昭和22(れ)295 傷害、公務執行妨害、食糧管理法違反

裁判年月日・裁判所
昭和23年4月17日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 広島高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  弁護人高橋武夫の上告趣意書第一点は「原判決は事実理由第一に於て「昭和二十 二年七月五日頃法定の除外事由がないのに営利の目

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判決文本文3,729 文字)

主    文      本件上告を棄却する。          理    由  弁護人高橋武夫の上告趣意書第一点は「原判決は事実理由第一に於て「昭和二十 二年七月五日頃法定の除外事由がないのに営利の目的で肩書住居で政府以外のAに 対し自己の生産に係る検査証印のない昭和二十一年度産粳玄米二斗(約三十瓩)を 所定の販売価格を超過し代金三千二百円(超過額三千百六円三十二銭五厘)で販売 し」と認定し此の価格違反の点に付て物価統制令第三条第四条第三十二条物価庁告 示第百五十一号に該当するものと断した然るに右引用の物価統制令第三十二条は既 に削除せられて居るから此の条文を適用したことは明に違法である従て原判決は此 の点に於て破毀を免れないと信ずる」と謂うにある。  仍つて原判決の適条の項を看ると成る程所論の通り物価統制令第三十二条と書か れてあり、而して此の第三十二条は昭和二十一年勅令第三百八十二号(施行昭和二 十一年八月十二日)に依り改正削除された法条であることも亦論旨指摘の通りであ る。然し同条は以上の如く本件事犯前既に削除消滅に帰した法条であり且つ削除前 の同条は単に「本令の施行に関する主務大臣は大蔵大臣とす」との規定であつて、 斯かる規定は原判決の適条に絶対に必要のない規定であることは論を俟たない所で あるから、這は同令第三十三条の誤記と認むべきことは極めて明確である。本論旨 は理由がない。  同第二点は「原判決は事実理由第二に於て「同年同月十六日午前九時三十分頃吉 田警察署B巡査部長派出所勤務広島県巡査部長C(当六十五年)が制服制帽で私服 の巡査Dを伴つて被告人の肩書住居に到り同家納屋の土間で被告人に対し予て探知 していた米の闇売の事実(右第一の事実)の有無につき尋ねたところ被告人は「自 己の保有米を綿布と交換した」旨答えたので同部長がその相手方の氏名を聞くと被 - 1 - 家納屋の土間で被告人に対し予て探知 していた米の闇売の事実(右第一の事実)の有無につき尋ねたところ被告人は「自 己の保有米を綿布と交換した」旨答えたので同部長がその相手方の氏名を聞くと被 - 1 - 告人は「そんなことまで言ふ必要はない」と言い捨ててその場を立ち去つたので同 部長は恰度その場へ来合せた被告人の内縁の妻Eに右綿布の件を尋ねたところ一且 戸外に出ていた被告人は同部長の傍に走つて来て「俺が何をしょうとお前が要らぬ ことを訊く必要はない」と怒号し同部長が諭すと被告人は「文句を言ふと殴るぞ」 と叫びながら右手を振り上げて殴打する気勢を示したので同部長は身に危険を感じ 被告人を押すようにして防いだところ被告人は同部長の官服の襟をつかみ右手で同 人の顔面を二回位殴打し同部長が自衛上組付くと被告人は同部長に組付きながら同 人の下腹部を数回強く蹴り右D巡査が両名を引離すや被告人は附近にあつた長さ三 尺径二分位の木の棒を振り上げて同部長を殴打しようとし以て同部長の職務の執行 を妨害しその顔面右上顎部表皮に小指大の有痛性皮下溢並に左観骨部皮膚に長さ一、 五糎の線状創下腹膀胱部に劇しい圧痛等を与へた外頸部背面その他に発赤線状腫脹 皮下溢血班表皮剥脱出血を伴う創傷等を与へたものである」と認定し其の証拠とし てCに対する司法警察官の聴取書を引用して居る仍て原審公判調書を閲するに「裁 判長は証拠調をする旨を告げ 一、原審公判調書中証拠調の部記載と同一の書類  一、原審公判調書の各要旨を告げ各其都度意見弁解の有無を問ひ且利益の証拠あら ば提出し得る旨を告げた」とある仍て更に第一審公判調書を閲するに「裁判官は証 拠調をすることを告げ 一、被告人に対する司法警官作成の第一、二回訊問調書  一、Cに対する医師F作成の診断書 一、C、D、Eに対する司法警察官及同代理 作成の証人訊問調書 一、被告人 るに「裁判官は証 拠調をすることを告げ 一、被告人に対する司法警官作成の第一、二回訊問調書  一、Cに対する医師F作成の診断書 一、C、D、Eに対する司法警察官及同代理 作成の証人訊問調書 一、被告人に対する検事訊問調書 一、被告人に対する司法 警察官代理作成の聴取書(公第七四号)一、A提出の始末書(公第七四号)の各要 旨及供述者並作成人に対しては被告人より直接訊問出来ることを告げ且押収品を示 し各その終る毎に意見の有無を問ひ利益の証拠を提出出来ることを告げた」とあつ てCに対する司法警官の聴取書に付証拠調を為した事跡の見るへきものはない又記 録中にCに対する司法警察官の聴取書なるものは編綴せられて居らないされば原判 - 2 - 決は虚無の証拠を罪証に供した違法があつて到底破毀を免れないと信ずると謂うに ある。  