令和4特(わ)553 金融商品取引法違反

裁判年月日・裁判所
令和5年2月13日 東京地方裁判所
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判決文本文9,763 文字)

- 1 - 令和5年2月13日東京地方裁判所刑事第11部宣告令和4年特(わ)第553号、第773号金融商品取引法違反被告事件 主文 被告人甲株式会社を罰金7億円に、被告人Aを懲役1年6か月に処する。 被告人Aに対し、この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予す る。 被告人甲株式会社から44億7114万2420円を追徴する。 理由 【犯罪事実】被告人甲株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都千代田区(住所省略) に本店を置き、有価証券の売買等を目的とする会社であり、被告人Aは、平成31年3月20日から令和2年3月17日までの間、被告会社のB本部副本部長として、被告会社の自己勘定での株式取引等の同本部の業務全般を担当していた同本部本部長である分離前相被告人Cの業務を補佐していたものであるが、第1 被告人A、被告会社のB本部D部部長として被告会社の自己勘定での株式取 引等を担当していた分離前相被告人E、被告会社のB本部F部部長として被告会社の金融商品に係る情報提供、取引提案及び執行に関する業務等を担当していた分離前相被告人G及び被告会社のB本部F部副部長兼H課課長であったIは、被告会社の業務に関し、令和元年12月25日、東京都中央区(住所省略)所在の株式会社J証券取引所が開設する有価証券市場に上場されている株式会社Kが発 行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲 下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、被告会社のB本部D部M課課長であったN及び同課課 員であったOとも共謀の上、前日の終値は5350円であったところ、同取引当- 2 - 日の終値等を5070円程度に維持するため、金融商品取引法施行令第20条で定めるところに違反して、同株券の相場を安定させる目的をもって、同日午後2時13分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値5200円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計32万株の買付けの申込みを行って、そのうち合計31万4800株を買い付け、 第2 E及びGは、被告会社の業務に関し、令和2年2月27日、上記有価証券市場に上場されている株式会社Pが発行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることによ り、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、Oとも共謀の上、前日の終値は2883円であったところ、同取引当日の終値等を2600円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午前11時9分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値2600円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株 券合計15万8400株の買付けの申込みを行って、そのうち合計6万5800株を買い付け、第 での間、上記有価証券市場において、指値2600円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株 券合計15万8400株の買付けの申込みを行って、そのうち合計6万5800株を買い付け、第3 E及びGは、被告会社の業務に関し、令和2年8月6日、上記有価証券市場に上場されているQ株式会社が発行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引 で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、N及びOとも共謀の上、前日の終値は1万2030円であったところ、同取引当日の終値等を1万1000円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同 様の目的をもって、同日午後2時43分頃から同日午後3時頃までの間、上記有- 3 - 価証券市場において、指値1万1000円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計6万800株の買付けの申込みを行って、そのうち合計3万7700株を買い付け、第4 C、被告会社のB本部副本部長としてCの業務を補佐していた分離前相被告人R、E及びGは、被告会社の業務に関し、令和2年8月19日、上記有価証券 市場に上場されている株式会社Sが発行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、Oとも共謀の 準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、Oとも共謀の上、 前日の終値は2094円であったところ、同取引当日の終値等を1960円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午後2時47分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値1960円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計9万8500株の買付けの申込みを行って、そのうち合計7万1300株 