1 令和5年10月16日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第25884号 損害賠償等請求事件口頭弁論終結日 令和5年6月26日判 決主 文51 被告会社及び被告Cは、原告Aに対し、連帯して、110万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告会社及び被告Cは、原告Bに対し、連帯して、110万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3%の割合による金10員を支払え。 3 被告会社は、ツイッターアカウント「Dappi」(ユーザー名 @dappi2019)から、別紙1投稿記事目録記載の投稿を削除せよ。 4 被告会社及び被告Cに対するその余の請求並びに被告Dに対する請求をいずれも棄却する。 155 訴訟費用は、原告ら、被告会社及び被告Cに生じた費用の9分の2を被告会社の、9分の1を被告Cの各負担とし、原告ら、被告会社及び被告Cに生じたその余の費用と被告Dに生じた費用を原告らの負担とする。 6 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由20第1 請求1 被告らは、原告Aに対し、連帯して、440万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Bに対し、連帯して、440万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 253 主文第3項同旨2 4 被告らは、連名で、別紙2謝罪広告目録記載の謝罪広告を、ツイッターアカウント「Dappi」(ユーザー名:@dappi2019)において、判決 払え。 253 主文第3項同旨2 4 被告らは、連名で、別紙2謝罪広告目録記載の謝罪広告を、ツイッターアカウント「Dappi」(ユーザー名:@dappi2019)において、判決確定日から1か月間掲載せよ。 第2 事案の概要本件は、原告らが、ツイッター(インターネットを利用してメッセージ等を5投稿することができる情報ネットワーク)上に開設されたアカウント(ユーザー名「@dappi2019」。以下「本件アカウント」という。)から投稿された別紙1投稿記事目録記載の記事(以下「本件記事」という。)によりその名誉を毀損されたところ、本件記事は被告会社がその業務として投稿したものであり、被告会社の代表取締役である被告C及び取締役である被告Dは、被告10会社の業務の執行として、自ら又は第三者をして上記投稿を行ったものであると主張し、被告らに対し、不法行為責任に基づき、連帯して、原告ら各自につき各440万円及びこれに対する令和2年10月26日(不法行為の後の日)から各支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告会社に対し、名誉権(人格権)に基づき、本件アカウントからの本件記事15の削除を求め、さらに、被告らに対し、名誉回復のための適当な処分(民法723条)として、本件アカウントにおいて別紙2謝罪広告目録記載の謝罪広告を掲載するよう求める事案である。 1 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠(特に注記しない限り、20いずれも枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる。 ⑴ 当事者等ア 原告らは、令和2年10月25日当時、参議院議員であった者である。 イ 被告会社は、平成13年に設立された株式会社であり、商業登記記録上は て容易に認められる。 ⑴ 当事者等ア 原告らは、令和2年10月25日当時、参議院議員であった者である。 イ 被告会社は、平成13年に設立された株式会社であり、商業登記記録上は、ウェブサイトに関する企画、制作業務及びシステムコンサルティン25グ業務、情報通信システムに係るシステムインテグレーション業務、広3 告宣伝の企画、制作及び広告代理店業務等の事業がその目的とされている(甲3)。 ウ 被告会社においては、設立以来、被告Cが代表取締役を、被告Dが取締役を務めており、他に役員はいない(甲3、乙2、3)。 ⑵ 本件記事の投稿等5ア 本件アカウントは、令和元年6月に開設されたもので、本件アカウントからは、インターネット上で配信されているニュース番組や国会中継等の動画又は新聞記事の一部を、その内容の要約やこれに対するコメント等とともに引用して掲載する記事が多数投稿されてきた。令和2年10月25日時点における本件アカウントからの投稿数は5137件であり、本件ア10カウントのフォロワー数は約15万9300人であった(甲13、15)。 イ 令和2年10月25日午前7時57分、本件アカウントにおいて、学校法人森友学園への国有地売却に関する公文書の書換えに関与し、その後自死した財務省近畿財務局職員に関する新聞記事(「【新聞に喝!】事実とは“真逆”の報道」)を引用し、「近財職員はBやAが1時間吊るしあげた翌15日に自殺。左派メディアは野党に都合が悪いことは報じない」などと記載した記事(本件記事)が投稿された。本件記事は、国会議員である原告らが上記職員を1時間にわたり一方的に問責し、その結果、上記職員を自死に追い込んだとの印象を与えるものであり、原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものに当 本件記事は、国会議員である原告らが上記職員を1時間にわたり一方的に問責し、その結果、上記職員を自死に追い込んだとの印象を与えるものであり、原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものに当たる。 20ウ 原告らは、令和3年1月27日、本件アカウントへのログイン情報に関し、ツイッターを運営する法人であるツイッター・インクを債務者とする発信者情報開示仮処分決定(東京地方裁判所令和2年(ヨ)第4112号、同4113号)を得て、その頃、同社から、令和2年10月25日以降の上記ログイン情報の開示を受けた(甲6ないし10)。 25エ 原告らは、上記開示の結果、令和2年11月17日から令和3年1月24 7日までの間に、本件アカウントにエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「NTT」という。)を経由プロバイダとして合計37回のログインがされていること等が判明したことから、NTTを被告として、上記ログイン情報に係る回線契約者についての発信者情報の開示を求める訴訟を提起し、同年9月3日、上記請求を認容する判決を得た(東5京地方裁判所令和3年(ワ)第7690号)。原告らは、上記判決に基づき、同月28日、NTTから上記情報の開示を受け、その結果、上記ログインは、いずれも、被告会社がNTTとの間で契約し、その本社事務所(以下「被告事務所」という。)で使用していたインターネット回線(以下「被告会社回線」という。)を利用して行われていたことが判明した10(甲11、12)。なお、上記期間において、本件アカウントに被告会社回線ではない回線を利用してログインした形跡は見受けられない。 ⑶ 本件訴訟の経過等(いずれも当裁判所に顕著)ア 原告らは、令和3年10月6日、本件訴訟を提起した。 イ 本件訴訟において、被告らは、本 はない回線を利用してログインした形跡は見受けられない。 ⑶ 本件訴訟の経過等(いずれも当裁判所に顕著)ア 原告らは、令和3年10月6日、本件訴訟を提起した。 イ 本件訴訟において、被告らは、本件記事の投稿は被告会社の従業員が被15告会社の業務とは無関係に私的に行ったものであると主張したが、上記従業員の私生活上の平穏が害されるおそれがあるとして、その氏名等の開示には応じなかった。また、被告会社は、上記従業員に対して就業規則違反(職務外目的での会社物品等の使用、職務専念義務違反等)を理由として減給3か月(令和3年12月分から令和4年2月分まで、いずれも基本給2010%減)の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という。)を行ったと主張し、その証拠として、上記従業員に係る令和3年11月分から令和4年3月分までの給与明細書であるとする文書(ただし氏名欄等がマスキングされたもの。乙1)を提出した。 ウ 当裁判所は、令和5年3月13日、被告会社に対し、上記給与明細書25(氏名欄等のマスキングのないもの)を決定確定から2週間以内に提出す5 るよう命ずる決定(以下「本件文書提出命令」という。)