令和5年9月14日判決言渡同日原本受領裁判所書記官令和4年(ワ)第3392号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結の日令和5年7月11日判決 原告ホワイトスター株式会社同代表者代表取締役 P1同訴訟代理人弁護士山室匡史 被告株式会社アトラス 同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士松村廣治同幸田勝利同大黒光大主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、500万円及びこれに対する令和4年6月10日から 支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告は、別紙製品目録記載のペット用栄養補助食品を製造販売してはならない。 第2 事案の概要 1 本件は、原告が、被告に対して「ワンスプーン」ないし「ONESPOO N」との名称(以下、併せて「ワンスプーン」と表記する。)のペット用健康補助 食品(以下「原告商品」という。)を卸売販売していたところ、同販売契約の終了後、被告が、インターネット上で「ワンスプーンプレミアム」ないし「ONESPOONPREMIUM」との名称(以下、併せて「ワンスプーンプレミアム」と表記する。)のペット用健康(栄養)補助食品(以下「被告商品」と ターネット上で「ワンスプーンプレミアム」ないし「ONESPOONPREMIUM」との名称(以下、併せて「ワンスプーンプレミアム」と表記する。)のペット用健康(栄養)補助食品(以下「被告商品」という。)の販売を開始するなどしたことは、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条 1項1号の不正競争(混同惹起行為)に該当するとともに、原告に対する信義則上の義務違反であって、原告の営業権を侵害する不法行為を構成し、これにより、原告において原告商品の販売減少の損害を被ったとして、被告に対し、不競法(4条)又は不法行為に基づき、損害賠償金500万円及びこれに対する令和4年6月10日(訴状送達日であり、不正競争又は不法行為よりも後の日)から支払済みまで民 法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、不競法3条1項に基づき、被告商品の製造販売の差止めを求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠〔枝番号を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者及び関係者 ア原告は、化粧品及び健康食品の開発・販売、ペットフードの開発・販売等を業とする株式会社であり、P1が代表者を務めている(弁論の全趣旨)。 イ被告は、健康関連機器及び食品等の販売・卸、化粧品及びサプリメントの輸出入等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 ウ P2は、被告の事業推進部長を務めており、令和元年頃にも同様の地位にあ った(乙28)。 エ P3は、紳士服及び婦人服の製造・小売等を業とする有限会社フェイス(以下「フェイス」という。)の代表者であり、P1及びP2は、いずれもフェイスのオーダースーツの顧客であった(乙27)。 (2) 原告商品の開発及び製造・販売等 ア 有限会社フェイス(以下「フェイス」という。)の代表者であり、P1及びP2は、いずれもフェイスのオーダースーツの顧客であった(乙27)。 (2) 原告商品の開発及び製造・販売等 ア原告商品は、乳酸菌、納豆菌及び酵母菌を共棲培養することによって生成さ れる免疫賦活物質を原材料の一つとするペット(犬や猫等の小動物。以下同じ。)用健康補助食品である。 上記免疫賦活物質は、株式会社リタニアルバイオサイエンスに在籍して研究活動を行っていたP4によって発見され、同社により「LBSカルチャー」と名付けられた(以下、上記免疫賦活物質のことを「LBS」という。)。(以上につき、甲 3、22)イ P4は、平成15年11月13日に、微生物の培養・販売、健康食品及び関連商品の開発製造・販売等を業とする株式会社緑微研(以下「緑微研」という。)を設立した。 緑微研は、別紙商標権目録1記載の商標権(以下「本件商標権1」という。)を 有し、「ワンスプーン」との名称でペット用健康補助食品(原告商品)を製造・販売していた(販売については、自ら又は第三者を通じて行っていたが、その販売数量については当事者間に争いがある。)