原告A及びCの2名のみで本件店舗を運営していた。 - 15 -イ平成10年8月1日ないし平成15年7月31日の原告ウォズの財政状況は,概ね以下のとおりであった。 平成10年8月1日ないし平成11年7月31日(平成11年期末)の純売上高は1億6123万9377円,売上原価は1億2174万4677円,販売費・一般管理費は4998万0819円,営業損失は1048万6119円,資産総額は2175万7599円,負債総額は3078万8912円,当期未処理損失は1203万1313円(内当期損失は888万0224円)となり,903万1313円の債務超過となってい 万6119円,資産総額は2175万7599円,負債総額は3078万8912円,当期未処理損失は1203万1313円(内当期損失は888万0224円)となり,903万1313円の債務超過となっている。 同年8月1日ないし平成12年7月31日(平成12年期末)の純売上高は1億2351万8584円,売上原価は8836万8634円,販売費・一般管理費は4265万1556円,営業損失は750万1606円,資産総額は4160万4697円,負債総額は5828万2613円,当期未処理損失は1967万7916円(内当期損失は764万6603円)となり,1667万7916円の債務超過となっている。同年8月1日ないし平成13年7月31日(平成13年期末)の純売上高は9080万1013円,売上原価は7002万0728円,販売費・一般管理費は2618万9990円,営業損失は540万9705円,資産総額は3198万9904円,負債総額は5506万8956円,当期未処理損失は2607万9052円(内当期損失は640万1136円)となり,2307万9052円の債務超過となっている。同年8月1日ないし平成14年7月31日(平成14年期末)の純売上高は4579万4336円,売上原価は3058万2800円,販売費・一般管理費は1318万1542円,営業利益は202万9994円,資産総額は2481万8475円,負債総額は4719万2165円,当期未処理損失は2537万3690円(内当期利益は70万5362円)となり,2237万3690円の債務超過となっている。同年8月1日ないし平成15年7月31日(平成1- 16 -5年期末)の純売上高は2751万1074円,売上原価は1805万7253円,販売費・一般管理費は724万3388円,営業利益は221万0433円,資産総 平成15年7月31日(平成1- 16 -5年期末)の純売上高は2751万1074円,売上原価は1805万7253円,販売費・一般管理費は724万3388円,営業利益は221万0433円,資産総額は2142万7892円,負債総額は4272万9616円,当期未処理損失は2430万1724円(内当期利益は107万1966円)となり,2130万1724円の債務超過となっている。 このように,原告ウォズは,平成14年8月1日から平成15年7月31日までの1年間の売上高が,平成10年8月1日から平成11年7月31日までの1年間の売上高の約2割に落ち込んでおり,また,平成10年8月1日から平成15年7月31日までの会計年度5期分はいずれも債務超過の状態であったことからすれば,本件火災直前には,相当な販売不振の状況であったと認められる。 なお,原告ウォズの平成13年8月1日以降の会計年度2期で営業利益があがっているものの,これは,原告ウォズが,原告Aに対する役員報酬を,平成12年7月31日までの年額1200万円から,同年8月1日以降年額560万円に,平成13年8月1日以降年額210万円に,平成14年8月1日以降年額0円に,それぞれ減額し,また,平成11年8月1日以降減価償却を実施しないなどして一般管理費等を減らすことにより実現したものであり,原告ウォズの経営状態がよいことを裏付ける事実はいえない。 ウ原告ウォズの主要取引銀行である株式会社荘内銀行は,平成11年10月20日,本件建物,本件建物の敷地及び原告A個人所有の不動産に,極度額2400万円の根抵当権を設定した。 また,同銀行は,本件保険契約①に基づく原告Aの保険金請求権に対し質権を設定していた(なお,同銀行は,本件火災後,平成17年9月15日までに同質権を放棄した。 。)㨯原告Aの経 権を設定した。 また,同銀行は,本件保険契約①に基づく原告Aの保険金請求権に対し質権を設定していた(なお,同銀行は,本件火災後,平成17年9月15日までに同質権を放棄した。 。)㨯原告Aの経済状況等- 17 -争いのない事実等,証拠(甲13ないし16,18,乙8ないし12,19,原告代表者兼原告本人A)及び弁論の前趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告Aは,平成14年4月ころ,Bに対し,本件建物2階東側部分を賃貸し,Bは,同所でレストランを経営するようになった。本件火災当時,Bは,滞ることなく賃料月額18万7000円を支払っていた。 また,原告A及びBは,Bが原告Aから本件建物を買い取るという話をしたことがあったが,条件が折り合わず,話は具体的に進展しないまま立ち消えになった。 原告AとC及びBとレストランの従業員との間には特段のトラブルはなく,顔を合わせれば普通のあいさつを交わし,原告AがBの経営の相談に乗ったりすることもあった。 イ原告Aは,原告ウォズの取締役として,平成12年7月31日までは年額1200万円の役員報酬を受け取っていたが,同報酬は,同年8月1日以降年額560万円に,平成13年8月1日以降年額210万円に,それぞれ減額され,平成14年8月1日以降は全く報酬のない状態となった。 そのため,原告Aは,妻の収入(年額約141万円,父の収入(年額)約180万円)のほか,上記アの賃料収入で生活を維持していた。 㨯本件保険契約①及び②締結の経緯争いのない事実等,証拠(甲1,2,18,原告代表者兼原告本人A)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,原告Aが本件建物を購入した平成元年9月10日から間もなく,代理店の勧誘を機に,住友海上火災保険株式会社(ただし,同会社は,平成13年10月1日被告に吸収合併された)との の全趣旨によれば,原告らは,原告Aが本件建物を購入した平成元年9月10日から間もなく,代理店の勧誘を機に,住友海上火災保険株式会社(ただし,同会社は,平成13年10月1日被告に吸収合併された)との。 