平成23(行ケ)10182 審決取消請求事件(特許)

裁判年月日・裁判所
平成24年2月21日 知的財産高等裁判所 1部 判決 請求棄却
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判決文本文32,174 文字)

- 1 -平成24年2月21日判決言渡平成23年(行ケ)第10182号審決取消請求事件(特許)口頭弁論終結日平成24年2月14日判決原告東日本メディコム株式会社訴訟代理人弁理士橋本克彦 被告特許庁長官 指定代理人須田勝巳 同清田健一 同樋口信宏 同田村正明 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2008-16469号事件について平成23年4月11日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が名称を「問診票入力システム」とする発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をし,その中で原告は,平成22年12月13日付けでも特許請求の範囲の変更を内容とする手続補正(本件補正)をしたが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。 2 争点は,上記補正後の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)が下記引用例との間で進歩性を有するか(特許法29条2項),である。 - 2 -記・引用例1:高林克日己外8名「自動問診装置の電子カルテへの応用-患者自身の電子 有するか(特許法29条2項),である。 - 2 -記・引用例1:高林克日己外8名「自動問診装置の電子カルテへの応用-患者自身の電子カルテへの参画-」(第18回医療情報学連合大会論文集,1998年11月19日,306頁~307頁。以下,これに記載された発明を「引用発明」という。甲1)・引用例2:特開平11-184956号公報(発明の名称「医療情報システム及び患者用端末装置」,公開日平成11年7月9日,甲2)・引用例3:特開平10-323329号公報(発明の名称「電子カルテシステム及びその入出力方法」,公開日平成10年12月8日,甲3)・引用例4:鈴木章外5名,「外来患者呼出しシステム」MatsushitaTechnicalJournal 第46巻第4号(松下電器産業株式会社,2000年8月18日,55頁~62頁。甲4)。 第3 当事者の主張 1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成14年4月30日,上記名称の発明について特許出願(特願2002-128215号,公開特許公報は特開2003-323488号)をし,平成21年1月31日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(第1次補正,請求項の数4,甲6-3)をしたところ,平成20年4月28日付けで拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は,上記請求を不服2008-16469号事件として審理し,その中で原告が,平成22年12月13日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする本件補正(第2次補正,請求項の数2。甲6-9)をしたが,特許庁は,平成23年4月11日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審- 3 -決をし,その謄本は同年5月9日原告 の変更を内容とする本件補正(第2次補正,請求項の数2。甲6-9)をしたが,特許庁は,平成23年4月11日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審- 3 -決をし,その謄本は同年5月9日原告に送達された。 (2) 発明の内容本件補正(第2次補正)後の請求項の数は前記のとおり2であるが,その請求項1である本願発明の内容は,以下のとおりである(下線部分が補正部分)。 ・【請求項1】 医療機関に設置された記憶装置および制御装置を備えたサーバと,管理,受付部門,診察室および待合室にそれぞれ設けられた端末機と,待合室に設置された患者が自分の情報を入力するための入力装置を有する端末機と,前記サーバと各端末との間に設置される通信手段とを有し,前記医療機関を受診する患者が,受診前に,体質や病歴,薬歴等の個人情報および症状や受診目的等の受診情報を前記待合室に設置された入力装置によって入力すると,前記個人情報および受診情報が,前記医療機関のサーバへ送信されるとともに診察室に設置された端末機に送信される問診票入力システムにおいて,前記待合室に設置された端末が携帯端末機器であって入力装置が表示画面を有しタッチ入力可能であるとともに,前記表示画面に表示された項目の中から患者自身にあてはまるものを選んで,指またはペン等で表示画面の所定位置を押して受診情報を入力することが可能であるとともに端末の表示画面に,前記サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させることを特徴とする問診票入力システム。 (3) 審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,本願発明は前記引用発明及び引用例2ないし4に記載の技術的事項に基づいて当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,本願発明は前記引用発明及び引用例2ないし4に記載の技術的事項に基づいて当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に発明することができたから特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 - 4 -イなお,審決が認定した引用発明の内容,本願発明と引用発明との一致点及び相違点1ないし4は,上記審決写しのとおりである。 (4) 審決の取消事由しかしながら,審決には次のような誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。 ア取消事由1(各相違点認定の誤り)審決は,相違点1~4を挙げ,これらの「相違点」についていずれも「引用発明では・・・明らかでない。」と認定している,しかし,実際は引用発明には各相違点は不明ではなく明記してあるか記載していないものであり,不明であるとの認定は誤りである。 したがって,以下のとおり,審決の各相違点の認定は誤りであり,取り消されるべきものである。 (ア) 相違点1認定の誤り審決は,相違点1につき「引用発明では管理,受付部門および待合室に端末機が設けられているか明らかでない」と認定するが,引用発明では,「管理,受付部門および待合室に端末機が設けられている」と記載されていないことは明らかであるから,このような認定は失当である。 (イ) 相違点2認定の誤り審決は,相違点2につき「引用発明では,入力装置を有する端末機が,院内のどこに設置されているのかが,明らかでない」と認定するが,引用発明では,「入力装置が院内の外来受付端末に設置した」旨が明記されており,「明らかでない」との認定は失当である。 (ウ) 相違点3認定の誤り審決は,相違点3につき「引用発明では,端末が ,引用発明では,「入力装置が院内の外来受付端末に設置した」旨が明記されており,「明らかでない」との認定は失当である。 (ウ) 相違点3認定の誤り審決は,相違点3につき「引用発明では,端末が,携帯端末機器であるか明らかでない」と認定するが,「引用発明では,端末はA4版サイズ,タッチパネル画面付きパソコンであり,携帯端末機器でない」とい- 5 -うことは明白である。 したがって,「引用発明では,端末が,携帯端末機器であるか明らかでない」との認定は失当である。 (エ) 相違点4認定の誤り審決は,相違点4につき「本願発明では,端末の表示画面に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させるものであるのに対し,引用発明では,それが明らかでない」と認定するが,引用発明では,「端末の表示画面に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させること」が記載されておらず,「それが明らかでない」との認定は失当である。 イ取消事由2(各相違点についての判断の誤り)(ア) 相違点1についての判断の誤り審決は,相違点1について,「引用例2には,『医療機関における医療情報システムにおいて,会計処理,患者の受付処理,外来患者及び入院患者についてのその他の種々の処理,病院における施設及び物品の管理のための処理,その他の処理を行うために,事務部門,会計部門,受付部門などに,多数の事務端末を設ける。』という技術的事項が記載されている。そうすると,引用発明に,かかる技術的事項を適用して医療機関の各部門に端末機を設置するようにし,相違点1にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。」(審決11頁2行~9行)と判断している。 しかし,本願発 技術的事項を適用して医療機関の各部門に端末機を設置するようにし,相違点1にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。」(審決11頁2行~9行)と判断している。 