。(以上につき、甲1、2、22、弁論の全趣旨)ウ P1は、平成28年6月25日、P4が引退する意思を示したことから緑微 研の代表取締役に就任し、P4とともに同社の業務を行うようになった。 その後、令和元年7月には、原告が緑微研から原告商品の製造販売事業を引き継ぎ、同年9月にはP4は死亡した。(以上につき、甲2、22)エ本件商標権1については、更新登録の申請はされず、平成29年11月22日の経過による存続期間満了により同商標権は消滅した(甲1、弁論の全趣旨)。 (3) 原告商品の販売契 、22)エ本件商標権1については、更新登録の申請はされず、平成29年11月22日の経過による存続期間満了により同商標権は消滅した(甲1、弁論の全趣旨)。 (3) 原告商品の販売契約の締結及びこれに至る経緯等ア P3は、平成29年12月に、P1にオーダースーツを届けるため原告の事務所を訪れた際に、原告商品を見掛け、これにつきP1に尋ねたところ、P1から、ペット用の健康補助食品であり、株式会社オフィスピースワン(以下「オフィスピースワン」という。)が「おいしい納豆菌」という名称で独占販売権を有している こと、オフィスピースワンの意向により、国内で原告商品を販売することができな いことなどの説明を受けた。 これを聞いたP3は、原告商品を海外で販売することをP1に提案し、P1は、原告商品の営業活動をP3ないしフェイスに委託した。(以上につき、甲22、乙27、弁論の全趣旨)イその後、原告商品の海外での販路開拓には至らなかったが、令和元年7月頃、 P3が被告の事業推進部長であるP2に対して原告商品を紹介したことを契機として、原告及び被告は、同年9月30日付け覚書を取り交わし、同日付けで以下を主たる内容とする原告商品についての販売契約(以下「本件販売契約」という。)を締結した(甲6、22、乙27、28)。 (ア) 原告は、被告に対し、原告商品250gを1数量当たり1400円で卸売 販売し、被告は、これを自社で販売する。(1条、2条)(イ) 商品の販売は、原則としてインターネット販売及びカタログ販売のため、ペットショップなどの店頭販売を行ってはならない。店頭販売を希望する場合は、その都度、原告と被告とで販売店舗や卸値を協議して決定する。(6条2項)(ウ) 原告は、被告を販売代理店と定 売のため、ペットショップなどの店頭販売を行ってはならない。店頭販売を希望する場合は、その都度、原告と被告とで販売店舗や卸値を協議して決定する。(6条2項)(ウ) 原告は、被告を販売代理店と定め、他社に原告商品を卸すことはできない。 (6条4項)(エ) 契約期間は、令和元年9月1日から令和2年8月31日までとする。ただし、同期間満了の1か月前までに、原告又は被告から別段の意思表示がない場合は、本契約は自動的に1年間延長されるものとし、以後も同様とする。(9条)(4) 原告商品の販売及び本件販売契約の終了 ア被告は、令和元年9月以降、本件販売契約に基づき、原告の販売代理店として、アマゾン、楽天市場、auPAYマーケット、ヤフーショッピング等のインターネット上の店舗(以下「ネットショップ」という。)において原告商品(1袋250gの袋詰め商品)を販売し、令和2年8月には、本件販売契約は1年間更新された(甲6、22、乙27、28)。 イ P1は、令和3年8月27日、P2及びP3に対し、本件販売契約を更新し ない旨の意思表示をする電子メールを送信し、本件販売契約は同月31日をもって終了した(なお、上記電子メールは、契約期間満了の1か月前よりも後に送信されているが、上記の本件販売契約終了については当事者間に争いがない。)(乙25)。 (5) フェイスによる商標登録等 フェイスは、令和2年11月12日、別紙商標権目録2記載の商標の登録出願をし、同商標は令和3年11月9日付けで登録された(以下、同登録商標に係る商標権のことを「本件商標権2」という。)(乙22)。 (6) 被告による本件販売行為被告は、フェイスから本件商標権2に係る商標の使用許諾を受けた上、令和3年 12月から、「 標に係る商標権のことを「本件商標権2」という。)(乙22)。 (6) 被告による本件販売行為被告は、フェイスから本件商標権2に係る商標の使用許諾を受けた上、令和3年 12月から、「ワンスプーンプレミアム」との名称で、原告商品とは異なるペット用健康補助食品(被告商品)の販売を開始した(以下、同販売行為のことを「本件販売行為」という。)。被告商品にも、原告商品と同様、原材料の一つとしてLBSが用いられている。