平成26(行ウ)33 業務外処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年3月16日 名古屋地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-85978.txt

判決文本文36,680 文字)

- 1 -平成28年3月16日判決言渡平成26年(行ウ)第33号業務外処分取消請求事件主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 半田労働基準監督署長が原告に対し平成24年10月15日付けでした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の各処分をいずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,株式会社P1(以下「P1」という。)に勤務していたP2が死亡したことについて,P2の妻である原告が,半田労働基準監督署長に対し,P2の死亡はP1における過重な業務に起因するとして,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく遺族補償給付及び葬祭料(以下「遺族補償給付等」という。)の支給を請求したところ,同署長から,平成24年10月15日付けで,P2の死亡は業務上の理由によるものとは認められないとして,遺族補償給付等を支給しない旨の各処分(以下「本件各不支給処分」という。)を受けたため,原告が,被告に対し,本件各不支給処分の取消しを求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア P2は,昭和49年▲月▲日生まれの男性であり,原告は,P2の妻である。P2と原告との間には2人の子がいる。(争いがない) - 2 -P2は,愛知県 α 市 × 番 ○ 号所在の自宅において,原告,子ら及び原告の母と生活していた。(甲A1の1・14,15頁)イ P1は,P3株式会社(以下「P3」という。)の関連会社であるP4株式会社(以 市 × 番 ○ 号所在の自宅において,原告,子ら及び原告の母と生活していた。(甲A1の1・14,15頁)イ P1は,P3株式会社(以下「P3」という。)の関連会社であるP4株式会社(以下「P4」という。)による100パーセント出資の子会社であり,その事業内容は,自動車の輸送業務,貨物自動車運送業務及び自動車用品類の取付業務等である。(乙10)P1は,愛知県 β 市×-○所在のP3P5センター(以下「P5センター」という。)構内に事業場を開設しているほか,平成18年8月には, β 市×-○所在のP4P6工場構内にもP7事業所(以下,P4P6工場と併せて「P6工場」という。)を開設した。(乙1,乙10,弁論の全趣旨)(2) P2の経歴等(甲A1の1,A2,乙15,16)P2は,平成7年3月にP8専門学校を卒業した後,P9株式会社に入社し,フロント業務に従事した。P2は,その後,平成7年7月に株式会社P10に入社して自動車エンジン修理等の業務に従事し,平成15年8月に同社を退社した。 P2は,同年10月にP1にアルバイトとして採用され,同社P11工場において3か月間の研修期間を経た後,平成16年1月に正社員として採用された。 (3) P2の業務内容等P2は,P1に正社員として採用された後,P5センターにおいて,輸出用自動車のオプション部品取付業務に従事した。 その後,平成18年8月にP7事業所が開設されたことに伴い,P2は,P6工場において,救急車等に設置される防振ベッドの組立作業(以下「防振ベッド組立作業」といい,同作業を行う部門を,以下「防振ベッド組立部門」という。)のほか,P4試作部門(以下「試作部門」という。)の繁忙 - 3 -期に同部門の応援作業(以下「試作部門応援作 振ベッド組立作業」といい,同作業を行う部門を,以下「防振ベッド組立部門」という。)のほか,P4試作部門(以下「試作部門」という。)の繁忙 - 3 -期に同部門の応援作業(以下「試作部門応援作業」という。)にも従事するようになった。(弁論の全趣旨)防振ベッド組立部門には,P2のほか,P12及びアルバイト2名が配置されており,P2は,同部門のリーダーであった。(乙14・2頁,乙15,争いがない)なお,P2は,自家用車を運転して通勤しており,自宅からP6工場までの所要時間は片道約1時間5分であった。(甲A21の1~5,A22,原告本人・4,5頁)(4) P1における所定労働時間等ア P1の就業規則上,始業時刻は午前9時,終業時刻は午後6時であり,所定労働時間内における休憩時間は正午から午後0時50分までの間及び午後3時から午後3時10分までの間の合計1時間,所定労働時間外における休憩時間は午後6時から午後8時までの間に30分間,午後8時から午後10時までの間に30分間,午後10時から午前5時までの間に60分間と定められている。(甲A3,乙11)なお,P5センターにおける所定始業時刻は午前8時,所定終業時刻は午後5時であり,休憩時間についてはP6工場と同様である。(乙12・1頁)イ P1における所定休日は,P3関連会社に共通の年間休日カレンダーに定められているところ,平成23年3月11日に発生した東日本大震災後の電力不足対策として,同年7月1日から同年9月末までの間,土曜日及び日曜日の休日が木曜日及び金曜日に変更された。(甲A3,乙11,13,争いがない)(5) P2の精神科受診歴等P2は,平成19年1月5日,P13クリニックを受診し,以降,同年6月3日から平成22年5月1 曜日及び金曜日に変更された。(甲A3,乙11,13,争いがない)(5) P2の精神科受診歴等P2は,平成19年1月5日,P13クリニックを受診し,以降,同年6月3日から平成22年5月14日までの間を除き,1か月に1回程度P13 - 4 -クリニックに通院していた。P2のカルテの傷病名欄には「抑うつ症」,「うつ病」,「胃炎」と記載されている。(甲B5の1,2)(6) P2の死亡P2は,平成23年9月▲日午前7時10分頃,自宅寝室内において冷たくなった状態でうつ伏せに横たわっているところを発見された。同日午前7時17分に救急隊が到着した時点で,P2は既に心肺停止の状態であり,死亡が確認された。その後,医師による死体検案が行われ,P2の死亡日時は同日午前3時頃であり,心臓血採血においてトロポニンT陽性であったことから,虚血性心疾患の疑いが直接死因とされ,発症後短時間で死亡したと判断された。(甲B1,2,乙32ないし34)愛知労働局地方労災医員協議会脳・心臓疾患専門部会(以下「専門部会」という。)の意見書には,P2の疾患名は致死性不整脈による心停止である旨記載されている(以下,P2の死因となった心疾患を「本件疾病」という。)。(甲B6,乙35)(7) 本件訴訟に至る経緯ア原告は,P2の死亡が業務に起因するものであるとして,平成24年1月11日,半田労働基準監督署長に対し,遺族補償給付等の申請をしたところ,同署長は,同年10月15日,P2の死亡は業務上の事由によるとは認められないとして,本件各不支給処分をした。(甲C1の1・2,乙3,4)イ原告は,本件各不支給処分を不服として,平成24年10月23日付けで,愛知労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をしたところ,同審査官は,平成2 をした。(甲C1の1・2,乙3,4)イ原告は,本件各不支給処分を不服として,平成24年10月23日付けで,愛知労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をしたところ,同審査官は,平成25年3月28日,これを棄却する決定をした。(甲C2,乙5)ウ原告は,上記決定を不服として,平成25年4月11日付けで,労働保険審査会に対し,再審査請求をしたところ,同審査会は,同年12月6 - 5 -日,これを棄却する裁決をした。(甲C3,乙6)エ原告は,平成26年4月8日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)(8) 業務起因性に関する行政通達厚生労働省は,脳血管疾患及び虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。)の業務起因性に関する判断指針として,臨床,病理学,公衆衛生学及び法律学の専門家らで構成された「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」が平成13年11月16日に取りまとめた「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」(乙8。以下「専門検討会報告書」という。)を踏まえ,同年12月12日付けで,各都道府県労働局長宛に「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(基発第1063号。以下「認定基準」という。)を発出した。(乙7)認定基準の具体的内容は,別紙1「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」のとおりである。 2 争点P2の死亡の業務起因性 3 争点に対する当事者の主張(1) 業務起因性の判断枠組み(原告の主張)労働者災害補償保険制度(以下「労災保険制度」という。)が,労働者とその家族の生活の安定を目的としていることに鑑みれば,発症した疾病に業務起因性が認められるためには,当該労 (原告の主張)労働者災害補償保険制度(以下「労災保険制度」という。)が,労働者とその家族の生活の安定を目的としていることに鑑みれば,発症した疾病に業務起因性が認められるためには,当該労働者が担当した業務と発症した疾病との間に合理的関連性が認められれば足りると解すべきである。 仮に,合理的関連性では足りず,業務と疾病との間の相当因果関係が必要と解するとしても,業務が当該疾病の発症に対し相対的に有力な原因となったことまでは必要なく,当該業務が労働者の有する基礎疾患等と共働原因となって当該疾病を発症させたことで足りると考えるべきである。 - 6 -また,上記のとおり,労災保険制度が,労働者とその家族の生活の安定を目的としていることに加え,使用者は労働者の労務の提供によって事業を遂行している以上,完全な健康体の者のほか,高齢者や障がい者を含む,使用者によって労務の提供が期待されている者全てを対象として危険の有無を考えるべきであることに照らすと,業務上外の判断に際して,当該業務の過重性を判断するに当たっては,被災者である本人を基準とすべきである。 (被告の主張)労働者が脳・心臓疾患を発症した場合に業務起因性を認めるためには,当該労働者が当該業務に従事しなければ当該結果(脳・心臓疾患の発症)は生じなかったという条件関係だけでは足りず,相当因果関係があることを要する。 