平成26年9月11日判決言渡平成26年(行ケ)第10002号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年8月5日判決 原告株式会社フジ医療器 訴訟代理人弁護士辻本希世士同辻本良知同松田さとみ訴訟代理人弁理士辻本一義同丸山英之同神吉出同大本久美同金澤美奈子同松田裕史 被告ファミリーイナダ株式会社 訴訟代理人弁理士古川安航同山田久就同高田聰 主文 1 特許庁が無効2013-800092号事件について平成25年12月5日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)被告は,平成24年4月4日に出願(特願2012-61490号の分割出願であり,原出願日は平成14年4月19日である。)され,平成25年3月15日に設定登録された,発明の名称 緯等(争いがない。)被告は,平成24年4月4日に出願(特願2012-61490号の分割出願であり,原出願日は平成14年4月19日である。)され,平成25年3月15日に設定登録された,発明の名称を「マッサージ機」とする特許第5220933号(以下「本件特許」という。)の特許権者である。 原告は,平成25年5月24日,特許庁に対し,本件特許の請求項1ないし6に記載された発明についての特許を無効にすることを求めて審判の請求をした。 特許庁は,上記請求を無効2013-800092号事件として審理をした結果,平成25年12月5日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同月13日,原告に送達した。 2 特許請求の範囲の記載(甲17,20)本件特許の特許請求の範囲(請求項の数は6である。)は,無効審判中の訂正請求により訂正されたものであり,訂正後の請求項1ないし6の記載は,以下のとおりである(以下,訂正後の請求項1ないし6に記載された発明をそれぞれ「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」のようにいい,本件訂正発明1ないし6を総称して「本件訂正発明」という。また,本件特許の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)。 「【請求項1】被施療者が着座可能な座部と,被施療者の上半身を支持する背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において,前記座部の両側に夫々配設され,被施療者の腕部を保持する左腕用の保持部及び右腕用の保持部を備え, 前記保持部は,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部と,前記外殻部の内面に設けられ被施療者の腕部を施療する膨張及び収縮可能な空気袋と,を備え,被施療者の掌を含む前腕を保持可能であり,左腕用の前記保持部に設けられ に硬度が高い材料からなる外殻部と,前記外殻部の内面に設けられ被施療者の腕部を施療する膨張及び収縮可能な空気袋と,を備え,被施療者の掌を含む前腕を保持可能であり,左腕用の前記保持部に設けられた空気袋と,右腕用の前記保持部に設けられた空気袋とを夫々独立に駆動し,被施療者の腕部を片腕毎に施療することを特徴とするマッサージ機。 【請求項2】前記保持部は,その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されており,被施療者の腕部を部分的に覆って保持可能であることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。 【請求項3】各種の動作指示を行う操作パネルが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマッサージ機。 【請求項4】前記保持部は,その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に,その内面に互いに対向する部分を有し,左腕用の前記保持部と右腕用の前記保持部は,各々の前記開口が横を向き,且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマッサージ機。 【請求項5】前記保持部は,その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に,その内面に互いに対向する部分を有し,前記保持部は,上方が開口するように配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマッサージ機。 【請求項6】前記背凭れ部は,被施療者の胴体を支持するクッション部と,前記クッション部 より前方へ延設され被施療者の上腕及び肩の側部を覆う部分を有するカバー部と,を有し,前記カバー部には,膨張及び収縮することにより被施療者の肩に刺激を与えることができる空気袋が設けら より前方へ延設され被施療者の上腕及び肩の側部を覆う部分を有するカバー部と,を有し,前記カバー部には,膨張及び収縮することにより被施療者の肩に刺激を与えることができる空気袋が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のマッサージ機。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。その要旨は,本件訂正発明は,甲1号証ないし10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえないというものである。 審決が認定した,本件特許の原出願の出願日より前に刊行された特開平10-243981号公報(甲1。以下「甲1公報」という。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)の内容,本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (1) 甲1発明の内容「被施療者が着座可能な座部と,被施療者の上半身を支持する背凭れ部とを備える椅子式空気圧マッサージ機において,前記座部の側部に配設され,人体手部及び下腕部を収納する収納体12を備え,収納体12は,合成繊維等で袋状に形成された非弾性カバー部材121と,非弾性カバー部材121の内面部に設けられ,人体手部及び下腕部を空気圧マッサージする膨張及び収縮可能な膨縮機構11と,を備え,人体の掌を含む前腕を収納可能であり,収納体12に設けられた膨縮機構11を駆動し,人体手部及び下腕部を空気圧マッサージする椅子式空気圧マッサージ機。」(2) 一致点「被施療者が着座可能な座部と,被施療者の上半身を支持する背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において, 前記座部の側部に配設され,被施療者の腕部を拘束する拘束手段を備え,前記拘束手段は,外側部材と,前記外側部材の内面に設けられ被施療者の腕部を 備える椅子型のマッサージ機において, 前記座部の側部に配設され,被施療者の腕部を拘束する拘束手段を備え,前記拘束手段は,外側部材と,前記外側部材の内面に設けられ被施療者の腕部を施療する膨張及び収縮可能な空気袋と,を備え,被施療者の掌を含む前腕を拘束可能であり,前記拘束手段に設けられた空気袋を駆動し,被施療者の腕部を施療するマッサージ機。」である点。 (3) 相違点(相違点1)拘束手段について,本件訂正発明1は,「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」を備えるとともに「被施療者の掌を含む前腕を保持可能」な保持部であるのに対し,甲1発明は,「合成繊維等で袋状に形成された非弾性カバー部材121」を備えるとともに「被施療者の掌を含む前腕を収納可能」な収納体12である点。 (相違点2)「座部の側部に配設され,被施療者の腕部を拘束する拘束手段を備え」るとともに,「拘束手段に設けられた空気袋を駆動し,被施療者の腕部を施療する」について,本件訂正発明1は,「座部の両側に夫々配設され,被施療者の腕部を保持する左腕用の保持部及び右腕用の保持部を備え」るとともに,「左腕用の前記保持部に設けられた空気袋と,右腕用の前記保持部に設けられた空気袋とを夫々独立に駆動し,被施療者の腕部を片腕毎に施療する」であるのに対し,甲1発明は,「座部の側部に配設され,被施療者の腕部を収納する収納体12を備え」るとともに,「収納体12に設けられた空気袋を駆動し,被施療者の腕部を施療する」である点。 第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(相違点の認定の誤り及び容易想到性判断の誤り)について(1) 相違点1についての認定の誤りについて審決で挙げられている相違点1は,本件訂正発明1と甲1発明の相違点ではなく 1 取消事由1(相違点の認定の誤り及び容易想到性判断の誤り)について(1) 相違点1についての認定の誤りについて審決で挙げられている相違点1は,本件訂正発明1と甲1発明の相違点ではなく 一致点である。 