間で,原告Aは本件建物を目的物として店舗総合保険契約を,原告ウォズは本件建物内の商品について動産総合保険契約を,それぞれ締結したこと,原告ら及び被告は,上記各契約をいずれも数回更新し,平成15年,本件保険- 18 -契約①及び②を締結したことが,それぞれ認められる。 㨯本件火災に至る経緯争いのない事実等,証拠(甲3,4,18,19,乙1ないし5,16ないし20,証人C,原告代表者兼原告本人A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件火災当時,原告代表者である原告AとCの2人で本件店舗を運営しており,主にCが本件店舗において接客をし,原告Aは,本件事務室において事務を行うことが多かったが,来客が多いときなどは自ら本件店舗内で接客等をすることもあった。 イ通常,原告Aは,午前10時ないし午前10時15分ころ出勤し,Cは午前10時20分ころ出勤し,開店準備をして営業を始める。 本件店舗の閉店時間は午後8時であり,閉店後,Cは,その日の売上日報を記入し,売上金と照らし合わせた後,売上金を金庫に保管し,売上日報を原告Aに提出する。この作業に要する時間は10分程度である。その後,Cは,本件建物2階の本件店舗の出入り口,従業員用トイレに通じる扉の内鍵等を施錠し,冷暖房器具を使用している場合にはこれを止め,店内を消灯し,本件店舗内で使用した灰皿を持って内階段を用いて本件事務室に降りる。Cは,本件事務室において,持って降りた本件店舗内で使用した皿状の灰皿に,本件事務室内で用いた灰皿の中身をまとめて入れ,本件事務室内の流しで水道水 した灰皿を持って内階段を用いて本件事務室に降りる。Cは,本件事務室において,持って降りた本件店舗内で使用した皿状の灰皿に,本件事務室内で用いた灰皿の中身をまとめて入れ,本件事務室内の流しで水道水をかけて灰皿内のたばこの吸い殻を湿らせて,。 。 本件事務室内のゴミ箱(以下「本件ゴミ箱」という)に捨て,帰宅するウ2つの灰皿のたばこの吸い殻をまとめた本数は,通常30ないし40本程度であり,灰皿の中で重なり合い若干盛り上がる形となる。Cは,後でたばこの吸い殻から水を切る手間を省くため,水道水を上記吸い殻に回しかける際,湿らせる程度に留めていた。なお,本件店舗内には,水を張って使用するスタンド式の灰皿もあるが,Cは,この灰皿の処理を翌朝行っ- 19 -ていた。 エ原告Aは,Cから売上日報の提出を受けると,本件事務室において,これをパソコンに入力し,その日売れた商品をチェックするなどしており,Cより後に帰宅することが多かった。また,本件事務室内の消灯,戸締まり,火の元の確認等は,原告Aが,帰宅する前に行っていた。 オ本件ゴミ箱は,縦約35センチメートル,横約35センチメートル,高さ約47センチメートルの四角い合成樹脂製バケツであり,本件事務室の北側の壁から約50センチメートル,東側の壁から約1.1メートルの位置に置いてあった。原告A及びCは,本件ゴミ箱に,不要になったカタログ,ファクシミリ用紙等の紙類を横に積むように入れていたため,Cが,上記のように閉店後たばこの吸い殻を捨てるときには,本件ゴミ箱には,ほぼ常に上記のような束状の紙類が重なって入っていたが,Cは,火が消えている限り危険はないと考え,特段注意を払うこともなくこれら紙類の上にたばこの吸い殻を捨てていた。また,本件ゴミ箱の中身を空けるのは2週間に1回程度であったため,本件ゴミ っていたが,Cは,火が消えている限り危険はないと考え,特段注意を払うこともなくこれら紙類の上にたばこの吸い殻を捨てていた。また,本件ゴミ箱の中身を空けるのは2週間に1回程度であったため,本件ゴミ箱の中には,紙類とたばこの吸い殻が日ごとに層をなしてたまっていく状態であった。 カ平成16年3月6日,原告Aは午前10時15分ころ出勤し,本件事務室内の石油ストーブに給油したが,その際灯油を床にこぼしたため,新聞紙でこれをふき取り,そのまま本件ゴミ箱に捨てた。 原告A及びCは,通常どおり本件店舗の営業を行った。原告Aは,通常どおり午後8時に閉店し帰宅する積もりで,午後8時前から,本件建物北側駐車場に止めてあった自分の自動車の暖機運転を始めたが,閉店時間間際に客が来店し,閉店が午後8時を数分過ぎた。客の応対をしたのはCであり,Cは,閉店後,上記イのとおりの手順で後片付け等を行い,本件店舗で用いていたストーブも消し,店舗用灰皿を持って本件事務室に降りた。 原告Aは,この時,本件事務室内でたばこを吸っていたが,Cが引き続- 20 -き同室内の灰皿を片付けようとしたため,当該たばこの火を消してCに渡したが,本当に火が消えたのかどうかは確認せず,Cも特に意識しなかった。Cは,上記ウのとおり2つの灰皿のたばこの吸い殻をまとめ,水道水を少量かけた後,本件ゴミ箱に捨てた。この時,本件ゴミ箱には,紙類が8分目程度入った状態であった。原告Aは,Cに対し,本件ゴミ箱内に灯油をふきとった新聞紙が入っていることを伝えることはせず,Cも,新聞紙の存在には気づかなかった。また,Cは,同日,たまたま,閉店後知人と本件建物外の駐車場で待ち合わせる約束をしており,閉店がいつもより遅れて知人を待たせることになっていたため,一連の後片づけをするのに若干気持ちがせいていた。 キ Cは,同日,たまたま,閉店後知人と本件建物外の駐車場で待ち合わせる約束をしており,閉店がいつもより遅れて知人を待たせることになっていたため,一連の後片づけをするのに若干気持ちがせいていた。 キCは,午後8時15分ころ,所定の後片づけ等を終えて本件事務室を出て,本件建物北側の駐車場に駐車してあった自分の自動車で着替えなどをした後,午後8時25分ころ,本件建物南側の駐車場に移動して約束の知人と会い,午後8時35分ころ,同駐車場を出た。この時までに,本件建物に異常は認められなかった。 原告Aは,上記エのとおりの通常の後片づけをした後,本件事務室内で使用していた石油ストーブを消火し,戸締まりをして,午後8時25分ころ,本件事務室を出て,帰宅した。 ク本件建物2階東側のレストランは,午後11時までが営業時間であったため,本件店舗及び本件事務室が無人になった午後8時25分ころ以降も,店内にB及びその従業員1名が残っていた。