- 1 -主文 原告らの,別紙目録記載の起債のうち,栗東市が平成18年3月31日に滋賀県から起債許可を得て,同年5月25日に5260万円を借り入れた部分に係る起債行為の差止めを求める訴えを却下する。 被告は,別紙目録記載の起債のうち,前項の部分を除く起債行為をしてはならない。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,別紙目録記載の起債の起債行為をしてはならない。 第2事案の概要 本件は,栗東市が,道路建設事業費のための財源に充てるとして,43億4900万円の地方債を起債することを予定しているところ,栗東市の住民である原告らが,この起債は,実質的には私企業であるa株式会社が所有管理する予定の東海道新幹線の新駅建設に要する仮線工事費のための財源に充てられるものであるとし,上記起債行為は地方財政法(以下「法」という。)5条等に反し違法であるとして,被告に対し,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,起債行為の差止を求めたものである。 前提事実(証拠を掲記しない事実は争いがない。)(1)当事者原告らは,栗東市の住民であり,被告は,栗東市長であり,栗東市の起債行為をする権限を有するものである。 (2)新駅設置に係る基本協定書及び覚書の締結滋賀県,栗東市,関係各市長などで構成される東海道新幹線(仮称)α駅設置促進協議会(以下「促進協」という。)及びa株式会社(以下「a」という。)は,平成14年4月25日,東海道新幹- 2 -線米原・京都間の新駅(以下「新駅」という。)設置に関し,基本協定書(以下「本件基本協定書」という。)及び覚書(以下「本件覚書」という。)を締結した。 本件協定書1条において,新駅の設置位置は栗東市とされ,同5条1項において,工事は仮線工法により施行することとされ (以下「本件基本協定書」という。)及び覚書(以下「本件覚書」という。)を締結した。 本件協定書1条において,新駅の設置位置は栗東市とされ,同5条1項において,工事は仮線工法により施行することとされ,工事費は滋賀県,栗東市,促進協の構成各市町が負担するものとされた。 また,本件覚書2条1項において,工事内容については,東海道新幹線の運行に影響を及ぼさないものとするとされた。 (甲14の1・2)(3)都市計画道路「β線」の拡張計画栗東市は,新駅の設置及びその周辺土地区画整理事業に伴う交通需要に対応するためとして,都市計画道路を変更する決定をし,平成14年8月30日,告示した。 都市計画道路の1つである「β線」(以下「本件道路」ともいう。)は,現在,「γ」トンネルの部分(以下「本件トンネル」という。)で新幹線線路下を通っており,同トンネル部分の道路幅員は4.5メートル,同トンネル天井部分のコンクリート構造物全体の幅は8メートルである。本件道路は,上記変更決定により,幅員30メートルに拡張されることとなった。 (乙1ないし4)(4)新駅設置の施工方式既存の線路に新たに駅を設置する場合,新幹線を運行に影響を及ぼさないこと,すなわち運行したまま駅舎設置工事を行うこととされたことは,本件覚書のとおりである。設置予定地の線路が高架構造である場合には,運行したままの工事が可能であるが,本件の新駅設置予定地の線路は,高架構造ではなく,盛土構造で作られているので,新幹線を時速270キロメートルで運行させたまま,盛土を掘削して駅舎を建設することは,安全上できない。 - 3 -そこで,施工者であるaにおいて,現本線の区画整理事業対象地側に総延長1950メートルの仮線を設け,工事期間中は暫定的に仮線を使って新幹線を運行し,新駅の駅舎完成後は,仮線は計画線 い。 - 3 -そこで,施工者であるaにおいて,現本線の区画整理事業対象地側に総延長1950メートルの仮線を設け,工事期間中は暫定的に仮線を使って新幹線を運行し,新駅の駅舎完成後は,仮線は計画線として活用し,一部は撤去するという仮線工法が,施工方法として採用された。 (5)概算事業費及びその負担割合平成17年3月14日に開催された関係首長会議において,滋賀県が提示した資料(同年2月27日時点でのaの概略設計に基づく概算額)によれば,新駅建設の概算事業費及びその負担割合は以下のとおりである。 