そして,相当因果関係の判断に当たっては,脳・心臓疾患が業務に内在する危険の現実化として発症したと認められるか否かによって決せられるべきである。すなわち,当該業務による負荷が,当該労働者と同程度の年齢・経験等を有し,基礎疾患を有していても通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある平均的な労働者を基準として,当該業務による負 わち,当該業務による負荷が,当該労働者と同程度の年齢・経験等を有し,基礎疾患を有していても通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある平均的な労働者を基準として,当該業務による負荷が,医学的経験則に照らし,脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然的経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であると認められること(危険性の要件),及び,当該業務による負荷がその他の業務外の要因(私的リスクファクター)に比して相対的に有力な原因となって,当該脳・心臓疾患を発症させたと認められること(現実化の要件)が必要である。 この点,認定基準は,最新の医学的知見を踏まえて発出されたもので,十分な合理性が認められるから,業務起因性の判断に当たっては,発症に至るまでの具体的事情を踏まえつつ,認定基準に依拠することが最も適切である。具体的には,脳・心臓疾患の発症が業務に起因するものであると認める - 7 -には,①発症直前から前日までの間において,発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと(以下「異常な出来事」という。),②発症に近接した時期において,特に過重な業務に就労したこと(以下「短期間の過重業務」という。),又は,③発症前の長期間にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(以下,「長期間の過重業務」という。)のいずれかによる明らかな過重負荷を受けたという認定基準における認定要件を満たす必要がある。 (2) 本件における業務起因性(原告の主張)P2は,本件疾病の発症前(以下,単に「発症前」という。)1か月間において,約100時間にも及ぶ時間外労働(週40時間を超える労働をいう。以下同じ。)に従事していた上,試作部門応援作業に伴う労働時間の急激な増加,P 発症前(以下,単に「発症前」という。)1か月間において,約100時間にも及ぶ時間外労働(週40時間を超える労働をいう。以下同じ。)に従事していた上,試作部門応援作業に伴う労働時間の急激な増加,P5センターにおける業務,アルバイトの送迎,休日の変更,チーフ昇進への内示等による心身への負荷も相まって致死性不整脈(本件疾病)を発症して死亡したのであるから,P2の死亡には業務起因性が認められる。 また,仮に被告の主張を前提としても,P2は発症前1か月間に80時間を超える時間外労働に従事しており,うつ病を発症していたP2にとって過重なものであったといえるから,P2の死亡には業務起因性が認められる。 ア業務の量的過重性(ア) 始業時刻タイムカード打刻時刻が始業時刻である。 被告は,P2が,P6工場に到着後,午前8時55分までの間,自家用車内で仮眠をとるなどしており,業務に従事していなかった旨主張するが,P2は防振ベッド組立部門のリーダーとして,始業前に準備を行う必要があったこと,半田労働基準監督署担当官による実地調査復命書 - 8 -に,当時,P4社員であったP14らからの聴取内容として,所定始業時刻よりタイムカード打刻時刻の方が早い日は同時刻から仕事を行っていたと思う旨記載されていることに照らせば,P2はタイムカード打刻後,業務に従事していた。 (イ) 所定労働時間外の休憩時間P2は,時間外労働の際,たばこを吸い雑談をする程度の休憩しか取得しておらず,労働時間から差し引くべき休憩時間は存在しない。 被告は,P6工場従業員は午後6時,午後8時及び午後10時から各15分間程度の休憩を取得しており,P2も勤怠管理カード記載のとおり休憩を取得していた旨主張するが,勤怠管理カードは1か月分まとめて記入されること 工場従業員は午後6時,午後8時及び午後10時から各15分間程度の休憩を取得しており,P2も勤怠管理カード記載のとおり休憩を取得していた旨主張するが,勤怠管理カードは1か月分まとめて記入されることもあるなどその正確性には疑問がある上,P2の勤怠管理カード上,3時間以上の時間外労働に従事した日は休憩時間欄に0.5と記載されており,それ以外の日の休憩時間欄は空欄となっていること,P2の上司であったP15が,午後8時を過ぎた場合には勤怠管理カードに0.5と記載する決まりになっているなどと供述していることに加え,P2は,出勤日であっても午後6時以前の休憩時間帯には携帯電話を用いてブログへの書き込みを行うことがあったにもかかわらず,午後6時以降は1度もブログへの書き込みを行っていないことからすると,P2は,P1からの指示に基づき,3時間以上の時間外労働に従事した場合には,機械的に30分間の休憩時間を記載していたにすぎず,実際には休憩を取得していなかった。 (ウ) 終業時刻タイムカード上,P2とP12の退勤時刻はほぼ同時刻となっているが,P2はP12と異なり,防振ベッド組立部門のリーダーとして,週報,チェックシート,請求明細書及び生産指示書の作成並びに部品の発注等の事務作業も担当していたのであるから,業務内容の異なるP2と - 9 -P12の終業時刻が同時刻となるとは考え難く,P2の帰宅時刻とタイムカード打刻時刻には1時間40分から2時間程度差があり,通勤時間は片道約1時間5分であることに照らせば,P2は,タイムカード打刻後,少なくとも1日30分間から40分間程度のいわゆるサービス残業を日常的に行っていた。 (エ) 平成23年9月22日P2が同日午前8時30分頃自宅を出発し,同日午後0時30分頃に帰宅したこと,P2が, 30分間から40分間程度のいわゆるサービス残業を日常的に行っていた。 (エ) 平成23年9月22日P2が同日午前8時30分頃自宅を出発し,同日午後0時30分頃に帰宅したこと,P2が,同日,自家用車のナビゲーションシステムに「P16P17営業所」と入力していること,同月21日,友人宛に,「翌日仕事でP16に寄る」旨記載した電子メールを送信していることに照らせば,P2は,同月22日午前9時30分頃から同日午前11時30分頃までの間,出勤し,業務に従事していた。 (オ) 小括上記(ア)ないし(エ)によれば,P2の発症前6か月間の時間外労働時間は,別紙2「労働時間集計表(原告)」記載のとおりである。ただし,別紙2「労働時間集計表(原告)」上,タイムカード打刻時刻を終業時刻としており,上記(ウ)記載のサービス残業時間は計上していない。 これによれば,P2の時間外労働時間は,夏季休暇期間である発症前2か月目を除き,発症前4か月目以降増加傾向にあった。特に,発症前1か月間の時間外労働時間は99時間26分に急増しており,認定基準によっても,業務と発症の関連性が強いとされる「発症前1か月間におおむね100時間の時間外労働が認められる場合」という基準を満たしている。 加えて,P2は,別紙2「労働時間集計表(原告)」記載の時間外労働時間以外にも,実際には,上記(ウ)のとおりタイムカード打刻後,1 - 10 -日当たり30分間から40分間程度のサービス残業を行っていたのであるから,その時間を労働時間に算入すれば,P2の発症前1か月間の時間外労働時間は優に100時間を超えるものとなる。 なお,仮に,被告の主張を前提としても,P2の発症前1か月間の時間外労働時間数は85時間48分であるところ,P2が往復2時間10分の自 か月間の時間外労働時間は優に100時間を超えるものとなる。 なお,仮に,被告の主張を前提としても,P2の発症前1か月間の時間外労働時間数は85時間48分であるところ,P2が往復2時間10分の自動車通勤をしていたことに照らすと,通勤時間を含めた拘束時間は月100時間を優に超えており,P2は1日5時間の睡眠時間を確保できない状態が続いていたのであるから,睡眠時間の確保という観点からみると,発症前1か月間におけるP2の勤務実態は1か月100時間の時間外労働に従事した場合と同程度の状況にあったといえる。 イ業務の質的過重性(ア) 試作部門応援作業前記アのとおり,P2の時間外労働時間数は発症前4か月目以降増加しているところ,その主な原因は,P2が平成23年5月11日以降,防振ベッド組立作業終了後,試作部門応援作業に従事するようになったことであり,特に,P2の発症前1か月間における試作部門応援作業時間は急増し,42時間30分にも及んでいる。また,試作部門応援作業は,午後10時以降の深夜時間帯に及ぶことが多く,発症前1か月間におけるP2の深夜労働時間は9時間29分に達している。 このような業務量の急増及び深夜時間帯における業務はストレスの過重要因となるばかりか,P2が試作部門応援作業において従事していたピッキング作業(部品庫に搬入された多種類の部品を品番どおりに部品棚から部品箱に入れてメインラインに運ぶというもの)や部品加工作業は軽作業とはいえない上,試作部門応援作業は,P2の本来の業務である防振ベッド組立作業後に行われるもので,かつ,事前に終了時刻が定められておらず,疲労感の強まる作業であったことから,P2の疲労は - 11 -蓄積した。 (イ) P5センターにおける業務 業後に行われるもので,かつ,事前に終了時刻が定められておらず,疲労感の強まる作業であったことから,P2の疲労は - 11 -蓄積した。 (イ) P5センターにおける業務P2は,P6工場における業務のほか,P5センターにおける輸出用自動車オプション部品取付業務にも従事していたところ,同業務は,新車の整備作業であることから格別に神経を使うものである上,夏場は屋外に置かれ,車内温度が50度を超えるほどに熱せられた車両を作業建屋内に移動させ,部品の取付作業終了後に車両をふ頭まで移動させるという身体的にも負荷のかかる作業であった。 特に,平成23年8月22日から同年9月5日までの間,P2は,P15に代わりアルバイト社員を駅まで送迎するため,P5センターの所定始業時刻前である午前7時30分に出勤するなど,多様な業務に忙殺されていた。 (ウ) 休日の変更平成23年7月1日から同年9月末までの間,東日本大震災後の節電対策として,年間休日カレンダーが変更され,木曜日と金曜日が休日となり,土曜日と日曜日が出勤となったことから,P2は,曜日感覚を失い,精神的に混乱状態となった上,休日を家族と共に過ごすことができなくなり,疲労回復のために休息する時間を奪われるなど,大きな負担を感じていた。 (エ) チーフ昇進の内示P2は,死亡直前の平成23年9月,P15の定年退職に伴い,同年10月以降,P7事業所のチーフに昇進する内示を受けた。P2は,昇進に伴い責任が重くなることを憂慮しており,上記内示はP2にとって精神的な負担となっていた。 (オ) 小括上記(ア)ないし(エ)のとおり,P2は,平成23年5月以降,試作部 - 12 -門応援作業に伴い業務量 上記内示はP2にとって精神的な負担となっていた。 (オ) 小括上記(ア)ないし(エ)のとおり,P2は,平成23年5月以降,試作部 - 12 -門応援作業に伴い業務量が急増する中で,P5センターにおける業務やアルバイト社員の送迎等,本来の業務以外の多様な業務にも追われていた上,休日の変更及びチーフ昇進の内示等によるストレスを受け続けており,P2の心身への負荷は増大していた。 ウ P2のうつ病の影響(ア) 前記ア,イのとおり,本件では,認定基準によっても業務上と判断するべきであるほど重大な業務上の事情があったから,P2がうつ病に罹患していなかったとしても,P2の死亡は業務上の疾病と判断されるべき事情があった。 したがって,実際にはP2がうつ病であったとしても考慮するべきではないし,うつ病による睡眠不足があったとしてもこれを考慮すべきではない。 (イ) 仮に,P2がうつ病であった事情もあって死亡したとしても,業務起因性における相当因果関係の判断は,本人を基準とすべきであり,うつ病であったP2にとって業務は過重であったことは明らかであるから,業務起因性が認められるべきである。 (ウ) 業務起因性の判断について,平均基準説に立つとしても,労務の提供が期待される者は,完全な健康体の者ばかりでなく,何らかの基礎疾患を有しながらも業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者も含まれる。P2は,うつ病ではあったが,業務の軽減措置を受けることはなく,日常業務を遂行できる健康状態にあったのであるから,同種労働者に含まれる。 そして,うつ病にり患した者は,一般的に,睡眠を確保しにくい傾向にあり,P2も,うつ病患者特有の早朝覚醒の影響により,睡眠時間を確保して疲労を 康状態にあったのであるから,同種労働者に含まれる。 そして,うつ病にり患した者は,一般的に,睡眠を確保しにくい傾向にあり,P2も,うつ病患者特有の早朝覚醒の影響により,睡眠時間を確保して疲労を回復することが困難な状態にあったところ,被告の主張を前提としても,P2は,発症前1か月間に85時間48分もの時間外 - 13 -労働に従事しており,前記のとおり,うつ病を発症,増悪させていたP2にとって,睡眠時間の確保がより困難となる過重な業務であるといえる。P2は,このような過重な業務に従事した結果,疲労の回復ができない状態が続き,致死性不整脈(本件疾病)を発症したものというべきであるから,P2の死亡には業務起因性が認められる。 なお,被告は,P2の早朝覚醒の原因が投薬量の不足にある旨主張するが,P2の主治医であったP18医師は,副作用等も考慮した上でP2の病状に応じた薬剤の処方を行っていたもので,投薬量は適切であった。 エその他業務外の要因P2は,私生活においてブログの閲覧及び更新(以下「ブログの更新等」という。),自家用車の改造及び友人宅への訪問等を行っていたものの,その時間は休日や終業後のわずかな時間であり,これらの時間がP2の睡眠時間の確保を妨げる要因となっていたとはいえない。 なお,被告は,P2がブログの更新等を行っていたことをもって,P2には疲労の蓄積がなかった旨主張するが,前記ア及びイのとおり,P2は,健康体の者であっても疲労が蓄積するほどの過重な労働に従事しており,うつ病にり患していたことも考慮すると,P2に疲労が蓄積していたことは明らかであり,現に,原告やP2の友人らは,P2の死亡直前,P2が疲れた様子であることを気にかけていた。 (被告の主張)P2の業務による負荷は,認定基準におけ に疲労が蓄積していたことは明らかであり,現に,原告やP2の友人らは,P2の死亡直前,P2が疲れた様子であることを気にかけていた。 (被告の主張)P2の業務による負荷は,認定基準における認定要件のいずれにも該当せず,P2の死亡は業務に内在する危険の現実化とは認められないから,P2の死亡に業務起因性はない。 ア業務の量的過重性(ア) 始業時刻 - 14 -P2のP6工場出勤日における始業時刻は予鈴時間である午前8時55分である。 すなわち,P6工場において作業準備は前日に行われており,始業前に行うべき業務は特に存在せず,予鈴前には工場内の電気も消灯しているため,予鈴前に業務を行っている者はおらず,P2も,P6工場到着後は,自家用車内で仮眠をとるか,喫煙をしていたもので,予鈴前に業務を開始していない。 (イ) 所定労働時間外の休憩時間P6工場においては,所定労働時間外における休憩は午後6時,午後8時及び午後10時に各15分間程度設けられており,P2も,勤怠管理カードに0.5と記載されている日については,少なくとも30分間の休憩を取得していた。 (ウ) 終業時刻P2は,防振ベッド組立部門のリーダーとして,週報の作成,チェックシートのプリントアウト,請求明細書及び作業指示書の作成等の事務作業も担当していたものの,部品の発注業務は行っていなかった。 そして,P2は,上記事務作業を防振ベッド組立作業の合間に行っており,タイムカード打刻後は,P12とともに駐車場に向かっていたこと,P2の発症前1か月間において,P2がタイムカードに打刻をした後,30分以上経過して事務室の鍵が返却された日は12日間しか存在しないことに照らすと,P2がタイムカード打刻後,サービス残業を行って ,P2の発症前1か月間において,P2がタイムカードに打刻をした後,30分以上経過して事務室の鍵が返却された日は12日間しか存在しないことに照らすと,P2がタイムカード打刻後,サービス残業を行っていたとはいえない。 (エ) 平成23年9月22日P2は,同日出勤していない。 すなわち,防振ベッド組立作業において部品が不足した場合,P4に連絡し,同社が発注,受取及び現場への納品作業を行うこととされてお - 15 -り,P1の従業員が直接部品の発注や受領作業を行うことはない上,P16株式会社(以下「P16」という。)の売上納品請求書及び納品リストによれば,同日に納品された部品自体存在せず,同日,P2の姿を見た関係者もおらず,同日のP2のタイムカード及び勤怠管理カードに出退勤の記録がないことに照らすと,P2が,同日,P16から部品を受け取るために出勤していたとはいえない。 (オ) 小括上記(ア)ないし(エ)によれば,P2の発症前6か月間の時間外労働時間は,別紙3「労働時間集計表(被告)」記載のとおりである。 これによれば,P2の発症前1週間の総労働時間は59時間56分,時間外労働時間数が19時間56分であり,その間休日が連続して2日間確保されていたのであるから,P2が発症前1週間に日常業務に比較して特に過重な身体的,精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務に従事していたとはいえず,短期間の過重業務による明らかな過重負荷を受けたとはいえない。 また,P2の発症前1か月間の時間外労働時間数は85時間48分であり,業務と発症の関連性が強いと評価されるおおむね100時間には至っておらず,かつ,発症前2か月目ないし6か月目における1か月当たりの時間外労働時間数は発症前4か月目の62時間33分が最長であり,業 ,業務と発症の関連性が強いと評価されるおおむね100時間には至っておらず,かつ,発症前2か月目ないし6か月目における1か月当たりの時間外労働時間数は発症前4か月目の62時間33分が最長であり,業務と発症の関連性が強いと評価されるおおむね80時間にも至っていないことからすると,労働時間の点からみて,長期間の過重業務による明らかな過重負荷を受けたともいえない。 なお,原告は,P2が往復2時間10分の自動車通勤をしていたことから,拘束時間が長時間となり,心身の負荷が増大した旨主張するが,通勤は労働力を提供するために必要な行為であるものの,業務そのものではないことから,通勤時間を業務の過重性の評価対象とすることはで - 16 -きない。 イ業務の質的過重性(ア) 試作部門応援作業P2の発症前1か月間における時間外労働時間数は増加しているものの,P2は,発症前1か月間に合計7日間の休日を取得していること,徹夜に及ぶ連続勤務はなく,午前0時を超える勤務も2日間のみであること,試作部門応援作業は伝票に記載された品番どおりに部品棚から部品を選び出し用意するという専門的知識を必要としない軽作業であり,原告の主張するような部品加工作業は含まれておらず,特に肉体的,精神的負荷のかかるものではなかったことに照らすと,発症前1か月間におけるP2の作業負荷が格段に増加したとはいえない。 (イ) P5センターにおける業務P5センターにおける業務及びアルバイトの送迎が特に過重な業務であったとはいえない。 (ウ) 休日の変更休日の変更によって休日の日数自体が減少したものではなく,また,P2のみならず,他の従業員の休日も同様に変更となったことから,休日の変更により,P2が,日常生活 (ウ) 休日の変更休日の変更によって休日の日数自体が減少したものではなく,また,P2のみならず,他の従業員の休日も同様に変更となったことから,休日の変更により,P2が,日常生活において受ける負荷の範囲を超えて疲労回復のための休息時間が奪われたとはいえない。 (エ) チーフ昇進の内示P2は,平成23年9月にチーフ昇進の内示を受けていたものの,実際にチーフとして新たな責任や業務が増加していたわけではなく,P2の精神的負荷の程度が著しく増大したとはいえない。 (オ) 小括上記(ア)ないし(エ)のとおり,試作部門応援作業に伴う労働時間の増加,P5センターにおける業務,休日の変更及びチーフ昇進への内示は - 17 -いずれもP2の心身に過重な負荷をもたらす出来事ではなく,業務の質的過重性という観点からみても,P2が長期間の過重業務による明らかな過重負荷を受けたとはいえない。 なお,P2は,発症前日から当日にかけて,通常どおりの業務に従事しており,その業務遂行過程において甚大な事故や災害等に遭遇することはなく,急激かつ著しい作業環境の変化もなかったことから,P2が,発症直前から前日までの間に,異常な出来事による明らかな過重負荷を受けたということもない。 ウ P2のうつ病の影響P2がP13クリニック初回受診時の問診票に「神経質であれこれ考えてしまう」などと記載していることに照らすと,P2のうつ病の発症はP2の神経質な性格が原因である可能性があり,業務起因性は認められない。 また,仮に,平成23年8月から同年9月にかけてP2のうつ病が増悪していたとしても,業務との因果関係は不明であり,むしろ,P2の早朝覚醒の症状は,P2に十分な薬用量が は認められない。 