しかし,本願発明は,患者の問診情報を診察部門だけでなく管理,受付部門及び待合室の端末機で利用することにより,例えば本願の願書に添付した明細書(公開特許公報,甲5)の段落【0023】に記載されているように診察の準備や優先的な誘導など診察までの手続などを効- 6 -率よく行うことができるものであり,単に院内に多数の端末を設けて情報の使用を図るというものではないのに対して,引用例2に記載の発明では問診事項に特化したサーバの記載はなく,受付部門に端末がないことからも引用例2に記載の発明の端末機構を引用発明に適用しても本願発明の相違点1にかかる構成とすることはできない。 また,引用例2に記載の医療情報システムは本願発明や引用例1に記載の自動問診装置を用いるという目的は一切考えられずに入院患者を対象とした,特に回診に便利な医療情報システムとして発明されて特許出願されたものであり,そのような医療情報システムに引用例1に記載の自動問診装置を適用する余地はない。つまり,引用発明に引用例2を適用する動機があるとはいえないから,そのように適用することが当業者にとって容易想到であるとはいえない。 (イ) 相違点2についての判断の誤り審決は,相違点2に関し,「引用例3には,『問診に対する回答を,患者に待合室にて行わせる。』という技術的事項が記載されている。引用発明において,かかる技術的事項を適用し,患者による問診に対する回答を,待合室にて行わせるべく,入力装置を有する端末機を待合室に設置するようにし,相違点2にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる かる技術的事項を適用し,患者による問診に対する回答を,待合室にて行わせるべく,入力装置を有する端末機を待合室に設置するようにし,相違点2にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。」と判断する。 しかし,本願発明は,問診に対する回答を行う手段が「携帯端末」であり,引用例3の「問診に対する回答を,患者に待合室にて行わせる。」ものとは限らない。 つまり,待合室に設置されていても使用場所を問わない携帯端末である本願発明の問診入力機器と,待合室に設置された固定端末であり,待合室でしか使用できない引用例3に記載の入力端末について使用箇所から同一の入力機器であると判断することは誤りである。 - 7 -したがって,引用発明に引用例3に記載の端末を採用しても本願発明のように場所を問わずに入力することは困難であり,両者の入力装置における使用場所の範囲が異なることは明白であり,引用発明に引用例3の発明についての使用場所を適用しても本願発明の入力端末の設置場所(使用場所)を判断することはできない。 したがって,審決の上記判断は誤りである。 (ウ) 相違点3についての判断の誤りa 審決は,「引用例4には,『患者が利用する端末機を携帯型とする。』という技術的事項が記載されている。そうすると,引用発明において,かかる技術的事項を適用し,患者の利用する端末機を携帯端末機器で構成するようにし,相違点3にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。」と判断する。 しかし,患者が利用する端末を携帯型とすることが記載されているからといって,引用発明の入力装置を携帯端末にすることができるというものではない。 本願出願時において,引用例4に記載されているように文字情報を送受信する携帯端末は一般的であったが,タッチ るからといって,引用発明の入力装置を携帯端末にすることができるというものではない。 本願出願時において,引用例4に記載されているように文字情報を送受信する携帯端末は一般的であったが,タッチパネル式の持ち歩けるような携帯端末は一般的でなく,引用発明や引用例3に記載されているような固定式のものを使用していたものである。 したがって,審決の上記判断は誤りである。 b この点に関し,被告は,特開平11-175258号公報(乙3,以下「乙3文献」という。)の段落【0007】及び特開2000-311145号公報(乙4。以下「乙4文献」という。)の段落【0113】の記載を引用して,本件出願時点でタッチパネルのある携帯端末は一般的なものであったと主張する。 しかし,乙3文献及び乙4文献は,本願の審査時や審判係属時に拒- 8 -絶理由として提示されたものでなく,本件審決取消訴訟において初めて引用されたものである。 しかも,乙3文献及び乙4文献における被告による指摘事項は明らかに周知技術ではなく,新たな拒絶理由についての引用例としての性格を有するものである。 したがって,審決の後に反論の機会を与えずに周知技術であると認定することは,特許法159条2項において準用する同法50条1項及び17条の2第1項1号の規定に違反する。 (エ) 相違点4についての判断の誤り審決は,相違点4に関し,「患者の利用する端末に,診察開始の通知,固有のメッセージによる通知,各診療科の待ち人数の通知を表示させる。」という技術的事項が記載されており,引用発明において,かかる引用例4に記載の技術的事項を適用し,患者が利用する端末機に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させるようにし,相違点4にかか 用発明において,かかる引用例4に記載の技術的事項を適用し,患者が利用する端末機に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させるようにし,相違点4にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。」と判断する。 しかし,本願発明では,引用例4に記載されているように単に患者に情報が送信されるだけでなく,問診事項などの受診情報などを患者から医療機関にかつタッチパネル方式で入力して送信することができるものであり,引用発明と全く趣旨の異なる引用例4の発明を適用しても本願発明における機能を有する携帯端末を容易に想到できるものではない。 したがって,審決の上記判断は誤りである。 (オ) 作用・効果についての判断の誤り進歩性は発明全体として奏する作用・効果等を含めて判断されるべきところ,審決のように,引用発明における本願発明との多数の相違点に- 9 -ついて,本願発明において他の技術的事項との関係でいかなる意義や作用・効果を発揮しているかを考慮せずに,単に他の発明の一部に用いられているという理由でそれを適用することは,当業者が適宜なし得ることであるという判断をすると特許される発明はほとんど皆無となってしまうことになるから,そのような判断は失当である。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3) の各事実は認めるが,(4)は争う。 3 被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 (1) 取消事由1に対し原告は,本願発明と引用発明との各相違点は不明ではなく明記してあるか記載していないものであり,それが不明であるとの審決の認定は誤りであると主張する。 しかし,進歩性の判断においては,通常,本願発明と引用発明を対比して一 との各相違点は不明ではなく明記してあるか記載していないものであり,それが不明であるとの審決の認定は誤りであると主張する。 しかし,進歩性の判断においては,通常,本願発明と引用発明を対比して一致点と相違点を抽出するところ,本願発明が備える構成のうち引用発明も備えることが明らかである構成は一致点とされ,それが明らかではない構成は相違点とされる。審決は,それぞれ以下のとおり,引用発明が開示される引用例1には記載されていないか,何らかの記載があってもそれが本願発明の構成と一致するとはいえない技術的事項を,引用発明ではそれが明らかでないとして,相違点として認定したことが明らかである。 したがって,原告の上記主張は失当である。 ア相違点1につき審決は,本願発明の「管理,受付部門および待合室にそれぞれ設けられた端末機」との事項については,引用例1には記載されているとはいえないことから,これを相違点1として認定した。 つまり,引用例1には,管理,受付部門および待合室に端末機を設ける- 10 -ことが記載されているとはいえないことから,これを審決では,相違点1として,「本願発明では,管理,受付部門および待合室に端末機が設けられているが,引用発明では,それが明らかでない」と認定したものである。 したがって,審決の相違点1の認定に誤りはなく,原告の主張は失当である。 イ相違点2につき審決は,引用例1には,外来受付端末を院内のどこに設置するかの記載がないことから,これを相違点2として,「本願発明では,入力装置を有する端末機が,待合室に設置されているが,引用発明では,院内のどこに設置されているのかが,明らかでない」と認定したものである。 したがって,審決の相違点2の認定に誤りはなく,原告の主張は失当である。 ウ相違点3 に設置されているが,引用発明では,院内のどこに設置されているのかが,明らかでない」と認定したものである。 したがって,審決の相違点2の認定に誤りはなく,原告の主張は失当である。 ウ相違点3につき確かに,引用例1では,自動問診装置が,A4版サイズ,タッチパネル画面付,プリンター内蔵型パソコンであり,この自動問診装置が外来受付端末に設けられる。 しかし,引用例1には,端末を携帯端末機器とすることが記載されているとはいえないことから,これを審決では相違点3として,「本願発明では,端末が,携帯端末機器であるのに対し,引用発明では,それが明らかでない」と認定した。 したがって,審決の相違点3の認定に誤りはなく,原告の主張は失当である。 