Bは,その後,本件建物の西側の方から不審な光や何かを燃やすような焦げ臭いにおい等に気づき,本件建物の外に出て様子を見に行ったところ,本件建物正面の南側駐車場に出て,中央の通路付近から,本件事務室の1階通路に面した側から煙が激しく出ているのを発見した。Bはすぐにレストランへ戻り,従業員に本件事務室が火事になっていることを伝えた。従業員は,一旦外に出て火事の- 21 -状況を確認した後レストランに戻り,午後9時2分ころ,119番通報をした。 ケ原告Aは,このころ自宅にいたが,同日午後9時10分ころ,以前原告ウォズの従業員であった者から,携帯電話で,本件建物から煙が出ているらしい旨の連絡を受け,急いで本件建物に駆け付けた。 その後,原告Aは,消防等による事情聴取に応じ,被告の依頼した調査会社による調査の際には,焼け跡の見分に から,携帯電話で,本件建物から煙が出ているらしい旨の連絡を受け,急いで本件建物に駆け付けた。 その後,原告Aは,消防等による事情聴取に応じ,被告の依頼した調査会社による調査の際には,焼け跡の見分に立ち会ったり,Cと共に説明の図面を作成するなどして協力した。 コ本件火災当時,本件火災現場には積雪があり,天候は曇り,気温はマイナス2度近くで,湿度は高かった。 サ本件火災発生当時,本件事務室内は無人であり,窓及び扉はいずれも施錠されており,また,2階レストランの側から本件店舗に入ることのできる通路(上記㨯イ)も本件店舗側から施錠されていた。 㨯本件火災後確認できた状況争いのない事実等,証拠(甲3,4,乙1ないし6,14,17,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件建物の焼損は,外壁及び内側のいずれにおいても,中央部より西側に集中し,西側には焼け抜けが認められるものの,東側には焼け抜けした部分は認められない。 本件建物の北側外壁は,1階から2階部分にかけて大きく焼け落ちており,西側外壁は,1階から3階の窓ガラスが割れて脱落し,外壁のトタン板にも1階から3階まで変色が見られる。 本件建物内部で最も焼損が激しかった場所は本件事務室であり,2階の本件店舗は,西側陳列棚の商品が広く焼け,北西側陳列棚が熱のため変形し,北西側内壁の焼きが強い。3階も,西側が一様に焼け,天井板及び野縁の一部が焼失している。 - 22 -イ本件事務室は,天井及び内壁部分が一様に強く焼けて炭化しており,天井材は,南側に比べ北側の焼きが強く,中央部から北側の野縁が焼失,あるいは焼け細り,北側の梁は強く炭化している。内北側にある階段の踏み板は,上部に比べ下部の焼け細りが強く,北側の側げた中央部に焼け切れがある。 壁面は,西側及び上記階段下に当 ら北側の野縁が焼失,あるいは焼け細り,北側の梁は強く炭化している。内北側にある階段の踏み板は,上部に比べ下部の焼け細りが強く,北側の側げた中央部に焼け切れがある。 壁面は,西側及び上記階段下に当たる部分の下部が,いずれもコンクリート土台が露出するほど強く焼けている。 床は,上記階段の下から,階段のすぐ南側にある長机下にかけて広範囲に焼け抜けており,東西の長さ約190センチメートル,南北の長さは約80センチメートルないし約170センチメートルに及ぶ。当該焼け抜けの東側は若干北方向(上記階段下方向)に,西側は南方向(上記長机下方向)に伸びた,不規則な形状であり,床の焼け抜けが見られるのはこの部分のみである。 ウ本件ゴミ箱は,上記焼け抜け箇所の北側に位置するが,本件ゴミ箱の下のみ床が焼け残っており,周辺部が焼けこげた紙の束,たばこの吸い殻も焼け残っているほか,床に接する部分には,青いプラスチック様の残焼物がある。上記床の焼け抜けを本件ゴミ箱を基準にしてみると,本件ゴミ箱の北側は焼け抜けがなく,東側及び西側にほぼ同範囲(本件ゴミ箱を中心として,東端から西端までの長さは約80センチメートル)の焼け抜けが,南側には,東西側よりも広い範囲(北端から南端までの長さは約110センチメートル)の焼け抜けが認められる。 エ本件事務室のほぼ中央部には石油ストーブが置いてあるが,同ストーブは原形を留めており,上記焼け抜け箇所から数十センチメートル離れている。 オ本件事務室内の流し台にはガス湯沸かし器が設置してあるが,この付近の焼きは強くない。また,南側収納庫前には石油ファンヒーターが置いて- 23 -あったが,コンセントが抜かれた状態であり,周辺の焼きも強くなかった。 カ本件火災後,警察及び消防の北川式ガス検知器を使用した調査では,本件事務室内から には石油ファンヒーターが置いて- 23 -あったが,コンセントが抜かれた状態であり,周辺の焼きも強くなかった。 カ本件火災後,警察及び消防の北川式ガス検知器を使用した調査では,本件事務室内から油性成分は検出されなかったが,その後,被告の依頼により行われた民間の調査機関によるガスクロマトグラフ質量分析法による調査では,上記石油ストーブの西側の床面から採取した炭化木片から1グラム当たり110マイクログラムの,上記長机下の床面から採取した炭化木片から1グラム当たり39マイクログラムの灯油に相当する油性成分が,それぞれ検出された。ただし,両検出箇所の中間地点については資料採取が行われておらず,両検出箇所の関連の有無は不明である。 㨯再現実験の結果等証拠(乙14,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア火のついたたばこから出火する場合,たばこの葉自体は無炎着火に適した素材であるが,これのみで有炎着火に至ることはなく,別の可燃物に無炎着火し,これがある程度の規模になった段階で有炎着火し,燃え上がるという経緯をたどる。この場合,無炎着火を拡大させる可燃物としては,十分乾燥した天然繊維が適しており,紙類には無炎着火は起こりにくい。 また,フィルター付きのたばこの場合,無炎着火は起こりにくく,湿度も無炎着火の妨げとなる。 イ意見書(乙14)を作成したDによる実験によれば,たばこの吸い殻10本及び火のついたたばこをティッシュペーパーに包み,40枚のティッシュペーパーと共にプラスチック製ゴミ箱に入れた場合,約1分後,たばこの吸い殻等を包んだティッシュペーパーに穴が開き,約3分後,若干の白煙が上がり始め,約15分後,白煙の量が増えて離れた場所からも認識できるようになり,約16分後,有炎着火に至り,約17分後,ゴミ箱に有炎着火 を包んだティッシュペーパーに穴が開き,約3分後,若干の白煙が上がり始め,約15分後,白煙の量が増えて離れた場所からも認識できるようになり,約16分後,有炎着火に至り,約17分後,ゴミ箱に有炎着火し,約30分後,ゴミ箱は溶解していった。 - 24 -なお,新聞紙を着火物として用いると,有炎着火までは上記結果と同様の経過をたどるが,ティッシュペーパーを用いる場合より火力が強くなるので,有炎着火後の経過は異なってくる。 ウ室内での有炎着火から,火炎が窓から噴き出すほど火勢が強くなるのに要する時間は,5分程度のこともあるが,可燃物の存在状況により30分以上を要する場合もある。 争点㨯(本件火災の偶発性の主張・立証責任の所在)について㨯本件保険契約①は火災保険契約であるところ,火災保険については,保険者に対し,火災保険金の支払を請求する者は,火災発生が偶然のものであることを主張,立証する責任を負わないと解するべきである(当事者間に争いがない。 。)㨯動産総合保険である本件保険契約②について検討するに,動産総合保険普通保険約款を内容とする保険契約に基づき,火災による什器備品等の焼失が保険事故に該当するとして保険金を請求する者は,事故の発生が保険契約者等の意思に基づかないものであることについて主張,立証するべき責任を負わず,保険契約者等の故意又は重過失によって保険事故が発生したことは,保険者において,免責事由として主張,立証する責任を負うと解するべきである。なぜなら,商法629条が損害保険契約の保険事故として規定する「偶然ナル一定ノ事故」とは,保険契約成立時において発生するかどうかが不確定な事故をいうものと解される。また,同法641条が,保険契約者もしくは被保険者の悪意又は重過失によって生じた損害について保険者は填補責任を負わない は,保険契約成立時において発生するかどうかが不確定な事故をいうものと解される。また,同法641条が,保険契約者もしくは被保険者の悪意又は重過失によって生じた損害について保険者は填補責任を負わない旨規定しているのは,保険契約者もしくは被保険者が故意又は重過失によって保険事故を発生させたことを保険金請求権の発生を妨げる免責事由として規定したものと解される。 動産総合保険普通保険約款は,保険事故として「すべての偶然な事故」と定める一方,保険契約者等の故意又は重大な過失によって生じた損害に対し- 25 -ては保険金を支払わないこととしているが,これらの定めを商法の上記各条文に照らしてみれば,本件保険契約②は,保険契約成立時に発生するかどうかが不確定な事故をすべて保険事故とすることを明らかにしたものと解するのが相当であり,同契約にいう「偶然な事故」を,商法629条にいう「偶然ナル事故」とは異なり,保険事故の発生時において保険契約者等の意思に基づかない事故であること(保険事故の偶発性)をいうものと解することはできないからである(最一小判平成18年9月14日判時1948号164頁参照。 )よって,本件保険契約①及び②に基づいて保険金を請求しようとする原告らは,いずれも,本件火災が保険契約者等の故意又は重過失によって保険事故が発生したことの主張,立証責任を負わず,保険契約者等の故意又は重過失によって保険事故が発生したことは,保険者である被告が,免責事由として主張,立証する責任を負うこととなる。 争点㨯(本件火災の発生原因及び保険金支払免責事由の存否)について㨯本件火災の発生原因についてア被告は,原告Aによる放火が本件火災の発生原因である旨主張するので,この点を検討する。 㨯本件事務室には,石油ストーブ,石油ファンヒーター及びガス湯沸か について㨯本件火災の発生原因についてア被告は,原告Aによる放火が本件火災の発生原因である旨主張するので,この点を検討する。 㨯本件事務室には,石油ストーブ,石油ファンヒーター及びガス湯沸かし器が存在したが,いずれも上記焼け抜け箇所から離れ,焼きも強くない位置であったのであるから,これらが本件火災の発生原因となった可能性はないというべきである。 㨯また,本件火災発生当時,本件事務室の出入り口はすべて施錠され,同室内は無人であり,その他,第三者の関与を伺わせる事情が何ら現れていないことにかんがみると,本件火災が外部から侵入した第三者による放火である可能性は極めて低い。 㨯被告は,放火の根拠として本件事務室内から油性成分が検出されたこ- 26 -とを指摘する。そして,出火原因の意見書(乙14)を作成したDは,本件事務室内の石油ストーブ西側の床面から採取された炭化木片から検出された1グラム当たり100マイクログラムの灯油に相当する油性成分について,石油ストーブから漏れ出した可能性は余り無く,床面に灯油をまいたことの証左である旨述べる(D証人調書36,37頁。し)かし,前記意見書では「長机脇のストーブの石油タンクはボトム式,(ストーブ底部にタンクが固定されている形式)で火災による漏油は,カートリジ式タンクに比べれば多量には起こらない。100μg/g程度の量の検出はストーブに由来したとするに妥当な検出量と推定される」と意見を述べており,同人の前記証言内容と齟齬していることか。 らすると,Dの公判廷における前記証言内容の信用性には疑問が残る。 また,Dは,本件事務室内の長机下の床面から採取された炭化木片から検出された1グラム当たり39マイクログラムの灯油に相当する油性成分について,前記意見書で「ストーブからの距離を考えるならば, 残る。 また,Dは,本件事務室内の長机下の床面から採取された炭化木片から検出された1グラム当たり39マイクログラムの灯油に相当する油性成分について,前記意見書で「ストーブからの距離を考えるならば,ス,トーブには関係のない灯油を検出した疑いは持てる。試料採取場所が試料No.1(裁判所注:石油ストーブ西側の床面から採取された炭化木片)と試料No.4(裁判所注:長机下の床面から採取された炭化木片)の中間位置の箇所から採取されて分析されればストーブに由来したかの判断ができたと思う。また,それ以外の試料採取場所が階段側に偏り事務机側にないことも試料No.4の検出された灯油についての評価が確定できない。疑いの範囲を出ない」と述べており,上記油性成分。 の検出が灯油を床面にまいたことを決定的に裏付ける証拠であるとまでは述べていない。 