(乙24、27、28) 3 争点 (1) 本件販売行為は不競法2条1項1号の不正競争に該当するか(争点1)(2) 被告による不法行為の成否(争点2)(3) 原告の損害の発生及びその額(争点3) 4 当事者の主張(1) 本件販売行為は不競法2条1項1号の不正競争に該当するか(争点1) 〔原告の主張〕ア不競法2条1項1号において要求される周知性については、一地域や特定の取引者・需要者の間で知られていればこれを充足するといえる。 そして、原告は、被告との間で本件販売契約を締結する以前は、原告商品につき、株式会社パーソナルリース、シーエスブレインズ有限会社ほか複数の会社に広告を 掲載してもらい、販売をしてもらっていたのであって、平成29年までの年間販売 量は300kg程度であり、250gの袋に小分けすると約1200袋であった。 本件販売契約の締結後は、被告の主張を前提とすると、2年間で4000個余り、顧客数にして1000人程度とのことであるが、常連客が1000人もいれば、十分に特定の取引者・需要者の間で知られているといえるから、周知性は認められる。 イ原告商品と被告商品は別商品であるにもかかわらず、被告は、被告商品につ き原告商品(ワンスプーン)と類似の商品名(ワン 定の取引者・需要者の間で知られているといえるから、周知性は認められる。 イ原告商品と被告商品は別商品であるにもかかわらず、被告は、被告商品につ き原告商品(ワンスプーン)と類似の商品名(ワンスプーンプレミアム)を用いるとともに、複数のネットショップの商品説明文において、被告商品が原告商品を改良した後継品であるかのように記載した。さらに、被告は、被告商品につき、ネットショップにおける原告商品のカスタマーレビューを流用し、販売サイトのカテゴリ上のブランド表示も「ワンスプーン」にするなどした。 ウこのように、被告は、被告商品につき、原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている標章(ワンスプーン)と類似の標章(ワンスプーンプレミアム)を使用し、また、同標章を使用した被告商品につき電気通信回線を通じて提供するなどし、原告商品と混同を生じさせたものであるから、本件販売行為は不競法2条1項1号の不正競争に該当する。 〔被告の主張〕ア本件販売契約の締結以前は、原告商品は需要者には全く知られていなかった。 本件販売契約の締結後は、被告において原告商品の広告宣伝活動及び営業活動を行ったものの、原告商品を販売できたのは、2年間で4000個余り、顧客数にして1000人程度にすぎず、「ワンスプーン」の標章は、需要者間に広く認識される に至ったとまではいえない。加えて、「ワンスプーン」との標章は、一般にありふれた「ワン」と「スプーン」との言葉を組み合わせたものにすぎず、新規性・奇抜性は希薄であり、記憶にとどまりにくく顧客吸引力は小さいことからしても、「ワンスプーン」の標章につき周知性は認められない。 仮に、一定の周知性を獲得していたとしても、それは被告の広告宣伝活動及び営 業活動によるものであるから、原告が被告 は小さいことからしても、「ワンスプーン」の標章につき周知性は認められない。 仮に、一定の周知性を獲得していたとしても、それは被告の広告宣伝活動及び営 業活動によるものであるから、原告が被告に対して上記周知性を主張することは権 利濫用というべきである。 イまた、被告商品は、原告商品とは全く別の成分を持った別商品であり、需要者において、原告商品と混同し誤認するおそれはない。 ウしたがって、本件販売行為は不競法2条1項1号の不正競争に該当しない。 (2) 被告による不法行為の成否(争点2) 〔原告の主張〕ア被告は、原告との間で本件販売契約を締結し、約2年間にわたって原告商品の販売を行っていたものであり、このように原告と密接な社会的接触関係を持っていた以上は、本件販売契約の終了後、原告商品を販売するために開設したネットショップを遅滞なく削除すべき信義則上の義務を負っている。 それにもかかわらず、被告は、上記義務に違反し、被告商品に原告商品と類似の商品名を付け、被告商品が原告商品の改良後継商品であるかのように虚偽を述べ、上記ネットショップにおける原告商品のカスタマーレビューを被告商品に流用するなどして本件販売行為を行っている。 被告のかかる行為は、需要者に対し、被告商品を原告商品の改良後継商品である と誤信させて被告商品を購入するよう誘導するものであり、原告が原告商品の名称を変更して販売を継続することをも阻害し、原告の営業権を違法に侵害するものであるから、不法行為を構成する。このことは、被告がフェイスから本件商標権2に係る商標の使用許諾を受けていることにより正当化されるものではない。 