- 1 -平成25年12月17日判決言渡平成25年(行ケ)第10158号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年10月17日判決 原告エイトマイハートインコーポレイテッド 訴訟代理人弁護士五十嵐敦出田真樹子弁理士稲葉良幸石田昌彦右馬埜大地 被告特許庁長官指定代理人田中敬規関根文昭堀内仁子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 - 2 - 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判特許庁が不服2011-27961号事件について平成25年1月28日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,商標登録出願の拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,商標法3条1項3号及び4条1項16号の各該当性である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,「LADYGAGA」の文字を標準文字で表してな 請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,商標法3条1項3号及び4条1項16号の各該当性である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,「LADYGAGA」の文字を標準文字で表してなり,第3類,第9類,第14類,第16類,第18類,第25類及び第41類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務とし,平成22年4月12日に登録出願された商願2010-28913号に係る商標法10条1項の規定による商標登録出願の分割として,平成23年3月28日,第9類「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品とする本願商標について,商標登録出願をした(商願2011-21592号)が,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。特許庁は,同請求を不服2011-27961号事件として審理した上,平成25年1月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,平成25年2月7日,原告に送達された。 2 審決の理由の要点審決の理由の要点は,アメリカ合衆国出身の人気歌手名として広く認識されている「LADYGAGA」の文字からなる本願商標を,その指定商品中,「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」(以下,まとめて「本件商品」という。)- 3 -に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,映像に出演し,歌唱している者を表示したもの,すなわち,その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ず,また,本願商標をその指定商 歌唱している者を表示したもの,すなわち,その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ず,また,本願商標をその指定商品中,上記「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)と何ら関係のない商品に使用した場合,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあり,したがって,本願商標は,商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するというものである。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(本願商標の自他商品の識別力を認定するに当たり,具体的な使用態様を限定して判断を行ったことの誤り)(1) 審決は,本願の指定商品中の「レコード」等の媒体表面等に表示されている発売元・販売元の名称・ロゴから,その商品の出所を認識し,曲名から,当該曲が収録されていることを認識し,歌手名から,その者が歌唱(出演)していること(映像が収録されていること)を認識するとして,本願商標の想定される使用態様を限定した上で,本願商標がその指定商品の品質(内容)を表示したものと認識させるとの判断を行い,商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するとした。 しかし,自他商品の識別力を有するか否かといった登録要件の審査は,願書に記載された「商標登録を受けようとする商標」の構成それ自体に基づいて判断されるべきであり,その商標の使用態様をある特定の態様に限定した上で出願に係る商標が自他商品等の識別力を有するか否かの判断をしなければならないとする合理的根拠は存在しない。このような判断は,個別具体的に使用態様を限定して適用の可否の判断が行われる商標法26条1項各号における判断の手法と混同した誤った判断手法に基づいてなされたもので,恣意的である。 (2) 本願商標のような「歌手名・音楽バン 使用態様を限定して適用の可否の判断が行われる商標法26条1項各号における判断の手法と混同した誤った判断手法に基づいてなされたもので,恣意的である。 (2) 本願商標のような「歌手名・音楽バンド名(著作者名)」の文字からなる商標の登録自体を一律に排除しなければならないという特段の要請はなく,登録を- 4 -認めたとしても商標法26条1項による手当が可能であり特段の不都合は生じない以上,本願商標のような「歌手名・音楽バンド名(著作者名)」の文字からなる商標の登録は認められるべきである。 (3) 取引界においては,歌手名や音楽グループ名と管理・運営会社の名称を共通にしている実例が存在し,それらの場合,特許庁の過去の審決例においては,「歌手名・音楽グループ名」の商標登録が認められている。原告は,LADYGAGAことA氏が代表を務める会社であるが,原告としては,その会社名を,将来「LADYGAGA,Inc」に変更することができるのであり,その可能性も全くないとはいえない。審決例や本願商標の審決の考え方からすれば,「歌手名・音楽グループ名」を表す文字列からなる商標について,査定・審決時に同名の法人が存在しているか否かで結論が異なるものであるが,A氏において,たまたま現在において,本願商標と同名の法人を所有していない事実のみをもって,商標権による保護が与えられないのは不合理である。 現実の取引界においては,「歌手名・音楽グループ名」と同名の音楽レーベルを立ち上げる者も存在している。そうとすれば,A氏が,将来自らレコードレーベルを立ち上げ,そのレーベルの名前を「LADYGAGA」として,そのレーベルに属する様々なアーチストの歌唱・演奏に係る楽曲を収録した媒体に,共通してレーベル名として「LADYGAGA」の文字を使用する可能性 ,そのレーベルの名前を「LADYGAGA」として,そのレーベルに属する様々なアーチストの歌唱・演奏に係る楽曲を収録した媒体に,共通してレーベル名として「LADYGAGA」の文字を使用する可能性も十分想定されるものであり,これを一律に否定するのは妥当ではない。 本願商標を取り扱う業界において上記のような取引の実情があるにも関わらず,原告において,今現在会社名又はレーベル名としての使用事実がないからといって,それらのような可能性が将来にわたってもないと決めつけた上で,本願商標の登録要件の有無についての判断を行った審決は誤りである。 2 取消理由2(本願商標の自他商品識別力の有無に関する判断の誤り)- 5 -(1) 審決は,「本願の指定商品である「レコード」等においては,その収録曲を歌唱する者,映像に出演し,歌唱している者が「だれ」であるかということも,商品の品質と密接な関連を有するというべきであるから,その「だれ」であるかを示す「歌手名」も,商品の品質(内容)に当たるというべきである」とする。 しかし,審決は「(商品の品質との)密接な関連」が具体的にはどのようなものであるのかについて説明するところがない。これは,本願商標がレコード等の商品との関係で商品の具体的な特性を理解,把握できないものであることに起因し,「その収録曲を歌唱する者,映像に出演し,歌唱している者が「だれ」であるかということ」は,その商品が「その歌手に何らかの関連がある商品」であると理解するに止まるといわざるを得ない。 審決のいう音楽CD等の品質と「密接な関連」を有するのは,ある歌手の才能や技量に基づく歌唱力,演奏力等のことを想定しているようであるが,これらは極めて抽象的であいまいな概念であり,歌手の才能や技量に基づく歌唱力,演奏力というよう 接な関連」を有するのは,ある歌手の才能や技量に基づく歌唱力,演奏力等のことを想定しているようであるが,これらは極めて抽象的であいまいな概念であり,歌手の才能や技量に基づく歌唱力,演奏力というようなものを,ある一定の明確な基準による具体的な品質として理解,把握することは困難であるから,本願商標が「歌手名」と同じであるからといって,レコード等の商品との関係で特定の性質等の品質を直ちに理解させるものではない。 してみると,本願商標である「LADYGAGA」は,レコード等の商品との関係において,該文字がレディー・ガガが歌手として歌唱した音楽,レディー・ガガが好きな音楽を集めたアルバムなど,レディー・ガガに何らかの関連がある商品であると理解することができたとしても,それが直ちに需要者等をして具体的な商品の品質を理解・把握することはない。 特に,本願商標がレコード等のレーベル名として使用されるような場合には,「LADYGAGA」以外の歌手が歌唱した音楽等が収録されることもあり得るのであり,そのような場合には,商品の具体的な品質等が一層理解,把握されることはない。 (2) 商標法は,著名な氏名・雅号等からなる商標を含む,業務上の信用が化体- 6 -している周知・著名商標には特に厚い保護を与えている(商標法4条18号,15号,19号等)。これらの規定の趣旨に鑑みれば,審決も認めるように,本願商標が「我が国を含め世界的に広く知られている」ものであるならば,商標登録が認められ,商標法による保護が与えられるべきである。仮に,原告による本願商標の登録を認めず,レコード等について,出願人以外の第三者による使用(商標的使用)を自由に認めるとすれば,A氏が,我が国において審決がいうような精力的活動を行ってきた結果得ることとなった名声・信用を害する 録を認めず,レコード等について,出願人以外の第三者による使用(商標的使用)を自由に認めるとすれば,A氏が,我が国において審決がいうような精力的活動を行ってきた結果得ることとなった名声・信用を害するばかりでなく,本願商標に接する需要者・取引者をして,出所についての混同を生じさせ,それらの者の利益をも害する結果となり,法目的,法理念に反し,妥当ではない。 (3) 歌手名を表す文字からなる商標であっても,直ちに「レコード」等の商品との関係で特定の品質を表すことがないので,登録を認めても差支えがない。過去の登録例には,「MICKJAGGER」(登録第4408433号,甲5),「BRITNEYSPEARS」(登録第4548392号,甲6),「ALICIAKEYS」(登録第4859462号,甲7),「BEYONCE’」(登録第4955673号,甲8),「BILLYJOEL」(登録第5071743号,甲9),「JIMIHENDRIX」(登録第5321067号,甲10),「ユーミン/YUMING」(登録第2458831号,甲11),「倉木麻衣」(登録第4569287号,甲12),「UTADAHIKARU/宇多田ヒカル」(登録第4427007号,甲13)がある。 (4) 以上のとおり,本願商標は自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮し得るのであり,それを看過した審決の判断は誤りである。 3 取消理由3(本願商標のような歌手名等が現実に自他商品の識別標識として機能している事実を看過したことの認定の誤り)審決は,「歌手名や演奏者名は,商品『レコード』等との関係において,商品の品質(内容)を表示したと認識される」とし,「取引者,需要者が,その表示を別異のものとして看取,理解するとはいい難い」とする。 - 7 -しかし,現 ,商品『レコード』等との関係において,商品の品質(内容)を表示したと認識される」とし,「取引者,需要者が,その表示を別異のものとして看取,理解するとはいい難い」とする。 - 7 -しかし,現実には,発売元・販売元であるレコード会社・音楽レーベルの名称・ロゴを目印として商品が選択されるよりは,歌手名・音楽グループ名それ自体を目印として商品の選択がなされることの方が一般的である。オンラインショップのウェブサイトでは,商品を検索するための検索タームの入力画面において,まず,第一に「アーチスト名」による検索が行われることを想定して,需要者の視点から見て最も注目されやすい表示画面の最上部に歌手名・音楽グループ名が記載されている(甲14,15)。実際の店舗においても,音楽CDなどは,歌手名・音楽グループ名ごとに商品の陳列がなされていること,人気が高く著名な歌手名・音楽グループ名は更に目立つようにその文字が陳列棚に表示されることは,一般に知られていることであり,さらに,CDショップ(HMV)の店内で配布されるチラシ等において「歌手名・音楽グループ名」が最も目立つ態様・目立つ位置に表示されている(甲16~18)。このように,現実の取引界においては,歌手名や演奏者名は「出所表示」としても機能し,需要者等が商品を選択し,購入している実情もある。 よって,「LADYGAGA」のような歌手名や音楽グループ名は,現実の取引界において商品の出所を表す識別標識(目印)として十分機能しているというべきであり,このような取引界における事実を捨象した審決の判断は誤りである。 第4 被告の反論 1 本願商標が商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当することについて本願商標を構成する「LADYGAGA」の文字は,アメリカ合衆国出身の歌手として,我が る。 第4 被告の反論 1 本願商標が商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当することについて本願商標を構成する「LADYGAGA」の文字は,アメリカ合衆国出身の歌手として,我が国を含め世界的に広く知られている「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)と同一であるから,これに接する者をして,当該歌手名を表したものと容易に認識するものである。 本願の指定商品中の本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を取り扱う業界においては,商品を購入しようとする需要者が自らの欲す- 8 -る楽曲,画像(映像)やその歌手名に合致する商品であるか否かを容易に看取,把握できるように,収録されている楽曲や画像(映像)に係る歌手名,曲名などの収録内容を具体的,かつ,詳細に表示しており,また,需要者においても,商品の選択に当たり,その商品が自らの欲する内容に合致するものであるか否かを,主に,その商品に表示されている歌手名,曲名をもって把握し,確認しているというのが取引の実情である(乙2~13)。 そうすると,本件商品を購入しようとする需要者にとって,その商品に表示された歌手名は,多数ある商品の中から自らの欲する収録内容の商品であることを選択し,確認するための内容表示として理解され,これが他人の業務に係る商品と区別するための出所識別標識として認識されることはない。 以上を踏まえれば,「LADYGAGA」の文字からなる本願商標は,世界的に広く知られているアメリカ合衆国出身の歌手名を表したものと容易に認識させるものであるから,これを本件商品について使用した場合,これに接する需要者は,これが当該商品に係る収録曲を歌唱する者,画像(映像)に出演し ているアメリカ合衆国出身の歌手名を表したものと容易に認識させるものであるから,これを本件商品について使用した場合,これに接する需要者は,これが当該商品に係る収録曲を歌唱する者,画像(映像)に出演し,歌唱している者を表示したもの,すなわち,その商品の内容を表示したものと認識するというべきである。 