をしたが、被告会社は提出に応じていない。 2 争点及びこれに対する当事者の主張本件の争点は、争点⑴ 本件記事の投稿の業務性5争点⑵ 原告らの損害及びその額争点⑶ 削除請求及び謝罪広告請求の当否である。 ⑴ 争点⑴(本件記事の投稿の業務性)について(原告らの主張)10ア 本件アカウントは被告会社において継続的かつ組織的に利用されてきたものであり、本件記事は、被告会社の業務として、被告C又は被告Dが自ら投稿し又は第三者に投稿させたものであるから、上記投稿は被告らにより行われたものである 社において継続的かつ組織的に利用されてきたものであり、本件記事は、被告会社の業務として、被告C又は被告Dが自ら投稿し又は第三者に投稿させたものであるから、上記投稿は被告らにより行われたものである。 イ 本件記事の投稿が業務として行われたものであること15本件記事の投稿の業務性本件アカウントからは、令和元年6月の開設以来、令和3年10月5日までの間に合計5137件(1日当たり平均6件)の記事の投稿が行われており、投稿が行われた時間は、平日の午前9時から午後10時までの間に集中している。また、本件アカウントへは、令和2年11月1207日から令和3年1月27日までの間(土日祝日等を除くと48日間)のみでも、37回にわたり被告会社回線のみからログインが行われており、少なくとも188件の記事の投稿が行われている。上記記事は、その多くがインターネットのニュース番組や国会中継等の動画を編集し、その内容を要約して文字起こしをしたものであって、その投稿のために25は、動画の視聴、題材の選定、内容の要約、動画等の編集等を行わなけ6 ればならず、相当の時間と労力を要するにもかかわらず、一部の記事は素材となる番組が放送されてから間を置かずに投稿されている。加えて、これらの投稿がスマートフォン等の携帯端末からではなくウェブブラウザ上で行われていることも考慮すると、被告事務所のレイアウト等を踏まえても、被告会社の他の従業員等が、これらの投稿が行われているこ5とに気付かなかったなどということはあり得ず、上記投稿が従業員1名により私的に行われていたとは考えられない。なお、被告会社は、令和3年4月にNTTから発信者情報開示に係る意見照会を受けて本件記事の投稿について把握したとされるところ、本件アカウントからはその後も投稿が行 的に行われていたとは考えられない。なお、被告会社は、令和3年4月にNTTから発信者情報開示に係る意見照会を受けて本件記事の投稿について把握したとされるところ、本件アカウントからはその後も投稿が行われ、被告会社回線が本件アカウントへのログインに用いら10れた旨が公にされた直後である同年10月になって上記投稿が停止されるに至ったが、これは、上記投稿が被告会社の業務であったため、被告会社の関与が公になるまでは会社としての業務を継続せざるを得なかったことによるものと考えるのが合理的である。 給与明細書に記載された氏名15被告会社は、本件記事の投稿者に対して本件懲戒処分を行ったとし、その裏付けとして給与明細書(氏名等がマスキングされたもの。乙1)を提出するところ、これによれば、基本給の月額は110万円であり、残業手当等は支給されていないのであるから、上記給与明細書は被告会社における役職者、すなわち被告C又は被告Dのものであることが容易20に推認される。加えて、被告会社は、上記給与明細書のうち氏名等のマスキングのないものを提出するよう命ずる決定(本件文書提出命令)を受けたにもかかわらず、これを提出していないのであるから、上記給与明細書の氏名欄に被告C又は被告Dの氏名が記載されている旨の原告らの主張が真実であると認められるべきである。 25そうすると、被告C又は被告Dは、自ら本件記事を投稿した者として7 減給処分を受け、又は真実の投稿者をかばうため、自らが減給処分を受けた(若しくはそのような外観を作出した)ということになるのであるから、本件記事の投稿は被告会社の業務として行われたとみるほかない。 以上によれば、本件記事は、被告会社の業務として、被告C又は被告Dが自ら投稿し又は第三者に投稿させたものであって、その投 であるから、本件記事の投稿は被告会社の業務として行われたとみるほかない。 