主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中400日を原判決の刑に算入する。 押収してあるカメラケースの底部(大阪高等裁判所平成12年押第143号の4)及び蓋部(同押号の6)各1個を被害者Aの相続人に還付する。 理由 1 本件控訴の趣意は,弁護人徳永豪男作成の控訴趣意書,控訴趣意補充書(一)及び「本件における検察官の主張について」と題する書面(なお,弁護人は,控訴趣意書18頁1以下,特に(1)及び(3)の記載は,被告人の捜査段階における供述調書には任意性及び信用性もないという主張に尽きるものであり,違法収集証拠であることを主張するものではない旨法廷で釈明した。)に,これに対する答弁は,検察官柿原和則作成の答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから,これらを引用する。 2 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について論旨は,被告人は,平成10年12月2日夜警察署へ任意同行を求められ,その後,同月6日に逮捕されるまで,警察署やビジネスホテルに宿泊させられて取調べを受けていた上,被告人が拒むのに,手錠で引っ張られて,ポリグラフにかけられ,逮捕後も,強盗の犯意はなかったと言うと,捜査官から,嘘を言うなと言われて,被告人の述べるところを録取してもらえず,深夜11時,12時まで取り調べられ,しかも,取調べが夜遅くなって,読み聞けが翌日に回され,十分になされなかったものであるから,被告人の自白は,任意性に欠け,証拠能力がないのに,これらの証拠に証拠能力を認め,これを用いて事実を認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というにある。 そこで,検討するに,当審公判における被告人の供述及び証人B(以下,「B」という。)の証言,当審において取り調べた被告人の検察 響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というにある。 そこで,検討するに,当審公判における被告人の供述及び証人B(以下,「B」という。)の証言,当審において取り調べた被告人の検察官調書(当審検1)並びに原審公判における被告人の供述及び証人C(以下,「C」という。)の証言その他の関係証拠によれば,本件取調べの経過及び状況は,概ね次のとおりであったと認められる。 (1) 平成10年12月2日午前1時30分ころ,兵庫県加古川市内のD荘1階6号室の被害者A(以下,「被害者」という。)方の隣室の住人が,被害者方の火災に気づき,同日午前1時32分ころ,同アパートの他の住人を通じて119番通報し,同日午前1時39分ころから,消防による消火活動が開始され,施錠されている玄関引き戸を破壊して室内に突入した消防職員が被害者の遺体を発見して運び出した。 被害者の遺体には,頭頂部に長さ1ないし5.5センチメートルの5か所の割創があり,そのうち3か所が脳に貫通しているほか,胸部,頸部,顔面に15か所の切創,刺切創が存在した。そして,心臓内に血液がなく,気道中に煤などの付着がなく,血液中の一酸化炭素濃度も零であったことから,死因は失血死で,殺害後,焼損されたものと認められた。 (2) 加古川警察は,同日午前10時50分ころから犯行現場の検証を実施したところ,玄関の土間内から焼け残ったセカンドバッグを発見し,その在中品の健康保険証等からこれが被告人のものと判明したことから,被告人が本件に関係している疑いがあると判断し,その所在捜査を開始した。 (3) 同警察署所属の警察官Bらは,翌3日午前零時過ぎ,被告人をE市場跡で発見し,事情聴取のため,同警察署への同行を求めたところ,被告人は,拒むことなく同行に応じた。Bは,同警察署に着くと,被告人 (3) 同警察署所属の警察官Bらは,翌3日午前零時過ぎ,被告人をE市場跡で発見し,事情聴取のため,同警察署への同行を求めたところ,被告人は,拒むことなく同行に応じた。Bは,同警察署に着くと,被告人を取調室に通し,Cとともに,被告人に対する事情聴取を始め,被告人も拒むことなく取調べに応じたが,被告人は,「事件とは関係ない。」,「セカンドバッグは,被害者に預けた。」旨供述して,事件との関与を否認した。そこで,Bらは,さらに事情聴取が必要と判断し,警察署内の物置として使用していた部屋に,長机を二つ並べ,その上に布団を敷いて,寝床を設え,被告人にそこに寝るように言ったところ,被告人は,最初は,「嫌だ。」と言っていたが,Bらが,「はっきりせんといかんぞ。」,「おってもらわんと困るんや。」などと言うと,ほどなく「いいです。ここで寝ますわ。」と答えて,部屋に入った。 その夜は,Cともう一人の警察官が前記部屋の入口で待機した。 (4) 夜が明けて,BとCは,同日午前9時ころから,被告人に対する取調べを再開したが,被告人は特に拒むことなく取調べに応じた。 