平成13(行コ)137 医療法人青山会救済命令取消

裁判年月日・裁判所
平成14年2月27日 東京高等裁判所
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判決文本文10,777 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 第1 当事者が求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人が中労委平成8年(不再)第28号事件(初審・神奈川地方労働委員会平成7年(不)第3号事件)について平成11年2月17日付けで発した命令を取り消す。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,医療法人社団仁和会(以下「仁和会」という。)が経営していた越川記念病院が平成6年12月31日限りで閉鎖され,控訴人が平成7年1月1日から同病院の施設,業務等を引き継いで青山会みくるべ病院(以下「みくるべ病院」という。)を開設した際,越川記念病院に看護助手又は准看護婦として勤務していたAとBの両名がみくるべ病院の職員として採用されなかったことから,越川記念病院の唯一の労働組合であり,A及びBが組合員として所属していた被控訴人補助参加人が上記両名の不採用は不当労働行為に当たるとして神奈川県地方労働委員会に救済の申立てをし,これについて同労働委員会が両名の採用等を命ずる救済命令を発したところ,これに対して控訴人が被控訴人に再審査を申し立てたが,被控訴人が控訴人の再審査申立てを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)を発したため,控訴人が本件命令の取消しを求めている事件であり,控訴人がA及びBの両名をみくるべ病院の職員として採用しなかったこと(以下「本件不採用」という。)が労働組合法7条1号,3号の不当労働行為に当たるか否かが争点となっている。 2 争いのない事実等(証拠によって容易に認定し得る事実を含む。),争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決の「第2 事案の概要」1ないし3に記載のとおりであるか たるか否かが争点となっている。 2 争いのない事実等(証拠によって容易に認定し得る事実を含む。),争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決の「第2 事案の概要」1ないし3に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 第3 証拠証拠関係は,本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 理由 1 事実関係本件の事実関係については,原判決12頁26行目の「平成2年3月」から同13頁1行目末尾までを「平成2年6月に上秦野病院が越川記念病院と名称を変更した後も同病院における唯一の労働組合であった。」と改め,同3行目の「その後」の次に「組合員数が」を,同9行目の「同労働組合は,」の次に「後記(3)アの」をそれぞれ加え,同14頁25行目の各「参加人」及び同16頁3行目の「組合」をいずれも「被控訴人補助参加人」と,同17頁4行目の「保険請求」を「保険診療報酬等の」と,同6行目の「同年」を「平成6年」と,同19頁9行目の「係属」を「継続」とそれぞれ改めるほかは,原判決12頁12行目から同25頁14行目までに記載のとおりであるから,これをここに引用する。 2 本件不採用について(1) 上記1で認定したところによると,仁和会の経営していた越川記念病院は,平成6年10月19日に健康保険法による保険医療機関の指定取消し及び生活保護法による指定医療機関の取消しの各行政処分を受けたことから,保険診療報酬等の収入が見込めなくなって,経営を続けることが不可能になり,同年11月末ころ,仁和会と控訴人との間で,平成7年1月1日以降控訴人が越川記念病院の施設等を使用して同病院に入院中の患者の治療を継続して行うことを含めて病院の経営を引き継ぐことが合意され,平成6年12月13日付け覚書と同月16日付けの売買契約 