エ相違点4につき審決は,引用例1には,端末の表示画面に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させることが記載されているとはいえないことから,これを相違点4として,- 11 -「本願発明では,端末の表示画面に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させるものであるのに対し,引用発明では,それが明らかでない」と認定したものである。 したがって,審決の相違点4の認定に誤りはなく,原告の主張は失当である。 (2) 取消事由2に対しア相違点1の判断につき原告は,「本願発明は,患者の問診情報を診察部門だけでなく管理,受付部門および待合室の端末機で利用することにより,例えば本願の願書に添付した明細書の段落【0023】に記載されているように診察の準備や優先的な誘導など診察までの手続などを効率よく行うことができるものであり,単に院内に多数の端末を設けて情報の使用を図るというものではない」と主張 の段落【0023】に記載されているように診察の準備や優先的な誘導など診察までの手続などを効率よく行うことができるものであり,単に院内に多数の端末を設けて情報の使用を図るというものではない」と主張する。 確かに,本願明細書の段落【0023】には,「入力された個人情報や受診情報は,受付に設置された端末機3の表示装置31にも表示させることができるので,患者が診察室に入るまでの間に,その患者が希望する検査や処置のための書類や器具,薬剤等を予め準備しておいて,診察時間の短縮を図ることができる。」と記載されている。 しかし,本願発明は,「個人情報および受診情報が,診察室に設置された端末機に送信される」との事項で特定されるにとどまるものであり,個人情報及び受診情報が,管理,受付部門の端末機に送信されて診察の準備や優先的な誘導などの診察までの手続を行うことまでは特定されていない。 そうすると,原告の上記主張は本願発明の構成に基づかないものであり,失当である。 また,原告は,「引用例2に記載の発明では問診事項に特化したサーバ- 12 -の記載はなく,受付部門に端末がないことからも引用例2に記載の発明の端末機構を引用発明に適用しても本願発明の相違点1にかかる構成とすることはできない。」と主張する。 しかし,審決は,相違点1を,端末機が設けられるのが管理,受付部門及び待合室であることを特定する点であると認定したものであって,審決の上記認定に誤りはないから,原告の上記主張も失当である。 イ相違点2の判断につき審決は,相違点2の容易想到性の判断をする際に,「病院内の情報システム」という引用発明と共通の技術分野に属する引用例3を引用し,そこに記載される技術的事項を認定したものであるところ,引用例1の「2. 2オペレーション」の項の記 の判断をする際に,「病院内の情報システム」という引用発明と共通の技術分野に属する引用例3を引用し,そこに記載される技術的事項を認定したものであるところ,引用例1の「2. 2オペレーション」の項の記載によれば,引用例1の自動問診装置は,患者が診療待ち時間に問診票に入力するものであると認められるところ,診療待ち時間に患者は待合室で待つことが普通であることから,引用発明に,引用例3の待合室で問診に対する回答を入力させるシステムを組み合わせる動機付けが働くということができる。 そこで審決は,引用発明に,引用例3の「問診に対する回答を,患者に待合室にて行わせる。」との技術的事項を適用して,患者が待ち時間を利用して問診に対する回答を入力する際に,待ち時間に患者が通常利用する待合室にて入力を行わせるべく,入力装置を有する端末機を待合室に設置するようにし,相違点2にかかる構成とすることは,当業者が容易想到であると判断したものであり,この認定判断に誤りはない。 ウ相違点3の判断につき(ア) 原告は,引用例4に患者が利用する端末を携帯型とすることが記載されているからといって,引用発明の入力装置を携帯端末にすることができるというものではない旨主張する。 しかし,原告の上記主張は失当である。 - 13 -すなわち,引用例4には,病院内の情報システムであって,受付けで診察カードにより外来患者が特定され,その特定された外来患者に専用の携帯型の端末機が発行されること,これにより,その患者の診察開始の通知や,メッセージ等を表示させることにより,患者が診察待ちの間,診察室の前で待つ必要がなくなることが記載されており,他方,引用発明の病院内の情報システムも,外来受付でIDカード番号により特定された患者が,問診の回答を入力するものであり,その間,問診の ちの間,診察室の前で待つ必要がなくなることが記載されており,他方,引用発明の病院内の情報システムも,外来受付でIDカード番号により特定された患者が,問診の回答を入力するものであり,その間,問診の回答を入力する端末はその患者の専用のものとなる。 また,一般に,患者は,診療待ち時間に,問診の回答を記入する際,問診の回答を座って記入できる場所や,混雑時には受付から離れた空いた場所など自由な場所で記入したいという動機付けが働く。 してみると,引用発明の問診の回答を入力する端末機を,患者が自由な場所で入力できるようにするべく,その端末機を引用例4の携帯端末機器で構成するようにし,相違点3にかかる構成とすることは当業者が想到容易であるとした審決の判断に誤りはない。 (イ) 原告は,本件出願時にタッチパネル式の持ち歩けるような携帯端末は一般的ではなかったと主張する。 しかし,例えば,乙3文献の段落【0007】には,指タッチ操作用高解像度タッチ画面ディスプレイを有するインテリジェント型携帯通信装置の記載があり,また,乙4文献の段落【0113】には,通信機能を有する携帯情報端末(PDA)は入力装置としてタッチパネルを持っていることが記載されている。 以上のとおり,本件出願時点でそのような携帯端末は一般的なものであったことから,原告の上記主張は失当である。 エ相違点4の判断につき原告は,引用発明と全く趣旨の異なる引用例4の発明を適用しても本願- 14 -発明における機能を有する携帯端末を容易に想到することができるものではない旨主張する。 しかし,そもそも引用例4の携帯端末は,その端末を持ち歩く患者専用の案内を表示させるものであるから,引用発明の問診の回答を入力する端末機をその患者専用の自由に持ち歩ける携帯端末とするので する。 しかし,そもそも引用例4の携帯端末は,その端末を持ち歩く患者専用の案内を表示させるものであるから,引用発明の問診の回答を入力する端末機をその患者専用の自由に持ち歩ける携帯端末とするのであれば,その端末に,その患者専用の案内を表示させようとする動機付けが働く。 このことから,引用発明に,引用例4の「患者の利用する端末に,診察開始の通知,固有のメッセージによる通知,各診療科の待ち人数の通知を表示させる。」との技術的事項を適用し,患者が利用する端末機に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させるようにし,相違点4にかかる構成とすることは当業者が想到容易であるとした審決の判断に誤りはない。 したがって,原告の上記主張は失当である。 オ 「作用・効果の判断の誤り」につき原告は,進歩性は発明全体として奏する作用・効果等を含めて判断されるべきところ,審決のように,引用発明における本願発明との多数の相違点について,本願発明において他の技術的事項との関係でいかなる意義や作用・効果を発揮しているかを考慮せずに単に他の発明の一部に用いられているという理由で,それを適用することは当業者が適宜なし得ることであるという判断をすると,特許される発明はほとんど皆無となってしまうことになると主張する。 しかし,審決は,本願発明が,複数の技術的事項からなるものではあるものの,それらの技術的事項が,それぞれ独立してまとまりのある技術的事項であること,それらの技術的事項が結合しても,その奏する作用・効果が,それらの技術的事項に基づいて当業者が予測できる範囲であること,これらのことから想到容易性を判断し,相違点1~4にかかる作用・- 15 -効果について,「第4 対比・判断」の「4 まとめ」で「引用 それらの技術的事項に基づいて当業者が予測できる範囲であること,これらのことから想到容易性を判断し,相違点1~4にかかる作用・- 15 -効果について,「第4 対比・判断」の「4 まとめ」で「引用発明及び引用例2,3,4に記載の技術的事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。」と,作用・効果を含めて判断したものであるから,原告の上記主張は失当である。 第4 当裁判所の判断 1 請求原因(1) (特許庁における手続の経緯),(2) (発明の内容),(3) (審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 2 容易想到性の有無審決は,本願発明は引用発明(甲1)及び引用例2ないし4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できるとし,一方,原告はこれを争うので,以下検討する。 (1) 本願発明の意義ア本願明細書(特許請求の範囲については平成22年12月13日付け手続補正書のもの〔甲6-9〕,発明の詳細な説明の段落【0008】ないし【0011】については平成20年1月31日付け手続補正書のもの〔甲6-3〕,その他の記載及び図面については出願当初明細書のもの〔公開特許公報,甲5〕)には,次の記載がある。 (ア) 特許請求の範囲【請求項1】 前記第3,1(2)のとおり。 (イ) 発明の詳細な説明・【発明の属する技術分野】「本発明は,患者が医療機関を受診する際,初診時に問診される体質や病歴,薬歴等の個人情報や,初診時および再診時に問診される症状や受診目的等の受診情報の入力システムに関し,殊に,患者自身がそれらの情報を入力して,診察室の表示装置に表示させる問診票入力システムに関するものである。」(段落【0001】)- 16 -・【発明が解決しようとする課題】「しかしながら,個人情報を問診票に記入 情報を入力して,診察室の表示装置に表示させる問診票入力システムに関するものである。」(段落【0001】)- 16 -・【発明が解決しようとする課題】「しかしながら,個人情報を問診票に記入する場合,患者の情報をデータベース化するためには,受付担当者や看護士等が,問診票の内容をコンピュータに入力し直さなければならず,入力従事者の業務を増やしてしまっていた。同様に,受診情報を受付担当者等に申告する場合にも,入力従事者の手間を要するとともに,患者にとっては,医師に正しく伝わるかどうか確認することができなかった。」(段落【0005】)・「また,これらの情報を診察時に医師に申告する場合には,問診のための時間が余計にかかってしまううえ,患者が診察を受けるまでの間に,医師や看護士等が必要な書類や手続き等を準備しておくことができないため,診察時間が長くなり,殊に混雑した医療機関では,更なる混雑を招き,患者の待ち時間を長引かせる要因となってしまうことがあった。」(段落【0006】)・「本発明は,上記の問題点を解決するためになされたものであり,患者の体質や病歴等の個人情報や受診目的等の受診情報を,医療関係従事者の手間を要することなく,患者自身が,受診前に容易に入力することができるシステムを提案するものである。」(段落【0007】)・【課題を解決するための手段】「そこで,本発明は,医療機関に設置された記憶装置および制御装置を備えたサーバと,管理,受付部門,診察室および待合室にそれぞれ設けられた端末機と,待合室に設置された患者が自分の情報を入力するための入力装置を有する端末機と,前記サーバと各端末との間に設置される通信手段とを有し,医療機関を受診する患者が,受診前に,体質や病歴,薬歴等の個人情報および症状や受診目的等の受診情報を 入力するための入力装置を有する端末機と,前記サーバと各端末との間に設置される通信手段とを有し,医療機関を受診する患者が,受診前に,体質や病歴,薬歴等の個人情報および症状や受診目的等の受診情報を入力装置によって入力すると,個人情報および受診情報が,医療機関- 17 -のサーバへ送信されるとともに診察室に設置された端末機に送信可能とし,これを表示画面に表示し,或いは印刷して観察するシステムにおいて,前記待合室に設置された端末が有する入力装置が表示画面を有しタッチ入力可能であるとともに,前記表示画面に表示された項目の中から患者自身にあてはまるものを選んで,指またはペン等で表示画面の所定位置を押して受診情報を入力することにより,患者の入力に関する負担を軽減した。」(段落【0008】:甲6-3)・「また,待合室に設置される端末が待合室に設置された椅子に設置されていることにより患者が待合室の椅子に座ったままで入力可能として患者が楽な姿勢で入力可能とした。」(段落【0009】:甲6-3)・「待合室に設置された端末機の入力装置を利用して,待合室に設置された端末の表示画面に,前記サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させることにより患者へ的確な情報を与えて患者の負担を軽減させたり,不安を解消したりすることができる。」(段落【0010】:甲6-3)・「待合室に設置される端末が携帯端末機器である場合には,患者が待合室内であれば場所を問わずに入力することができる。」(段落【0011】:甲6-3)・【発明の実施の形態】「図1は本発明のシステムを示す概略図である。」(段落【0013】) - 18 -・【図1】(本発明の実施の形態を示す概略図) 明の実施の形態】「図1は本発明のシステムを示す概略図である。」(段落【0013】) - 18 -・【図1】(本発明の実施の形態を示す概略図) ・「医療機関には,記憶装置および制御装置を備えたサーバ10が設置されていて,例えばLAN等によって,管理,受付部門および診察室にそれぞれ設けられた端末機3,4と接続されている。また,待合室には,患者が自分の情報を入力するための入力装置22が備えられた端末機2が設置されていて,入力情報をサーバ10に送信することができる。更に,サーバ10は,インターネットを介して,一般のパソコン5や,インターネットに接続可能な携帯電話等の携帯端末機器6からも接続できるようになっている。」(段落【0014】)・「端末機2は,例えば待合室の椅子に設置されていて,表示画面21と,表示画面21上の所定位置を指または専用のペン等で押すことによってタッチ入力可能な入力装置22が設けられていて,患者は,表示画面21に表示される指示に従って情報を入力する。入力は,通常,患者自身によって行われ,患者自身ができない場合や小さい子供等の場合には,介助者や付添者等によって行われる。」(段落【0015】)・「入力方法は,タッチ入力には限らず,例えばテンキーを用いて,あてはまる項目の番号のキーを押すような方法等でも構わない。更に,- 19 -必要に応じて,文字入力ができるように,キーボードを併用してもよい。」(段落【0016】)・「また,端末機2は,上記のような椅子に備え付けられるものに限ることはなく,例えば待合室の一角に設置されていて,そこに座って入力したり,携帯型のものを受付で手交され,待合室内で入力したりするものでもよい。尚,携帯型の端末機2の場合には,例え けられるものに限ることはなく,例えば待合室の一角に設置されていて,そこに座って入力したり,携帯型のものを受付で手交され,待合室内で入力したりするものでもよい。尚,携帯型の端末機2の場合には,例えばPHS回線等を利用して,端末機2からサーバ10へ,無線で入力情報が送信されるようにする。」(段落【0017】)・「端末機2の表示画面21には,図2に示すように,例えば「頭が痛い」「関節が痛い」等,症状を示す項目が列記されていて,表示された項目の中から患者自身にあてはまるものを選んで,指またはペン等で表示画面21の所定位置を押し,受診情報を入力する。また,受診情報には,症状の他,例えば「投薬のみ」「検査のみ」等の目的で来院した場合のような来院目的に関する項目や,患者が乳幼児の場合等,詳細な症状が不明な場合に選択する「乳幼児等の不調」の項目等が設けられていて,それぞれの目的に応じた項目を選択して入力するようにされている。」(段落【0018】)・【図2】(受診情報の入力画面の一例を示す正面図) ・「そして,一項目を選択して入力する毎に,必要に応じて,更に詳しい症状や普段の体調等に関する項目が表示画面21に表示され,図3- 20 -に示すように徐々に症状を詳細に特定していくような問診項目が設定されているので,患者または介助者は,あてはまる項目を順次選択して,受診情報を入力していく。」(段落【0019】)・【図3】(受診情報の問診内容を示すブロック図) ・「更に,患者が初診の場合には,受診情報に加えて,個人情報として,患者のアレルギー歴等の体質,主な病歴,副作用や常用薬等の薬歴,日常の生活環境,嗜好等の問診内容が,図4に示すように表示画面21に表示されるので が初診の場合には,受診情報に加えて,個人情報として,患者のアレルギー歴等の体質,主な病歴,副作用や常用薬等の薬歴,日常の生活環境,嗜好等の問診内容が,図4に示すように表示画面21に表示されるので,指示に従って入力していく。」(段落【0020】) - 21 -・【図4】(個人情報の入力画面の一例を示す正面図) ・「患者は,受付後に,待合い時間を利用し,椅子に座って,これらの受診情報および個人情報を入力する。必要事項の入力が済むと,入力された各情報は,LAN等の通信手段によって,医療機関に備えられたサーバ10に送信され,患者毎に情報が管理されるとともに,診察時には,診察室に設置された端末機4の表示装置41に,患者の個人情報および受診情報を表示させることができる。」(段落【0021】)・「更に,受診情報が送信されると同時に,各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等を,サーバ10から端末機2へ送り,表示画面21に表示させるようにすれば,患者への受診案内として利用することもできる。」(段落【0022】)・「入力された個人情報や受信情報は,受付に設置された端末機3の表示装置31にも表示させることができるので,患者が診察室に入るまでの間に,その患者が希望する検査や処置のための書類や器具,薬剤等を予め準備しておいて,診察時間の短縮を図ることができる。更に,- 22 -受付担当者がこれらの情報を見ることによって,患者の症状が極めて重いと判断された場合には,優先的に診察したり,待合室からベッドに誘導したりすることができる。更にまた,待合室の端末機2に,気分が悪い場合等に看護士を呼ぶための呼出ボタンを設けてもよい。」(段落【0023】)・「また,患者が,例えば患者登 待合室からベッドに誘導したりすることができる。更にまた,待合室の端末機2に,気分が悪い場合等に看護士を呼ぶための呼出ボタンを設けてもよい。」(段落【0023】)・「また,患者が,例えば患者登録等を行って識別番号やパスワード等を得ることによって,個人のパソコン5や携帯端末機器6から,インターネットを介して医療機関のサーバ10に情報を送ることができるようにすれば,例えば自宅や職場等から受診情報を送信することによって,診察の予約手続きをすることができる。この場合,医療機関のサーバ10からパソコン5や携帯端末機器6へ,診察待ちの人数や診察可能時刻等を通知するようにすれば,患者は,自分の診察時間に合わせて通院し,待ち時間を大幅に短縮させることができる。」