平成22(行ケ)15 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年11月17日 東京高等裁判所 選挙
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判決文本文21,266 文字)

- 1 - 主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 平成22年7月11日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の東京都選挙区における選挙を無効とする。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,東京都選挙区の選挙人である原告らにおいて,平成18年法律第52号によって改正された公職選挙法(昭和25年法律第100号)14条,別表第三及び同法附則による選挙区及び議員定数の規定(以下「本件定数配分規定」という。)に基づいて,平成22年7月11日に実施された第22回参議院議員通常選挙における参議院(選挙区選出)議員選挙(以下「本件選挙」という。)について,本件定数配分規定が,人口分布に比例した配分をしておらず,憲法が規定する代表民主制,その基礎となる公正な代表を選出する契機である選挙権の平等の保障に反し,憲法14条,44条等に違反して無効であるから,本件定数配分規定に基づき実施された本件選挙は無効であると主張し,公職選挙法204条に基づき,東京都選挙区における本件選挙の無効確認を求める事案である。 2 前提事実(末尾に証拠が掲記されていない事実は争いがない事実である。)(1) 原告らは,平成22年7月11日に実施された本件選挙の東京都選挙区の選挙人である。 (2) 本件選挙は,平成18年法律第52号(平成18年6月1日成立,同月7日公布)によって改正された公職選挙法の本件定数配分規定による選挙区及び議員定数の定めに従って実施された。 - 2 -(3) 平成17年国勢調査人口を基に,選挙区の人口の多い順に47都道府県を並べ替えると,別紙1のとおりとなる。東京都選挙区は,選挙区人口が47選挙区中最大であり, て実施された。 - 2 -(3) 平成17年国勢調査人口を基に,選挙区の人口の多い順に47都道府県を並べ替えると,別紙1のとおりとなる。東京都選挙区は,選挙区人口が47選挙区中最大であり,法定議員定数は10人である。 また,本件選挙の選挙当日における議員1人当たりの有権者数について,その多い順に都道府県を並べると,別紙2のとおりとなる。 (4) 参議院の議員定数について,最高裁判所平成16年1月14日大法廷判決(民集58巻1号56頁,以下「平成16年判決」という。)においては,「今後も続くであろう人口の大都市集中化により,最大較差が拡大していくのは避けられない傾向にあることを思えば,立法府としては,投票価値の平等の重要性にかんがみ,制度の枠組み自体の改正をも視野に入れた抜本的な検討をしておく必要がある。」との追加補足意見が述べられていたところ,最高裁判所平成18年10月4日大法廷判決(民集60巻8号2696頁,以下「平成18年判決」という。)において,「投票価値の平等の重要性を考慮すると,今後も,国会においては,人口の偏在傾向が続く中で,これまでの制度の枠組みの見直しをも含め,選挙区間における選挙人の投票価値の較差をより縮小するための検討を継続することが,憲法の趣旨にそう」と付言し,最高裁判所平成21年9月30日大法廷判決(民集63巻7号1520頁,以下「平成21年判決」という。)の多数意見においては,「本件改正の結果によっても残ることとなった上記のような較差は,投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない。ただ,…専門委員会の報告書に表れた意見にもあるとおり,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区 挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない。ただ,…専門委員会の報告書に表れた意見にもあるとおり,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは,最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり,これを行おうとすれば現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえ - 3 -た高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが,国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。」と付言するに至った。 (5) 参議院は,平成18年法律第52号による公職選挙法改正(以下「本件改正」という。)の後,平成19年7月29日に施行された参議院通常選挙後である同年11月30日,参議院議長の諮問機関として参議院改革協議会を設置し,同協議会は,同年12月から平成21年11月までに7回の協議を行った。同協議会には,平成20年6月9日,選挙制度に係る専門委員会(以下「本件委員会」という。)が設けられ,本件委員会は,平成22年5月14日,6回の協議を重ねたとして参議院改革協議会に対し報告書(以下「本件報告書」という。)を提出し,これを受けた参議院改革協議会は,同月21日,参議院議長に対する報告を行った(甲40,乙3)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張(原告らの主張)(1) 選挙権の平等の憲法上の保障と人口比例配分原則憲法は,代表民主制を採用し,公務員の選定罷免権を る報告を行った(甲40,乙3)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張(原告らの主張)(1) 選挙権の平等の憲法上の保障と人口比例配分原則憲法は,代表民主制を採用し,公務員の選定罷免権を国民固有の権利とし(憲法15条1項),普通選挙(同条3項),平等選挙(憲法14条1項,44条ただし書)を保障している。そして,普通選挙制度,平等選挙制度の発展の歴史的経過からすると,選挙権の憲法的保障は,国民の人種,信条,性別,社会的身分,門地,その他具体的能力,資質及び居住地域の差異にかかわらず,形式的に1人に1票の保障を要請し,かつ,その選挙権の内容においても等価性(1票の等価性)の保障を要求するものである。