また,仮に,平成23年8月から同年9月にかけてP2のうつ病が増悪していたとしても,業務との因果関係は不明であり,むしろ,P2の早朝覚醒の症状は,P2に十分な薬用量が投薬されていなかったことに起因するものである。 そうすると,P2のうつ病の発症及び増悪が業務と密接な関係にあるとは認められず,P2のうつ病は私病であるから,P2がうつ病にり患していたという事情によって業務の過重性の判断が左右されることはない。 エその他業務外の要因(ア) P2は,平成21年から平成23年の間に受診した定期健康診断の際,心電図検査において不完全右脚ブロック及びST上昇が指摘されており,専門部会意見書には,P2には,ブルガダ症候群(タイプ2)の所見が認められる旨記載されている。睡眠不足やストレス等自律神経のバランスの乱れはブルガダ症候群の病態悪化に影響しうることから,前 - 18 -記ウのとおり,P2は,私病であるうつ病の影響により睡眠不足やストレス状態に陥った結果,ブルガダ症候群を悪化させ,致死性不整脈(本件疾病)を惹起して死亡した可能性が否定できない。 (イ) P2は,喫煙習慣があり,かつ,毎日,350ミリリットル入りの缶ビールを1本程度飲酒するなど,脳・心臓疾患発症の私的リスクファクターを有していた。 (ウ) さらに,P2は,私生活において,家族旅行,深夜時間帯におけるブログの更新等,早朝時間帯における車の改造,業務終了後の友人宅への訪問等活発に活動していることに照らすと,そもそも,P2が業務による疲労を蓄積させ過労状態にあったとは到底いえない上,むしろ,これらの私的な活動がP2の睡眠時間の確保を妨げていたものである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提 2が業務による疲労を蓄積させ過労状態にあったとは到底いえない上,むしろ,これらの私的な活動がP2の睡眠時間の確保を妨げていたものである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(括弧内に証拠番号等を記載する。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 (1) P6工場の配置等(乙43,証人P12・2~6頁)P6工場内の建物配置は,別紙4「P4株式会社P6工場配置図(1図)」のとおりである。防振ベッド組立作業は計画建物D棟(以下「D棟」という。)において行われており,試作部門応援作業は計画建物B棟(以下「B棟」という。)において行われていた。 また,事務作業等は計画建物E棟(以下「E棟」という。)2階において行われており,E棟1階には従業員がタイムカードを打刻するタイムカードラックが設置してある。 (2) P2の業務内容等ア発症前6か月間におけるP2の業務内容P2の発症前6か月間における基本的な業務内容は,P6工場において - 19 -防振ベッド組立作業に従事するほか,防振ベッド組立作業が予定されていない場合等には,P5センターに出勤し,同所において輸出用自動車のオプション部品の取付作業に従事するというものであった。そして,P2は,平成23年5月11日以降,試作部門が繁忙となったことから,防振ベッド組立作業終了後,試作部門応援作業にも従事するようになり,同日以降,同年7月24日から同年8月28日までの期間を除き,出勤日にはほぼ毎日,P6工場における所定終業時刻である午後6時以降も試作部門応援作業に従事した。(甲A5の1~6,乙29,47,89,91)なお,P2は,P6工場又はP5センターのいずれか1か所において終日勤務することが多かったが 定終業時刻である午後6時以降も試作部門応援作業に従事した。(甲A5の1~6,乙29,47,89,91)なお,P2は,P6工場又はP5センターのいずれか1か所において終日勤務することが多かったが,朝,P5センターに出勤し,同所における業務終了後,P6工場に移動し,防振ベッド組立作業又は試作部門応援作業に従事することもあった。(乙89,91,弁論の全趣旨)P2の発症前6か月間における出勤場所及び退勤場所は,別紙5「集計表」の出勤時タイムカード打刻場所欄及び退勤時タイムカード打刻場所欄記載のとおりである。(甲A4の8~14,乙28,90,91,弁論の全趣旨)イ防振ベッド組立作業防振ベッド組立作業は,P4からP1が受託した業務であり,その具体的作業内容は,救急車に取り付ける防振仕様の患者用ベッドを,①サブ工程(下ごしらえ),②MB1工程(部品の取付け),③MB2工程(部品の取付け),④MB3工程(調整)及び⑤カバー組立という5工程の作業を経て組み立てるものであり,1台当たりの所要時間は合計約436分である。通常,3名の従業員により,1日当たり3台の組立てを行い,繁忙期には,4名の従業員により,1日当たり最大4台の組立てを行っていた。 (乙17,乙46,弁論の全趣旨)ウ試作部門応援作業(乙18,証人P12・3,30,31,35頁) - 20 -試作部門応援作業は,P4からP1が受託した業務であり,その具体的作業内容は,試作部門で自動車の試作を行う際に使用される自動車部品を,伝票に記載された品番どおりに部品棚から選び出した上で,部品箱に入れて製造ラインまで運搬し,又は回収する作業(ピッキング作業)である。 部品は多いときで1500種類ほどあり,その重量はクリップ等数グラム程度のものからブレーキ 品棚から選び出した上で,部品箱に入れて製造ラインまで運搬し,又は回収する作業(ピッキング作業)である。 部品は多いときで1500種類ほどあり,その重量はクリップ等数グラム程度のものからブレーキローター等10キログラム程度のものまで様々であった。 試作部門応援作業中,ピッキング作業が途切れることはなく,手待ち時間はほとんど存在しなかった。また,試作部門応援作業は事前に終了時刻が定められておらず,試作部門の責任者が作業の進捗状況に応じて,作業終了時刻を決定していた。 なお,原告は,P2が試作部門応援作業において,ピッキング作業のほか,部品加工作業にも従事していた旨主張するが,P12及びP15はいずれもこれを否定しており(証人P12・3頁,同P15・13頁),応援作業のために赴いた下請会社の従業員であるP2が,試作部門の中心的業務と考えられる試作車両の部品加工を担当していたことをうかがわせる事情はないことにも照らすと,原告の上記主張は採用できない。 エ P5センターにおける業務P5センターにおけるP2の業務内容は,輸出用自動車のオプション部品取付作業であるところ,同作業は,P4からP1が受託した業務であり,その具体的作業内容は,作業建屋から徒歩で1,2分程度の場所にある野外駐車場に向かい,同所に駐車してある輸出用自動車を運転して作業建屋内まで移動させ,同所において,オプション部品の取付作業を行った後,同所から徒歩で3,4分程度の場所にある輸出専門ふ頭まで完成した輸出用自動車を運転して移動させるというものである。(証人P12・1 - 21 -3~16頁,同P15・11頁,弁論の全趣旨)オ P2の事務作業等P2は,自身の勤怠管理カードへの労働時間の記入のほか,防振ベッド組立部門のリーダーとして,P 2・1 - 21 -3~16頁,同P15・11頁,弁論の全趣旨)オ P2の事務作業等P2は,自身の勤怠管理カードへの労働時間の記入のほか,防振ベッド組立部門のリーダーとして,P1防振ベッド週報(以下「週報」という。),防振ベッドの組立作業における注意事項の順守を工程ごとにチェックするシート(以下「チェックシート」という。),1か月ごとの売上げを記載した請求明細書及び各日の作業内容を記載した生産指示書を作成していた。(乙48,証人P12・10,11頁,同P15・3,4頁)このうち,勤怠管理カードへの記入はごく短時間で終わるものであり,週報の作成については,P2は,作業終了時に行うこともあれば,記載内容を自身のメモ帳に書き留めておき,後日,1週間分の週報作成作業をまとめて行うこともあり,また,P2は,上記事務作業を防振ベッド組立作業の空き時間を利用して行うこともあった(証人P12・9~11頁。同内容のP12供述は,P2のメモ帳に週報の記載内容が手書きされていること(甲A12の1・2,13の1・2)や,P2の週報に「エアホースのカットなどの下ごしらえと2月分の注文書の整理を行いました。」(12,「時間に余裕ができたので,溜まっていた注文書の確認と10月作業分の作業指示書を作製」(9月19日のなどと記載されていることとも整合するもので,信用することができる。)。 なお,原告は,P2の平成23年6月23日付け週報実績(予定)欄にサービスパーツの発注依頼をした旨の記載があること(甲A6の1,乙48)から,P2が部品発注業務にも従事していた旨主張するものの,P12及びP15が,防振ベッド組立作業に要する部品の発注はP4社員が行っており,P1社員はP4社員に対し,部品の在庫が減少したことを口頭で伝えることになっている旨供 従事していた旨主張するものの,P12及びP15が,防振ベッド組立作業に要する部品の発注はP4社員が行っており,P1社員はP4社員に対し,部品の在庫が減少したことを口頭で伝えることになっている旨供述していること(証人P12・19,20月22日の欄,乙48・3頁(裏))欄,乙48・9頁(裏)) - 22 -頁,同P15・22頁)に照らせば,上記週報の記載は,P2がP4の社員に対し,部品の在庫減少を報告し発注を促した旨の記載であると解されるから,P2自身が部品発注業務を行っていたとは認められない。 カアルバイトの送迎業務P2は,平成23年8月22日から同年9月5日までの間,午前7時30分に出勤し,P5センターに出勤するアルバイト社員を駅まで送迎した。(甲A4の13・14,A5の5・6,乙12・3頁,乙28,29,弁論の全趣旨)キチーフ昇進の内示P2は,平成23年9月初旬,当時P7事業所のチーフであったP15が定年退職することに伴い,同年10月以降P15の後任としてチーフに昇進する旨の内示を受けた。(証人P15・10頁,原告本人・13頁,弁論の全趣旨)(3) P2の労働時間等(甲A4の8~14,A5の1~6,乙28,29)発症前6か月間におけるP2の労働時間は,別紙3「労働時間集計表(被告)」のとおりである(なお,原被告間で争いのある部分に関する認定理由は,後記2の補足説明のとおりである。)。 これによれば,発症前1週間におけるP2の総労働時間数は59時間56分,時間外労働時間数は19時間56分であり,平成23年9月22日及び同月23日は休日のため勤務していない。 また,発症前6か月間におけるP2の総労働時間数,時間外労働時間数及び月平均時間外労働時間数(当該月から 間数は19時間56分であり,平成23年9月22日及び同月23日は休日のため勤務していない。 また,発症前6か月間におけるP2の総労働時間数,時間外労働時間数及び月平均時間外労働時間数(当該月から本件疾病発症までの時間外労働時間の月平均)は以下のとおりである。 