審決は,甲1発明について,「非弾性カバー部材121が膨縮機構11の膨張していない時には形状維持できない材料,すなわち,形状変化可能かつ伸張しない合成繊維からなる場合も想定できるのであって,しかも,その場合の非弾性カバー部材121は,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から形成されるものであるとはいえない。」(審決書17頁末行~18頁4行)とする。 しかし,そもそも本件訂正発明1の構成要件「前記保持部は,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部と,前記外殻部の内面に設けられ被施療者の腕部を施療する膨張及び収縮可能な空気袋と,を備え,被施療者の掌を含む前腕を保持可能であり,」には,単に「前記保持部は,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部と,」とあり,保持部を構成する外殻部が,どのような材料からなるかを,硬度の点に着目して特定しているにすぎない。 したがって,本件訂正発明1の外殻部に相当する甲1公報の非弾性カバー部材121を,膨縮機構11の膨張しているときと膨張していないときに分けて対比する手法が,その前提において誤りであるため,相違点1を相違点として挙げている審決には誤りがある。 膨縮機構が膨張しているときと膨張していないときを分けずに対比すれば,甲1公報の段落【0024】に「前記収納体12は,手先から肘までの手部を出入自在に収納し得るよう袋状形成されており,該収納体12は,図1及び図2に示したように,合成繊維等で袋状に形成された外面部の非弾性カバー部材121と,・・・」と記載されており,袋 ら肘までの手部を出入自在に収納し得るよう袋状形成されており,該収納体12は,図1及び図2に示したように,合成繊維等で袋状に形成された外面部の非弾性カバー部材121と,・・・」と記載されており,袋体111が膨張しているときにも非弾性カバー部材121は変形することなくその形状を保ちながら被施療者の腕部等を施療しているのであるから所定の形状を維持する程度の硬度を有しており,審決における相違点1は相違点ではなく一致点であることは明らかである。 仮に,膨縮機構11により袋体111が膨張又は収縮している状態を加味して判断したとしても,審決の判断は誤りである。甲1公報における図1(別紙「甲1 の【図1】」参照)には,袋体111が収縮している状態が示されており,とりわけ収納体12の開口側における非弾性カバー部材121は,被施療者の下腕とは大きく離間して位置していることから,非弾性カバー部材121が膨縮機構11により袋体111が収縮しているときにおいても所定の形状を維持する状態は開示されている。また,甲1公報の段落【0024】には,非弾性カバー部材121が合成繊維等で形成されていることが例示されているが,合成繊維等は具体的にはポリプロピレンやポリエステルなど種々の高分子材料を包含するものであるから,非弾性カバー部材121が所定以上の厚みを有していれば,膨縮機構11により袋体111が収縮しているときにおいても,所定の形状を維持する状態を想定できる。 審決は,甲1公報の図1の内容を看過して甲1公報の明細書の記載のみに基づいて判断したものであり,誤りである。 以上より,審決で挙げられている相違点1は,本件訂正発明1と甲1発明との相違点ではなく一致点である。 (2) 相違点1に係る容易想到性判断の誤りについて仮に,審決の相 りである。 以上より,審決で挙げられている相違点1は,本件訂正発明1と甲1発明との相違点ではなく一致点である。 (2) 相違点1に係る容易想到性判断の誤りについて仮に,審決の相違点1の認定が妥当であったとしても,本件特許の原出願の出願日より前に刊行された特開昭50-136994号公報(甲5。以下「甲5公報」という。)には,施療の前後において本件訂正発明1の外殻部に相当する抱持枠27が変形していないことが明らかな発明が記載されている(以下「甲5発明」という。別紙「甲5の第2図」参照)。また,本件特許の原出願の出願日より前に刊行された特開2001-204776号公報(甲7。以下「甲7公報」という。),特開2001-37829号公報(甲8。以下「甲8公報」という。)には,それぞれ,本件訂正発明1の外殻部に相当する保持壁部24a,24b(別紙「甲7の【図1】」参照),凹部1(別紙「甲8の【図1】【図2】」参照)を有する発明(以下「甲7発明」,「甲8発明」という。)が記載されている。これらはいずれも所定の硬度を有さなければ膨張する空気袋の押圧力によって変形してしまい施療者の腕部をマッサージできないから,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外 殻部について示唆されているといえる。また,甲5公報,甲7公報及び甲8公報に示されるように,腕保持部の内部にある膨張体が膨張及び収縮しているときにその腕保持部が形状維持することは,本件訂正発明の出願前からの技術常識ないし周知技術である。 そうすると,甲5公報,甲7公報及び甲8公報には,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部が開示又は示唆されており,甲1発明の非弾性カバー部材をこのような材料とすることは,周知・慣用技術を適用して最適材料を選択するものに過ぎない には,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部が開示又は示唆されており,甲1発明の非弾性カバー部材をこのような材料とすることは,周知・慣用技術を適用して最適材料を選択するものに過ぎないから,本件訂正発明1は,甲1発明に,甲5発明,甲7発明及び甲8発明を適用することにより,当業者が容易に想到できる発明である。このほか,本件特許の原出願の出願日より前に刊行された特開2000-325416号公報(甲9。以下「甲9公報」という。),特開2002-11062号公報(甲10),特開平7-59825号公報(甲14),特開平7-116214号公報(甲15),特開平10-263029号公報(甲16)に記載された各発明に基づいても容易に想到することができる。 本件訂正発明2ないし6についても同様に,甲1発明に,甲5公報,甲7公報及び甲8公報に開示又は示唆されている事項を適用することにより,当業者が容易に想到できる発明である。このほか,特開2000-325416号公報(甲9),特開2002-11062号公報(甲10),特開平7-59825号公報(甲14),特開平7-116214号公報(甲15),特開平10-263029号公報(甲16)に記載された発明に基づいても容易に想到することができる。 2 取消事由2(記載要件違反)について(1) 「形状維持が可能な程度に」との特定事項の不明瞭さについて審決は,本件訂正発明1における「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」との特定事項について,被施療者の腕部を施療している状態において,空気袋を内設する外殻部が形状を維持していることをもって明確であるとしている。しかし,「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」は,特 段に被施療者の腕部を施療し 状態において,空気袋を内設する外殻部が形状を維持していることをもって明確であるとしている。しかし,「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」は,特 段に被施療者の腕部を施療しているときの状態を特定しているわけではないから,どのような状態において形状を維持していれば上記要件に該当するかが不明確である。 すなわち,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を外殻部が維持して初めて「形状維持が可能な程度」といえるのか,又は,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を外殻部が維持していなくても「形状維持が可能な程度」といえるのか,複数の意味に解釈することができるので不明確である。 (2) 「形状維持が可能な程度に」との特定事項がサポートされていないことについて「形状維持が可能な程度に」とは,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持している外殻部や,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持しない外殻部,伸びはしないが形状変化が可能であるふにゃふにゃとした素材からなる外殻部など複数の外殻部を含み得るものである。 しかしながら,本件明細書には,少なくとも空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持しない外殻部,伸びはしないが形状変化が可能であるふにゃふにゃとした素材からなる外殻部に関する態様は開示又は示唆されていない。 よって,本件訂正発明1は,発明の詳細な説明に記載された事項を超えて特許されており,特許法第36条第6項1号の規定に記載された要件を満たしていない。 (3) 本件訂正発明2ないし6は,本件訂正発明1の従属項であるから,同様に記載不備に該当し,特許法36 項を超えて特許されており,特許法第36条第6項1号の規定に記載された要件を満たしていない。 (3) 本件訂正発明2ないし6は,本件訂正発明1の従属項であるから,同様に記載不備に該当し,特許法36条6項1 号及び2号の要件を満たさない。 第4 被告の反論 1 取消事由1(相違点の認定の誤り及び容易想到性判断の誤り)について(1) 相違点1についての認定の誤りについて 原告は,膨縮機構11の膨張しているときと膨張していないときに分けて対比する手法が,その前提において誤りであると主張する。 しかし,甲1公報では,「前記膨縮機構11が膨張している際には」との条件が設定された上で,非弾性カバー部材の状態が説明されているのであるから,膨縮機構11が膨張しているときだけでなく,条件からはずれた状態,すなわち膨縮機構11が膨張していないときの状態を考慮するのは当然である。 原告は,甲1公報の図1を根拠として,非弾性カバー部材121は袋体111が収縮しているときにおいても所定の形状を維持すると主張する。 しかし,甲1公報においては,図1は袋体111が収縮している状態を示しているとの記載は一切ない。図1では施療者の手のひら側に位置する袋体111については,厚みが端よりも中ほどの方が大きいから,袋体は膨張していることになる。 いずれにせよ,厳密な正確さが要求されるわけではない図1における厚みや隙間を根拠に,非弾性カバー部材の材質を認定する原告の主張は失当である。 甲1発明では,種々の作用効果を奏することを目的として,非弾性カバー部材121が変形できる材料として合成繊維を採用したと解するのが極めて自然である。 (2) 相違点1に係る容易想到性判断の誤りについてア甲5公報,甲7公報及び甲8公報は審理対象で 非弾性カバー部材121が変形できる材料として合成繊維を採用したと解するのが極めて自然である。 (2) 相違点1に係る容易想到性判断の誤りについてア甲5公報,甲7公報及び甲8公報は審理対象ではないことについて原告が主張する甲5公報,甲7公報及び甲8公報は,審決において,本件訂正発明4,5の進歩性を否定するための証拠として挙げられたものであり,本件訂正発明1の進歩性を否定するための証拠として挙げられたものではない。本件訂正発明1の進歩性を判断するに当たり,甲5公報,甲7公報及び甲8公報について検討することは,新たな証拠の追加に当たり認められない。 イ甲5公報,甲7公報及び甲8公報には相違点1に係る構成が開示されていないことについて相違点1については,本件訂正発明1では掌を含む前腕を保持可能であることが重要である。 腕部に対して掌までを含む広範囲をマッサージしようとする場合,掌を保持する部分が邪魔になって保持部への載脱が難しくなるという問題や,掌が施療されるためマッサージ機が操作できなくなってしまうという問題が発生する。そこで,本件訂正発明1においては,保持部を形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部を備えたものとし,左腕用の前記保持部に設けられた空気袋と,右腕用の前記保持部に設けられた空気袋とをそれぞれ独立に駆動し,被施療者の腕部を片腕ごとに施療するものとして,これらの課題を解決している。 すなわち,保持部が掌を保持することと,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部を備えることは一体不可分の関係にあり,審決ではこれらを一体として相違点1を認定している。 これに対し,甲5公報,甲7公報及び甲8公報は,いずれも掌を保持する保持部を備えていないため,相 殻部を備えることは一体不可分の関係にあり,審決ではこれらを一体として相違点1を認定している。 これに対し,甲5公報,甲7公報及び甲8公報は,いずれも掌を保持する保持部を備えていないため,相違点1に係る構成が開示されていないことは明らかであり,甲5公報,甲7公報及び甲8公報を用いて容易想到であるとする原告の主張は失当である。 ウ阻害要因について甲1発明の収納体は,表面形状を問わず様々な場所に配設でき,また,手部以外の局部についても,その形状や大きさを問わずマッサージを行うことができるという作用効果を奏する。このような作用効果を奏するためには,収納体は変形可能でなければならない。仮に,甲1発明の収納体の非弾性カバー部材を「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」に変更してしまうと,収納体は変形できず,上記の作用効果を奏することはできない。 そして,収納体が変形可能でない場合には上記の作用効果を奏しないことは,相違点1全体を考慮すると一層明らかである。相違点1にあるように,本件訂正発明1の保持部は,「被施療者の掌を含む前腕を保持可能」なのであるから,掌に対応する部分にも外殻部が形成されることになる。仮に,甲1発明の収納体のうち,掌に対応しない部分のみならず,掌に対応する部分についても「形状維持が可能な程 度に硬度が高い材料からなる外殻部」としてしまうと,例えば掌に対応する部分で足先を保持することは不可能であり,足部をマッサージすることはできない。 以上のとおり,拘束手段について,甲1発明は,「合成繊維等で袋状に形成された非弾性カバー部材121」を備えるからこそ,上述した甲1発明の作用効果を奏するのである。仮に,非弾性カバー部材121を「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」とし,そ 袋状に形成された非弾性カバー部材121」を備えるからこそ,上述した甲1発明の作用効果を奏するのである。仮に,非弾性カバー部材121を「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」とし,そのうえ収納体12を「被施療者の掌を含む前腕を保持可能」に構成してしまうと,上述の作用効果を奏することはできない。 このように,甲1発明に相違点1に係る構成を適用することは,甲1発明の本来の目的に反する方向に変更することになるから,当業者にとって容易想到とはいえないことは明らかである。よって,原告の主張は失当である。 2 取消事由2(記載要件違反)について(1) 明確性要件違反について請求項1では,例えば「空気袋が膨張している際には形状維持が可能な程度に」といったような条件を設定しているわけではないから,空気袋が膨張しているか否かを考慮する必要がない。本件特許の請求項1の記載によれば,本件訂正発明1の外殻部は,空気袋の膨縮に関係なく形状維持できるものであることは明らかであって,本件訂正発明1は明確である。 (2) サポート要件違反について本件訂正発明1の外殻部には,原告が主張するような,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持しない外殻部,伸びはしないが形状変化が可能でふにゃふにゃとした素材からなる外殻部は含まれない。よって,原告の主張はその前提において誤りがあり,失当である。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,審決は,相違点1に係る容易想到性の判断を誤ったものであり,審決には取り消すべき違法があるものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1(相違点の認定の誤り及び容易想到性判断の誤り)について (1) 相違点についての認定の誤りについてア本件 るものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1(相違点の認定の誤り及び容易想到性判断の誤り)について (1) 相違点についての認定の誤りについてア本件訂正発明1の「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」について本件においては,本件訂正発明1の「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」の意義が問題となっているため,まず,この点について検討する。 本件訂正発明1はマッサージ機についての発明であり,本件特許の訂正後の請求項1によれば,発明の内容は,椅子型のマッサージ機であり,被施療者の腕部を保持する左腕用保持部及び右腕用保持部を備え,各保持部は,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部を有し,外殻部の内面に設けられた被施療者の腕部を施療する膨張及び収縮可能な空気袋を備え,保持部は被施療者の掌を含む前腕を保持可能であり,各空気袋が夫々独立に駆動し,被施療者の腕部を片腕毎に施療する,というものである。 