イさらに、フェイスは、原告が従前本件商標権1に係る商標登録をしていたこ とを認識していたにもかかわ から本件商標権2に係る商標の使用許諾を受けていることにより正当化されるものではない。 イさらに、フェイスは、原告が従前本件商標権1に係る商標登録をしていたこ とを認識していたにもかかわらず、原告との間の業務委託契約に付随する信義則上の義務に違反し、存続期間満了により本件商標権1が消滅していることを利用して、本件商標権2に係る商標登録を行い、原告が「ワンスプーン」の商標登録をし直すことができない状態にし、これにより、原告は原告商品を販売することができなくなっているものであるから、フェイスが原告に対して本件商標権2を主張すること は権利濫用であり、フェイスの上記行為は原告の営業権を違法に侵害するものとし て、不法行為を構成する。 そして、被告がフェイスの本件商標権2を援用することも、フェイスの行為と客観的に関連共同して原告の営業上の利益を侵害するものであるから、不法行為を構成する。 〔被告の主張〕 ア被告は、フェイスの許諾を得て、本件商標権2に係る商標を使用しているものであり、「ワンスプーン」を含む名称を使用して本件販売行為を行ったとしても、正当な権利の行使であって、何ら違法性はなく、不法行為は成立しない。 また、被告は、被告商品につき、原告商品の後継改良商品であるかのように虚偽を述べたことはない。被告商品は、原告商品とは全く別の成分を持った別商品であ り、製造者も異なるから、需要者が被告商品を原告商品の後継改良商品と誤認することはない。 さらに、被告商品を販売しているネットショップにおいて、原告商品のカスタマーレビューが残っているとしても、良いレビューもあれば悪いレビューもあり、被告がこれを使用して被告商品の宣伝行為を行ったものではない。 イ被告ないしフェイスにおいて、原告 告商品のカスタマーレビューが残っているとしても、良いレビューもあれば悪いレビューもあり、被告がこれを使用して被告商品の宣伝行為を行ったものではない。 イ被告ないしフェイスにおいて、原告に対し、本件商標権1に係る商標の存続期間が満了していることを告知すべき義務など存在せず、フェイスが本件商標権2に係る商標登録を行い、被告が同商標を使用したからといって、原告に対する不法行為が成立するものではない。 (3) 原告の損害の発生及びその額(争点3) 〔原告の主張〕被告の不正競争又は不法行為によって、需要者は、被告商品を原告商品の後継商品であると誤信して被告商品を購入したため、原告は、本来売れるはずであった原告商品が売れなくなるという損害を被った。 原告商品は、毎月300個程度販売することができており、単価が1400円で あるから、年間売上げは504万円程度となる。 したがって、被告商品が販売された令和3年12月以降の原告の損害額は、少なくみても500万円を下回るものではない。 〔被告の主張〕争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに証拠(後掲のほか、甲22、乙27、28、証人P3、証人P2、原告代表者P1)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) P4が設立した緑微研は、平成19年11月22日、本件商標権1に係る商標登録を受け、「ワンスプーン」との名称で、LBSを原材料の一つとして用い たペット用健康補助食品(原告商品)を製造・販売していた(販売については、自ら又は第三者を通じて行っていた。)。 その後、緑微研は、オフィスピースワンに対し、「おいしい納豆菌」という名称でLBSを用いたペット用健康補助食品を独占販売することを許諾し (販売については、自ら又は第三者を通じて行っていた。)。 その後、緑微研は、オフィスピースワンに対し、「おいしい納豆菌」という名称でLBSを用いたペット用健康補助食品を独占販売することを許諾したところ、オフィスピースワンの意向もあり、基本的に国内では原告商品を販売しないこととさ れ、緑微研等は、従来からの顧客に対してのみ限定的に原告商品の販売を継続していた。(以上につき、前提事実(2)ア、甲1、弁論の全趣旨)(2) P1は、平成28年6月25日、緑微研の代表取締役に就任し、P4とともに同社の業務を行うようになった(前提事実(2)ウ)。 (3) 本件商標権1については、更新登録の申請はされず、平成29年11月2 2日の経過による存続期間満了により同商標権は消滅した(前提事実(2)エ)。 (4) P3は、平成29年12月に、P1にオーダースーツを届けるため原告の事務所を訪れた際に、原告商品を見掛け、これにつきP1に尋ねたところ、P1から、ペット用の健康補助食品であり、オフィスピースワンが「おいしい納豆菌」という名称で独占販売権を有していること、オフィスピースワンの意向により、国内 で原告商品を販売することができないことなどの説明を受けた。 これを聞いたP3は、原告商品を海外で販売することをP1に提案し、P1は、原告商品の営業活動をP3ないしフェイスに委託した。(以上につき、前提事実(3)ア)(5) P3は、原告商品を海外で販売するための営業活動を行ったが、原告商品が国内で流通していて、海外からもインターネットで検索できる状態でないと販売 が困難であることが判明したため、P1を通じて、P4に依頼してオフィスピースワンと交渉してもらい、平成30年8月までには、少なくとも海外での販売の前提 ンターネットで検索できる状態でないと販売 が困難であることが判明したため、P1を通じて、P4に依頼してオフィスピースワンと交渉してもらい、平成30年8月までには、少なくとも海外での販売の前提とする限度において、国内で原告商品をインターネット販売することの許可が得られた。もっとも、その後、原告商品の海外での販路開拓には至らなかった。(弁論の全趣旨) 令和元年7月には、原告が緑微研から原告商品の製造販売事業を引き継ぎ、同年9月にはP4は死亡した(前提事実(2)ウ)。 (6) P3は、令和元年7月頃、被告の事業推進部長であるP2に対して原告商品を紹介し、同月29日には、P1、P3及びP2の三者での打合せが行われたところ、P2の意向により、原告商品を被告が独占販売することで話を進めることと なった。同年8月には、P4がオフィスピースワンと交渉し、国内で原告商品をインターネット販売することの許可が得られた。 そして、原告及び被告は、同年9月30日付け覚書を取り交わし、同日付けで、被告が原告の販売代理店として、原告商品を独占販売することなどを内容とする本件販売契約を締結した。 併せて、原告とフェイス及びP3とは、同年10月1日付け覚書を取り交わし、本件販売契約に係る原告商品の取引に関し、フェイス及びP3が被告から取引情報を収集して原告に提供するなどし、原告は、その手数料として、フェイス及びP3に対し原告商品1袋当たり600円を支払うことを内容とする契約(以下「本件手数料契約」という。)を締結した。(以上につき、前提事実(3)イ、甲4、7) (7) 被告は、令和元年9月以降、本件販売契約に基づき、原告の販売代理店と して、アマゾン、楽天市場、auPAYマーケット、ヤフーショッピング等のネット (3)イ、甲4、7) (7) 被告は、令和元年9月以降、本件販売契約に基づき、原告の販売代理店と して、アマゾン、楽天市場、auPAYマーケット、ヤフーショッピング等のネットショップにおいて原告商品(1袋250gの袋詰め商品)を販売し、令和2年8月には、本件販売契約は1年間更新された。 本件販売契約の継続中、P1とP3は、原告商品のパッケージの記載が医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に違反しないように修 正したり、同パッケージにおける販売者の記載を原告から被告に変更したり、原告商品を海外でも販売したりすること等についての意見が折り合わず、険悪な関係となることがあり、令和2年9月5日には、P1がP3に対し、人の会社(原告)のことに口を出すな、二度と事務所にも来るななどと告げたことがあった。P1は、P3とP2がワンスプーンの原材料の配合率を尋ねてくるため、原告の営業秘密を 聞き出そうとしていると考え、不審に思っていた。 その後も、P1とP3との間のライン等によるやり取りは行われ、本件販売契約に基づく取引も継続していたが、令和3年8月4日に、P1、P3及びP2の三者での打合せが行われた際、原告商品の今後の販売方針等についての意見が折り合わず、途中でP2が退席するということがあった。 P1は、同月27日、P2及びP3に対し、本件販売契約を更新しない旨の意思表示をする電子メールを送信し、本件販売契約は同月31日をもって終了した。 (以上につき、前提事実(4)、甲4、乙5ないし10)(8) 令和元年9月以降の原告商品の売上げは、別紙原告商品販売数記載のとおりであり、本件販売契約が終了する令和3年8月までの2年間で3837袋であっ た。また、被告は、本件販売契約の終了 (8) 令和元年9月以降の原告商品の売上げは、別紙原告商品販売数記載のとおりであり、本件販売契約が終了する令和3年8月までの2年間で3837袋であっ た。