令和4(行ウ)39 障害厚生年金不支給処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年5月29日 大阪地方裁判所
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判決文本文27,058 文字)

- 1 - 令和7年5月29日判決言渡令和4年(行ウ)第39号障害厚生年金不支給処分取消等請求事件主文 1 本件訴えのうち、令和元年7月を支給開始月とする障害等級2級の障害基礎年金及び障害厚生年金を支給する旨の裁定の義務付けを求める部分を却 下する。 2 その余の原告の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 厚生労働大臣が令和元年9月24日付けで原告に対してした障害基礎年金及び障害厚生年金を支給しない旨の処分を取り消す。 2 厚生労働大臣は、原告に対し、令和元年7月を支給開始月とする障害等級2級の障害基礎年金及び障害厚生年金を支給する旨の裁定をせよ。 第2 事案の概要 本件は、原告が、初診日を平成24年9月8日とする化学物質過敏症により障害の状態にあるとして、国民年金法30条の2第1項及び厚生年金保険法47条の2第1項に基づき、裁定請求日を受給権発生日(いわゆる事後重症)とする障害基礎年金及び障害厚生年金(以下「障害給付」という。)の支給を求める裁定請求(以下「本件請求」という。)をしたところ、厚生労働大臣から、 化学物質過敏症の初診日が同日(厚生年金保険の被保険者であった間)であることを認めることができないとして、障害給付をいずれも支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため、化学物質過敏症の初診日は同日であると主張して、被告を相手に、本件処分の取消しを求めるとともに、本件請求をした月の翌月である令和元年7月を受給権発生日とする障害等級2級 の障害給付を支給する旨の裁定の義務付けを求める事案である。 - 2 - 1 関係法令等(1) 事後重症に係る障害給付の根拠規定国民年金法30条の 生日とする障害等級2級 の障害給付を支給する旨の裁定の義務付けを求める事案である。 - 2 - 1 関係法令等(1) 事後重症に係る障害給付の根拠規定国民年金法30条の2第1項は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、当該傷病に係る初診日において同法30条1項各号のいずれかに該当した者であって、障害認定日において同条2項に規定する障害等級に該当する程度の 障害の状態になかったものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に同条1項の障害基礎年金の支給を請求することができる旨規定する。 また、厚生年金保険法47条の2第1項は、疾病にかかり、又は負傷し、 かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であった者であって、障害認定日において同法47条2項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態になかったものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に同条1項の障害厚生年金の支給を請求する ことができる旨規定する。 なお、上記各規定にいう「傷病」とは、疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病を、「初診日」とは、傷病について初めて医師又は歯科医師の診断を受けた日を、「障害認定日」とは、当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては、その治った日(そ の症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。))をいう(国民年金法30条1項本文、厚生年金保険法47条1項本文)。 (2) 「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」(令和3年8 し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。))をいう(国民年金法30条1項本文、厚生年金保険法47条1項本文)。 (2) 「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」(令和3年8月24日厚生労働省年金局事業管理課長事務連絡。以下「初診日通知」という。) 別紙1のとおり。 - 3 - 2 前提事実(争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) 原告(甲4、31)原告は、昭和61年▲月▲日生まれの男性であり、平成20年▲月▲日にA社に入社して厚生年金保険の被保険者資格を取得し、平成▲年▲月▲日に A社を退職して上記被保険者資格を喪失した。 (2) 原告の受診状況の概要ア原告は、平成24年9月8日、咳が出るとしてB耳鼻いんこう科を受診し、同年11月10日まで受診を続けた(乙5)。同病院のC医師(以下「C」という。)が令和元年5月8日付けで作成した受診状況等証明書に は、傷病名として気管支喘息及び咽頭炎、発病年月日として平成24年8月頃との記載がある(乙2)。 イ原告は、平成24年10月30日、B耳鼻いんこう科の紹介により和歌山県立医科大学付属病院(以下「和医大病院」という。)呼吸器内科を受診し、同年11月27日まで受診を続けた。和医大病院の同年10月30 日の診療録には、診察時の原告の話として「たばこに過敏」といった記載や、医師の評価(A)として「咳喘息+感染後遷延性咳嗽疑い」といった記載がある。(甲17)ウ原告は、平成24年11月頃から平成25年6月頃まで、Dクリニックを受診した。同病院の診療録には、傷病名として慢性気管支炎、神経性胃 炎、咳喘息の記載がある。(甲19) 。(甲17)ウ原告は、平成24年11月頃から平成25年6月頃まで、Dクリニックを受診した。同病院の診療録には、傷病名として慢性気管支炎、神経性胃 炎、咳喘息の記載がある。(甲19)エ原告は、平成25年6月15日から平成26年1月20日まで、E内科を受診した。同病院の診療録には、傷病名としてアレルギー性鼻炎、気管支喘息、不安神経症、蕁麻疹、食物アレルギー疑い、花粉症疑い及びハウスダスト・ダニアレルギーの記載がある。(甲22) オ原告は、平成26年1月21日からA社退職後の平成30年7月3日ま - 4 - で、平成27年1月10日のE内科受診(傷病名:咽頭炎、気管支炎、関節痛)を除き、医療機関を受診しなかった(甲22)。 カ原告は、平成30年7月4日、Fアレルギー科を受診し、その後受診を続けている(甲24)。同病院のG医師(以下「G」という。)が令和元年5月17日付けで作成した診断書には、原告が化学物質過敏症であり、 その初診日が平成24年9月8日であると記載されている(甲14)。 キ原告は、平成31年4月18日、Hクリニックを受診し、同病院のI医師(以下「I」という。)により、化学物質過敏症と診断された(甲25)。 (3) 本件処分(甲1、乙1)原告は、令和元年6月10日、厚生労働大臣に対し、平成24年9月8日 を初診日とする化学物質過敏症により障害の状態にあることを理由に、事後重症による障害給付の裁定請求(本件請求)をした。 厚生労働大臣は、令和元年9月24日、本件請求を却下する処分(本件処分)をした。本件処分の通知書(以下「本件通知書」という。)に記載された理由は、「障害厚生年金を受給するためには、傷病の初診日が厚生年金保 険の被保険者であった間であることが要件の 分(本件処分)をした。本件処分の通知書(以下「本件通知書」という。)