そして,Bらは,昼ころ,被告人の承諾を得て,ポリグラフ検査を行い,さらに引き続き午後9時か10時ころまで,被告人を取り調べた上,さらに事情聴取の必要があると判断して,Bが,被告人に対し,「今日も署に泊まってくれな。」と言ったところ,被告人は,「はい。」と答えて,拒否せず,前記の部屋に宿泊した。 なお,その夜も,警察官2人が被告人が宿泊する部屋の入口で待機した。 (5) 翌4日も,Bらは,午前9時過ぎころから午後9時か10時まで,被告人を取り調べた。被告人が特にこれを拒んだ様子は窺えない。 他方,こうした被告人に対する取調べと平行して,捜査官らは,同月3 日も,Bらは,午前9時過ぎころから午後9時か10時まで,被告人を取り調べた。被告人が特にこれを拒んだ様子は窺えない。 他方,こうした被告人に対する取調べと平行して,捜査官らは,同月3日午後3時から,被告人が寝泊まりしていたE市場跡の捜索を実施し,被告人の寝床付近から被害者の腕時計を発見したが,被告人は,Bらから,被害者の腕時計を持っていた理由を追及されると,当初は,被害者から借りた旨供述していたものの,その後,「被害者と交換した。」と供述を変遷させ,さらに,4日夕方になって,「盗んだ。」と供述するに至った。 そこで,Bらは,さらに事情聴取が必要と判断し,被告人に,加古川市内のホテルに泊まるように言ったところ,被告人は,行く旨答えて,拒否しなかったので,二,三名の警察官が被告人をホテルに連れて行き,宿泊させた。 (6) 翌5日も,Bらは,午前9時半ぐらいから,加古川警察署の取調室において,被告人を取り調べたが,これに対しても,被告人が特に拒んだ様子は窺われない。 そして,同日午後9時か10時ころになって,被告人が,被害者を殺して放火したことを認めたため,Bらは,翌6日午前零時56分ころ,被告人を強盗殺人及び現住建造物等放火の容疑で通常逮捕した。 (7) 被告人は,逮捕後も,Bらの取調べに対して,被害者を殺害して放火したことは認めたものの,強盗殺人の犯意は否認していたが,同月12日ころに至って,右犯意があったことを自白し,その後はその自白を維持して,同月25日,強盗殺人,現住建造物等放火及び死体損壊罪で起訴された。 ところで,平成10年12月3日に被告人を加古川警察署に同行して以降同月6日午前零時56分ころ被告人を逮捕するまでの被告人に対する取調べは,刑訴法198条に基づき,任意捜査としてなされ れた。 ところで,平成10年12月3日に被告人を加古川警察署に同行して以降同月6日午前零時56分ころ被告人を逮捕するまでの被告人に対する取調べは,刑訴法198条に基づき,任意捜査としてなされたものと認められるが,任意捜査においては,強制手段を用いることが許されないことはいうまでもないところ,任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは,右のような強制手段によることができないというだけでなく,さらに,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において,許容されるものと解される。 これを本件についてみると,まず,被告人に対する当初の任意同行については,捜査の進展状況からみて被告人に対する容疑が強まっており,事案の性質,重大性等に鑑みると,その段階で直接被告人から事情を聴き弁解を徴する必要性があったことは明らかであり,任意同行の手段・方法等の点において相当性を欠くところがあったものとは認め難く,また,右任意同行に引き続くその後の被告人に対する取調べ自体についても,その際に暴行,脅迫等被告人の供述の任意性に影響を及ぼすべき事跡があったものとは認め難い。 もっとも,被告人を三夜にわたり,警察署内及び捜査官の手配したホテルに宿泊させた上,前後3日間にわたって被疑者としての取調べを続行した点については,任意取調べの方法として必ずしも妥当なものであったとはいい難い。 しかしながら,先に認定したとおり,被告人は焼け跡を寝所にする住居不定者であって,身柄の確保の必要性が高かったものと認められる上,右三昼夜の間に被告人が取調べや宿泊を拒否し,取調室あるいは宿泊施設から退去し帰宅することを申し出たり,そのような行動に出た証跡はなく,捜査官らが て,身柄の確保の必要性が高かったものと認められる上,右三昼夜の間に被告人が取調べや宿泊を拒否し,取調室あるいは宿泊施設から退去し帰宅することを申し出たり,そのような行動に出た証跡はなく,捜査官らが,取調べを強行し,被告人の退去,帰宅を拒絶し制止したというような事実も窺われないのであって,これらの諸事情を総合すると,右取調べにせよ宿泊にせよ,結局,被告人がその意思によりこれを容認し応じていたものと認められる。 そして,以上を総合すると,被告人に対してとられた逮捕前の取調べ方法及びその内容は,社会通念上やむを得なかったものというべく,任意捜査として許容される限界を超えた違法なものであったとまではいえない。 また,関係証拠をつぶさに検討してみても,逮捕後の取調べにおいて,被告人の供述の任意性に影響を及ぼすような取調べがなされたとは認め難い。 