この「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」について,原告は,取消事由2の記載要件違反の主張において,①空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を外殻部が維持して初めて「形状維持が可能な程度」といえるのか,又は,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を外殻部が維持していなくても「形状維持が可能な程度」といえるのか,複数の意味に解釈できる,②「形状維持が可能な程度に」とは,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持している外殻部,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持しない外殻部,伸びはしないが形状変化が可能であるふにゃふにゃとした 空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持している外殻部,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持しない外殻部,伸びはしないが形状変化が可能であるふにゃふにゃとした素材からなる外殻部など複数の外殻部を含み得る,と主張する。 上記において,原告が主張するのは,いずれも,外殻部の内面に設けられた空気袋が膨張しているときと,収縮しているときとで外殻部の形状が変化するのか否か不明であるというものである。 しかし,本件特許の訂正請求書(甲20)における訂正事項①において,被告は, 明りょうでない記載の釈明として,請求項1の「硬度が高い材料からなる外殻部」を「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」と訂正するとした。 そして,訂正の原因について,「訂正事項①は,訂正前の請求項1に記載されていた『硬度が高い材料』について,『硬度が高い』とはどの程度の硬度を意味しているかに関して,『形状維持が可能な程度に』を追加することで,硬度の程度をより明りょうにするものである。したがって,訂正事項①は,明りょうでない記載を釈明したものである。また,本件明細書の段落0071の『外殻部26aは,幅方向の断面視において略C字状の湾曲板状をなしており,比較的硬度が高い材料によって形成されている』という記載等から,外殻部の形状は一定(略C字状)であること,すなわち外殻部は形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなると理解できる。また,そもそも『外殻』とは,外側の殻を意味するから,『外殻部』は,その名称から,形状維持ができる程度の硬度を有していると理解できる。したがって,訂正事項①は本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。さらに,訂正事項①は,外殻部を形成する材料の硬度の程度を限定するものであるから,実 硬度を有していると理解できる。したがって,訂正事項①は本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。さらに,訂正事項①は,外殻部を形成する材料の硬度の程度を限定するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,変更するものではない。」と述べている。 以上の訂正請求書の内容からみて,被告は,訂正前の請求項1の「硬度が高い材料からなる外殻部」との文言の意味が「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」であることを明らかにしており,これに基づいて,審決において訂正が認められている(審決書3頁21行~4頁21行)。 そうすると,訂正後の請求項1の記載における「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」とは,外殻部の内面に設けられた空気袋の膨張,収縮にかかわらず,それ自体として形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部を意味するものであり,本件訂正発明1の「形状維持が可能な程度に硬い材料からなる外殻部」の意義は,上記のとおり,明確であるというべきである。 イ甲1発明の内容について甲1公報には,以下の記載がある(甲1)。 「【請求項1】椅子本体の肘掛部の上面適所に人体の手部を出入自在に収納し得るよう袋状形成された収納体を設け,該収納体にホースを介して圧縮空気給排装置に連通する膨縮機構を設けて構成することを特徴とする手用空気圧マッサージ機。 【請求項2】前記収納体は,椅子本体の肘掛部の上面適所に着脱自在に設けて構成することを特徴とする請求項1記載の手用空気圧マッサージ機。 【請求項3】前記収納体は,人の指先から肘までの手部を被覆収納し得るよう帯状形成すると共に,該帯状部材端に係止部材を止着して構成することを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の手用空気圧マッサージ機。」「【0007】 ,人の指先から肘までの手部を被覆収納し得るよう帯状形成すると共に,該帯状部材端に係止部材を止着して構成することを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の手用空気圧マッサージ機。」「【0007】【発明が解決しようとする課題】この種従来の椅子式空気圧マッサージ機においては,空気圧変化によって膨脹及び収縮する袋体を背凭れ部や座部の他,他部位に亙って配設させることができ,これら各袋体に空気を吸排気させて,それぞれ,人体の,腰部や背部の他,頸部や臀部或は大腿部や脚部に適度な空気圧マッサージを施すことができるのであるが,人体の局部における,特に手部に対する空気圧マッサージを施すことができず,またこのような手部を専門的にマッサージできるような局部専用マッサージ機も開発されていないのが現状である。 【0008】本発明は,上記のような問題点に鑑みてなされたものであり,手部及び下腕部を容易に収納して,手部や下腕部に対する効果的な空気圧マッサージを行える手用空気圧マッサージ機を提供することを目的としてなされたものである。 【0009】【課題を解決するための手段】すなわち,本発明の手用空気圧マッサージ機は,椅子本体の肘掛部の上面適所に人体の手部を出入自在に収納し得るよう袋状形成された収納体を設け,該収納体にホースを介して圧縮空気給排装置に連通する膨縮機構を設けて構成することを特徴とするものである。」「【0024】前記収納体12は,手先から肘までの手部を出入自在に収納し得るよう袋状形成されており,該収納体12は,図1及び図2に示したように,合成 繊維等で袋状に形成された外面部の非弾性カバー部材121と,合成ゴム等の弾性材で前記非弾性カバー部材121と略同形の袋状に形成した内面部の弾性カバー部材122とからなり,これら両カバー部材121・12 維等で袋状に形成された外面部の非弾性カバー部材121と,合成ゴム等の弾性材で前記非弾性カバー部材121と略同形の袋状に形成した内面部の弾性カバー部材122とからなり,これら両カバー部材121・122間に前記膨縮機構11を介設し,膨縮機構11を挟持させるよう構成している。 【0025】これにより,前記膨縮機構11が膨脹している際には,前記非弾性カバー部材121は変化せず,前記弾性カバー部材122は,該膨縮部材11の膨脹に応じて伸張し,前記収納体12に収納された人体手部及び下腕部に対して空気圧を加えて適度な空気圧マッサージを行うことができるのである。」「【0027】また,前記収納体12は,図4に示したように帯状形成された帯状部材15と,該帯状部材端に係止部材14を止着して構成し,人体の手先から肘までの手部を捲覆収納できるようにしてもよく,これにより,使用者の手部の太さの差異に対応できると共に,使用者の好みに適応させることができる。尚,前記係止部材14を設けた収納体12には,前述したものと同様に,膨縮機構11及びホース13の他,圧縮空気給排装置3が連通状に設けられる。」「【0033】【発明の効果】よって本発明の手用空気圧マッサージ機は,椅子本体の肘掛部の上面適所に収納体を配設すると共に膨縮機構をこれに内装し,該膨縮機構に給排気制御装置を有する圧縮空気給排装置で圧縮空気を吸排して膨縮させるように構成しているため,安定な座姿勢で,該収納体に手部を装入させて,該手部に適度な空気圧マッサージを施すことができる。」(以上の甲1公報の記載においては,「手部」が下腕部から区別された手首から先の部分のみを示す場合(例えば【0008】)と,手首から先の部分と下腕部を含んだものとして使用される場合(例えば【請求項3】)が混在しているが,以下におい ,「手部」が下腕部から区別された手首から先の部分のみを示す場合(例えば【0008】)と,手首から先の部分と下腕部を含んだものとして使用される場合(例えば【請求項3】)が混在しているが,以下においては,手首から先の部分を「手部」,手首から肘までの部分を「下腕部」,肘から肩までの部分を「上腕部」と表記する。)以上の甲1公報の記載によれば,甲1発明において本件訂正発明1の「外殻部」 に相当するのは,「外面部の非弾性カバー部材121」であり,「外面部の非弾性カバー部材121」の材料として記載されているのは,「合成繊維等」である。 そして,段落【0025】の「前記膨縮機構11が膨張している際には,前記非弾性カバー部材121は変化せず」との記載は,膨縮機構が膨張していないときには,非弾性カバー部材121は変形する可能性があることをうかがわせるものである。 