してみれば,本願商標は,商品の品質(内容)を表示したものと認識されるにすぎず,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから,商標法3条1項3号に該当する。 また,本願商標をその指定商品中,上記「LADYGAGA」が歌唱などしている商品以外の商品に使用した場合,その商品が,あたかも「LADYGAGA」が歌唱などしている収録内容の商品であるかのように,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから,商標法4条1項16号に該当する。 2 原告の主張に対する反論(1) 取消事由1(商標の使用態様を限定して本願商標の自他商品識別力を判断した誤り)に対して- 9 -ア原告は,ある商標が自他商品識別力を有するか否かという登録要件に係る商標法3条1項の適用の場面においては,使用態様を限定して審理すべき要請はない旨主張する。 しかし,登録出願に係る商標が商標法3条1項3号に該当するか否かの判断は,当該商標の構成態様とその指定商品とに基づき,当該商標が使用される商品の取引の実情などを考慮し,需要者がどのように認識するかを基準として,個別具体的に判断されるべきものであるところ,審決は,本願商標について,その指定商品中の本件商品に係る取引の実情を踏まえ,本願商標を当該商品に使用した場合,これに接する需要者がどのように認識するかに基づいて判断したものであり,原告が主張するように,当該商標の使用態様を限定して判断したもの 商品に係る取引の実情を踏まえ,本願商標を当該商品に使用した場合,これに接する需要者がどのように認識するかに基づいて判断したものであり,原告が主張するように,当該商標の使用態様を限定して判断したものではない。 イ原告は,本願商標のような「歌手名・音楽バンド名(著作者名)」の文字からなる商標の登録自体を一律に排除しなければならないという特段の要請はなく,登録を認めたとしても商標法26条1項による手当が可能であり,特段の不都合は生じない以上,本願商標の登録は認められるべきである旨主張する。 しかし,本件は,「LADYGAGA」の文字からなる本願商標が,その指定商品との関係において,登録要件を具備するか否かを判断するものであるところ,当該商標は,上述のとおり,その指定商品中,本件商品との関係において,商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するものであって,登録要件を具備しないものであるから,登録要件を具備しない当該商標について,登録商標の効力の制限を定める同法26条による解決の可能性を考慮すべき合理的根拠は見出せない。 ウ原告は,歌手名や音楽グループ名と管理・運営会社の名称を共通にしたり,同名の音楽レーベルを立ち上げる者も存在するという取引の実情があることに加え,「LADYGAGA」が代表を務める原告(会社)にあっては,その会社名を,将来「LADYGAGA,Inc」に変更することができるのであり,その可能性も全くないとはいえないことからすれば,現在において会社名又はレーベル名としての使用事実がないからといって,それらのような可能性が将来にわたっ- 10 -ても全くないと決めつけた上で,本願商標の登録要件の有無についての判断を行った審決は誤りと主張する。 しかし,登録出願に係る商標が登録要件を具備するものである な可能性が将来にわたっ- 10 -ても全くないと決めつけた上で,本願商標の登録要件の有無についての判断を行った審決は誤りと主張する。 しかし,登録出願に係る商標が登録要件を具備するものであるか否かの判断は,当該商標の構成態様と指定商品とに基づき,当該出願についての査定時又は審決時において,当該商標が使用される商品に係る取引の実情などを考慮し,需要者がどのように認識するかを基準として,個別具体的に判断されるべきものであるところ,上述のとおり,本願商標は,その構成態様並びに本件商品及びその商品に係る取引の実情を踏まえれば,これに接する需要者をして,当該商品の収録内容である歌手名を表示したものと認識するにとどまるものである。 また,原告の主張するように,歌手名・音楽グループ名と同名の会社名又は音楽レーベルを立ち上げる者が存在するとしても,当該会社名又は音楽レーベル名の表示は,それが歌手名・音楽グループ名として需要者に知られている以上,当該歌手名・音楽グループ名として認識されることに変わりはない。 (2) 取消事由2(本願商標の自他商品識別力の有無に関する判断の誤り)に対してア原告は,審決のいう音楽CDなどの品質と「密接な関連」を有するのは,ある歌手の才能や技量に基づく歌唱力,演奏力などの極めて抽象的であいまいな概念であり,そのようなものをある一定の明確な基準による具体的な品質として理解,把握することは非常に困難なことであることから,本願商標が歌手名と同じであるからといって,レコードなどの商品との関係において,需要者が直ちに具体的な商品の品質を理解・把握することはない旨主張する。 しかし,本願の指定商品中,本件商品は,歌手などが歌唱する楽曲や出演する画像(映像)といった収録内容が商品の具体的な内容となるものであって 体的な商品の品質を理解・把握することはない旨主張する。 しかし,本願の指定商品中,本件商品は,歌手などが歌唱する楽曲や出演する画像(映像)といった収録内容が商品の具体的な内容となるものであって,その商品において,歌唱する者,あるいは,画像(映像)に出演し,歌唱している者が「だれ」であるかを示す歌手名は,商品の内容表示であるから,その表示は,本件商品の具体的な商品の品質に当たる。 - 11 -イ原告は,商標法が,著名な氏名・雅号等からなる商標を含む,業務上の信用が化体している周知・著名商標には特に手厚い保護を与えていることに鑑みれば,本願商標についても,商標法による保護が与えられるべきであり,仮にその登録を認めず,出願人以外の第三者による商標的使用を自由に認めるとすれば,A氏が,我が国において,精力的な活動を行ってきた結果得られることとなった名声・信用を害するばかりでなく,本願商標に接する需要者をして,出所についての混同を生じさせ,それらの者の利益をも害する結果となり,法目的,法理念に反し,妥当なものではない旨主張する。 しかし,本願商標は,本件商品との関係において,需要者が,商品の内容表示として理解するものであり,商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するものであって,商品の出所識別標識として認識されるものではないと判断すべきであるから,同法に基づき商標登録を受けることができず,その登録を認めないからといって,何ら同法の目的,理念に反することにはならない。 ウ原告は,歌手名を表す文字からなる商標であっても,直ちに「レコード」等の商品との関係で特定の品質を表すことがないので,登録を認めても差し支えがない旨主張し,過去の登録例を挙げているが,本願商標は,「LADYGAGA」が歌唱しているという商品の内容を 「レコード」等の商品との関係で特定の品質を表すことがないので,登録を認めても差し支えがない旨主張し,過去の登録例を挙げているが,本願商標は,「LADYGAGA」が歌唱しているという商品の内容を表示したものとして需要者が認識するものであって,商品の具体的な内容表示であるというべきであるから,商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するものであって,本願商標と商標の構成を異にする原告の挙げた既登録例の存在によって,その認定,判断が左右されることはない。 (3) 取消事由3(歌手名等が現実に自他商品の識別標識として機能している事実を看過したことの誤り)について原告は,現実の取引界においては,発売元・販売元であるレコード会社・音楽レーベルの名称・ロゴを目印として商品が選択されるよりは,歌手名・音楽グループ名それ自体を目印として商品の選択・購入がなされることの方が一般的であるから,「LADYGAGA」のような歌手名や演奏者名は,商品の出所を表す識別標識- 12 -(目印)として十分機能している旨主張する。 しかし,本件商品について,商品を購入しようとする需要者が,歌手名・音楽グループ名を目印に商品の選択・購入をすることは一般的であるが,その目当ては,購入したい歌手名・音楽グループ名の歌唱する曲についての収録内容かどうかの確認を行うためである。そして,同じ曲を他者がカバー曲として収録している実情(乙14,15),及びレコード会社の移籍などにより,同じ歌手について商品の発売元などが複数になる実情(乙16)も考慮すると,需要者は,自らの欲する内容の商品であるか否かを,その商品に表示されている歌手名により確認し,商品の内容を把握しているのであるから,本件商品との関係において,商品に歌手名を表したものとして容易に認識される表示がされ する内容の商品であるか否かを,その商品に表示されている歌手名により確認し,商品の内容を把握しているのであるから,本件商品との関係において,商品に歌手名を表したものとして容易に認識される表示がされている場合,これに接する需要者は,これをその商品の内容を表示するものとして認識することはあっても,他人の業務に係る商品と区別する出所識別標識として認識することはないというべきである。 第5 当裁判所の判断 1 本願商標の識別機能について(1) 本願商標は,「LADYGAGA」の文字を標準文字で表してなるものであるところ,「LADYGAGA」の文字及びその表音である「レディ(ー)・ガガ」の片仮名に関する以下の事実は,当事者間に争いがない。 ア 「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)は,本名を「A」といい,アメリカ合衆国出身の女性歌手であり,2008年(日本盤は2009年5月)にファーストアルバム「ザ・フェイム」でデビュー(世界6か国で第1位を達成),その後も,アルバムやシングル曲を発表しており,世界中で人気を博している。 イ 「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)は,グラミー賞その他の賞を受賞しているほか,ギネス世界記録を保持している。また,USビルボードにおいては,2010年度「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に認定されるとと- 13 -もに,2010年の「トップ・セールス・アーティスト」となっており,さらに,米国のTIME誌「(世界で)最も影響力のある人物100人」やフォーブス誌「世界で最も影響力のある女性100人」の一人に,それぞれ選ばれている。 ウ 「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)は,我が国においても,ファーストアルバム「ザ・フェイム」がヒット作となったり,2010年4月 る女性100人」の一人に,それぞれ選ばれている。 ウ 「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)は,我が国においても,ファーストアルバム「ザ・フェイム」がヒット作となったり,2010年4月の来日公演が4公演とも完売となる等,人気を博しており,「NHK紅白歌合戦」にビデオ出演したほか,東日本大震災の復興支援活動(来日を含む。)