これらのことからすれば,本件事務室から検出された灯油に相当する油性成分は,消火活動の際にストーブから漏れだした可能性が完全に否定されたとまではいえず,灯油に相当する油性が検出されたことをもっ- 27 -て直ちに放火を推認させる間接事実であるということはできない。 㨯被告は,原告ウォズは売上の大幅な減少が数年にわたって続き,借入れも多額に上り,経営が困難であったこと,販売の期待できなくなった大量の在庫を抱えていたこと,原告ウォズの経営難に伴い,原告Aの収入も激減し,本件火災時には報酬がゼロであったことから,原告Aには本件建物に放火する動機があったとも主張する。確かに,前記認定事実によれば,原告ウォズ及び原告Aの経済状況については,いずれも被告指摘のとおりであることが認められる。しかし,これらは,原告Aが放火の動機を抱き得る可能性を示すにすぎず,それ以上,原告Aによる放火を推認させる事情とまでは評価できない。 以 ついては,いずれも被告指摘のとおりであることが認められる。しかし,これらは,原告Aが放火の動機を抱き得る可能性を示すにすぎず,それ以上,原告Aによる放火を推認させる事情とまでは評価できない。 以上によれば,原告Aに,本件建物に放火をする動機があったと認めることはできない。 㨯かえって,原告Aは,本件建物の一部をBに賃貸し,本件火災当時,月額18万7000円の賃料収入を得ていたところ,これは原告Aにとって貴重な収入源であり,その他妻の収入及び実父の収入を加えることで,生活は維持できていたことからすれば,あえて生活の収入源となっている本件建物を放火するとは考え難い。また,本件火災当時,本件保険契約①に基づく原告Aの保険金請求権には,株式会社荘内銀行の質権が設定されていたことからすれば,保険金が入ることで負債額が減ることによる生活の安定は見込めるものの,原告Aが,保険金全額を現実に手にできるわけではないので,生活状態が大幅に改善されることもない。 さらに,本件火災発生当時,本件建物内のレストランは営業時間中であり,少なくともB及びその従業員1名が在室していることを原告Aは十分認識していたはずであるから,Bらとの間に特段のトラブルもなかった以上,原告AがBらが在室しているにもかかわらず,Bらに生命,身体及び財産上の危害を加えかねないような放火をすることはにわかには- 28 -考え難い。加えて,本件火災は,施錠された本件事務所が出火場所であり,最後に施錠をして本件建物を出たのは原告Aであることからすれば,仮に本件火災の発生原因が放火とされた場合,原告A以外の者が疑われることはあり得ない状況であったといえる。仮に,原告Aが放火をしたのであれば,自分自身が疑われないような状況を作り出した上で犯行に及ぶのが一般的である。本件火災時には,レスト 原告A以外の者が疑われることはあり得ない状況であったといえる。仮に,原告Aが放火をしたのであれば,自分自身が疑われないような状況を作り出した上で犯行に及ぶのが一般的である。本件火災時には,レストランが営業中であり,Bらが本件建物内にいたこと,Cは仕事を終え,原告Aより前に本件事務室を出たものの,原告Aが帰宅する際にはいまだ南側駐車場に駐車中の自動車内におり,原告Aの帰宅状況を確認していたことからすれば,仮に,原告Aが放火をしたのであれば,原告Aが犯人であると疑われる状況下であえて犯行を行ったということになり,保険金を騙し取る計画としては,あまりにも無計画,杜撰であるといわざるを得ない。その上,原告Aには,本件火災前後,明らかに不審と評価するべき行動は見受けられず,本件火災後の消防や被告の依頼した調査機関による調査にも協力していること,本件保険契約①及び②は,いずれも10年以上前に締結した保険契約を数回更新したものであり,その締結の経緯に何ら不自然な点がないことも認められる。 イたばこの不始末による発火の可能性について㨯原告Aは,本件火災当日の午後8時10分過ぎころ,本件事務室内でたばこを吸っていたこと,Cが灰皿を片付けようとしたため,火を消してそのたばこを灰皿に入れて渡したが,その火が確実に消えたかどうかは原告AもCも確認していないこと,Cは,その後,そのたばこの入った灰皿に水道水をかけたものの,水を切る手間を惜しみ,積み重なった数十本のたばこの吸い殻に少量の水しかかけないのが通常であった上,同日は,待ち合わせの約束をした知人を待たせていたことから,急ぐ気持ちもあり,たばこの吸い殻の火が消えたかどうか特に確認することも- 29 -なく,それらたばこの吸い殻を無造作に本件ゴミ箱に入れたこと,この時,本件ゴミ箱内には,カタロ せていたことから,急ぐ気持ちもあり,たばこの吸い殻の火が消えたかどうか特に確認することも- 29 -なく,それらたばこの吸い殻を無造作に本件ゴミ箱に入れたこと,この時,本件ゴミ箱内には,カタログや不要になったファクシミリ用紙等の紙類及び灯油をふき取った新聞紙が合計8分目程度入っていたことは,いずれも前記で認定したとおりである。 すなわち,本件火災発生の数十分前の時点で,本件ゴミ箱内には,火のついたままのたばこが,大量の紙類や灯油を含んだ新聞紙と共に入っていた可能性が存在する。 㨯ところで,Dは,意見書で「裁判所注:階段下にあった本件ゴミ,(箱は)床板の抜けていない床面に底部が残っていることになり,これから出火したとは言えない。この結論からすると(裁判所注:消防は)床板焼け穴から発見した紙類の吸殻入り残焼物から出火したとしているが,ここから広範囲に床板を焼き抜いた起点と考えるならばなぜ事務机方向だけに床板が焼け抜けるような延焼をしたのか説明がつかない「1。」,本のタバコの吸い差しで紙に着火することは非常に難しく,両切りタバコからフイルター付となってその可能性はさらに低くなった。それは,両切りタバコは,とぼる時に火玉が最大となり,この時点で紙類の接触があると有炎に移行する機会があるからである。フイルター付はその最後の火玉が出現することなく終わる。吸殻は燻焼(無炎着火)に都合のよい可燃物で,吸い差しと共存すると無炎着火し易く火力を拡大する。 無炎着火するのは葉タバコ部分でフイルターは無炎着火しない。両切りタバコの吸殻は,その全部が無炎着火する可燃物の葉たばこである。フイルター付吸殻は大部分がフイルターで無炎着火する葉タバコ部分が少なくなっていて容易には無炎着火の拡大は起こらない。また,ごみ箱内のタバコ吸い差しは,生ごみや濡れタ 火する可燃物の葉たばこである。