主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が平成12年6月19日付けで原告に対してした,原告の平成7年4月1日から平成8年3月31日まで,平成8年4月1日から平成9年3月31日まで,平成9年4月1日から平成10年3月31日まで及び平成10年4月1日から平成11年3月31日までの各事業年度の法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,福井県土地開発公社に譲渡した別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)について,租税特別措置法(平成11年3月31日号外法律第9号による改正前のもの。以下「措置法」という。)64条1項の規定による特例(以下「本件特例」という。)が適用されることを前提に,福井県に対して租税特別措置法施行規則(平成10年3月31日号外大蔵省令第48号による改正前のもの。以下「措置法規則」という。)14条7項3号に規定する証明書(以下「収用証明書」という。)の発行を求める訴訟を提起し,その勝訴判決の確定に従い福井県から収用証明書の発行を得たため,平成12年3月24日付けで,被告に対し,収用証明書を添付の上,平成7年4月1日から平成8年3月31日まで,平成8年4月1日から平成9年3月31日まで,平成9年4月1日から平成10年3月31日まで及び平成10年4月1日から平成11年3月31日までの各事業年度(以下各事業年度を順次「平成8年3月期」,「平成9年3月期」,「平成10年3月期」及び「平成11年3月期」という。)の各法人税の更正の請求をしたところ,これに対し,被告が平成12年6月19日付け 度(以下各事業年度を順次「平成8年3月期」,「平成9年3月期」,「平成10年3月期」及び「平成11年3月期」という。)の各法人税の更正の請求をしたところ,これに対し,被告が平成12年6月19日付けでいずれも更正をすべき理由がない旨の各通知処分をしたため,その各通知処分の取消しを求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は末尾に証拠を掲記した)(1) 本件土地の売買契約締結までの経緯① 福井空港は福井県が昭和41年6月に開港した空港であるところ,福井県は,昭和60年3月に同空港をジェット機の離着陸できる空港にするための空港拡張基本計画を決定し公表した。昭和61年10月には福井県に福井空港整備推進本部が設置され,同年11月には福井空港の滑走路延長事業が政府の第5次空港整備5か年計画に新規事業として組み入れられ,次いで,平成3年には第6次の,平成8年には第7次の各空港整備5か年計画に組み入れられた。そして,福井県は,平成5年2月に福井空港拡張整備事業(以下「本件事業」という。)の基本計画を策定した。(乙1,3,4)。 ② 原告は,平成7年5月31日付けで,福井県知事に対し,本件土地について公有地の拡大の推進に関する法律(以下「公拡法」という。)5条1項の規定に基づく土地買取希望申出書を提出した。福井県知事は,同年6月12日付けで,原告と福井県土地開発公社に対し,同法6条1項に基づき,本件土地の買取りの協議を行う地方公共団体等として福井県土地開発公社を指定した旨通知した。(甲12,乙13ないし15)③ 法人の有する土地等の資産が公共事業のために買収等をされた場合に,その買収等に係る所得に対する法人税の課税について各種の優遇措置制度が設けられているところ,この優遇措置制度の円滑な運用を図る ③ 法人の有する土地等の資産が公共事業のために買収等をされた場合に,その買収等に係る所得に対する法人税の課税について各種の優遇措置制度が設けられているところ,この優遇措置制度の円滑な運用を図るために,事業施行者が資産の買取り等に着手する前に,事業施行者と税務官庁が資産の買取り等に対する各種の課税の特例制度の適用関係について相互に確認し合い,その上で,被買収者に対して課税関係の説明を行うという事前協議の慣行が確立されている(乙12)。 ④ 福井県土地開発公社は,平成7年6月16日付けで,本件土地が公拡法に係る買取りであることなどを記載した事前協議説明書を提出して被告と事前協議を行った(乙16の1・2)。被告は,同月20日付けで,同公社に対し,本件事業については措置法65条の4第1項4号に規定する特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除の特例(以下「1500万円控除の特例」という。),措置法規則17条の2第1項6号に規定する書類の発行ができる事業に該当する旨通知した。(乙17,18)⑤ 原告は,平成7年6月20日過ぎころ,福井県職員から口頭で,三国税務署に確認した結果,本件土地については本件特例に該当しない旨の説明を受けた(甲8)。 ⑥ 原告は,平成7年6月23日,福井県土地開発公社に対し,本件土地を代金4億5914万0400円で売り渡す旨の売買契約を締結した。 この売買契約に係る土地売買契約書(乙39,以下「本件売買契約書」という。)には,福井県土地開発公社が本件事業のために買取りをするものである旨の記載はない(乙39)。 ⑦ 福井県は,本件土地の買取りの時点において,航空法施行規則(平成12年11月29日号外運輸省令第39号による改正前のもの。以下「 めに買取りをするものである旨の記載はない(乙39)。 ⑦ 福井県は,本件土地の買取りの時点において,航空法施行規則(平成12年11月29日号外運輸省令第39号による改正前のもの。以下「航空法施行規則」という。)86条1項に規定する飛行場変更許可申請書を運輸大臣(当時,以下同じ)に提出しておらず,運輸大臣の許可や意見書を取得していなかった。 ⑧ 原告は,平成7年11月22日,本件土地の代替資産として土地を購入し,その後,同土地上に工場を新築した(甲3)。 (2) 原告の法人税確定申告・修正申告・更正処分原告の平成8年3月期,平成9年3月期,平成10年3月期及び平成11年3月期の各事業年度の確定申告,修正申告及び更正処分の経過は,別表1のとおりであり,被告が平成9年6月30日付けでした平成8年3月期にかかる更正処分に附記した理由は,別表2の(1)欄記載のとおりである(甲3,4)。 (3) 収用証明書の発行及びその内容① 原告は,平成8年1月19日,福井県に対し,本件土地を福井県土地開発公社に売り渡したことについて本件特例が適用されるとして,収用証明書の発行を求め,平成8年3月期の確定申告書に,本件特例を適用して圧縮記帳を行い,圧縮額3億9973万1876円を損金の額に算入し,本件土地に係る収用証明書を福井県に対して申請中である旨の上申書を添付した(甲3,13)。 ② 福井県が本件土地に係る収用証明書の発行を拒否したため,原告は,平成9年11月10日,福井地方裁判所に対し,福井県を被告とし,収用証明書の発行を求める訴え(当庁平成9年(ワ)第311号証明書発行請求事件,以下「別訴」という。)を提起したところ,同裁判所は,平成11年7月30日,原告の請求を棄却するとの判決を 県を被告とし,収用証明書の発行を求める訴え(当庁平成9年(ワ)第311号証明書発行請求事件,以下「別訴」という。)を提起したところ,同裁判所は,平成11年7月30日,原告の請求を棄却するとの判決を言い渡した。 これに対し,原告が名古屋高等裁判所金沢支部に控訴し(同支部平成11年(ネ)第142号事件),同支部は,平成12年2月28日,原判決を取り消し,福井県に対して収用証明書の発行を命じる判決を言い渡し(以下「別訴高裁判決」という。),同判決は確定した。 ③ 福井県は,別訴高裁判決に基づき,平成12年3月22日付けで,原告に対し,措置法規則14条7項3号イにより,本件土地は,福井県が施行する福井空港拡張整備事業(根拠法令・土地収用法3条12号)の用に供するため,代行買収者である福井県土地開発公社が合計4億5914万0400円で買収したものであることを証明する旨の収用証明書(甲1,以下「本件収用証明書」という。)を発行した(甲1)。 (4) 更正の請求から審査請求の裁決までの経緯① 原告は,本件収用証明書を添付の上,平成12年3月24日付けで被告に対し,平成8年3月期から平成11年3月期までの各事業年度の法人税につき,別表1のとおり各更正の請求をした(以下「本件更正請求」という。)。 これに対し,被告は,平成12年6月19日付けで,本件更正請求についていずれも更正をすべき理由がない旨の各通知処分をした(以下「本件通知処分」という。)。 本件通知処分のうち平成8年3月期の事業年度の法人税についての更正請求に対する通知処分に附記された理由は,別表2の(2)のとおりであり,平成9年3月期から平成11年3月期までの各事業年度の法人税についての更正請求に対する通知処分に附記さ 年度の法人税についての更正請求に対する通知処分に附記された理由は,別表2の(2)のとおりであり,平成9年3月期から平成11年3月期までの各事業年度の法人税についての更正請求に対する通知処分に附記された理由は,更正の請求の原因としている平成8年3月期の事業年度の所得金額について,その金額に変更は生じていないため,それぞれの事業年度における所得金額や翌期へ繰り越すべき欠損金に変更は生じないとするものであった(甲1,2の1ないし2の4)。 ② 原告は,本件通知処分を不服として,平成12年6月27日,国税不服審判所長に対して審査請求を行ったが,同所長は平成13年11月26日付けで同審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をなし,原告はその裁決書謄本の送達を受けた(甲3)。 2 争点(1) 本件土地の買取りに本件特例が適用されるか否か(被告の主張)① 本件事業が事業認定が行われ得る状況にないことア措置法64条1項は,法人がその有する資産を収用されるなどして代替資産を取得した場合の税法上の特別優遇措置を定めたものである。その趣旨は,収用等の場合には,所有者である法人の自由な意思による譲渡ではなく,直接又は間接に強制力が働いて当該資産が収用又は譲渡されるものである上,法人の事業の基礎である資産を譲渡すれば代替資産の取得の必要性も高いため,このような場合に一般的な譲渡の場合と同様に課税されるのでは,かえって公平を損ない,公益事業の推進を図ることができないことから,特別な税法上の優遇措置を講じているものである。 同項2号は,「資産について買取りの申出を拒むときは土地収用法等の規定に基づいて収用されることとなる場合において,当該資産が買い取られ,対価を取得するとき」と規定して である。 同項2号は,「資産について買取りの申出を拒むときは土地収用法等の規定に基づいて収用されることとなる場合において,当該資産が買い取られ,対価を取得するとき」と規定しているところ,これは,買取りを拒否すれば収用されることとなる状況,すなわち,強制力を背景とした買取りの場面において適用される規定である。その趣旨は,強制力が背景にある以上,課税においても実際に収用された場面と同視するのが合理的であるし,収用前に譲渡した者が収用された者より不利益を受けることのないようにすることにある。 したがって,同号が適用されるためには,買取りを拒否した場合に収用が確実視される状況にあることが必要となる。 イ措置法64条1項2号の適用の手続要件として,同条4項において大蔵省令で定める収用証明書の添付が必要であるとされ,措置法規則14条7項3号イにおいて収用証明書の対象となる該当資産については,「土地収用法3条(中略)12号(中略)の規定に該当するものに関する事業に必要なものとして収用又は使用することができる資産」と定められているところ,措置法関係通達(法人税編)64(4)-3は,「買取りの対象となった資産が,(中略)事業に必要なものとして収用又は使用することができる資産に該当するかどうかは,当該買取りの時において,当該事業の施行場所,施行内容等が具体的に確定し,当該資産について事業認定が行われ得る状況にあるかどうかによって判定することに留意する。」と定めている。 上記通達は,措置法規則14条7項3号イの判定基準を具体的に示したものであり,同通達により判定基準に係る課税庁の担当者の恣意的判断を排除し,公平な執行がなされることを目的として定められたものである。 規則14条7項3号イの判定基準を具体的に示したものであり,同通達により判定基準に係る課税庁の担当者の恣意的判断を排除し,公平な執行がなされることを目的として定められたものである。 そうすると,上記通達は,措置法64条1項2号の解釈基準を定めたものということができる。 ウ土地収用法(平成11年12月22日号外法律第160号による改正前のもの。以下「土地収用法」という。)は,16条において「起業者は,(中略)事業のために土地を収用し,又は使用しようとするときは,(中略)事業の認定を受けなければならない。」と規定し,同法18条ないし25条において事業認定に関する要件及び諸手続を規定している。 