昭和52(ラ)701 船舶所有者等責任制限手続開始決定に対する抗告事件

裁判年月日・裁判所
昭和53年1月26日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件抗告を棄却する。          理    由  抗告人は、「原決定を取り消す。相手方の責任制限手続開始の申立を却下す る。」との裁判を求め、その理由は、別紙理由書記載の

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判決文本文2,832 文字)

主文 本件抗告を棄却する。 理由 抗告人は、「原決定を取り消す。相手方の責任制限手続開始の申立を却下する。」との裁判を求め、その理由は、別紙理由書記載のとおりである。 一船舶所有者責任制限の合憲性について抗告人は、「般舶所有者等の責任の制限に関する法律」(以下単に「法」又は「本法」という。)全体が憲法二九条に違反するように主張するが、その主旨とするところは、本法中第二章の船舶所有者の責任制限に関する規定の違憲をいうにあるものと善解できないわけではないので、以下、右の趣旨に解釈し、その限度において、当裁判所の見解を示すこととする。 本法は、わが国が多数国間条約である一九五七年「海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約」を批准し、それに伴う所要の国内法上の手当てをするために、昭和五〇年一二月制定・公布されたのであるが、この法律における船舶所有者の責任の制限は、特定の船舶による航行に関して生じた所定の損害に基づく債権について、それが契約上の債務不履行に基づくものであると、不法行為に基づくものであるとを問わず、船舶所有者が、各事故ごとに、自己の責任を一定の金額に制限することができるいわゆる総体的有限責任を認めたものである。そして、この制度の目的とするところは、船舶という巨大な運送用具を使用して危険性の大きい海上の運送を行なう海運業を保護せんとすることにあるのはいうまでもない。 ところで、いかに私企業における採算性や保険への責任転嫁の限界を著しく超える巨額な損害から海運業を保護するためとはいえ、船舶所有者の契約責任については、すでに各個の損害に対する最高損害賠償額を定める方法が認められている(国際海上物品運送法一三条参照)にもかかわらず、さらに、本法によつて船舶所有者の総体的有限責任を 船舶所有者の契約責任については、すでに各個の損害に対する最高損害賠償額を定める方法が認められている(国際海上物品運送法一三条参照)にもかかわらず、さらに、本法によつて船舶所有者の総体的有限責任を認め、また、不法行為責任についても、被害者の犠牲において問題の解決を図らんとすることは、まさに抗告人の指摘するごとく、その合理的必然性に乏しいといわざるを得ないであろう。 <要旨>しかし、(一)船舶所有者の責任は、その契約責任(履行補助者過失責任)にしても、不法行為責任(被用者</要旨>責任)にしても、もともと、船舶所有者本人の責任ではなく、しかも、改正商法六九〇条は、本法の施行に備えて、「船舶所有者ハ船長其他ノ船員が其職務ヲ行フニ当タリ故意又ハ過失ニ因リテ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ」と明記して、民法所定の使用者責任の原則を変更し、船舶所有者に或る程度の無過失責任を認めていること。(二)海運企業は、海上の運送機関として、低廉な運賃で大量の人員や物品を運送すべき公共性を有するものであるが、一面危険性が高く、わずかな過失によつても企業の存立を危殆に陥らしめるごとき巨大な損害を惹起する特質を有するものであるから、損害を保険で補填するにしても、保険料の運賃への転嫁にはおのずから限度があり、また、海運企業を維持し、その適正な運営と総合的な発展を図ることは、公共の福祉を増進するうえに欠くことができないものであること、(三)また、船舶所有者の責任制限の制度は、その方法、態様等において差異があるとしても、古くから各国により是認されたものであり、わが国においても本法制定前は商法に規定する委付の制度(船主は、原則として人的無限責任を負うが、特定の種類の債務に関しては、航海の終りにおける船舶、運賃等の海産を債権者に委付することによつて自己の責任を免かれ ても本法制定前は商法に規定する委付の制度(船主は、原則として人的無限責任を負うが、特定の種類の債務に関しては、航海の終りにおける船舶、運賃等の海産を債権者に委付することによつて自己の責任を免かれる方法)が存在していたのであるから、国際的性格の強い海運業にあつて、わが国だけが船舶所有者責任制限の制度を廃止することは、事実上困難であり、仮りに廃止したとしても、船舶所有者は、一個の船舶ごとに会社を設立して責任制限の実を挙げるであろうことは、つとに識者によつて指摘されているところであること。(四)また、本法の規制内容についてみても、従来わが国の採用していた委付の制度には、委付の対象たる船舶の沈没、滅失等により債権の満足が得られなくなるという重大な欠陥があるのに対し、本法は、前叙のごとく、「海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約」に従い、これを金額責任主義、すなわち、船舶所有者の責任を各事故ごとに定め、債権を発生させた船舶の積量トン数に一定の金額を乗じて得た額に制限するという簡明でかつ合理的な方法に改めるとともに、損害の発生が船舶所有者自身の故意又は過失によつて生じた場合とか、海難救助又は共同海損の分担に基づく債権や内航船による人の損害に基づく債権等を非制限債権とし、さらに、原子力損害や油濁損害に基づく債権に対しては、本法による責任の制限をなし得ないこととなつており、しかも、責任限度額についても、前記条約三条の規定を受け、わが国における過去の実績等をも勘案して定められたものであつて、不当に低額なものとは即断し難いこと、以上のような諸事情に鑑みれば、船舶所有者の責任を制限することは、債権者の財産権を侵害するものであるとはいえ、現在のところ、公共の福祉のためのやむを得ない制限であつて、憲法二九条に違反するものとはいい得ない。 二法の れば、船舶所有者の責任を制限することは、債権者の財産権を侵害するものであるとはいえ、現在のところ、公共の福祉のためのやむを得ない制限であつて、憲法二九条に違反するものとはいい得ない。 二法の解釈、適用の違法性について次に、抗告人は、仮りに本法が違憲でないとしても、本件損害は船舶所有者である相手方自身の過失により生じたものであるから、法三条一項但書により、相手方の責任を制限することができないと主張する。 しかし、本件衝突事故が相手方所有船A丸の船長Bの抗告人主張のような過失によるものとしても、そのことだけで直ちに、同船長が適切な航行をなす判断力を欠くものであり、かつ、相手方がこのようなことを知り、又は過失によつて知らずして同人を船長に選任したものである等損害の発生そのものが相手方自身の過失によるものであることを認めがたく、他にこれを肯認するに足りる証拠はない。 以上のごとく、右抗告人の主張は、すべて採用できず、また、他に原決定を違法とする事由は認められない。 三よつて、原決定は相当であつて、本件抗告は、理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官渡部吉隆裁判官渡辺忠之裁判官柳沢千昭)

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