このような1人1票かつ1票等価に基づく選挙権の憲法的保障の要請は,国会が選挙区 - 4 -制を有する選挙制度を採用する場合には,各選挙区から選出される代表者(議員)の数を人口分布に比例させるよう国会の立法権限を覊束する。 (2) 議員定数の不平等の判断基準(較差論に対する批判)議員定数の不平等の判断基準として,一般には,各選挙区における議員1人当たりの人口数ないし有権者数の最大と最小の数値を比較して,その倍率で表される「較差」が何倍以下であれば不平等とはいえず,合憲であるとの考え方が用いられている。原告らは,不平等であるか否かの判定基準として,このような較差を使っていないし,少なくともそれを強調するものではない。 このような較差は,議員1人当たりの人数が最少の選挙区と最大の選挙区の2つの選挙区を比較する方法であり,その手法には,その他の選挙区についていかなる不平等その他の問題が生じていても,それを無視することになるからである。 最大較差を比較するという手法から生じる問題の例を挙げると,別紙1は,選挙区人口と「必要人数」(全国 選挙区についていかなる不平等その他の問題が生じていても,それを無視することになるからである。 最大較差を比較するという手法から生じる問題の例を挙げると,別紙1は,選挙区人口と「必要人数」(全国人口を参議院選挙区選出議員総数146で除した数を基準人数とし,この基準人数に法定議員数を乗じた人数)との差を過不足人数として表し,選挙区人口(現実のもの)と必要人数(あるべきもの)との乖離の程度を明らかにしたものであるところ,この過不足人数の数値が正であるときは,選挙区人口が必要人数を上回っており,当該選挙区においては,法定された数の議員によっては代表されていない人口集団が存在すること(以下「代表の欠缺」という。)を意味し,反対に,過不足人数の数値が負であるときは,当該選挙区において法定された数の議員により過剰に代表されている人口集団が存在すること(以下「過剰代表」という。)を意味するが,最大較差を比較するという手法からは,これらの代表の欠缺,代表の過剰の問題を無視することになり,人口の多い選挙区の配分議員定数が人口の少ない選挙区の配分議員定数よりも少ないいわゆる逆転現象を無視することにもなってしまうからである。 - 5 -また,そもそもにおいて,公職選挙法の定数配分規定に引き継がれた昭和22年制定の参議院議員選挙法は,議員定数の配分方法として,最大剰余法を採用していたのであり,このような定数配分方法こそが,投票価値の平等を確保し,憲法14条1項に適合するものであって,本件改正において採用された定数配分方法は同項に違反するものである。 そこで,原告らは,最大剰余法の配分基準である基準人数を用い,その過不足人数,過不足議員数により憲法違反であるか否かを判断すべきであることを主張する。具体的には,法定配分が不平等であるか否かを検討する基 で,原告らは,最大剰余法の配分基準である基準人数を用い,その過不足人数,過不足議員数により憲法違反であるか否かを判断すべきであることを主張する。具体的には,法定配分が不平等であるか否かを検討する基準として,まず,選挙区を人口順に並べて人口の多い選挙区の配分議員定数が多く,人口の少ない選挙区の配分議員定数が少なくなっていることを検討し,その結果,人口の多い選挙区に人口の少ない選挙区よりも多くの議員が配分されていれば,最低限の人口比例配分がされているといえるが,ここにもし逆転現象があれば,それは人口比例配分原則に違反する配分であるから,このような配分は違憲である。そして,逆転現象がない場合には,さらに前記のような代表の欠缺や過剰代表が生じていないかを検討し,そのような現象があれば,議員定数の配分規定を違憲とすべきである。 (3) 東京都選挙区等における違憲状況本件定数配分規定の不平等の有無について,上記(2)において主張した基準により検討すると,別紙1から明らかなように,本件定数配分規定は,人口分布に比例した議員定数の配分をしていないことが明らかであり,原告らが選挙人となった東京都選挙区を見ると,その法定議員定数は10人であり,基準人数は87万5123人であるから,これに東京都選挙区の法定議員定数10人を乗じた875万1232人が本来この10人によって代表されるべき人口(必要人数)である。しかるに,現実には,東京都の選挙区人口は1257万6601人であり,これらが前記10人によって代表され,選挙区人口と必要人数の差である382万5369人分については,これを適正 - 6 -に代表する者が存在しない状態(代表の欠缺)が生じている。この代表する者を持たない人口382万5369人に対し,これを代表する適正な数の議員定数を配分しようと については,これを適正 - 6 -に代表する者が存在しない状態(代表の欠缺)が生じている。この代表する者を持たない人口382万5369人に対し,これを代表する適正な数の議員定数を配分しようとすれば,さらに4.3712人の定数を追加配分する必要がある。また,選挙区人口が47選挙区中2番目に多い大阪府選挙区を見ると,その法定議員定数は6人であり,基準人数は87万5123人であるから,これに大阪府選挙区の法定議員定数6人を乗じた525万0739人が本来この6人によって代表されるべき人口(必要人数)である。しかるに,現実には,大阪府の選挙区人口は881万7166人であり,これらが前記6人によって代表され,選挙区人口と必要人数の差である356万6427人分については,これを適正に代表する者が存在しない状態(代表の欠缺)が生じている。この代表する者を持たない人口356万6427人に対し,これを代表する適正な数の議員定数を配分しようとすれば,さらに4. 0753人の定数を追加配分する必要がある。さらに,選挙区人口が47選挙区中3番目に多い神奈川県選挙区を見ると,その法定議員定数は6人であり,基準人数は87万5123人であるから,これに神奈川県選挙区の法定議員定数6人を乗じた525万0739人が本来この6人によって代表されるべき人口(必要人数)である。しかるに,現実には,神奈川県の選挙区人口は879万1597人であり,これらが前記6人によって代表され,選挙区人口と必要人数の差である354万0858人分については,これを適正に代表する者が存在しない状態(代表の欠缺)が生じている。この代表する者を持たない人口354万0858人に対し,これを代表する適正な数の議員定数を配分しようとすれば,さらに4.0461人の定数を追加配分する必要がある。 この 代表の欠缺)が生じている。