これに対し,被告人は,まず,逮捕前の取調べ状況に関し,当審公判に至って,論旨に沿う供述を始め,さらに,「ホテルに連れて行かれた際に,手錠をかけられた。」とまで供述するに至っているが,Bの当審公判における証言によれば,ポリグラフ検査が実施されたのは,被告人が取り調べられていた取調室から廊下を挟んですぐの部屋であったと認められるのであって,当時,被告人が,特に拒むことなく取調べに応じていたことからすれば,そのような場所でポリグラフ検査を実施するのに,捜査官があえて手錠まで使用するとは考え難い。また,ホテルに連れて行かれるときに手錠をかけられた旨述べているところも,当審に至って突如なされたものである上,被告人は,原審公判において,捜査段階で警察官から暴行を加えられたことはない旨の供述をしており,また,被告人の当審公判における供述によっても,警察署内の部屋に宿泊させられた際に,被告人がこれを特に ,被告人は,原審公判において,捜査段階で警察官から暴行を加えられたことはない旨の供述をしており,また,被告人の当審公判における供述によっても,警察署内の部屋に宿泊させられた際に,被告人がこれを特に拒んだような様子は窺われないのであるから,被告人を警察署の外に連れ出すからといって,警察官が,この段階で,手錠を使用するとはにわかに考え難く,被告人の右供述を措信することはできない。また,逮捕後の取調べ状況に関しても,被告人が強盗殺人の犯意を認めるに至った経緯については,原判決が説示するとおりであって,その中に不自然な点は認められない上,原審において,弁護人は,被告人の自白調書の取調べにすべて同意し,その信用性のみを争っていたところ,被告人も,強盗殺人の犯意を認めた供述調書について,「自分の記憶と違うことが書いてあったが,早く終わらせたいために署名した。」と述べていたのであるから,作成した調書を読み聞けされなかったとまでは認め難く,また,「取調べの際,手を出されたことはない。」,「言いたいことが言えないようなことはなかったが,言っても信用してもらえなかった。」などと供述するに止まっていたのであるから,原審における被告人の供述によっても,その自白調書の任意性に影響を及ぼすような取調べがなされたとは認められない。なお,被告人は,当審に至って,逮捕後の取調べに際し,捜査官から足を蹴られたと述べるに至っているが,そのように供述を変遷させた理由につき,なんら首肯するに足りる説明もなされていないから,右供述を措信することはできない。 したがって,被告人の自白が任意性に欠けるとは認められないので,自白調書の証拠能力を肯定し,事実認定の用に供した原審の訴訟手続に法令違反はない。 論旨は理由がない。 3 事実誤認の控訴趣意について論旨は,原判決 白が任意性に欠けるとは認められないので,自白調書の証拠能力を肯定し,事実認定の用に供した原審の訴訟手続に法令違反はない。 論旨は理由がない。 3 事実誤認の控訴趣意について論旨は,原判決は,被告人の捜査段階の自白は信用できるとして,本件強盗殺人につき被告人を有罪としたが,右の自白は信用性に欠けるものであり,被告人には,強盗殺人の犯意はなかったから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。 そこで,記録及び当審における事実取調べの結果に基づき検討するに,本件捜査の過程の中に,被告人の自白の任意性に影響を及ぼすような事情がなかったことは,さきに,訴訟手続の法令違反の項で説示したとおりであり,また,捜査段階において,被告人が強盗殺人の犯意を自白するに至った経緯及びその後の供述経過は,原判決が(争点に対する判断)の項において認定説示するとおりであるところ,その中にことさら不自然な点を認めることができないことも,原判決が説示するとおりである。 そして,被告人が,強盗殺人の犯意を形成した経緯に関する部分を含めて,犯行に至るまでの経緯,被害者方を訪ねてから殺害するまでの行動,殺害の具体的態様及び被害者の状況,殺害後の心情や放火の具体的態様,奪取したカメラケースなどを投棄するに至った経緯など,犯行後の状況に関して自白するところが,いずれも詳細かつ具体的で臨場感に富み,証拠によって認められる客観的状況にもよく符合する事柄が多く含まれており,現実に体験した者でなければ語り得ないような事実が述べられていることも,原判決が説示するとおりであると認められる。この点につき,さらに付言すると,関係証拠によれば, (1) 被告人が,被害者に対する強盗殺人を決意してから被害者方へ赴くまでの経緯及び本件犯行実行後,被 ,原判決が説示するとおりであると認められる。この点につき,さらに付言すると,関係証拠によれば, (1) 被告人が,被害者に対する強盗殺人を決意してから被害者方へ赴くまでの経緯及び本件犯行実行後,被害者方を逃走して,当時,被告人が寝泊まりしていたE市場跡のいわゆる「ねぐら」に戻るまでの,一連の被告人の行動状況については,ブランデーを買い求めた酒店や,時間待ち(被告人の自白によれば,潮待ち)をした納屋及びそこでこのブランデーを飲みながら被告人が座っていた椅子,被害者方へ赴く途中,投げ捨てたブランデーの瓶,凶行後投げ捨てた凶器とされた芝刈鎌(なお,原判決の(罪となるべき事実)第一に「所携の厚鎌」とあるのは,「所携の芝刈鎌」の明らかな誤記と認める。)