を買い付け、第5 E及びIは、被告会社の業務に関し、令和2年10月22日、上記有価証券市場に上場されている株式会社Tが発行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下 落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、Nとも共謀の上、前日の終値は8150円であったところ、同取引当日の終値等を7800円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午前10時39分頃から同日午前11時30分頃までの間、上記 有価証券市場において、指値7790円の買い注文を大量に入れるなどの方法に- 4 - より、同株券合計2万7700株の買付けの申込みを行って、そのうち合計1万3300株を買い付け、第6 Eは、被告会社の業務に関し、令和2年11月17日、上記有価証券市場に上場されているU株式会社が発行した株券 計2万7700株の買付けの申込みを行って、そのうち合計1万3300株を買い付け、第6 Eは、被告会社の業務に関し、令和2年11月17日、上記有価証券市場に上場されているU株式会社が発行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で 売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持することを企図し、Nと共謀の上、前日の終値は1535円であったところ、同取引当日の終値等を1425円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同 日午後2時45分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値1430円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計50万株の買付けの申込みを行って、同株券合計50万株を買い付け、第7 C及びEは、被告会社の業務に関し、令和2年11月19日、上記有価証券市場に上場されている株式会社Vが発行した株券について、被告会社の扱う「L」 取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、Nとも共謀の上、前日の終値は497円であったところ、同取引当日の終値等を475円程度に維 持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午後2時1分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値 引当日の終値等を475円程度に維 持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午後2時1分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値475円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計27万4000株の買付けの申込みを行って、そのうち合計16万8100株を買い付け、 第8 Eは、被告会社の業務に関し、令和2年12月15日、上記有価証券市場に- 5 - 上場されているW株式会社が発行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持することを企図し、Nと共謀の上、前日の終値は 1万1810円であったところ、同取引当日の終値等を1万1220円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午後0時12分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値1万1300円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計4万2000株の買付けの申込みを行って、そのうち合計4万株を買い付 け、第9 E及びIは、被告会社の業務に関し、令和2年12月22日、上記有価証券市場に上場されている株式会社Xが発行した株券について、被告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下 落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、 株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下 落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、N及びOとも共謀の上、前日の終値は7320円であったところ、同取引当日の終値等を6900円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午前8時54分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価 証券市場において、指値6950円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計9万2100株の買付けの申込みを行って、そのうち合計7万1000株を買い付け、第10 