平成19(行ウ)552等 懲戒処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年3月24日 東京地方裁判所
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判決文本文75,541 文字)

平成26年3月24日判決言渡平成19年(行ウ)第552号,第610号懲戒処分取消等請求事件 主文 1 東京都教育委員会が平成19年3月30日付けで原告aに対してした懲戒処分を取り消す。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告aに生じた費用の2分の1と被告に生じた費用の4分の1を原告aの負担とし,原告bに生じた費用の全てと被告に生じた費用の4分の2を原告bの負担とし,原告aに生じたその余の費用と被告に生じたその余の費用を被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求(原告a関係) 1 主文1項同旨 2 被告東京都は,原告aに対して,300万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 (原告b関係) 3 東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が,原告bに対してした平成19年3月30日付け懲戒処分を取り消す。 4 被告東京都は,原告bに対し,300万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,都教委が,都立養護学校の教員であった原告a及び東京都内の市立中学校の教員であった原告bについて,平成19年3月19日に原告らの各所属校で行われた卒業式において,各所属校の校長(以下,各校長を合わせて「本 件各校長」という。)から,事前に,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱することを命ずる職務命令(以下,各原告に対する各職務命令を合わせて「本件各職務命令」という。)を受けていたのに国歌斉唱時に起立しなかった(以下,各原告の不起立を合わせて「本件各不起立」という。 唱することを命ずる職務命令(以下,各原告に対する各職務命令を合わせて「本件各職務命令」という。)を受けていたのに国歌斉唱時に起立しなかった(以下,各原告の不起立を合わせて「本件各不起立」という。)のは地方公務員法(以下「地公法」という。)32条,33条に違反するとして,地公法29条1項1号ないし3号に基づき,原告aに対し停職3月,原告bに対し停職6月の懲戒処分(以下,各原告に対する懲戒処分を合わせて「本件各処分」という。)をしたことから,原告らが,本件各処分は憲法19条,23条,26条,教育基本法16条1項に違反するなどと主張して,本件各処分の取消しを求めるとともに,本件各処分により精神的苦痛を被ったと主張して,都教委の設置者である被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)に基づき,損害賠償(慰謝料)を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び掲記の証拠により容易に認定できる事実。掲記の証拠のうち,平成19年(行ウ)第552号事件について提出された書証(口頭弁論併合後のものを含む。)のうち甲号証は単に「甲1」,乙イ号証は単に「乙イ1」のように表記し,口頭弁論併合前に同年(行ウ)第610号事件について提出された乙イ号証は,「610号事件乙イ1」のように表記する。)(1) 当事者等ア原告a(ア) 原告a(昭和25年▲月▲日生)は,昭和50年4月1日に東京都公立学校教員に任命された者であり,平成18年4月1日から東京都立c養護学校(以下「c養護学校」という。)に勤務し,平成22年3月31日付けで定年退職した。 (イ) 原告aは,都教委から,下記①ないし④の処分を,以下の理由で受けた。 ① 平成16年4月6日付け戒告処分(乙イ1の1ないし1の3)原告aは,平成 1日付けで定年退職した。 (イ) 原告aは,都教委から,下記①ないし④の処分を,以下の理由で受けた。 ① 平成16年4月6日付け戒告処分(乙イ1の1ないし1の3)原告aは,平成16年3月22日午後2時30分頃,東京都立d養護学校(以下「d養護学校」という。)会議室で行われた職員会議において,平成15年度小学部・中学部卒業式では国歌斉唱の際は式場内の指定された席で起立して斉唱することという校長の職務命令を校長の命を受けた教頭から文書で受けたにもかかわらず,同月24日午前9時40分頃,体育館で開催された卒業式の国歌斉唱時において,起立しなかった。 ② 平成16年5月25日付け減給処分(減給10分の1・1月)(乙イ2の1ないし2の3)原告aは,平成16年4月6日午後1時10分頃,d養護学校職員会議において,平成16年度入学式では国歌斉唱の際は,起立して斉唱することという職務命令を校長職務代理の副校長から口頭で受け,また同日午後1時15分頃,職員室において上記同様の内容の職務命令を校長職務代理である副校長の命を受けた別の副校長から文書で受けたにもかかわらず,同月7日午前9時35分頃,体育館で開催された入学式の国歌斉唱時において,起立しなかった。 ③ 平成17年3月31日付け減給処分(減給10分の1・6月)(乙イ3の1ないし3の4)原告aは,平成17年3月16日午後4時10分頃,d養護学校会議室で行われた職員会議において,平成16年度卒業式では国歌斉唱の際は指定された席で起立して国旗に向かい国歌を斉唱することという職務命令を校長から口頭で受け,また,同日午後4時15分頃,同会議室において,同様の内容の校長の職務命令を校長の命を受けた副校長から文書で受けたにもかかわらず,同月22日午前9時 斉唱することという職務命令を校長から口頭で受け,また,同日午後4時15分頃,同会議室において,同様の内容の校長の職務命令を校長の命を受けた副校長から文書で受けたにもかかわらず,同月22日午前9時38分頃,体育館で行われた卒業式の国歌斉唱の際,起立しなかった。 ④ 平成18年3月13日停職処分(停職1月)(乙イ4の1ないし4の3)原告aは,平成18年1月20日午前8時45分頃,東京都立e養護学校(以下「e養護学校」という。)職員室において,副校長から,創立30周年記念式典では,国歌斉唱時に式典会場の指定された席で国旗に向かって起立して国歌を斉唱することという内容の職務命令書を受け取り,同月24日午前8時30分頃,同職員室で行われた職員朝会において,校長から,同職務命令書に基づき同式典における職務を遂行することという職務命令を口頭で受けていながら,同月25日午前10時頃,体育館で行われた同式典の国歌斉唱の際,起立しなかった。 (ウ) なお,上記④の停職処分は,最高裁平成24年1月16日第一小法廷判決(最高裁平成23年(行ツ)第242号,同年(行ヒ)第265号)(裁判集民事239号1頁)(以下「最高裁平成24年1月判決」という。)において,「同上告人(原告a)に対する懲戒処分として停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間の長短にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れない。」として取り消された(甲474)。 イ原告b(ア) 原告b(昭和25年▲月▲日生)は,昭和46年4月に東京都公立学校教員に任命され,平成18年4月1日から平成19年3月31日まで,東京都α市立f中学校(以下「f中」と イ原告b(ア) 原告b(昭和25年▲月▲日生)は,昭和46年4月に東京都公立学校教員に任命され,平成18年4月1日から平成19年3月31日まで,東京都α市立f中学校(以下「f中」という。)に勤務していた。なお,原告bは,平成23年3月31日付けで定年退職した。 (イ) 原告bは,都教委から下記①,④ないし⑧の処分を, β 市教育委員会(以下「 β 市教委」という。)から②,③の措置(文書訓告)を,以下の理由で受けた。 ① 平成6年4月25日付け減給処分(減給10分の1・1月)(610号事件乙イ1の1,1の2)平成6年3月18日, β 市立g中学校(以下「g中学校」という。)において卒業式が行われたが,原告bは,同日午前8時15分頃,校長が国旗を掲揚するため掲揚塔に向かった際,西玄関を出てから掲揚塔までの間,校長の前に立ちはだかったり,国旗を掲揚塔の網に結び付けようとしている校長の手を両手で押さえたりして妨害した。さらに校長が掲揚した国旗を引き下ろした。また,同日午前8時30分頃,校長が再度国旗を掲揚するため,掲揚塔に向かった際,校長の前に立ちはだかったり,西玄関のドアのノブに手をかけ開けさせないようにしたり,国旗を掲揚塔の網に結び付けようとしている校長の手を両手で押さえたりして妨害した。さらに校長が再度掲揚した国旗を引き下ろした。 ② 平成7年11月16日付け文書訓告(610号事件乙イ2)原告bは,平成7年3月22日午前8時30分頃から午前8時40分頃までの間,朝の学級活動等の時間約10分間を使い,g中学校2年2組の教室において,不適切な内容を伴った2年2組の皆さんへ(保護者の皆さんへ)「○」と題する印刷物を同組生徒に配布し,それを読み上げるなどした。また,同印刷物は,同組生徒の保護者の手元 中学校2年2組の教室において,不適切な内容を伴った2年2組の皆さんへ(保護者の皆さんへ)「○」と題する印刷物を同組生徒に配布し,それを読み上げるなどした。また,同印刷物は,同組生徒の保護者の手元に届くところとなり,保護者から内容が一方的で納得できないと苦情が寄せられた。 ③ 平成11年8月30日の文書訓告(610号事件乙イ3の1ないし3の4)原告bは,平成11年2月16日から同月19日にかけて,g中学校の当時の3学年全学級の家庭科の授業時間にあって,校長による国旗・国歌に対する指導が,あたかもh教と同じマインドコントロール された命令・服従の指導であるとしたプリントを配布し,職員会議の内容を生徒に示し,校長の学校運営方針を批判するに等しい授業を行った。 ④ 平成14年3月27日付け減給処分(減給10分の1・3月)(610号事件乙イ4の1ないし4の3)原告bは,平成13年9月4日ないし同月6日の3日間,いずれの日においてもγ市立i中学校(以下「i中学校」という。)校長から,指導主事の授業参観後の協議会への出席を文書及び口頭で命じられ毎回校長から出席を促されたにもかかわらず,同協議会へ3日間とも出席しなかった。 ⑤ 平成17年3月31日付け減給処分(減給10分の1・6月)(610号事件乙イ5の1ないし5の4)原告bは,平成17年3月16日午後3時10分頃,δ市立j中学校(以下「j中」という。)の視聴覚室で行われた職員会議において,校長から,第56回卒業式では国歌斉唱の際は指定された席で起立し国歌を斉唱すること及び司会から着席の指示があるまで起立していることという職務命令を口頭及び文書で受けていたにもかかわらず,同月18日午前9時30分頃,体育館で行われた卒業式の国歌斉唱の際,いったん起立したが途中で着席し,教頭 着席の指示があるまで起立していることという職務命令を口頭及び文書で受けていたにもかかわらず,同月18日午前9時30分頃,体育館で行われた卒業式の国歌斉唱の際,いったん起立したが途中で着席し,教頭から起立してくださいと言われ一度起立したが再び着席した。 ⑥ 平成17年5月27日付け停職処分(停職1月)(610号事件乙イ6の1ないし6の3)原告bは,平成17年4月5日午前9時50分頃,j中の視聴覚室で行われた職員会議において,校長から,第59回入学式の国歌斉唱の際は式場内の指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること及び司会の着席の指示があるまで起立していることという職務命 令を文書及び口頭で受けていながら,同月7日午前9時35分頃,体育館で開催された入学式の国歌斉唱の際,起立しなかった。 ⑦ 平成17年12月1日付け減給処分(減給10分の1・1月)(610号事件乙イ7の1,7の2)原告bは,服務事故再発防止研修(以下「再発防止研修」という。)の受講を命ぜられていたところ,平成17年7月21日午後2時頃から同日午後3時55分頃までの間,東京都教職員研修センター分館東京都総合技術教育センターの研修室で行われた再発防止研修において,日の丸,君が代強制反対という内容が書かれたゼッケンを着用し,同研修の担当者から再三ゼッケンをとるように言われたにもかかわらず,同ゼッケンを着用し続け,また同日午後2時頃から同日午後2時30分頃までの間,同研修室前方中央において,同研修担当者に対し,なぜゼッケンがいけないのか,ゼッケンをとるようにとの発言を撤回しろ等の発言を繰り返すとともに,同日午後2時30分頃から同日午後2時40分頃までの間,同研修担当者から自席に座るように言われたにもかかわらず同研修担当者席に座るなどし,同研修の進行を の発言を撤回しろ等の発言を繰り返すとともに,同日午後2時30分頃から同日午後2時40分頃までの間,同研修担当者から自席に座るように言われたにもかかわらず同研修担当者席に座るなどし,同研修の進行を妨げた。 ⑧ 平成18年3月31日付け停職処分(停職3月)(610号事件乙イ8の1ないし8の3)原告bは,平成18年3月15日午後3時50分頃,j中の視聴覚室で行われた職員会議において,校長から,平成17年度第57回卒業式では式場内の指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱することという職務命令を文書及び口頭で受けていたにもかかわらず,同月17日午前9時30分頃,体育館で行われた卒業式の国歌斉唱の際,起立しなかった。 ウ被告 被告は,地方自治法180条の5第1項1号,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)2条に基づき,都教委を設置する地方公共団体である。 都教委は,その権限に属する事務を処理させるため,事務局として東京都教育庁(以下「都教育庁」という。)を置いている(地教行法18条1項)。また,都教委が任命した教育長(地教行法16条2項)は,都教委の指揮監督の下に,都教委の権限に属する全ての事務をつかさどるほか(地教行法17条1項),都教育庁の事務を統括し,所属の職員を指揮監督する(地教行法20条1項)。 (2) 本件に関係する法令等の規定内容ア国旗及び国歌に関する法律(以下「国旗国歌法」という。)1条1項国旗は,日章旗とする。 (以下,日章旗を「日の丸」という。)2条1項国歌は,君が代とする。 イ教育基本法(ただし,平成18年法律第120号による改正前のものは「旧教育基本法」という。)1条教 旗を「日の丸」という。)2条1項国歌は,君が代とする。 イ教育基本法(ただし,平成18年法律第120号による改正前のものは「旧教育基本法」という。)1条教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。 16条1項教育は,不当な支配に服することなく,この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり,教育行政は,国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下,公正かつ適正に行われなければならない。 (なお,旧教育基本法10条1項は「教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」,同条2項は「教育行政は,この自覚のもとに,教育の目的を遂行するに 必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」と規定している。)ウ学校教育法(ただし,平成19年法律第96号による改正前のもの。以下同じ。)第2章小学校17条小学校は,心身の発達に応じて,初等普通教育を施すことを目的とする。 18条小学校における教育については,前条の目的を実現するために,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 2号郷土及び国家の現状と伝統について,正しい理解に導き,進んで国際協調の精神を養うこと。 20条小学校の教科に関する事項は,第17条及び第18条の規定に従い,文部科学大臣が,これを定める。 28条3項校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。 6項教諭は,児童の教育をつかさどる。 第3章中学校35条 に従い,文部科学大臣が,これを定める。 28条3項校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。 6項教諭は,児童の教育をつかさどる。 第3章中学校35条中学校は,小学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,中等普通教育を施すことを目的とする。 36条中学校における教育については,前条の目的を実現するために,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 1号小学校における教育の目標をなお充分に達成して,国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。 38条中学校の教科に関する事項は,第35条及び第36条の規定に従い,文部科学大臣が,これを定める。 40条第18条の2,第21条,第25条,第26条,第28条から第32条まで及び第34条の規定は,中学校に,これを準用する。 (以下略)第4章高等学校41条高等学校は,中学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。 42条高等学校における教育については,前条の目的を実現するために,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 1号中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて,国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと。 43条高等学校の学科及び教科に関する事項は,前2条の規定に従い,文部科学大臣が,これを定める。 51条第18条の2,第21条,第28条第3項から第12項まで及び第34条の規定は,高等学校に,これを準用する。(以下略)第6章特殊教育71条盲学校,聾(ろう)学校又は養護学校は,それぞれ盲者(強度の弱視者を含む 条第3項から第12項まで及び第34条の規定は,高等学校に,これを準用する。(以下略)第6章特殊教育71条盲学校,聾(ろう)学校又は養護学校は,それぞれ盲者(強度の弱視者を含む。以下同じ。),聾(ろう)者(強度の難聴者を含む。以下同じ。)又は知的障害者,肢(し)体不自由者若しくは病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施し,あわせてその欠陥を補うために,必要な知識技能を授けることを目的とする。 73条盲学校,聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部の教科,高等部の学科及び教科又は幼稚部の保育内容は,小学校,中学校,高等学校又は幼稚園に準じて,文部科学大臣が,これを定める。 76条 (略)第28条(第40条,第51条及び第82条において準用する場合を含む。)(略)の規定は,盲学校,聾(ろう)学校及び養護学校に,(略)これを準用する。 エ学校教育法施行規則(ただし,平成19年12月25日文部科学省令第40号による改正前のもの。以下同じ。)25条小学校の教育課程については,この節に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする。 54条の2 中学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する中学校学習指導要領によるものとする。 57条の2 高等学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する高等学校学習指導要領によるものとする。 73条の10 盲学校,聾(ろう)学校及び養護学校の教育課程については,この章に定めるもののほ か,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する高等学校学習指導要領によるものとする。 73条の10 盲学校,聾(ろう)学校及び養護学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する盲学校,聾(ろう)学校及び養護学校幼稚部教育要領,盲学校,聾(ろう)学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領及び盲学校,聾(ろう)学校及び養護学校高等部学習指導要領によるものとする。 オ学習指導要領(平成元年3月15日,同年10月24日改訂後のもの)(ア) 小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領はそれぞれ第4章において,高等学校学習指導要領は第3章において,特別活動に関し,以下のとおり規定している。(乙イ18の1ないし18の3)「第2 内容AないしC 略D 学校行事学校行事においては,全校又は学年を単位として,学校生活に秩序と変化を与え,集団への所属感を深め,学校生活の充実と発 展に資する体験的な活動を行うこと。 (1) 儀式的行事学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」「第3 指導計画の作成と内容の取扱い1,2 略3(中学校については6) 入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」(以下,この定めを「国旗国歌条項」という。)(イ) 盲学校,ろう聾学校及び養護学校高等部学習指導要領は,特別活動に関し,以下のとおり規定している。(乙イ18の4)「 特別活動の目標,内容及び指導計画の作成と内容 (イ) 盲学校,ろう聾学校及び養護学校高等部学習指導要領は,特別活動に関し,以下のとおり規定している。(乙イ18の4)「 特別活動の目標,内容及び指導計画の作成と内容の取扱いについては,高等学校学習指導要領第3章に示すものに準ずるほか,次に示すところによるものとする。 1 略 2 生徒の経験を広め,社会性を養い,好ましい人間関係を育てるため,特に特別活動においては,集団活動を通して高等学校の生徒及び地域社会の人々と活動を共にする機会を積極的に設けることが必要である。