新駅建設の概算事業費は240億円であるが,新駅設置予定地が盛土であり,仮線建設が必要であることから工事費が高額となるという特殊な事情があるため,この特殊要因に係る事業費は,関係市との負担分から切り離し,滋賀県と栗東市とが1/2ずつ負担すると合意した。 この債務負担については,平成17年6月24日に栗東市議会の議決を経た。 ア駅舎132億3500万円(以下「駅舎等工事費」という。)負担割合滋賀県66億1800万円(1/2)栗東市34億0800万円(1/3)寄付10億関係5市及び大津市22億0900万円イ特殊要因101億5800万円(以下「仮線工事費」という。)内訳仮線83億1900万円変電所9億9300万円- 4 -中間セクション8億4600万円負担割合滋賀県50億7900万円(1/2)栗東市50億7900万円(1/2)ウβ線跨線橋構造物事業費6億0700万円負担割合栗東市6億0700万円(1/1)(甲1,乙14)(6)道路と鉄道との交差に関する運輸省・建設省協定ア運輸省大臣官房国有鉄道改革推進総括審議官,建設省都市局長及び建設省道路局長は,昭和63年5月31日,道路と鉄道とが相互に交 (甲1,乙14)(6)道路と鉄道との交差に関する運輸省・建設省協定ア運輸省大臣官房国有鉄道改革推進総括審議官,建設省都市局長及び建設省道路局長は,昭和63年5月31日,道路と鉄道とが相互に交差する場合等における道路側と鉄道側との協議事項について,その基準を定め,もって交通の安全及び発達に寄与することを目的として,以下の内容の「道路と鉄道との交差に関する運輸省・建設省協定」(官鉄施第52号の3。 以下「本件協定」という。)を締結した。 第4条(新たに交差を設置する場合の費用負担)道路の新設若しくは改築又は鉄道の新設若しくは改良に関する工事により新たに道路と鉄道との交差を設置する場合においては,当該工事の計画者が交差に要する工事費の全額を負担する。 第7条(重複工事の負担)道路の新設又は改築及び鉄道の新設又は改良の計画が確定しており,当該計画が同時に実施される場合において当該計画に係る交差の設計が重複するときは,その重複する部分に係る工事については,第4条等の規定にかかわらず,道路側及び鉄道側はそれぞれこれに要する費用の2分の1を負担する。 イ国土交通省都市・地域整備局長,同省道路局長及び同省鉄道局長は,平- 5 -成15年3月20日,「道路と鉄道との交差に関する協議等に係る要綱」(平成15年3月20日国都街第155号,国道政第74号,国鉄技第178号。以下「本件要綱」という。)を定め,上記アの協定を廃止した。 本件要綱4条及び7条と,本件協定4条及び7項は,それぞれ同一の内容である。 (乙9,10)(7)栗東市による起債ア法5条は,「地方公共団体の歳出は,地方債以外の歳入をもって,その財源としなければならない。ただし,次に掲げる場合においては,地方債をもってその財源とすることができる。」とし,5号において,「学校そ 5条は,「地方公共団体の歳出は,地方債以外の歳入をもって,その財源としなければならない。ただし,次に掲げる場合においては,地方債をもってその財源とすることができる。」とし,5号において,「学校その他の文教施設,保育所その他の厚生施設,消防施設,道路,河川,港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費(括弧内省略)及び公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費(括弧内省略)の財源とする場合」として,地方債を制限している。 イ栗東市は,本件道路と新幹線が交差する本件トンネル部分は,トンネル内部の空間を除いて盛土構造となっているから,新幹線を時速270キロメートルで運行したまま本件道路を幅員30メートルに拡張するには,現在の土木技術では盛土のまま工事をすることができず,安全上少なくとも1670メートルの仮線を設けて工事する必要があるとし,前記(4)イの仮線部分の工事費101億5800万円のうち,道路及び鉄道の計画が重複する仮線部分の工事費である86億9900万円(101億5800万円×1670メートル÷1950メートル,同市は,新駅建設工事のために予定されている仮線のうち,後に新駅のホームとなる直線部分280メートルを除いた上記部分が本件道路の拡幅工事のために必要な仮線であると想定した。)について,本件協定に基づく2分の1相当額である43億- 6 -4900万円は,法5条5号の定める道路の建設事業費に当たるとし,同43億4900万円及びβ線事業費6億0700万円(前記(4)ウ。