被告会社の副社長執行役員として被告会社のB本部等の業務全般を統括していた分離前相被告人Y、E及びIは、被告会社の業務に関し、令和3年4月8 日、上記有価証券市場に上場されているZ株式会社が発行した株券について、被- 6 - 告会社の扱う「L」取引が同日実施されるのに先立ち、同株券の株価が下落傾向で推移する中、同取引で売買価格の基準となる同日の同株券の終値等が前日の終値に比して大幅に下落する事態を回避しようと考え、被告会社の自己勘定で株を買い支えることにより、その下落幅を一定の範囲に維持する旨意を通じ、相互に、Oとも共謀の上、前日の終値は7030円であったところ、同取引当日の終値等 を6600円程度に維持するため、上記施行令第20条で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同日午後2時57分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値6600円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計10万株の買付けの申込みを行って、そのうち合計4万2 日午後2時57分頃から同日午後3時頃までの間、上記有価証券市場において、指値6600円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計10万株の買付けの申込みを行って、そのうち合計4万200株を買い付け、 もって、それぞれ、上記有価証券市場における各株券の相場を安定させる目的をもって、一連の有価証券売買及びその申込みをした。 【量刑の理由】 1 犯情全般について⑴ 本件は、国内有数の大手証券会社である被告会社において、約1年4か月 の間に、10銘柄の株券について、複数の幹部により、共謀の上敢行された違法な安定操作10件の事案であり、被告人Aは、このうち最初の1件に関与したものである。 いずれも被告会社の扱う「L」取引に絡む犯行であるところ、この取引は、J証券取引所が開設する立会外市場において、大量の株券の売却を希望する大口顧客の 売手から、取引実施日における対象銘柄の終値を基準に一定の割引をした値段で当該株券を買い付け、これを被告会社と取引のある多数の個人投資家に対し、同じく終値を基準に先より低率の割引をした値段で売却することにより、その差額を被告会社の収益とするものであり、かねて、その実施に際しては、前日に被告会社から買付けの意向確認を受け、これを機に、より低額で対象銘柄の株券を購入して確実 な利益を得ようと目論む個人投資家ら、取引の実施を知った者らによる多数の空売- 7 - りを誘発して、取引実施当日の株価の大幅な下落を招きがちな実態にあり、一方、これにより、当初の想定より安い値段での株券の売却を強いられる売手の側には相応に強い不満を抱かせる状況となることを避けられず、被告会社としては、売手から随時そうした苦情や取引中止等の申入れを受け、事後の関係性にも支障を来し、或いはこれがその後 却を強いられる売手の側には相応に強い不満を抱かせる状況となることを避けられず、被告会社としては、売手から随時そうした苦情や取引中止等の申入れを受け、事後の関係性にも支障を来し、或いはこれがその後の悪い風評に繋がって、その他多数の大口顧客からの信頼を失 い、更にはこの取引の商品性自体も損なわれてしまうなどの現実的な懸念を内包するものであった。 本件の背景には、そうした構造的な問題を認識しながら、有効な手立てを講じることができずに手をこまねく中、ともかくも目前の「L」取引をつつがなく実施し、或いは顧客との関係性やその取引の商品性を当面維持できれば良いなどと、当座の 利益を優先させたその場しのぎの安易な姿勢が色濃く窺われるところであり、かくして被告会社においては、各取引実施予定の当日に、下落傾向で推移する対象銘柄の株を自己勘定で買い支え、その終値等の下落幅を一定の範囲に維持する旨の意図の下、本件各犯行が重ねられたものと認められる。 ⑵ 本件各犯行には合計約44億円もの巨額の資金が投じられ、各「L」取引 実施当日の各犯行期間中における全出来高に対する被告会社の買付けシェアはいずれも相当な割合に及んでいる。また、第5の案件を除く9つの案件について、各「L」取引が成立したことにより被告会社が得た収益も合計約10億9300万円に上っている。 ⑶ 証券市場における公正な価格形成機能を確保するため、相場の自然な需給 に人為的作為を加えて歪めることを固く禁じた法の趣旨に鑑み、これを蔑ろにした本件各犯行に対しては、個々の犯行が比較的短時間のうちに行われたものであったことを勘案しても、厳しい社会的非難が妥当する。殊に、被告会社が投資者と市場を仲介する大手証券会社であり、被告人Aを含む関与者がいずれもその幹部の地位にあって、本来、い のうちに行われたものであったことを勘案しても、厳しい社会的非難が妥当する。殊に、被告会社が投資者と市場を仲介する大手証券会社であり、被告人Aを含む関与者がいずれもその幹部の地位にあって、本来、いわゆる「市場のゲートキーパー」として、金融商品等の取引等 の公正や投資者の保護等の実現に向けて、法を厳に順守する範となり、重要な役割- 8 - を果たすべき立場にあったことを考えれば、その甘受すべき非難の程度にはより一層重いものがあるといわざるを得ない。 2 被告会社の刑責について⑴ 以上を踏まえ、更に被告会社の刑責についてみると、複数の幹部が率先して本件各犯行に及び、その間、コンプライアンス担当者らにおいて、違法の可能性 に気付き、これを是正する契機も複数あったと認められるにもかかわらず、適切な対応が取られることなく放置され、また、株式売買等の取引の監視・審査等を担うべき部署も事実上機能不全にあったとみられること等からすれば、被告会社において、違法行為を監視・防止する機能はまさに形骸化していたというほかはなく、幹部による違法行為を容易に許した社内の風土にも根深い問題の素地があったと窺え る点等も併せ、監督過失の程度は大きいというべきである。 