また、被告は、本件販売契約の終了に伴い、アマゾンのネットショップにおける原告商品の商品登録を取り消したが、アマゾンにおいては、商品登録を取り消した後も6か月間は購入者への納品が必要であったことから、これに対応するため、本件販売契約終了後は、フェイスが原告から原告商品を購入して被告に供給し、被告が納品しており、その数量は令和4年1月までの期間で598袋であった(合計 4435袋)。原告商品はリピート商品であり、これらの購入者数は、多くても1 000人程度であった(なお、原告は、アマゾンにおいても、令和3年10月1日の規約改正後〔乙12〕に原告商品の登録を取り消せば、同月末には原告商品の納品の必要がなくなってネットショップを閉鎖できるところ、被告商品の販売に当たって原告商品のカスタマーレビューを流用するために、被告はあえてネットショップの閉鎖を引き延ばした旨主張するが、本件販売契約は同年8月31日をもって終 了しているのであるから、被告が上記規約改正を待たずに原告商品の商品登録を取り消したことはむしろ当然のことであって、原告の主張は採用できない。)。(前提事実(4)ア、乙11、12)(9) 本件販売契約の締結後、令和2年11月初め頃までの間に、P1は、P3ないしP2から「ワンスプーン」との名称につき商標登録がされているかどうか問 われたのに対し、大丈夫であるなどと回答したにとどまり、商標登録の確認までは行わなかった。 そこで、P3が弁理士に確認したところ、「ワンスプーン」との名称の商標登録は誰でもできる状態になっている旨の回答を得たが、P3はこれ るなどと回答したにとどまり、商標登録の確認までは行わなかった。 そこで、P3が弁理士に確認したところ、「ワンスプーン」との名称の商標登録は誰でもできる状態になっている旨の回答を得たが、P3はこれをP1には伝えずに、フェイスの名義で、令和2年11月12日に本件商標権2に係る商標の登録出 願をし、令和3年11月9日に同商標は登録された。(以上につき、前提事実(5))(10) 被告は、フェイスから本件商標権2に係る商標の使用許諾を受けた上、令和3年12月、「ワンスプーンプレミアム」との名称で、原告商品とは異なるペット用健康補助食品(被告商品)の販売(本件販売行為)を開始した。被告商品にも、原告商品と同様、原材料の一つとしてLBSが用いられている。被告が運営する 「ONESPOON ONESPOONPREMIUM」のインスタグラムでは、被告商品が先行販売される旨が記載され、「ワンスプーンの良さはそのままに、より食べやすく改良しました」と紹介されたほか、「ワンスプーンは現在Amazonでのみ販売しています」と記載され、原告商品の購入サイトにリンクが張られていた。 本件販売行為に当たっては、被告は、ネットショップ上の原告商品を販売してい たページと同一のページにおいて被告商品の販売を開始しており、同ページには原告商品のカスタマーレビューが残ったままとなっていた。同レビューの件数は、ヤフーショッピングハローマート店15件、同ジオマート店6件、楽天市場3件(甲11のうち「2022-01-11」のレビューを除く。)であった。アマゾンについては、令和4年4月初めの時点で81件のレビューが存在したものの、被告商 品についてのレビューが含まれており、原告商品についてのレビューの件数は明らかではない(なお、同 であった。アマゾンについては、令和4年4月初めの時点で81件のレビューが存在したものの、被告商 品についてのレビューが含まれており、原告商品についてのレビューの件数は明らかではない(なお、同年6月初めの時点では、レビューの件数は7件となっていた。)。 また、後日修正されたものの、令和4年1月時点でのヤフーショッピングにおける販売ページには、「ONESPOONがリニューアルしました。1粒1粒をさ らに小さくねこちゃんにも食べやすくし、腹持ちの良い製法に変えました。」、「LBSエキスはそのまま配合。」などと記載されていた。(以上につき、前提事実(6)、甲8ないし12、20)(11) 原告は、令和4年1月28日、前記(9)の商標登録に対して特許庁に異議を申し立てたが、その後、申立ての理由について必要な補正がされず、同年4月2 6日付けで同異議は不適法なものとして却下された。(乙1、2) 2 本件販売行為は不競法2条1項1号の不正競争に該当するか(争点1)について(1) 原告は、原告の周知の商品等表示である「ワンスプーン」と類似の標章「ワンスプーンプレミアム」を使用した被告の本件販売行為は不競法2条1項1号 の不正競争に該当する旨主張する。