本件道路の跨道橋構造物の事業費)の合計49億5600万円について,起債で賄うこととした(以下,同43億4900万円の分について「本件起債」という。)。 滋賀県,栗東市及び促進協は,平成17年12月25日,aと工 橋構造物の事業費)の合計49億5600万円について,起債で賄うこととした(以下,同43億4900万円の分について「本件起債」という。)。 滋賀県,栗東市及び促進協は,平成17年12月25日,aと工事実施協定を締結した(甲5)。 栗東市は,本件起債の一部を含む1億円について,平成18年3月31日,滋賀県に対し,平成17年度起債許可申請をし,同日付で,許可を得た。 地方債計画事業区分:地域再生事業起債許可申請事業名:新幹線新駅周辺都市計画道路等整備事業起債許可申請額:1億2790万円地方債予算限度額:1億2790万円地方債予算事業名・同対象限度額:東海道新幹線新駅設置工事促進事業1億円ウ栗東市は,前記イの許可に基づき,栗東市が負担する概略設計費用の支払に充てるため,平成18年5月25日(本訴提起後),金融機関から5260万円を借り入れた。その一部は,本件起債の一部分である。 (甲17,乙12ないし14)エなお,平成18年度以降の起債については,具体的な金額,時期とも現時点では未定であるが,栗東市が今後本件起債をする予定であることを,栗東市は認めている(甲17,弁論の全趣旨)。 (8)原告らは,平成17年10月17日,栗東市監査委員に対し,本件起債は違法であるとして,その差止めを求めて住民監査請求を申し立てたが,同監査委員は,平成17年12月15日で,これを却下した。原告らは,平成- 7 -18年1月12日,大津地方裁判所に対し,本訴を提起した。 (甲1)第3争点及び当事者の主張 本件起債は,法5条に反し違法か【原告らの主張】本件起債は,実質的には,本件道路建設事業費ではなく,aが所有管理する予定の新駅建設に必要な仮線工事費のためのものである。 (1)法5条は,地方公共団体の歳出は,地方債以外の歳入をもって,その 張】本件起債は,実質的には,本件道路建設事業費ではなく,aが所有管理する予定の新駅建設に必要な仮線工事費のためのものである。 (1)法5条は,地方公共団体の歳出は,地方債以外の歳入をもって,その財源としなければならないと定めており,原則が非募債主義にあることを明らかにしているが,その趣旨は,地方債は翌年度以降その償還のために支出を義務づけられているものであるから,単に単年度の収支均衡を図ることに意を取られて歳出の財源を安易に地方債に求めるという財政運営は,長期的な観点から不適当であるということにある。 同条但書き及び同項1号ないし5号は,上記の趣旨により,地方債をもって財源とすることができる場合を5つの場合に限定したのであるから,各号に該当する適債事業の解釈は厳格なものでなければならない。 (2)新駅設置予定地の新幹線線路は,高架構造ではなく盛土構造であるため,新幹線を運行させたまま新駅の駅舎建設工事をするためには,仮線を建設することが不可欠である。この仮線は,駅舎建設工事終了後,一部撤去される部分を除いて,aの資産として活用されることが予定されている。 この仮線工事には101億円以上の費用が必要なため,新駅建設には240億円という巨額の費用が必要となるところ,栗東市は,駅舎等工事費の3分の1(34億円以上),仮線工事費の2分の1(50億円以上)及びβ線事業費の全部(6億円以上)を負担するが,このうちの仮線工事費のうちの43億4900万円分を本件起債で賄うとしている。 しかし,仮線工事は,aが所有管理する予定の新駅の駅舎建設のために不- 8 -可欠であり,仮線自体,撤去される部分を除いてaの資産となることが予定されているから,結局,aが所有管理する予定の新駅建設のための工事であるというべきである。 よって,仮線工事費は,道路などの -可欠であり,仮線自体,撤去される部分を除いてaの資産となることが予定されているから,結局,aが所有管理する予定の新駅建設のための工事であるというべきである。 よって,仮線工事費は,道路などの公共施設の建設事業費(法5条5号)には当たらず,本件起債は,地方債を制限した法5条に反し,違法である。 (3)被告は,仮線工事は,駅舎建設工事に必要不可欠であると同時に,本件道路の幅員拡張工事(以下「本件道路拡幅工事」という。)