主文 1 原判決中,控訴人ら敗訴部分を取り消す。 2 上記取消部分につき,被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者双方の申立て 1 控訴人ら(1) 原判決中,控訴人ら敗訴部分を取り消す。 (2)ア(本案前の申立て)上記取消部分につき,被控訴人らの訴えをいずれも却下する。 イ(本案の申立て)上記取消部分につき,被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 2 被控訴人ら(1) 本件控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,沖縄県(以下,単に「県」という。なお,県名について記載しない場合,沖縄県内の市町村を指す。)の住民である被控訴人らが,県が実施した広域基幹林道α1線事業(以下「本件事業」という。)につき,本件事業が森林法等の法令に違反し,自然環境を破壊する違法な事業であって,本件事業の一環として県知事が業者との間で工事請負契約を締結して工事代金を支出したことが違法な公金支出に当たると主張して,①地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下,「地方自治法」という場合,同改正前のものを指す。)242条の2第1項1号に基づき,控訴人沖縄県知事a(以下「控訴人知事」という。なお,本件訴え提起時の県知事は控訴人bであったが,第一審における訴訟係属中にaが控訴人知事の地位を承継した。)に対し,本件事業に関する公金支出等の差止めを求め,②同条項4号に基づき,県に代位して,平成7年度から平成9年度にかけて,当時の県知事であった控訴人bが本件事 中にaが控訴人知事の地位を承継した。)に対し,本件事業に関する公金支出等の差止めを求め,②同条項4号に基づき,県に代位して,平成7年度から平成9年度にかけて,当時の県知事であった控訴人bが本件事業の工事費等として合計金3億4240万円を支出したことが違法な公金支出であり,県に同額の損害を与えたと主張して,控訴人bに対し,上記支出相当額の損害賠償及びこれに対する支出の後から(内金1億4740万円に対する平成8年4月1日から,内金1億2500万円に対する平成9年4月1日から,内金7000万円に対する平成10年4月1日から)各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を県に支払うことを求め,③上記①差止請求の予備的請求として,同条項3号に基づき,控訴人知事に対し,県が控訴人bに対する上記②の損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,その各行使を怠っていることが違法であることの確認を求めた事案である。 2 前提事実(争いのない事実及び証拠により明らかに認められる事実)(1) 当事者ア被控訴人らは,いずれも県の住民である。 イ控訴人知事は,県の公金の支出,財産の管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行,債務その他の義務の負担,又は地方債起債手続などの行為を行う権限を法令上本来的に有する者である。 ウ控訴人bは,平成7年ないし平成9年当時,県知事の職にあり,本件事業の実施に伴う工事請負契約の締結及びこれに基づく請負代金等の工事費の支出命令を行う権限を法令上本来的に有していた者である。 (2) 本件事業の概要本件事業は,県が施工主体となって行う,国頭郡α2α3の県道α4線を基点として,α5林道,α6林道の一部,α7林道の一部,造林作業道,α8林道の一部,α9林道を編入し,α10の集落の の概要本件事業は,県が施工主体となって行う,国頭郡α2α3の県道α4線を基点として,α5林道,α6林道の一部,α7林道の一部,造林作業道,α8林道の一部,α9林道を編入し,α10の集落の南側に至る総延長14.2キロメートル,全幅5メートル(車道幅員4メートル)の林道である広域基幹林道α1線(以下「本件林道」という。)の開設事業である。本件事業は,平成5年度着工,同11年度完成予定,総事業費は21億5000万円とされ,沖縄振興開発特別措置法に基づき,国がその事業費の80パーセントを負担し,施行主体である県の負担は20パーセントの4億3000万円として計画された。 本件事業の計画・実施に際して,環境影響事前評価(環境アセスメント)は行われなかった。 (3) 本件支出負担行為等平成7年から平成9年にかけて,控訴人bは,県知事として,本件事業に関し,複数回にわたり工事請負契約の締結(支出負担行為)及び工事請負代金その他の工事費用の支出命令を出し(以下,併せて「本件支出負担行為等」という。),これに基づき,平成7年度に1億4740万円,平成8年度に1億2500万円,平成9年度に7000万円がそれぞれ支出された(内訳は別紙一覧表記載のとおり。ただし,同一覧表記載の合計額は上記各支出額より少ないが,上記各支出額については自白が成立している。)。 なお,本件支出負担行為等は,県内部においては,沖縄県財務規則,沖縄県事務決裁規定及び沖縄県出先機関の長に対する事務の委任及び決裁に関する規則に基づき,農林総務課長又は林業事務所長(以下「農林総務課長等」という。)の専決事項として処理された(乙64ないし79。ただし,本件支出負担行為等が補助職員〔農林総務課長等〕に専決により処理れた旨の控訴人らの主張が「自白の撤回」に当た (以下「農林総務課長等」という。)の専決事項として処理された(乙64ないし79。ただし,本件支出負担行為等が補助職員〔農林総務課長等〕に専決により処理れた旨の控訴人らの主張が「自白の撤回」に当たるか否かについては,後記のとおり争いがある。)。 (4) 監査請求被控訴人らは,平成8年9月26日,県の監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づき,本件事業が必要性に欠け,希少種の生息地を破壊するもので文化財保護法等に反し,県と本件事業の工事業者との請負契約は違法であるから工事費用の支出も違法であると主張して,平成8年度以降の工事の中止,工事請負契約の解約,平成7年度支出の1億4300万円の返還,既工事部分の原状回復等を知事に勧告することを求める内容の「沖縄県職員措置請求書」を提出し,監査請求を行った(甲1。以下「本件監査請求」という。)。 これに対し,監査委員は,平成8年10月29日付けで,被控訴人らの監査請求は住民監査請求の制度に適合せず不適法な請求であるとして却下する旨通知した(甲2)。 (5) 本訴提起等被控訴人らは,平成8年11月25日,控訴人知事に対し,本件事業に関する公金支出等の差止めを,控訴人bに対し,県に代位して,平成7年度支出分(1億4300万円)について,支出相当額の損害及び遅延損害金の賠償を求める住民訴訟として本件訴えを提起した。 被控訴人らは,平成10年5月27日の原審第8回口頭弁論期日において,同日付け訴え変更申立書をもって,控訴人bに対する損害賠償代位請求につき,本件事業に関する平成7年度支出額を1億4740万円に変更すると共に平成8年度支出分(1億2500万円)を追加して,各支出相当額の損害及び各遅延損害金の賠償を求める訴え変更の申立て(同変更申立書を提出した日は平成1 平成7年度支出額を1億4740万円に変更すると共に平成8年度支出分(1億2500万円)を追加して,各支出相当額の損害及び各遅延損害金の賠償を求める訴え変更の申立て(同変更申立書を提出した日は平成10年5月26日である。)をした。 被控訴人らは,平成11年5月19日の原審第2回準備的口頭弁論において,同日付け訴え変更申立書をもって,控訴人知事に対し,本件事業に関する公金支出等の差止請求の予備的請求として,控訴人bに対する本件事業に関する違法な本件各支出につき不法行為に基づく支出相当額(平成7年度から平成9年度まで合計3億4240万円)の損害賠償請求権及び各遅延損害金請求権を有しているにもかかわらず,その各行使を怠っていることが違法であることの確認を求める訴えを追加する訴えの変更の申立て(同変更申立書を提出した日は平成11年5月14日である。)をした。 被控訴人らは,原審における平成13年3月9日付け第12準備書面(主張整理)をもって,予備的請求として,平成9年度支出分(7000万円)を追加して,支出相当額の損害及び各遅延損害金の賠償を求める意思を明らかにし,平成14年12月13日の原審第19回口頭弁論において,控訴人bに対する主位的請求として,平成9年度支出分(7000万円)を追加して,平成7年度から平成9年度まで合計3億4240万円の支出相当額の損害及び各遅延損害金の賠償を求める訴え変更の申立てをした。 (6) 本件事業及びそれに関する公金支出の完了本件事業に伴う工事は平成10年3月31日にすべて完了し,本件事業に関する県の公金支出は同年5月15日ころ完了した。 第3 本案前の答弁に関する争点及び争点に対する当事者の主張 1 訴えの利益の有無(差止請求について)(控訴人知事の主張)本件事業及 関する県の公金支出は同年5月15日ころ完了した。 第3 本案前の答弁に関する争点及び争点に対する当事者の主張 1 訴えの利益の有無(差止請求について)(控訴人知事の主張)本件事業及びそれに関する公金支出は既に完了しているから,差止請求は,差し止める対象が存在せず,訴えの利益を欠くため不適法であり,却下されるべきである。 (被控訴人らの主張)訴えの利益を欠くとの主張は争う。 2 監査請求前置-監査請求期間徒過についての正当な理由の有無(平成7年度の支出のうち4210万6400円分に関する控訴人知事に対する損害賠償請求権不行使の違法確認及び控訴人bに対する損害賠償代位請求について)(控訴人らの主張)平成7年度の支出は,そのうち576万8000円が平成7年5月2日に,1928万1600円が平成7年7月31日に,922万8800円が平成7年8月8日に,782万8000円が平成7年8月14日に,それぞれ,工事請負代金として支出されたものであり,これら支出合計4210万6400円については,各支出がなされた日から1年の監査請求期間を徒過して監査請求がなされており,不適法である。 本件事業に関する工事請負契約の入札結果は公表され,書面の閲覧が可能であるし,平成4年7月1日施行の沖縄県情報公開条例の情報公開制度を利用することによっても工事請負代金の支出については知り得たといえ,監査請求期間を徒過したことについて,地方自治法242条2項但書所定の正当な理由は認められない。 (被控訴人らの主張)被控訴人らが,平成7年度支出分のうち4210万6400円について,監査請求期間を徒過したことには,地方自治法242条2項但書所定の正当な理由がある。 すなわち,工事請負契約の 被控訴人らが,平成7年度支出分のうち4210万6400円について,監査請求期間を徒過したことには,地方自治法242条2項但書所定の正当な理由がある。 すなわち,工事請負契約の入札結果が公表されていたとしても,具体的な支出日及び支出額を知り得るわけではないし,県の情報公開制度は,県民の公文書の開示を請求する権利を明らかにする目的で制定されたものであって,住民に制度を利用することを義務付けるものではないから,控訴人ら主張の点をもって,被控訴人らが公金の具体的支出の事実を知り得たということはできない。 3 監査請求前置-監査請求の内容と本件訴訟の請求との同一性の有無(平成8年度及び平成9年度支出分に関する控訴人知事に対する損害賠償請求権不行使の違法確認及び控訴人bに対する損害賠償代位請求について)(控訴人らの主張)平成8年度及び平成9年度の支出については,監査請求がされていないから,監査請求前置の要件を欠き,不適法である。 (被控訴人らの主張)監査請求の前置の有無については,監査請求の内容と住民訴訟の請求に同一性があるか否かにより判断されるところ,被控訴人らによる監査請求は,平成8年度以降の工事の中止,建設業者との請負契約の解約,平成7年度の支出額の返還,既工事部分の原状回復を求めており,本件事業の工事に関する支出全部を監査の対象とし,平成8年度以降の公金支出の差止めが含まれていることは明らかである。 そして,本件訴訟では,当初,控訴人知事に対して,本件事業に関する公金支出の差止めを,控訴人bに対して,平成7年度支出額の損害賠償代位請求を求めたものであるから,本件監査請求の内容と本件訴訟の請求内容との間には同一性がある。 また,住民訴訟において,公金支出の差止めを求めていたところ,その bに対して,平成7年度支出額の損害賠償代位請求を求めたものであるから,本件監査請求の内容と本件訴訟の請求内容との間には同一性がある。 また,住民訴訟において,公金支出の差止めを求めていたところ,その公金の支出が行われてしまった場合には,当該支出を対象として新たに監査請求をする実益はなく,当該支出を行った者を被告とする損害賠償代位請求及び当該損害賠償請求権不行使の違法確認請求を追加提起すればよいと解すべきであるから,本件訴訟における平成8年度及び平成9年度の支出額に係る請求も,監査請求前置の要件を満たしているといえ,適法である。 4 出訴期間(上記3と同じ各請求について)(控訴人らの主張)被控訴人ら主張のとおり,監査請求後の支出分について,訴えの追加的変更によることが認められるとしても,訴えの変更は,新訴の提起に他ならないから,出訴期間の定めのあるものは,その出訴期間内に変更の申立てがなされなければならないのが原則であり,その場合の出訴期間は,当該公金支出を住民が知り得た日から30日以内と解すべきである。そして,上記2で控訴人らが指摘した事情によれば,被控訴人らが,各支出のされたころには,それを知り得たというべきである。 被控訴人らは,本件において,平成8年度支出に関する控訴人bに対する損害賠償代位請求について平成10年5月26日,平成8年度及び9年度を含めた控訴人知事に対する損害賠償請求権不行使の違法確認について平成11年5月14日,平成9年度支出に関する控訴人bに対する損害賠償代位請求について平成14年12月13日に,それぞれ訴えの変更をしており,いずれも支出のなされた日から30日を経過した後で,出訴期間を経過した後になされたものであることは明らかである。 よって,訴え変更により追加さ 12月13日に,それぞれ訴えの変更をしており,いずれも支出のなされた日から30日を経過した後で,出訴期間を経過した後になされたものであることは明らかである。 よって,訴え変更により追加された請求については,出訴期間を徒過したもので不適法であり,却下されるべきである。 (被控訴人らの主張)上記3の被控訴人らの主張のとおり,本件監査請求の内容と本件訴訟の請求内容との間に同一性があり,当初の訴えが適法な出訴期間内に提起されているのであるから,訴えを追加的に変更した請求についても,出訴期間の要件は満たしているというべきである。 控訴人らが主張するように,訴えの追加をする際の出訴期間を当該公金支出を住民が知り得た日から30日以内と解した場合,地方自治法が住民に与えている1年間の監査請求期間が全く考慮されないこととなり,出訴期間の算定において,個別に監査請求手続をとった場合に比して,住民に著しく不利益な結果となり,不当である。 5 住民訴訟の対象及び違法事由(控訴人知事に対する損害賠償請求権不行使の違法確認及び控訴人bに対する損害賠償代位請求について)(控訴人らの主張)地方自治法242条の2第1項の規定に基づく住民訴訟の対象事項となるのは,公金の支出等のいわゆる財務会計上の行為に限定される。また,地方自治法における住民訴訟制度は,普通地方公共団体の行政一般の適正を確保することを目的とするのではなく,普通地方公共団体の財務会計の適正を担保することを目的とする制度であるから,住民訴訟において問題とされる違法事由は,専ら地方公共団体の財務会計の適正を図る観点からの違法事由であり,裁判所が,住民訴訟においてそれ以外の観点から違法事由の有無を審理・判断することを同法は予定していないというべきである。 事由は,専ら地方公共団体の財務会計の適正を図る観点からの違法事由であり,裁判所が,住民訴訟においてそれ以外の観点から違法事由の有無を審理・判断することを同法は予定していないというべきである。 よって,本件訴訟において,本件事業の違法を問題とし,財務会計上の行為以外の原因行為の違法を主張している被控訴人らの本件訴えは,住民訴訟として不適法であり,却下されるべきである。 (被控訴人らの主張)被控訴人らは,本件訴訟において,公金支出等の財務会計上の行為を対象とし,その違法性についても,本件事業が違法であるため,県と本件事業の工事業者との契約が違法であり,工事代金等の支出も違法であるとして,財務会計上の行為自体の違法性を問題としているのであって,住民訴訟として適法である。 第4 本案に関する争点及び争点に対する当事者の主張 1 本件支出負担行為等が地方財政法に違反して違法か,否か(被控訴人らの主張)国頭村における林業人口はわずか1.5パーセントにすぎず,木材供給量は減少の一途にあり,木材関連産業も減少,素材生産量も減少している。この程度の森林施業のためには,既存林道で十分対応が可能であり,広域基幹林道を整備する必要性はない。