その際,生徒の心身の障害の状態及び特性等を考慮して,活動の種類や時期,実施方法等を適切に定めるものとする。 3 精神薄弱者を教育する養護学校においては,個々の生徒の精神発達の遅滞の状態や発達段階に即応して,適切に指導の重点を定め,できるだけ具体的に指導する必要がある。」 カ地教行法23条教育委員会は,当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で,次に掲げるものを管理し,及び執行する。 3号教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。 5号学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関すること。 8号校長,教員その他の教育関係職員の研修に関すること。 48条1項地方自治法第245条の4第1項の規定によるほか,文部科学大臣は都道府県又は市町村に対し,都道府県委員会は市町村に対し,都道府県又は市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため,必要な指導,助言又は援助を行うことができる。 2項前項の指導,助言又は援助を例示すると,おおむね次のとおりである。 2号学校の組織編成,教育課程,学習指導,生徒指導,職業指導,教科書その他の教材の取扱いその他学校運 うことができる。 2項前項の指導,助言又は援助を例示すると,おおむね次のとおりである。 2号学校の組織編成,教育課程,学習指導,生徒指導,職業指導,教科書その他の教材の取扱いその他学校運営に関し,指導及び助言を与えること。 キ地公法29条1項職員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。 1号この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合2号職務上の義務に違反し,又は職務を怠つた場合 3号全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合30条すべて職員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,且つ,職務の遂行に当つては,全力を挙げてこれに専念しなければならない。 32条職員は,その職務を遂行するに当つて,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。 33条職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 (3) 都教委の通達ア都教委のk教育長は,都立高等学校長及び都立盲・ろう・養護学校長(以下,これらを併せて「都立学校長」という。)に対し,平成15年10月23日,都立学校長に対する職務命令として,以下のとおりの内容の「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」(以下「本件都教委通達」といい,本件都教委通達の別紙「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」を「本件都教委実施指針」という。)を発出した。(乙イ34) について(通達)」(以下「本件都教委通達」といい,本件都教委通達の別紙「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」を「本件都教委実施指針」という。)を発出した。(乙イ34)「1 学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正に実施すること。 2 入学式,卒業式等の実施に当たっては,別紙『入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針』のとおり行うものとすること。 3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり,教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は,服務上の責任を問われることを,教職員に周知すること。」「別紙入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針 1 国旗の掲揚について入学式,卒業式等における国旗の取扱いは,次のとおりとする。 (1) 国旗は,式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。 (2) 国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合,国旗にあっては舞台壇上正面に向かって左,都旗にあっては右に掲揚する。 (3) 屋外における国旗の掲揚については,掲揚塔,校門,玄関等,国旗の掲揚状況が児童・生徒,保護者,その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。 (4) 国旗を掲揚する時間は,式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。 2 国歌の斉唱について入学式,卒業式等における国歌の取扱いは,次のとおりとする。 (1) 式次第には,「国歌斉唱」と記載する。 (2) 国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が,「国歌斉唱」と発声し,起立を促す。 (3) 式典会場において,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。 (4) 国歌斉唱は,ピアノ伴奏等により行う。 3 会場設営等について入学式,卒業式等における会場設営等は,次のと おいて,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。 (4) 国歌斉唱は,ピアノ伴奏等により行う。 3 会場設営等について入学式,卒業式等における会場設営等は,次のとおりとする。 (1) 卒業式を体育館で実施する場合には,舞台壇上に演台を置き,卒業証書を授与する。 (2) 卒業式をその他の会場で行う場合には,会場の正面に演台を置き,卒業証書を授与する。 (3) 入学式,卒業式等における式典会場は,児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。 (4) 入学式,卒業式等における教職員の服装は,厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする。」イ都教委は,平成15年10月23日,都立学校長を対象者として,「教育課程の適正実施にかかわる説明会」を開催した(乙イ37)。その際,l都教育庁指導部長は,本件都教委通達は都立学校長に対する職務命令であると説明した。 (4) α市教育委員会の通達α 市教育委員会(以下「 α 市教委」という。)のm教育長は, α 市立各小・中学校長に対し,平成15年10月29日付けで「入学式,卒業式などにおける国旗掲揚及び国家斉唱の実施について(通達)」(以下「本件市教委通達」といい,本件都教委通達と併せて「本件各通達」という。 乙イ12)を発出した。なお,本件市教委通達の内容は,本件都教委通達と基本的に同内容である。 (5) 適格性に課題のある教育管理職の取扱いに関する要綱都教委は,都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会を設置し,平成15年8月までにまとめた報告書を踏まえて,平成15年10月23日,「適格性に課題のある教育管理職の取扱いに関する要綱」(乙イ38)を制定した。同要綱の内容としては,2年間の業績評定が下位評定であるこ 8月までにまとめた報告書を踏まえて,平成15年10月23日,「適格性に課題のある教育管理職の取扱いに関する要綱」(乙イ38)を制定した。同要綱の内容としては,2年間の業績評定が下位評定であること,戒告以上の懲戒処分を2回以上受けたことなどの要件に該当する教育管理職(校長,副校長及び教頭)について,研修実施,降任勧告等の措置を講ずるというものであった。 (6) 都教委において定めている教職員に係る懲戒処分の基準都教委では,教職員の非違行為への対応として,過去の非違事例を類型化し,これらに対する懲戒処分の標準的な処分量定を作成(以下「本件処分量定」という。)し,これを公表している。本件各処分当時の上記処分量定の内容は,以下のとおりである(甲157)。 ア処分量定の決定① 非違行為の態様,被害の大きさ及び司法の動向など社会的重大性の程度② 非違行為を行った職員の職責,過失の大きさ及び職務への影響など信用失墜の度合い③ 日常の勤務態度及び常習性など非違行為を行った職員固有の事情以上のほか,適宜,非違行為後の対応等も含め総合的に考慮のうえ判断するものとする。 表(略)の処分量定は,あくまで標準であり,個別の事案の内容や処分の加重によっては,表(略)に掲げる処分量定以外とすることもあり得る。 また,下(略)に掲げられていない非違行為についても,懲戒処分の対象となり得る。 イ処分量定の加重過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った場合は,量定を加重する。 ウ処分の量定勤務態度不良(職務命令違反,職務専念義務違反,職場離 過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った場合は,量定を加重する。 ウ処分の量定勤務態度不良(職務命令違反,職務専念義務違反,職場離脱)を行った場合には,減給,戒告。 (7) 本件各処分ア原告ac養護学校の校長は,平成19年3月13日から15日までの間に,原告aに対して,c養護学校の平成18年度高等部卒業式においては,国歌斉唱時に「式典会場において,会場の指定された席で国旗に向かって起立して国歌を斉唱すること」を命ずる職務命令(以下「本件対a職務命令」という。)を発令した(甲544,乙イ5)。 原告aは,同月19日に実施された上記卒業式の国歌斉唱の際,司会の 国歌斉唱の発声と同時に着席し,起立しなかった(以下「本件a不起立」という。乙イ6)。 都教委は,原告 a に対し,同月30日,原告 a の上記行為は,本件対a職務命令に反する行為であり,地公法32条,33条に違反し,地公法29条1項1ないし3号に該当するとして,停職3月の懲戒処分(以下「本件a停職処分」という。)をした(甲542,543)。 イ原告bf中の校長は,平成19年3月19日午前8時20分頃までに,原告bに対して,f中の平成18年度第34回卒業式においては,国歌斉唱時に職員席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること,司会が着席の案内をするまで着席しないことという職務命令(以下「本件対b職務命令」という。)を発令した(610号事件乙イ9,10)。 原告bは,同日午前9時35分頃,上記卒業式において,国歌斉唱時に起立しないで着席し(以下「本件b不起立」という。),本件対b職務命令に違反する行為をした(610号事件乙イ10)。 原告bは,同日午前9時35分頃,上記卒業式において,国歌斉唱時に起立しないで着席し(以下「本件b不起立」という。),本件対b職務命令に違反する行為をした(610号事件乙イ10)。 都教委は,原告bに対し,同月30日,原告bの上記行為は,本件対b職務命令に反する行為であり,地公法32条,33条に違反し,地公法29条1項1ないし3号に該当するとして,停職6月の懲戒処分(以下「本件b停職処分」という。)をした(甲1,2)。 (8) 東京都人事委員会に対する審査請求ア原告aは,東京都人事委員会に対し,平成19年5月2日,本件a停職処分について審査請求をした。 イ原告bは,東京都人事委員会に対し,平成19年5月2日,本件b停職処分について審査請求をした。 (9) 訴えの提起原告aは,平成19年8月29日,当庁に対し,本件a停職処分の取消し 等を求める訴えを提起した(当庁平成19年(行ウ)第552号懲戒処分取消等請求事件)。 原告bは,平成19年9月28日,当庁に対し,本件b停職処分の取消し等を求める訴えを提起した(当庁平成19年(行ウ)第610号懲戒処分取消等請求事件)。 平成20年3月27日,上記両事件は併合された。 3 争点(1) 本件各処分の違法性ア懲戒事由の存否(ア) 職務命令違反(地公法32条)の有無(イ) 信用失墜行為(地公法33条)の有無イ本件各処分の違法性ウ本件各処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるか否かエ適正手続(憲法31条)違反が認められるか否か(2) 国賠法に基づく損害賠償請求の可否第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1 権の範囲の逸脱又は濫用が認められるか否かエ適正手続(憲法31条)違反が認められるか否か(2) 国賠法に基づく損害賠償請求の可否第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(ア)(職務命令違反の有無)について【原告らの主張】(1) 本件各職務命令が憲法19条に違反することア憲法の最高原理(個人の尊厳)の観点から行政権力が国旗・国歌の強制を行うことは原理的に禁止されていること(ア) 憲法19条は,思想及び良心の自由を単に個人の主観的権利として保障するものではなく,国家権力(行政権力)が人々の思想信条に介入・干渉することは許されず,また特定の思想,信条,価値観を強制することを禁じている(国家の「価値中立性原則」を定めている)ものと解される。萎縮効果を伴う脆弱な人権にすぎない思想及び良心の自由に対 しては,主観的権利として直接の強制からの自由を保障するだけでは不十分で,国家が特定思想ないし価値と過度にかかわることによる間接的な侵害も,やはり思想及び良心の自由に対する侵害にほかならない。 法的な見地からは,近代立憲主義を標榜する立憲国家は公教育の組織・運営を含むあらゆる国政において憲法の拘束を受けなければならない。 立憲国家にとって最も枢要な義務は,国家自らが特定の世界観に与してはならないこと,つまり,国家の価値中立性を堅持することである。日本国憲法下における公教育の場において,教育が子どもらの思想信条の形成過程に介入・干渉をしてはならず,また特定の価値観を強制してはならないこと(公教育における価値中立性原則)は,客観的原則として認められる。 (イ) 国旗・国歌の強制は,国家の一員であることを肯定的にとらえる意識を持て,国家への帰属を自己のアイデンティティの基礎とせ 教育における価値中立性原則)は,客観的原則として認められる。 (イ) 国旗・国歌の強制は,国家の一員であることを肯定的にとらえる意識を持て,国家への帰属を自己のアイデンティティの基礎とせよ,と強制されるに等しく,「個人の尊重」のもっとも根源的な部分への侵害となる。日本国憲法によって導かれる国家及び公教育の価値中立性原則から,公権力が人々に国旗・国歌を尊重する意思表示や行為を強制することは,それによって人々の思想信条の侵害の有無を問わず違憲であって,国家及び公教育の価値中立性を認める以上,国旗・国歌の強制はあり得ないという関係に立つことになる。 (ウ) 本件各職務命令は,「日の丸・君が代が象徴する国家を尊敬する心を外部に表明する」ことを教員に対して強制するものに他ならない。また,本件各職務命令は,子どもらに対する思想信条の形成に対する過度の介入・干渉であるという面からも,国家及び公教育の価値中立性原則に違反する。 (エ) 国家及び公教育の価値中立性原則の観点からすれば,本件各職務命令は,教員個人の思想及び良心の自由の侵害の有無にかかわりなく,強 制の契機を有する点において,直ちに憲法19条違反であることは明白である。 イ本件各職務命令の目的(児童生徒への愛国心の注入)からして明らかに違憲であること本件都教委通達に基づき本件各職務命令を本件各校長に発出させた都教委の最終的な目的(意図)は,子どもらに対する「学習義務」として,「国旗(日の丸)・国歌(君が代)を尊重する」という「特定の価値観」を押しつけ,さらには,「国家帰属意識」,「愛国心」を注入することにあり,このことは,最高裁昭和51年5月21日大法廷判決(刑集30巻5号615号)(以下「最高裁昭和51年判決」という。)における学習権概 つけ,さらには,「国家帰属意識」,「愛国心」を注入することにあり,このことは,最高裁昭和51年5月21日大法廷判決(刑集30巻5号615号)(以下「最高裁昭和51年判決」という。)における学習権概念,子どもらの思想信条の形成の自由の保障及び国家・公教育の価値中立性原則を真っ向から否定することに他ならない。また,本件各職務命令が子どもらの学習権の侵害となるという観点からすれば,本件各職務命令は,不起立を貫いた原告らの思想信条の直接の侵害ともなる。以上のとおり,本件各職務命令は,子どもらの学習権及び思想信条など内心を形成する自由を侵害するものとして憲法13条,19条,26条に違反するものであると同時に,原告らの教員としての教育上の信念を直接侵害するものとして同法19条に違反する。 ウ教育公務員と憲法15条2項を根拠とする人権制約論に対する批判公務員(特に教育公務員)は,憲法尊重擁護義務を負っているのであるから,憲法の中核をなす基本的人権(とりわけ精神的自由の核心ともいえる思想及び良心の自由)と抵触するような職務の遂行を命じられたような場合には,憲法尊重擁護義務に従って,これを拒否することができると解される。あるいは,このような基本的人権に抵触するような職務は,そもそも「全体の奉仕者性」を欠くものというべきであり,職務命令に対する服従義務も認められないと解される。 上記ア,イのとおり,本件各職務命令は,原告ら教員の思想及び良心の自由,とりわけ教員としての教育上の信念(子どもらの学習権の保障)に直接抵触するだけでなく,子どもらの思想信条といった内心の形成の自由と抵触する。そうすると,このような内心の自由に抵触する職務を強制する職務命令に対する服従義務は認められず,憲法尊重擁護義務の観点からは,むしろこれを拒否すること の思想信条といった内心の形成の自由と抵触する。そうすると,このような内心の自由に抵触する職務を強制する職務命令に対する服従義務は認められず,憲法尊重擁護義務の観点からは,むしろこれを拒否することが教育公務員の「責務」として課されていることになる。したがって,本件各職務命令に関しては,憲法15条2項,地公法30条,32条に基づく人権制約原理は働かず,むしろ憲法99条の憲法尊重擁護義務遵守の観点から,これを拒否することが求められているということができる。 エ間接制約論に対する批判(ア) 最高裁は,本件各職務命令と同様の職務命令が思想及び良心の自由の直接的制約となることは否定した上で,間接的な制約となる面があることは否定し難いとした上で,「このような間接的な制約が許容されるか否かは,職務命令の目的及び内容並びにこれによってもたらされる上記の制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である」との判断基準を示し,職務命令が,当該教員の思想及び良心の自由の間接的な制約となることを認めた上で,かかる間接的制約を「許容し得る程度の必要性及び合理性が認められる」として,職務命令は憲法19条に違反しないとした。 かかる判断方法は,これまで絶対的保障とされていた思想及び良心の自由が相対化されてしまったことを意味し,反対価値との比較考量に落とし込むことによって,思想及び良心の自由が制約される多くの場合を合憲と判断することを可能とした。かかる精神的自由権に対する判断方法は,憲法の根本原理である基本的人権の尊重(個の尊厳)を多数意思 の名の下に否定しさる結果を招くものであり,根本的な誤りが存する。 (イ) 思想及び良心の自由 に対する判断方法は,憲法の根本原理である基本的人権の尊重(個の尊厳)を多数意思 の名の下に否定しさる結果を招くものであり,根本的な誤りが存する。 (イ) 思想及び良心の自由が直接的な制約を受ける場合のみならず,間接的な制約を受ける場合においても,思想良心に強い圧力がかけられることは同様であるから,その違憲性の審査基準においても厳格な基準が用いられるべきである。そして,思想や良心に対する事実上の影響を最小限にとどめるような配慮が必要であることをその審査基準とするならば,都教委の行為は,このような配慮を欠いており,本件各通達や本件各職務命令等の違憲性は明白である。 (ウ) 本件では,そもそも本件各職務命令発出の目的の必要性がないし,そもそも式典の円滑な遂行のために発出されているものとさえ認め難い。本件各通達及び本件各職務命令は,特定の思想良心を有する教員を析出し,それに対し,不起立に対する累積加重処分などの処分をすることによって,思想良心を変更させることを強要するととも,不起立行為を職務命令違反行為として不起立教員を処分することによって,教員全体に思想統制の圧力を加えることを目的として,ひいては子どもらの思想に一定の方向付けをし,特定の観念を教え込むことを強要しようとするものと考えざるを得ない。このような目的で発出された通達や職務命令には,それ自体正当な目的が認められず,合理性も認められない。 (2) 本件各職務命令が憲法23条,26条に違反することア憲法26条は,子どもの学習権を保障している。教育は本来人間の内面的価値に関する文化的な営みとして,党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきでなく,教育内容に対する国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請されるし,子 いる。教育は本来人間の内面的価値に関する文化的な営みとして,党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきでなく,教育内容に対する国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請されるし,子どもが自由かつ独立した人格として成長することを妨げるような国家的介入,例えば,誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことを強制することは,憲法26条に違反する。 イまた,憲法23条は,学問の自由を保障しているところ,普通教育の場において,教員が公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において,また,子どもの教育が教員と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,その個性に応じて行わなければならないという本質的要請に照らし,教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては,一定の範囲における教授の自由が保障される。 