に記載された理由は、「障害厚生年金を受給するためには、傷病の初診日が厚生年金保 険の被保険者であった間であることが要件の1つとなっていますが、現在提出されている書類では、当該請求に係る傷病(化学物質過敏症)の初診日が平成24年9月8日(厚生年金保険の被保険者であった間)であることを認めることができないため。」というものである。 (4) 本件訴えに至る経緯(甲2、3、顕著な事実) ア原告は、本件処分を不服として、令和元年12月20日付けで、近畿厚生局社会保険審査官に対して審査請求をしたが、同審査官は、令和2年6月5日付けで、上記審査請求を棄却する旨の決定をした。 イ原告は、上記アの決定を不服として、令和2年7月29日付けで、社会保険審査会に対して再審査請求をしたが、同審査会は、令和3年9月30 日付けで、上記再審査請求を棄却する旨の裁決をした。 - 5 - ウ原告は、令和4年3月25日、本件訴えを提起した。 3 争点及びこれに対する当事者の主張本件の争点は、①化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であるか否か(争点1)、②本件通知書に記載された理由は理由の提示として十分なものであるか否か(争点2)である。争点についての原告の主張は、別紙2(準備 書面(5))のとおりであり、被告の主張は別紙3(第5準備書面)のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実上記前提事実に加え、各項記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事 実が認められる。 (1) 化学物質過敏症(甲6、7、10、27、乙4、6、7)化学物質過敏症は、1950年代に当時シカゴ大学小児科教授であったランドルフが「環境中の化 ば、以下の事 実が認められる。 (1) 化学物質過敏症(甲6、7、10、27、乙4、6、7)化学物質過敏症は、1950年代に当時シカゴ大学小児科教授であったランドルフが「環境中の化学物質への適応に失敗した結果、個体の新たな過敏の状態の形成」という病態を提言したことが端緒とされている。1987年 (昭和62年)には、化学物質に曝露される機会の多い労働者を診察していたカレンが、「過去に大量の化学物質を一度に曝露された後、または長期的慢性的に化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」を多種化学物質過敏状態(MultipleChemicalSensitivity。MCS)と呼ぶことを提唱し、国際的にはこの呼称が一般的に用いられている。 化学物質過敏症の発症メカニズムは、免疫学的なもの、神経学的なもの、心理学的なものなど多方面からの研究が行われているが、いずれも決定的な病態解明には至っていない。化学物質過敏症の病態の存在について否定的見解も存在するが、日本では、平成21年10月1日から化学物質過敏症の治療に健康保険が適用されている。 化学物質過敏症の診断基準は、国際的に確立されるには至っていない。日 - 6 - 本において使用ないし参照される診断基準としては、以下のア及びイがある。また、厚生省が設置した厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班は、下記ウの診断基準を提示している。 アアメリカ国立衛生研究所が1999年(平成11年)に主催したアトランタ会議における研究者間の合意事項(以下「1999年合意基準」とい う。なお、各項目の日本語訳は甲6・12頁のものである。)合意された診断基準は、次の6項目である。上記研究者らは、これら6項目に合致すれば、喘息、アレルギ 以下「1999年合意基準」とい う。なお、各項目の日本語訳は甲6・12頁のものである。)合意された診断基準は、次の6項目である。上記研究者らは、これら6項目に合致すれば、喘息、アレルギー、片頭痛等のような他の疾患が共存していても、化学物質過敏症の診断を下すべきである旨を勧告している。 (ア) 化学物質に繰り返し曝露されると、症状が再現される。 (イ) 健康障害が慢性的である。 (ウ) 過去に経験した曝露や、一般的には耐えられる曝露よりも低い曝露量によって症状が現れる。 (エ) 原因物質の除去により、症状が改善又は治癒する。 (オ) 関連性のない多種類の化学物質に対して反応が生じる。 (カ) 症状が多種類の器官にわたる。 イ石川哲らが平成11年(1999年)に提唱した診断基準(以下「石川基準」という。)必ず他の疾患を除外し、症状と検査所見を合わせて判定することとし、以下の主症状、副症状及び検査所見のうち、①主症状2項目及び副症状4 項目、又は②主症状1項目、副症状6項目及び検査所見2項目に該当した場合に、化学物質過敏症と診断する(各項目及びその順序は、乙4の1・29頁のとおり。)。 (主症状)(ア) 筋肉痛あるいは筋肉の不快感 (イ) 持続する倦怠感,疲労感 - 7 - (ウ) 関節痛(エ) 持続あるいは反復する頭痛(副症状)(ア) 咽頭痛(イ) 微熱 (ウ) 下痢・腹痛・便秘(エ) 羞明・一過性暗点(オ) 興奮・精神的不安定・不眠(カ) 皮膚のかゆみ,感覚異常(キ) 月経過多 (検査所見)(ア) 副交感神経刺激型の瞳孔異常(イ) 視覚空間周波数特性の明らかな閾値低下(ウ) 眼球運動の典型的な異常(エ) 皮膚のかゆみ,感覚異常(キ) 月経過多 (検査所見)(ア) 副交感神経刺激型の瞳孔異常(イ) 視覚空間周波数特性の明らかな閾値低下(ウ) 眼球運動の典型的な異常(エ) SPECTによる大脳皮質の明らかな機能低下 (オ) 誘発試験の陽性反応ウ厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班が平成9年(1997年)に提示した診断基準(甲6・15頁)上記診断基準は、基本的に石川基準と同じであるが、副症状として、上記イ(ア)ないし(キ)(ただし、(キ)は「月経過多その他の異常」である。)の ほかに、「集中力・思考力の低下・健忘」が掲げられている。 (2) A社退職までの原告の受診状況ア B耳鼻いんこう科(平成24年9月8日~11月10日)(甲17・11頁、18、31、乙5、原告本人5頁)原告は、平成20年▲月にA社に入社したが、平成24年8月頃から咳 が出るようになり、同年9月8日、B耳鼻いんこう科を受診したところ、 - 8 - 喉頭に発赤があり、気管支喘息等に効果のあるシムビコートタービュヘイラーなどが処方された。その後、原告は、同年11月10日まで同病院を受診したが、咳が続いたことから、同年10月20日に和医大病院呼吸器内科を紹介された。 B耳鼻いんこう科の診療録には、原告の傷病名として、急性咽頭炎、気 管支喘息(以上、平成24年9月8日開始)、両慢性副鼻腔炎(同月28日開始)、過敏性大腸症(同年10月13日開始)及び慢性喉頭炎(同年11月10日開始)と記載されている。また、同診療録の平成24年9月15日欄には、原告からの情報(S)として、「服薬にて改善している。 切れると悪化。」と記載されており、同年10月6日欄にも同旨の記載が ある。 イ れている。また、同診療録の平成24年9月15日欄には、原告からの情報(S)として、「服薬にて改善している。 切れると悪化。」と記載されており、同年10月6日欄にも同旨の記載が ある。 イ和医大病院(平成24年10月30日~11月27日)(甲17、18、31、原告本人5~7、27~31頁)原告は、平成24年10月30日、和医大病院呼吸器内科を受診し、同年8月上旬から湿性咳嗽があり、抗菌薬とムコソルバンを1週間内服した が、咳の症状が改善しないなどと訴え、簡易呼吸機能検査等を受けた。また、同日の診療録には、原告からの病状の説明として、「咳:話続けたり乾燥すると咳がでる、出ると止まらず横隔膜が痛くなる。寝起きと会社帰りに駐車場に向かう時咳が最も出る。シムビコート吸入では咳やや改善、アズネックスツイストへラでは改善なし。痰:最初は出てないが最近出て きた。たばこに過敏」などと記載されている。 