発症前1か月目(平成23年8月▲日から同年9月▲日)総労働時間数 261時間48分時間外労働時間数 85時間48分 - 23 -月平均時間外労働時間数 85時間48分発症前2か月目(同年7月▲日から同年8月▲日)総労働時間数 141時間54分時間外労働時間数 5時間38分月平均時間外労働時間数 45時間43分発症前3か月目(同年6月▲日から同年7月▲日)総労働時間数 220時間45分時間外労働時間数 44時間45分月平均時間外労働時間数 45時間23分発症前4か月目(同年5月▲日から同年6月▲日)総労働時間数 238時間33分時間外労働時間数 62時間33分月平均時間外労働時間数 49時間41分発症前5か月目(同年4月▲日から同年5月▲日)総労働時間数 117時間38分時間外労働時間数 6時間 0分月平均時間外労働時間数 40時間56分発症前6か月目(同年3月▲日から同年4月▲日)総労働時間数 136時間26分時間外労働時間数 6分月平均時間外労働時間数 34時間08分(4) 発症前1週間のP2の状況P2の発症前1週間における前記(3)認定の各日の労働時間及び証拠(乙47,91)によれば,発症前1週間の各日におけるP2の状況は,以下のとおりであ (4) 発症前1週間のP2の状況P2の発症前1週間における前記(3)認定の各日の労働時間及び証拠(乙47,91)によれば,発症前1週間の各日におけるP2の状況は,以下のとおりであると認められる。 ア平成23年9月▲日 - 24 -P2は,P5センターに出勤し,同所において輸出用自動車のオプション部品取付作業に従事した後,P6工場に赴き,午後5時以降終業時刻まで試作部門応援作業に従事した。P2の始業時刻は午前8時,終業時刻は午後10時7分である。 イ平成23年9月▲日P2は,P6工場に出勤し,防振ベッド組立作業に従事した後,午後7時以降終業時刻まで試作部門応援作業に従事した。P2の始業時刻は午前8時55分,終業時刻は午後10時19分である。 ウ平成23年9月▲日P2は,休日であった。 エ平成23年9月▲日P2は,休日であった。なお,P2は,原告及び子らと外出し,愛知県α市内のテーマパークで過ごした後,外食をするなどした。(原告本人・23頁)オ平成23年9月▲日P2は,P6工場に出勤し,防振ベッド組立作業に従事した後,午後8時30分以降終業時刻まで試作部門応援作業に従事した。P2の始業時刻は午前8時55分,終業時刻は午後10時12分である。 カ平成23年9月▲日P2は,P6工場に出勤し,防振ベッド組立作業に従事した後,午後7時30分以降終業時刻まで試作部門応援作業に従事した。P2の始業時刻は午前8時55分,終業時刻は午後10時16分である。 P2は,終業後に友人宅に立ち寄り,談笑するなどした。(乙109)キ平成23年9月▲日P2は,P6工場に出勤し,防振ベッ 55分,終業時刻は午後10時16分である。 P2は,終業後に友人宅に立ち寄り,談笑するなどした。(乙109)キ平成23年9月▲日P2は,P6工場に出勤し,防振ベッド組立作業に従事した後,午後6時30分以降終業時刻まで試作部門応援作業に従事した。P2の始業時刻 - 25 -は午前8時55分,終業時刻は午後10時12分である。 (5) P2の健康状態等ア P2の健康診断結果(甲B3の1・2,B4の1~5,乙49,50)P2は,平成21年5月26日に受診した定期健康診断において,心電図検査の結果,不完全右脚ブロックが指摘され,経過観察が必要であるとの診断を受けた。 P2は,その後,平成22年5月11日及び平成23年5月19日に受診した定期健康診断のいずれにおいても,心電図検査の結果,不完全右脚ブロック及びST上昇が指摘され,経過観察が必要であるとの診断を受けた。 イ P2の精神科受診歴等(甲B5の1・2)P2は,平成19年1月5日,P13クリニックを受診した。P2の初診時問診票には「神経質であれこれ考えてしまい決断できない。仕事上のストレスで頭の回転が止まってしまう」と記載されており,P2のカルテの傷病名欄には「抑うつ症」,「うつ病」,「胃炎」と記載されている。 P2は,平成19年6月2日までの間,1か月に1回程度,P13クリニックに通院した。この間のP2のカルテには,睡眠障害はなく食欲も良好である旨記載されている。 P2は,平成19年6月3日から平成22年5月14日までの間,P13クリニックの受診を中断したものの,同月15日に受診を再開し,平成23年9月9日までの間,1か月に1回程度,P13クリニックに通院した。 P2の平成2 3日から平成22年5月14日までの間,P13クリニックの受診を中断したものの,同月15日に受診を再開し,平成23年9月9日までの間,1か月に1回程度,P13クリニックに通院した。 P2の平成23年8月5日のカルテには「やる気でない」,「仕事忙しい」と記載され,同年9月9日のカルテには「寝るが朝早く起きる」と記載されている。 (6) P2の喫煙習慣 - 26 -P2は,喫煙習慣があり,喫煙本数は1日15本以下程度であった。(乙49,証人P12・5,9頁,原告本人・20頁)(7) P2の私生活等P2は,自動車の改造を趣味としており,休日には早朝から自宅において自家用車の改造作業を行うことがあった。(原告本人・20頁)また,P2は,車の整備,パーツ等を共通話題とする「P19」というソーシャルネットワーキングサービスに会員登録し,休憩時間,業務終了後及び休日等に,ブログの更新等を行っていた。(乙99の1~3,100~107)(8) 本件疾病の発症に関する医師等の意見の概要ア専門部会の意見書(甲B6,乙35)(ア) 疾病名の特定P2は,助けを求める暇もなく死亡していることから,直接死因は致死性不整脈による心停止であると考える。 (イ) 発症の時期平成23年9月▲日午前0時から同日午前4時頃である。 P2が同日午前0時に帰宅していないことが確認されており,同日午前7時17分に救急隊がP2宅に到着した時に全身性に死後硬直が認められたことより推測した。 (ウ) 基礎疾患との関連についてP2が平成22年に受診した健康診断の心電図では,I度房室ブロックに加えて,不完全右脚ブロックと右側胸部誘導にお められたことより推測した。 (ウ) 基礎疾患との関連についてP2が平成22年に受診した健康診断の心電図では,I度房室ブロックに加えて,不完全右脚ブロックと右側胸部誘導におけるST上昇があり,ブルガダ症候群(タイプ2)の所見を認める。 また,P2はうつ病により通院しており,不眠症(早朝覚醒)があった。 (エ) 疾病発症と基礎疾患の関連について - 27 -ブルガダ症候群は,右脚ブロックパターン及び右側胸部誘導のST上昇を示し,明らかな心疾患を認めず,電解質異常やQT延長もなく,心室細動による突然死を起こす症候群とされている。その後,突然死のリスクの層別化が検討され,タイプ1のST上昇が認められることに加え,心室頻拍,心室細動が記録されているあるいは検査によって誘発されること,45歳以下の突然死の家族歴があること,家族に典型的タイプ1の心電図所見を認めること,失神や夜間の頻死期呼吸を認めるものなどがハイリスク群と考えられている。P2にはこれらのハイリスクを示唆する要因は認められず,心電図所見もタイプ2であり,突然死のリスクが高いとはいえない。 うつ病による不眠症(早朝覚醒)は,致死性不整脈と直接的な関連は指摘できないが,臥床時間が厳しく制限された場合には悪影響を及ぼすことは否定できない。 (オ) 考察P2の動脈硬化の主要な危険因子は喫煙のみであり,37歳という年齢からも冠動脈硬化によるものは可能性が低いと考えられる。健康診断の心電図では,ブルガダ症候群が疑われるが,心電図のパターンや他の要因からも突然死を起こすリスクは特に高いとはいえない。 P2の発症前1か月間の時間外労働は月80時間を超えており,うつ病による不眠症 ブルガダ症候群が疑われるが,心電図のパターンや他の要因からも突然死を起こすリスクは特に高いとはいえない。 P2の発症前1か月間の時間外労働は月80時間を超えており,うつ病による不眠症があり,時間外労働により臥床時間が制限されたことは自律神経系などを介した体調に悪影響を与えたことは否定できないが,うつ病は私病であり,認定基準に照らして,本件疾病の発症は業務外と判断せざるを得ない。 イ P18医師の意見書(甲B7,8)半田労働基準監督署が作成した時間外労働時間集計表では,P2の発症前1か月間における時間外労働時間は85時間48分であり,100時間 - 28 -に至っていないものの,うつ病にり患しており,早朝覚醒の症状があったP2にとって,発症前1か月間の業務は過重であったと考える。 なお,平成23年9月9日当時,P2に投与していた薬剤はフルボキサミン25ミリグラム,タンドスピロン10ミリグラム,○50ミリグラム及び○15ミリグラムである。当時,P2の症状は安定していたため,薬剤の副作用を考慮し,薬剤の増量は行っていない。 ウ独立行政法人労働者健康福祉機構P20病院精神科部長P21医師の意見書(乙97,110)うつ病の睡眠覚醒リズム障害,ひいては早朝覚醒の症状は,必要適切な治療により,改善させることができるところ,精神科治療の処方ガイドラインによれば,抗うつ薬の最小治療用量(有効な治療のための必要最小用量)は,フルボキサミンにつき100ミリグラム,○につき30ミリグラムであり,P2の内服量は推奨される薬用量よりも少ないことから,これが,P2の早朝覚醒や気分障害の症状改善が十分でなかった原因であるかもしれない。なお,投薬治療においては,単剤で必要最小の容量を与え,効果が現れなければ薬を変更するのが一般的 も少ないことから,これが,P2の早朝覚醒や気分障害の症状改善が十分でなかった原因であるかもしれない。なお,投薬治療においては,単剤で必要最小の容量を与え,効果が現れなければ薬を変更するのが一般的であり,多剤投与により相互に効果を高め合うことはない。 2 P2の時間外労働時間数の認定に関する補足説明P2の発症前6か月間における時間外労働時間数については,原被告間で争いがあるところ,以下,P2の時間外労働時間数について前記1(3)のとおり認定した理由を補足して説明する。 (1) P1における出退勤管理P1における出退勤管理は,各従業員によるタイムカードの打刻及び勤怠管理カードへの記入によってされており,責任者が,月末にタイムカードの打刻時刻と勤怠管理カードの記載内容を照合した上で,タイムカード及び勤怠管理カードを本社に提出していた。(証人P15・6頁) - 29 -勤怠管理カードは,従業員が自己申告により出勤時刻,退勤時刻及び休憩時間を記入するものであるところ,勤怠管理カード上,労働時間及び休憩時間は30分未満については切捨てとされ,いずれも30分単位で記入される扱いがされていた。(甲A5の1~6,乙29,54,証人P12・34頁,同P15・17頁)また,P1従業員が試作部門応援作業に従事した場合には,試作部門の責任者が,勤怠管理カードの所属長実績承認印欄に押印していた。