以上によれば、本件記事は、被告会社の業務として、被告C又は被告Dが自ら投稿し又は第三者に投稿させたものであって、その投稿が被5告らによって行われたものであることは明らかである。 (被告らの主張)ア 原告らの主張は否認する。本件記事の投稿は、被告会社の従業員が、被告会社の業務とは無関係に私的に行ったものであり、被告らは、本件アカウントの開設及び投稿に何ら関与していない。被告会社は、本件記事の投10稿に被告会社回線が利用されていた事実が判明した後、上記従業員に対し、就業規則違反を理由とする減給処分(本件懲戒処分)を行っている。 イ 本件記事の投稿者(以下「本件投稿者」という。)は、被告事務所に勤務していた従業員(1名)である。被告事務所には合計15名の役員及び従業員が勤務しているが、テレワークが推奨されていることから、出勤し15ているのは平均して2ないし3名にとどまる。また、被告事務所のレイアウトは、別紙3「レイアウト図」のとおりであり、各デスク上には複数台のモニターが置かれ、見通しが悪いため他の従業員の作業内容を把握することは困難である。加えて、被告会社では各従業員が独立して業務を担当しており、ウェブサイトの企画、制作等のために動画の編集作業等を行う20ことも珍しくないことから、被告C及び被告Dを含む他の従業員等が、本件投稿者による投稿の事実に気付くことはなかった。 ウ 本件アカウントにおける記事の投稿を行うためには、素材となる動画のうち投稿に関連し得る部分のみを視聴し、必要な部分をダウンロードして編集を行えばよく、ダウンロードから投稿までに要する時間は最大でも2250分程度である。素材となる動画は、倍速再生等を用いるなどすれば 稿に関連し得る部分のみを視聴し、必要な部分をダウンロードして編集を行えばよく、ダウンロードから投稿までに要する時間は最大でも2250分程度である。素材となる動画は、倍速再生等を用いるなどすれば視聴8 に時間はかからず、本来の業務中に音声のみをイヤホン等で聞き流しながら必要な部分をチェックすることも十分可能であるし、編集作業等は、勤務時間外に行うことも可能である。したがって、本件投稿者が、本来の業務の合間に他の従業員等に知られずに本件アカウントへの一連の投稿を行うことは十分可能であった。 5エ 被告会社は、令和3年4月の時点で本件投稿者による本件記事の投稿の事実を把握し、本件投稿者に厳重注意をしたものであるが、同年10月に至って、本件投稿者がその後も本件アカウントでの投稿を継続していることが判明するとともに、報道関係者からの問い合わせ等が多発し、被告会社の営業活動が著しく害されることとなったため、本件懲戒処分を決定し10たものであり、その経緯等に何ら不自然な点はない。被告会社が本件文書提出命令に応じていないのは、被告会社の従業員である本件投稿者の個人情報等がインターネット等を通じて公知となり、その私生活上の平穏が著しく害されることを避けるためである。 オ 以上のとおり、被告らは、本件記事の投稿に何ら関与していないから、15被告らは、上記投稿につき、不法行為責任を負わない。 ⑵ 原告らの損害及びその額(原告らの主張)本件記事の投稿により、原告らの社会的評価は大きく低下し、原告らは多大な精神的苦痛を被った。これを金銭的に評価すると、原告らの精神的損害20の額は各400万円を下らない。また、弁護士費用としては各40万円が相当である。 (被告らの主張)争う。 ⑶ 削除 被った。これを金銭的に評価すると、原告らの精神的損害20の額は各400万円を下らない。また、弁護士費用としては各40万円が相当である。 (被告らの主張)争う。 ⑶ 削除請求及び謝罪広告請求の当否25(原告らの主張)9 ア 本件記事は、原告らの名誉を著しく毀損するものであるにもかかわらず、現在も本件アカウント上に掲載されており、誰でも閲覧等が可能であるから、本件記事を削除しない限り、原告らの社会的評価の低下が続くこととなる。よって、原告らは、人格権(名誉権)に基づく侵害差止請求として、本件アカウントを管理する被告会社に対し、本件記事の削除を求めること5ができる。 イ 本件記事は原告らの名誉を著しく毀損するものであって、違法性が強いことから、金銭賠償に加えて、名誉回復のための措置として、本件アカウントに別紙2謝罪広告目録記載の謝罪広告を少なくとも1か月間掲載させることが必要不可欠である。 