同号の不正競争に該当するというためには、商品等表示が周知性を備えること、すなわち、需要者の間に広く認識されていることが必要である。 (2) 認定事実(7)及び(8)のとおり、令和元年9月の本件販売契約の締結後は、被告がアマゾン、楽天市場、auPAYマーケット、ヤフーショッピング等のネッ トショップにおいて原告商品を販売していたものであり、日本全国のペットの飼育 者が需要者として見込まれ得るものと解される。 しかるに、原告商品の売上げは、本件販売契約が終了 のネッ トショップにおいて原告商品を販売していたものであり、日本全国のペットの飼育 者が需要者として見込まれ得るものと解される。 しかるに、原告商品の売上げは、本件販売契約が終了する令和3年8月までの2年間で3837袋であり、その後の令和4年1月までのアマゾンでの販売数量を含めても4435袋(1袋250g)にすぎず、購入者は多くても1000人程度にとどまっている。原告商品の販売実績が上記の程度にとどまり、他に「ワンスプー ン」との標章が特に需要者間に周知されていたと認めるべき事情も見当たらない以上、上記標章は、「需要者の間に広く認識されている」とはいえず、周知性があるとは認められない。 これに対し、原告は、原告商品につき、平成29年までの年間販売量は300kg程度であり、250gの袋に小分けすると約1200袋であった旨主張する。し かし、認定事実(1)のとおり、緑微研等が限定的に原告商品の販売を行っていた事実は認められるものの、その数量が原告の上記主張のとおりであったことを裏付けるに足る証拠はない。また、仮に上記主張に係る事実が認められたとしても、上記数量に照らすと、直ちに上記標章の周知性が肯定されるものではなく、いずれにしても、上記結論が左右されるものではない。 (3) したがって、周知性に係る原告の主張が権利濫用に当たるか否かにかかわらず、被告の本件販売行為は、不競法2条1項1号の不正競争に該当するとは認められない。 3 被告による不法行為の成否(争点2)について(1) 原告は、被告が、本件販売契約の終了後、原告商品を販売するために開設 したネットショップを遅滞なく削除(閉鎖)すべき信義則上の義務に違反し、被告商品に原告商品と類似の商品名を付け、被告商品が原告商品の改良後継商品で 売契約の終了後、原告商品を販売するために開設 したネットショップを遅滞なく削除(閉鎖)すべき信義則上の義務に違反し、被告商品に原告商品と類似の商品名を付け、被告商品が原告商品の改良後継商品であるかのように虚偽を述べ、上記ネットショップにおける原告商品のカスタマーレビューを被告商品に流用するなどして本件販売行為を行ったことは、原告の営業権を違法に侵害するものであって、不法行為を構成する旨主張する。 この点、被告としては、本件販売契約が終了した以上、原告商品の販売を中止す べき義務は負うものといえるが、上記ネットショップが残存するというだけで原告商品の販売が継続されるものではなく、原告に何らかの不利益が生じるとは認められないから、被告において同削除(閉鎖)を行うべき信義則上の義務があるとまではいえない。 もっとも、認定事実(10)のとおり、被告は、本件販売契約の終了に伴う原告商品 の販売終了後、ネットショップ上の原告商品を販売していたページと同一のページにおいて被告商品の販売を開始しており、同ページには原告商品のカスタマーレビューも残置され、「ONESPOONがリニューアルしました。」などと記載されている販売ページも存在した。そして、被告商品にも原告商品と同様にLBSが原材料の一つとして用いられていることに加え、被告商品の名称(ワンスプーンプ レミアム)は、原告商品の名称(ワンスプーン)と類似しており、一般に、一段上等・高級であることを意味する「プレミアム」との文字部分が原告商品の名称に付加されていることからすれば、上記ページを閲覧した需要者としては、被告商品につき、原告商品の後継ないし改良商品であると考える可能性がないとはいえない。 しかしながら、被告商品と原告商品の名称が類似している点につい からすれば、上記ページを閲覧した需要者としては、被告商品につき、原告商品の後継ないし改良商品であると考える可能性がないとはいえない。 しかしながら、被告商品と原告商品の名称が類似している点について、被告の本 件販売行為が不競法2条1項1号の不正競争に該当しないことは前記2のとおりであり、それとは別に不法行為が成立するとは解されない。また、上記ページの記載につき、被告商品が原告商品の後継商品である旨を明示するまでの記述はなく、被告商品において実際に原告商品に何らかの改良が加えられたのであれば、改良した旨の記述が虚偽に当たるとはいえないから、被告が、上記ページにことさら原告商 品の評価を低下させ、又は、被告商品の評価を上昇させるような虚偽の事実を掲載したとは認められない。