の各存在や,さらには,返り血を浴びて血のついたコートを捨てた場所,手を洗った場所の各所在などが,被告人の供述によってはじめて捜査官に判明し,被告人を同行見分した結果,いずれも被告人の供述どおり裏付けられており,これらによると,捜査段階における被告人の自白が自発的になされたことが看取されること,(2) 原判決も認定説示しているように,当時,被告人の預貯金は2000円にも満たない状態で,就職先のFでの食事も1日に1回程度で,日々の食事にも困る生活状態であったほか,やっと見つけた就職先の同所もまもなく辞めざるを得ない状況に至っており,職安での新しい職探しも思うに任せないなど,経済的・精神的にかなり追いつめられて,自暴自棄的な状況に立ち至っていたと窺えること,(3) そして,本件においては,被告人と被害者との間に,被告人が事前に準備していた芝刈鎌を被害者方まで携行し,この鎌で被害者を殺害するという凶行に及んだことを首肯せしめるに足りるような深刻な軋轢があった様子は,全く窺われないのであり,それにも の間に,被告人が事前に準備していた芝刈鎌を被害者方まで携行し,この鎌で被害者を殺害するという凶行に及んだことを首肯せしめるに足りるような深刻な軋轢があった様子は,全く窺われないのであり,それにもかかわらず,被告人が,敢えてそのような形態で被害者を殺害し,しかも,その後,放火に及んでいるのであって,この事実と,右2の事実とは,被告人に,被害者から金品を強奪して殺害しようとする意思があったことと矛盾がなく,却ってよく符合しているといえること,(4) 本件犯行後,被害者方の玄関引き戸が施錠されたままの状態になっていたことが明らかであり,被告人も,捜査段階から原審公判に至るまで,一貫して自分がその施錠をしたことを認めているところ,その際に使用した玄関引き戸の鍵につき,被告人は,当初の捜査段階では,キーホルダー付きの鍵であったと述べていたが,その後の取調べにおいて,使用したのは,本当は靴べら付きの鍵であり,そのように嘘を言ったのは,当初,強盗殺人の犯意を否認しており,靴べら付きの鍵とカメラケースやその中の品々が被害者方近くの用水路に散乱して投棄されていたことから,靴べら付きの鍵の使用の事実を話せば,被害者を殺害後にカメラ等を奪取したことがばれてしまうとの思わくから,このことを隠蔽するためであったとの趣旨の供述をして,この間の供述変遷の理由を明確にしていること,などが認められるのであって,これらの事実も,被告人の捜査段階における自白が,強盗殺人の犯意の点を含めて,信用性が高いことを裏付けているというべきである。 これに対し,被告人は,原審第3回公判以降,被害者殺害の動機は,かねてから,同人より「どぶネズミ」と侮辱されていたことから,このことを謝ってもらおうとして被害者方を訪れて話し合うなどするうち,口論となり,被害者を困らせようとして 公判以降,被害者殺害の動機は,かねてから,同人より「どぶネズミ」と侮辱されていたことから,このことを謝ってもらおうとして被害者方を訪れて話し合うなどするうち,口論となり,被害者を困らせようとして,カメラケースを持ち出して,その中身ともども被害者方近くの用水路に投棄したところ,被害者から,警察へ連絡すると言われたため,警察に通報されると困ると思って被害者を殺害したものである旨弁解して,強盗殺人の犯意を否認し,当審においても右弁解を基本的に維持している。しかしながら,原判決が,右被害者殺害の動機の点をはじめ,犯行に至る経緯及び犯行前後の状況,並びに被害者から奪取したとされる被害品についての各供述内容が,全体として曖昧な部分が多く,臨場感に乏しい上,不自然,不合理な点が多く,重要な部分で不自然な変遷が認められるとして,その信用性がない旨詳細に説示しているところは,概ね正当として是認することができる。若干補足すると,関係証拠によれば,(1) 被告人は,原審第1回公判においては,公訴事実をすべて認め,強盗殺人の犯意についても争っていなかったにも関わらず,原審第3回公判以降,前記のように供述を翻して,縷々弁解するに至ったものであるが,このように供述を翻した理由につき,当審に至って,原審弁護人から,争っても無駄だと示唆されたため,原審第1回公判において事実を認めたが,やはり真実を訴えたくなって,原審第3回公判において本当のことを述べるつもりになったと供述しているけれども,強盗殺人が非常に重い罪であることは,これまで数度に及ぶ服役経験のある被告人が知らなかったとはにわかに考え難いから,右供述変遷の理由として述べるところは,必ずしも説得的であるとはいえないこと,(2) 被告人は,原審公判において,捜査段階では,被害者から「どぶネズミ」と言われた かったとはにわかに考え難いから,右供述変遷の理由として述べるところは,必ずしも説得的であるとはいえないこと,(2) 