しかも,県は,本件林道編入予定路線につき,林業従事者の利用状況を調査しておらず,既存林道の現実の利用状況を調査することなしに,森林施業のために広域基幹林道の整備が必要であると主張している。 また,沿岸道路の一部不通時における迂回路としての役割については,交通量調査,交通予測調査等が行われておらず,どの程度の需要が存するか不明である上,沿岸道路よりもむしろ林道の方が台風などには弱く,通行止めとなる可能性が高いのであって,仮に迂回路としての役割を期待するにしても,既存林道を舗装する ておらず,どの程度の需要が存するか不明である上,沿岸道路よりもむしろ林道の方が台風などには弱く,通行止めとなる可能性が高いのであって,仮に迂回路としての役割を期待するにしても,既存林道を舗装する程度で対応が十分可能である。 本件林道の巨額の建設費用及び将来にわたって支出が予想される維持修繕費用を考えると,本件事業に要する費用は,本件林道開設によってもたらされる効果をはるかに超えるものであって,経済的合理性を欠くことも明らかである。 このように本件事業の実施は,必要性や経済的合理性を欠くところ,本件事業施行区域の自然環境の価値を適正に考慮せず,本件林道開設による法面の土砂流失・崩壊,林道の陥没・決壊・崩落等自然災害の発生を考慮せず,本件事業施行区域が水源として重要な地域であることを適正に考慮せず,災害時の迂回路としての役割やレクリエーション目的の利用を過大に評価するなど,その裁量判断の方法及び過程に誤りがあり,明らかに裁量の逸脱・濫用があるから,本件事業のための公金支出は,地方財政法2条1項,3条1項,4条1項及び8条に違反し,違法である。 (控訴人らの主張)本件事業は,①支線の林道の整備と相まって,林道網の適正配置による計画的な森林づくりの促進,木材生産機能,輸送力向上,交通安全の確保など林業の合理的経営及び集約的管理,②小面積の伐採・搬出による自然環境への配慮,③森林レクリエーションの場としての活用,④災害時等の迂回路,⑤水源かん養機能の確保等森林の管理を図ることを目的としている。 国頭村の林業従事者数は約260人(平成7年就業者数の9.7パーセント)であり,これらの従事者により,フローリング,家具等の内装材や土木用資材の生産,チップ生産が行われており,県林業の中核的地域である。また, 業従事者数は約260人(平成7年就業者数の9.7パーセント)であり,これらの従事者により,フローリング,家具等の内装材や土木用資材の生産,チップ生産が行われており,県林業の中核的地域である。また,本件林道の利用区域内の人工林率は,県平均に比べ格段に高い。既設林道においては,①図面上の幅員が4メートルであったが,実際には草が覆い被さっていてそれだけの幅員が確保できない箇所があったこと,②路面が未舗装で,雨等の影響でえぐられた部分が生じ,木材の搬出が困難であったこと,③原木搬出時,荷崩れの危険を避けるため,かなり迂回して工場まで運んでいたこと,④道路勾配がきつく,運搬のため普通のダンプカーを使用できず,4輪駆動車等に限られていたことなど,非効率的であった。このような事情から,統一した基幹林道が必要であるとして,平成3年6月,国頭村から,県に対し,林道開設の要請があった。 広域基幹林道の場合,林業効果指数が1.2以上であることが国庫補助の採択基準の一つであるが,本件林道は7.19となっており,優に採択基準を満たしている。また,採択基準でいう利用区域森林面積とは,当該林道にその地域内の林業経営及び森林管理を依存することとなる地域のことであるが,山間部においては,原則として国有林,民有林を問わず集水区域を利用区域とすることとなっており,本件林道もこれに従って設定しているところ,本件林道の利用区域は3152ヘクタールあり,国庫補助の採択基準である1000ヘクタールを超えている。また,鳥獣保護区,保安林等の制限林については,適正な手続により施業が認められている森林であり,これらの制限林の諸機能を確保するために適正な管理を行うことも,林道の機能として必要であり,制限林について林道の利用区域に含めることにも問題はない。本件林道は,米軍に提供 認められている森林であり,これらの制限林の諸機能を確保するために適正な管理を行うことも,林道の機能として必要であり,制限林について林道の利用区域に含めることにも問題はない。本件林道は,米軍に提供された北部演習場(国有林)を除く民有林だけでも,2713.5ヘクタールの利用区域がある。 県は,自然環境に与える影響を最小限にとどめるために,既設林道を利用することとし,通達に従って,全体計画調査を実施した。そして,調査の結果に基づいて,小動物に配慮した側溝や近自然工法を用いる等,自然環境に配慮した細心の工法で本件事業を実施した。 被控訴人らは,既設林道の改良で十分であると主張するが,降雨量が多く,降雨強度の強い本県では,雨に耐え得る道路構造でなければ,道路の損傷が多発し,通行上危険であるので,本件林道を開設することが必要であった。 以上の本件事業の目的,本件林道の必要性・合理性,国庫補助採択基準の充足,自然環境に対する配慮等を総合的に考慮すれば,本件事業遂行のための支出は合理的なものであり,適法である。 2 本件事業における法令違反(違法)の有無及び内容(被控訴人らの主張)(1) 林業基本法(平成13年法律第107号による改正前のもの。以下,「林業基本法」という場合,同改正前のものを指す。)違反林業基本法3条2項では,国の林業政策の目標達成に必要な諸施策について,国土の保全その他森林の有する公益的機能の確保及び地域の自然的経済的社会的諸条件を考慮して講ずるとし,同法4条2項では,国土の保全その他公益的機能を有する国有林野については,その機能が確保されるように努めるとし,同法5条では,地方公共団体は,国の施策に準じて施策を講ずるように努めなければならないとして,地方公共団体の行う施 その他公益的機能を有する国有林野については,その機能が確保されるように努めるとし,同法5条では,地方公共団体は,国の施策に準じて施策を講ずるように努めなければならないとして,地方公共団体の行う施策にも同法を準用している。 ここにいう自然的条件考慮要件は,その内容として環境影響調査義務を内包しているところ,本件事業については環境影響評価が行われておらず,本件事業の内容自体も,自然的条件考慮要件に反している。 経済的条件考慮要件は,林業施策の経済的合理性として,費用対効果分析を要求し,社会的費用便益分析によって担保されるところ,本件事業においては,いずれの分析も行われていない上,本件事業の内容自体も,効果は期待できないのに,自然破壊による環境保全事業,自然災害による災害復旧事業を不可避なものとしており,費用が効果を上回ることが明らかであって,経済的合理性を欠く。 社会的条件考慮要件については,林業施策の必要性を地域の社会的条件に照らして検討するものであるが,本件事業では,国頭村の地域の林業や生活に必要な道路は整備済みであり,地域の社会的条件からは本件林道を必要としないにもかかわらず,同要件が考慮されていない。 また,これらの各考慮要件を充足するためには,林業施策につき総合的なアセスメントを実施する必要があるが,本件事業では必要性や相当性の検証,代替案の検討が全くなされておらず,意思決定過程の合理性を欠く。 (2) 森林法違反ア林地開発許可制度森林法10条の2においては,地域森林計画の対象となっている民有林において開発行為をしようとする者は,省令で定める手続に従い,都道府県知事の許可を受けなければならないとされている。この許可制度は,同条1項1号において,国 は,地域森林計画の対象となっている民有林において開発行為をしようとする者は,省令で定める手続に従い,都道府県知事の許可を受けなければならないとされている。この許可制度は,同条1項1号において,国又は地方公共団体が行う場合は適用されないと規定されているが,これは,国や地方公共団体が主体となる場合には許可基準に抵触しない開発行為がなされることが当然であるから許可を要しないという趣旨であって,地方公共団体等による林地開発行為においても,それが同条2項の許可基準に抵触するような内容・態様のものである場合には,同条違反として違法と評価されるべきである。本件事業については,その施行区域の一部は,水源かん養保安林,土砂崩壊防備保安林,土砂流出防備保安林に指定されているから,同条2項の許可基準に抵触し,違法である。 イ保安林の解除手続本件事業の計画路線範囲内には水源かん養保安林(α11ダム上流一帯)と土砂流出防備保安林(奥川流域の4か所)及び土砂崩壊防備保安林(奥川流域の2か所)が存在し,本件林道は,水源かん養保安林を約3ないし4キロメートル以上,土砂流出防備保安林を約2キロメートル以上,土砂崩壊防備保安林を約2キロメートルにわたって通過し,各保安林内において,相当量の立木伐採,立木損傷,下草等採取,土地形質の現状変更がなされ,恒久的に保安林の現状を変更するものであるから,本件事業の実施に先立ち,該当部分の森林について森林法26条1項に規定する保安林解除の手続をとる必要があった。本件事業は,未舗装の林道を恒久的にアスファルトないしコンクリート敷きに全面的に作り替え,規模も著しく拡大するものであり,他方,土砂流出防備保安林及び土砂崩壊防備保安林は禁伐指定を受けているのであるから,同法34条1項及び2項の許可では足りず,農林 コンクリート敷きに全面的に作り替え,規模も著しく拡大するものであり,他方,土砂流出防備保安林及び土砂崩壊防備保安林は禁伐指定を受けているのであるから,同法34条1項及び2項の許可では足りず,農林水産大臣による保安林の解除手続が必要とされていたものである。 林野庁長官からの通達(昭和45年6月2日45林野治第921号林野庁長官から各都道府県知事・営林局長あて。最終改正平成7年10月31日。以下「本件通達」という。乙84)を前提としても,林道等を設置する場合(同通達別表1)については,行為の期間に条件を附することとし,その期間は,当該行為に着手するときから5年以内又は当該施設の使用が終わるまでの期間のいずれか短い期間とされているのであるから,5年を超えて存続する本件林道の設置工事等についてはそもそも作業許可の対象とされておらず,このような場合は保安林の解除手続が必要であることが前提となっていると解すべきである。 控訴人らの援用する森林の保健機能の増進に関する特別措置法(平成元年法律第71号。以下「森林保健機能増進法」という。)は,法律によって森林法34条2項の作業許可を不要としたものであるから,本件で引き合いに出すのは的はずれである。しかも,森林保健機能増進法で予定している森林保健施設は,休養施設,教養文化施設等のいわゆる「点的施設」であって,広域基幹林道のような大規模な「線的施設」は含まれていない。 ウ森林法34条の許可手続仮に,保安林解除手続が必要ないとしても,保安林において立木の伐採を行う場合には都道府県知事の伐採許可(同法34条1項)が必要であり,さらに,土地の形質を変更する行為を行う場合にも都道府県知事の許可を要するから(同条2項),本件事業については,同法34条1項の伐採許可 場合には都道府県知事の伐採許可(同法34条1項)が必要であり,さらに,土地の形質を変更する行為を行う場合にも都道府県知事の許可を要するから(同条2項),本件事業については,同法34条1項の伐採許可及び同条2項の作業許可が必要であったのに,これらの許可さえとらずに実施された。 これらの規定の違反に対しては,刑事罰が設けられている(同法206条3,4号)。 また,都道府県知事は,許可申請に係る行為がその保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすと認められる場合は許可してはならない(同条5項)とされ,通達によっても,作業許可に係る行為が,周辺地域に土砂の流出等の被害を及ぼすおそれがある場合,立木の生育及び土壌の正清を阻害し又は土壌の性質を改変する等保安林の保安機能の低下をもたらすと認められる場合については,作業許可は行わないものとするとされているほか(乙88),作業許可の内容が許可基準に適合するものであっても,当該保安林の指定の目的,指定施業要件,現況等からみて保安機能の維持に支障を及ぼすおそれがある次のような場合には,画一的に許可を行うことは適当ではなく,慎重に判断するものとするとされ,そのような場合の一つとして,急傾斜地である等個々の保安林の地形,土壌又は気象条件等により,変更行為が周囲の森林に与える影響が大きくなるおそれがある場合が挙げられている(乙89)。本件林道においては,保安林内において法面の崩壊や路肩の崩落が集中的に発生し,土砂の崩壊や流出を防備するという保安林の保安機能が現実に損なわれる結果が現出しているし,やんばる山地の急傾斜地に位置する本件保安林の存在する場所は,その地形,土壌,厳しい気象条件等や先例にかんがみても,このような事態の発生は容易に予想されたのであって,上記運用指針に照らせば,仮に作業許可の申 地の急傾斜地に位置する本件保安林の存在する場所は,その地形,土壌,厳しい気象条件等や先例にかんがみても,このような事態の発生は容易に予想されたのであって,上記運用指針に照らせば,仮に作業許可の申請がなされたとしても許可をすることが不適当と判断される状況があった。 これらのことからすれば,本件林道の設置工事に当たり立木の伐採許可及び作業許可を得ていないことは極めて重大な瑕疵である。 (3) 沖縄県環境影響評価規程違反沖縄県環境影響評価規程によれば,県内における林道新設の場合,広域基幹林道で車道幅員が4メートル以上,延長2キロメートル以上のものについては,環境影響評価を行わなければならないところ,本件事業においては,環境影響評価が実施されておらず,違法である。本件林道は,ほとんどの部分において未舗装既存林道の拡幅・改築という形をとっているものの,その事業規模,周辺の生態系に与える影響からすれば,広域基幹林道の新設に該当するというべきであり,環境影響評価が必要である。また,既設林道の拡幅は林道の新設に当たらないとする控訴人らの主張によっても,少なくとも,既存の造林作業道A区間及び同B区間に対応する部分については,新設というべきであるところ,両区間を合計すると2050メートルで,基準の2キロメートルを超えるのであって,上記規程に基づく環境影響評価が必要であった。 (4) 文化財保護法違反天然記念物の保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは,文化庁長官の許可を受けなければならない(文化財保護法80条1項)ところ,本件事業は,自然林の伐採やその後の立ち枯れ,天然記念物の生息域の分断により,天然記念物の生息範囲を縮小させた上,本件林道を通行する自動車等の騒音や排ガスにより天然記念物に悪影響を与え,本 ところ,本件事業は,自然林の伐採やその後の立ち枯れ,天然記念物の生息域の分断により,天然記念物の生息範囲を縮小させた上,本件林道を通行する自動車等の騒音や排ガスにより天然記念物に悪影響を与え,本件林道の側溝設置物への天然記念物である小動物の落下などを招き,その生存を脅かすものであるが,文化庁長官の許可を受けておらず,違法である。 (5) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下,「種の保存法」という場合,同改正前のものを指す。)違反国内希少野生動植物種の生きている個体は,捕獲,採取,殺傷又は損傷をしてはならない(種の保存法9条)とされ,「生きている個体の捕獲等」とは,その個体に影響を及ぼす行為を広く意味し,故意過失を問わないと解すべきであるところ,本件事業は,自然林の伐採やその後の立ち枯れ,国内希少野生動植物種の生息域の分断により,同動植物種の生息範囲を縮小させた上,林道を通行する自動車等の騒音や排ガスにより同動植物種に悪影響を与え,側溝設置物への小動物の落下などを招き,その生存を脅かしているのであるから,これに該当する。同法54条では,地方公共団体が行う事務又は事業については同法9条の適用を除外しているが,地方公共団体の事業においては,捕獲等を回避する措置がとられるのを当然の前提としているから除外されているのであって,地方公共団体の事業であっても,捕獲等の結果が予見されるときにはその回避義務があるというべきであり,これを怠ったときは違法となる。 また,地方公共団体は,国内希少野生動植物種の生きている個体の捕獲等をしようとするときは,あらかじめ環境庁長官に協議しその同意を得なければならない(同法54条2項)ところ,本件事業では,環境庁長官に協 た,地方公共団体は,国内希少野生動植物種の生きている個体の捕獲等をしようとするときは,あらかじめ環境庁長官に協議しその同意を得なければならない(同法54条2項)ところ,本件事業では,環境庁長官に協議して同意を得ておらず,違法である。 (控訴人らの主張)(1) 林業基本法について林業基本法は,国の林業に関する政策の目標を明らかにし,その目的達成に資するための基本的な施策を示そうとする宣言立法であり,法の内容自体は一般的抽象的事項を規定するに止まり,同法の規定自体から具体的な法的義務を導き出すことはできない。 