和医大病院呼吸器内科の医師は、同日の診療録に、評価(A)として「咳喘息及び感染後遷延性咳喇疑い」と記載したが、呼吸機能検査の結果が予測値より良好であったことから、喘息としては非典型的であるとした。なお、原告が受けた免疫検査において、ヤケヒョウダニ、コナヒョウダニ及 びハウスダストのアレルギーが確認されている。 - 9 - 原告は、平成24年11月17日、前日に参加した飲み会に喫煙者がおり、飲み会の途中から咳がひどくなってきたとして、和医大病院救急外来を受診したところ、シムビコートタービュヘイラ―及び気管支喘息等に効果のあるメプチンエアーが処方された。同日の診療録には、原告の説明(S)として、「塩素系の洗剤、においで咳が出やすいことはあった」との記載 や、医師の評価(A)として、「慢性咳嗽刺激に 等に効果のあるメプチンエアーが処方された。同日の診療録には、原告の説明(S)として、「塩素系の洗剤、においで咳が出やすいことはあった」との記載 や、医師の評価(A)として、「慢性咳嗽刺激により誘発されている印象あり。」との記載がある。 原告は、平成24年11月27日にも和医大病院呼吸器内科を受診し、同病院での治療は終了となった。 ウ Dクリニック(平成24年11月頃~平成25年6月頃)(前提事実(2) ウ、甲19)原告は、平成24年11月頃から平成25年6月頃まで、Dクリニックを受診した。同病院の診療録には、傷病名として慢性気管支炎(平成24年11月17日:和医大病院救急外来を受診した日)、神経性胃炎(同年12月15日)、咳喘息(平成25年4月16日)の記載がある。なお、 同病院の平成24年の診療録は、保存期間5年が経過したため廃棄されており、診療の詳細は不明である。 エ E内科(平成25年6月15日~平成26年1月20日)(甲22、23)原告は、平成25年6月15日から平成26年1月20日まで、E内科 を受診し、気管支喘息等に効果のあるキプレス並びに抗ヒスタミン薬のザイザル、セレスタミン及びクラリチン等の処方を受けた。 E内科の診療録(表紙部分)には、傷病名として、アレルギー性鼻炎、気管支喘息(以上、平成25年6月15日開始)、不安神経症(同月17日開始)、蕁麻疹及び食物アレルギー疑い(同年12月21日開始。ただ し、食物アレルギー疑いについては、その後の検査により否定され、平成 - 10 - 26年1月14日に治療終了となった。)、花粉症疑い(同日開始)、ハウスダスト、ダニアレルギー(同月20日開始)と記載されている。 また、平成25年6月15日(E内科の初 - 10 - 26年1月14日に治療終了となった。)、花粉症疑い(同日開始)、ハウスダスト、ダニアレルギー(同月20日開始)と記載されている。 また、平成25年6月15日(E内科の初診日)の診療録には、「1年くらい前より咳が長引いている」、「ダニハウスダストタバコ」などと記載されている。同月17日の診療録には、「今日パソコンを見ると目 眩みたいに感じる」と記載されており、それまで処方されていたキプレス及びザイザルに代えてセレスタミンが処方されている。同年6月19日の診療録には、「以前ハウスダストでアレルギーありたばこの煙に… 機会なくて…」と記載され(…部分は判読不能)、平成26年1月20日の診療録には、「3年程前のアレルギー要注意ハウスダストダニ蚊」 と記載されている。また、平成25年7月31日以降の診療録には、数度にわたり、「CS」(化学物質過敏症の意味)と記載されている。 オ平成26年1月21日以降(甲22、30、原告本人54頁)原告は、平成26年1月21日からA社退職後の平成30年7月4日まで、平成27年1月10日に風邪でE内科を受診したことを除いて、医療 機関を受診しなかった。 (3) A社の退職(甲31、原告本人10~12頁)原告は、平成▲年▲月をもってA社を退職した。その後、原告は、平成28年7月から、自宅で週1時間子供一人に勉強を教えていたことがあり、また、平成29年4月からは、グループホームの夜間支援員として勤務してい る。 (4) A社退職後の平成30年7月以降の原告の受診状況ア Fアレルギー科(甲14、24、原告本人7~9、13、14頁)原告は、E内科に通院している頃(上記(2)エ)から、たばこアレルギーや化学物質過敏症(CS)を疑い 7月以降の原告の受診状況ア Fアレルギー科(甲14、24、原告本人7~9、13、14頁)原告は、E内科に通院している頃(上記(2)エ)から、たばこアレルギーや化学物質過敏症(CS)を疑い、医師にもその旨を尋ねていたが、原告 が訴えていればそうであるといったような回答であり、化学物質過敏症と - 11 - の診断はされなかった。原告は、平成26年1月にE内科への通院をやめた後も、上記の疑いを抱き続けていたが、化学物質過敏症の専門医がいる病院が東京にあり、そのような都会に行くのはリスクがあると考えたことや、同病院のホームページに、化学物質を使わないような生活を1週間以上続けてから来院するよう記載されていたことから、当時の状況で行くの は困難であると考え、同病院には行かなかった。その後、原告は、平成▲年▲月にA社を退職し、体調が改善してきたこともあり、専門医の話を聞きたいと考え、平成30年7月4日にFアレルギー科を受診した。 Gは、原告が平成31年1月11日の受診の際にHクリニックの受診を希望したことから、同病院への紹介状を作成した。その後、原告が同病院 で化学物質過敏症と診断されると、Gは、令和元年5月17日付けで、原告が化学物質過敏症であり、その初診日が平成24年9月8日である旨の診断書(下記(5)イ)を作成した。 イ Hクリニック(甲25、28)原告は、平成31年4月18日にHクリニックを受診した。原告が同病 院を受診したのは、同日のみである。Iは、原告に対し、問診や検査(自律神経検査、平衡機能検査、眼球追従運動検査)を行い、化学物質過敏症であると診断し、同日付けでその旨の診断書(下記(5)ウ)を作成した。 (5) 診断書等の記載内容ア C作成の受診状況等証明書(乙2) 衡機能検査、眼球追従運動検査)を行い、化学物質過敏症であると診断し、同日付けでその旨の診断書(下記(5)ウ)を作成した。 (5) 診断書等の記載内容ア C作成の受診状況等証明書(乙2) B耳鼻いんこう科のCは、令和元年5月8日付けで、受診状況等証明書を作成した。同証明書の記載内容は、要旨以下のとおりである。 (ア) 傷病名気管支喘息及び喉頭炎(イ) 発病年月日平成24年8月頃(ウ) 初診年月日平成24年9月8日 (エ) 終診年月日平成24年11月10日 - 12 - (オ) 初診から終診までの治療内容及び経過の概要平成24年9月8日の初診の際、局所所見と病歴より上記傷病名と診断し、抗菌薬とシムビコートタービュヘイラーの吸入薬を処方した。しかし、咳が続くため、同月21日に吸入薬をアズマネックスに変更した。 同年10月20日の再診時にも咳が治まらなかったので、和医大病院呼 吸器科に紹介した。 イ Gの診断書(甲14)Fアレルギー科のGは、令和元年5月17日付けで、国民年金・厚生年金保険の診断書(その他の障害用)を作成した。同診断書の記載内容は、要旨以下のとおりである。 (ア) 障害の原因となった傷病名化学物質過敏症(イ) 傷病の発生年月日平成24年頃(ウ) (ア)のため初めて医師の診察を受けた日平成24年9月8日(エ) 傷病の原因又は誘因タバコの煙、排気ガス。初診年月日不詳(オ) 現在の症状、その他参考となる事項 上記(ウ)、(エ)に関して「呼吸器内科等を受診しているが、化学物質が原因かは認識していなかったと思われる。2019年4月18日HクリニックI先生(J大学教授)によりCSと診断された。」(カ) その他の障害(令和元年5月 「呼吸器内科等を受診しているが、化学物質が原因かは認識していなかったと思われる。2019年4月18日HクリニックI先生(J大学教授)によりCSと診断された。」(カ) その他の障害(令和元年5月10日現症)自覚症状:頭痛、呼吸困難、咳嗽、全身倦怠感、目まい 他覚所見:高コレステロール血症、尿たんぱく(±)、眼球追従運動障害(Hクリニック)ウ Iの診断書(甲25・7頁)Iは、平成31年4月18日付けで、原告の診断書を作成した。