被告人は,原審公判において,捜査段階では,被害者から「どぶネズミ」と言われたことは話していないと述べているところ,この点は,被告人の取調べに当たったBの当審公判における証言にも沿い,事実であると認められるのに,被告人は,当審に至って,原審公判で,被害者から「どぶネズミ」と言われたことを捜査官に話していないと述べた記憶はないなどと供述して,原審公判でなされたことの明らかな自己の供述内容まで否定しており,供述態度自体に真摯性が窺えないこと,(3) 被害品とされるキーホルダー付きの鍵について,被告人は,原審公判において,12月1日昼過ぎころ,被害者方を訪問した際,被告人が,職業安定所へ行くために被害者から自動車を借りることになり,その助手席に積んであったカメラケースを降ろしていくよう頼まれたため,これを降ろしたが,やはり自動車で行くのは止めて,自動車についたままのキーホルダー付きの鍵を,被告人が抜いて自分のポケットに入れ,そのままにしていたものであり,本件犯行後,逃走する際,被害者方付近の空き地に捨てたものである旨弁解するが,右キーホルダーには,自動車のキー1個のほか,被害者方の玄関引き戸の鍵1個や,被害者が現金や通帳などの貴重品を入れて押入の中に置いてあった金庫の鍵1個の合計3個の鍵が一緒に束ねられていたのであるから,そのような被害者にとって大切なものを,被告人が弁解するように,被害者が戸外に停めた自動車のドアに付けたままにしておいたり,その所在に関心を示さず,被告人がポケットに入れてそのままにしているのを放置するなどといった行動に出るとは考えにくいこと,(4) 同じく,被害品とされる靴べら付きの鍵について,被告人 ておいたり,その所在に関心を示さず,被告人がポケットに入れてそのままにしているのを放置するなどといった行動に出るとは考えにくいこと,(4) 同じく,被害品とされる靴べら付きの鍵について,被告人は,原審第5回公判において,被害者方で,ブランデーを飲みながら,外の空気を吸いに行こうと部屋を出るとき,被害者から,玄関の鍵を閉めておくように言われ,新聞受けからこれを取り出して鍵をかけた後,そのまま持っていたものであると弁解していたが,原審第8回公判における弁護人及び検察官からの質問に対しては,被害者を殺害後,同人方から逃走する際,新聞受けにあったこの鍵を取り出して玄関引き戸を施錠した旨,捜査段階における自白に沿う供述をし,さらに,同公判期日における裁判官からの補充質問において,原審第5回公判供述との間の矛盾を指摘されて,これに沿う内容に訂正する旨の弁解をするなど,この点に関して混乱を見せているところ,およそ,玄関引き戸を閉めるのに使用した鍵がキーホルダー付きの鍵と,靴べら付きの鍵のいずれであったのか,という点については,被告人においてたやすく混同,混乱をきたすような性質のものであったとは考えにくく,この点につき,さきにみたとおり,被告人が,捜査段階において,自己の供述変遷の理由を明確にした上で,これが靴べら付きの鍵であったと述べていることと対比すると,被告人の原審第5回公判における弁解及び原審第8回公判における裁判官からの補充質問に対する答えは,ことさら真相を隠蔽しようとする意図の下になされた疑いを入れる余地があること,などの事実が認められ,これらの事実も,被告人の原審及び当審公判における弁解が信用に値しないことを窺わせるものというべきである。 そうすると,被告人の捜査段階における自白は信用でき,これに反する被告人の原審及び当審公 これらの事実も,被告人の原審及び当審公判における弁解が信用に値しないことを窺わせるものというべきである。 そうすると,被告人の捜査段階における自白は信用でき,これに反する被告人の原審及び当審公判における弁解は信用に値しないものであって,被告人に,被害者に対する強盗殺人の犯意があったことについて,合理的疑いを入れる余地はないものというべきである。 所論は,被告人の捜査段階における自白内容の信用性がなく,被告人の原審公判弁解の方が合理的で信用に値すると主張し,その論拠として,①強盗殺人の犯意を認めた被告人の捜査段階の自白調書は,本件が強盗殺人であるとの予断を抱いた捜査官から,弁解を取り上げてもらえず,他方,被告人としても,殺人,放火,死体損壊という重罪を犯したことへの自責の念があったことから,無力感と諦めの精神状態に陥り,作成に応じたものであるから,信用性に欠ける,②被告人は,もともと貧窮に馴れており,金銭盗など思いもよらなかったことであるし,自白では,被告人は,当初,Gを殺害して金品を奪うことを考えたものの,同女の被告人に対する警戒が厳しいことからこれを断念し,その対象を被害者に変更したことになっているが,確かに,Gに対する恨みから同女を殺害しようとして芝刈鎌を盗んできていたことはあったものの,同女とは,平成10年10月末ころ,知人のHが間に立って和解し,以後,同女とは会っていないから,そのような経緯からしても,被告人が同女を殺害して金品を奪取しようなどと思うはずがない,③被告人は,当夜,ウイスキーを飲みながら午後8時ころから9時ころまでの間に強盗殺人,放火を決意し,さらにブランデー一本を飲んで気持ちを落ち着かせたと自白しているが,大量の飲酒をして気持ちを落ち着かせようとしたということ自体,経験則に反し不合理であるほか,被害者方 