昭和59(オ)1129 新聞広告掲載に伴う損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成元年9月19日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 昭和53(ネ)1625
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人らの負担とする。          理    由  上告代理人相馬功、同高橋正雄の上告理由第一点ないし第三点について  一 原審

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判決文本文4,150 文字)

主文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由上告代理人相馬功、同高橋正雄の上告理由第一点ないし第三点について一原審が適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 1 被上告人株式会社B1新聞社(以下「被上告人B1新聞社」という。)は、昭和四四年六月二一日、その発行する日刊紙B1新聞の報道記事が掲載されている新聞紙上に、第一審判決添付の広告目録三記載のとおり、訴外Dコーポ株式会社(以下「訴外会社」という。)が横浜市a区内に建築する鉄筋鉄骨コンクリート造六階建マンション「E」(翌四五年五月完成予定)を販売する旨の広告(以下「本件広告三」という。)を、更に昭和四四年八月一五日、同新聞紙上に、同広告目録五記載のとおり、本件広告三とほぼ同内容の広告(以下「本件広告五」という。)をそれぞれ掲載し、被上告人株式会社B2広告社は、被上告人B1新聞社に対し、右各広告を仲介・取次し、その広告版下を搬入した。 また、被上告人株式会社B3新聞社(以下「被上告人B3新聞社」という。)は、昭和四四年八月一五日、その発行する日刊紙B3新聞の報道記事が掲載されている新聞紙上に、第一審判決添付の広告目録四記載のとおり、訴外会社が横浜市a区内に建築する鉄筋鉄骨コンクリート造六階建マンション「E」(翌四五年五月完成予定)を販売する旨の広告(以下「本件広告四」という。)を掲載し、被上告人株式会社B4広告社は、被上告人B3新聞社に対し、右広告を仲介・取次し、その広告版下を搬入した。 本件広告三ないし五(以下、併せて「本件各広告」という。)は、いずれも訴外会社が広告主であって、同社が建設を予定し、又は建設中の竣工前のいわゆる青- 1 -田売りマンションの買受け申込みを勧誘する広告であ 三ないし五(以下、併せて「本件各広告」という。)は、いずれも訴外会社が広告主であって、同社が建設を予定し、又は建設中の竣工前のいわゆる青- 1 -田売りマンションの買受け申込みを勧誘する広告であり、広告主である訴外会社の商号、住所、電話番号が明示されているものであった。 2 上告人A1は、勤務先の会社で購入してるB1新聞紙により本件広告三を見たほか、そのころ、B3新聞、F新聞、G新聞に掲載された訴外会社の同種広告を見て、本件広告三の「E」が売り出されることを知り、そのころ訴外会社との間に右マンションの一室を買い受ける契約を締結し、その代金(内金)名下に合計四二六万円をそのころ訴外会社に支払った。また、上告人A2は、購買しているB3新聞紙及びB1新聞紙により本件広告四及び五の各広告を見て、右「E」が売り出されることを知り、そのころ訴外会社との間に右マンションの一室の持分権を買い受ける旨の契約を締結し、その代金(内金)名下に一〇〇万円をそのころ訴外会社に支払った。ところが、「E」が建設されないまま、訴外会社は、昭和四六年一月二〇日に倒産し、上告人らはいずれも訴外会社から右買い入れたマンションの室の引渡しを受けることも、右支払った代金の返還を受けることもできなかった。 3 本件各広告の広告主である訴外会社は、訴外H建設協会を中心としてグループを形成していた、いわゆるHグループに属する会社であり、IことJがこれを支配していた。Jは、また、同グループの実質的支配者と目されており、同グループに属する会社は、昭和三七年から同四五年までの間、度々その商号を変更していた。 東京都は、昭和四〇年六月、H建設協会に対し宅地建物取引業法(昭和四六年法律第一一〇号による改正前のもの。以下「宅建業法」という。)に基づく調査を極秘裡に始めていた。昭和四二年七月、 変更していた。 東京都は、昭和四〇年六月、H建設協会に対し宅地建物取引業法(昭和四六年法律第一一〇号による改正前のもの。以下「宅建業法」という。)に基づく調査を極秘裡に始めていた。昭和四二年七月、Jは脅迫罪により逮捕され、その後、同人の国有財産不法占拠の事実がF新聞によって報道されたりした。このころ東京都や警視庁、大蔵省等は、同グループの業務が出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(昭和五八年法律第三二号による改正前のもの。以下「出資法」という。)に違反するとの疑いを持ったが確証を掴むに至らずそのまま推移していたところ、- 2 -昭和四五年四月以降同グループの業務が宅建業法及び出資法に違反する疑いが明らかとなったため、警視庁は秘密裡にこの点の捜査をし、同年五月二八日、まずグループの一員であるK住宅総合センターの取締役らを出資法違反で逮捕し、翌二九日、東京都も訴外会社らに対する宅建業法違反の疑いで立入調査を開始した。