しかし,他方,甲1公報には,膨縮機構が収縮しているときに,非弾性カバー部材121が変形するとの記載,又は変形することによる利点についての記載はない。 段落【0027】の「前記収納体12は,図4に示したように帯状形成された帯状部材15と,該帯状部材端に係止部材14を止着して構成し,人体の手先から肘までの手部を捲覆収納できるようにしてもよく,これにより,使用者の手部の太さの差異に対応できると共に,使用者の好みに適応させることができる。」との記載も,実施し得る一つの形態について,係止部材で係止することを説明したものであり,係止前の状態から係止の状態に至る際に,非弾性カバー部材121が変形することを明確に述べたものではない。したがって,甲1公報に接した当業者は,非弾性カバー部材121が変形可能性を有することまでは理解するものの,それ以上に,非弾性カバー部材121を形状維持が可能な程度に硬 を明確に述べたものではない。したがって,甲1公報に接した当業者は,非弾性カバー部材121が変形可能性を有することまでは理解するものの,それ以上に,非弾性カバー部材121を形状維持が可能な程度に硬度が高い材料で製造されてはならないとまで認識するものとは解されない。 ウ上記ア,イによれば,本件訂正発明1の「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」とは,それ自体として形状維持が可能な程度の硬度の材料からなる外殻部を意味し,他方,甲1発明の「合成繊維等で袋状に形成された非弾性カバー部材121」は,変形可能性のある合成繊維等の材料で形成された袋状の非弾性カバー部材を意味するのであるから,結果として,両者は部材の変形可能性の有無で異なっており,この点を相違点とした審決の認定に誤りはない。よって,この点について,審決が相違点1の認定を誤ったとする原告の主張には理由がない。 (2) 相違点1に係る容易想到性判断の誤りについて そこで,次に,甲1発明の「合成繊維等で袋状に形成された非弾性カバー部材121」の構成から,本件訂正発明1の「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」の構成に至ることが当業者にとって容易といえるかについて判断する。 ア本件訂正発明1の「外殻部」によって構成される「保持部」の意義について本件訂正発明1において,「外殻部」はその内面に設けられた膨張及び収縮可能な空気袋とともに保持部を構成するものであるが,その保持部の椅子型マッサージ機における配置箇所,配置の形態及び保持部が保持する腕部がいかなる範囲までを含むのかについては,請求項の記載からは明らかでないから,本件明細書の内容について検討する。 (ア) 本件明細書(甲17)には,以下の記載がある。 「【技術分野】【0001】本発 囲までを含むのかについては,請求項の記載からは明らかでないから,本件明細書の内容について検討する。 (ア) 本件明細書(甲17)には,以下の記載がある。 「【技術分野】【0001】本発明は,被施療者の身体を施療するマッサージ機に関する。」「【発明が解決しようとする課題】【0003】しかしながら,上述した如き従来のマッサージ機にあっては,肘掛け部104に例えばバイブレータ等の施療装置が設けられていないことが多く,被施療者の腕部を施療することができないという問題があった。(判決注:【0004】~【0006】は欠番)【0007】本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり,被施療者の腕部を施療することが可能であり,マッサージ効果を高めることが期待できるマッサージ機を提供することを目的とする。 【0008】また,本発明の他の目的は,施療されていない腕でマッサージ機の操作を行うこ とができるマッサージ機を提供することにある。」「【0013】また,上記発明においては,前記保持部は,被施療者の腕部を部分的に覆って保持可能であることが望ましい。 【0014】また,上記発明においては,各種の動作指示を行う操作パネルが設けられていることが望ましい。 【0015】また,上記発明においては,前記保持部は,その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に,その内面に互いに対向する部分を有し,左腕用の前記保持部と右腕用の前記保持部は,各々の前記開口が横を向き,且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されていることが望ましい。 【0016】また,上記発明においては,前記保持部は,その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に, 互いに対向するように配設されていることが望ましい。 【0016】また,上記発明においては,前記保持部は,その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に,その内面に互いに対向する部分を有し,前記保持部は,上方が開口するように配設されている構成とすることも可能である。(判決注:【0017】は欠番)【0018】また,上記発明においては,前記背凭れ部は,被施療者の胴体を支持するクッション部と,前記クッション部より前方へ延設され被施療者の上腕及び肩の側部を覆う部分を有するカバー部と,を有し,前記カバー部には,膨張及び収縮することにより被施療者の肩に刺激を与えることができる空気袋が設けられていることが望ましい。(判決注:【0019】~【0027】は欠番)【発明の効果】【0028】 以上詳述した如く,本発明に係るマッサージ機によれば,空気袋によって被施療者の腕部を施療することが可能であり,また,被施療者の腕部を片腕毎に施療することにより,施療箇所に対して加わっている刺激に被施療者の意識が集中しやすいため,両腕を同時に施療する場合に比して,マッサージ効果を高めることが期待できる。」「【0032】(実施の形態1)図1は,本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。・・・」(判決注:別紙「本件明細書の【図1】参照」)「【0036】また,座部5の両側方には,略前後方向へ延びたガイドレール9が設けられている。このガイドレール9には,夫々被施療者の腕部を保持するための保持部10が係合している。 【0037】保持部10の構成を更に詳しく説明する。図2は,保持部10の構成を示す斜視図である。図2に示すように,保持部10は,被施療者の上腕を保持するための ための保持部10が係合している。 【0037】保持部10の構成を更に詳しく説明する。図2は,保持部10の構成を示す斜視図である。図2に示すように,保持部10は,被施療者の上腕を保持するための第1保持部分11と,被施療者の前腕を保持するための第2保持部分12とから主として構成されている。第1保持部分11は,断面視において略C字状の略半円筒形状をなしており,その一端部が背凭れ部6のガイドレール9より上方の箇所に取り付けられている。」「【0041】図4は,背凭れ部6に対する第1保持部分11の取付構造を示す断面図である。 図4に示すように,ローラ13bは背凭れ部6の側部に取り付けられたガイドレール14に係合している。このガイドレール14は,背凭れ部6の側部の長手方向に沿って設けられており,ローラ13bがガイドレール14内で転動することが可能である。よって,第1保持部分11は,ガイドレール14に沿って移動することが 可能であるとともに,回転金具13aの取付軸を中心として回動することも可能である。」「【0043】一方,第2保持部分12は,その下部から係合部12aが下方へ突出している(図1参照)。そして,この係合部12aは,ガイドレール9に係合している。これにより,第2保持部分12は,ガイドレール9に沿って略前後方向へ移動することが可能となっている。 【0044】また,第2保持部分12の内面であって,被施療者の手首又は掌に相当する部分には,振動装置15が設けられている。この振動装置が振動することにより,被施療者の手首又は掌に刺激を与えることが可能となっている。・・・【0045】このような第1保持部分11と第2保持部分12とは,略横方向の枢軸によって枢着されている。これによって,保持部10は,この部分で屈曲する に刺激を与えることが可能となっている。・・・【0045】このような第1保持部分11と第2保持部分12とは,略横方向の枢軸によって枢着されている。これによって,保持部10は,この部分で屈曲することが可能となっている。」「【0065】(実施の形態3)図7は,本発明の実施の形態3に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。 本実施の形態3に係るマッサージ機22は,座部17の両側部に,肘掛け部23が夫々設けられている。この肘掛け部23は,略前後方向に延びており,上下に若干湾曲した如き棒状をなしており,その上面を被施療者の腕置きとして利用することが可能となっている。また,肘掛け部23の上方には,被施療者の前腕を保持するための保持部24が配されている。」