主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人田中治の上告理由について。原審の適法に確定した事実は次のとおりである。上告人は自動車のデイーラーであり、訴外株式会社D整備工場(以下Dと略称する。)は上告人のサブデイーラーであつて、両社は協力してユーザーに自動車の販売をしていたところ、ユーザーである被上告人は、昭和四三年八月三〇日Dから上告人所有の本件自動車を買い受け、代金八二万円を完済してその引渡しを受けた。上告人は、Dと被上告人との間の右売買契約の履行に協力し、みずから被上告人のために車検手続、自動車税、自動車取得税等の納付手続及び車庫証明手続等を代行し、そのために自社のセールスマンを二、三度被上告人のもとに赴かせたりした。右売買の八日後である同年九月七日上告人は、Dに本件自動車を、代金七一万一四二三円、その支払方法は同年同月一三日二〇万円、同月三〇日五万一五二三円、同年一〇月以降同四四年六月まで毎月各五万一一〇〇円を支払うこととする、右代金完済まで自動車の所有権は上告人に留保する、という約定で売却した。ところが、Dが昭和四三年一一月より同四四年一月までの三か月分の右割賦金の支払を怠つたので、昭和四四年二月二四日頃上告人は、その支払を催告したうえ、Dとの間の右売買契約を解除し、留保していた所有権に基づき、被上告人に対して本件自動車の引渡しを求めるにいたつたのである。右事実によると、上告人は、デイーラーとして、サブデイーラーであるDが本件自動車をユーザーである被上告人に販売するについては、前述のとおりその売買契約の履行に協力しておきながら、その後Dとの間で締結した本件自動車の所有権留- 1 -保特約付売買について代金の完済を受けないからといつて である被上告人に販売するについては、前述のとおりその売買契約の履行に協力しておきながら、その後Dとの間で締結した本件自動車の所有権留- 1 -保特約付売買について代金の完済を受けないからといつて、すでに代金を完済して自動車の引渡しを受けた被上告人に対し、留保された所有権に基づいてその引渡しを求めるものであり、右引渡請求は、本来上告人においてサブデイーラーであるDに対してみずから負担すべき代金回収不能の危険をユーザーである被上告人に転嫁しようとするものであり、自己の利益のために代金を完済した被上告人に不測の損害を蒙らせるものであつて、権利の濫用として許されないものと解するを相当とする。 つて、すでに代金を完済して自動車の引渡しを受けた被上告人に対し、留保された所有権に基づいてその引渡しを求めるものであり、右引渡請求は、本来上告人においてサブデイーラーであるDに対してみずから負担すべき代金回収不能の危険をユーザーである被上告人に転嫁しようとするものであり、自己の利益のために代金を完済した被上告人に不測の損害を蒙らせるものであつて、権利の濫用として許されないものと解するを相当とする。以上のとおりであるから、右と同旨の原審の判断は正当として是認すべきであり、論旨は採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官大塚喜一郎裁判官小川信雄裁判官吉田豊- 2 -
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