フイルター付吸殻は大部分がフイルターで無炎着火する葉タバコ部分が少なくなっていて容易には無炎着火の拡大は起こらない。また,ごみ箱内のタバコ吸い差しは,生ごみや濡れタバコと共存すると湿気により無炎着火の拡大を抑制される」と述べ,また,公判廷においても,本件ゴ。 ミ箱が火元であれば,紙やたばこの吸い殻が焼け残っていることはあり- 30 -得ない旨述べ(D証人調書7,8頁,たばこの火の不始末による出火)を否定する。 しかし,本件ゴミ箱内には,何層にもわたって紙類とたばこの吸い殻が積み重なっていることからすれば,仮にその上部に置かれたたばこの吸い殻に残った火が発火源となって発火した場合,たとえば,熱によりプラスチック製のゴミ箱が溶け,火の着いた紙類が床面に崩れ落ち,そこから延焼が生じるものの,発火源より下にある紙類等については,紙が重なり合っていることにより酸素が十分行き渡らず火が回らないなどの現象はあり得ることであり,紙類等が焼け残り,本件ゴミ箱の床部分が焼け抜けていないことをもって,本件ゴミ箱を発火源とすることはできないとまではいえない。また,延焼の範囲に関し,Dは,説明がつかないとのみ述べ,その理由を述べていないことからすれば,果たしてどの点が不合理であるというのか不明である。さらに,本件についてはたばこからの無炎着火の拡大について疑問を呈しているが,Cは,たばこの吸い殻に十分水をかけていなかった可能性があり,無炎着火が抑制されていたとまでは断定できないし,また,本件ゴミ箱には,灯油をふき取った新聞紙が入っていたことからすれば,単に紙があった場合と比較して,容易に有炎着火したとの可能性は否定できない。 㨯以上の点からすれば,本件火災の発生原因が,本件ゴミ箱に捨てたタバコの不始末であることを完全に っていたことからすれば,単に紙があった場合と比較して,容易に有炎着火したとの可能性は否定できない。 㨯以上の点からすれば,本件火災の発生原因が,本件ゴミ箱に捨てたタバコの不始末であることを完全に否定することまではできないところである。 ウまとめよって,本件火災の発生原因については,たばこの火の不始末による失火の可能性も否定できず,原告Aの放火と認定することはできないので,被告の主張は採用できない。 㨯保険金支払免責事由の存否について- 31 -ア本件保険契約①について㨯原告Aが,本件建物に放火したことは認められないので,故意による支払免責事由は存在しない。 㨯本件火災の発生原因として,本件ゴミ箱に捨てたたばこの不始末の可能性が考えられるところ,この点について原告Aに本件保険契約①の店舗総合保険普通保険約款2条1項1号に規定する重過失があったといえるかについて検討する。被告は,Cが本件ゴミ箱に捨てたたばこの吸い殻が原因で本件火災が生じた場合,たばこの吸い殻が捨てられてから有炎着火に移行するには約15分が必要であり,煙やにおいも発生するので,この間原告Aは本件事務室内におり,最後の退出者として火の元等の点検をしているはずであるから,これに気付かなかったとすれば,原告Aには重大な過失があると主張し,それに沿う証拠(乙14,証人D)を挙げる。しかし,被告の主張に沿う証拠は,本件ゴミ箱の状況と異なる状況を作り出した上で行った実験結果に基づくものであり,これにより本件で原告Aが本件建物から退出する際,煙等が発生しており,原告Aがこれを見逃したということを認めることはできない。 よって,原告Aに本件火災の発生について重過失を認めることはできない。 イ本件保険契約②について㨯原告Aが,本件建物に放火したことは認められないので, 見逃したということを認めることはできない。 よって,原告Aに本件火災の発生について重過失を認めることはできない。 イ本件保険契約②について㨯原告Aが,本件建物に放火したことは認められないので,故意による支払免責事由は存在しない。 㨯本件火災の発生原因として,本件ゴミ箱に捨てたたばこの不始末の可能性が考えられるところ,この点について原告ウォズに本件保険契約②の動産総合保険普通保険約款3条1項7号に規定する重過失があったといえるかについて検討する。同号の規定によれば,法人が保険契約者,被保険者等であった場合には,理事,取締役又は法人の業務を執行する- 32 -その他の機関について重過失を判断することとなる。原告ウォズの取締役である原告Aについては,前記のとおり,本件火災の発生について重過失を認めることはできない。また,Cは,原告ウォズの理事,取締役又は法人の業務を執行するその他の機関ではないので,Cに重過失があったか否かは,原告ウォズの重過失を考えるに当たり問題とならない。 よって,原告ウォズに本件火災の発生について重過失を認めることはできない。 ウまとめ以上によれば,本件保険契約①及び②について,保険金支払免責事由は存在しないこととなる。 争点㨯(原告Aの損害)について㨯建物について火災保険においては,保険の目的物と同等の建物の再取得価額から,保険事故までの期間の減価償却額を控除した額(時価)を損害額と考えるのが相当である。 前記認定のとおり,本件建物は昭和61年8月10日新築の木造建物(現況は,木造一部3階建セメント板葺)であり,店舗(飲食店,スポーツ用品店,倉庫及び事務所として使用されていたというのであるから,耐用年数)は40年とし,減価償却率は年2.5パーセントとすることが相当である。 また,争いのない事実等 であり,店舗(飲食店,スポーツ用品店,倉庫及び事務所として使用されていたというのであるから,耐用年数)は40年とし,減価償却率は年2.5パーセントとすることが相当である。 また,争いのない事実等,証拠(甲5)によれば,本件建物は,本件火災により半焼し,平成16年4月10日現在の再取得価額(修理価額)は2760万円であること,新築時から本件火災までの期間は約17.5年であることが認められるので,本件建物の本件火災当時の残存価値は,1552万5000円とするのが相当である。 2760万円×(1-0.025×17.5年)=1552万5000円- 33 -なお,被告は,本件建物の耐用年数を20年とし,定額法により減価償却率を年5パーセントと主張するが,木造建物といえども20年で建物の価値としてゼロになるとは考えがたく,被告の主張は採用できない。また,原告は,減価償却率を年1・9パーセントにすべきである旨主張するが,年1. 