(判決注:別紙「本件明細書の【図7】【図8】」参照」)「【0068】また,移動部材24aの前後方向の長さは,空隙部25aの前後方向の長さより も短くされている。これによって,移動部材24aは,その前後端が空隙部25aの前後端に当接する範囲内で,前後方向へ移動することが可能となっている。」「【0070】ガイド部材24cの湾曲内側には,保持部分26が配されている。この保持部分26は,幅方向に切断したときの断面視において略C字状の略半円筒形状をなしており,その外面がガイド部材24cの内面に略密接された状態となっている。」「【0073】また,外殻部26aの後端部分の外面の一箇所には,可撓性を有する連結部材27の一端が接続されている。この連結部材27は,ホース状のフレキシブルアーム等によって構成され,その内部に前記空気袋26b,26cに連通するエアホース及び各種制御用の信号線等が配されている。また,連結部材27の他端は,背凭れ部18のカバー部18aの外面であって, ルアーム等によって構成され,その内部に前記空気袋26b,26cに連通するエアホース及び各種制御用の信号線等が配されている。また,連結部材27の他端は,背凭れ部18のカバー部18aの外面であって,マッサージ機22に着座した被施療者の肩に相当する箇所に取り付けられている。」「【0082】(実施の形態5)図10は,本発明の実施の形態5に係るマッサージ機の要部の構成を示す拡大斜視図である。・・・保持部分33,34の構成は,実施の形態3において説明した保持部分26の構成と同様である・・・」(判決注:別紙「本件明細書の【図10】」参照)「【0083】保持部分33,34は,夫々第1支持部材35によって支持されている。この第1支持部材35は,幅方向の断面視において略C字状の湾曲板状をなしており,その内面に保持部分33,34が夫々摺動可能に取り付けられている。更に詳しく説明すると,外殻部33aの後端部分と,外殻部33bの前端部分の両方に重なるように,第1支持部材35は設けられており,外殻部33a,34bは夫々独立に,第1支持部材35の内面を前後方向へ摺動することが可能となっている。」 「【0085】このような第1支持部材35は,第2支持部材36に支持されている。・・・」「【0088】また,第1支持部材35を円周方向へ移動させることにより,これと保持部分33,34が一体的に円周方向へ移動することとなり,空気袋33c,34cによる施療位置を調節することができる。」(イ) 以上の本件明細書の記載によれば,本件訂正発明1の保持部は,少なくとも前腕部のほか掌を保持するものであり,その配置箇所は,肘掛け部上に限らず,ガイドレール上などの箇所に配置されるものである。肘掛け部上に配置される場合においては,実施の形態3において 部は,少なくとも前腕部のほか掌を保持するものであり,その配置箇所は,肘掛け部上に限らず,ガイドレール上などの箇所に配置されるものである。肘掛け部上に配置される場合においては,実施の形態3において,ガイド部材を介して肘掛け部上を前後に移動可能な形態,実施の形態5においては,第1支持部材の内面を前後方向へ摺動することが可能な形態が示されているが,発明の課題や発明の目的に関する記載,望ましい形態についての記載を見ても,腕部を保持してマッサージを行うという機能から生じる制約を除けば,特にその配置箇所や配置形態について,限定を加えるべきような事情は見当たらない。 そうすると,本件訂正発明1は,保持部の配置箇所や配置形態については,腕部を保持してマッサージを行うという機能から生じる制約を除けば,特段の限定のない発明と解するのが相当である。より具体的には,保持部が肘掛け部と一体成形されて保持部が肘掛け部上に配置されるようなもの,保持部が肘掛け部上に接着して配置されるようなものなどの配置箇所,配置形態のものも除外されないものというべきである。 イ甲5発明について甲5公報の特許請求の範囲には,以下の記載がある。 「特許請求の範囲身体の脚部,腕部等を抱持し得るように形成される抱持枠27と,その抱持枠27を開閉する開閉作動装置dと,前記抱持枠27の相対向する内面に取付けられ, 流体圧の給排により伸縮作動を繰り返すようにした少なくとも一対の指圧筒28,29と,前記抱持枠27を支持する支持部材15をその抱持枠27とゝもに,前記指圧筒28,29の伸縮方向と略直交する方向に往復動させる抱持枠横往復動装置bとを少なくとも有する指圧装置。」また,第2図には,実施例として,別紙「甲5の第2図」の図面が記載されている。 ウ 筒28,29の伸縮方向と略直交する方向に往復動させる抱持枠横往復動装置bとを少なくとも有する指圧装置。」また,第2図には,実施例として,別紙「甲5の第2図」の図面が記載されている。 ウ甲7発明について甲7公報には,以下の記載がある。 「【0005】しかしながら,前述した椅子式エアーマッサージ機は,上記特許公開公報の記載から明らかなように使用者の首部,背部,腰部,尻部,及び下腿部の筋肉を空気袋の膨張収縮による圧迫と解放の繰り返しによってマッサージを行うものであり,足部や身体全体の血行促進,更には現在の使用者の身体の状態を本人に確認させるような機能はない。」「【0007】本発明の目的は,かかる従来の問題点を解決するためになされたもので,従来の椅子式エアーマッサージ機を改良して,更に足部や腕部の筋肉疲労も取り除き,同時に身体全体の血行促進を促し,付加的に使用者の現在の身体の状態を本人に確認させ得るようなマッサージ機を提供することにある。 【0008】【課題を解決するための手段】本発明はマッサージ機であり,前述した技術的課題を解決するために以下のように構成されている。すなわち,本発明のマッサージ機は,座部,この座部の両側に設けられ,上部に腕保持部が設けられた肘掛け部,及び座部の後端に設けられた傾斜可能な背凭れ部を備える椅子と,この椅子における座部の前端に設けられ,椅子に腰掛けた人の脚を支持する脚保持部と,脚の足部を乗せる足乗せ台とからなり,椅子の座部,背凭れ部,肘掛け部に設けられた腕保持部,及び脚保持部には,圧縮空気給排気機構に連通する空気袋が内部に設けられ,更に足乗せ台の内部には上下動可能な少なくとも2つの大きさの異なる押圧突起部 が設けられていることを特徴とする。」「【0017】この 縮空気給排気機構に連通する空気袋が内部に設けられ,更に足乗せ台の内部には上下動可能な少なくとも2つの大きさの異なる押圧突起部 が設けられていることを特徴とする。」「【0017】このような空気式マッサージ機構部の構造は,前述した特開平10-118141号公報に開示されていて公知であると共に基本的な点では実質的に同じであるので詳細な説明は省略する。本実施形態のマッサージ機10では,更に肘掛け部22の上部に設けられた腕保持部24を備えている。腕保持部24は,使用者の腕を両側から挟むようにU字状の凹部25を形成する保持壁部24a,24bを備え,各保持壁部内にも前述したと同様な空気袋(図示せず)が配置されている。」また,【図1】には,実施例として,別紙「甲7の【図1】」の図面が記載されている。 エ甲8発明について甲8公報には,以下の記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,空気袋を膨張収縮させて,空気袋に挟持された人体の肢体をマッサージするエアーマッサージ機に関するものである。 【0002】【従来の技術】この種のエアーマッサージ機としては,特開平8-89540号公報が知られている。上記マッサージ機を図3に示す。図3に示すエアーマッサージ機は,凹部1の内壁に,人体の肢体を挿入するための空間2を設けるように空気袋5を取着して施療部7を形成し,前記空気袋5に空気を給排気して空気袋5を膨張及び収縮させる給排気装置6を連通して,空気袋5の膨張収縮により,空気袋5に挟持された人体の肢体をマッサージするものである。 【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の技術においては,膨張したときの空気袋はドーム状となるため,空気袋の中心部と周辺部では,人体の肢体を圧迫す ジするものである。 【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の技術においては,膨張したときの空気袋はドーム状となるため,空気袋の中心部と周辺部では,人体の肢体を圧迫する力が異なり,圧迫ムラを発生するという問題があった。」 「【0005】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,請求項1記載のマッサージ機は,凹部の内壁に,人体の肢体を挿入するための空間を設けるように空気袋を夫々取着して施療部を形成し,前記空気袋に空気を給排気して空気袋を膨張及び収縮させる給排気装置を連通して設けてなるエアーマッサージ機において,柔軟性を有し,伸縮しない成形シート材を空気袋の上面に近接して設けてなることを特徴とする。」「【0007】【発明の実施の形態】図1は,本発明の一実施の形態の概略を示す構成図で,(a)は平面図,(b)は正面図である。図2は,同実施の形態の他の構成例を示す斜視図である。 