上記通達にいう「事業認定」と土地収用法16条にいう「事業の認定」とは全く同じものであるから,上記通達の「当該事業の施行場所,施行内容等が具体的に確定し,当該資産について事業認定が行われ得る状況」といえるか否かは,土地収用法上の事業認定に関する各規定に照らして,その実質要件を満たしているか否かによって判断すべきことになる。 エ土地収用法20条は,その各号において事業認定の要件を列挙し,そのすべてを満たすことを要求しており,同法18条は,事業認定を受けようとする起業者が事業認定申請書及び添付書類を提出して事業認定の申請をなすべきことを定めていることからすると,土地収用法は,事業認定申請書及び添付書類の提出によって,事業の施行場所,施行内容等が適法に具体的に確定していることを明らかにさせることにしているものと解されるから,同法18条2項に定める事業認定申請のための書類の提出は,単なる形式的要件ではなく,それらの書類を提出し得る状況にあることが,土地収用のための事業認定の実質的要件である しているものと解されるから,同法18条2項に定める事業認定申請のための書類の提出は,単なる形式的要件ではなく,それらの書類を提出し得る状況にあることが,土地収用のための事業認定の実質的要件であるといえる。 したがって,「当該事業の施行場所,施行内容等が具体的に確定し,当該資産について事業認定が行われ得る状況」にあったか否かは,事業認定の申請をなし得る状況にあったか否かによって決すべきであると解される。 オ土地収用法20条2号は,事業認定をなすための要件として,「起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること」と規定しているところ,この「事業遂行の意思」には,当該事業を遂行するために基本的に必要とされている免許等を取得していることが含まれると解されている。 また,事業認定の手続上も,同法18条2項6号において,事業認定申請書の添付書類として,「事業の施行に関して行政機関の免許,許可又は認可等の処分を必要とする場合においては,これらの処分があったことを証明する書類又は行政機関の意見書」を要求している。この規定の趣旨は,許可の証明書等を提出することにより同法20条4号の要件を満たしていることを起業者が証明しなければならないとの原則に対し,例外的に,許可に先立って収用を必要とする場合には,意見書によってその証明をすることができることを定めたものである。 カ本件事業は,航空法(平成11年12月22日号外法律第160号による改正前のもの。以下「航空法」という。)上の運輸大臣の許可を要する事業であるから,運輸大臣の許可又は意見書の発行のいずれかがなされた段階で,土地収用法20条2号及び同法18条2項6号の要件を満たすことになる。 ところで 運輸大臣の許可を要する事業であるから,運輸大臣の許可又は意見書の発行のいずれかがなされた段階で,土地収用法20条2号及び同法18条2項6号の要件を満たすことになる。 ところで,航空法上の許可の審査基準を満たしているかどうかの判断や意見書を発行すべきか否かの判断は,個別具体的事情に即した航空行政上の専門的技術的判断であり,およそ税務署長において判断可能な問題ではないから,税務署長としては,当該事業が航空法上の許可の審査基準を満たすことが客観的外形的に明らかになった段階である運輸大臣の許可又は意見書の発行がなされたことをもって,土地収用法上の事業認定が行われ得る状況になったと判断するほかない。 したがって,「事業認定が行われ得る状況」にあると認められるためには,単に,福井県において事業計画を定めていただけでは足りず,運輸大臣の許可又は意見書の発行を受けていることを要する。 しかしながら,本件土地の買取り時には,福井県は航空法に定める運輸大臣の許可もこれに代わる意見書も取得していないから,事業認定が行われ得る状況にはなかったといえる。 キまた,本件事業の施行に必要な財源措置が講じられていないという理由からしても事業認定が行われ得る状況にない。 なお,別訴高裁判決は,本件事業が政府の第5次及び第6次空港整備5か年計画に組み入れられていることを,福井県が土地収用法に基づく事業認定の申請をすればその認定が行われ得る状況にあることの判断根拠の一つとしているが,土地収用法上,政府の空港整備計画が事業認定の申請又は事業の認定の要件と関係があるという規定は存しないから,当該整備計画への組入れの有無を事業認定の可能性を考慮する場合の判断根拠とすることに合理性 土地収用法上,政府の空港整備計画が事業認定の申請又は事業の認定の要件と関係があるという規定は存しないから,当該整備計画への組入れの有無を事業認定の可能性を考慮する場合の判断根拠とすることに合理性はない。また,本件事業が政府の第6次空港整備5か年計画に組み入れられたのは,平成3年11月であって,本件事業の基本計画の策定前であるし,本件事業の基本計画の内容についても施行内容の確定には程遠いものであることからしても,本件土地の売買契約締結時において,本件事業が政府の空港整備計画に組み入れられていたことを事業認定の可能性が存することの積極的な判断根拠とすることはできない。 ② 代行買収の要件を欠くこと措置法規則14条7項2号は,土地収用法3条各号に掲げる事業のうち措置法規則14条7項3号イに掲げるものについて,当該事業の施行者が国,地方公共団体若しくは地域振興整備公団である場合において,当該事業の施行者に代わり,地方公共団体若しくは地方公共団体が財産を提供して設立した団体が,当該事業に必要な資産を買い取る(代行買収)ときにも適用することができるものとされている。そして,措置法関係通達(法人税編)64(4)-2は,本件特例が認められる代行買収が行われたかどうかは,次のアからエに掲げる要件のすべてを満たしているかどうかにより判定すると定めている。 ア買取りをした資産は,最終的に事業の施行者に帰属するものであることイ買取りをする者の買取りの申出を拒む者がある場合には,事業の施行者が収用するものであることウ資産の買取契約書には,資産の買取りをする者が事業の施行者が施行する○○事業のために買取りをするものである旨が明記されているものであることエア及びイの あることウ資産の買取契約書には,資産の買取りをする者が事業の施行者が施行する○○事業のために買取りをするものである旨が明記されているものであることエア及びイの事項については,事業の施行者と資産の買取りをする者との間の契約書又は覚書により相互に明確に確認されているものであることしかしながら,本件においては,福井県と福井県土地開発公社との間においては前記ア及びイに係る契約書又は覚書が締結されておらず,また,本件売買契約書には,前記ウについて明記されていないため,代行買収の要件を満たさず,福井県が実質的な買受人ということはできないから,本件特例を適用することはできない。 ③ ところで,措置法64条4項は,たとえ他の要件を充足していても,収用証明書の添付がなければ本件特例が適用できないことを規定したものであって,収用証明書の記載内容が税務署長を拘束することを規定したものではない。したがって,当該資産の買取りについて本件特例が適用されるか否かは,税務署長が独自に調査し判断することであって,収用証明書の記載内容に拘束されるものではない。 また,本件においては,被告と福井県との間の事前協議の段階で,本件土地の買取りが本件特例の適用を受けるものかどうかについては協議されていない。 ④ 以上によれば,本件土地の買取りについて本件特例は適用されない。 (原告の主張)① 本件特例の実体的要件を満たすか否かの判断については,税制上,税務署長は確定申告書等に添付された収用証明書によってその適否の判定を行うこととされている。そして,収用証明書の発行は事業の施行者の専権に属するから,本件特例の実体的要件を満たすか否かの判定は事業の施行者に委ねられている に添付された収用証明書によってその適否の判定を行うこととされている。そして,収用証明書の発行は事業の施行者の専権に属するから,本件特例の実体的要件を満たすか否かの判定は事業の施行者に委ねられている。実体的要件の判定に関する法令,通達等は,事業の施行者による判定の段階でこそ作用する。したがって,この事業の施行者による収用証明書の発行が適法になされている限り,税務署長は,当該収用証明書によって,本件特例の適用の可否を判断すべきである。 本件では,別訴において,本件土地の買取りに本件特例が適用されるか否かが争点となり,別訴高裁判決は,本件土地の買取りに本件特例が適用されるとの理由により福井県に対して収用証明書の発行を命じ,それに基づいて福井県が本件収用証明書を発行している。すなわち,本件収用証明書の発行の適法性が判決によって確定しているのであるから,被告は,本件収用証明書に基づいて本件特例の適用の可否を判定すべきであり,本件収用証明書が発行されているのに被告独自の立場で本件収用証明書の発行の適法性を再度争うことは税制上許されていない。 ② 本件特例の適用があるのは,原則として,土地収用法に規定する事業認定を受け,その証明書の添付がある場合である。 しかし,措置法規則において,特定の事業に係る資産については,この要件を緩和して,事業認定を受けていなくても,事業の施行者の当該資産に該当する旨の証明書の添付で足りると定めている。この趣旨は,土地収用法3条に定める事業のうち,事業の性格上,収用の対象となるべき場所や区域が特定され,さらに公共性が極めて高いと認められる特定の事業については,用地の先行取得を容易にするため,土地収用法の事業認定を受けていない場合であっても,事業認定を受けている場合と同様に税法上の 区域が特定され,さらに公共性が極めて高いと認められる特定の事業については,用地の先行取得を容易にするため,土地収用法の事業認定を受けていない場合であっても,事業認定を受けている場合と同様に税法上の特典を認めようとしたものと解されている。 そして,本件特例の適用の対象とするためには,事業計画において当該事業の施行場所等が具体的に特定していることが必要であろうが,本件においては,福井県が平成5年2月に本件事業の基本計画を策定した時点で,本件事業の施行場所や施行方法が具体的に確定しており,本件土地は,その施行場所のうち空港ターミナル予定地付近に位置するから,福井県が本件事業の遂行に必要な資産として買収したことが明らかである。 これに対し,被告は運輸大臣の許可又は意見書がなければ土地収用法3条12号に定める飛行場等の施設に必要な土地であるか否かが判断できないと主張するようであるが,そもそも空港用地に該当するか否かは事実認定の問題であり,運輸大臣の許可や意見書は,その資料の一つにすぎない。 措置法規則14条7項3号イが,本件特例の適用を受ける手続要件として,土地収用法3条12号の航空法による飛行場又は航空保安施設で公共の用に供するものについては,事業認定を受けたものである旨の証明書の添付という要件を緩和して,事業の施行者の発行する空港用地である旨の証明書の添付で足りるとしていることからすると,本件特例が適用されるために運輸大臣の許可や意見書が必要であるとは考えられない。もし,そうであるのならば,措置法規則において,運輸大臣の許可又は意見書の添付を要すると規定されるはずである。 起業者においては,反対する地権者を余り刺激したくないということから,事業認定の申請を見合わせたまま,地権 において,運輸大臣の許可又は意見書の添付を要すると規定されるはずである。 起業者においては,反対する地権者を余り刺激したくないということから,事業認定の申請を見合わせたまま,地権者を説得しながら,可能なところから順次空港用地を先行取得するということが通常であり,本件もまさにこの事例であるが,措置法規則14条7項3号イは,このような場合においても,本件特例を適用する趣旨と解される。 なお,起業者の発行する空港用地である旨の証明書を添付して本件特例の適用を受ける場合においても,いざというときは土地収用という強制力を発動せざるを得ないことが必要であるから,将来事業認定の申請を行った場合には,事業認定を得られるような内容の事業であること,すなわち,公益上の必要性が高く,起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有することが必要であるが,これは,福井県が起業者として本件事業の計画を定め,政府が本件事業の公益上の必要性を認めて,第5次ないし第7次の空港整備5か年計画に組み入れていることから,前記の各要件を充分満たしているといえる。なぜなら,運輸大臣の意見書は,「空港用地としての必要性についての意見書」であるところ,公益上の必要性に関する判断としては,運輸大臣よりも政府の決定の方が上位にあると解されるからである。 ③ 代行買収の場合に本件特例が適用されるためには,それが代行買収であることを明確にする必要があることから,措置法関係通達(法人編)64(4)-2が「買取りをする者の買取りの申出を拒む者がある場合には,事業の施行者が収用するもの(代行買収)であること」,「この事項について,事業の施行者と資産の買取りをする者との間の契約書又は覚書により相互に明確に確認されているものであること」等を規定しているのであ 業の施行者が収用するもの(代行買収)であること」,「この事項について,事業の施行者と資産の買取りをする者との間の契約書又は覚書により相互に明確に確認されているものであること」等を規定しているのであろうが,これはあくまで一般論にすぎない。 本件においては,福井県と福井県土地開発公社との関係は公知の事実であるし,本件土地の買取りが代行買収であることは疑いようのない事実である。本件売買契約書にその旨の明記がないなどというのは,単なる書類上の形式の問題にすぎないし,事前協議においてその旨の指導を十分しなかったからでもある。また必要であれば,被告は,福井県と福井県土地開発公社に確認することも可能であろう。 さらに,福井県と福井県土地開発公社との間で代行買収についての契約書又は覚書が締結されていないなどということは,原告の関知することではなく,そのようなことで原告が不利益を被る理由はない。 仮に前記通達が被告が主張するような杓子定規に解釈されなければならないものであるならば,当該通達そのものが違法というべきである。 ④ 以上によれば,本件土地の買取りについて本件特例が適用される。 (2) 本件通知処分が信義則に反するか否か(原告の主張)福井県の担当者は,原告や原告の税務を担当していたA税理士に対し,本件土地の買取りについて本件特例が適用されると説明していたが,平成7年6月20日過ぎころから態度を一変させ,三国税務署に確認した結果,本件特例が適用できないため,収用証明書は発行できないとの立場をとるようになった。 そのため,原告は,平成8年3月期の法人税の確定申告において,収用証明書を添付しないまま(後に追完する予定で)本件特例を適用した申告を行っ 書は発行できないとの立場をとるようになった。 そのため,原告は,平成8年3月期の法人税の確定申告において,収用証明書を添付しないまま(後に追完する予定で)本件特例を適用した申告を行った。原告は,その後も何度も福井県に収用証明書の発行を依頼したが,福井県はただ発行できないとの返事を繰り返すのみであった。 原告は,平成9年4月,三国税務署の調査を受けたが,このとき本件特例の適用の可否が問題となり,同署から,福井県から収用証明書が発行されれば本件特例が適用されるとの見解を示された上で,収用証明書がなければ本件特例は適用されない,後日,発行された場合は更正の請求をすればよいからとりあえず適用がないとして納税すべきであるとの指導を受け,同年6月30日付けで更正処分を受けた。この更正処分の理由は,専ら収用証明書の添付がないことである。 そこで,原告は福井県が収用証明書を発行すれば問題は解決すると考え,別訴を提起し,その過程で平成10年4月30日に直接三国税務署の係官から説明を聞く機会を持った。このときの協議の内容は専ら収用証明書を発行できるか,すなわち本件土地が空港用地に該当するか否かという点であり,双方の見解は平行線に終わったが,同署係官は,「この問題については,現在進行中の裁判(別訴)の判断に従う。」旨明言した。 前記協議は,別訴を提起して間もない争点の整理さえできていない段階でなされたものであるから,原告が別訴で勝訴し,福井県が収用証明書を発行し,原告が更正の請求をした場合の更正の可否まで話が及ぶはずはなく,被告が主張するような更正の請求の可否については一切協議しなかった。仮に,同署担当官から,別訴で原告が勝訴しても,被告が更正の請求を認めるかどうかは分からない旨の説明があったとすれば,原告 ずはなく,被告が主張するような更正の請求の可否については一切協議しなかった。仮に,同署担当官から,別訴で原告が勝訴しても,被告が更正の請求を認めるかどうかは分からない旨の説明があったとすれば,原告代理人としては当然別訴において被告に対して訴訟告知を行っていたはずである。 なお,同署係官は,空港用地に当たるか否かについて再度上級者と相談の上改めてその結果を原告代理人に連絡すると述べ,後日,同署の見解は変わらないとの電話連絡をした。 別訴は,本件土地の買取りが措置法64条1項2号に該当するか否かが争点となっており,福井県は,被告から指導されたことをそのとおり主張するだけであり,実質的には被告の代理戦争であった。 そして,平成12年2月28日,福井県に対して収用証明書の発行を命ずる別訴高裁判決が言い渡され,福井県は,これに従い本件収用証明書を発行した。原告は,当然,これですべて解決したと考えて,直ちに更正の請求を行った。 被告も原告が前記更正処分に基づいて納税額納付のため発行して交付していた手形・小切手を原告に返却していることからすると,本件収用証明書の発行によって,本件土地の買取りについて措置法64条1項2号の適用があると判断していたものと推認される。 以上のような事実経過によれば,福井県の収用証明書が発行されながら本件土地に本件特例が適用されないとして更正の請求を認めない本件通知処分は,信義則に違反し,違法である。 (被告の主張)① 福井県土地開発公社が平成4年1月24日から平成10年3月23日までの間に行った本件事業に必要な土地の買取りに当たり,被告と事前協議をするために提出した事前協議説明書によれば,福井県土地開発公社は,本件事業のために土地を譲渡した 月24日から平成10年3月23日までの間に行った本件事業に必要な土地の買取りに当たり,被告と事前協議をするために提出した事前協議説明書によれば,福井県土地開発公社は,本件事業のために土地を譲渡した地権者に適用される特例は1500万円控除の特例であると認識していたことがうかがわれる。また,福井県が本件事業に全力を挙げて取り組んでいたことからすれば,土地を譲渡する地権者にどのような税務上の特典があるかを正確に把握した上で地権者に説明して同事業の推進を図っていたはずであるから,本件特例が適用されないことが明白であるにもかかわらず,福井県が適用されるかのような誤解を与える説明をしていたとは推認できない。 また,原告自身も,平成7年5月31日付けで福井県知事に対し公拡法に基づく買取希望申出書を提出しているから,1500万円控除の特例が適用されることを承知していたとみられ,このような経緯で本件土地の売買契約を締結している以上,最終的には本件特例が適用されないことを認識した上で,本件売買契約書に記名押印したものと考えるほかない。 このような原告自身の対応からしても,福井県が原告に対して本件特例が適用されるかのような説明をしていたと推認することはできない。 ② 原告代表者,原告訴訟代理人弁護士,A税理士及びB税理士は,平成10年4月30日,三国税務署を訪れ,同署の総務課長,法人課税部門総括国税調査官,個人課税第二部門統括国税調査官,同部門上席国税調査官の4名と面接した。 同面接において,原告代理人らは,本件事業に係る施行場所及び施行内容が具体的に確定しているとの見解を譲らず,航空法40条に基づく告示の有無が上記確定の有無の判定要件となるとの同署係官らの説明に納得せず,同署係官から原告が別訴に勝 ,本件事業に係る施行場所及び施行内容が具体的に確定しているとの見解を譲らず,航空法40条に基づく告示の有無が上記確定の有無の判定要件となるとの同署係官らの説明に納得せず,同署係官から原告が別訴に勝訴して収用証明書の発行を受けた場合には更正の請求が認められるとの言質を得ようとして何度も同じ質問を繰り返した。それに対し,同署係官らは,仮に収用証明書が発行されたとしても,事実関係について税務上の調査をした上で更正の請求に対する処分の内容が決定されるとの説明を繰り返した。その際,同署係官らにおいて,「現在進行中の裁判(別訴)に従う。」という趣旨の発言をした者や態度を示した者はいない。 同署係官らは,原告代理人らが納得しないため,改めて後日電話で原告訴訟代理人に回答する旨約束して同日の面接を終了し,同年5月7日に法人課税部門の統括国税調査官が原告訴訟代理人に電話して同一趣旨の説明を再度行った。 ③ 第三者間で課税標準の計算基礎となる事実の存否が争われる場合,課税庁が訴訟に参加することは通常あり得ず,課税庁としては,その争いの結果に基づき一方の当事者が更正の請求等を行った場合に初めて,当該結果が事実を反映しているものか否かを調査し,調査の結果と争いの結果が一致し,更正の請求の一部あるいは全部に理由があると判断できる場合は,それに応じて更正の請求を認める処分を行い,調査の結果と争いの結果が一致しない場合には,更正の請求に理由がない旨の通知処分を行うことになる(国税通則法23条4項)。 別訴においても,被告は,特別に福井県の訴訟活動のために積極的に何かを行ったということはなく,別訴が実質的に被告の代理戦争であったということは決してない。 なお,訴訟法上,別訴高裁判決の既判力は,被告には及ばない 福井県の訴訟活動のために積極的に何かを行ったということはなく,別訴が実質的に被告の代理戦争であったということは決してない。 なお,訴訟法上,別訴高裁判決の既判力は,被告には及ばないから,別訴高裁判決において本件土地の買取りについて本件特例が適用されると判断されているという理由によって,本件特例の適用の可否を判断すべきでないことは明らかである。 ④ 以上によれば,本件通知処分は何ら信義則に違反しない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件土地の買取りに本件特例が適用されるか否か)について(1) 本件特例は,法人がその有する資産を収用されるなどして代替資産を取得した場合の税法上の特別優遇措置を定めたもので,その趣旨は,収用等に伴って生じた譲渡益については,当該譲渡が所有者である法人の自由な意思に反するものである上,一般の譲渡と同様に課税すると企業経営維持のための再投資(代替資産の取得)を阻害する結果になるために,税法上の特別優遇措置を講じたものである。 措置法64条1項1号は,「資産が土地収用法等(中略)の規定に基づいて収用され,補償金を取得する場合」と規定し,同項2号は,「資産について買取りの申出を拒むときは土地収用法等の規定に基づいて収用されることとなる場合において,当該資産が買い取られ,対価を取得するとき」と規定している。すなわち,同項1号は,正しく収用という強制力が作用した場合の規定であり,同項2号は,買取りの申出に応じなければ,最終的に収用されることとなると見込まれる場合の資産の譲渡の場合の規定である。そうすると,同項2号の趣旨は,強制力が背景にあることから,課税においても実際に収用された場面と同視するのが公平であり,収用前に譲渡した者が収用された者より不利益を被ることのない の場合の規定である。そうすると,同項2号の趣旨は,強制力が背景にあることから,課税においても実際に収用された場面と同視するのが公平であり,収用前に譲渡した者が収用された者より不利益を被ることのないようにすることにあると考えられる。 したがって,同項2号が適用されるのは,買取りの申出に応じなければ収用されることが相当程度確実な状況にある場合に限られるものと解するのが相当である。 ところで,同条4項,措置法規則14条7項3号イは,同条1項2号の適用の手続要件として,土地収用法3条12号の規定に該当するものに関する事業に必要なものとして収用又は使用することができる資産については,当該資産の買取りをする者の当該資産がそれに該当する旨を証する書類(収用証明書)を添付しなければならない旨を定めている。これは,公共事業について土地収用法に規定する事業認定がなされる前であっても,当該事業に必要なものとして収用ができる資産については,事業認定を待たずに先行取得することが必要な場合があることから,当該資産に税法上の特例措置を適用するのが相当か否かを公的な証明にかからせようとする趣旨によるものと解される。 そうすると,収用証明書を発行し得るか否か,すなわち,措置法64条1項2号に該当するか否かについては,当該買取りの時において,当該事業の施行場所,施行内容等が具体的に確定し,当該資産について事業認定が行われ得る状況にあるか否かによって判断するのが相当である(措置法関係通達(法人税編)64(4)-3参照)。 (2)① また,土地収用法16条の規定による事業の認定を受けようとする起業者は,事業の種類,起業地及び事業の認定を申請する理由等を記載した事業認定申請書を建設大臣(当時,以下同じ)等に提出しなければならず(同法1 土地収用法16条の規定による事業の認定を受けようとする起業者は,事業の種類,起業地及び事業の認定を申請する理由等を記載した事業認定申請書を建設大臣(当時,以下同じ)等に提出しなければならず(同法18条1項),事業認定申請書には,事業計画書の他,事業の施行に関して行政機関の免許,許可又は認可等の処分を必要とする場合においては,これらの処分があったことを証明する書類又は行政機関の意見書等を添付しなければならない(同条2項)。 