この代表する者を持たない人口354万0858人に対し,これを代表する適正な数の議員定数を配分しようとすれば,さらに4.0461人の定数を追加配分する必要がある。 このような状態は,憲法が規定する代議制民主主義(憲法前文,1条,43条1項)及びその基礎となる公正な代表を選出する契機である選挙権の平等の保障(15条1項,14条1項,44条ただし書)に反する議員定数の - 7 -配分となっており,違憲である。 (4) 参議院における法改正の動き参議院における本件委員会の協議経緯を見ると,選挙制度改革に対する実質的な協議は,平成21年判決の言渡しから5か月を経過した平成22年2月になってからであると思われ,最高裁判所が平成16年判決により選挙制度の枠組み自体の改正の必要性を示唆し,平成18年判決ではそれがより明確に述べられたにもかかわらず,参議院の動きは鈍く,本件改正も,平成19年の選挙に向けての当面の是正策としていわゆる4増4減を定めたにすぎず,抜本的解決ではない。これでは,選挙の度に改革に着手していたが,その完成にはなお時間が必要であるとの言い訳を繰り返し,改革のポーズを取っているにすぎないとの批判を受けて当然である。そして,本件報告書においても,本件選挙についても定数較差の是正は早々に見送られ,本件選挙後,改めて専門委員会を立ち上げ,改正案の検討に着手するとしており,これも従前の経過からすれば,本件選挙について提起されるであろうことが予想された本件訴訟において,違憲判決を免れるためだけの改革のポーズを示したものと評価せざるを得ない。現在までの立法府の取組みは,無為の裡に漫然と現在の状況が維持されたままと評価せざるを得ず,国会の義務に適った裁量権の行使がされていないものとして違憲判断がされるべきであ ものと評価せざるを得ない。現在までの立法府の取組みは,無為の裡に漫然と現在の状況が維持されたままと評価せざるを得ず,国会の義務に適った裁量権の行使がされていないものとして違憲判断がされるべきである。 なお,参議院においても,最高裁判所と同様,定数較差の是正のみが課題であると捉えられている感があるが,原告らが求めているのは,人口に比例した議席の配分であり,単なる較差の是正にとどまるものではない。東京都選挙区等のような顕著な代表の欠缺状態が解消されないのは,選挙区選挙が3年ごとに行われるべきことを理由に,各都道府県に最低2人の定数を配分していることによるのであり,それは,逆に言えば,都道府県を単位とする選挙区割による定数配分自体に既に限界が生じていることを示すものであって,国会においては,従前のような選挙区間での場当たり的な増減ではなく, - 8 -抜本的な改正をすべきである。 (5) 結語以上のとおり,本件定数配分規定は,参議院議員の定数を各選挙区の人口に比例して配分しておらず,合理的な根拠なしに選挙区いかんにより選挙権の価値に不平等を生じさせており,このような状態は,憲法前文,13条,14条1項,15条1項,44条ただし書,47条に違反し,憲法98条1項,99条により無効な立法である。 よって,違憲無効な議員定数の配分を定めている本件定数配分規定に基づいて実施された本件選挙は無効である。 (被告の主張)(1) 参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性審査基準憲法は,選挙権の内容の平等として,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等(投票価値の平等)を要求しているが,同時に,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかについての決定を国会の裁量にゆだねて 挙人の投票の有する影響力の平等(投票価値の平等)を要求しているが,同時に,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかについての決定を国会の裁量にゆだねているのであるから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。 それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反するとはいえない。 そして,参議院議員の選挙制度は,全都道府県の区域を通じて選出される比例代表選出議員と,都道府県を選挙区の単位として選挙区における議員定数の最小限を2人として偶数の議員数を配分する選挙区選出議員とに区分する仕組みを採用しているが,これは,二院制を採用し,参議院議員は3年ごとにその半数を改選する旨を定めた憲法42条及び46条の趣旨に基づくの - 9 -であり,平成21年判決も,「参議院議員の選挙制度の仕組みは,憲法が二院制を採用し参議院の実質的内容ないし機能に独自の要素を持たせようとしたこと,都道府県が歴史的にも政治的,経済的,社会的にも独自の意義と実体を有し一つの政治的まとまりを有する単位としてとらえ得ること,憲法46条が参議院議員については3年ごとにその半数を改選すべきものとしていること等に照らし,相応の合理性を有するものであり,国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えているとはいえない」とする。 その上で,平成21年判決は,「社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口の変動につき,それをどのような形で選挙 会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えているとはいえない」とする。 その上で,平成21年判決は,「社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口の変動につき,それをどのような形で選挙制度の仕組みに反映させるかなどの問題は,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって,その決定は,基本的に国会の裁量にゆだねられているものである。しかしながら,人口変動の結果,投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。」と判示し,このような判断枠組みは,最高裁判所昭和58年4月27日大法廷判決(民集37巻3号345頁,以下「昭和58年判決」という。)以降の参議院(地方選出ないし選挙区選出)議員選挙に関する累次の大法廷判決の趣旨とするところであり,基本的な判断枠組みとしてこれを変更する必要は認められないと宣明している。 (2) 本件選挙における最大較差の状況とその合憲性公職選挙法の本件改正により,選挙区選出議員の参議院議員の定数は4選挙区で4増4減され,平成17年国勢調査による選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.84,本件選挙が実施された平成22年7月11日時点における選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.004(以下,概数である5.00と表記する。これを含めて最 - 10 -大較差に関する数値はすべて概数である。)であった。 そして,この1対5.00という最大較差は,かねて参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定について最高裁判所が違憲状態にないと判断した最大較差(昭和58年判決による1対5.2 ある。)であった。 そして,この1対5.00という最大較差は,かねて参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定について最高裁判所が違憲状態にないと判断した最大較差(昭和58年判決による1対5.26,昭和61年3月27日第1小法廷判決(裁判集民事147号431頁)による1対5.37,昭和62年9月24日第1小法廷判決(裁判集民事151号711頁)による1対5. 56,昭和63年10月21日第2小法廷判決(裁判集民事155号65頁)による1対5.85)や,憲法に違反するに至っていたものとすることができないと判断した最大較差(平成16年判決による1対5.06,平成18年判決による1対5.13)を下回るものである。 また,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置により較差の是正を図ったとしても,較差を1対4以内に抑えることは困難であるとされ,平成21年判決も,「現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは,最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり,これを行おうとすれば現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ない」と判示しており,現行の選挙制度の仕組みの下で,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較差の是正を図ることは容易でなく,選挙制度の仕組み自体を見直すこともまた容易でない。 なお,本件選挙当時においても,いわゆる逆転現象は生じていない。 このように見ると,本件選挙当時において,本件定数配分規定につき,投票価値の平等に照らして到底看過することができないと認められる程度の著しい不平 挙当時においても,いわゆる逆転現象は生じていない。 このように見ると,本件選挙当時において,本件定数配分規定につき,投票価値の平等に照らして到底看過することができないと認められる程度の著しい不平等状態が生じていたとは認められない。 (3) 著しい不平等状態が相当期間継続していたとはいえないこと - 11 -仮に,本件定数配分規定について著しい不平等状態を生じさせるに至っていたという見方があり得るとしても,そのことから直ちに,本件定数配分規定が憲法に違反することになるものではなく,それが相当期間継続しているにもかかわらず,これを是正する何らの措置も講じないことが,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限に係るものであることを考慮した上で,その許される限界を超えると判断される場合に,初めて本件定数配分規定が憲法に違反することになると解すべきである。 選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が上述した数値程度でも違憲状態にあるとした最高裁判所の判決はこれまでに存在しないこと,参議院議員の定数の配分を衆議院議員のそれよりも長期にわたって固定することも合理的な立法政策であること,最大較差が到底看過することができないと認められる程度に達したかどうかの判定は,国会の裁量的権限の限界に関わる困難な問題であり,かつ,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを含めどのような形で改正するかについても種々の政策的又は技術的な考慮要素を背景とした議論を経る必要があること,実際にも,本件改正後も,前提事実(5)のとおり,国会は現行の選挙制度の見直しを含めて投票価値の較差をより縮小するための検討を継続しているところ,選挙制度の見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の 国会は現行の選挙制度の見直しを含めて投票価値の較差をより縮小するための検討を継続しているところ,選挙制度の見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要するものであるが,本件改正(平成18年6月1日成立,同月7日公布)から本件選挙までの期間は4年余りにとどまり,違憲状態である「著しい不平等状態」とは区別された「大きな不平等が存する状態」があるとした平成21年判決の言渡しからも約10か月の期間しかなかったことなどからすると,本件定数配分規定につき,著しい不平等状態が許されない程度に継続し,それが国会の裁量的権限の許される限界を超えると判断されるような場合には当たらないことは明 - 12 -らかである。 なお,本件委員会の検討過程では,本件選挙に先立っての定数是正を行うか否かについても議論されたが,現行の選挙制度を前提として選挙区の定数を増減する従来の改革方法では,定数較差是正の効果は限定的であり,定数較差是正の議論は,参議院の選挙制度の見直しと併せて行うべきで,それには時間がかかること,本件改正による4増4減の公職選挙法改正は,平成19年の選挙及び本件選挙で完了すること,本件選挙について,定数較差是正を行うこととすると,法改正から選挙実施までの周知期間が短いことなどを踏まえて,本件選挙について,定数較差是正は見送り,平成25年通常選挙に向け選挙制度の見直しを行うこととなっている。 