9パーセントとする根拠が明らかではなく,また,建築後50年を超える木造建物に現存価値を認めることも相当とはいえず,原告の主張も採用できない。 㨯什器・備品等についてア証拠(乙4,11,17)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,平成3年5月ころ,別紙40のワープロを16万2740円で,平成5年No.8月ころ,別紙39中のレーザープリンタ1台を35万円で,ユニパNo.ックパソコン1台を33万円で,それぞれ購入したこと,原告ウォズは,平成8年10月にIBMのパソコン1台を31万3389円で,平成13年7月にパソコン2台を19万3000円でそれぞれ購入したこと,本件火災当時,本件事務室及び本件店舗内には,パソコン7台及びレーザープリンタ1台が存在したこと,これら機器は,本件火災により使用できなくなったことが認めら 19万3000円でそれぞれ購入したこと,本件火災当時,本件事務室及び本件店舗内には,パソコン7台及びレーザープリンタ1台が存在したこと,これら機器は,本件火災により使用できなくなったことが認められる。以上の事実によれば,焼損したパソコン7台のうち1台及びレーザープリンタ1台は,原告Aが所有していた物と認めることができる。これらの時価は,購入時期から考えると,取得価格の10パーセントとすることが相当であり,ユニパックパソコンについては3万5000円,レーザープリンタについては3万3000円となる。 なお,原告Aが本件火災当時,上記ワープロを本件建物内で所有していたと認めるに足りる証拠はない。 イ弁論の全趣旨によれば,原告Aは,平成5年1月ころ別紙39のガNo.ラスケースを5万円で,平成9年5月ころ同棚を5万円で,それぞれ購入し,これらは本件火災当時,本件建物内に存在したことが認められる。本- 34 -件火災当時のこれらの時価は,経年を考えると,取得価格の10パーセントとするのが相当であるから,それぞれ5000円であったと認められる。 その余の機器は,内容が不明であり,什器・備品と認めることはできない。 㨯臨時費用保険金について証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件保険契約①により,本件火災による損害保険金の30パーセントに相当する額を臨時費用保険金として支払う義務を負う(ただし,その額は1構内ごとに500万円を限度とする(店舗総合保険普通保険約款1条8項,8条)ことが認められる。)から,本件においては,上記㨯及び㨯の損害金合計1560万3000円(1552万5000円+7万8000円)の30パーセントに当たる468万0900円を支払う義務を負うことになる。 㨯残存物取片付け費用証拠(甲6)及び弁論の全趣旨に 害金合計1560万3000円(1552万5000円+7万8000円)の30パーセントに当たる468万0900円を支払う義務を負うことになる。 㨯残存物取片付け費用証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件保険契約①により,本件火災による損害保険金が支払われる場合において,損害を受けた保険の目的物の残存物の取片付けに必要な費用に対し,損害保険金の10パーセントに相当する額を残存物取片付け費用保険金として支払う義務を負う(店舗総合保険普通保険約款1条9項,9条)ことが認められるから,本件においては,上記㨯及び㨯の損害金合計1560万3000円の10パーセントに当たる156万0300円を支払う義務を負う。 㨯まとめよって,被告は,原告Aに対し,前記㨯ないし㨯の合計2184万4200円を支払う義務を負う。 争点㨯(原告ウォズの損害)について㨯商品等の損害についてア証拠(甲21の1ないし10,乙7ないし11,証人C,原告代表者兼- 35 -原告本人A)によれば,以下の事実が認められる。 㨯原告ウォズの平成11年から平成15年までの営業期末(7月31日)における売上げ,商品棚卸高(在庫,在庫率,仕入れ及び売上原)価は,次のとおりである(万単位で表示。 )売上在庫在庫率平成11年期末1億6661万円2949万円17.7%平成12年期末1億3076万円3158万円24.1%平成13年期末9085万円1365万円15.0%平成14年期末4580万円1709万円37.3%平成15年期末2751万円1539万円55.9%仕入売上原価平成11年期末1億3089万円1億2174万円平成12年期末9510万円8836万円平成13年期末5209万円7002万円平成14年期末 1539万円55.9%仕入売上原価平成11年期末1億3089万円1億2174万円平成12年期末9510万円8836万円平成13年期末5209万円7002万円平成14年期末3402万円3058万円平成15年期末1635万円1805万円㨯原告ウォズは,夏季には一般衣類の販売も行うものの,主な商品はスノーボード及びその関連商品であり,商品が売れるのは,シーズンの新しいモデルの発売される夏ころから翌年4月上旬ころまでである。 㨯原告ウォズの取り扱う商品は,一部の保守用品を除いて流行に大きく左右されるものであり,新モデルが発売されると,旧モデルは価格が大幅に下落し,売れ行きも悪くなり,数年も経過すると,ほとんど販売が見込めなくなる。そして,原告ウォズは,売れ残った商品を廃棄することはせず,倉庫等に保管していた。在庫商品の中には,平成9年ころに仕入れた商品も見受けられた。 - 36 -イ以上の事実によれば,平成15年7月末ころには,原告ウォズは,売れる物を仕入れて,これを主に売却し,在庫については,いわゆる流行遅れになった物であり,ほとんど売却することができていなかったと認めることができる。 ウところで,原告は,本件火災当時,本件建物内に存在した商品は,別紙1ないし38記載の商品である旨主張し,Cは,本件店舗内にあNo.No.る商品(別紙1ないし16)については,ほとんど記憶していたNo.No.ので,ほぼ間違いはない旨述べる(証人C。しかし,Cは,原告ウォズ)の店長として本件店舗内で勤務していたとはいえ,商品の種類及び数を正確に記憶していたとは言い難く,また,Cの供述を裏付ける客観的証拠がないことからすれば,別紙1ないし16の商品が,本件火災当時No.No.