また,同法3条2項にいう,林業政策の目標達成に必要な諸施策は地域の自然的経済的社会的諸条件を考慮して講ずるとは,林業の発展が,地域的条件によって左右されるところが大きく,気候,地勢,土壌,林野所有の在り方,市場との関係,就業動向その他広く地域全体の自然的経済的社会的諸条件に応じて異なった現れ方をするから,林業政策についてもそれらの諸条件に応じて画一的でなく,きめ細かく実施しなければならないという意味を強調したものにすぎない。よって,同条項は,環境影響評価調査や費用対効果分析,総合的なアセスメントを実施することを義務付けるものではない。 (2) 森林法についてア林地開発許可制度森林法10条の2第1項但書1号において,国又は地方公共団体が行う開発行為については都道府県知事の許可が必要とされないことは文言上明らかである。なお,本件事業については,事業着手前に,積極的に,地形,水系利用等の自然環境を含めた全体計画調査を行い,かつ,自然環境等の保全や災害防止,希少動物の保全に留意して事業が実施された。よって,本件事業が同法10条の2第2項等の規定の趣旨に抵触することはない。 用等の自然環境を含めた全体計画調査を行い,かつ,自然環境等の保全や災害防止,希少動物の保全に留意して事業が実施された。よって,本件事業が同法10条の2第2項等の規定の趣旨に抵触することはない。 イ保安林の解除手続(ア) 本件林道の一部が,水源かん養保安林及び土砂崩壊防備保安林と指定されている区域内に存在することは認めるが,本件林道の設置に際して農林水産大臣による保安林指定の解除手続が必要であったとの主張は争う。なお,本件事業施行区域には土砂流出防備保安林は存在しない。国頭村における土砂流出防備保安林については,保安林台帳上,本件事業施行区域内には何ら記載がない一方で,他の区域に存する土砂流出防備保安林は202ヘクタールとなっており,市町村別の民有保安林現況表等によっても,土砂流出防備保安林の面積は202ヘクタールで変化はなく(乙10ないし26),土砂流出防備保安林の位置及び面積につき,保安林台帳の記載が正しいといえる。全体計画調査報告書(甲23)添付の規制区域区分図の表示は誤りである。 森林法は,一定規模以下の林道の開設については,以下のとおり,保安林指定の解除手続を経ることなく法34条2項の作業許可によって行うことを当然に予定している。 保安林の指定は,農林水産大臣又は都道府県知事が,森林法25条1項各号に掲げる公共の目的を達成するために必要ががあるときに「森林」を対象としてすることができるものとされ,保安林の指定は,水源のかん養,災害の防止等の公益的機能を発揮させて公共の目的を達成するために,本来自由であるべき森林所有者等による森林の利用に規制を加えるものである。森林法は,一定の場合に保安林の指定を解除することを規定し(同法26条,26条の2),また,保安林において立木の するために,本来自由であるべき森林所有者等による森林の利用に規制を加えるものである。森林法は,一定の場合に保安林の指定を解除することを規定し(同法26条,26条の2),また,保安林において立木の伐採等の行為をする場合には原則として都道府県知事の許可を受けなければならないとしている(同法34条1項,2項。以下,同条項に規定する都道府県知事の許可を併せて「作業許可等」という。)。保安林指定の解除と作業許可等とは,いずれも,保安林の有する公益的機能に着目した制度であるが,このうち作業許可等は,当該保安林の公益的な機能が維持されていることを前提としてされるのに対し,保安林指定の解除は,その機能の発揮の必要性が失われ又はその機能を上回る公益性が生じた場合にされるものである。したがって,保安林内においてある行為を実施するに当たり,保安林指定の解除によるか,作業許可等によるかについては,当該行為の実施後も当該保安林の目的となった機能が維持されるか否かによって決すべきである。道路開設等により森林の一部について立木竹の伐採を行い,立木竹の生育していない部分が生ずる場合であっても,当該森林が全体として,いまだ保安林の指定の目的となった機能を維持していると認められる限り,保安林指定の解除手続によるべきでなく作業許可等によれば足りると解すべきである。 本件林道は,主に森林の育成,保護・管理のために利用する目的で森林の中に設けられる線状の施設であって,このような林道は,保安林の機能を適切に維持していくために周囲の森林と一体として管理していくことが適当であるし,その規模に照らしても,保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすものではなく,保安林の指定の目的となった公益的機能は維持されている。本件通達も,この趣旨に則り,車道幅員が4メートル以下であ であるし,その規模に照らしても,保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすものではなく,保安林の指定の目的となった公益的機能は維持されている。本件通達も,この趣旨に則り,車道幅員が4メートル以下であって,森林の施業・管理に供するため周囲の森林と一体として管理することが適当と認められる場合には,林道の設置についても作業許可の対象とするとの運用指針を明らかにしたものである。同通達は,留意事項として,作業許可の対象となる行為であっても,当該保安林の保安機能の維持に支障を及ぼすおそれがある一定の場合には,画一的に許可を行うことは適当ではなく慎重に判断することを求めているが,これは,あくまで,保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすか否かを個々の事案に即して慎重に判断することとしたものであって,申請に係る行為がその保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすと認められる場合を除き,これを許可しなければならないとする森林法の趣旨に則った合理的なものである。 たしかに,昭和48年2月15日発行に係る「森林法コンメンタール」(甲36)には,道路(林道を含む)の解説等,そこが森林でなくなるような土地の形質変更については,許可の余地はなく,むしろ,保安林の解除を行うべきものと解されるとの記述があるところ,同記述は,その当時の実務運営上の指針とされていた林野庁長官通達(乙80)にしたがったものと思われるが,その後,森林管理の推進の重要性の高まり,大型機械による森林施業の実施,近年の林道施工管理技術の向上など様々な変化を踏まえ,林道であっても「森林」性を失わず,保安林指定の目的が維持される場合があり得ることから,森林法の趣旨に則り同法の予定する範囲内で,実務上の運営の指針を順次改めるに至ったものである。 このような解釈は,森林保健機能増進法の規定 安林指定の目的が維持される場合があり得ることから,森林法の趣旨に則り同法の予定する範囲内で,実務上の運営の指針を順次改めるに至ったものである。 このような解釈は,森林保健機能増進法の規定からも明らかである。 すなわち,同法は,保安林区域内において特定認定に係る森林保健機能増進計画に従って森林保健施設を整備するために行う立木の伐採その他土地の形質の変更等については,森林法34条1項,2項の許可を要しないと規定している(森林保健機能増進法8条1項,2項)。これは,長期にわたって当該施設敷地の部分に立木竹が生育できない部分が生じることを当然予定されている森林保健施設(休養施設等)について,同法における計画認定の段階で「保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼさないと認められること」を審査要件としている(同法6条3項(4))ので,改めて森林法34条1項,2項の作業許可等を申請することは無用であることから,これらを不要としたものである。このことは,ある行為の実施により,森林の一部について立木竹の伐採等を行い,立木竹の生育していない部分が生ずる場合であっても,当該森林が全体として保安林の指定の目的となった機能を維持していると認められる限り,保安林指定の解除は必要ないことを前提としているものである。 (イ) 作業許可等について本件林道の開設に当たり,森林法34条1項及び2項に規定する都道府県知事の許可(作業許可等)を得ていないことは認める。 保安林解除は,農林水産大臣の権限とされているのに対し,作業許可は都道府県知事の権限であり,各々の手続も異にしている。沖縄県においては,作業許可は北部林業事務所長に対する委任事項とされている(沖縄県出先機関の長に対する事務の委任及び決裁に関する規則第3条,別 は都道府県知事の権限であり,各々の手続も異にしている。沖縄県においては,作業許可は北部林業事務所長に対する委任事項とされている(沖縄県出先機関の長に対する事務の委任及び決裁に関する規則第3条,別表2)。本件事業において作業許可等の手続をとらなかったことは,軽微な瑕疵に過ぎず,保安林制度の趣旨に反するような著しい違法性及び明白かつ重大な瑕疵が存在するとはいえない。 (3) 沖縄県環境影響評価規程について本件事業は,既設林道を拡幅する改築工事が主体であり,林道の新設ではなく,同規程の要件に該当しないため,環境影響評価の必要がない。仮に,相当程度の自然の改変を必要とした造林作業道A区間を「新設」と評価したとしても,この区間は1.5キロメートルしかなく,本規程には該当しない。また,県は,環境影響評価こそ実施しなかったが,事業着手前に積極的に,地形,地質,気象,動植物,水系利用等の自然環境を含めた全体計画調査を行い,自然環境に関する必要な情報を収集し,その調査結果に基づき保護措置を検討した上で本件事業を実施した。 (4) 文化財保護法について文化財保護法80条1項但書は,影響が軽微である場合はこの限りでないと規定しており,①本件事業は,既設林道等の拡幅工事が主体であること,②編入予定の既設林道等は昭和一桁年代から開設されている路線もあり,統一して整備した方が既存のU型側溝の改良進度が速まることにもなり,小動物対策上好ましいこと,③側溝はL型を採用し,やむを得ずU型を採用する場合は,蓋を付けるか小動物が脱出可能なスロープ型を適所に配置していること,④集水ますにもスロープを設けていることからして,自然環境に配慮して遂行しており,同但書に該当する。 (5) 種の保存法について種の保存法54条2項所定の 型を適所に配置していること,④集水ますにもスロープを設けていることからして,自然環境に配慮して遂行しており,同但書に該当する。 (5) 種の保存法について種の保存法54条2項所定の「生きている個体の捕獲等をしようとするとき」とは,特定の個体を故意に捕獲,採取,殺傷又は損傷することを意味する。本件事業は,特定の個体を故意に捕獲,採取,殺傷又は損傷するものではないから,同項に違反しない。 3 本件事業における法令違反(違法)によって本件各支出負担行為等が財務会計上違法となるか,否か。 (被控訴人らの主張)住民訴訟において問題とすべき財務会計行為の違法性は,その制度趣旨に鑑み,当該行為により地方公共団体に財産的損失を与えることが法的に許容されるか否かという観点から総合的に評価されるべきであり,この違法性の評価は,一連の行政過程から財務会計行為だけを取り出し,これを他から切り離して独立には評価することができず,財務会計行為とその原因となった行為を一体的に捉えて初めて的確に判断することが可能である。 よって,財務会計上の行為の原因行為が違法であることにより,当該財務会計上の行為が,当該地方公共団体の財産的利益の擁護という観点からして,違法となる場合があり,本件はその場合に該当する。 森林法上必要とされている保安林解除の手続を採らずに保安林を伐採する行為は,刑事罰を科せられるいわば絶対的違法行為であって,このような違法行為を内容とする事業に公金を支出することが財務会計法規に違反することは当然である。このことは,地方自治法242条1項4号の損害賠償請求ができるのは,先行する原因行為に違法事由が存在する場合であっても,右原因行為を前提としてされた職員の行為自体が財務会計法規上の義務に反する違法なものであ は,地方自治法242条1項4号の損害賠償請求ができるのは,先行する原因行為に違法事由が存在する場合であっても,右原因行為を前提としてされた職員の行為自体が財務会計法規上の義務に反する違法なものであるときに限られると判示した最高裁判所平成4年12月15日第3小法廷判決・民集46巻9号2743頁(以下「平成4年最高裁判決」という。)の趣旨にも沿うものである。本件事業が森林法等に違反して違法である以上,県知事として予算を適正に執行すべき一般的義務を負う控訴人bとしては,そのような違法な事業のために工事請負契約(支出負担行為)を締結して公金を支出してはならないという職務上の義務(財務会計法規上の義務)を負っていることは明らかである。本件のように森林法所定の保安林解除の手続を取ることなく工事を敢行し,道路ができたとしても,当該保安林部分の工事は違法であるから道路としての存続は許されず,森林所有者等には立木伐採部分について植栽の義務があり(森林法34条の3),県知事は伐採者に対して造林命令等を発することができる(同法38条)。そして,本件林道の一部が道路として存続することが法的に許されない以上,その他の部分のみでは林道としての機能を果たし得ないのであるから,本件事業は,全体として所期の事業目的を達成できないことは明らかである。したがって,本件事業については,不可分一体のものとして全体について違法性を評価すべきであり,一部(保安林部分の)の違法は本件事業全体を違法ならしめるというべきである。 (控訴人らの主張)地方自治法上の住民訴訟制度は,地方自治体職員の違法な財務会計行為を防止し,是正し,あるいは地方公共団体に生じた損失を補填させることにより,地方財務行政の適正な運営に資することを目的とする制度であって,地方行政一般の非違を対象とする 治体職員の違法な財務会計行為を防止し,是正し,あるいは地方公共団体に生じた損失を補填させることにより,地方財務行政の適正な運営に資することを目的とする制度であって,地方行政一般の非違を対象とするものではない。当該職員に財務会計行為上の債務不履行又は不法行為による損害賠償責任を問うことができるのは,先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,その原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られる。当該職員に何らかの義務違反があったとしても,それが財務会計行為に関しない行政一般の義務違反であるとか,財務会計法規上の義務違反であっても当該地方公共団体の損害と相当因果関係のないものは,当該職員に対する損害賠償請求権の成否とは無関係なものとして考慮の対象外におかれるべきである。 被控訴人らの主張する森林法違反等の違法事由は,いずれも環境問題に関する諸法律違反の主張であり,財務会計法規上の義務とは無関係な行政一般の非違に関する主張に過ぎず,しかも,地方公共団体に対する対内的な義務に関しない地方公共団体の財産上の損害とも何ら関係のない主張である。被控訴人らの主張を前提とすると,ある事業を行うために工事請負契約を締結しようとする場合,財務会計法規違反の有無に止まらず,当該事業が林業基本法,森林法,文化財保護法等のあらゆる関連法令に違反していないことを逐一調査確認した上でなければ行為者が自ら賠償責任を負わされることになりかねないのであって,特に本件のように専決により処理される事柄については専決権者に不可能を強いるものである。関連法令が多数に上ればそれらを逐一調査すべきことになるが,これでは,公務の遂行が萎縮することになりかねず,他方,賠償責任を免れるために調査を尽くそうとすればするほ 権者に不可能を強いるものである。関連法令が多数に上ればそれらを逐一調査すべきことになるが,これでは,公務の遂行が萎縮することになりかねず,他方,賠償責任を免れるために調査を尽くそうとすればするほど事務は停滞する一方となり,能率的な行政の確保を図るという(地方自治法1条)法の趣旨に抵触する。また,地方公共団体の行政作用のほとんどが財政支出を伴うものであることを考えると,住民訴訟の名の下に行政一般の非違を問うことに等しく,住民訴訟制度の趣旨にも反する。 本件において被控訴人らが主張する違法事由と本件支出負担行為等との関係は,いわゆる「財務会計上の行為に先行する原因行為の違法事由」の問題ではなく,そもそも平成4年最高裁判決とは事案が異なる。本件事業と同事業のための工事請負契約の締結(本件各支出負担行為)等の公金支出との関係は,前者が後者の「動機目的」をなすに過ぎず,原因となる非財務会計行為とこれを前提とする財務会計行為という関係にはない。本件事業において森林法等に違反する事由があるとしても,そうであるからといって本件事業全体が違法であるとか,本件各支出負担行為等が財務会計法上の義務に違反するという議論は成り立たない。 4 控訴人bの責任の有無(被控訴人らの主張)(1) 控訴人bは,自ら森林法等に違反する行為をしたのであるから,本件支出負担行為等が違法であることにつき故意又は過失があったことは明らかである。 (2) 控訴人らは,当審において,本件支出負担行為等がいずれも農林総務課長等の専決によりされたとの主張をするけれども,控訴人らの同主張は,「自白の撤回」に当たり許されない。すなわち,被控訴人らは,当初から,当時の県知事として控訴人bが自ら本件支出負担行為等を行ったと主張していたのに対し,控訴人らは,「認める」と認否して の同主張は,「自白の撤回」に当たり許されない。すなわち,被控訴人らは,当初から,当時の県知事として控訴人bが自ら本件支出負担行為等を行ったと主張していたのに対し,控訴人らは,「認める」と認否していたのであって,農林総務課長等の専決により本件支出負担行為等がされたとの控訴人らの主張は,上記認否と両立し得ない主張であるから,自白の撤回に当たるか,少なくとも,時機に後れた攻撃防御方法であって許されない。控訴人らは,被控訴人らが「専決でない」ことについて主張立証責任を負うと主張するが,それは誤りであって,「専決であること」の主張立証責任は控訴人らの側にある。 なお,仮に,本件支出負担行為等が農林総務課長等の専決によりされたものであるとしても,控訴人bは,本件林道開設予定地域に保安林が存在すること,したがって,本件林道開設工事に先立って保安林解除ないし立木伐採に関する知事の許可が必要になることを当然認識していたか,又は容易に認識できたはずであるから,専決権者が保安林解除手続ないし立木伐採の許可がないまま本件工事に関する財務会計上の行為(本件支出負担行為等)に及ばないよう指揮監督し,もって専決権者による財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を負っていた。 にもかかわらず,控訴人bは,専決権者による違法な財務会計上の行為を阻止しなかったものであるから,少なくとも過失による損害賠償責任を負う。 (控訴人らの主張)(1) 控訴人b自身の本件支出負担行為等に関する故意過失の主張については否認ないし争う。 (2) 本件支出負担行為等は,農林総務課長等の専決によってされたものである。専決者は,専決をした場合において必要があると認められるときは,その専決をした事項を上司に報告しなければならない(県事務決裁規定10条)とされているが 農林総務課長等の専決によってされたものである。専決者は,専決をした場合において必要があると認められるときは,その専決をした事項を上司に報告しなければならない(県事務決裁規定10条)とされているが,本件支出負担行為等は,上司に報告すべき重要な事項ではないから,控訴人bにその内容は報告されていない。県の関わる事業は膨大であって,知事が各事業の詳細を把握できる状況にはないから,個々の事業内容について詳細な報告を知事に対して行うことはない。したがって,控訴人bには指揮監督上の義務違反はないし,故意過失もない。 5 損害の有無及び額(被控訴人らの主張)本件では,本件事業に公金を支出する行為そのものが違法である。本来支出してはならない公金を支出し,県の財産を流出させたのであるから,その支出時点において,支出額相当の現実の損害が県に発生した。 外観上林道が完成したとしても,そのうち保安林に係る部分は速やかに撤去した上,植栽して原状回復措置を講じなければならない状況にあるのであって,その存在自体が法的に許容されていない。そして,保安林に係る部分が撤去されれば,本件林道は全体としてその機能効用を果たし得ず,本件事業そのものが全体として所期の目的を達し得ないのであるから,支出された公金は全く無駄であったことに帰するので,これが現実の損害であることは明らかである。 (控訴人らの主張)本件支出負担行為等により県に損害が生じたとの主張は否認ないし争う。本件のような公共事業の場合,本件事業に対する県からの支出が直ちに現実的かつ客観的な財産上の損害といえるためには,本件事業がすべて休止されるなどして同事業や同事業に係る施設等が全く機能せず,将来においても機能する見込みが全くないなど,県からの支出が全く無価値なもので,当該支出等が直ちに の損害といえるためには,本件事業がすべて休止されるなどして同事業や同事業に係る施設等が全く機能せず,将来においても機能する見込みが全くないなど,県からの支出が全く無価値なもので,当該支出等が直ちに県の財産上の損害とみなし得るような特段の事情が存するときに限られると解すべきである。本件では本件事業に係る林道工事は完成し,この林道は県の貴重かつ有用な財産として現に林業従事者等によって活用され今後も末永く使用されるはずのものであって,県に損害が発生していないことは明らかである。 第5 本案前の争点に対する裁判所の判断 1 差止請求について本件事業の施工に伴う工事は平成10年3月31日に完了し,本件事業に関する県の公金支出は同年5月15日ころ完了したことは,前記第2の2の前提事実(6)記載のとおりである(当事者間に争いがない。)。 よって,被控訴人らが,控訴人知事に対し,本件事業に関する公金支出等の差止めを求める訴えは,訴えの利益を欠くことが明らかであり,不適法である。 2 平成7年度支出のうち4210万6400円分の監査請求期間徒過について本件事業に関する平成7年度の支出において,本件事業施工に伴う工事の請負代金として,576万8000円が平成7年5月2日に(乙38),824万円(乙43)と1104万1600円(乙45)の合計1928万1600円が平成7年7月31日に,922万8800円が平成7年8月8日に(乙47),782万8000円が平成7年8月14日に(乙41),それぞれ支出されたことが認められる(なお,上記各支出額につき,上記各書証においては,国の負担分も含めた各支払工事請負代金額が明らかになるのみであるが,事業費の県負担割合が20パーセントであることは争いのない事実であるところ,控訴人ら主張の支出額は,各書 き,上記各書証においては,国の負担分も含めた各支払工事請負代金額が明らかになるのみであるが,事業費の県負担割合が20パーセントであることは争いのない事実であるところ,控訴人ら主張の支出額は,各書証において認められる工事請負代金の20パーセント相当額と合致するから,控訴人ら主張のとおりの額であったと認めることができる。)。これらの合計4210万6400円については,各支出がなされた日から1年の監査請求期間を徒過して,被控訴人らによる監査請求がなされている。そこで,監査請求期間の徒過について,地方自治法242条2項但書所定の正当な理由が認められるか否かが問題となる。 地方自治法において,監査請求に期間制限が設けられた趣旨は,住民訴訟が提訴者の個人的権利や利益と関係なく提起できる客観訴訟であり,普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為が,いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るとすると,当該行為の法的安定性が損なわれることにある。そして,同法242条2項但書は,当該行為が秘密裡になされ,1年を経過してから初めて明らかになったような場合等には,その趣旨を貫くのは相当ではないことから定められたものであって,ここにいう正当な理由の有無は,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたか,また,当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである。そして,当該行為が秘密裡になされた場合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合も同様に,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもっ 注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合も同様に,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をした場合には,正当な理由があると解すべきである(以上につき,最高裁判所昭和63年4月22日第2小法廷判決・裁判集民事154号57頁,同平成14年9月12日第1小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照)。 そこで検討するに,平成5年からα2において本件事業に伴う工事がなされていたことは外形的に明らかであるところ,県発注の工事請負契約の入札結果等については,工事名,工事場所,落札金額等に関する書面の閲覧が可能であることが認められる(乙37)。そうすると,県の住民は,本件事業に関する工事請負契約に関する書面を閲覧することにより,その具体的内容等を知ることができ,さらには,県の情報公開制度を利用することによって,当該工事請負契約に関する具体的な工事代金の支出等についても知り得たというべきである。 被控訴人らは,工事請負契約の入札結果が公表されていたとしても,具体的な支出日及び支出額を知り得るわけではないし,県の情報公開制度は,県民の公文書の開示を請求する権利を明らかにする目的で制定されたものであって,住民に制度を利用することを義務付けるものではないから,被控訴人らが公金の具体的支出の事実を知り得たとはいえないと主張する。 しかし,被控訴人らによる本件監査請求が,前記第2の2の前提事実(4)記載のとおり,本件事業が必要性を欠き,希少種の生息地を破壊するため文化財保護法等に反することを違法の理由とす 張する。 しかし,被控訴人らによる本件監査請求が,前記第2の2の前提事実(4)記載のとおり,本件事業が必要性を欠き,希少種の生息地を破壊するため文化財保護法等に反することを違法の理由とするものであったことからすると,具体的な公金支出日及び支出額が明らかになって初めてその違法性を認識し得たというわけではなく,具体的公金支出を特定して監査請求をするにしても,情報公開制度を利用するについて客観的な障害があったというような事情も窺えないから,当該公金が支出されたころ,監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることが可能となったというべきである。したがって,被控訴人らが,平成7年5月2日から同年8月14日までに支出された合計金4210万6400円に関して1年間の監査請求期間を徒過したことについて,地方自治法242条2項但書所定の正当な理由があるとは認められず,被控訴人らの主張は採用できない。 そうすると,被控訴人らが,控訴人知事が控訴人bに対する不法行為に基づく損害賠償請求権等の行使を怠っていることの違法確認を求める訴え及び控訴人bに対してする損害賠償代位請求のうち,平成7年5月2日から同年8月14日までに支出された合計金4210万6400円に関しては,監査請求期間の徒過について,地方自治法242条2項但書所定の正当な理由が認められないから,適法な監査請求の前置を欠くことになり,不適法といわなければならない。 3 監査請求後にされた支出に関する監査請求前置の要件充足について住民訴訟を提起するには,当該訴訟の請求と同一の事項について監査請求を経ていることが必要であるが,その請求が同一であるとして住民訴訟の対象となる範囲は,監査請求に係る行為若しくは事実から派生し,又はこれを前提として後続することが必然的に予 一の事項について監査請求を経ていることが必要であるが,その請求が同一であるとして住民訴訟の対象となる範囲は,監査請求に係る行為若しくは事実から派生し,又はこれを前提として後続することが必然的に予測されるすべての行為若しくは事実に及ぶと解すべきである。 本件においては,前記第2の前提事実(4)記載のとおり,被控訴人らが,本件事業が必要性を欠き,希少種の生息地を破壊するため文化財保護法等に反するから,県と本件事業の工事業者との契約は違法であるなどと主張して,平成8年度以降の工事の中止,工事請負契約の解約,平成7年度支出の1億4300万円の返還,既工事部分の原状回復等を知事に勧告することを求める本件監査請求をしており,監査請求後の本件事業に関する工事代金支払等の公金支出は,本件監査請求の対象となった本件事業に関する工事や支出等から派生し,又はこれを前提として後続することが必然的に予測される行為といえるから,当該監査請求をもって,監査請求後になされた支出に関する損害賠償請求権不行使の違法確認及び損害賠償代位請求についても,監査請求前置の要件を満たしていると認めるのが相当である。 控訴人らは,平成8年度及び平成9年度の支出について,監査請求がなされていないから,監査請求前置の要件を欠き不適法であると主張する。 しかし,上記説示のとおり,監査請求の対象となった事業に関する工事や支出等から派生し又はこれを前提として後続することが必然的に予測される行為に関して,改めて監査請求前置を求める必要性が乏しいことは明らかであるから,控訴人らの主張は採用できない。 4 訴え変更により追加された各請求の出訴期間の要件充足について前記第2の前提事実(5)記載のとおり,被控訴人らは,監査請求後になされた県の公金支出に関し,訴えの 主張は採用できない。 4 訴え変更により追加された各請求の出訴期間の要件充足について前記第2の前提事実(5)記載のとおり,被控訴人らは,監査請求後になされた県の公金支出に関し,訴えの追加的変更により,控訴人知事の損害賠償請求権不行使の違法確認及び控訴人bに対する損害賠償代位請求を提起したものである。 訴えの追加的変更は,変更後の追加された新請求については,新たな訴えの提起に他ならないから,その新請求について出訴期間が遵守されているか否かは,原則として,訴えの変更時を基準とすべきものである。しかし,変更後の新請求と変更前の旧請求との間に訴訟物の同一性が認められる場合,又は両者の関係からして,出訴期間の遵守の点において,変更後の新請求に係る訴えを旧請求の提訴の時に提起したものと同視し得る特段の事情があるときには,例外的に旧請求の訴えの時に新請求の訴えの提起があったものとみなすことにより,出訴期間の遵守に欠ける点がないと認めるのが相当である。 これを本件についてみると,本件事業に関する公金支出の差止め及び既になされた平成7年度支出分に関する損害賠償代位請求と,監査請求後になされた平成8年及び9年度支出分に関する損害賠償代位請求及びその不行使の違法確認とは,同じ違法主張を前提とするもので,その中心的な争点を共通とし,公金支出の事前差止請求と公金支出後の損害賠償代位請求等は,密接不可分の関係にあり,差止めを求められている公金が支出された場合,これに関して損害賠償代位請求等がなされるであろうことは当然に予測されるものといえる。また,被告についても,当初提訴の時から,控訴人知事と控訴人bを相手方とするものであり,変更後の新請求においても,両名を被告としており,差止請求を維持しつつ,当初から提訴されていた損害賠償代位請求 また,被告についても,当初提訴の時から,控訴人知事と控訴人bを相手方とするものであり,変更後の新請求においても,両名を被告としており,差止請求を維持しつつ,当初から提訴されていた損害賠償代位請求(附帯請求を含む。)の金額が変更され,これに伴う不行使の違法確認が追加されたにすぎない。 そうすると,本件においては,変更後の新請求に係る訴えを旧請求の訴えの提起の時になされたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるものというべきである。 5 住民訴訟の対象及び違法事由について控訴人らは,住民訴訟において問題とされる違法は専ら地方公共団体の財務会計の適正を図る観点からの違法であり,裁判所が,住民訴訟においてそれ以外の観点から違法事由の有無を審理・判断することを地方自治法は予定していない旨主張して,被控訴人らが本件事業の違法性を問題としていることを,財務会計上の行為以外の原因行為の違法に該当するとして,住民訴訟として不適法であると主張する。 しかし,本件訴訟において,被控訴人らは,本件支出負担行為等の財務会計上の行為が違法であると主張しているのであって,その前提として本件事業の違法を主張しているに過ぎず,本件事業における違法(関連する法令違反)自体が住民訴訟の対象となる違法行為に当たると主張しているわけではない。裁判所における審理・判断の対象も,本件支出負担行為等が財務会計上違法な行為であるか否かであって,本件事業における違法行為の有無及び内容は,それを前提として当該職員が財務会計法規上いかなる義務を負うかという観点から検討されるべき事柄であるから,これについて審理・判断することを地方自治法が予定していないということはできず,控訴人らの上記主張は採用することができない。 第6 本案 かなる義務を負うかという観点から検討されるべき事柄であるから,これについて審理・判断することを地方自治法が予定していないということはできず,控訴人らの上記主張は採用することができない。 第6 本案に関する争点に対する裁判所の判断 1 証拠(甲1(枝番号を含む。以下同じ。)