第3 当裁判所の判断 1 参議院及びその選挙制度並びに議員定数配分規定の合憲性審査基準憲法は,国会を衆議院及び参議院の両議院により構成するものとし(憲法42条),両議院の権限については,内閣不信任決議の権限(憲法69条)に加え,法律案の再議決,予算の先議権,条約の 合憲性審査基準憲法は,国会を衆議院及び参議院の両議院により構成するものとし(憲法42条),両議院の権限については,内閣不信任決議の権限(憲法69条)に加え,法律案の再議決,予算の先議権,条約の承認,内閣総理大臣の指名に関する優越といった一定範囲での差異を設けるとともに(憲法59条2項,60条,61条,67条2項),両議院の議員の任期につき,衆議院議員の任期を4年とし(憲法45条),解散の制度(憲法69条,7条3号)を設けるのに対し,参議院議員の任期を6年とし,3年ごとに議員の半数を改選する(憲法46条)だけでなく,解散の制度も存在しないといった差異を設けている。憲法が,このような差異を設けている趣旨は,衆議院と参議院とがそれぞれ特色ある機能を発揮することによって,国会を国民の利害や意見を公正かつ効果的に代表することのできる機関としようとすることにある(平成21年判決参照)。 しかし,衆議院及び参議院の両院は,いずれも全国民を代表する選挙された議員で構成され(憲法43条1項),両議院の権限も,上記のとおり一定の事項については衆議院の優越が認められているとはいえ,参議院もなお主権者で - 13 -ある国民の権利義務に多大な影響を与え得る地位を有しているのであり,衆議院議員を選挙により選出することと参議院議員を選挙により選出することとの間に,その重要さにおいて質的に大きな差異があるものとは考えがたい。そして,両議院の選挙については,憲法は,国民主権の原理に基づき,両議院の議員選挙において投票することによって国の政治に参加することができる権利を国民に対しその固有の権利として保障しており,その趣旨を確たるものとするため,国民に対し投票する機会を平等に保障し(憲法15条1項,3項。最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決(民集59巻7号 を国民に対しその固有の権利として保障しており,その趣旨を確たるものとするため,国民に対し投票する機会を平等に保障し(憲法15条1項,3項。最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決(民集59巻7号2087頁参照)),そこでは,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等をも要求していると解される(憲法14条1項。昭和58年判決等参照)。 とはいえ,憲法は,議員の定数,選挙区,投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は法律で定めることとし(憲法43条2項,47条),どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかの決定を国会の裁量にゆだねているのであるから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反するとはいえない(平成21年判決参照)。すなわち,一般に,憲法の平等原則に違反するかどうかは,その不平等が合理的根拠,理由を有するものかどうかによって判定すべきであると考えられているが,投票価値の平等についても,基本的には同様の考え方が妥当すると考えられるところ,投票価値の較差については,その限度を2倍とする見解が有力であり,原告らもそのように主張するところであるが,2倍に達しない較差であっても,これ - 14 -を合理化できる理由が存在しないならば違憲となり得る反面,例えば二院制の在り方等からす 解が有力であり,原告らもそのように主張するところであるが,2倍に達しない較差であっても,これ - 14 -を合理化できる理由が存在しないならば違憲となり得る反面,例えば二院制の在り方等からする十分な理由があれば,2倍を超える較差が合理的裁量の範囲内とされることもあり得ると考えられるから,投票価値の較差の限度を2倍とする数値は理論的に絶対的な基準となるとまではいえない。 そうすると,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口の変動につき,それをどのような形で選挙制度の仕組みに反映させるかなどの問題は,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって,その決定は,基本的に国会の裁量にゆだねられているものであるとはいえ,人口の変動の結果,上記の参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において見るとしても,投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である(平成21年判決を含む昭和58年判決以降の参議院(地方選出ないし選挙区選出)議員選挙に関する累次の最高裁判所大法廷判決参照)。そして,投票価値の著しい不平等状態が生じているかについては,議員定数配分規定の全体を不可分一体のものとしてその効力の有無が判断されてきており,そのような形で判断する以上,選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の最大較差だけでなく,いわゆる逆転現象の存否等の状況も判断要素に加味することが相当である。 なお,以上の考察によれば,最大剰余法による定数配分を行われていない限り,本件定数配分規定が違憲になるとする原告らの主張は,採用する ゆる逆転現象の存否等の状況も判断要素に加味することが相当である。 なお,以上の考察によれば,最大剰余法による定数配分を行われていない限り,本件定数配分規定が違憲になるとする原告らの主張は,採用することができない。 2 参議院議員の選挙制度の仕組みとその変遷前提事実,証拠(甲3ないし6,31の(1)ないし(5),34,40,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,参議院議員の選挙制度の仕組みとその変遷について次のとおりに認められる。 - 15 -(1) 参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は,参議院議員の選挙について,参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し,全国選出議員については,全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方,地方選出議員については,その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め,都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして,各選挙区ごとの議員定数については,定数を偶数としてその最小限を2人とする方針の下に,昭和21年当時の人口に基づき,各選挙区の人口に比例する形で,2人ないし8人の偶数の議員数を配分した。 昭和25年に制定された公職選挙法における参議院の議員定数配分規定は,以上のような選挙制度の仕組みに基づく参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり,その後,沖縄返還に伴って沖縄県選挙区の議員定数2人が付加された外は,平成6年法律第47号による議員定数配分規定の改正(以下「平成6年改正」という。)まで,上記定数配分規定に変更はなかった。なお,昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正により,参議院議員選挙についていわゆる拘束名簿式比例代表制が導入され,各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単 。なお,昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正により,参議院議員選挙についていわゆる拘束名簿式比例代表制が導入され,各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区分されることになったが,比例代表選出議員は,全都道府県を通じて選出されるものであって,各選挙人の投票価値に差異がない点においては,従来の全国選出議員と同様であり,選挙区選出議員は従来の地方選出議員の名称が変更されたものにすぎない。 (2) 選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,参議院議員選挙法制定当時は1対2.62(以下,較差に関する数値は,すべて概数である。)であったが,その後,次第に拡大した。平成6年改正は,平成4年7月26日施行の参議院議員通常選挙当時には1対6.59にまで拡大していた選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差を是正する目的で行われ - 16 -たものであり,前記のような参議院議員の選挙制度の仕組みに変更を加えることなく,直近の平成2年10月実施の国勢調査結果に基づき,できる限り増減の対象となる選挙区を少なくし,かつ,いわゆる逆転現象を解消することとして,参議院議員の総定数(252人)及び選挙区選出議員の定数(152人)を増減しないまま,7選挙区で議員定数を8増8減した。 上記改正の結果,上記国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対6.48から1対4.81に縮小し,いわゆる逆転現象は消滅することとなった。 その後,上記改正後の議員定数配分規定の下において平成7年7月23日に施行された参議院議員通常選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,1対4.97であった。 (3) 。 その後,上記改正後の議員定数配分規定の下において平成7年7月23日に施行された参議院議員通常選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,1対4.97であった。 (3) 平成12年法律第118号による公職選挙法の改正(以下「平成12年改正」という。)により,比例代表選出議員の選挙制度がいわゆる非拘束名簿式比例代表制に改められるとともに,参議院議員の総定数が10人削減されて242人とされた。定数削減に当たっては,改正前の選挙区選出議員と比例代表選出議員の定数比をできる限り維持する方針の下に,選挙区選出議員の定数を6人削減して146人とし,比例代表選出議員の定数を4人削減して96人とした上,選挙区選出議員の定数削減については,直近の平成7年10月実施の国勢調査結果に基づき,平成6年改正の後に生じたいわゆる逆転現象を解消するとともに,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数又は人口の較差の拡大を防止するために,定数4人の選挙区の中で人口の少ない3選挙区の定数を2人ずつ削減した。 上記改正の結果,いわゆる逆転現象は消滅したが,上記国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は1対4.79であって,上記改正前と変わらなかった。 (4) 平成12年改正後の参議院議員定数配分規定の下で平成13年7月29 - 17 -日に施行された参議院議員通常選挙(以下「平成13年選挙」という。)当時において,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.06であった。平成16年判決は,その結論において,平成13年選挙当時,上記定数配分規定は憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示したが,同判決には,裁判官6名による反対意見のほか,漫然と現在の状況が維持されるならば違憲 において,平成13年選挙当時,上記定数配分規定は憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示したが,同判決には,裁判官6名による反対意見のほか,漫然と現在の状況が維持されるならば違憲判断がされる余地がある旨を指摘する裁判官4名による補足意見が付された。 平成16年判決を受けて,参議院議長が主宰する各会派代表者懇談会は,「参議院議員選挙の定数較差問題に関する協議会」を設けて協議を行ったが,平成16年7月に施行される参議院議員通常選挙(以下「平成16年選挙」という。)までの間に定数較差を是正することは困難であったため,同年6月1日,同選挙後に協議を再開する旨の申合せをした。