10(被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断1 争点⑴(本件記事の投稿の業務性)について⑴ 前記前提事実⑵ウ及びエのとおり、本件アカウントへは、令和2年11月1517日から令和3年1月27日までの間、37回にわたり、被告会社回線を用いてログインが行われているのであって、本件記事の投稿も、被告会社回線を用いて本件アカウントにログインした上で行われたものとみることができるのであるから、その投稿は被告事務所に滞在した被告会社の役員又は従業員により行われたものと認められる。 20⑵ この点、被告らは、上記投稿は、被告会社の従業員(被告C及び被告D以外の者)が被告会社の業務とは無関係に私的に行ったものであると主張する。 しかし、本件アカウントからは、令和2年11月17 0⑵ この点、被告らは、上記投稿は、被告会社の従業員(被告C及び被告D以外の者)が被告会社の業務とは無関係に私的に行ったものであると主張する。 しかし、本件アカウントからは、令和2年11月17日から令和3年1月27日までの間(このうち、土日祝日及び12月29日から1月3日までの間を除いた平日は48日間)において、被告会社回線から合計37回ものロ25グインが行われ(前記前提事実⑵エ)、合計188件の記事が投稿されてい10 るのであって(甲16)、上記投稿の多くは、平日の午前9時から午後10時までの間に行われている(甲14)。なお、被告会社における就業時間は原則として午前10時から午後7時であるとされる(被告C本人)。 また、これらの記事の多くは、インターネットで生ストリーミング配信されるニュース番組(「真相深入り!虎ノ門ニュース」。1回当たりの放送時間5は120分〔甲23〕)や、テレビ等で放送される国会中継の動画をダウンロードし、ツイッターに掲載可能な長さに編集した上で、当該動画の内容を要約し、コメントを付すなどして投稿されたものである(甲16)。さらに、これらの投稿の中には、上記動画等の放送から約30分以内という短時間で行われたものも見受けられる(甲17ないし19)。 10上記記事の内容、投稿時間等に照らせば、これらの投稿のためには、上記ニュース番組や国会中継等の動画をリアルタイムで視聴し、本件アカウントでの投稿に適すると考える内容の部分を的確に抜き出し、上記部分を残して数分程度の長さに編集し、その内容を適宜要約した上で、コメントを付す作業が必要となるものと解され、相当の時間と集中力を要し、他の作業と並行15して行うことは困難であると考えられる。 そうすると、本件投稿者は、被告会社における業務時間の大 た上で、コメントを付す作業が必要となるものと解され、相当の時間と集中力を要し、他の作業と並行15して行うことは困難であると考えられる。 そうすると、本件投稿者は、被告会社における業務時間の大半を、専ら上記記事の投稿のために充てていたものと認めることができる。 その上、被告らは、本件投稿者に対して本件懲戒処分を行ったとしているところ(前記前提事実⑶イ)、本件投稿者の基本給(本件懲戒処分における20減給がない時期のもの)の額は月額110万円とされており、かつ、残業手当等の支給がされていないこと(乙1)からすると、本件投稿者は、被告会社において相応の地位にあり、又は重要な業務を担当していたとみることができる。そして、被告事務所に勤務する被告会社の役員及び従業員の総数は15名という少人数にとどまるところ、通常、被告会社が請け負った業務は252、3名のチームで担当し、少なくともチーム内ではお互いの業務内容及び11 進捗状況を把握している上、代表者である被告Cにおいても従業員の業務の内容やその進捗状況等をおおむね把握していたとされるのであるから(被告C本人)、少なくともチーム内の他の従業員及び被告Cは、被告会社において相応の地位にあり又は重要な業務を担当していたとみられる本件投稿者が、被告会社における業務時間の大半を上記投稿に費やしていたことを把握して5いたものと認められる。 このことに加えて、被告回線を利用した本件アカウントからの投稿は単発のものではなく一定期間(少なくとも令和2年11月17日から令和3年1月27日まで。