そして,建設大臣は,申請に係る事業につき,起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する場合に限り,事業の認定をすることができるところ(同法20条2号),事業を遂行する意思を有するというためには,当該事業を遂行するために基本的に必要とされている行政機関の許可等を取得していることが含まれると解される。 ② 土地収用は,財産を強制的に取得するものであるから,法令上事業施行の権限を有せず,又はこれを有する見込みのない起業者に収用権を付与することは許されない。そのため,土地収用法は,事業認定を行う建設大臣が,この点を判断するために,事業認定申請書に当該事業を遂行するために基本的に必要とされる行政機関の許可等があったことを証明する書類又は当該行政機関の意見書を添付することを要していると考えられる。 したがって,許可等又は当該行政機関の意見書によって許可等の見通しが確実であるとは認められない場合には,土地収用法20条2号の要件を充足せず,申請に係る事業について事業認定が行われることはないと解される。 そして,土地収用法が,建設大臣が申請に係る事業について事業認定をするか否かを判断するに当たり,当該事業の施行に関する行政機関の許可等や意見を求めるという構造を採っているのは, 。 そして,土地収用法が,建設大臣が申請に係る事業について事業認定をするか否かを判断するに当たり,当該事業の施行に関する行政機関の許可等や意見を求めるという構造を採っているのは,起業者に法令上事業施行の権限又はこれを有する見込みがあるか否かは,当該申請に係る事業の許認可の審査基準を充足するか否かによるところ,その審査基準を充足するかどうかについては申請に係る事業ごとの専門的技術的な判断を要するためであると考えられる。そうすると,事業認定の機関ですらない税務署長が当該事業の許認可の審査基準を満たすかどうかを判断するのはなおさら困難を伴うと考えられる。また,租税法規の適用においては,納税者間の平等,公平という要請があるから,税法上の優遇措置に該当するか否かの判断基準は,可能な限り客観的かつ合理的なものでなければならない。 したがって,事業認定が行われ得る状況にあるといえるためには,当該事業を遂行するに当たり基本的に必要とされる行政機関の許可等を取得しているか,それに代わる行政機関の意見書を取得していることが必要であると解すべきである。 (3) これを本件についてみるに,飛行場の設置者は,陸上飛行場の滑走路,着陸帯,誘導路又はエプロンの新設,滑走路又は着陸帯の長さ,幅又は強度の変更等,当該施設について航空の安全のため特に重要な変更を加えようとするときは,運輸大臣の許可を受けなければならないところ(航空法43条1項,同法施行規則85条),本件事業は,航空法上の運輸大臣の許可を要する事業であるから,本件事業を施行しようとする者は,運輸大臣の許可又は意見書の発行のいずれかを得る必要がある。 しかるに,前提事実(1)⑦のとおり,福井県は,本件土地の買取りの時点において運輸大臣に対して飛行場変更許可申請書の提 とする者は,運輸大臣の許可又は意見書の発行のいずれかを得る必要がある。 しかるに,前提事実(1)⑦のとおり,福井県は,本件土地の買取りの時点において運輸大臣に対して飛行場変更許可申請書の提出すらしておらず,運輸大臣の許可又は意見書を取得していないのであるから,土地収用法による事業認定が行われ得る状況にあったと認めることはできない。 なお,前提事実のとおり,本件事業は,政府の第5次ないし第7次の各空港整備5か年計画に組み入れられているが,運輸大臣が飛行場の変更を許可する際には,航空法39条1項各号に適合しているかどうかを審査することが要請されており,その審査基準の中には,当該飛行場又は航空保安施設の管理の計画が同法47条1項の保安上の基準に適合するものであること(同法39条1項3号)等高度に専門的技術的判断を要する事項もあるから,運輸大臣の意見書が単なる公益上の必要性のみを判断するものとは考えられず,同法39条1項各号の審査基準に適合するか否かを判断し,それらの要件を具備していない場合においても将来具備する蓋然性があるか否か等を考慮した上で意見書が発行されると解される。そうすると,本件事業が政府の第5次ないし第7次の各空港整備5か年計画に組み入れられていることから直ちに事業認定が行われ得る状況にあると認めることはできない。 ところで,空港変更の許可申請をするときは,申請者は,その申請書に,申請者が飛行場の敷地について所有権その他の使用の権原を有するか,又はこれを確実に取得できることを証明する書類を添付しなければならない(同法39条1項5号,同法施行規則86条2項3号)。 地権者の同意書は,この確実に取得することができることを証明する書類であるが,これには土地の売買金額や引渡し時期などに関 ならない(同法39条1項5号,同法施行規則86条2項3号)。 地権者の同意書は,この確実に取得することができることを証明する書類であるが,これには土地の売買金額や引渡し時期などに関する事項の記載がなく,当該事業のために用地を提供することの同意にすぎないと認められるから(乙7,31,32),地権者の同意書を取得したからといって,土地収用の必要性がなくなるということにはならない。したがって,事業認定が行われ得る状況にあるというために運輸大臣の航空法上の許可又は意見書を取得していることが必要であると解することは,その後に土地収用が予定されていることと何ら矛盾するものではない。 また,事業施行者においては,当該事業に反対する地権者を余り刺激したくないとの配慮から,事業認定の申請を見合わせたまま,地権者を説得しつつ,可能なところから順次事業用地を先行取得するということも考えられなくはない。しかしながら,そもそも,措置法64条1項2号は,買取りの申出を拒否すれば収用されるという強制力を背景として買取りを行う場合に,収用と同様の課税上の優遇措置を講じるというものである。事業認定を受けるために基本的に必要な許可又は意見書を取得していない段階では,事業認定を受け得るか否かは不確実であって,実際に収用された場合と同視できる利益状況にあるとはいい難いから,そのような段階での先行取得の場合にまで本件特例を適用することはできない。 (4) 原告は,本件特例の実体的要件を満たすか否かの判断は,収用証明書の発行主体である事業の施行者に委ねられており,事業の施行者による収用証明書の発行が適法になされている限り,税務署長は当該収用証明書によって本件特例の適用を判定すべきであると主張する。 