同診断書の記載内容は、要旨以下のとおりである。 (ア) 病名化学物質過敏症 - 13 - (イ) 付記微量な化学物質、特に空気汚染化学物質に鋭敏に反応して著しく体調不良になる疾患である。関係者の配慮が望まれる。 エ Iの鑑定意見書、補充意見書及び補充意見書(2)(甲28~30)Iは、原告訴訟代理人の依頼を受け、原告がHクリニックを受診した平成31年4月18日に化学物質過敏症を発症していたといえる理由、原告 がいつ頃から化学物質過敏症を発症していたと考えられるか、以前の各医療機関の受診が化学物質過敏症による症状での受診であるといえるかなどについて、鑑定意見書、補充意見書及び補充意見書(2)を作成した。その内容は要旨以下のとおりである。 (ア) 化学物質過敏症の診断基準は、石川基準に該当しなくても化学物質過 敏症とされることがしばしばあることから、石川基準よりも後にできた1999年合意基準の方が比較的正しいと考えられる。 (イ) 原告については、平成31年4月18日の診療時の問診(自覚症状やそれ以前の症状について)及び神経生理学的検査の異常所見から、化学物質過敏症と診断した。その内容は要旨以下のとおりである。 a 慢性の症状問診 年4月18日の診療時の問診(自覚症状やそれ以前の症状について)及び神経生理学的検査の異常所見から、化学物質過敏症と診断した。その内容は要旨以下のとおりである。 a 慢性の症状問診によると、原告は、すでに10年以上にわたって咳、頭痛、息苦しさといった症状に悩まされており、慢性の症状が見られると判断した。 b 曝露による再現性 問診の結果、原告は、タバコの煙によって咳や頭痛が発生する、スプレーや芳香剤で体調を崩すということであり、また、原告の記入した「化学物質ばく露による反応」にペンキ、シンナーによって反応することなども書かれているので、化学物質に鋭敏に反応して症状が出現していると判断することができる。 c 低レベルでの曝露で症状が出現してくること - 14 - 原告は、タバコの煙の近くを通るだけで咳や頭痛が発生するということであるが、タバコの煙の近くを通るだけで大量の煙を吸うことはない。また、スプレー、芳香剤、ペンキ、シンナーについても、通常の人はこのような化学物質に曝露されても体調を崩すまで至ることはない。そこで、原告が低レベルの曝露で症状が出現していると判断で きた。 d 化学的に無関係な多種類の化学物質に反応を示すこと原告の記入した「化学物質ばく露による反応」には、症状の強さが10段階中でタバコの煙8、ペンキ、シンナー8、特定の香水、芳香剤、清涼剤8、マニュキュア、除光液等8とあるので、原告が化学的 に無関係な多種類の化学物質に反応を示したと診断した。 e 症状が原因物質の除去で改善又は軽快すること問診によれば、原告は、日常生活の中でスプレーや芳香剤を使わないようにしたことで症状が改善された。また、問診票には、家庭で化学物質を含む製品を使わなくな が原因物質の除去で改善又は軽快すること問診によれば、原告は、日常生活の中でスプレーや芳香剤を使わないようにしたことで症状が改善された。また、問診票には、家庭で化学物質を含む製品を使わなくなったことが記載されている。このよう な製品を使わないことで症状が改善したと思われるので、原因物質の除去で改善又は軽快すると判断した。 f 症状が多種類の器官系にまたがること原告の記入した「現在の症状」には、症状の強さが10段階中で頭痛、頭の圧迫感等の頭部症状7、眼の刺激、焼ける感じ、しみる感じ 等の鼓膜・呼吸器症状5、集中力、記憶力等認識の症状5、緊張しすぎ、あがりやすい等の情緒症状3とあるので、原告の症状が多種類の器官系にまたがると判断した。 g 神経生理学的検査での異常所見自律神経検査、平衡機能検査及び眼球追従検査で明瞭な異常が検出 されたことから、原告の愁訴が身体的な障害に起因するものであり、 - 15 - 精神的なものではないことが確認できた。 (ウ) 以下の経過からすると、原告は、化学物質過敏症の症状が変動しながらも継続しており、B耳鼻いんこう科で平成24年9月8日に咳症状で受診をしたのは、化学物質過敏症の症状で受診したものであるということは間違いない。 aB耳鼻いんこう科のカルテB耳鼻いんこう科の平成24年9月8日のカルテには、咳が出ることや喉頭に発赤があることが記載されているところ、気道の刺激症状(呼吸器系)は化学物質過敏症の症状としてよく出る症状であり、咳が続いて刺激で発赤を引き起こしたものと考えられる。末梢の知覚神 経C線維の防御反応か、中枢神経系による化学物質過敏症の反応なのかは現段階では区別することが難しいが、化学物質過敏症では上咽頭炎類似の症状が出易 を引き起こしたものと考えられる。末梢の知覚神 経C線維の防御反応か、中枢神経系による化学物質過敏症の反応なのかは現段階では区別することが難しいが、化学物質過敏症では上咽頭炎類似の症状が出易いことなどからすると、両者が合併している可能性が高いと思われる。 b 和医大病院のカルテ 和医大病院の平成24年10月30日のカルテには、主訴として乾性咳嗽の記載があるところ、乾性咳嗽は気道の粘膜の刺激症状であり、喘息はアレルギー反応で湿性咳嗽が出るので、原告の咳は喘息とは異なる。また、和医大病院では呼吸機能検査が行われており、全ての検査結果について予測値よりも測定値が良好なので、気管支喘息は否定 的である。 また、和医大病院の平成24年11月17日のカルテには、塩素系の洗剤のにおいで咳が出やすいことがあったこと、飲み会でタバコを吸っている人がいたが、途中から咳がひどくなり、救急を受診したことが記載されているところ、塩素系消毒剤やにおいで咳が出やすいと いう化学物質過敏症が完成されていたが、その症状がタバコの煙とい - 16 - う有害物質の刺激で完全に表面化したものと思われる。 cE内科のカルテE内科の平成25年6月15日のカルテには、1年くらい前から咳が長引いているとの記載があるところ、咳が長期に続いているだけでは、化学物質過敏症によるものとは断定できないが、その前後の経過 と問診から多種類の化学物質に鋭敏に反応していたといえることを考え合わせると、化学物質過敏症による可能性が高いと思われる。 また、E内科の平成26年1月20日のカルテには、ハウスダスト、ダニ、ガによるアレルギーについての記載があるが、これらのアレルギーの存在は化学物質過敏症を否定することにはならない。 。 また、E内科の平成26年1月20日のカルテには、ハウスダスト、ダニ、ガによるアレルギーについての記載があるが、これらのアレルギーの存在は化学物質過敏症を否定することにはならない。 (エ) 原告が作成した病歴・就労状況等申立書によると、原告は、平成26年1月21日から平成30年7月4日までの間、息苦しさ、頭痛、倦怠感、軽い咳などの症状があったようであり、この間、化学物質過敏症に罹患していたと判断される。既にこの段階で多器官系にまたがる症状が出現していて、通常人が耐え得る職場の空気汚染化学物質に反応を示し ている。 (オ) 以上の経過からすると、原告は、化学物質過敏症の症状が変動しながらも継続しており、B耳鼻いんこう科で平成24年9月8日に咳症状で受診したのは、化学物質過敏症の症状で受診したものであるということは間違いない。 (カ) なお、1999年合意基準では、6項目の診断基準に合致すれば、喘息やアレルギーなどが共存していても、化学物質過敏症の診断を下すべきであるとされている。とりわけ、咳喘息については、のどの痛みや乾性咳嗽を伴うことも多く、薬剤の副作用やタバコの煙などの刺激物質によって、鼻孔と咽喉の粘膜を刺激して傷害し、粘膜の浄化作用を下げ、 免疫反応を障害するので、咳喘息と化学物質過敏症が合併することは全 - 17 - く不思議ではないが、咳喘息は神経機能障害を伴うという報告はなく、神経機能障害は咳喘息だけで説明することができないので、神経機能障害を伴っている場合には、少なくとも化学物質過敏症を発症していると診断することは可能である。