主文 原判決を破棄する。 被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人出宮靖二郎、同大槻和夫の上告理由について一原審の適法に認定した事実関係は、次のとおりである。 1 Dは、昭和六二年三月ころコンビニエンスストアーを開業し、同年九月五日被上告人と信用組合取引約定を締結した上、事業資金として証書貸付の方法で一〇〇〇万円を借り入れた(以下、これを「本件証書貸付金」という)。 2 上告人は、昭和五七年にDと協議離婚して以降、同人と音信を絶っていたが、たまたまDの開店した店舗が上告人の住居に近かったこともあり、昭和六三年一月ころから、右店舗で仕入業務、在庫管理及び商品選定等の仕事に従事するようになった。 3 Dは昭和六三年二月、被上告人に対し、事業資金として八〇〇万円の追加融資を申し込んだところ、担当者から保証人と担保の追加を求められたため、上告人に懇願して保証人になることと担保提供の同意を得た。そして、上告人は同月二五日、Dと共に被上告人の支店に赴き、上告人と被上告人との間において、(1) 被上告人とDとの間の信用組合取引約定によりDが負担する現在及び将来の一切の債務を連帯保証する旨の条項を含む保証契約(以下「本件保証契約」という。)と、(2) 上告人が所有するマンションにつき、右信用組合取引約定により被上告人が取得する現在及び将来の一切の債権を被担保債権とし、極度額を一二〇〇万円とする根抵当権を設定する旨の契約(以下「本件根抵当権設定契約」という。)が締結された。なお、右極度額一二〇〇万円は、本件証書貸付金の残元金八五〇万円と被- 1 -上告人がDに新たに貸し付ける八〇〇万円の合計一六五〇万円から、Dの被上告人に対する合計五 約」という。)が締結された。なお、右極度額一二〇〇万円は、本件証書貸付金の残元金八五〇万円と被- 1 -上告人がDに新たに貸し付ける八〇〇万円の合計一六五〇万円から、Dの被上告人に対する合計五〇〇万円の定期預金債権を差し引いた額に見合うように定められたものである。 4 Dは、被上告人から八〇〇万円の融資を受け、昭和六三年四月一〇日ころこれを完済した後、同月一五日被上告人に対して更に一〇〇〇万円の融資を申し込み、同月二〇日前記取引約定に基づき手形貸付の方法によりその融資を受けた(以下、これを「本件手形貸付金」という。)が、翌月に事実上倒産し、行方不明となった。 5 被上告人は昭和六三年七月一五日、本件手形貸付金とDの被上告人に対する合計五〇〇万円の定期預金債権(元金)とを対当額で相殺した。また、上告人が被上告人のために根抵当権を設定した前記マンションについては、昭和六三年五月二四日一番抵当権者の申立てにより競売手続が開始され、平成元年七月一七日二番抵当権者である被上告人も配当として極度額である一二〇〇万円の弁済金の交付を受けたが、なお二〇九万一六八三円の剰余金があった。 二原審は、右事実に基づき、(1) 本件保証契約は、被上告人とDとの間の信用組合取引約定によりDが負担する現在及び将来の一切の債務を上告人が連帯保証する旨の条項を含むものであり、契約書上保証期間及び保証限度額の定めはない、(2) 上告人と被上告人との間で本件保証契約が締結された際、被上告人の担当者は上告人に対し、右保証はDが新たに被上告人から融資を受ける八〇〇万円の支払のみを保証するものでなく、本件証書貸付金の残元金八五〇万円のほかDが信用組合取引約定に基づいて将来被上告人に対して負担する債務を含めて連帯保証するものである旨を説明し、上告人はこれを十分に認識していた を保証するものでなく、本件証書貸付金の残元金八五〇万円のほかDが信用組合取引約定に基づいて将来被上告人に対して負担する債務を含めて連帯保証するものである旨を説明し、上告人はこれを十分に認識していた、(3) 上告人と被上告人との間では、本件保証契約と同時に極度額を一二〇〇万円とする本件根抵当権設定契約が締結され、右極度額は、本件証書貸付金の残元金八五〇万円と被上告人がDに新たに貸し付ける八〇〇万円の合計一六五〇万円から、Dの被上告人に対する- 2 -合計五〇〇万円の定期預金債権を差し引いた額に見合うように定められたものであるが、この一事をもって、本件保証契約における当事者の意思解釈として、右極度額と同額を保証限度額とする旨の定めがあったものと推認することはできず、上告人に主債務の全額につき責任を負わせることが信義則に照らして不合理であるとも認められないとした上、本件証書貸付金及び本件手形貸付金の残元金二七七万〇五〇〇円並びにこれに対する遅延損害金の支払を求める被上告人の請求を棄却した第一審判決を取り消して、右請求を認容した。 三しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 1 原審の前記認定事実によれば、本件根抵当権設定契約における極度額一二〇〇万円は、本件証書貸付金の残元金八五〇万円と被上告人がDに新たに貸し付ける八〇〇万円の合計一六五〇万円から、Dの被上告人に対する合計五〇〇万円の定期預金債権を差し引いた額に見合うように定められたものであり、また、一番抵当権者の申立てに基づく前記マンションの競売手続においては、二番抵当権者である被上告人も配当として極度額である一二〇〇万円の弁済金の交付を受け、なお二〇九万一六八三円の剰余金があった、というのである。そうだとすると、右極度額は、信用組合取引約 においては、二番抵当権者である被上告人も配当として極度額である一二〇〇万円の弁済金の交付を受け、なお二〇九万一六八三円の剰余金があった、というのである。そうだとすると、右極度額は、信用組合取引約定により被上告人がDと取引を継続することによって取得する債権が一七〇〇万円程度にとどまることを想定し、この金額からDの被上告人に対する合計五〇〇万円の定期預金債権を差し引いた一二〇〇万円の範囲内において、前記マンションの担保価値を把握すれば足りるとして定められたものと解することができる。そして、前記のとおり、本件保証契約は本件根抵当権設定契約と同時に締結されたものであり、右各契約はいずれも信用組合取引約定により被上告人がDに対して取得する債権の回収を確保するためのものであったところ、この事実と前記のような各契約の締結及び極度額設定の経緯を併せ考えれば、本件保証契約の文言上- 3 -保証の限度額が明示されなかったとしても、客観的には、その限度額は本件根抵当権設定契約の極度額である一二〇〇万円と同額であると解するのが合理的であり、かつ、本件保証契約は、保証人の一般財産をも引当てにして、物的担保及び人的保証の両者又はそのいずれかから一二〇〇万円の範囲内の債権の回収を確保する趣旨で締結されたものと解するのが合理的である。したがって、本件においては、被上告人が根抵当権の実行によりその極度額相当の配当を受けた場合には、本件保証契約による上告人の保証債務は当然に消滅することとなる。 2 そうすると、右と異なる原判決は本件保証契約の趣旨の解釈を誤ったものであり、この違法は原判決の結論に影響することが明らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、被上告人が配当として根抵当権の極度額である一二〇〇万円の弁済金の交付を受けたことは前記のとおりで の違法は原判決の結論に影響することが明らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、被上告人が配当として根抵当権の極度額である一二〇〇万円の弁済金の交付を受けたことは前記のとおりであるから、これにより上告人の被上告人に対する本件保証契約による債務は消滅し、その履行を求める被上告人の請求は棄却されるべきものであって、これと結論を同じくする第一審判決は正当であるから、被上告人の控訴は理由がなく、これを棄却すべきである。 四よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官園部逸夫裁判官可部恒雄裁判官大野正男裁判官千種秀夫裁判官尾崎行信- 4 -
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