の間に強盗殺人,放火を決意し,さらにブランデー一本を飲んで気持ちを落ち着かせたと自白しているが,大量の飲酒をして気持ちを落ち着かせようとしたということ自体,経験則に反し不合理であるほか,被害者方が物色された形跡はなく,ポシェット,ショルダーバックなども盗られておらず,さらに,被告人にとって大切なものが入っているセカンドバックをわざわざ被害者方まで持参して,これを現場に残して逃走し,革手袋1双を持っていながら着用せず,指紋がついているはずのブランデー瓶やカメラなども被害者方の近くに投げ捨てているのであって,これらのことは,あらかじめ被害者を殺害して金品を強奪することを計画し,その上に罪証隠滅を図った者の行為としては,極めて不自然である,④被告人は,カメラケースの中に現金や貴金属,貯金通帳などの貴重品が保管されているのではないかと考えて,これを強奪したと自白しているが,被告人は,12月1日昼過ぎころ,被害者方を訪れた際,同人から,自動車の中のカメラケースを出しておくよう依頼されたことがあったほか,日頃からの被害者との交際の中で,カメラケースの中にはカメラが入っており,現金などの貴重品は入っていないことを知悉していたから,そのような物を敢えて強奪しようとしたというのは不自然であり,また,時計よりもこのカメラケースの方が遙かに高価なものであるのに,時計だけを自分のねぐらに持ち帰り,カメラケースを水中に投棄してしまったというのも,強盗の犯意ある者の行為としては不合理である,⑤被害者の創傷の部位や刺創の方向は,椅子に腰掛けようとしていた被害者にいきなり芝刈鎌で切りつけたとする自白と符合していない,などの事由を挙げている。 しかし,①の点については,Cの原審公判における証言及びBの当審公判における証言によれば,同人らが,被告人の取調べに当たっ 芝刈鎌で切りつけたとする自白と符合していない,などの事由を挙げている。 しかし,①の点については,Cの原審公判における証言及びBの当審公判における証言によれば,同人らが,被告人の取調べに当たった当初から,被告人が強盗殺人を犯したとの嫌疑を抱いて捜査に当たっていたのに対し,被告人は,強盗殺人の犯意を否認し,捜査官に追及されながらも,これを認めようとしなかったことが認められるが,先に述べたとおり,その過程で捜査官が無理な取調べをした状況は窺えず,被告人が,逮捕後6日目位から概括的な強盗殺人の自白を始め,以後,一貫してこれを維持している上,仮に,本件の動機,きっかけが,被害者から「どぶネズミ」と侮辱されたことにあるというのが真実ならば,捜査官に対して,まず,そのことを主張して,被害者を殺害するに至った動機や心情を訴えてしかるべきであるのに,関係証拠によっても,被告人が,そのようなことを捜査官に訴えておらず,被告人も,原審公判において,このことを認めているのであるから,弁解を取り上げてもらえない無力感から捜査官に言われるままに自白調書の作成に応じたとは認められない。 ②のうち,被告人が貧窮に馴れていたから金銭盗などは思いもよらなかったとして,強盗殺人の犯意の自白の不自然さをいう点については,原判決が,(犯行に至る経緯)の項で詳細に認定しているとおりの,被告人の勤務先からの解雇の経緯やその後の就労状況及び被告人の経済状態,さらには,Gや被害者との関係などのほか,被告人が,知人のHから金員をもらい受けていたことがあることなどに照らしても,なんら不自然ではないし,Gとの関係をいう点についても,確かに,Hの仲立ちがあってから,被告人と被害者とが出会っていないことは,所論のとおりであるが,関係証拠によると,その後も,被告人は,Hに対し,逆恨みし 自然ではないし,Gとの関係をいう点についても,確かに,Hの仲立ちがあってから,被告人と被害者とが出会っていないことは,所論のとおりであるが,関係証拠によると,その後も,被告人は,Hに対し,逆恨みしていたGに会って金を借りたいなどといった言動を弄したことがあり,同女に対する執着を示していたことが認められるから,被告人が,当初,殺害の対象としてGのことを考えたとしても,不自然とはいえず,同女の被告人に対する警戒が厳しかったことから,これを断念して,その対象を,かねて交際があり,裕福であるとの印象を持っていた被害者に変えたというのも了解可能なことといえる。 ③の点についても,被告人には,日頃から深い飲酒癖があったと認められる上,本件当時も,「ねぐら」でウイスキーを飲みながら来し方行く末にあれこれ思いを巡らすうち,酒の酔いも手伝い,自暴自棄的な状況に陥っていったことが窺えるのであり,本件犯行は,そのような状態に陥った被告人が,窮余思いついたものであって,事前に緻密に計画されたものではなかったから,所論指摘のような行動は,そのような状況の下で強盗殺人を考えた者の行動として十分了解可能なものであり,不自然であるとはいえない。また,物色の形跡が乏しいことについても,被告人は,検察官調書中で,「いざAを殺してしまい,血を流して横たわっている姿を見ると,急に恐ろしくなり,早いとこ現金や金目のものを取って火を点けて逃げなければ,という気持ちで一杯になった」旨,この間の心境を合理的に語っているところである。 ④の点についても,12月1日昼過ぎ,被害者からカメラケースを自動車から出すよう依頼されたとする被告人の原審公判弁解が信用できないことは,さきに説示したとおりであるから,これによって,被告人がカメラケースに現金などが入っていないことを明確に認識し ラケースを自動車から出すよう依頼されたとする被告人の原審公判弁解が信用できないことは,さきに説示したとおりであるから,これによって,被告人がカメラケースに現金などが入っていないことを明確に認識していたことを裏付けることはできず,また,確かに,被告人は,日頃の被害者との交際状況から,同人がカメラやレンズを相当数所持するなどしていたことを知っていたことが窺えるけれども,本件カメラケースは,アタッシュ型のハードケースであって,カメラやレンズの趣味がない者にとっては,その外観から直ちにカメラケースであると判別できるものとは考え難いから,被告人において,その中に,現金などの貴重品が入っているのではないかと期待したとしても,格別不合理であるとはいえない。そして,カメラケースの蓋に,ブロックなどに叩きつけられたことに符合する凹損が見られることや,用水路及びその近辺に点々とカメラやレンズなどが投棄されていることからすると,現金などが入っていることを期待して,カメラケースを水路のブロックに叩きつけて壊したところ,中に現金など,期待するものが何も入っていなかったことから,パニック状態になり,これらを用水路に次々と投げ捨てて逃走したという被告人の自白の方が,はるかに合理的かつ自然であるといわざるを得ないのである。 ⑤の犯行態様に関する自白と被害者の創傷の部位などとの食い違いをいう点については,関係証拠によっても,不自然さは認められず,所論は,独自の見解に基づくものであって,採用できない。 以上考察したところによると,本件において,被告人が,発作的,衝動的に被害者を殺害し,放火してしまったものであり,強盗殺人を犯したものではないとの所論は採用することができず,被告人に対し,強盗殺人の成立を認めた原判決に誤りはない。 論旨は理由がない。 なお, 害者を殺害し,放火してしまったものであり,強盗殺人を犯したものではないとの所論は採用することができず,被告人に対し,強盗殺人の成立を認めた原判決に誤りはない。 論旨は理由がない。 なお,弁護人は,控訴趣意書提出期限後に提出した控訴趣意補充書(一)において,本件は酩酊犯罪であり,被告人の行為には,刑法39条,少なくとも同条2項を適用すべきであると主張しているので,職権で判断すると,確かに,被告人が,本件犯行前に,ウイスキーやブランデーを相当量飲んでいた可能性を否定することはできないが,被告人の捜査段階の自白調書によれば,被告人は,犯行前後の状況を具体的に記憶しており,また,犯意の形成過程に関する供述内容も合理性を欠くものとはいえないので,被告人が,アルコールの影響により,是非弁別の能力あるいは是非弁別にしたがって行動する能力に問題があったとは認められず,本件当時,被告人が心神喪失や心神耗弱の状態にあったとは認められない。 4 法令適用の誤りの控訴趣意について論旨は,原判決は,判示第二の罪につき有期懲役刑を選択しながら,判示第一の罪については,殺人ではなく,強盗殺人として無期懲役刑とし,刑法47条を適用すべきであるのに,同法46条2項本文を適用するという誤りも犯した,という。 しかし,右論旨は,原判示第一の事実の認定に誤りがあることを前提とするものであるところ,さきに述べたように,原判決に事実の誤認は認められず,原判決が判示第一において,強盗殺人の事実を認定したのは正当であるから,その結果,原判示第一の所為に刑法240条後段を適用した上,無期懲役刑を選択し,判示第二の罪について選択した有期懲役刑との間の併合罪の処理にあたり,同法46条2項を適用したのも正当である。 論旨は理由がない。 5 量刑不当の控訴趣意について 適用した上,無期懲役刑を選択し,判示第二の罪について選択した有期懲役刑との間の併合罪の処理にあたり,同法46条2項を適用したのも正当である。 論旨は理由がない。 5 量刑不当の控訴趣意について論旨は,要するに,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑が重すぎて不当である,というのである。 本件は,女性にしつこく付きまとったことから職を失い,金銭に窮して,アパートも退去せざるを得なくなって野宿同然の生活を送っていた被告人が,いよいよ金銭に窮して,右アパートの隣室に居住していて知り合った老人を殺して金銭を奪った上,罪証を隠滅するためにアパートを放火しようと企て,平成10年12月2日未明,兵庫県加古川市の被害者方居室を訪ね,同室内において,被害者に対し,いきなり所携の芝刈鎌で,頭部,胸部などを多数回切り付けて,頭頂部割創などの傷害を負わせて,失血死させた上,腕時計など14点(時価合計61万5000円相当)を強取し,さらに,同室内において,被害者の死体や絨毯などに灯油を撒いて,ライターで点火して放火し,死体を損壊するとともに,他にも居住者のいる右アパートの床板,天井など約146.43平方メートルを焼損した,という強盗殺人,死体損壊及び現住建造物等放火の事案である。 