そして、原告は、神経機能障害が認められるので、化学物質過敏症を発症していたと診断することは当然であり、 少なくとも咳症状が平成24年以降継続して 敏症を発症していると診断することは可能である。そして、原告は、神経機能障害が認められるので、化学物質過敏症を発症していたと診断することは当然であり、 少なくとも咳症状が平成24年以降継続していると述べているので、この頃から化学物質過敏症を発症していたとみるのが妥当である。 また、化学物質過敏症の症状は一挙に多様な症状として現れるとは限らず、むしろ、拡散現象やスイッチ現象と呼ばれるように、症状が増えたり減ったりすることがある。初期症状としては一部の症状しか現れな いとしても、その後、多彩な症状を呈するようになったのであれば、初発症状の時点で、原因となった疾病が明確になっているような場合を除いて、化学物質過敏症を発症していたと言ってよいと考えられる。原告についても、仮に初期症状が咳症状しかなかったとしても、それで化学物質過敏症を否定することはできない。原告においては、問診により、 当初から多彩な症状を呈していたと診断していたので平成24年9月8日時点で化学物質過敏症を発症していたといえるが、仮に初発症状が咳症状しかなかったとしても、それで化学物質過敏症を否定することはできない。 2 争点1(化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であるか否か) (1) 初診日要件に係る判断枠組み国民年金法及び厚生年金保険法は、発症日ではなく初診日を基準として障害給付の支給要件を定めているが、これは、国民年金事業を管掌する政府又は厚生年金保険の実施機関において個々の傷病の発症日を的確に認定するに足りる資料を有しないことに鑑み、医学的見地から裁定機関の認定判断の 客観性を担保するとともに、その認定判断が画一的かつ公平なものとなるよ - 18 - う、当該傷病につき医師等の診療を受けた日をもって障害給付 鑑み、医学的見地から裁定機関の認定判断の 客観性を担保するとともに、その認定判断が画一的かつ公平なものとなるよ - 18 - う、当該傷病につき医師等の診療を受けた日をもって障害給付の支給に係る規定の適用範囲を画することとしたものであると解される(最高裁平成20年10月10日第二小法廷判決・集民229号75頁参照)。そうすると、国民年金法及び厚生年金保険法にいう「初診日」の判断には、その傷病が医師等の診療を受けた日に存在し、当該医師等の診療が当該傷病についてのも のであったことが、客観的かつ医学的な資料に基づいて合理的に認定できることを要するというべきである。 (2) 化学物質過敏症の発症の有無の判断方法認定事実(1)のとおり、化学物質過敏症は、一般的に「過去に大量の化学物質を一度に曝露された後、または長期的慢性的に化学物質に再接触した際に みられる不快な臨床症状」をいうとされる。もっとも、その病態や発症機序の解明には至っておらず、診断基準も確立されていないことから、化学物質過敏症を発症しているか否かの判断(事実認定)に当たっては、特定の診断や診断基準のみに依拠するのではなく、日本において使用ないし参照されている1999年合意基準や石川基準への当てはめに加え、化学物質への曝露 状況や症状の具体的経過等も総合的に考慮して判断するのが相当である。 (3) 1999年合意基準へのあてはめア 「健康障害が慢性的である。」(認定事実(1)ア(イ))について認定事実(2)アのとおり、原告は、平成24年8月頃から咳が出るようになり、同年9月8日にB耳鼻いんこう科を受診したものと認められ、同日 時点における咳の症状はまだ1か月程度であり、慢性的であったとは認められない。また、当時、咳の症状以外に から咳が出るようになり、同年9月8日にB耳鼻いんこう科を受診したものと認められ、同日 時点における咳の症状はまだ1か月程度であり、慢性的であったとは認められない。また、当時、咳の症状以外に医療機関の受診を要するような症状があったとは認められない。 したがって、平成24年9月8日時点において、「健康障害が慢性的である。」に該当するとは認められない イ 「関連性のない多種類の化学物質に対して反応が生じる。」(認定事実 - 19 - (1)ア(オ))について原告は、要旨、E内科の通院をやめるまで(平成26年1月20日まで)の間において、明確に自分が反応していると感じていた化学物質は、E内科で処方された薬を除けばタバコのみである旨、PM2.5や黄砂に反応するようになったのはE内科の通院をやめた後(平成26年2月以降)で あり、芳香剤、洗剤のにおい、ペンキのにおい、排気ガス等に反応するようになったのは平成28年頃以降である旨供述している(甲31、原告本人8~11、34~35頁。なお、原告本人8頁の主尋問における「2012年の2月から」というのは、「2014年の2月から」の誤りであると思われる。)。また、平成24年9月8日から平成26年1月20日ま でに原告が通院した病院の診療録をみても、平成24年9月8日時点において、タバコ以外のにおいや化学物質に対して反応が生じていたことを裏付けるような記載はほとんどみられない(認定事実(2))。 この点、和医大病院の平成24年11月17日の診療録には、「塩素系の洗剤、においで咳が出やすいことはあった」との記載があるが(認定事 実(2)イ)、その点について、原告は、あまり自分で洗剤を使う機会はなく、洗剤で咳が出やすいことがあったかはっきりとは覚えてい 洗剤、においで咳が出やすいことはあった」との記載があるが(認定事 実(2)イ)、その点について、原告は、あまり自分で洗剤を使う機会はなく、洗剤で咳が出やすいことがあったかはっきりとは覚えていない旨供述しており(原告本人49頁)、また、洗剤のにおいに反応するようになったのは平成28年頃以降である旨供述していること(甲31、原告本人10頁)からしても、その頃から塩素系洗剤の化学物質に対する反応が生じていた とは認め難い。しかも、一般に、咳喘息は、気温の変化、受動喫煙、香水や線香の煙などの刺激やにおいで悪くなることがあるとされており(乙11)、当時診察した医師が、咳喘息及び感染後遷延性咳喇疑いとされていた原告について「慢性咳嗽刺激により誘発されている印象あり。」と記載していること(認定事実(2)イ)からみても、塩素系洗剤のにおいによる 咳の発生があったとしても、それは化学物質への反応というより、刺激に - 20 - よる咳症状の誘発とみる方が自然である。 また、証拠(甲31、原告本人23、24頁、証人K3頁)によれば、原告は、平成19年頃に家族旅行で満員電車に乗った際、近くにいた人の香水の匂いで具合が悪くなったとのことである。しかし、そのエピソード自体が一時的なものであって、継続性や反復性があるものではないし、そ の原因が本当に香水であったのか、症状がどの程度であったのかもよく分からない上、咳喘息が香水や線香の煙などの刺激やにおいで悪くなる場合があることは上記のとおりであることからしても、これらの供述等により、原告に化学物質に対する反応が生じていたとは認められない。 さらに、原告は、E内科で出してもらった薬で目がけいれんするみたい な副作用みたいなものがあったと供述し(原告本人33頁)、E内 原告に化学物質に対する反応が生じていたとは認められない。 さらに、原告は、E内科で出してもらった薬で目がけいれんするみたい な副作用みたいなものがあったと供述し(原告本人33頁)、E内科の平成25年6月17日の診療録には、「今日パソコンを見ると目眩みたいに感じる」との記載がある(認定事実(2)エ)。しかし、これらの症状が処方薬により発生したかどうかは明らかでないし、仮にそうであるとしても、様々な処方薬の一部が原告に合わず、副作用が発生したかもしれないとい う程度のことであって(なお、当時処方されていたザイザルには、めまいやけいれんといった副作用が現れることがあるとされている。甲23の3)、これらの供述等は「関連性のない多種類の化学物質に対して反応が生じ」ていたことを裏付けるものとはいえない。 以上によれば、平成24年9月8日時点において、原告がタバコ以外の 化学物質に対して反応が生じていたとは認められず、「関連性のない多種類の化学物質に対して反応が生じる。」