しかし,税務署長は,課税の適正を られており,事業の施行者による収用証明書の発行が適法になされている限り,税務署長は当該収用証明書によって本件特例の適用を判定すべきであると主張する。 しかし,税務署長は,課税の適正を期するために調査を行う権限及び適正な課税標準に基づき課税処分を行う権限を有するが(国税通則法23条4項,24条,法人税法129条等),その権限には,土地の譲渡が税制上の優遇措置に該当するか否かの判断を行うことも当然に含まれるから,課税に関して何らの権限も有しない事業の施行者のした判断が最終的なものとして税務署長を法的に拘束すると解することはできない。 また,本件特例は,収用証明書の添付がある場合に限り適用されるが(措置法64条4項),これは他の要件を充足していることを前提として,なお本件特例の適用のためには,収用証明書の添付が必要であるとしているのであって,収用証明書の添付さえあれば,他の要件を欠く場合であっても,なお本件特例が適用されることまでを規定したものではない。 なお,前提事実のとおり,本件においては,原告が福井県に対し収用証明書の発行を求める訴訟を提起し,別訴高裁判決が,本件土地の買取りに本件特例の適用があるとの理由により,福井県に対して収用証明書の発行を命じ,同判決は確定しているが,前記のとおり,収用証明書は本件特例の適用を認めるための唯一の認定資料ではないから,収用証明書の発行自体によって,本件特例を適用するための要件を具備したものと認めることはできない。 (5) 以上によれば,本件土地の買取りに本件特例を適用することはできない。 2 争点(2)(本件通知処分が信義則に反するか否か)について租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則の法理の適用により,当該課税処分を違 適用することはできない。 2 争点(2)(本件通知処分が信義則に反するか否か)について租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則の法理の適用により,当該課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理,なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,同法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて同法理の適用の是非を考えるべきものである。そして,この特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,のちに同表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の同表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮が不可欠のものであるといえる(最高裁判所昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第3小法廷判決・判例時報1262号91頁参照)。 これを本件についてみるに,前提事実(1)④によれば,原告は,平成7年6月23日に本件土地の売買契約を締結しているところ,この契約の前に,三国税務署の担当官から本件土地の買取りについて本件特例の適用があるとの公的見解を表示されたことはなく,むしろ同月20日過ぎころ,福井県職員から,三国税務署に確認した結果,本件土地の買取りについては本件特例に該当しないという説明を受け りについて本件特例の適用があるとの公的見解を表示されたことはなく,むしろ同月20日過ぎころ,福井県職員から,三国税務署に確認した結果,本件土地の買取りについては本件特例に該当しないという説明を受けており(乙17,18及び弁論の全趣旨によれば,かえって,原告は,本件土地の買取りにつき1500万円控除の特例の対象となることの説明を受けたことが窺われる。),税務官庁である三国税務署が納税者である原告に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,原告がその表示を信頼し,その信頼に基づいて本件土地の売買契約を締結したのではないから,本件通知処分について信義則の法理の適用を考える余地はないものというほかない。 また,前提事実のとおり,被告が平成9年6月30日付けでした平成8年3月期の確定申告に対する更正処分に附記した理由は収用証明書の添付がないことであるが,これをもって収用証明書が添付されれば本件特例が適用されるという税務官庁の公的見解を表示したものということはできない(なお,原告は,前記更正処分を受けるに当たり,三国税務署の担当官から,福井県から収用証明書を受ければ本件特例が適用されるとの見解を示されたと主張し,甲8号証中には同主張に副う部分があるが,同部分は,福井県が,三国税務署に照会した結果,本件土地の買取りについて収用証明書を発行できないとの見解を示したという事実経過及び乙17,18の内容に照らして採用できない。)。 さらに,原告は,被告が別訴において実質的に関与しており,別訴の提起後,三国税務署の法人税担当統括官らが,原告訴訟代理人らに対し,別訴の結果に従うと述べたと主張し,甲6,8号証中にはその主張に副う部分がある。 しかしながら,別訴において,被告が福井県から本件土地の買取りについて本件特例が適用される 訟代理人らに対し,別訴の結果に従うと述べたと主張し,甲6,8号証中にはその主張に副う部分がある。 しかしながら,別訴において,被告が福井県から本件土地の買取りについて本件特例が適用されるか否かについての見解を求められてそれに回答したということは考えられるとしても,それを超えて別訴に実質的に関与したと認めることはできないし,乙9号証に照らせば,前記各証拠によって,同統括官らが原告主張の発言をしたことを認めるには足りない。 以上によれば,本件において,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存するとは認められないから,本件通知処分は信義則に違反するとはいえない。 3 よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 福井地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官小原卓雄 裁判官明石万起子 裁判官高松晃司
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