(甲A5の1~6,乙29,54,証人P15・16,17頁)なお,勤怠管理カードは各日の労働時間を記入するものであるが,P2を含む従業員は,多忙な場合には,1週間ないし1か月分をまとめて記入することもあった。(証人P12・9,10頁,同P15・5,6頁)(2) 始業時刻ア P6工場出勤日における始業時刻aP12は,P6工場では には,1週間ないし1か月分をまとめて記入することもあった。(証人P12・9,10頁,同P15・5,6頁)(2) 始業時刻ア P6工場出勤日における始業時刻aP12は,P6工場では,所定始業時刻の5分前である午前8時55分に予鈴が鳴り,その後,ラジオ体操が行われるが,予鈴前には,D棟内の電気は消灯しており,P2は,P6工場出勤日には,工場到着後,予鈴が鳴る午前8時55分までの間,自家用車内で仮眠をとるか,喫煙所において喫煙するなどしていたと供述する。(証人P12・4~7頁)上記P12供述は,労働基準監督署における聴取時から一貫している上(乙14,94),P2と同じくD棟内で作業を行っていたP14が労働基準監督署における聴取の際,予鈴前,D棟内の電気は消灯しており,作業している者はいなかった旨供述していること(乙22)とも符合するもので,信用することができる。 そして,前記1(2)イのとおり,防振ベッド組立作業は,D棟内において,規定の工程に沿って行われる作業であるところ,上記のとおり, - 30 -予鈴前にはD棟内の電気は消灯していたこと,P2は,作業開始前に行われるミーティングにおいて,特に文書を作成することはなく,口頭でその日の業務内容を伝達していたこと(証人P12・25頁)も踏まえると,P2が,P6工場において,予鈴前に行うべき具体的業務が存在したことをうかがわせる事情も認められない。 この点,原告の指摘する実地調査復命書(乙1)は,厚生労働事務官がP14及びP1関係者2名に対する面接結果を記載したものであるところ,P2が,始業時,タイムカード打刻後に仕事を行っていたと思う旨の発言が記載された部分の発言者は明らかではなく(面接者の中で,P2の勤務状況を最もよく知っていると思われるP14は,同発言を るところ,P2が,始業時,タイムカード打刻後に仕事を行っていたと思う旨の発言が記載された部分の発言者は明らかではなく(面接者の中で,P2の勤務状況を最もよく知っていると思われるP14は,同発言をしたことを否定している(乙2)。),その発言内容も具体性に乏しく,発言者の推測にとどまるものであることから,上記記載内容の信用性は低く,採用できない。 b そうすると,P2が,P6工場において,タイムカード打刻後予鈴までの間業務に従事していたとは認められず,P6工場出勤日におけるP2の始業時刻は午前8時55分と認められる(ただし,平成23年5月19日及び同年7月19日については,P2のタイムカード打刻時刻がそれぞれ午前9時55分及び午前9時であることから,P2は上記各日については,上記各タイムカード打刻時刻に業務を開始したものと認められる。)。 イ P5センター出勤日における始業時刻前記第2の1前提事実(4)のとおり,P5センターにおける所定始業時刻は午前8時であるところ,P2がP5センターに出勤した際,午前8時以前に何らかの業務に従事していたと認めるに足りる証拠は存在しないから,P5センター出勤日におけるP2の始業時刻は午前8時であると認められる(ただし,前記1(2)カのとおり,P2は,平成23年8月22日 - 31 -から同年9月5日までの間,アルバイト社員を送迎していたため,この間の始業時刻は午前7時30分と認められる。)。 (3) 時間外労働における休憩時間ア P6工場において,時間外労働の際の休憩時間は午後6時,午後8時及び午後10時に各15分ずつ取得することとされているところ,P12は,P2も,休憩開始時刻後間もなく当日の作業が終了することが見込まれる場合等には休憩を取得せず引き続き業務に従事することがあ 8時及び午後10時に各15分ずつ取得することとされているところ,P12は,P2も,休憩開始時刻後間もなく当日の作業が終了することが見込まれる場合等には休憩を取得せず引き続き業務に従事することがあったものの,試作部門応援作業等の時間外労働に従事した際には,各休憩開始時刻に他の従業員と共に喫煙所に赴き,喫煙,談笑するなどして15分間の休憩を取得することが多かったと供述する。(証人P12・8,9,32頁)P12は,労働基準監督署における聴取時から一貫して,試作部門における休憩は15分間ずつ取得していたが,休憩時間過ぎに仕事が終わる場合には休憩を取得しなかった場合もある旨供述しており(乙18),上記P12供述は信用することができる。 イこの点,原告は,勤怠管理カードの記載は正確性を欠き,3時間以上の時間外労働に従事した場合に機械的に30分間の休憩時間を記入していたにすぎないとし,P2が午後6時以降ブログの更新等をしていないことに照らせば,P2は,時間外労働に従事した際,所定の休憩を取得していなかった旨主張する。 しかし,勤怠管理カードについては,P2がある程度まとめて記入していたことがあったとはいえ,常時そうであったわけではないし(前記1(2)オ参照),前記(1)のとおり,責任者の照合ないし確認を経ていたこと,P2が,平成23年9月分の勤怠管理カード備考欄に,各日の試作部門応援作業開始時刻及び終了時刻を記入していること(甲A5の6,乙29)にも照らすと,勤怠管理カードの記載については一定の正確性が認め - 32 -られる。 そして,前記(1)のとおり,勤怠管理カード上,休憩時間は30分単位で記入される扱いがされているところ,P2の勤怠管理カードの休憩時間欄に空欄か0.5のみが記載されて 2 -られる。 そして,前記(1)のとおり,勤怠管理カード上,休憩時間は30分単位で記入される扱いがされているところ,P2の勤怠管理カードの休憩時間欄に空欄か0.5のみが記載されているという点について,P15の供述中には,午後8時を過ぎた場合には,実態に関係なく,30分の休憩時間を勤怠管理カードに記載するかのように受け止められる部分がある(証人P15・20,21頁)が,そもそもP15は,月末を除き,午後5時には退社しており,午後5時以降の労働実態を認識しているわけではない上,上記供述部分の前後に,時間外労働の際,従業員が15分間の休憩を取得した場合であっても,労働時間として申告することを認めている旨の供述をしていること(証人P15・17頁,27頁),P2の勤怠管理カード上,終業時刻が午後8時を超える場合であっても,休憩時間欄が空欄となっている日が存在すること(甲A5の1~6,乙29)に照らせば,P15の上記供述部分は,15分間の休憩については労働時間として扱い,残業手当を支払うことを黙認していたという趣旨のものであると考えられるから,同供述部分によって,実際に休憩を取得していない場合であっても,時間外労働時間数が一定時間を超過すれば勤怠管理カードに30分間の休憩時間を記入することになっていたとは認められない。 ブログの更新等についても,防振ベッド組立作業時にはD棟内に携帯電話を持ち込むことが可能であったのに対し,試作部門応援作業時には,B棟内に携帯電話を持ち込むことは禁止されており,従業員らは各自の携帯電話をロッカーに預ける必要があったこと(証人P12・26頁,同P15・15頁),前記アのとおり,時間外労働の際の休憩は1回当たり15分間程度であること,P2は休憩中,他の従業員らと喫煙所で過ごしていたこと カーに預ける必要があったこと(証人P12・26頁,同P15・15頁),前記アのとおり,時間外労働の際の休憩は1回当たり15分間程度であること,P2は休憩中,他の従業員らと喫煙所で過ごしていたことに照らすと,P2が,時間外労働の際の休憩時間に,携帯電話をロッカーから取り出してブログの更新等をしていなかったとしても不自然と - 33 -はいえない。 そうすると,原告の上記主張は採用できない。 ウ以上によれば,P2の勤怠管理カード上,休憩時間欄が空欄となっている部分については,P2は,休憩を取得していないか,又は,15分間の休憩を取得したものの,これを記入しなかったものと考えられ,休憩時間欄に0.5と記載されている部分については,P2は,合計30分間の休憩を取得したか,又は,合計45分間の休憩を取得したものの,内15分間については休憩時間に算入しなかったものと考えられるから,P2は,少なくとも,勤怠管理カードの休憩時間欄に0.5と記載されている部分については合計30分間の休憩を取得していたものと認めて,その分を控除するのが相当である。 (4) 終業時刻ア原告は,P2がタイムカード打刻後,日常的に30分間から40分間程度,E棟2階において事務作業に従事していた旨主張するが,P2の発症前1か月間におけるP2のタイムカード打刻時刻とE棟2階の鍵返却時刻を比較すると,P2のタイムカード打刻後,30分以上経過してE棟2階の鍵が返却されている日は12日間にとどまる上,鍵の返却者はいずれもP2ではないこと(甲A4の13・14,乙27,28)に照らせば,P2が,タイムカード打刻後,日常的に,E棟2階において30分間から40分間程度の事務作業を行っていたとは考え難い。 イこの点,P12は,タイムカード打刻後のP2の行動に関し ,28)に照らせば,P2が,タイムカード打刻後,日常的に,E棟2階において30分間から40分間程度の事務作業を行っていたとは考え難い。 イこの点,P12は,タイムカード打刻後のP2の行動に関し,P2は,P6工場における防振ベッド組立作業ないし試作部門応援作業終了後,P12と共に,E棟1階に設置してあるタイムカードラックに向かい,同所においてタイムカードに打刻した後,駐車場に向かうか,P12に対し,たばこを吸ってくると言い,P12と別れていた,ただし,P2は,タイムカード打刻前に,P12に対し,事務作業を行うと告げてE棟2階の事 - 34 -務室に向かうことはあった旨供述しているところ(証人P12・12,27~29頁),上記P12供述は,労働基準監督署における事情聴取時から変遷しておらず(乙14,乙94),原告代理人による反対尋問にも揺らいでいない上(証人P12・26~29頁),退勤時のP2とP12のタイムカード打刻時刻はほぼ一致しているものの,P2のタイムカード打刻時刻がP12より30分以上遅い日も数日存在すること(甲A4の1~14,乙28,53)とも整合するもので,信用することができる。 