原判決も適切に説示しているように,強盗殺人については,被告人は,女性につきまとったために,勤務先を解雇されたことなどから,金銭に窮し,入居先のアパートを出て,E市場跡の廃墟に入り込んで生活をするようになったところ,その後,マッサージ免許を有しているかのように装って,マッサージ見習いの職に就いたものの,無給であったことから,日々の食事にも事欠くようになったため,そのような経済的窮乏から逃れるために,かつて住んでいたアパートの隣室に住んでいた被害者が,裕福そうな一人暮ら 見習いの職に就いたものの,無給であったことから,日々の食事にも事欠くようになったため,そのような経済的窮乏から逃れるために,かつて住んでいたアパートの隣室に住んでいた被害者が,裕福そうな一人暮らしの老人であることから,犯行が容易であると考えて,本件犯行に及んだものであって,その動機は,誠に身勝手で自己中心的なものといわざるを得ず,酌量の余地はない。 しかも,その犯行は,当初から芝刈鎌を携行し,深夜になるまで待ってから,被害者方を訪ねるなど,計画的犯行であることを否定できないのみならず,被害者が被告人を居室に招き入れるや,躊躇することなく,その頭頂部目掛けて芝刈鎌を振り下ろし,被害者が確実に死亡するまで多数回にわたって,頭部,前頸部,前胸部などを斬りつけたというものであって,冷酷で残忍なものといわねばならない。 右凶行の結果,被害者の尊い生命が失われているのであるが,被害者は,昭和2年に,兵庫県加古川市で出生し,長じてからは家業の靴下製造業を営み,昭和36年には結婚して2女をもうけ,その後昭和61年に離婚し,家業も経営不振から平成2年ころ廃業したものの,同年10月から,本件アパートに居住し,以後,老齢年金を受給して,一人暮らしをしていたものであり,被告人とはたまたまアパートの部屋が隣りであったため,近所付き合いをしていたという関係にすぎないのに,被告人がアパートを出ることになった際には,引っ越しを手伝い,その後も,風呂を貸すなど,親身になって,被告人と接しており,被告人から殺害されるような謂われは何もない上,本件当日も,深夜であったのに,被告人を信頼して自室に招き入れているのであって,被告人から突如殺害されるなどとは予想だにしていなかったものと思われ,一瞬のうちに残忍な方法でその生命を奪われた被害者の心情は無念この上なかったもの 被告人を信頼して自室に招き入れているのであって,被告人から突如殺害されるなどとは予想だにしていなかったものと思われ,一瞬のうちに残忍な方法でその生命を奪われた被害者の心情は無念この上なかったものと推察され,誠に哀れというほかはない。被害者の遺族の被告人に対する処罰感情が非常に強いのも,これをよく理解し得るところである。 また,放火及び死体損壊についても,強盗殺人の犯行の証拠を隠滅するために,当初から計画されていたものである上,失火を装うとともに,確実に証拠を隠滅しようと,被害者の遺体やその周辺に灯油をまき散らし,さらに,被害者宅の玄関に鍵をかけて火災の発見や消火を遅らせようとまでしているのであって,狡猾で悪質極まりないものであり,被害者を殺害された挙げ句,遺体まで焼かれた被害者の遺族の悲しみは大きく,焼損したアパートなどの財産的被害,居住者や近隣住民に与えた恐怖感や不安感も甚大である。 被告人は,住居侵入・強姦,傷害,窃盗などの前科6犯を有しており,規範意識の低下にも著しいものがあるといわねばならない。 そうすると,被告人が,当審に至り,受給した年金から,法律扶助協会に対し,合計20万円の贖罪寄附に及び,今後も寄附を続けていきたいと述べていること,最終前科が10年以上前のものであることなどの事情を考慮しても,被告人に対し,無期懲役をもって臨んだ原判決の量刑は相当であって,これが重すぎて不当であるとは認められない。 論旨は理由がない。 6 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して,当審における未決勾留日数中400日を原判決の刑に算入し,当審で押収したカメラケースの底部(大阪高等裁判所平成12年押第143号の4)及び蓋部(同押号の6)は,原判示第一の罪の賍物で被害者に還付すべき理由が明らかであるから 中400日を原判決の刑に算入し,当審で押収したカメラケースの底部(大阪高等裁判所平成12年押第143号の4)及び蓋部(同押号の6)は,原判示第一の罪の賍物で被害者に還付すべき理由が明らかであるから,刑訴法347条1項によりこれを被害者Aの相続人に還付し,当審における訴訟費用は,同法181条1項ただし書を適用して,これを被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官那須彰裁判官樋口裕晃裁判官宮本孝文)
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