これを受けて,平成16年選挙後の同年12月1日,参議院改革協議会の下に選挙制度に係る専門委員会が設けられ,同委員会において,現行の選挙制度の仕組みを維持しつつ,①較差5倍を超えている選挙区及び近い将来5倍を超えるおそれのある選挙区について較差の是正を図るいわゆる4増4減案,②4倍前半まで較差の是正を図ることを考慮し,その選択肢として14増14減まで含めて検討する案のほか,③較差を4倍未満とするため現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを検討する案など,各種の是正案が検討され,平成17年10月21日付け報告書(甲34。以下「前回報告書」という。)が作成されたが,平成19年7月29日に施行される参議院議員通常選挙(以下「前回選挙」という。)に向けての当面の是正策としては,上記の4増4減案が有力な意見であるとされ,同案に基づく公職選挙法の一部を改正する法律(平成18年法律第52号)が平成18年6月1日に成立した。この本件改正の結果,平成17年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.84に縮小した。また, 律第52号)が平成18年6月1日に成立した。この本件改正の結果,平成17年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.84に縮小した。また,本件 - 18 -改正により成立した本件定数配分規定の下で施行された前回選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,平成16年選挙における1対5.13を下回る1対4.86であった。 なお,前回報告書に表れた意見によれば,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置により較差の是正を図ったとしても,較差を1対4以内に抑えることは困難であるとされている。また,前回報告書においては,本件選挙に向けての較差是正の後も,参議院の在り方にふさわしい選挙制度の議論を進めていく過程で,定数較差の継続的な検証等を行う場を設け,調査を進めていく必要があるとされた。 (5) 前回選挙について,平成21年判決は,その結論において,前回選挙当時,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示したが,同時に,「本件改正の結果によっても残ることとなった上記のような較差は,投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない。ただ,前回報告書に表れた意見にもあるとおり,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは,最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり,これを行おうとすれば,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課 これを行おうとすれば,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが,国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。」旨を付言した。 平成21年判決以降も,参議院は参議院議員の選挙制度の抜本改革につい - 19 -て検討を行っており,参議院議長からの諮問を受けて参議院改革協議会の下に設置された選挙制度に係る本件委員会は,定数是正も含めた参議院の組織及び運営に関する諸問題について調査検討を行い,平成22年5月14日,その結果をまとめた本件報告書(甲40,乙3)を参議院改革協議会に提出し,同月21日には,同協議会から参議院議長に報告された。 本件委員会の検討過程では,本件選挙に先立っての定数是正を行うか否かについても議論されたが,現行の選挙制度を前提に選挙区の定数を増減する従来の改革方法では,定数較差是正の効果は限定的であり,定数較差是正の議論は,参議院の選挙制度の見直しと併せて行うべきであるが,それには時間がかかること,平成18年改正による4増4減の公職選挙法改正は,前回選挙及び本件選挙で完了すること,本件選挙について,定数較差是正を行うこととすると,法改正から選挙実施までの周知期間が短いことなどを踏まえて,本件選挙について,定数較差是正は見送り,平成25年通常選挙に向け選挙制度の見直しを行うこととなった。 (6) 本件選挙については,別紙2のとおり,本件選挙当時の選挙区間におけ ことなどを踏まえて,本件選挙について,定数較差是正は見送り,平成25年通常選挙に向け選挙制度の見直しを行うこととなった。 (6) 本件選挙については,別紙2のとおり,本件選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,1対5.00であり,いわゆる逆転現象が生じた選挙区は存在しなかった。 3 本件定数配分規定の合憲性についての判断(1) 現行の公職選挙法が採用する参議院議員の選挙制度の仕組みは,前記1及び2で説示したところを総合すると,憲法が二院制を採用し参議院の実質的内容ないし機能に独特の要素を持たせようとしたことを踏まえて,都道府県が歴史的にも政治的,経済的,社会的にも独自の意義と実体を有し一つの政治的まとまりを有する単位としてとらえ得ることから,国民の利害や意見を公正かつ効果的に代表するための基盤である選挙区として措定するものであって,相応の合理性を有するものであり,憲法46条が参議院議員については3年ごとにその半数を改選すべきものとしていること等を併せ考えると, - 20 -これらの要請を反映させた本件定数配分規定についても相応の合理性を有するものと認めることができる。 そこで,本件定数配分規定について,投票価値の平等という観点からも合理性が肯定されるものであるかを検討するに,前記1で説示したとおり,人口の変動につき,それをどのような形で選挙制度の仕組みに反映させるかなどの問題は,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって,その決定は,基本的に国会の裁量にゆだねられているものであるから,人口の変動の結果,上記の参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において見て,投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれ の結果,上記の参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において見て,投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 そして,前記2(4)及び(6)において認定したとおり,参議院では,平成16年判決中の指摘を受け,当面の是正措置を講ずる必要があるとともに,その後も定数較差の継続的な検証調査を進めていく必要があると認識し,こうした認識の下に本件改正を行ったものであり,その結果,平成17年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.84に縮小することとなった。