年1月1日以降控訴人が越川記念病院の施設等を使用して同病院に入院中の患者の治療を継続して行うことを含めて病院の経営を引き継ぐことが合意され,平成6年12月13日付け覚書と同月16日付けの売買契約書によってされた本件契約に基づき,控訴人は,仁和会から越川記念病院の施設等の一切を譲り受け,平成7年1月1日,越川記念病院の施設等を使用してみくるべ病院を開設し,以後これを経営するに至ったこと,本件契約においては,越川記念病院の職員は全員解雇するものとし,控訴人が同病院の職員をみくるべ病院の職員として採用するかどうかは控訴人の専権事項とされたが,控訴人は,同日付けで,越川記念病院の全職員55名のうち32名をみくるべ病院の職員として採用していること,このうち,医師の所属する医局科11名については,C理事長と関係の深い医師5名について採用面接を行わず,採用面接をした残り6名については全員を採用したこと,管理課その他の職員11名については,C理事長との関係などを理由に4名について採用面接を行わず,採用面接をした残り7名のうち採用を希望しなかった者など2名を除き5名を採用したこと,A及びBが属していた看護科の職員33名については,A及びBのほか採用を希望していなかった3名の合計5名(Dを加えれば6名)について採用面接を行わず,採用面接をした28名(Dを除けば27名)のうち採用を希望しなかった者及び賃金等の条件面が折り合わなかった者を除く21名を採用したこと,控訴人は,採用面接の際に採用を希望しなかった看護科の職員の一部の者に対し,その後みくるべ病院開設までの間に,控訴人に就職するよう改めて説得している反面,看護科に属していたA及びBの両名については,両名が採用を希望していたにもかかわらず,採用面接もせず,採用しなかったことが認められる。 (2) 上 に,控訴人に就職するよう改めて説得している反面,看護科に属していたA及びBの両名については,両名が採用を希望していたにもかかわらず,採用面接もせず,採用しなかったことが認められる。 (2) 上記のとおり,控訴人は,みくるべ病院の開設に当たり,越川記念病院の職員のうち半数以上の職員をみくるべ病院の職員として採用しているのであるが,採用を希望していたA及びBを含む越川記念病院の職員の一部については採用面接もせず,みくるべ病院の職員として採用しなかった。そこで,以下において,控訴人がA及びBをみくるべ病院の職員として採用しなかったことについて,前記の本件契約における越川記念病院の職員をみくるべ病院の職員として採用するかどうかは控訴人の専権事項であるとの条項のほかに,その合理性を肯認するに足りる事由が存するか否かについて検討する(なお,医局科及び管理課その他の職員の一部については,控訴人が採用面接を実施せず,採用しなかったことについて,その理由に照らし,一応の合理性があるものといえる。)。 (3) まず,上記1で認定したように,みくるべ病院は,越川記念病院の入院患者を一部の退院者を除いてそのまま引き継ぎ,患者に対する治療を中断することなく行うことになったのであるから,直接患者の世話に当たる看護科の職員については,患者の状況を知悉し,理解していた越川記念病院の職員が引き続きその業務に当たることが望ましいことはいうまでもない。そして,控訴人は,現に,採用を希望した越川記念病院の看護科の職員(なお,前記Dが控訴人への採用を希望していたことを認めるに足りる証拠はない。)については,A及びBの両名を除いて採用面接をし,賃金等の条件が折り合う限り原則としてこれを採用したほか,採用を希望しなかった看護科の職員の一部の者についても,改めて就職するよう説得 る証拠はない。)については,A及びBの両名を除いて採用面接をし,賃金等の条件が折り合う限り原則としてこれを採用したほか,採用を希望しなかった看護科の職員の一部の者についても,改めて就職するよう説得しているのである。これらのことを合わせ考えると,控訴人は,みくるべ病院の看護科の職員については,原則として,勤務条件が折り合う限りは越川記念病院の看護科の職員をもって引き続き患者の看護業務に当たらせる方針でいたことは,明らかといえる。 