ウもっとも,上記P12供述は,P2が,P12と別れた後,再びE棟2階に赴き,事務作業に従事した可能性を否定するものではないものの,P2が,P12に対し,タイムカード打刻後に事務作業を行うことを秘して帰宅を装う合理的理由は見当たらず,P2が,帰宅のため駐車場に赴いた後,翻意してE棟に戻り事務作業に従事することが頻繁にあったとは考え難い上,前記1(2)オのとおり,P2が行っていた事務作業は,勤怠管理カードの記入のほか,週報,チェックシート,請求明細書及び生産指示書の作成であったところ,P2が防振ベッド組立作業の空き時間にも上記事務作業 1(2)オのとおり,P2が行っていた事務作業は,勤怠管理カードの記入のほか,週報,チェックシート,請求明細書及び生産指示書の作成であったところ,P2が防振ベッド組立作業の空き時間にも上記事務作業を行っていたことに加え,週報の各日の記載量(甲A6の1~6,乙48)にも照らせば,P2が防振ベッド組立作業終了後に多量の事務作業を行う必要があったとはうかがわれず,P2が,業務の過重性の判断において,一定の労働時間として考慮すべき程度に多数回又は長時間にわたるサービス残業を行っていたとは認められない。 そうすると,P2の終業時刻はタイムカード打刻時刻とするのが相当である。 (5) 平成23年9月22日原告は,P2が同日出勤していた旨主張するところ,P2が,同月21日,友人に対し,「明日は午前中仕事で,P16に寄ってゴム取ってきます。」との電子メールを送信しており(甲A15の1),P2の自家用車のカ - 35 -ーナビゲーションシステム上,同月22日「P16P17営業所」との履歴が存在する(甲A20)。 しかし,P2は,休日出勤をした場合には,たとえ短時間であってもタイムカードに打刻し,勤怠管理カードに出退勤時刻を記入しているにもかかわらず,P2の同日のタイムカード及び勤怠管理カードには出退勤の記録がないこと(乙28,29)に照らすと,P2が,同日,P6工場ないしP5センターに出勤したとは認められない。また,P16の売上納品請求書及び納品リスト上,同日,P16からP6工場に納入された部品は見当たらないこと(乙68~71),防振ベッド組立部門において,P16に発注した部品の受取はP4従業員が行う仕組みになっていること(証人P12・12頁,同P15・8頁),前記1(7)のとおり,P2は,車の整備,パーツ等を共通話題とするソーシャルネ 門において,P16に発注した部品の受取はP4従業員が行う仕組みになっていること(証人P12・12頁,同P15・8頁),前記1(7)のとおり,P2は,車の整備,パーツ等を共通話題とするソーシャルネットワーキングサービスに会員登録していたところ,上記電子メールの送信先は,同じ会員であること(乙101)に照らすと,仮に,同日,P2がP16P17営業所を訪れていたとしても,私的な部品購入等の目的であった可能性を否定できず,業務に関連する訪問であったとは認められない。 そうすると,P2が,平成23年9月22日に出勤し,あるいは業務に従事したものとは認められない。 3 争点に対する判断(1) 業務起因性に関する法的判断の枠組みについてア労災保険法及び労働基準法に基づく保険給付は,労働者の業務上の疾病等に関して行われる(労災保険法7条1項1号)ところ,労災保険制度は,使用者が労働者を自己の支配下に置いて労務を提供させるという労働関係の特質を考慮し,業務に内在する各種の危険が現実化して労働者が疾病にかかった場合には,使用者の過失の有無を問わずに労働者の損失を填補する,いわゆる危険責任の法理に基づく制度であることを踏まえると, - 36 -労働者が「業務上」の疾病にかかった場合とは,労働者が業務に起因して疾病にかかった場合をいい,そのような場合に当たるというためには,業務と疾病との間に相当因果関係が認められなければならないと解すべきであり(最高裁判所昭和51年11月12日第二小法廷判決・裁判集民事119号189頁参照),業務と疾病との間の相当因果関係の有無は,その疾病が当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべきである(最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決・裁判集民事178号83頁,最高 の相当因果関係の有無は,その疾病が当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべきである(最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決・裁判集民事178号83頁,最高裁判所平成8年3月5日第三小法廷判決・裁判集民事178号621頁)。 また,上記危険責任の法理に照らすと,業務の危険性は客観的に評価すべきであるから,当該業務に内在する危険が現実化したものと評価しうるか否かは,当該労働者と同種の平均的労働者,すなわち,何らかの個体側の脆弱性を有しながらも,当該労働者と職種,職場における立場,経験等の点で同種の者であって,特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者(以下「平均的労働者」という。)を基準とすべきである。 ところで,脳・心臓疾患は,その発症の基礎となる血管病変等が,様々な要因により長い年月の間に徐々に形成され,進行,増悪する経過を経て発症に至るものであり,本来,業務に特有の疾病ではない(乙8・131頁)。しかし,上記発症に至る過程において,労働者が従事した業務の負荷が過重であったため,発症の基礎となる血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し,その結果,脳・心臓疾患が発症した場合には,業務に内在する危険が現実化して脳・心臓疾患が発症したものとして相当因果関係を認めるのが相当である(上記最高裁判所平成8年3月5日第三小法廷判決,最高裁判所平成9年4月25日第三小法廷判決・裁判集民事183号293頁,最高裁判所平成12年7月17日第一小法廷判決・裁判集民 - 37 -事198号461頁参照)。 イこの点,認定基準は,近時の医学的知見を踏まえて作成されており,かつ,前記アの脳・心臓疾患の業務起因性に関する法的判断の枠組みとも整合するものであるから,行政処分の違法性に関 461頁参照)。 イこの点,認定基準は,近時の医学的知見を踏まえて作成されており,かつ,前記アの脳・心臓疾患の業務起因性に関する法的判断の枠組みとも整合するものであるから,行政処分の違法性に関する裁判所の判断を直接拘束するものでないことは当然ではあるものの,その作成経緯や内容に照らして一定の合理性を有するものと認められる。 したがって,脳・心臓疾患の業務起因性の判断においては,基本的には認定基準を参考としつつ,発症に至るまでの具体的事情を総合的に斟酌し,必要に応じてこれを修正する手法により,業務と発症との間の相当因果関係を判断するのが相当である。 (2) 本件における業務起因性ア P2の死因前記第2の1前提事実(6)のとおり,検視の結果,P2の直接死因は虚血性心疾患の疑いと判断されており,前記1(8)アのとおり,専門部会意見書において,P2の疾患名は致死性不整脈による心停止である旨記載されていることに照らすと,P2が発症した疾病(本件疾病)は,認定基準における対象疾病である虚血性心疾患等のうち「心停止(心臓性突然死を含む。)」とみるのが相当である。 イ異常な出来事前記1(4)キのとおり,P2は,発症前日である平成23年9月▲日,P6工場において通常業務に従事していたもので,本件全証拠を検討しても,P2が,発症前日から発症直前にかけて,特に強度の精神的負荷を引き起こす異常な事態,緊急に強度の精神的負荷を強いられる異常な事態及び,急激で著しい作業環境の変化などの異常な出来事に遭遇したとの事情は見当たらない。 ウ短期間の過重業務 - 38 -前記1(3)のとおり,P2の発症前1週間における総労働時間は59時間56分,時間外労働時間数は19時間56分であることに照らす 情は見当たらない。 ウ短期間の過重業務 - 38 -前記1(3)のとおり,P2の発症前1週間における総労働時間は59時間56分,時間外労働時間数は19時間56分であることに照らすと,この間,P2の労働時間はある程度長時間であったといえるものの,P2は,平成23年9月 ▲ 日及び同月 ▲ 日には連続した2日間の休日を取得していたこと,前記1(4)のとおり,この間,P2はそれ以前と同内容の業務に従事していたことに照らすと,P2が,発症前1週間において,日常業務に比較して特に過重な身体的,精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務に従事したものとは認められない。 エ長期間の過重業務(ア) 業務の量的過重性前記1(3)のとおり,発症前1か月間におけるP2の時間外労働時間数は85時間48分であり,認定基準において業務と発症との関連性が強いと評価される100時間程度には至っておらず,また,この間,P2は,平成23年9月15日に半日間の休日出勤をしたことを除き,1週間に連続した2日間の休日を確保できていたこと,終業時刻が午後10時以降の深夜時間帯に及ぶ日が合計13日間存在するものの,そのうち,午前0時を超えた日は同年8月30日(午前0時9分)及び同年9月3日(午前0時11分)の2日間のみであり,その余の終業時刻はおおむね午後10時30分よりも前であることに照らすと,P2が発症前1か月間において特に過重な長時間労働に従事していたとまでは認められない。 また,認定基準において,1か月当たり45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まり,発症前2か月間ないし6か月間にわたり1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発 り45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まり,発症前2か月間ないし6か月間にわたり1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと評価できるとされているところ(乙7),前記1(3)のとおり,発症前6か月間 - 39 -におけるP2の時間外労働時間数をみると,最長は発症前4か月目における62時間33分であり,発症前2か月目,5か月目及び6か月目におけるP2の時間外労働時間は10時間にも達しておらず,P2は,1週間に連続した2日間の休日をおおむね確保していたほか,平成23年4月6日から同月11日までの間,同月29日から同年5月10日までの間及び同年8月12日から同月19日までの間は比較的長期の休暇を取得しており,それまでに蓄積した疲労を回復することが十分に可能であったといえることに照らすと,P2が,発症前6か月間にわたり特に過重な長時間労働に従事したとも認められない。 以上によれば,発症前6か月間におけるP2の時間外労働時間数自体が本件疾病発症と強い関連性を有する程度に長時間であったとは認められない。 なお,原告は,P2が自宅からP6工場まで往復2時間10分の自動車通勤をしていたことから,P2は,発症前1か月間において100時間の時間外労働に従事した場合と同程度の状況にあった旨主張するが,通勤時間は労務提供の前提行為ではあるものの,その時間の過ごし方については労働者の自由に委ねられているものであって労務の提供そのものではなく,労働時間と同視することはできない。 