にも必要不可欠であり,これらは同時に施工するのが合理的であるから,本件要綱により仮線工事費の2分の1は本件道路拡幅工事の費用に当たると主張する。 しかし,本件道路を幅員30メートルにするためには,1670メートルもの仮線を建設しなくとも,新幹線線路を跨ぐ形で高架橋を建設するか,地下に潜る形で地下道を建設することができ,その工事費用もより安く済むから,仮線工事は本件道路拡幅工事に必要不可欠なものではない。 また,新駅設置工事の概略設計においては,本件道路と新幹線線路が交差する本件トンネル部分も高架構造により設計されているのであるから,駅舎建設工事のための仮線工事及び本線の高架工事が終了し,盛土構造でなくなった後に,駅舎建設工事と併行して,本件道路拡幅工事を行えばよい。なお,新駅北側部分の本件道路の幅員を拡張するためには,第三者の所有地の買収が必要であるが,敷地内の工場の配置変更が必要であるなどの理由で買収は当面不可能とされており,2012年の新駅建設完成までに本件道路の幅員を拡張する必要はない。 仮線工事は,新駅建設のための工事であって,本件道路拡幅工事とは一体の工事とはいえず,時期的に同時に施工しなければならないわけでもないから,本件道路拡幅工事のために必要ではない。 栗東市は,財政運営が厳しく,一般財源で新駅に関する工 あって,本件道路拡幅工事とは一体の工事とはいえず,時期的に同時に施工しなければならないわけでもないから,本件道路拡幅工事のために必要ではない。 栗東市は,財政運営が厳しく,一般財源で新駅に関する工事費用を賄えないところ,新駅建設は公共事業等ではなく駅舎建設という名目では起債がで- 9 -きないため,仮線工事は本件道路拡幅工事であると無理に位置付けるために,本件道路拡幅工事の工法について,土木技術的な観点や経済合理性の観点から他の工法を検討することなく,仮線工法が必要不可欠であると主張しているのである。 【被告の主張】本件起債は,新駅建設の財源に充てられるものではなく,本件道路拡幅工事の財源に充てられるものであるから,法5条5号の要件を満たし適法である。 (1)地方公共団体が財政資金を使って,いかなる公共事業を実施するか,その財源としていかなる財源を充てるかは,もっぱら政策上の問題であり,地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられている。したがって,そのような政策の選択・内容の判断が著しく合理性を欠き,地方公共団体の長に認められている裁量権を逸脱・濫用したときに初めて違法性が生じる。 本件においては,新駅建設費用に係る債務負担については,すでに栗東市議会の議決を経ているところであり,これを起債によって賄うという被告の判断は,もとより合理性のある選択であって,およそ裁量権の逸脱・濫用とされる点はない。 (2)法5条5号は,道路等の公共施設の建設事業で,特に一時に多額の資金を要するときに,単年度の財政負担の増大を抑制するとともに,現在の住民だけが一切の負担を負うものではなく,公共施設の利便性を享受する将来の住民も負担することにより,負担の均衡を図るものである。 本件において,前提事実(4)のとおり,財源を地方債で賄うか否かにかかわらずいず 一切の負担を負うものではなく,公共施設の利便性を享受する将来の住民も負担することにより,負担の均衡を図るものである。 本件において,前提事実(4)のとおり,財源を地方債で賄うか否かにかかわらずいずれにせよ栗東市の負担となる仮線工事費用のうち本件道路拡幅工事に係る工事費に属する部分について,その財源手当として地方債を発行することは地方債の趣旨に合致した合理的な選択であり,法5条に違反しない。 (3)本件道路拡幅工事と仮線の設置は一体不可分であるから,本件道路拡幅工事の費用には本件起債で賄う予定の部分の仮線工事費用が含まれる。 - 10 -前提事実(7)イのとおり,本件道路と新幹線が交差する本件トンネル部分は,トンネル内部の空間を除いて盛土構造となっているから,新幹線を時速270キロメートルで運行したまま本件道路を幅員4.5メートルから30メートルに拡幅する工事を安全に施工するためには,現在の土木技術からすると,少なくとも1670メートルの仮線を設けて工事する必要がある。 