平成14(ネ)5461 損害賠償請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成15年3月6日 東京高等裁判所 東京地方裁判所 平成13(ワ)531
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判決文本文4,765 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,91万円及びこれに対する平成12年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被控訴人控訴棄却第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,「控訴人の提起した選挙無効訴訟の上告審の審理は,上告提起から770日の長期間に及んだ。これは最高裁判所裁判官がことさらに訴訟を遅延させたものというべきであって,公職選挙法上のいわゆる百日裁判の規定に違反するとともに,控訴人の裁判を受ける権利を侵害する違法な行為である。これにより控訴人は多大の精神的苦痛を被った。」として,国家賠償法1条1項に基づいて,損害金91万円とこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,控訴人の請求を棄却したので,これに対し,控訴人が不服を申し立てたものである。 2 以上のほかの事案の概要は,次に記載するほか,原判決の該当欄記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における主張)原判決は,裁判官がした争訟の裁判につき国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が認められるためには,当該裁判官が,違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情がある場合であることを要するとし,本件において上記の特別の事情があるとは認め難いと認定した。 しかし,本件における事実関係からすると,最高裁判所裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いて がある場合であることを要するとし,本件において上記の特別の事情があるとは認め難いと認定した。 しかし,本件における事実関係からすると,最高裁判所裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いて訴訟を遅延させ,控訴人の訴えの利益を失わしめ,控訴人の本案判決を受ける権利を侵害したという特別の事情がある。 原判決の判断は,公職選挙法213条1項の百日裁判の趣旨に沿わないものである。また,昨今の司法改革,裁判の迅速化の流れに逆行するものである。2年以上の長期間を要しても合法であるなどということはできない。最高裁判所長官及び第二小法廷裁判長の証人尋問なくして,本件における審理の適正は図れない。このような審理を経ない原審の訴訟手続には,法令違反があるというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は次のとおりである。 2 事実の経過証拠(甲1,2,4,5,7,9,11,12,13,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実の経過として,次の各事実を認めることができる。 (1) 控訴人は,平成10年3月29日に施行された衆議院小選挙区(東京都第4区)の衆議院議員補欠選挙に,無所属候補として立候補したが,落選した。 (2) 控訴人は,平成10年4月28日,前記選挙において政党候補との間で選挙活動上著しい差別を受けたとして,前記選挙区の選挙人であるAとともに,東京都選挙管理委員会を被告として,選挙無効の訴えを東京高等裁判所に提起した(平成10年(行ケ)第121号)。 (3) 控訴人は,上記訴訟において,次の各主張をした。 ア公職選挙法の政党要件を定める規定及び重複立候補を認める規定は,憲法に違反する。 イ候補者届出政党の届出による候補者と本人等の届出による候補者 控訴人は,上記訴訟において,次の各主張をした。 ア公職選挙法の政党要件を定める規定及び重複立候補を認める規定は,憲法に違反する。 イ候補者届出政党の届出による候補者と本人等の届出による候補者との間の選挙運動上の差別は,憲法に違反する。 東京高等裁判所は,平成10年9月21日,控訴人らの上記各主張を排斥して,控訴人らの請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。 (4) 控訴人は,平成10年10月2日,前記(3)の判決を不服として,最高裁判所に上告を提起し,同月29日,上告理由書を提出した。その後,東京高等裁判所は,平成11年2月2日までに,最高裁判所に事件記録を送付し,最高裁判所において平成11年(行ツ)第16号事件(以下「本件上告事件」という。)として立件され,第二小法廷で審理されることになった。 (5) 他方,平成8年10月20日施行の衆議院議員総選挙のうち東京都の小選挙区選挙及び東京都選挙区の比例代表選挙について,選挙人から,複数の選挙無効の訴訟が提起され,東京高等裁判所は,平成10年10月9日判決を言い渡した。そして,この判決に対して,上告が提起され,最高裁判所は,平成11年に事件を立件した。 (6) 最高裁判所は,上記(5)の事件について,大法廷で審理を遂げ,平成11年11月10日,平成11年(行ツ)第7号事件,平成11年(行ツ)第8号事件及び平成11年(行ツ)第35号事件につき,それぞれ判決を言い渡した。 (7) 平成11年(行ツ)第7号事件の判示事項は,選挙区割りに関するものであるが,平成11年(行ツ)第8号及び同第35号事件の判示事項は,次のとおり,本件上告事件における控訴人の主張の論点と共通するか深く関連するものであった。 平成11年(行ツ)第8号事件の判示事項ア公職選挙法が衆議院議員選挙につ び同第35号事件の判示事項は,次のとおり,本件上告事件における控訴人の主張の論点と共通するか深く関連するものであった。 