ないし7,甲9ないし32,甲34ないし42,甲49,甲56ないし61,甲69ないし71,甲74ないし76,甲78,甲80,甲82,甲84,乙2,乙8ないし26,被控訴人c,証人d,平成12年9月29日実施の検証結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) やんばる地域の自然環境α2は,沖縄本島の最北端,北緯26度,東経128度付近に位置し,α12,α13と隣接しており,これら沖縄県北部地域の最北部三村,α2,α12,α13にまたがる山岳地域を通称やんばる(山原)という。 やんばるは,イタジイを主とする亜熱帯常緑広葉樹に覆われており,その土壌は国頭マージと呼ばれる赤土である。 やんばるには,沖縄本島最高峰の与那覇岳(498メートル),西銘岳(420メートル),伊湯岳(446メートル)などの大小幾多の山々が中央部を縦走して連なり,海岸近くまで丘陵地となっている。山々には無数の沢が流れ,大小の多くの河川となって海に注いでいるが,河川勾配が急峻で,流路面積が短い河川が多く,そのため渓流が複雑な地形を形作り,亜熱帯の渓流に特徴的な渓流植物群落が発達している。これらの植物は各々渓流により隔離され,固有種の分化が多い。 やんばるの年間降雨量は,与那覇岳山頂付近では3000ミリメートルを超えるなどの多雨地域であり,大量の雨水をスポンジのように吸収して貯えるイタジイの自然林が,県民の水瓶,生活用水の供給源として極めて重要な機能を果たし 量は,与那覇岳山頂付近では3000ミリメートルを超えるなどの多雨地域であり,大量の雨水をスポンジのように吸収して貯えるイタジイの自然林が,県民の水瓶,生活用水の供給源として極めて重要な機能を果たしてきた。 やんばるには,多くの固有種が分布生息しており,文化財保護法による天然記念物,種の保存法・同法施行令17条所定の希少動植物種,環境庁編日本版レッドデータブック「日本の絶滅のおそれのある野生生物」掲載の絶滅危惧種・危急種・希少種が多数見られ,やんばるは,その種の多様性,希少性という点で国際的に有名であり,「東洋のガラパゴス」ともいわれている。やんばるにだけ生息する動植物は,現在判明しているものだけで192種に及び,これらの生物を育んできたのが,イタジイを主とする亜熱帯常緑広葉樹林である。イタジイの森は,そこに生息する生き物たちを台風や冬の北風,潮風から守り,夏の強い日差しを和らげ,これら希少動植物の生息に最適な温暖湿潤で安定した環境を保つ役割を果たしてきた。 やんばるの固有種の代表例といえるのはー①「ヤンバルクイナ」国指定天然記念物,種の保存法希少野生動植物種に指定され,絶滅危惧種である。世界中でやんばるのみに生息する。飛翔力のないこの鳥は,木立の密度が高く,樹冠が鬱閉し,林床にも植物が密に生息する沢や谷沿いに生息し,明るいところには稀にしか現れないといわれている。②「ノグチゲラ」国指定特別天然記念物,種の保存法の希少野生動植物種に指定され,絶滅危惧種である。世界中でやんばるの原生的自然林の中だけで生息する一属一種のキツツキで,営巣適木は樹齢50年以上のイタジイの大木や老木で,傾斜した部分(地表に対し60から75度)を巣として利用し,同じ巣は再度使用しないなど多くの条件がある。生息数がわずか90羽前後(1990年時点) 営巣適木は樹齢50年以上のイタジイの大木や老木で,傾斜した部分(地表に対し60から75度)を巣として利用し,同じ巣は再度使用しないなど多くの条件がある。生息数がわずか90羽前後(1990年時点)と推定されており,個体群を維持できるかどうか危惧されている。③「ヤンバルテナガコガネ」国指定天然記念物,種の保存法の希少野生動植物種に指定され,絶滅危惧種である。日本最大の甲虫類で,やんばるの自然林だけに生息し,学術上は「生きている化石」の一つとされている。幼虫は老木や古木のウロ(樹洞)の中の腐食土を食べて成長する。やんばるの開発に伴い,ウロのある古木が急速に失われている現在,絶滅が最も心配されている種である。④「オキナワトゲネズミ」やんばるのみに生息する固有亜種で,学術的に貴重な動物とされている。国指定天然記念物,危急種。⑤「リュウキュウヤマガメ」やんばる,久米島,渡嘉敷島だけに生息する固有亜種。国指定天然記念物,危急種。⑥「ホントウアカヒゲ」沖縄本島と慶良間諸島に生息する固有亜種の留鳥。国指定天然記念物,種の保存法希少野生動植物種,危急種ーである。 (2) 広域基幹林道α14線広域基幹林道α14線(以下「α14林道」という。)は,α15の県道α4線を起点として,α16の国道α17線に至る全体延長35.5キロメートルの林道であり,昭和52年度に着工し,総事業費45億9000万円,17年の歳月をかけて,平成5年度に完成した。 α14林道は,その開通式を平成6年5月18日に予定していたが,雨で土砂崩れが起こり,通行不能となったため延期され,平成7年3月30日に実施された。その3か月後である平成7年6月にも大雨のため27か所で土砂崩れが起こり,路肩がガードレールごと崩れ落ちるなどし,その修復費用が1億1000万円を超えるとの 期され,平成7年3月30日に実施された。その3か月後である平成7年6月にも大雨のため27か所で土砂崩れが起こり,路肩がガードレールごと崩れ落ちるなどし,その修復費用が1億1000万円を超えるとの県の見解が発表された。 α14林道開設後,リュウキュウヤマガメ等の小動物が,林道脇のU字溝に転落して脱出できないまま死亡するという例が報告されたり,α14林道で車にひかれて死んでいるヤンバルクイナのひなが発見されたことが新聞で報道されるなどした。 (3) 本件林道開設の経緯平成3年6月11日,国頭村長が,県知事に対し,「α14林道区間延長について(要請)」と題する書面(乙2)において,「本村の林道は,広域基幹林道と普通林道を組み合せた林道網整備計画に基づいて開設されている。林道は,林業の合理的な経営および森林の集約的な管理のための基幹施設であるばかりでなく,山村地域の生活道として,また,森林レクリエーション施設にも広く利用され,多面的に活用されている。林道を整備することにより進行する本村の過疎化を防止し,林業者の定住化と林業の担い手の育成確保,沖縄北部広域圏の経済的社会的地位の向上を図る。」「北部地域の総合的な振興を図るために,α10から名護市α18に至る中央山頂部を通過する林道の開設構想が打ち出された経緯もあり,α14林道はそれの代替え施設でもあることから,ポストα14としてα15からα10までの区間の延長が重要であるため,早期に継続してもらいたい。」旨述べて,県により,α14林道の区間延長として本件林道を開設することを要請した。 県では,平成3年11月26日,既に作成されていた平成元年4月1日から同11年3月31日を計画期間とする沖縄北部地域森林計画書(甲19)を変更し,始期を平成3年11月26日とし, 。 県では,平成3年11月26日,既に作成されていた平成元年4月1日から同11年3月31日を計画期間とする沖縄北部地域森林計画書(甲19)を変更し,始期を平成3年11月26日とし,終期を同11年3月31日とする沖縄北部地域森林計画変更計画書(甲25)で,林道の開設その他林産物の搬出に関する事項において,路線名をα1線,延長18.0キロメートル,利用区域面積1600ヘクタールとして,本件林道の開設を組み込んだ。また,始期を平成6年4月1日とし,終期を同16年3月31日とする沖縄県北部地域森林計画書(甲20)においては,本件林道に関し,延長14.2キロメートル,利用区域面積3152ヘクタールとし,備考欄に改築である旨記載された。 その後,県は,本件林道開設の事業実施計画を策定し,国の補助金交付申請手続を行い,平成4年7月,本件事業に関し,林野庁長官通達(甲78,「林道事業に係る自然環境保全対策について」)に基づく全体計画調査を,コンサルタントに委託して行うこととし,県農林水産部北部林業事務所事業課のd(同年4月同課配属)が,その調査業務の指導を担当し,平成5年2月,全体計画調査報告書(甲23)が作成された。 県は,本件林道の予定路線について,この全体計画調査以外に,林業従事者の利用状況,一般者の利用状況及び予測調査,動植物の棲息環境に与える影響に関する調査等は行わなかった。 (4) 全体計画調査報告書の内容ア調査の目的「広域基幹林道α1線の整備計画にあたり,本路線が地域林業の活性化のみならず,沖縄本島北端沿岸に分散するα2各集落の交通網形成の一環としても重要な位置を占める路線であること,ならびに,路線調査地を含む沖縄本島北部山岳地域が貴重な野生鳥獣の生息テリトリーや 活性化のみならず,沖縄本島北端沿岸に分散するα2各集落の交通網形成の一環としても重要な位置を占める路線であること,ならびに,路線調査地を含む沖縄本島北部山岳地域が貴重な野生鳥獣の生息テリトリーや,植物の分布地として重要な地域であることに鑑み,この調査では,林道の開設が林業経営をはじめ地域社会に与える効果と,自然環境に対する影響及びその保全上留意すべき事項を明らかにする。また,以上の調査結果に基づき,計画路線の現地踏査と測点設定及び概略測量を行ない,調査区域を含む広域的な環境保全に配意した経済的でかつ林道規程・林道技術指針等の諸規程に適合した整備計画を策定し,概略設計を行うものである。」イ調査地の概要「調査地は,沖縄本島北端の村であるα2中央部の脊稜山地の北半分(照首山と西銘岳を結ぶ稜線)一帯を占め,行政区域は沖縄県国頭郡国頭村のみに属している。調査区域は,従来の全体計画調査事業の場合(開設事業の場合),当該路線の利用区域を指すのが一般的であるが,本調査の場合は全線既設道路を利用する計画であり,ルートラインがほぼ確定した状態であることから,計画路線の両側それぞれ500メートル程度をその範囲とした。なお,自然環境調査の内容に応じ,調査範囲を広げる必要もあるので,西銘岳周辺と辺野喜川流域は路線の西側2000メートル程度まで区域を広げた。区域面積は,2120ヘクタール(測定)である。調査区域は国頭村の基幹産業のひとつである林業及びその関連事業の資源地帯であるとともに,ヤンバルテナガコガネ,ノグチゲラをはじめとする貴重な野生鳥獣の生息テリトリー(西銘岳・α3・伊部岳各鳥獣保護区とその周辺)を含んでおり,α11ダム,α19ダム,α20ダムの水源地帯としても重要な地域である。」ウ調査路線「調査路線は,県道 生息テリトリー(西銘岳・α3・伊部岳各鳥獣保護区とその周辺)を含んでおり,α11ダム,α19ダム,α20ダムの水源地帯としても重要な地域である。」ウ調査路線「調査路線は,県道α4線(α21横断線)の照首山南側を起点とし,ほぼ脊稜山地沿いに,α5林道,α6林道,α7林道,造林作業道,α8林道,の各部分を利用連結し,さらにα9林道を全線当路線に編入して,稜線から奥川沿いに下り,国道α22線の奥の集落の南側に連結する(林道終点と国道の間に村道を介在する)総延長1万4235メートルの1級規格(全幅5メートル)の広域基幹林道である。なお,本路線は,前記のように全線既設道路(林道及び作業道)を改築利用する線形になっており,作業道の区間を除き,全幅4メートル(2級)から5メートル(1級)の拡幅改良,路側施設と法面改良,排水施設の改良,舗装等が主な整備内容で,線形改良は2級から1級への規格変更に伴う整備内容である。」エ土地利用・森林の概況「本村は村土の82.5パーセントが森林で占められている。(中略)森林は26.4パーセントが国有林,73.6パーセントが民有林であり,国有林は米軍演習地になっている部分が多い。調査区域の照首山から北側へ向かう稜線の東側の普久川の上流域は,ほとんど米軍演習地になっている。(中略)整備対象路線の利用区域は,利用区域図に示したとおりである。総面積は2955ヘクタールで,民有林が2517ヘクタール,国有林が438.5ヘクタールである。国有林は全域軍用地であり一般的な森林施業はほとんど行われていない。従って,実質的な利用区域面積は2517ヘクタールと考えてよい。利用区域内の制限林は,水源かん養保安林が398.75ヘクタール(県有林57,58,59林班),土砂流出防備保安林が64.66ヘク い。従って,実質的な利用区域面積は2517ヘクタールと考えてよい。利用区域内の制限林は,水源かん養保安林が398.75ヘクタール(県有林57,58,59林班),土砂流出防備保安林が64.66ヘクタール,特別鳥獣保護区が60.40ヘクタールである。」オ地域の道路網「本村は半島の先端部に位置しているために,集落はすべて海岸沿いにある。各集落と村役場のあるα23とは,半島沿岸を周回する国道α22線及び県道α24で連絡されている。2本の道路は半島先端の集落奥で連絡しており,西岸側を国道α22線,東岸側を県道α24線が走行している。また,半島を横断する一般公道には西岸側のα15と東岸側のα25を連絡する県道α4線(α21線)がある。村はこの県道を境に北半分と南半分に分かれるが,調査区域はこの県道α21線と沿岸を走る国・県道に囲まれた北半分の中にある。国県道に囲まれた北半分の地域の中は林道が連絡系を形成しており,林業のみならず,農耕地への通いや海岸沿いの国県道の災害時の迂回路として利用されている。これらの林道は現在,未舗装のものが多く,勾配の急な区間では路面の荒廃している所もあるため,各集落からは舗装と改良に対する要望が多い。この北半分地域は横断線形の林道であるα6線,α8線によって,南北に3分されるが,両林道の間を連絡する道路が未完(古い造林作業道があるが,現在は利用不可能)である。この部分を整備して連絡系を形成すると,北半分地域の山岳地帯からα15にある森林組合の加工施設への連絡がスムースになる他,α10,α8方面から県道α21線へ連絡する迂回路が形成される。」カ本件林道整備の目的「本路線が林道本来の木材の生産手段としてはたす役割以外に,α2北部の集落のロードネットワークの一部としても重要な機能を持 線へ連絡する迂回路が形成される。」カ本件林道整備の目的「本路線が林道本来の木材の生産手段としてはたす役割以外に,α2北部の集落のロードネットワークの一部としても重要な機能を持っていることが明らかになった。また,森林施業の面でも,この区域のほとんどすべての林道が整備路線に接続した線形になっていることから,事業対象地と村内の各集落の連絡や事業地間の移動の枢軸として機能することが期待されている。ことに,今後,タワーヤーダをはじめとする様々な林業機械が利用されるようになると,集約性を高めるために事業地間でのオペレータや機械の移動が頻繁に発生することになり,本路線はそのための運搬路としても高度な機能をもとめられるようになる。国頭村では,県内随一の森林地帯というユニークな環境を求めて,外部からの入り込み者が増加しており,α11ダム周辺に森林レクリエーション施設整備の計画を持っている。村ではさらにこの周辺エリアや調査区域内の豊かな自然に多くの人々がふれあえる機会を増やそうと考えており,本路線はそのような森林レクリエーションのためのアクセス道路としても機能することが期待されている。もともと,木材の生産手段としてそれぞれ個別のポリシーによって開設された現状の本路線が,必ずしも上記のようなニーズに対応できるような状況でないことは既述したが,村の基幹施設のひとつとして機能してゆくためには,少なくとも大型車(消防車,救急車,小型バス等を含む)がスムーズに走行できるだけの幅員,路側施設の安全性,及び走行の快適性をそなえる必要がある。すなわち,現在,別々の路線として連結しているだけの本路線を,統一性のある規格(自動車道1級)で1本の幹線林道に改良し,林業関係者以外にも広く利用される山村道にすることが,本事業の目的である。」キ環境調 ,別々の路線として連結しているだけの本路線を,統一性のある規格(自動車道1級)で1本の幹線林道に改良し,林業関係者以外にも広く利用される山村道にすることが,本事業の目的である。」キ環境調査環境調査は,法的規制事項については,森林簿・林班区分図等を資料として,調査要領(林道必携設計編)に従って全部の項目について位置,面積等を調べるほか,既存の資料を基本として,補足的に現地踏査を行うなどして,水系利用,地形・地質,気象,荒廃現況,動物・植物,森林現況,道路現況について調査をしており,下流域への土砂流出防止に留意した伐採方法を工夫することや,乾燥と風害により植物群落が浸食されることを避けるため,保全対象とする群落周辺では少なくとも50メートル以上現存の立木を残存させ,できるだけ面的に広がりのある状態で保存すべきことなどを指摘している。 また,保全対象となる貴重な動植物についてリストアップし,調査区域内で生息が確認されている絶滅危惧種のヤンバルクイナ,ノグチゲラ,ヤンバルテナガコガネ,危急種のオキナワトゲネズミ,ケナガネズミ,ホントウアカヒゲ,リュウキュウヤマガメ,イシカワガエル,ホルストガエル,アラモトサワガニ,オオサワガニ,クロイワゼミの12種が,いずれも深い森林をすみかにし,ノグチゲラ,ケナガネズミ,ヤンバルテナガコガネには大径木の存在が生息条件として必須であること,両生・爬虫類の危急,希少種は深い森の中の沢の源流に生息するものが多いこと,ヤンバルクイナやノグチゲラが路線予定地周辺にも出没していることを指摘している。そして,地上歩行をする小動物や,水辺に沿って移動する小動物にとって,トラフ型のコンクリート側溝,流路をしゃ断する形の盛土構造,連続するコンクリート構造物,長大な法面等の構造は,生息域を限定してし 。