ウ本件各職務命令は,教員の教育の自由に対する行政権力による直接的かつ具体的介入であり,その内容において,「国家への敬意や忠誠」という国家的価値の実現と直接に結びついた特定の思想の強制であること,その態様において,教員による裁量の余地が全くないことから,教育の自由に対する侵害性は極めて強く,憲法23条,26条に違反する。 (3) 本件各職務命令が教育基本法16条1項に違反することア教育基本法は,戦後,憲法26条に定められた子どもの教育を受ける権利を受け,教育の分野における準憲法的な基本法として制定された。 教育基本法16条1項は,行政等による教育への不当な支配を禁止するものであるが,これは,戦前に行政が教育を利用し,国民を悲惨な戦争に駆り立てたことに対する真摯な反省に基づいている。終戦後に制定された 育基本法16条1項は,行政等による教育への不当な支配を禁止するものであるが,これは,戦前に行政が教育を利用し,国民を悲惨な戦争に駆り立てたことに対する真摯な反省に基づいている。終戦後に制定された日本国憲法と教育基本法の体制は,軍国主義的な戦前教育の大日本帝国憲法・教育勅語体制への強い反省から生まれたものであって,画一主義的な教育を排し,自主自由な教育体制を念頭においたものであった。「個人の尊厳」を最高原理とする日本国憲法下における「教育」の本来のありようについて,画一的な国家主義を排し,「真理と人格と平和を尊重すべき教育」,「自由で自律的な教育」が予定されていた。 イ日本において教育人権論を初めて本格的に論じた最高裁昭和51年判決の特徴を要約すると,以下の4点があげられる。 ① 憲法26条の「教育を受ける権利」の内容を「子どもの学習権」であるとし,そこから,公教育の正当な目的を限定し,国家(行政)が教育に介入する限界を画したこと② 教員の教育の自由が,教育の本質的要請から必然的に導かれ,憲法23条によって基礎付けられることを明確にしたこと③ 教育基本法の「不当支配の禁止」が裁判規範性を有することを認めたこと④ それと並んで,地方自治原理による国の教育内容への介入に対する拘束性を確認していることウ子どもらに思想・良心や思考力を育む教育をするためには,価値観に関わり様々に意見の分かれる論争的主題について,子ども自身が自らの考え,思想良心を形成することを支援する教育が行われなければならない。そのような教育が行われるためには,教員は,意見の分かれる主題について,子どもらに問題を提示し,様々な考え方があることを紹介し,子どもらに話し合いや討論を促し,子どもらが自分たちの考えを作り上げていけるように支援しなけ るためには,教員は,意見の分かれる主題について,子どもらに問題を提示し,様々な考え方があることを紹介し,子どもらに話し合いや討論を促し,子どもらが自分たちの考えを作り上げていけるように支援しなければならない。また,場合によっては,その実例を示す意味で,教員が自らの思想や良心に基づく行動の在り方を子どもに見せることも有用である。 エ入学式・卒業式等の学校行事は,学習指導要領においても,「特別活動」として位置づけられ,学校行事の細目では「儀式的行事」とされており,学校のカリキュラムの中に組み込まれているものであって,学校教育活動そのものであることに争いはない。本件各通達及びこれに基づく本件各職務命令は,かかる学校の教育活動そのものの内容に都教委という教育行政機関が直接的に介入したところに大きな特徴がある。 また,国旗・国歌は,国民にとって身近な国家シンボルであるが,国家シンボルである以上,その存在は,シンボルに表象された国家に対する一 人ひとりの国民の観念(国家観という人間にとって本質的かつ重要な価値決定)との緊張関係を生じる。加えて,国旗・国歌とされた日の丸・君が代には,国民の一部及び我が国の侵略を受けたアジア諸国の国民にとって決して軽視できない負の歴史があり,このような日の丸・君が代を国旗・国歌として受け入れ難いとする一部国民の存在は無視できない。このように二重の意味で論争的あるいは価値対立的な存在である国旗(日の丸)・国歌(君が代)について,本件都教委通達で明示的に命じられた「国旗に正対して起立し,国歌を斉唱する行為」は,「日の丸」・「君が代」を国旗・国歌として受容し,さらに,そのような国旗・国歌に表象される国家に対する敬意や忠誠を示す行為にほかならず,一定の価値観の教え込みを強制するものである。 さらに,本件各通 の丸」・「君が代」を国旗・国歌として受容し,さらに,そのような国旗・国歌に表象される国家に対する敬意や忠誠を示す行為にほかならず,一定の価値観の教え込みを強制するものである。 さらに,本件各通達においては,国旗(日の丸)の位置や子ども達や教員の座る位置など全体の配置,国歌(君が代)を斉唱する式次第の内容,その伴奏の仕方,参加する教員の服装や着席位置の指定など,きわめて詳細かつ具体的に定められており,学校現場の教員による裁量の余地が全くない。 以上のように,本件各通達及び本件各職務命令は,行政権力による直接的かつ具体的な介入であり,その内容において,「国家への敬意や忠誠」という国家的価値の実現と直接に結びついた特定の思想の強制であること,その態様において,教員による裁量の余地が全くないことから,上記の意味における教員の「教育の自由」の侵害性は極めて強く,違憲である。 オ最高裁昭和51年判決では,教育行政機関の設定する教育内容,方法についての基準が,教育基本法16条1項の「不当な支配」に該当しないためには,①教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準にとどまるべきものでなければならず,かつ,②教員による創造的かつ弾力的な教育の余 地や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分残されていること,③教員に対し一方的な一定の理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものでないことを必要とするとしている。本件各通達や本件各職務命令は,上記エのとおり,一方的価値観の教え込みを強要し,また介入の態様も非常に詳細で教員の裁量の余地がないことから,「不当な支配」に該当するといえる。 カなお,被告は,「不当な支配」の審査基準として,国の教育行政の教育内容の基準設定に みを強要し,また介入の態様も非常に詳細で教員の裁量の余地がないことから,「不当な支配」に該当するといえる。 カなお,被告は,「不当な支配」の審査基準として,国の教育行政の教育内容の基準設定には「大綱的基準」の適用があるが,都教委のような地方教育委員会(以下「地教委」という。)の場合には,「大綱的基準」の適用がないと主張する。しかし,かかる解釈は,最高裁昭和51年判決の判示にも明確に反するものであり,また法令解釈としても明白な誤りである。 最高裁昭和51年判決が教育行政の教育内容の基準設定に「大綱的基準」の審査基準を適用した理由は,教育の自主性尊重にあり,このことは,地方教育行政にも同様に当てはまるものである。都教委の掲げる地方自治の原則は,あくまでも二次的なものであり,地方教育行政においても「大綱的基準」の審査基準は当然に適用されると解される。また,地教行法23条5号などの組織法の規定は,地方教育行政に広範な権限を付与する根拠にはならず,被告の理由付けは到底成り立つものではない。以上のとおり,地方教育行政の設定する教育内容の基準についても,「大綱的基準」が適用されるべきことは当然である。 【被告の主張】(1) はじめに原告らの行為(本件各不起立)が本件各職務命令に違反するものであること自体は原告らも認めているところであり,地公法32条違反が成立することは明らかである。 アところで,原告らは,地公法32条の職務命令遵守義務は,その職務命令が 憲法,教育基本法,学校教育法等に違反しないことを前提とするものであり,原告らの本件各不起立は地公法32条に違反しないと主張している。 しかしながら,原告ら教育公務員は,職務命令に重大かつ明白な違法がない限り,これを遵守する義務を負うものであり,た であり,原告らの本件各不起立は地公法32条に違反しないと主張している。 しかしながら,原告ら教育公務員は,職務命令に重大かつ明白な違法がない限り,これを遵守する義務を負うものであり,たとえ原告らが自己の判断によって本件各職務命令を違憲,違法と判断したとしても,それは自己の責任と危険において職務命令違反に及んだというほかなく,何らその責任が軽減されるものではなく,ましてや免責されるものでは全くない。 しかも,本件各職務命令に違憲,違法な点がないことは,下記(2)ないし(4)のとおりであり,原告らの主張はその前提を欠く。 イ原告らは,「教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては,一定の範囲における教授の自由が保障されるべき」であり,それを侵害する職務命令を発する権限は校長にはないと主張している。 しかしながら,校長は,校務をつかさどり所属職員を監督する権限を有しており(学校教育法28条3項,40条,51条,76条),教育課程の編成等すべての校務を決定し,これを各教員に分掌させ,必要な指導を行い,職務命令を発することができる。ことに卒業式,入学式,周年行事などの学校行事は,教育課程の一部である特別活動として実施されるものであるが,教科等の授業とは異なり,学年及び学級の区別なく全校をあげて実施されるものであり,本来的に各教員において個別,又は独自にこれを行うことが不適当な性格のものであって,校長がその実施について各教員に職務命令を発することができるのは明らかである。 ウなお,原告らは,公務員といっても,その職務によって要求される行為規範には重点の相違があり,教育公務員にとって職務命令遵守義務の重要性は低いかのごとく主張している。 かである。 ウなお,原告らは,公務員といっても,その職務によって要求される行為規範には重点の相違があり,教育公務員にとって職務命令遵守義務の重要性は低いかのごとく主張している。 しかしながら,学校教育は組織的に行われるものであり,教育公務員も組織 の一員として学校の教育活動に従事するのであり,組織体の意思として発せられる上司の職務命令を遵守することはその基本的義務である。 しかも,教員は,法令を含む種々の社会的ルールを児童・生徒に指導していく立場にあり,自らも成熟した社会人として率先垂範すべきものであり,法令たる地公法32条についても全く同様であって,原告らのように公然と,しかも児童・生徒,保護者その他学校関係者の面前で違反すれば,その責任は重大なのであって,厳しくその責任を問われることは当然のことである。 (2) 本件各職務命令が憲法19条に違反しないことア原告らは,国民は,憲法19条により,思想及び良心の自由を有し,日の丸・君が代が価値中立的なものと認められるまでには至っていない状態にあり,入学式・卒業式等の式典において国歌斉唱の際に,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱することを拒否する者が少なからずいるとして,本件各職務命令は必要かつ最小限度の制約を超え,憲法19条に違反すると主張している。 しかしながら,原告らの主張は,日の丸・君が代とその指導の性格に関する理解を誤るものであり,そもそも本件各職務命令が憲法19条に違反しないことについては,すでに最高裁判例により明らかにされている。すなわち,最高裁平成23年5月30日第二小法廷判決(民集65巻4号1780頁),最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決(民集65巻4号1855頁),最高裁平成23年6月14日第三小法廷判決 いる。すなわち,最高裁平成23年5月30日第二小法廷判決(民集65巻4号1780頁),最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決(民集65巻4号1855頁),最高裁平成23年6月14日第三小法廷判決(民集65巻4号2148頁),最高裁平成23年6月21日第三小法廷判決(裁判集民事237号53頁)は,何れも起立斉唱行為に係る職務命令の合憲性が争われた事案であるが,一致してその合憲性を認めているところであり,この点は既に決着がついている。 イ原告らは,本件各職務命令は憲法が国家に要請している価値中立性の観点から違憲であるとの客観的憲法原則違反があると主張している。そして原告らは,この点は,上記アの平成23年の最高裁判決では争点になっておらず,同判決は先例とはならないと主張している。 しかしながら,最高裁平成19年2月27日第三小法廷判決(民集61巻1号291頁),前掲最高裁平成23年5月30日判決などにおいて,入学式・卒業式において学校が児童・生徒に対し,国歌斉唱の指導をするために発せられる職務命令につき「その目的及び内容において不合理であることはできない」とされており,当該職務命令自体に違憲,違法とすべき点がないことはもとより,不合理とすべき点もないことを明確に認められており,当然のことながら原告らが主張するような客観的憲法原則違反を否定していることは明らかである。 そもそも入学式・卒業式を含む学校教育活動における国旗・国歌の指導は,児童・生徒に国旗・国歌に対する正しい認識をもたせ,それらを尊重する態度を育てるために,国旗・国歌に関する基礎的知識を指導するものであるが,それは我が国の国旗・国歌のみ尊重する態度を育てるために行われるものではなく,他国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために行わ てるために,国旗・国歌に関する基礎的知識を指導するものであるが,それは我が国の国旗・国歌のみ尊重する態度を育てるために行われるものではなく,他国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために行われるものである。国際社会が平和のなかに発展していくには,国際社会を形成するそれぞれの国の国民がそれぞれの国民としての自覚を有し,それぞれの国を愛するとともに,他国も同様に尊重していかなければならないのであり,国の象徴である国旗・国歌についても自国のそれらと同様に他国のそれらを尊重していかなければならないものであって,このことは国際社会で生きる日本人として学んでおくべき基礎的知識である。 原告らは,憲法は国家(行政)に対し価値中立性を要請していると主張するが,仮に原告らの主張のとおり憲法が国家(行政)に対し価値中立性を要請しているとしても,それが絶対的な中立性の要請などではないことは政教分離規定に係る最高裁判例(最高裁昭和52年7月13日大法廷判決(民集31巻4号533頁他))を見れば明らかである。 普通教育の場において,日本人として学んでおくべき基礎的知識を教授することが国家(行政)の保持すべき価値中立性の要請に反することはあ り得ない。 (3) 本件各職務命令が憲法23,26条に違反しないことア普通教育の場における教育の自由は,教育を受ける子どもの利益のためであることからすると,仮に教育の自由が侵害されても,教員がその違憲を主張することは,行政事件訴訟法10条1項所定の「自己の法律上の利益に関係のない違法」を主張するものとして許されない。 イまた,下記(4)イ,ウのとおり,本件各通達及び本件各職務命令については,それぞれ卒業式等を学習指導要領に則って適正に実施し,児童・生徒に国旗・国歌の適正な指導 るものとして許されない。 イまた,下記(4)イ,ウのとおり,本件各通達及び本件各職務命令については,それぞれ卒業式等を学習指導要領に則って適正に実施し,児童・生徒に国旗・国歌の適正な指導を行うために発せられたものであり,その内容も合理的なものであって,誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付ける内容のものではない。したがって,本件各職務命令は,何ら教員の教育の自由を侵害するものではなく,憲法23条,26条に反しない。 (4) 本件各職務命令が教育基本法16条1項に違反しないことア教育基本法16条1項の「不当な支配」の成立対象について(ア) 教育基本法を中心とする現行教育法制は,①教育の地方自治,②教育への外部的干渉の防止を基本原理としており,その基本原理を達成するために教育委員会制度を設けているのであるから,教育基本法の下で制定された教育関係法規によって地教委に付与された固有の権限の行使は「原則」として教育基本法16条1項の「不当な支配」には該当しないと解すべきである。 一口に教育行政機関と言っても,国の教育行政機関たる文部科学省と地方公共団体の教育行政機関たる地教委とがあり,また地教委には学校設置団体の学校管理機関たる教育行政機関としての役割と,その余の教育に関する事務を処理する教育行政機関(以下「一般教育行政機関」という。)としての役割とがあり,そのすべてを一緒にして教育基本法16条1項所定の「不当な支配」の成立範囲を論ずるのは誤りであり,その誤りの端的な例が原告らの主張する「大綱的基準」説である。 (イ) 学校は,それ自体として,完全に独立して機能するのではなく,公立学校にあっては当該学校を設置した地方公共団体によって管理されるものであり,法律により学校管理機関と である。 (イ) 学校は,それ自体として,完全に独立して機能するのではなく,公立学校にあっては当該学校を設置した地方公共団体によって管理されるものであり,法律により学校管理機関として学校の管理を行うこととされているのは,高等学校以下の公立学校にあっては,これを設置する地方公共団体の教育委員会である(地教行法23条)。そして,ここでいう「管理」とは,学校の設置目的を達成するために必要な一切の行為を指すものであり,教育の内容・方法が学校の設置目的を達成する上で中心的事項であることを考えれば,これが上記の「管理」の対象に含まれることは明らかなことである。そして,学校の「管理」は学校の設置目的を達成するために必要な一切の行為を指すものであるから,必要な場合には,学校管理機関としての地教委は教育の内容・方法についても学校に対し具体的な命令を発することができるものである。そもそも都道府県教育委員会は,一般教育行政機関として,市町村教育委員会に対して市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため必要な指導,助言又は援助を行う権限を有しているが(地教行法48条),その権限行使に当たっても教育の地方自治の原則の下,文部科学省に比してより具体的な指導等ができるものであって,「大綱的基準」による指導等にとどめなければならないものではないし,ましてや学校設置団体の学校管理機関としての権限行使に当たって「大綱的基準」の設定にとどめなければならないものではない。 (ウ) 学校管理機関としての地教委がその管理する普通教育の学校における教育の内容・方法に関する措置(関与・介入)が教育基本法の「不当な支配」に該当するかは,①当該措置が普通教育の目的である,子どもの成長の上で必要となる基礎的知識を身につけさせる目的で行われたものか(「許容さ 容・方法に関する措置(関与・介入)が教育基本法の「不当な支配」に該当するかは,①当該措置が普通教育の目的である,子どもの成長の上で必要となる基礎的知識を身につけさせる目的で行われたものか(「許容された目的」の審査基準),②当該措置が上記目的達成のために必要,合理的なものであったか(「必要,合理性」の審査基準)によって判断されるものである。 イ本件都教委通達及び本件対a職務命令が教育基本法16条1項の「不当な支配」に該当しないことについて(ア) 本件都教委通達の目的本件都教委通達は,国旗・国歌に関する条項についていえば,都立学校において学ぶ児童・生徒に国旗・国歌に対する正しい認識をもたせ,それらを尊重する態度を育てるという目的のもと,普通教育において指導すべき国旗・国歌に関する基礎的知識を指導するため,またその余の条項は卒業式・入学式などの学習指導要領に則して適正に実施するために発せられたものであって,まさに学校管理機関としての都教委がその権限を行使する「許容された目的」のもとに発せられているものである。 (イ) 本件都教委通達の内容の必要性及び合理性本件都教委通達(本件都教委実施指針を含む。)の内容は,入学や卒業式,あるいは周年行事などの学校生活の重要な節目において,学校生活に有意義な変化や折り目を付けるために儀式的行事を行い,これによって,児童・生徒が厳粛で清新な気分を味わい,それまでの学校生活を振り返るとともに新しい生活への出発の決意と希望の意識を高められるようにし,あわせて国旗・国歌について学ぶことができるようにするため,それに適した場所的環境や式の進行を定めるものであり,学習指導要領の趣旨に沿って入学式・卒業式などを実施する上で,必要かつ合理的なものである。 せて国旗・国歌について学ぶことができるようにするため,それに適した場所的環境や式の進行を定めるものであり,学習指導要領の趣旨に沿って入学式・卒業式などを実施する上で,必要かつ合理的なものである。 ことに本件で問題となる項目は,①「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が『国歌斉唱』と発声し,起立を促す。」②「式典会場においては,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。」の2項目であるが,これらは,学習指導要領中に,「儀式的行事」として,「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと」が規定され,また「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに, 国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定されていること,儀式的行事における国歌斉唱は起立して行うことが国際儀礼上の常識であって,我が国に限らず通例であり,教員がそれに沿った行動をとるものとしても不合理なものではなく,これらのことからすれば,上記各項目は,いずれも学習指導要領の内容・趣旨に沿ったものであり,地方の実情に即した教育の実現を期待された都教委が,その判断に基づき,管理する学校について,入学式・卒業式などの式典を厳粛かつ清新なものとし,あわせて国旗・国歌の指導をするための方式として必要かつ合理的な範囲を超えたものといえないこと明らかである。 なお,盲・ろう・養護学校においても,障害に応じた配慮を行った上で,国旗・国歌の指導を含む入学式・卒業式などの式典を実施することは,それを行うことが,国民全てが等しく有する教育を受ける権利を守っていく盲・ろう・養護学校の教育の真髄である。