具体的には,現在の軌道(盛土)の東側に総延長1950メートルの仮線を,そのうち新駅の駅舎部は高架橋,それ以外は土盛りにより築造するが,本件道路との立体交差部については駅舎部となることから,高架橋を築造し,併せて本件道路との交差部の高架構造(跨道橋)も同時施工する。仮線の土台と軌道が完成すると,走行を仮線に切り替えて営業運転し,本件道路跨道橋となる高架部分については,現在の盛土を撤去して高架構造(跨道橋)を築造する。高架構造の完成後,走行を仮線から計画線に切り替え営業運転を行うことになる。 仮に,新駅建設工事と併せて本件道路拡幅工事を施工しない場合には,新幹線が本件道路と交差する本件トンネルの部分は,現在の道路幅員4.5メートルを前提とした工事が行われるに過ぎないから,将 とになる。 仮に,新駅建設工事と併せて本件道路拡幅工事を施工しない場合には,新幹線が本件道路と交差する本件トンネルの部分は,現在の道路幅員4.5メートルを前提とした工事が行われるに過ぎないから,将来幅員30メートルへの拡幅工事を栗東市単独で行う際には,あらためて大規模かつ多額の費用を負担して工事が必要とならざるを得ない。その費用は,本件要綱に基づき,道路側である栗東市が全額負担することとなる。このような施工方法が,本件のような同時施工と比較して,技術上,安全上,費用負担等いずれの面からみても不合理・不経済であることは明らかである。 (4)本件協定(その廃止後は本件要綱)により,栗東市は,道路及び鉄道の交差の設計の重複部分に係る工事について,費用の2分の1を負担しなければならない。 上記(3)のとおり,仮線(うち1670メートル)工事は本件道路拡幅工事に不可欠であるから,仮線(うち1670メートル)工事全体が,交差部- 11 -である30メートルの部分自体の工事と一体であるという意味で,この仮線を含めた工事は「交差の設計」が「重複する部分」に係る工事に当たる。 そこで,仮線部分の工事費のうち,道路及び鉄道の計画が重複する部分の仮線工事費である86億9900万円について,本件協定に基づく2分の1相当額である43億4900万円が道路側である栗東市の負担となり,本件道路拡幅工事の費用に当たるから,道路建設事業費(法5条5号)として起債によって賄うことは適法である。 本件起債は,地方自治法2条14項,法4条,法8条,又は都市計画法13条1項等に反し違法か【原告らの主張】(1)前記1【原告らの主張】のとおり,本件道路拡幅工事のために,仮線工事は必要ではない。 本件の仮線は,都市計画法11条1項1号の都市施設たる道路として施工される。同 し違法か【原告らの主張】(1)前記1【原告らの主張】のとおり,本件道路拡幅工事のために,仮線工事は必要ではない。 本件の仮線は,都市計画法11条1項1号の都市施設たる道路として施工される。同法13条1項は,都市計画における都市施設の整備について,必要性を要件としているところ,必要性のない都市計画事業のための本件起債は違法である。 (2)新駅の建設は,無駄な公共事業の典型である。 新駅は,琵琶湖線や草津線などの在来線に連結しておらず,琵琶湖線δ駅から1.5キロメートル,建設予定の草津線新駅から400メートルも離れている。また,新駅には,1時間に「ひかり」「こだま」がそれぞれ1本ずつしか止まらない。 この不便な新駅建設のために246億円(うち地元負担240億円),関連費用も含めて650億円と試算されており,これらの費用は,請願駅として,全額地方自治体負担である。 このように無駄な公共事業に公金を支出するのは,「地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉に増進に努めるとともに,最少- 12 -の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と定める地方自治法2条14項又は「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えてこれを支出してはならない」と定める法4条,「地方公共団体の財産は,常に良好の状態において,これを管理し,その所有の目的に応じて最も,効率的に,これを運用しなければならない」と定める法8条に反するから,本件起債は,上記の各法規に反し違法である。 【被告の主張】(1)仮線は,都市施設たる道路として施工されるのではなく,本件道路拡幅工事のために仮線の設置が不可分のため,栗東市がその費用の一部を負担するものであり,原告らの主張は前提を誤っている。