前記前提事実⑵エ)継続していたことからすると、少なくともチーム内の他の従業員及び代表者である被告Cは、本件投稿者が被告会社10における業務時間の大半を上記投稿のための作業に費やしていることを把握 前提事実⑵エ)継続していたことからすると、少なくともチーム内の他の従業員及び代表者である被告Cは、本件投稿者が被告会社10における業務時間の大半を上記投稿のための作業に費やしていることを把握した上でこれを容認していたといえる。役員及び従業員の総数が15名という小規模な事務所において、役員又は従業員が、当該事務所内で一定期間にわたり、業務時間の相当の時間を費やして特定の業務(記事の投稿)を行い、かつこれがチーム内の他の従業員及び被告Cに受け入れられているというの15であれば、その前提として当該業務に従事することについて代表者から少なくとも包括的な指示がされているはずであり、その投稿した複数の記事の一つである本件記事の投稿についても、被告Cの指示の下、被告会社の業務として行われたものというほかない。 なお、被告C自身が上記投稿を行った場合であっても、上記投稿の状況に20照らせば、被告会社代表者として行ったものであって、業務性が認められることはいうまでもない。 上記投稿が被告会社の業務として行われたことは、被告会社回線以外の回線を使用したログインが見当たらないこと、被告会社が、原告らがNTTを被告として提起した発信者情報開示請求訴訟(前記前提事実⑵エ)において、25NTTから意見照会を受けたことにより、遅くとも令和3年4月頃には被告12 会社回線を使用して多数回にわたり本件アカウントへのログインが行われていたことを認識し、聴き取り調査の結果、本件投稿者を特定して、職務専念義務違反等を理由に厳重注意を行った(被告C本人。なお、本件投稿者はその後も被告会社における勤務を継続しているとされる〔被告準備書面⑵〕。)というにもかかわらず、本件アカウントからの投稿が、その後も同年10月51日までの間、平日を含め、従前 なお、本件投稿者はその後も被告会社における勤務を継続しているとされる〔被告準備書面⑵〕。)というにもかかわらず、本件アカウントからの投稿が、その後も同年10月51日までの間、平日を含め、従前と同様の頻度及び内容で継続しており(甲28)、上記投稿が本件投稿者の私的行為であるとすれば極めて不自然といわざるを得ないことからも裏付けられるものというべきである。 ⑶ 被告らが本件投稿者に対して本件懲戒処分を行った裏付けとして提出した給与明細書(氏名欄等をマスキングしたもの。前記前提事実⑶イ)、の基本10給(本件懲戒処分による減給がない時期のもの)の額が月額110万円であり、残業手当等の支給がされていないことは上記⑵のとおりであり、このことに加えて、被告会社が、上記給与明細書のマスキングのないものの提出を命ずる本件文書提出命令を受けながらこれに応じていないこと(前記前提事実⑶ウ)も考慮すれば、原告らが主張するとおり、上記給与明細書に被告会15社代表者であるCの氏名が記載されている可能性は相応にあるといえる。しかし、本件記事が、被告Cからの少なくとも包括的な指示の下、被告会社の業務として投稿された事実が認められることは上記⑵のとおりであるところ、上記⑵において説示した認定過程に照らせば、本件記事が被告会社の業務として行われたとの認定は、上記給与明細書に被告C又はその他の者のいずれ20の氏名が記載されていたとしても左右されるものではない。 なお、被告Dは、被告会社の取締役であるものの(前記前提事実⑴ウ)、専ら財務及び経理関係の業務のみを担当し、他の業務には関与しておらず、被告事務所への出勤も年に数回程度にとどまっていたというのであって(乙2、3、被告D本人、被告C本人)、上記投稿に関与していたとは認められ25ない。そうす を担当し、他の業務には関与しておらず、被告事務所への出勤も年に数回程度にとどまっていたというのであって(乙2、3、被告D本人、被告C本人)、上記投稿に関与していたとは認められ25ない。そうすると、上記給与明細書に被告Dの氏名が記載されていたとは認13 められない。 ⑷ 以上によれば、本件記事を含む本件アカウントからの記事の投稿は、被告会社の業務として、被告Cの指示の下、被告会社の従業員あるいは被告Cによって行われたものと認めることができる。これに反する被告らの主張は採用しない。 