本件都教委通達はこのような配慮を禁止・制限するもの 式・卒業式などの式典を実施することは,それを行うことが,国民全てが等しく有する教育を受ける権利を守っていく盲・ろう・養護学校の教育の真髄である。本件都教委通達はこのような配慮を禁止・制限するものでは全くない。本件都教委通達(本件都教委実施指針を含む。)のうち国旗・国歌の指導に係る条項は学習指導要領の趣旨・目的に沿うものであり,その内容は盲・ろう・養護学校にとっても必要,合理的なものである。 (ウ) 都教委の一連の指導等について原告aが都教委の一連の指導等を教育基本法16条1項に違反すると主張する理由は,結局のところ,都教委がその一連の指導等によって各都立学校に対し,その所属教員も含めて本件都教委通達(本件都教委実施指針を含む。)どおりに入学式・卒業式などを実施することを義務付け,これを強制したということにある。 しかしながら,法律論としていえば,都教委は学校管理機関としてその管理する学校に対し,必要な場合には,普通教育の目的を達成するために必要,合理的な限度で,教育の内容・方法についても具体的な命令をすることがで きるのであって,学校が校長,教頭(副校長),一般教員からなる組織体である以上,上記命令が校長の職務命令を通して学校の構成員たる一般教員に特定の事項を命ずることになるものであっても,そのことゆえに教育基本法に違反することになるものではない。 本件都教委通達(本件都教委実施指針を含む。)が普通教育の目的を達成するため必要,合理的なものであることは上記(ア),(イ)で述べたとおりであり,これを都教委の一連の指導等によって校長の職務命令を通して一般教員に義務付けることになっても,それによって都教委の一連の指導等が教育基本法に違反することになるものではない。原告aの都教委の一 あり,これを都教委の一連の指導等によって校長の職務命令を通して一般教員に義務付けることになっても,それによって都教委の一連の指導等が教育基本法に違反することになるものではない。原告aの都教委の一連の指導等を問題とする主張は,そもそも理由がない。 (エ) 本件対a職務命令について原告aは,本件都教委通達及び都教委の一連の指導等が教育基本法16条1項に違反するから,本件対a職務命令は違法であると主張している。しかしながら,本件都教委通達及び都教委の一連の指導等に教育基本法16条1項違反はなく,原告aの主張はその前提を欠くものである。 また,校長は学校教育法上,特別活動としての儀式的行事の実施について各教員に職務命令を発する権限を有しているものであり,原告aの主張を前提としても,本件対a職務命令が手続上違法となるものではない。 ウ本件市教委通達及び本件対b職務命令が教育基本法16条1項の「不当な支配」に該当しないことについて(ア) 本件市教委通達及びα市教委の指導について本件市教委通達は,α市立学校における特別活動としての入学式・卒業式を適正に実施するために,本件都教委通達を参考にして発出されたものである。本件市教委通達は,本件都教委通達と基本的に同内容となっており,上記イ(ア),(イ)の本件都教委通達と同様の理由により,α市教委がその判断に基づき,管理する学校について入学式・卒業式 などの式典を厳粛かつ清新なものとし,あわせて国旗・国歌の指導をするための方法として必要かつ合理的なものであり,教育基本法16条1項に違反するものではない。 また, α市教委の指導も,α市教委教育長が定例校長会において「教職員に対して,このことについては理解を として必要かつ合理的なものであり,教育基本法16条1項に違反するものではない。 また, α市教委の指導も,α市教委教育長が定例校長会において「教職員に対して,このことについては理解を,この通達に沿って理解を徹底的に図っていただきたい」と話しただけであり,教員に対して職務命令を発するようにとの指示もしていない(乙イ14)。 以上からすれば,本件市教委通達及びα市教委の指導は教育基本法16条1項の「不当な支配」に違反する点などない。 (イ) 都教委の指導について原告bは,都教委が α市教委を通じて本件都教委通達を α市立学校にも徹底させたとし,これをもって都教委及びα市教委には教育基本法16条1項違反があると主張している。 しかしながら,都教委はα市教委に対しては地教行法48条1項に基づき「指導・助言・援助」を行ってきただけであり,本件市教委通達もα市教委が自らの判断に基づき発したものであって,原告bの主張には理由がない。 (ウ) 本件対b職務命令について原告bは,本件市教委通達並びに都教委及びα市教委の指導が教育基本法16条1項に違反するから,本件対b職務命令は違法であると主張している。しかしながら,本件市教委通達及び都教委の一連の指導等に教育基本法16条1項違反はなく,原告bの主張はその前提を欠く。 また,校長は学校教育法上,特別活動としての儀式的行事の実施について各教員に職務命令を発する権限を有しているものであり,原告bの主張を前提としても,本件対b職務命令が手続上違法となるものではない。 2 争点(1)ア(イ)(信用失墜行為の有無)について 【原告らの主張】(1) 本件各不起立によって,卒業式等の進行が妨害され ,本件対b職務命令が手続上違法となるものではない。 2 争点(1)ア(イ)(信用失墜行為の有無)について 【原告らの主張】(1) 本件各不起立によって,卒業式等の進行が妨害された事実や,保護者,子どもらから苦情が寄せられたなどの事実はなく,世論調査では,教員に対する日の丸・君が代の強制については,7割以上の都民が反対し,不起立教員への処分については,賛成意見の2倍以上に達する6割の都民が反対している。このように,本件各不起立は,公務員に対する国民の信用を何ら失墜させるものではなく,日の丸・君が代の強制に対する国民の不信感,拒否反応に根ざした行為である。 (2) 本件各不起立それ自体が信用失墜行為ではなく,本件各職務命令に違反することが信用失墜行為にあたるというのも社会通念に照らして受け入れ難い。公務員は,憲法・法令遵守義務と職務命令への服従義務の双方の義務を負っているのであり,本件各職務命令が違憲,違法なものであれば,これを拒否する行為こそ公務員に対する信用を維持し,名誉を救うことになる。 (3) したがって,本件各不起立は,地公法33条所定の信用失墜行為に該当しない。 【被告の主張】(1) 原告らの行為は,学習指導要領に沿って,教育課程の一つである特別活動たる卒業式を適正に実施するため各校長が発した職務命令に公然と違反し,しかもそれは児童・生徒,保護者その他の学校関係者の面前で行われたものであって,地公法33条違反が成立することは明らかである。 (2) これに対し原告らは,各種世論調査では君が代斉唱時における教員の起立の義務付けや,これに違反した教員に対する懲戒処分については反対意見が多数であるとし,原告らの行為は地公法33条に違反しないと主張している。 しかしながら,そもそも 斉唱時における教員の起立の義務付けや,これに違反した教員に対する懲戒処分については反対意見が多数であるとし,原告らの行為は地公法33条に違反しないと主張している。 しかしながら,そもそも世論調査の結果によって地公法33条違反の成否が左右されるものではないし,原告ら主張の世論調査は,本件各通達及び本件各職務命令がいかなる目的,必要性に基づいて発せられたのか等を具体的に説明するこ となく,これを全く捨象してなされているものであって,これを根拠に地公法33条の不成立をいう原告らの主張には理由がない。 3 争点(1)イ(本件各処分の違法性)について【原告らの主張】(1) 本件各職務命令は,上記1【原告らの主張】のとおり,憲法19条,23条,26条に反し,教育基本法16条1項の「不当な支配」にもあたるもので,それ自体違憲,違法なものであり,学習指導要領に記載された「国旗国歌の斉唱の指導」という内容に照らしても全く不必要なものである。また,手段としても,本件各職務命令により,一律に起立を強要し,本件各不起立に対する累積加重処分,思想の改変を執拗に求める再発防止研修を繰り返すなど,到底目的にそぐわない不必要なものである。 また,一連の本件都教委通達,指導及び本件各職務命令によって,学校では「日の丸・君が代」に対する起立が生徒にも強要されており,それは,生徒の人格的発達を促し,個人の人格の完成を目指す教育を本質的要請とする憲法上の学習権の保障に反するものであり,またそれは,現実に多様で複雑な社会に対応しなければならない子どもの発達を阻害するものであって,その教育上の不利益は甚大なものである。 こうした事情を総合的に評価すれば,本件各職務命令に反したことを理由とした本件各処分は,いずれも,憲法19条,2 子どもの発達を阻害するものであって,その教育上の不利益は甚大なものである。 こうした事情を総合的に評価すれば,本件各職務命令に反したことを理由とした本件各処分は,いずれも,憲法19条,23条,26条に反し,違憲であること,また教育基本法16条1項に反し違法であることは明らかである。 (2) 都教委は,君が代斉唱時の起立は自己の思想及び良心に反すると表明する原告らに対し,本件各校長に本件各職務命令を出させた上で,本件各不起立という防衛的・受動的態度に対して本件各処分をなし,繰り返し同一内容の研修を受けさせて自己の非を認めさせようとし,さらには原告らに対して免職に向けて累積加重処分を繰り返し課しており,この「命令→処分→研修」の「三点セット」に よる一連の制度的対応は,原告ら個人の内心の自由に執拗に踏み込むものであって,違憲である。 【被告の主張】(1) 本件各処分は,原告らが本件各職務命令に違反したからなされたものであり,原告らの内心とは関係がない。 (2) 本件各職務命令は,憲法19条,23条,26条に違反するものではなく,教育基本法16条1項に違反するものでもないことは,上記1【被告の主張】(2)ないし(4)のとおりであり,原告らの主張はその前提を欠いている。 (3) なお,原告らは,職務命令,処分,再発防止研修という三点セットによる一連の制度的対応と称して違憲を主張するが,本件各処分は原告らが本件各校長の本件各職務命令に違反したからなされたものであり,再発防止研修も原告らが校長の職務命令に違反して懲戒処分を受けたことからなされたものであって,原告らの内心とは関係がなく,原告らの主張には理由がない。 4 争点(1)ウ(本件各処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるか)について 懲戒処分を受けたことからなされたものであって,原告らの内心とは関係がなく,原告らの主張には理由がない。 4 争点(1)ウ(本件各処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるか)について【原告らの主張】(1) 本件各処分についてア最高裁の判例等に関する概観からいえることは,第一に,最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決(民集31巻7号1101頁)(以下「最高裁昭和52年12月判決」という。)に依拠した「社会観念」審査を行うことはもはや有効性を失っていること,そして最高裁もこのような審査方法を用いなくなっていること,第二に,懲戒処分における裁量権行使の適法・違法を裁判所が審査するにあたっては,少なくとも,近年の最高裁が示す審査密度に沿うべきだということ,第三に,教育公務員の教育活動に対する懲戒処分の審査については,一般公務員に対する懲戒処分の審査の場合とは異なり,裁判所は,職務命令違反という形式的な根拠事実だけ ではなく違反行為の教育上の支障という実質的な根拠事実をも検討した上で,裁量権行使の適否を判断すべきことである。 イ公務員に対する懲戒処分における裁量権濫用・逸脱の有無については,処分権者の裁量判断の過程・方法に立ち入って厳格な審査をすべきであり,考慮すべき事項及び考慮すべきでない事項の全てについて十分に検討すべきであり,さらに考慮すべき事項の重み付けにまで踏み込んで検討すべきである。本件において考慮すべき事項は,次の①ないし⑮である。 ① 国旗国歌法制定過程における政府見解② 学習指導要領の国旗国歌条項は,「起立」を指示するものではないこと③ 本件各職務命令に必要性合理性が認められないこと④ 思想及び良心の自由との関係で考慮すべきこと⑤ 教育公務員の教育活動に関し 指導要領の国旗国歌条項は,「起立」を指示するものではないこと③ 本件各職務命令に必要性合理性が認められないこと④ 思想及び良心の自由との関係で考慮すべきこと⑤ 教育公務員の教育活動に関しては,処分権の発動は抑制的であるべきこと⑥ 意見の分かれる問題に関する教育活動に対する処分であること⑦ 原告らの職務命令への不服従が教育上の真摯な動機に基づくこと⑧ 原告らの職務命令への不服従は教育者としての信念と長年にわたる教育実践と不可分一体のものであること⑨ 不起立が学校行事に支障を生じさせていないこと⑩ 不起立の繰り返しを考慮して加重処分すべきでないこと⑪ 本件各処分(停職処分)が教育現場や教育上の関係に悪影響を与えること⑫ 他の処分事例と比較して本件各処分が重きに失すること⑬ 原告bに対する本件対b職務命令が狙い撃ちであること⑭ 原告bに対する本件b停職処分が,異校種間異動と一体のものであること ⑮ 本件各処分がそれ自体として重すぎて不当であることウ上記イ①,②は前提となる事実である。国旗国歌法制定の過程で政府高官が繰り返し強制しないと述べており,また,学習指導要領には国旗国歌について指導するものとするとは書かれているが,国旗に正対して国歌を斉唱せよとは書かれておらず,原告らが不起立により処分をすることは許されないと考えるのも理由があるという事情を根拠付けるものである。 上記イ③は,既に繰り返し憲法19条違反,教育の自由の侵害として論じているところであるが,裁量権濫用該当性においてもあらためて考慮すべき事項である。 上記イ④は,憲法19条が保障する思想及び良心の自由(優越的法益)との関係において処分権濫用の有無の観点から検討すべき事項である。 上記イ⑤,⑥は,本件が教員の教育活動をめぐる懲 べき事項である。 上記イ④は,憲法19条が保障する思想及び良心の自由(優越的法益)との関係において処分権濫用の有無の観点から検討すべき事項である。 上記イ⑤,⑥は,本件が教員の教育活動をめぐる懲戒処分であるという特殊性に関するものである。教育とは何かという根本的な問いかけに対する深い理解が必要である。儀礼として有無を言わさず教え込むことが必要なのか,それが果たして教育といえるのか,被告は「儀式的行事」,「普通教育における基礎的知識」だから児童生徒にあれこれ考えさせる必要はないというが果たしてそうなのかを十分に検討する必要がある。 上記イ⑦,⑧は,最も重要な考慮事項である。原告らが何度処分を受けても起立斉唱することができないのは,それが原告らの37年有余にわたる教育者としての信念とそれに基づいた教育実践と分かち難く結び付いたものとしてあるからである。被告は原告らが何度も処分を受けているにもかかわらず不起立を繰り返すのであるから累積加重するのは当然である旨主張するが,原告らの教育実践の内容を再論し不起立がそれらの教育実践の必然的な帰結であること,その意味で真摯な動機に基づいたやむにやまれぬものである。 上記イ⑨は,本件各職務命令違反が形式的なものにとどまり実質的な支 障や損害を生じていないことを明らかにするものである。被告は,「児童生徒の学習権を侵害した」,「出席者に不快感や嫌悪感を抱かせた」などというが,原告らの不起立を見た児童生徒がそれをどのように受け止めたか,出席者がどう感じたかについては,被告(東京都,都教委)によっても何らの立証もなされておらず,きわめて抽象的な推論にすぎない。 上記イ⑩については,被告が重要な考慮事項として取り上げたものである。要するに何度も繰り返しているのだから累積加重もやむを得ないという極め の立証もなされておらず,きわめて抽象的な推論にすぎない。 上記イ⑩については,被告が重要な考慮事項として取り上げたものである。要するに何度も繰り返しているのだから累積加重もやむを得ないという極めて単純な思考である。しかし,原告bの過去の処分は上記イ⑥,⑦で述べたとおり全て教育活動に関するものであり,「自己の個人的利益や快楽の実現を目的としたものでも,職務怠慢や注意義務違反によるものでもなく,破廉恥行為や犯罪行為でもない」ものであり,いずれも教育者として真摯な動機によるものである。原告aについては全て不起立による処分である。したがって,繰り返すから累積加重するというのは原告らに教育者としての信念を放棄しろと迫っていることと同じであり,原告らにおいてどうしても受け入れることができないのである。 上記イ⑪は,上記イ④,⑤に関連して,教育が児童生徒及び保護者との人間的交流,信頼関係の上に成立するものであり,停職処分はその関係を破壊する教育者にとって致命的とも言える処分であることを十分に検討すべきである。 上記イ⑫について,被告は,事案が異なるので比較できないなどと反論するが,体罰やセクハラなど教育活動に関連して発生している非違行為(程度によっては刑事犯罪を構成する)であり具体的に被害者が存在する事案に対する処分と,不起立それ自体を非違行為として処分することはできずあくまで職務命令違反という形式でしか処分できず,児童生徒がどう受け止めたかもなんら立証されていない本件のような事案に対する処分とで,後者を重く処分することに本当に合理性があるのかは重要な考慮要素であ る。 上記イ⑬は,本件各通達に基づいた本件対b職務命令が,原告bを狙い撃ちにした違法不当なものである。 上記イ⑭は,原告bに対する本件b停職処分が異校種間異動と一体のも な考慮要素であ る。 上記イ⑬は,本件各通達に基づいた本件対b職務命令が,原告bを狙い撃ちにした違法不当なものである。 上記イ⑭は,原告bに対する本件b停職処分が異校種間異動と一体のものであるということである。 上記イ⑮は,停職処分がそれ自体として重すぎて違法不当であることである。 以上のとおり,上記イ①ないし⑮の各考慮事項について,それぞれの重み付けをも十分念頭において検討すべきである。 (2) 本件b停職処分についてア本件b停職処分は,累積加重処分によるものであり,最高裁平成24年1月判決は,行政法的観点からみれば,結局のところ最小限審査方式に後退しており,その審査方法に重大な内的矛盾があり,その内的矛盾は,原告bの過去の処分歴の評価において最も明白に現れている。また,教育法的観点からみても,本件各不起立が学校で教員によって,子どもに一定の価値観を強制してはならないという教育上の信念に基づき行われていることに鑑み,裁量権の判断にも教育法上の「教育の自由」の観点からの再検討が必要である。これらの観点からすれば,本件b停職処分が裁量権の範囲の逸脱又は濫用であり違法である。 イ原告bの過去の処分において考慮すべき事項(ア) 平成6年4月25日付け減給処分平成6年4月25日付け減給処分の対象となった平成5年度卒業式の事件は,国旗国歌法の制定以前の事件であり,本件都教委通達も存在せず,本件b停職処分の対象となった平成19年当時とは全く時代状況が異なっている。その「非違行為」としての性質も,平成19年当時とは全く異なる評価を受けるべきである。また当時のg中学校においては, 職員会議によって学校内の意思決定がなされており,その職員会議の決定を無視して日の丸を揚げようとする 質も,平成19年当時とは全く異なる評価を受けるべきである。また当時のg中学校においては, 職員会議によって学校内の意思決定がなされており,その職員会議の決定を無視して日の丸を揚げようとする校長その他の行為に対しては,職員や生徒らの強い反対があった。当時,日の丸を下ろす事件も相次いでいたが,これに対しては戒告や訓告などの処分にとどまるものであり,重大な非違行為であるとは評価されていなかった。このような中で,平成5年度卒業式で原告bが日の丸を下ろしたことを,重大な非違行為と評価し,現在の累積加重処分の理由とし,本件b停職処分を正当化することは,考慮すべき事項を考慮せず,考慮すべきでない事項を考慮したもので,裁量権の範囲を逸脱し違法である。 (イ) 平成17年12月1日付け減給処分卒業式等における不起立に対して懲戒処分を行った上に,さらに再発防止研修を命じること自体が不当なのであって,原告bが当該研修に批判的態度をとったことはやむを得ない。 処分理由には,ゼッケンの記載内容及びゼッケンを「着用し続けた」経緯について重大な事実誤認が存在しており,平成17年12月1日付け懲戒処分は誤った事実に対する処分であるから違法である。 再発防止研修は,原告bにとって思想・良心の「転向」を迫る拷問に他ならない。 原告bが行ったゼッケン着用は,処分という不当な恫喝の中で,せめてもの自らの意見表明権の行使としてなされたのであり,原告bのゼッケン着用行為に対して懲戒処分を行い,さらに再発防止研修を課すことは,原告bの内心の自由だけでなく表現の自由(憲法21条)を侵害している。 ゼッケン着用が懲戒処分及びその後の再発防止研修の対象になることについて事前の告知は全く存在せず,にも すことは,原告bの内心の自由だけでなく表現の自由(憲法21条)を侵害している。 ゼッケン着用が懲戒処分及びその後の再発防止研修の対象になることについて事前の告知は全く存在せず,にもかかわらず,突然,事後的に不利益処分とすることは,手続的正義に反し不当である。 同一の行為について平成16年度に着用した者と平成17年度に着用した者との間で合理的な説明もなく不公平な取扱がされており,しかも前年度と異なり不公平な取扱いをする旨の事前告知もなかったのであるから,再発防止研修参加者の予測可能性を奪ったものであって不当である。 再発防止研修は,研修とは名ばかりでその意思に反して自己の非を認めさせ反省を迫る懲罰の実質を有するものである。既にゼッケン着用行為及び質問行為に対しては懲戒処分がなされており,それに重ねてさらに再発防止研修を課すことは,同一行為につき二度の処分をなすに等しいものと言わざるを得ない。 上記の諸点を考慮するならば,再発防止研修に対して原告bがゼッケンを着用するなどして批判的態度で臨んだことはまことにやむを得ないというべきであり,本件の累積加重処分の理由とすることは許されない。 (ウ) 平成7年11月16日付け文書訓告,平成11年8月30日文書訓告及び平成14年3月27日付け減給処分教室内での授業内容をめぐる事案ないしそれに付随する事案であって,卒業式における不起立とは全く事案の性格が異なるし,文書訓告は懲戒処分ですらない。これらを,本件の累積加重処分の理由とすることは許されない。 (エ) 平成17年3月31日付け減給処分,平成17年5月27日付け停職処分,平成18年3月31日付け停職処分本件と同種の卒業式・入学式におけ 理由とすることは許されない。 (エ) 平成17年3月31日付け減給処分,平成17年5月27日付け停職処分,平成18年3月31日付け停職処分本件と同種の卒業式・入学式における不起立の事案であり,最高裁平成24年1月判決の趣旨からしてこれらの処分を理由に累積加重することは許されない。 (3) 本件各停職処分の深刻重大性ア原告aについて 原告aに対する前件の懲戒処分(停職1月)については,すでに最高裁平成24年1月判決によって取り消されている(甲474)。前件処分後も,上記最高裁判例が判示した「過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から,新たに停職処分を加重することの相当性を基礎付ける具体的な事情」はなく,今回の原告a停職処分(停職3月)に至っているから,都教委が,憲法で保障された思想及び良心の自由を間接的に制約する面を有することを認識しながら,累積加重処分の相当性を基礎付ける具体的事情がないのに,機械的に停職処分を選択したものであり,裁量権の範囲を逸脱した違法性は明らかである。 イ原告bについて(ア) 原告bについて,前件の懲戒処分(停職3月)後,何ら新たな処分歴はなく,今回の不起立の前後における態度等において特に処分の加重を根拠付けるべき事情も一切なく,「新たに停職処分を加重することの相当性を基礎付ける具体的な事情」はない。すなわち,原告bにおいては,前回から今回にかけては,不起立という事情しか存在せず,不起立前後における態度等も他の戒告の被処分者と変わりがなく,新たに停職処分を加重することの相当性を基礎付ける具体的な事情はない。仮に一度加重 前回から今回にかけては,不起立という事情しか存在せず,不起立前後における態度等も他の戒告の被処分者と変わりがなく,新たに停職処分を加重することの相当性を基礎付ける具体的な事情はない。仮に一度加重処分を受ければ,その後は,同じく不起立のみでも,累積加重処分が認められてしまうことになれば,不起立のみでは原則戒告である以上,加重を基礎付ける事情は過去の処分歴等ということになる。そうすると,不起立のみの場合に加重処分をした場合には,実質的には過去の処分歴を理由として加重したことになり,二重処分となりかねない。 (イ) 停職処分6月は,半年間給与の支払が一切ないという極めて過酷な処分であること,子どもや親との信頼関係を破壊し教育を破壊すること, あとは免職処分しかないという心理的な威嚇効果を有する処分であること,被処分者の名誉信用を最大限破壊するものである。 (ウ) そもそも都教委は,体罰や他の職務命令違反の事例においては,機械的な加重処分を採用しておらず,原告bにだけ機械的に累積加重処分を適用することは差別的な取扱であり,また,他の停職処分6月の事例と比較しても著しく過酷な処分であって比例原則に違反する。 (エ) 以上のとおり,都教委は,停職処分6月の具体的影響・効果等を十分に検討しないまま漫然と機械的に累積加重して原告b停職処分(停職6月)を選択したものであるから,裁量権の範囲を逸脱した違法性は明らかである。 【被告の主張】(1) はじめに公務員に対する懲戒処分は,公務員としてふさわしくない非行がある場合に,その責任を確認し,公務員関係の秩序を維持するために科される制裁であるが,懲戒権者は,「懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等の てふさわしくない非行がある場合に,その責任を確認し,公務員関係の秩序を維持するために科される制裁であるが,懲戒権者は,「懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の右行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情」を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか,を決定することができるものである(最高裁昭和52年12月判決,最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決(民集31巻7号1225頁)。 (2) 本件各処分の理由となった本件各不起立が重大な非違行為であること本件各不起立は,① 公教育を担う教育公務員が,教育課程の一つである特別活動としての卒業式の場において,公教育の根幹である学習指導要領に沿って教育課程を適正に実施するため発せられた校長の重要な職務命令に違反し,不起立という国 旗・国歌の指導を妨げる行為を意識的に行うという重大な非違行為であり,② しかもその行為は児童・生徒,保護者その他学校関係者の面前で公然と行われたものであり,③ 原告aにあっては,平成11年10月19日付「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通達)」(乙イ28の1,28の2)及び本件都教委通達以降,校長が繰り返し指導し,また原告bにあっては,勤務する市立学校に係る本件市教委通達をはじめとした各市教委通達以降,校長が繰り返し指導し,またいずれも原告らが自ら主張するとおり都教委の再発防止研修も受けながら行われたものであり,④ 教育公務員にとっては,職務命令遵守義務は重要な行為規範であるにもかかわらず,これに違反したものであり,⑤ 原告らは 自ら主張するとおり都教委の再発防止研修も受けながら行われたものであり,④ 教育公務員にとっては,職務命令遵守義務は重要な行為規範であるにもかかわらず,これに違反したものであり,⑤ 原告らはいずれも,本件各処分の理由となった本件各職務命令違反と同種の非違行為を繰り返し行って複数回の懲戒処分を受け,原告bにあっては勤務する市立学校に係る本件市教委通達をはじめとした各市教委通達前から多数の非違行為を行って懲戒処分等を受け,再発防止研修に関しても懲戒処分を受けたというものであり,重大な非違行為であることは明らかである。 (3) 原告bについてア原告bは,昭和46年4月から昭和51年3月までのε区立n中学校(以下「n中学校」という。)勤務時代から,家庭科の3年3学期の授業において,数時間を費やして,「男女共生社会をめざして」のテーマで授業を行っていたが(乙イ94・37,38頁),これは当時の学習指導要領の家庭科の指導項目として規定されているものではなかった(乙イ81の1ないし81の4。なお,原告bは同様の授業をi中学校勤務当時まで行っていた。乙イ82の1・25頁,乙イ82の2・11頁)。 そして,n中学校の校長は,再三にわたって原告bの生徒指導について 注意・指導したが(乙イ94・18頁),原告bは自らの正当性を主張して校長の指導に従わなかった(乙イ83・29頁)。 イ原告bは,平成2年4月から平成12年3月までg中学校に勤務したが,その間,以下の行為を行った。 (ア) 原告bがg中学校に着任した平成2年4月には,学習指導要領によって,入学式・卒業式などにおいては国旗を掲揚し,国歌を斉唱するものとされており,同中学校では,平成2年4月の入学式において国旗を掲揚し,国歌を斉唱することになっていたにもかかわらず(乙 導要領によって,入学式・卒業式などにおいては国旗を掲揚し,国歌を斉唱するものとされており,同中学校では,平成2年4月の入学式において国旗を掲揚し,国歌を斉唱することになっていたにもかかわらず(乙イ94・51頁),原告bは学習指導要領を含む法令には必ずしも拘束されないとの独自の見解に基づき,これに反対した(乙イ83・32,33頁)。 (イ) 原告bは,g中学校勤務時代からi中学校勤務1年目まで,毎年3月の卒業式をひかえた時期に,日の丸・君が代に関する特設授業を行い,その中で,①日本は,日の丸をやめなければならない(乙イ94・60頁),②日の丸・君が代は日本の国旗・国歌ではない(乙イ94・60頁),③日の丸・君が代を文部省が強制した(乙イ94・60頁),④卒業式に日の丸・君が代はいらない(乙イ94・61頁)と指導し,他方,これとは異なる考えについては校長等の話を聞いてみたりするようにとの話をするのみで(乙イ94・61,62頁),具体的な説明を全くしないという,一方的な内容の授業を行った。 (ウ) 原告bは,平成6年3月のg中学校卒業式において,同校校長が国旗を掲揚することとし,国旗を掲揚しようとするのを実力で妨害し,しかも同校長が掲揚した国旗を実力で引き下ろし,これにより都教委から懲戒処分(減給10分の1・1月)を受けた。 (エ) 原告bは,平成7年3月,校長の日の丸掲揚を横暴と中傷する内容の「○」と題する印刷物を生徒に配布し,読み上げ(乙イ94・88,90頁),これによりβ市教委より訓告の措置を受けた。 (オ) 原告bは,平成11年2月,家庭科の授業において,校長による国旗・国歌の指導が,あたかもh教と同じマインドコントロールされた命令・服従の指導であるとしたプリントを配布し,校長を凶悪な犯罪者と同一視する授業を行い, 1年2月,家庭科の授業において,校長による国旗・国歌の指導が,あたかもh教と同じマインドコントロールされた命令・服従の指導であるとしたプリントを配布し,校長を凶悪な犯罪者と同一視する授業を行い,これにより β 市教委より訓告の措置を受けた。 そして,校長が原告bに対し,①自作プリントは校長に見せて許可を受けること,②家庭科の年間指導計画と単元毎の指導計画を提出すること,③学習指導の指導計画を提出することとの職務命令を発したにもかかわらず(乙イ94・118頁),原告bは校長の職務命令は正当ではないとの一方的な見解に基づき従おうとしなかった(乙イ83・40,41頁)。 ウ原告bは,平成12年4月から平成15年3月までi中学校に勤務したが,その間,以下の行為を行った。 (ア) 原告bは,学習指導要領に基づいた適式の年間指導計画等を作成し,校長の許可を受けることをしなかった(乙イ82の1・46頁,82の2・12頁)。 (イ) 原告bは,教科書をほとんど使用せず,学校教育法21条,40条に違反する授業を行った(乙イ82の1・46頁)。 (ウ) 原告bは,校長の再三にわたる協議会への出席を求める職務命令に違反し(乙イ82の1・44頁),これにより都教委より懲戒処分(減給10分の1・3月)を受けた。 エ原告bは,平成15年4月から平成16年3月までζ市立o中学校(以下「o中学校」という。)に勤務したが,その間,以下の行為を行った。 (ア) 原告bは,平成15年4月の入学式において,o中学校の校長から,職務命令は出されてはいなかったものの,「入学式においては,多数の 来賓,新入生,保護者が出席し,地域・保護者の目があることなので,式の前後及び式中の対応や言動について,指摘を受け,信頼を損なうことのないよう厳正に行うよう。」と 「入学式においては,多数の 来賓,新入生,保護者が出席し,地域・保護者の目があることなので,式の前後及び式中の対応や言動について,指摘を受け,信頼を損なうことのないよう厳正に行うよう。」との指導を受けていたにもかかわらず,国歌斉唱時に起立しなかった(乙イ90)。 そして,校長から,上記不起立について注意・指導されたにもかかわらず,原告bは「聞きおきます。」としか言わず(乙イ90),改めようとする態度を示すことはなかった。 (イ) 原告bは,平成16年3月の卒業式においては,校長から会場の入り口で受付を担当するよう要請されたにもかかわらず,あえて卒業式会場に入り,国歌斉唱時に不起立を行った(甲57)。 原告bが上記行動を行ったのは,「会場にいて不起立の姿を見せたい」と思ったからであり,また「自分で考え,間違いだと思ったことには従わなくていいこともあること」を生徒に伝えるためであった(甲57,乙イ83・46頁)。 なお,平成16年3月の卒業式に際しては,校長からは,「学習指導要領に基づきたんたんと実施していただきたい」との発言があったのみで,国歌斉唱時の起立について職務命令が出されていたとは言えないが,原告bは,国歌斉唱を起立して行うとの校長方針を十分に認識した上で,上記行動に及んだ(乙イ83・47頁)。 オ原告bは,平成16年4月から平成18年3月までj中に勤務したが,平成17年3月の卒業式,同年4月の入学式,平成18年3月の卒業式ではいずれもj中の校長の職務命令に違反して不起立を続け,懲戒処分(減給10分の1・6月,停職1月,停職3月)をそれぞれ受けた。 しかも,懲戒処分(停職1月)を受け,その停職期間中に,原告bは,連日,j中の校門前に「停職出勤」と称して赴き,生徒が通学する場であるにもかかわらず,校長の職務命令 ,停職3月)をそれぞれ受けた。 しかも,懲戒処分(停職1月)を受け,その停職期間中に,原告bは,連日,j中の校門前に「停職出勤」と称して赴き,生徒が通学する場であるにもかかわらず,校長の職務命令を間違っているとするプラカードを掲 げていた(乙イ79・5ないし7頁,80・11ないし14頁,94・182頁)。 その上,原告bは,平成17年7月に実施された再発防止研修を妨害し,これにより懲戒処分(減給10分の1・1月)を受けた。 さらに原告bは,平成18年3月作成の卒業文集に自ら記載しているとおり,同月のj中の卒業式に際し,校長が学習指導要領に基づき適法に決定した国歌斉唱を起立して行うという実施方針を,「学校がしてはいけないこと」とし,その意思表示として不起立をしているのであって(乙イ94・191ないし193頁),教育活動においてかかる行為が許されないことは自明のことである。 カ原告bは,平成18年4月からf中に勤務したが,同校着任時には前任校のj中の卒業式における職務命令違反により懲戒処分(停職3月)を受けていたにもかかわらず,その停職期間中,連日,「停職出勤」と称し,支援者らを伴うなどして,f中,j中などに赴き,「停職3ヶ月処分は不当」である,また,教育課程の一つである特別活動としての卒業式の場において,公教育の根幹である学習指導要領に沿って教育課程を適正に実施するために発せられた校長の重要な職務命令について「私は間違っていると思う」などと,同原告の一方的な意見を記載したプラカードを掲げ,校門前の生徒が通学する場などにおいて,抗議活動を行っていたのである(乙イ94・195頁)。 このような原告bの行為に対しては,保護者や地域住民等から苦情があり,f中のp校長やq副校長は原告bに対してやめるように言ったにもかかわらず,原 議活動を行っていたのである(乙イ94・195頁)。 このような原告bの行為に対しては,保護者や地域住民等から苦情があり,f中のp校長やq副校長は原告bに対してやめるように言ったにもかかわらず,原告bは,苦情を言っているのは「保護者の一部だ」,「こんなことになっているのは都教委が悪い」など言って聞き入れなかった。 さらに,原告bは,停職処分が終了しf中に出勤した後,同校のp校長やq副校長から指示・指導を受けたにもかかわらず,週の指導計画,教育公務員としての職務遂行能力の開発・向上を目的として東京都全体で実施してい る自己申告やキャリアプランについて,それらの趣旨や重要性等も理解せず,提出を拒み続けた。 また,現在,極めて重要な教育課題となっている生徒の学力向上に向けて,f中全校を挙げて取り組むべき授業改善推進プランの策定について,原告bは「作る意義を感じない」などと自己の一方的な見解に基づき協力しなかった。 その上,原告bは,平成19年3月2日,r新聞紙上において,「退職間際の先生なら,処分が加算され,免職を恐れる心配はない。自らの良心に従って起立しなければ,流れは変わる。最後に,現場の教師や子どもらに,それをプレゼントしてもらえればと願っています。」という職務命令違反を呼びかける極めて不適切な発言を行った(乙イ95)。 キ教育公務員は,いうまでもなく,その職務活動を行うに当たっては,学習指導要領を含む法令に従い,また上司の職務上の命令を遵守しなければならないものである。 本件b不起立は,それ自体,学習指導要領に基づく校長の職務命令に違反するものであり,子ども達に法令を含む社会的ルールを指導すべき職責を負う教育公務員としての自覚と責任感を欠くものであるし,それまでも同原告は学習指導要領を無視ないし軽視する職務活動を行い 命令に違反するものであり,子ども達に法令を含む社会的ルールを指導すべき職責を負う教育公務員としての自覚と責任感を欠くものであるし,それまでも同原告は学習指導要領を無視ないし軽視する職務活動を行い,また,自らが正当と考えない限り職務命令にも従わないとの独善的な考えに基づき(乙イ83・44頁),校長の指導,指示,職務命令に違反して懲戒処分等を受けてきたことからすれば,本件b不起立が教育公務員の自覚と責任感の欠如を示すものであることは明らかである。しかも原告bが本件b不起立に至った経過からすれば,本件b不起立を含む一連の職務命令違反行為を学校管理機関たる市教委及び勤務校校長の国旗・国歌指導の適正実施の方針を積極的に否定し,これを職務活動の場において,行動をもって公然と表明し続けたものといわなければならず,かかる行為が公務員関係の 秩序を大きく破壊するものであることは明らかである。 したがって,都教委が本件b停職処分(停職6月)に付したのは当然のことである。 (4) 原告aについて原告aは,日の丸が戦争推進の旗であり,侵略のシンボルであると考え,君が代も基本的人権を踏みにじり,また主権在民の憲法に真っ向から反しているとの考えから,日の丸・君が代に反対する個人的考えを持っていたものである(乙イ84・32頁)。もとより,原告aが個人としてかかる思想,信条を有することは全くの自由であるが,かかる個人としての思想,信条に基づいて教育活動をすることは許されない(甲187・35頁)。しかるに,原告aは,本件都教委通達前においても,入学式・卒業式に際して,日の丸・君が代にかかわる準備作業には一切協力しないとの行動をとり(乙イ84・35,36頁),あまつさえ,東京都立s学校勤務時代には,意図的に,国歌斉唱時に起立する生徒だけに起 式・卒業式に際して,日の丸・君が代にかかわる準備作業には一切協力しないとの行動をとり(乙イ84・35,36頁),あまつさえ,東京都立s学校勤務時代には,意図的に,国歌斉唱時に起立する生徒だけに起立の理由をことさら聞いて,当該生徒に,日の丸・君が代の問題点を指導し(乙イ84・22,23,41,42頁),またd養護学校勤務時代までは,日の丸・君が代に関する授業を行って,その中で,日の丸・君が代について,これを肯定する考えを一切紹介することなく,日の丸・君が代を否定するだけの一方的な授業を行った上(乙イ84・39,40頁),d養護学校の平成16年3月の同校小・中学部卒業式,同年4月の同校入学式,平成17年3月の同校卒業式,e養護学校の平成18年1月の同校「創立30周年記念式典」(周年行事)において,校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に不起立をしているのであり,本件においても同様に卒業式において本件a不起立を行ったのである。原告aのかかる一連の行動は子どもの学習権を保障すべき職責を負う教育公務員としての自覚と責任感の欠如を明確に示すものである。 また,原告aは,「強制されない・強制しない」,「命令しない・命令さ れない」との思想,信条を有しているというのであるが,原告aの考えは,要するに校長から職務命令が出されても自らがその命令内容に納得しない限り,拒否するというものであり,かかる考えに基づいてd養護学校において校長の職務命令に違反して不起立をし,e養護学校の周年行事においても同様だったのである(乙イ84・43,44頁)。 教育公務員たる者としては,いうまでもなく,その職務活動を行うに当たっては上司の職務上の命令を遵守しなければならないものであって,自らが納得するものではない限り従わないなどとの行動は法令上許されないことはもとよ 者としては,いうまでもなく,その職務活動を行うに当たっては上司の職務上の命令を遵守しなければならないものであって,自らが納得するものではない限り従わないなどとの行動は法令上許されないことはもとより,そもそも子どもらに法令を含む社会的ルールを指導すべき職責を負う教育公務員としての自覚と責任感の欠如を示すものである。原告aは,上記のとおり,入学式・卒業式さらには周年行事において子どもの学習権を保障すべき職責に反して不起立をし,しかも自己が納得しない限り校長の職務命令には従わないとの独善的な考えに基づき,校長の職務命令に違反し続けたのであり,公務員関係の秩序維持の上で都教委として到底看過することができるものではないのは当然のことである。 しかも,原告aについても本件a不起立に至る経過からすれば,本件a不起立を含む一連の職務命令違反行為は学校管理機関たる都教委及び勤務校校長の国旗・国歌指導の適正実施の方針を積極的に否定し,これを職務活動の場において,行動をもって公然と表明し続けたものといわなければならず,かかる行為が公務員関係の秩序を大きく破壊するものであることは明らかである。 したがって,都教委が本件a停職処分(停職3月)に付したのは当然である。 5 争点(1)エ(適正手続違反が認められるか)について【原告らの主張】(1) 告知・聴聞の機会の要否等 ア行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,程度,緊急性等を総合考慮して決定されるべきであるところ,本件各処分により制限される権利利益は甚大である一方,本件各不起立は,卒業式等の円滑な遂行を阻害する態様のものではなく,既に終了した卒業式等における行為に対する制裁を決定するに当たり,緊急性は問 ,本件各処分により制限される権利利益は甚大である一方,本件各不起立は,卒業式等の円滑な遂行を阻害する態様のものではなく,既に終了した卒業式等における行為に対する制裁を決定するに当たり,緊急性は問題とならないものであったから,都教委は,原告らに対し,本件各処分をするに当たり,事前の告知,弁解,防御の機会を与えるべきであった。 イ原告らは,本件各処分についての都教委の事情聴取に出頭し,代理人弁護士の立会いを要求したところ,理由なく拒絶され,事情聴取を受ける用意がある旨再三表明しているにもかかわらず,「拒否するんですね」などと一方的に宣告されて,事情聴取を打ち切られており,聴聞,弁解の機会が事実上与えられていない。 (2) 処分決定の拙速性本件各処分については,校長から都教委に対する事故報告,懲戒分限審査会への諮問,答申,都教委での処分の決定までの期間が短時間であり,個別事情や量定の妥当性について慎重な検討がされておらず,あまりに拙速かつ乱暴である。 (3) まとめ以上によると,本件各処分は,処分の内容に影響を及ぼす可能性のある原因,動機,態様についての事実確認も行われないまま決定されたのであり,手続的な公正・適正が確保されておらず,重大な違法があるから,取り消されるべきである。 【被告の主張】(1) 告知聴聞の機会の付与に関する主張について公務員に対する懲戒処分は,免職処分を含めてこれにより制約される利益はあ くまで全体の奉仕者としての公務員の身分に基づく利益であり,一般国民の生命若しくは自由の制限とは質的に異なるものである。 また,憲法31条の保障は,実体的適正と手続的適正の双方を保障するものと解されているが,公務員の懲戒処分にあっては,懲戒事由の法定によ の生命若しくは自由の制限とは質的に異なるものである。 また,憲法31条の保障は,実体的適正と手続的適正の双方を保障するものと解されているが,公務員の懲戒処分にあっては,懲戒事由の法定によって実体的適正は十分に確保されている。