【0008】この実施の形態のエアーマッサージ機は,凹部1の内壁に,人体の肢体を挿入するための空間2を設けるように空気袋5を夫々取着して施療部7を形成し,前記空気袋5に空気を給排気して空気袋5を膨張及び収縮させる給排気装置6を連通して設けてなるエアーマッサージ機において,柔軟性を有し,伸縮しない成形シート材10を空気袋5の上面に近接して設けてなる。また,給排気装置6は,図1に図示していないが,従来のもの(図3)と同様に空気袋5に連通した構成となっている。 【0009】上記実施の形態の動作を以下に詳述する。まず,施療部7の内部の空間2に腕や足等の人体の肢体を挿入して,給排気装置6を駆動させ,給排気を繰り返して給排気装置6に連通する空気袋5を膨張収縮させる。膨張収縮を繰り返す空気袋5の力を成形シート材10を通 部7の内部の空間2に腕や足等の人体の肢体を挿入して,給排気装置6を駆動させ,給排気を繰り返して給排気装置6に連通する空気袋5を膨張収縮させる。膨張収縮を繰り返す空気袋5の力を成形シート材10を通して人体の肢体に与えてマッサージする。」「【0012】なお,単独で使用する場合以外に,図2に示すように,上記構成のエアーマッサージ機3を,椅子20の肘掛けの上部や,座部前側に配置し,椅子20の一部として構成して使用してもよい。」【図1】【図2】には,実施例として,別紙「甲8の【図1】【図2】」の図面が 記載されている。 オ甲9公報記載の事項について甲9公報には,以下の記載がある。 「【0023】図9及び図10は他の実施の形態を示し,・・・」「【0024】・・・前記フットレスト5は,左右の脚を別々に挟持することができる溝形の脚保持部74,74が設けられており,各脚保持部74,74にエア駆動式のマッサージ部80がそれぞれ設けられている。これらのマッサージ部80は,脚保持部74,74の底壁に設けられたエアセル81と,脚保持部74,74の両側壁に設けられたエアセル82とから構成されている。これらのエアセル81,82も袋体により構成され,空気の給排気により膨張・収縮するものであり,底壁のエアセル81はふくらはぎ裏を押圧し,側壁のエアセル82は足首を挟持状に押圧する。」【図9】には,実施例として,別紙「甲9の【図9】」の図面が記載されている。 カ以上に基づいて,まず甲5発明の甲1発明への適用について検討する。 甲5発明は,手部をマッサージできるマッサージ機に関するものであるが,そのマッサージ方法は指圧である。すなわち甲5発明は,指圧筒の伸縮運動により抱持枠を介して,身体の特定箇所を指圧し,移動しながらマッサージする 手部をマッサージできるマッサージ機に関するものであるが,そのマッサージ方法は指圧である。すなわち甲5発明は,指圧筒の伸縮運動により抱持枠を介して,身体の特定箇所を指圧し,移動しながらマッサージするものである。 これに対し,甲1発明は,袋状の収納体に手部及び下腕部を収納して,その全体を膨縮機構11の膨張による空気圧でマッサージするものである。そうすると,甲1発明と甲5発明は同じくマッサージ機に関するものではあっても,マッサージの方法が指圧筒の伸縮による特定箇所の指圧であるのか,膨縮機構の膨張による手部及び下腕部全体の空気圧でのマッサージによるのかという相違があり,技術的にみてマッサージの方法を異にするから,甲1発明に甲5発明を適用する動機付けを欠くものである。 したがって,甲1発明に甲5発明を適用することによって,相違点1に係る構成が容易になるとはいえない。 キ次に,甲7発明,甲8発明及び甲9公報記載の事項の甲1発明への適用について検討する。 (ア) 甲7発明は,従来の椅子式エアーマッサージ機が首部,背部,腰部,尻部及び下腿部のマッサージを行うものであったのに対し,足部や腕部の筋肉疲労も取り除こうとするものであり,腕部のマッサージのために,肘掛け部に腕保持部を設け,腕保持部の保持壁部内に空気袋を配置するものである。したがって,甲1発明と甲7発明とは,椅子式マッサージ機において,下腕部を,外殻部(保持壁部)の内面に設けられた空気袋を備えた腕保持部の空気袋でマッサージする点において共通している。 甲8発明は,足や腕等の人体の肢体をマッサージするエアマッサージ機であり,ドーム状となる空気袋による圧迫ムラを生じさせないため,空気袋の上面に近接して成形シート材を設けるというものであり,椅子の肘掛けの上部や座席前 腕等の人体の肢体をマッサージするエアマッサージ機であり,ドーム状となる空気袋による圧迫ムラを生じさせないため,空気袋の上面に近接して成形シート材を設けるというものであり,椅子の肘掛けの上部や座席前側に配置して椅子の一部として構成することもでき,凹部の内壁に空気袋を装着して施療部を形成するものである。したがって,甲1発明と,椅子の一部として構成された甲8発明とは,椅子式マッサージ機において,下腕部を,外殻部(凹部の内壁)の内面に設けられた空気袋を備えた腕保持部(施療部)の空気袋でマッサージする点において共通する。 甲9公報には,椅子型マッサージ機において,脚のマッサージのために,座席前部下方にフットレストを設け,このフットレストに設けた溝型の脚保持部の底壁及び両側壁に袋体のエアセルを設ける実施例が記載されている。したがって,甲1発明と甲9公報に記載された事項とは,椅子式マッサージ機において,肢体の一部を,外殻部(脚保持部)の内面に設けられた空気袋でマッサージする点において共通している。 ところで,甲7公報及び甲8公報には,腕保持部の材質について明示した記載はないものの,甲7公報の図1には,マッサージ機の底面から上方へ伸びた側壁部(【図1】では,側壁部を「肘掛け部22」と称している。)と一体的に保持壁部2 4a,24bが形成されている。そして,保持壁部24a,24bは腕保持部24を構成している。また,甲8公報の図2の腕保持部も側壁部と一体的に形成されている。これらによれば,通常,側壁部は,椅子の基本骨格をなす部分として,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から成っていると当業者は理解するものと解されるから,これと一体的に形成された,甲7公報の腕保持部のうちのマッサージ部を構成しない外側部や甲8公報の腕保持部 て,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から成っていると当業者は理解するものと解されるから,これと一体的に形成された,甲7公報の腕保持部のうちのマッサージ部を構成しない外側部や甲8公報の腕保持部についても,それぞれのマッサージ機の側壁部と同様に形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から成っていると当業者は理解するものと考えられる。さらに,甲9公報の脚保持部についても,その材質について明示した記載はないものの,その形状が変化することを窺わせる記載は一切なく,図9において,脚保持部は均一な厚みを持ち,互いに間隔を保った状態で図示されているから,これを見た当業者は,脚保持部の底壁及び両側壁は,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から成っていると理解するものと考えられる。 (イ) そこで,甲7発明及び甲8発明の甲1発明への適用可能性の点について検討するに,前記のとおり,甲1発明の非弾性カバー部材121は,その内側に設けられた弾性カバー部材122との間に膨縮機構11を介設し,膨縮機構11が膨張している際には変化をしない(形状を維持する)という硬度を有するものであり,これにより,膨縮機構の空気圧をより効率的に人体手部及び下腕部側へ与えることができ,適度な空気圧マッサージを行うことができるという機能を有するものと解される。したがって,膨縮機構11が膨張していないときの非弾性カバー部材121が変形するかどうかは,手部及び下腕部を非弾性カバー部材121の内側の膨縮機構によりマッサージするという甲1発明のマッサージ機能又は効果に関わるものではない。そのため,甲1公報には,非弾性カバー部材121は膨張しているときに変化しない(形状を維持する),との記載はあるものの,膨張していないときの非弾性カバー部材の状態を明示する記載もない。そして,甲1公報には,非弾性 公報には,非弾性カバー部材121は膨張しているときに変化しない(形状を維持する),との記載はあるものの,膨張していないときの非弾性カバー部材の状態を明示する記載もない。そして,甲1公報には,非弾性カバー部材121について合成繊維等という材質の記載があるものの(段落【0024】),その具体的な材料は記載されておらず,また材質をこれに限定する記載はな いから,甲1公報を見た当業者は,甲1発明の機能,用途に沿う範囲で,具体的に様々な材料を検討することになると考えられるところ,むしろ,外殻部の内面に設けられた空気袋の膨張によってその内側に収容した下腕部に空気圧を加えてマッサージをする椅子式マッサージ機であるという点において甲1発明と共通する甲7発明及び甲8発明においては,その空気袋(膨縮機構)を内面に設ける外殻部は,いずれも形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から形成されている。