(段落【0024】)・【発明の効果】「本発明によると,患者の個人情報や受診情報を自分で入力することができるので,患者自身の情報を正しく且つ迅速に医師に伝えられるうえ,医療機関従事者の業務が軽減される。」(段落【0025】)・「しかも,医師や看護士等が,患者の受診情報を診察前に予め知ることができるので,患者が診察室に入る前に診察のための準備をしておくことができ,診察時間の短縮を図ることができる。従って,医療機関の混雑を緩和することができる。」(段落【0026】)・「また,入力装置を待合室に備え付けることにより,患者の待ち時間を利用して,個人情報および受診情報を入力することができる。」(段落【0027】)・「更に,インターネットを介して,パソコンや携帯端末機器で個人情- 23 -報や受診情報を入力可能とすれば,自宅や職場等から,医療機関へ各情報を送信してから通院することができるので,患者の待ち時間を短縮することができる。」(段落【0028】)イ上記記載によれば,本 報や受診情報を入力可能とすれば,自宅や職場等から,医療機関へ各情報を送信してから通院することができるので,患者の待ち時間を短縮することができる。」(段落【0028】)イ上記記載によれば,本願発明は,患者の受診情報の入力システムに関し,患者の情報をデータベース化するために入力従事者の手間を要し,医師に正しく伝わるかどうかを患者に確認することができなかったこと,また,問診のための時間が余計にかかるとともに,患者が診察を受けるまでの間に,医師等が診察の準備をしておくことができず,診察時間が長くなり,患者の待ち時間を長引かせるという課題を解決するために,特許請求の範囲請求項1記載の構成(本願発明)を採用することによって,患者の個人情報や受診情報を自分で入力することができ,患者自身の情報を正しくかつ迅速に医師に伝えられる上,医療機関従事者の業務が軽減され,しかも,医師や看護士等が,患者の受診情報を診察前に予め知ることができるので,患者が診察室に入る前に診察のための準備をしておくことができ,診察時間の短縮を図ることができ,また,入力装置を待合室に備え付けることにより,患者の待ち時間を利用して,個人情報及び受診情報を入力することができる問診票入力システム,という発明であると認めることができる。 (2) 引用発明の意義ア引用例1(甲1)には,次の記載がある。 (ア)「1.はじめに外国人医療用に開発された自動問診装置が一般外来の問診にも応用可能と評価できたので,自院に適合した問診内容に特化した後,院内医療情報システムに接続し,自動問診装置により得られた患者の病歴等のデータを医師や職員の負担なく電子カルテに直接反映するシステムを構築した。」(306頁左欄1行~7行)- 24 -(イ)「2.システムの概要2.1システム構成 置により得られた患者の病歴等のデータを医師や職員の負担なく電子カルテに直接反映するシステムを構築した。」(306頁左欄1行~7行)- 24 -(イ)「2.システムの概要2.1システム構成予めサーバー内の患者基本データファイルに,初診,再診ごとの問診記録ぺージを設定し,システム機器構成図(図1)のように院内医療情報システムの外来受付端末へ,自動問診装置をケーブル(RS-232C)にて接続した。」(306頁左欄8行~14行)【図1】(システム機器構成図) (ウ)「2.2オペレーション患者が診療待ち時間に,外来受付端末のカードリーダーよりIDカード番号を入力すると,サーバーから患者基本データとして登録番号,患者氏名,生年月日(年齢)が自動問診装置にダウンロードされ,患者がフレーム(画面に枠取り)キーの[確認]にタッチすると問診が開始される。最後の質問への回答が入力されると回答結果はインターフェイスを介して院内医療情報システムのサーバーに自動伝送される。医師が診療端末に患者のID番号を入力すると患者基礎データとともに問診結果が表示される。」(306頁左欄15行~26行)(エ)「2.3自動問診のしくみ図2に示すように,[画面1]で表示されるフレームキー[診療(初めて来た)]にタッチすると[画面2]のような質問文と回答用フレームキーを表示し,回答が選択されると,所定の論理に基づいて予め回答- 25 -ごとに準備している次質問を表示する。問診結果は医師が素早く病状を判断できるよう,主訴と発症時期を冒頭に表形式で表示し,以下に現病歴,アレルギー,既往歴,家族歴,生活習慣を区分表示する。問診レベルは医師の判断によりプリセット方式で選択できる。患者が外国人の場合,オペレーションモードを切り替え 冒頭に表形式で表示し,以下に現病歴,アレルギー,既往歴,家族歴,生活習慣を区分表示する。問診レベルは医師の判断によりプリセット方式で選択できる。患者が外国人の場合,オペレーションモードを切り替えれば5ケ国語で日本人と同じ問診を行う。」(306頁右欄1行~13行)・【図2】(自動問診装置の画面) (オ)「2.4自動問診装置の仕様A4版サイズ,タッチパネル画面付,プリンター内蔵型パソコン。CPU:32bitMPU,OS:DR-DOS(DOS/V),メモリー:本体2MB+拡張10MB(PCMCIA・PCカード)。全てのソフトウェアをPCカードに格納している。」(306頁右欄14行~19行)イ上記記載によれば,引用発明は,審決が認定したとおり,「院内に設置された記憶装置および制御装置を備えたサーバーと,診療端末と,自動問診装置が接続された外来受付端末と,前記サーバーと各端末との間に設置される通信手段とを有し,患者が,診察待ち時間に,主訴,発症時期,現- 26 -病歴,アレルギー,既往歴,家族歴,生活習慣及び,どのような病気のために診察に来たかの情報を含む回答を,自動問診装置によって入力すると,その回答結果が院内医療情報システムのサーバーへ自動伝送されるとともに,問診結果が,医師の診療端末に伝送される院内医療情報システムにおいて,前記自動問診装置は,タッチパネルを有し,表示された回答用フレームキーを選択することで,前記回答の入力ができることを特徴とする院内医療情報システム。」という発明であると認めることができる。 (3) 引用例2ないし4に記載の技術的事項の内容ア引用例2(ア) 引用例2(甲2)には,次の記載がある。 ・【発明の属する技術分野】「本発明は,病院などの医療機関に ることができる。 (3) 引用例2ないし4に記載の技術的事項の内容ア引用例2(ア) 引用例2(甲2)には,次の記載がある。 ・【発明の属する技術分野】「本発明は,病院などの医療機関において利用される医療情報システム及びそれに用いられる患者用端末装置に関する。」(段落【0001】)・【発明の実施の形態】「図1において,医療情報システム1は,医事サーバ11,カルテサーバ12,検査サーバ13,図示しないその他の種々のサーバ,情報送出装置18,事務端末21,ドクター端末22a,22b・・・,ナース端末23a,23b・・・,検査端末24,栄養端末25,薬剤端末26,患者端末27a,27b・・・,図示しないその他の端末,及びこれらを互いに接続するネットワークNWなどから構成される。ネットワークNWは,外部の他のネットワーク又はインターネットなどに接続可能である。なお,ドクター端末22a,22b・・・,ナース端末23a,23b・・・,又は患者端末27a,27b・・・の全体又は一部を,「ドクター端末22」「ナース端末23」「患者端末27」などと記載することがある。」(段落【0017】)- 27 -・【図1】(本発明に係る医療情報システムのブロック図) ・「医事サーバ11には,医療事務に関する種々の情報,会計処理に関する情報,患者の受診管理及び入院管理に関する種々の情報,病院の施設又は業務に関する種々の情報などが格納される。カルテサーバ12には,患者の診察情報(いわゆるカルテ情報)が格納される。検査サーバ13には,検体検査,病棟検査,食事検査,放射線検査など,種々の検査の結果の情報,検査に必要な情報などが格納される。なお,患者に投薬する薬剤に関する情報,患者に出す食事及び栄養 納される。検査サーバ13には,検体検査,病棟検査,食事検査,放射線検査など,種々の検査の結果の情報,検査に必要な情報などが格納される。なお,患者に投薬する薬剤に関する情報,患者に出す食事及び栄養に関する情報,患者に対する指示に関する情報などは,これらのいずれかのサーバ,又は他のサーバに格納される。」(段落【0018】)・「情報送出装置18は,病院内において利用される種々の情報,例えば病院内での患者の快適な生活を支援するための患者アメニティ情報,患者の治療上の注意点などを分かりやすく説明するためのインフォームドコンセント情報,その他の情報を,各種端末特に患者端末27に対して送出する。患者アメニティ情報として,例えば,病院内の- 28 -生活情報,食事情報,施設案内,医師の紹介のための情報,病院内外の景色や環境に関する映像情報又は音楽情報(コンテンツ),テレビ番組やラジオ番組のコンテンツなどがある。」(段落【0019】)・「事務端末21は,会計処理,患者の受付処理,外来患者及び入院患者についてのその他の種々の処理,病院における施設及び物品の管理のための処理,その他の処理を行うためのものであり,多数の事務端末21が,事務部門,会計部門,受付部門などに設置される。」(段落【0020】)(イ) 上記記載によれば,引用例2には,医療機関における医療情報システムにおいて,医事サーバ,カルテサーバ等の種々のサーバ,事務端末,ドクター端末,ナース端末,検査端末等の各種端末,及びこれらを互いに接続するネットワークなどから構成される医療情報システムであって,会計処理,患者の受付処理,外来患者及び入院患者についてのその他の種々の処理,病院における施設及び物品の管理のための処理,その他の処理を行うため,多数の事務端末が,事務部門,会計部門,受 であって,会計処理,患者の受付処理,外来患者及び入院患者についてのその他の種々の処理,病院における施設及び物品の管理のための処理,その他の処理を行うため,多数の事務端末が,事務部門,会計部門,受付部門などに設置される,という技術的事項が記載されていると認めることができる。 