5⑸ 被告Cの責任被告Cは、被告会社の設立以来の代表取締役として(前記前提事実⑴ウ)、被告会社全体を統括する立場にあり、被告会社の業務の分担及び進捗状況等を把握し、管理していたものである(乙2、3、被告D本人、被告C本人、弁論の全趣旨)。被告Cは、被告会社代表者として、被告会社の業務の一環10として被告会社従業員が本件アカウントを利用して記事の投稿を行うことを包括的に指示し、本件記事を投稿させ、あるいは自ら投稿していたのであり、上記投稿は、被告Cがその意思に基づき決定し、自ら行ったか、あるいは第三者に指示して行わせたものとみることができる。 ⑹ 被告Dの責任15他方、被告Dが上記投稿に関与していたとは認められないことは上記⑶のとおりである。 ⑺ 小括以上によれば、本件記事の投稿は、被告会社及び被告Cが行ったものと評価することができるところ、本件記事は原告らの名誉を毀損するものである20から(前記前提事実⑵イ)、被告会社及び被告Cは、本件記事の投稿につき不法行為責任を負うものと認められる。他方、被告Dについては、上記投稿に関与したものとは認められない以上、これにつき不法行為責任を負うものとは認められない。 び被告Cは、本件記事の投稿につき不法行為責任を負うものと認められる。他方、被告Dについては、上記投稿に関与したものとは認められない以上、これにつき不法行為責任を負うものとは認められない。 2 争点⑵(原告らの損害及びその額)25前記前提事実⑵イのとおり、本件記事は、原告らの名誉を毀損するものであ14 るところ、その投稿がされた時点における本件アカウントのフォロワー数が約15万9300人に及んでおり(前記前提事実⑵ア)、その社会的影響力は軽視できないものであったとみられること、本件記事は単に新聞記事を引用するのみならず、「1時間吊るしあげた翌日に自殺」などと耳目を集める表現を含んだコメントを追記して投稿されていること、原告らが上記時点において現職5の国会議員であり(前記前提事実⑴ア)、本件記事の投稿によりその国会議員としての評価にも一定の影響が生ずるおそれがあったこと等に加え、弁論の全趣旨及び本件に顕れた一切の事情を考慮すると、本件記事の投稿によって原告らが被った精神的損害に対する慰謝料としては、各100万円が相当である。 また、原告らは、前記不法行為により、原告ら訴訟代理人に委任して本件訴訟10を提起、遂行することを余儀なくされたものであるところ(弁論の全趣旨)、これと相当因果関係がある弁護士費用は、各10万円であると認められる。 3 争点⑶(削除請求及び謝罪広告請求の当否)⑴ 争点⑴に係る当裁判所の判断でみたところに照らせば、被告会社は本件アカウントから本件記事を削除する権限を有するものと認められるところ、本15件記事が原告らの名誉を毀損するものであり、これが削除されない限り、上記名誉毀損が継続することとなる一方、本件記事の削除によって被告会社に何らかの不利益が生ずるとはうかがわれない。そうする 15件記事が原告らの名誉を毀損するものであり、これが削除されない限り、上記名誉毀損が継続することとなる一方、本件記事の削除によって被告会社に何らかの不利益が生ずるとはうかがわれない。そうすると、原告らは、被告会社に対し、人格権(名誉権)に基づき、本件アカウントから本件記事の投稿を削除するよう求め得るものというべきである。 20⑵ 本判決は、本件記事が原告らに対する名誉毀損に当たる違法なものであると認め、被告会社及び被告Cに対し、損害賠償を命じ、かつ、被告会社に対し、本件記事の削除を命ずるものであるから、これらにより、原告らの被った損害及びその社会的評価の低下は、相当程度回復するというべきである。 そうすると、被告会社及び被告Cに対し、金銭による損害賠償のほかに、原25告らの名誉を回復するための処分として、謝罪広告の掲載を命ずる必要があ15 るとまでは認められない。 第4 結論よって、原告らの請求は、主文掲記の限度で理由があるからその限度で認容し、その余についてはいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 5東京地方裁判所民事第7部 裁判長裁判官 新 谷 祐 子 10 裁判官 森 川 さつき 15 裁判官 志 村 敬 一 20 25
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