また手続的適正についても,懲戒処分に当たっては,処分権者の判断の慎重,適正を担保し,その恣意を抑制するため処分事由説明書の交付を法定し(国家公務員法89条1項,2項,地公法49条1項,2項),この点についても相当の確保がなされているものである。 これらのことを考えれば,公務員の懲戒処分に当たって事前の告知・聴聞の機会を与えなくとも,憲法31条の法意に反することはない。 しかも,本件にあっては,原告ら主張からも明らかなとおり,都教委が事情聴取しようとしたところ,原告らにおいて,代理人弁護士の立会いがなければ事情聴取に応じないとしてこれを拒否したものである。 事情聴取において弁護士の立会いを都教委が認めなければならない理由は何らないのであって,告知・弁解の手続がなされなかったから違法であるとする原告らの主張に理由がないことは一層明らかである。 (2) 手続が拙速であるとの主張について本件各処分は,教職員懲戒分限審査委員会の審議を経た上で,また,教育委員会の議を経るという慎重な手続を経ているのであって,本件各処分に至る手続が拙速であるとの原告らの主張には理由がない。 6 争点(2)(国賠法に基づく損害賠償請求の可否)について【原告らの主張】(1) 原告aについてア原告aの前回処分(停職処分1月)にかかる損害賠償請求については,最高裁平成24年1月判決は,当該原判決のうちaの損害賠償請求に係る部分を破棄し,「都教委の過失の有無,慰謝すべき損害の有無等について 更 処分(停職処分1月)にかかる損害賠償請求については,最高裁平成24年1月判決は,当該原判決のうちaの損害賠償請求に係る部分を破棄し,「都教委の過失の有無,慰謝すべき損害の有無等について 更に審理を尽くさせるため」,同部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻した。そして,東京高等裁判所は,平成24年11月7日,下記(ア)(イ)の理由により,原告aの損害賠償請求として30万円を認容し(甲511),同差戻審高裁判決は,最高裁判所が,東京都の上告受理申立を不受理としたことによって確定している。原告aに対する今回の処分についても事情は全く変わりが無く,上記差戻審判決の理は,本件にも当然に該当するものであり,原告aの損害賠償請求は速やかに認められなければならない。 (ア) 国賠法上の違法性原告aに対する停職処分は違法であるところ,この違法は,不起立行為の性質,実質的影響,停職処分に対する不利益に対する考慮が尽くされていないという意味で職務上通常尽くすべき注意義務に違反しているというべきであり,国賠法上も違法である。 (イ) 都教委の過失都教委は,機械的,一律的に加重して処分を行うべきではなく,相当慎重に処分の内容を検討すべきであること,不起立行為の結果,原告aの養護学校運営に具体的にいかなる影響を与えたかについても考慮すべきであることなど,原告aに対する処分をするに当たって当然に考慮すべき事項を認識し得る契機は十分にあったのであるから,これらを認識しなかったことには過失がある。 イそして,原告aは,本件における機械的で非道な累積加重処分の適用により,平成17年度から平成21年度まで連続5年にわたって減給及び停職処分を受け続け,総額1522万7659円の賃金が支払われず,さらに て,原告aは,本件における機械的で非道な累積加重処分の適用により,平成17年度から平成21年度まで連続5年にわたって減給及び停職処分を受け続け,総額1522万7659円の賃金が支払われず,さらに退職金と年金も減額されており,仮にこれらが処分取消しによって事後的に支払われても,その減給金額の巨額さからすれば,原告aに与えた将来の不安をさかのぼって除去することはできない。 そして,原告aの給与上の不利益にとどまらない損害の存在や,原告a が営んできた教育活動を「停職」によって分断し,子どもや親との信頼関係を破壊し,「停職」後の職場復帰の困難さなど職務上の不利益を被ってきたこと,加重処分による違法な退職強要を事実上迫られてきたこと,本件a停職処分の有する継続的・持続的な心理的作用―特に心理的侵襲作用の過酷さ・非道さ,さらには,思想及び良心の自由を間接的に制約する性質を有すること等本件に現れた一切の事情を考慮すれば,原告aの苦痛を慰謝するには,少なくとも300万円をくだらない。 (2) 原告bについてア原告bについても,上記のとおり,都教委は,処分内容との権衡を具体的に勘案しておらず,本件b不起立のみの本件において過去の処分歴等だけでは,本件b停職処分(停職6月)による不利益の内容との権衡を勘案してもなお,規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものではないから,裁量権の範囲を逸脱した違法な処分というほかない。そして,この違法は,本件b停職処分を取り消すべき違法であるのみならず,不起立行為の性質,実質的影響,本件b停職処分の不利益に対する考慮が尽くされていないという意味で職務上通常尽くすべき注意義務に違反しているというべきであり,国賠法上も違法である。 イ原告bは,本件における機械的で非道な累積加重処分の適用によ 不利益に対する考慮が尽くされていないという意味で職務上通常尽くすべき注意義務に違反しているというべきであり,国賠法上も違法である。 イ原告bは,本件における機械的で非道な累積加重処分の適用により,平成17年度から平成21年度まで連続5年にわたって減給及び停職処分を受け続け,総額約2300万円の賃金が支払われず,さらに退職金と年金も減額されており,仮にこれらが処分取り消しによって事後的に支払われても,その減給金額の巨額さからすれば,原告bに与えた将来の不安をさかのぼって除去することはできない。そして,給与上の不利益にとどまらない損害の存在や,原告bが営んできた教育活動を「停職」によって分断し,子どもや親との信頼関係を破壊し,「停職」後の職場復帰の困難さなど職務上の不利益を被ってきたこと,加重処分による違法な退職強要を事 実上迫られてきたこと,本件b停職処分の有する継続的・持続的な心理的作用―特に心理的侵襲作用の過酷さ・非道さ,さらには,思想及び良心の自由を間接的に制約する性質を有すること等本件に現れた一切の事情を考慮すれば,原告bの苦痛を慰謝するには,少なくとも300万円をくだらない。 【被告の主張】(1) 国賠法上の違法性及び過失についてア国賠法1条所定の違法が認められるためには,まずもって「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えた」ことが必要であるし(最高裁昭和60年11月21日判決(民集39巻7号1512頁)),また,これが認められても,行政処分の違法を理由とする場合には,当該処分が効力発生要件適合性を欠くだけでは足らず,当該公務員が「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすこと」をしなかったと認め得るような事情があった められても,行政処分の違法を理由とする場合には,当該処分が効力発生要件適合性を欠くだけでは足らず,当該公務員が「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすこと」をしなかったと認め得るような事情があったことを必要とするものである(最高裁昭和53年10月20日判決(民集32巻7号1367頁),最高裁昭和57年3月12日判決(民集36巻3号329頁),最高裁平成元年6月29日判決(民集43巻6号664頁),最高裁平成5年3月11日判決(民集47巻4号2863頁))。 イ国賠法1条による損害賠償責任の要件たる公務員の故意・過失については,法令の解釈につき異なる見解が対立して疑義を生じており,拠るべき明確な判例学説がなく,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,公務員がその一方の解釈に立脚して公務を執行したときは,のちにその執行が違法と判断されたからといって,直ちに当該公務員に過失があったとすることはできないものである(最高裁昭和46年6月24日判決(民集25巻4号574頁),最高裁昭和49年12月12日判決(民集28巻10号2028頁))。 原告らの場合,原告らに職務命令違反があり,懲戒事由該当性が認められること自体は明らかであって,都教委が原告らを懲戒処分に付したこと自体には,何ら職務上通常尽くすべき注意義務違反も過失もなかったことは明らかである。 ウ処分量定についても,本件各不起立に対する懲戒処分の処分量定において,懲戒権者たる都教委がこれら過去の非違行為及び処分歴を考慮すること自体については,既に最高裁昭和52年判決が「懲戒権者は,・・・当該公務員の右行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴・・・等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合 ついては,既に最高裁昭和52年判決が「懲戒権者は,・・・当該公務員の右行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴・・・等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか,を決定することができる」と判示しており,何ら違法ではない。 もっとも,最高裁平成24年1月判決は,卒業式等の式典における不起立行為については,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものであるとの特殊性があるとし,この点から不起立行為に対する懲戒において停職処分を選択するには,過去の1,2年度に数回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分の処分歴があることのみをもってただちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴が停職処分の不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要すると判示している。 しかしながら,かかる判示は,最高裁平成24年1月判決によってはじめて示された新判断であって,最高裁昭和52年12月判決では懲戒処分の処分量定において懲戒権者は過去の処分歴等を考慮することができ,また懲戒処分は社会観念上著しく不合理でない限り,裁量権の範囲内の措置として適法であるとされているのである。 以上からすれば,都教委が本件a不起立に対し,本件a停職処分に付することを裁量権の範囲内の措置として適法と判断したことはやむを得ないことであっ て,職務上通常尽くすべき注意義務違反も過失もない。ましてや原告bについて都教委に職務上尽くすべき注意義務違反などないことは明らかである。 (2) 慰謝すべき損害の不 を得ないことであっ て,職務上通常尽くすべき注意義務違反も過失もない。ましてや原告bについて都教委に職務上尽くすべき注意義務違反などないことは明らかである。 (2) 慰謝すべき損害の不存在本件各処分は,停職処分であり,原告らは経済的不利益を受けることになる。 しかし,原告らに対する本件各処分が違法として取り消されれば,取消判決の効力によって上記経済的不利益は遡って回復される(具体的には,停職期間中に職員の懲戒に関する条例(昭和26年東京都条例第84号)4条3項に基づき支給されなかった給与(給料及び諸手当)については全て回復措置が図られるとともに,本件各処分によって昇給,退職手当や退職共済年金に影響がある場合にはそれらも是正される。)。 原告らにおいては,本件各処分を受けたこと自体による精神的苦痛を主張するかもしれないが,公務員には就労請求権は認められていないのであって,本件各処分を受けたこと自体による精神的苦痛は処分自体が取り消されれば回復するものである。 したがって,原告らについては慰謝すべき損害は存在しない。 (3) 賠償額の減額原告aに対して本件a停職処分がなされたのは,いうまでもなく原告aが校長の職務命令に違反して不起立行為を行ったからである。 したがって,仮に本件a停職処分につき被告に賠償責任が認められるとしても,原告aにも帰責原因があり,被告の賠償額については相当の減額がなされるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実上記第2の2の前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件各通達発出までの経過 ア本件都教委通達(ア) 平成元年度以前,小学校,中学校及び高 事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件各通達発出までの経過 ア本件都教委通達(ア) 平成元年度以前,小学校,中学校及び高等学校の学習指導要領では,特別活動における国旗・国歌の指導について,「国民の祝日などにおいて儀式などを行う場合には,生徒に対してこれらの祝日などの意義を理解させるとともに,国旗を掲揚し,国歌を斉唱させることが望ましいこと。」とされていた(乙イ15の1ないし15の3)。また,盲・ろう・養護学校の小学部・中学部及び高等部の学習指導要領においても,特別活動については,小学校,中学校及び高等学校の各学習指導要領に示すものに準ずるものと規定されていた(乙イ15の4)。 (イ) 平成元年3月15日,小学校,中学校及び高等学校について改訂された学習指導要領が告示され,特別活動において,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」(国旗国歌条項)と定められた(乙イ18の1ないし18の3)。また,平成元年10月24日,盲・ろう・養護学校の小学部・中学部及び高等部の学習指導要領が改訂され,特別活動については,小学校,中学校及び高等学校の各学習指導要領に示すものに準ずるものと規定された(乙イ18の4)。 (ウ) 都教委は,学習指導要領の改訂を踏まえ,都立学校の責任者である校長に対し,国旗掲揚及び国歌斉唱につき校長の責任において実施することを求めた(乙イ20,21)。ところが,国旗掲揚・国歌斉唱を実施しようとする学校では,掲揚された国旗を教員が引きずり下ろすなどの事故があった。また,新たに国旗掲揚を行った学校では,その後の校務運営に混乱が生じた例もあった。そのため,多くの校長 ・国歌斉唱を実施しようとする学校では,掲揚された国旗を教員が引きずり下ろすなどの事故があった。また,新たに国旗掲揚を行った学校では,その後の校務運営に混乱が生じた例もあった。そのため,多くの校長らは,他の教育活動における生徒への指導を適正に行うことに鑑み,校内の混乱を避けるために,国旗・国歌の問題をなかなか解決することはできなかった(乙イ22)。 (エ) 都教育庁指導部長は,都立高等学校長に対して,平成10年11月20日付け「入学式及び卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導の徹底について(通知)」(乙イ25)により,実施状況をみると依然として指導が適切に行われていない学校があるので,卒業式及び入学式の準備及び実施に当たり,学習指導要領及び本通知の別紙に定める「実施指針」(国旗の掲揚について場所や時間を具体的に示し,国家斉唱について式次第への記載と司会者の「国歌斉唱」の発声を明記した。)に基づき,国旗掲揚及び国歌斉唱に関する指導が適切に行われるように改めて徹底するよう通知した。 (オ) そして,平成11年8月13日には国旗国歌法が公布,施行され,都教委教育長は,都立高等学校長及び都立盲・ろう・養護学校長に対して,平成11年10月19日付け「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通達)」(乙イ28の1,28の2)(以下「平成11年通達」という。)により,入学式・卒業式等の実施に当たり,学習指導要領及び上記平成10年11月20日付けの「実施指針」に基づき実施するよう通達を発出した。 (カ) 平成11年通達により,都立学校卒業式・入学式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率は,平成12年度以降,形式的には100%となった(乙イ31)。しかし,当時の実施態様は,国旗掲揚に関して (カ) 平成11年通達により,都立学校卒業式・入学式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率は,平成12年度以降,形式的には100%となった(乙イ31)。しかし,当時の実施態様は,国旗掲揚に関しては,人目に付かない場所に掲揚したり,壇上三脚に掲揚したものの,カーテンの陰に隠れるように設置したり,また,いすに座った参列者に見えないように壇上の奥に設置したりする,国歌斉唱については,式次第に明記しないなど,上記(エ)の実施指針で定められた内容どおりに実施されず,また,式典の中で国歌斉唱を行っていても,国歌斉唱時に教員が起立しない,国歌斉唱が終わってから式場に入場する教員がいる,音楽科教員がいて校歌の伴奏はするのに国歌のピアノ伴奏はしないなどの実態 が見られた。 (キ) 都教委は,児童・生徒に国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ,それらを尊重する態度を育てるために,学習指導要領に基づき入学式及び卒業式を適正に実施するよう各学校を指導してきたが,その実施態様には様々な課題があるとして,国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について,より一層の改善・充実を図る必要があるとして,平成15年10月23日付けで本件都教委実施指針を示して本件都教委通達(乙イ34)を発出した。 イ本件市教委通達(ア) 都教委は,上記アのとおり,平成11年通達を都立学校の校長に発した際,各区市町村教委に対しては,平成11年通達の写しを参考として送付していた(乙イ45)。 (イ) 一方, α市教委は α市立小・中学校の校長に対し,校長会において国旗・国歌の指導を実施しており,平成15年5月15日には,「国旗及び国歌にかかわる指導について(通知)」(乙イ11)を発出し,国旗・国歌の指導をα市立小・中学校長に要請した。 (ウ いて国旗・国歌の指導を実施しており,平成15年5月15日には,「国旗及び国歌にかかわる指導について(通知)」(乙イ11)を発出し,国旗・国歌の指導をα市立小・中学校長に要請した。 (ウ) α市教委は,本件都教委通達も参考にしながら,同市教委の判断のもと,平成15年10月29日付けで本件市教委通達(乙イ12)を発出した。これは,α市では国旗掲揚,壇上正面掲示等についてその実施率が小学校で約32%,中学校で約50%であること等(乙イ14)を踏まえたものである。 (2) 本件各処分の経過ア原告aについて(甲542,543,乙イ6)(ア) 本件対a職務命令c養護学校においては平成19年3月19日に平成18年度第26回高等部卒業式が予定されていたものであるが,同校校長t(以下「t校 長」という。)は,上記卒業式において,国歌斉唱を行うこととした。 同月13日午後4時45分頃,原告aは,c養護学校職員室で行われた臨時職員会議において,他の教諭とともに,t校長から,同月19日の同校平成18年度第26回高等部卒業式及び同月22日の同校平成18年度第28回小・中学部卒業式では,式典会場において会場の指定された席で国旗に向かって起立して国歌を斉唱することという職務命令を口頭で受けるとともに,同校u副校長から職務命令書(甲544)を差し出されたが,その受取を拒否した。 同月13日午後5時頃,原告aは,同校校長室でu副校長及び同校v副校長同席の下,t校長から,上記職務命令書を受け取るように言われたが,受取を拒否したため,t校長から再度口頭で上記職務命令書の内容の職務命令を受けた。 同月15日午後4時頃,原告aは,同校校長室でu副校長同席の下,t校長から,上記職務命令書を受 たが,受取を拒否したため,t校長から再度口頭で上記職務命令書の内容の職務命令を受けた。 同月15日午後4時頃,原告aは,同校校長室でu副校長同席の下,t校長から,上記職務命令書を受け取るように言われたが,受取を拒否したため,職務命令書を原告aの机上に置くので,読んでおくように言われた。同日午後4時30分頃,u副校長は,同校職員室において,原告aの机上に上記職務命令書を置いた。 (イ) 原告aの非違行為原告aは,上記(ア)のとおり,t校長から,平成19年3月19日実施のc養護学校平成18年度第26回高等部卒業式においては,国歌斉唱時に「式典会場において,会場の指定された席で国旗に向かって起立して国歌を斉唱すること」との職務命令を受けていたにもかかわらず,平成19年3月19日午前9時35分頃,同校体育館で行われた上記卒業式の国歌斉唱の際,司会の国歌斉唱の発声と同時に着席し,起立しなかった。 (ウ) 本件a停職処分都教委は,本件処分量定の考え方に立って,原告aの過去の処分歴,本件a 不起立の内容等を検討の上,原告aに対し,同月30日,原告aの上記行為は,本件対a職務命令に反する行為であり,地公法32条,33条に違反し,地公法29条1項1ないし3号に該当するとして,停職3月の懲戒処分(本件a停職処分)をした(甲542,543,乙イ178,証人w)。 イ原告bについて(甲1,2,610号事件乙イ10)(ア) 平成18年3月31日付け停職処分後の行為原告bは,平成18年3月31日付け停職処分(停職3月)の処分を受けた後,以下の行為を行った。 a 原告bは,上記懲戒処分(停職3月)の停職期間中,「停職出勤」と称し 行為原告bは,平成18年3月31日付け停職処分(停職3月)の処分を受けた後,以下の行為を行った。 a 原告bは,上記懲戒処分(停職3月)の停職期間中,「停職出勤」と称し,支援者らを伴うなどして,平成18年4月からの勤務校であるf中や前任校であるj中などに赴き,「停職3ヶ月処分は不当」である,また,卒業式に際しての校長の職務命令について「私は間違っていると思う」などの意見を記載したプラカードを掲げ,校門前の生徒が通学する場などにおいて,抗議活動を行った(乙イ94,172・195頁以下,178,証人w)b 原告bは,平成19年3月2日,r新聞紙上において,「退職間際の先生なら,処分が加算され,免職を恐れる心配はない。自らの良心に従って起立しなければ,流れは変わる。最後に,現場の教師や子どもらに,それをプレゼントしてもらえればと願っています。」という職務命令違反を呼びかける旨の発言を行った(乙イ95)。 (イ) 本件対b職務命令f中においては平成19年3月19日に平成18年度第34回卒業式が予定されていたところ,p校長は,上記卒業式において,国歌斉唱を行うこととし,同日午前8時15分頃,同中学校校長室において,q副校長同席の下,原告bに対して,同校平成18年度第34回卒業式では,国歌斉唱の際は,職員席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること, 司会から合図があるまで着席しないことという職務命令を口頭で発した。