そして,地上歩行をする小動物や,水辺に沿って移動する小動物にとって,トラフ型のコンクリート側溝,流路をしゃ断する形の盛土構造,連続するコンクリート構造物,長大な法面等の構造は,生息域を限定してしまう可能性が高いため,構造物に重点的な改良が必要であるとして,「①側溝はU型側溝をすべて撤去してL型にするか,有蓋とする。②集水ますには山側に地山に沿ったスロープを付ける。スロープの表面はコンクリートに自然石をうめ込む。③暗渠は地山に接して配置する。④横断溝を短間隔(100メートル内外)に配置して流水を一箇所に集めない。(源流の保全)⑤フトンカゴによる流未処理で水流を緩和する(源流の保全,浸食防止)。⑥地上歩行生物が計画路線を横断しそうな箇所への標識の設置(生物の交通事故防止)⑦自然に復しつつある法面(木木類の侵入が顕著な法面)には,できるだけ手を加えないような改築方法をとる。手を加えた法面は可能な限り緑化する。⑧路側のコンクリート構造物の切れ目を保全するような改築方法をとる。(現状以上に構造物を連続させない)」などの対策を挙げている。 ク法的規制事項「調査区域内には,水源かん養保安林,土砂崩壊防備保安林,特別鳥獣保護区の3項目以外に法的な規制はない。水源かん養保安林は,α11ダムの上流域一帯が指定を受けている。森林施業上,特に厳しい規制はないが,ダムの水質保全のためには,現在,稜線上を走行している水源かん養保安林内の路線を変更しない方が良い。土砂崩壊防備保安林は奥川流域に4箇所指定されている。この流域は,高位段丘面である標高150~200メートルの台地の縁に支流の谷頭がつき上げているために崩壊地が多く,奥川本流にも砂防えん提が施設されている。保安林内は全て禁伐措置がとられている。鳥獣保護区は,西銘岳鳥獣保護区,α 標高150~200メートルの台地の縁に支流の谷頭がつき上げているために崩壊地が多く,奥川本流にも砂防えん提が施設されている。保安林内は全て禁伐措置がとられている。鳥獣保護区は,西銘岳鳥獣保護区,α3鳥獣保護区,伊部岳鳥獣保護区の3箇所の指定がある。伊部岳鳥獣保護区を除く2箇所は,禁伐ないし択伐の施行指定がなされている。特に保護種の指定はなされていないが,いずれも,動物の項に述べたように,ヤンバルテナガコガネ,ノグチゲラ等貴重な生物の生息域となっており,生息域も限定されていることから,今後も区域内の森林が分断されることのないような対策がとられる必要がある。」ケ路線整備推進上の留意事項路線整備推進上の留意事項として,地形に関し,中腹以下に路線を移動すると不経済有線形になるので,稜線部を走行している原道の位置は,できるだけ維持した線形をとる必要があること,地質に関し,幹線林道としての機能を維持するために全線舗装をすることになっているが,全般に浸食を受けやすい地質なので,路面排水施設を多めに設置し,地山や源流部への排出箇所では,フトンカゴ等で確実な流未処理を行う必要があり,切取法面には,硬質粘土状の岩体が出現する所が多く,植生が活着しにくいので,原道の大きな切取法面で自然に復しつつある所(植生がよく入っている所)はできるだけ手を加えない方が良いこと,植生に関し,保全状態の良い老齢天然林に接した区間では,現存の森林を大きく損なうような線形変更や道路構造の変更を避けることが望ましい(特に鳥獣保護区と国有林の周辺)こと,動物に関し,鳥獣保護区を分断するような線形変更は行わないことのほか,上記構造物等に関する8項目の対策をとる必要があること,土地利用・水系利用に関し,ダムの水質保全のために,たん水区域での路線変更は行わず,既設の 保護区を分断するような線形変更は行わないことのほか,上記構造物等に関する8項目の対策をとる必要があること,土地利用・水系利用に関し,ダムの水質保全のために,たん水区域での路線変更は行わず,既設の水道施設が埋設されているα9線の区間では水道施設の移設が必要であること,森林レクリエーションに関し,本件林道の整備に伴って,外部からの入り込み者が増えることが予想されるので,既存の残土処理跡地や余幅のある区間には,路線整備に併せて駐車施設や休憩施設の整備も進めることが望ましいことを指摘している。 コ既設道路の概況と整備方針林道の規格を,自動車道1級とし,設計速度時速30キロメートル(やむを得ない場合時速20キロメートル),車道幅員4メートル,路肩幅員0.5メートルの全幅員5メートル,その他,曲線半径,縦断勾配,設計荷重を設定し,既設道路の現況を基に,幅員確保や勾配修正のための路面の切下げや盛土,側溝施設等について,路線の概略設計をしている。 α5林道は,幅員が4メートルであることから1メートルの拡幅をし,中腹走行であるために降雨の影響を受けやすく路面が浸食されて走行しにくい区間が多いことから,排水施設を設置し直すことなど,α6林道は,幅員が4メートルであることから1メートルの拡幅をし,両性・爬虫類の貴重種が生息している可能性が高い地域であることから,現状の環境を損なわないように改良すること,生息環境保全のために既設置の浸食防止用トラフを改良すること,α7林道は,幅員4メートルであることから1メートルの拡幅をし,α6林道との分岐の取り合わせを改良するためにカーブ設定を変更すること,造林作業道のA区間は,幅員3メートルで,急勾配区間での路面浸食や路肩欠損のため自動車の通行が不可能な未通区間があることか し,α6林道との分岐の取り合わせを改良するためにカーブ設定を変更すること,造林作業道のA区間は,幅員3メートルで,急勾配区間での路面浸食や路肩欠損のため自動車の通行が不可能な未通区間があることから,拡幅,線形の修正,勾配の修正等大幅な改良が必要であること,造林作業道のB区間は,幅員5メートルで,路体構造には手を加える必要はないが,側溝はできるだけ蓋をすること,α8林道は,幅員4メートルであり,一部5メートルの幅員を有して改良を必要としない区間もあるが,路面を切下げるなどして幅員を確保すべきところもあること,α9林道は,幅員4メートルであることから1メートルの拡幅をし,渓流沿いの急斜面を走行している区間が80パーセントもあるが,法面が安定していることから,新たに手を加えるより路側の構造物を入れ替えて可能な限り川手側を拡幅すること,渓流沿いに生息する生物の保全のためや路面浸食防止のために排水施設等を設置し直すことなどを指摘している。 (5) 本件事業の工事施工県は,全体計画調査報告書に基づき,L型側溝,スロープ付き集水ます,有蓋側溝等を採用した側溝工,自然に復しつつある法面の保全,法面保護工を採用した事業実施設計図書を作成し,平成5年6月ころから,本件事業の工事に着手した。 (6) 特殊鳥類等生息環境調査県環境保健部自然保護課は,沖縄島北部地域(α13のα26湾よりα12α27湾にわたる地峡以北の地域)における特殊鳥類(ノグチゲラ,ヤンバルクイナ等,本地域のみに生息する鳥類)等の貴重な野生生物の保護増殖を図るための方策を検討し,その基礎的な資料を得ることを目的として,昭和63年度から平成3年度まで調査班による調査をし,平成5年3月,その報告書として,「特殊鳥類等生息環境調査Ⅵ」(甲41,76)が作成された。 策を検討し,その基礎的な資料を得ることを目的として,昭和63年度から平成3年度まで調査班による調査をし,平成5年3月,その報告書として,「特殊鳥類等生息環境調査Ⅵ」(甲41,76)が作成された。 同書面においては,「北部山地は,沖縄島の原生的自然の姿が比較的によく残っており,島嶼生態系の安定性に寄与しているところが大きい。また,豊かな情緒,精神文化,伝統文化を育てる基盤ともなっている。更に,自然との触れあいを通して,自然の仕組みの精妙さを学び,生命の尊さを感得する場としても貴重な存在である。しかし,近年この北部山地は森林皆伐,林道,畜産団地,ダム建設などの開発によって,野生動植物の種族の維持さえ危ぶまれている。」と指摘されている。 また,鳥獣保護区が5地区,西銘岳地区に75ヘクタール,α3地区に120ヘクタール,伊部岳地区に224ヘクタール,与那覇岳地区に662ヘクタール,安波岳地区に470ヘクタールの合計1551ヘクタール,うち特別保護地区が,西銘岳地区に30ヘクタール,α3地区に58ヘクタール,伊部岳地区に224ヘクタール,与那覇岳地区に23ヘクタールの合計335ヘクタール設定されているが,各地区が散在し,開発が規制される特別保護地区の面積が小さく4区に分離しているという問題点を指摘し,ノグチゲラの絶滅を防止するには,その生息地となっている林齢40年以上のイタジイ自然林の広がる,西銘岳から照首山,与那覇岳,玉辻山へと続く沖縄島北部の脊梁山系全域を連続した鳥獣保護区と特別保護地区として拡大設定すべきであると提案されている。 (7) 本件林道及び付近の状況についてア既設の旧林道との関係本件林道は,県道α4線の照首山南側を起点とし,起点から約1450メートル地点までが旧α5林道,それに連続し (7) 本件林道及び付近の状況についてア既設の旧林道との関係本件林道は,県道α4線の照首山南側を起点とし,起点から約1450メートル地点までが旧α5林道,それに連続して約5675メートル地点までの約4225メートルが旧α6林道の一部,それに連続して約6015メートル地点までの約340メートルが旧α7林道の一部,それに連続して約7515メートル地点までの約1500メートルが旧造林作業道A区間,それに連続して約8065メートル地点までの約550メートルが旧造林作業道B区間,それに連続して約8995メートル地点までの約930メートルが旧α8林道の一部,それに連続して終点までの約5240メートルが旧α9林道に該当する。 イ制限林との関係本件林道の起点の西側には,α3鳥獣保護区及び特別保護区(原判決添付別紙図面〔以下,単に「別紙図面」という。〕①及び②)が広がっており,起点から旧造林作業道に至る地点までの東側一帯は国有林で,米軍に提供されて演習場として利用されており,その中に伊部岳鳥獣保護区(別紙図面③)が位置している。 旧α5林道から旧α6林道に入る付近(別紙図面A地点)から旧α8林道に至るまでの西側一帯には,水源かん養保安林(別紙図面④,流域保全上重要な地域にある森林の河川流量調節機能を高度に保ち,その他森林の機能と相まって,洪水,渇水を防止し,又は各種用水を確保するという目的のために指定される保安林のこと。通常,重要河川その他の水害頻度の高い河川の上流水源地帯において,地形,地質,気象又は従来の森林の取扱い慣習等を考慮して,奥地上流から指定されるものである。)が広がり,本件林道は,3箇所にわたり(別紙図面A地点からB地点まで約750メートル,同C地点か おいて,地形,地質,気象又は従来の森林の取扱い慣習等を考慮して,奥地上流から指定されるものである。)が広がり,本件林道は,3箇所にわたり(別紙図面A地点からB地点まで約750メートル,同C地点からD地点まで約3000メートル,同E地点からF地点まで約600メートル),上記水源かん養保安林を通過している。 旧α8林道以北の地帯には,西側に西銘岳鳥獣保護区及び特別地区(別紙図面⑤及び⑥)がある。 旧α8林道及び旧α9林道付近一帯に,土砂流出防備保安林(材木及び地表植生その他の地被物の直接間接の作用によって,表土の流出及び林地の崩壊を防止する目的のために指定された保安林のこと。主として,はげ山,崩壊地等を含み土砂流出が著しく,下流地帯に重要な保全対象を有する地域に指定されるものである。)が存在するかについては争いがあるので後に検討することとして,本件林道は,別紙図面G地点からH地点まで約1000メートル,同I地点からJ地点まで約450メートルの2箇所において,被控訴人らが土砂流出防備保安林(別紙図面⑦ないし⑩)であると主張する部分を通過し,同K地点から同P地点まで約800メートル,同Q地点から同R地点まで約400メートルの2箇所において,土砂崩壊防備保安林(別紙図面⑪,主として材木の根系の物理的作用によって崩壊の発生を防止し,家屋,耕地,道路等を直接に保護する目的のために指定される保安林のこと。直接の被保護物が明確であって,土砂の崩壊のおそれのある地盤不安定な箇所に指定されるものである。)を通過している。 そこで,土砂流出防備保安林が存在するか否かについて,検討する。 全体計画調査報告書の作成に関わった証人dによれば,全体計画調査の保安林に関する調査は,沖縄北部地域森林 そこで,土砂流出防備保安林が存在するか否かについて,検討する。 全体計画調査報告書の作成に関わった証人dによれば,全体計画調査の保安林に関する調査は,沖縄北部地域森林計画図(報告書の作成時期からして平成元年作成にかかる計画図であると思われる。)を基にしたと認められるところ,平成5年作成の沖縄北部地域森林計画図(甲38)によれば,別紙図面⑦ないし⑩の位置には土砂流出防備保安林が記載されているが,別紙図面⑪の位置には土砂崩壊防備保安林が記載されていないと認められるから,同計画図による限りは,土砂流出防備保安林は別紙図面⑦ないし⑩の位置に存在したということになる。そして,地域森林計画は,都道府県知事が,森林法5条1項に基づき定めるものであり,水源のかん養や土砂の流出防備等森林の公益的機能の観点から各種の規制がなされる保安林の存在,位置,範囲は,森林計画の重要な前提事項となるものである(同条2項7号)から,保安林に関する調査は慎重かつ十分な検討を経てなされているはずであると考えられる。 他方,保安林については,都道府県知事は,保安林台帳を調製し,これを保管しなければならないとされている(森林法39条の2)ところ,控訴人らは,本件において保安林の存否及び位置が問題となった当初から,前記平成5年作成の沖縄北部地域森林計画図の記載に反して,別紙図面⑦ないし⑩の位置の土砂流出防備保安林は保安林台帳に記載がなく,別紙図面⑪の位置の土砂崩壊防備保安林は保安林台帳に記載があると一貫して主張している。そして,被控訴人らは,当裁判所による文書提出命令発令後の平成13年3月1日付け控訴人ら準備書面の記載を踏まえて,第12回準備的口頭弁論期日と第13回準備的口頭弁論期日の間に,控訴人側から任意の開示を受けて,国頭村の ,当裁判所による文書提出命令発令後の平成13年3月1日付け控訴人ら準備書面の記載を踏まえて,第12回準備的口頭弁論期日と第13回準備的口頭弁論期日の間に,控訴人側から任意の開示を受けて,国頭村の保安林台帳全体を閲覧したわけであるが,その後被控訴人らから,別紙図面⑦ないし⑩の位置の土砂流出防備保安林を記載した保安林台帳が存在する旨の主張は何らされていないから,被控訴人らが開示を受けた時点においては,保安林台帳の記載は控訴人ら主張のとおりであったと推認される。また,控訴人らは,5年ごとに行われる平成10年度の沖縄北部地域森林計画の見直しの際に,平成5年作成の同森林計画図を前記保安林台帳の記載に沿ったものに訂正したとする(控訴人らの平成13年5月7日付け準備書面の別紙図面2)が,県農林水産部林務課が毎年作成する「沖縄の林業」の市町村別・民有保安林現況表における国頭村の土砂流出防備保安林の面積は,昭和61年版から平成13年度版まで,沖縄北部地域森林計画図の前記訂正の前後を通じ一貫して202ヘクタールとされており,その記載に変動が見られない(乙10ないし26)。保安林台帳の内容は,その性質上容易に変更されるものではないと考えられることに加え,地域森林計画図の内容が変更されたにもかかわらず,「沖縄の林業」の市町村別・民有保安林現況表における土砂流出防備保安林の面積に変動が見られないなどの事情を併せ考慮すると,保安林台帳の記載は,昭和61年以降は,控訴人ら主張のとおりの内容であったものと推認される。 このように,本件においては,保安林台帳の記載と沖縄北部森林計画図の記載が相違しているわけであるが,①保安林台帳は保安林について法律上調製を義務付けられた台帳であり,保安林について最も直接的な資料ということができること,②上記平成5年 の記載と沖縄北部森林計画図の記載が相違しているわけであるが,①保安林台帳は保安林について法律上調製を義務付けられた台帳であり,保安林について最も直接的な資料ということができること,②上記平成5年作成の沖縄北部地域森林計画図には,保安林台帳に記載されている別紙図面⑪の土砂崩壊防備保安林が記載されていないという明白な誤りがあり,その内容の信頼性に疑問があることからして,保安林台帳の記載を重視するのが相当である。 これに対し被控訴人らは,保安林台帳の記載が存在しないにもかかわらず,上記沖縄北部地域森林計画図において別紙⑦ないし⑩のように保安林の存在及び位置を明確に記載するという誤りが生じるとは考え難いと主張する。この点に関し,控訴人らは,誤記載の理由として,平成5年度作成のものと同一内容と思われる平成元年度作成の沖縄北部地域森林計画図は,沖縄県の本土復帰による琉球森林法から現行の森林法への移行に伴う混乱が原因で,同森林計画図には指定のない土砂流出防備保安林が誤って記載されたと思われると述べており,これを裏付ける的確な証拠はないものではあるが,上記のとおり,沖縄北部地域森林計画図には,保安林台帳には記載されている別紙図面⑪の土砂崩壊防備保安林が記載されていないという明白な誤りがあることからすれば,上記沖縄北部地域森林計画図の作成に際して,誤って保安林台帳以外の資料に依拠した可能性も否定できず,結局,被控訴人らの上記主張は採用できない。 