そして,上記1で認定したところによれば,控訴人は,平成6年12月中旬ころと平成7年1月に,さらには,その後も看護職員等の公募を行っている上,みくるべ病院開設当初は福井記念病院の看護職員を非常勤職員としてみくるべ病院の看護業務に従事させているのであって,これらのことからすると,控訴人が採用した越川記念病院の看護科の職員のみではみくるべ病院において必要とする看護科の職員の人数に不足していたものと考えざるを得ない。 それにもかかわらず,越川記念病院の看護科に属していたA及びBの両名は,控訴人への採用を希望しながら,採用面接も受けられず,採用されなかったのであるから,控訴人は,A及びBの両名に対しては,看護科の職員については勤務条件が折り合う限りは越川記念病院の看護科の職員をもって引き続き患者の看護業務に当たらせるという前記方針とは異なる対応をしたものということができる。 (4) 控訴人は,A及びBの両名を採用しなかったことについて,控訴人が越川記念病院の職員をみくるべ病院の職員として採用するに当たっては,越川記念病院にまつわるダーティーなイメージを払拭するため,当初から採用する意思のない者とは面接せず,そうでない者とは面接の上,控訴人の提示した勤務条件を受け入れた者を採用したのであり,主体的にその採否を決定したもの わるダーティーなイメージを払拭するため,当初から採用する意思のない者とは面接せず,そうでない者とは面接の上,控訴人の提示した勤務条件を受け入れた者を採用したのであり,主体的にその採否を決定したものであって,A及びBについては,その勤務態度,行状からして採用面接の対象としなかった旨主張する。そして,乙116ないし119によれば,控訴人のE常務は,被控訴人の再審査手続における審問期日において,Aを採用しないことにしたのは,①精神衛生実態調査の際に,患者を県庁に座り込みさせたり,政治的な集会に参加させたりしていることが控訴人の方針と合わないこと,②夜勤当直の際,越川記念病院の不祥事についてカルテを写真で撮ったり,看護記録をコピーしてマスコミに流したり,政治活動に熱心であること,③学生時代成田空港反対闘争に参加して逮捕され有罪判決を受けたこと,④京浜学園に合格した越川記念病院の職員に関して,同職員を問題視する文書を同学園に提出したことなどを総合的に考慮した,Bを採用しないことにしたのは,⑤医師の指示なく患者に薬を投与し,解雇されたこと,⑥患者に対して隔離室で暴力を振るったこと,⑦初声荘病院時代の勤務状況が不良であったこと,⑧プライベート面で問題があることなどを考慮したと供述している。 (5) そこで,E常務の供述する上記①ないし⑧の事柄がA及びBの両名を不採用としたことの合理的理由といえるか否かについて,検討することとする。 ア Aについて(ア) E常務が供述する上記①についてみると,上記1で認定したように,上秦野病院時代の昭和58年,県が厚生省の委託を受けて精神衛生実態調査をしようとした際,被控訴人補助参加人が人権侵害であるとしてこれに反対し,Aも,患者らと共に県庁前で集会を開催したり,座り込みをするなどの運動に参加したのである 厚生省の委託を受けて精神衛生実態調査をしようとした際,被控訴人補助参加人が人権侵害であるとしてこれに反対し,Aも,患者らと共に県庁前で集会を開催したり,座り込みをするなどの運動に参加したのであるが,同調査の実施には上秦野病院自体も反対の態度をとっており,反対集会等に参加する患者のために看護に当たる職員を配置するなどの協力をしていたというのであるから,Aのとった上記行動は,同病院も容認し,支持していたものといえる。そうすると,上秦野病院も容認し支持していた10年以上も前の何ら問題視するに足りないことをあえて取り上げて不採用の理由とすることは,合理的とはいえないし,このことを不採用の理由として挙げること自体が異常といえる。 (イ) 次に,E常務が供述する②については,その裏付けとなる証拠はなく,これを否定する乙120(被控訴人の審問期日におけるAの審問調書)に照らし,その事実があったことを認めることはできず,本件不採用の理由となし得ないものである。 (ウ) また,E常務が供述する③については,その事実があったことは上記1で認定したとおりであるが,この事実は,Aが上秦野病院に採用される5年ほど前のことであり,本件不採用からすれば実に17年ほども前の事実であるし,その後のAの行動に特に問題視すべきものがあったことはうかがえないから,Aを不採用とした理由としては,薄弱にすぎるというべきである。 (エ) E常務が供述する④についてみると,京浜学園に合格した越川記念病院の職員に関して被控訴人補助参加人名で素行,履歴等の再調査を求める旨の要望書が送付されたことは前記1(9)ア(ウ)で認定したとおりであるが,この文書をA又は被控訴人補助参加人が送付したものと認めるに足りる証拠はない(上記1で認定したところによれば,被控訴人補助参加人は, 書が送付されたことは前記1(9)ア(ウ)で認定したとおりであるが,この文書をA又は被控訴人補助参加人が送付したものと認めるに足りる証拠はない(上記1で認定したところによれば,被控訴人補助参加人は,身に覚えがないとしてこれに抗議する内容の組合ニュースを発行し,東京労組及び被控訴人補助参加人は,京浜学園に対して事実経過の確認を求める申入書を提出しているのである。)。 イ Bについて(ア) E常務が供述する⑤についてみると,Bが仁和会をいったん解雇されたことは上記1(9)イ(イ)で認定したとおりである。しかしながら,同人の解雇に関する仮処分事件においては当該解雇が無効とされているのであり,その後仁和会と被控訴人補助参加人との間で,Bの解雇撤回,同人の原職復帰等を内容とする和解が成立しているのであって,これによれば,Bにつき解雇事由があったとはいえないから,上記解雇をもって同人の不採用の理由とすることは,合理的ではない。 (イ) E常務が供述する⑥ないし⑧については,これを裏付けるに足りる具体的な証拠はなく,昭和59年に上秦野病院に採用されて以来Bの勤務状況が特に問題視された形跡はうかがえない。 ウ他方,上記1(7)ウで認定したところによると,控訴人は,越川記念病院当時看護記録の書き直しを指示した看護主任や医療法違反の嫌疑で書類送検された事務長については,その不祥事を承知しながらみくるべ病院の職員として採用しているのであり,これらの者が当該不祥事に主体的に関与したものでないとしても,控訴人がこれらの者を採用しながらA及びBを不採用としたことについては,両措置の間に均衡がとれているとは到底いえないし,越川記念病院にまつわるダーティーなイメージを払拭するために採用面接対象者を振り分けたとする控訴人の主張とも矛盾するものである。 したことについては,両措置の間に均衡がとれているとは到底いえないし,越川記念病院にまつわるダーティーなイメージを払拭するために採用面接対象者を振り分けたとする控訴人の主張とも矛盾するものである。 そもそも,越川記念病院にダーティーなイメージがあったとすると,それは,上記1(4)で認定したように,県による医療監視や立入調査などの結果明らかになった,越川記念病院の医療従事者数についての虚偽の報告,精神保健指定医の診察によらない違法な患者の隔離及び身体的拘束,病院内における看護助手のピストル型エアガンの発射とこれに関する看護記録の書き直し,5700万余円に及ぶ診療報酬の不正請求などの不祥事に起因するものというべきであるが,これらの不祥事は,被控訴人補助参加人やA及びBの両名にかかわりのないことである。強いてかかわりがあるとすれば,被控訴人補助参加人が県に対して改善のために越川記念病院を指導することを要請するなどし,このことが県による越川記念病院に対する医療監視や立入調査などの一因となり,上記不祥事が発覚したと考えられることであるが,それをもって被控訴人補助参加人やAらを非難するとしたら,それは「逆恨み」というべきものである。 エ以上によれば,控訴人がA及びBについて採用面接もしないまま同人らを不採用としたことには,合理的な理由があったとは到底いい難いものというほかない。 (6) そして,以上のように控訴人がA及びBの両名について採用面接すらしないで不採用としたことに合理的な理由があったといい難いことに加え,上記1で認定した諸事実,とりわけ,控訴人は,初労とは対立状態にあったところ,仁和会から越川記念病院の経営を引き継ぐことにした時点で,初労と被控訴人補助参加人とが同一の上部団体である東京労組及び全労に属することやA及びBが被控訴人補 控訴人は,初労とは対立状態にあったところ,仁和会から越川記念病院の経営を引き継ぐことにした時点で,初労と被控訴人補助参加人とが同一の上部団体である東京労組及び全労に属することやA及びBが被控訴人補助参加人の組合員であることを知っていたこと,控訴人は,被控訴人補助参加人がA及びBに就労の意思のあることを伝えるため控訴人に送付した文書の受領を一切拒否し,A及びBの面会申入れにも応じていないこと,控訴人がみくるべ病院の開設に際して関係者に送付したあいさつ状には,「告発のみに終始し,何ら生産的運動をなしえなかった東京労働組合もその余韻すら残せず消え去りました。」