また、平成31年にも、被告会社の従業員が顧客による違法な安定操作に加担した事案により、金融庁から報告徴求命令を受けるなどし、その再発防止策として社内研修等を実施していたさなかにありながら、再び本件が繰り返された経緯についても強い非難を免れない。 ⑵ 他方で、被告会社においては、調査委員会を設置して本件の原因を分析し、株式売買等の取引監視体制を整備するなど、経営管理態勢や内部管理態勢の強化、コンプライアンスを重視する健全な組織文化の醸成といった観点を柱に、再発防止に向 、調査委員会を設置して本件の原因を分析し、株式売買等の取引監視体制を整備するなど、経営管理態勢や内部管理態勢の強化、コンプライアンスを重視する健全な組織文化の醸成といった観点を柱に、再発防止に向けた種々の具体的な取組が現に進められているところであり、被告会社の代表者は、自身の報酬を半年間無給とする処分を自らに科した上、法廷においても、真 摯に反省と謝罪の言葉を述べるとともに、被告会社の再起に必要な業務改善や社内改革を必ずや自らの手で成し遂げる旨の強い決意を表している。また、自業自得とはいえ、被告会社は、本件により社会的信用を大きく損ね、経済的にも多額の損失を被るなど、一定の社会的制裁を受けており、さらに、金融庁からは業務停止命令等の行政処分を受け、J証券取引所からは3億円の過怠金を科されている。 ⑶ なお、本件において、被告会社に科すべき追徴額については、金融商品取- 9 - 引法(以下では改正の前後を区別しない。)が定める必要的没収・追徴の趣旨が、相場操縦等の犯罪行為により得た財産等を残らず剥奪することにより、これらの犯罪を抑止し、更なる不当な再投資等を阻止することにあると解されることに鑑み、そうした法の趣旨を徹底するとの観点からは、本件各犯行のうち、被告会社が買い付けた各株券の価格がそれらを後に売却して得た代金額よりも高額であった第1、 第2、第7、第9の各犯行については、同法198条の2第1項1号の「犯罪行為により得た財産」である各株券を没収対象財産とみて、その没収不能につき、各株券の買付額合計23億3711万9600円を追徴するのが相当であり、一方、被告会社が買い付けた各株券を後に売却して利益を得た第3~第6、第8、第10の各犯行については、同法198条の2第1項2号の「対価として得た財産」である 万9600円を追徴するのが相当であり、一方、被告会社が買い付けた各株券を後に売却して利益を得た第3~第6、第8、第10の各犯行については、同法198条の2第1項2号の「対価として得た財産」である その売却代金を没収対象財産とみて、その没収不能につき、各株券の売却額合計21億3402万2820円を追徴するのが相当と認められるから、結局、被告会社に対しては、これらを併せた総額44億7114万2420円の追徴を科すべきものと認められる。 付言するに、被告会社は、既述のとおり、法人として「L」取引による収益を図 る過程において、潤沢な資金を利用して本件各犯行に及んだものと認められ、そのほか上記1及び2⑴で述べた諸点を併せ考慮すると、同法198条の2第1項ただし書を適用して没収対象を縮減し、被告会社に対する追徴額を減額すべきものとは認められない。 ⑷ そこで、以上を総合し、被告会社に対しては、主刑として7億円の罰金額 を量定の上、主文のとおりの刑に処するのが相当であると判断した。 3 被告人Aの刑責について⑴ 被告人Aは、第1の犯行にのみ関与したものであるところ、同犯行においては、安定操作として合計約15億9000万円分の株券が買い付けられ、被告会社は、当該株券に係る案件の「L」取引により約2億5000万円の収益を得たも のと認められる。 - 10 - このような犯行にあって、被告人Aは、被告会社のB本部副本部長として、当日、休暇で不在にしていた上司に代わり、業務上の意思決定を行うに当たっての同本部の中での最高責任者の立場から犯行を了承してこれに関与したものである。被告人Aは、日頃、主には同本部内の管理業務を担当しており、この日上司が不在でなければ犯行に関わることはなかったとも考えられること、本件 の最高責任者の立場から犯行を了承してこれに関与したものである。被告人Aは、日頃、主には同本部内の管理業務を担当しており、この日上司が不在でなければ犯行に関わることはなかったとも考えられること、本件安定操作に係る行為の 規模やタイミング等の詳細を把握する立場にはなかったこと等の事情を踏まえても、違法の可能性を認識しながら、安易にこれを了としたその責任は相応に重いというべきである。 ⑵ 他方で、被告人Aは、捜査段階から一貫して事実を認めた上で、真摯に反省の態度を示しており、今後は証券取引に関わる職には就かない旨を述べているほ か、本件に関与したことで離職せざるを得なくなるなど、一定の社会的制裁も受けている。 ⑶ 以上に加え、前科前歴がないこと等の事情も踏まえ、被告人Aに対しては、主文の懲役刑を科した上、その執行を猶予するのが相当であると判断した。 なお、本件における没収対象財産はいずれも被告会社にのみ帰属することが明ら かであり、第1の犯行に係るそれも同様であるから、被告人Aに対しては追徴を科さない。 (求刑-被告会社につき罰金10億円及び追徴44億4094万6070円、被告人Aにつき懲役1年6か月)令和5年3月6日 東京地方裁判所刑事第11部 裁判長裁判官神田大助 - 11 - 裁判官向井亜紀子 裁判官池田翔平 - 12 - (各別表省略)

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