【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を熊本地方裁判所八代支部に差し戻す。 理 由 検察官の控訴趣意は。検察官提出の控訴趣意書記載のとおりである。 右に
主文原判決を破棄する。 本件を熊本地方裁判所八代支部に差し戻す。 理由検察官の控訴趣意は。検察官提出の控訴趣意書記載のとおりである。 右に対する判断。 所論のように原判決は、「被告人がA、B、Cを同女等のたのみに応じて当時被告人の姉Dが従業婦として稼働していた佐賀県三養基郡a町の特殊飲食店EことF方に公訴事実に記載の日時に夫々連れて行つたこと及同女等がいづれも同店に於て売淫行為を内容とする女給として働くことになつたことは認められるけれども、被告人の所為が同女等とF間の雇用契約締結に介入し雇用関係の成立を斡旋したものとは為し難く、従つて被告人が本件起訴にかかる職業紹介を為したとの点については……結局犯罪の証明がない……」ものとして、被告人に対し無罪を言い渡した。 ところで、原判決が、本件について犯罪の証明がないとするのは、「雇用関係の成立」の証明を欠くという趣旨であるのか、或いは、「その斡旋」の証明を欠くという趣旨であるのか、判文上必ずしも明らかでないが、そのいずれにしても、次に示す理由により、原判決には法令の解釈適用を誤まつたか、又は事実の認定を誤まつた違法があるものというのほかない。 まず、原審公判における証人F、同Dの供述原審裁判官の面前における証人G、同Bの供述、検察官の面前におけるBの供述等によれば、Fは、業として料亭Eを経営するものであつて、右の料亭は、従前の遊廓、現在のいわゆる特殊飲食店にほぼ該当し、その営業内容は、従業婦との契約に基ずき、従業婦にそれぞれ一室ずつをあてがい、食事、寝具等を提供して住み込ませ、従業婦は同所において売淫を業とし、売淫による所得はこれを料亭経営者と従業婦との両者折半とするものであること明らかであり、右のような料亭経営者と従業婦との間の関 い、食事、寝具等を提供して住み込ませ、従業婦は同所において売淫を業とし、売淫による所得はこれを料亭経営者と従業婦との両者折半とするものであること明らかであり、右のような料亭経営者と従業婦との間の関係は、旅店等一般場屋の経営者と一般来客との間の関係とは、著しくその趣を異にし、従業婦は、単に設備を利用するのに止まるものでなくして、自己の利益のためにすると同時に、あわせて料亭経営者の利益のために売淫の業に服するものと認められるので、原審公判における証人Fの、従業婦は「私方で働らかせてくれと言つて来るので働らかせるのですが、雇い入れるという訳ではありません。法律関係はわかりませんが、雇傭契約などと言うものではありません」との供述にかかわらず、前述のような事項を内容とする従業婦との本件契約の成立は、職業安定法第五条第一項にいう、雇用関係の成立に該当するものと解するのが相当である。従つて、若し原判決が、本件について雇用関係の成立を認めることができないという趣旨であるならば、事実誤認か若しくは法令適用の誤の違法があるものといわざるを得ない。 次に、前記引用の証拠のほか、Fの検察官に対する供述調書、被告人の司法警察員、検察事務官(第一、二回)検察官に対する各供述調書、被告人の原審における供述の一部、並びに押収にかかる被告人あてFの封書、はがき(証第三号ないし証第一〇号)の記載等を綜合すれば、被告人とFとの関係は被告人の父高嶺において戦時中まで周旋業を営み、特殊飲食店の女給(接客婦)を世話していた頃、Fが被告人方に出入りしていた当時以来の知合であり、なお、被告人の姉千恵子が、昭和一七年頃約一年間及び昭和二三年四月以来同二八年五月までの間引き続きF方に従業婦として働いていたので、被告人はかねてF方に幾回となく往復し親交があつた事実、被告人は、かねてF及 人の姉千恵子が、昭和一七年頃約一年間及び昭和二三年四月以来同二八年五月までの間引き続きF方に従業婦として働いていたので、被告人はかねてF方に幾回となく往復し親交があつた事実、被告人は、かねてF及び同人の妻Gから直接に口頭又は書信をもつて、或いは、被告人の姉千恵子を通じて間接に、F方に従業婦として働くべき女の物色、身許調査方等、女の雇入についての世話をしてもらいたい旨の依頼を受けていた事実、被告人は、公訴事実記載のA、B、Cの三名から、それぞれ、従業婦として働きたいから世話してもらいたいとの旨の依頼を受け、同女ら三名を伴い、熊本県八代郡b町の被告人居宅附近から汽車で佐賀県三巻基郡a町F方に同道して同人に紹介した事実、その結果その都度直ちに、同女ら三名とFとの間に、前段説示のような雇用関係が成立した事実を認定するのに十分である。なるぼと、原審公判において、被告人は、単に女たちの道案内をしたのに過ぎず雇用については、女たちとFと直接相対で取りきめたことで被告人はこれに何ら関与していない旨を弁解し、証人F、同Dらの証言の一部に、被告人の右弁解に符合するような供述もあるのであるが、被告人の右弁解やこれに符合する証人の供述部分をそのまま措信して、被告人は単に道案内をしたのに過ぎなかつたものであると認定するのは、前記の各証拠に照らして著しく不合理である。尤も、前記三名の従業婦とFとの間における雇用契約締結の際、被告人がその現場に立会してこれに関与介入した事実については、これを認定するに足りる明確な証拠が存しないのであるが、そのことの故に直ちに雇用関係成立あつ旋の事実の証明なしと断じ去るのは当らな<要旨第一>い。