また,被控訴人らは,控訴人らの主張によれば上記沖縄北部地域森林計画図及び全体計画調査報告書の保安林の記載の誤りについて平成5年4月ころに気付いたにもかかわらず,全体計画調査報告書の訂正をせず,沖縄北部地域森林計画図も平成10年まで訂正することをしておらず,さらに,平成9年4月 調査報告書の保安林の記載の誤りについて平成5年4月ころに気付いたにもかかわらず,全体計画調査報告書の訂正をせず,沖縄北部地域森林計画図も平成10年まで訂正することをしておらず,さらに,平成9年4月1日時点の民有林道台帳(甲26,甲37)においても,利用区域内の森林資源のうち法令に基づく制限等の区分及び面積として,土砂流出防備保安林が64.66ヘクタールあると記載されており,これらからすれば,県は,長年の間,誤りを放置していたことになるが,このようなことは林務行政上考え難いことであると主張する。しかし,上記のとおり,県は,別紙図面⑪に存在することが明らかな土砂崩壊防備保安林について,全体計画調査報告書の訂正をせず,沖縄北部地域森林計画図も平成10年の見直しの際まで訂正することをしておらず,さらに,上記民有林道台帳においても存在を記載していなかったのであって,この点では実際に誤りを放置し続けていたものと認められるから,別紙図面⑦ないし⑩の土砂流出防備保安林の記載についても同様であったとしても必ずしも不自然ではない。このような県の対応は,保安林の適正な管理及び住民への適切な情報開示という観点からすると極めてずさんといわざるを得ないが,このような管理等のずさんさが保安林の客観的な存否に影響を及ぼすものではない。 以上よりすれば,全体計画調査報告書添付の規制区域区分図に図示された記載⑦ないし⑩の土砂流出防備保安林が実際に存在していたとする被控訴人らの主張を認めることはできないものというべきである。 ウ平成12年9月29日(検証日)の状況平成12年9月29日の検証実施時,本件林道及びその付近において,法面の土砂等が崩壊した箇所(検証調書図面番号2-1,同写真番号56,93,94),路肩が崩壊している箇所( 検証日)の状況平成12年9月29日の検証実施時,本件林道及びその付近において,法面の土砂等が崩壊した箇所(検証調書図面番号2-1,同写真番号56,93,94),路肩が崩壊している箇所(同写真番号63,65ないし72,80ないし82,84ないし87,89,92)土捨て場が残っている箇所(同図面番号6-1,6-2,6-3),路面に亀裂が生じている箇所(同写真番号18,96)があり,旧造林作業道に該当する辺りでは,本件林道が,曲線,勾配等の関係で旧道と異なる線形をとっているため,本件林道と離れて旧林道が残っていることが確認された(同図面番号8-1,8-2)。 2 争点1(本件支出負担行為等が地方財政法に違反して違法か,否か。)について被控訴人らは,国頭村における林業人口が1.5パーセントにすぎず,木材供給量は減少の一途にあり,木材関連産業も減少,素材生産量も減少している状況において,広域基幹林道を整備する必要性はなかった旨主張する。 確かに,国頭村における林業の状況については,国頭村森林組合長である証人eの証言などによっても,森林の伐採量が減少し,林業生産品高も減少傾向にあり,収益としては助成事業である造林事業による補助金が最大を占めていることなどが認められ,被控訴人らが指摘するような状況が窺われる。また,国頭村から知事に対する本件林道開設の要請の文書(乙2)では,林道の機能として,山村地域の生活道や森林レクリエーション施設としての活用が指摘され,林道整備の目的として,林業育成の観点に加え,国頭村の過疎化防止,沖縄北部広域圏の経済的社会的地位の向上等が指摘されていること,全体計画調査報告書における本件林道整備の目的の記載内容,証人dが,本件林道は地元からの要請であり,路網ネットワークの観点から幹線が必要であ 部広域圏の経済的社会的地位の向上等が指摘されていること,全体計画調査報告書における本件林道整備の目的の記載内容,証人dが,本件林道は地元からの要請であり,路網ネットワークの観点から幹線が必要であると考えていたと述べていることなどからしても,既設林道を広域基幹林道として整備する理由が,その道路網としての機能に大きく比重をおいていることが窺われる。 さらに,本件事業計画の一方では,時期をほぼ同じくして,県において,沖縄島北部地域におけるノグチゲラ,ヤンバルクイナ等の貴重な野生生物の保護増殖を図る方策を検討するための調査を行い,森林皆伐,林道,畜産団地,ダム建設などの開発により野生動植物の種族の維持が危ぶまれているとして,西銘岳から照首山,与那覇岳,玉辻山と続く沖縄島北部の脊梁山系全域を連続した鳥獣保護区及び特別保護地区として拡大設定し,開発規制すべきであると提案する報告書(甲41,76)が作成されるなど,やんばる地域の貴重な野生動植物の保護の在り方が検討されていることも認められる。 ところで,普通地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならず(地方自治法2条14項),地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えて支出してはならないとされている(地方財政法4条1項)から,これら規定に抵触する経費の支出は違法と評価され得るものである。しかしながら,経費の支出において,目的に従った最大効果を達成するために何をもって必要かつ最少の限度というべきかは,当該事務ないし事業の目的,当該経費の額,経済状況等の諸事情の下において,社会通念に従って決定されるべきものであるから,第一次的には,予算の執行権限を有する財務会計職員の社会的,政策的又は経済的見地からす 務ないし事業の目的,当該経費の額,経済状況等の諸事情の下において,社会通念に従って決定されるべきものであるから,第一次的には,予算の執行権限を有する財務会計職員の社会的,政策的又は経済的見地からする裁量に委ねられていると解するのが相当であり,具体的な支出が,当該事務ないし事業の目的,効果との均衡を著しく欠き,予算の執行権限を有する財務会計職員に与えられた前記裁量を逸脱してされたものと認められるときに限り,違法になるものというべきである。 しかるところ,証人eの証言によると,既設林道が未舗装・管理不全であることが林業施業の効率化を妨げる要因となっていたことは否定できず,国頭村から本件事業実施の要請を受けたことも併せ考えれば,控訴人らが,本件林道の整備事業が林業の合理的経営等に資するものであって,生活道や森林レクリエーション施設としての活用の観点も含めて,その必要性があるとした判断が著しく不合理であったとまでいうことはできず,被控訴人らが主張する自然環境保護等の必要性や本件事業に起因する法面や路肩の崩壊等による維持修繕費用の支出の点を考慮しても,本件事業が必要性や経済的合理性を著しく欠き,そのための経費の支出が事業の目的,効果との間の均衡を著しく欠くとまでは認められない。 したがって,本件事業のための公金支出が,地方財政法4条1項に違反して違法ということはできず,また,同法2条1項,3条1項及び8条に違反するともいえない。 3 争点2(本件事業における法令違反〔違法〕の有無及び内容)について(1) 林業基本法違反の主張について被控訴人らは,林業基本法3条2項及び4条2項から,環境影響調査や,費用対効果分析,林業施策についての総合的なアセスメント等の実施が要求されており,本件事業においては,その実施及び いて被控訴人らは,林業基本法3条2項及び4条2項から,環境影響調査や,費用対効果分析,林業施策についての総合的なアセスメント等の実施が要求されており,本件事業においては,その実施及び検討を欠き,自然的経済的社会的条件を欠いているとして,本件事業の違法を主張する。 しかし,同法は,基本法という名称の示すとおり,一般的な指針を定めたものにすぎず,同条項が,被控訴人らの主張するような環境影響評価調査や費用対効果分析,総合的なアセスメントを実施することなどの具体的行為を義務付けているとはいえないから,被控訴人らの主張は採用できない。 (2) 森林法違反の主張についてア林地開発許可制度について森林法10条の2第1項但書1号において,同条項本文が定める開発行為の許可制度は,国又は地方公共団体が行う場合については適用がないことが明らかであるから,県が施行主体である本件事業が同条項違反であるとする被控訴人らの主張は,独自の見解を述べるにすぎず,これを採用することはできない。 イ保安林の解除手続について(ア) 本件林道が,別紙図面④の水源かん養保安林及び同⑪の土砂崩壊防備保安林内を通過していることは争いがなく,同⑦ないし⑩の土砂流出防備保安林が存在すると認められないことは前記のとおりである。そして,本件林道が上記保安林内を通過する具体的な各区域は,上記認定のとおり,水源かん養保安林(別紙図面④)を別紙図面A地点からB地点まで約750メートル,C地点からD地点まで約3000メートル,E地点からF地点まで約600メートル,土砂崩壊防備保安林(別紙図面⑪)をK地点からP地点まで約800メートル,Q地点からR地点まで約400メートルであるところ,各区域において,本件林 00メートル,E地点からF地点まで約600メートル,土砂崩壊防備保安林(別紙図面⑪)をK地点からP地点まで約800メートル,Q地点からR地点まで約400メートルであるところ,各区域において,本件林道開設による幅員拡幅等のために立木伐採等をする工事がなされ,その工事に際して,保安林解除の手続がなされていないことも争いがない。そして,上記保安林内の各区域において,具体的にどのような工事が行われたかは必ずしも明らかではないが,本件林道の開設事業は,基本的には既設林道の線形を利用しながら,ほぼ全区域において幅員を拡幅し,アスファルト舗装をするものであったことが認められる。 (イ) そこで,本件林道の開設につき保安林解除手続が必要であったか否かについて検討する。 A 森林法は,水源のかん養,土砂の流出の防備その他同法25条1項各号に掲げる公共の目的を達成するために必要があるときに,農林水産大臣又は都道府県知事が森林を保安林として指定することができると規定し(同法25条,25条の2)。保安林として指定されると,当該森林は,水源のかん養,災害防止等の公益的機能を優先的な目的とすることになるため,その機能を発揮させて公共の目的を達成するため,森林所有者等による当該森林の利用に規制が加えられることとなる。 森林法は,保安林による上記のような公益的機能の発揮と保安林における適切な施業との調整を図るため,保安林において立木の伐採を行おうとする場合(同法34条1項)や,それ以外の土地の形質を変更する行為等を行おうとする場合(同条2項)には,原則として,あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならないこととしている。そして,同条1項の許可の申請があった場合には,都道府県知事は,その申請に係る伐採の方法が当 する場合(同条2項)には,原則として,あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならないこととしている。そして,同条1項の許可の申請があった場合には,都道府県知事は,その申請に係る伐採の方法が当該保安林に係る指定施業要件に適合するものであるなど一定の条件を満たしているときはこれを許可しなければならず(同条3項),同条2項の許可の申請があった場合には,その申請に係る行為がその保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすと認められる場合を除き,これを許可しなければならないとされる(同条5項)。 他方で,森林法は,農林水産大臣又は都道府県知事は,保安林の指定の理由が消滅したときは,遅滞なくその部分につき保安林の指定を解除しなければならず(同法26条1項及び26条の2第1項),また,公益上の理由により必要が生じたときは,その部分につき保安林の指定を解除することができると規定する(同法26条2項及び26条の2)。これらの規定は,当該森林を保安林として指定すべき公益上の必要性が消滅した場合には遅滞なくその指定を解除する義務を負うこと,及び,当該森林を保安林として存続させてその機能を発揮させる公益上の必要性と保安林としての利用を止めて他に転用することによる公益上の必要性とを比較考量した結果,後者の方がより大きいと判断される場合に,保安林の機能によって保持される公益を犠牲にしても保安林の指定を解除することができることを規定した趣旨と解される。 B 実務の運用上の指針とされる林野庁長官通達及び同庁治山課長通達の推移に関して,後掲各証拠によれば以下の事実が認められる。 昭和45年当時は,道路の開設又は拡幅をする場合は,当該行為の期間が短期間(概ね2年以内)であって当該行為の終了後は確実に森林に復旧する 掲各証拠によれば以下の事実が認められる。 昭和45年当時は,道路の開設又は拡幅をする場合は,当該行為の期間が短期間(概ね2年以内)であって当該行為の終了後は確実に森林に復旧する場合等を除き,原則として作業許可の対象としないこととしていた(乙80)。 しかし,その後の経済社会の発展に伴い,森林に対する国民の要請が多様化・高度化する一方で,森林の有する災害防止機能等の維持が強く求められるようになってきたとの認識を背景に,林野庁長官の諮問を受けて森林保全・利用問題検討会が発足した。同検討会の報告書では,作業許可の適否判定の基準が必ずしも明確でないことが指摘されると共に,保安林解除の申請事案の中には,解除による開発転用よりも,当該保安林の機能を確保しつつ作業許可による森林状態での利用の確保を図ることが望ましいものもみられることなどが指摘された(乙82)。これを踏まえて通達が改正され,新たに別表「保安林の土地の形質の変更行為の許可基準」が設けられて,その中で,専ら森林の施業・管理の要に供するいわゆる施業路(林道・作業道)についても作業許可の対象とされた。これに伴って林野庁治山課長から都道府県林務担当部長宛てに出された通達(乙83。以下「921号長官通達」という。)において,作業許可の対象となる施業路について,採択要件及び規格,構造等からして森林の施業,管理の用に供することが明らかな林道,作業道とされ,当該保安林の現況,指定施業要件の内容,受益の対象との関係等からして指定の目的の達成に支障を及ぼさないものであって,水の処理,法面の保護等の保全措置,施設の管理棟が適正に実施されると認められる場合に行うもの(上記通達別紙の3(2))とされた。 さらに,その後の検討により,保安林の指定面積が 水の処理,法面の保護等の保全措置,施設の管理棟が適正に実施されると認められる場合に行うもの(上記通達別紙の3(2))とされた。 さらに,その後の検討により,保安林の指定面積が平成5年度末時点で840万ヘクタールに及び国内の森林面積の3割,国土面積の2割に達する一方,保安林解除の件数も年間2000件程度に上っていたこと,保安林解除の事案の多くを占める点的,線的な規模の小さな施設の設置については,これを許したとしても保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすおそれは少ないため,作業許可の対象として都道府県知事の許可権限に委ねることが適当なものが多いと考えられると,保安林の指定に伴う立木の伐採規制等の私権に対する規制は必要最小限のものであるべきと考えられることなどを理由として,また,平成7年3月31日に閣議決定された「規制緩和推進計画」において,土地利用に係る規制緩和措置の一つとして,これまで保安林の解除処分により対処していた施設の設置等のうち点的,線的なものについては作業許可で対応できるよう見直しを行うこととされたことを受けて,林野庁長官の諮問機関である,作業許可の基準の改正法口頭に関する保安林に関する技術問題研究会の答申(乙87)に基づき,921号長官通達の一部が改正された(本件通達)。上記答申は,林道について,森林管理の推進の重要性の高まり,大型機械による森林施業の実施,林道施工管理技術の向上など森林及び林業を巡る当時の状況等を踏まえ,適切な維持・管理による保安林の機能の向上を図っていくためには,従来の運用を一部変更して,起点・終点が公道に接続する林道や高規格の林道についても作業許可の対象とすることが適当であって,車道幅員が4メートル以下のものについては,保安林の機能に及ぼす影響が少ないことから,作業許可の対象とす 点・終点が公道に接続する林道や高規格の林道についても作業許可の対象とすることが適当であって,車道幅員が4メートル以下のものについては,保安林の機能に及ぼす影響が少ないことから,作業許可の対象とすることが適当であると指摘していた。これを踏まえて921号長官通達を改正した平成7年10月31日付け本件通達(乙84)及び同日発せられた諸通達(乙88,89。以下,本件通達と併せて「本件通達等」という。)