また,前回選挙は,本件改正の約1年2か月後に本件定数配分規定の下で施行された初めての参議院議員通常選挙であり,前回選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対4.86であり,引き続き本件定数配分規定の下で施行された本件選挙においては,選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.00であったところ,この較差は,本件改正前の参議院議員定数配分規定の下で施行された平成16年選挙当時の上記最大較差1対5.13に比べて縮小したものとなっている。また, - 21 -本件選挙においては,いわゆる逆転現象も生じていない。 このような最大較差1対5.00の状態をもっては,前記2において見た国会が国民の負託を受けて公職選挙法の参議院議員の定数配分規定を改正してきた経緯や,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じているかどうかについて最高裁判所が判断を重ねてきた 記2において見た国会が国民の負託を受けて公職選挙法の参議院議員の定数配分規定を改正してきた経緯や,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じているかどうかについて最高裁判所が判断を重ねてきた経緯等にかんがみれば,現時点において,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態であるとまではいえない。 (2) さらに,最大較差1対5.00の状態において投票価値の著しい不平等状態が生じていると見ても,前回報告書に表れた意見にもあるとおり,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは,最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり,これを行おうとすれば,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定することができず,このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することを認めざるを得ない。そして,①参議院では,平成16年判決中の指摘を受けた後,上記のとおりの経緯で本件改正を行い,その結果,本件選挙時においては,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.00であり,本件選挙においては,いわゆる逆転現象も生じていなかったこと,②本件改正後に行われた前回選挙後の平成19年11月30日,参議院議長の諮問機関として参議院改革協議会を設置し,同協議会は,同年12月から平成21年11月までに7回の協議を行い,平成20年6月9日,その下に本件委員会が設けられ,本件委員会は,平成22年5月14日,6回の協議を重ねたとして参議院改革協議会に対し本件報告書を提出し,これを受けた参議院改革協議会は,同月21日,参議院議長に対する報告を行ったこと,③本件委員会の検討過程では,本件選挙に先立っての定数是正を行う ねたとして参議院改革協議会に対し本件報告書を提出し,これを受けた参議院改革協議会は,同月21日,参議院議長に対する報告を行ったこと,③本件委員会の検討過程では,本件選挙に先立っての定数是正を行うか否かについても議論されたが,現行の選挙制度を前 - 22 -提に選挙区の定数を増減する従来の改革方法では,定数較差是正の効果は限定的であり,定数較差是正の議論は,参議院の選挙制度の見直しと併せて行うべきであるが,それには時間がかかること,平成18年改正による4増4減の公職選挙法改正は,前回選挙及び本件選挙で完了すること,本件選挙について,定数較差是正を行うこととすると,法改正から選挙実施までの周知期間が短いことなどを踏まえて,本件選挙について,定数較差是正は見送り,平成25年通常選挙に向け選挙制度の見直しを行うこととなったことが認められる。 以上のような事情を考慮するすれば,本件選挙までの間に本件定数配分規定を更に改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものということもできない。 (3) しかしながら,本件改正の結果によっても残っている上記のような較差は,投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,平成21年判決によって指摘されているとおり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図るとことが求められる状態にあるといわざるを得ないところ,かえって,前回選挙から本件選挙の間に最大較差が拡大している。国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,喫緊の国民的な課題として,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。 4 小括前記考慮したところによれば,本件選挙までに議員定数の ,国会において,喫緊の国民的な課題として,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。 4 小括前記考慮したところによれば,本件選挙までに議員定数の不均衡を是正する立法措置を講じなかったことをもって,本件定数配分規定が,本件選挙当時,憲法に違反するに至っていたということはできない。 第4 結論以上によれば,原告らの請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴 - 23 -訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官岡久幸治 裁判官三代川俊一郎 裁判官佐 々 木宗啓

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