に該当するとは認められない。 ウ 「症状が多種類の器官にわたる。」(認定事実(1)ア(カ))について認定事実(2)のとおり、原告は、平成24年9月8日から、いったん通院を止めた平成26年1月20日までに、主として咳症状を訴えており、急 性咽頭炎、気管支喘息、慢性喉頭炎(以上、B耳鼻いんこう科)、咳喘息、 - 21 - 感染後遷延性咳嗽(以上、和医大病院)、慢性気管支炎、咳喘息(以上、Dクリニック)、気管支喘息(E内科)と診断されている。また、原告は、B耳鼻いんこう科では両慢性副鼻腔炎と、E内科ではアレルギー性鼻炎と診断されている。以上のとおり、原告は、平成24年9月8日から平成26年1月20日までの間、一貫して、咳症状や鼻やのどの 、原告は、B耳鼻いんこう科では両慢性副鼻腔炎と、E内科ではアレルギー性鼻炎と診断されている。以上のとおり、原告は、平成24年9月8日から平成26年1月20日までの間、一貫して、咳症状や鼻やのどの炎症の症状があ ったと認められ、それ以外の症状があったとも、その症状が多種類の器官にわたるとも認められない。 原告は、平成24年9月8日時点で、息苦しさ、頭痛、便秘、多汗、冷え性、疲労感、倦怠感、不眠、集中力低下といった症状があった旨主張し、原告本人尋問においてもその旨供述する(原告本人4~8、26、45~ 48頁)。しかし、平成24年9月8日から平成26年1月20日までの間の診療録には、原告主張の症状の記載は見当たらず、平成24年9月8日時点で、原告が主張するような症状があったとは認められない。また、仮に何らかの症状があったとしても、これらの症状は、疲労や自律神経の乱れ等により誰にでも多かれ少なかれ生ずるものであるし、原告は、頭痛 や疲労感、倦怠感について、その当時の残業が影響していると思っており、また、咳症状に比べてそれほど大変ではなかったので、医師に伝えなかった旨供述していること(原告本人47頁)からしても、原告が主張する上記症状は、残業等の疲労が蓄積したこと等による一時的で軽度のものであったとみて不自然ではなく、上記供述等により、原告の化学物質過敏症を 裏付けるような多種類の器官にわたる「症状」が生じていたとは認められない。 また、B耳鼻いんこう科の診療録には過敏性大腸症との記載が、Dクリニックの診療録には神経性胃炎との記載が、E内科の診療録には不安神経症や蕁麻疹との記載がある(認定事実(2)ア、ウ、エ)。しかし、①過敏性 大腸症については、強い抗菌力を有し下痢の副作用のある抗菌薬のジスロ 神経性胃炎との記載が、E内科の診療録には不安神経症や蕁麻疹との記載がある(認定事実(2)ア、ウ、エ)。しかし、①過敏性 大腸症については、強い抗菌力を有し下痢の副作用のある抗菌薬のジスロ - 22 - マックSR成人用ドライシロップの処方と同時に、整腸薬のセレキノン錠が処方されていることからすると(乙5、6)、その整腸薬の処方のために過敏性大腸症の傷病名がつけられたものと考えられるし(原告本人51、52頁)、②神経性胃炎については、原告が、原告本人尋問において、一時的なもので、ストレスが原因かもしれない旨供述している(原告本人5 2、53頁〕)。さらに、③不安神経症については、そもそも精神的なものであって化学物質に対する反応なのか疑問がある上、E内科の診療録に具体的な症状の記載がなく(甲22)、原告本人もその症状を具体的に供述していない(原告本人53頁。なお、その診断がされた平成25年6月17日に、気分がふさぐことやのどの違和感等に効果がある漢方薬の半夏 厚朴湯が処方されており(甲21-3、22)、その関係で不安神経症の診断が付された可能性がある。)。④蕁麻疹については、その診断がされた平成25年12月21日に、食物アレルギー疑いとも診断されており、食後に生じた一時的な症状とみて不自然ではない。これらの点からすると、診療録に記載されているこれらの傷病名は、化学物質過敏症を裏付けるよ うな多種類の器官にわたる「症状」とは認められない。 以上によれば、平成24年9月8日時点で、粘膜・呼吸器以外の器官に化学物質過敏症を裏付けるような症状があったとは認められないから、「症状が多種類の器官にわたる。」に該当するとは認められない。 エ小括 1999年合意基準では、認定事実(1)ア(ア)ないし 過敏症を裏付けるような症状があったとは認められないから、「症状が多種類の器官にわたる。」に該当するとは認められない。 エ小括 1999年合意基準では、認定事実(1)ア(ア)ないし(カ)の6項目に合致すれば、化学物質過敏症と診断すべきであるとされるところ(同ア)、上記アないしウのとおり、原告は、平成24年9月8日時点で、そのうち少なくとも3項目につき合致するとは認められないから、1999年合意基準を満たしているとは認められない。 (4) 石川基準へのあてはめ - 23 - ア症状等について認定事実(1)イのとおり、石川基準で化学物質過敏症と診断されるには、①主症状2項目及び副症状4項目、又は②主症状1項目、副症状6項目及び検査所見2項目に該当することが必要であるとされている。 しかし、上記(3)イのとおり、原告は、平成24年9月8日時点で、咳症 状等の粘膜・呼吸器系の症状があったものの、それ以外に石川基準にいう主症状又は副症状があったとは認められないから、石川基準で必要とされる主症状や副症状の数を満たしているとは認められない。 イ他の疾患の除外について(ア) 認定事実(1)イのとおり、石川基準で化学物質過敏症と診断されるに は、必ず他の疾患を除外する必要があるとされている。 そこで、他の疾患の有無について検討するに、認定事実(2)のとおり、原告の粘膜・呼吸器系の症状については、当時の通院先において、急性咽頭炎、気管支喘息、慢性喉頭炎(以上、B耳鼻いんこう科)、咳喘息、感染後遷延性咳嗽(以上、和医大病院)、慢性気管支炎、咳喘息(以上、 Dクリニック)、気管支喘息(E内科)と診断され、気管支喘息等に効果のある薬が処方されており、B耳鼻いんこう科の診療録には、服薬 後遷延性咳嗽(以上、和医大病院)、慢性気管支炎、咳喘息(以上、 Dクリニック)、気管支喘息(E内科)と診断され、気管支喘息等に効果のある薬が処方されており、B耳鼻いんこう科の診療録には、服薬により改善した旨の記載がある。 また、気管支喘息や咳喘息は、何らかのアレルギー(ハウスダスト、ダニ、スギ花粉など)によって生じる場合が多いとされているが(乙10、 11)、原告は、和医大病院で受けた免疫検査において、ヤケヒョウダニ、コナヒョウダニ及びハウスダストのアレルギーが確認されており(認定事実(2)イ)、E内科では、アレルギー性鼻炎、花粉症疑い、ハウスダスト・ダニアレルギー等の診断がされており(同エ)、気管支喘息や咳喘息の原因となるアレルギーがあったことがうかがわれる。 以上によれば、原告の粘膜・呼吸器系の症状については、当時、複数 - 24 - の病院が気管支喘息又は咳喘息と診断しており、原告にその原因となるアレルギーが認められることからしても、咳症状の原因は気管支喘息又は咳喘息とみて不自然ではなく、化学物質過敏症以外の疾患を除外することができない。 (イ) この点に関し、原告は、化学物質過敏症に喘息が合併することはあり 得るが、咳喘息は神経機能障害を伴うことがなく、神経機能障害は咳喘息だけで説明することができないため、神経機能障害を伴っている場合には、少なくとも化学物質過敏症に罹患していると診断することが可能であるところ、原告は神経生理学的検査所見のうち自律神経検査及び眼球追従運動検査において異常所見が認められることから、咳喘息を合併 していたとしても化学物質過敏症と診断することができる旨主張し、Iも同様の意見を述べる(認定事実(5)エ)。しかし、原告は、平成24年9月8日時点で粘膜・ が認められることから、咳喘息を合併 していたとしても化学物質過敏症と診断することができる旨主張し、Iも同様の意見を述べる(認定事実(5)エ)。しかし、原告は、平成24年9月8日時点で粘膜・呼吸器系の症状があったものの、それ以外の器官の症状があったとは認められない(上記(3)イ)。