本件店舗に陳列し販売して いえ,商品の種類及び数を正確に記憶していたとは言い難く,また,Cの供述を裏付ける客観的証拠がないことからすれば,別紙1ないし16の商品が,本件火災当時No.No.本件店舗に陳列し販売していた商品であると認定することはできない。同様に,本件店舗内に陳列していない商品については,何ら根拠が示されておらず,その商品が存在していたと認定することはできない。 エそこで,本件店舗及び3階の倉庫に保管してあった商品については,平成15年の仕入高及び在庫を元に推認するほかない。まず,平成15年8月1日以降に新たに仕入れた商品で本件火災時に在庫として存在していた商品について考える。平成15年の1年間仕入高は1635万円であるので,本件火災当時はその7か月分であるので953万円の仕入高があったと考えられる(なお,原告ウォズは,原告Aの記憶及び預金通帳,カードの各データから平成15年8月1日から平成16年7月31日までの仕入高を1384万6297円とする(甲22,23。この金額を基準とす)れば,807万円となる。そして原告ウォズが仕入れたシーズン商品。)の売れ行きは,前年夏ころから4月上旬ころまでがピークであることからすれば,本件火災時には,ほぼ販売は終了しており,シーズン商品として仕入れた物のうち売れていない物は,いわゆるデッドストックとなってし- 37 -まう物といえる。次に,平成15年7月31日時点で在庫として残っている商品(1539万円分)は,明らかにデッドストックといえる物であり,同年8月1日から本件火災時までの間も,ほとんど売却されずに残っており,今後も売却される可能性は低いと考えられるところである。 これらの諸事情に照らすと,平成15年7月31日当時の在庫として残っていたもので本件火災時にも在庫として残っていた物については ずに残っており,今後も売却される可能性は低いと考えられるところである。 これらの諸事情に照らすと,平成15年7月31日当時の在庫として残っていたもので本件火災時にも在庫として残っていた物については,その商品価値は10パーセント程度であると評価することが相当であり,その損害額は150万円と考える。また,平成15年8月1日以降に仕入れた商品についても,本件火災時に残っていた商品については,デッドストックとなってしまう物といえるので,その損害額は,仕入高から考えても多くて100万円程度であると見るのが相当である。以上のことから,商品の損害は250万円と認めるのが相当である。 㨯臨時費用保険金について証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件保険契約②により,本件火災による損害保険金の30パーセントに相当する額を臨時費用保険金として支払う義務を負う(ただし,その額は1構内ごとに300万円を限度とする)ことが認められるから,本件においては,上記㨯の損害金250。 万円の30パーセントである75万円を支払う義務を負う。 㨯残存物取片付け費用保険金について証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件保険契約②により,本件火災による損害保険金が支払われる場合において,損害を受けた保険の目的物の残存物の取片付けに必要な費用に対し,損害金の10パーセントに相当する額を残存物取片付け費用保険金として支払う義務を負うことが認められるから,本件では,上記㨯の損害金250万円の10パーセントに当たる25万円を支払う義務を負う。 㨯まとめ- 38 -よって,被告は,原告ウォズに対し,前記㨯ないし㨯の合計350万円を支払う義務を負う。 保険金支払義務が遅滞に陥る時期証拠(甲6,7)によれば,店舗総合保険普通保険約款31条,26条及び動 -よって,被告は,原告ウォズに対し,前記㨯ないし㨯の合計350万円を支払う義務を負う。 保険金支払義務が遅滞に陥る時期証拠(甲6,7)によれば,店舗総合保険普通保険約款31条,26条及び動産総合保険普通保険約款25条,15条には,保険会社は保険契約者又は被保険者が保険の目的について損害が発生したことを通知し所定の書類を提出した日から30日以内に保険金を支払う,ただし,保険会社が上記期間内に必要な調査を終えることができないときはこれを終えた後遅滞なく保険金を支払う旨規定されている。この規定は,上記30日の経過により保険金支払の履行期が到来することを定めたものと解するべきであり,保険会社は,上記期間内に必要な調査を終えることができなかったとしても,上記期間経過後は保険金の支払について遅滞の責めを免れない。 そして,証拠(甲8,18)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件火災の数日後,被告に対し,保険事故の報告をしたこと,被告は,民間の調査機関に依頼するなどして保険事故の調査を始めたこと,原告は,平成16年8月7日,被告に対し,被告が提出を要求した各種書類を提出したことが認められるから,本件において,被告の本件保険契約①及び②に基づく保険金支払義務は,書類提出日の翌日である同月8日(提出日は初日不算入のため日数に加えない)から数えて30日後である同年9月6日の経過により,同月7日から。 遅滞に陥ったものというべきである。なお,原告らは,前記期間の翌日である同月8日からの遅滞分を請求している。 第4 結論 以上の次第であるから,原告らの本件請求は,原告Aにつき保険金合計2184万4200円,原告ウォズにつき保険金合計350万円及びこれらに対する平成16年9月8日から支払済みまでそれぞれ商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金 求は,原告Aにつき保険金合計2184万4200円,原告ウォズにつき保険金合計350万円及びこれらに対する平成16年9月8日から支払済みまでそれぞれ商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し,その余- 39 -は理由がないからいずれも棄却する。 山形地方裁判所鶴岡支部裁判長裁判官横山巌裁判官武宮英子裁判官藤原典子- 40 -物件目録所在鶴岡市a字bc番地d,e番地f,g番地h家屋番号c番d種類店舗・住宅・作業所構造木造スレート葺2階建床面積1階87.15平方メートル2階133.45平方メートル所有者原告A- 41 -
▼ クリックして全文を表示