は,林道の開設について,車道幅員が4メートル以下であって,森林の施業・管理に供するため周囲の森林と一体として管理することが適当と認められる場合に作業許可の対象とするものとし,一方で,作業許可の対象となる行為であっても,当該保安林の指定の目的,指定施業要件,現況等からみて保安機能の維持に支障を及ぼすおそれがある一定の場合には,画一的に許可を行うことは適当ではなく慎重に判断するよう規定している(乙89の別紙の3(5))。 C 上記Aに説示したような保安林指定の趣旨及びこれに関する森林法の諸規定の内容等に照らせば,保安林内においてある行為を行うに当たり,保安林の解除手続が必要か否かは,当該行為の結果,保安林指定の目的とされた公益的機能が失われるか否かを基準として判断すべきである。なぜなら,当該行為の結果,一定範囲において立木を伐採したり土地の形質が変更されたとしても,線状に一定規模以下の林道を設置する場合のように,それが当該保安林全体からみてごく一部に過ぎず,しかも,その目的が保安林としての森林の育成,保護・管理のために設けられるものであるような場合には,当該保安林を全体としてみれば,その公益上の必要性が消滅するわけでも他の目的に転用されるわけでもなく,依然として保安林としての公益的機能を発揮することが予定されているといえるのであって,このよ は,当該保安林を全体としてみれば,その公益上の必要性が消滅するわけでも他の目的に転用されるわけでもなく,依然として保安林としての公益的機能を発揮することが予定されているといえるのであって,このような場合にまで一律に,当該林道部分のみを取り出してこの部分について線状に保安林の解除が必要であると解することは,当該森林全体を保安林と指定してその公益的機能を発揮させようとした森林法の趣旨に照らしても実益に乏しく,林道部分のみを線状に保安林から除外するよりはむしろ,保安林の公益的機能を適切に維持していくために当該林道と周囲の森林とを一体として管理していくことが適当と考えられるからである。もっとも,林道等の線状施設であっても,その規模等によっては,定型的に保安林全体としての公益的機能に影響を及ぼすと考えられる場合があり,そのような大規模な施設の設置については作業許可の対象にはならず当該設置部分について保安林指定の解除を要するものと解すべきであるが,どの程度の規模・内容の施設であれば作業許可の対象とならず保安林指定の解除手続を要するかは,社会における森林の利用態様をも踏まえつつ,当該施設の設置が定型的に森林法が目的とする保安林としての公益的機能を害するものであるか否かによって決すべきである。このような観点からみると,本件通達等及びこれに基づく実務の運用は,上記と同旨の見解に基づき,車道幅員4メートル以下の林道であって,森林の施業・管理に供するため周囲の森林と一体として管理することが適当と認められる場合については,原則として保安林指定の解除手続によることなく作業許可の対象となるとするものであって,このような取扱いは,森林法の趣旨に照らし,十分に合理性を有するものということができる。 D これを本件についてみるに,本件林道の開設にあたっては,生 作業許可の対象となるとするものであって,このような取扱いは,森林法の趣旨に照らし,十分に合理性を有するものということができる。 D これを本件についてみるに,本件林道の開設にあたっては,生活道や森林レクリエーション施設としての活用という観点からもその効用が強調されていたことは上記2に認定したとおりであるけれども,他方,本件林道の開設以前に存在した既設林道が未舗装・管理不全であることが林業施業の効率化を妨げる要因となっており,そのため国頭村から本件事業実施の要請を受けたこともまた上記2に認定したとおりである。このことからすれば,本件林道の開設は森林の施業・管理に必要なものであって,森林の施業・管理に供するため周囲の森林と一体として管理することが適当なものであると認められる。もっとも,保安林区域の一部には,指定施業要件として「禁伐」とされている区域が存在することは先に認定したとおりであるけれども,このことは,作業許可等を与えるか否かについて慎重な判断を要するものであるということはできても,「禁伐」とされている区域があることから直ちに,本件林道の開設が作業許可等の対象となり得ないとか,本件林道について作業許可等が得られたはずがないということはできないし,他に,本件林道についてそもそも作業許可等を得ることができなかったであろうというような事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,本件林道の開設について,本件林道の設置工事については,県知事による作業許可の対象となるものであって保安林指定解除の手続は必要ではないと解すべきである。 したがって,本件林道開設にあたって保安林指定解除の手続をとらなかったことが違法であるとの被控訴人らの主張は,採用することができない。 ウ作業許可等について本件林道開設に当たって森 したがって,本件林道開設にあたって保安林指定解除の手続をとらなかったことが違法であるとの被控訴人らの主張は,採用することができない。 ウ作業許可等について本件林道開設に当たって森林法34条1項及び2項に規定する作業許可等の手続を経ていないことは,控訴人らも認めるところであって,これが森林法に違反する違法な行為であることは明らかである。 (3) 沖縄県環境影響評価規程違反の主張について県の沖縄県環境影響評価規程(甲12別表第1の1)において,県内における林道の場合,環境影響評価の対象事業となるのは,車道幅員4メートル以上で延長2キロメートル以上の規模の広域基幹林道の新設とされている。そして,控訴人らは,本件林道の開設事業が,林道全線の新設ではなく既設林道の拡幅・改良であり,一部に新しく開設した部分もあるが,2キロメートル以内の範囲のものであるから,環境影響評価の対象事業とならないと主張する。そこで検討するに,前記認定のとおり,本件事業は,既設林道を前提とした拡幅・改良を主体としたものであると認められ,一部に新しく開設した部分(旧造林作業道A区間)もあるものの,その延長区間が2キロメートル以上であると認めることはできないことからすると,控訴人らの主張は,同規程の解釈として合理的範囲のものであるといえ,本件事業の自然環境に対する影響及びその保全上留意すべき事項を明らかにする目的で全体計画調査を行い,かつ,それに基づいた工法等を採用してなされたことなどをも考慮すると,本件事業に際して,環境影響評価を行わなかったことが同規程に反するとまではいうことはできず,この点をもって本件事業の違法をいう被控訴人らの主張は採用できない。 (4) 文化財保護法違反の主張について被控訴人らは,本件事業がやん が同規程に反するとまではいうことはできず,この点をもって本件事業の違法をいう被控訴人らの主張は採用できない。 (4) 文化財保護法違反の主張について被控訴人らは,本件事業がやんばるの天然記念物の保存に影響を及ぼすとして,文化財保護法80条1項により,天然記念物の保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは,文化庁長官の許可を受けなければならないのに,その許可を受けていないとして,本件事業の同法違反を主張する。 しかし,同条項但書において,保存に影響を及ぼす行為であっても,その影響が軽微である場合には許可を要しないとされているところ,本件事業が,既設林道の存在を前提としたものであり,工事の具体的内容として,例えば,小動物の落下対策のため,できるだけL型側溝,有蓋側溝,スロープ付き集水ますを採用するなど,天然記念物の保存に配慮した工法を採用していることからして,その事業実施に際し,文化庁長官の許可を得なければ違法となるほどに,やんばるの天然記念物の保存に影響を及ぼすものということはできず,被控訴人らの主張は採用し得ない。 (5) 種の保存法違反の主張について被控訴人らは,本件事業が国内希少野生動植物種の生きている個体の捕獲等(捕獲,採取,殺傷又は損傷)をしようとするときに該当するとして,種の保存法54条2項により,環境庁長官に協議しその同意を得なければならないのに,その同意を得ていないとして,本件事業の同法違反を主張するが,本件林道開設事業が,生きている個体の捕獲等をしようとするときに該当するとはいえないことは明らかであるから,被控訴人らの主張は採用し得ない。 4 争点3(本件事業における法令違反〔違法〕によって本件支出負担行為等が財務会計上違法となるか,否か。)について(1) 本件 えないことは明らかであるから,被控訴人らの主張は採用し得ない。 4 争点3(本件事業における法令違反〔違法〕によって本件支出負担行為等が財務会計上違法となるか,否か。)について(1) 本件事業の実施に際し,保安林区域内に本件林道を設置するに当たっては,立木の伐採及び土地の形質の変更について県知事による作業許可等を得る必要があったところ,これを得ないまま本件林道設置工事が行われたこと,これが森林法34条1項及び2項に違反する違法な行為であることは,上記3に認定判断したとおりである。 (2) しかしながら,地方自治法242条の2に規定する住民訴訟制度は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから,これを防止するため,地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として,住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とした制度であって,地方行政一般の非違を対象とするものではないから,同条に基づいて普通地方公共団体の職員に損害賠償を請求することができるのは,当該職員の財務会計上の行為が財務会計法規上の義務に違反する違法な行為である場合に限られるものである。本件においては,違法性が問題とされている財務会計上の行為は本件支出負担行為等(本件工事請負契約の締結及びこれに基づく支出命令)であるから,同条に基づき損害賠償の対象となりうるためには,本件支出負担行為等が財務会計法規上の義務に違反したものであることを要する。 もっとも,財務会計行為それ自体が直接会計法規に違反するところがないとしても,その原因ないし目的となった行為の違法の内容,効果,程度及び財務 計法規上の義務に違反したものであることを要する。 もっとも,財務会計行為それ自体が直接会計法規に違反するところがないとしても,その原因ないし目的となった行為の違法の内容,効果,程度及び財務会計行為との関連性等に照らし,当該行為によって当該普通地方公共団体に財産的な損失を与えることが予算の適正執行という見地からみて法的に許容されないと評価しうる場合には,当該職員は,当該普通地方公共団体に対する関係で,そのような財務会計上の行為をして普通地方公共団体に損失を与えてはならないという財務会計法規上の義務を負担し,当該行為を行うことが財務会計法規上の義務に違反して違法となるものと解される。 (3) これを本件についてみるに,本件支出負担行為等としての本件工事請負契約の締結及びこれに基づく支出命令それ自体は,手続的にも内容的にも,会計法規及びその他の諸法令に直接違反したというような事情は見あたらない。他方,本件支出負担行為等の原因ないし目的となった本件林道開設工事は,上記のとおり,県知事による作業許可等を得ないまま施工されたものであって森林法に違反する違法な工事であるが,このことは本件工事請負契約の私法上の効力に影響を及ぼすものとは解されないから,本件支出負担行為(本件工事請負契約の締結)自体が当然に違法,無効となるものではない。 しかしながら,本件支出負担行為(本件工事請負契約の締結)は,森林法に規定する県知事の作業許可等を得ていないという点で同法に違反する違法な工事を行うことを直接の目的とする行為であるから,これと森林法違反の工事の施工とが単なる動機・目的の関係に過ぎないということはできず,本件支出負担行為は,違法な非財務会計行為と直接的かつ密接な関連性を有する行為というべきである。 また,本件林道開設工事が原則として県知事 施工とが単なる動機・目的の関係に過ぎないということはできず,本件支出負担行為は,違法な非財務会計行為と直接的かつ密接な関連性を有する行為というべきである。 また,本件林道開設工事が原則として県知事による作業許可等の対象となりうるものであることは先に認定判断したとおりであるけれども,工事区域の一部である保安林には指定施業要件として「禁伐」とされている区域が存在し,実務上の運用指針においても,このような場合には作業許可を与えるか否かにつき慎重な検討を要するとされていることなどからすれば,本件林道開設工事を実施する主体とこれについて作業許可等を行うべき主体とがいずれも県知事である控訴人bであったことを考慮しても,作業許可等を与えるか否かについて森林法の制度趣旨や上記運用指針等に照らして検討した結果,本件林道開設工事の内容自体を再検討したり,何らかの条件を付する必要があるという判断に至った可能性も否定できない。したがって,本件林道工事を行うに際し作業許可等を求める手続が履践されてさえいれば当然に作業許可等が得られていたはずであるとは必ずしも言い難いから,作業許可等を得ることなく本件林道開設工事を実施したことが一般行政法上の単なる手続的な瑕疵にとどまるものということもできない。 これらのことからすれば,本件支出負担行為等は,森林法に規定する作業許可等をとることなく同法に違反して本件林道開設工事を行うことを直接の原因ないし目的として債務を負担し,公金を支出する行為であるから,当該職員としては,県に対する関係で,本件支出負担行為等を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負っていたものと解すべきである。なお,本件支出負担行為等が専決により処理されたものであるとしても,本件支出負担行為等及び森林法上の作業許可等の申請・許可を行うべき法令上 いう財務会計法規上の義務を負っていたものと解すべきである。なお,本件支出負担行為等が専決により処理されたものであるとしても,本件支出負担行為等及び森林法上の作業許可等の申請・許可を行うべき法令上の権限主体はいずれも県知事であるから,本件支出負担行為等が専決により処理されたか否かは県知事の責任の有無を判断するに当たって考慮されるべき事柄であって,本件支出負担行為等が財務会計上違法であるか否かについての判断に影響を及ぼすものではない。 (4) したがって,本件林道開設工事を行うことを目的として本件支出負担行為等(本件工事請負契約の締結及びこれに基づく支出命令)を行うことは,財務会計法規上の義務に違反する違法な行為であるというべきである。 5 争点4(控訴人bの責任)について被控訴人らの主張が認められたとしても,争点5(損害の有無及び額)について被控訴人らの主張が認められなければ,結局被控訴人らの請求はいずれも理由がないことに帰するので,まず,争点5について判断する。 本件支出負担行為等が財務会計上違法と評価されるものであっても,本件工事請負契約自体は私法上有効であること,県としては同契約に基づき支出額に相当する価額の工事結果を受領した上(請負代金額が工事の内容に比して不相当に過大であるというような事情は何ら見当たらない。),現に本件林道を所期の目的に即して使用していることからすれば,本件支出負担行為等によって県に工事費用等相当額の損害が発生したと認めることはできない。また,森林法の規定によっても,同法34条1項,2項に違反して立木の伐採等を行った場合の効果として,当然に原状回復義務が発生するものではないし,本件において,同条項に違反することを理由として実際に原状回復を命じられたとか,命じられることが確実であるというような事実を 等を行った場合の効果として,当然に原状回復義務が発生するものではないし,本件において,同条項に違反することを理由として実際に原状回復を命じられたとか,命じられることが確実であるというような事実を認めるに足りる証拠はないし,それ以外に本件支出負担行為等の結果として県に何らかの損害が発生したことを認めるに足りる証拠もないから,本件支出負担行為等によって県に損害が発生したと認めることはできない。したがって,被控訴人らの本訴請求(差止請求並びに平成7年5月2日から平成7年8月14日までに支出された合計4210万6400円に関する損害賠償代位請求及びその不行使の違法確認を求める部分を除く。)は,その余の点につき判断するまでもなく,いずれも理由がない。 第7 結論以上の次第で,被控訴人らの本件訴えのうち,差止請求並びに平成7年5月2日から平成7年8月14日までに支出された合計4210万6400円に関する損害賠償代位請求及びその不行使の違法確認の訴えは,不適法であるからこれをいずれも却下すべきであり,その余の請求は理由がないからこれをいずれも棄却すべきところ,当裁判所の上記判断と一部結論を異にする原判決はその限度で不当であるから,その限度でこれを取り消した上,上記取消部分につき被控訴人らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所那覇支部民事部裁判長裁判官窪田正彦裁判官永井秀明 裁判官増森珠美 裁判官増森珠美
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