また、上記各検査が行われたのは平成31年4月18日のHクリニック受診時であって(認定 事実(4)イ)、平成24年9月8日のB耳鼻いんこう科受診時に上記各検査は行われておらず(乙5)、その時点から同様の異常所見があったとは認められない。そして、同日時点の咳症状については、気管支喘息や咳喘息で説明可能なものであるから、化学物質過敏症と喘息が合併していたとは認められない。 (ウ) なお、Iは、①和医大病院における主訴が喘息ではみられない乾性咳嗽であること、②和医大病院における呼吸機能検査の結果が良好であることを指摘し、気管支喘息は否定的である旨の意見を述べる(認定事実(5)エ)。しかし、上記①については、原告は、和医大病院において、平成24年8月上旬から湿性咳嗽があると訴えているし(甲17)、Iに おいても、咳喘息については乾性咳嗽がみられることがあるとしている - 25 - (認定事実(5)エ)。また、上記②については、和医大病院の医師は、上記検査の結果が良好であることから喘息としては非典型的であるとしつつ、原告に対する問診も踏まえて咳喘息との診断をしているところ(同イ)、このような同医師の診断が、呼吸機能検査の結果のみをもって不合理であるとは認められない。 ウ小括以上のとおり、原告は、石川基準において化学物質過敏症と診断されるために必要な症状の数を満たしているとは認められず、他の疾患が除外されるともいえな 理であるとは認められない。 ウ小括以上のとおり、原告は、石川基準において化学物質過敏症と診断されるために必要な症状の数を満たしているとは認められず、他の疾患が除外されるともいえないから(なお、化学物質過敏症と喘息が併存しているとも認められない。)、石川基準を満たしているとは認められない。 (5) 化学物質への曝露状況原告は、平成24年9月8日以前の化学物質への曝露状況について、A社での出退勤時に喫煙室前を必ず通らなければならず、その際、タバコの煙が漏れ出ているのを感じた旨供述する(原告本人48頁)。 しかし、この原告の供述を前提としても、タバコの煙への曝露は喫煙室前 を通過するわずかな時間であるし、また、喫煙室の二重ドアは閉じられていたとのことであり(原告本人48頁)、喫煙室前を通過する際のタバコの煙への曝露はわずかであったと考えられるから、大量の化学物質に一度に曝露されたといえないのはもちろんのこと、化学物質過敏症を発症するほどに、長期慢性的に化学物質に曝露され続けていたとはいえない。 また、原告によれば、A社ではもともとエアコンの下の席で勤務していたところ、平成26年2月頃、エアコンから離れた席に移動して喫煙者との関わりが減り、体調がましになったとのことである(甲31、原告本人8頁)。 しかし、席を移動する前の職場環境が、化学物質への継続的な曝露を裏付けるものとはいえず、むしろ、エアコンの風による温度変化等に反応していた 可能性も疑われ、化学物質過敏症を発症するほどに、長期慢性的に化学物質 - 26 - に曝露され続けていたとは認められない。 (6) 症状の具体的経過原告は、平成24年8月頃から咳が出るようになって同年9月8日にB耳鼻いんこう科を受診した に化学物質 - 26 - に曝露され続けていたとは認められない。 (6) 症状の具体的経過原告は、平成24年8月頃から咳が出るようになって同年9月8日にB耳鼻いんこう科を受診したが、その際に訴えていた症状は咳だけである。また、原告は、その後約1年半にわたり、複数の病院を受診したが、その間に訴え ていた症状は、主として咳と鼻・のどの炎症の症状であった(上記(3)ウ参照)。 他方で、原告は、平成26年1月20日にE内科を受診してから平成30年7月4日にFアレルギー科を受診するまでの約4年半にわたり、平成27年1月に風邪(発熱)でE内科を一度受診しただけで、そのほかに病院を受 診しておらず、その間の体調についても、だいぶましになっていた旨供述している(原告本人13、48、54頁)。また、原告は、E内科への通院をやめるまで(平成26年1月20日まで)の間において、明確に自分が反応していると感じていた化学物質は、E内科で処方された薬を除けばタバコのみであり、PM2.5や黄砂に反応するようになったのはE内科の通院をや めた後、芳香剤、洗剤のにおい、ペンキのにおい、排気ガス等に反応するようになったのは平成28年頃以降である旨供述している(甲31、原告本人8~11、34~35頁)。さらに、原告は、Fアレルギー科やHクリニックを受診する際、息苦しさ、のどの渇き、頭痛、咳、吐き気といった多様な症状を訴えている。 このように、平成24年9月8日時点の咳が出るという症状と、平成30年7月4日にFアレルギー科を受診するようになった頃以降の症状との間には、様々な相違があるといわざるを得ず、その症状に連続性があるとはいえない。 (7) 化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であるか否か(まとめ) するようになった頃以降の症状との間には、様々な相違があるといわざるを得ず、その症状に連続性があるとはいえない。 (7) 化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であるか否か(まとめ) 以上のとおり、原告は、平成24年9月8日時点で、1999年合意基準 - 27 - 及び石川基準のいずれについても満たしているとは認められない。また、化学物質への曝露状況をみても、原告は、同日以前に、大量の化学物質に一度に曝露したとも、化学物質過敏症を発症するほどに長期慢性的に化学物質に曝露したとも認められない。さらに、症状の具体的経過をみても、同日時点の症状は咳だけであり、その約6年後である平成30年7月以降の多様な症 状と連続性があるとはいえない。これらの事情を総合考慮すると、原告が平成24年9月8日時点で化学物質過敏症を発症していたとは認められない。 したがって、化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であるとは認められない。 (8) 原告の主張等について ア平成31年4月18日に化学物質過敏症を発症していたことを前提とする主張について原告は、Hクリニックを受診した平成31年4月18日に化学物質過敏症を発症していたことを前提に、同様の症状が平成24年9月8日から継続していることから、化学物質過敏症の初診日が同日である旨主張する。 しかし、上記(6)のとおり、平成24年9月8日時点の症状と、平成30年7月4日以降の症状との間には、様々な相違があり、連続性があるとはいえない。しかも、原告は、平成26年1月21日から平成30年7月4日まで、約4年半もの間、風邪によるものを除いて医療機関を受診していないところ、症状が継続していたことについての客観的かつ医学的な資料 は存在しない。 26年1月21日から平成30年7月4日まで、約4年半もの間、風邪によるものを除いて医療機関を受診していないところ、症状が継続していたことについての客観的かつ医学的な資料 は存在しない。 したがって、仮に平成31年4月18日に原告が化学物質過敏症を発症していたとしても、平成24年9月8日の時点で、原告が化学物質過敏症を発症していたとは認められない。原告の上記主張は採用することができない。 イ初診日通知に基づく主張について - 28 - 原告は、初診日通知を参考にすれば、化学物質過敏症の初診日は平成24年9月8日と認められる旨主張する。 しかし、初診日通知により線維筋痛症等の申立初診日を障害給付の初診日として取り扱うためには、「申立初診日に係る医療機関が作成した診断書又は受診状況等証明書の記載内容から、申立初診日において、請求者が 線維筋痛症等の症状に係る診療を受けていたものと認められること」などの要件に該当する必要があり(別紙3)、これを化学物質過敏症においても用いるとすれば、申立初診日において、化学物質過敏症の特徴的な症状、すなわち、微量の化学物質に反応して多種類の器官にわたる症状に係る診療を受けていたと認められることが必要と解される。