にも精力的に取り組んだ。 (2) 以上によれば,「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)は,アメリカ合衆国出身の女性歌手として,我が国を含め世界的に広く知られており,「LADYGAGA」の欧文字からなる本願商標に接する者は,上記歌手名を表示したものと容易に認識することが認められる。 そうすると,本願商標を,その指定商品中,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,又は映像に出演し歌唱している者を表示したもの,すなわち,その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。 また,本願商標を,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」のうち「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しない品質(内容)の商品に使用した場合,「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しているとの誤解を与える可能性があり,商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。したがって,本願商標は,商標法4条1項16号に該当する。 し 「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しているとの誤解を与える可能性があり,商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。したがって,本願商標は,商標法4条1項16号に該当する。 したがって,審決が,本願商標は商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当- 14 -すると判断したことに誤りはない。 2 取消事由1について(1) 原告は,取消事由1として,審決が本願商標の自他商品の識別力を認定するに当たり,「レコード」等の媒体表面における表示などに基づき,具体的な使用態様を限定して判断を行ったことは誤りであると主張する。 しかし,審決は,本願商標を,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」に使用した場合に,取引者・需要者が,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,映像に出演し,歌唱している者を表示したものと認識することを理由として,本願商標の商標法3条1項3号及び4条1項16号該当性を判断したものであるところ,上記の認識は,本件商品の媒体表面やジャケットにおける一般的表示に基づいて認定されたものであり,特定の表示方法を前提としたわけではないから,具体的な使用態様を限定して判断を行ったものとは認められない。 (2) 原告は,本願商標のような「歌手名・音楽バンド名(著作者名)」の文字からなる商標の登録自体を一律に排除しなければならないという特段の要請はなく,登録を認めたとしても商標法26条1項による手当が可能であり,特段の不都合は生じない以上,本願商標の登録は認められるべきである旨主張する。 しかし,商標法26条1項は,登録査定された商標権の効力について定めた規定であり,同規定により商標権の効力が制限される場合があるから 生じない以上,本願商標の登録は認められるべきである旨主張する。 しかし,商標法26条1項は,登録査定された商標権の効力について定めた規定であり,同規定により商標権の効力が制限される場合があるからといって,登録査定の要件を定めた商標法3条1項3号又は4条1項16号の該当性の判断が緩和されるものでないことは明らかである。 (3) 原告は,歌手名や音楽グループ名と管理・運営会社の名称を共通にしたり,同名の音楽レーベルを立ち上げる者も存在するという取引の実情があることに加え,「LADYGAGA」が代表を務める原告(会社)にあっては,その会社名を将来「LADYGAGA,Inc」に変更することができるから,それらのような可能性が将来にわたっても全くないと決めつけた上で,本願商標の登録要件の- 15 -有無についての判断を行った本件審決は誤りである旨主張する。 しかし,「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)が,アメリカ合衆国出身の歌手として,我が国を含め世界的に広く知られている限り,本願商標を,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」に使用した場合に,取引者・需要者が,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,映像に出演し,歌唱している者を表示したものと認識するのであり,このことは出願者が何者であるか,又その名称が何であるかによって変わるものではない。原告の主張は,歌手や音楽グループが設立した,歌手名や音楽グループ名と同名の法人が,自己の名称を商標登録出願する場合には,当該歌手名や音楽グループ名が広く知られているとしても,商標法3条1項3号又は4条1項16号の該当性の判断が回避ないし緩和されることを前提とするものであって,その理由のないこと 録出願する場合には,当該歌手名や音楽グループ名が広く知られているとしても,商標法3条1項3号又は4条1項16号の該当性の判断が回避ないし緩和されることを前提とするものであって,その理由のないことは明らかである。 