との記載があること,越川記念病院が閉鎖のやむなきに至った行政処分に至る経緯には被控訴人補助参加人の県に対する指導要請等が一因となったと考えられることなどを合わせ考えると,控訴人は,A及びBの両名が控訴人への採用を希望していることを知りながら,この両名が被控訴人補助参加人に所属し,組合活動を行っていたことを嫌悪し,そのため,当初から意図的に両名を採用しないこととし,採用面接を行わず,不採用としたものと認めるのが相当である。 3 本件不採用の不当労働行為性についてそこで,控訴人が,上記のように,A及びBの両名が被控訴人補助参加人に所属し,組合活動を行っていたことを嫌悪し,そのために当初から意図的に両名を採用しないこととし,採用面接を行わず,不採用としたことが労働組合法7条1号,3号に該当するか否かについて判断する。 (1) まず,上記1(5)の認定事実によれば,控訴人は,仁和会から越川記念病院の事業を引き継いでこれを運営していくため,本件契約によって,越川記念病院の土地建物に関する権利及び病院運営に必要な一切の什器・備品を譲り受けているところ,この行為(以下「本件譲渡」という。)は,病院 事業を引き継いでこれを運営していくため,本件契約によって,越川記念病院の土地建物に関する権利及び病院運営に必要な一切の什器・備品を譲り受けているところ,この行為(以下「本件譲渡」という。)は,病院経営という事業目的のため組織化され,有機的一体として機能する仁和会の財産の譲渡を受け,これによって仁和会が営んでいた事業を受け継いだものということができるから,商法上の営業譲渡に類似するものということができる。そして,このように仁和会が越川記念病院の経営を控訴人に引き継がせることになったのは,上記1で認定したところによると,越川記念病院が健康保険法による保険医療機関の指定の取消し及び生活保護法による指定医療機関の取消しを受けたため,保険診療報酬等の収入が見込めなくなって病院経営を続けていけなくなったことによるものであるから,本件譲渡自体が不当労働行為を目的としてされたものということはできない。 (2) ところで,仁和会と控訴人との間で締結された本件契約では,仁和会はその職員に対して解雇予告を行うとともに,その職員を控訴人が雇用するか否かは控訴人の専権事項であるとされ,また,仁和会は平成6年12月31日までに生じた組合員についての仁和会の債務を自己の責任で清算するとされていたのであるから,本件契約においては,控訴人は仁和会の職員の雇用契約上の地位を承継しないとの合意があったものというべきである。そして,営業譲渡の場合,譲渡人と被用者との間の雇用関係を譲受人が承継するかどうかは,原則として,当事者の合意により自由に定め得るものと解される。 (3) しかしながら,契約自由の原則とはいえ,当該契約の内容が我が国の法秩序に照らして許容されないことがあり得るのは当然である。そこで,控訴人によるみくるべ病院の職員の採用の実態をみると,本件譲渡では,前記の しながら,契約自由の原則とはいえ,当該契約の内容が我が国の法秩序に照らして許容されないことがあり得るのは当然である。そこで,控訴人によるみくるべ病院の職員の採用の実態をみると,本件譲渡では,前記のように,越川記念病院に入院中の患者については従前受けていたのと同一の治療行為を引き続きみくるべ病院において行うこととしていたことから,本件契約においては,前記のとおり,控訴人は越川記念病院における職員の雇用契約上の地位を承継しないとしていたにもかかわらず,控訴人は,同病院の職員,特に数も多数を占め,実際に患者の看護に当たっていた看護科の職員については,A及びBの両名を除いて,採用を希望する者全員について採用面接をし,採用を希望し,賃金等の条件面の折り合いが付いた者全員を採用しているのであって,実質的には雇用者と被用者との雇用関係も承継したに等しいものとなっている。そして,控訴人がA及びBの両名を殊更に採用の対象から除外したのは,この両名が被控訴人補助参加人に所属し,組合活動を行っていたことを控訴人が嫌悪したことによるものであることは,前記2で認定判断したとおりである。