しかるに、認定事実 (5)アのとおり、申立初診日(平成24年9月8日)の受診状況等証明書には、原告の咳症状の記載しかなく、同証明書をもって多種類の器官にわたる症状について診療を受けていたとは認められないから、上記要件には該当しない。 したがって、初診日通知を参考にしても、原告が平成24年9月8日の 時点で化学物質過敏症を発症していたとは認められないし、その初診日が同日であるとも認められない。原告の上記主張は採用することができない。 ウ 日通知を参考にしても、原告が平成24年9月8日の 時点で化学物質過敏症を発症していたとは認められないし、その初診日が同日であるとも認められない。原告の上記主張は採用することができない。 ウ G及びIの診断書等についてGの令和元年5月17日付けの診断書(甲14)は、原告が化学物質過敏症を発症しており、そのため初めて医師の診断を受けた日は平成24年 9月8日であるとしている。また、Iの平成31年4月18日付けの診断書(甲25・7頁)は、原告が化学物質過敏症であるとしている。 しかし、これまでに説示したとおり、原告は、平成24年9月8日時点で、1999年合意基準及び石川基準のいずれについても満たしているとは認められないし、化学物質過敏症を発症するような化学物質への曝露が あったとも認められず、同日時点の症状は、咳症状だけであって、平成3 - 29 - 0年7月以降の症状と連続性があるとはいえないのであり、これらの点を総合考慮すれば、化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であるとは認められない。Gの上記診断書の内容(認定事実(5)イ)や、Iの上記診断書の内容(同ウ)は、化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であるとは認められないとの上記認定判断を覆すには足りない。 また、Iの鑑定意見書等は、認定事実(5)エのとおり、①問診により原告が当初から多彩な症状を呈していたと診断されるので同日時点で化学物質過敏症といえるが、②仮に初発症状が咳症状しかなかったとしても、化学物質過敏症の症状は一挙に多様な症状として現れるとは限らず、むしろ、拡散現象やスイッチ現象と呼ばれるように、症状が増えたり減ったりする ことがあるので、初発症状としては一部の症状しか現れないとしても、その後、多彩な症状を呈 状として現れるとは限らず、むしろ、拡散現象やスイッチ現象と呼ばれるように、症状が増えたり減ったりする ことがあるので、初発症状としては一部の症状しか現れないとしても、その後、多彩な症状を呈するようになったのであれば、初発症状の時点で、原因となった疾病が明確になっているような場合を除いて、化学物質過敏症を発症していたと言ってよいと考えられるから、原告が同日時点で化学物質過敏症を発症していたことは否定できないとする。 しかし、上記①については、上記(3)イのとおり、B耳鼻いんこう科の診療録等からは、原告に平成24年9月8日時点で呼吸器・粘膜系以外の器官に症状があったとは認められず、判断の前提を異にするものであり採用することができない。また、上記②については、咳症状しか認められない時点で化学物質過敏症を発症していたとすることは、1999年合意基準 や石川基準に照らして困難といわざるを得ないし、上記のとおり、同日時点の症状と平成30年7月4日以降の症状との間に連続性があるともいえないから、可能性としてはともかく、原告が平成24年9月8日時点で化学物質過敏症を発症していたことが立証されているとはいえない。 したがって、上記診断書及び鑑定意見書等並びにこれらに基づく原告の 主張は、いずれも採用することができない。 - 30 - 3 争点2(本件通知書に記載された理由は理由の提示として十分なものであるか否か)(1) 行政手続法8条1項本文が、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合に同時にその理由を申請者に示さなければならないとしているのは、申請者の権利を制限するという申請拒否処分の性質に鑑み、行政庁 の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を申請者に 理由を申請者に示さなければならないとしているのは、申請者の権利を制限するという申請拒否処分の性質に鑑み、行政庁 の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を申請者に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該申請及び処分の根拠法令の規定内容、当該申請に係る審査基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該申請及び処 分の性質及び内容、当該申請の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。(同法14条1項本文(不利益処分の理由の提示)に係る最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)(2) 前提事実(3)のとおり、本件通知書には、本件処分の理由として、「障害厚 生年金を受給するためには、傷病の初診日が厚生年金保険の被保険者であった間であることが要件の1つとなっていますが、現在提出されている書類では、当該請求に係る傷病(化学物質過敏症)の初診日が平成24年9月8日(厚生年金保険の被保険者であった間)であることを認めることができないため。」と記載されている。 このような記載を読めば、原告が本件請求のために提出した書類を検討した結果、化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であることを認めることができず、障害給付の支給要件である初診日要件を充足しない旨の判断をしたという処分理由を、特に困難なく読み取ることができる。 そして、このような理由が提示されることにより、本件処分が、原告の提 出した上記書類等の根拠に基づかずに恣意的にされたものではないことが - 31 - 担保されるとともに、裁定請求者である原告において な理由が提示されることにより、本件処分が、原告の提 出した上記書類等の根拠に基づかずに恣意的にされたものではないことが - 31 - 担保されるとともに、裁定請求者である原告においても、不服申立てにおいて初診日要件(化学物質過敏症の初診日が平成24年9月8日であること)該当性を主張立証すべきであることが分かり、不服申立ての便宜にも資するといえる。 したがって、本件通知書の理由の記載は、上記(1)記載の行政手続法8条1 項本文の趣旨にかなうものといえ、同項に反する違法なものとは認められない。これに反する原告の主張は採用することができない。 4 障害基礎年金及び障害厚生年金を支給する旨の裁定の義務付け請求について障害基礎年金及び障害厚生年金を支給する旨の裁定の義務付け請求は、行政事件訴訟法3条6項2号のいわゆる申請型の義務付けの訴えであると解され るところ、上記のとおり本件処分は適法であり、同法37条の3第1項2号の「当該処分が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在である」場合には該当しないから、本件訴えのうち上記請求に係る部分は、不適法であり却下すべきである。 5 結論 よって、本件訴えのうち、障害基礎年金及び障害厚生年金を支給する旨の裁定の義務付けを求める部分は不適法であるからこれを却下し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地淳 裁判官三木裕之 - 32 - 裁判官中村雅人 (別紙1 、別 裁判官三木裕之 裁判官中村雅人 (別紙1、別紙2、別紙3省略)

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