本件起債に都市計画法13条1項違 たる道路として施工されるのではなく,本件道路拡幅工事のために仮線の設置が不可分のため,栗東市がその費用の一部を負担するものであり,原告らの主張は前提を誤っている。本件起債に都市計画法13条1項違反はなく,適法である。 (2)前記1【被告の主張】のとおり,本件起債は,新駅建設工事に係るものではないから,原告らの主張は前提を誤っている。本件起債に,地方自治法2条14項,法4条又は同8条の違反はなく,適法である。 第4当裁判所の判断 本件起債は,法5条に反し違法か。 (1)法5条は,地方債の発行目的を制限するものであるが,その趣旨は,地方債は,その会計年度においては,交付公債を除き予算上の財源として歳入に計上されるが,翌年度以降その償還のための支出を義務づけられるものであるから,単に単年度の収支の均衡を図ることに意を取られて歳出の財源を安易に地方債に求めるというような財政運営は,長期的な観点からみて適当でなく,地方公共団体の歳出は地方債以外の収入をもって賄うことを原則としたことにある。 もっとも,地方債が持つ本来の機能を活用することによって,財政の健全性をそこなうことなくその運営に弾力を持たせるとともに地方債の発行が地域経済の基盤をかん養して将来にわたって住民の福祉に寄与し,結果的に住- 13 -民の担税力を高めることとなれば,むしろ望ましいといえるし,また,財政規模の一般的に小さい地方公共団体においては,緊急やむを得ない建設事業や,年度当初においては予測できない災害の復旧事業のように臨時的かつ多額の経費を限られた経常財源で賄うことができず,その財源を地方債に求めることとなる場合も考えられる。そこで,上記趣旨により,地方債の発行を,同条1号ないし5号の5つの場合に限定している。 そして,同条5号は,適債事業として,道路その他の土木 ず,その財源を地方債に求めることとなる場合も考えられる。そこで,上記趣旨により,地方債の発行を,同条1号ないし5号の5つの場合に限定している。 そして,同条5号は,適債事業として,道路その他の土木施設等の公共施設の建設事業を定めているが,その趣旨は,その施設の建設事業のために要する経費が団体の財政規模に比して大きく,このすべてをその年度の租税収入に頼ることは,住民に対して著しい負担を課する結果となるので,その負担を後年度に繰り延べる必要があるとともに,これらの施設の建設は,単にその年度限りで負担されてしまうものではなく,後年度にわたって効用を及ぼし,その地域の経済開発を促進する意味もあるので1つの資本投下であるとも考えられることにある。 (2)上記法5条及び同条5号の趣旨からすれば,起債の対象となる同条5号の道路の建設事業費とは,当該道路の建設工事そのものの費用のみではなく,当該道路建設工事とは別途の工事であっても,当該道路建設工事をするに当たって必要な工事の費用も含まれると解すべきであるが,当該別途の工事が当該道路建設工事をするのに必要かどうかについては,地方債の発行目的を制限することによって地方公共団体の財政運営の健全化を図ろうとする同条の趣旨から,当該道路工事の工法等からみて,当該別途の工事をすることが必要不可欠がどうか,また,その工法による工事を行うことが,経済的合理性,安全性,土木技術上の観点,その他諸事情を考慮して合理性を有するかどうかで判断するのが相当と解される。 被告は,地方公共団体がいかなる公共工事を実施するか,その財源としていかなる財源を充てるかは,地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられてい- 14 -ると主張する(第3の1【被告の主張】(1))。しかし,いかなる工事を実施するかとか地方債以外のどの財源をもっ していかなる財源を充てるかは,地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられてい- 14 -ると主張する(第3の1【被告の主張】(1))。しかし,いかなる工事を実施するかとか地方債以外のどの財源をもって充てるかの判断については裁量権があるとしても,財源として地方債を充てることができるかの点の判断については,法5条の趣旨からすれば,被告の主張するような裁量権はないというべきである。 