また,本件譲渡の譲渡人である仁和会においても,本件譲渡前,被控訴人補助参加人と激しく対立しており,かつ,越川記念病院が本件譲渡を余儀なくされたのは,前記のように健康保険法による保険医療機関の指定の取消し及び生活保護法による指定医療機関の取消しを受けたことにあるところ,それに至った経緯として被控訴人補助参加人が県に対して越川記念病院の運営改善につき指導要請をしたこと等も一因となったとみられることからすれば,仁和会が被控訴人補助参加人並びにその構成員であるA及びBに対して強い悪感情を持っていたであろうことは,容易に推認できるところである。控訴人がみくるべ病院の開設に当たって関係者に ることからすれば,仁和会が被控訴人補助参加人並びにその構成員であるA及びBに対して強い悪感情を持っていたであろうことは,容易に推認できるところである。控訴人がみくるべ病院の開設に当たって関係者に送付した前記あいさつ状には,「告発のみに終始し,何ら生産的運動をなしえなかった東京労働組合もその余韻すら残せず消え去りました。」との記載があるが,このことからも,控訴人と仁和会が被控訴人補助参加人の県に対する要請行動と越川記念病院が保険医療機関の指定取消しなどの行政処分を受けたこととが関係あると認識し,このような要請行動を行った被控訴人補助参加人とその構成員を嫌悪して,これを排除しようとしていたことをうかがうことができるのである。 このようにみてくると,控訴人による越川記念病院の職員のみくるべ病院の職員への採用の実態は,新規採用というよりも,雇用関係の承継に等しいものであり,労働組合法7条1号本文前段が雇入れについて適用があるか否かについて論ずるまでもなく,本件不採用については同規定の適用があるものと解すべきである。本件契約においては,控訴人は越川記念病院の職員の雇用契約上の地位を承継せず,同病院の職員を控訴人が雇用するか否かは控訴人の専権事項とする旨が合意されているが,上記採用の実態にかんがみれば,この合意は,仁和会と控訴人とが被控訴人補助参加人並びにこれに属するA及びBを嫌悪した結果これを排除することを主たる目的としていたものと推認されるのであり,かかる目的をもってされた合意は,上記労働組合法の規定の適用を免れるための脱法の手段としてされたものとみるのが相当である。したがって,控訴人は,上記のような合意があることをもって同法7条1号本文前段の適用を免れることはできず,A及びBに対して本件不採用に及んだのは,前記認定のようなみくるべ病院の みるのが相当である。したがって,控訴人は,上記のような合意があることをもって同法7条1号本文前段の適用を免れることはできず,A及びBに対して本件不採用に及んだのは,前記認定のようなみくるべ病院の職員の採用の実態に照らすと,同人らをその従来からの組合活動を嫌悪して解雇したに等しいものというべきであり,本件不採用は,労働組合法7条1号本文前段の不利益取扱いに該当するものといわざるを得ない。 また,本件不採用当時被控訴人補助参加人の組合員はA及びBの2名のみであったことからすれば,本件不採用により,同時に被控訴人補助参加人が壊滅的打撃を受けたことは明らかであるから,控訴人は,本件不採用により被控訴人補助参加人へ壊滅的打撃を与えることを意図し,A及びBが被控訴人補助参加人を運営することを支配し,これに介入したものということができる。 したがって,控訴人がしたA及びBに対する本件不採用は,労働組合法7条1号本文前段及び同条3号本文前段に該当し,不当労働行為に当たるというべきである。 4 結論以上によれば,当裁判所の上記判断と同旨の判断に基づいてA及びBの採用等を命じた初審命令は相当であり,これを維持し,控訴人の再審査申立てを棄却した本件命令も相当である。 したがって,本件命令の取消しを求める控訴人の本件請求は理由がないものとした原判決は結論において正当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第20民事部裁判長裁判官石井健吾 裁判官大橋弘裁判官植垣勝裕 裁判官 大橋弘 裁判官 植垣勝裕

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