イ引用例3(ア) 引用例3(甲3)には,次の記載がある。 ・「図2は,本実施例における処理を示すフローチャートであり,図3及び図4は,上記処理によるディスプレイ上での画面展開を示す。まず,待合い室等に設置された問診システム12で,患者が問診を受けて答えを入力する(ステップ20)。次にその問診情報が問診システムの問診情報データベースに登録され,ネットワーク等で診察室に送られる(ステップ21)。医師が電子カルテ上で問診済みの患者を指定すると,図3や図4の様な電子カルテ画面を表示する。図3は,患者- 29 -の経過記録の入出力を行う画面で,患者の現在持つ問題点を入力するプロブレム入出力部133,診察日毎に経過記録を入力するためのS,O,A,P各入出力部1320,1321,1322,1323,当日のオーダ内容を表示するオーダ情報表示部30から構成される。 また図4は,病歴等の患者の基本情報の入出力を行う画面で,左側のタブで経過記録画面との切り替えを行う。」(段落【0013】)・【図2】(本発明の実施例での問診情報表示時のフローチャート) ・【図3】(本発明の実施例での問診情報表示時の画面例を示す図) - 30 -・【図4】(本発明の実施例での問診情報表示時の画面例を示す図) (イ) 上記記載によれば,引用例3には,待合室に設置された問診システム - 30 -・【図4】(本発明の実施例での問診情報表示時の画面例を示す図) (イ) 上記記載によれば,引用例3には,待合室に設置された問診システムで,患者が問診を受けて答え(問診情報)を入力し,入力された問診情報は,問診情報データベースに登録され,ネットワーク等で診察室に送られるという技術的事項が記載されていると認めることができる。 ウ引用例4(ア) 引用例4(甲4)には,次の記載がある。 ・「要旨病院に診療のために訪れる外来の患者は,呼出し受信機(外来患者専用PHS端末)の貸出しを受け,受付けから診察までの間携帯する。 呼出し受信機は,患者氏名,診察待ち時間,順番や診察開始の通知などを患者に表示や呼出し音で知らせることができる。このため,患者は診察待ちの間,病院内を自由に動くことが可能になり,診察室の前で待つ必要がなくなる。さらに,病院側では患者呼出しの手間が省けると同時に,静かな環境が実現できる。 また,本システムは無線方式として事業所PHSのプロトコルを採用しているため,事業所PHS端末も併用可能である。したがって,- 31 -医者,看護婦や職員に事業所PHS端末を携帯させることにより,病院業務の効率化と向上もはかれる。」(55頁上欄1行~10行)・「本システムでは,外来患者は病院へ来ると,まず診療カードを再来受付け機に挿入する。すると,再来受付け機から呼出し受信機(DCD)が自動的に発行され,それを受け取った患者はDCDの表示や呼出しに従い,円滑な順番待ち・診察呼出しを受けることができる。 さらに,本システムは事業所PHSの併用が可能のため,事業所PHSを活用したさまざまなアプリケーション展開(PHSナースコールシステム連動,ワイヤレスデータ通信など) しを受けることができる。 さらに,本システムは事業所PHSの併用が可能のため,事業所PHSを活用したさまざまなアプリケーション展開(PHSナースコールシステム連動,ワイヤレスデータ通信など)を実現することができる。 本システムの特長は,次のとおりである。 (1) 患者呼出し機能従来の放送スピーカからの音声一斉呼出しと異なり,DCD一台ごとに呼出し通知ができる。呼出し方法は,メロディ鳴動やバイブレーション(振動着信)が選択できる。また,通常の呼出し通知とは別に,診察室のパソコンなどから特定のDCDに対して固有のメッセージを通知することもできる。 (2) 待ち人数通知機能患者の待ち順番を,DCDに表示することができるため,患者のいらいら解消が実現できる。 (3) 呼出し確認機能患者が呼出しを受けたとき,DCDの確認ボタンを押下すると,診察室などの呼出し側で呼出しが確実に伝達されたことを確認できる。」(55頁右欄6行~56頁左欄19行) - 32 -・【第1図】(外来患者呼び出しシステムの運用例) (イ) 上記記載によれば,引用例4には,患者の利用する端末に,診察開始の通知,固有のメッセージによる通知,各診療科の待ち人数の通知を表示させること,及び患者が利用する端末機を携帯型とするという技術的事項が記載されていると認めることができる。 (4) その他の文献の内容ア乙3文献(ア) 乙3(特開平11-175258号公報発明の名称「インテリジェント型携帯通信装置用タッチ画面ディスプレイを使用する方法および装置」,公開日平成11年7月2日)には,次の記載がある。 ・「本発明の目的は,セルラー電話機を有し,マウスなどのポインティング装 ェント型携帯通信装置用タッチ画面ディスプレイを使用する方法および装置」,公開日平成11年7月2日)には,次の記載がある。 ・「本発明の目的は,セルラー電話機を有し,マウスなどのポインティング装置を必要としない指タッチ操作用高解像度タッチ画面ディスプレイを有するインテリジェント型携帯通信装置を提供することである。」(段落【0007】)(イ) 上記記載によれば,乙3文献には,インテリジェント型携帯通信装置において指タッチ操作用高解像度タッチ画面ディスプレイを使用す- 33 -る技術的事項が開示されている。 イ乙4文献(ア) 乙4(特開2000-311145号公報発明の名称「スケジュール管理装置および方法,およびスケジュール管理プログラムを格納した記憶媒体」,公開日平成12年11月7日)には,次の記載がある。 ・「ここで,上記のようなハードウエア構成を有する携帯端末1002としては,例えば,通信機能を有する携帯情報端末(PDA)がある。 このようなPDAは,典型的には,送受信装置1009としてPHS端末を,表示装置1012として液晶パネルを,入力装置1015としてタッチパネルを持っている。」(段落【0113】)(イ) 上記記載によれば,乙4文献には,通信機能を有する携帯情報端末(PDA)は典型的に入力装置としてタッチパネルを持っているとの技術的事項が開示されている。 (5) 原告主張の取消事由に対する判断ア取消事由1(各相違点認定の誤り)について(ア) 相違点1原告は,「審決は,相違点1につき『引用発明では管理,受付部門および待合室に端末機が設けられているか明らかでない』と認定するが,引用発明では,『管理,受付部門および待合室に端末機が設けられている』と記載されていないことは明らかであるから,このような認 付部門および待合室に端末機が設けられているか明らかでない』と認定するが,引用発明では,『管理,受付部門および待合室に端末機が設けられている』と記載されていないことは明らかであるから,このような認定は失当である」と主張する。 しかし,引用発明には,「診察室に設けられた端末機」と「患者が自分の情報を入力するための入力装置を有する端末機」が記載されているものの,「管理,受付部門および待合室に端末機が設けられている」ことは記載されていないところ,「管理,受付部門および待合室に端末機が設けられている」との記載のないことが,「管理,受付部門および待- 34 -合室に端末機が設け」ることを排除する趣旨とは解されず,また,前記認定の引用発明の意義からすれば,「管理,受付部門および待合室に端末機が設け」られても引用発明が機能しなくなるものではないから,審決が「引用発明では管理,受付部門および待合室に端末機が設けられているか明らかでない」と認定したことを誤りとすることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 相違点2原告は,「審決は,相違点2につき『引用発明では,入力装置を有する端末機が,院内のどこに設置されているのかが,明らかでない』と認定するが,引用発明では,『入力装置が院内の外来受付端末に設置した』旨が明記されており,『明らかでない』という認定は失当である」と主張する。 しかし,引用例1には,引用発明の入力装置を有する端末機である自動問診装置は,外来受付端末へケーブルで接続され,外来受付端末のカードリーダーにIDカード番号を入力すると,患者基本データが自動問診装置にダウンロードされ,問診が開始されることから,自動問診装置は,外来受付端末の近傍に設置されているものと認められる。 外来受付端 リーダーにIDカード番号を入力すると,患者基本データが自動問診装置にダウンロードされ,問診が開始されることから,自動問診装置は,外来受付端末の近傍に設置されているものと認められる。 外来受付端末が設置される外来受付と,待合室との位置関係は必ずしも明らかではないが,医療機関を受診する患者の待合室は,外来受付に近接して設けられる場合があること,外来受付の付近で患者が診察を待つ場合があることは,経験則上明らかである。 また,試行的運用として,千葉大学医学部附属病院第二内科外来受付に設置したことが記載されているが,自動問診装置が待合室に設置されることは記載されていない。 以上の点を考慮すれば,「引用発明では,入力装置を有する端末機が,院内のどこに設置されているのかが,明らかでない」とした審決の認定- 35 -が誤りということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 相違点3原告は,「審決は,相違点3につき『引用発明では,端末が,携帯端末機器であるか明らかでない』と認定するが,『引用発明では,端末はA4版サイズ,タッチパネル画面付きパソコンであり,携帯端末機器でない』ということは明白である」と主張する。 