被告は,財源を地方債で賄う否かにかかわらずいずれにせよ栗東市の負担となる仮線工事費用のうちの本件道路拡幅工事にかかる工事費に属する部分については,財源手当として地方債を発行することは地方債の趣旨に合致すると主張する(第3の1【被告の主張】(2))。しかし,仮に,地方債を発行できないと,栗東市はその充てる財源を確保することが困難となる事情があるとしても,それらの事情を考慮することは,先行して債務負担行為をしてしまえば,財源に余裕のない地方自治体について起債行為を広く許すことにつながり,被告の主張は,法5条の趣旨に反する解釈といわざるを得ない。 (3)以上の法5条に趣旨を踏まえて,以下,本件の仮線工事(うち1670メートル分)が,本件道路拡幅工事に必要か否か検討する。 ア証拠(甲6,9,31)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア)過去,新幹線線路と交差する形で道路建設がなされた場合,新幹線線路を跨ぐ形で高架橋(跨道橋)を建設するか,地下に潜る形で地下道を建設した事例は複数あるが,他に,本件のような仮線工法が採用された事例はない。 (甲6,9,弁論の全趣旨)(イ)平成17年9月栗東市議会定例会において,交通政策部長は,本件道路拡幅工事を新駅建設と同時に施工する必要性に関する質問に対し,「道路事業を駅舎開業後にすれば新たに仮線が必要となり,開 趣旨)(イ)平成17年9月栗東市議会定例会において,交通政策部長は,本件道路拡幅工事を新駅建設と同時に施工する必要性に関する質問に対し,「道路事業を駅舎開業後にすれば新たに仮線が必要となり,開業している駅の機能も制約を受け,新たな費用が発生し,賢明な選択ではない」- 15 -として,本件道路拡幅工事を単独でする場合であっても,仮線工法により施工することを前提としている。 (甲9)(ウ)過去,ε駅,ζ駅など新幹線の新駅が建設された場合で,在来の線路を使用した活線工法の場合,建設事業費は46億円から137億円程度であり,仮線工法の場合の約半額となっている。 (甲31)イ前記前提事実及び上記認定事実によれば,過去に,新幹線線路と交差する形で道路建設がなされた場合,新幹線線路を跨ぐ形の高架橋(跨道橋)又は地下に潜る形の地下道の建設によって施工した例が複数あり,本件でこれらの工法を採ることができない事情は認められないから,本件においても,仮線工法のほかに,高架橋(跨道橋)又は地下道の建設により施工するという複数の工法が考えられる。 本件において,仮線工事自体は,本件道路拡幅工事そのものではない別途の工事であるが,新駅の駅舎建設工事のために仮線建設が必要不可欠であって,そのため仮線工法を採用することが決定済みであるという事実は,仮線を,駅舎建設工事と道路拡幅工事の双方に活用することができるから,道路拡幅工事をするに際し仮線工法を採用する有力な一事情となりうる。 しかし,過去,仮線工法により道路建設がされた場合は一事例もないこと,仮線工事費は,被告が本件道路拡幅工事に必要と主張する部分に限っても86億9900万円(本件協定に基づき,栗東市の負担はその2分の1)と,本来の目的である道路の工事費に比してあまりに巨額であり,幅員4.5メート 被告が本件道路拡幅工事に必要と主張する部分に限っても86億9900万円(本件協定に基づき,栗東市の負担はその2分の1)と,本来の目的である道路の工事費に比してあまりに巨額であり,幅員4.5メートルの道路を30メートルに拡幅するだけのために1670メートルに及ぶ仮線を建設しなければならない仮線工法は,他の工法と比較して経済的合理性を欠くものといわざるを得ない。 また,仮線工事は駅舎建設のためには必ず必要なものであるが,本件道- 16 -路拡幅工事は駅舎建設の機会を利用して,周辺開発のためにβ線事業として行われるもの(乙1)で,同時に行う必然性もない。 これらの点から,仮線工事は本件道路拡幅工事と一体不可分,必要不可欠ということはできない。 なお,駅舎建設のための工事と同時に道路拡幅工事を行うことにより,β線を新幹線線路と跨線化又は地下道化することなく拡幅をすることができ,道路をそのように拡幅することは新駅周辺の道路整備事業として望ましいとも考えられ,そのために被告の主張する仮線工事による工法を採用して通常よりも高額と思われる費用(ただし,栗東市が単独で同工法による工事を行う場合の2分の1である43億4900万円)を負担することも,長期的な地域開発整備の観点からは,合理的な選択とみられる余地もある。