したがって,審決に原告主張の誤りはなく,取消事由1は理由がない。 3 取消事由2について(1) 原告は,歌手の才能や技量に基づく歌唱力,演奏力というような抽象的であいまいな概念を,ある一定の明確な基準による具体的な品質として理解,把握することは困難であるから,本願商標が「歌手名」と同じであるからといって,レコード等の商品との関係で特定の性質等の品質を直ちに理解させるものではないと主張する。 しかし,本願商標の指定商品中,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」においては,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,又は映像に出演し歌唱している者が誰であるかは,当該商品の主要な品質(内容)に該当するから,原告の主張には理由がない。 (2) 原告は,周知・著名商標には特に厚い保護を与えている商標法の趣旨に鑑みれば,本願商標が「我が国を含め世界的に広く知られている」ものであるならば- 16 -商標登録が認められるべきであり,仮に,原告による本願商標の登録を認めず,第三者による商標的使用を自由に認めるとすれば,A氏の名声・信用を害し,本願商標に接する需要者・取引者をして出所についての混同を生じさせる結果となると主張する。 しかし,我が国を含め世界的に広く知られた歌手名を表示したものと取引者・需要者が容易に認識する本願商標が,指定商品中本件商品において自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないことは,上記1(2)に判示した 我が国を含め世界的に広く知られた歌手名を表示したものと取引者・需要者が容易に認識する本願商標が,指定商品中本件商品において自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないことは,上記1(2)に判示したとおりである。自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない以上,本件商品において本願商標が表示されて使用された場合,品質(内容)の誤認を生じることがあり得るとしても,出所混同を生じさせることはないから,原告の主張には理由がない。 (3) 原告は,歌手名を表す文字からなる商標であっても,直ちに「レコード」等の商品との関係で特定の品質を表すことがないので,登録を認めても差支えがないと主張して,過去の登録例を挙げる。 しかし,本件商品においては,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,又は映像に出演し歌唱している者が誰であるかは,当該商品の主要な品質(内容)に該当することは,上記3(1)に判示したとおりであり,本件商品のうち「LADYGAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しないものに本願商標を使用した場合,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあることは,上記1(2)に判示したとおりである。このことは,原告の指摘する登録例の存在によって左右されるものではない。 したがって,原告の主張には理由がない。 (4) したがって,審決に原告主張の誤りはなく,取消事由2は理由がない。 4 取消事由3について原告は,取消事由3として,審決が,本願商標のような歌手名等が現実に自他商品の識別標識として機能している事実を看過したことは,認定の誤りである旨主張する。 本件商品の取引においては,販売元・発売元であるレコード会社・音楽レーベル- 17 -の名称・ロゴを目印として商品が選択されるより,歌手名・音楽グループ名それ自体を目印として商品が選択 する。 本件商品の取引においては,販売元・発売元であるレコード会社・音楽レーベル- 17 -の名称・ロゴを目印として商品が選択されるより,歌手名・音楽グループ名それ自体を目印として商品が選択されることが一般的であると認められ,このことは当事者間にも争いがない。これは,前記1(2)のとおり,本件商品の性質上,その取引者・需要者が,当該商品に係る収録曲を歌唱・演奏する者又は映像に出演し歌唱・演奏する者に最も注目し,これを当該商品の品質(内容)と認識するためであると認められる。取引される商品によっては,人の名称やグループ名が当該商品に表示された場合に出所表示機能を有することは否定できないが,本件商品については,商品に表示された人の名称やグループ名を,取引者・需要者が商品の品質(内容)とまず認識するものといわなければならない。そして,表示された人の名称やグループ名が,著名な歌手名・音楽グループ名である場合には,取引者・需要者は,これを商品の品質(内容)とのみ認識し,それとは別に,当該商品の出所を表示したものと理解することは通常困難であると認められる。 したがって,審決に原告主張の誤りはなく,取消事由3は理由がない。 第6 結論以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水節 - 18 - 裁判官池下朗 裁判官池下朗 裁判官新谷貴昭
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