確かに,引用発明の自動問診装置は,A4版サイズ,タッチパネル画面付きパソコンであり,携帯端末機器でない可能性が高いとはいえるが,携帯端末機器ではないとの明示の記載はないし,結局は,「携帯端末機器」であるか否かを相違点として認定しているのであるから,これを「携帯端末機器であるか明らかでない」と認定したからといって,審決の結論に影響を及ぼすほどの誤りとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (エ) 相違点4原告は,引用発明では,「端末の表示画面に,サー 定したからといって,審決の結論に影響を及ぼすほどの誤りとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (エ) 相違点4原告は,引用発明では,「端末の表示画面に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させること」が記載されていないから,審決がこれを「それが明らかでない」と判断したことは失当であると主張する。 しかし,引用発明の端末である自動問診装置の表示画面に,サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させることが記載されていないことは,それらの表示がされることを排除するものとは断定できないから,審決がこれを「それが明らかでない」と認定したことが誤りといえないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ取消事由2(各相違点についての判断の誤り)について- 36 -(ア) 相違点1についての判断の誤りにつきa 引用例2には,医療機関における医療情報システムにおいて,医事サーバ,カルテサーバ等の種々のサーバ,事務端末,ドクター端末,ナース端末,検査端末等の各種端末,及びこれらを互いに接続するネットワークなどから構成される医療情報システムであって,会計処理,患者の受付処理,外来患者及び入院患者についてのその他の種々の処理,病院における施設及び物品の管理のための処理,その他の処理を行うため,多数の事務端末が,事務部門,会計部門,受付部門などに設置されることが記載されている。 そして,引用発明の自動問診装置が接続された院内医療情報システムと,引用例2の医療機関における医療情報システムは,いずれも病院などの医療機関に設置される院内医療情報システムである点で共通するとともに,引用 引用発明の自動問診装置が接続された院内医療情報システムと,引用例2の医療機関における医療情報システムは,いずれも病院などの医療機関に設置される院内医療情報システムである点で共通するとともに,引用発明の院内医療情報システムに「管理,受付部門および待合室に端末機が設け」ることを排除するものではなく,また「管理,受付部門および待合室に端末機が設け」られても,引用発明が機能しないものではないから,引用発明に引用例2に記載の技術事項を適用することに阻害要因は認められない。 そうすると,相違点1は,引用発明に,引用例2に記載の事項を適用することにより,容易に想到しうるものであるから,この点に関する審決の判断に誤りはない。 b この点に関し原告は,「本願発明は,患者の問診情報を診察部門だけでなく管理,受付部門および待合室の端末機で利用することにより,例えば本願の願書に添付した明細書の段落【0023】に記載されているように診察の準備や優先的な誘導など診察までの手続などを効率よく行うことができるものであり,単に院内に多数の端末を設けて情報の使用を図るというものではないのに対して,引用例2に記- 37 -載の発明では問診事項に特化したサーバの記載はなく,受付部門に端末がないことからも引用例2に記載の発明の端末機構を引用発明に適用しても本願発明の相違点1にかかる構成とすることはできない」と主張する。 しかし,本願明細書の段落【0023】の記載を考慮しても,本願発明は,端末機が「管理,受付部門,診察室および待合室にそれぞれ設けられ」,及び「入力された個人情報および受診情報(問診情報)は,医療機関のサーバへ送信されるとともに診察室に設置された端末機に送信される」との事項で特定されるにとどまるものであって,個人情報および受診情報が,管理,受付 た個人情報および受診情報(問診情報)は,医療機関のサーバへ送信されるとともに診察室に設置された端末機に送信される」との事項で特定されるにとどまるものであって,個人情報および受診情報が,管理,受付部門の端末機に送信されて,診察の準備や優先的な誘導などの診察までの手続を行うことまで特定されているとは認められない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 c また,原告は,「引用例2に記載の医療情報システムは本願発明や引用例1に記載の自動問診装置を用いるという目的は一切考えられずに入院患者を対象とした,特に回診に便利な医療情報システムとして発明されて特許出願されたものであり,そのような医療情報システムに引用例1に記載の自動問診装置を適用する余地はない」と主張する。 しかし,前記引用例2の記載事項によれば,引用例2の医療情報システムが備える医事サーバには,医療事務に関する種々の情報,会計処理に関する情報,患者の受診管理及び入院管理に関する種々の情報,病院の施設又は業務に関する種々の情報などが格納され,カルテサーバには,患者の診察情報(いわゆるカルテ情報)が格納されることが記載されているから,引用例2の医療情報システムは,入院患者のみならず,受診する患者の受診管理や,患者の診察にも用いられる- 38 -ものであることは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 相違点2についての判断の誤りにつきa 引用例3には,待合室に設置された問診システムで,患者が問診情報を入力し,入力された問診情報が問診情報データベースに登録され,ネットワーク等で診察室に送られることが記載されている。 そして,引用発明の自動問診装置が接続された院内医療情報システムと引用例3の問診システムは された問診情報が問診情報データベースに登録され,ネットワーク等で診察室に送られることが記載されている。 そして,引用発明の自動問診装置が接続された院内医療情報システムと引用例3の問診システムは,いずれも病院などの医療機関に設置され,患者に自動的に問診する機能を有する点で共通する。 また,医療機関を受診する患者の待合室が外来受付に近接して設けられていること,外来受付の付近で患者が診察を待つこと,患者が外来受付の前後を含めた受診の待ち時間を待合室などで過ごすことは経験則上ごく普通にみられることであるから,外来受付に設置される引用発明の自動問診装置を,引用例の問診システムのように待合室に設置することに阻害要因は認められない。 そうすると,相違点2は,引用発明に,引用例3に記載の技術的事項を適用することにより,容易に想到し得るものであるから,この点に関する審決の判断に誤りはない。 b 原告は,「待合室に設置されていても使用場所を問わない携帯端末である本願発明の問診入力機器と,待合室に設置された固定端末であり,待合室でしか使用できない引用例3に記載の入力端末について使用箇所から同一の入力機器であると判断することは誤りである。 したがって,引用発明に引用例3に記載の端末を採用しても本願発明のように場所を問わずに入力することは困難であり,両者の入力装置における使用場所の範囲が異なることは明白であり,引用発明に引用例3の発明についての使用場所を適用しても本願発明の入力端末- 39 -の設置場所(使用場所)を判断することはできない」と主張する。 しかし,本願明細書には,「待合室に設置される端末が携帯端末機器である場合には,患者が待合室内であれば場所を問わずに入力することができる。」(段落【0011】)と記載されているから,待合 る。 しかし,本願明細書には,「待合室に設置される端末が携帯端末機器である場合には,患者が待合室内であれば場所を問わずに入力することができる。」(段落【0011】)と記載されているから,待合室に設置される端末が携帯端末機器であり,待合室だけでなく病院などの廊下やトイレなどの室内,あるいは病院の敷地内を含めた屋外での入力が可能なことは本願出願時に自明の事項であったとしても,一義的には待合室内で入力することが予定されているものである。 そうすると,審決が,相違点2の判断として,入力装置を有する端末機を待合室に設置し,待合室において問診情報を入力するように構成したことの容易性の判断を行ったことは相当であるから,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 相違点3についての判断の誤りにつきa 本願の出願時(平成14年4月30日)において,携帯端末機器は周知であり,固定的に設置された端末機器に代えて,携帯端末機器を採用することにより,場所を問わずに必要な情報を入力したり,必要な情報を表示・確認したりすることが可能となることも周知であるから,固定的に設置された端末機器に代えて携帯端末機器を採用することは当業者が必要に応じて採用し得ることである。そうすると,引用発明においても入力機器を携帯型とすることに動機付けが存在するといえる。 