しかし,法5条の趣旨からすれば,当該工事が適債事業として同条5号の「道路」建設事業に該当するか否かの判断に当たり,地域開発整備の観点を考慮することは困難である。 以上のとおりであって,栗東市が,上記のような仮線工事の費用を「道路」建設事業のための起債として負担することは,地方債を限定的に許容した法5条の趣旨に違反するといわなければならない。仮線工事の費用は,その2分の1であっても,法5条5号の道路建設事業費には含まれないことには変わりがある として負担することは,地方債を限定的に許容した法5条の趣旨に違反するといわなければならない。仮線工事の費用は,その2分の1であっても,法5条5号の道路建設事業費には含まれないことには変わりがあるとはいえないので,本件起債は違法である。 また,被告は,本件協定又は本件要綱により,栗東市は,43億4900万円の費用分が本件道路拡幅工事と一体である工事の部分のものであると主張しており,本件において,原告が差止めを求めている起債行為はそれに対応するものであるから,それより少ない費用の起債であれば,違法とはいえないかについては,判断するまでもない。 ウ被告は,本件道路拡幅工事を,新駅建設と同時に施工するにせよ単独で施工するにせよ,必ず仮線工法を採用することだけを前提としており,他- 17 -の工法を採用することの経済的合理性や技術的可能性について全く主張,立証しておらず,これまでそのような視点からの検討をしたとは認められない。当初から,新駅建設のためには仮線工法によることが決定されており,栗東市は,新駅建設については積立金以外は起債による財源調達を予定していたところ,平成17年6月の定例会になって初めて,仮線工事の財源について,本件道路拡幅工事のための仮線でもあるから適債性が明らかとなったとして,仮線工事費用を地方債で賄うことを説明した(甲9)。 被告は,本件訴訟において,その財源を地方債によって充てるか否かをとわず,いずれにせよ栗東市は仮線工事費用(滋賀県が負担する部分を除く。)を負担するのであるから,本件道路拡幅工事に係る工事費に属する部分について,その財源手当として地方債を発行することは地方債の趣旨に合致すると主張している。 以上の栗東市及び被告の対応をみれば,栗東市は,本件基本協定書や関係首長会議等での合意により,財源の手当はともか いて,その財源手当として地方債を発行することは地方債の趣旨に合致すると主張している。 以上の栗東市及び被告の対応をみれば,栗東市は,本件基本協定書や関係首長会議等での合意により,財源の手当はともかくとして栗東市が負担すべきものと決まった部分の仮線工事費について,仮線工事だけを独立してみれば,法5条の適債事業に当たるとはいえず財源の確保が困難であるので,適債事業であることについては一応争いが生じない道路拡幅工事とと一体の工事であると説明して起債し,財源を確保しようとしたものといわざるを得ない。 しかし,本件道路拡幅工事と仮線工事を不可分一体であるとして道路工事の事業費に含める説明はいかにも無理があることは前記のとおりである。 以上によれば,原告らの請求のうち,すでに平成18年5月25日に借入済み分で本件起債に該当する部分(第2の2(7)ウ)は,これを差し止める利益は認められないから,却下することとする。これを除く部分について,今後本件起債行為が,相当の確実さをもって予測され(第2の2(7)エ),かつ,本件起債は違法であるから,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,これ- 18 -を差し止めることとする。 訴訟費用に負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,64条ただし書を適用する。 よって主文のとおり判決する。 大津地方裁判所民事部裁判長裁判官稻葉重子裁判官岡野典章裁判官山田順子- 19 -(別紙)目録東海道新幹線(仮称)α駅建設に関する仮線総延長1950メートルのうち1670メートル分の工事費用86億9900万円のうち,栗東市負担分(2分の1相当)である43億4900万円(現時点での予定)に支出するための起債 86億9900万円のうち,栗東市負担分(2分の1相当)である43億4900万円(現時点での予定)に支出するための起債
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