令和5年6月15日東京地方裁判所刑事第17部宣告令和4年刑第2328号贈賄被告事件 主文 被告人を懲役2年に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、平成28年4月から株式会社Aの2021年室に所属し、同年5月から同室室長であったものであるが、同社の取締役会長であるB及び平成27年7月から同社の取締役専務執行役員、令和2年7月から同社の専務執行役員、同年10 月から同社のチーフライセンスオフィサーであったCと共謀の上、平成28年4月頃から平成30年3月頃までの間、数回にわたり、東京都港区(住所省略)所在の株式会社D事務所等において、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)の理事として、組織委員会の理事会を構成し、その業務執行の決定等について議決権を行使するとともに、組織委員 会のマーケティング業務に関し、第32回オリンピック競技大会(2020/東京)及び東京2020パラリンピック競技大会(以下、両大会を合わせて「東京2020大会」という。)への協賛企業を募るなどの職務に従事していたEに対し、組織委員会において、前記株式会社Aを、東京2020大会における第3階層の協賛企業であるTier3スポンサーに選定するとともに、同社が負担する協賛金額を3億 8000万円以内にしてもらいたい旨及びその協賛契約である東京2020オフィシャルサポータープログラム契約の締結を迅速に行ってもらいたい旨など、同社が有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託をし、そのような取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに、別表( 締結を迅速に行ってもらいたい旨など、同社が有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託をし、そのような取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに、別表(添付省略)記載のとおり、令和元年9月30日から令和3年1月29日まで の間、9回にわたり、東京都新宿区(住所省略)所在の株式会社F銀行G支店に開 設された前記A名義の普通預金口座から、東京都中央区(住所省略)所在の株式会社F銀行H支店に開設された、Iが経営し、代表取締役を務める株式会社J名義の普通預金口座に現金合計6909万円を振込入金し、もってEの職務に関し同人及びIに対し賄賂を供与した。 (量刑の理由) 本件は、株式会社Aの2021年室室長であった被告人が、同社の役員2名と共謀の上、東京2020大会の協賛企業を募るなどのマーケティングの職務に従事していた組織委員会の理事(以下「本件理事」という。)に対し、同大会の協賛企業の選定に関して同社が有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨を請託し、そのような取り計らいを受けたことに対する謝礼等の趣旨の下に賄賂を供与した、という贈賄 の事案である。 被告人らは、株式会社Aを東京2020大会の協賛企業にすることにより、同社のブランド力を向上させるとともに、大きなビジネスチャンスを得たいなどという利己的な動機から、その支払が贈賄行為に当たる可能性が高いことを十分認識しつつ、合計6909万円という相当高額な賄賂を供与しているのであって、本件理事 から金員を要求されたことが本件の契機となっていることを踏まえても、厳しい非難が妥当する。 本件犯行により、東京2020大会の組織委員会役員等の職務の公正さや同大会の公正な運営に対する信頼は害され、多数の関係者の努力によって作り上げられた いることを踏まえても、厳しい非難が妥当する。 本件犯行により、東京2020大会の組織委員会役員等の職務の公正さや同大会の公正な運営に対する信頼は害され、多数の関係者の努力によって作り上げられた同大会に汚点を残すこととなった。 被告人は、株式会社Aにおける東京2020大会の実務担当責任者として、本件理事に対する請託を複数回行ったほか、賄賂供与の実態を隠すためにコンサルタント料名目で金員を支払うといった偽装工作にも主体的に関与するなど、本件において重要な役割を果たしている。確かに、同社の法務部門から贈賄に当たる可能性がある旨の指摘があっても本件理事の要求に応じる方針に変更がなく、これに従わざ るを得ない状況にあったことは否めないが、先に述べたとおり同社の利益を求める とともに、自身の評価が得られるとの思いもあって、本件犯行に及んでいることからすると、法令遵守の意識が乏しかったといわざるを得ない。 もっとも、被告人は、株式会社Aが東京2020大会の協賛企業となることに強い意欲を示していた共犯者Bの意向に従い、同人や共犯者Cに状況を報告して承認を得ながら本件犯行を遂行しており、同人らに従属する立場にあった。 以上によれば、被告人の刑事責任は、共犯者らと同等とはいえないものの、決して軽いものではない。 他方で、被告人は、事実関係を素直に認め、東京2020大会の関係者らに多大な迷惑をかけた旨述べるなど謝罪の気持ちを表し、株式会社Aを退職するなどして、本件について深い反省の態度を示している。また、被告人の妻が出廷して監督を誓 約していること、被告人に前科がないこと等の被告人のために酌むべき事情もある。 そこで、以上の事情を総合考慮の上、主文のとおりの執行猶予を付した判決をするのが相当と判断した。 (求刑懲役2年 約していること、被告人に前科がないこと等の被告人のために酌むべき事情もある。そこで、以上の事情を総合考慮の上、主文のとおりの執行猶予を付した判決をするのが相当と判断した。(求刑懲役2年)令和5年6月15日 主文 東京地方裁判所刑事第17部 裁判長裁判官中尾佳久 裁判官薄井真由子 裁判官遠藤優
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