加えて,前記第2の1前提事実(1)のとおり,P6工場はP5センターと同一町内にあることからすると,P7事業所設立に伴いP2の通勤時間が長時間化したともいい難いところ,専門 視することはできない。 加えて,前記第2の1前提事実(1)のとおり,P6工場はP5センターと同一町内にあることからすると,P7事業所設立に伴いP2の通勤時間が長時間化したともいい難いところ,専門検討会報告書において,業務と長時間労働の関連性の検討に際し,労働者の1日の生活時間に関する調査を参考に,食事,身の回りの用事,通勤等の時間として5時間30分が考慮されていること(乙8)に照らすと,P2の通勤時間が一般的な労働者と比較して格別長時間であって,過重な肉体的負担をもたらすものであるとも認められないから,P2が往復2時間10分の自動 - 40 -車通勤をしていたことをもって,P2の発症前1か月間の時間外労働時間数が100時間に相当するものであったとはいえない。 (イ) 業務の質的過重性a 試作部門応援作業前記1(3)のとおり,P2の時間外労働時間数は,夏季休暇期間である発症前2か月目を除き,発症前4か月目以降40時間を超える水準にあり,発症前1か月間は急増しているところ,その主たる原因は,前記1(2)アのとおり,P2が午後6時以降も試作部門応援作業に従事するようになったことにあるといえる。 この点,試作部門応援作業は,事前に終了時刻が定められておらず,また,本来の業務終了後に行うもので,手待ち時間がほとんど存在しなかったことから,P2にとって負担となる業務であったことは否定できないものの,前記1(2)ウのとおり,試作部門応援作業におけるP2の業務内容は,部品の仕分け及び運搬という補助的作業であることから,それほど肉体的,精神的負荷のかかる困難な作業であるとはいえない上,時間外労働時間数が発症前1か月間に急増するなど変動したことについても,発症前1か月間の時間外労働時間数(85時間48分)自 から,それほど肉体的,精神的負荷のかかる困難な作業であるとはいえない上,時間外労働時間数が発症前1か月間に急増するなど変動したことについても,発症前1か月間の時間外労働時間数(85時間48分)自体,前記(ア)のとおり,業務と発症の関連性が強いと認められる程度には至っていないことに照らすと,試作部門応援作業によるP2の業務負荷が特に過重なものであったとまでは認められない。 bP5センターにおける業務前記1(2)エのとおり,P5センターにおけるP2の業務は輸出用自動車のオプション部品取付作業であったところ,同作業には,野外に駐車された自動車を作業建屋まで移動させる業務も含まれており,P12及びP15の供述によれば,夏季は車内温度が上がり,ハンド - 41 -ルが熱くて触れない状態に近い日もあったことが認められる。(証人P12・15頁,同P15・11頁)この点,高温環境については,脳・心臓疾患の発症との関連性は明らかでないとの医学的知見が存在すること(乙8・100頁)も踏まえ,認定基準において,著しい高温環境下で業務に就労している状況が認められる場合には,過重性の評価に当たって配慮することとされているところであり(乙7),P5センターにおける業務はそれなりに高温の環境での作業を含むものであったといえるものの,上記1(2)エのとおり,野外駐車場は作業建屋から徒歩で1,2分の距離にあること,夏季,野外に駐車された自動車を運転する行為は日常生活においても経験するものであることにも照らすと,P5センターにおける業務が著しい高温環境下における業務であったとまでは認められず,業務負荷の評価を過重する方向で考慮するのは相当ではない。 c 休日の変更前記第2の1前提事実 ターにおける業務が著しい高温環境下における業務であったとまでは認められず,業務負荷の評価を過重する方向で考慮するのは相当ではない。 c 休日の変更前記第2の1前提事実(4)イのとおり,P1における所定休日は平成23年7月から同年9月までの間,木曜日及び金曜日に変更されたところ,かかる休日の変更は,休日の日数自体を減少させるものではない上,P1の全従業員を対象とするもので,かつ上記期間中,休日は固定されていたのであるから,不規則な勤務となったともいえない。 そうすると,上記休日の変更により,P2が,休日を家族と過ごすことができないというストレスを感じていたとしても,疲労の蓄積及び回復という観点からみると,日常業務に従事する上で通常受ける負荷の範囲にとどまるものであり,業務による負荷として格別考慮すべき事情であるとは認められない。 d チーフ昇進の内示 - 42 -前記1(2)キのとおり,P2は平成23年9月初旬,同年10月以降チーフに昇進する旨の内示を受けたもので,チーフは,従業員らの勤怠及び仕事の進行等を管理する立場であることから(証人P15・2頁),P2は,上記内示によって,今後,責任を伴う立場となることに重圧を感じていたことがうかがわれる。もっとも,同年9月の時点においては,内示がなされたに過ぎず,実際にP2の業務内容が変更されたものではない上,当時チーフであったP15が日常的に行っていた具体的業務内容としては,P5センターに出勤し,同所において輸出車オプション部品取付作業に従事した後,P6工場に赴き,事務作業や会議,現場の見回りを行い,従業員のタイムカードと勤怠管理カードの照合を行う月末を除き,おおむね午後5時に退社するというものであった(証人P15・2,3頁)ことにも照 後,P6工場に赴き,事務作業や会議,現場の見回りを行い,従業員のタイムカードと勤怠管理カードの照合を行う月末を除き,おおむね午後5時に退社するというものであった(証人P15・2,3頁)ことにも照らすと,チーフ昇進内示による業務負荷の程度が大きかったとはいえない。 オ業務外の要因について(ア) P2のうつ病前記1(5)イによれば,P2はうつ病にり患しており,特に,平成23年9月ごろからは早朝覚醒の症状が発現していたことが認められる。 この点,前記1(8)アのとおり,うつ病による早朝覚醒は,致死性不整脈(本件疾病)と直接的な関連は指摘できないが,臥床時間が厳しく制限された場合には悪影響を及ぼすことは否定できないとされているところ,前記1(3)のとおり,発症前1か月間におけるP2の時間外労働時間数が85時間48分にとどまることに照らすと,P2の早朝覚醒を考慮しても,業務により臥床時間が厳しく制限された場合には該当しない。 よって,うつ病を発症していたP2にとって,月80時間程度の時間外労働時間が過重であった旨の原告の主張は採用できない。 - 43 -他方,被告は,P2の早朝覚醒の原因は,投薬量が十分でなかったことによるものである旨主張するが,P2への投薬は,主治医であるP18医師が,P2の病状及び生活状況を踏まえて決定していたもので,明らかに不適切な処方であったとまでは認められず,その治療経過を業務以外の要因として考慮することも相当ではない。 (イ) ブルガダ症候群前記1(5)ア及び(8)アのとおり,P2の心電図検査の結果によれば,P2にはブルガダ症候群の所見が認められる。 この点,ブルガダ症候群は,心電図の異常,それに伴う心室細動,突然死が問題となる疾患であり(乙8 ア及び(8)アのとおり,P2の心電図検査の結果によれば,P2にはブルガダ症候群の所見が認められる。 この点,ブルガダ症候群は,心電図の異常,それに伴う心室細動,突然死が問題となる疾患であり(乙83),専門部会意見書において,P2には特にハイリスク要因がなく,心電図所見もタイプ2であることから,突然死のリスクが高いとはいえないとの意見が示されており(前記1(8)ア),ブルガダ症候群は運動負荷や重労働が病態を悪化させるという報告はなく,その原因は不明である(乙8,83)ものの,睡眠不足やストレスによって自律神経のバランスを不安定にさせることの方が同症候群に影響する可能性が指摘されていること(乙83)に照らせば,P2が,うつ病による早朝覚醒及びそれに伴うストレスにより,自律神経のバランスを崩し,持病であるブルガダ症候群の症状を悪化させた可能性は否定できない。 (ウ) 喫煙習慣喫煙は虚血性心疾患のリスクファクターとなる旨の医学的知見が存在するところ(乙8・124頁),P2には,前記1(6)のとおり喫煙習慣があった。 (エ) その他前記1(7)のとおり,P2は,早朝に自家用車の改造作業を行い,業務終了後に友人宅を訪問することがあったほか,休日や業務終了後には - 44 -ブログの更新等をしていたものの,専門検討会報告書において,労働者の1日の生活時間のうち余暇に充てる時間として2時間30分が考慮されていること(乙8・98頁)に照らすと,P2の上記行動も一般的な余暇の範囲内であって,P2の睡眠時間の確保や疲労の回復を格別妨げたものとまでは認められない。 カ小括以上によれば,P2は本件疾病の発症直前に異常な出来事に遭遇したとは認められず,短期間の過重業務に従事したとも認められな 間の確保や疲労の回復を格別妨げたものとまでは認められない。 カ小括以上によれば,P2は本件疾病の発症直前に異常な出来事に遭遇したとは認められず,短期間の過重業務に従事したとも認められない。また,P2の発症前6か月間における時間外労働時間数はそれ自体として特に過重なものとはいえない上,この間,P2がP6工場において従事していた防振ベッド組立作業及び試作部門応援作業並びにP5センターにおいて従事していた輸出用自動車のオプション部品取付作業等が特に過重な身体的,肉体的負荷となる業務内容であったとはいえず,休日の変更及びチーフ昇進の内示についても,過重な身体的,肉体的負荷をもたらすものであったともいえないから,P2が長期間の過重業務に従事したとも認められない。 そうすると,P2が業務による明らかな過重負荷を受けていたものとは認められない。 そして,P2は,うつ病に伴う早朝覚醒,ブルガダ症候群及び喫煙習慣という業務外の要因を複数有していたことに照らすと,P2の本件疾病の発症は,発症に至る過程において,業務の負荷が過重であったため,発症の基礎となる血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪したものとは認められない。 したがって,本件疾病は,P2の業務に内在する危険が現実化したものと評価することはできず,P2の業務と本件疾病との間に相当因果関係を認めることはできない。 第4 結論 - 45 -よって,本件各不支給処分はいずれも適法であり,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官田邊浩典 裁判官吉岡大地 判所民事第1部 裁判長裁判官田邊浩典 裁判官吉岡大地 裁判官木野村瑛美子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る