さらに、原告商品に関するカスタマーレビューが上記ページ内に残置されていた点について、当該レビューが被告商品に関するものでないことを閲覧者が認識できるような措置が講じられることが望ましいとはいえるが、認定事実(10)のとおり、残置されていた原告商品に関するカスタマーレビューの件数 は、各ネットショップの合計で多くても100件程度にとどまるものと認められる し、被告が、原告商品の評価を低下させ、又は、被告商品の評価を上昇させることを意図してカスタマーレビューを流用したとの事実も認められない。そもそも、カスタマーレビューは商品に関する意見や感想を自由に投稿するものにすぎず、内容は様々で、必ずしも正確性や信用性が担保されたものではなく、一般の閲覧者もそのような性格の記事と理解する。そうであれば、上記ページ内に原告商品に関する カスタマーレビューが残置されていたとしても、そのことゆえに直ちに原告商品の評価が低下し、又は、被告商品の評価が上昇するわけ な性格の記事と理解する。そうであれば、上記ページ内に原告商品に関する カスタマーレビューが残置されていたとしても、そのことゆえに直ちに原告商品の評価が低下し、又は、被告商品の評価が上昇するわけではないから、原告の営業権が侵害されるとは考え難い。 以上によれば、原告の上記主張に係る被告の行為が、不法行為を構成するとは認められない。 (2) また、原告は、フェイスが、原告が従前本件商標権1に係る商標登録をしていたことを認識していたにもかかわらず、原告との間の業務委託契約(本件手数料契約)に付随する信義則上の義務に違反し、存続期間満了により本件商標権1が消滅していることを利用して、本件商標権2に係る商標登録を行い、原告が「ワンスプーン」の商標登録をし直すことができない状態にしたことは、原告の営業権を 違法に侵害するものとして不法行為を構成し、被告がフェイスの本件商標権2を援用することも不法行為を構成する旨主張する。 しかしながら、認定事実(1)ないし(3)によれば、本件商標権1について登録をしていたのは緑微研(平成28年6月からはP1が代表者)であり、原告が本件商標権1を有していたことはない。また、平成29年11月22日の経過による存続期 間満了により本件商標権1は消滅しているところ、認定事実(9)のとおり、原告代表者であるP1は、本件販売契約の継続中に、P3ないしP2から「ワンスプーン」との商標登録がされているかどうか問われたのに対し、大丈夫であるなどと回答したにとどまり、商標登録の確認までは行わなかった。加えて、フェイスにおいて、上記商標の利用の意図もないのに原告を妨害したり、不正な利益を得たりするため に上記商標登録を行ったとまで認めるに足りる事情もない。商標の登録出願に関す る先願主義の イスにおいて、上記商標の利用の意図もないのに原告を妨害したり、不正な利益を得たりするために上記商標登録を行ったとまで認めるに足りる事情もない。商標の登録出願に関する先願主義の原則に照らせば、フェイスによる本件商標権2に係る商標登録が何らかの違法行為を構成するとは認められず、被告がフェイスから同商標の使用許諾を受けて「ワンスプーンプレミアム」との名称で被告商品を販売していること(本件販売行為)についても、原告に対する不法行為を構成するものとは認められない。 4 結論 よって、その余の争点につき判断するまでもなく、原告の請求にはいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 武宮英子 裁判官 阿波野右起 裁判官 峯健一郎 (別紙)製品目録 1 商品名ONESPOONPREMIUM(ワンスプーンプレミアム) 2 ブランド ONESPOON 3 成分LBS(乳酸菌・納豆菌・酵母菌を共棲培養したもの)以上 (別紙)商標権目録 1 登録番号第5092751号 SPOON 成分LBS(乳酸菌・納豆菌・酵母菌を共棲培養したもの)以上 (別紙)商標権目録 1 登録番号第5092751号出願日平成19年1月30日 登録日平成19年11月22日商品の区分第31類指定商品飼料商標 以上 (別紙)商標権目録 2 登録番号第6468163号出願日令和2年11月12日 登録日令和3年11月9日商品の区分第5類指定商品愛玩動物用サプリメント商標 以上(別紙原告商品販売数は添付省略)
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