さらに,p校長は,原告bに対して,文書を用意したので,よく読んでおいてほしいと言い,同卒業式に係る職務命令書(610号事件乙イ9)を差し出したが,原告bは,私だけなのか,職務命令を出す根拠は何なのか納得いく説明をしてほしい等と言って同職務命令書を受け取ら んでおいてほしいと言い,同卒業式に係る職務命令書(610号事件乙イ9)を差し出したが,原告bは,私だけなのか,職務命令を出す根拠は何なのか納得いく説明をしてほしい等と言って同職務命令書を受け取らなかった。同日午前8時20分頃,原告bは,p校長が同校職員室の原告bの机上に,「さっき受け取らなかったから,ここに置いておく」と言って置いた同職務命令書を持ってp校長の後について同校長室に入り,同校長室内の椅子の上に同職務命令書を置き,「ここに置いておきます」と言った。 (ウ) 原告bの非違行為原告bは,上記(イ)のとおり,p校長から,平成19年3月19日実施のf中の平成18年度第34回卒業式においては,国歌斉唱時に職員席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること,司会が着席の案内をするまで着席しないことという職務命令(本件対b職務命令)を受けていたにもかかわらず,同日午前9時35分頃,同中学校体育館で実施された上記卒業式において,国歌斉唱時に起立しないで着席し,p校長の上記職務命令に違反する行為をした。 (エ) 本件b停職処分都教委は,本件処分量定の考え方に立って,原告bの過去の処分歴,本件b不起立の内容,本件b不起立に至る経過等を検討の上,原告bに対し,同月30日,原告bの上記行為は,本件対b職務命令に反する行為であり,地公法32条,33条に違反し,地公法29条1項1ないし3号に該当するとして,停職6月の懲戒処分(本件b停職処分)をした(甲1,2,乙イ178,証人w)。 (オ) 原告bは,平成19年4月1日,都立x養護学校に異動となった。 2 争点(1)ア(ア)(職務命令違反の有無)について(1) 本件各職務命令が憲法19条に違反するか (オ) 原告bは,平成19年4月1日,都立x養護学校に異動となった。 2 争点(1)ア(ア)(職務命令違反の有無)について(1) 本件各職務命令が憲法19条に違反するかア(ア) 上記第2の2(4)のとおり,本件市教委通達は本件都教委通達と同旨の内容であるところ,上記1(2)のとおり,c養護学校のt校長は本件都教委通達を踏まえて本件対a職務命令を発令し,f中のp校長は本件市教委通達を踏まえて本件対b職務命令を発令したものといえる。 (イ) 本件各職務命令にかかる国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,その外部からの認識という点から見ても,特定の思想又はこれに反対する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,原告らの有する歴史観ないし世界観それ自体を否定するものと評価することは一層困難であるといえるのであって,本件各職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反対する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。そうすると,本件各職務命令は,これらの観点において,個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできない。 (ウ) もっとも,国家斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるということができる。そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行動を求められることと 君が代」に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行動を求められることとなる限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。このような間接的な制約については,個人の歴史観ないし世界観が 内心にとどまらず,それらに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,社会一般の規範等と抵触する場面において,当該外部的行動に対する制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限によってもたらされる上記の間接的な制約も許容され得るものというべきである。そして,このような間接的な制約が許容されるか否かは,職務命令の目的及び内容並びにこれによってもたらされる上記の制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である。 (エ) 本件についてみるに,本件各職務命令は,原告らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素との関係において,その歴史観ないし世界観に由来する行動との相違を生じさせることになるという点で,原告らの思想及び良心の自由について間接的な制約となる面があるということができる。他方,学校の卒業式や入学式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。そして,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の性質及びその職務の公共性に鑑み,公立学校の 典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。そして,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の性質及びその職務の公共性に鑑み,公立学校の教員である原告らは,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地方公務員法に基づき,学習指導要領に沿った式典の実施の指針を示した本件各通達を踏まえてその勤務する当該学校の各校長から学校行事である卒業式などの式典に関して本件各職務命令を受けたものである。これらの点に照らすと,公立学校の教員である原告らに対し,当該学校の卒業式という式典における慣例上の儀礼的な所作として国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務 命令は,学校教育の目標や卒業式等の儀礼的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るためのものということができるのであるから,本件各職務命令については,これが原告らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があるとしても,本件各職務命令の目的及び内容並びにこれによってもたらされる制約の態様等を総合的に較量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるのであり,本件各職務命令は,原告らの思想及び良心の自由を侵害するものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当である。 (以上につき,前掲最高裁平成23年5月30日判決,前掲最高裁平成23年6月6日判決,前掲最高裁平成23年6月14日判決,前掲最高裁平成23年6月21日判決)。 イ原告らは,本件各職務命令は,日本国憲法によって導かれる国家 5月30日判決,前掲最高裁平成23年6月6日判決,前掲最高裁平成23年6月14日判決,前掲最高裁平成23年6月21日判決)。 イ原告らは,本件各職務命令は,日本国憲法によって導かれる国家及び公教育の価値中立性原則に違反し,また,同原則の観点からすれば,教員個人の思想及び良心の自由の侵害の有無にかかわりなく,強制の契機を有する点において,直ちに憲法19条違反であることは明白であるなどと主張する。しかし,原告が主張するところの価値中立性原則の意味内容は一義的に明らかなものではないし,また,それがいかなる意味において憲法上の要請であるかも明らかではない。また,本件各職務命令の性質については,上記(ア(イ)ないし(エ))のとおり,原告らの思想及び良心の自由との関係では,これを直ちに制約するものと認めることはできないし,間接的な制約となるとしても,この制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるところであって,これらのことに照らして上記原告らの主張は採用することができない。また,上記したところからして,本件各職務 命令が,子どもらの学習権及び思想良心など内心を形成する自由を侵害するものとして憲法13条,19条,26条に違反するものとも,原告らの教員としての教育上の信念を直接侵害するものとして同法19条に違反するともいえない。さらに,原告らは,憲法尊重擁護義務の観点から本件各職務命令を拒否することが求められている旨主張するが,同職務命令が憲法尊重擁護義務に反するものではないことは上記したところからして明らかである。 ウ以上のとおり,本件各職務命令が憲法19条等に違反するとの原告らの主張は採用することができない。 (2) 本件各職務命令が憲法23条,26条に違反するかア普通教育の場において,教員が 以上のとおり,本件各職務命令が憲法19条等に違反するとの原告らの主張は採用することができない。 (2) 本件各職務命令が憲法23条,26条に違反するかア普通教育の場において,教員が公権力から特定の意見のみを児童,生徒に教授することを強制されないという意味や,児童,生徒の教育が教員と児童,生徒との間の直接の人格的接触を通じ,その個性に応じて行わなければならないという本質的要請に照らし,教授の具体的内容及び方法について,ある程度自由な裁量が認められるという意味では,教員にも一定の範囲における教授の自由が保障されるべきである。しかし,大学教育の場合には,学生が一応教授内容を批判する能力を備えていると考えられるのに対し,普通教育においては,児童,生徒にこのような能力はなく,教員が児童,生徒に対して強い影響力,支配力を有していること,普通教育では,児童,生徒の側に学校や教員を選択する余地が乏しく,教育の機会均等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき要請があることなどからすると,普通教育において,教員に完全な教授の自由を認めることはできないと解するのが相当である(最高裁昭和51年判決)。 イ上記1(1)のとおり,本件各通達は,学習指導要領に基づいて入学式や卒業式等が実施されることを目的として発出されたものであるところ,学習指導要領の国旗国歌条項は,これからの国際社会に生きていく国民として 我が国の国旗,国歌はもとより諸外国の国旗,国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てることが重要であるとの考え方に基づき設けられたことからすると,本件各通達が誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付け,子どもの自由かつ独立した人格形成を妨げるような内容の教育を施すことを強制するものとは認められず,教員の教育の自由を けられたことからすると,本件各通達が誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付け,子どもの自由かつ独立した人格形成を妨げるような内容の教育を施すことを強制するものとは認められず,教員の教育の自由を侵害するものとは認められない。 ウまた,上記1(1)ア(イ)のとおり,入学式・卒業式は教育課程における特別活動の一部として実施されるものであるが,教科等の授業とは異なり,全卒業生,全入学生,在学生等が参加し,保護者や種々の学校関係者の協力を得て行われる儀式であり,事柄の性質上,本来的に教員において個別に又は独自にこれを行うことが困難かつ不適当な性格のものである。そうすると,本件各通達が国歌斉唱を含む式次第や進行等を予め一律に定めて実施しようとすることは,儀式としての性質上その必要性があると考えられるから,本件各通達が原告らの学問研究の自由の結果としての教授の自由である教育の自由を侵害するものとは認められない。 エ以上によれば,本件各通達を踏まえて発令された本件各職務命令が憲法23条,26条に違反するとの原告らの主張は採用できない。 (3) 本件各職務命令が教育基本法16条1項に違反するかア旧教育基本法は,その前文において,「われらは,さきに,日本国憲法を確定し,民主的で文化的な国家を建設して,世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は,根本において教育の力にまつべきものである。われらは,個人の尊厳を重んじ,真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに,普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」と規定する。 これは,戦前の我が国の教育が,国家による強い支配の下で形式的,画一的に流れ,時に軍国主義又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったこ の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」と規定する。 これは,戦前の我が国の教育が,国家による強い支配の下で形式的,画一的に流れ,時に軍国主義又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったこ とに対する反省により制定されたものであるから,その前文に掲げられた理念は,これを具体化した旧教育基本法の各規定を解釈するに当たっても念頭に置くべきものであるといえる(最高裁昭和51年判決)。 イ教育基本法16条1項は,旧教育基本法10条を受けて,上記第2の2(2)イのとおり規定しているところ,旧教育基本法が戦前における教育に対する過度の国家介入,統制に対する反省から生まれたものであることに照らすと,教育基本法16条1項は,教育に対する権力的介入,特に行政権力による介入を警戒し,これに対して抑制的態度を表明したものと解される。また,同条項は,教育は,国民から信託されたものであるから,国民全体に対して直接責任を負うように行われるべく,その間において不当な支配によってゆがめられることがあってはならないとして,教育が専ら教育本来の目的に従って行われるべきことを示したものと考えられるから,同条項が排斥しているのは,教育が国民の信託にこたえて自主的に行われることを歪めるような「不当な支配」であり,そのような支配と認められる限り,その主体のいかんは問うところではなく,ここには,教育行政機関や地方公共団体も含まれると解される。 しかし他方で,憲法上,国は,適切な教育政策を樹立,実施する権能を有し,国会は,国の立法機関として,教育の内容及び方法についても,法律により直接又は行政機関に授権して,必要かつ合理的な規制を施す権限を有するだけでなく,子どもの利益のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益のために規制を施すことが要請される 方法についても,法律により直接又は行政機関に授権して,必要かつ合理的な規制を施す権限を有するだけでなく,子どもの利益のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益のために規制を施すことが要請される場合があり得るのであり,旧教育基本法10条や教育基本法16条1項がこのような権限の行使を制限したものと解すべき根拠は見出し難い。むしろ,教育基本法16条1項は,国の教育統制機能を前提としつつ,教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備の確立に置き,その整備確立のための措置を講ずるに当たっては,教育の自主性尊重の見地から,これに対する「不当 な支配」となることのないようにすべき旨の限定を付したところにその意味があるといえる。したがって,教育に対する行政権力の不当,不要の介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められる介入は,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,必ずしも同条の禁止するところではないと解するのが相当である(旧教育基本法10条に関するものとして,最高裁昭和51年判決)。この理は,地方公共団体においても何ら異なるところはない。 ウもっとも,国の教育行政機関が法律の授権に基づいて義務教育に属する普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,子どもの教育は,教員と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,子どもの個性に応じて弾力的に行わなければならないから,教員の自由な創意と工夫の余地が要請されることを考慮した上で,教育に関する地方自治の原則を考慮し,教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な範囲にとどめられるべきものである。しかし,地方公共団体が設置する教育委員会が教育の内容及び方法につい ける機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な範囲にとどめられるべきものである。しかし,地方公共団体が設置する教育委員会が教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,教育委員会は,公立学校を所管する行政機関として,その管理権に基づき,学校の教育課程の編成や学習指導等に関して基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,必要性,合理性が認められる場合には,具体的な命令を発することができると解される(最高裁昭和51年判決)。 エこの点,原告らは,教育委員会による教育の内容及び方法に対する介入についても大綱的基準にとどめるべきであると主張する。しかし,地方公共団体が設置する教育委員会が教育内容や方法に関して行う介入については,教育に関する地方自治の原則に反することはあり得ないし,教育委員会は,地教行法23条5号により学校の組織編成,教育過程,学習指導等に関して管理,執行する権限を有するとされ,文部科学大臣が同法48条 2項2号により学校の組織編成,教育課程,学習指導等について指導,助言又は援助を行うことができるとされているのとは異なることに照らすと,教育委員会による教育の内容や方法に関する介入を大綱的基準の設定にとどめるべきであるとする原告らの主張は採用できない。 オそこで,本件各通達について,これを発出すべき必要性,合理性があったと認められるかを検討するに,本件各通達が発出されるに至った経過については,上記1(1)のとおりであり,都教委及びα市教委は,学習指導要領に基づく入学式・卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施につき,一層の改善,充実を図る必要があるとして,より詳細な実施指針を示して本件各通達を発出したものである。そして,上記 教委は,学習指導要領に基づく入学式・卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施につき,一層の改善,充実を図る必要があるとして,より詳細な実施指針を示して本件各通達を発出したものである。そして,上記1(1)の本件各通達が発出されるに至った経過からすれば,学習指導要領に基づく入学式・卒業式等を実施するよう改善,充実を図るという目的で,かかる目的を実現するために入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施指針を定めて本件各通達を発出すべき必要性と合理性が認められる。 カ以上によれば,本件各通達が教育基本法16条1項にいう「不当な支配」に該当するとは認められないから,本件各通達を踏まえて発令された本件各職務命令が「不当な支配」に該当する違法がある旨の原告らの主張は採用できない。 (4) 上記1(2)のとおり,原告らが,本件各職務命令に違反して,本件各不起立を行ったことは明らかであり,原告らについては,地公法32条の職務命令違反が認められる。 3 争点(1)ア(イ)(信用失墜行為の有無)について(1) 上記1(2)のとおり,原告らは,学習指導要領に沿って,教育課程の一つである特別活動たる卒業式を適正に実施するため本件各校長が発した本件各職務命令に公然と違反し,しかもそれは児童・生徒,保護者その他の学校関係者の面前で行われたものであって,原告らの本件各不起立は,地公法33条に違反する ものといえる。 (2) この点,原告らは,本件各不起立によって,卒業式等の進行が妨害された事実や,保護者,子どもらから苦情が寄せられたなどの事実はなく,世論調査では,教員に対する日の丸・君が代の強制については,7割以上の都民が反対し,不起立教員への処分については,賛成意見の2倍以上に達する6割の都民が反対していることなどか れたなどの事実はなく,世論調査では,教員に対する日の丸・君が代の強制については,7割以上の都民が反対し,不起立教員への処分については,賛成意見の2倍以上に達する6割の都民が反対していることなどから,本件各不起立は,公務員に対する国民の信用を何ら失墜させるものではなく,日の丸・君が代の強制に対する国民の不信感,拒否反応に根ざした行為であると主張する。 しかしながら,原告らが,地方公務員として職務命令に従う義務を負い,かつ,生徒の模範となるべき教員という立場にありながら,上記2のとおり,適法と認められる本件各職務命令に違反したのであるから,本件各職務命令に従わずに本件各不起立をしたことは,教員の職の信用を傷つける行為に該当するといえるのであって,結果として,具体的な式典の進行上の混乱や支障が生じなかったりしたことや,原告らが指摘する世論調査が存在することを考慮に入れても,上記の結論を左右するものではない。 4 争点(1)イ(本件各処分の違法性)について(1) 上記2,3のとおり,原告らの本件各不起立は,地公法32条,33条に違反するものであり,これに対して,本件各処分を行ったことについて,処分量定の点を除けば,特に違憲,違法となるような点はない。 (2) この点,原告らは,本件各職務命令が憲法19条,23条,26条,教育基本法16条1項に違反することを前提にして,本件各処分が違憲,違法であると主張するが,本件各職務命令が憲法19条,23条,26条,教育基本法16条1項に違反しないことは,上記2のとおりであり,原告らの主張はそもそもその前提を欠いている。 (3) また,原告らは,都教委が,君が代斉唱時の起立は自己の思想及び良心に反すると表明する原告らに対し,本件各校長に本件各職務命令を出させた上で,本 はそもそもその前提を欠いている。 (3) また,原告らは,都教委が,君が代斉唱時の起立は自己の思想及び良心に反すると表明する原告らに対し,本件各校長に本件各職務命令を出させた上で,本 件各不起立という防衛的・受動的態度に対して本件各処分をなし,繰り返し同一内容の研修を受けさせて自己の非を認めさせようとし,さらには原告らに対して免職に向けて累積加重処分を繰り返し科しており,この「命令→処分→研修」の「三点セット」による一連の制度的対応は,原告ら個人の内心の自由に執拗に踏み込むものであって,違憲である等と主張する。しかし,本件各処分は原告らが本件各校長の本件各職務命令に違反したからなされたものであり,再発防止研修も原告らが校長の職務命令に違反して懲戒処分を受けたことからなされたものであって,原告らの内心の自由に踏み込むものとはいえず,原告らの主張は採用できない。 (4) また,原告らは,一連の本件都教委通達,指導及び本件各職務命令によって,学校では「日の丸・君が代」に対する起立が生徒にも強要されており,それは,生徒の人格的発達を促し,個人の人格の完成を目指す教育を本質的要請とする憲法上の学習権の保障に反するものであり,またそれは,現実に多様で複雑な社会に対応しなければならない子どもの発達を阻害するものであって,その教育上の不利益は甚大なものであると主張する。 しかし,そもそも,原告らは教員であって教育を受ける立場にないことからすれば,子どもの教育を受ける権利の侵害を理由に原告らが法的な権利救済を受ける立場にはなく,原告らの主張は失当である。また,この点を措くとしても,本件各通達や本件各職務命令の持つ意味は上記2のとおりであって不当なものとはいえず,学習権の保障に反するとか教育上の不利益は甚大であるなどといった原 の主張は失当である。また,この点を措くとしても,本件各通達や本件各職務命令の持つ意味は上記2のとおりであって不当なものとはいえず,学習権の保障に反するとか教育上の不利益は甚大であるなどといった原告らの主張は,採用の限りではない。 5 争点(1)ウ(本件各処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるか)について(1)ア公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分 が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるものと解される(最高裁昭和52年12月判決,最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決(民集44巻1号1頁))。 イ本件は,公立学校において生徒等が出席する重要な学校行事である卒業式の式典において実行された教員による職務命令違反の事例であるが,本件各不起立は,その性質,態様からすると,結果としてもたらされる影響として,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって,それにより式典に参列する生徒等への影響も伴うことも否定し難い。 そして,本件各職務命令は,上記2(1)のとおり憲法19条に違反するものではなく,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさ のではなく,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図ろうとするものであり(前掲最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決等),このような観点から,本件各職務命令の遵守を確保する必要性もまた否定し難いところである。 ウ他方,原告らの本件各不起立の動機,原因は,原告らの歴史観ないし世界観等に由来する「君が代」,「日の丸」に対する否定的評価等のゆえに,起立して国歌斉唱することを求める職務命令と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動とが相違することであり,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものである。また,本件各不起立の性質,態様は,式典の秩序や雰囲気,参列者等への影響等をもたらし得るものの,積極的な妨害等の作為ではなく物理的に式次第の遂行を妨げないため,具体的な支障 や混乱が客観的に評価し難い面があることも否定できない。 エそうすると,都教委が,そうした非違行為を実行した原告に対する懲戒権を行使するに当たり,戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択するについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。そして,停職処分は,処分それ自体によって教員の法的地位に一定の期間における職務の停止及び給与の全額不支給という直接の職務上及び給与上の不利益が及び,将来の昇給等にも相応の影響が及ぶこと等を勘案すると,上記のような考慮の下で不起立行為に対する懲戒において戒告,減給を超えて停職の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み,学校の規律や秩序 考慮の下で不起立行為に対する懲戒において戒告,減給を超えて停職の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。したがって,不起立行為等に対する懲戒において停職処分を選択することについて,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1,2年度に数回の卒業式等における懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである(最高裁平成24年1月判決)。 (2) 本件a停職処分について原告aの過去の処分歴は上記第2の2(1)ア(イ)のとおりである。 原告aについては,都教委において,本件処分量定の方針に従い,過去に同様の非違行為による懲戒処分を繰り返し受けているとして,量定を加重し て懲戒処分(停職1月)がなされた後,さらに本件a停職処分(停職3月)がなされている。しかしながら,過去の懲戒処分の対象は,いずれも不起立行為であって積極的に式典の進行を妨害する内容の非違行為は含まれておらず,いまだ過去3年度の4回の卒業式等に係るものにとどまり,本件a不起立行為の前後における態度において特に処分の加重を根拠づけるべき事情もうかがわれないこと等 を妨害する内容の非違行為は含まれておらず,いまだ過去3年度の4回の卒業式等に係るものにとどまり,本件a不起立行為の前後における態度において特に処分の加重を根拠づけるべき事情もうかがわれないこと等に鑑みると,原告aについては,上記(1)において説示したことに照らし,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から,停職処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があったとは認め難いというべきである。そうすると,上記過去の卒業式等における不起立行為による懲戒処分を受けていることのみを理由に懲戒処分として停職処分を選択した都教委の判断は,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱するものとして違法と評価されるべきものである(なお,最高裁平成24年1月判決において,都教委が本件a停職処分の前提とした上記停職1月の懲戒処分が取り消されているところでもある。)。 被告は,本件a停職処分は適法であり,その理由として本件a不起立行為の重大性,本件a不起立以前の原告aの懲戒処分歴や職務中における行動等の存在を主張するが,この主張を検討しても,本件a停職処分が違法である旨の上記判断は左右されるものではない。 (3) 本件b停職処分についてア原告bの過去の処分歴等は第2の2(1)イ(イ)及び第4の1(2)イ(ア)のとおりである。 イ原告bは,過去に不起立行為以外の非違行為による3回の懲戒処分及び不起立行為による3回の懲戒処分を受け,前者のうち2回は卒業式における国旗の掲揚の妨害と引き下ろし及び服務事故再発防止研修における国旗や国歌の問題に係るゼッケン着用をめぐる抗議による進行の妨害といっ た,積極的に式典や研 を受け,前者のうち2回は卒業式における国旗の掲揚の妨害と引き下ろし及び服務事故再発防止研修における国旗や国歌の問題に係るゼッケン着用をめぐる抗議による進行の妨害といっ た,積極的に式典や研修の進行を妨害する行為に係るものである上,国旗や国歌に係る対応につき校長を批判する内容の文書を生徒に配布する等して2回の文書訓告を受けているなど,過去の処分歴等に係る一連の非違行為の内容や頻度等に鑑みると,上記(1)において説示したところに照らし,学校の規律や秩序保持の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から,停職処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があったものと認められるというべきである。そうすると,上記のように同種の問題に関して規律や秩序を害する程度の大きい積極的な妨害行為を非違行為とする文書訓告2回を受けていたことを踏まえて原告bに対する懲戒処分において停職処分を選択した都教委の判断は,それ自体処分の選択が重きに失するとして社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえない。また,停職期間についてみても,本件b停職処分は,前件の停職処分に比して期間が長いものとなっているが,この点は,懲戒権者としての裁量権の範囲内ということができるのであって,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとまでいうことはできず,結局のところ本件b停職処分が違法であるとはいえない。 (4) 原告bの主張についてア原告bは,① 国旗国歌法制定過程における政府見解② 学習指導要領の国旗国歌条項は,「起立」を指示するものではないこと③ 本件各職務命令に必要性合理性が認められないこと④ 思想及び良心の自由との関係で考慮すべきこと⑤ 教育公務員の教育活動に関しては,処分権の発動は抑制的であるべきこと⑥ 意見の分かれる ③ 本件各職務命令に必要性合理性が認められないこと④ 思想及び良心の自由との関係で考慮すべきこと⑤ 教育公務員の教育活動に関しては,処分権の発動は抑制的であるべきこと⑥ 意見の分かれる問題に関する教育活動に対する処分であること ⑦ 原告らの職務命令への不服従が教育上の真摯な動機に基づくこと⑧ 原告らの職務命令への不服従は教育者としての信念と長年にわたる教育実践と不可分一体のものであること⑨ 不起立が学校行事に支障を生じさせていないこと⑩ 不起立の繰り返しを考慮して加重処分すべきでないこと⑪ 本件各処分(停職処分)が教育現場や教育上の関係に悪影響を与えること⑫ 他の処分事例と比較して本件各処分が重きに失すること⑬ 原告bに対する本件対b職務命令が狙い撃ちであること⑭ 原告bに対する本件b停職処分が,異校種間異動と一体のものであること⑮ 本件各処分がそれ自体として重すぎて不当であること等を考慮すれば,本件b停職処分は裁量権の範囲を逸脱又は濫用したもので違法であると主張する。 しかし,上記③については,上記2(3)オのとおり,本件各職務命令について必要性合理性が認められるところであり,原告らの主張は採用の限りでない。上記④については,本件対b職務命令が間接的には憲法19条の制約になることを前提にしても,本件対b職務命令が適法であることは上記2(1)のとおりである。上記⑤については,そもそも,当然にそのようにいえるのか疑問であるし,仮にその点を考慮に入れても,本件b停職処分が裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであるとは認め難い。上記⑩については,原告bについては単純な不起立を繰り返しているとは言い難いことは上記第2の2(1)イ(イ)のとおりである。上記⑫については,性質の異なる懲戒事案と本件b たものであるとは認め難い。上記⑩については,原告bについては単純な不起立を繰り返しているとは言い難いことは上記第2の2(1)イ(イ)のとおりである。上記⑫については,性質の異なる懲戒事案と本件b停職処分を単純に比較することは相当ではない。上記⑬については,本件各職務命令が原告bを狙い撃ちにしたとまでは認められないから失当である。上記⑭については,原告bに対する異校種間異 動が本件b停職処分と一体のものと認めるに足りる証拠はない。また,その他原告bが指摘する上記①,②,⑥ないし⑨,⑪,⑮については,これらのことを考慮しても,本件b停職処分が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たらないとする上記(3)の判断を左右するものではない。 イまた,原告bは,過去の処分歴について,①平成6年4月25日付け減給処分は,当時の時代状況を踏まえれば,非違行為としての性質は,平成19年当時と全く異なる等と主張する。しかし,原告bが指摘するところを踏まえても,同処分が不当であるとは認め難いし,これを懲戒処分の際に考慮する事情の一つとすることについては裁量権の範囲を逸脱するものとはいえない。 また,原告bは,②平成17年12月1日付け減給処分についても,そもそも再発防止研修を命じること自体不当であるとか,処分理由について重大な事実誤認があるとか,原告bの表現の自由を侵害しているとか,手続的正義に反する等,縷々主張する。しかし,平成17年12月1日付け減給処分について処分理由に重大な事実誤認があるとは認められないし,再発防止研修を命じること自体不当だとはいえない。そして,原告bの表現の自由を不当に侵害するともいえないし,手続的正義に反するとも認め難いところであり,原告bの主張は採用できない。 また,原告bは,平成7年11月16 当だとはいえない。そして,原告bの表現の自由を不当に侵害するともいえないし,手続的正義に反するとも認め難いところであり,原告bの主張は採用できない。 また,原告bは,平成7年11月16日付け文書訓告,平成11年8月30日文書訓告,平成14年3月27日付け減給処分について,卒業式の不起立とは事案の性質が異なるとか,文書訓告は懲戒処分ではないから,本件b停職処分にあたっての累積加重処分の理由とすることは許されないと主張する。しかし,かかる見解は採用の限りではない。 さらに,原告bは,平成17年3月31日付け減給処分,平成17年5月27日付け停職処分,平成18年3月31日付け停職処分については,本件と同種の卒業式・入学式における不起立であるから,これらの処分を 理由に累積加重することは許されないと主張する。しかしながら,原告bが,卒業式・入学式における不起立以外にも本件b停職処分に至るまでに数々の非違行為を行い,これによって,懲戒処分や文書訓告を受けてきたことは上記第2の2(1)イ(イ)のとおりであり,これらの懲戒処分や文書訓告と卒業式・入学式における不起立による懲戒処分を合わせて処分内容を加重することが許されないとはいえないし,二重処分と評価すべきものでもない。 6 争点(1)エ(適正手続違反の有無)について(1) 公務員に対する懲戒処分は,免職処分を含めてこれにより制約される利益はあくまで全体の奉仕者としての公務員の身分に基づく利益であり,一般国民の生命若しくは自由の制限とは質的に異なる。 憲法31条の保障は,実体的適正と手続的適正の双方を保障するものと解されているが,公務員の懲戒処分にあっては,懲戒事由の法定によって実体的適正は十分に確保されており,手続的適正についても,懲戒処分に当た 31条の保障は,実体的適正と手続的適正の双方を保障するものと解されているが,公務員の懲戒処分にあっては,懲戒事由の法定によって実体的適正は十分に確保されており,手続的適正についても,懲戒処分に当たっては,処分権者の判断の慎重,適正を担保し,その恣意を抑制するため処分事由説明書の交付を法定し(国家公務員法89条1項,2項,地公法49条1項,2項),この点についても相当の確保がなされているものである。 これらのことからすれば,公務員の懲戒処分に当たって事前の告知・聴聞の機会を与えなくとも,憲法31条の法意に反するとはいえない。 また,本件にあっては,都教委が事情聴取しようとしたところ,原告らにおいて,代理人弁護士の立会いがなければ事情聴取に応じないとしてこれを拒否したことは当事者間に争いがないところ,事情聴取において弁護士の立会いを都教委が認めなければならない理由はなく,告知・弁解の手続がなされなかったから違法であるとする原告らの主張には理由がない。 (2) また,本件各処分は,教職員懲戒分限審査委員会の審議を経た上で,また,教育委員会の議を経た上でなされており(乙イ178,証人w),本件各処 分に至る手続が拙速であるとの原告らの主張も採用でない。 7 争点(2)(国賠法に基づく損害賠償請求の可否)について(1) 国賠法1条所定の違法が認められるためには,「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えた」ことが必要であり,さらに行政処分の違法を理由とする場合には,当該処分が効力発生要件適合性を欠くだけでは足らず,当該公務員が「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすこと」をしなかったと認め得るような事情があったことが必要である。 (2) 国賠法 場合には,当該処分が効力発生要件適合性を欠くだけでは足らず,当該公務員が「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすこと」をしなかったと認め得るような事情があったことが必要である。 (2) 国賠法1条による損害賠償責任の要件たる公務員の故意・過失については,法令の解釈につき異なる見解が対立して疑義を生じており,拠るべき明確な判例学説がなく,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,公務員がその一方の解釈に立脚して公務を執行したときは,のちにその執行が違法と判断されたからといって,直ちに当該公務員に過失があったとすることはできない。 本件の場合,原告らに職務命令違反があり,懲戒事由該当性が認められること自体は明らかであって,都教委が原告らを懲戒処分に付したこと自体には,何ら職務上通常尽くすべき注意義務違反も過失もない。 (3) 次に処分量定についてみるに,本件各不起立に対する懲戒処分の処分量定において,懲戒権者たる都教委がこれら過去の非違行為及び処分歴を考慮すること自体は違法ではない(最高裁昭和52年12月判決)。 もっとも,最高裁平成24年1月判決は,卒業式等の式典における不起立行為については,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものであるとの特殊性があるとし,この点から不起立行為に対する懲戒において停職処分を選択するには,過去の1,2年度に数回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分の処分歴があることのみをもってただちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を 害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴が停職処分の不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を 害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴が停職処分の不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要すると判示しているところである。 しかしながら,かかる判示は,最高裁平成24年1月判決によってはじめて示された新たな判断であり,式典における国歌斉唱時の不起立で戒告を受けた教員がさらに不起立を繰り返した場合に減給あるいは停職の懲戒処分をすることの相当な理由があるといえるかどうかについては,司法ないし国民の間に積極,消極の対立した見解があり,そのいずれについても相応の根拠が認められるところである。また,最高裁平成24年1月判決がなされるまでは下級審の裁判例も分かれていたところである。本件対a停職処分は,上記のとおり,積極,消極の見解が分かれ,これに関する最高裁の判断が示される前に,都教委により上記論点に関する積極説に基づいて行われたものであるから,上記の論点のうち一方の見解に立ってこの処分の遂行に関与した公務員に国賠法上の過失があるということはできず,また,都教委によるこの処分が国賠法上違法であるということもできない。 以上からすると,都教委が本件b不起立に対し,本件b停職処分に付したことは,そもそも,上記5(3)のとおり,何ら違法ではなく,国賠法上の違法性は認められない。また,都教委が本件a不起立に対し,本件a停職処分に付することを裁量権の範囲内の措置として適法と判断したことについても,職務上通常尽くすべき注意義務違反も過失も認められず,原告aの国賠法に基づく損害賠償請求は認められない。 (4) 以上のとおり,原告らについて,国賠法に基づく損害賠償請求は認められない。 8 まとめ 注意義務違反も過失も認められず,原告aの国賠法に基づく損害賠償請求は認められない。 (4) 以上のとおり,原告らについて,国賠法に基づく損害賠償請求は認められない。 8 まとめ以上によれば,原告らの訴えのうち,本件原告a停職処分の取消請求については理由があるからこれを認容し,その余の請求は棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第19部 裁判長裁判官古久保正人 裁判官吉田光寿 裁判官内藤寿彦

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