平成11年(行ツ)第8号事件の判示事項ア公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している重複立候補制の合憲性イ公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している比例代表制の合憲性平成11年(行ツ)第35号事件の判示事項ウ公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している小選挙区制の合憲性エ衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に選挙運動を認める公職選挙法の規定の合憲性(8) 前記(6)の判決後,最高裁判所第二小法廷は,本件上告事件について審理をしたが,(6)の大法廷判決の判示事項と共通するか深い関連を有する控訴人の主張の論点について判断するに当たり,第二小法廷所属裁判官のうち,3名の裁判官が,(6)の大法廷判決の判示事項について,法廷意見に対して,反対意見を表明していた関係から,平成12年2月16日,本件上告事件を最高裁判所大法廷で審理することとした。 (9) 最高裁判所大法廷は,平成12年4月19日ころ,本件上告事件の口頭弁論期日を同年7月5日と指定した。 (10) ところが,平成12年4月にときの総理大臣が急逝する事態が生じ,平成12年6月2日,衆議院は解散された。そのために,平成12年6月28日,本件上告事件は,再び第二小法廷で審理されることとなった。 (11) 最高裁判所第二小法廷は,平成12年9月29日に口頭弁論を開いた上,同年11月10日,衆議院の解散によって前記(1)の補欠選挙の効力は将来に向かって失われたものと解すべきであるから,控訴人らの訴えはその法律上の利益を失ったとして,原判決を破棄し,控訴人らの訴えを却下する旨の判決を裁判官全員一致の意見で言い渡した。 3 裁判の 将来に向かって失われたものと解すべきであるから,控訴人らの訴えはその法律上の利益を失ったとして,原判決を破棄し,控訴人らの訴えを却下する旨の判決を裁判官全員一致の意見で言い渡した。 3 裁判の遅延について裁判が遅延した場合に,国家賠償請求をすることができるか否かについては,さまざまな意見があり,ここで直ちに結論を示すことはできない。しかし,仮に賠償請求が可能であるとしても,裁判が違法に遅延したのでなければ,賠償を請求できないことは争いはない。 そこで,本件において違法な裁判の遅延があったかどうかを検討する。 控訴人は,公職選挙法の百日裁判の規定があることを理由に,770日を要した本件の場合は,違法な遅延がある旨主張する。しかし,百日裁判の規定は,あくまでも訓示規定であり,それに反することによって,直ちに裁判が違法になるものではない。 選挙訴訟は,民主国家における統治の機構を健全に維持するために,特に法律によって設けられた制度である。したがって,裁判所は,このような制度の趣旨を体して,その事案事案に応じて,適切に事件を処理するべきものである。それゆえ,個々の事件の裁判の遅速というものを,それだけを取り上げて,事件処理の適否を論じるのは適当ではない。判断を求められている事項の重要性,その問題に関する国民世論の動向,同種事件の審理の状況その他を含め,総合的に考慮して,選挙訴訟全体の事件処理を適切に行うよう配慮するべきものであるからである。 このような観点から,本件を見ると,最高裁判所の裁判官は,平成11年のほぼ同時期に最高裁に係属した選挙訴訟の中で,衆議院議員選挙が施行された時期が早い上記2の(5)の事件の処理を優先させたことが認められる。そして,そのような事件処理は,上記のような選挙訴訟全体の事件処理として,適切な判断によるもの 訴訟の中で,衆議院議員選挙が施行された時期が早い上記2の(5)の事件の処理を優先させたことが認められる。そして,そのような事件処理は,上記のような選挙訴訟全体の事件処理として,適切な判断によるものと考えられる。 そして,その結果,本件上告事件の審理に遅れが生じているが,本件上告事件で控訴人が主張する論点は,優先処理された上記2の(5)の事件の判示事項と共通するか,あるいは深い関連を有するものである。そうすると,本件上告をした控訴人としても,上記2の(5)の事件の大法廷判決が示されることにより,控訴人の主張に対する最高裁判所の見解の大要を把握することができるものと考えられる。 したがって,最高裁判所が選挙訴訟の全体を適切に処理するために,一部の事件を優先処理したことによって,控訴人が実害を受けたとまでは認められない。 そして,最高裁判所の裁判官は,上記2の(5)の事件の審理を終えた後,本件上告事件の審理をするに当たり,適法に審理する必要から,事件を大法廷で処理することとしたものであって,その判断も適切なものである。その後,再び第二小法廷に戻され,そこで所定の手続きを経て,判決に至っているが,そのような結果となったのは,思いがけなく,ときの総理大臣が急逝し,衆議院が解散されたことによるものである。その間の最高裁判所裁判官の処置や判断に,不適切な点は認められない。 以上検討してみると,最高裁判所裁判官は,選挙訴訟の全体を適切に処理しており,本件上告事件の処理についても,なんら違法な点は認められないものといわねばならない。 そうすると,最高裁判所裁判官の処理に違法な点があったことを前提とする,控訴人の請求は,理由のないものといわねばならない。 4 したがって,控訴人の請求を棄却した原判決は,結論において相当であって,本件控訴は理由が 所裁判官の処理に違法な点があったことを前提とする,控訴人の請求は,理由のないものといわねばならない。 4 したがって,控訴人の請求を棄却した原判決は,結論において相当であって,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成15年1月21日)東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官淺生重機裁判官及川憲夫裁判官原敏雄

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