さらに,甲7発明及び甲8発明のこれらの構成に加え,甲8公報の記載(【段落0002】)によれば,凹部の内壁に空気袋を取付け,空気袋の膨張収縮により人体の肢体をマッサージするという構成は,甲8発明の出願時(平成11年7月30日)における従来技術であり,同従来技術における凹部の内壁も甲8発明と同様に形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から成っていたと理解されること,甲9公報にも,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から成り,空気袋を収納する脚保持部が開示されていることからすれば,空気袋の膨張による空気圧によりその内側に収容した人体の肢体をマッサージする椅子式マッサージ機において,空気袋を内面に設け,肢体を保持する外殻部を形状維持が可能な程度に硬度が高い材料とすることは,周知技術であったといえる。 そうすると,合成繊維等で構成された外面部の非弾性カバー部材121に おいて,空気袋を内面に設け,肢体を保持する外殻部を形状維持が可能な程度に硬度が高い材料とすることは,周知技術であったといえる。 そうすると,合成繊維等で構成された外面部の非弾性カバー部材121について,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料とすることは甲1発明の機能や効果に関わることではなく,甲1公報にも同材料を否定する記載はなく,むしろ非弾性カバー部材121と同様の機能を有する甲7発明や甲8発明の構成部分についてはそのような材料が採用されており,そのような材料で肢体をマッサージするための空気袋を内面に設ける外殻部を構成することは周知技術といえることからすれば,当業者が,甲1発明に甲7発明及び甲8発明を適用して,非弾性カバー部材121を「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる」ものとすることは容易に想到できるものというべきである。 以上によれば,甲1発明と本件訂正発明1との相違点1に係る構成のうち,「形 状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」とすることは,容易に想到できるものではないとした審決の判断には誤りがある。 (ウ) 被告は,甲5公報,甲7公報及び甲8公報は,審決において,本件訂正発明4,5の進歩性を否定するための証拠として挙げられたものであり,本件訂正発明1の進歩性を否定するための証拠として挙げられたものではないから,本件訂正発明1の進歩性を否定するに当たり,これらの公報を検討することは,新たな証拠の追加に当たり認められないと主張する。 しかし,審決は,甲5公報,甲7公報及び甲8公報を,本件訂正発明1の進歩性判断の証拠としても提出されたものとして取り扱い(甲9公報についても同様である。),それらの証拠を考慮しても相違点1に係る構成を容易に想到できたものとはいえないとしてい 報を,本件訂正発明1の進歩性判断の証拠としても提出されたものとして取り扱い(甲9公報についても同様である。),それらの証拠を考慮しても相違点1に係る構成を容易に想到できたものとはいえないとしているのであるから,審決で判断された事項であり,新たな証拠の提出とはいえない。 また,被告は,甲7公報及び甲8公報は,いずれも掌を保持する保持部を備えていないため,相違点1に係る構成が開示されていないと主張する。しかし,相違点1のうち,掌まで保持する構成は甲1発明に開示されているのであり,「被施療者の掌を含む前腕」を対象とする点については,そもそも本件訂正発明1と甲1発明は相違しないのであるから,同主張は,甲1発明から本件訂正発明1を想到することの容易性を否定する理由とはならず,採用することができない。 さらに,被告は,甲1発明の収納体は,①表面形状を問わず様々な場所に配設でき,また,②手部以外の局部についても,その形状や大きさを問わずマッサージを行うことができるという作用効果を奏するところ,収納体を形状維持が可能な程度に硬度が高い材料に変更してしまうと,そのような作用効果を奏しないから,甲1発明に甲7発明及び甲8発明に係る構成を適用することには阻害要因があると主張する。 しかし,上記①については,甲1公報には,収納体12の配設については,「椅子本体肘掛部上面適所に係止部材を介して着脱自在に設けることができるよう構成 しているため,本発明の要否に応じて任意に着脱でき(る)」(段落【0015】),「ベルベット式ファスナー等の係止部材14を張設することで任意の位置で着脱自在に構成することができ,収納体12の位置を使用者に合わせて調節できるようにすることができる」(段落【0026】),「肘掛部を有するあらゆる椅子で ー等の係止部材14を張設することで任意の位置で着脱自在に構成することができ,収納体12の位置を使用者に合わせて調節できるようにすることができる」(段落【0026】),「肘掛部を有するあらゆる椅子であれば,どのような椅子にも配設することができ,また,椅子に配設しない場合でも,仰臥等の随意の体位で,手部及び下腕部に対する空気圧マッサージを施すことができる」(段落【0037】)と記載されているのみであるから,係止部材で肘掛け部に配設し,又は椅子に配設しない状態で利用することが可能な構成であれば良いのであって,収納体12を変形できないような構成にすることによって,このような肘掛け部に配設できなくなり,又は椅子に配設しない状態で利用することができなくなるとは解されない。したがって,この点についての原告の主張は採用することができない。 また,前記②については,甲1公報には,「・・・本発明の要否に応じて任意に着脱でき,しかもこれを外した状態で本発明を他の局部にも使用できるため,使用目的が広範囲に拡大させることができる」(段落【0015】)との記載があり,甲1発明の一つの実施形態においては,手部及び下腕部以外の局部にも使用できるという効果が開示されているが,甲1発明は,前記のとおり,膨縮機構が膨張しているときに非弾性カバー部材121が変化しない(形状を維持する)ものであって,そのようなものであっても,手部及び下碗部よりも太い脚部等の他の局部に使用することができるというものであるから,非弾性カバー部材121が「形状維持が可能となる程度の硬度が高い材料」から成る構成のもの,すなわち,膨縮機構が膨張しているときでも,膨張していないときでも,形状を維持する構成のものとなったとしても,同様に,他の局部に使用できなくなるものとは解されない。したがって, 」から成る構成のもの,すなわち,膨縮機構が膨張しているときでも,膨張していないときでも,形状を維持する構成のものとなったとしても,同様に,他の局部に使用できなくなるものとは解されない。したがって,前記②の作用効果を生じなくなるとする原告の主張も採用することができない。 (エ) したがって,相違点1に係る構成のうち「形状維持が可能となる程度に硬度が高い材料からなる外殻部」について,甲1発明から本件訂正発明1に至ること は容易想到ではないとした審決の判断には誤りがあり,同様の理由により本件訂正発明2ないし6に至ることは容易想到ではないとした審決の判断にも誤りがある。 そして,この誤りが審決の結論に影響することは明らかであるから,原告主張の取消事由1には理由がある。 2 取消事由2(記載要件違反)について(1) 明確性要件違反の主張について取消事由1の(1)で判断したとおり,「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」の意義は明確であるから,明確性要件違反をいう原告の主張には理由がない。 (2) サポート要件違反の主張について原告の主張は,「形状維持が可能な程度に」との特定事項が,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持している外殻部や,空気袋が収縮している状態において空気袋が膨張しているときと同じ形状を維持しない外殻部,伸びはしないが形状変化が可能であるふにゃふにゃとした素材からなる外殻部など複数の外殻部を含み得ることを前提とするものであるが,取消事由1の(1)で判断したとおり,請求項1の「形状維持が可能な程度に」の意義は,本件明細書の内容いかんにかかわらず,「それ自体として形状維持が可能な程度」を意味するものであるから ものであるが,取消事由1の(1)で判断したとおり,請求項1の「形状維持が可能な程度に」の意義は,本件明細書の内容いかんにかかわらず,「それ自体として形状維持が可能な程度」を意味するものであるから,サポート要件違反をいう原告の主張には理由がない。 第6 結論 よって,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官設樂一 裁判官大寄麻代 裁判官大須賀滋は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官設樂一 (別紙) 本件明細書の【図1】 本件明細書の【図7】 本件明細書の【図8】 本件明細書の【図10】 甲1の【図1】 甲5の第2図 甲7の【図1】 甲8の【図1】 甲8の【図2】 甲9の図9
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