このため、同グループをめぐる疑惑が公然化した。その後、同年六月三〇日、H建設協会は、突如宅地建物取引業を廃業し、同年八月五日には訴外会社らが裁判所に和議開始の申立をした。警視庁は、同月二〇日、同グループ全体に対する捜査活動に踏み切り、また、東京都は、同月二二日、訴外会社に対し宅地建物取引業者の免許取消処分を行った。そして、翌四六年一月二〇日、訴外会社らに破産の宣告がなされ、同年二月及び五月にはJらグループの責任者が出資法違反、宅建業法違反により起訴されるに至った。 4 東京都は、昭和四五年四月当時、Hグループのマンションにつき既に多数の購買者が代金の全部又は一部を支払っていたため、同グループの疑惑をいち早く公然化することが、かえって取付け騒ぎを起こし、同グループ各社の倒産を招き、その結果右購買者の代金回収すら覚 につき既に多数の購買者が代金の全部又は一部を支払っていたため、同グループの疑惑をいち早く公然化することが、かえって取付け騒ぎを起こし、同グループ各社の倒産を招き、その結果右購買者の代金回収すら覚束なくなることを危惧し、あえて前記立入調査に至るまで同グループの疑惑を公表せずにいた。そのため、被上告人各新聞社の記者が同グループの疑惑に関して都庁を足繁く訪れ始めたのは、昭和四五年五月二八日の一連の捜査以降のことであり、被上告人各新聞社の記者及び広告担当者並びに被上告人各広告社の新聞広告担当者も、右同日以降の一連の捜査及び立入調査が大々的に報道されるまで、訴外会社をはじめとする同グループの疑惑に関する情報を有していなかった。 二原審の確定した右事実関係のもとで案ずるに、被上告人らが本件各広告の新聞紙上への掲載、又はその掲載の仲介・取次(以下、併せて「掲載等」という。)をした昭和四四年六月ないし同年八月当時、既に警視庁や東京都では、訴外会社の- 3 -営業内容に関して疑惑を持っていたが、昭和四五年五月以前においては、東京都は右のような疑惑を公表することが、かえって債権者の取付け騒ぎを起こすおそれがあることなどからこれを公表しなかったことが認められ、被上告人らにおいて、右掲載等をした当時、広告主である訴外会社が広告商品である前記建物を竣工する意思・能力を欠く等、広告内容の真実性について社会通念上疑念を抱くべき特別の事情があって読者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見しえたのに、真実性の調査確認をせずにその掲載等をしたものとは認められないから、被上告人らはこれについて不法行為上の責任を負わないものというべきである。すなわち、元来新聞広告は取引について一つの情報を提供するものにすぎず、読者らが右広告を見たことと当該広告に係 られないから、被上告人らはこれについて不法行為上の責任を負わないものというべきである。すなわち、元来新聞広告は取引について一つの情報を提供するものにすぎず、読者らが右広告を見たことと当該広告に係る取引をすることとの間には必然的な関係があるということはできず、とりわけこのことは不動産の購買勧誘広告について顕著であって、広告掲載に当たり広告内容の真実性を予め十分に調査確認した上でなければ新聞紙上にその掲載をしてはならないとする一般的な法的義務が新聞社等にあるということはできないが、他方、新聞広告は、新聞紙上への掲載行為によってはじめて実現されるものであり、右広告に対する読者らの信頼は、高い情報収集能力を有する当該新聞社の報道記事に対する信頼と全く無関係に存在するものではなく、広告媒体業務にも携わる新聞社並びに同社に広告の仲介・取次をする広告社としては、新聞広告のもつ影響力の大きさに照らし、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって読者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見しえた場合には、真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない義務があり、その限りにおいて新聞広告に対する読者らの信頼を保護する必要があると解すべきところ、前記事実関係によれば、本件掲載等をした当時、被上告人らにおいて前記真実性の調査確認義務があるのにこれを怠って右掲載等をしたものとはいえない。これと同旨に帰する原審の判断は正当として是認することができ、- 4 -その過程に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張も失当である。論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。 同第四点について記録によ である。論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。 同第四点について記録によって認められる本件訴訟の経緯に照らすと、原審が所論の措置をとらなかったことに違法はない。論旨は、ひっきょう、原審の裁量に属する審理上の措置の不当をいうものにすぎず、採用することができない。 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官安岡滿彦裁判官伊藤正己裁判官坂上壽夫裁判官貞家克己- 5 -

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