職業安定法第五条にいう、雇用関係の成立をあつ旋するとは、求人及び求職の申込を受けて求人者と求職</要旨第一>者との間に介在し、両者間におけ あつ旋の事実の証明なしと断じ去るのは当らな<要旨第一>い。職業安定法第五条にいう、雇用関係の成立をあつ旋するとは、求人及び求職の申込を受けて求人者と求職</要旨第一>者との間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為一般を指称し、必ずしも、雇用関係成立の現場にあつて直接これに関与介入するの要はないものと解するのを相当とする。被告人は、前述のように求人者たるFより従業婦の物色方等の申込を受け、他方求職者たるA、B、Cの三名より従業婦としての就職尽力方の申込を受け、両者の間に介在し、同女ら三名をF方に同道して同人に紹介しその結果、その都度直ちに前記のような雇用関係の成立を見るに至つたのであつて、被告人の右所為は、雇用関係成立のための便益をはかり、その成立を容易ならしめたものであること明らかであり、従つて、職業安定法第五条にいう、雇用関係の成立をあつ旋したものに該当して間然するところがないといわなければならない。原判決が本件について雇用関係の成立のあつ旋を認めることができないという趣旨であるならば、これまた、事実誤認か若しくは法令適用の誤の違法があるものというの外ない。 そして、以上の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点に関する論旨は理由があり原判決は破棄を免かれない。 <要旨第二>なお、職権をもつて調査するのに、本件公訴事実は、起訴状に示された訴因及び罰条に明らかであるよう</要旨第二>に、職業安定法第六三条第二項違反の罪であつて、その法定刑は、一年以上十年以下の懲役又は二千円以上三万円以下の罰金である。選択刑として罰金が定められている罪であるから、裁判所法第三三条により、罰金刑を科すべき事件として、簡易裁判所に裁判権のあることは言をまたない。しかし、本件公訴は、熊本地方裁判 円以下の罰金である。選択刑として罰金が定められている罪であるから、裁判所法第三三条により、罰金刑を科すべき事件として、簡易裁判所に裁判権のあることは言をまたない。しかし、本件公訴は、熊本地方裁判所八代支部に提起されている。検察官としては、罰金刑を科すべき事件でないものとして公訴を提起したものと認められ、現に、検察官は懲役一年を求刑している。このような事件は、これを地方裁判所の合議体で取り扱うべきであるか、一人の裁判官で取り扱い得るかは、これに関する裁判所法第二六条の文面上必ずしも明白でないものがある。同条の文理のみに従えば、一人の裁判官で取り扱うことができるという結論を導き出すことも不可能ではない。同条第二項所定の死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪とは選択刑として罰金が定められている罪を包含しないと解する余地があり、従つて、選択刑としで罰金が定められている罪にかかる事件は、同条第一項により、一人の裁判官でこれを取り扱い得ると解する余地があるからである。のみならず各本条所定の刑の最下限は、一般にその罪全体としての本来の刑責分量の最下限を示すものであるという見解は、右の解釈に一の支持を提供するかにも見える。しかし、事件の審判上、被告人の利益保護のために期待される慎重さの点において、事件が一人の裁判官で取り扱われるよりも、合議体で取り扱われる方がはるかに鄭重であり、従つて、被告人に有利であることは論なく、既に事実上選択刑として定められている罰金刑を科すべき事件でないものとして公訴が地方裁判所に提起され、一応一年以上の懲役刑を科すべき事件として取り扱わるべき現実的な地位に置かれる被告人の立場からすれば、それが抽象的な法定刑に基因するのであろうと、検察官の具体的な起訴の結果に基因するのであろうと何等実質的な差異はない 刑を科すべき事件として取り扱わるべき現実的な地位に置かれる被告人の立場からすれば、それが抽象的な法定刑に基因するのであろうと、検察官の具体的な起訴の結果に基因するのであろうと何等実質的な差異はないものといわざるを得ず、このような実態に着目し、訴訟における被告人の利益保護の方面を重視して合理的な解釈を求めようとするときは、裁判所法第二六条に関する前記の文理解釈には、にわかに賛同し難いものがあり、本件についてはよろしく合議体によつて審理裁判すべきであり、一人の裁判官によつて審理裁判すべきではないと解せざるを得ない。原審がこれを一人の裁判官によつて審理裁判をしたのは、法律に従つて判決裁判所を構成しなかつた違法があるものというのほかない。 よつて、刑訴第三九七条、第三八二条、第三八〇条、第三七七条に従い原判決を破棄し、刑訴第四〇〇条本文に則り本件を熊本地方裁判所八代支部に差し戻すべきものとする。 以上の理由により主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官筒井義彦裁判官柳原幸雄裁判官岡林次郎)
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