そして,前記乙3文献及び乙4文献の記載内容からすれば,通信機能を備え,タッチパネル式の持ち歩けるような携帯端末は周知技術であったと認められるところ,引用例4には,医療機関において,患者が利用する端末機を携帯型とすることが記載されているから,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,その際に周知のタッチパネル式- 40 -の持ち歩けるような携帯端末を採用して相違点3の構成とすることは当業者が 機を携帯型とすることが記載されているから,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,その際に周知のタッチパネル式- 40 -の持ち歩けるような携帯端末を採用して相違点3の構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。 そうすると,相違点3は,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,その際に周知の携帯端末を採用することにより当業者が容易に想到し得るものであるから,この点に関する審決の判断に誤りはない。 b この点に関し原告は,乙3文献及び乙4文献における被告による指摘事項は明らかに周知技術ではなく,新たな拒絶理由についての引用例としての性格を有するものであるから,審決の後に反論の機会を与えずに周知技術であると認定することは,特許法159条2項において準用する同法50条1項及び17条の2第1項1号の規定に違反するものであると主張する。 しかし,公開日が本願出願日の約3年前である平成11年7日2日である乙3文献に,「本発明の目的は,セルラー電話機を有し,マウスなどのポインティング装置を必要としない指タッチ操作用高解像度タッチ画面ディスプレイを有するインテリジェント型携帯通信装置を提供することである。」(段落【0007】)と記載され,公開日が平成12年12月7日である乙4文献に「ここで,上記のようなハードウエア構成を有する携帯端末1002としては,例えば,通信機能を有する携帯情報端末(PDA)がある。このようなPDAは,典型的には,送受信装置1009としてPHS端末を,表示装置1012として液晶パネルを,入力装置1015としてタッチパネルを持っている。」と記載され,携帯情報端末(PDA)の入力装置がタッチパネルであることが「典型的」とされていることからすれば,本願の出願当時(平成14年4月30日),タッチパネル式の持ち歩 チパネルを持っている。」と記載され,携帯情報端末(PDA)の入力装置がタッチパネルであることが「典型的」とされていることからすれば,本願の出願当時(平成14年4月30日),タッチパネル式の持ち歩けるような携帯端末が周知技術であったことは明らかである。 そして,審決取消訴訟においては,審判手続において表れなかった- 41 -資料を新たに証拠として提出することは原則として許されないが,いかなる例外もなく絶対に許されないというわけではなく,例えば,当業者にとつては,刊行物をいちいち挙げるまでもないほどの周知慣用の事項について,審決取消訴訟の段階で,これを立証するために補充的に新たな資料を提出することは許されるというべきであるから(最高裁昭和55年1月24日判決・民集34巻1号80頁参照),被告が周知技術である乙3文献及び乙4文献記載の技術的事項を本件において提出したことは手続違背となるものではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (エ) 相違点4についての判断の誤りにつきa 引用例4には,患者の利用する端末に,診察開始の通知,固有のメッセージによる通知,各診療科の待ち人数の通知を表示させることが記載されている。 また,端末などの情報機器に複数の機能をもたせることにより,1つの情報機器を用いて複数の機能を利用可能とすることは,本願出願時,当業者の常套手段にすぎない。 そして,引用発明の受診情報を入力する端末と,引用例4の端末とは,医療機関において患者が利用する端末という点で一致するから,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,相違点4の構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。 そうすると,相違点4は,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,その際に周知の携帯端末を採用すること 用例4の技術的事項を適用し,相違点4の構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。 そうすると,相違点4は,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,その際に周知の携帯端末を採用することにより当業者が容易に想到し得るものであるから,この点に関する審決の判断に誤りはない。 b この点に関し原告は,本願発明では,引用例4に記載されているように単に患者に情報が送信されるだけでなく,問診事項などの受診情報などを患者から医療機関にかつタッチパネル方式で入力して送信- 42 -することができるものであり,引用発明と全く趣旨の異なる引用例4の発明を適用しても本願発明における機能を有する携帯端末を容易に想到できるものではないと主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,引用発明の受診情報を入力する端末と,引用例4の端末とは,医療機関において患者が利用する端末という点で一致するのであって,患者の利用する端末に複数の機能を持たせることによってより便利に利用しようとする動機付けが働くことは明らかであるから,引用例4が引用発明と全く趣旨が異なる技術であるということはできず,また,前記(ウ)のとおり,タッチパネル式の携帯端末は周知技術であるから,引用発明と引用例4の技術的事項を適用すれば本願発明における機能を有する携帯端末を容易に想到し得ることは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (オ) 作用・効果の判断の誤りにつき原告は,進歩性は発明全体として奏する作用・効果等を含めて判断されるべきところ,審決のように,引用発明における本願発明との多数の相違点について,本願発明において他の技術的事項との関係でいかなる意義や作用・効果を発揮しているかを考慮せずに単に他の発明の一部に用いられているという理由で,それ 引用発明における本願発明との多数の相違点について,本願発明において他の技術的事項との関係でいかなる意義や作用・効果を発揮しているかを考慮せずに単に他の発明の一部に用いられているという理由で,それを適用することは当業者が適宜なし得ることであるという判断をすると特許される発明はほとんど皆無となってしまうことになると主張する。 しかし,本願発明の作用・効果であるところの,① 患者の個人情報や受診情報を自分で入力することができるので,患者自身の情報を正しくかつ迅速に医師に伝えられる上,医療機関従事者の業務が軽減されること,及び② 医師や看護士等が,患者の受診情報を診察前に予め知ることができるので,患者が診察室に入る前に診察のための準備をしてお- 43 -くことができ,診察時間の短縮を図ることができ,医療機関の混雑を緩和することができることについては,引用発明も奏する作用・効果であることは明らかである。 また,③ 入力装置を待合室に備え付けることにより,患者の待ち時間を利用して,個人情報及び受診情報を入力することができることは,引用発明に引用例2に記載の技術的事項を適用することにより得られるものである。 さらに,④ 待合室に設置された端末が携帯端末機器であり,携帯可能であること,及び⑤ 端末の表示画面に,前記サーバから各診療科の待ち人数の表示や当該患者宛の連絡事項等の患者への受診案内を表示させ,患者への受診案内として利用できることは,引用発明に引用例3及び4の技術的事項を適用することにより得られるものである。 最後に,⑥ 携帯端末機器の入力装置が表示画面を有しタッチ入力可能であり,表示画面に表示された項目の中から患者自身にあてはまるものを選んで,指又はペン等で表示画面の所定位置を押して受診情報を入力することが可能であること 器の入力装置が表示画面を有しタッチ入力可能であり,表示画面に表示された項目の中から患者自身にあてはまるものを選んで,指又はペン等で表示画面の所定位置を押して受診情報を入力することが可能であることについては,タッチ入力可能な引用発明に引用例4の技術的事項を適用するとともに,タッチ入力可能であり入力された情報を送信可能な周知の携帯端末機器を採用することにより得られるものである。 そうすると,本願発明の作用・効果は,引用発明に引用例2,3及び4記載の技術的事項を適用するとともに,周知の携帯端末機器を採用することにより得られるものであるから,「本願発明は,・・・その作用効果も,引用発明及び引用例2,3,4に記載の技術的事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものである」とした審決の判断に誤りはない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 - 44 - 3 結論以上のとおりであるから,本願発明は引用発明及び引用例2ないし4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到できるとした審決の結論に誤りはなく,原告主張の取消事由は全て理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官中野哲弘 裁判官東海林保 裁判官矢口俊哉

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