記録を検討するに、事実関係は総べて所論の通りである。然し原判決摘示第二の 事実に付て司法警察官がCの供述を録取した書類としては、記録中には同人に対す る現行犯としての取扱である証人訊問調書があるだけで聴取書はないのであり、原 審が証拠調をしたのも右訊問調書であることは論旨自体引用の第一審に於ける証拠 調の部の公判調書の記載及び原審の同公判調書の部の記載と照し合せれば毫も疑い ないのであるから、他に別段の事情のない以上原判決が証拠として挙示したCに対 する司法警察官の聴取書と云ふのは、同人に対する司法警察官の証人訊問調書の誤 記であると認めるのが相当である。従つて原判決には虚無の証拠に依つて事実を認 定した違法はなく、論旨は理由がない。  同第三点は「原審公判調書を閲するに原審は公判に於て押収品(棒一本)を被告 人に示した事跡がないされば原判決は刑事訴訟法第三百四十一条に違反する違反が あつて此の点に於ても破毀は免れない」と謂うにある。  然し、裁判所は刑事訴訟法第 るに原審は公判に於て押収品(棒一本)を被告 人に示した事跡がないされば原判決は刑事訴訟法第三百四十一条に違反する違反が あつて此の点に於ても破毀は免れない」と謂うにある。  然し、裁判所は刑事訴訟法第三百四十二条のような特別の規定に該当する場合は 別として、其の他の場合に於ては自由に証拠調の限度を定めることが出来るのであ つて、集取されてある一切の証拠に付て其の取調をしなければならないものではな い。記録に依れば、原審に於て裁判長が被告人に対し押収品の棒(証第一号)を示 した形跡がないことは所論の通りであるが、右押収品が刑事訴訟法第三百四十二条 所定の証拠物でないことは記録上明白であるから、原審が之に付て証拠調をしなか つたとしても少しも違法ではない。殊に原判決は右の棒を証拠として採用してゐな いのであるから、之に付て証拠調がしてなくても適法な取調を経ない証拠に拠つて 事実を認定した違法がある訳でもない。論旨は理由がない。同第四点は「原審公判 調書を閲するに「裁判長は証拠調をする旨を告げ 一、原審公判調書中証拠調の部 - 3 - 記載と同一の書類 一、原審公判調書の各要旨を告げ各其都度意見弁解の有無を問 ひ且利益の証拠あらば提出し得る旨を告げた」とあつて原判決が証拠に援用した書 類の作成者又は供述者に付訊問を請求し得べき旨を告げた事跡が全然ない之は明に 日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急措置に関する法律第十二条に違反し従て 憲法所定の基本的人権に対する侵害となるから原判決は此の点に於ても破毀を免れ ないと信ずる」と謂うにある。  然し、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十二条第 一項本文の規定の趣旨は、被告人の請求があれば裁判所は必らず其の訊問の機会を 被告人に与えなければ証拠とすることは出来ないと云ふのであつて、裁判所から進 んで訊問請求権のあ 的措置に関する法律第十二条第 一項本文の規定の趣旨は、被告人の請求があれば裁判所は必らず其の訊問の機会を 被告人に与えなければ証拠とすることは出来ないと云ふのであつて、裁判所から進 んで訊問請求権のあることを公判廷に於て被告人に告げなければならないと云ふ趣 旨でないことは、既に当裁判所の判例とする所であつて(当裁判所昭和二十二年( れ)第一五六号同年十二月二十四日第二小法廷判決)、従つて原判決が摘示第一事 実の証拠としてA提出の始末書を採用してゐるのは違法ではない。論旨は理由がな い。  以上の理由に依り刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の通りに判決する。  此の判決は裁判官全員の一致した意見に依るものである。  検察官松岡佐一関与   昭和二十三年四月十七日      最高裁判所第二小法廷          裁判長裁判官    塚   崎   直   義             裁判官    霜   山   精   一             裁判官    栗   山       茂             裁判官    小   谷   勝   重             裁判官    藤   田   八   郎 - 4 -

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